説明

トンネル磁気抵抗再生素子

【課題】垂直異方性自由層およびサイドシールドを備えた磁気センサを開示する。
【解決手段】トンネル磁気抵抗再生素子は、下部磁気シールドから上部磁気シールドを隔てるセンサスタックを含む。センサスタックは、基準磁化配向方向を有する基準磁気要素と、基準磁化配向方向に対して実質的に垂直な自由磁化配向方向を有する自由磁気要素とを含む。非磁性スペーサ層により基準磁気要素が自由磁気要素から隔てられる。第1のサイド磁気シールドおよび第2のサイド磁気シールドは、上部磁気シールドと下部磁気シールドとの間に配置される。センサスタックは、第1のサイド磁気シールドと第2のサイド磁気シールドとの間にある。第1のサイド磁気シールドおよび第2のサイド磁気シールドは、下部磁気シールドから上部磁気シールドを電気的に絶縁する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
電子データ記憶および検索システムにおいては、磁気記録ヘッドは、磁気媒体に記憶された磁気的に符号化された情報を検索するためのセンサを備えた再生素子部分を含み得る。媒体の表面からの磁束が、センサにおける検出層の磁化ベクトルの回転を引起こし、これにより、センサの電気的特性を変化させる。検出層は、その検出層の磁化ベクトルが外部磁束に応じて自由に回転することができるので、しばしば自由層と称される。センサの電気的特性の変化は、センサに電流を流し、このセンサにわたる電圧を測定することによって検出されてもよい。装置の幾何学的形態に応じて、センス電流が、装置における層の面内に(CIP)流され得るか、または装置における層の面に対して垂直に(CPP)流され得る。次いで、外部回路が電圧情報を適切なフォーマットに変換し、その情報を必要に応じて処理して、ディスク上に符号化された情報を回復させる。
【0002】
現代の磁気読取りヘッドの構造は、何らかのタイプの磁気抵抗を示す強磁性材料を含む薄膜多層構造をなしている。1つの磁気抵抗センサ構成には、合成反強磁性体(SAF)と強磁性自由層との間、または、2つの強磁性自由層の間に位置決めされた(薄い絶縁バリア層または非磁性金属などの)非磁性層からなる多層構造が含まれる。磁気センサの抵抗は、磁性層の磁化の相対的な配向に依存している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
記録密度が高い場合、磁気媒体上の各ビットの磁束を検出するために磁気センサの寸法を小さくする。磁気センサの寸法を小さくした結果、磁気センサの磁性層における面内異方性の磁化が保持される。たとえば、寸法がより小さい場合、自由層の一部における磁化が傾斜して異方性磁化方向から遠ざかり、静磁気エネルギを最小限にし得る。寸法が引続き小さくなると、磁化が傾斜している領域の相対的部分が大きくなる可能性がある。加えて、熱変動または外部磁場によって引起こされる傾斜方向の変化により、センサにおけるノイズおよび不安定性が増大するおそれがある。さらに、永久磁石を用いて磁気センサ内の磁性層にバイアスをかけると、基準層の磁化方向が軸外に傾けられる可能性があり、これにより、磁気センサによって生成される信号が低減される可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
この開示は、垂直異方性自由層およびサイドシールドを備えた磁気センサに関する。この開示により、トンネル磁気抵抗(TMR:tunneling magneto resistive)再生素子の面密度性能を向上させることができる。
【0005】
一実施例においては、トンネル磁気抵抗再生素子は、上部磁気シールドを下部磁気シールドから隔てるセンサスタックを含む。センサスタックは、基準磁化配向方向を有する基準磁気要素と、基準磁化配向方向に実質的に垂直な自由磁化配向方向を有する自由磁気要素とを含む。非磁性スペーサ層は、基準磁気要素を自由磁気要素から隔てる。第1のサイド磁気シールドおよび第2のサイド磁気シールドは、上部磁気シールドと下部磁気シールドとの間に配置される。センサスタックは、第1のサイド磁気シールドと第2のサイド磁気シールドとの間にある。第1のサイド磁気シールドおよび第2のサイド磁気シールドは、上部磁気シールドを下部磁気シールドから電気的に絶縁する。
