ナノ粒子医薬組成物に有用な生体適合性、非生物分解性、非毒性ポリマー
本発明は、高純度で各モノマー汚染物質を実質的に含まない、二官能性ビニル誘導体と架橋した、1-ビニルピロリドン(VP)、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)および無水マレイン酸とポリエチレングリコールのエステル(MPEG)から選ばれる3つのモノマーユニットを含む、式(I)で示される生体適合性、非生物分解性および非毒性ポリマーおよびその製造方法に関する。本発明はさらに、安全で、低毒性および投与を必要とする患者への臨床投与に便利な本発明ポリマーを含む水難溶性薬剤または化合物のナノ粒子医薬組成物に関する。さらに、本発明は、水難溶性薬剤または化合物のナノ粒子医薬組成物の選択性の高い製造方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度で、モノマー汚染物質を実質的に含まない、生体適合性および非生物分解性ポリマーおよびその製造方法を提供する。
本発明はさらに、本発明ポリマーを利用するナノ粒子形態における水難溶性薬剤または化合物の医薬組成物を提供する。
さらに、本発明は、水難溶性薬剤または化合物のナノ粒子形態における医薬組成物の選択性の高い製造方法ならびに投与を必要とする患者への該組成物の投与方法に関する。
非毒性で、安全である本発明ポリマーは、そのことによって、該ポリマーを含む水難溶性薬剤または化合物のナノ粒子医薬組成物を低毒性で投与のために安全にする。
【背景技術】
【0002】
近年、生体の生物環境に接触するために設計された人工装具としてであろうと、または医療機器においてであろうと、医療および製薬の分野で新規な材料の適用に関心が高まり続けている。これらの材料のうち、ポリマー、主として合成ポリマーは、患者の健康管理に著しい利点を分け与えることが見出される群を抜いて最も多種多様なクラスである。
【0003】
医療および製薬の分野におけるポリマーの適用は、広範である。医療分野において、ポリマーは、インプラント、または人工臓器、代用血管、眼内レンズ、人工関節、人工乳房、縫合材料などの支持材料、または血液灌流、血液酸素付加装置、カテーテル、血管、創傷および火傷被覆材料、副え木、コンタクトレンズに使用されるものなどの体外治療法またはその他の支持材料として使用される。製薬分野において、ポリマーは、ナノ粒子システムおよび制御放出デリバリーシステムの開発において特に使用されている。広範な研究が、所望の部位へのデリバリーシステムをもつ標的薬剤も追求している。さらに、ポリマーは、経皮ドラッグデリバリーパッチ、マイクロスフィア、酵素および細胞固定化などのバイオプロセスといったような他の適用においても大きな有用性を見出されている。
【0004】
このような適用のうち、ナノ粒子ドラッグデリバリーシステムは、より広範に研究されており、親水性表面をもつナノメーターサイズの薬剤担体、特に、ポリマーミセルの2つ球面共中心(co-centric)領域(疎水性材料の高密度実装コアと疎水性薬剤または化合物の捕捉に関与する親水性材料の外殻)を含むものは、広範に研究されている。このようなシステムは、細網内皮系(RES)による認識および取り込みを回避し、したがって、血液中を長期間にわたって循環することができることが見出されている。さらに、それらのサイズが非常に小さいことにより(ポリマーミセルは、通常、数百のブロックコポリマーからなり、約20 nm-50 nmの直径をもつ)、粒子は、受動的標的化メカニズムを介して固形腫瘍などの病的部位で浸出する。
【0005】
ポリマーは、それらの化学的および構造的特徴に起因する特性の範囲を得る。ポリマー鎖は、本質的に直線、分枝、または隣接する鎖と架橋してもよい。さらに、これらの鎖は、不規則、規則的または1つの方向に向かっていてもよい。化学的組成と組み合わせたこれらの構造的特徴は、ポリマーに種々の特性を与え、種々の最終用途適用をもたらす。さらに、化学的組成と組み合わせたこれらの構造的特徴は、得られるポリマーに生体適合性および宿主組織環境による生物分解性に対する耐性を与えるか、または奪う。これらの因子はまた、溶解度および加工および成形方法などの他の特性に影響を及ぼす。
【0006】
さらに、ポリマーを哺乳動物に注射する場合、それは、通常、投与部位からゆっくりと消失するが、この消失は、通常、生体内変換過程の一部である加水分解などの化学反応に応答して起こり、該ポリマーが代謝され、身体から除去される。しかし、これは、種々の生体システムに悪影響を及ぼす不必要な代謝物質をもたらすことがある。したがって、使用の環境において/に対して不活性であり、投与部位から無傷で除去されるか、または取り出され、ポリマーからの薬剤の輸送および放出に対する本質的に速度制限バリヤーとして働くポリマーは、意図する機能に基づいて最も重要である。また、ポリマーの生物分解性は、ポリマーの機械的および化学的特性に応じて変わる。種々の天然、合成および生合成ポリマーが、生物および環境的分解性である。C-C骨格に基づくポリマーは、非生物分解性である傾向があるが、ヘテロ原子含有ポリマー骨格は、生物分解性を与える。したがって、無水物、エステルまたはアミド結合などの化学結合の思慮深い欠失/付加によって、非生物分解性/生物分解性をポリマーに工作することができ、非生物分解性ポリマー材料の他の一般的例として、ポリエチレンビニルアセテート、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルウレタン、エチルセルロース、セルロースアセテート、ポリエチレンおよびよポリビニルクロリドが挙げられる。
【0007】
過去二,三十年の間に行われた試み、またはポリマーを利用する種々の薬剤のためのナノ粒子デリバリーシステムの開発において入手可能な多種多様な報告がある。2〜3例を挙げると、以下の開示が挙げられる:
i)Sakuraiら、US 5,412,072:親水性および疎水性フラグメントを含むポリマーに共有結合した薬剤を含む複合体が、該複合体を水溶性にすることによって投与に適することがみいだされている。ここで利用された薬剤は、一般に水難溶性または不溶性化合物であり、薬剤−ポリマー複合体が、水溶液中でポリマーミセルを形成し、投与に有用であり、適している水溶性高分子ポリマー化薬剤になることが報告されている。
ii)Yokoyamaら、US 5,449,513:彼らは、Sakuraiら、US 5,412,072によって開示されたものとは異なり、薬剤がポリマーに共有結合する複合体ではないが、薬剤がポリマー内に捕捉されるポリマーミセルを報告している。捕捉に利用される薬剤は、本来は、疎水性である。ポリマーミセルは、超音波処理などの従来の方法によってポリマー殻の内側に疎水性薬剤を捕捉し、このようにして得られたミセルを透析によって精製することによって順に製造される、
iii)Desaiら、US 5,439,686;US 5,362,478;US 5,916,596;US 6,096,331;US 6,537,579およびUS 6,749,868:実質的に水不溶性化合物のポリマーミセルが製造される。水不溶性化合物が、かなりの程度でポリマー殻の内側に捕捉され、溶液または懸濁液の形態のいずれかで、投与を必要とする患者への投与に適することが報告されている。
【0008】
Sakuraiら、US 5,412,072によって利用されたポリマーは、一般に、ポリエチレングリコール、多糖類、ポリアクリルアミドなどから選ばれる親水性セグメントおよびポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリシンから選ばれる疎水性セグメントを含むポリマーである。
【0009】
Yokoyamaら、US 5,449,513によって利用されたポリマーは、一般に、ポリエチレンオキシド、ポリリンゴ酸、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリシン、多糖類などから選ばれる親水性セグメントおよびポリ(L-アスパラギン酸β-ベンジル)、ポリ(L-グルタミン酸γ-ベンジル)、ポリ(β-置換アスパラギン酸塩)、ポリ(γ-置換グルタミン酸塩)、ポリ(L-ロイシン)、ポリ(L-バリン)、ポリ(L-フェニルアラニン)、疎水性ポリアミノ酸、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリメタクリレートアミド、ポリアクリレートアミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアルキレンオキシドおよび疎水性ポリオレフィンから選ばれる疎水性セグメントを含むポリマーである。
【0010】
Desaiら、US 5,439,686;US 5,362,478;US 5,916,596;US 6,096,331;US 6,537,579およびUS 6,749,868によって利用されたポリマーは、一般に、たとえば、アルブミン(35個のシステイン残基を含む)、インスリン(6個のシステイン残基を含む)、ヘモグロビン(α2 β2ユニットごとに6個のシステイン残基を含む)、リゾチーム(8個のシステイン残基を含む)、免疫グロブリン、α-2-マクログロブリン、ビトロネクチン、ビトロネクチン、フィブリノゲンなどの本質的にその構造内にスルフヒドリル基またはジスルフィド結合を有するポリマーである。このようなポリマーは、本明細書において前述したような、その構造内にスルフヒドリル基またはジスルフィド結合を有する合成および天然ポリマーの両方を包含する。スルフヒドリル基またはジスルフィド結合は、既存であるか、または適当な化学的修飾を介して得られることが報告されている。天然ポリマーが好ましいことが報告されており、アルブミン、タンパク質、オリゴペプチド、ポリ核酸などが挙げられる。
【0011】
しかし、Sakuraiら、Yokoyamaら、およびDesaiらによって開示されたポリマーミセルによる不利点は、彼らが、すべて、生物分解性である合成および天然ポリマーの両方を利用することである。生物分解性ポリマーは、薬物放出パターンならびに装填された薬物の放出動態に影響を及ぼす能力があるが、以下の理由からドラッグデリバリーシステムにおいてはあまり好ましくはない。
a)単核食細胞系(MPS)細胞による迅速な捕獲により血漿滞在時間が短いこと;
b)生理的変化への応答の欠如;
c)薬剤の消耗およびその他の副作用を経済的および治療的に引き起こす、一貫した薬物放出動態の欠如;および
d)タンパク質薬剤のカプセル封入にタンパク質変性を引き起こす有機溶媒が関与することによる毒性または免疫原性の増加の誘発。
【0012】
非生物分解性であるポリマーは、以下の文献に利用され、開示されている:
i)Maitraら、US 5,874,111:薬剤は、ポリマー内に捕捉され、形成される高度に単分散したポリマー親水性ナノ粒子がもたらされる。利用されたポリマーは、ビニルピロリドン(VP)などのモノマーまたはビニルピロリドンとポリエチレングリコールフマレート(PEGF)との混合物を含むポリマーである。
ii)Maitraら、US 6,322,817:利用されたポリマーは、ビニルピロリドン、アクリル酸、C3〜C6の鎖長を有するアルキルアクリレート官能化分子量2000〜6000のポリエチレングリコール、C3〜C6の鎖長を有するN-アルキルアクリルアミドおよびC3〜C6の鎖長を有するアルキルシアノアクリレートから選ばれる少なくとも1つの種類の両親媒性モノマーを含む。ポリマーミセル内に捕捉される薬剤は、タキサン誘導体、特にパクリタキセルである。
iii)Loweら、US 2005/0169882:利用されるポリマーは、スマートセグメント(非生物分解性である)および生物分解性セグメントを含む。さらに詳しくは、スマートな非生物分解性セグメントは、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N-アルキルアクリルアミド)、ポリ(N-n-プロピルアクリルアミド)、ポリ(N-イソプロピルメタクリルアミド)、ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(プロピレンオキシド)-ポリ(エチレンオキシド)、エラスチン様ポリペプチドまたはその誘導体を含み、生物分解性セグメントは、多糖類、デキストラン、ポリエステル、ポリラクチド、ポリ(L-乳酸)、ポリ(D,L-乳酸)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、ビオチニル化ポリ(エチレングリコール-ブロック-乳酸)などを含む。
【0013】
US 5,874,111に開示されたポリマーの場合、このようなポリマーは、各モノマーの重合を介して製造され、このようにして得られた重合材料は精製され、透析方法を介してそれを含む水性媒体から単離される。
【0014】
US 6,322,817に開示されたポリマーの場合も、ポリマーは、各モノマーの重合を介して製造され、精製され、透析方法を介して水性媒体から単離される。
【0015】
同様に、Loweら、US 2005/0169882によって開示されたポリマーもまた、精製され、透析方法を介してそれを含む水性媒体から単離される。
【0016】
Maitraら、US 5,874,111によって開示された、そこに開示されたポリマーへの捕捉のための化合物または薬剤に関して、それらは、主として抗原、ウシ血清などである。US 6,322,817の場合、そこに開示されたポリマーへの捕捉のための薬剤は、主として水不溶性タキサン誘導体、特に、パクリタキセルであるが、Loweら、US 2005/0169882は、そこに開示されたポリマー殻へ捕捉しうる多種多様の薬剤を開示する。
【0017】
上記に加えて、Burmanら、US 6,365,191は、US 6,322,817に開示されたポリマーを含む医薬組成物、さらに詳しくは、タキサン誘導体、特にパクリタキセルの医薬組成物を教示する。ここで、該医薬組成物は、エタノール中のパクリタキセルの溶液を、アニオン界面活性剤および緩衝剤を含む水中のポリマーの溶液を加えたデキストロース溶液を含む輸液ビヒクルに加えることによって製造される。
。Burmanらはさらに、灌流液体から薬剤が沈澱することなく12時間以上医薬組成物が安定であること、および薬剤の90%以上(HPLCによる分析)が、灌流液体の製造の24時間後でさえもポリマーミセル内に捕捉されていることを主張する。
【0018】
Burmanら、US 6,365,191は、そこに開示された医薬組成物が、ナノ粒子形態にあることを主張するが、明細書中に、主張されたナノ粒子形態の粒径に関する言及はない。パクリタキセルを含むポリマーミセルの粒径についての唯一の言及は、Maitraら、US 6,322,817による開示の中に見出すことができる:パクリタキセルを含む該ナノ粒子は、30-150 nmの範囲の直径を有することが報告されている。同様に、Loweら、US 2005/0169882によって開示された組成物のポリマーミセルの粒径についての言及はない。
【0019】
US 5,874,111;US 6,322,817;US 6,365,191およびUS 2005/0169882に開示されたポリマーが、ビニルピロリドンおよびN-イソプロピルアクリルアミドなどの1つ以上のモノマーから製造されることに留意することが重要である。さらに、ビニルピロリドンおよびN-イソプロピルアクリルアミドは、ヒト/動物のために作られた医薬組成物中に存在することが、世界中の保健機関によって非難されるのみならず、世界中の薬局方評議会によって設定された厳しい規制による厳重な品質保守の的になる毒性化合物であることに留意することが重要である。たとえば、ポリマーであるポリビニルピロリドンならびにモノマーとしてビニルピロリドンを含むいずれかの他のポリマー中のモノマービニルピロリドンの濃度は、米国および欧州薬局方によって規定されるように、0.001%(すなわち、<10 ppm)という限度を超えるべきではない。
【0020】
US 5,874,111;US 6,322,817;US 6,365,191およびUS 2005/0169882に記載された、モノマーの1つとしてビニルピロリドンを利用するポリマーの製造および単離方法においては、該モノマー、すなわちビニルピロリドンが、0.001%よりも高い上端(すなわち、>10 ppm)で存在するかもしれないという重大な危険性がある。
【0021】
モノマーの1つとしてビニルピロリドンを利用するこのようなポリマーを含む医薬組成物は、モノマー汚染物質としてのビニルピロリドンも含むかもしれない、そして、該モノマー、すなわちビニルピロリドンが、0.001%よりも高い上端(すなわち、>10 ppm)でも存在するかもしれないという同程度に重大な危険性がある。
【0022】
これは、US 6,322,817;US 6,365,191およびUS 2005/0169882に開示された医薬組成物に関して事実でありうる。
【0023】
ポリマーの製造のための反応などのいずれの化学反応も、常に反応物の1つ以上が生成物中に残されるという意味では決して完全ではないことを過度に重視する必要はない。これは、モノマーとしてビニルピロリドンを含み、利用されたビニルピロリドンのモルまたは重量比率に応じて変わる重合反応に適用され、ビニルピロリドンの幾らかの量が、その製造された生成物中に汚染物質として残るというあらゆる可能性がある。
【0024】
上記に関連して、本発明者らの懸念が事実であることがわかった。まさに、US 6,322,817の実施例I、IIおよびIIIの記載のように、3つのモノマー、すなわち、ビニルピロリドン(VP)、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)および無水マレイン酸とポリエチレングリコールとのエステル(MPEG)の重合によって製造されたポリマーの分析から、表Iにまとめたような量のN-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)およびビニルピロリドン(VP)を含むことがわかった。
【0025】
表I:US 6,322,817の実施例I、IIおよびIIIの記載の方法により製造されたポリマーにおける残留モノマーの量
【0026】
ポリマー中に見出されたビニルピロリドンの量が、毒性限界である0.001%(すなわち、10 ppm)の少なくとも8倍以上であることが極めて明白である。
ここで、このようなポリマーを含む医薬組成物は、ヒトまたは動物への投与には非常に危険であり、毒性が高い。
【0027】
緊急でないにせよ、必要性は、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)およびビニルピロリドン(VP)などの毒性モノマーを実質的に含まないポリマーのためのみならず、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)およびビニルピロリドン(VP)などの毒性モノマーを実質的に含まないポリマーを含む医薬組成物のためにも存在する。
【0028】
Burmanら、US 6,365,191によって開示された医薬組成物は、12時間かそれ以上の安定性しかもたないか、または24時間後にはポリマーミセル内に捕捉された薬剤は90%かそれ以上しかないことが報告されていることにも留意されたい。さらに、Loweら、US 2005/0169882によって開示された医薬組成物は、約40%の生物学的活性物質しか装填されず、2、3時間から数日間しか生物学的活性物質が放出されないことが報告されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
より長い安定性ならびにより高い薬物装填を有し、さらに安全で毒性の低い医薬組成物がさらに必要性である。
【0030】
本発明は、モノマー汚染物質を実質的に含まないポリマーを提供するのみならず、ヒト/動物への投与にとって安全であり、より長い安定性をもつ、このような所望のポリマーを含む医薬組成物をも提供するという進歩の前方へ向かうステップである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
(本発明の目的)
本発明の目的は、モノマー汚染物質を実質的に含まない、高純度の生体適合性および非生物分解性ポリマーを提供することである。
本発明のもう1つの目的は、モノマー汚染物質を実質的に含まない、高純度の生体適合性および非生物分解性ポリマーの製造方法を提供することである。
本発明のさらにもう1つの目的は、高純度でモノマー汚染物質を実質的に含まない、生体適合性および非生物分解性ポリマーを含むナノ粒子形態における水難溶性薬剤または化合物の医薬組成物を提供することである。
本発明のさらなる目的は、高純度でモノマー汚染物質を実質的に含まない、生体適合性および非生物分解性ポリマーを含むナノ粒子形態における水難溶性薬剤または化合物の医薬組成物の製造方法を提供することである。
【0032】
本発明のさらに他の目的は、安全で毒性の低い、高純度でモノマー汚染物質を含まない生体適合性および非生物分解性ポリマーを含む水難溶性薬剤または化合物のナノ粒子医薬組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、水難溶性薬剤または化合物および高純度でモノマー汚染物質を含まない生体適合性および非生物分解性ポリマーを含むナノ粒子形態における医薬組成物の高度に選択的な製造方法を提供することである。
さらに別の本発明の目的は、投与を必要とする患者への、高純度でモノマー汚染物質を実質的に含まない生体適合性および非生物分解性ポリマーを含むナノ粒子医薬組成物の投与方法を提供することである。
本発明のさらなる目的は、より長い時間安定である、高純度でモノマー汚染物質を含まない生体適合性および非生物分解性ポリマーを含むナノ粒子医薬組成物を提供することである。
【0033】
(本発明に使用した略語)
VP=ビニルピロリドンまたは1-ビニルピロリジン-2-オン
NIPAM=N-イソプロピルアクリルアミド
MPEG =無水マレイン酸とポリエチレングリコールのエステル
MBA=N,N'-メチレンビスアクリルアミド
TMED=テトラメチルエチレンジアミン
APS=過硫酸アンモニウム
LCST=より低い臨界溶液温度
DSC=示差走査熱量測定
TGA=熱重量分析
CMC=臨界ミセル濃度
【0034】
(本発明の要約)
本発明者らの努力において、彼らは、もし従来技術のすべての制限ではないとしても、その大部分を克服して、すべての説明された目的が、達成されうるものであることを見出した。
【0035】
まず初めの段階で、本発明者らは、得られたポリマー中の各個々のモノマー汚染物質の量が規定された毒性限界よりも低い、NIPAMおよびVPの両方のモノマーユニットを含むポリマーが得られることを見出した。
【0036】
さらに詳しくは、本発明者らは、毒性のNIPAMおよびVPのモノマー汚染物質を実質的に含まない、モノマーユニットとしてNIPAM、VPおよびMPEGを含むポリマーが得られることを見出した。特に、本発明者らは、0.001% w/wよりも低い濃度で汚染物質を含む高純度でこのようなポリマーが、得られることを見出した。
【0037】
NIPAM、VPおよびMPEGの重合によって得られたポリマーを含む水溶液を、従来技術に教示されたような透析法とは異なって、透析濾過または限外濾過のステップに付すことを含む、高度に選択的な方法を介して、所望の特性を有するポリマーを得ることができた。
【0038】
本発明方法によって得られたポリマーが透析のステップを含む従来技術、特にUS 6,322,817に開示された方法よりも優れていることは、表IIにまとめたように、各ポリマーに含まれる残留モノマーの比較から最もよく理解できた。
【0039】
表II:ディアフィルトレーションを利用する本発明方法により得られたポリマーに対する、透析を利用するUS 6,322,817に開示の方法により得られたポリマー中に含まれたモノマー汚染物質における比較
【0040】
透析は、半透膜を介する選択的な拡散による、溶液中のより大きな分子からより小さな分子の、またはコロイド粒子から溶解した物質のゆっくりとして分離を含む方法であることに留意すべきである。典型的な透析法において、精製のためのポリマー溶液は、半透膜内に含まれ、低分子量溶質(モノマー)が、純粋な溶媒、一般に膜の外側の水によって置き換えられる。この溶媒は、ポリマーを含む溶液中の拡散しうる溶質(NIPAMおよびVPなどのモノマー)の濃度が低下するまで、定期的または継続的に交換される。
【0041】
透析法とは異なり、透析濾過技術は、膜を横切るポンプによる液体の機械的流れを含み、そのことによって、液体がポンプで膜の表面に沿って接線方向に送り込まれる(このため、透析濾過は、タンジェンシャルフローフィルトレーションとしても知られている)。適用された圧力は、膜を通して濾液側へ液体の一部を選択的に拡散させる。保持されたポリマー成分は、半透膜の表面に蓄積しない。
【0042】
精製のために取り込まれるポリマーの水溶液の最初の量または体積が、それ自体残るかまたは同じである、あるいは該操作の終了または完了時に希釈される、透析法とは対照的に、透析濾過法は、ポリマーの水溶液が接線方向の流れに沿って一掃されるので、同時にポリマーを含む該溶液が濃縮され、ポリマーのより濃縮された溶液が得られる。たとえば、水5リットル中に約100 gmのポリマーを含む溶液をそれぞれ透析および透析濾過に付すと、前者の方法の終了時には水4.5〜5.5リットル中にのポリマー100 gmを含む溶液が得られるが、後者の方法の終了時には初期体積の減少または濃縮が、一般に初期体積の1/4〜1/6の間の程度までになり、水約0.8〜1.3リットル中にポリマー100 gmを含む最終溶液が得られる。
【0043】
さらに、前述したように、透析法では、ポリマーの溶液を含む膜の外側に保持された溶媒は、手動で定期的または継続的に交換される必要があるが、透析濾過法では。このような溶媒の手動の定期的または継続的交換は不要である。このことは、前者をその操作中に手動の監視を必要とする冗長なものにするが、後者の方法は、完全に自動化および制御されており、したがって、その操作中に手動の監視を必要とせず、冗長さが少なく、便利である。
【0044】
さらに、開放環境下で操作する透析法と比較して閉鎖環境下で操作可能である透析濾過法により、微生物汚染の可能性が最小になるか、またはなくなり、したがって、適正製造基準に適合するのみならず、世界中の規制指針にも適合して、無菌状態下での操作とみなされる。
【0045】
さらに、手動の操作を含むことのみならず、透析が作動する固有の原理にもより、単位操作のための周期は、非常に長く、一般に、約24〜36時間かかる。それに対し、作動する固有の原理により、透析濾過法は、非常に短い周期しか必要とせず、通常、完了のために1時間以下しかかからない。言い換えれば、透析濾過法は、透析法よりも少なくとも25倍速く、したがって、工業的に、より適している。
【0046】
一方、透析法は、操作および完了のためにかなり長い周期を必要とし、この方法のもう1つの固有の不利点は、少ない体積/量のポリマーの溶液しか精製することができないことである。このような制限は、透析濾過法にはなく、一般に、多い体積/量を精製することができ、少なくとも4〜5倍の溶液の程度まで精製される。たとえば、透析法が、1回の周期において水5.0リットル中のポリマー100 gの溶液を精製する能力を有するならば、1回の周期の透析濾過法によって、水20.0〜25.0リットル中のポリマー400〜500 gを精製することができる。言うまでもなく、透析濾過法のより大きい処理能力は、もう1つの利点であり、すなわち、より速い操作時間、自動化および制御された操作、便利で冗長さが少ないこと、初期溶液の同時濃縮または体積の減少、適正製造基準および規制指針に適合して、微生物汚染の最小化または無いこと、などのすでに前述した他方の利点に加えて、提供される。
【0047】
しかし、前記し、議論したように、透析法を凌ぐ透析濾過法の最も重要な利点は、それぞれの方法によって得られるポリマーの純度にある。透析濾過法は、モノマー汚染物質を実質的に含まないポリマーを生成し、したがって、ヒト/動物消費にとって非毒性で安全である[表II参照]。
【0048】
最後に、しかし、少なからず、透析濾過法のもう1つの利点は、もし、ポリマーが溶液から固体に単離されることが要求される/必然であるならば、たとえば、凍結乾燥などを介する溶媒の蒸発によって、次いで、一般に初期体積の1/4〜1/6の間の程度までポリマー溶液初期体積の減少または濃縮をもたらす該方法により、蒸発/凍結乾燥周期も、徹底的に減少することである。透析法では、初期体積の減少または濃縮が起こらないので、もし、ポリマーが溶液から固体に単離されることが要求される/必然であるならば、蒸発/凍結乾燥周期は、より長くなる。
【0049】
要するに、透析法と比較して透析濾過法は、適正製造基準に適合して、大規模製造に容易に拡張可能であり、したがって、工業的に、より実行可能で扱いやすい。
【0050】
透析濾過法と透析法との本質的な差異をすぐに参照できるように、表IIIにまとめる。
【0051】
一方、ある程度まで、透析濾過または限外濾過技術は、種々の精製に適用されるが、ポリマーの分野におけるそれらの適用は、これまでに報告されておらず、本発明の新規性および進歩性の態様を形成する。
【0052】
さらに、本発明は、1H-NMR、13C-NMRおよびフーリエ変換赤外(FT-IR)などの種々の分光分析法によって得られ、後記の構造式(I)を有することが見出された、高純度であり、モノマー汚染物質を実質的に含まないポリマーを特徴とする。
【0053】
さらに、スイスアルビノマウスにおける放射標識ポリマーによる研究に基づいて、本明細書に後述する詳細から明らかなように[表VIおよびVIIおよび図6を参照]、本発明ポリマーが、非生物分解性であり、沈積することなく身体から迅速に排出され、重要な臓器において分解されることが見出され、このことから、ヒト/動物使用のためのポリマーの安全性および有用性が示唆される。
【0054】
表III:本発明ポリマーの水溶液の精製に対する、透析および透析濾過法の比較
【0055】
さらに、本明細書の後述する部分での詳細から明らかなように、局所的毒性(皮下および静脈内)、800mg/kgの動物体重までの標的臓器投与毒性、6ヶ月の周期的投与毒性などの広範な実験に基づいて[図7−10参照]、本発明ポリマーが、ヒト/動物に使用し、投与するのに適した医薬組成物の製造における使用にとって、非毒性、生体適合性および生物学的に安全であることが見出された。
【0056】
高純度でモノマー汚染物質を実質的に含まず、さらに生体適合性、非生物分解性、安全および非毒性である本発明のポリマーが、ヒト/動物への使用および/または投与にとって同様に安全で非毒性である医薬的に許容しうる賦形剤とともにナノ粒子の形態においてポリマーを含む医薬組成物の製造において特に有用であることがさらに見出された。
【0057】
特に、生体適合性、非生物分解性、安全および非毒性の本発明ポリマーが、完全またはほとんど完全にそのポリマー殻内に多くの水難溶性薬剤または化合物(ここで、該水難溶性薬剤または化合物は、粒径30-150 nmのナノ粒子形態において利用可能である)を捕捉することが見出された。
【0058】
(本発明ポリマーの構造)
【0059】
