説明

トルク伝達のためのギアの二つの部材の回転しない接続

トルク伝達のためのギアの二つの部材(2,4)の回転しない接続であって、接続が、二つの異なる方式の接続要素(6,7,8,9)の組合せにより行われ、その際、一方の方式の接続要素(6,8)が、接続される両部材(2,4)のセンタリングとトルク伝達を保証し、他方の方式の接続要素(7,9)が、両部材(2,4)の軸方向の固定と軸方向の運転エネルギーの伝達を可能にするものを提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に係るトルク伝達のためのギアの二つの部材の回転しない接続に関する。
【背景技術】
【0002】
部材を接続するための装置は、自動車技術より公知である。例えば特許文献1からは、ソケットに向けて拡張され、中にインナーパイプが差し込まれるアウターパイプを有するパイプ差込式の接続であって、ソケット端部では別のソケット形状の拡張が備えられるものが知られている。このソケット端部には圧力リングが圧入され、圧力リングは、ソケット形状内に存在するシールにある圧力を及ぼし、ロック接続によってソケット端部と保持されている。ここでソケット端部内には、周囲にぐるりと一様に配された少なくとも二つの窓部が設けられている。この窓部に圧力リングの部材から外方へ作り出された舌部がかみ合い、この舌部がそのかみ合いにより圧力リングを保持している。
【0003】
別のものは、本出願人による特許文献2から、薄板キャリアとして形成された第一のシフト要素のシリンダーと薄板キャリアまたはストラップブレーキシリンダーとして形成された第二のシフト要素のシリンダーを有するシフト要素装置が知られている。その際、第一のシフト要素のシリンダーは、シャフトにまたはケースに支承される駆動可能なハブを備えており、第二のシフト要素のシリンダーが、第一のシフト要素のシリンダーを少なくとも広範囲で放射状に取り囲んでいる。公知のシフト要素装置において第二のシフト要素のシリンダーは、第一のシフト要素のシリンダーの外側の直径部で回転可能に支承されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】東ドイツ民主共和国特許出願明細書 DT 2548581 A1
【特許文献2】ドイツ連邦共和国実用新案登録出願明細書 DE 20 2006 011 424 U1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、トルク伝達のためのギアの二つの部材の、外れない、堅固な、遊びのない、かつ回転しない接続であり、この接続により、高い回転数と伝達トルクにおけるギアの製品寿命にわたってのトルク伝達が保証されるものを提供することである。さらに、接続要素のセンタリングは、同心性とアンバランスに関する高い要求を満たすべきである。特に、丸い断面を有する部材が接続されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1の特徴により解決される。他の本発明に係る形態および利益は、従属請求項より明らかになる。
【0007】
したがって、トルク伝達のためのギアの二つの部材の回転しない接続が提案され、この接続が、二つの異なる方式の(ポジティブロック方式の)接続要素を備え、その際、一方の方式の接続要素が、接続される両部材のセンタリングとトルク伝達を保証し、他方の方式の接続要素が、両部材の軸方向の固定と軸方向の運転エネルギーの伝達を可能にすることを特徴とする。
【0008】
好ましくは、接続要素は、互いに接続する部材の向かい合っている面の周囲にわたって放射状に配されている。
【0009】
特に提案されるのは、接続が、接続する両部材の一方に設けられた複数の連結要素およびリベット栓により行われ、他方の部材に連結要素およびリベット栓の収容のための対応するスリットおよびリベット穴が設けられていることである。好ましくは、連結要素とリベット栓は、接続する部材の一方の周囲にわたって放射状に配されており、対応するスリットおよびリベット穴が、接続する部材の他方の周囲にわたって放射状に設けられている。
【0010】
本発明に従い形成された連結要素により、接続する両部材のセンタリングが、連結要素の接線方向の面を介して図られ、さらにトルクが連結要素の接線方向の面を介して伝達される。本発明に従い、両部材の軸方向の固定と、軸方向の運転エネルギーの伝達がリベット栓により行われる。
【0011】
本発明の特に有利な実施形の枠内で、接続する部材が、薄板形成部材として生産される。このことは、コスト面で有利な実施方法において行われる。
【0012】