【0006】
これらおよび他のさまざまな特徴および利点が、以下の詳細な説明を読むことにより明らかになるだろう。
【0007】
この開示は、添付の図面に関連付けて開示されたさまざまな実施例についての以下の詳細な説明を考慮すると、より完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】膜面垂直異方性を有する自由層アセンブリとサイドシールドとを含むトンネル磁気抵抗(TMR)再生素子を示す正面図である。
【図2】トンネル磁気抵抗(TMR)再生素子にわたる抵抗を自由層要素の磁性状態の関数として示すグラフである。
【図3】膜面垂直異方性を有する自由層アセンブリと複合サイドシールドとを含むトンネル磁気抵抗(TMR)再生素子を示す正面図である。
【図4】複合自由層要素を示す層図である。
【図5】合成反強磁性体および反強磁性層を有する基準磁気要素と、膜面垂直異方性を有する自由磁気要素とを含むセンサスタックを示す概略断面図である。
【図6】合成反強磁性体および反強磁性層を有する拡張された基準磁気要素と、膜面垂直異方性を有する自由磁気要素とを含むセンサスタックを示す概略断面図である。
【図7】ピン止め層および反強磁性層を有する拡張された基準磁気要素と、膜面垂直異方性を有する自由磁気要素とを含むセンサスタックを示す概略断面図である。
【図8】ピン止め層および硬質磁性層を有する拡張された基準磁気要素と、膜面垂直異方性を有する自由磁気要素とを含むセンサスタックを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図は必ずしも縮尺通りではない。図において用いられる同様の番号は、同様の構成要素を指している。しかしながら、所与の図において番号を用いて構成要素を参照することが、同じ番号が付された別の図中の構成要素を限定することを意図したものではないことが理解されるだろう。
【0010】
詳細な説明
以下の説明においては、その一部を構成し、いくつかの具体的な実施例が例示のために示されている添付の図面を参照する。他の実施例が企図され、この開示の範囲または精神から逸脱することなく実施可能であり得ることが理解されるはずである。したがって、以下の詳細な説明は限定の意味で取られるべきではない。ここに規定される定義は、この明細書中において頻繁に用いられるいくつかの語の理解を容易にするためのものであり、この開示の範囲を限定することを意図したものではない。
【0011】
特に規定のない限り、明細書および請求項において用いられる特徴となるサイズ、量および物理的性質を表わす数はすべて、いずれの場合にも、「約(about)」という語によって変更されるものであると理解されるべきである。したがって、逆に規定されていない限り、上述の明細書および添付の特許請求の範囲に述べられる数値パラメータは、当業者がこの明細書中に開示されている教示を用いて獲得するよう努めた所望の特性に応じて異なり得る近似値である。
【0012】
端点による数値範囲の記載は、その範囲内に含まれるすべての数(たとえば、1から5は1、1.5、2、2.75、3、3.80、4および5を含む)、および、その範囲内のいかなる範囲をも含む。
【0013】
この明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形の「a」、「an」および「the」は、内容が明確に規定されていない限り、複数の指示対象を有する実施例を包含するものとする。この明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、「or」という語は、内容が明確に規定されていない限り、一般に「and/or」を含む意味で使用されるものとする。
【0014】