さらに詳しくは、本発明ポリマーは、多くの水難溶性薬剤または化合物を完全またはほとんど完全にそのポリマー殻内に捕捉する、医薬的に許容しうる賦形剤を含むナノ粒子形態における医薬組成物の製造に使用することができることが見出された。このような水難溶性薬剤または化合物は、水溶解度が10 mg/ml未満のものである。このような水難溶性薬剤または化合物の例として、抗がん剤、抗炎症薬、抗菌薬、制吐薬、降圧剤、性ホルモン、ステロイド、抗生物質、免疫調節剤、麻酔薬などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ポリマー殻内に捕捉されうる抗がん剤の典型的な例は、パクリタキセル、ドセタキセルおよびその他の関連タキサン誘導体;イリノテカン、トポテカンおよびその他の関連カンプトテシン誘導体;ドキソルビシン、ダウノマイシンおよび関連アントラサイクリン誘導体;シスプラチン;オキサリプラチン;5-フルオロウラシル;ミトマイシン;メトトレキセート;エトポシド;ベツリン酸およびその誘導体;およびウエデロラクトンおよびその誘導体である。ポリマー殻内に捕捉されうる抗炎症薬の典型的例として、インドメタシン、イブプロフェン、ケトプロフェン、フルビプロフェン、ピロキシカム、テノキシカムおよびナプロキセンが挙げられる。ポリマー殻内に捕捉されうる抗菌薬の典型的例として、ケトコナゾールおよびアムホテリシンBが挙げられる。ポリマー殻内に捕捉されうる性ホルモンの典型的例として、テストステロン、エストロゲン、プロゲステロンおよびエストラジオールが挙げられる。ポリマー殻内に捕捉されうるステロイドの典型的例として、デキサメタゾン、プレドニゾロンおよびトリアムシノロンが挙げられる。ポリマー殻内に捕捉されうる降圧剤の典型的例として、カプトプリル、ラミプリル、テラゾシン、ミノキシジルおよびパラゾシンが挙げられる。ポリマー殻内に捕捉されうる制吐薬の典型的例として、オンダンセトロンおよびグラニセトロンが挙げられる。ポリマー殻内に捕捉されうる抗生物質の典型的例として、メトロニダゾールおよびフシジン酸が挙げられる。ポリマー殻内に捕捉されうる免疫調節剤の典型的例として、シクロスポリンおよビフェニルジメチルジカルボン酸が挙げられる。ポリマー殻内に捕捉されうる麻酔薬の典型的例として、プロポフォール、アルファキサロンおよびヘキソバルビタールが挙げられる。
【0060】
特に抗がん剤に関して、本発明ポリマーが、そのポリマー殻内に、パクリタキセル、ドセタキセル、エトポシドおよびUS 6,403,816および我々の継続中の2005年2月9日出願のインド出願No.265/DEL/2005に開示の以下の構造(II)、(III)および(IV)を有するMJ-1098、DRF-4012およびDRF-4015と称されるものような種々のベツリン酸誘導体などの水難溶性薬剤または化合物を完全に捕捉する能力を持つことが見出された。
【0061】
US 6,403,816に開示のMJ-1098(II)
インド出願No.265/DEL.2005に開示のDRF-4012(III)
インド出願No.265/DEL.2005に開示のDRF-4015(IV)
【0062】
前述の水難溶性薬剤または化合物のナノ粒子医薬組成物、特にパクリタキセル、ドセタキセルおよびエトポシドならびに前述のMJ-1098、DRF-4012およびDRF-4015などの強力な抗がん化合物などの水難溶性薬剤または化合物のナノ粒子医薬組成物は、12時間という安定性を有するUS 6,365,191に開示のBurmanらの方法により製造されたパクリタキセルのナノ粒子医薬組成物と比べて、24時間以上というより長い安定性を有することが見出された。「安定性」という用語を参照することにより、水難溶性薬剤または化合物が、それを含む医薬組成物における溶液から沈澱することなく、該溶液中に残っている、時間で計算される期間を意味するとみなされるべきである。
【0063】
さらに、前述の水難溶性薬剤または化合物のナノ粒子医薬組成物、特にパクリタキセル、ドセタキセルおよびエトポシドならびに前述のMJ-1098、DRF-4012およびDRF-4015などの強力な抗がん化合物などの水難溶性薬剤または化合物のナノ粒子医薬組成物において、該薬剤または化合物は、24時間後でさえも95%以上の範囲までがポリマーミセル内に捕捉されることが見出された。それに対し、US 6,365,191に開示のBurmanらの方法により製造されたパクリタキセルのナノ粒子医薬組成物において、薬剤は、24時間後でさえも90%にとどまる範囲までがポリマーミセル内に捕捉されることが見出された。
【0064】
高純度でモノマー汚染物質を実質的に含まない本発明ポリマーを特徴とするナノ粒子形態における水難溶性薬剤または化合物の医薬組成物と、US 6,365,191に開示のナノ粒子形態におけるパクリタキセルの医薬組成物の比較は、表IVにまとめた比較から明らかである。
【0065】
表IV:本発明の水難溶性薬剤または化合物の医薬組成物とUS 6,365,191に開示の医薬組成物との比較
【0066】
本発明方法により得られた高純度でモノマー汚染物質を実質的に含まないポリマーという利点のみならず、これまでに詳述した従来技術のポリマーおよび医薬組成物を越えて本発明ポリマーを含む水難溶性薬剤または化合物の医薬組成物が有する利点に加えて、本発明者らはさらに、水難溶性薬剤または化合物の医薬組成物の製造のための高度に選択的な方法を見出した。ここで、利用されたポリマーのポリマー殻内に捕捉された該水難溶性薬剤または化合物は、一貫したサイズのナノ粒子形態で製造される。この高度に選択的な方法は、もう1つの本発明の態様である。
【0067】
第一の段階で、BurmanらUS 6,365,191における、実施例1-40に含まれる記載および標題「好ましい化合物」および「注入用製剤」下の記載から、パクリタキセルの医薬組成物は、必要量の希釈液(一般に5%または10%のデキストロース溶液)中に必要量のポリマーを最初に溶解し、次いで、陰イオン性界面活性剤を加えて、透明な溶液を得、そのpHを必要に応じて、緩衝剤で調節することによって製造されるのが明らかであろう。次いで、得られる希釈液中のポリマーおよび陰イオン性界面活性剤の透明な溶液に、パクリタキセルのアルコール性溶液を加えて、投与に有用なナノ粒子形態における医薬組成物であることを本質的に主張する、0.1〜10 mg/mlの範囲の種々の薬剤濃度を得る。
【0068】
前述のように、US 6,365,191は、このようにして得られたナノ粒子のサイズについて言及していないが、BurmanらUS 6,365,191における、実施例1-40および標題「好ましい化合物」および「注入用製剤」下に記載された方法により、パクリタキセルの医薬組成物を製造する彼らの試みにおいて、本発明の管理下にあるナノ粒子に一貫するサイズを生み出すかまたはもたらすことが見出された。
【0069】
この背景に対して、本発明者らは、一貫したサイズのナノ粒子の製造が、高度に選択的であり、以下の事項よって主に決まることを見出した。
i)パクリタキセルのアルコール性溶液を、希釈液中のポリマーまたは他の賦形剤の溶液に加える速度;
ii)パクリタキセルのアルコール性溶液の体積およびそれを加える希釈液の体積;
iii)パクリタキセルのアルコール性溶液を、希釈液中のポリマーおよび医薬的に許容しうる賦形剤の溶液に加える針の内径または孔径;および
iv)パクリタキセルのアルコール性溶液を加える際の希釈液およびポリマーおよび医薬的に許容しうる賦形剤を含む容器の位置。
【0070】
特に、本発明者らは、以下の事項:
a)特定の期間内での希釈液中のポリマーおよび他の賦形剤の溶液への注射器を通してのパクリタキセルのアルコール性溶液の添加;
b)希釈液中のポリマーおよび医薬的に許容しうる賦形剤の溶液へのより少ない量のパクリタキセルのアルコール性溶液の添加のための0.305 mm〜0.356 mmの内径を有する針の利用;または
c))希釈液中のポリマーおよび医薬的に許容しうる賦形剤の溶液へのより多い量のパクリタキセルのアルコール性溶液の添加のための0.559〜0.711 mmの内径を有する針の利用;
d)希釈液中のポリマーおよび他の賦形剤の溶液への注射器を通してのパクリタキセルのアルコール性溶液の注入(ここで、パクリタキセルのアルコール性溶液を加える注射器の針は、希釈液中に浸したままである);および
e)必要に応じて、パクリタキセルのアルコール性溶液の、希釈液中のポリマーおよび他の賦形剤の溶液への注入中、逆さの位置に、該希釈液を含む容器を維持すること;
を通じてのみ、最小または無視できる程度のサイズ変化およびポリマー殻内の薬物の一貫した装填を有する一貫したサイズのナノ粒子の生成を達成することができることを見出した。
【0071】
前述の高度に選択的な方法が、パクリタキセルのみのナノ粒子の生成のみならず、他の水難溶性薬剤または化合物、特にドセタキセル、エトポシド、ベツリン酸、前述の式(II)のMJ-1098、式(III)のDRF-4012、式(IV)のDRF-4015などの強力な抗がん性ベツリン酸誘導体の一貫した粒子サイズのナノ粒子の生成に置いても等しく有効であることがさらに見出された。
【0072】
もし、たとえば1〜5 mlなどのより少ない体積の水難溶性薬剤または化合物の溶液の、希釈液中のポリマーおよび他の賦形剤の溶液(注入されたものの約35倍の体積)への添加時間が、4秒を超えるならば、あるいはもし、針(これを通って水難溶性薬剤または化合物の溶液が注入される)の内径が、0.305 mm〜0.356 mmの範囲外であるならば、このような添加が、水難溶性薬剤または化合物のナノ粒子の一貫しない粒子サイズの生成ならびに安定性の乏しい医薬組成物をもたらし、それによって溶液の長期間の透明性がなくなり、短期間で乳白色になることが特に見出された。
【0073】
同様に、もし、たとえば5〜15 mlなどのより多い体積の水難溶性薬剤または化合物の溶液の、希釈液中のポリマーおよび他の賦形剤の溶液(注入されたものの約35倍の体積)への添加時間が、10秒を超えるならば、あるいはもし、針(これを通って水難溶性薬剤または化合物の溶液が注入される)の内径が、0.559〜0.711 mmの範囲外であるならば、このような添加が、水難溶性薬剤または化合物のナノ粒子の一貫しない粒子サイズの生成ならびに安定性の乏しい医薬組成物をもたらし、それによって溶液の長期間の透明性がなくなり、短期間で乳白色になることが特に見出された。
【0074】
このことは、2つの水難溶性抗がん性薬剤または化合物、すなわち、パクリタキセルおよび式(III)のDRF-4012のベツリン酸誘導体の医薬組成物に関して例証された。ここで、該薬剤の溶液の添加の時間ならびにそれを通ってこのような溶液が希釈液中のポリマーおよび医薬的に許容しうる賦形剤の溶液に添加される針の内径の効果を表Vにまとめる。
【0075】
本発明の医薬組成物は、2つのバイアルキットとして存在するのが好都合である:
a)一方は、水混和性溶媒またはその混合物中の適当な濃度における水難溶性薬剤または化合物の溶液を含み;
b)他方は、水性溶媒(一般に、注射用グレードの水)中の高純度でモノマー汚染物質を実質的に含まない本発明ポリマーおよび医薬的に許容しうる賦形剤の溶液を含み、両方のバイアルは、滅菌され、無菌状態で製造され、包装される。
【0076】
次いで、2つのバイアルの内容物を希釈液に加えた後、ヒト/動物に投与する。
必要に応じて、キットはさらに、希釈液、ならびに少ない体積である約1〜5 mlのバイアルa)の内容物が、その約35倍の体積のバイアルb)の内容物に加えられるならば、注射器および内径0.305〜0.356 mmの針を含み、あるいは、多い体積である約10〜15 mlのバイアルa)の内容物が、その約35倍の体積のバイアルb)の内容物に加えられるならば、注射器および内径0.559〜0.711 mmの針を含む。
【0077】
特に、パクリタキセルを含むキットの場合、乳がんの治療のための患者への投与のために、2−バイアルキット製品は、以下を含む:
a)エタノール20 ml中のパクリタキセル400 mgの溶液を含む一方のバイアル;
b)水20 ml中の高純度でモノマー汚染物質を実質的に含まない本発明ポリマー200 mgおよび医薬的に許容しうる賦形剤を含む溶液を含む他方のバイアル;および
必要に応じて、キットはさらに、最小または無視できるサイズ変動およびポリマー殻内での一貫した薬物の装填を有する一貫した粒径およびより長い安定性のナノ粒子での投与に適した医薬組成物を製造するための、10%デキストロース溶液の500 mlビン、ならびに10秒を超えない期間、好ましくは6〜の期間でバイアルb)の溶液を加えられた10%デキストロース溶液の500 mlビンへのバイアルa)の溶液の注射のための注射器および内径0.711 mmの針を含む。
【0078】
表V:水難溶性薬剤または化合物の溶液の添加時間およびこのような溶液が希釈液中のポリマーおよび他の賦形剤の溶液にそれを介して加えられる針の内径の効果
【0079】
【0080】
要約すれば、前述したように、本発明は、ナノ粒子技術の分野における従来法の制限のすべてではないが大部分への解決を提供することにおける進歩であり、以下を提供する:
i)ポリマー中の毒性のNIPAMおよびVP濃度が<0.001%の、高純度でモノマー汚染物質を実質的に含まない、NIPAM、VPおよびMPEGから選ばれる3つのモノマーユニットを含むポリマー;さらに、ヒト/動物使用のための生体適合性、非生物分解性、安全および非毒性であるように構築されている;
ii)そのように製造されたポリマーの水溶液を透析濾過に付すことを含む、ポリマー中の毒性のNIPAMおよびVP濃度が<0.001%の、高純度でモノマー汚染物質を実質的に含まない、NIPAM、VPおよびMPEGから選ばれる3つのモノマーユニットを含むポリマーの高度に選択的な製造方法;
iii)安全で非毒性であることからヒト/動物使用または投与のために非常に適した、高純度でモノマー汚染物質を実質的に含まないポリマーおよび医薬的に許容しうる賦形剤を含む、ナノ粒子形態における水難溶性薬剤または化合物の医薬組成物;
iv)ナノ粒子の一貫した粒径および一貫した薬剤装填を有する、高純度でモノマー汚染物質を実質的に含まないポリマーおよび医薬的に許容しうる賦形剤を含む、ナノ粒子形態における水難溶性薬剤または化合物の医薬組成物の高度に選択的な製造方法;および
v)ナノ粒子の一貫した粒径および高い水準の薬剤装填および長期安定性を有する、高純度でモノマー汚染物質を実質的に含まないポリマーおよび医薬的に許容しうる賦形剤を含む、ナノ粒子形態における水難溶性薬剤または化合物の医薬組成物。
【0081】
(発明の詳細な記載)
A.本発明ポリマーの製造
本発明ポリマーは、ポリマー鎖が、どのようなスルフヒドリル基またはジスルフィド結合も含まない架橋剤と架橋する、NIPAM、VPおよびMPEGから選ばれる3つのモノマーユニットを含む。
【0082】
架橋剤は、直線ポリマー鎖に架橋を提供することによって、重合中に重要な役割を演じ、一般に、使用するときはいつでも、二官能性ビニル誘導体である。架橋剤は、二官能性以上である、すなわち、2つ以上の反応性部位を有することができる。有利に使用することができる二官能性ビニル誘導体は、N,N'-メチレンビスアクリルアミド(MBA)であり、これが好ましい。
【0083】
本発明ポリマーは、重合反応のために通常採用される一般的方法によって製造することができる。
【0084】
特定の実施態様において、本発明ポリマーは、モノマー、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)、1-ビニル-2-ピロリドン(VP)および無水マレイン酸のポリエチレングリコール(モル重量6000)エステル(MPEG)を、水性媒体中、活性化剤、重合開始剤および架橋剤の存在下でフリーラジカル重合に付すことによって、製造することができる。
【0085】
モノマー、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)およびビニルピロリドン(VP)組み合わせは、55:22〜65:35の範囲の重量比において使用され得たが、使用されうる(NIPAM+VP):MPEGのモノマー組成は、80:20〜95:5の範囲である。さらに詳しくは、好ましくは、モノマー、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)およびビニルピロリドン(VP)の組み合わせは、58:32〜62:28の範囲の重量比で使用され、(NIPAM+VP):MPEGの共モノマー組成は、90:10または95:5であり、特定の比率が、無作為に超分岐したNIPAMおよびVPのコポリマーユニットを一貫してもたらすという理由により、所望の生体適合性、非生物分解性および生物学的安全プロフィールを、無水マレイン酸-ポリエチレングリコール(MPEG)のジエステルアダクト(メジャー)およびモノエステルアダクト(マイナー)による水素結合から形成された外殻コーティングによって安定化されるポリマーに与えることが見出される。
【0086】
重合開始剤は、フリーラジカル形成の開始において重要な役割を演じる。使用しうる開始剤は、単独または組み合わせて使用される、過酸化ジアシル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジアセチル、過酸化ジアルキル、過酸化第三ブチルおよび過酸化第四アミルなどの過酸化化合物または2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)などのニトリルベース重合開始剤、アンモニウムペルジスルフェートまたはアンモニウムペルスルフェート(APS)などの無機塩重合開始剤でありうる。
上述の重合開始剤のうち、アンモニウムペルスルフェート(APS)が好ましい。
【0087】
しかし、重合開始剤は、重合を開始するが、重合反応は、重合開始剤からのフリーラジカルの形成を触媒する活性化作用剤(活性化剤として知られることが多い)の存在によって促進されることが見出される。このような活性化剤は、テトラメチルエチレンジアミン(TMED)および硫酸アンモニウム第一鉄(FAS)から選ばれ、TMEDおよびFASの組み合わせが好ましい。重合開始剤および活性化剤のいずれの組み合わせも重合反応に使用することができる。2つ以上の開始剤を使用することもできる。同様に、2つ以上の活性化剤を使用することもできる。
【0088】
前述したように、架橋剤は、直線ポリマー鎖内に架橋を提供することによって、重合中に重要な役割を演じ、一般に、使用するときはいつでも、二官能性ビニル誘導体である。二官能性以上、すなわち、2つの反応性部位を有することができる。使用されうる二官能性ビニル誘導体は、N,N'-メチレンビスアクリルアミド(MBA)であり、これが好ましい。
【0089】
重合は、窒素またはアルゴンでありうる不活性ガスの存在下で行われる。
一般に、重合反応は、最初、適切な量の各モノマー、すなわち、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)、1-ビニル-2-ピロリドン(VP)および無水マレイン酸のポリエチレングリコール(モル重量6000)エステル(MPEG)を、一般に水である水性媒体に溶解することによって行われる。このようにして得られた各モノマーの水溶液に、を架橋剤および活性化剤の水溶液を連続して加える。溶液を不活性ガスで約30-60分間通気することによって、脱気する。脱気した溶液に、重合開始剤の水溶液を加え、重合が完了するまでの期間、継続的不活性ガス通気下、溶液を25℃〜45℃の温度、好ましくは25℃〜35℃の温度で重合に付す。
【0090】
架橋剤は、総モノマー含量の1.3-1.5 % w/wの範囲の量、より好ましくは、総モノマー含量の1.35-1.4% w/wの範囲の量で使用することができる。
【0091】
活性化剤は、総モノマー含量の15-18 % w/wの範囲の量、より好ましくは総モノマー含量の15-16 % w/wの範囲の量で使用することができる。
【0092】
重合開始剤は、総モノマー含量の20-30 % w/wの範囲の量、より好ましくは、総モノマー含量の23-25 % w/wの範囲の量で使用することができる。
【0093】
重合反応の進行は、HPLCによってモニターされ、通常、約3-6時間で完了する。
【0094】
重合反応の完了後、予め滅菌した使い捨て0.2μmポリエーテルスルホン膜1”カプセルフィルター、孔径0.8および0.2μm;タイプDPS-5101AA-201(M/s Advanced Microdevices Pvt.Ltd製、インド)を通して濾過する。Proflux M12(Millipore)透析濾過装置を使用して、反応容器の濾過された内容物を透析濾過し、モノマー汚染物質および他の低分子量不純物を除去する。
【0095】
透析濾過は、一般に、1時間以内に完了し、通常、モノマー汚染物質を実質的に含まない溶液のみならず、濃縮形態、通常、透析濾過に付した溶液の初期体積の1/4〜1/6をもたらす。必要ならば、モノマー汚染物質を実質的に含まない、このようにして得られた濃縮溶液をもう一周期透析濾過に付すことができる。高純度でモノマー汚染物質を実質的に含まない本発明ポリマーの濃縮溶液を、凍結乾燥のステップに付して、医薬組成物において利用するための固体凍結乾燥形態のポリマーを得ることができ、あるいは、濃縮溶液それ自体を該医薬組成物の製剤のために直接利用することができる。
【0096】
典型的な実施態様において、重合反応は、適切な量の各モノマー、すなわち、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)、1-ビニル-2-ピロリドン(VP)および無水マレイン酸のポリエチレングリコール(モル重量6000)エステル(MPEG)を水に溶解することによって行われる。このようにして得られた各モノマーの水溶液に、適切な体積の架橋剤N,N'-メチレンビスアクリルアミド(総モノマー含量の約1.37 % w/w)の溶液および適切な体積のテトラメチルエチレンジアミン(TMED、総モノマー含量の約15.4% w/w )と硫酸アンモニウム第一鉄(FAS)(総モノマー含量の約0.1 % w/w)の水溶液(0.5% w/v)を含む活性化剤の組み合わせの水溶液を加える。一方の活性化剤を加え、その後、他方の活性化剤と重合開始剤を加えるのが好ましい。約30分間窒素を通気することによって、溶液を脱気する。脱気した溶液に、適切な体積の重合開始剤、アンモニウムペルスルフェート(総モノマー含量の約24 % w/wの水溶液(約80 % w/v)を加え、好ましくは、重合が完了するまでの期間、継続的窒素通気下、25℃〜35℃の温度にて溶液を重合に付す。通常、重合反応は、3-5時間で完了する。
【0097】
重合反応の完了後、予め滅菌した使い捨て0.2μmポリエーテルスルホン膜1”カプセルフィルター(孔径0.8および0.2μm)を通して溶液を濾過する。Proflux M12(Millipore)透析濾過装置を使用して、反応容器の濾過された内容物を透析濾過し、モノマー汚染物質および他の低分子量不純物を除去する。
【0098】
典型的実施態様において、50 mlの水中の約1 gの濃度のポリマーの溶液を、透析濾過に付し、透析濾過後すぐに、NIPAMとVPの両方の0.001%未満を含む、初期体積の約1/4〜1/6中のポリマーの濃縮溶液、約12-13 mlの水中の約1 gのポリマーの溶液が得られる。
【0099】
ポリマー中の残留モノマー、特に残留VPおよびNIPAMの検出および定量をHPLCによって行った。モノマーの検出のために使用することができるHPLCシステムは、逆相RP-18(C-18)カラム[Lichrospher RP-18e、5μ、250 mm×4 mm]を使用するAgilent 1100シリーズまたは等価物である。使用した移動相は、流速1 ml/分、比率80:20の水とアセトニトリルの混合物であり、サンプル注入体積は50 μlである。
【0100】
実行時間は10分間であり、カラム温度は30℃であり、検出波長は226 nmである。
上記条件下、NIPAMの保持時間は約3分であり、VPの保持時間は約5分であった。
【0101】
そのようにして得られたポリマーの濃縮溶液は、高純度でモノマー汚染物質を実質的に含まず、凍結乾燥のステップに付して、医薬組成物において利用するための固体凍結乾燥形態のポリマーを得ることができ、あるいは、濃縮溶液それ自体を該医薬組成物の製剤のために直接利用することができる。しかし、ポリマーの濃縮溶液それ自体を医薬組成物への製剤のために利用するのが好ましい。
【0102】
B.本発明ポリマーの特徴決定
前述の方法によって得られた本発明ポリマーを、1H-NMR、13C-NMR、フーリエ変換赤外(FT-IR)などの広範な分光分析および示差走査熱量測定(DSC)および熱重要分析(TGA)などの熱分析に付して、このようにして得られたポリマーの構造を解明した。
【0103】
CDCl3中の本発明ポリマーの1H NMRスペクトルは、1.14(br、-CH(CH3)2);1.45(br、-CH2-CH-N(VP-環);1.63(br,-CH2-CHC(=O)NH);1.99(br,-CH C(=O)NH-)、CH2(VP 環)、2.36(CH2、VP 環)、3.0(-O-CH2-CH2-)、3.23(CH2-N-);3.62-3.66(Br、CH2、MPEG);3.72(NH-CH(CH3)2);3.97(Br、CH)であるδ(ppm)におけるピークを示す。本発明ポリマーの1H-NMRスペクトルを、図1にまとめる。
【0104】
本発明ポリマーの13C NMRスペクトルは、174(C=O);76.6-77.6(CDCl3 についての多重およびポリマー骨格についてのCH);70.6(CH2's、MPEG);41.6(イソプロピルユニットについてのCH);31.8(CH2's、ポリマー骨格);22.6(CH3's、イソプロピル)であるδ(ppm)におけるピークを示す。本発明ポリマーの13C-NMRスペクトルを、図2にまとめる。
【0105】
本発明ポリマーのフーリエ変換赤外(FT-IR)スペクトルは、3500(s、OH);3296(s、NH、sec-アミド);2972-2933(s、CH、CH2、CH3);1651(br、強、スプリットピーク エステルC=OおよびアミドIのC=O);1546(s、アミドIIのNHベンドおよびおそらく遊離酸のC=O、マイナー);1387、1367(イソプロピル基の二重、CH3、変形);1172-1129(m、O-C-O)である周波数値(cm-1)におけるピークを示す。本発明ポリマーのフーリエ変換赤外(FT-IR)スペクトルを、図3にまとめる。
【0106】
これらの特徴決定試験は、本発明ポリマーが以下の式(I)で示される構造を有することを確認する。
【0107】
さらに、該ポリマーの物理化学的特性を詳細に決定するために、熱特性、臨界ミセル濃度(CMC)、溶解度およびpH、保存安定性などの種々の特性を評価した。
【0108】
熱重力分析(TGA)は、溶媒の減少および約310℃にて起こる分解が開始する前にポリマーの特にMPEGユニットにおいて起こっている高分子反応を示す、51-260℃からいくらかの重量減があることを明らかにした。これは、ポリマーが、大部分MPEGユニットによって提供されうる高い熱安定性を有することを示す。本発明ポリマーのTGAサーモグラムを図4にまとめる。
【0109】
さらに、図5に示すポリマーの示差走査熱量測定(DSC)プロフィールは、どのようなガラス転移温度(Tg)も示さなかったが、58℃の融点(Tm)および38.4℃の再結晶点温度(TC)が観察された。明確なTgがないことは、MPEGとの広範な水素結合によっても貢献される非常に硬い超分岐構造を示す。
【0110】
(本発明ポリマーの構造)
【0111】
ポリマーの下限臨界溶解温度(LCST)は、50-60℃の範囲である。さらに、これは、LCSTと呼ばれる特定の温度における熱応答相転移において現れる水性相中の両親媒性ポリマーにとって重要なパラメーターである。LCSTより下で、ポリマーは、可溶性伸長鎖立体配置、すなわち、親水性挙動を示す。LCSTより上で、ポリマーは、不溶性、疎水性凝集を形成することに適合する相転移を受ける。この特性は、適切な溶媒中でミセルを形成し、医薬的適用における薬剤のためのデリバリーシステムにおいて作用するのに有用である。
【0112】
臨界ミセル濃度(CMC)は、ナノ担体の封入能力を定義し、安定性を決定するもう1つの重要なパラメーターである。これは、その疎水性コア中に薬剤を封入する能力を有するミセル構造を形成するための両親媒性ポリマーまたはユニマーの下限濃度である。本発明ポリマーのCMC値は、約0.2mg/mlである。さらに、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)および1-ビニルピロリドン-2-オン(VP)などの熱感受性およびpH感受性モノマーを含むポリマーは、タンパク質および血液細胞と生体適合性であることがよく知られている。さらに、ポリ(NIPAM)の生物医学的適用は、その可逆的温度転移、すなわち、LCST、優れた水素結合、ミセルおよびヒドロゲル形成能力により、非常に広い。同様に、ポリビニルピロリドン(ポビドンとしても知られる)ポリマーもまた、高水溶性であり、広範な水素結合を水と形成する。このポリマーの意図された適用は、水難溶性薬剤を可溶化するための親水性および疎水性基を含む熱感受性、pH感受性、安定ポリマーナノ粒子の形成を導く種々の所定のモノマーの長所を組み込んでいる新規な組み込みシステムを設計することであった。
【0113】
非常に驚くべきことに、80:20〜95:5の範囲の(NIPAM+VP):MPEGのコモノマー組成ならびに55:22〜65:35の範囲のNIPAM:VPユニットを有する無水マレイン酸-ポリエチレングリコール(MPEG)のジエステルアダクト(メジャー)およびモノエステルアダクト(マイナー)による水素結合から形成された外殻コーティングによって安定化されたNIPAMおよびVPの無作為超分岐コポリマーユニットの形成が、所望の生体適合性、非生物分解性および生物学的に安全なプロフィールをポリマーに与えることが見出された。特に、(NIPAM+VP):MPEGの組成が、90:10または95:5であり、NIPAM:VPユニットを58:32〜62:28の範囲で使用する場合に、より良い結果(高いLCST、高収量、パクリタキセルナノ粒子からの放出パーセンテージ)が得られることが見出された。使用したモノマーの比率もまた、最終ポリマーにおいて一貫し、1H-NMR、13C-NMRおよびフーリエ変換赤外(FT-IR)スペクトル実験などの種々の実験によって確認された。
【0114】
C.本発明ポリマーの生体適合性および非生物分解性
雄性スイスアルビノマウスを使用して[14C]標識ポリマーの薬物動態、生体内分布および排出を評価した場合、放射能血液濃度プロフィールは、0.448±0.157 時間(26.88分)という短い排出半減期T1/2(β)および54.7 ml/時間という迅速クリアランスをもつ二相曲線を示した(図6)。この実験の結果を表VIおよびVIIにまとめる。
【0115】
表VI:本発明ポリマーの薬物動態パラメーター
【0116】
主な排出経路は、尿であることがわかり(48時間の時点で、尿66.91%対大便17.39%)、48時間までに集めた回収データは、注入した放射能の84.87%に相当する。組織分布は無視できた。腎臓、肝臓、皮膚および腸は、標的臓器であることがわかった。しかし、組織中のポリマーのレベルは、尿および大便を介して迅速に除去された。
【0117】
表VII:放射標識した本発明ポリマーの回収
【0118】
このように、結論として、重要臓器内で蓄積され、分解されることなく、ポリマーが身体から迅速に排出されることが分かり、ヒト使用のためのポリマーの安全性および有用性が示される。
【0119】
D.本発明ポリマーにおける毒性試験
以下の事項を評価するために、式(I)で示されるポリマーの毒性試験を行った:
(i)局所的毒性(皮下および静脈内);
(ii)800mg/動物体重kgまでの標的臓器投与毒性;および
(iii)6ヶ月周期投与毒性
【0120】
D(i)局所的毒性(皮下および静脈内)
