説明

ナノインプリント用硬化性組成物、硬化物およびその製造方法

【課題】パターン転写精度、モールドとの剥離性、得られる硬化膜の表面強度および得られる硬化膜の耐熱性(透明性)に優れたナノインプリント用硬化性組成物を提供する。
【解決手段】重合性官能基構造と直鎖状ポリシロキサン構造とを有する化合物(A)と、(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B)と、光ラジカル発生剤(C)とを含む硬化性組成物であって、前記(メタ)アクリル酸エステルモノマーの前記硬化性組成物中の含有量が60質量%以上であり、かつ前記硬化性組成物中に含まれる前記(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種が多官能(メタ)アクリル酸エステルモノマーであり、該多官能(メタ)アクリル酸エステルモノマーの含有量が前記硬化組成物中の15質量%以上であることを特徴とするナノインプリント用硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノインプリント用硬化性組成物、これを用いた硬化物およびその製造方法、ならびに、該硬化物を用いた液晶表示装置用部材に関する。より詳しくは、液晶ディスプレイの薄膜トランジタ、液晶カラーフィルタの保護膜、スペーサー、その他の液晶表示装置用部材の微細加工用途等のいわゆる永久膜の作製等に好適な、ナノインプリント用硬化性組成物、これを用いた硬化物およびその製造方法、ならびに、該硬化物を用いた液晶表示装置用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノインプリント法には、被加工材料として熱可塑性樹脂を用いる熱ナノインプリント法(例えば、非特許文献1参照)と、光硬化性組成物を用いる光ナノインプリント(例えば、非特許文献2参照)との2通りの技術が提案されている。熱ナノインプリント法の場合、ガラス転移温度以上に加熱した高分子樹脂にモールドをプレスし、冷却後にモールドを離型することで微細構造を基板上の樹脂に転写するものである。この方法は、多様な樹脂材料やガラス材料にも応用可能であるため、様々な方面への応用が期待されている。例えば、下記特許文献1および2には、熱可塑性樹脂を用いて、ナノパターンを安価に形成する熱ナノインプリントの方法が開示されている。
【0003】
一方、透明モールドや透明基材を通して光を照射し、光硬化性組成物を光硬化させる光ナノインプリント法では、モールドのプレス時にパターンを転写する材料を加熱する必要がなく、室温でのインプリントが可能になる。最近では、この両者の長所を組み合わせたナノキャスティング法や3次元積層構造を作製するリバーサルインプリント方法などの新しい展開も報告されている。
また、光ナノインプリントに適用される光硬化性樹脂は、反応機構の違いからラジカル重合タイプとイオン重合タイプとに大別され、さらに、これらのハイブリッドタイプが加えられる。いずれのタイプの硬化性組成物もナノインプリント用途に用いることが可能であるが、材料の選択範囲が広いことから、一般にラジカル重合型の硬化性組成物が多く用いられている(例えば、非特許文献3参照)。ラジカル重合型の硬化性組成物としては、ラジカル重合可能なビニル基や(メタ)アクリル基を有する単量体(モノマー)またはオリゴマーと、光重合開始剤とを含んだ組成物が一般的に用いられる。ラジカル重合性の硬化性組成物は、光を照射すると、光重合開始剤により発生したラジカルがビニル基を攻撃して連鎖重合が進み、ポリマーを形成する。また、2官能以上の多官能基モノマーやオリゴマーを用いた場合には、架橋構造体を得ることができる。
【0004】
このようなナノインプリント法においては、以下のような応用技術が提案されている。第一の技術としては、高精度な位置合わせと高集積化とにより、従来のリソグラフィに代わって高密度半導体集積回路の作製や、液晶ディスプレイのトランジスタへの作製等に適用しようとするものである。第二の技術としては、成型した形状(パターン)そのものが機能を持ち、様々なナノテクノロジーの要素部品、あるいは構造部材として応用できる場合であり、その例としては、各種のマイクロ・ナノ光学要素や高密度の記録媒体、光学フィルム、フラットパネルディスプレイにおける構造部材などが挙げられる。なお、さらにその他の技術としては、マイクロ構造とナノ構造との同時一体成型や、簡単な層間位置合わせにより積層構造を構築し、μ−TAS(Micro - Total Analysis System)やバイオチップの作製に応用しようとするものもある。前述の技術を含め、これらの応用に関するナノインプリント法の実用化への取り組みが近年活発化している。
【0005】
まず、前記第一の技術における高密度半導体集積回路作製への応用例を説明する。近年、半導体集積回路は微細化、集積化が進んでおり、その微細加工を実現するためのパターン転写技術としてフォトリソグラフィ装置の高精度化が進められてきた。しかし、さらなる微細化要求に対して、微細パターン解像性、装置コスト、スループットの3つを満たすのが困難となってきている。これに対し、微細なパターン形成を低コストで行うための技術として、ナノインプリントリソグラフィ技術(ナノインプリント法)を用いることが提案された。例えば、下記特許文献1には、シリコンウエハをスタンパとして用い、25nm以下の微細構造をパターン転写によって形成するナノインプリント技術が開示されている。この流れに伴って半導体集積回路の作製にナノインプリントリソグラフィを適用するため、モールドと樹脂との剥離性、パターン転写精度などをはじめとした性質の検討が活発化し始めている。
【0006】
一方、前記第二の技術における液晶ディスプレイ(LCD)やプラズマディスプレイ(PDP)などのフラットデイスプレイへのナノインプリント法の応用例について説明する。LCD基板やPDP基板の大型化や高精細化の動向に伴って、薄膜トランジスタ(TFT)や電極板の製造時に使用する従来のフォトリソグラフィ法に代わる安価なリソグラフィとしてナノインプリントリソグラフィが、近年注目されており、従来のフォトリソグラフィ法で用いられるエッチングフォトレジストに代わる光硬化性レジストの開発が必要になってきている。また、LCDなどの構造部材として用いられる透明保護膜材料や、液晶ディスプレイにおけるセルギャップを規定するスペーサーなどに対しても、ナノインプリント法の応用が検討され始めている。このような構造部材用のレジストは、上述のエッチングレジストとは異なり、最終的にフラットディスプレイパネル等のディスプレイ内に残るため、“永久レジスト”、あるいは“永久膜”と称されることがある。
【0007】
従来のフォトリソグラフィ技術を適用した永久膜としては、例えば、液晶パネルのTFT基板上に設けられる保護膜や、R,G、B層間の段差を低減しITO膜のスパッタ製膜時の高温処理に対する耐性を付与するためにカラーフィルタ上に設けられる保護膜等が挙げられる。これらの保護膜(永久膜)の形成においては、塗布膜の均一性、200℃を超える加熱処理後の高い光透過性、耐擦傷性等の種々の特性が要求されているため、これらの特性を満たすナノインプリント用硬化性組成物の開発が求められている。また、前記液晶ディスプレイに用いられるスペーサーは、一般には、カラーフィルタ形成後または前記カラーフィルタ用保護膜形成後に、カラーフィルタ基板上に光硬化性組成物を用いてフォオトリソグラフィによって10μm〜20μm程度の大きさのパターンを形成し、さらにポストベイクにより加熱硬化して形成される。このような前記液晶ディスプレイに用いられるスペーサーには、硬度、パターン精度等の性能が要求されているため、これらの特性を満たすナノインプリント用硬化性組成物の開発が求められている。
【0008】
さらに、ナノインプリント法においては、パターンが形成されたモールド表面凹部のキャビティ内におけるナノインプリント用硬化性組成物の流動性を高める必要がある。また、モールドとレジストとの間の剥離性をよくしつつ、レジストと基材(基板、支持体)との間の密着性をよくする必要がある。しかし、ナノインプリント用硬化性組成物の、キャビティ内における流動性、モールドとの剥離性、基材との密着性の全てを同時に満足させるのは困難であった。
【0009】
以上のように、ナノインプリントリソグラフィに用いられる材料の要求特性は適用する用途によって異なる場合が多い。しかし、ナノインプリント用組成物に関し、粘度に関する要望の記載はあるものの、各用途に適合させるための材料の設計指針についての報告例は、これまでになかった。
【0010】
以上のように、永久膜としての主要技術課題としては、パターン精度、剥離性、200℃を超える加熱処理後の透明性、高い耐擦傷性など、多くの課題が挙げられる。ナノインプリント用硬化性組成物を永久膜として適用した場合においても、従来のアクリル樹脂などを用いたレジストと同様に、(1)パターン転写精度、(2)加熱処理後の透明性、(3)耐擦傷性(表面硬度)の付与が重要である。
【0011】
同時に、光ナノインプリント用硬化性組成物特有の課題としては、前記(1)〜(3)の点に加えて、(4)モールドの凹部へのレジストの流動性を確保し、無溶剤もしくは少量の溶剤使用下での扱いやすさを改善するための低粘度化、および(5)硬化後のモールド剥離性を考慮する必要がある。このような上記(1)〜(5)の課題を同時に克服するという課題に対し、様々な組成物が提案されているが、すべてを同時に満たす組成物は未だ開示されていない。
【0012】
一方、主としてモールドからの離型性を付与する目的で、高分子ケイ素化合物を含む光硬化性樹脂を提供する組成物を用いることが提案されている。
【0013】
例えば、エッチング耐性、剥離性および転写性を改善することを目的として、光反応性高分子ケイ素化合物を含む光ナノインプリント用硬化性組成物を用いている例が報告されている(特許文献3)。しかしながら、加熱処理後の透明性、耐擦傷性(表面硬度)および低粘度化に関しては記載が無い。
【0014】
また、剥離性および転写性を改善することを目的として、光反応性シリコーン含有化合物と光反応性ウレタン系モノマーを含むモールド用樹脂組成物を用いている例が報告されている(特許文献4)。しかしながら、このモールド用組成物をナノインプリント用硬化性組成物に応用することは示唆も開示もされていない。さらに、加熱処理後の透明性、耐擦傷性(表面硬度)および低粘度化に関しては記載が無い。
【0015】
また、離型制(剥離性)を改善することを目的として重合性官能基を有さないポリエーテル変性シリコーン化合物等(ポリジメチルシロキサン化合物)を用いている例が報告されている(特許文献5)。しかしながら、同文献では離型性に関する記述はあるものの、転写性、加熱処理後の透明性、耐擦傷性(表面硬度)および低粘度化に関しては記載が無い。
【0016】
また、エッチング耐性を高めることを目的として、1官能アクリルモノマーと光反応性基を有するジメチルシロキサン構造を有する1官能モノマーとを含む光ナノインプリント用硬化性組成物を用いる例が報告されている(非特許文献4)。同文献では、この組成物をシリコーン基板上に付与し、表面処理されたモールドを用いることで、モールド後のパターンの欠陥が低減されることが開示されている。しかしながら、同文献には離型性に関する記述はあるものの、転写性、加熱処理後の透明性、耐擦傷性(表面硬度)および低粘度化に関しては記載が無い。特に、同文献で開示されている組成物はケイ素含有量が多く、通常の(メタ)アクリレート主成分の組成物とは大きく異なり、特に永久膜として用いる際に必要な耐擦傷性を十分に得ることができない。また、ポリシロキサン構造を有するモノマーを(メタ)アクリレート主成分のナノインプリント用硬化性組成物に添加する際に問題となる相溶性や得られる硬化膜の面状不良の解決方法に関しては全く触れられていない。
【特許文献1】米国特許第5,772,905号公報
【特許文献2】米国特許第5,956,216号公報
【特許文献3】特開2007−72374号公報
【特許文献4】特開2006−523728号公報
【特許文献5】特開2005―84561号公報
【非特許文献1】S.Chou et al.:Appl.Phys.Lett.Vol.67,3114(1995)
【非特許文献2】M.Colbun et al,:Proc.SPIE,Vol. 3676,379 (1999)
【非特許文献3】F.Xu et al.:SPIE Microlithography Conference,5374,232(2004)
【非特許文献4】T.Beiley et al.:J.Vac.Sci.Technol.B18(6),3572(2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、本発明者らが上記文献記載の組成物を検討した結果、いずれの文献に記載の組成物も上記(1)〜(5)の物性を同時に満足することはなかった。特に加熱処理後の透明性および耐擦傷性(表面硬度)が著しく低く、到底満足がいくものではなかった。
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の重合性官能基構造と直鎖状ポリシロキサン構造とを有する化合物と、特定の組成の(メタ)アクリル酸エステルとを含む組成物を用いることにより、モールドとの離型性を確保でき、さらに硬化膜の耐擦傷性を向上させることができるという知見を得た。すなわち、上記(1)〜(5)の物性を同時に高いレベルで満足できるナノインプリント用硬化性組成物を得られることを見出した。
【0018】
本発明の第一の目的は、パターン転写精度、モールドとの剥離性、得られる硬化膜の表面強度および得られる硬化膜の耐熱性(透明性)に優れたナノインプリント用硬化性組成物を提供することである。また本発明の第二の目的は、該ナノインプリント用硬化性組成物を用いた硬化物およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題のもと、本願発明者らが鋭意検討を行った結果、下記手段により上記課題を解決しうることを見出した。
【0020】
[1] 重合性官能基構造と直鎖状ポリシロキサン構造とを有する化合物(A)と、(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B)と、光ラジカル発生剤(C)と、を含む硬化性組成物であって、前記(メタ)アクリル酸エステルモノマーの前記硬化性組成物中の含有量が60質量%以上であり、かつ前記硬化性組成物中に含まれる前記(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種が多官能(メタ)アクリル酸エステルモノマーであり、該多官能(メタ)アクリル酸エステルモノマーの含有量が前記硬化組成物中の15質量%以上であることを特徴とするナノインプリント用硬化性組成物。
[2] 前記重合性官能基構造が、炭素−炭素不飽和結合構造であることを特徴とする[1]に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
[3] 前記炭素−炭素不飽和結合構造が、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、プロパルギル基、シクロペンテニル基およびシクロヘキセニル基からなる群の少なくとも1つの官能基を含有する構造であることを特徴とする[1]または[2]に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