連結要素とリベット栓は、薄板形成において、押し出し成型プロセス(Durchstellprozess)により製造される。ここでワークピースは、薄板の裏面上でナイフを入れられ、向かい合っている面上に押し出される。これにより薄板表面から突出した形状要素が形成される。第二の部材の収容部(つまりスリットとリベット穴)は、本発明に従い好ましくは型抜き(精密切断)により形成される。
【0013】
薄板形成として製造することの代替として、部材は、鋳造、フライス加工などのような他の加工技術でもって製造することが可能である。
【0014】
本発明に従い、接線方向の遊びは、盛り上がった連結要素とスリットの基礎寸法、およびこれら要素の限界公差の場合の位置公差を考慮して、軽いカバーが発生するように形成される。さらに、リベット栓およびリベット穴は、所定の遊びを伴い設けられている
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】シフト要素のインナーリーフキャリアを有するホイールセットのピニオンケージを接続するカップが、本発明に従いインナーリーフキャリアと接続される自動車のギアの断面図
【図2】本発明に従い形成され、インナーリーフキャリアと接続されるカップの内側からの内部斜視図。
【図3】本発明に従い形成され、インナーリーフキャリアと接続されるカップの外観斜視図
【図4】本発明に従い形成され、カップと接続されるインナーリーフキャリアの外観斜視図
【図5】本発明に従い形成され、カップと接続されるインナーリーフキャリアの内部斜視図
【図6】カップ、および本発明に従いカップと接続されるインナーリーフキャリアの内部斜視図
【図7】カップとインナーリーフキャリアの間の接続の詳細図
【図8】カップとインナーリーフキャリアの間の接続の詳細図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明を添付の図を用いて例に従い詳細に説明する。
【0017】
図1にはオートマチックギア1が示されており、このオートマチックギアにおいて、ホイールセットのピニオンケージ3をシフト要素5のインナーリーフキャリア4と接続するカップ2が、本発明に従いインナーリーフキャリア4と接続される。この目的のため、本発明に従い、インナーリーフキャリア4に放射状に配置される複数の好ましくは細長い連結要素とリベット栓が設けられており、これらがカップ2における、連結要素およびリベット栓の収容のための対応するスリットおよびリベット穴と共に作用する。このことは図2から8に基づき詳細に説明される。
【0018】
図2には本発明に従い形成されたカップ2が表されている。スリット6およびリベット穴7が、インナーリーフキャリアに向いたカップ2の部材の周囲にわたって放射状に配されている。図3は図2に示されたカップ2の斜視図である。スリット6およびリベット穴7は好ましくは型で打ち抜かれている。
【0019】
図4に表されるのは、本発明に従い形成されたインナーリーフキャリア4の外側からの斜視図である。図5は、インナーリーフキャリア4の斜視内部図を示す。図4および5から分かるように、インナーリーフキャリア4のカップ2と接続される側には、複数の突き出た連結要素8およびリベット栓9が設けられており、これらが接続を確立するためにカップ2に設けられたスリット6およびリベット穴7と共に作用する。
【0020】
連結要素8およびリベット栓9は好ましくは、薄板形成の枠内で、押し出し成型プロセス(Durchstellprozess)により生産され、その際、ワークピースは薄板の裏面上で切断され、向かい合う面上で押し出され、薄板表面から突出する連結要素8とリベット栓9が発生する。
【0021】
図6には、インナーリーフキャリア4と接続されたカップ2が示されている。接続は本発明に従い接続する部材の軸方向のはめ込みおよびリベット栓のリベット止めにより行われ、これにより両部材の軸方向の固定と軸方向の運転エネルギーの伝達が実現される。連結要素の接線方向の面により、本発明の従い、両方の接続される部材のセンタリングが図られ、トルクの伝達が保証される。
【0022】
カップ2とインナーリーフキャリア4の間の接続は、図7および8に基づき具体的に説明される。本発明に従い、接線方向の遊びは、盛り上がった連結要素8とスリット6の基礎寸法、および連結要素8とスリット6の限界公差の場合の位置公差を考慮して、軽いカバーが発生するように形成される。リベット栓9および対応するリベット穴7がある所定の遊びをもって設けられていると、特に有利である。
【0023】
図8から分かるとおり、リベット栓9はパンヘッドとして(als Flachkopf)リベット留めされており、その際、連結要素8は、接続する両方の部材の接続の確立の後に外へ飛び出さないようにデザインされている。
【0024】
本発明に係るコンセプトにより、トルク伝達のためのギアの二つの部材の、低コストで、外れない、堅固な、遊びのない、回転しない接続が提供され、この接続が、高い回転数と伝達トルクにおいてギアの製品寿命にわたるトルク伝達を保証する。この接続は、有利な方法により、同心性とアンバランスに関する要求を満たす高いセンタリング作用を備える。
