説明

ドープされた超伝導体材料を製造する方法

ドープされたiX−Ba−Cu−O材料を製造する方法であって、この方法は、
a)X−Ba−L−O又はX−Ba−Cu−L−O材料をX−1−Ba−Cu−O材料と混合するステップと、
b)この混合物を結晶化するステップとを含み、
ただし、1各Xは希土類(IIIB族)元素、イットリウム、希土類元素の組み合わせ又はイットリウムと希土類元素との組み合わせから個別に選択され、各LはU、Nb、Ta、Mo、W、Zr、Hf、Ag、Pt、Ru及びSnから選択される、ドープされたiX−Ba−Cu−O材料を製造する方法。本発明はさらに、本発明の方法によって製造されるドープされた材料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はドープされた超伝導体材料を製造する方法、及びその方法によって製造される材料に関する。
【背景技術】
【0002】
バルクX−Ba−Cu−O材料(ただしXはYb、Nd、Sm、Hoなどの希土類元素である)高温超電導体(HTS)が製造される工程は、ここ十年にわたって、重要な科学開発の対象になってきた。大粒バルクX−Ba−Cu−O材料は、磁気ベアリング、MRI及びフライホイールエネルギー貯蔵の応用形態のような種々の工業技術の応用形態の場合に、従来の永久磁石で達成可能な磁場よりも大きな磁場を生成する大きな可能性がある。最近の研究は、磁束ピンニングを改善し、それゆえ大粒バルク超伝導体材料の許容電流特性を高めるために、酸化ウランそのものを含むバルクX−Ba−Cu−O材料に、種々の原子価状態のウランをドープすることに焦点を当ててきた。これらの材料は、大きな単粒複合材料を製造するための溶融工程を含む、種々の工程によって製造することができる。超伝導結晶を成長させる技法は、非特許文献1に記載される。
【0003】
利用できる種々の溶融工程では、X−Ba−Cu−O及びUOの前駆体粉末が機械的に、又は要求される化学量論比の溶液を利用する技法によって混合され、たとえば一軸又は熱冷間静水圧プレス法によって要求される形状に圧縮成形される。通常、適合した結晶構造及び化学構造の小さな種結晶が圧縮粉の表面(典型的には上側表面)上に配置され、その構成物が包晶を生じる(peritectically)溶融した(すなわち部分的に溶融した)状態まで加熱される。別法では、種結晶は、包晶分解前又は後のいずれかにおいて、高温で圧縮粉に加えることができる。その後、サンプル及び種結晶は包晶凝固温度を通り過ぎて徐々に冷却され、その過程において、種位置において単粒が核を成し、種位置から概ね外側に向かって成長する。その分解及び後続の材料成長過程によって、ウランをドープされたX−Ba−Cu−O結晶が生成される。その材料は十分に超伝導性であり、典型的には、非超伝導相(多くの場合に'211相と呼ばれる)の離散した含有物を含む連続した超
伝導微細構造(多くの場合に'123相と呼ばれる)から成る。これらの材料が磁束を発
生させるか、又は閉じ込める能力は、第2の相の含有物のサイズ及び分布に直接的に、又は間接的に関連がある。その材料にウランをドープすることは、既存の含有物の改善及び新たな第2の相の粒子含有物の生成に大きな影響を及ぼす。複数の結果が、UO及びX−Ba−Cu−O材料を同時に溶融することによって生成される、ウランをドープされた第2の相の粒子含有物が、一般化学式X−Ba−Cu−U−Oを有することを示している。酸化ウランそのものを加えることが、2つの重要な効果をもたらすことが実証されている。これらの効果は以下のとおりである。
【0004】
a)従来どおりに加えられたプラチナが存在しても、存在しなくても、ウランは第2の相の含有物の改良された分布を生成する改良剤又はフラックスとしての役割を果たす。ウランの存在する場合には、達成可能な結晶成長速度が速くなる。
【0005】
b)ウランは、結晶構造全体を通して、サブミクロンサイズの化学式XBaCuUOを有する粒子から成る新たな第2の相を形成する。