[4] 前記化合物(A)を0.01〜18質量%含むことを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
[5] 前記直鎖状ポリシロキサン構造がジメチルシロキサン構造であり、該ジメチルシロキサン構造の繰り返し数が5〜100であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
[6] さらにノニオン系界面活性剤を含むことを特徴とする[1]〜[5]のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
[7] さらに酸化防止剤を含むことを特徴とする[1]〜[6]のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
[8] 前記化合物(A)が、下記一般式(1)または一般式(2)で表されることを特徴とする[1]〜[7]に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【化1】

(一般式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは2価の基を表し、Zは(メタ)アクリロイル以外の1価の基を表し、nは5〜100である。)
【化2】

(一般式(2)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、XおよびYはそれぞれ独立に2価の基を表し、nは5〜100である。)
[9] 前記化合物(A)がポリ(メタ)アクリレートであり、該ポリ(メタ)アクリレートが少なくとも1種の下記一般式(1)で表されるモノマー由来の構成単位を含むことを特徴とする[1]〜[7]のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【化3】

[10] 前記ポリ(メタ)アクリレートが、炭素−炭素不飽和結合構造を有することを特徴とする[9]に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
[11] 前記炭素−炭素不飽和結合構造が、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、プロパルギル基、シクロペンテニル基およびシクロヘキセニル基からなる群の少なくとも1つの官能基を含有する構造であることを特徴とする[10]に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
[12] 前記ポリ(メタ)アクリレートが、さらにフッ素原子を含む基を有することを特徴とする[9]〜[11]のいずれか一項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
[13] 前記ポリ(メタ)アクリレートに含まれるモノマー構成単位の重量組成比において、前記一般式(1)で表されるモノマー由来の構成単位が70重量%以下であることを特徴とする[9]〜[12]のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
[14] 前記硬化性組成物の粘度が3〜18mPa・sであることを特徴とする[1]〜[13]のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
[15] [1]〜[14]のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物を硬化させたことを特徴とする硬化物。
[16] [1]〜[14]のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物を基材上に塗布してパターン形成層を形成する工程と、
前記パターン形成層表面にモールドを押圧する工程と、
前記パターン形成層に光を照射する工程と、
を含むことを特徴とする硬化物の製造方法。
[17] さらに、光が照射された前記パターン形成層を加熱する工程を含むことを特徴とする[16]に記載の硬化物の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明のナノインプリント用硬化性組成物は、パターン転写精度およびモールドとの剥離性に優れ、さらに粘度も低い。本発明の硬化物は表面強度および耐熱性(透明性)に優れる。また、本発明の硬化物の製造方法によれば、上記性質を有する硬化物を生産性よく簡便に製造することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0023】
また、本明細書中において、“(メタ)アクリレート”は“アクリレート”および“メタクリレート”を表し、“(メタ)アクリル”は“アクリル”および“メタクリル”を表し、“(メタ)アクリロイル”は“アクリロイル”および“メタクリロイル”を表す。さらに、本明細書中において、“単量体”と“モノマー”は同義である。本発明における単量体は、オリゴマーおよびポリマーと区別され、重量平均分子量が1,000以下の化合物をいう。本明細書中において、“官能基”は重合に関与する基をいう。
また、本発明でいうナノインプリントとは、およそ数十nmから数十μmのサイズのパターン転写をいい、ナノオーダーのものに限定されるものではない。
【0024】
[ナノインプリント用硬化性組成物]
本発明のナノインプリント用硬化性組成物(以下、単に「本発明の組成物」ということがある)、は、重合性官能基構造と直鎖状ポリシロキサン構造とを有する化合物(A)と、(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B)と、光ラジカル重合開始剤(C)とを含有し、前記硬化性組成物が前記(メタ)アクリル酸エステルモノマーを60質量%以上含み、前記硬化性組成物がエチレン性不飽和結合含有基を少なくとも2つ以上含む多官能(メタ)アクリル酸エステルを15質量%以上含む。
本発明の組成物は、光ラジカル重合性(メタ)アクリル酸エステルと光ラジカル重合開始剤とに加えて、重合性官能基構造と直鎖状ポリシロキサン構造とを有する化合物を含有し、また、光ラジカル重合性(メタ)アクリル酸エステルの含有量と、多官能光ラジカル重合性(メタ)アクリル酸エステルの含有量を特定の範囲に規定している。これにより、本発明の組成物は、光照射によって組成物を硬化させると、表面硬度および耐熱性(加熱処理後の透明性)等をより高めることができる。いかなる理論に拘泥するものでもないが、このような特徴を有することにより、特にケイ素含有化合物である前記化合物(A)が本発明の組成物の(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B)と適度に架橋するため、硬化後の特性が顕著に優れると考えられる。
【0025】
このため、本発明のナノインプリント用硬化性組成物は、例えば、これまで展開が難しかった半導体集積回路や液晶表示装置用部材(特に、液晶ディスプレイの薄膜トランジタ、液晶カラーフィルタの保護膜、スペーサー、その他の液晶表示装置用部材の微細加工用途等)に好適に適用でき、その他の用途、例えば、プラズマディスプレイパネル用隔壁材、フラットスクリーン、マイクロ電気機械システム(MEMS)、センサ素子、光ディスク、高密度メモリーデイスク等の磁気記録媒体、回折格子ヤレリーフホログラム等の光学部品、ナノデバイス、光学デバイス、光学フィルムや偏光素子、有機トランジスタ、カラーフィルタ、オーバーコート層、柱材、液晶配向用リブ材、マイクロレンズアレイ、免疫分析チップ、DNA分離チップ、マイクロリアクター、ナノバイオデバイス、光導波路、光学フィルター、フォトニック液晶等の作製にも幅広く適用することができる。以下において、本発明の組成物を説明する。
【0026】
[化合物(A)]
本発明における化合物(A)は、重合性官能基構造と、直鎖状ポリシロキサン構造とを有することを特徴とする。以下、これらの構造とあわせて、化合物(A)を説明する。
【0027】
(重合性官能基構造)
本発明における重合性官能基構造としては、ラジカル、カチオンもしくは加熱により重合反応する結合を有する構造が好ましく、(メタ)アクリレートモノマーとの共重合性の観点から、炭素−炭素不飽和結合構造であることがより好ましい。
【0028】
前記炭素−炭素不飽和結合構造としては、(メタ)アクリロイル基含有構造もしくは(メタ)アクリロイル基以外の炭素−炭素不飽和結合が挙げられる。
【0029】
前記(メタ)アクリロイル基以外の炭素−炭素不飽和結合としては、ラジカル重合性基、カチオン重合性基または加熱により反応する結合が好ましい。このような炭素-炭素不飽和結合としては、(メタ)アクリレートモノマーとの共重合性の観点から、ビニル基、アリル基、プロパルギル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基が好ましく、スチリル基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基、アリルエーテル基、アリルエステル基、プロパルギルエーテル基、プロパルギルエステル基、シクロペンテニル基、ジシクロペンテニル基、シクロヘキセニル基がより好ましく、アリルエステル基、プロパルギルエステル基、ジシクロペンテニル基が特に好ましい。
【0030】
(直鎖状ポリシロキサン構造)
本発明における直鎖状ポリシロキサン構造としては、特に制限はなく公知の直鎖状ポリシロキサン構造を挙げることができ、その中でもポリジメチルシロキサン構造、ポリジフェニルシロキサン構造、ポリメチルフェニルシロキサン構造、ポリジメチルシロキサン構造が、原材料入手性の観点からより好ましい。
【0031】
前記ポリシロキサン構造の繰り返し単位数は、5〜100が好ましく、特に5〜80が好ましく、さらに10〜70が好ましい。繰り返し単位数が5以上になることにより、耐擦傷性付与が容易になり、100以下にすることにより前記(メタ)アクリル酸エステルモノマーとの相溶性確保が容易になり好ましい。
なお、本発明における繰り返し単位数は、ポリシロキサン化合物の平均分子量を元に、計算した値である。また、ポリシロキサン化合物は分子量分布のある化合物の混合物である為、繰り返し単位を算出する為に用いる分子量は、平均分子量を用いた。
【0032】
化合物(A)としては、下記一般式(1)または一般式(2)で表される構造であることがより好ましい。
【0033】
【化4】

(一般式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を表し、Xは2価の基を表し、Zは(メタ)アクリロイル以外の1価の基を表し、nは5〜100である。)
【0034】
一般式(1)中、前記R1は水素原子またはメチル基を表し、メチル基であることが好ましい。
前記Xは2価の基を表す。前記Xとしては特に制限はなく、例えば、単結合、酸素原子、アルキレン基、酸素原子を介してのアルキレン基、窒素原子を介してのアルキレン基などが挙げられ、これらの基はさらに置換基を有していてもよい。単結合、酸素原子、アルキレン基、酸素原子を介してのアルキレン基、窒素原子を介してのアルキレン基が好ましく、酸素原子、酸素原子を介してのアルキレン基、窒素原子を介してのアルキレン基がより好ましい。前記置換基としては特に制限はなく、公知の変性ポリシロキサン化合物が有する置換基を用いることができ、例えばグリシドール由来の反応残基、ポリエチレンオキサイド基を挙げることができる。
前記Zは(メタ)アクリロイル以外の1価の基を表し、特に制限はないが、水酸基、Si(CH33、などを挙げることができ、Si(CH33がより好ましい。
前記nは4〜100であり、4〜80が好ましく、10〜70がより好ましい。nが4以上になることにより、耐擦傷性付与が容易になり、nが100以下にすることにより前記(メタ)アクリル酸エステルモノマーとの相溶性確保が容易になり好ましい。
【0035】
一般式(1)で表される化合物(A)としては、ポリジメチルシロキサン片末端(メタ)アクリロイル変性化合物類を挙げることができる。具体的には、チッソ(株)製サイラプレーンシリーズ(サイラプレーンFM−0711、サイラプレーンFM−0721)、信越化学工業(株)製変性シリコーンオイルX−22−2475、および片末端水酸基変性ポリシロキサン(信越化学工業(株)製x−22−170BX、チッソ(株)製サイラプレーンFM−0411)の(メタ)アクリル酸縮合物および片末端エポキシ変性ポリシロキサン(信越化学工業(株)製X−22−173DX)の(メタ)アクリル酸付加物が挙げられる。なお、これらの具体例は本発明を限定するものではない。
【0036】
【化5】

(一般式(2)中、R1は水素原子またはメチル基を表し、XおよびYはそれぞれ独立に2価の基を表し、nは5〜100である。)
【0037】
一般式(2)中、前記R1は水素原子またはメチル基を表し、メチル基であることが好ましい。
前記XおよびYはそれぞれ独立に2価の基を表し、好ましい範囲は前記一般式(1)におけるXと同様である。
前記nは5〜100であり、好ましい範囲は一般式(1)におけるnと同様である。
【0038】
一般式(2)で表される化合物(A)としては、ポリジメチルシロキサン両末端(メタ)アクリロイル変性化合物を挙げることができる。具体的には、チッソ(株)製サイラプレーンシリーズ(サイラプレーンFM−7711、サイラプレーンFM−7721、サイラプレーンFM−7725)、信越化学工業(株)製変性シリコーンオイル(X−22−164シリーズ)、および両末端水酸基変性ポリシロキサン(信越化学工業(株)製X−22−160AS、KF−6001〜6003、チッソ株式会社製サイラプレーンFM−4411、FM−4421、FM−4425)の(メタ)アクリル酸縮合物、両末端エポキシ変性ポリシロキサン(信越化学工業(株)製X−22−163シリーズ、KF−105、X−22−169シリーズ)の(メタ)アクリル酸付加物、両末端アミノ変性ポリシロキサン(信越化学工業(株)X−22−161シリーズ、KF−8010、KF−8012、チッソ(株)製サイラプレーンFM−3311、FM−3321、FM−3325)の(メタ)アクリル酸縮合物が挙げられる。なお、これらの具体例は本発明を限定するものではない。
【0039】
前記化合物(A)中、前記重合性官能基構造は少なくとも1個化合物(A)中に含有されることが好ましく、耐擦傷性付与の観点から、2個以上含有されることがより好ましい。
【0040】
(化合物(A)の直鎖状ポリシロキサン構造以外の構造)
前記化合物(A)における前記直鎖ポリシロキサン構造部分以外の構造は、重合性官能基構造を有していれば、重合体構造になっていても単量体構造になっていてもよい。前記直鎖ポリシロキサン構造部分以外の構造が単量体構造である場合は前記一般式(1)または一般式(2)で表される構造であることが好ましい。一方、前記直鎖ポリシロキサン構造部分以外の構造が重合体構造である場合はポリ(メタ)アクリレート構造であることが好ましい。すなわち、化合物(A)がポリ(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0041】
(ポリ(メタ)アクリレートである化合物(A))
化合物(A)がポリ(メタ)アクリレートである場合、前記化合物(A)は、少なくとも直鎖状ポリシロキサン構造を有し、かつ、重合性官能基を少なくとも1種有する。また、前記化合物(A)がポリ(メタ)アクリレートである場合は単重合体であっても共重合体であってもよいが、共重合体である場合はブロック共重合体でもランダム共重合体でもよく、特に制限はない。