75 mg/mlのポリマー100 μlをウサギ耳に単回皮下投与した後に、ポリマーの毒性を測定したところ、注射部位に軽度の炎症を引き起こし、注射後48時間に試験した場合、本発明ポリマーは、皮下投与後の投与部位にどのような局所的毒性も引き起こさないことが示された。
【0121】
75 mg/mlの本発明ポリマーを125 mg/kgの用量でウサギ静脈へ5日間の継続的静脈内投与を行い、本発明ポリマーの毒性を測定し、同じ結果を得、さらに、本発明ポリマーが、投与の部位にどのような局所的毒性も引き起こさないことを確認した。
【0122】
10%デキストロース溶液を皮下注射した48時間後のS&E染色ウサギ耳朶の代表的写真を図7に示し、本発明水溶液を皮下注射した48時間後のS&E染色ウサギ耳朶の代表的写真を図8に示す。
【0123】
10%デキストロース溶液(コントロール)を静脈内投与した24時間後のS&E染色ウサギ縁部耳静脈部の写真を図9に示し、本発明水溶液を皮下注射した24時間後のS&E染色ウサギ縁部耳静脈部の代表的写真を図10に示す
【0124】
D(ii)標的臓器投与毒性(800mg/動物体重kgまで)
さらに、ウィスターラットにおいて、可能性のある標的臓器において、特に微小血管系に関して、単回静脈内ボーラス投与により、毒性を評価し、測定した。2つの異なる用量、すなわち、400 mg/kgおよび800 mg/kgにて、ポリマーを投与した。試験条件下での、いずれかの用量での本発明ポリマーの単回静脈内投与は、死亡率あるいは観察しうる毒性徴候または症状をラットに引き起こさない。ラットの個々の体重および平均体重は、ポリマー処置グループおよびコントロールグループの両方において着実な増加を示した。両方の用量の処置動物の体重に関し、コントロールの体重と比べて、有意な差異はなかった。
【0125】
ポリマーで処置されたラットにおいて、血液学的パラメーターは、試験を通して正常限度内であった。生化学的パラメーターもまた両方の用量で処置された動物について正常限度内であった。フォトアクトメーター(photoactometer)試験は、それぞれ第7日と第21日において、コントロールグループと処置グループとの間で自発運動に有意な差異がないことを明らかにし、ポリマーがどのような神経毒性もないことを示す。
【0126】
処置グループおよびコントロールグループ検体は、同様の組織学的特色を示した。肝臓、心臓、肺、腎臓、膵臓、胃、結腸、大腿筋および眼などの重要臓器において組織学的試験を行った。試験したすべての臓器は、光学顕微鏡検査において正常な構造を示した。各臓器における微小血管系を注意深く検査したところ、病理学的特徴はどの臓器においても見られなかった。さらに、ポリマー処置動物の微小血管系において、変化はなかった。
【0127】
上記観察から、400 mg/kg(投与された動物の体重)または800 mg/kg(投与された動物の体重)のいずれかを5日間連続して投与された本発明ポリマーが、どのような一般的毒性またはどのような有意な血液学的毒性も引き起こさないことが極めて明らかであったことから、本発明ポリマーの生物学的安全性および非毒性プロフィールが示される。
【0128】
D(iii)6ヶ月周期投与毒性
さらに、ラットにナノ粒子製剤のポリマーを静脈内注射することによって6ヶ月周期投与毒性を試験した。雄性/雌性ウィスターラットを試験に使用し、180日間(約26週間)にわたって3週間毎に1回周期的に外側尾部静脈に静脈内投与を行った。処置グループおよびコントロールグループの動物は、試験期間中、一般的に活動的で健康であった。10 mg/kgの薬剤に相当するポリマー濃度が、試験下の動物において安全であることが分かった。注目した血液学的パラメーターにおける最小の変化は、ウィスターラットにとって正常範囲内であり、処置に関連するものは見出されなかった。
上記試験は、合成ポリマーが、医薬組成物の製造における使用にとって非毒性で生物学的に安全であることを示す。
【0129】
E.本発明ポリマーを含む医薬組成物
前述したように、高純度でモノマー汚染物質を実質的に含まない、さらに詳しくは、残留モノマー、NIPAMおよびVPが<0.001%である式(I)で示される本発明ポリマーは、ナノ粒子形態における水難溶性薬剤または化合物の医薬組成物の製造にとって有利に利用することができ、ヒト/動物への投与または使用にとって安全で非毒性である。
【0130】
さらに詳しくは、本発明ポリマーは、多くの水難溶性薬剤または化合物を完全またはほとんど完全にそのポリマー殻内に捕捉する、医薬的に許容しうる賦形剤を含むナノ粒子形態における医薬組成物の製造に使用することができる。
【0131】
さらに、前述したように、本発明の医薬組成物に利用することができる水難溶性薬剤または化合物は、一般に、水溶解度が10 mg/ml未満のものである。
【0132】
このような水難溶性薬剤または化合物の例として、抗がん剤、抗炎症薬、抗菌薬、制吐薬、降圧剤、性ホルモン、ステロイド、抗生物質、免疫調節剤、麻酔薬などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ポリマー殻内に捕捉されうる抗がん剤の典型的な例は、パクリタキセル、ドセタキセルおよびその他の関連タキサン誘導体;イリノテカン、トポテカンおよびその他の関連カンプトテシン誘導体;ドキソルビシン、ダウノマイシンおよび関連アントラサイクリン誘導体;シスプラチン;オキサリプラチン;5-フルオロウラシル;ミトマイシン;メトトレキセート;エトポシド;ベツリン酸およびその誘導体;およびウエデロラクトンおよびその誘導体である。ポリマー殻内に捕捉されうる抗炎症薬の典型的例として、インドメタシン、イブプロフェン、ケトプロフェン、フルビプロフェン、ピロキシカム、テノキシカムおよびナプロキセンが挙げられる。ポリマー殻内に捕捉されうる抗菌薬の典型的例として、ケトコナゾールおよびアムホテリシンBが挙げられる。ポリマー殻内に捕捉されうる性ホルモンの典型的例として、テストステロン、エストロゲン、プロゲステロンおよびエストラジオールが挙げられる。ポリマー殻内に捕捉されうるステロイドの典型的例として、デキサメタゾン、プレドニゾロンおよびトリアムシノロンが挙げられる。ポリマー殻内に捕捉されうる降圧剤の典型的例として、カプトプリル、ラミプリル、テラゾシン、ミノキシジルおよびパラゾシンが挙げられる。ポリマー殻内に捕捉されうる制吐薬の典型的例として、オンダンセトロンおよびグラニセトロンが挙げられる。ポリマー殻内に捕捉されうる抗生物質の典型的例として、メトロニダゾールおよびフシジン酸が挙げられる。ポリマー殻内に捕捉されうる免疫調節剤の典型的例として、シクロスポリンおよビフェニルジメチルジカルボン酸が挙げられる。ポリマー殻内に捕捉されうる麻酔薬の典型的例として、プロポフォール、アルファキサロンおよびヘキソバルビタールが挙げられる。
【0133】
水難溶性薬剤または化合物の医薬組成物は、典型的に、一方が、水難溶性薬剤または化合物の安定濃度における水混和性溶媒またはその混合物中の該薬剤の溶液を含むバイアルからなり;他方が、水性溶媒、一般に注射用グレードの水中の高純度でモノマー汚染物質を実質的に含まない本発明ポリマーおよび医薬的に許容しうる賦形剤の溶液を含むバイアルからなる2キットバイアル製品を含み、該キットバイアルの両方は、滅菌され、無菌状態で製造され、包装される。次いで、2つのバイアルの内容物をヒト/動物への投与用の希釈液に連続的に加える。前述したように、ならびに後述するように、水難溶性薬剤または化合物が、利用したポリマーのポリマー殻内に捕捉され、一貫したサイズのナノ粒子形態で製造されることに留意すべきである。2つのバイアルに含まれる、水混和性溶媒またはその混合物中の水難溶性薬剤の溶液と、本発明ポリマーの溶液の比率は、一般に1:1〜1:10の体積、好ましくは1:1の比率である。
【0134】
必要に応じて、2キットバイアル製品はさらに、希釈液ならびに注射器および投与を必要とするヒト/動物への投与のために混合される薬剤溶液の体積およびポリマーおよび賦形剤を含む希釈液の体積に応じて、内径0.305〜0.356または0.559〜0.711 mmの針を含むことができる。
【0135】
水難溶性薬剤または化合物を溶解するために利用することができる適当な水混和性溶媒として、脂肪族アルコール、特にエタノール;ジアルキルアミド、特にジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミド;ジアルキルスルホキシド、特にジメチルスルホキシドおよびジエチルスルホキシド;種々の分子量のポリエチレングリコール;種々の分子量のポリプロピレングリコール;界面活性剤、特にポリソルベート80、ポリソルベート20、ポリオキシエチル化植物油およびポリエトキシル化ヒマシ油;グリセリンなどが挙げられる。
【0136】
有利に使用することができる医薬的に許容しうる賦形剤として、デオキシコール酸ナトリウム;種々の胆汁塩;種々のグレードのポリソルベート、特にポリソルベート80、ポリソルベート20、ポリオキシエチル化植物油およびポリエトキシル化ヒマシ油;デキストロース、スクロース、ラクトース、マンニトールなどの多糖;種々のグレードのソルビタンエステルまたはスパン;種々のグレードのmyrj;種々のグレードのポロクサマーおよびpH調節のための緩衝剤が挙げられる。当業界で公知の緩衝剤のどれでも、溶液のpHの調節のために使用することができ、好ましい実施態様において、緩衝剤としてクエン酸ナトリウムを利用するのが有利である。
【0137】
医薬的に許容しうる賦形剤のうち、医薬組成物の安定化において効果を有するので、デオキシコール酸ナトリウムが好ましく、一方、緩衝剤は、灌流液のpHを6.0〜8.5の範囲に調節するために使用されるが、医薬組成物の安定化において効果を有することも分かっている。
【0138】
医薬組成物において、水難溶性薬剤または化合物の装填または投与を適切にすることができるが、該薬剤または化合物の最適な装填および投与の選択は、該薬剤または化合物の性質、その溶解度ならびに投与の理由である治療すべき障害に応じて大きく変わる。医薬的に許容しうる賦形剤の場合、医薬組成物において利用することができるその割合または量は同様に、該組成物に含まれる水難溶性薬剤または化合物の性質および装填に応じて変わる。
【0139】
本発明の水難溶性薬剤または化合物のナノ粒子における医薬組成物は、以下の方法で製造することができる:
i)水難溶性薬剤または化合物を適当な水混和性溶媒またはその混合物に溶解することを含む、薬剤濃縮液の製造;
ii)以下のステップを含む、ポリマーおよび医薬的に許容しうる賦形剤の水性濃縮液の製造;
a)第一に、適切な量の注射用水に、必要量の高純度でモノマー汚染物質を実質的に含まない、特に毒性NIPAMおよびVPのレベルが<0.001 %である必要な量の式(I)で示されるポリマーを添加する;
b)該ポリマーの水溶液に、医薬的に許容しうる賦形剤および緩衝剤を添加する;
iii)透明溶液を得るためのステップii-b)の溶液と希釈液との混合;
iv)ステップiii)の溶液に、少量のステップi)の溶液を添加するための内径0.305〜0.356 mmの針の利用;または
v)ステップiii)の溶液に、多量のステップi)の溶液を添加するための内径0.559〜0.711 mmの針の利用;
vi)ステップi)の溶液が注射器の針を通って加えられるその針が、ステップiii)の溶液に浸されたままであるステップiii)の溶液へのステップi)の溶液の注入;および
vii)ポリマー殻内に水難溶性薬剤または化合物を完全またはほとんど完全に捕捉し、粒径30〜150 nmの薬剤または化合物のナノ粒子を製造するために、必要に応じて、ステップi)の溶液の注入中、ステップiii)の溶液を含む容器を逆さの位置に維持すること。このような灌流液は、24時間以上安定なままであり、95%以上の薬剤がポリマーミセル内に装填されたままである。
【0140】
ここで、希釈液の選択は、利用される水難溶性薬剤または化合物の性質ならびに医薬組成物が投与される障害に応じて大きく変わることに留意すべきである。安定な希釈液は、水、食塩水、5%および10%デキストロース溶液、デキストロースおよび塩化ナトリウム溶液、乳酸ナトリウム溶液、乳酸リンゲル溶液、マンニトール溶液、マンニトールとデキストロースまたは塩化ナトリウム溶液、リンゲル溶液、塩化ナトリウム溶液、注射用滅菌水ならびに電解質、デキストロース、フルクトースおよび転化糖の種々の組み合わせを含む多電解質溶液から選択することができるが、これらに限定されるものではない。希釈液が、デキストロースおよび水を含む液体であるのが好ましく、5%および10%デキストロース溶液であるのがより好ましい。
【0141】
好ましい本発明ナノ粒子医薬組成物の製造方法および投与を必要とする患者へのその投与を図11に示す。
【0142】
次の非限定的実施例に関して本発明をさらに詳しく説明するが、それらは、決して本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0143】
下記の実施例において、ポリマーの精製に利用した透析濾過装置は、Proflux M12 透析濾過装置(Millipore製)であり、ポリマーの精製に使用した透析装置は、セルロース膜-D-9402(Sigma製)であったことに留意すべきである。
【実施例】
【0144】
装置セクション
参考例1
透析法を使用するポリマーの製造
2Lガラス容器にて重合反応を行った。24 gのN-イソプロピルアクリルアミド、12 mlの蒸留1-ビニル-2-ピロリドンおよび4 gの無水マレイン酸のポリエチレングリコール(重量モル6000)エステル(MPEG)を約2Lの水に加えた。これに、11.2 mlの水性N,N'-メチレンビスアクリルアミド(MBA)溶液[49 mg/ml]および8 mlのテトラメチルエチレンジアミン(d=0.77gm/ml)を加えた。30分間窒素ガスを通気することによって溶液を脱気した。次いで、8 mlの水性硫酸アンモニウム第一鉄(0.5% w/v)および12 mlの水性アンモニウムペルスルフェート(80% w/v)を加え、窒素通気を継続しながら3時間反応を続けた。80 rpmにて振とうしながら水浴中で34℃にて重合を行った。
【0145】
溶液を透析バッグに満たし、水(透析培体)中に降下させた。水を1回換えて24時間透析を行った。 24時間後、透析バッグから溶液を除去し、丸底フラスコにて凍結乾燥した。
【0146】
逆相RP-18(C-18)カラム[Lichrospher RP-18e、5μ、250 mm×4 mm]を使用するAgilent 1100シリーズHPLCシステムによって、ポリマー中の残留モノマー、特に残留VPおよびNIPAMの検出および定量を行った。使用した移動相は、流速1 ml/分の水とアセトニトリルの80:20混合物であり、サンプル注入体積は、50 μlであった。実行時間は10分間、カラム温度は30℃、検出波長は226 nmであった。上記条件下、NIPAMの保持時間は、約5分間であった。
分析データ:残留モノマー% i)NIPAM=0.066%(660 ppm)およびii)VP=0.011%(110 ppm)。
【0147】
実施例1
透析濾過法を使用するポリマーの製造
バッチサイズ160 g(4L×2)のポリマーについて、2つの5Lガラス容器にて重合反応を行う。各容器にて、48 gのN-イソプロピルアクリルアミド、23 mlの蒸留1-ビニル-2-ピロリドンおよび8 gの無水マレイン酸のポリエチレングリコール(重量モル6000)エステル(MPEG)を約4Lの水に加えた。これに、22.4 mlの水性N,N'-メチレンビスアクリルアミド(MBA)溶液[49 mg/ml]および16 mlのテトラメチルエチレンジアミンを加えた。30分間窒素ガスを通気することによって溶液を脱気した。次いで、16 mlの水性硫酸アンモニウム第一鉄(0.5% w/v)および24 mlの水性アンモニウムペルスルフェート(80% w/v)を加え、窒素通気を継続しながら3時間反応を続けた。80 rpmにて振とうしながら水浴中で34℃にて重合を行った。重合中、反応をモニターするために、サンプルを適当な時点(0、15、60および180分)で引き出した。
【0148】
重合が完了した後、予め滅菌した使い捨て孔径0.8および0.2μmの0.2μmポリエーテルスルホン膜1"カプセルフィルター;タイプDPS-5101AA-201(Advanced Microdevices Pvt.Ltd製、インド)を通して溶液を濾過した。両方の反応容器の濾過された内容物を貯蔵し、Proflux M12(Millipore)透析濾過装置を使用する接線流濾過に付し、残留モノマーおよび他の低分子量不純物を除去した。8Lの反応混合物を合わせたロットを、透析濾過を通してまず約2.2Lに濃縮し、次いで、得られる濃縮液を約30Lの高度純水を使用して透析濾過する。透析濾過中、反応混合物は、約1Lに濃縮される。160g(8L)のバッチサイズに対する透析濾過のための総処理時間は約4-6時間である。次いで、透析濾過溶液を凍結乾燥に付す。
【0149】
逆相RP-18(C-18)カラム[Lichrospher RP-18e、5μ、250 mm×4 mm]を使用するAgilent 1100シリーズHPLCシステムによって、ポリマー中の残留モノマー、特に残留VPおよびNIPAMの検出および定量を行った。使用した移動相は、流速1 ml/分の水とアセトニトリルの80:20混合物であり、サンプル注入体積は、50 μlであった。実行時間は10分間、カラム温度は30℃、検出波長は226 nmであった。上記条件下、NIPAMの保持時間は、約3分間であった。
分析データ:残留モノマー% i)NIPAM=<0.001%(<10 ppm)およびii)VP=<0.001%(<10 ppm)。
【0150】
ポリマーのスペクトル特性は、以下の通りであった。
1H NMR(300 MHz、Bruker分光計、CDCl3、δ ppm):1.15(br,-CH(CH3)2);1.45(br、-CH2-CH-N(VP-環);1.63(br,-CH2-CHC(=O)NH);1.99(br,-CH C(=O)NH-)、CH2(VP 環)、2.36(CH2、VP 環)、3.0(-O-CH2-CH2-)、3.23(CH2-N-);3.62-3.66(Br、CH2、MPEG);3.72(NH-CH(CH3)2);3.97(Br、CH)
13C NMR(300 MHz、Bruker分光計、CDCl3、δ ppm):174(C=O);76.6-77.6(CDCl3 についての多重およびポリマー骨格についてのCH)、70.6(CH2's MPEG)、41.6(イソプロピルユニットについてのCH)、31.8(CH2's、ポリマー骨格)、22.6(CH3's、イソプロピル)
FTIR(KBrペレット、cm-1): 3500(s,OH);3296(s、NH、sec-アミド)、2972-2933(s、CH、CH2、CH3)、1546(s、アミドIIのNHベンドおよびおそらく遊離酸のC=O、マイナー)、1387、1367(イソプロピル基の二重、CH3、変形)、1172-1129(m、O-C-O)
【0151】
実施例2
パクリタキセルナノ粒子医薬組成物の製造(少ない体積、すなわち、40 ml以下における再構成)
A]パクリタキセルのアルコール性溶液(20 mg/ml)の製造:200 mgのパクリタキセルを10.0 mlのエタノールに溶解した。
B]ポリマーおよび賦形剤の水性濃縮液の製造:実施例1で得られた100 mgのポリマー、66.7 mgのデオキシコール酸ナトリウムおよび100 mgのクエン酸ナトリウムを水10 mlに溶解して、透明溶液を得た。
C]パクリタキセルナノ粒子(0.6 mg/ml)の製造:1.0 mlのステップB]のポリマーおよび賦形剤の水性濃縮液を31.3 mlの10%デキストロース溶液に溶解して、透明溶液を得た。1.0 mlのステップA]のパクリタキセルのアルコール性溶液を、内径0.330 mmの針を通して4秒以内で上記溶液に加え、パクリタキセルのナノ粒子を0.6 mg/mlの濃度で得た。
【0152】
このようにして製造した医薬組成物は、以下の特徴を有した:
【0153】
実施例3
パクリタキセルナノ粒子医薬組成物の製造(多い体積、すなわち、500 ml以下における再構成)
A]パクリタキセルのアルコール性溶液(20 mg/ml)の製造:400 mgのパクリタキセルを20.0 mlのエタノールに溶解した。
B]ポリマーおよび賦形剤の水性濃縮液の製造:実施例1で得られた200 mgのポリマー、133.4 mgのデオキシコール酸ナトリウムおよび200 mgのクエン酸ナトリウムを水20 mlに溶解して、透明溶液を得た。
C]パクリタキセルナノ粒子(0.6 mg/ml)の製造:15.0 mlのステップB]のポリマーおよび賦形剤の水性濃縮液を500 mlの10%デキストロース溶液に溶解して、透明溶液を得た。15.0 mlのステップA]のパクリタキセルのアルコール性溶液を、内径0.711 mmの針を通して8秒以内で上記溶液に加え、パクリタキセルのナノ粒子を0.6 mg/mlの濃度で得た。
【0154】
このようにして製造した医薬組成物は、以下の特徴を有した:
【0155】
実施例4
ベツリン酸誘導体のナノ粒子医薬組成物の製造[式(II)のMJ-1098]
A]MJ-1098の溶液(15 mg/ml)の製造:MJ-1098(15 mg)を0.15 mlのN,N-ジメチルアセトアミドおよび0.01 mlのポリソルベート80の混合物に加え、0.84 mlのエタノールを上記溶液に加え、超音波処理により溶解した。
B]ポリマーおよび賦形剤の水性濃縮液の製造:実施例1で得られた10 mgのポリマー、6.67 mgのデオキシコール酸ナトリウムおよび10 mgのクエン酸ナトリウムを水1 mlに溶解して、透明溶液を得た。
C]MJ-1098ナノ粒子(0.75 mg/ml)の製造:0.3 mlのステップB]のポリマーおよび賦形剤の水性濃縮液を9.2 mlの5%デキストロース溶液に溶解して、透明溶液を得た。0.5 mlのステップA]のMJ-1098の溶液を、内径0.330 mmの針を通して3秒以内で上記溶液に加え、MJ-1098のナノ粒子を0.75 mg/mlの濃度で得た。
【0156】
このようにして製造した医薬組成物は、以下の特徴を有した:
【0157】
実施例5
ベツリン酸誘導体のナノ粒子医薬組成物の製造[式(III)のDRF-4012]
A]DRF-4012の溶液(20 mg/ml)の製造:DRF-4012(20 mg)を0.01 mlのポリソルベート80および0.99 mlのエタノールの混合物に溶解し、超音波処理により溶解した。
B]ポリマーおよび賦形剤の水性濃縮液の製造:実施例1で得られた10 mgのポリマー、6.67 mgのデオキシコール酸ナトリウムおよび10 mgのクエン酸ナトリウムを水1 mlに溶解して、透明溶液を得た。
C]DRF-4012ナノ粒子(0.60 mg/ml)の製造:0.33 mlのステップB]のポリマーおよび賦形剤の水性濃縮液を10.44 mlの5%デキストロース溶液に溶解して、透明溶液を得た。0.33 mlのステップA]のDRF-4012の溶液を、内径0.305 mmの針を通して3秒以内で上記溶液に加え、DRF-4012のナノ粒子を0.6 mg/mlの濃度で得た。
【0158】
このようにして製造した医薬組成物は、以下の特徴を有した:
【0159】
実施例6
ベツリン酸誘導体のナノ粒子医薬組成物の製造[式(IV)のDRF-4015]
A]DRF-4015の溶液(20 mg/ml)の製造:DRF-4015(20 mg)を0.01 mlのポリソルベート80および0.99 mlのエタノールの混合物に溶解し、超音波処理により溶解した。
B]ポリマーおよび賦形剤の水性濃縮液の製造:実施例1で得られた10 mgのポリマー、6.67 mgのデオキシコール酸ナトリウムおよび10 mgのクエン酸ナトリウムを水1 mlに溶解して、透明溶液を得た。
C]DRF-4015ナノ粒子(0.60 mg/ml)の製造:0.33 mlのステップB]のポリマーおよび賦形剤の水性濃縮液を10.44 mlの5%デキストロース溶液に溶解して、透明溶液を得た。0.33 mlのステップA]のDRF-4015の溶液を、内径0.330 mmの針を通して4秒以内で上記溶液に加え、DRF-4015のナノ粒子を0.6 mg/mlの濃度で得た。
【0160】
このようにして製造した医薬組成物は、以下の特徴を有した:
【0161】
実施例7
ドセタキセルナノ粒子医薬組成物の製造
A]ドセタキセルのアルコール性溶液(40 mg/ml)の製造:200 mgのドセタキセルを5.0 mlのエタノールに溶解した。
B]ポリマーおよび賦形剤の水性濃縮液の製造:実施例1で得られた400 mgのポリマー、400 mgのデオキシコール酸ナトリウムおよび400 mgのクエン酸ナトリウムを水10 mlに溶解して、透明溶液を得た。
C]ドセタキセルナノ粒子(0.5 mg/ml)の製造:4.0 mlのステップB]のポリマーおよび賦形剤の水性濃縮液を35.5 mlの10%デキストロース溶液に溶解して、透明溶液を得た。0.5 mlのステップA]のドセタキセルのアルコール性溶液を、内径0.330 mmの針を通して3秒以内で上記溶液に加え、ドセタキセルのナノ粒子を0.5 mg/mlの濃度で得た。
【0162】
このようにして製造した医薬組成物は、以下の特徴を有した:
【0163】
実施例8
エトポシドナノ粒子医薬組成物の製造
エトポシドの溶液(20 mg/ml)の製造:エトポシド(20 mg)を0.10 mlのN,N-ジメチルアセトアミドおよび0.90 mlのエタノールの混合物に、超音波処理下で溶解した。
B]ポリマーおよび賦形剤の水性濃縮液の製造:実施例1で得られた10 mgのポリマー、6.67 mgのデオキシコール酸ナトリウムおよび10 mgのクエン酸ナトリウムを水10 mlに溶解して、透明溶液を得た。
C]エトポシドナノ粒子(0.6 mg/ml)の製造:0.3 mlのステップB]のポリマーおよび賦形剤の水性濃縮液を9.4 mlの5%デキストロース溶液に溶解して、透明溶液を得た。0.3 mlのステップA]のエトポシドのアルコール性溶液を、内径0.330 mmの針を通して3秒以内で上記溶液に加え、エトポシドのナノ粒子を0.6 mg/mlの濃度で得た。
【0164】
このようにして製造した医薬組成物は、以下の特徴を有した:
【0165】
実施例9
マウスにおける[14C]標識ポリマーの薬物動態、生体内分布および排出の決定
6-8週齢、体重約25-30 gの雄性スイスアルビノマウスを各6匹の動物からなる5つのグループに無作為に分割した。ポリマーの比活性に基づいて、[14C]標識ポリマーを脱イオン水で5 mg/mlに希釈した。すべての動物に[14C]ポリマー 40 mg/kgを静脈内注射にて単回投与した。
【0166】
薬物動態試験において、麻酔下の後眼窩放血によって、投与後3、10、30分、1、2、4、8、16および24時間の時点で、EDTA含有チューブ内へ動物から100 μlの血液を採取した。排出試験のために、代謝ケージから、あるいは強制的に、尿および大便を採取した(10分間)。終了時(10分、60分、24および48時間)に、副腎、脳、肺、肝臓、心臓、腎臓、脾臓、胃、小腸、大腸、大便、尿、膀胱、眼、皮膚、大腿筋、睾丸および副睾丸を採取し、濯ぎ、切除し、秤量した。
【0167】
50 μlの血液/尿を5 mlの液体シンチレーション反応混液と合わせることによって、血液および尿中のの[14C]ポリマー濃度を決定した。大便および組織(0.5 g以下)を脱イオン水中でホモジナイズして、20 %ホモジネートを得た後、500 μlを5 mlの液体シンチレーション反応混液と合わせた。液体シンチレーション分析機によってサンプルを分析した。直線性および消光曲線に基づいて、毎分のカウントをμg/mlでの[14C]ポリマーの量に変換した。
【0168】
放射性血液濃度プロフィールは、0.448±0.157時間(26.88文)の短い排出半減期T1/2(β)および54.7 ml/時間の迅速なクリアランスをもつ二相曲線を示した。
【0169】
主な排出経路は、尿であることがわかり(48時間の時点で、尿66.91%対大便17.39%)、48時間までに集めた回収データは、注入した放射能の84.87%に相当する。組織分布は無視できた。腎臓、肝臓、皮膚および腸は、標的臓器であることがわかった。しかし、組織中のポリマーのレベルは、尿および大便を介して迅速に除去された。
【0170】
高レベルの放射能を提示する腎臓、肝臓、皮膚および腸における組織分布は無視できた。しかし、組織中のポリマーのレベルは、尿および大便を介して迅速に除去された。
【0171】
結論として、試験は、ポリマーが重要臓器に蓄積されることなく身体から迅速に排出されることを示す。ポリマーは、非生物分解性であることが知られているが、尿からの一次的な迅速で効率の良いクリアランスから、ヒト使用にとってポリマーが安全で有用であることが示される。
【0172】
実施例10
ウサギにおける125 mg/kgのポリマーの静脈内ボーラス投与を5日間継続した場合の投与部位における、もしあれば、可能性のある局所毒性の決定
75 mg/mlの濃度で10%デキストロースに溶解した試験物質を、5日間連続して、125 mg/kgにて、5 mlの使い捨て注射器および23Gの針で各ウサギの右耳の縁部静脈へ静脈内投与した。左の耳をコントロールとして使用し、10%デキストロースを同じ経路で投与した。投与量は、3.5 ml/動物の体重Kg以下になるように調節した。第1日〜第5日の毎日、5分、10分、30分、60分および24時間の時点で、局所的毒性に対する周期的観察を注射部位にて行った。第7日に、6匹のウサギ全ての両方の耳から、注射部位におけるパンチ生検を行った。
【0173】
ウサギ耳静脈における125 mg/kgの用量での75 mg/mlのポリマーの5日間連続静脈内投与は、10%デキストロースを注射されたウサギの注射部位において、軽度から中程度の血栓性静脈炎を引き起こす。選ばれたポリマーの投与は、投与部位において、どのような局所的毒性も引き起こさないと結論づけることができる。
【0174】
実施例11
ウィスターラットにおける400mg/kgのポリマーの5日間の静脈内ボーラス投与による、特に微小血管系に関する、可能性のある毒性の標的臓器の決定
試験物質を10%デキストロースに溶解し、400 mg/kgにて、各ラットの尾部静脈に、5 mlの使い捨て注射器および23Gの針で静脈内投与した。コントロール動物は、同じ経路で05デキストロースのみを投与された。投与量は、5 ml/動物の体重Kgに調節した。副作用(一般的審査および研究パラメーター)および死亡について周期的観察を記録した(処置後第7、14および21日)。すべての動物を屠殺し、剖検した。
【0175】
試験条件下での、400 mg/体重kgの用量レベルでのポリマーの5日間の静脈内ボーラス投与は、死亡率あるいは観察しうる毒性徴候または症状を処置ラットに引き起こさない。
【0176】
ラットの個々の体重および平均体重は、ポリマー処置グループおよびコントロールグループの両方において着実な増加を示した。両方の用量の処置動物の体重に関し、コントロールの体重と比べて、有意な差異はなかった。
【0177】
ポリマーで処置されたラットにおいて、血液学的パラメーターは、試験を通して正常限度内であった。中間グループ動物の総ビリルビン(p=0.0471)および尿酸(p=0.0157)ならびに最終グループ動物の総タンパク質(p=0.0005)および尿酸(p=0.0404)に対するベースラインにおいて、コントロール動物と比べて、有意な差異が検出された。しかし、すべての値は、正常限度内であった。
【0178】
フォトアクトメーター試験は、それぞれ第7日と第21日において、コントロールグループと処置グループとの間で自発運動に有意な差異がないことを明らかにし、ポリマーがどのような神経毒性もないことを示す。
【0179】