なお、「top(上部)」、「bottom(底部)」、「above(上方)」、「below(下方)」などの語がこの開示において使用され得ることに留意されたい。これらの語は、構造の位置または向きを限定するものとして解釈されるべきではなく、構造間の空間的関係を提示するものとして用いられるべきである。明確にするために、シード層またはキャッピング層などの他の層は示されていないが、技術上の必要に応じて含まれてもよい。
【0015】
この開示は、垂直異方性自由層およびサイドシールドを備えた磁気センサに関する。この開示により、トンネル磁気抵抗(TMR)再生素子の面密度性能を向上させることができる。加えて、いくつかのセンサスタック層構成を記載する。これらのセンサスタック構成は再生素子の性能を向上させる。従来の永久磁石サイドシールドは、この明細書中に記載される設計では設けられておらず、このため、従来の永久磁石サイドシールド設計において見られた磁性の非対称または傾斜がいくらか解消される。この開示はこれに限定されるものではなく、以下に提示する例の説明を通じてこの開示のさまざまな局面が認識されるだろう。
【0016】
図1は、膜面垂直異方性を有する自由層アセンブリ30と、サイドシールド18、20とを含むトンネル磁気抵抗(TMR)再生素子10を示す正面図である。トンネル磁気抵抗(TMR)再生素子10は、上部磁気シールド14を下部磁気シールド24から隔てるセンサスタック12を含む。センサスタック12は、基準磁化配向MR方向を有する基準磁気要素34と、基準磁化配向MR方向に実質的に垂直な自由磁化配向MF方向を有する自由磁気要素30と、自由磁気要素30から基準磁気要素34を隔てる非磁性スペーサ層32とを備える。
【0017】
第1のサイド磁気シールド18および第2のサイド磁気シールド20は、上部磁気シールド14と下部磁気シールド24との間に配置される。センサスタック12は、第1のサイド磁気シールド18と第2のサイド磁気シールド20との間にあり、第1のサイド磁気シールド18および第2のサイド磁気シールド20は、上部磁気シールド14を下部磁気シールド24から電気的に絶縁する電気絶縁層19、21を含む。
【0018】
図示される実施例においては、自由磁気要素30は、センサスタック12の上にあり、基準磁気要素34はセンサスタック12の底にある。代替的には、センサスタック12が、センサスタック12の上に基準磁気要素34を含み、センサスタック12の底に自由磁気要素30を含み得ることが認識されるだろう。
【0019】
自由磁気要素30は、外部磁場に応じて回転する磁化MFを有する単層または複合層または多層の構造をなす。自由磁気要素30は磁化MFを有しており、その有効な方向は、自由磁気要素30の層が垂直異方性であるために、静止した状態にある自由磁気要素30の各層の面に対して垂直になっている。静止した状態にある磁化MFの方向はセンサスタック12の上部へと向けられているように図示されているが、自由磁気要素30の層は、代替的には、静止した状態にあるセンサスタック12の底部へと向けられる有効な磁化方向をもたらし得る。自由磁気要素30が膜面垂直異方性を有している場合、自由磁気要素30の層の端縁近傍における磁化の傾斜が防止される。これによりセンサスタック12におけるノイズを低減させ、これにより、生成された信号を向上させて、センサスタック12の安定性を向上させる。
【0020】
スペーサ層32は、自由磁気要素30と基準磁気要素34との間に配置された非磁性層である。いくつかの実施例においては、スペーサ層32は、Cu、Ag、AuまたはRuなどの非磁性の導電性材料であり、これにより、磁気センサ10が巨大磁気抵抗センサとなる。他の実施例においては、スペーサ層32は、Mg、Al、HfまたはTiからなる酸化物などの非磁性の絶縁性材料または半導体材料であり、これにより、磁気センサ10がトンネル磁気抵抗センサとなる。
【0021】