【0042】
前記重合性官能基としては、(メタ)アクリレートモノマーとの共重合性の観点から、炭素−炭素不飽和結合であることが好ましい。
前記炭素−炭素不飽和結合としては、(メタ)アクリロイルオキシ基含有構造もしくは(メタ)アクリロイルオキシ基以外の炭素−炭素不飽和結合が挙げられる。
【0043】
ポリ(メタ)アクリレート化合物にさらに(メタ)アクリロイルオキシ基を導入する方法としては、(メタ)アクリル酸2−(2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルオキシ)エチルエステルまたは、(メタ)アクリル酸2−(3−クロロプロピオニルオキシ)エチルエステルを共重合させ、ジアザビシクロウンデセン等の塩基により、脱ハロゲン化水素反応により高分子鎖中に(メタ)アクリロイルオキシ基を導入する手法や、共重合成分としてアルコール性水酸基もしくはエポキシ基を有するモノマーと共重合させ、水酸基に対して(メタ)アクリル酸クロライドを反応させるか、エポキシ基に対して(メタ)アクリル酸を付加させる手法が挙げられる。
【0044】
前記(メタ)アクリロイルオキシ基以外の炭素−炭素不飽和結合としては、ラジカル重合性結合、カチオン重合性結合または加熱により反応する結合が好ましい。このような(メタ)アクリロイルオキシ基以外の炭素-炭素不飽和結合としては、ビニル基、アリル基、プロパルギル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基が(メタ)アクリレートモノマーとの共重合性の観点から好ましく、スチリル基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基、アリルエーテル基、アリルエステル基、プロパルギルエーテル基、プロパルギルエステル基、シクロペンテニル基、ジシクロペンテニル基、シクロヘキセニル基がより好ましく、アリルエステル基、プロパルギルエステル基、ジシクロペンテニル基が特に好ましい。
【0045】
(メタ)アクリロイルオキシ基以外の炭素−炭素不飽和結合を導入する方法としては、共重合成分として、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸プロパルギル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルを用いて高分子鎖中に(メタ)アクリロイルオキシ基以外の炭素−炭素不飽和結合を導入する手法が挙げられる。
【0046】
前記ポリ(メタ)アクリレートである化合物(A)は、成分として少なくとも1種の前記一般式(1)で表されるモノマー由来の構成単位を含むことが、耐擦傷性付与の観点から好ましい。前記ポリ(メタ)アクリレートである化合物(A)に含まれるモノマー構成単位の重量組成比において、前記一般式(1)で表されるモノマー由来の構成単位が70重量%以下であることが好ましく、5〜50重量%であることがより好ましく、10〜30重量であることが特に好ましい。
【0047】
前記ポリ(メタ)アクリレートである化合物(A)は、前記直鎖状ポリシロキサン構造と前記重合性基含有部分以外の他の共重合成分を含んでいてもよい。
【0048】
その他の共重合成分としては、化合物(A)中のポリシロキサン構造部分と本発明の組成物成分との相溶性、特に(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B)との相溶性を向上させる観点から、(メタ)アクリル酸エステル類のモノマー由来の成分が好ましい。前記(メタ)アクリル酸エステル類のモノマー由来の成分を導入する際に用いられるモノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸2エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸エチルオキセタニルメチル、(メタ)アクリル酸トリアルコキシシリルプロピル等が挙げられる。
【0049】
また、その他の共重合成分として、化合物(A)の表面偏在化を促す観点から、含フッ素(メタ)アクリル酸エステル類モノマー由来の成分や含珪素(メタ)アクリル酸エステル類モノマー由来の成分が好ましい。前記含フッ素(メタ)アクリル酸エステル類由来の成分を導入する際に用いられるモノマーとしては、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。前記含珪素(メタ)アクリル酸エステル類モノマー由来の成分を導入する際に用いられるモノマーとしては、トリストリメチルシロキシシリルプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0050】
ポリ(メタ)アクリレートである化合物(A)の具体例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。なお、構成モノマーに付記されている数字は質量%比を表し、ジメチルシロキサン部位に付記されている数字は平均繰り返し単位を表す。Mwは一般的なGPC分析によるポリスチレン換算の分子量である。
【0051】
【化6】

【0052】
前記化合物(A)の本発明のナノインプリント用硬化性組成物に対する添加量としては、組成物全量中に0.01〜18質量%の割合で配合することが耐擦傷性付与および(メタ)アクリレートモノマーとの相溶性の観点から好ましい。また、0.01〜5質量%の範囲で添加することがさらに好ましい。前記化合物(A)の含有量が0.01〜5質量%の範囲内にあると、モールドとナノインプリント用硬化性組成物層との剥離性向上効果が向上し、さらに組成物の塗工時のはじきによる塗膜面の面荒れの問題が生じたり、製品において基材自身や近接する層、例えば、蒸着層の密着性を阻害したり、転写時における皮膜破壊等(膜強度が弱くなりすぎる)が生じるのを抑制することができる。
【0053】
前記化合物(A)は本発明の組成物中に一種類用いても、複数用いてもよい。
【0054】
[(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B)]
本発明のナノインプリント用硬化性組成物には(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B)が]含有される。本発明の組成物は、(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含有することで、光照射後に良好なパターン精度を得ることができる。本発明において、「(メタ)アクリル酸エステルモノマー」とは、少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有し、光照射によって重合反応を起こし高分子量体を形成することのできる単量体を意味する。
【0055】
本発明で用いられる(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、組成物の粘度調整や、硬化膜の機械特性を目的に適宜選択される。組成物の粘度調整の観点からは、低粘度の(メタ)アクリル酸エステルモノマーを使用することが好ましい。また、硬化物のパターン精度を向上させるためには組成物の粘度が、通常、18mPa・s以下であることが好ましく、その目的では、できうる限り低粘度の重合性単量体を用いることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルモノマーの粘度は、分子量、分子間相互作用等と関連があることから、(メタ)アクリル酸エステルモノマーの低粘度化は、低分子量、低分子間相互作用を考慮することで達成することができる。
【0056】
本発明で用いられる(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、組成物の粘度の調整の観点から、100mPa・s以下の粘度を有する化合物が好ましく、50mPa・s以下が更に好ましく、10mPa・s以下が特に好ましい。
本発明における(メタ)アクリル酸エステルモノマーの重量平均分子量は、組成物の粘度の調整の観点から、500以下が好ましく、100〜400がさらに好ましく、100〜300が特に好ましい。
【0057】
また、本発明の組成物に含まれる(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0058】
また、硬化膜の機械特性付与の観点からは、2官能以上の多官能単量体の使用が好ましい。このような多官能単量体は必然的に分子量が大きくなるため粘度が高く、組成物の高粘度化によりパターン精度が低下することもある。そこで、本発明に用いられる重合性単量体は、粘度の調整用の低粘度モノマーと硬化膜の機械特性付与の為の多官能モノマーとの組み合わせや、本発明における前記化合物(A)との組み合せを考慮して、総合的に選択される。
【0059】
本発明のナノインプリント用硬化性組成物において、全組成物中における(メタ)アクリル酸エステルモノマーの含有量は、硬化膜の機械特性付与の観点から、60質量%以上である。前記含有量は60〜99質量%が好ましく、80〜99質量%がさらに好ましい。但し、本発明における(メタ)アクリル酸エステルモノマーの含有量は、上述の通り、本発明の組成物中におけるラジカル重合性官能基を有する化合物の含有量を考慮して決定される。
【0060】
本発明における(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、アクリロイル基を1個有する1官能(メタ)アクリル酸エステルモノマーを挙げることができる。具体的には、2−アクリロイロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシ2−ヒドロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−アクリロイロキシプロピルフタレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリル酸ダイマー、ベンジル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性(以下「EO」という。)クレゾール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロヘンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン(以下「ECH」という)変性フェノキシアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、EO変性コハク酸(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリドデシル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、エチルオキセタニルメチルアクリレート、が例示される。
これらの中でも特に、ベンジルアクリレート、エチルオキセタニルメチルアクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレートが好ましく、エチルオキセタニルメチルアクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0061】
また、本発明における(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、少なくとも1つのアクリロイル基とエチレン性不飽和結合含有基とを合計2個以上有する多官能(メタ)アクリル酸エステルモノマーも好ましく用いることができる。まず、2官能(メタ)アクリル酸エステルモノマーの例としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル化イソシアヌレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ECH変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコールアクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレンオキシド(以後「PO」という。)変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコール、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリエステル(ジ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ECH変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(ジ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、4−アリルオキシカルボニルフェニルアクリレート、2,3−ビスアクリロイルオキシプロピルアリルエーテルが例示される。
【0062】
これらの中で特に、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート等が本発明に好適に用いられ、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、4−アリルオキシカルボニルフェニルアクリレート、2,3−ビスアクリロイルオキシプロピルアリルエーテルが特に好ましい。
【0063】
3官能以上の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの例としては、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中で特に、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が本発明に好適に用いられる。
【0064】
また、モールドとの剥離性や塗布性を向上させる目的で、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチル−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフッソ原子を有する化合物も本発明における(メタ)アクリル酸エステルモノマーとして使用または併用することができる。
【0065】
また、硬化物に柔軟性を持たせる目的で、本発明の趣旨に反しない限り、すなわち硬化物の表面硬度を過度に柔軟にしない範囲において、ウレタンアクリレートを用いても良い。その様な目的で用いる場合、組成物の粘度上昇抑制の観点から、組成物中の質量比として10質量%以下が好ましく、更に5質量%以下が好ましい。
この様なウレタンアクリレートとしては、新中村化学工業社製のNKオリゴシリーズのU-2PPA、U-4HA、U-6HA、U-15HA、UA-32P、U-108A、U-4100、UA-5201を用いることができる。
本発明の組成物には、ウレタンアクリレート以外の(メタ)アクリル酸エステルモノマーを用いることが表面硬度を向上させる観点から好ましい。
【0066】
1官能(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、通常、反応性希釈剤として用いられ、本発明の組成物の粘度を下げるのに有効である。前記1官能(メタ)アクリル酸エステルモノマーは本発明の組成物に対して、組成物粘度上昇抑制および基板との密着性向上の観点から、好ましくは0〜80質量%、より好ましくは0〜60質量%の範囲で添加される。