処置グループおよびコントロールグループ検体は、同様の組織学的特色を示した。試験したすべての臓器は、光学顕微鏡検査において正常な構造を示した。各臓器における微小血管系を注意深く検査したところ、病理学的特徴はどの臓器においても見られなかった。さらに、ポリマー処置動物の微小血管系において、変化はなかった。
【0180】
上記観察から、400 mg/体重kgにて5日間連続して投与された本発明ポリマーが、どのような一般的毒性またはどのような有意な血液学的毒性も引き起こさないことが示された。しかし、第21日において、総ビリルビンは、コントロールグループと比べて、終末グループにおいて有意に高いことが明らかになった。
実施例12
ウィスターラットにおける800mg/kgのポリマーの単回静脈内ボーラス投与による、特に微小血管系に関する、可能性のある毒性の標的臓器の決定
試験物質を10%デキストロースに溶解し、800 mg/kgにて、各ラットの尾部静脈に、5 mlの使い捨て注射器および26Gの針で投与した。コントロール動物は、同じ経路で10 %デキストロースのみを投与された。投与量は、5 ml/動物の体重Kgに調節した。副作用(一般的審査および研究パラメーター)および死亡について周期的観察を記録した(処置後第1、3および7日)。すべての動物を屠殺し、剖検した。
【0181】
試験条件下での、800 mg/体重kgの用量レベルでのポリマーの単回静脈内ボーラス投与は、死亡率あるいは観察しうる毒性徴候または症状を処置ラットに引き起こさない。
【0182】
ラットの個々の体重および平均体重は、ポリマー処置グループおよびコントロールグループの両方において着実な増加を示した。ポリマーで処置されたラットにおいて、血液学的パラメーターは、試験を通して正常限度内であった。ポリマーで処置されたラットにおいて、生化学的パラメーターは、試験を通して正常限度内であった。組織学的試験は、コントロールグループと処置グループのラットの間で有意な差異がないことを示す。注射後第3日および第7日に屠殺されたポリマー処置ラットの顕微鏡写真は、審査した4つの臓器(脳、眼、腎臓および皮膚)すべてにおいて、見かけ上の変化がないことを示す。
【0183】
上記観察から、400 mg/体重kgの用量にて投与された本発明ポリマーが、どのような一般的毒性またはどのような有意な血液学的および生化学的毒性または微少血管系における変化も引き起こさないことが示され、ラットにおいて静脈アニ投与される場合に安全であるとみなすことができる。
【0184】
実施例13
ウサギにおけるポリマーの投与(皮下)部位における、もしあれば、可能性のある局所毒性の決定
6匹のウサギのそれぞれの右耳朶に、1 ml使い捨て注射器および23Gの針で、濃度75 mg/mlで10%デキストロースに溶解した0.1 mlの試験物質の単回注射を皮下投与にて行った。コントロールには、6匹のウサギのそれぞれの左耳朶に、0.1 mlの10 %デキストロースを同じ経路で投与した。5分、10分、30分、60分および24時間の時点で、局所的毒性に対する周期的観察を注射部位にて行った。
【0185】
ウサギ耳における100 μlの75 mg/mlのポリマーまたは 100 μlのデキストロースの単回皮下投与は、注射の48時間後に試験した場合、注射部位において、軽度の炎症を引き起こす。選ばれたポリマーは、皮下投与部位において、どのような局所的毒性も引き起こさないと結論づけることができる。
【0186】
実施例14
ラットにおけるポリマー静脈内経路による6ヶ月投与局所的毒性の決定
ナノ粒子製剤でのポリマーを10 mg/kgの薬物に相当する用量レベルにて投与した。コントロールには、180日間(約26週間)にわたって3週間毎に1回周期的に外側尾部静脈にデキストロース(10 %)を静脈内投与した。観察は、死亡率、臨床的徴候、体重、食物および水の消費、臨床検査室試験、臓器重量および組織病理を含む。
【0187】
処置グループおよびコントロールグループの動物は、試験期間中、一般的に活動的で、健康なままであった。処置およびコントロールグループの両方における感染による少数の偶発的な死亡以外、処置に関連する死亡率はなかった。両性の動物が、試験中、体重の漸進的増加を示し、食餌および水の消費に変化はなかった。雄性および雌性の両方において血液学的パラメーターは、ウィスターラットについて記録したように、正常範囲内であった。しかし、処置グループにおいて、正常限度内であるが、雄性においてWBC(白血球)および好中球数、雌性において好中球の少量の減少があった。処置およびコントロールグループの両方において、網状赤血球数の軽度の増加が見出された。
【0188】
雄性および雌性の両方において血液生化学的パラメーターは、ウィスターラットについて記録したように、正常範囲内であった。少量の変化は、処置およびコントロールグループの雄性および雌性の両方において、グルコース、ALPおよびクレアチニンの値が正常値よりもわずかに高いことであった。6ヶ月の時点で、処置グループ雄性のトリグリセリドにおいて軽度の増加が見られた。雄性および雌性の両方において、尿パラメーターは正常限度内であった。
【図面の簡単な説明】
【0189】
【図1】本発明ポリマーの1H-NMRスペクトル。
【図2】本発明ポリマーの13C-NMRスペクトル。
【図3】本発明ポリマーのフーリエ変換赤外(FT-IR)スペクトル。
【図4】本発明ポリマーのTGAサーモグラム。
【図5】本発明ポリマーのDSCサーモグラム。
【図6】本発明[14C]-標識ポリマーの薬物動態血液像。
【図7】10%デキストロース溶液(コントロール)の皮下投与の48時間後のS&E染色ウサギ耳朶の写真。
【図8】本発明ポリマーの水溶液の皮下投与の48時間後のS&E染色ウサギ耳朶の写真。
【図9】10%デキストロース溶液(コントロール)の静脈内投与の24時間後のS&E染色ウサギ縁部耳静脈部の写真。
【図10】本発明ポリマーの水溶液の静脈内投与の24時間後のS&E染色ウサギ縁部耳静脈部の写真。
【図11】本発明ナノ粒子医薬組成物の典型的な製造方法および投与を必要とする患者への典型的な投与方法の説明。
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度で、モノマー汚染物質を実質的に含まない、生体適合性および非生物分解性ポリマーおよびその製造方法を提供する。
本発明はさらに、本発明ポリマーを利用するナノ粒子形態における水難溶性薬剤または化合物の医薬組成物を提供する。
さらに、本発明は、水難溶性薬剤または化合物のナノ粒子形態における医薬組成物の選択性の高い製造方法ならびに投与を必要とする患者への該組成物の投与方法に関する。
非毒性で、安全である本発明ポリマーは、そのことによって、該ポリマーを含む水難溶性薬剤または化合物のナノ粒子医薬組成物を低毒性で投与のために安全にする。
【背景技術】
【0002】
近年、生体の生物環境に接触するために設計された人工装具としてであろうと、または医療機器においてであろうと、医療および製薬の分野で新規な材料の適用に関心が高まり続けている。これらの材料のうち、ポリマー、主として合成ポリマーは、患者の健康管理に著しい利点を分け与えることが見出される群を抜いて最も多種多様なクラスである。
【0003】
医療および製薬の分野におけるポリマーの適用は、広範である。医療分野において、ポリマーは、インプラント、または人工臓器、代用血管、眼内レンズ、人工関節、人工乳房、縫合材料などの支持材料、または血液灌流、血液酸素付加装置、カテーテル、血管、創傷および火傷被覆材料、副え木、コンタクトレンズに使用されるものなどの体外治療法またはその他の支持材料として使用される。製薬分野において、ポリマーは、ナノ粒子システムおよび制御放出デリバリーシステムの開発において特に使用されている。広範な研究が、所望の部位へのデリバリーシステムをもつ標的薬剤も追求している。さらに、ポリマーは、経皮ドラッグデリバリーパッチ、マイクロスフィア、酵素および細胞固定化などのバイオプロセスといったような他の適用においても大きな有用性を見出されている。
【0004】
このような適用のうち、ナノ粒子ドラッグデリバリーシステムは、より広範に研究されており、親水性表面をもつナノメーターサイズの薬剤担体、特に、ポリマーミセルの2つ球面共中心(co-centric)領域(疎水性材料の高密度実装コアと疎水性薬剤または化合物の捕捉に関与する親水性材料の外殻)を含むものは、広範に研究されている。このようなシステムは、細網内皮系(RES)による認識および取り込みを回避し、したがって、血液中を長期間にわたって循環することができることが見出されている。さらに、それらのサイズが非常に小さいことにより(ポリマーミセルは、通常、数百のブロックコポリマーからなり、約20 nm-50 nmの直径をもつ)、粒子は、受動的標的化メカニズムを介して固形腫瘍などの病的部位で浸出する。
【0005】
ポリマーは、それらの化学的および構造的特徴に起因する特性の範囲を得る。ポリマー鎖は、本質的に直線、分枝、または隣接する鎖と架橋してもよい。さらに、これらの鎖は、不規則、規則的または1つの方向に向かっていてもよい。化学的組成と組み合わせたこれらの構造的特徴は、ポリマーに種々の特性を与え、種々の最終用途適用をもたらす。さらに、化学的組成と組み合わせたこれらの構造的特徴は、得られるポリマーに生体適合性および宿主組織環境による生物分解性に対する耐性を与えるか、または奪う。これらの因子はまた、溶解度および加工および成形方法などの他の特性に影響を及ぼす。
【0006】
さらに、ポリマーを哺乳動物に注射する場合、それは、通常、投与部位からゆっくりと消失するが、この消失は、通常、生体内変換過程の一部である加水分解などの化学反応に応答して起こり、該ポリマーが代謝され、身体から除去される。しかし、これは、種々の生体システムに悪影響を及ぼす不必要な代謝物質をもたらすことがある。したがって、使用の環境において/に対して不活性であり、投与部位から無傷で除去されるか、または取り出され、ポリマーからの薬剤の輸送および放出に対する本質的に速度制限バリヤーとして働くポリマーは、意図する機能に基づいて最も重要である。また、ポリマーの生物分解性は、ポリマーの機械的および化学的特性に応じて変わる。種々の天然、合成および生合成ポリマーが、生物および環境的分解性である。C-C骨格に基づくポリマーは、非生物分解性である傾向があるが、ヘテロ原子含有ポリマー骨格は、生物分解性を与える。したがって、無水物、エステルまたはアミド結合などの化学結合の思慮深い欠失/付加によって、非生物分解性/生物分解性をポリマーに工作することができ、非生物分解性ポリマー材料の他の一般的例として、ポリエチレンビニルアセテート、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルウレタン、エチルセルロース、セルロースアセテート、ポリエチレンおよびよポリビニルクロリドが挙げられる。
【0007】
過去二,三十年の間に行われた試み、またはポリマーを利用する種々の薬剤のためのナノ粒子デリバリーシステムの開発において入手可能な多種多様な報告がある。2〜3例を挙げると、以下の開示が挙げられる:
i)Sakuraiら、US 5,412,072:親水性および疎水性フラグメントを含むポリマーに共有結合した薬剤を含む複合体が、該複合体を水溶性にすることによって投与に適することがみいだされている。ここで利用された薬剤は、一般に水難溶性または不溶性化合物であり、薬剤−ポリマー複合体が、水溶液中でポリマーミセルを形成し、投与に有用であり、適している水溶性高分子ポリマー化薬剤になることが報告されている。
ii)Yokoyamaら、US 5,449,513:彼らは、Sakuraiら、US 5,412,072によって開示されたものとは異なり、薬剤がポリマーに共有結合する複合体ではないが、薬剤がポリマー内に捕捉されるポリマーミセルを報告している。捕捉に利用される薬剤は、本来は、疎水性である。ポリマーミセルは、超音波処理などの従来の方法によってポリマー殻の内側に疎水性薬剤を捕捉し、このようにして得られたミセルを透析によって精製することによって順に製造される、
iii)Desaiら、US 5,439,686;US 5,362,478;US 5,916,596;US 6,096,331;US 6,537,579およびUS 6,749,868:実質的に水不溶性化合物のポリマーミセルが製造される。水不溶性化合物が、かなりの程度でポリマー殻の内側に捕捉され、溶液または懸濁液の形態のいずれかで、投与を必要とする患者への投与に適することが報告されている。
【0008】
Sakuraiら、US 5,412,072によって利用されたポリマーは、一般に、ポリエチレングリコール、多糖類、ポリアクリルアミドなどから選ばれる親水性セグメントおよびポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリシンから選ばれる疎水性セグメントを含むポリマーである。
【0009】
Yokoyamaら、US 5,449,513によって利用されたポリマーは、一般に、ポリエチレンオキシド、ポリリンゴ酸、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリシン、多糖類などから選ばれる親水性セグメントおよびポリ(L-アスパラギン酸β-ベンジル)、ポリ(L-グルタミン酸γ-ベンジル)、ポリ(β-置換アスパラギン酸塩)、ポリ(γ-置換グルタミン酸塩)、ポリ(L-ロイシン)、ポリ(L-バリン)、ポリ(L-フェニルアラニン)、疎水性ポリアミノ酸、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリメタクリレートアミド、ポリアクリレートアミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアルキレンオキシドおよび疎水性ポリオレフィンから選ばれる疎水性セグメントを含むポリマーである。
【0010】
Desaiら、US 5,439,686;US 5,362,478;US 5,916,596;US 6,096,331;US 6,537,579およびUS 6,749,868によって利用されたポリマーは、一般に、たとえば、アルブミン(35個のシステイン残基を含む)、インスリン(6個のシステイン残基を含む)、ヘモグロビン(α2 β2ユニットごとに6個のシステイン残基を含む)、リゾチーム(8個のシステイン残基を含む)、免疫グロブリン、α-2-マクログロブリン、ビトロネクチン、ビトロネクチン、フィブリノゲンなどの本質的にその構造内にスルフヒドリル基またはジスルフィド結合を有するポリマーである。このようなポリマーは、本明細書において前述したような、その構造内にスルフヒドリル基またはジスルフィド結合を有する合成および天然ポリマーの両方を包含する。スルフヒドリル基またはジスルフィド結合は、既存であるか、または適当な化学的修飾を介して得られることが報告されている。天然ポリマーが好ましいことが報告されており、アルブミン、タンパク質、オリゴペプチド、ポリ核酸などが挙げられる。
【0011】
しかし、Sakuraiら、Yokoyamaら、およびDesaiらによって開示されたポリマーミセルによる不利点は、彼らが、すべて、生物分解性である合成および天然ポリマーの両方を利用することである。生物分解性ポリマーは、薬物放出パターンならびに装填された薬物の放出動態に影響を及ぼす能力があるが、以下の理由からドラッグデリバリーシステムにおいてはあまり好ましくはない。
a)単核食細胞系(MPS)細胞による迅速な捕獲により血漿滞在時間が短いこと;
b)生理的変化への応答の欠如;
c)薬剤の消耗およびその他の副作用を経済的および治療的に引き起こす、一貫した薬物放出動態の欠如;および
d)タンパク質薬剤のカプセル封入にタンパク質変性を引き起こす有機溶媒が関与することによる毒性または免疫原性の増加の誘発。
【0012】
非生物分解性であるポリマーは、以下の文献に利用され、開示されている:
i)Maitraら、US 5,874,111:薬剤は、ポリマー内に捕捉され、形成される高度に単分散したポリマー親水性ナノ粒子がもたらされる。利用されたポリマーは、ビニルピロリドン(VP)などのモノマーまたはビニルピロリドンとポリエチレングリコールフマレート(PEGF)との混合物を含むポリマーである。
ii)Maitraら、US 6,322,817:利用されたポリマーは、ビニルピロリドン、アクリル酸、C3〜C6の鎖長を有するアルキルアクリレート官能化分子量2000〜6000のポリエチレングリコール、C3〜C6の鎖長を有するN-アルキルアクリルアミドおよびC3〜C6の鎖長を有するアルキルシアノアクリレートから選ばれる少なくとも1つの種類の両親媒性モノマーを含む。ポリマーミセル内に捕捉される薬剤は、タキサン誘導体、特にパクリタキセルである。
iii)Loweら、US 2005/0169882:利用されるポリマーは、スマートセグメント(非生物分解性である)および生物分解性セグメントを含む。さらに詳しくは、スマートな非生物分解性セグメントは、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N-アルキルアクリルアミド)、ポリ(N-n-プロピルアクリルアミド)、ポリ(N-イソプロピルメタクリルアミド)、ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(プロピレンオキシド)-ポリ(エチレンオキシド)、エラスチン様ポリペプチドまたはその誘導体を含み、生物分解性セグメントは、多糖類、デキストラン、ポリエステル、ポリラクチド、ポリ(L-乳酸)、ポリ(D,L-乳酸)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、ビオチニル化ポリ(エチレングリコール-ブロック-乳酸)などを含む。
【0013】
US 5,874,111に開示されたポリマーの場合、このようなポリマーは、各モノマーの重合を介して製造され、このようにして得られた重合材料は精製され、透析方法を介してそれを含む水性媒体から単離される。
【0014】
US 6,322,817に開示されたポリマーの場合も、ポリマーは、各モノマーの重合を介して製造され、精製され、透析方法を介して水性媒体から単離される。
【0015】
同様に、Loweら、US 2005/0169882によって開示されたポリマーもまた、精製され、透析方法を介してそれを含む水性媒体から単離される。
【0016】
Maitraら、US 5,874,111によって開示された、そこに開示されたポリマーへの捕捉のための化合物または薬剤に関して、それらは、主として抗原、ウシ血清などである。US 6,322,817の場合、そこに開示されたポリマーへの捕捉のための薬剤は、主として水不溶性タキサン誘導体、特に、パクリタキセルであるが、Loweら、US 2005/0169882は、そこに開示されたポリマー殻へ捕捉しうる多種多様の薬剤を開示する。
【0017】
上記に加えて、Burmanら、US 6,365,191は、US 6,322,817に開示されたポリマーを含む医薬組成物、さらに詳しくは、タキサン誘導体、特にパクリタキセルの医薬組成物を教示する。ここで、該医薬組成物は、エタノール中のパクリタキセルの溶液を、アニオン界面活性剤および緩衝剤を含む水中のポリマーの溶液を加えたデキストロース溶液を含む輸液ビヒクルに加えることによって製造される。
。Burmanらはさらに、灌流液体から薬剤が沈澱することなく12時間以上医薬組成物が安定であること、および薬剤の90%以上(HPLCによる分析)が、灌流液体の製造の24時間後でさえもポリマーミセル内に捕捉されていることを主張する。
【0018】
Burmanら、US 6,365,191は、そこに開示された医薬組成物が、ナノ粒子形態にあることを主張するが、明細書中に、主張されたナノ粒子形態の粒径に関する言及はない。パクリタキセルを含むポリマーミセルの粒径についての唯一の言及は、Maitraら、US 6,322,817による開示の中に見出すことができる:パクリタキセルを含む該ナノ粒子は、30-150 nmの範囲の直径を有することが報告されている。同様に、Loweら、US 2005/0169882によって開示された組成物のポリマーミセルの粒径についての言及はない。
【0019】
US 5,874,111;US 6,322,817;US 6,365,191およびUS 2005/0169882に開示されたポリマーが、ビニルピロリドンおよびN-イソプロピルアクリルアミドなどの1つ以上のモノマーから製造されることに留意することが重要である。さらに、ビニルピロリドンおよびN-イソプロピルアクリルアミドは、ヒト/動物のために作られた医薬組成物中に存在することが、世界中の保健機関によって非難されるのみならず、世界中の薬局方評議会によって設定された厳しい規制による厳重な品質保守の的になる毒性化合物であることに留意することが重要である。たとえば、ポリマーであるポリビニルピロリドンならびにモノマーとしてビニルピロリドンを含むいずれかの他のポリマー中のモノマービニルピロリドンの濃度は、米国および欧州薬局方によって規定されるように、0.001%(すなわち、<10 ppm)という限度を超えるべきではない。
【0020】
US 5,874,111;US 6,322,817;US 6,365,191およびUS 2005/0169882に記載された、モノマーの1つとしてビニルピロリドンを利用するポリマーの製造および単離方法においては、該モノマー、すなわちビニルピロリドンが、0.001%よりも高い上端(すなわち、>10 ppm)で存在するかもしれないという重大な危険性がある。
【0021】
モノマーの1つとしてビニルピロリドンを利用するこのようなポリマーを含む医薬組成物は、モノマー汚染物質としてのビニルピロリドンも含むかもしれない、そして、該モノマー、すなわちビニルピロリドンが、0.001%よりも高い上端(すなわち、>10 ppm)でも存在するかもしれないという同程度に重大な危険性がある。
【0022】
これは、US 6,322,817;US 6,365,191およびUS 2005/0169882に開示された医薬組成物に関して事実でありうる。
【0023】
ポリマーの製造のための反応などのいずれの化学反応も、常に反応物の1つ以上が生成物中に残されるという意味では決して完全ではないことを過度に重視する必要はない。これは、モノマーとしてビニルピロリドンを含み、利用されたビニルピロリドンのモルまたは重量比率に応じて変わる重合反応に適用され、ビニルピロリドンの幾らかの量が、その製造された生成物中に汚染物質として残るというあらゆる可能性がある。
【0024】
上記に関連して、本発明者らの懸念が事実であることがわかった。まさに、US 6,322,817の実施例I、IIおよびIIIの記載のように、3つのモノマー、すなわち、ビニルピロリドン(VP)、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)および無水マレイン酸とポリエチレングリコールとのエステル(MPEG)の重合によって製造されたポリマーの分析から、表Iにまとめたような量のN-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)およびビニルピロリドン(VP)を含むことがわかった。
【0025】
表I:US 6,322,817の実施例I、IIおよびIIIの記載の方法により製造されたポリマーにおける残留モノマーの量
【0026】
ポリマー中に見出されたビニルピロリドンの量が、毒性限界である0.001%(すなわち、10 ppm)の少なくとも8倍以上であることが極めて明白である。
ここで、このようなポリマーを含む医薬組成物は、ヒトまたは動物への投与には非常に危険であり、毒性が高い。
【0027】
緊急でないにせよ、必要性は、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)およびビニルピロリドン(VP)などの毒性モノマーを実質的に含まないポリマーのためのみならず、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)およびビニルピロリドン(VP)などの毒性モノマーを実質的に含まないポリマーを含む医薬組成物のためにも存在する。
【0028】
Burmanら、US 6,365,191によって開示された医薬組成物は、12時間かそれ以上の安定性しかもたないか、または24時間後にはポリマーミセル内に捕捉された薬剤は90%かそれ以上しかないことが報告されていることにも留意されたい。さらに、Loweら、US 2005/0169882によって開示された医薬組成物は、約40%の生物学的活性物質しか装填されず、2、3時間から数日間しか生物学的活性物質が放出されないことが報告されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
より長い安定性ならびにより高い薬物装填を有し、さらに安全で毒性の低い医薬組成物がさらに必要性である。
【0030】
本発明は、モノマー汚染物質を実質的に含まないポリマーを提供するのみならず、ヒト/動物への投与にとって安全であり、より長い安定性をもつ、このような所望のポリマーを含む医薬組成物をも提供するという進歩の前方へ向かうステップである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
(本発明の目的)
本発明の目的は、モノマー汚染物質を実質的に含まない、高純度の生体適合性および非生物分解性ポリマーを提供することである。
本発明のもう1つの目的は、モノマー汚染物質を実質的に含まない、高純度の生体適合性および非生物分解性ポリマーの製造方法を提供することである。
本発明のさらにもう1つの目的は、高純度でモノマー汚染物質を実質的に含まない、生体適合性および非生物分解性ポリマーを含むナノ粒子形態における水難溶性薬剤または化合物の医薬組成物を提供することである。
本発明のさらなる目的は、高純度でモノマー汚染物質を実質的に含まない、生体適合性および非生物分解性ポリマーを含むナノ粒子形態における水難溶性薬剤または化合物の医薬組成物の製造方法を提供することである。
【0032】
本発明のさらに他の目的は、安全で毒性の低い、高純度でモノマー汚染物質を含まない生体適合性および非生物分解性ポリマーを含む水難溶性薬剤または化合物のナノ粒子医薬組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、水難溶性薬剤または化合物および高純度でモノマー汚染物質を含まない生体適合性および非生物分解性ポリマーを含むナノ粒子形態における医薬組成物の高度に選択的な製造方法を提供することである。
さらに別の本発明の目的は、投与を必要とする患者への、高純度でモノマー汚染物質を実質的に含まない生体適合性および非生物分解性ポリマーを含むナノ粒子医薬組成物の投与方法を提供することである。
本発明のさらなる目的は、より長い時間安定である、高純度でモノマー汚染物質を含まない生体適合性および非生物分解性ポリマーを含むナノ粒子医薬組成物を提供することである。
【0033】
(本発明に使用した略語)
VP=ビニルピロリドンまたは1-ビニルピロリジン-2-オン
NIPAM=N-イソプロピルアクリルアミド
MPEG =無水マレイン酸とポリエチレングリコールのエステル
MBA=N,N'-メチレンビスアクリルアミド
TMED=テトラメチルエチレンジアミン
APS=過硫酸アンモニウム
LCST=より低い臨界溶液温度
DSC=示差走査熱量測定
TGA=熱重量分析
CMC=臨界ミセル濃度
【0034】
(本発明の要約)
本発明者らの努力において、彼らは、もし従来技術のすべての制限ではないとしても、その大部分を克服して、すべての説明された目的が、達成されうるものであることを見出した。
【0035】
まず初めの段階で、本発明者らは、得られたポリマー中の各個々のモノマー汚染物質の量が規定された毒性限界よりも低い、NIPAMおよびVPの両方のモノマーユニットを含むポリマーが得られることを見出した。
【0036】
さらに詳しくは、本発明者らは、毒性のNIPAMおよびVPのモノマー汚染物質を実質的に含まない、モノマーユニットとしてNIPAM、VPおよびMPEGを含むポリマーが得られることを見出した。特に、本発明者らは、0.001% w/wよりも低い濃度で汚染物質を含む高純度でこのようなポリマーが、得られることを見出した。
【0037】
NIPAM、VPおよびMPEGの重合によって得られたポリマーを含む水溶液を、従来技術に教示されたような透析法とは異なって、透析濾過または限外濾過のステップに付すことを含む、高度に選択的な方法を介して、所望の特性を有するポリマーを得ることができた。
【0038】
本発明方法によって得られたポリマーが透析のステップを含む従来技術、特にUS 6,322,817に開示された方法よりも優れていることは、表IIにまとめたように、各ポリマーに含まれる残留モノマーの比較から最もよく理解できた。
【0039】
表II:ディアフィルトレーションを利用する本発明方法により得られたポリマーに対する、透析を利用するUS 6,322,817に開示の方法により得られたポリマー中に含まれたモノマー汚染物質における比較
【0040】
透析は、半透膜を介する選択的な拡散による、溶液中のより大きな分子からより小さな分子の、またはコロイド粒子から溶解した物質のゆっくりとして分離を含む方法であることに留意すべきである。典型的な透析法において、精製のためのポリマー溶液は、半透膜内に含まれ、低分子量溶質(モノマー)が、純粋な溶媒、一般に膜の外側の水によって置き換えられる。この溶媒は、ポリマーを含む溶液中の拡散しうる溶質(NIPAMおよびVPなどのモノマー)の濃度が低下するまで、定期的または継続的に交換される。
【0041】
透析法とは異なり、透析濾過技術は、膜を横切るポンプによる液体の機械的流れを含み、そのことによって、液体がポンプで膜の表面に沿って接線方向に送り込まれる(このため、透析濾過は、タンジェンシャルフローフィルトレーションとしても知られている)。適用された圧力は、膜を通して濾液側へ液体の一部を選択的に拡散させる。保持されたポリマー成分は、半透膜の表面に蓄積しない。
【0042】
精製のために取り込まれるポリマーの水溶液の最初の量または体積が、それ自体残るかまたは同じである、あるいは該操作の終了または完了時に希釈される、透析法とは対照的に、透析濾過法は、ポリマーの水溶液が接線方向の流れに沿って一掃されるので、同時にポリマーを含む該溶液が濃縮され、ポリマーのより濃縮された溶液が得られる。たとえば、水5リットル中に約100 gmのポリマーを含む溶液をそれぞれ透析および透析濾過に付すと、前者の方法の終了時には水4.5〜5.5リットル中にのポリマー100 gmを含む溶液が得られるが、後者の方法の終了時には初期体積の減少または濃縮が、一般に初期体積の1/4〜1/6の間の程度までになり、水約0.8〜1.3リットル中にポリマー100 gmを含む最終溶液が得られる。
【0043】
さらに、前述したように、透析法では、ポリマーの溶液を含む膜の外側に保持された溶媒は、手動で定期的または継続的に交換される必要があるが、透析濾過法では。このような溶媒の手動の定期的または継続的交換は不要である。このことは、前者をその操作中に手動の監視を必要とする冗長なものにするが、後者の方法は、完全に自動化および制御されており、したがって、その操作中に手動の監視を必要とせず、冗長さが少なく、便利である。
【0044】
さらに、開放環境下で操作する透析法と比較して閉鎖環境下で操作可能である透析濾過法により、微生物汚染の可能性が最小になるか、またはなくなり、したがって、適正製造基準に適合するのみならず、世界中の規制指針にも適合して、無菌状態下での操作とみなされる。
【0045】