UO粒子の含有によって有利なXBaCuUO粒子を生成するが、既知の技術を用いて、有利に作用するほど十分な数の第2の相の粒子が確実に形成されるように注意深く調整される必要がある、結晶内の第2の相の粒子のサイズ、数など、並びにその結晶を製造するための処理温度及び時間を予め決定することはできない。さらに、トップシード溶融処理のような工程を用いて、UOを加えることによってウランをドープされた結
晶を生成することは比較的難しく、UO及びX−Ba−Cu−O結晶が、最終的な結晶内に第2の相の粒子を形成するために必要とされる温度及び時間に耐えることができるようにするために、処理条件をかなり限定された範囲内に設定する必要がある。
【非特許文献1】カルドウェル(Cardwell)及びジンレイ(Ginley)編「The Handbook of Superconducting Materials 」第1巻B2.4.3.3節、Institute of Physics Publishing (UK)出版
【非特許文献2】Journal of Material Science Letters, 14, p 1444 (1995)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それゆえ、結晶が形成される前に、第2の相の粒子のサイズ及び数を予め決定することができる、ウランをドープされたX−Ba−Cu−Oタイプの材料、又は他の元素をドープされたX−Ba−Cu−O材料を製造する方法を提供することが有利であろう。さらに、製造条件及びパラメータの許容範囲をさらに広げることができ、処理温度を低く、処理時間を短くして、結晶成長過程のコストを下げ、さらに最適化できるようにする方法を提供することが有利であろう。
【0007】
さらに、第1の相の粒子が既知のウランをドープされた結晶の場合よりもさらに強い磁場を生成し、さらに別のドーパントを加えることにより、結晶の全体性能を高めることができる、ウランをドープされたX−Ba−Cu−Oタイプの材料、又は他の元素をドープされたX−Ba−Cu−O材料を製造することが有利であろう。また、生成される結晶の特性を損なうことなく、ドープされたX−Ba−Cu−Oタイプの材料の粒子サイズを改良するために現時点で用いられているプラチナを加えることを不要にすることができる、ドープされたX−Ba−Cu−Oタイプの材料を提供することも有利であろう。
【0008】
それゆえ、本発明の好ましい実施形態の目的は、本明細書において明白に開示されるか否かにかかわらず、従来技術の少なくとも1つの問題を克服又は軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の態様によれば、ドープされたX−Ba−Cu−O材料を製造する方法であって、この方法は、
a)X−Ba−L−O又はX−Ba−Cu−L−O材料をX−Ba−Cu−O材料と混合するステップと、
b)この混合物を結晶化するステップとを含み、
ただし、各Xは希土類(IIIB族)元素、イットリウム、希土類元素の組み合わせ又はイットリウムと希土類元素との組み合わせから個別に選択され、各LはU、Nb、Ta、Mo、W、Zr、Hf、Ag、Pt、Ru及びSnから選択される1つ又は複数の元素である、ドープされたX−Ba−Cu−O材料を製造する方法を提供する。
【0010】
「X−Ba−Cu−O材料」、「X−Ba−Cu−L−O材料」及び「X−Ba−L−O材料」は、それらの元素のみを含むか、不純物として、又はその化合物の一部としてさらに別の元素を含むかにかかわらず、X、Ba、Cu、O及び/又はL元素を含む化合物を意味する。
【0011】
上記X−Ba−Cu−L−O材料及び上記X−Ba−L−O材料は一般化学式
BaCu
から成る材料を含み、
ただし、各X及びLは先に定義されたのと同じであり、
wは1〜4であり、xは1〜6であり、yは0〜4であり、tは0.3〜2であり、zは好適には3〜20である。
【0012】
上記X−Ba−Cu−O材料は一般化学式
BaCu
から成る材料を含み、
ただし、各Xは先に定義されたのと同じであり、
aは1〜4であり、bは1〜6であり、cは0.5〜4であり、dは3〜20であることが好適である。
【0013】