【符号の説明】
【0025】
1 オートマチックギア
2 カップ部
3 ピニオンケージ
4 インナーリーフキャリア
5 シフト要素
6 スリット
7 リベット穴
8 連結要素
9 リベット栓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルク伝達のためのギア(1)の二つの部材(2,4)の回転しない接続において、接続が、二つの異なる方式の接続要素(6,7,8,9)の組合せにより行われ、その際、一方の方式の接続要素(6,8)が、接続される両部材(2,4)のセンタリングとトルク伝達を保証し、他方の方式の接続要素(7,9)が、両部材(2,4)の軸方向の固定と軸方向の運転エネルギーの伝達を可能にすることを特徴とする接続。
【請求項2】
トルク伝達のためのギア(1)の二つの部材(2,4)の回転しない接続において、接続が、接続する両部材(4)の一方に設けられた複数の連結要素(8)およびリベット栓(9)により行われ、他方の部材(2)に連結要素(8)およびリベット栓(9)の収容のための対応するスリット(6)およびリベット穴(7)が設けられており、接続が、接続する部材(2,4)の軸方向のはめ込みとリベット栓(9)のリベット留めにより行われ、接続する両部材(2,4)のセンタリングとトルクの伝達が、連結要素(8)の接線方向の面により保証され、両部材(2,4)の軸方向の固定と軸方向の運転エネルギーの伝達がリベット栓(9)により行われることを特徴とする請求項1に記載の接続。
【請求項3】
トルク伝達のためのギア(1)の二つの部材(2,4)の回転しない接続において、リベット栓(9)がパンヘッドとしてリベット留めされており、連結要素(8)が、接続する両部材(2,4)の間の接続確立の後に外に飛び出さないようにデザインされていることを特徴とする請求項2または3に記載の接続。
【請求項4】
トルク伝達のためのギア(1)の二つの部材(2,4)の回転しない接続において、接線方向の遊びが、盛り上がった連結要素(8)とスリット(6)の基礎寸法、および連結要素(8)とスリット(6)の位置公差を考慮して、限界公差の場合に軽いカバーが発生するように形成されることを特徴とする請求項2または3に記載の接続。
【請求項5】
トルク伝達のためのギア(1)の二つの部材(2,4)の回転しない接続において、リベット栓(9)およびリベット穴(7)が、組立状態において所定の遊びを伴い設けられていることを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の接続。
【請求項6】
トルク伝達のためのギア(1)の二つの部材(2,4)の回転しない接続において、接続要素(8,9,6,7)が、互いに接続する部材(2,4)の向かい合っている面の周囲にわたって放射状に配されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の接続。
【請求項7】
トルク伝達のためのギア(1)の二つの部材(2,4)の回転しない接続において、接続する両部材が、薄板形成部材として生産されることを特徴とする請求項2から6のいずれか一項に記載の接続。
【請求項8】
トルク伝達のためのギア(1)の二つの部材(2,4)の回転しない接続において、連結要素(8)およびリベット栓(9)が薄板形成において押し出し成型プロセスにより生産され、その際、ワークピースが薄板の裏面上でナイフを入れられ、向かい合った面上で押し出されることを特徴とする請求項7に記載の接続。
【請求項9】
トルク伝達のためのギア(1)の二つの部材(2,4)の回転しない接続において、スリット(6)およびリベット穴(7)が型で打ち抜かれていることを特徴とする請求項7または8に記載の接続。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−530047(P2010−530047A)
【公表日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511570(P2010−511570)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【国際出願番号】PCT/EP2008/056454
【国際公開番号】WO2008/151921
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(504111347)ツェットエフ フリードリヒスハーフェン アクチエンゲゼルシャフト (75)
【氏名又は名称原語表記】ZF Friedrichshafen Aktiengesellschaft
【Fターム(参考)】