さらに、手動の操作を含むことのみならず、透析が作動する固有の原理にもより、単位操作のための周期は、非常に長く、一般に、約24〜36時間かかる。それに対し、作動する固有の原理により、透析濾過法は、非常に短い周期しか必要とせず、通常、完了のために1時間以下しかかからない。言い換えれば、透析濾過法は、透析法よりも少なくとも25倍速く、したがって、工業的に、より適している。
【0046】
一方、透析法は、操作および完了のためにかなり長い周期を必要とし、この方法のもう1つの固有の不利点は、少ない体積/量のポリマーの溶液しか精製することができないことである。このような制限は、透析濾過法にはなく、一般に、多い体積/量を精製することができ、少なくとも4〜5倍の溶液の程度まで精製される。たとえば、透析法が、1回の周期において水5.0リットル中のポリマー100 gの溶液を精製する能力を有するならば、1回の周期の透析濾過法によって、水20.0〜25.0リットル中のポリマー400〜500 gを精製することができる。言うまでもなく、透析濾過法のより大きい処理能力は、もう1つの利点であり、すなわち、より速い操作時間、自動化および制御された操作、便利で冗長さが少ないこと、初期溶液の同時濃縮または体積の減少、適正製造基準および規制指針に適合して、微生物汚染の最小化または無いこと、などのすでに前述した他方の利点に加えて、提供される。
【0047】
しかし、前記し、議論したように、透析法を凌ぐ透析濾過法の最も重要な利点は、それぞれの方法によって得られるポリマーの純度にある。透析濾過法は、モノマー汚染物質を実質的に含まないポリマーを生成し、したがって、ヒト/動物消費にとって非毒性で安全である[表II参照]。
【0048】
最後に、しかし、少なからず、透析濾過法のもう1つの利点は、もし、ポリマーが溶液から固体に単離されることが要求される/必然であるならば、たとえば、凍結乾燥などを介する溶媒の蒸発によって、次いで、一般に初期体積の1/4〜1/6の間の程度までポリマー溶液初期体積の減少または濃縮をもたらす該方法により、蒸発/凍結乾燥周期も、徹底的に減少することである。透析法では、初期体積の減少または濃縮が起こらないので、もし、ポリマーが溶液から固体に単離されることが要求される/必然であるならば、蒸発/凍結乾燥周期は、より長くなる。
【0049】
要するに、透析法と比較して透析濾過法は、適正製造基準に適合して、大規模製造に容易に拡張可能であり、したがって、工業的に、より実行可能で扱いやすい。
【0050】
透析濾過法と透析法との本質的な差異をすぐに参照できるように、表IIIにまとめる。
【0051】
一方、ある程度まで、透析濾過または限外濾過技術は、種々の精製に適用されるが、ポリマーの分野におけるそれらの適用は、これまでに報告されておらず、本発明の新規性および進歩性の態様を形成する。
【0052】
さらに、本発明は、1H-NMR、13C-NMRおよびフーリエ変換赤外(FT-IR)などの種々の分光分析法によって得られ、後記の構造式(I)を有することが見出された、高純度であり、モノマー汚染物質を実質的に含まないポリマーを特徴とする。
【0053】
さらに、スイスアルビノマウスにおける放射標識ポリマーによる研究に基づいて、本明細書に後述する詳細から明らかなように[表VIおよびVIIおよび図6を参照]、本発明ポリマーが、非生物分解性であり、沈積することなく身体から迅速に排出され、重要な臓器において分解されることが見出され、このことから、ヒト/動物使用のためのポリマーの安全性および有用性が示唆される。
【0054】
表III:本発明ポリマーの水溶液の精製に対する、透析および透析濾過法の比較
【0055】
さらに、本明細書の後述する部分での詳細から明らかなように、局所的毒性(皮下および静脈内)、800mg/kgの動物体重までの標的臓器投与毒性、6ヶ月の周期的投与毒性などの広範な実験に基づいて[図7−10参照]、本発明ポリマーが、ヒト/動物に使用し、投与するのに適した医薬組成物の製造における使用にとって、非毒性、生体適合性および生物学的に安全であることが見出された。
【0056】
高純度でモノマー汚染物質を実質的に含まず、さらに生体適合性、非生物分解性、安全および非毒性である本発明のポリマーが、ヒト/動物への使用および/または投与にとって同様に安全で非毒性である医薬的に許容しうる賦形剤とともにナノ粒子の形態においてポリマーを含む医薬組成物の製造において特に有用であることがさらに見出された。
【0057】
特に、生体適合性、非生物分解性、安全および非毒性の本発明ポリマーが、完全またはほとんど完全にそのポリマー殻内に多くの水難溶性薬剤または化合物(ここで、該水難溶性薬剤または化合物は、粒径30-150 nmのナノ粒子形態において利用可能である)を捕捉することが見出された。
【0058】
(本発明ポリマーの構造)
【0059】
さらに詳しくは、本発明ポリマーは、多くの水難溶性薬剤または化合物を完全またはほとんど完全にそのポリマー殻内に捕捉する、医薬的に許容しうる賦形剤を含むナノ粒子形態における医薬組成物の製造に使用することができることが見出された。このような水難溶性薬剤または化合物は、水溶解度が10 mg/ml未満のものである。このような水難溶性薬剤または化合物の例として、抗がん剤、抗炎症薬、抗菌薬、制吐薬、降圧剤、性ホルモン、ステロイド、抗生物質、免疫調節剤、麻酔薬などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ポリマー殻内に捕捉されうる抗がん剤の典型的な例は、パクリタキセル、ドセタキセルおよびその他の関連タキサン誘導体;イリノテカン、トポテカンおよびその他の関連カンプトテシン誘導体;ドキソルビシン、ダウノマイシンおよび関連アントラサイクリン誘導体;シスプラチン;オキサリプラチン;5-フルオロウラシル;ミトマイシン;メトトレキセート;エトポシド;ベツリン酸およびその誘導体;およびウエデロラクトンおよびその誘導体である。ポリマー殻内に捕捉されうる抗炎症薬の典型的例として、インドメタシン、イブプロフェン、ケトプロフェン、フルビプロフェン、ピロキシカム、テノキシカムおよびナプロキセンが挙げられる。ポリマー殻内に捕捉されうる抗菌薬の典型的例として、ケトコナゾールおよびアムホテリシンBが挙げられる。ポリマー殻内に捕捉されうる性ホルモンの典型的例として、テストステロン、エストロゲン、プロゲステロンおよびエストラジオールが挙げられる。ポリマー殻内に捕捉されうるステロイドの典型的例として、デキサメタゾン、プレドニゾロンおよびトリアムシノロンが挙げられる。ポリマー殻内に捕捉されうる降圧剤の典型的例として、カプトプリル、ラミプリル、テラゾシン、ミノキシジルおよびパラゾシンが挙げられる。ポリマー殻内に捕捉されうる制吐薬の典型的例として、オンダンセトロンおよびグラニセトロンが挙げられる。ポリマー殻内に捕捉されうる抗生物質の典型的例として、メトロニダゾールおよびフシジン酸が挙げられる。ポリマー殻内に捕捉されうる免疫調節剤の典型的例として、シクロスポリンおよビフェニルジメチルジカルボン酸が挙げられる。ポリマー殻内に捕捉されうる麻酔薬の典型的例として、プロポフォール、アルファキサロンおよびヘキソバルビタールが挙げられる。
【0060】
特に抗がん剤に関して、本発明ポリマーが、そのポリマー殻内に、パクリタキセル、ドセタキセル、エトポシドおよびUS 6,403,816および我々の継続中の2005年2月9日出願のインド出願No.265/DEL/2005に開示の以下の構造(II)、(III)および(IV)を有するMJ-1098、DRF-4012およびDRF-4015と称されるものような種々のベツリン酸誘導体などの水難溶性薬剤または化合物を完全に捕捉する能力を持つことが見出された。
【0061】
US 6,403,816に開示のMJ-1098(II)
インド出願No.265/DEL.2005に開示のDRF-4012(III)
インド出願No.265/DEL.2005に開示のDRF-4015(IV)
【0062】
前述の水難溶性薬剤または化合物のナノ粒子医薬組成物、特にパクリタキセル、ドセタキセルおよびエトポシドならびに前述のMJ-1098、DRF-4012およびDRF-4015などの強力な抗がん化合物などの水難溶性薬剤または化合物のナノ粒子医薬組成物は、12時間という安定性を有するUS 6,365,191に開示のBurmanらの方法により製造されたパクリタキセルのナノ粒子医薬組成物と比べて、24時間以上というより長い安定性を有することが見出された。「安定性」という用語を参照することにより、水難溶性薬剤または化合物が、それを含む医薬組成物における溶液から沈澱することなく、該溶液中に残っている、時間で計算される期間を意味するとみなされるべきである。
【0063】
さらに、前述の水難溶性薬剤または化合物のナノ粒子医薬組成物、特にパクリタキセル、ドセタキセルおよびエトポシドならびに前述のMJ-1098、DRF-4012およびDRF-4015などの強力な抗がん化合物などの水難溶性薬剤または化合物のナノ粒子医薬組成物において、該薬剤または化合物は、24時間後でさえも95%以上の範囲までがポリマーミセル内に捕捉されることが見出された。それに対し、US 6,365,191に開示のBurmanらの方法により製造されたパクリタキセルのナノ粒子医薬組成物において、薬剤は、24時間後でさえも90%にとどまる範囲までがポリマーミセル内に捕捉されることが見出された。
【0064】
高純度でモノマー汚染物質を実質的に含まない本発明ポリマーを特徴とするナノ粒子形態における水難溶性薬剤または化合物の医薬組成物と、US 6,365,191に開示のナノ粒子形態におけるパクリタキセルの医薬組成物の比較は、表IVにまとめた比較から明らかである。
【0065】
表IV:本発明の水難溶性薬剤または化合物の医薬組成物とUS 6,365,191に開示の医薬組成物との比較
【0066】
本発明方法により得られた高純度でモノマー汚染物質を実質的に含まないポリマーという利点のみならず、これまでに詳述した従来技術のポリマーおよび医薬組成物を越えて本発明ポリマーを含む水難溶性薬剤または化合物の医薬組成物が有する利点に加えて、本発明者らはさらに、水難溶性薬剤または化合物の医薬組成物の製造のための高度に選択的な方法を見出した。ここで、利用されたポリマーのポリマー殻内に捕捉された該水難溶性薬剤または化合物は、一貫したサイズのナノ粒子形態で製造される。この高度に選択的な方法は、もう1つの本発明の態様である。
【0067】
第一の段階で、BurmanらUS 6,365,191における、実施例1-40に含まれる記載および標題「好ましい化合物」および「注入用製剤」下の記載から、パクリタキセルの医薬組成物は、必要量の希釈液(一般に5%または10%のデキストロース溶液)中に必要量のポリマーを最初に溶解し、次いで、陰イオン性界面活性剤を加えて、透明な溶液を得、そのpHを必要に応じて、緩衝剤で調節することによって製造されるのが明らかであろう。次いで、得られる希釈液中のポリマーおよび陰イオン性界面活性剤の透明な溶液に、パクリタキセルのアルコール性溶液を加えて、投与に有用なナノ粒子形態における医薬組成物であることを本質的に主張する、0.1〜10 mg/mlの範囲の種々の薬剤濃度を得る。
【0068】
前述のように、US 6,365,191は、このようにして得られたナノ粒子のサイズについて言及していないが、BurmanらUS 6,365,191における、実施例1-40および標題「好ましい化合物」および「注入用製剤」下に記載された方法により、パクリタキセルの医薬組成物を製造する彼らの試みにおいて、本発明の管理下にあるナノ粒子に一貫するサイズを生み出すかまたはもたらすことが見出された。
【0069】
この背景に対して、本発明者らは、一貫したサイズのナノ粒子の製造が、高度に選択的であり、以下の事項よって主に決まることを見出した。
i)パクリタキセルのアルコール性溶液を、希釈液中のポリマーまたは他の賦形剤の溶液に加える速度;
ii)パクリタキセルのアルコール性溶液の体積およびそれを加える希釈液の体積;
iii)パクリタキセルのアルコール性溶液を、希釈液中のポリマーおよび医薬的に許容しうる賦形剤の溶液に加える針の内径または孔径;および
iv)パクリタキセルのアルコール性溶液を加える際の希釈液およびポリマーおよび医薬的に許容しうる賦形剤を含む容器の位置。
【0070】
特に、本発明者らは、以下の事項:
a)特定の期間内での希釈液中のポリマーおよび他の賦形剤の溶液への注射器を通してのパクリタキセルのアルコール性溶液の添加;
b)希釈液中のポリマーおよび医薬的に許容しうる賦形剤の溶液へのより少ない量のパクリタキセルのアルコール性溶液の添加のための0.305 mm〜0.356 mmの内径を有する針の利用;または
c))希釈液中のポリマーおよび医薬的に許容しうる賦形剤の溶液へのより多い量のパクリタキセルのアルコール性溶液の添加のための0.559〜0.711 mmの内径を有する針の利用;
d)希釈液中のポリマーおよび他の賦形剤の溶液への注射器を通してのパクリタキセルのアルコール性溶液の注入(ここで、パクリタキセルのアルコール性溶液を加える注射器の針は、希釈液中に浸したままである);および
e)必要に応じて、パクリタキセルのアルコール性溶液の、希釈液中のポリマーおよび他の賦形剤の溶液への注入中、逆さの位置に、該希釈液を含む容器を維持すること;
を通じてのみ、最小または無視できる程度のサイズ変化およびポリマー殻内の薬物の一貫した装填を有する一貫したサイズのナノ粒子の生成を達成することができることを見出した。
【0071】
前述の高度に選択的な方法が、パクリタキセルのみのナノ粒子の生成のみならず、他の水難溶性薬剤または化合物、特にドセタキセル、エトポシド、ベツリン酸、前述の式(II)のMJ-1098、式(III)のDRF-4012、式(IV)のDRF-4015などの強力な抗がん性ベツリン酸誘導体の一貫した粒子サイズのナノ粒子の生成に置いても等しく有効であることがさらに見出された。
【0072】
もし、たとえば1〜5 mlなどのより少ない体積の水難溶性薬剤または化合物の溶液の、希釈液中のポリマーおよび他の賦形剤の溶液(注入されたものの約35倍の体積)への添加時間が、4秒を超えるならば、あるいはもし、針(これを通って水難溶性薬剤または化合物の溶液が注入される)の内径が、0.305 mm〜0.356 mmの範囲外であるならば、このような添加が、水難溶性薬剤または化合物のナノ粒子の一貫しない粒子サイズの生成ならびに安定性の乏しい医薬組成物をもたらし、それによって溶液の長期間の透明性がなくなり、短期間で乳白色になることが特に見出された。
【0073】
同様に、もし、たとえば5〜15 mlなどのより多い体積の水難溶性薬剤または化合物の溶液の、希釈液中のポリマーおよび他の賦形剤の溶液(注入されたものの約35倍の体積)への添加時間が、10秒を超えるならば、あるいはもし、針(これを通って水難溶性薬剤または化合物の溶液が注入される)の内径が、0.559〜0.711 mmの範囲外であるならば、このような添加が、水難溶性薬剤または化合物のナノ粒子の一貫しない粒子サイズの生成ならびに安定性の乏しい医薬組成物をもたらし、それによって溶液の長期間の透明性がなくなり、短期間で乳白色になることが特に見出された。
【0074】
このことは、2つの水難溶性抗がん性薬剤または化合物、すなわち、パクリタキセルおよび式(III)のDRF-4012のベツリン酸誘導体の医薬組成物に関して例証された。ここで、該薬剤の溶液の添加の時間ならびにそれを通ってこのような溶液が希釈液中のポリマーおよび医薬的に許容しうる賦形剤の溶液に添加される針の内径の効果を表Vにまとめる。
【0075】
本発明の医薬組成物は、2つのバイアルキットとして存在するのが好都合である:
a)一方は、水混和性溶媒またはその混合物中の適当な濃度における水難溶性薬剤または化合物の溶液を含み;
b)他方は、水性溶媒(一般に、注射用グレードの水)中の高純度でモノマー汚染物質を実質的に含まない本発明ポリマーおよび医薬的に許容しうる賦形剤の溶液を含み、両方のバイアルは、滅菌され、無菌状態で製造され、包装される。
【0076】
次いで、2つのバイアルの内容物を希釈液に加えた後、ヒト/動物に投与する。
必要に応じて、キットはさらに、希釈液、ならびに少ない体積である約1〜5 mlのバイアルa)の内容物が、その約35倍の体積のバイアルb)の内容物に加えられるならば、注射器および内径0.305〜0.356 mmの針を含み、あるいは、多い体積である約10〜15 mlのバイアルa)の内容物が、その約35倍の体積のバイアルb)の内容物に加えられるならば、注射器および内径0.559〜0.711 mmの針を含む。
【0077】
特に、パクリタキセルを含むキットの場合、乳がんの治療のための患者への投与のために、2−バイアルキット製品は、以下を含む:
a)エタノール20 ml中のパクリタキセル400 mgの溶液を含む一方のバイアル;
b)水20 ml中の高純度でモノマー汚染物質を実質的に含まない本発明ポリマー200 mgおよび医薬的に許容しうる賦形剤を含む溶液を含む他方のバイアル;および
必要に応じて、キットはさらに、最小または無視できるサイズ変動およびポリマー殻内での一貫した薬物の装填を有する一貫した粒径およびより長い安定性のナノ粒子での投与に適した医薬組成物を製造するための、10%デキストロース溶液の500 mlビン、ならびに10秒を超えない期間、好ましくは6〜の期間でバイアルb)の溶液を加えられた10%デキストロース溶液の500 mlビンへのバイアルa)の溶液の注射のための注射器および内径0.711 mmの針を含む。
【0078】
表V:水難溶性薬剤または化合物の溶液の添加時間およびこのような溶液が希釈液中のポリマーおよび他の賦形剤の溶液にそれを介して加えられる針の内径の効果
【0079】
【0080】
要約すれば、前述したように、本発明は、ナノ粒子技術の分野における従来法の制限のすべてではないが大部分への解決を提供することにおける進歩であり、以下を提供する:
i)ポリマー中の毒性のNIPAMおよびVP濃度が<0.001%の、高純度でモノマー汚染物質を実質的に含まない、NIPAM、VPおよびMPEGから選ばれる3つのモノマーユニットを含むポリマー;さらに、ヒト/動物使用のための生体適合性、非生物分解性、安全および非毒性であるように構築されている;
ii)そのように製造されたポリマーの水溶液を透析濾過に付すことを含む、ポリマー中の毒性のNIPAMおよびVP濃度が<0.001%の、高純度でモノマー汚染物質を実質的に含まない、NIPAM、VPおよびMPEGから選ばれる3つのモノマーユニットを含むポリマーの高度に選択的な製造方法;
iii)安全で非毒性であることからヒト/動物使用または投与のために非常に適した、高純度でモノマー汚染物質を実質的に含まないポリマーおよび医薬的に許容しうる賦形剤を含む、ナノ粒子形態における水難溶性薬剤または化合物の医薬組成物;
iv)ナノ粒子の一貫した粒径および一貫した薬剤装填を有する、高純度でモノマー汚染物質を実質的に含まないポリマーおよび医薬的に許容しうる賦形剤を含む、ナノ粒子形態における水難溶性薬剤または化合物の医薬組成物の高度に選択的な製造方法;および
v)ナノ粒子の一貫した粒径および高い水準の薬剤装填および長期安定性を有する、高純度でモノマー汚染物質を実質的に含まないポリマーおよび医薬的に許容しうる賦形剤を含む、ナノ粒子形態における水難溶性薬剤または化合物の医薬組成物。
【0081】
(発明の詳細な記載)
A.本発明ポリマーの製造
本発明ポリマーは、ポリマー鎖が、どのようなスルフヒドリル基またはジスルフィド結合も含まない架橋剤と架橋する、NIPAM、VPおよびMPEGから選ばれる3つのモノマーユニットを含む。
【0082】
架橋剤は、直線ポリマー鎖に架橋を提供することによって、重合中に重要な役割を演じ、一般に、使用するときはいつでも、二官能性ビニル誘導体である。架橋剤は、二官能性以上である、すなわち、2つ以上の反応性部位を有することができる。有利に使用することができる二官能性ビニル誘導体は、N,N'-メチレンビスアクリルアミド(MBA)であり、これが好ましい。
【0083】
本発明ポリマーは、重合反応のために通常採用される一般的方法によって製造することができる。
【0084】
特定の実施態様において、本発明ポリマーは、モノマー、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)、1-ビニル-2-ピロリドン(VP)および無水マレイン酸のポリエチレングリコール(モル重量6000)エステル(MPEG)を、水性媒体中、活性化剤、重合開始剤および架橋剤の存在下でフリーラジカル重合に付すことによって、製造することができる。
【0085】
モノマー、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)およびビニルピロリドン(VP)組み合わせは、55:22〜65:35の範囲の重量比において使用され得たが、使用されうる(NIPAM+VP):MPEGのモノマー組成は、80:20〜95:5の範囲である。さらに詳しくは、好ましくは、モノマー、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)およびビニルピロリドン(VP)の組み合わせは、58:32〜62:28の範囲の重量比で使用され、(NIPAM+VP):MPEGの共モノマー組成は、90:10または95:5であり、特定の比率が、無作為に超分岐したNIPAMおよびVPのコポリマーユニットを一貫してもたらすという理由により、所望の生体適合性、非生物分解性および生物学的安全プロフィールを、無水マレイン酸-ポリエチレングリコール(MPEG)のジエステルアダクト(メジャー)およびモノエステルアダクト(マイナー)による水素結合から形成された外殻コーティングによって安定化されるポリマーに与えることが見出される。
【0086】
重合開始剤は、フリーラジカル形成の開始において重要な役割を演じる。使用しうる開始剤は、単独または組み合わせて使用される、過酸化ジアシル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジアセチル、過酸化ジアルキル、過酸化第三ブチルおよび過酸化第四アミルなどの過酸化化合物または2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)などのニトリルベース重合開始剤、アンモニウムペルジスルフェートまたはアンモニウムペルスルフェート(APS)などの無機塩重合開始剤でありうる。
上述の重合開始剤のうち、アンモニウムペルスルフェート(APS)が好ましい。
【0087】
しかし、重合開始剤は、重合を開始するが、重合反応は、重合開始剤からのフリーラジカルの形成を触媒する活性化作用剤(活性化剤として知られることが多い)の存在によって促進されることが見出される。このような活性化剤は、テトラメチルエチレンジアミン(TMED)および硫酸アンモニウム第一鉄(FAS)から選ばれ、TMEDおよびFASの組み合わせが好ましい。重合開始剤および活性化剤のいずれの組み合わせも重合反応に使用することができる。2つ以上の開始剤を使用することもできる。同様に、2つ以上の活性化剤を使用することもできる。
【0088】
前述したように、架橋剤は、直線ポリマー鎖内に架橋を提供することによって、重合中に重要な役割を演じ、一般に、使用するときはいつでも、二官能性ビニル誘導体である。二官能性以上、すなわち、2つの反応性部位を有することができる。使用されうる二官能性ビニル誘導体は、N,N'-メチレンビスアクリルアミド(MBA)であり、これが好ましい。
【0089】
重合は、窒素またはアルゴンでありうる不活性ガスの存在下で行われる。
一般に、重合反応は、最初、適切な量の各モノマー、すなわち、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)、1-ビニル-2-ピロリドン(VP)および無水マレイン酸のポリエチレングリコール(モル重量6000)エステル(MPEG)を、一般に水である水性媒体に溶解することによって行われる。このようにして得られた各モノマーの水溶液に、を架橋剤および活性化剤の水溶液を連続して加える。溶液を不活性ガスで約30-60分間通気することによって、脱気する。脱気した溶液に、重合開始剤の水溶液を加え、重合が完了するまでの期間、継続的不活性ガス通気下、溶液を25℃〜45℃の温度、好ましくは25℃〜35℃の温度で重合に付す。
【0090】
架橋剤は、総モノマー含量の1.3-1.5 % w/wの範囲の量、より好ましくは、総モノマー含量の1.35-1.4% w/wの範囲の量で使用することができる。
【0091】
活性化剤は、総モノマー含量の15-18 % w/wの範囲の量、より好ましくは総モノマー含量の15-16 % w/wの範囲の量で使用することができる。
【0092】
重合開始剤は、総モノマー含量の20-30 % w/wの範囲の量、より好ましくは、総モノマー含量の23-25 % w/wの範囲の量で使用することができる。
【0093】
重合反応の進行は、HPLCによってモニターされ、通常、約3-6時間で完了する。
【0094】
重合反応の完了後、予め滅菌した使い捨て0.2μmポリエーテルスルホン膜1”カプセルフィルター、孔径0.8および0.2μm;タイプDPS-5101AA-201(M/s Advanced Microdevices Pvt.Ltd製、インド)を通して濾過する。Proflux M12(Millipore)透析濾過装置を使用して、反応容器の濾過された内容物を透析濾過し、モノマー汚染物質および他の低分子量不純物を除去する。
【0095】
透析濾過は、一般に、1時間以内に完了し、通常、モノマー汚染物質を実質的に含まない溶液のみならず、濃縮形態、通常、透析濾過に付した溶液の初期体積の1/4〜1/6をもたらす。必要ならば、モノマー汚染物質を実質的に含まない、このようにして得られた濃縮溶液をもう一周期透析濾過に付すことができる。高純度でモノマー汚染物質を実質的に含まない本発明ポリマーの濃縮溶液を、凍結乾燥のステップに付して、医薬組成物において利用するための固体凍結乾燥形態のポリマーを得ることができ、あるいは、濃縮溶液それ自体を該医薬組成物の製剤のために直接利用することができる。
【0096】
典型的な実施態様において、重合反応は、適切な量の各モノマー、すなわち、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)、1-ビニル-2-ピロリドン(VP)および無水マレイン酸のポリエチレングリコール(モル重量6000)エステル(MPEG)を水に溶解することによって行われる。このようにして得られた各モノマーの水溶液に、適切な体積の架橋剤N,N'-メチレンビスアクリルアミド(総モノマー含量の約1.37 % w/w)の溶液および適切な体積のテトラメチルエチレンジアミン(TMED、総モノマー含量の約15.4% w/w )と硫酸アンモニウム第一鉄(FAS)(総モノマー含量の約0.1 % w/w)の水溶液(0.5% w/v)を含む活性化剤の組み合わせの水溶液を加える。一方の活性化剤を加え、その後、他方の活性化剤と重合開始剤を加えるのが好ましい。約30分間窒素を通気することによって、溶液を脱気する。脱気した溶液に、適切な体積の重合開始剤、アンモニウムペルスルフェート(総モノマー含量の約24 % w/wの水溶液(約80 % w/v)を加え、好ましくは、重合が完了するまでの期間、継続的窒素通気下、25℃〜35℃の温度にて溶液を重合に付す。通常、重合反応は、3-5時間で完了する。
【0097】
重合反応の完了後、予め滅菌した使い捨て0.2μmポリエーテルスルホン膜1”カプセルフィルター(孔径0.8および0.2μm)を通して溶液を濾過する。Proflux M12(Millipore)透析濾過装置を使用して、反応容器の濾過された内容物を透析濾過し、モノマー汚染物質および他の低分子量不純物を除去する。
【0098】
典型的実施態様において、50 mlの水中の約1 gの濃度のポリマーの溶液を、透析濾過に付し、透析濾過後すぐに、NIPAMとVPの両方の0.001%未満を含む、初期体積の約1/4〜1/6中のポリマーの濃縮溶液、約12-13 mlの水中の約1 gのポリマーの溶液が得られる。
【0099】
ポリマー中の残留モノマー、特に残留VPおよびNIPAMの検出および定量をHPLCによって行った。モノマーの検出のために使用することができるHPLCシステムは、逆相RP-18(C-18)カラム[Lichrospher RP-18e、5μ、250 mm×4 mm]を使用するAgilent 1100シリーズまたは等価物である。使用した移動相は、流速1 ml/分、比率80:20の水とアセトニトリルの混合物であり、サンプル注入体積は50 μlである。
【0100】
実行時間は10分間であり、カラム温度は30℃であり、検出波長は226 nmである。
上記条件下、NIPAMの保持時間は約3分であり、VPの保持時間は約5分であった。
【0101】
そのようにして得られたポリマーの濃縮溶液は、高純度でモノマー汚染物質を実質的に含まず、凍結乾燥のステップに付して、医薬組成物において利用するための固体凍結乾燥形態のポリマーを得ることができ、あるいは、濃縮溶液それ自体を該医薬組成物の製剤のために直接利用することができる。しかし、ポリマーの濃縮溶液それ自体を医薬組成物への製剤のために利用するのが好ましい。
【0102】
B.本発明ポリマーの特徴決定
前述の方法によって得られた本発明ポリマーを、1H-NMR、13C-NMR、フーリエ変換赤外(FT-IR)などの広範な分光分析および示差走査熱量測定(DSC)および熱重要分析(TGA)などの熱分析に付して、このようにして得られたポリマーの構造を解明した。
【0103】
CDCl3中の本発明ポリマーの1H NMRスペクトルは、1.14(br、-CH(CH3)2);1.45(br、-CH2-CH-N(VP-環);1.63(br,-CH2-CHC(=O)NH);1.99(br,-CH C(=O)NH-)、CH2(VP 環)、2.36(CH2、VP 環)、3.0(-O-CH2-CH2-)、3.23(CH2-N-);3.62-3.66(Br、CH2、MPEG);3.72(NH-CH(CH3)2);3.97(Br、CH)であるδ(ppm)におけるピークを示す。本発明ポリマーの1H-NMRスペクトルを、図1にまとめる。
【0104】
本発明ポリマーの13C NMRスペクトルは、174(C=O);76.6-77.6(CDCl3 についての多重およびポリマー骨格についてのCH);70.6(CH2's、MPEG);41.6(イソプロピルユニットについてのCH);31.8(CH2's、ポリマー骨格);22.6(CH3's、イソプロピル)であるδ(ppm)におけるピークを示す。本発明ポリマーの13C-NMRスペクトルを、図2にまとめる。
【0105】
本発明ポリマーのフーリエ変換赤外(FT-IR)スペクトルは、3500(s、OH);3296(s、NH、sec-アミド);2972-2933(s、CH、CH2、CH3);1651(br、強、スプリットピーク エステルC=OおよびアミドIのC=O);1546(s、アミドIIのNHベンドおよびおそらく遊離酸のC=O、マイナー);1387、1367(イソプロピル基の二重、CH3、変形);1172-1129(m、O-C-O)である周波数値(cm-1)におけるピークを示す。本発明ポリマーのフーリエ変換赤外(FT-IR)スペクトルを、図3にまとめる。
【0106】
これらの特徴決定試験は、本発明ポリマーが以下の式(I)で示される構造を有することを確認する。
【0107】
さらに、該ポリマーの物理化学的特性を詳細に決定するために、熱特性、臨界ミセル濃度(CMC)、溶解度およびpH、保存安定性などの種々の特性を評価した。
【0108】
熱重力分析(TGA)は、溶媒の減少および約310℃にて起こる分解が開始する前にポリマーの特にMPEGユニットにおいて起こっている高分子反応を示す、51-260℃からいくらかの重量減があることを明らかにした。これは、ポリマーが、大部分MPEGユニットによって提供されうる高い熱安定性を有することを示す。本発明ポリマーのTGAサーモグラムを図4にまとめる。