【0067】
本発明において少なくとも1種のアクリロイル基を有し、かつエチレン性不飽和結合含有基を合計2個以上有する多官能(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、本発明の組成物に対して、15質量%添加される。本発明の硬化性組成物に対する添加量は、好ましくは15〜99質量%、より好ましくは30〜99質量%、特に好ましくは50〜99質量%の範囲である。1官能および2官能重合性不飽和単量体の割合は、全重合性不飽和単量体の、好ましくは15〜99質量%、より好ましくは50〜99質量%、特に好ましくは、60〜99質量%の範囲で添加される。エチレン性不飽和結合含有基を3個以上有する多官能重合性不飽和単量体の割合は、本発明の組成物に対して、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、特に好ましくは60質量%以下の範囲で添加される。重合性不飽和結合含有基を3個以上有する重合性不飽和単量体の割合を80質量%以下とすることにより、組成物の粘度を下げられるため好ましい。
【0068】
次に、本発明における化合物(A)と(メタ)アクリル酸エステルモノマーとの好ましいブレンド形態について説明する。
本発明の組成物中、前記化合物(A)が0.01〜18質量%であり、かつ、前記(メタ)アクリル酸エステルモノマーが60〜99質量%であることが好ましい。また、前記化合物(A)が0.01〜5質量%であり、かつ、前記(メタ)アクリル酸エステルモノマーが80〜99質量%であることがより好ましい。このような範囲で化合物(A)と(メタ)アクリル酸エステルモノマーとを混合することで、本発明の組成物の粘度調整が容易となり、且つ硬化膜の耐擦傷性を付与しつつ、機械特性(硬化膜強度)を向上させることが可能となるため好ましい。
【0069】
(光ラジカル重合開始剤)
本発明のナノインプリント用硬化性組成物には、光ラジカル重合開始剤が含まれる。本発明の組成物は、光照射によりラジカル重合反応を開始させる光ラジカル重合開始剤を含むことで、光照射後のパターン精度を良好なものとすることができる。光ラジカル重合開始剤本発明に用いられる光ラジカル重合開始剤の含有量としては、全組成物中、例えば、0.1〜15質量%が好ましく、さらに好ましくは0.2〜12質量%であり、特に好ましくは、0.3〜10質量%である。2種類以上の光重合開始剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
前記光ラジカル重合開始剤の割合が0.1質量%以上であると、感度(速硬化性)、解像性、ラインエッジラフネス性、塗膜強度が向上する傾向にあり好ましい。一方、光ラジカル重合開始剤の割合を15質量%以下とすることにより、光透過性、着色性、取り扱い性などが向上する傾向にあり、好ましい。これまで、染料および/または顔料を含むインクジェット用組成物や液晶デイスプレイカラーフィルタ用組成物においては、好ましい光重合開始剤および/または光酸発生剤の添加量が種々検討されてきたが、ナノインプリント用等の光ナノインプリントリソグラフィ用硬化性組成物についての好ましい光重合開始剤および/または光酸発生剤の添加量については報告されていない。すなわち、染料および/または顔料を含む系では、これらがラジカルトラップ剤として働くことがあり、光重合性、感度に影響を及ぼす。その点を考慮して、これらの用途では、光重合開始剤の添加量が最適化される。一方で、本発明の組成物では、染料および/または顔料は必須成分でなく、光重合開始剤の最適範囲がインクジェット用組成物や液晶デイスプレイカラーフィルタ用組成物等の分野のものとは異なる場合がある。
【0070】
本発明で用いる光ラジカル重合開始剤は、使用する光源の波長に対して活性を有するものが配合され、適切な活性種を発生させるものを用いる。
【0071】
本発明で使用される光ラジカル重合開始剤としては、例えば、市販されている開始剤を用いることができる。これらの例としてはCiba社から入手可能なIrgacure(登録商標)2959:(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、Irgacure(登録商標)184:(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、Irgacure(登録商標)50:(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン)、Irgacure(登録商標)651:(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、Irgacure(登録商標)369:(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1)、Irgacure(登録商標)907:(2−メチル−1[4−メチルチオフェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、Irgacure(登録商標)819:(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、Irgacure(登録商標)1800:(ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド,1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)、Irgacure(登録商標)1800:(ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド,2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン−1−オン)、Irgacure(登録商標)OXE01:(1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−2−(O−ベンゾイルオキシム)、Darocur(登録商標)1173:(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン−1−オン)、Darocur(登録商標)1116、1398、1174および1020、CGI242:(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、BASF社から入手可能なLucirin TPO:(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド)、Lucirin TPO−L:(2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキサイド)、日本シイベルヘグナー社から入手可能なESACURE 1001M:(1−[4−ベンゾイルフェニルスルファニル]フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルホニル)プロパン−1−オン、N−1414旭電化社から入手可能なアデカオプトマー(登録商標)N−1414:(カルバゾール・フェノン系)、アデカオプトマー(登録商標)N−1717:(アクリジン系)、アデカオプトマー(登録商標)N−1606:(トリアジン系)、三和ケミカル製のTFE−トリアジン:(2−[2−(フラン−2−イル)ビニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン)、三和ケミカル製のTME−トリアジン:(2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)ビニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン)、三和ケミカル製のMP−トリアジン:(2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン)、ミドリ化学製TAZ−113:(2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン)、ミドリ化学製TAZ−108(2−(3,4−ジメトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン)、ベンゾフェノン、4,4‘−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、メチル−2−ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、4−フェニルベンゾフェノン、エチルミヒラーズケトン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−メチルチオキサントン、チオキサントンアンモニウム塩、ベンゾイン、4,4’−ジメトキシベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1,1,1−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノンおよびジベンゾスベロン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイル ビフェニル、4−ベンゾイルジフェニルエーテル、1,4−ベンゾイルベンゼン、ベンジル、10−ブチル−2−クロロアクリドン、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタン)、2−エチルアントラキノン、2,2−ビス(2−クロロフェニル)4,5,4‘,5’−テトラキス(3,4,5−トリメトキシフェニル)1,2‘−ビイミダゾール、2,2−ビス(o−クロロフェニル)4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、トリス(4−ジメチルアミノフェニル)メタン、エチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、ブトキシエチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、等が挙げられる。
【0072】
さらに本発明のナノインプリント用硬化性組成物には、光ラジカル重合開始剤の他に、光増感剤を加えて、UV領域の波長を調整することもできる。本発明において用いることができる典型的な増感剤としては、クリベロ〔J.V.Crivello,Adv.in Polymer Sci,62,1(1984)〕に開示しているものが挙げられ、具体的には、ピレン、ペリレン、アクリジンオレンジ、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、ベンゾフラビン、N−ビニルカルバゾール、9,10−ジブトキシアントラセン、アントラキノン、クマリン、ケトクマリン、フェナントレン、カンファキノン、フェノチアジン誘導体などを挙げることができる。
【0073】
(界面活性剤)
本発明のナノインプリント用硬化性組成物は界面活性剤を含んでいてもよい。本発明に用いられる界面活性剤は、全組成物中、例えば、0.001〜5質量%含有し、好ましくは0.002〜4質量%であり、さらに好ましくは、0.005〜3質量%である。2種類以上の界面活性剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。界面活性剤が組成物中0.001〜5質量%の範囲にあると、塗布の均一性の効果が良好であり、界面活性剤の過多によるモールド転写特性の悪化を招きにくい。
前記界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤およびフッ素・シリコーン系界面活性剤の少なくとも1種を含むことが好ましく、フッ素系界面活性剤とシリコーン系界面活性剤との両方または、フッ素・シリコーン系界面活性剤を含むことがより好ましく、フッ素・シリコーン系界面活性剤を含むことが最も好ましい。尚、前記フッ素系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤としては、非イオン性の界面活性剤が好ましい。
ここで、“フッ素・シリコーン系界面活性剤”とは、フッ素系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤の両方の要件を併せ持つものをいう。
このような界面活性剤を用いることによって、半導体素子製造用のシリコンウエハや、液晶素子製造用のガラス角基板、クロム膜、モリブデン膜、モリブデン合金膜、タンタル膜、タンタル合金膜、窒化珪素膜、アモルファスシリコーン膜、酸化錫をドープした酸化インジウム(ITO)膜や酸化錫膜などの、各種の膜が形成される基板上に本発明のナノインプリント硬化性組成物を塗布したときに起こるストリエーションや、鱗状の模様(レジスト膜の乾燥むら)などの塗布不良の問題を解決するが可能となる。また、モールド凹部のキャビティ内への本発明の組成物の流動性の向上、モールドとレジストとの間の剥離性の向上、レジストと基板間との密着性の向上、組成物の粘度を下げる等が可能になる。特に、本発明のナノインプリント組成物は、前記界面活性剤を添加することにより、塗布均一性を大幅に改良でき、スピンコーターやスリットスキャンコーターを用いた塗布において、基板サイズに依らず良好な塗布適性が得られる。
【0074】
本発明で用いることのできる、非イオン性のフッ素系界面活性剤の例としては、商品名 フロラード FC−430、FC−431(住友スリーエム(株)製)、商品名サーフロン S−382(旭硝子(株)製)、EFTOP EF−122A、122B、122C、EF−121、EF−126、EF−127、MF−100((株)トーケムプロダクツ製)、商品名 PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520(いずれもOMNOVA Solutions, Inc.)、商品名フタージェントFT250、FT251、DFX18 (いずれも(株)ネオス製)、商品名ユニダインDS−401、DS−403、DS−451 (いずれもダイキン工業(株)製)、商品名メガフアック171、172、173、178K、178A、(いずれも大日本インキ化学工業(株)製)が挙げられる。
また、非イオン性の前記シリコーン系界面活性剤の例としては、商品名SI−10シリーズ(竹本油脂(株)製)、メガファックペインタッド31(大日本インキ化学工業(株)製)、KP−341(信越化学工業(株)製)が挙げられる。
また、前記フッ素・シリコーン系界面活性剤の例としては、商品名 X−70−090、X−70−091、X−70−092、X−70−093、(いずれも、信越化学工業(株)製)、商品名メガフアックR−08、XRB−4(いずれも、大日本インキ化学工業(株)製)が挙げられる。
【0075】
本発明の組成物に用いられる界面活性剤としては、スリットコート適性付与の観点から、ノニオン系(非イオン性)の界面活性剤が好ましい。
【0076】
(酸化防止剤)
さらに、本発明のナノインプリント用硬化性組成物は、酸化防止剤を含むことが好ましい。本発明に用いられる酸化防止剤の含有量は、全組成物中、例えば、0.01〜10質量%であり、好ましくは0.2〜5質量%である。2種類以上の酸化防止剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