Xはそれぞれ、イットリウム、Nd、Sm、Gd、Eu又はHoのうちの1つ又は複数から個別に選択されることが好適であり、イットリウム及びNdのうちの一方又は両方から選択されることがさらに好ましく、各Xは最適にはイットリウムである。各Xは同一であることが好ましい。
【0014】
Lはウラン又はウランと他の元素との混合物であることが好ましい。
wは1〜3であることが好ましく、xは2〜4であることが好ましく、yは、X−Ba−Cu−L−O材料の場合に0.1〜1であることが好ましく、0.3〜1であることがさらに好ましく、tは0.5〜1であることが好ましく、1であることがさらに好ましく、zは4〜15であることが好ましく、5〜12であることがさらに好ましく、6〜8であることが最も好ましい。
【0015】
aは1〜3であることが好ましく、bは2〜4であることが好ましく、cは1〜3であることが好ましく、1又は3であることがさらに好ましく、dは4〜15であることが好ましく、5〜12であることがさらに好ましく、6〜8であることが最も好ましい。
【0016】
BaCuは、ステップa)において、その混合物の少なくとも50%w/wの量まで加えられることが好適であり、少なくとも60%w/wの量まで加えられることが好ましく、少なくとも70%w/wの量まで加えられることがさらに好ましく、少なくとも80%w/wの量まで加えられることがさらに好ましく、その混合物の全重量の少なくとも90%w/wの量まで加えられることが最も好ましい。特に好ましい実施形態では、XBaCuは、少なくとも95%w/wの量で、とりわけ少なくとも99%w/wの量で加えられる。
【0017】
対照的に、XBaCuはステップa)において、ステップa)において生成された混合物の全重量の少なくとも0.01%w/wの量まで加えられることが好適であり、少なくとも0.05%w/wの量まで加えられることが好ましく、少なくとも0.1%w/wの量まで加えられることがさらに好ましい。
【0018】
BaCuは、ドープされない結晶よりも高い磁場を達成しながら、超伝導体結晶を損なうことなく、30%w/wまで、さらには40%w/wまでの量で加えることができることがわかっている。
【0019】
BaCuは固体であることが好適であり、粉末又は顆粒であることが好ましい。
BaCuは任意の適当な物理的状態をとることができ、その状態はステップ(b)において望まれる結晶化方法によるであろう。
【0020】
BaCuは、溶融した形又は液体の形をとることができ、且つ/又はその方法は、ステップ(a)の前にXBaCuを概ね溶融するステップを含む。別法では、XBaCuは固体の形、好ましくは粉末又は顆粒の形をとることができる。粉末又は顆粒の粒径は少なくとも1ミクロンであることが好ましく、粉末又は顆粒
の最大粒径は105ミクロン以下であることが好ましく、75ミクロン以下であることがさらに好ましい。
【0021】
ステップ(b)は単結晶を結晶化することを含むことが好適である。
ステップ(b)は溶融したXBaCu内にあるXBaCuの混合物の結晶化を含むことが好ましい。
【0022】
ステップ(b)の結晶化は任意の適当な方法によって達成することができる。
単結晶を成長させる(結晶化する)適当な方法は、焼結、結晶粒成長、フラックス成長、トップシード成長、溶液結晶化、フローティングゾーン結晶化、溶媒移動結晶化、結晶電析及び熱水結晶成長を含む。これらの各技法は、非特許文献1の354〜359ページに詳細に記載されており、その内容は参照して本明細書に援用される。
【0023】
ステップ(b)は、XBaCu及びXBaCuの混合物を容器内に配設することと、容器に種又は鍵を配設することと、その後、種若しくは鍵の温度、又はその付近の温度を操作し、溶融した混合物の結晶化を誘発することとを含むことが好ましい。
【0024】
BaCu及びXBaCuの粉末は、要求される化学量論比で、機械的に混合されるか、又は溶液を利用する技法を用いて混合されることが好ましく、その後、たとえば熱間又は冷間静水圧プレス法によって、要求される形状に圧縮成形されることが好適である。
【0025】
BaCu及びXBaCuを固体の形で容器に加えて、それらの混合物を溶融することができる。別法では、XBaCuを容器内で溶融して、固体XBaCuを溶融した材料に加えることができる。