【0109】
さらに、図5に示すポリマーの示差走査熱量測定(DSC)プロフィールは、どのようなガラス転移温度(Tg)も示さなかったが、58℃の融点(Tm)および38.4℃の再結晶点温度(TC)が観察された。明確なTgがないことは、MPEGとの広範な水素結合によっても貢献される非常に硬い超分岐構造を示す。
【0110】
(本発明ポリマーの構造)
【0111】
ポリマーの下限臨界溶解温度(LCST)は、50-60℃の範囲である。さらに、これは、LCSTと呼ばれる特定の温度における熱応答相転移において現れる水性相中の両親媒性ポリマーにとって重要なパラメーターである。LCSTより下で、ポリマーは、可溶性伸長鎖立体配置、すなわち、親水性挙動を示す。LCSTより上で、ポリマーは、不溶性、疎水性凝集を形成することに適合する相転移を受ける。この特性は、適切な溶媒中でミセルを形成し、医薬的適用における薬剤のためのデリバリーシステムにおいて作用するのに有用である。
【0112】
臨界ミセル濃度(CMC)は、ナノ担体の封入能力を定義し、安定性を決定するもう1つの重要なパラメーターである。これは、その疎水性コア中に薬剤を封入する能力を有するミセル構造を形成するための両親媒性ポリマーまたはユニマーの下限濃度である。本発明ポリマーのCMC値は、約0.2mg/mlである。さらに、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)および1-ビニルピロリドン-2-オン(VP)などの熱感受性およびpH感受性モノマーを含むポリマーは、タンパク質および血液細胞と生体適合性であることがよく知られている。さらに、ポリ(NIPAM)の生物医学的適用は、その可逆的温度転移、すなわち、LCST、優れた水素結合、ミセルおよびヒドロゲル形成能力により、非常に広い。同様に、ポリビニルピロリドン(ポビドンとしても知られる)ポリマーもまた、高水溶性であり、広範な水素結合を水と形成する。このポリマーの意図された適用は、水難溶性薬剤を可溶化するための親水性および疎水性基を含む熱感受性、pH感受性、安定ポリマーナノ粒子の形成を導く種々の所定のモノマーの長所を組み込んでいる新規な組み込みシステムを設計することであった。
【0113】
非常に驚くべきことに、80:20〜95:5の範囲の(NIPAM+VP):MPEGのコモノマー組成ならびに55:22〜65:35の範囲のNIPAM:VPユニットを有する無水マレイン酸-ポリエチレングリコール(MPEG)のジエステルアダクト(メジャー)およびモノエステルアダクト(マイナー)による水素結合から形成された外殻コーティングによって安定化されたNIPAMおよびVPの無作為超分岐コポリマーユニットの形成が、所望の生体適合性、非生物分解性および生物学的に安全なプロフィールをポリマーに与えることが見出された。特に、(NIPAM+VP):MPEGの組成が、90:10または95:5であり、NIPAM:VPユニットを58:32〜62:28の範囲で使用する場合に、より良い結果(高いLCST、高収量、パクリタキセルナノ粒子からの放出パーセンテージ)が得られることが見出された。使用したモノマーの比率もまた、最終ポリマーにおいて一貫し、1H-NMR、13C-NMRおよびフーリエ変換赤外(FT-IR)スペクトル実験などの種々の実験によって確認された。
【0114】
C.本発明ポリマーの生体適合性および非生物分解性
雄性スイスアルビノマウスを使用して[14C]標識ポリマーの薬物動態、生体内分布および排出を評価した場合、放射能血液濃度プロフィールは、0.448±0.157 時間(26.88分)という短い排出半減期T1/2(β)および54.7 ml/時間という迅速クリアランスをもつ二相曲線を示した(図6)。この実験の結果を表VIおよびVIIにまとめる。
【0115】
表VI:本発明ポリマーの薬物動態パラメーター
【0116】
主な排出経路は、尿であることがわかり(48時間の時点で、尿66.91%対大便17.39%)、48時間までに集めた回収データは、注入した放射能の84.87%に相当する。組織分布は無視できた。腎臓、肝臓、皮膚および腸は、標的臓器であることがわかった。しかし、組織中のポリマーのレベルは、尿および大便を介して迅速に除去された。
【0117】
表VII:放射標識した本発明ポリマーの回収
【0118】
このように、結論として、重要臓器内で蓄積され、分解されることなく、ポリマーが身体から迅速に排出されることが分かり、ヒト使用のためのポリマーの安全性および有用性が示される。
【0119】
D.本発明ポリマーにおける毒性試験
以下の事項を評価するために、式(I)で示されるポリマーの毒性試験を行った:
(i)局所的毒性(皮下および静脈内);
(ii)800mg/動物体重kgまでの標的臓器投与毒性;および
(iii)6ヶ月周期投与毒性
【0120】
D(i)局所的毒性(皮下および静脈内)
75 mg/mlのポリマー100 μlをウサギ耳に単回皮下投与した後に、ポリマーの毒性を測定したところ、注射部位に軽度の炎症を引き起こし、注射後48時間に試験した場合、本発明ポリマーは、皮下投与後の投与部位にどのような局所的毒性も引き起こさないことが示された。
【0121】
75 mg/mlの本発明ポリマーを125 mg/kgの用量でウサギ静脈へ5日間の継続的静脈内投与を行い、本発明ポリマーの毒性を測定し、同じ結果を得、さらに、本発明ポリマーが、投与の部位にどのような局所的毒性も引き起こさないことを確認した。
【0122】
10%デキストロース溶液を皮下注射した48時間後のS&E染色ウサギ耳朶の代表的写真を図7に示し、本発明水溶液を皮下注射した48時間後のS&E染色ウサギ耳朶の代表的写真を図8に示す。
【0123】
10%デキストロース溶液(コントロール)を静脈内投与した24時間後のS&E染色ウサギ縁部耳静脈部の写真を図9に示し、本発明水溶液を皮下注射した24時間後のS&E染色ウサギ縁部耳静脈部の代表的写真を図10に示す
【0124】
D(ii)標的臓器投与毒性(800mg/動物体重kgまで)
さらに、ウィスターラットにおいて、可能性のある標的臓器において、特に微小血管系に関して、単回静脈内ボーラス投与により、毒性を評価し、測定した。2つの異なる用量、すなわち、400 mg/kgおよび800 mg/kgにて、ポリマーを投与した。試験条件下での、いずれかの用量での本発明ポリマーの単回静脈内投与は、死亡率あるいは観察しうる毒性徴候または症状をラットに引き起こさない。ラットの個々の体重および平均体重は、ポリマー処置グループおよびコントロールグループの両方において着実な増加を示した。両方の用量の処置動物の体重に関し、コントロールの体重と比べて、有意な差異はなかった。
【0125】
ポリマーで処置されたラットにおいて、血液学的パラメーターは、試験を通して正常限度内であった。生化学的パラメーターもまた両方の用量で処置された動物について正常限度内であった。フォトアクトメーター(photoactometer)試験は、それぞれ第7日と第21日において、コントロールグループと処置グループとの間で自発運動に有意な差異がないことを明らかにし、ポリマーがどのような神経毒性もないことを示す。
【0126】
処置グループおよびコントロールグループ検体は、同様の組織学的特色を示した。肝臓、心臓、肺、腎臓、膵臓、胃、結腸、大腿筋および眼などの重要臓器において組織学的試験を行った。試験したすべての臓器は、光学顕微鏡検査において正常な構造を示した。各臓器における微小血管系を注意深く検査したところ、病理学的特徴はどの臓器においても見られなかった。さらに、ポリマー処置動物の微小血管系において、変化はなかった。
【0127】
上記観察から、400 mg/kg(投与された動物の体重)または800 mg/kg(投与された動物の体重)のいずれかを5日間連続して投与された本発明ポリマーが、どのような一般的毒性またはどのような有意な血液学的毒性も引き起こさないことが極めて明らかであったことから、本発明ポリマーの生物学的安全性および非毒性プロフィールが示される。
【0128】
D(iii)6ヶ月周期投与毒性
さらに、ラットにナノ粒子製剤のポリマーを静脈内注射することによって6ヶ月周期投与毒性を試験した。雄性/雌性ウィスターラットを試験に使用し、180日間(約26週間)にわたって3週間毎に1回周期的に外側尾部静脈に静脈内投与を行った。処置グループおよびコントロールグループの動物は、試験期間中、一般的に活動的で健康であった。10 mg/kgの薬剤に相当するポリマー濃度が、試験下の動物において安全であることが分かった。注目した血液学的パラメーターにおける最小の変化は、ウィスターラットにとって正常範囲内であり、処置に関連するものは見出されなかった。
上記試験は、合成ポリマーが、医薬組成物の製造における使用にとって非毒性で生物学的に安全であることを示す。
【0129】
E.本発明ポリマーを含む医薬組成物
前述したように、高純度でモノマー汚染物質を実質的に含まない、さらに詳しくは、残留モノマー、NIPAMおよびVPが<0.001%である式(I)で示される本発明ポリマーは、ナノ粒子形態における水難溶性薬剤または化合物の医薬組成物の製造にとって有利に利用することができ、ヒト/動物への投与または使用にとって安全で非毒性である。
【0130】
さらに詳しくは、本発明ポリマーは、多くの水難溶性薬剤または化合物を完全またはほとんど完全にそのポリマー殻内に捕捉する、医薬的に許容しうる賦形剤を含むナノ粒子形態における医薬組成物の製造に使用することができる。
【0131】
さらに、前述したように、本発明の医薬組成物に利用することができる水難溶性薬剤または化合物は、一般に、水溶解度が10 mg/ml未満のものである。
【0132】
このような水難溶性薬剤または化合物の例として、抗がん剤、抗炎症薬、抗菌薬、制吐薬、降圧剤、性ホルモン、ステロイド、抗生物質、免疫調節剤、麻酔薬などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ポリマー殻内に捕捉されうる抗がん剤の典型的な例は、パクリタキセル、ドセタキセルおよびその他の関連タキサン誘導体;イリノテカン、トポテカンおよびその他の関連カンプトテシン誘導体;ドキソルビシン、ダウノマイシンおよび関連アントラサイクリン誘導体;シスプラチン;オキサリプラチン;5-フルオロウラシル;ミトマイシン;メトトレキセート;エトポシド;ベツリン酸およびその誘導体;およびウエデロラクトンおよびその誘導体である。ポリマー殻内に捕捉されうる抗炎症薬の典型的例として、インドメタシン、イブプロフェン、ケトプロフェン、フルビプロフェン、ピロキシカム、テノキシカムおよびナプロキセンが挙げられる。ポリマー殻内に捕捉されうる抗菌薬の典型的例として、ケトコナゾールおよびアムホテリシンBが挙げられる。ポリマー殻内に捕捉されうる性ホルモンの典型的例として、テストステロン、エストロゲン、プロゲステロンおよびエストラジオールが挙げられる。ポリマー殻内に捕捉されうるステロイドの典型的例として、デキサメタゾン、プレドニゾロンおよびトリアムシノロンが挙げられる。ポリマー殻内に捕捉されうる降圧剤の典型的例として、カプトプリル、ラミプリル、テラゾシン、ミノキシジルおよびパラゾシンが挙げられる。ポリマー殻内に捕捉されうる制吐薬の典型的例として、オンダンセトロンおよびグラニセトロンが挙げられる。ポリマー殻内に捕捉されうる抗生物質の典型的例として、メトロニダゾールおよびフシジン酸が挙げられる。ポリマー殻内に捕捉されうる免疫調節剤の典型的例として、シクロスポリンおよビフェニルジメチルジカルボン酸が挙げられる。ポリマー殻内に捕捉されうる麻酔薬の典型的例として、プロポフォール、アルファキサロンおよびヘキソバルビタールが挙げられる。
【0133】
水難溶性薬剤または化合物の医薬組成物は、典型的に、一方が、水難溶性薬剤または化合物の安定濃度における水混和性溶媒またはその混合物中の該薬剤の溶液を含むバイアルからなり;他方が、水性溶媒、一般に注射用グレードの水中の高純度でモノマー汚染物質を実質的に含まない本発明ポリマーおよび医薬的に許容しうる賦形剤の溶液を含むバイアルからなる2キットバイアル製品を含み、該キットバイアルの両方は、滅菌され、無菌状態で製造され、包装される。次いで、2つのバイアルの内容物をヒト/動物への投与用の希釈液に連続的に加える。前述したように、ならびに後述するように、水難溶性薬剤または化合物が、利用したポリマーのポリマー殻内に捕捉され、一貫したサイズのナノ粒子形態で製造されることに留意すべきである。2つのバイアルに含まれる、水混和性溶媒またはその混合物中の水難溶性薬剤の溶液と、本発明ポリマーの溶液の比率は、一般に1:1〜1:10の体積、好ましくは1:1の比率である。
【0134】
必要に応じて、2キットバイアル製品はさらに、希釈液ならびに注射器および投与を必要とするヒト/動物への投与のために混合される薬剤溶液の体積およびポリマーおよび賦形剤を含む希釈液の体積に応じて、内径0.305〜0.356または0.559〜0.711 mmの針を含むことができる。
【0135】
水難溶性薬剤または化合物を溶解するために利用することができる適当な水混和性溶媒として、脂肪族アルコール、特にエタノール;ジアルキルアミド、特にジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミド;ジアルキルスルホキシド、特にジメチルスルホキシドおよびジエチルスルホキシド;種々の分子量のポリエチレングリコール;種々の分子量のポリプロピレングリコール;界面活性剤、特にポリソルベート80、ポリソルベート20、ポリオキシエチル化植物油およびポリエトキシル化ヒマシ油;グリセリンなどが挙げられる。
【0136】
有利に使用することができる医薬的に許容しうる賦形剤として、デオキシコール酸ナトリウム;種々の胆汁塩;種々のグレードのポリソルベート、特にポリソルベート80、ポリソルベート20、ポリオキシエチル化植物油およびポリエトキシル化ヒマシ油;デキストロース、スクロース、ラクトース、マンニトールなどの多糖;種々のグレードのソルビタンエステルまたはスパン;種々のグレードのmyrj;種々のグレードのポロクサマーおよびpH調節のための緩衝剤が挙げられる。当業界で公知の緩衝剤のどれでも、溶液のpHの調節のために使用することができ、好ましい実施態様において、緩衝剤としてクエン酸ナトリウムを利用するのが有利である。
【0137】
医薬的に許容しうる賦形剤のうち、医薬組成物の安定化において効果を有するので、デオキシコール酸ナトリウムが好ましく、一方、緩衝剤は、灌流液のpHを6.0〜8.5の範囲に調節するために使用されるが、医薬組成物の安定化において効果を有することも分かっている。
【0138】
医薬組成物において、水難溶性薬剤または化合物の装填または投与を適切にすることができるが、該薬剤または化合物の最適な装填および投与の選択は、該薬剤または化合物の性質、その溶解度ならびに投与の理由である治療すべき障害に応じて大きく変わる。医薬的に許容しうる賦形剤の場合、医薬組成物において利用することができるその割合または量は同様に、該組成物に含まれる水難溶性薬剤または化合物の性質および装填に応じて変わる。
【0139】
本発明の水難溶性薬剤または化合物のナノ粒子における医薬組成物は、以下の方法で製造することができる:
i)水難溶性薬剤または化合物を適当な水混和性溶媒またはその混合物に溶解することを含む、薬剤濃縮液の製造;
ii)以下のステップを含む、ポリマーおよび医薬的に許容しうる賦形剤の水性濃縮液の製造;
a)第一に、適切な量の注射用水に、必要量の高純度でモノマー汚染物質を実質的に含まない、特に毒性NIPAMおよびVPのレベルが<0.001 %である必要な量の式(I)で示されるポリマーを添加する;
b)該ポリマーの水溶液に、医薬的に許容しうる賦形剤および緩衝剤を添加する;
iii)透明溶液を得るためのステップii-b)の溶液と希釈液との混合;
iv)ステップiii)の溶液に、少量のステップi)の溶液を添加するための内径0.305〜0.356 mmの針の利用;または
v)ステップiii)の溶液に、多量のステップi)の溶液を添加するための内径0.559〜0.711 mmの針の利用;
vi)ステップi)の溶液が注射器の針を通って加えられるその針が、ステップiii)の溶液に浸されたままであるステップiii)の溶液へのステップi)の溶液の注入;および
vii)ポリマー殻内に水難溶性薬剤または化合物を完全またはほとんど完全に捕捉し、粒径30〜150 nmの薬剤または化合物のナノ粒子を製造するために、必要に応じて、ステップi)の溶液の注入中、ステップiii)の溶液を含む容器を逆さの位置に維持すること。このような灌流液は、24時間以上安定なままであり、95%以上の薬剤がポリマーミセル内に装填されたままである。
【0140】
ここで、希釈液の選択は、利用される水難溶性薬剤または化合物の性質ならびに医薬組成物が投与される障害に応じて大きく変わることに留意すべきである。安定な希釈液は、水、食塩水、5%および10%デキストロース溶液、デキストロースおよび塩化ナトリウム溶液、乳酸ナトリウム溶液、乳酸リンゲル溶液、マンニトール溶液、マンニトールとデキストロースまたは塩化ナトリウム溶液、リンゲル溶液、塩化ナトリウム溶液、注射用滅菌水ならびに電解質、デキストロース、フルクトースおよび転化糖の種々の組み合わせを含む多電解質溶液から選択することができるが、これらに限定されるものではない。希釈液が、デキストロースおよび水を含む液体であるのが好ましく、5%および10%デキストロース溶液であるのがより好ましい。
【0141】
好ましい本発明ナノ粒子医薬組成物の製造方法および投与を必要とする患者へのその投与を図11に示す。
【0142】
次の非限定的実施例に関して本発明をさらに詳しく説明するが、それらは、決して本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0143】
下記の実施例において、ポリマーの精製に利用した透析濾過装置は、Proflux M12 透析濾過装置(Millipore製)であり、ポリマーの精製に使用した透析装置は、セルロース膜-D-9402(Sigma製)であったことに留意すべきである。
【実施例】
【0144】
装置セクション
参考例1
透析法を使用するポリマーの製造
2Lガラス容器にて重合反応を行った。24 gのN-イソプロピルアクリルアミド、12 mlの蒸留1-ビニル-2-ピロリドンおよび4 gの無水マレイン酸のポリエチレングリコール(重量モル6000)エステル(MPEG)を約2Lの水に加えた。これに、11.2 mlの水性N,N'-メチレンビスアクリルアミド(MBA)溶液[49 mg/ml]および8 mlのテトラメチルエチレンジアミン(d=0.77gm/ml)を加えた。30分間窒素ガスを通気することによって溶液を脱気した。次いで、8 mlの水性硫酸アンモニウム第一鉄(0.5% w/v)および12 mlの水性アンモニウムペルスルフェート(80% w/v)を加え、窒素通気を継続しながら3時間反応を続けた。80 rpmにて振とうしながら水浴中で34℃にて重合を行った。
【0145】
溶液を透析バッグに満たし、水(透析培体)中に降下させた。水を1回換えて24時間透析を行った。 24時間後、透析バッグから溶液を除去し、丸底フラスコにて凍結乾燥した。
【0146】
逆相RP-18(C-18)カラム[Lichrospher RP-18e、5μ、250 mm×4 mm]を使用するAgilent 1100シリーズHPLCシステムによって、ポリマー中の残留モノマー、特に残留VPおよびNIPAMの検出および定量を行った。使用した移動相は、流速1 ml/分の水とアセトニトリルの80:20混合物であり、サンプル注入体積は、50 μlであった。実行時間は10分間、カラム温度は30℃、検出波長は226 nmであった。上記条件下、NIPAMの保持時間は、約5分間であった。
分析データ:残留モノマー% i)NIPAM=0.066%(660 ppm)およびii)VP=0.011%(110 ppm)。
【0147】
実施例1
透析濾過法を使用するポリマーの製造
バッチサイズ160 g(4L×2)のポリマーについて、2つの5Lガラス容器にて重合反応を行う。各容器にて、48 gのN-イソプロピルアクリルアミド、23 mlの蒸留1-ビニル-2-ピロリドンおよび8 gの無水マレイン酸のポリエチレングリコール(重量モル6000)エステル(MPEG)を約4Lの水に加えた。これに、22.4 mlの水性N,N'-メチレンビスアクリルアミド(MBA)溶液[49 mg/ml]および16 mlのテトラメチルエチレンジアミンを加えた。30分間窒素ガスを通気することによって溶液を脱気した。次いで、16 mlの水性硫酸アンモニウム第一鉄(0.5% w/v)および24 mlの水性アンモニウムペルスルフェート(80% w/v)を加え、窒素通気を継続しながら3時間反応を続けた。80 rpmにて振とうしながら水浴中で34℃にて重合を行った。重合中、反応をモニターするために、サンプルを適当な時点(0、15、60および180分)で引き出した。
【0148】
重合が完了した後、予め滅菌した使い捨て孔径0.8および0.2μmの0.2μmポリエーテルスルホン膜1"カプセルフィルター;タイプDPS-5101AA-201(Advanced Microdevices Pvt.Ltd製、インド)を通して溶液を濾過した。両方の反応容器の濾過された内容物を貯蔵し、Proflux M12(Millipore)透析濾過装置を使用する接線流濾過に付し、残留モノマーおよび他の低分子量不純物を除去した。8Lの反応混合物を合わせたロットを、透析濾過を通してまず約2.2Lに濃縮し、次いで、得られる濃縮液を約30Lの高度純水を使用して透析濾過する。透析濾過中、反応混合物は、約1Lに濃縮される。160g(8L)のバッチサイズに対する透析濾過のための総処理時間は約4-6時間である。次いで、透析濾過溶液を凍結乾燥に付す。
【0149】
逆相RP-18(C-18)カラム[Lichrospher RP-18e、5μ、250 mm×4 mm]を使用するAgilent 1100シリーズHPLCシステムによって、ポリマー中の残留モノマー、特に残留VPおよびNIPAMの検出および定量を行った。使用した移動相は、流速1 ml/分の水とアセトニトリルの80:20混合物であり、サンプル注入体積は、50 μlであった。実行時間は10分間、カラム温度は30℃、検出波長は226 nmであった。上記条件下、NIPAMの保持時間は、約3分間であった。
分析データ:残留モノマー% i)NIPAM=<0.001%(<10 ppm)およびii)VP=<0.001%(<10 ppm)。
【0150】
ポリマーのスペクトル特性は、以下の通りであった。
1H NMR(300 MHz、Bruker分光計、CDCl3、δ ppm):1.15(br,-CH(CH3)2);1.45(br、-CH2-CH-N(VP-環);1.63(br,-CH2-CHC(=O)NH);1.99(br,-CH C(=O)NH-)、CH2(VP 環)、2.36(CH2、VP 環)、3.0(-O-CH2-CH2-)、3.23(CH2-N-);3.62-3.66(Br、CH2、MPEG);3.72(NH-CH(CH3)2);3.97(Br、CH)
13C NMR(300 MHz、Bruker分光計、CDCl3、δ ppm):174(C=O);76.6-77.6(CDCl3 についての多重およびポリマー骨格についてのCH)、70.6(CH2's MPEG)、41.6(イソプロピルユニットについてのCH)、31.8(CH2's、ポリマー骨格)、22.6(CH3's、イソプロピル)
FTIR(KBrペレット、cm-1): 3500(s,OH);3296(s、NH、sec-アミド)、2972-2933(s、CH、CH2、CH3)、1546(s、アミドIIのNHベンドおよびおそらく遊離酸のC=O、マイナー)、1387、1367(イソプロピル基の二重、CH3、変形)、1172-1129(m、O-C-O)
【0151】
実施例2
パクリタキセルナノ粒子医薬組成物の製造(少ない体積、すなわち、40 ml以下における再構成)
A]パクリタキセルのアルコール性溶液(20 mg/ml)の製造:200 mgのパクリタキセルを10.0 mlのエタノールに溶解した。
B]ポリマーおよび賦形剤の水性濃縮液の製造:実施例1で得られた100 mgのポリマー、66.7 mgのデオキシコール酸ナトリウムおよび100 mgのクエン酸ナトリウムを水10 mlに溶解して、透明溶液を得た。
C]パクリタキセルナノ粒子(0.6 mg/ml)の製造:1.0 mlのステップB]のポリマーおよび賦形剤の水性濃縮液を31.3 mlの10%デキストロース溶液に溶解して、透明溶液を得た。1.0 mlのステップA]のパクリタキセルのアルコール性溶液を、内径0.330 mmの針を通して4秒以内で上記溶液に加え、パクリタキセルのナノ粒子を0.6 mg/mlの濃度で得た。
【0152】
このようにして製造した医薬組成物は、以下の特徴を有した:
【0153】
実施例3
パクリタキセルナノ粒子医薬組成物の製造(多い体積、すなわち、500 ml以下における再構成)
A]パクリタキセルのアルコール性溶液(20 mg/ml)の製造:400 mgのパクリタキセルを20.0 mlのエタノールに溶解した。
B]ポリマーおよび賦形剤の水性濃縮液の製造:実施例1で得られた200 mgのポリマー、133.4 mgのデオキシコール酸ナトリウムおよび200 mgのクエン酸ナトリウムを水20 mlに溶解して、透明溶液を得た。
C]パクリタキセルナノ粒子(0.6 mg/ml)の製造:15.0 mlのステップB]のポリマーおよび賦形剤の水性濃縮液を500 mlの10%デキストロース溶液に溶解して、透明溶液を得た。15.0 mlのステップA]のパクリタキセルのアルコール性溶液を、内径0.711 mmの針を通して8秒以内で上記溶液に加え、パクリタキセルのナノ粒子を0.6 mg/mlの濃度で得た。
【0154】
このようにして製造した医薬組成物は、以下の特徴を有した:
【0155】
実施例4
ベツリン酸誘導体のナノ粒子医薬組成物の製造[式(II)のMJ-1098]
A]MJ-1098の溶液(15 mg/ml)の製造:MJ-1098(15 mg)を0.15 mlのN,N-ジメチルアセトアミドおよび0.01 mlのポリソルベート80の混合物に加え、0.84 mlのエタノールを上記溶液に加え、超音波処理により溶解した。
B]ポリマーおよび賦形剤の水性濃縮液の製造:実施例1で得られた10 mgのポリマー、6.67 mgのデオキシコール酸ナトリウムおよび10 mgのクエン酸ナトリウムを水1 mlに溶解して、透明溶液を得た。
C]MJ-1098ナノ粒子(0.75 mg/ml)の製造:0.3 mlのステップB]のポリマーおよび賦形剤の水性濃縮液を9.2 mlの5%デキストロース溶液に溶解して、透明溶液を得た。0.5 mlのステップA]のMJ-1098の溶液を、内径0.330 mmの針を通して3秒以内で上記溶液に加え、MJ-1098のナノ粒子を0.75 mg/mlの濃度で得た。
【0156】
このようにして製造した医薬組成物は、以下の特徴を有した:
【0157】
実施例5
ベツリン酸誘導体のナノ粒子医薬組成物の製造[式(III)のDRF-4012]
A]DRF-4012の溶液(20 mg/ml)の製造:DRF-4012(20 mg)を0.01 mlのポリソルベート80および0.99 mlのエタノールの混合物に溶解し、超音波処理により溶解した。
B]ポリマーおよび賦形剤の水性濃縮液の製造:実施例1で得られた10 mgのポリマー、6.67 mgのデオキシコール酸ナトリウムおよび10 mgのクエン酸ナトリウムを水1 mlに溶解して、透明溶液を得た。
C]DRF-4012ナノ粒子(0.60 mg/ml)の製造:0.33 mlのステップB]のポリマーおよび賦形剤の水性濃縮液を10.44 mlの5%デキストロース溶液に溶解して、透明溶液を得た。0.33 mlのステップA]のDRF-4012の溶液を、内径0.305 mmの針を通して3秒以内で上記溶液に加え、DRF-4012のナノ粒子を0.6 mg/mlの濃度で得た。
【0158】
このようにして製造した医薬組成物は、以下の特徴を有した:
【0159】
実施例6
ベツリン酸誘導体のナノ粒子医薬組成物の製造[式(IV)のDRF-4015]
A]DRF-4015の溶液(20 mg/ml)の製造:DRF-4015(20 mg)を0.01 mlのポリソルベート80および0.99 mlのエタノールの混合物に溶解し、超音波処理により溶解した。
B]ポリマーおよび賦形剤の水性濃縮液の製造:実施例1で得られた10 mgのポリマー、6.67 mgのデオキシコール酸ナトリウムおよび10 mgのクエン酸ナトリウムを水1 mlに溶解して、透明溶液を得た。
C]DRF-4015ナノ粒子(0.60 mg/ml)の製造:0.33 mlのステップB]のポリマーおよび賦形剤の水性濃縮液を10.44 mlの5%デキストロース溶液に溶解して、透明溶液を得た。0.33 mlのステップA]のDRF-4015の溶液を、内径0.330 mmの針を通して4秒以内で上記溶液に加え、DRF-4015のナノ粒子を0.6 mg/mlの濃度で得た。
【0160】
このようにして製造した医薬組成物は、以下の特徴を有した:
【0161】
実施例7
ドセタキセルナノ粒子医薬組成物の製造
A]ドセタキセルのアルコール性溶液(40 mg/ml)の製造:200 mgのドセタキセルを5.0 mlのエタノールに溶解した。
B]ポリマーおよび賦形剤の水性濃縮液の製造:実施例1で得られた400 mgのポリマー、400 mgのデオキシコール酸ナトリウムおよび400 mgのクエン酸ナトリウムを水10 mlに溶解して、透明溶液を得た。
C]ドセタキセルナノ粒子(0.5 mg/ml)の製造:4.0 mlのステップB]のポリマーおよび賦形剤の水性濃縮液を35.5 mlの10%デキストロース溶液に溶解して、透明溶液を得た。0.5 mlのステップA]のドセタキセルのアルコール性溶液を、内径0.330 mmの針を通して3秒以内で上記溶液に加え、ドセタキセルのナノ粒子を0.5 mg/mlの濃度で得た。
【0162】
このようにして製造した医薬組成物は、以下の特徴を有した:
【0163】
実施例8
エトポシドナノ粒子医薬組成物の製造
エトポシドの溶液(20 mg/ml)の製造:エトポシド(20 mg)を0.10 mlのN,N-ジメチルアセトアミドおよび0.90 mlのエタノールの混合物に、超音波処理下で溶解した。
B]ポリマーおよび賦形剤の水性濃縮液の製造:実施例1で得られた10 mgのポリマー、6.67 mgのデオキシコール酸ナトリウムおよび10 mgのクエン酸ナトリウムを水10 mlに溶解して、透明溶液を得た。
C]エトポシドナノ粒子(0.6 mg/ml)の製造:0.3 mlのステップB]のポリマーおよび賦形剤の水性濃縮液を9.4 mlの5%デキストロース溶液に溶解して、透明溶液を得た。0.3 mlのステップA]のエトポシドのアルコール性溶液を、内径0.330 mmの針を通して3秒以内で上記溶液に加え、エトポシドのナノ粒子を0.6 mg/mlの濃度で得た。
【0164】
このようにして製造した医薬組成物は、以下の特徴を有した:
【0165】
実施例9
マウスにおける[14C]標識ポリマーの薬物動態、生体内分布および排出の決定
6-8週齢、体重約25-30 gの雄性スイスアルビノマウスを各6匹の動物からなる5つのグループに無作為に分割した。ポリマーの比活性に基づいて、[14C]標識ポリマーを脱イオン水で5 mg/mlに希釈した。すべての動物に[14C]ポリマー 40 mg/kgを静脈内注射にて単回投与した。
【0166】