前記酸化防止剤は、熱や光照射による退色およびオゾン、活性酸素、NOx、SOx(Xは整数)などの各種の酸化性ガスによる退色を抑制するものである。特に本発明では、酸化防止剤を添加することにより、硬化膜の着色を防止や、分解による膜厚減少を低減できるという利点がある。このような酸化防止剤としては、ヒドラジド類、ヒンダードアミン系酸化防止剤、含窒素複素環メルカプト系化合物、チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アスコルビン酸類、硫酸亜鉛、チオシアン酸塩類、チオ尿素誘導体、糖類、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体などを挙げることができる。この中でも、特にヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードアミン(HALS)系酸化防止剤が硬化膜の着色、膜厚減少の観点で好ましい。
【0077】
前記酸化防止剤の市販品としては、商品名 Irganox1010、1035、1076、1222、TINUVIN144 (以上、チバガイギー(株)製)、商品名 Antigene P、3C、FR、スミライザーS、スミライザーGA80(住友化学工業(株)製)、商品名アデカスタブAO70、AO80、AO503、LAシリーズ((株)ADEKA製)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
【0078】
(その他の成分)
本発明の組成物には前記成分の他に必要に応じて、ポリマー成分、離型剤、有機金属カップリング剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、可塑剤、密着促進剤、熱重合開始剤、光塩基発生剤、着色剤、エラストマー粒子、(メタ)アクリル酸エステルモノマー以外のその他のモノマー成分、光酸増殖剤、塩基性化合物、および、その他流動調整剤、消泡剤、分散剤等を添加してもよい。
【0079】
本発明の組成物では、架橋密度をさらに高める目的で、前記多官能の(メタ)アクリル酸エステルモノマーよりもさらに分子量の大きい多官能オリゴマーを、本発明の目的を達成する範囲で配合することもできる。光ラジカル重合性を有する多官能オリゴマーとしてはエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート等の各種アクリレートオリゴマー、トリメトキシシリルプロピルアクリレートの加水分解縮合物が挙げられる。オリゴマー成分の添加量としては、組成物の溶剤を除く成分に対し、0〜30質量%が好ましく、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜10質量%、最も好ましくは0〜5質量%である。
本発明のナノインプリント用硬化性組成物はインプリント適性、硬化性等の改良を観点からも、さらにポリマー成分を含有していてもよい。前記ポリマー成分としては側鎖に重合性官能基を有するポリマーが好ましい。前記ポリマー成分の重量平均分子量としては、重合性化合物との相溶性の観点から、2000〜100000が好ましく、5000〜50000がさらに好ましい。ポリマー成分の添加量としては組成物の溶剤を除く成分に対し、0〜30質量%が好ましく、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜10質量%、最も好ましくは2質量%以下である。また、パターン形成性の観点から樹脂成分はできる限り少ない法が好ましく、界面活性剤や微量の添加剤を除き、樹脂成分を含まないことが好ましい。
【0080】
剥離性をさらに向上する目的で、本発明の組成物には、離型剤を任意に配合することができる。具体的には、本発明の組成物の層に押し付けたモールドを、樹脂層の面荒れや版取られを起こさずにきれいに剥離できるようにする目的で添加される。離型剤としては従来公知の離型剤、例えば、前記化合物(A)以外のシリコーン系離型剤、ポリエチレンワックス、アミドワックス、テフロンパウダー(テフロンは登録商標)等の固形ワックス、弗素系、リン酸エステル系化合物等が何れも使用可能である。また、これらの離型剤をモールドに付着させておくこともできる。
【0081】
前記シリコーン系離型剤は、本発明で用いられる前記光硬化性樹脂と組み合わせた時にモールドからの剥離性が特に良好であり、版取られ現象が起こり難くなる。前記シリコーン系離型剤は、オルガノポリシロキサン構造を基本構造とする離型剤であり、例えば、未変性または変性シリコーンオイル、トリメチルシロキシケイ酸を含有するポリシロキサン、シリコーン系アクリル樹脂等が該当し、一般的にハードコート用組成物で用いられているシリコーン系レベリング剤の適用も可能である。なお、これらの内、前記化合物(A)以外のものをその他の離型剤として用いることができる。
【0082】
前記変性シリコーンオイルは、ポリシロキサンの側鎖および/または末端を変性したものであり、反応性シリコーンオイルと非反応性シリコーンオイルとに分けられる。反応性シリコーンオイルとしては、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、メルカプト変性、フェノール変性、片末端反応性、異種官能基変性等が挙げられる。非反応性シリコーンオイルとしては、ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、高級脂肪エステル変性、親水性特殊変性、高級アルコキシ変性、高級脂肪酸変性、フッ素変性等が挙げられる。
一つのポリシロキサン分子に前記したような変性方法の2つ以上を行うこともできる。なお、これらの内、前記化合物(A)以外のものをその他の離型剤として用いることができる。
【0083】
前記変性シリコーンオイルは組成物成分との適度な相溶性があることが好ましい。特に、組成物中に必要に応じて配合される他の塗膜形成成分に対して反応性がある反応性シリコーンオイルを用いる場合には、本発明の組成物を硬化した硬化膜中に化学結合よって固定されるので、当該硬化膜の密着性阻害、汚染、劣化等の問題が起き難い。特に、蒸着工程での蒸着層との密着性向上には有効である。なお、これらの内、前記化合物(A)以外のものをその他の離型剤として用いることができる。
【0084】
前記トリメチルシロキシケイ酸を含有するポリシロキサンは表面にブリードアウトし易く剥離性に優れており、表面にブリードアウトしても密着性に優れ、金属蒸着やオーバーコート層との密着性にも優れている点で好ましい。
前記離型剤は1種類のみ或いは2種類以上を組み合わせて添加することができる。
【0085】
離型剤を本発明のナノインプリント用硬化性組成物に添加する場合、前記化合物(A)とその他の離型剤とをあわせて組成物全量中に0.001〜10質量%の割合で配合することが好ましく、0.01〜5質量%の範囲で添加することがさらに好ましい。離型剤の含有量が0.01〜5質量%の範囲内にあると、モールドとナノインプリント用硬化性組成物層との剥離性向上効果が向上し、さらに組成物の塗工時のはじきによる塗膜面の面荒れの問題が生じたり、製品において基材自身や近接する層、例えば、蒸着層の密着性を阻害したり、転写時における皮膜破壊等(膜強度が弱くなりすぎる)が生じるのを抑制することができる。
【0086】
本発明の組成物には、微細凹凸パターンを有する表面構造の耐熱性、強度、或いは、金属蒸着層との密着性を高めるために、有機金属カップリング剤を配合してもよい。また、有機金属カップリング剤は、熱硬化反応を促進させる効果も持つため有効である。前記有機金属カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、スズカップリング剤等の各種カップリング剤を使用できる。
【0087】
本発明の組成物に用いることのできるシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン;β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシシラン;N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン;および、その他のシランカップリング剤として、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0088】
前記チタンカップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル・アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等が挙げられる。
【0089】
前記ジルコニウムカップリング剤としては、例えば、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトラ−ブトキシジルコニウム、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0090】
前記アルミニウムカップリング剤としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノsec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレート、アルミニウムエチレート、エチルアセトアセテエートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトアセテート)等を挙げることができる。
【0091】
前記有機金属カップリング剤は、本発明のナノインプリント用硬化性組成物の固形分全量中に0.001〜10質量%の割合で任意に配合できる。有機金属カップリング剤の割合を0.001質量%以上とすることにより、耐熱性、強度、蒸着層との密着性の付与の向上についてより効果的な傾向にある。一方、有機金属カップリング剤の割合を10質量%以下とすることにより、組成物の安定性、成膜性の欠損を抑止できる傾向にあり好ましい。
【0092】
本発明のナノインプリント用硬化性組成物には、貯蔵安定性等を向上させるために、重合禁止剤を配合してもよい。前記重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、tert−ブチルハイドロキノン、カテコール、ハイドロキノンモノメチルエーテル等のフェノール類;ベンゾキノン、ジフェニルベンゾキノン等のキノン類;フェノチアジン類;銅類等を用いることができる。重合禁止剤は、本発明の組成物の全量に対して任意に0.001〜10質量%の割合で配合するのが好ましい。
【0093】
本発明のナノインプリント用硬化性組成物には紫外線吸収剤を用いることもできる。前記紫外線吸収剤の市販品としては、Tinuvin P、234、320、326、327、328、213(以上、チバガイギー(株)製)、Sumisorb110、130、140、220、250、300、320、340、350、400(以上、住友化学工業(株)製)等が挙げられる。紫外線吸収剤は、光ナノインプリント用硬化性組成物の全量に対して任意に0.01〜10質量%の割合で配合するのが好ましい。
【0094】
本発明のナノインプリント用硬化性組成物には光安定剤を用いることもできる。前記光安定剤の市販品としては、Tinuvin 292、144、622LD(以上、チバガイギー(株)製)、サノールLS−770、765、292、2626、1114、744(以上、三共化成工業(株)製)等が挙げられる。光安定剤は組成物の全量に対し、0.01〜10質量%の割合で配合するのが好ましい。
【0095】
本発明のナノインプリント用硬化性組成物には老化防止剤を用いることもできる。前記老化防止剤の市販品としては、Antigene W、S、P、3C、6C、RD−G、FR、AW(以上、住友化学工業(株)製)等が挙げられる。老化防止剤は組成物の全量に対し、0.01〜10質量%の割合で配合するのが好ましい。
【0096】
本発明のナノインプリント用硬化性組成物には基板との接着性や膜の柔軟性、硬度等を調整するために可塑剤を加えることが可能である。好ましい可塑剤の具体例としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリン、ジメチルアジペート、ジエチルアジペート、ジ(n−ブチル)アジペート、ジメチルスベレート、ジエチルスベレート、ジ(n−ブチル)スベレート等があり、可塑剤は組成物中の30質量%以下で任意に添加することができる。好ましくは20質量%以下で、より好ましくは10質量%以下である。可塑剤の添加効果を得るためには、0.1質量%以上が好ましい。
【0097】
本発明のナノインプリント用硬化性組成物には基板との接着性等を調整するために密着促進剤を添加してもよい。前記密着促進剤として、ベンズイミダゾール類やポリベンズイミダゾール類、低級ヒドロキシアルキル置換ピリジン誘導体、含窒素複素環化合物、ウレアまたはチオウレア、有機リン化合物、8−オキシキノリン、4−ヒドロキシプテリジン、1,10−フェナントロリン、2,2'−ビピリジン誘導体、ベンゾトリアゾール類、有機リン化合物とフェニレンジアミン化合物、2−アミノ−1−フェニルエタノール、N−フェニルエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン,N−エチルジエタノールアミン、N−エチルエタノールアミンおよび誘導体、ベンゾチアゾール誘導体などを使用することができる。密着促進剤は、組成物中の好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。密着促進剤の添加は効果を得るためには、0.1質量%以上が好ましい。
【0098】
本発明の組成物を硬化させる場合、必要に応じて熱重合開始剤も添加することができる。好ましい熱重合開始剤としては、例えば過酸化物、アゾ化合物を挙げることができる。具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチル−パーオキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル等を挙げることができる。熱重合開始剤は、組成物中の好ましくは8.0質量%以下、より好ましくは6.0質量%以下、さらに好ましくは4.0質量%以下である。熱重合開始剤の添加は効果を得るためには、3.0質量%以上が好ましい。
【0099】
本発明のナノインプリント用硬化性組成物は、パターン形状、感度等を調整する目的で、必要に応じて光塩基発生剤を添加してもよい。光塩基発生剤としては、例えば、2−ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、トリフェニルメタノール、O−カルバモイルヒドロキシルアミド、O−カルバモイルオキシム、[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]シクロヘキシルアミン、ビス[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキサン1,6−ジアミン、4−(メチルチオベンゾイル)−1−メチル−1−モルホリノエタン、(4−モルホリノベンゾイル)−1−ベンジル−1−ジメチルアミノプロパン、N−(2−ニトロベンジルオキシカルボニル)ピロリジン、ヘキサアンミンコバルト(III)トリス(トリフェニルメチルボレート)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン、2,6−ジメチル−3,5−ジアセチル−4−(2'−ニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジン、2,6−ジメチル−3,5−ジアセチル−4−(2',4'−ジニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジン等が好ましいものとして挙げられる。