【0026】
種又は鍵は、溶融した混合物に加えることができるか、又は混合物を溶融する前に加えることができる。種又は鍵は粉末にされたXBaCu及びXBaCuに加えられ、その後、粉末状の混合物が溶融されることが好ましい。
【0027】
種又は鍵は、XBaCuに適合する結晶構造及び化学構造の結晶であることが好ましい。
適当な種結晶は、そのXBaCu材料、及び、たとえば結晶化されるXBaCu材料とは異なるX原子を有するXBaCuを含む。
【0028】
ステップ(b)は溶液引上げ結晶化(TSSG結晶化)を含むことが最も好ましく、その場合、XBaCuが要求される温度に溶融され、粉末状のXBaCuが溶融した混合物に加えられ、予め準備された種結晶が支持部材上にある溶融した混合物に入り、支持部材は要求される温度勾配を達成して種結晶の周囲で結晶化を誘発する。
【0029】
その混合物は包晶を生じる溶融した状態(すなわち部分的に溶融した状態)に溶融されることが好適である。XBaCu及びXBaCuの混合物は、その混合物を溶融して、好ましくは包晶を生じる溶融した状態(部分的に溶融した状態)にするために、好ましくは少なくとも900℃まで、さらに好ましくは少なくとも950℃まで、最も好ましくは1000℃まで加熱される。その混合物を溶融して包晶を生じる溶融した状態(部分的に溶融した状態)にするために、その混合物は1200℃以下に加熱されることが好適であり、1150℃以下に加熱されることが好ましく、1100℃以下に加熱されることがさらに好ましい。
【0030】
温度の操作は、その混合物の包晶凝固を誘発するのに適した速度で、種若しくは鍵、又は種若しくは鍵の周囲の領域を冷却することにより達成されることが好ましい。冷却は1時間当たり6℃以下の速度で達成されることが好適であり、1時間当たり5℃以下の速度で達成されることが好ましい。冷却は1時間当たり少なくとも0.05℃の速度で達成されることが好適であり、1時間当たり少なくとも0.075℃の速度で達成されることが好ましく、1時間当たり少なくとも0.1℃の速度で達成されることがさらに好ましい。
【0031】
結晶成長は、溶融した混合物を均一な温度するなどの、均一な温度条件下で達成するか、又は結晶成長速度を制御するために、温度勾配下で達成することができる。
包晶を生じる溶融した状態への分解を誘発するために、その混合物は空気、酸素を豊富に含む雰囲気又は酸素が欠乏した雰囲気中で加熱することができる。
【0032】
その後、結果として生成された、ウランをドープされたX−Ba−Cu−O(XBCO)結晶は、好ましくは400℃〜700℃で、さらに好ましくは酸素を豊富に含む雰囲気内で、好ましくは100〜300時間、さらに好ましくは概ね200時間、アニールされることが好ましい。そのアニールするステップによって、その結晶を超伝導状態に変換できるようになる。
【0033】
結果として生成された超伝導体材料は、非超伝導相(多くの場合に、XBaCuO構造に起因して「211」相と呼ばれる)の離散した含有物及びX−Ba−Cu−L−O粒子含有物を含む、連続した超伝導微細構造(多くの場合に、XBaCu構造に起因して「123」相と呼ばれる)から成るものと考えられる。結果として生成された材料の能力は、磁束を生成するか、又は閉じ込めることであり、それは123マトリクスの第2の相の含有物の厳密なサイズ及び分布に直接的又は間接的に関連する。本発明の第1の態様の場合に説明されるドーピングの方法は、既知の従来技術のドーピング工程によって製造される類似の材料によって示される特性よりも優れた特性を有する超伝導体材料を生成するために、既存の含有物を改良することにおいて、及び新たな第2の相の含有物を生成することにおいて、大きな効果をもたらす。
【0034】
BaCuにXBaCu粒子を加えることによって与えられる効果は、(1)結晶が形成される前に、結果として形成される結晶のためのドーパント含有粒子のサイズ及び数を予め決定することができること、(2)既知のウランドーピング工程によって生成される結晶に比べて、その構造内により強い磁場をもたらすように、結果として生成された結晶内の含有物の優れた改良が達成されること、(3)既知の工程に比べて、トップシード処理手順が簡略化され、加速されること、及び(4)結晶成長過程の温度を最適化し、予め計画を立てることができるので、優れた品質及び優れた効果の結晶がもたらされることであることがわかっている。