薬物動態試験において、麻酔下の後眼窩放血によって、投与後3、10、30分、1、2、4、8、16および24時間の時点で、EDTA含有チューブ内へ動物から100 μlの血液を採取した。排出試験のために、代謝ケージから、あるいは強制的に、尿および大便を採取した(10分間)。終了時(10分、60分、24および48時間)に、副腎、脳、肺、肝臓、心臓、腎臓、脾臓、胃、小腸、大腸、大便、尿、膀胱、眼、皮膚、大腿筋、睾丸および副睾丸を採取し、濯ぎ、切除し、秤量した。
【0167】
50 μlの血液/尿を5 mlの液体シンチレーション反応混液と合わせることによって、血液および尿中のの[14C]ポリマー濃度を決定した。大便および組織(0.5 g以下)を脱イオン水中でホモジナイズして、20 %ホモジネートを得た後、500 μlを5 mlの液体シンチレーション反応混液と合わせた。液体シンチレーション分析機によってサンプルを分析した。直線性および消光曲線に基づいて、毎分のカウントをμg/mlでの[14C]ポリマーの量に変換した。
【0168】
放射性血液濃度プロフィールは、0.448±0.157時間(26.88文)の短い排出半減期T1/2(β)および54.7 ml/時間の迅速なクリアランスをもつ二相曲線を示した。
【0169】
主な排出経路は、尿であることがわかり(48時間の時点で、尿66.91%対大便17.39%)、48時間までに集めた回収データは、注入した放射能の84.87%に相当する。組織分布は無視できた。腎臓、肝臓、皮膚および腸は、標的臓器であることがわかった。しかし、組織中のポリマーのレベルは、尿および大便を介して迅速に除去された。
【0170】
高レベルの放射能を提示する腎臓、肝臓、皮膚および腸における組織分布は無視できた。しかし、組織中のポリマーのレベルは、尿および大便を介して迅速に除去された。
【0171】
結論として、試験は、ポリマーが重要臓器に蓄積されることなく身体から迅速に排出されることを示す。ポリマーは、非生物分解性であることが知られているが、尿からの一次的な迅速で効率の良いクリアランスから、ヒト使用にとってポリマーが安全で有用であることが示される。
【0172】
実施例10
ウサギにおける125 mg/kgのポリマーの静脈内ボーラス投与を5日間継続した場合の投与部位における、もしあれば、可能性のある局所毒性の決定
75 mg/mlの濃度で10%デキストロースに溶解した試験物質を、5日間連続して、125 mg/kgにて、5 mlの使い捨て注射器および23Gの針で各ウサギの右耳の縁部静脈へ静脈内投与した。左の耳をコントロールとして使用し、10%デキストロースを同じ経路で投与した。投与量は、3.5 ml/動物の体重Kg以下になるように調節した。第1日〜第5日の毎日、5分、10分、30分、60分および24時間の時点で、局所的毒性に対する周期的観察を注射部位にて行った。第7日に、6匹のウサギ全ての両方の耳から、注射部位におけるパンチ生検を行った。
【0173】
ウサギ耳静脈における125 mg/kgの用量での75 mg/mlのポリマーの5日間連続静脈内投与は、10%デキストロースを注射されたウサギの注射部位において、軽度から中程度の血栓性静脈炎を引き起こす。選ばれたポリマーの投与は、投与部位において、どのような局所的毒性も引き起こさないと結論づけることができる。
【0174】
実施例11
ウィスターラットにおける400mg/kgのポリマーの5日間の静脈内ボーラス投与による、特に微小血管系に関する、可能性のある毒性の標的臓器の決定
試験物質を10%デキストロースに溶解し、400 mg/kgにて、各ラットの尾部静脈に、5 mlの使い捨て注射器および23Gの針で静脈内投与した。コントロール動物は、同じ経路で05デキストロースのみを投与された。投与量は、5 ml/動物の体重Kgに調節した。副作用(一般的審査および研究パラメーター)および死亡について周期的観察を記録した(処置後第7、14および21日)。すべての動物を屠殺し、剖検した。
【0175】
試験条件下での、400 mg/体重kgの用量レベルでのポリマーの5日間の静脈内ボーラス投与は、死亡率あるいは観察しうる毒性徴候または症状を処置ラットに引き起こさない。
【0176】
ラットの個々の体重および平均体重は、ポリマー処置グループおよびコントロールグループの両方において着実な増加を示した。両方の用量の処置動物の体重に関し、コントロールの体重と比べて、有意な差異はなかった。
【0177】
ポリマーで処置されたラットにおいて、血液学的パラメーターは、試験を通して正常限度内であった。中間グループ動物の総ビリルビン(p=0.0471)および尿酸(p=0.0157)ならびに最終グループ動物の総タンパク質(p=0.0005)および尿酸(p=0.0404)に対するベースラインにおいて、コントロール動物と比べて、有意な差異が検出された。しかし、すべての値は、正常限度内であった。
【0178】
フォトアクトメーター試験は、それぞれ第7日と第21日において、コントロールグループと処置グループとの間で自発運動に有意な差異がないことを明らかにし、ポリマーがどのような神経毒性もないことを示す。
【0179】
処置グループおよびコントロールグループ検体は、同様の組織学的特色を示した。試験したすべての臓器は、光学顕微鏡検査において正常な構造を示した。各臓器における微小血管系を注意深く検査したところ、病理学的特徴はどの臓器においても見られなかった。さらに、ポリマー処置動物の微小血管系において、変化はなかった。
【0180】
上記観察から、400 mg/体重kgにて5日間連続して投与された本発明ポリマーが、どのような一般的毒性またはどのような有意な血液学的毒性も引き起こさないことが示された。しかし、第21日において、総ビリルビンは、コントロールグループと比べて、終末グループにおいて有意に高いことが明らかになった。
実施例12
ウィスターラットにおける800mg/kgのポリマーの単回静脈内ボーラス投与による、特に微小血管系に関する、可能性のある毒性の標的臓器の決定
試験物質を10%デキストロースに溶解し、800 mg/kgにて、各ラットの尾部静脈に、5 mlの使い捨て注射器および26Gの針で投与した。コントロール動物は、同じ経路で10 %デキストロースのみを投与された。投与量は、5 ml/動物の体重Kgに調節した。副作用(一般的審査および研究パラメーター)および死亡について周期的観察を記録した(処置後第1、3および7日)。すべての動物を屠殺し、剖検した。
【0181】
試験条件下での、800 mg/体重kgの用量レベルでのポリマーの単回静脈内ボーラス投与は、死亡率あるいは観察しうる毒性徴候または症状を処置ラットに引き起こさない。
【0182】
ラットの個々の体重および平均体重は、ポリマー処置グループおよびコントロールグループの両方において着実な増加を示した。ポリマーで処置されたラットにおいて、血液学的パラメーターは、試験を通して正常限度内であった。ポリマーで処置されたラットにおいて、生化学的パラメーターは、試験を通して正常限度内であった。組織学的試験は、コントロールグループと処置グループのラットの間で有意な差異がないことを示す。注射後第3日および第7日に屠殺されたポリマー処置ラットの顕微鏡写真は、審査した4つの臓器(脳、眼、腎臓および皮膚)すべてにおいて、見かけ上の変化がないことを示す。
【0183】
上記観察から、400 mg/体重kgの用量にて投与された本発明ポリマーが、どのような一般的毒性またはどのような有意な血液学的および生化学的毒性または微少血管系における変化も引き起こさないことが示され、ラットにおいて静脈アニ投与される場合に安全であるとみなすことができる。
【0184】
実施例13
ウサギにおけるポリマーの投与(皮下)部位における、もしあれば、可能性のある局所毒性の決定
6匹のウサギのそれぞれの右耳朶に、1 ml使い捨て注射器および23Gの針で、濃度75 mg/mlで10%デキストロースに溶解した0.1 mlの試験物質の単回注射を皮下投与にて行った。コントロールには、6匹のウサギのそれぞれの左耳朶に、0.1 mlの10 %デキストロースを同じ経路で投与した。5分、10分、30分、60分および24時間の時点で、局所的毒性に対する周期的観察を注射部位にて行った。
【0185】
ウサギ耳における100 μlの75 mg/mlのポリマーまたは 100 μlのデキストロースの単回皮下投与は、注射の48時間後に試験した場合、注射部位において、軽度の炎症を引き起こす。選ばれたポリマーは、皮下投与部位において、どのような局所的毒性も引き起こさないと結論づけることができる。
【0186】
実施例14
ラットにおけるポリマー静脈内経路による6ヶ月投与局所的毒性の決定
ナノ粒子製剤でのポリマーを10 mg/kgの薬物に相当する用量レベルにて投与した。コントロールには、180日間(約26週間)にわたって3週間毎に1回周期的に外側尾部静脈にデキストロース(10 %)を静脈内投与した。観察は、死亡率、臨床的徴候、体重、食物および水の消費、臨床検査室試験、臓器重量および組織病理を含む。
【0187】
処置グループおよびコントロールグループの動物は、試験期間中、一般的に活動的で、健康なままであった。処置およびコントロールグループの両方における感染による少数の偶発的な死亡以外、処置に関連する死亡率はなかった。両性の動物が、試験中、体重の漸進的増加を示し、食餌および水の消費に変化はなかった。雄性および雌性の両方において血液学的パラメーターは、ウィスターラットについて記録したように、正常範囲内であった。しかし、処置グループにおいて、正常限度内であるが、雄性においてWBC(白血球)および好中球数、雌性において好中球の少量の減少があった。処置およびコントロールグループの両方において、網状赤血球数の軽度の増加が見出された。
【0188】
雄性および雌性の両方において血液生化学的パラメーターは、ウィスターラットについて記録したように、正常範囲内であった。少量の変化は、処置およびコントロールグループの雄性および雌性の両方において、グルコース、ALPおよびクレアチニンの値が正常値よりもわずかに高いことであった。6ヶ月の時点で、処置グループ雄性のトリグリセリドにおいて軽度の増加が見られた。雄性および雌性の両方において、尿パラメーターは正常限度内であった。
【図面の簡単な説明】
【0189】
【図1】本発明ポリマーの1H-NMRスペクトル。
【図2】本発明ポリマーの13C-NMRスペクトル。
【図3】本発明ポリマーのフーリエ変換赤外(FT-IR)スペクトル。
【図4】本発明ポリマーのTGAサーモグラム。
【図5】本発明ポリマーのDSCサーモグラム。
【図6】本発明[14C]-標識ポリマーの薬物動態血液像。
【図7】10%デキストロース溶液(コントロール)の皮下投与の48時間後のS&E染色ウサギ耳朶の写真。
【図8】本発明ポリマーの水溶液の皮下投与の48時間後のS&E染色ウサギ耳朶の写真。
【図9】10%デキストロース溶液(コントロール)の静脈内投与の24時間後のS&E染色ウサギ縁部耳静脈部の写真。
【図10】本発明ポリマーの水溶液の静脈内投与の24時間後のS&E染色ウサギ縁部耳静脈部の写真。
【図11】本発明ナノ粒子医薬組成物の典型的な製造方法および投与を必要とする患者への典型的な投与方法の説明。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高純度で各モノマー汚染物質を実質的に含まない、二官能性ビニル誘導体と架橋した、1-ビニルピロリドン(VP)、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)および無水マレイン酸とポリエチレングリコールのエステル(MPEG)から選ばれる3つのモノマーユニットを含むポリマー。
【請求項2】
高純度で、各毒性モノマー汚染物質を0.001%未満の量で含む、二官能性ビニル誘導体と架橋した、1-ビニルピロリドン(VP)、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)および無水マレイン酸とポリエチレングリコールのエステル(MPEG)から選ばれる3つのモノマーユニットを含むポリマー。
【請求項3】
二官能性ビニル架橋剤が、N,N'-メチレンビスアクリルアミド(MBA)である請求項1および2のいずれか1つに記載の高純度ポリマー。
【請求項4】
毒性1-ビニルピロリドン(VP)を0.001%未満の量で含む、請求項1および2のいずれか1つに記載の高純度ポリマー。
【請求項5】
毒性N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)を0.001%未満の量で含む、請求項1および2のいずれか1つに記載の高純度ポリマー。
【請求項6】
モノマー、NIPAM:VPの重量比が、55:22〜65:35である請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項7】
モノマー、NIPAM:VPの重量比が、58:32〜62:28である請求項6に記載のポリマー。
【請求項8】
モノマー、(NIPAM+VP):MPEGの重量比が、90:10〜95:5である請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項9】
モノマー、(NIPAM+VP):MPEGの重量比が、80:20〜95:5である請求項8に記載のポリマー。
【請求項10】
13C NMRスペクトルにおいて、174、76.6-77.6、70.6、41.6、31.8および22.6にδのピークを有する請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項11】
1H NMRスペクトルにおいて、1.14、1.45、 1.63、1.99、2.36、3.0、3.23、3.62-3.66、3.72および3.97にδのピークを有する請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項12】
FT-IRスペクトルにおいて、3500、3296、2972-2933、1546、1387、1367および1172-1129に周波数(cm-1)の値を有する請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項13】
式(I):
で示される構造を有する請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項14】
生体適合性である請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項15】
非生物分解性である請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項16】
非毒性である請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項17】
0.152±0.018時間のT1/2(K10)値を有する請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項18】
0.065±0.014時間のT1/2(α)値を有する請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項19】
0.448±0.0157時間のT1/2(β)値を有する請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項20】
82.96±5.11 μg/mlのCmax値を有する請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項21】
18.29±1.62時間×μg/mlの曲線下面積(AUC)値を有する請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項22】
54.67±4.86 ml/時間のクリアランス時間(CL)値を有する請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項23】
0.465±0.13時間の平均滞留時間(MRT)値を有する請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項24】
25.43±5.2 ml/時間の定常状態下体積分布(Vss)値を有する請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項25】
尿、大便、組織およびリンスから排出される請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項26】
主に、尿および大便から排出される請求項1、2および25のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項27】
投与後48時間で約67%が尿から排出される請求項1、2および25のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項28】
投与後48時間で約17%が大便から排出される請求項1、2および25のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項29】
投与後48時間で約84%が尿、大便、組織およびリンスから排出される請求項1、2および25のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項30】
ウサギの耳におけるポリマーの皮下投与後48時間において、投与部位にどのような局所的毒性も引き起こさない請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項31】
ウサギの耳静脈におけるポリマーの水溶液の静脈内投与後24時間において、投与部位にどのような局所的毒性も引き起こさない請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項32】
400 mg/kg〜800 mg/kgの用量で5日間連続までウィスターラットに静脈内ボーラス経路を介して投与する場合に、どのような一般的毒性も引き起こさない請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項33】
400 mg/kg〜800 mg/kgの用量で5日間連続までウィスターラットに静脈内ボーラス経路を介して投与する場合に、どのような有意な血液学的毒性も引き起こさない請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項34】
N,N'-メチレンビスアクリルアミド(MBA)と架橋した、1-ビニルピロリドン(VP)、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)および無水マレイン酸とポリエチレングリコールのエステル(MPEG)から選ばれる3つのモノマーユニットを含む[14C]標識ポリマー。
【請求項35】
N,N'-メチレンビスアクリルアミド(MBA)と架橋した、1-ビニルピロリドン(VP)、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)および無水マレイン酸とポリエチレングリコールのエステル(MPEG)から選ばれる3つのモノマーユニットを含む[14C]標識ポリマー。
【請求項36】
モノマー、NIPAM:VPの重量比が、55:22〜65:35であり、モノマー、(NIPAM+VP):MPEGの重量比が、90:10〜95:5である請求項34および35のいずれか1つに記載の[14C]標識ポリマー。
【請求項37】
モノマー、NIPAM:VPの重量比が、58:32〜62:28であり、モノマー、(NIPAM+VP):MPEGの重量比が、80:20〜95:5である請求項34、35および38のいずれか1つに記載の[14C]標識ポリマー。
【請求項38】
高純度で各毒性モノマー汚染物質を実質的に含まず、各毒性モノマー汚染物質を0.001%未満の量で含む実施例1および2に記載のポリマーの製造方法であって:
i)適切な量の3つのモノマー、NIPAM、VPおよびMPEGを水に溶解し;
ii)続いて、ステップi)の溶液に適切な量の架橋剤および活性化剤を加え;
iii)ステップii)の溶液に不活性ガスを30〜60分間通気し;
iv)ステップiv)の溶液に適切な量の活性化剤および重合開始剤を加え;
v)25℃〜45℃の温度にて、不活性ガス雰囲気下、3〜6時間、ステップiv)の溶液を重合させ;
vi)予め滅菌したフィルターを通してステップv)の溶液を濾過し、濾液を集め;
vii)ステップvi)の濾液を透析濾過し、濾液を集め;
viii)必要に応じて、ステップvii)の濾液を追加のステップの透析濾過に付し、濾液を集め;次いで、
ix)必要に応じて、ステップvii)またはviii)の濾液を凍結乾燥して、ポリマーの凍結乾燥粉末を得る;
ステップを含む方法。
【請求項39】
モノマー、NIPAM:VPの重量比が、55:22〜65:35であり、モノマー、(NIPAM+VP):MPEGの重量比が、90:10〜95:5である請求項38に記載の方法。
【請求項40】
モノマー、NIPAM:VPの重量比が、58:32〜62:28であり、モノマー、(NIPAM+VP):MPEGの重量比が、80:20〜95:5である請求項38に記載の方法。
【請求項41】
架橋剤が、二官能性ビニル誘導体である請求項38に記載の方法。
【請求項42】
二官能性ビニル誘導体が、N,N'-メチレンビスアクリルアミドである請求項41に記載の方法。
【請求項43】
架橋剤が、モノマー含量の1.3〜1.5 % w/wの量で使用される請求項38に記載の方法。
【請求項44】
架橋剤が、モノマー含量の1.35〜1.4 % w/wの量で使用される請求項43に記載の方法。
【請求項45】
活性化剤が、テトラメチルエチレンジアミンまたは硫酸アンモニウム第一鉄またはその組み合わせから選ばれる請求項38に記載の方法。
【請求項46】
活性化剤が、モノマー含量の15〜18 % w/wの量で使用される請求項38に記載の方法。
【請求項47】
活性化剤が、モノマー含量の15〜16 % w/wの量で使用される請求項46に記載の方法。
【請求項48】
重合開始剤が、過酸化ジアシル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジアセチル、過酸化ジアルキル、過酸化第三ブチルおよび過酸化第四アミルなどの過酸化化合物、または2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)などのニトリルベース重合開始剤、アンモニウムペルジスルフェートまたはアンモニウムペルスルフェート(APS)などの無機塩重合開始剤から選ばれる少なくとも1つである請求項38に記載の方法。
【請求項49】
重合開始剤が、アンモニウムペルジスルフェートまたはアンモニウムペルスルフェートである請求項48に記載の方法。
【請求項50】
重合開始剤が、モノマー含量の20〜30 % w/wの量で使用される請求項38に記載の方法。
【請求項51】
重合開始剤が、モノマー含量の23〜25 % w/wの量で使用される請求項50に記載の方法。
【請求項52】
不活性ガスが、アルゴンまたは窒素である請求項38に記載の方法。
【請求項53】
ステップでv)使用した予め滅菌したフィルターが、孔径0.8および0.2μmの予め滅菌した使い捨て0.2μmポリエーテルスルホン膜1”カプセルフィルターである請求項38に記載の方法。
【請求項54】
ステップvi)およびvii)で使用した透析濾過装置が、Millipore製のProflux M12 透析濾過装置である請求項38に記載の方法。
【請求項55】
0.001%未満の毒性1-ビニルピロリドン(VP)を含む請求項38に記載の方法によって得られたポリマー。
【請求項56】
0.001%未満の毒性N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)を含む請求項38に記載の方法によって得られたポリマー。
【請求項57】
13C NMRスペクトルにおいて、174、76.6-77.6、70.6、41.6、31.8および22.6にδのピークを有する請求項38に記載の方法によって得られたポリマー。
【請求項58】
1H NMRスペクトルにおいて、1.14、1.45、 1.63、1.99、2.36、3.0、3.23、3.62-3.66、3.72および3.97にδのピークを有する請求項38に記載の方法によって得られたポリマー。
【請求項59】
FT-IRスペクトルにおいて、3500、3296、2972-2933、1546、1387、1367および1172-1129に周波数(cm-1)の値を有する請求項38に記載の方法によって得られたポリマー。
【請求項60】
式(I):
で示される構造を有する請求項38に記載の方法によって得られたポリマー。
【請求項61】
生体適合性、非生物分解性およ非毒性である請求項38に記載の方法によって得られたポリマー。
【請求項62】
0.152±0.018時間のT1/2(K10)値;0.065±0.014時間のT1/2(α)値;0.448±0.0157時間のT1/2(β)値;82.96±5.11 μg/mlのCmax 値;18.29±1.62時間×μg/mlの曲線下面積(AUC)値;54.67±4.86 ml/時間のクリアランス時間(CL)値;0.465±0.13時間の平均滞留時間(MRT)値;および25.43±5.2 ml/時間の定常状態下体積分布(Vss)値を有する請求項38に記載の方法によって得られたポリマー。
【請求項63】
投与後48時間で約84%が尿、大便、組織およびリンスから排出される請求項38に記載の方法によって得られたポリマー。
【請求項64】
ウサギの耳におけるポリマーの皮下投与後48時間において、投与部位にどのような局所的毒性も引き起こさないか、またはウサギの耳静脈におけるポリマーの水溶液の静脈内投与後24時間において、投与部位にどのような局所的毒性も引き起こさない請求項38に記載の方法によって得られたポリマー。
【請求項65】
400 mg/kg〜800 mg/kgの用量で5日間連続までウィスターラットに静脈内ボーラス経路を介して投与する場合に、どのような一般的毒性または血液学的毒性も引き起こさない請求項38に記載の方法によって得られたポリマー。
【請求項66】
(a)水混和製溶媒またはその混合物中の水難溶性薬剤または化合物の溶液を含む1つのバイアル;および(b)請求項1および2のいずれか1つに記載の高純度でモノマー汚染物質を実質的に含まないポリマーおよび医薬的に許容しうる賦形剤の溶液を含むもう1つのバイアル;を含むキットであって、
投与を必要とする患者に投与するためのナノ粒子形態における水難溶性薬剤または化合物の医薬組成物の製造に適した、(a)および(b)が、1:1から1:10の体積比率で提供されるキット。
【請求項67】
水難溶性薬剤または化合物が、10 mg/ml未満の水溶解度を有する請求項66に記載のキット。
【請求項68】
水難溶性薬剤または化合物が、抗がん剤、抗炎症薬、抗菌薬、制吐薬、降圧剤、性ホルモン、ステロイド、抗生物質、麻酔薬または免疫調節剤から選ばれる請求項66に記載のキット。
【請求項69】
抗がん剤が、パクリタキセル、ドセタキセルおよびその他の関連タキサン誘導体;イリノテカン、トポテカンおよびその他の関連カンプトテシン誘導体;ドキソルビシン、ダウノマイシンおよび関連アントラサイクリン誘導体;シスプラチン;オキサリプラチン;5-フルオロウラシル;ミトマイシン;メトトレキセート;エトポシド;ベツリン酸およびその誘導体;およびウエデロラクトンおよびその誘導体から選ばれる請求項68に記載のキット。
【請求項70】
抗炎症薬が、インドメタシン、イブプロフェン、ケトプロフェン、フルビプロフェン、ピロキシカム、テノキシカムおよびナプロキセンから選ばれる請求項68に記載のキット。
【請求項71】
抗菌薬が、ケトコナゾールおよびアムホテリシンBから選ばれる請求項68に記載のキット。
【請求項72】
性ホルモンが、テストステロン、エストロゲン、プロゲステロンおよびエストラジオールから選ばれる請求項68に記載のキット。
【請求項73】
ステロイドが、デキサメタゾン、プレドニゾロンおよびトリアムシノロンから選ばれる請求項68に記載のキット。
【請求項74】
降圧剤が、カプトプリル、ラミプリル、テラゾシン、ミノキシジルおよびパラゾシンから選ばれる請求項68に記載のキット。
【請求項75】
制吐薬が、オンダンセトロンおよびグラニセトロンから選ばれる請求項68に記載のキット。
【請求項76】
抗生物質が、メトロニダゾールおよびフシジン酸から選ばれる請求項68に記載のキット。
【請求項77】
免疫調節剤が、シクロスポリンおよビフェニルジメチルジカルボン酸から選ばれる請求項68に記載のキット。
【請求項78】
麻酔薬が、プロポフォール、アルファキサロンおよびヘキソバルビタールから選ばれる請求項68に記載のキット。
【請求項79】
ベツリン酸誘導体が、式(II)のMJ-1098、式(III)のDRF-4012および式(IV)のDRF-4015:
から選ばれる請求項68に記載のキット。
【請求項80】
水混和性溶媒が、エタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド;種々の分子量のポリエチレングリコール;種々の分子量のポリプロピレングリコール;ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポリオキシエチル化植物油、ポリエトキシル化ヒマシ油またはグリセリンおよびその混合物から選ばれる請求項66に記載のキット。
【請求項81】
医薬的に許容しうる賦形剤が、デオキシコール酸ナトリウム;胆汁塩;ポリソルベート80;ポリソルベート20、ポリオキシエチル化植物油;ポリエトキシル化ヒマシ油;デキストロース、スクロース、ラクトース、マンニトールなどの多糖;種々のグレードのソルビタンエステルまたはスパン;種々のグレードのmyrjまたは種々のグレードのポロクサマーおよびその混合物から選ばれる請求項66に記載のキット。
【請求項82】
医薬的に許容しうる賦形剤が、さらに緩衝剤を含む請求項81に記載のキット。
【請求項83】
緩衝剤が、クエン酸ナトリウムである請求項82に記載のキット。
【請求項84】
必要に応じて、希釈液、ならびに少ない体積である約1〜5 mlのバイアルa)の内容物が、希釈液中のバイアルb)の内容物を含むその約35倍の体積に加えられるならば、注射器および内径0.305〜0.356 mmの針を含み、あるいは、多い体積である約10〜15 mlのバイアルa)の内容物が、希釈液中のバイアルb)の内容物を含むその約35倍の体積に加えられるならば、注射器および内径0.559〜0.711 mmの針を含む請求項66に記載のキット。
【請求項85】
すべてが、投与を必要とする患者への投与のために適当な希釈液に含まれる、難溶性薬剤または化合物、水混和性溶媒、請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマーおよび医薬的に許容しうる賦形剤を含むナノ粒子形態における医薬組成物。
【請求項86】
前記請求項68〜79に記載の水難溶性薬剤を含む請求項85に記載の医薬組成物。
【請求項87】
前記請求項81〜83に記載の医薬的に許容しうる賦形剤を含む請求項85に記載の医薬組成物。
【請求項88】
前記請求項80に記載の水混和性溶媒を含む請求項85に記載の医薬組成物。
【請求項89】
希釈液が、水、食塩水、5%および10%デキストロース溶液、デキストロースおよび塩化ナトリウム溶液、乳酸ナトリウム溶液、乳酸リンゲル溶液、マンニトール溶液、マンニトールとデキストロースまたは塩化ナトリウム溶液、リンゲル溶液、塩化ナトリウム溶液、注射用滅菌水ならびに電解質、デキストロース、フルクトースおよび転化糖の種々の組み合わせを含む多電解質溶液から選ばれる請求項85に記載の医薬組成物。