基準磁気要素34は、磁気要素34の層と同一面内にある固定された磁化方向MRを有する。自由磁気要素30の磁化方向MFは、静止した状態では、固定された磁化方向MRに対して垂直である。基準磁気要素34は、異方的に規定された磁化方向を有する単一の強磁性層であってもよい。基準磁気要素34はまた、方向が固定されている磁化MRをもたらすようさまざまな層の組合せを含んでいてもよく、たとえば、反強磁性ピン止め層を備えた強磁性ピン止め層、合成強磁性ピン止め層(すなわち、Ruなどの非磁性金属によって結合された2つの強磁性層)、または、反強磁性ピン止め層に結合された合成強磁性ピン止め層などが含まれ得る。基準層アセンブリ34の強磁性層は、CoFe、NiFeまたはNiFeCoなどの強磁性合金で作られてもよく、反強磁性層は、PtMn、IrMn、NiMnまたはFeMnで作られてもよい。代替的な実施例においては、基準磁気要素34は、膜面垂直異方性を有する第2の自由層アセンブリと置換えられる。
【0022】
動作時に、センス電流ISは、センサスタック12の層の面に対して垂直に流れるようにリード/シールド14および24を介してセンサスタック12に流される。磁化MFが外部磁場に応じて回転すると、センサスタック12の抵抗が、磁化MFとMRとの間の角度の関数として変化する。センサスタック12にわたる電圧がリード/シールド14と24との間で外部回路(図示せず)によって測定されて、センサスタック12における抵抗の変化が検出される。外部磁場に対するセンサスタック12の反応、およびセンサスタック12にわたる対応する抵抗の変化が、図2に関連付けて図示および記載される。
【0023】
図2は、トンネル磁気抵抗(TMR)再生素子12にわたる抵抗を、自由層要素30の磁化配向MFの関数として示すグラフである。層図12a、12bおよび12cは、正面から見たセンサスタック12のさまざまな磁性状態を示す。層図12aは、静止した状態にある(すなわち、外部磁場がない)磁化MRおよび磁化MFの状態を示している。磁化MFは、自由層要素30の面に対して垂直である。この状態では、センサスタック12にわたるリードバック電圧がほぼ0である。
【0024】
層図12bは、センサスタック12に第1の方向を有する外部磁場がある場合の磁化MFおよび磁化MRの状態を示す。外部磁場は、磁化MFが磁化MRと平行になるように磁化MFを回転させる。この状態では、センス電流ISが印加されると、センサスタック12にわたる電圧降下が負になる。これは、図2におけるゼロ抵抗線より下方に示されている。
【0025】
層図12cは、センサスタック12に第1の方向とは逆の第2の方向を有する外部磁場がある場合の磁化MFおよび磁化MRの状態を示す。外部磁場は、磁化MFが磁化MRに対して逆平行になるように磁化MFを回転させる。この状態では、センス電流ISが印加されると、センサスタック12にわたる電圧降下が正になる。これは、図2におけるゼロ抵抗線より上方に示されている。
【0026】
図3は、膜面垂直異方性を有する自由層アセンブリと、複合サイドシールド18、20とを含むトンネル磁気抵抗(TMR)再生素子40を示す正面図である。トンネル磁気抵抗(TMR)再生素子40は、上部磁気シールド14を下部磁気シールド24から隔てるセンサスタック12を含む。センサスタック12は、基準磁化配向MR方向を有する基準磁気要素と、基準磁化配向MR方向に対して実質的に垂直である自由磁化配向MF方向を有する自由磁気要素と、自由磁気要素から基準磁気要素を隔てる非磁性スペーサ層とを含む。これは、上に記載されたとおりである。
【0027】
第1の複合サイド磁気シールド18および第2の複合サイド磁気シールド20は、上部磁気シールド14と下部磁気シールド24との間に配置される。センサスタック12は、第1の複合サイド磁気シールド18と第2の複合サイド磁気シールド20との間にある。また、第1の複合サイド磁気シールド18および第2の複合サイド磁気シールド20は、上部磁気シールド14を下部磁気シールド24から電気的に絶縁する電気絶縁層19、21を含む。
【0028】