【0035】
その方法は、Yをステップa)において生成された混合物と混合することを含むことができる。その方法は、Ptをステップa)において生成された混合物に加えることを含むこともできるが、本発明の方法によって生成される材料の特性が改善されることに起因して不要である。
【0036】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様の方法によって製造される、ドープされた材料が提供される。
本発明の種々の態様をさらに理解するために、且つ本発明の実施形態が如何にして達成できるかを示すために、ここで、本発明が添付の図面によって説明されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
最初に図1を参照する。
トップシード溶融装置2は、その上に加熱炉チャンバ3が載置され、加熱炉3内が加熱されるようにする加熱手段に接続される台4から成る。加熱炉チャンバ3内には、その遊端が台4上に配置される溶融物容器10内に配置されるように構成されるシードホルダアーム6がある。フリーアームの遊端には、使用時に溶融物容器10内に下ろされるように構成される種結晶12がある。図1の装置は、溶融物容器10内に存在する溶融液内で成長する、種結晶12に接続される成長結晶14を示す。シードホルダアーム6は回転可能であり、使用時に、結晶14の成長中に回転できるようになされる。加熱炉3内の空間は制御された雰囲気であり、その雰囲気内で加熱炉内の熱を所望のように調整することができる。シードアーム6は台4に対して上下に可動であり、結晶14の成長中に、シードアームは、結晶14がさらに成長できるようにするために、溶融物容器10から徐々に引き上げることができ、結晶14が連続して成長できるようにするために、種12及び結晶14の連続した温度勾配を達成することができる。
【0038】
装置2の別の実施形態では、装置2における結晶粒核形成及び成長を制御するために、コールドフィンガを用いることができるが、用いなくてもよい。さらに、種結晶は、溶融又は部分的に溶融した後の高い温度ではなく、室温において前駆圧縮ペレットの露出した表面上に置くことができる。
【実施例】
【0039】
(実施例1)
化学式YBaCuUO(これ以降、「DU」)を有するX−Ba−Cu−U−O材料が従来の技法によって合成された。YBaCuO(Y−211)の粒子が従来の固体反応技法によって、YBaCuの粒子(Y−123粒子)とともに合成された。
【0040】
Y−123、Y−211及びDUの粉末粒子が溶融物容器10内に配置される圧縮ペレットに圧入され、図1に示されるトップシード溶融装置2の台4上に配置された。Y−123、Y−211及びDU粒子は、Y−123が70モル%、Y−211が30モル%及び0.5%w/wDUの割合であった。
【0041】
粉末状混合物を溶融して、包晶を生じる溶融した状態にするために、溶融物容器10内の粉末成分は、1,050℃の温度まで加熱された。
種結晶はトップシード溶融装置2のシードアーム6に接続された。種結晶を溶融物容器10内の溶融した成分と同じ温度まで加熱するために、加熱炉3の内部空間は1,050℃に保たれた。その後、溶融物及び種12は1,010℃まで急冷された。その後、シードアーム6は、種結晶12が溶融物容器8内の溶融した混合物に入り込むように下ろされた。その後、溶融物容器8内の溶融物10の結晶化を達成するために、溶融物及び種は、1時間当たり0.01〜1℃の速度で冷却された。種12が冷却されるのに応じて、シードアームを回転させて、種12の遠心面全体にわたって結晶14が溶融物10から形成されるようにした。また結晶化中に、シードアームを徐々に引き上げて、新たに生じる結晶14が常に、単一の表面と、その表面の周囲の領域のみにおいて、溶融物10との接触を保たれるようにした。
【0042】