【0100】
本発明のナノインプリント用硬化性組成物には、塗膜の視認性を向上するなどの目的で、着色剤を任意に添加してもよい。着色剤は、UVインクジェット組成物、カラーフィルタ用組成物およびCCDイメージセンサ用組成物等で用いられている顔料や染料を本発明の目的を損なわない範囲で用いることができる。本発明で用いることができる顔料としては、従来公知の種々の無機顔料または有機顔料を用いることができる。無機顔料としては、金属酸化物、金属錯塩等で示される金属化合物であり、具体的には鉄、コバルト、アルミニウム、カドミウム、鉛、銅、チタン、マグネシウム、クロム、亜鉛、アンチモン等の金属酸化物、金属複合酸化物を挙げることができる。有機顔料としては、C.I.Pigment Yellow 11, 24, 31, 53, 83, 99, 108, 109, 110, 138, 139,151, 154, 167、C.I.Pigment Orange 36, 38, 43、C.I.Pigment Red 105, 122, 149, 150, 155, 171, 175, 176, 177, 209、C.I.Pigment Violet 19, 23, 32, 39、C.I.Pigment Blue 1, 2, 15, 16, 22, 60, 66、C.I.Pigment Green 7, 36, 37、C.I.Pigment Brown 25, 28、C.I.Pigment Black 1, 7および、カーボンブラックを例示できる。着色剤は組成物の全量に対し、0.001〜2質量%の割合で配合するのが好ましい。
【0101】
また、本発明のナノインプリント用硬化性組成物では、機械的強度、柔軟性等を向上するなどの目的で、任意成分としてエラストマー粒子を添加してもよい。
本発明の組成物に任意成分として添加できるエラストマー粒子は、平均粒子サイズが好ましくは10nm〜700nm、より好ましくは30〜300nmである。例えばポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/イソプレン共重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/α−オレフィン系共重合体、エチレン/α−オレフィン/ポリエン共重合体、アクリルゴム、ブタジエン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン/ブタジエンブロック共重合体、スチレン/イソプレンブロック共重合体などのエラストマーの粒子である。またこれらエラストマー粒子を、メチルメタアクリレートポリマー、メチルメタアクリレート/グリシジルメタアクリレート共重合体などで被覆したコア/シェル型の粒子を用いることができる。エラストマー粒子は架橋構造をとっていてもよい。
【0102】
エラストマー粒子の市販品としては、例えば、レジナスボンドRKB(レジナス化成(株)製)、テクノMBS−61、MBS−69(以上、テクノポリマー(株)製)等を挙げることができる。
【0103】
これらエラストマー粒子は単独で、または2種以上組み合わせて使用することができる。本発明の組成物におけるエラストマー成分の含有割合は、好ましくは1〜35質量%であり、より好ましくは2〜30質量%、特に好ましくは3〜20質量%である。
【0104】
本発明の組成物には、硬化収縮の抑制、熱安定性を向上するなどの目的で、塩基性化合物を任意に添加してもよい。塩基性化合物としては、アミンならびに、キノリンおよびキノリジンなど含窒素複素環化合物、塩基性アルカリ金属化合物、塩基性アルカリ土類金属化合物などが挙げられる。これらの中でも、光重合成モノマーとの相溶性の面からアミンが好ましく、例えば、オクチルアミン、ナフチルアミン、キシレンジアミン、ジベンジルアミン、ジフェニルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミン、ジメチルアニリン、キヌクリジン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミンおよびトリエタノールアミンなどが挙げられる。
【0105】
本発明の組成物には、光硬化性向上のために、連鎖移動剤を添加してもよい。前記連鎖移動剤としては、具体的には、4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)を挙げることができる。
【0106】
本発明の組成物には、(メタ)アクリル酸エステルモノマー以外のその他のモノマー成分を用いてもよい。その他のモノマー成分としては、ビニルエーテル化合物、スチレン誘導体、プロペニルエーテルおよびブテニルエーテルを用いてもよい。本発明の組成物におけるその他のモノマー成分の含有割合は、好ましくは0〜20質量%であり、より好ましくは0〜10質量%、特に好ましくは0質量%である。
【0107】
前記ビニルエーテル化合物は公知のものを適宜選択することができ、例えば、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ブタンジオール−1,4−ジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2−プロパンジオールジビニルエーテル、1,3−プロパンジオールジビニルエーテル、1,3−ブタンジオールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、エチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、エチレングリコールジプロピレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパントリエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパンジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラエチレンビニルエーテル、1,1,1−トリス〔4−(2−ビニロキシエトキシ)フェニル〕エタン、ビスフェノールAジビニロキシエチルエーテル等が挙げられる。
【0108】
これらのビニルエーテル化合物は、例えば、Stephen.C.Lapin,Polymers Paint Colour Journal.179(4237)、321(1988)に記載されている方法、即ち多価アルコールもしくは多価フェノールとアセチレンとの反応、または多価アルコールもしくは多価フェノールとハロゲン化アルキルビニルエーテルとの反応により合成することができ、これらは1種単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0109】
前記スチレン誘導体としては、例えば、p−メトキシスチレン、p−メトキシ−β−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、等を挙げることができる。
【0110】
その他のスチレン誘導体としては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、β−メチルスチレン、p−メチル−β−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシ−β−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、等を挙げることができる。さらに、本発明においては、ビニルナフタレン誘導体を使用することもでき、例えば、1−ビニルナフタレン、α−メチル−1−ビニルナフタレン、β−メチル−1−ビニルナフタレン、4−メチル−1−ビニルナフタレン、4−メトキシ−1−ビニルナフタレン等を挙げることができる。
【0111】
前記プロペニルエーテルまたはブテニルエーテルとしては、例えば1−ドデシル−1−プロペニルエーテル、1−ドデシル−1−ブテニルエーテル、1−ブテノキシメチル−2−ノルボルネン、1−4−ジ(1−ブテノキシ)ブタン、1,10−ジ(1−ブテノキシ)デカン、1,4−ジ(1−ブテノキシメチル)シクロヘキサン、ジエチレングリコールジ(1−ブテニル)エーテル、1,2,3−トリ(1−ブテノキシ)プロパン、プロペニルエーテルプロピレンカーボネート等が好適に適用できる。
【0112】
なお、本発明のナノインプリント用硬化性組成物は、調製時における水分量が好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%、さらに好ましくは1.0質量%以下である。調製時における水分量を2.0質量%以下とすることにより、本発明の組成物の保存性をより安定にすることができる。
【0113】
また、本発明のナノインプリント用硬化性組成物には溶剤を用いることもできる。前記有機溶剤の含有量は、全組成物中、3質量%以下であることが好ましい。すなわち本発明の組成物は、好ましくは前記のような1官能およびまたは2官能の他の単量体を反応性希釈剤として含むため、本発明の組成物の成分を溶解させるための有機溶剤は、必ずしも含有する必要がない。本発明の組成物では、有機溶剤の含有量は、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下であり、含有しないことが特に好ましい。このように、本発明の組成物は、必ずしも、有機溶剤を含むものではないが、反応性希釈剤では、溶解しない化合物などを、本発明の組成物として溶解させる場合や粘度を微調整する際など、任意に添加してもよい。本発明の組成物に好ましく使用できる有機溶剤の種類としては、光ナノインプリント用硬化性組成物やフォトレジストで一般的に用いられている溶剤であり、本発明で用いる化合物を溶解および均一分散させるものであればよく、かつこれらの成分と反応しないものであれば特に限定されない。
【0114】
前記有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソフチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸エステル類等のエステル類などが挙げられる。
さらに、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセテート等の高沸点溶剤を添加することもできる。これらは1種を単独使用してもよく、2種類以上を併用しても構わない。
これらの中でも、メトキシプロピレングリコールアセテート、2−ヒドロキシプロピン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノンなどが特に好ましい。
【0115】
本発明のナノインプリント用硬化性組成物は、表面張力が、18〜30mN/mの範囲にあることが好ましく、20〜28mN/mの範囲にあることがより好ましい。このような範囲とすることにより、表面平滑性を向上させるという効果が得られる。
なお、本発明のナノインプリント用硬化性組成物は、調製時における水分量が好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%、さらに好ましくは1.0質量%以下である。調製時における水分量を2.0質量%以下とすることにより、本発明の組成物の保存性をより安定にすることができる。
【0116】
(本発明のナノインプリント用硬化性組成物の粘度)
本発明のナノインプリント用硬化性組成物の粘度について説明する。本発明における粘度は特に述べない限り、25℃における粘度をいう。本発明のナノインプリント用硬化性組成物は、25℃における粘度が、3〜18mPa・sであることが好ましく、さらに好ましくは5〜15mPa・sであり、特に好ましくは7〜12mPa・sである。本発明の組成物の粘度を3mPa・s以上とすることにより、基板塗布適性の問題や膜の機械的強度の低下が生じにくい傾向にある。具体的には、粘度を3mPa・s以上とすることによって、組成物の塗布の際に面上ムラを生じたり、塗布時に基板から組成物が流れ出たりするのを抑止できる傾向にあり、好ましい。また、粘度が3mPa・s以上の組成物は、粘度3mPa・s未満の組成物に較べて調製も容易である。一方、本発明の組成物の粘度を18mPa・s以下とすることにより、微細な凹凸パターンを有するモールドを組成物に密着させた場合でも、モールドの凹部のキャビティ内にも組成物が流れ込み、大気が取り込まれにくくなるため、バブル欠陥を引き起こしにくくなり、モールド凸部において光硬化後に残渣が残りにくくなり好ましい。また、本発明の組成物の粘度が18mPa・s以下であると、微細なパターンの形成に粘度が影響を与えにくい。
【0117】
一般的に、組成物の粘度は、粘度の異なる各種の単量体、オリゴマー、ポリマーをプレンドすることで調整可能である。本発明のナノインプリント用硬化性組成物の粘度を前記範囲内に設計するためには、単体の粘度が5.0mPa・s以下の組成物を添加して粘度を調整することが好ましい。
【0118】
(硬化物の光透過性)
本発明のナノインプリント用硬化性組成物は、厚さ3.0μmの薄膜(硬化物)を露光及び加熱により形成した際における、400nm光線透過率が95%以上であることが好ましい。ここで、400nm光線透過率とは400nmの波長における光の透過率を意味する。前記400nm光線透過率としては、97%以上であることが更に好ましい。
前記400nm光線透過率は、例えば、島津製作所(株)製の「UV−2400PC」等により測定することができる。
【0119】
また、前記光透過率性(400nm光線透過率)は、上述の酸化防止剤を本発明の組成物に加えることでも向上させることができる。
【0120】
[硬化物の製造方法]
次に、本発明のナノインプリント用硬化性組成物を用いた硬化物(特に、微細凹凸パターン)の形成方法について説明する。本発明のナノインプリント用硬化性組成物を基板または支持体(基材)上に塗布してパターン形成層を形成する工程と、前記パターン形成層表面にモールドを押圧する工程と、前記パターン形成層に光を照射する工程と、を経て本発明の組成物を硬化することで、微細な凹凸パターンを形成することができる。特に本発明においては、硬化物の硬化度を向上させるために、更に、光照射後にパターン形成層を加熱する工程を含むことが好ましい。即ち、本発明のナノインプリント用硬化性組成物は、光および熱によって硬化させることが好ましい。
本発明の硬化物の製造方法によって得られた硬化物は、パターン精密度、硬化性、光透過性に優れ、特に、液晶カラーフィルタの保護膜、スペーサー、その他の液晶表示装置用部材として好適に用いることができる。
【0121】