図示される実施例においては、複合サイド磁気シールドは、非磁性スペーサ層によって隔てられた2つ以上の磁性層を含む。たとえば、第1の複合サイド磁気シールド18は、非磁性スペーサ層34によって隔てられた第1の磁性層31および第2の磁性層33を含む。また、第2の複合サイド磁気シールド20は、非磁性スペーサ層44によって隔てられた第1の磁性層41および第2の磁性層43を含む。いくつかの実施例においては、非磁性スペーサ層34、44は、Cu、Ag、AuまたはRuなどの非磁性の導電性材料である。他の実施例においては、非磁性スペーサ層34、44は、Mg、Al、HfまたはTiからなる酸化物などの非磁性の絶縁性材料または半導体材料である。非磁性の絶縁体または半導体である非磁性スペーサ層34、44は、電気絶縁層19、21が上部磁気シールド14を下部磁気シールド24から電気的に絶縁するのを助ける。
【0029】
図4は複合自由磁気要素30を示す層図である。この明細書中に記載される自由磁気要素30は複合自由磁気要素30であってもよい。複合自由磁気要素30は、CoFeB材料からなる第1の層35と、TbCoFe材料からなる第2の層36とを含み得る。TbCoFeに加えて、垂直な異方性をもたらすのに使用できる材料が他に存在する。これらの材料の一覧には、たとえば、FePt、CoPt、Co/Pt多層、Co/Pd多層、Co/Cu多層、Co/Au多層、Co/Ni多層、およびMnAlが含まれる。多くの実施例においては、第1の層35がスペーサ層(図1中の32)に接しており、このことがTMR効果の原因になると考えられている。加えて、TbCoFe材料が垂直の異方性をもたらすと考えられている。第1の層35の材料と第2の層36の材料との間の強い交換結合により、複合自由磁気要素30における第1の層35の磁化が、確実に、複合自由磁気要素30の面に対して垂直になる。
【0030】
図5は、合成反強磁性体SAFおよび反強磁性層77を有する基準層と、膜面垂直異方性を有する自由磁気要素30と含むセンサスタック50を示す概略断面図である。上部および底部のリード/シールド14および24、自由磁気要素30、スペーサ層32ならびに基準磁気要素74、75、76、77によって前面80が規定される。いくつかの実施例においては、前面80は実質的に平坦である。前面80、すなわちABS面(air bearing surface)は、たとえば、センサスタック50によって検出される磁気媒体に面している。
【0031】
この実施例においては、反強磁性層77によって合成反強磁性体SAFを安定化させる。合成反強磁性体SAFは、たとえば、Ruなどの非磁性の導電性スペーサ層75によって結合された2つの強磁性層74、76であってもよい。合成反強磁性体SAFの強磁性層は、たとえば、CoFe、NiFeまたはNiFeCoなどの強磁性合金で作製することができ、反強磁性層77は、PtMn、IrMn、NiMnまたはFeMnで作製されてもよい。
【0032】
図6は、合成反強磁性体SAFおよび反強磁性層77を有する拡張された磁気基準要素74、75、76、77と、膜面垂直異方性を有する自由磁気要素30とを含むセンサスタック51を示す概略断面図である。上部および底部のリード/シールド14および24、自由磁気要素30、スペーサ層32、ならびに基準磁気要素74、75、76、77によって前面80が規定される。いくつかの実施例においては、前面80は実質的に平坦である。前面80、すなわちABS面は、たとえばセンサスタック51によって検出される磁気媒体に面している。
【0033】
この実施例においては、反強磁性層77によって合成反強磁性体SAFを安定化させる。合成反強磁性体SAFは、たとえば、Ruなどの非磁性の導電性スペーサ層75によって結合された2つの強磁性層74、76であってもよい。合成反強磁性体SAFの強磁性層は、たとえば、CoFe、NiFeまたはNiFeCoなどの強磁性合金で作製することができ、反強磁性層77は、PtMn、IrMn、NiMnまたはFeMnで作製されてもよい。
【0034】
この実施例においては、磁気基準要素74、75、76、77は、膜面垂直異方性を有する自由磁気要素30よりも、前面から大きく間隔をあけて離れて延在している。言い換えれば、自由磁気要素30の長さは、磁気基準要素74、75、76、77の長さよりも短い。これにより、合成反強磁性体SAFの磁気安定性を向上させる。
【0035】