完全に結晶化したなら、その結晶をアニールして、その結晶を超伝導状態に変換できるようにするために、生成された単結晶はその後、200時間、400℃〜700℃の温度において酸素を豊富に含む雰囲気に晒された。結果として生成された超伝導体材料は、Y−123相の第1の相の超伝導微細構造と、その中に含まれる、非超伝導性のY−211相及びDU含有粒子の第2の相の離散した含有物から成ることが示された。結果として生成された結晶が磁束を生成又は保持する能力は優れており、二酸化ウランがXBCO材料
の溶融物に加えられる、従来どおりに製造された、ウランをドープされた超伝導XBCO材料よりも良好であることがわかった。この実施例及び本発明において用いられるウランドーピングの方法は、新たに生じる超伝導結晶14内に存在するY−211含有物を改良し、既知の従来技術のウランドーピング工程によって製造される類似の材料によって示される特性よりも優れた特性を有する超伝導体材料を生成する際に大きな効果をもたらす。
【0043】
カメカ(Cameca)によって提供されるCamacaSx50走査型電子顕微鏡において撮影された、結果として生成された結晶の微細構造が図2に示される。明るいコントラストのエリアは実質的にウラン含有相粒子が存在する場所を示しており、暗いコントラストのエリアは実質的にY−211相粒子が存在する場所を示しており、灰色のコントラストのエリアは、マトリクスY−123超伝導体材料を示す。
【0044】
詳細には、結果として生成された結晶は、既知のウランドーピング工程によって製造された結晶に比べて、ドープされた構造内に強い磁場を生成する効果を提供し、トップシード処理手順は、温度最適化を含む、非常に効率的で、加速された工程を可能にし、それにより優れた品質及び優れた効果の結晶がもたらされる。
【0045】
図3は、磁石、電源、X−Y−Zスキャナ及びホールプローブを備える特注の装置を用いて測定された、実施例1において生成された結晶の捕捉磁場プロファイルを示す。実施例1の単粒超伝導体が1.5T磁場の下で磁化され、その後、磁場は除去された。捕捉磁場は、上側表面から0.5mmにある、サンプル表面のX−Y平面(上側表面)上で、アレポック(Arepoc)(スロバキア)によって提供されるホールプローブを用いて測定された。
(実施例2)
実施例1の方法が繰り返されたが、70モル%のY123、20モル%のY−211、10モル%のY及び0.5%w/wのDUから成る粉末状混合物を用いた。結果として生成された結晶は、実施例1と比べると、磁場がさらに強くなるなどの、さらに改善された全体性能を達成し、成長段階において材料の部分又は部分酸素添加を可能にすることがわかった。
【0046】
上記のいずれの実施例においても、生成される結晶の特性に悪影響を及ぼすことなく、XBCOウランドープ超伝導結晶を製造する際に一般的に用いられる、プラチナの添加を不要にできることがわかった。
【0047】
さらに進んだ実験では、DU成分は、化学式YBaUO、YBa、YBaUO、YBa、YBaUO及びYBaUOを有するウラン含有粒子と置き換えられた。ただし、yは5〜15であった。
【0048】
先に述べられたさらに別のウラン含有化合物を有する、実施例1の方法によって製造された、ウランをドープされた超伝導結晶が合成及び試験されて、それぞれが実施例1及び実施例2において製造された結晶と同じ優れた磁束特性を示すことがわかった。
【0049】
さらに別の実験では、実施例1からのX−Ba−Cu−U−O又はX−Ba−U−O材料内のウランの代わりに、Nb、Ta、Mo、W、Zr、Hf、Pt、Ag、Ru及びSnから選択された同じ量の元素を用いることにより、既知のドーピング工程によって製造される結晶に比べて、ドープされた構造内に相対的に強い磁場をもたらす超伝導結晶が生成された。
【0050】
読者の注目は、本特許出願に関連する本明細書と同時に、又はその前に提出され、本明細書とともに、公衆が縦覧するために公開されている全ての文書及び書類に向けられてお
り、全てのそのような文書及び書類の内容は参照して本明細書に援用される。
【0051】