具体的には、基材(基板または支持体)上に少なくとも本発明の組成物からなるパターン形成層を塗布し、必要に応じて乾燥させて本発明の組成物からなる層(パターン形成層)を形成してパターン受容体(基材上にパターン形成層が設けられたもの)を作製し、当該パターン受容体のパターン形成層表面にモールドを圧接し、モールドパターンを転写する加工を行い、微細凹凸パターン形成層を光照射および加熱により硬化させる。光照射および加熱は複数回に渡って行ってもよい。本発明のパターン形成方法(硬化物の製造方法)による光インプリントリソグラフィは、積層化や多重パターニングもでき、通常の熱インプリントと組み合わせて用いることもできる。
【0122】
なお、本発明のナノインプリント用硬化性組成物の応用として、基板または、支持体上に本発明の組成物を塗布し、該組成物からなる層を露光、硬化、必要に応じて乾燥(ベーク)させることにより、オーバーコート層や絶縁膜などの永久膜を作製することもできる。
【0123】
液晶ディスプレイ(LCD)などに用いられる永久膜(構造部材用のレジスト)においては、ディスプレイの動作を阻害しないようにするため、レジスト中の金属あるいは有機物のイオン性不純物の混入を極力避けることが望ましく、その濃度としては、1000ppm以下、望ましくは100ppm以下である。
【0124】
以下において、本発明のナノインプリント用硬化性組成物を用いた硬化物の製造方法(パターン形成方法(パターン転写方法))について具体的に述べる。
本発明の硬化物の製造方法においては、まず、本発明の組成物を基材上に塗布してパターン形成層を形成する。
本発明のナノインプリント用硬化性組成物を基材上に塗布する際の塗布方法としては、一般によく知られた塗布方法、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート方法、スリットスキャン法などにより、塗布することにより形成することができる。また、本発明の組成物からなるパターン形成層の膜厚は、使用する用途によって異なるが、0.05μm〜30μm程度である。また、本発明の組成物を、多重塗布により塗布してもよい。尚、基材と本発明の組成物からなるパターン形成層との間には、例えば平坦化層等の他の有機層などを形成してもよい。これにより、パターン形成層と基板とが直接接しないことから、基板に対するごみの付着や基板の損傷等を防止することができる。
【0125】
本発明のナノインプリント用硬化性組成物を塗布するための基材(基板または支持体)は、種々の用途によって選択可能であり、例えば、石英、ガラス、光学フィルム、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、紙、SOG(スピンオングラスガラス)、ポリエステルフイルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等のポリマー基板、TFTアレイ基板、PDPの電極板、ガラスや透明プラスチック基板、ITOや金属などの導電性基材、絶縁性基材、シリコーン、窒化シリコーン、ポリシリコーン、酸化シリコーン、アモルファスシリコーンなどの半導体作製基板など特に制約されない。また、基材の形状も特に限定されるものではなく、板状でもよいし、ロール状でもよい。さらに、後述のように前記基材としては、モールドとの組み合わせ等に応じて、光透過性、または、非光透過性のものを選択することができる。
【0126】
次いで、本発明の硬化物の製造方法においては、パターン形成層にパターンを転写するために、パターン形成層表面にモールドを(押圧)押接する。これにより、モールドの押圧表面にあらかじめ形成された微細なパターンをパターン形成層に転写することができる。
【0127】
本発明のナノインプリント用硬化性組成物を用いた光ナノインプリントリソグラフィは、モールド材および/または基板の少なくとも一方に、光透過性の材料を選択する。本発明に適用される光インプリントリソグラフィでは、基材の上に本発明のナノインプリント用硬化性組成物を塗布してパターン形成層を形成し、この表面に光透過性のモールドを押圧し、モールドの裏面から光を照射し、前記パターン形成層を硬化させる。また、光透過性基材上に光ナノインプリント用硬化性組成物を塗布し、モールドを押し当て、基材の裏面から光を照射し、光ナノインプリント用硬化性組成物を硬化させることもできる。
前記光照射は、モールドを付着させた状態で行ってもよいし、モールド剥離後に行ってもよいが、本発明では、モールドを密着させた状態で行うのが好ましい。
【0128】
本発明で用いることのできるモールドは、転写されるべきパターンを有するモールドが使われる。前記モールド上のパターンは、例えば、フォトリソグラフィや電子線描画法等によって、所望する加工精度に応じてパターンが形成できるが、本発明では、モールドパターン形成方法は特に制限されない。
本発明において用いられる光透過性モールド材は、特に限定されないが、所定の強度、耐久性を有するものであればよい。具体的には、ガラス、石英、PMMA、ポリカーボネート樹脂などの光透明性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサンなどの柔軟膜、光硬化膜、金属膜等が例示される。
【0129】
本発明の透明基板を用いた場合で使われる非光透過型モールド材としては、特に限定されないが、所定の強度を有するものであればよい。具体的には、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、SiC、シリコーン、窒化シリコーン、ポリシリコーン、酸化シリコーン、アモルファスシリコーンなどの基板などが例示され、特に制約されない。また、モールドの形状も特に制約されるものではなく、板状モールド、ロール状モールドのどちらでもよい。ロール状モールドは、特に転写の連続生産性が必要な場合に適用される。
【0130】
本発明の硬化物の製造方法で用いられるモールドは、光ナノインプリント用硬化性組成物とモールド表面との剥離性を向上させるために離型処理を行ったものを用いてもよい。このようなモールドとしては、シリコーン系やフッソ系などのシランカップリング剤による処理を行ったもの、例えば、ダイキン工業(株)製のオプツールDSXや、住友スリーエム(株)製のNovec EGC−1720等、市販の離型剤も好適に用いることができる。
【0131】
本発明の組成物を用いて光インプリントリソグラフィを行う場合、本発明の硬化物の製造方法では、通常、モールド圧力を10気圧以下で行うのが好ましい。モールド圧力を10気圧以下とすることによって、モールドや基板が変形しにくくパターン精度が向上する傾向にある。また、加圧が低いため装置を縮小できる傾向にある点からも好ましい。モールド圧力は、モールド凸部の光ナノインプリント用硬化性組成物の残膜が少なくなる範囲で、モールド転写の均一性が確保できる領域を選択することが好ましい。
【0132】
本発明の硬化物の製造方法において、前記パターン形成層に光を照射する工程における光照射の照射量は、硬化に必要な照射量よりも十分大きければよい。硬化に必要な照射量は、光ナノインプリント用硬化性組成物の不飽和結合の消費量や硬化膜のタッキネスを調べて適宜決定される。
また、本発明に適用される光インプリントリソグラフィにおいて、光照射の際の基板温度は、通常、室温で行われるが、反応性を高めるために加熱をしながら光照射してもよい。光照射の前段階として、真空状態にしておくと、気泡混入防止、酸素混入による反応性低下の抑制、モールドと光ナノインプリント用硬化性組成物との密着性向上に効果があるため、真空状態で光照射してもよい。また、本発明の硬化物の製造方法中、光照射時における好ましい真空度は、1kPaから1気圧の範囲である。
【0133】
本発明のナノインプリント用硬化性組成物を硬化させるために用いられる光は特に限定されず、例えば、高エネルギー電離放射線、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の領域の波長の光または放射線が挙げられる。高エネルギー電離放射線源としては、例えば、コッククロフト型加速器、ハンデグラーフ型加速器、リニヤーアクセレーター、ベータトロン、サイクロトロン等の加速器によって加速された電子線が工業的に最も便利且つ経済的に使用されるが、その他に放射性同位元素や原子炉等から放射されるγ線、X線、α線、中性子線、陽子線等の放射線も使用できる。紫外線源としては、例えば、紫外線螢光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯、太陽灯等が挙げられる。放射線には、例えばマイクロ波、EUVが含まれる。また、LED、半導体レーザー光、あるいは248nmのKrFエキシマレーザー光や193nmArFエキシマレーザーなどの半導体の微細加工で用いられているレーザー光も本発明に好適に用いることができる。これらの光は、モノクロ光を用いてもよいし、複数の波長の異なる光(ミックス光)でもよい。
【0134】
露光に際しては、露光照度を1mW/cm2〜50mW/cm2の範囲にすることが望ましい。1mW/cm2以上とすることにより、露光時間を短縮することができるため生産性が向上し、50mW/cm2以下とすることにより、副反応が生じることによる永久膜の特性の劣化を抑止できる傾向にあり好ましい。露光量は5mJ/cm2〜1000mJ/cm2の範囲にすることが望ましい。5mJ/cm2以上であると、露光マージンが狭くなり、光硬化が不十分となりモールドへの未反応物の付着などの問題が発生するのを防止できる。また。露光量が1000mJ/cm2以下であると組成物の分解による永久膜の劣化を抑制することができる。
さらに、露光に際しては、酸素によるラジカル重合の阻害を防ぐため、チッソやアルゴンなどの不活性ガスを流して、酸素濃度を100mg/L未満に制御してもよい。
【0135】
本発明の硬化物の製造方法においては、光照射によりパターン形成層を硬化させた後、硬化させたパターンに熱を加えてさらに硬化させる工程(ポストベーク工程)を含むのが好ましい。尚、加熱は、光照射後のパターン形成層からモールドを剥離する前後のいずれに行ってもよいが、モールドの剥離後にパターン形成層を加熱するほうが好ましい。光照射後に本発明の組成物を加熱硬化させる熱としては、150〜280℃が好ましく、200〜250℃がより好ましい。また、熱を付与する時間としては、5〜60分間が好ましく、15〜45分間がさらに好ましい。
【0136】
本発明において、光インプリントリソグラフィにおける光照射は、硬化に必要な照射量よりも十分大きければよい。硬化に必要な照射量は、光ナノインプリントリソグラフィ用硬化性組成物の不飽和結合の消費量や硬化膜のタッキネスを調べて決定される。
【0137】
また、本発明に適用される光インプリントリソグラフィにおいては、光照射の際の基板温度は、通常、室温で行われるが、反応性を高めるために加熱をしながら光照射してもよい。光照射の前段階として、真空状態にしておくと、気泡混入防止、酸素混入による反応性低下の抑制、モールドと光ナノインプリントリソグラフィ用硬化性組成物の密着性向上に効果があるため、真空状態で光照射してもよい。本発明において、好ましい真空度は、1kPaから常圧の範囲で行われる。
【0138】
本発明のナノインプリント用硬化性組成物は、上記各成分を混合した後、例えば、孔径0.05μm〜5.0μmのフィルターで濾過することによって溶液として調製することができる。ナノインプリント用硬化性組成物の混合・溶解は、通常、0℃〜100℃の範囲で行われる。濾過は、多段階で行ってもよいし、多数回繰り返してもよい。また、濾過した液を再濾過することもできる。濾過に使用する材質は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッソ樹脂、ナイロン樹脂などのものが使用できるが特に限定されない。
【0139】
上述のように本発明の硬化物の製造方法によって形成された硬化物は、液晶ディスプレイ(LCD)などに用いられる永久膜(構造部材用のレジスト)やエッチングレジストとして使用することができる。また、前記永久膜は、製造後にガロン瓶やコート瓶などの容器にボトリングし、輸送、保管されるが、この場合に、劣化を防ぐ目的で、容器内を不活性なチッソ、またはアルゴンなどで置換しておいてもよい。また、輸送、保管に際しては、常温でもよいが、より永久膜の変質を防ぐため、−20℃から0℃の範囲に温度制御してもよい。勿論、反応が進行しないレベルで遮光することが好ましい。
【0140】
また、本発明のナノインプリント用硬化性組成物は、半導体集積回路、記録材料、あるいはフラットパネルディスプレイなどのエッチングレジストとして適用することも可能である。
本発明のナノインプリント用組成物をエッチングレジストとして利用する場合には、まず、基材として例えばSiO2等の薄膜が形成されたシリコンウエハ等を用い、基材上に本発明の硬化物の製造方法によってナノオーダーの微細なパターンを形成する。その後、ウェットエッチングの場合にはフッ化水素等、ドライエッチングの場合にはCF4等のエッチングガスを用いてエッチングすることにより、基材上に所望のパターンを形成することができる。
【実施例】
【0141】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0142】
<重合性官能基構造と直鎖状ポリシロキサン構造とを有する化合物(A)の調製>
下記M−1〜M−6およびA−1〜A−8の光反応性基含有構造と化合物直鎖状ポリシロキサン構造とを有する化合物を準備した。
M−1:サイラプレーンFM−0711(チッソ(株)製:片末端メタアクリレート変性)
M−2:サイラプレーンFM−7711(チッソ(株)製:両末端メタアクリレート変性)
M−3:変性シリコーンオイルX−22−2475(信越化学工業(株)製:片末端メタアクリレート変性)
M−4:変性シリコーンオイルX−22−164A(信越化学工業(株)製:両末端メタアクリレート変性)
【0143】
[合成例1]
M−5(両末端エポキシ変性シリコーンのアクリル酸付加物)を下記の手順で合成した。
前記X−22−163A 50g、アクリル酸20g、トルエン100ml、テトラブチルブロマイド0.1g、メトキシハイドロキノン0.01gの混合溶液を90℃で5時間攪拌した。X−22−163Aのエポキシ基の消失を1H−NMRにより確認後、酢酸エチルと水を加え抽出した。抽出液を濃縮することにより、両末端エポキシ変性シリコーンのアクリル酸付加物を45g得た。1H−NMRにより、アクリロイル基が導入されていることを確認した。
【0144】
[合成例2]
M−6(両末端水酸基変性シリコーンのアクリル酸縮合物)を下記の手順で合成した。
サイラプレーンFM−4411(チッソ(株)製:両末端水酸基変性)50g、トリエチルアミン10g、アセトン200mlの混合用液を10℃まで冷却した。塩化アクリル酸8g を滴下し、室温で2時間反応させた。反応液に、酢酸エチルと水を加え抽出した。抽出液を濃縮することにより、両末端水酸基変性シリコーンのアクリル酸縮合物を40g得た。1H−NMRにより、アクリロイル基が導入されていることを確認した。
【0145】
[合成例3]
化合物A−1を下記手順で合成した。
前記サイラプレーンFM−0711(5.9g)、(メタ)アクリル酸2−(3−クロロプロピオニルオキシ)エチルエステル(5.9g)、AIBN(59mg、全モノマー重量に対し0.5質量%)、MEK(28g、全モノマー濃度が30質量%になるように調整)の混合用液を、2時間掛けて滴下しながら、窒素雰囲気下で重合をおこなった。反応溶液にMEK(100ml)を加え、10℃まで冷却後、ジアザビシクロウンデセン(DBU)6gを加え、室温で3時間攪拌した。反応溶液を水(1L)にあけ、化合物M−7を再沈させた。さらにアセトン/水で再沈させ、固体を感想させることにより、化合物A−1 を10g得た。GPC分析の結果、Mw=12000であった。