図7は、ピン止め層74および反強磁性層77を有する拡張された基準磁気要素と、膜面垂直異方性を有する自由磁気要素30とを含むセンサスタック52を示す概略断面図である。上部および底部のリード/シールド14および24、自由磁気要素30、スペーサ層32、ならびに基準磁気要素74、77によって前面80が規定される。いくつかの実施例においては、前面80は実質的に平坦である。前面80、すなわちABS面は、たとえば、センサスタック52によって検出される磁気媒体に面している。
【0036】
この実施例においては、磁気基準要素は、自由磁気要素30の長さよりも長い単一のピン止め層74を含む。反強磁性層77によって単一のピン止め層74を安定化させる。拡張された単一のピン止め層74は、当該ピン止め層からの面内磁場が自由磁気要素30に作用するものであるが、小さいため、その角度を実質的に垂直方向から変化させることはないだろう。
【0037】
図8は、ピン止め層74および硬質磁性層79を有する拡張された基準磁気要素と、膜面垂直異方性を有する自由磁気要素30とを含むセンサスタック53を示す概略断面図である。上部および底部のリード/シールド14および24、自由磁気要素30、スペーサ層32、ならびに基準磁気要素74、79によって前面80が規定される。いくつかの実施例においては、前面80は実質的に平坦である。前面80、すなわちABS面は、たとえば、センサスタック50によって検出される磁気媒体に面している。
【0038】
この実施例においては、磁気基準要素は、自由磁気要素30の長さよりも長い単一のピン止め層74を含む。硬質磁性層79によって単一のピン止め層74を安定化させる。拡張された単一のピン止め層74は、当該ピン止め層からの面内磁場が自由磁気要素30に作用するものであるが、小さいため、その角度を実質的に垂直方向から変化させることはないだろう。拡張された単一のピン止め層74は、大きなTMRのためにCoFeBなどの強磁性材料から形成することができ、硬質磁性層は、大きな面内のHkおよびHcなど、CoPt、CoCrPtおよび/またはFePtを含む材料から形成可能である。
【0039】
このように、垂直異方性の自由層およびサイドシールドを備えた磁気センサの実施例が開示される。上述の実現例および他の実現例は、添付の特許請求の範囲内である。当業者であれば、この開示が、開示された以外の実施例で実施可能であることを認識するだろう。開示された実施例は、限定ではなく例示を目的として提示されており、この発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0040】
10 トンネル磁気抵抗再生素子、12 センサスタック、14 上部磁気シールド、24 下部磁気シールド、30 自由磁気要素、34 基準磁気要素。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル磁気抵抗再生素子であって、
上部磁気シールドを下部磁気シールドから隔てるセンサスタックを含み、前記センサスタックは、基準磁化配向方向を有する基準磁気要素と、前記基準磁化配向方向に対して実質的に垂直な自由磁化配向方向を有する自由磁気要素と、前記自由磁気要素から前記基準磁気要素を隔てる非磁性スペーサ層とを含み、前記トンネル磁気抵抗再生素子はさらに、
前記上部磁気シールドと下部磁気シールドとの間に配置された第1のサイド磁気シールドおよび第2のサイド磁気シールドを含み、前記センサスタックは前記第1のサイド磁気シールドと第2のサイド磁気シールドとの間にあり、前記第1のサイド磁気シールドおよび前記第2のサイド磁気シールドは、前記上部磁気シールドを下部磁気シールドから電気的に絶縁する電気絶縁層を含む、トンネル磁気抵抗再生素子。
【請求項2】
前記自由磁気要素は、CoFeBの層と、TbCoFe、FePt、CoPtまたはMnAlの層とを含む、請求項1に記載のトンネル磁気抵抗再生素子。
【請求項3】
前記非磁性スペーサ層は酸化物材料である、請求項1に記載のトンネル磁気抵抗再生素子。
【請求項4】
前記基準磁気要素は、反強磁性層で安定化される合成反強磁性体を含む、請求項1に記載のトンネル磁気抵抗再生素子。
【請求項5】