本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書及び図面を含む)に開示される全ての特徴、及び/又はそのように開示される任意の方法又は工程の全てのステップは、そのような特徴及び/又はステップのうちの少なくともいくつかが互いに矛盾する組み合わせを除いて、任意の組み合わせにおいて組み合わせることができる。
【0052】
本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書及び図面を含む)に開示される各特徴は、他に明記されない限り、同じ、同等又は類似の目的を果たす別の特徴によって置き換えることができる。したがって、他に明記されない限り、開示される各特徴は、包括的な一連の同等又は類似の特徴の一例にすぎない。
【0053】
本発明は、上記の1つ又は複数の実施形態の細部には限定されない。本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書及び図面を含む)に開示される特徴のうちのあらゆる新規の特徴、若しくはあらゆる新規の組み合わせ、又はそのように開示される任意の方法若しくは工程のステップのうちのあらゆる新規のステップ、若しくはあらゆる新規の組み合わせにまで及ぶ。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】ウランをドープされたX−Ba−Cu−O、又はNb、Ta、Mo、W、Zr、Hf、Ag、Pt、Ru及び/又はSnをドープされたX−Ba−Cu−Oの単結晶を結晶化することができ、非特許文献2に詳細に説明される、トップシード溶融装置の正面断面図。
【図2】実施例1において製造されるX−Ba−Cu−U−O材料の典型的な微細構造を示す電子顕微鏡写真。
【図3】実施例1に示される36mm単粒超伝導体の捕捉磁場プロファイルを示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドープされたX−Ba−Cu−O材料を製造する方法であって、該方法は、
a)X−Ba−L−O又はX−Ba−Cu−L−O材料をX−Ba−Cu−O材料と混合するステップと、
b)この混合物を結晶化するステップとを備え、
ただし、各xは希土類(IIIB族)元素、イットリウム、希土類元素の組み合わせ又はイットリウムと希土類元素との組み合わせから個別に選択され、各LはU、Nb、Ta、Mo、W、Zr、Hf、Ag、Pt、Ru及びSnから選択される1つ又は複数の元素である、ドープされたX−Ba−Cu−O材料を製造する方法。
【請求項2】
前記X−Ba−Cu−L−O材料及び前記X−Ba−L−O材料は一般化学式
BaCu
から成る材料を含み、
ただし、各X及びLは先に定義されたのと同じであり、
wは1〜4であり、xは1〜6であり、yは0〜4であり、tは0.3〜2であり、zは3〜20である、請求項1に記載のドープされたX−Ba−Cu−O材料を製造する方法。
【請求項3】
前記X−Ba−Cu−O材料は一般化学式
BaCu
から成る材料を含み、
ただし、各Xは先に定義されたのと同じであり、
aは1〜4であり、bは1〜6であり、cは0.5〜4であり、dは3〜20である、請求項1に記載のドープされたX−Ba−Cu−O材料を製造する方法。
【請求項4】
各XはY、Nd、Sm、Ga、Eu及びHoのうちの1つ又は複数から個別に選択される、請求項1、2又は3に記載のドープされたX−Ba−Cu−O材料を製造する方法。
【請求項5】
wは1、2又は3であり、xは2〜4であり、X−Ba−Cu−L−O材料の場合、yは0.1〜1であり、tは0.5〜1であり、zは4〜15である、先行する請求項のいずれか一項に記載のドープされたX−Ba−Cu−O材料を製造する方法。
【請求項6】
aは1、2又は3であり、bは2〜4であり、cは1〜3であり、dは4〜15である、先行する請求項のいずれか一項に記載のドープされたX−Ba−Cu−O材料を製造する方法。
【請求項7】
前記XBaCuはステップ(a)において、前記混合物の少なくとも50%w/wの量まで加えられる、先行する請求項のいずれか一項に記載のドープされたX−Ba−Cu−O材料を製造する方法。
【請求項8】