【請求項90】
水難溶性薬剤または化合物が、ナノ粒子形態でポリマー殻内に捕捉される請求項85に記載の医薬組成物。
【請求項91】
ナノ粒子形態の粒径が、30〜150 nmである請求項90に記載の医薬組成物。
【請求項92】
使用するポリマーが、高純度であり、式(I)で示される構造を有し;0.001%未満の量のモノマーVPおよびNIPAMを含み;13C NMRスペクトルにおいて、174、76.6-77.6、70.6、41.6、31.8および22.6にてδのピークを有し;1H NMRスペクトルにおいて1.14、1.45、 1.63、1.99、2.36、3.0、3.23、3.62-3.66、3.72および3.97にてδのピークを有し;FT-IRスペクトルにおいて3500、3296、2972-2933、1546、1387、1367および1172-1129に周波数の値(cm-1)を有する請求項85に記載の医薬組成物。
【請求項93】
使用するポリマーが、高純度であり、式(I)で示される構造を有し;0.001%未満の量のモノマーVPおよびNIPAMを含み;0.152±0.018時間のT1/2(K10)値;0.065±0.014時間のT1/2(α)値;0.448±0.0157時間のT1/2(β)値;82.96±5.11 μg/mlのCmax 値;18.29±1.62時間×μg/mlの曲線下面積(AUC)値;54.67±4.86 ml/時間のクリアランス時間(CL)値;0.465±0.13時間の平均滞留時間(MRT)値;および25.43±5.2 ml/時間の定常状態下体積分布(Vss)値を有する請求項85に記載の医薬組成物。
【請求項94】
pHが、6.0〜8.5である請求項85に記載の医薬組成物。
【請求項95】
請求項85に記載のナノ粒子形態における水難溶性薬剤または化合物の医薬組成物の製造方法であって:
i)水難溶性薬剤または化合物を適当な水混和性溶媒またはその混合物に溶解することを含む、薬剤濃縮液の製造;
ii)以下のステップを含む、ポリマーおよび医薬的に許容しうる賦形剤の水性濃縮液の製造;
a)第一に、必要な量の注射用水に、必要量の高純度でモノマー汚染物質を実質的に含まない、特に毒性NIPAMおよびVPのレベルが<0.001 %である式(I)で示されるポリマーを添加する;
b)該ポリマーの水溶液に、医薬的に許容しうる賦形剤および緩衝剤を添加する;
iii)透明溶液を得るためのステップii-b)の溶液と希釈液との混合;
iv)ステップiii)の溶液に、少量のステップi)の溶液を4秒以内に添加するための内径0.305〜0.356 mmの針の利用;または
v)ステップiii)の溶液に、多量のステップi)の溶液を10秒以内に添加するための内径0.559〜0.711 mmの針の利用;
vi)ステップi)の溶液が注射器の針を通って加えられるその針が、ステップiii)の溶液に浸されたままであるステップiii)の溶液へのステップi)の溶液の注入;および
vii)必要に応じて、ステップi)の溶液の注入中、ステップiii)の溶液を含む容器を逆さの位置に維持する;
ステップを含む方法。
【請求項96】
使用する水難溶性薬剤が、前記請求項68〜79に記載の薬剤である請求項95に記載の方法。
【請求項97】
使用する医薬的に許容しうる賦形剤が、前記請求項81〜83に記載の賦形剤である請求項95に記載の方法。
【請求項98】
水混和性溶媒が、前記請求項80に記載の水混和性溶媒である請求項95に記載の方法。
【請求項99】
使用する希釈液が、前記請求項89に記載の希釈液である請求項95に記載の方法。
【請求項100】
ステップiv)の少量の溶液が、1〜5 mlの請求項95のステップi)の溶液である請求項95に記載の方法。
【請求項101】
ステップiv)の少量の溶液が、10〜15 mlの請求項95のステップi)の溶液である請求項95に記載の方法。
【請求項102】
得られる医薬組成物におけるポリマー殻内に捕捉される水難溶性薬剤または化合物の粒径が、30〜150 nmである請求項95に記載の方法。
【請求項103】
投与を必要とする患者に静脈内、筋肉内または皮下投与される請求項95に記載の医薬組成物。
【請求項104】
使用するポリマーが、高純度であり;式(I)で示される構造を有し;0.001%未満の量のモノマーVPおよびNIPAMを含む、ヒト/動物への投与にとって安全で非毒性である請求項95に記載の医薬組成物。
【請求項105】
請求項68〜79に記載の水難溶性薬剤または化合物が治療することができる病的状態の治療に有用な請求項95に記載の医薬組成物。
【請求項106】
請求項85に記載の水難溶性薬剤または化合物のナノ粒子医薬組成物の投与を含む、請求項68〜79に記載の水難溶性薬剤または化合物が治療することができるヒト/動物における病的状態の治療方法。
【請求項107】
静脈内、筋肉内または皮下注射を含む請求項106に記載の方法。
【請求項1】
高純度で各モノマー汚染物質を実質的に含まない、二官能性ビニル誘導体と架橋した、1-ビニルピロリドン(VP)、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)および無水マレイン酸とポリエチレングリコールのエステル(MPEG)から選ばれる3つのモノマーユニットを含むポリマー。
【請求項2】
高純度で、各毒性モノマー汚染物質を0.001%未満の量で含む、二官能性ビニル誘導体と架橋した、1-ビニルピロリドン(VP)、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)および無水マレイン酸とポリエチレングリコールのエステル(MPEG)から選ばれる3つのモノマーユニットを含むポリマー。
【請求項3】
二官能性ビニル架橋剤が、N,N'-メチレンビスアクリルアミド(MBA)である請求項1および2のいずれか1つに記載の高純度ポリマー。
【請求項4】
毒性1-ビニルピロリドン(VP)を0.001%未満の量で含む、請求項1および2のいずれか1つに記載の高純度ポリマー。
【請求項5】
毒性N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)を0.001%未満の量で含む、請求項1および2のいずれか1つに記載の高純度ポリマー。
【請求項6】
モノマー、NIPAM:VPの重量比が、55:22〜65:35である請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項7】
モノマー、NIPAM:VPの重量比が、58:32〜62:28である請求項6に記載のポリマー。
【請求項8】
モノマー、(NIPAM+VP):MPEGの重量比が、90:10〜95:5である請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項9】
モノマー、(NIPAM+VP):MPEGの重量比が、80:20〜95:5である請求項8に記載のポリマー。
【請求項10】
13C NMRスペクトルにおいて、174、76.6-77.6、70.6、41.6、31.8および22.6にδのピークを有する請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項11】
1H NMRスペクトルにおいて、1.14、1.45、 1.63、1.99、2.36、3.0、3.23、3.62-3.66、3.72および3.97にδのピークを有する請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項12】
FT-IRスペクトルにおいて、3500、3296、2972-2933、1546、1387、1367および1172-1129に周波数(cm-1)の値を有する請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項13】
式(I):
で示される構造を有する請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項14】
生体適合性である請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項15】
非生物分解性である請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項16】
非毒性である請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項17】
0.152±0.018時間のT1/2(K10)値を有する請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項18】
0.065±0.014時間のT1/2(α)値を有する請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項19】
0.448±0.0157時間のT1/2(β)値を有する請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項20】
82.96±5.11 μg/mlのCmax値を有する請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項21】
18.29±1.62時間×μg/mlの曲線下面積(AUC)値を有する請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項22】
54.67±4.86 ml/時間のクリアランス時間(CL)値を有する請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項23】
0.465±0.13時間の平均滞留時間(MRT)値を有する請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項24】
25.43±5.2 ml/時間の定常状態下体積分布(Vss)値を有する請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項25】
尿、大便、組織およびリンスから排出される請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項26】
主に、尿および大便から排出される請求項1、2および25のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項27】
投与後48時間で約67%が尿から排出される請求項1、2および25のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項28】
投与後48時間で約17%が大便から排出される請求項1、2および25のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項29】
投与後48時間で約84%が尿、大便、組織およびリンスから排出される請求項1、2および25のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項30】
ウサギの耳におけるポリマーの皮下投与後48時間において、投与部位にどのような局所的毒性も引き起こさない請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項31】
ウサギの耳静脈におけるポリマーの水溶液の静脈内投与後24時間において、投与部位にどのような局所的毒性も引き起こさない請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項32】
400 mg/kg〜800 mg/kgの用量で5日間連続までウィスターラットに静脈内ボーラス経路を介して投与する場合に、どのような一般的毒性も引き起こさない請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項33】
400 mg/kg〜800 mg/kgの用量で5日間連続までウィスターラットに静脈内ボーラス経路を介して投与する場合に、どのような有意な血液学的毒性も引き起こさない請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項34】
N,N'-メチレンビスアクリルアミド(MBA)と架橋した、1-ビニルピロリドン(VP)、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)および無水マレイン酸とポリエチレングリコールのエステル(MPEG)から選ばれる3つのモノマーユニットを含む[14C]標識ポリマー。
【請求項35】
N,N'-メチレンビスアクリルアミド(MBA)と架橋した、1-ビニルピロリドン(VP)、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)および無水マレイン酸とポリエチレングリコールのエステル(MPEG)から選ばれる3つのモノマーユニットを含む[14C]標識ポリマー。
【請求項36】
モノマー、NIPAM:VPの重量比が、55:22〜65:35であり、モノマー、(NIPAM+VP):MPEGの重量比が、90:10〜95:5である請求項34および35のいずれか1つに記載の[14C]標識ポリマー。
【請求項37】
モノマー、NIPAM:VPの重量比が、58:32〜62:28であり、モノマー、(NIPAM+VP):MPEGの重量比が、80:20〜95:5である請求項34、35および38のいずれか1つに記載の[14C]標識ポリマー。
【請求項38】
高純度で各毒性モノマー汚染物質を実質的に含まず、各毒性モノマー汚染物質を0.001%未満の量で含む実施例1および2に記載のポリマーの製造方法であって:
i)適切な量の3つのモノマー、NIPAM、VPおよびMPEGを水に溶解し;
ii)続いて、ステップi)の溶液に適切な量の架橋剤および活性化剤を加え;
iii)ステップii)の溶液に不活性ガスを30〜60分間通気し;
iv)ステップiv)の溶液に適切な量の活性化剤および重合開始剤を加え;
v)25℃〜45℃の温度にて、不活性ガス雰囲気下、3〜6時間、ステップiv)の溶液を重合させ;
vi)予め滅菌したフィルターを通してステップv)の溶液を濾過し、濾液を集め;
vii)ステップvi)の濾液を透析濾過し、濾液を集め;
viii)必要に応じて、ステップvii)の濾液を追加のステップの透析濾過に付し、濾液を集め;次いで、
ix)必要に応じて、ステップvii)またはviii)の濾液を凍結乾燥して、ポリマーの凍結乾燥粉末を得る;
ステップを含む方法。
【請求項39】
モノマー、NIPAM:VPの重量比が、55:22〜65:35であり、モノマー、(NIPAM+VP):MPEGの重量比が、90:10〜95:5である請求項38に記載の方法。
【請求項40】
モノマー、NIPAM:VPの重量比が、58:32〜62:28であり、モノマー、(NIPAM+VP):MPEGの重量比が、80:20〜95:5である請求項38に記載の方法。
【請求項41】
架橋剤が、二官能性ビニル誘導体である請求項38に記載の方法。
【請求項42】
二官能性ビニル誘導体が、N,N'-メチレンビスアクリルアミドである請求項41に記載の方法。
【請求項43】
架橋剤が、モノマー含量の1.3〜1.5 % w/wの量で使用される請求項38に記載の方法。
【請求項44】
架橋剤が、モノマー含量の1.35〜1.4 % w/wの量で使用される請求項43に記載の方法。
【請求項45】
活性化剤が、テトラメチルエチレンジアミンまたは硫酸アンモニウム第一鉄またはその組み合わせから選ばれる請求項38に記載の方法。
【請求項46】
活性化剤が、モノマー含量の15〜18 % w/wの量で使用される請求項38に記載の方法。
【請求項47】
活性化剤が、モノマー含量の15〜16 % w/wの量で使用される請求項46に記載の方法。
【請求項48】
重合開始剤が、過酸化ジアシル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジアセチル、過酸化ジアルキル、過酸化第三ブチルおよび過酸化第四アミルなどの過酸化化合物、または2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)などのニトリルベース重合開始剤、アンモニウムペルジスルフェートまたはアンモニウムペルスルフェート(APS)などの無機塩重合開始剤から選ばれる少なくとも1つである請求項38に記載の方法。
【請求項49】
重合開始剤が、アンモニウムペルジスルフェートまたはアンモニウムペルスルフェートである請求項48に記載の方法。
【請求項50】
重合開始剤が、モノマー含量の20〜30 % w/wの量で使用される請求項38に記載の方法。
【請求項51】
重合開始剤が、モノマー含量の23〜25 % w/wの量で使用される請求項50に記載の方法。
【請求項52】
不活性ガスが、アルゴンまたは窒素である請求項38に記載の方法。
【請求項53】
ステップでv)使用した予め滅菌したフィルターが、孔径0.8および0.2μmの予め滅菌した使い捨て0.2μmポリエーテルスルホン膜1”カプセルフィルターである請求項38に記載の方法。
【請求項54】
ステップvi)およびvii)で使用した透析濾過装置が、Millipore製のProflux M12 透析濾過装置である請求項38に記載の方法。
【請求項55】
0.001%未満の毒性1-ビニルピロリドン(VP)を含む請求項38に記載の方法によって得られたポリマー。
【請求項56】
0.001%未満の毒性N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)を含む請求項38に記載の方法によって得られたポリマー。
【請求項57】
13C NMRスペクトルにおいて、174、76.6-77.6、70.6、41.6、31.8および22.6にδのピークを有する請求項38に記載の方法によって得られたポリマー。
【請求項58】
1H NMRスペクトルにおいて、1.14、1.45、 1.63、1.99、2.36、3.0、3.23、3.62-3.66、3.72および3.97にδのピークを有する請求項38に記載の方法によって得られたポリマー。
【請求項59】
FT-IRスペクトルにおいて、3500、3296、2972-2933、1546、1387、1367および1172-1129に周波数(cm-1)の値を有する請求項38に記載の方法によって得られたポリマー。
【請求項60】
式(I):
で示される構造を有する請求項38に記載の方法によって得られたポリマー。
【請求項61】
生体適合性、非生物分解性およ非毒性である請求項38に記載の方法によって得られたポリマー。
【請求項62】
0.152±0.018時間のT1/2(K10)値;0.065±0.014時間のT1/2(α)値;0.448±0.0157時間のT1/2(β)値;82.96±5.11 μg/mlのCmax 値;18.29±1.62時間×μg/mlの曲線下面積(AUC)値;54.67±4.86 ml/時間のクリアランス時間(CL)値;0.465±0.13時間の平均滞留時間(MRT)値;および25.43±5.2 ml/時間の定常状態下体積分布(Vss)値を有する請求項38に記載の方法によって得られたポリマー。
【請求項63】
投与後48時間で約84%が尿、大便、組織およびリンスから排出される請求項38に記載の方法によって得られたポリマー。
【請求項64】
ウサギの耳におけるポリマーの皮下投与後48時間において、投与部位にどのような局所的毒性も引き起こさないか、またはウサギの耳静脈におけるポリマーの水溶液の静脈内投与後24時間において、投与部位にどのような局所的毒性も引き起こさない請求項38に記載の方法によって得られたポリマー。
【請求項65】
400 mg/kg〜800 mg/kgの用量で5日間連続までウィスターラットに静脈内ボーラス経路を介して投与する場合に、どのような一般的毒性または血液学的毒性も引き起こさない請求項38に記載の方法によって得られたポリマー。
【請求項66】
(a)水混和製溶媒またはその混合物中の水難溶性薬剤または化合物の溶液を含む1つのバイアル;および(b)請求項1および2のいずれか1つに記載の高純度でモノマー汚染物質を実質的に含まないポリマーおよび医薬的に許容しうる賦形剤の溶液を含むもう1つのバイアル;を含むキットであって、
投与を必要とする患者に投与するためのナノ粒子形態における水難溶性薬剤または化合物の医薬組成物の製造に適した、(a)および(b)が、1:1から1:10の体積比率で提供されるキット。
【請求項67】
水難溶性薬剤または化合物が、10 mg/ml未満の水溶解度を有する請求項66に記載のキット。
【請求項68】
水難溶性薬剤または化合物が、抗がん剤、抗炎症薬、抗菌薬、制吐薬、降圧剤、性ホルモン、ステロイド、抗生物質、麻酔薬または免疫調節剤から選ばれる請求項66に記載のキット。
【請求項69】
抗がん剤が、パクリタキセル、ドセタキセルおよびその他の関連タキサン誘導体;イリノテカン、トポテカンおよびその他の関連カンプトテシン誘導体;ドキソルビシン、ダウノマイシンおよび関連アントラサイクリン誘導体;シスプラチン;オキサリプラチン;5-フルオロウラシル;ミトマイシン;メトトレキセート;エトポシド;ベツリン酸およびその誘導体;およびウエデロラクトンおよびその誘導体から選ばれる請求項68に記載のキット。
【請求項70】
抗炎症薬が、インドメタシン、イブプロフェン、ケトプロフェン、フルビプロフェン、ピロキシカム、テノキシカムおよびナプロキセンから選ばれる請求項68に記載のキット。
【請求項71】
抗菌薬が、ケトコナゾールおよびアムホテリシンBから選ばれる請求項68に記載のキット。
【請求項72】
性ホルモンが、テストステロン、エストロゲン、プロゲステロンおよびエストラジオールから選ばれる請求項68に記載のキット。
【請求項73】
ステロイドが、デキサメタゾン、プレドニゾロンおよびトリアムシノロンから選ばれる請求項68に記載のキット。
【請求項74】
降圧剤が、カプトプリル、ラミプリル、テラゾシン、ミノキシジルおよびパラゾシンから選ばれる請求項68に記載のキット。
【請求項75】
制吐薬が、オンダンセトロンおよびグラニセトロンから選ばれる請求項68に記載のキット。
【請求項76】
抗生物質が、メトロニダゾールおよびフシジン酸から選ばれる請求項68に記載のキット。
【請求項77】
免疫調節剤が、シクロスポリンおよビフェニルジメチルジカルボン酸から選ばれる請求項68に記載のキット。
【請求項78】
麻酔薬が、プロポフォール、アルファキサロンおよびヘキソバルビタールから選ばれる請求項68に記載のキット。
【請求項79】
ベツリン酸誘導体が、式(II)のMJ-1098、式(III)のDRF-4012および式(IV)のDRF-4015:
から選ばれる請求項68に記載のキット。
【請求項80】
水混和性溶媒が、エタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド;種々の分子量のポリエチレングリコール;種々の分子量のポリプロピレングリコール;ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポリオキシエチル化植物油、ポリエトキシル化ヒマシ油またはグリセリンおよびその混合物から選ばれる請求項66に記載のキット。
【請求項81】
医薬的に許容しうる賦形剤が、デオキシコール酸ナトリウム;胆汁塩;ポリソルベート80;ポリソルベート20、ポリオキシエチル化植物油;ポリエトキシル化ヒマシ油;デキストロース、スクロース、ラクトース、マンニトールなどの多糖;種々のグレードのソルビタンエステルまたはスパン;種々のグレードのmyrjまたは種々のグレードのポロクサマーおよびその混合物から選ばれる請求項66に記載のキット。
【請求項82】
医薬的に許容しうる賦形剤が、さらに緩衝剤を含む請求項81に記載のキット。
【請求項83】
緩衝剤が、クエン酸ナトリウムである請求項82に記載のキット。
【請求項84】
必要に応じて、希釈液、ならびに少ない体積である約1〜5 mlのバイアルa)の内容物が、希釈液中のバイアルb)の内容物を含むその約35倍の体積に加えられるならば、注射器および内径0.305〜0.356 mmの針を含み、あるいは、多い体積である約10〜15 mlのバイアルa)の内容物が、希釈液中のバイアルb)の内容物を含むその約35倍の体積に加えられるならば、注射器および内径0.559〜0.711 mmの針を含む請求項66に記載のキット。
【請求項85】
すべてが、投与を必要とする患者への投与のために適当な希釈液に含まれる、難溶性薬剤または化合物、水混和性溶媒、請求項1および2のいずれか1つに記載のポリマーおよび医薬的に許容しうる賦形剤を含むナノ粒子形態における医薬組成物。
【請求項86】
前記請求項68〜79に記載の水難溶性薬剤を含む請求項85に記載の医薬組成物。
【請求項87】
前記請求項81〜83に記載の医薬的に許容しうる賦形剤を含む請求項85に記載の医薬組成物。
【請求項88】
前記請求項80に記載の水混和性溶媒を含む請求項85に記載の医薬組成物。
【請求項89】
希釈液が、水、食塩水、5%および10%デキストロース溶液、デキストロースおよび塩化ナトリウム溶液、乳酸ナトリウム溶液、乳酸リンゲル溶液、マンニトール溶液、マンニトールとデキストロースまたは塩化ナトリウム溶液、リンゲル溶液、塩化ナトリウム溶液、注射用滅菌水ならびに電解質、デキストロース、フルクトースおよび転化糖の種々の組み合わせを含む多電解質溶液から選ばれる請求項85に記載の医薬組成物。
【請求項90】
水難溶性薬剤または化合物が、ナノ粒子形態でポリマー殻内に捕捉される請求項85に記載の医薬組成物。
【請求項91】
ナノ粒子形態の粒径が、30〜150 nmである請求項90に記載の医薬組成物。
【請求項92】
使用するポリマーが、高純度であり、式(I)で示される構造を有し;0.001%未満の量のモノマーVPおよびNIPAMを含み;13C NMRスペクトルにおいて、174、76.6-77.6、70.6、41.6、31.8および22.6にてδのピークを有し;1H NMRスペクトルにおいて1.14、1.45、 1.63、1.99、2.36、3.0、3.23、3.62-3.66、3.72および3.97にてδのピークを有し;FT-IRスペクトルにおいて3500、3296、2972-2933、1546、1387、1367および1172-1129に周波数の値(cm-1)を有する請求項85に記載の医薬組成物。
【請求項93】
使用するポリマーが、高純度であり、式(I)で示される構造を有し;0.001%未満の量のモノマーVPおよびNIPAMを含み;0.152±0.018時間のT1/2(K10)値;0.065±0.014時間のT1/2(α)値;0.448±0.0157時間のT1/2(β)値;82.96±5.11 μg/mlのCmax 値;18.29±1.62時間×μg/mlの曲線下面積(AUC)値;54.67±4.86 ml/時間のクリアランス時間(CL)値;0.465±0.13時間の平均滞留時間(MRT)値;および25.43±5.2 ml/時間の定常状態下体積分布(Vss)値を有する請求項85に記載の医薬組成物。
【請求項94】
pHが、6.0〜8.5である請求項85に記載の医薬組成物。
【請求項95】
請求項85に記載のナノ粒子形態における水難溶性薬剤または化合物の医薬組成物の製造方法であって:
i)水難溶性薬剤または化合物を適当な水混和性溶媒またはその混合物に溶解することを含む、薬剤濃縮液の製造;
ii)以下のステップを含む、ポリマーおよび医薬的に許容しうる賦形剤の水性濃縮液の製造;
a)第一に、必要な量の注射用水に、必要量の高純度でモノマー汚染物質を実質的に含まない、特に毒性NIPAMおよびVPのレベルが<0.001 %である式(I)で示されるポリマーを添加する;
b)該ポリマーの水溶液に、医薬的に許容しうる賦形剤および緩衝剤を添加する;
iii)透明溶液を得るためのステップii-b)の溶液と希釈液との混合;
iv)ステップiii)の溶液に、少量のステップi)の溶液を4秒以内に添加するための内径0.305〜0.356 mmの針の利用;または
v)ステップiii)の溶液に、多量のステップi)の溶液を10秒以内に添加するための内径0.559〜0.711 mmの針の利用;
vi)ステップi)の溶液が注射器の針を通って加えられるその針が、ステップiii)の溶液に浸されたままであるステップiii)の溶液へのステップi)の溶液の注入;および
vii)必要に応じて、ステップi)の溶液の注入中、ステップiii)の溶液を含む容器を逆さの位置に維持する;
ステップを含む方法。
【請求項96】
使用する水難溶性薬剤が、前記請求項68〜79に記載の薬剤である請求項95に記載の方法。
【請求項97】
使用する医薬的に許容しうる賦形剤が、前記請求項81〜83に記載の賦形剤である請求項95に記載の方法。
【請求項98】
水混和性溶媒が、前記請求項80に記載の水混和性溶媒である請求項95に記載の方法。
【請求項99】
使用する希釈液が、前記請求項89に記載の希釈液である請求項95に記載の方法。
【請求項100】
ステップiv)の少量の溶液が、1〜5 mlの請求項95のステップi)の溶液である請求項95に記載の方法。
【請求項101】
ステップiv)の少量の溶液が、10〜15 mlの請求項95のステップi)の溶液である請求項95に記載の方法。
【請求項102】
得られる医薬組成物におけるポリマー殻内に捕捉される水難溶性薬剤または化合物の粒径が、30〜150 nmである請求項95に記載の方法。
【請求項103】
投与を必要とする患者に静脈内、筋肉内または皮下投与される請求項95に記載の医薬組成物。
【請求項104】
使用するポリマーが、高純度であり;式(I)で示される構造を有し;0.001%未満の量のモノマーVPおよびNIPAMを含む、ヒト/動物への投与にとって安全で非毒性である請求項95に記載の医薬組成物。
【請求項105】
請求項68〜79に記載の水難溶性薬剤または化合物が治療することができる病的状態の治療に有用な請求項95に記載の医薬組成物。
【請求項106】
請求項85に記載の水難溶性薬剤または化合物のナノ粒子医薬組成物の投与を含む、請求項68〜79に記載の水難溶性薬剤または化合物が治療することができるヒト/動物における病的状態の治療方法。
【請求項107】
静脈内、筋肉内または皮下注射を含む請求項106に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2009−522251(P2009−522251A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548083(P2008−548083)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【国際出願番号】PCT/IN2006/000504
【国際公開番号】WO2007/074476
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(507296573)ダブール・ファーマ・リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【国際出願番号】PCT/IN2006/000504
【国際公開番号】WO2007/074476
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(507296573)ダブール・ファーマ・リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
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