【0146】
[合成例4〜10]
化合物A−2〜A−8を前記化合物A−1と同様の手法にて合成した。各モノマーの組成比(重量比)は前記のとおりである。また、化合物A−4〜A−8に関しては、重合反応終了後、そのまま水再沈を行い、再度アセトン/水で再沈させて目的化合物を得た。GPCの分析結果も合わせて付記する。
【0147】
[実施例1]
(ナノインプリント用硬化性組成物の調製)
重合性官能基を有するポリシロキサン化合物M−1(1質量%)に、下記アクリル酸エステルモノマーS−1(93.9質量%)、下記光ラジカル発生剤P−1(2質量%)、下記酸化防止剤B−1(1質量%)、下記酸化防止剤B−2(2質量%)、下記界面活性剤W−1(0.04質量%)および下記界面活性剤W−2(0.1質量%)を加えて実施例1のナノインプリント用硬化性組成物を調製した。溶解性の悪いものについては少量のアセトンまたは酢酸エチルを加えて溶解させた後、溶媒を留去した。
【0148】
<アクリル酸エステル類>
S−1:ネオペンチルグリコールジアクリレート(KAYARD NPGDA:日本化薬(株)製)。多官能(メタ)アクリル酸エステルモノマーである。
S−2:ベンジルアクリレート(商品名 ビスコート#160、大阪有機化学社製)。1官能アクリル酸エステルモノマーである。
【0149】
<光ラジカル発生剤>
P−1:2,4,6−トリメチルベンゾイル−エトキシフェニル−ホスフィンオキシド(Lucirin TPO−L:BASF社製)
【0150】
<界面活性剤>
W−1:フッ素系界面活性剤(DIC(株)製:メガファックF780F)
W−2:非フッ素系界面活性剤(竹本油脂(株)製:パイオニンD6315)
【0151】
<酸化防止剤>
B−1:スミライザーGA80(住友化学工業(株)製)
B−2:アデカスタブAO503((株)ADEKA製)
B−3:TINUVIN144(チバスペシャルティーケミカルズ製)
【0152】
[実施例2〜12]
実施例1において、ポリシロキサン化合物M−1のかわりにそれぞれ下記表1記載の化合物を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2〜12の組成物を調製した。
【0153】
[実施例13]
実施例4において、酸化防止剤B−1およびB−2を添加しなかった以外は実施例4と同様にして、実施例13の組成物を調製した。
[実施例14]
実施例4において、ポリシロキサン化合物をM−7、酸化防止剤をB−3とした以外は実施例4と同様にして、実施例14の組成物を調整した。
【0154】
[比較例1]
実施例1において、ポリシロキサン化合物を添加しなかった以外は実施例1と同様にして、比較例1の組成物を調製した。
【0155】
[比較例2]
実施例13において、ポリシロキサン化合物M−4のかわりに特開2005−84561号公報に記載の重合性官能基を持たないポリシロキサン化合物(TSF4440:GE東芝シリコーン(株)社製)を用いた以外は実施例13と同様にして、比較例2の組成物を調製した。
【0156】
[比較例3]
実施例4において、ポリシロキサン化合物M−4の添加量とアクリル酸エステルS−1の添加量を下記表1のとおりに変更した以外は実施例4と同様にして、比較例3の組成物を調製した。
【0157】
[比較例4]
実施例4において、多官能(メタ)アクリル酸エステルS−1の添加量を10質量%に減らし、かわりに1官能のアクリル酸エステルとしてベンジルアクリレートS−2を用いた以外は実施例4と同様にして、比較例4の組成物を調製した。
【0158】
[ナノインプリント用硬化性組成物の評価]
各実施例および比較例の組成物について、粘度、パターン精度、剥離性、鉛筆硬度、透過率、について下記評価方法に従って測定・評価を行った。
【0159】
<粘度測定>
粘度の測定は、東機産業(株)社製のRE−80L型回転粘度計を用い、25±0.2℃で測定した。測定時の回転速度は、0.5mPa・s以上5mPa・s未満は100rpmで行い、5mPa・s以上10mPa・s未満は50rpmで行い、10mPa・s以上30mPa・s未満は20rpmで行い、30mPa・s以上60mPa・s未満は10rpmで行い、60mPa・s以上120mPa・s未満は5rpmで行い、120mPa・s以上は1rpmもしくは0.5rpmで行った。
【0160】
<パターン精度の観察>
各組成物を、膜厚3.0μmとなるようにガラス基板上にスピンコートした。スピンコートした塗布基膜をORC社製の高圧水銀灯(ランプパワー2000mW/cm2)を光源とするナノインプリント装置にセットした。次いで、モールドとして、10μmのライン/スペースパターンを有し、溝深さが4.0μmのポリジメチルシロキサン(東レ・ダウコーニング(株)製の「SILPOT184」を80℃60分で硬化させたもの)を材質とするものを用いた。装置内を真空とした後(真空度10Torr(約1.33kPa)、モールドを基板に圧着させ、窒素パージ(1.5気圧:モールド押し圧)を行い装置内を窒素置換した。これにモールドの裏面から照度10mW/cm2で露光量240mJ/cm2の条件で露光した。露光後、モールドを離し、レジストパターンを得た。
更に、得られたレジストパターンをオーブンで230℃、30分間加熱して完全に硬化させた。
転写後のパターン形状を走査型電子顕微鏡および光学顕微鏡にて観察し、パターン形状を以下の基準に従って評価した。
A:モールドのパターン形状の元となる原版のパターンとほぼ同一である。
B:モールドのパターン形状の元となる原版のパターン形状と一部異なる部分(原版のパターンと10%未満の範囲)がある。
C:モールドのパターン形状の元となる原版のパターン形状と一部異なる部分(原版のパターンと10%以上20%未満の範囲)がある。
D:モールドのパターン形状の元となる原版のパターンとはっきりと異なる、あるいはパターンの膜厚が原版のパターンと20%以上異なる。
【0161】
<モールド剥離性の評価>
−剥離性10μm−
各組成物を、膜厚3.0μmとなるようにガラス基板上にスピンコートした。スピンコートした塗布基膜をORC社製の高圧水銀灯(ランプパワー2000mW/cm2)を光源とするナノインプリント装置にセットした。次いで、モールドとして、10μmのライン/スペースパターンを有し、溝深さが4.0μmのポリジメチルシロキサン(東レ・ダウコーニング(株)製の「SILPOT184」を80℃60分で硬化させたもの)を材質とするものを用いた。装置内を真空とした後(真空度10Torr(約1.33kPa)、モールドを基板に圧着させ、窒素パージ(1.5気圧:モールド押し圧)を行い装置内を窒素置換した。これにモールドの裏面から照度10mW/cm2で露光量240mJ/cm2の条件で露光した。露光後、モールドを離し、レジストパターンを得た。
パターン形成に使用したモールドに組成物成分が付着しているか否かを走査型電子顕微鏡および光学顕微鏡にて観察し、10μmのライン/スペースパターンを有するモールドを用いた場合の剥離性(剥離性10μm)を以下のように評価した。
A:モールドに硬化性組成物の付着がまったく認められなかった。
B:モールドにわずかな硬化性組成物の付着が認められた。
C:モールドの硬化性組成物の付着が明らかに認められた。
【0162】
<硬化膜の鉛筆硬度の測定>
各組成物を膜厚が3μmのとなるようにガラス基板上にスピンコートし、モールドを圧着せず、窒素雰囲気下で露光量240mJ/cm2で露光し、その後オーブンで230℃、30分間加熱して膜を硬化させた。
JIS−K5400の試験方法を参考に4Hの鉛筆を用いて、荷重を500gに変更して評価した。
試験後の硬化膜を光学顕微鏡にて、硬化膜表面の傷の程度を観察し評価した。
A:硬化膜表面に傷がまったく観測されなかった。
B:硬化膜表面に擦り傷が観測されたが、実用上問題ない。
C:硬化膜表面が抉り取られる傷が観測され、実用上問題がある。
D:硬化膜がガラス基板から剥けてしまうほどの傷が観測された。
【0163】
<耐熱性(透明性)の評価>
各組成物を膜厚3.0μmとなるようにガラス基板上にスピンコートし、モールドを圧着せず、窒素雰囲気下で照度10mW/cm2、露光量240mJ/cm2で露光し、その後オーブンで230℃、270分間加熱して硬化させた。得られた硬化膜について、(株)島津製作所製のUV−2400PCにて400nmにおける光線透過率を測定した。
A:透過率98%以上であった。
B:透過率90%以上98%未満であった。
C:透過率90%未満であり、実用上問題がある。
【0164】
これら各実施例および比較例の結果を下記表1に示す。
【0165】
【表1】

【0166】
上記表1より、実施例1〜14の本発明の組成物および硬化物は転写精度、モールド剥離性、表面硬度(鉛筆硬度)および耐熱性(加熱後の透過率)のすべてが実用上好ましい範囲であった。また、粘度も実用上好ましい範囲であった。一方、比較例1〜4の組成物および硬化物は上記物性の少なくとも1つが実用上問題となる範囲であった。
比較例1と実施例1〜14の比較より、ポリシロキサン化合物を添加しない場合、剥離性が悪化し、鉛筆硬度が顕著に悪化することがわかった。比較例2と実施例13の比較より、特開2005−84561号公報記載の重合性官能基を有さないポリシロキサン化合物を用いた場合、鉛筆硬度が顕著に悪化することがわかった。比較例3と実施例4の比較より、(メタ)アクリル酸エステルが60質量%未満であると、硬化物表面の面状荒れ(ムラ)が発生し、鉛筆硬度および耐熱性(透過率)は評価できず、すなわち、転写精度が著しく悪化することがわかった。なお、比較例3はポリシロキサン化合物の添加量も著しく多いものである。比較例4と実施例4の比較より、前記費特許文献4のように(メタ)アクリロイル基を少なくとも2つ以上含む多官能(メタ)アクリル酸エステルが15質量%未満である場合、顕著に鉛筆硬度が悪化することがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性官能基構造と直鎖状ポリシロキサン構造とを有する化合物(A)と、
(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B)と、
光ラジカル発生剤(C)と、
を含む硬化性組成物であって、前記(メタ)アクリル酸エステルモノマーの前記硬化性組成物中の含有量が60質量%以上であり、かつ前記硬化性組成物中に含まれる前記(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種が多官能(メタ)アクリル酸エステルモノマーであり、該多官能(メタ)アクリル酸エステルモノマーの含有量が前記硬化組成物中の15質量%以上であることを特徴とするナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項2】
前記直鎖状ポリシロキサン構造を有する化合物の重合性官能基の構造が、炭素−炭素不飽和結合構造であることを特徴とする請求項1に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項3】
前記炭素−炭素不飽和結合構造が、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、プロパルギル基、シクロペンテニル基およびシクロヘキセニル基からなる群の少なくとも1つの官能基を含有する構造であることを特徴とする請求項1または2に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項4】
前記化合物(A)を0.01〜18質量%含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項5】
前記直鎖状ポリシロキサン構造がジメチルシロキサン構造であり、該ジメチルシロキサン構造の繰り返し数が5〜100であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項6】
さらにノニオン系界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項7】
さらに酸化防止剤を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項8】
前記化合物(A)が、下記一般式(1)または一般式(2)で表されることを特徴とする請求項1〜7に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【化1】

(一般式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を表し、Xは2価の基を表し、Zは(メタ)アクリロイル以外の1価の基を表し、nは4〜100である。)
【化2】

(一般式(2)中、R1は水素原子またはメチル基を表し、XおよびYはそれぞれ独立に2価の基を表し、nは4〜100である。)
【請求項9】
前記化合物(A)がポリ(メタ)アクリレートであり、該ポリ(メタ)アクリレートが少なくとも1種の下記一般式(1)で表されるモノマー由来の構成単位を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【化3】

【請求項10】
前記ポリ(メタ)アクリレートが、炭素−炭素不飽和結合構造を有することを特徴とする請求項9に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項11】
前記炭素−炭素不飽和結合構造が、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、プロパルギル基、シクロペンテニル基およびシクロヘキセニル基からなる群の少なくとも1つの官能基を含有する構造であることを特徴とする請求項10に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項12】
前記ポリ(メタ)アクリレートが、さらにフッ素原子を含む構成単位を有することを特徴とする請求項9〜11のいずれか一項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項13】
前記ポリ(メタ)アクリレートに含まれるモノマー構成単位の重量組成比において、前記一般式(1)で表されるモノマー由来の構成単位が70重量%以下であることを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項14】
前記硬化性組成物の粘度が3〜18mPa・sであることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物を硬化させたことを特徴とする硬化物。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物を基材上に塗布してパターン形成層を形成する工程と、
前記パターン形成層表面にモールドを押圧する工程と、
前記パターン形成層に光を照射する工程と、
を含むことを特徴とする硬化物の製造方法。
【請求項17】
さらに、光が照射された前記パターン形成層を加熱する工程を含むことを特徴とする請求項16に記載の硬化物の製造方法。

【公開番号】特開2010−6870(P2010−6870A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164979(P2008−164979)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】