前記XBaCuはステップ(a)において、ステップ(a)において生成された前記混合物の全重量の少なくとも0.01%w/wの量まで加えられる、先行する請求項のいずれか一項に記載のドープされたX−Ba−Cu−O材料を製造する方法。
【請求項9】
前記XBaCuは固体である、先行する請求項のいずれか一項に記載のドープされたX−Ba−Cu−O材料を製造する方法。
【請求項10】
前記XBaCuは溶融状態又は液体であり、且つ/又は前記方法は、ステップ(a)の前に前記XBaCuを概ね溶融するステップを含む、先行する請求項
のいずれか一項に記載のドープされたX−Ba−Cu−O材料を製造する方法。
【請求項11】
前記ステップ(b)は単結晶化を含む、先行する請求項のいずれか一項に記載のドープされたX−Ba−Cu−O材料を製造する方法。
【請求項12】
前記ステップ(b)は溶融したXBaCu内にあるXBaCuの混合物として結晶化することを含む、請求項11に記載のドープされたX−Ba−Cu−O材料を製造する方法。
【請求項13】
前記ステップ(b)は、XBaCu及びXBaCuの混合物を容器に配設することと、前記混合物を溶融することと、前記容器に種又は鍵を配設することと、その後、前記種若しくは鍵の温度、又はその付近の温度を操作して、前記溶融した混合物の結晶化を誘発することとを含む、請求項11又は12に記載のドープされたX−Ba−Cu−O材料を製造する方法。
【請求項14】
前記XBaCu及びXBaCuは固体の形で前記容器に加えられ、前記混合物は溶融される、請求項13に記載のドープされたX−Ba−Cu−O材料を製造する方法。
【請求項15】
前記XBaCuは前記容器内で溶融され、固体XBaCuが前記溶融した材料に加えられる、請求項13に記載のドープされたX−Ba−Cu−O材料を製造する方法。
【請求項16】
前記種又は鍵は前記溶融した混合物に加えられるか、又は前記混合物を溶融する前に加えられる、請求項13に記載のドープされたX−Ba−Cu−O材料を製造する方法。
【請求項17】
前記種又は鍵は好適には、前記XBaCuに対して適合した結晶構造及び化学構造の結晶である、請求項16に記載のドープされたX−Ba−Cu−O材料を製造する方法。
【請求項18】
前記種結晶は、結晶化される前記XBaCu材料と同じXBaCu材料であるか、又は前記XBaCuとは異なるX原子を有するXBaCu材料である、請求項16又は17に記載のドープされたX−Ba−Cu−O材料を製造する方法。
【請求項19】
結果として生成されたドープされたX−Ba−Cu−O結晶は400℃〜700℃でアニールされる、先行する請求項のいずれか一項に記載のドープされたX−Ba−Cu−O材料を製造する方法。
【請求項20】
をステップ(a)において生成された前記混合物と混合することをさらに含む、先行する請求項のいずれか一項に記載のドープされたX−Ba−Cu−O材料を製造する方法。
【請求項21】
Ptをステップ(a)において生成された前記混合物に加えることをさらに含む、先行する請求項のいずれか一項に記載のドープされたX−Ba−Cu−O材料を製造する方法。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか一項に記載の方法によって製造されるドープされた材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−527350(P2007−527350A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516382(P2006−516382)
【出願日】平成16年6月7日(2004.6.7)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002417
【国際公開番号】WO2004/111317
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(505456159)
【氏名又は名称原語表記】TARRANT,Colin David
【出願人】(505456160)
【氏名又は名称原語表記】SCHNEIDER,Kelvin Robert
【Fターム(参考)】