自由磁性層の長さは、前記基準磁気要素の長さ未満である、請求項1に記載のトンネル磁気抵抗再生素子。
【請求項6】
前記基準磁気要素は、反強磁性層で安定化されたピン止め層を含む、請求項1に記載のトンネル磁気抵抗再生素子。
【請求項7】
前記自由磁性層の長さは、前記基準磁気要素の長さ未満である、請求項6に記載のトンネル磁気抵抗再生素子。
【請求項8】
前記基準磁気要素は、硬質磁性層で安定化されたピン止め層を含む、請求項1に記載のトンネル磁気抵抗再生素子。
【請求項9】
前記自由磁性層の長さは、前記基準磁気要素の長さ未満である、請求項8に記載のトンネル磁気抵抗再生素子。
【請求項10】
前記ピン止め層はCoFeBを含み、前記硬質磁性層はCoPt、CoCrPtまたはFePtを含む、請求項8に記載のトンネル磁気抵抗再生素子。
【請求項11】
第1のサイド磁気シールドおよび第2のサイド磁気シールドは、非磁性スペーサ層によって隔てられた複数の磁性層を含む、請求項1に記載のトンネル磁気抵抗再生素子。
【請求項12】
前記非磁性スペーサ層は電気絶縁性である、請求項1に記載のトンネル磁気抵抗再生素子。
【請求項13】
前記非磁性スペーサ層は導電性である、請求項1に記載のトンネル磁気抵抗再生素子。
【請求項14】
トンネル磁気抵抗再生素子であって、
上部磁気シールドと下部磁気シールドとの間にセンサスタックを含み、前記センサスタックは、基準磁化配向方向を有する基準磁気要素と、前記基準磁化配向方向に対して実質的に垂直な自由磁化配向方向を有する自由磁気要素と、前記自由磁気要素から前記基準磁気要素を隔てる非磁性スペーサ層とを含み、前記トンネル磁気抵抗再生素子はさらに、
上部磁気シールドを下部磁気シールドから隔てる第1のサイド磁気シールドおよび第2のサイド磁気シールドを含み、前記センサスタックは前記第1のサイド磁気シールドと前記第2のサイド磁気シールドとの間にあり、前記第1のサイド磁気シールドおよび前記第2のサイド磁気シールドは、スペーサ層によって隔てられた2つ以上の磁性層を含む、トンネル磁気抵抗再生素子。
【請求項15】
前記非磁性スペーサ層は電気絶縁性である、請求項14に記載のトンネル磁気抵抗再生素子。
【請求項16】
前記非磁性スペーサ層は導電性である、請求項14に記載のトンネル磁気抵抗再生素子。
【請求項17】
自由磁性層の長さは、前記基準磁気要素の長さ未満である、請求項14に記載のトンネル磁気抵抗再生素子。
【請求項18】
トンネル磁気抵抗再生素子であって、
上部磁気シールドと下部磁気シールドとの間にセンサスタックを含み、前記センサスタックは、基準磁化配向方向を有する基準磁気要素と、前記基準磁化配向方向に対して実質的に垂直な自由磁化配向方向を有する自由磁気要素と、前記自由磁気要素から前記基準磁気要素を隔てる非磁性スペーサ層とを含み、前記基準磁気要素は2つ以上の磁性層を含み、前記トンネル磁気抵抗再生素子はさらに、
上部磁気シールドを下部磁気シールドから隔てる第1のサイド磁気シールドおよび第2のサイド磁気シールドを含み、前記センサスタックは前記第1のサイド磁気シールドと前記第2のサイド磁気シールドとの間にあり、前記第1のサイド磁気シールドおよび前記第2のサイド磁気シールドは、スペーサ層によって隔てられた2つ以上の磁性層を含む、トンネル磁気抵抗再生素子。
【請求項19】
前記基準磁気要素は、反強磁性層で安定化された合成反強磁性体を含む、請求項18に記載のトンネル磁気抵抗再生素子。
【請求項20】
前記基準磁気要素は、硬質磁性層で安定化されたピン止め層を含む、請求項18に記載のトンネル磁気抵抗再生素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−23096(P2011−23096A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136170(P2010−136170)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(500373758)シーゲイト テクノロジー エルエルシー (278)
【Fターム(参考)】