ナノ結晶安全保障マーキングを用いた認証
認証システム、装置および方法は、ナノ結晶材料を含む識別マーキングを認証する。マーキングの1または複数の特性が確認され、測定プロファイルが提供される。測定プロファイルを参照プロファイルの閉集合の少なくとも1つのメンバーと比較する。各参照プロファイルは1または複数の特性の予め決められた値を有する。各参照プロファイルは集合内でユニークである。少なくとも1つの参照プロファイルはナノ結晶形態のインジケータ材料の特徴を示し、バルク形態の同じインジケータ材料の特徴は示さない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超臨界および圧縮流体印刷ならびにマーキング(marking)を認証するための方法および装置に関し、より特定的には、圧縮流体印刷されたスウォッチ(swatch)と共に用いるための認証法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マーキングおよびシールは、ドキュメントの性質または起源および他の項目を認証するために長く使用されている。意図的なおよび不測の誤用を阻止するために努力が続けられている。このため、2つのアプローチが一般に、別個にまたは組み合わせて取られている。1つのアプローチはマーキングにより伝達される情報へのアクセスの難易度を増加させるものである。もう一方のアプローチは、物理的にマーキングを再生する難易度を増加させるものである。
【0003】
第1のアプローチは一般に、暗号化を含むが、これには長所と弱点がある。典型的には、暗号の解読を困難にすると、その暗号を使用するのに必要な装置がより困難で複雑なものとなる。
【0004】
特定の装置を使用しないと読み取ることができない形態の符号化を提供することはよく知られている。機械により読み取ることができるコードまたは「シンボル(symbology)」は、視認可能であってもよく、目に見えなくてもよいが、読み取り、解読するには特別な装置が必要である。「シンボル(symbology)」または「複数のシンボル(symbologies)」という用語は、一般に、要素の空間パターンを示すのに使用され、この場合、各マークは確定形状を有し、空間により隣接する要素から分離される。情報は形状および/または空間により符号化される。「シンボル」という用語は、2−および3−次元バーコードおよび他のコードを含む。典型的には、読取機による解読情報出力を使用して、ルックアップテーブルなどにより他の情報が提供される。「ルックアップテーブル(look−up table)」という用語は、1または複数のコンピュータ・デバイスにおける論理的記憶の補数、および論理的記憶へのアクセスを制御、提供するために必要な装置およびソフトウエアの両方を示す。
【0005】
第2のアプローチ、マーキングの再生に対する物理的制限は、特別な技術により提供される出力により制限される。ある時には、刻印により、再生または模倣が困難な、または高くつく(expensive)出力が提供された。他の印刷技術を改善したものを用いても、刻印はそれ自体では、多くの認証目的に対しもはや十分ではない。
【0006】
圧縮流体溶媒を使用し、薄膜および粒子ストリームを作製する技術が知られている。本明細書では、「圧縮流体(compressed fluid)」という用語および同様の用語を使用して、超臨界流体および圧縮されているが、超臨界ではない他の流体の両方を示す。例えば、1988年3月29日に発行された米国特許第4,734,227号では、固体材料を圧縮流体溶液中に溶解させ、直ちに溶液を膨張させ粒子または膜を形成することにより、固体膜を堆積させ、または微細粉末を形成させるための方法が開示されている。
【0007】
超臨界流体クリーニング(Supercritical Fluid Cleaning)、J.マクファーディ(McHardy)およびS.サワン(Sawan)、編集、ノーイエスパブケーションズ(Noyes Publications)、ウエストウッド、ニュージャージー州(1998)、pp.87−120、第5章、題「超臨界流体中の界面活性剤およびマイクロエマルジョン(Surfactants and Microemulsions in Supercritical Fluids)」(K.ジャクソン(Jackson)およびJ.フルトン(Fulton)による)で記述されているように、超臨界CO2の使用が、有機クリーニング溶媒の代わりとして、特に逆ミセルまたはミクロエマルジョンと組み合わせて示唆されている。米国特許第5,789,505号、同第5,944,996号、同第6,131,421号および同第6,228,826号では、CO2−親和性部分および親水性部分、またはそうでなければCO2−疎性部分を有する界面活性剤と共に、溶媒として二酸化炭素を使用するクリーニングプロセスが記述されている。この場合、CO2および界面活性剤の組み合わせは、基質からCO2−疎性(親水性を含む)汚染物質を除去するのに有益である。米国特許第6,131,421号では、水が二酸化炭素および界面活性剤と共に含まれている場合の、親水性汚染物質を除去するのに有益な逆ミセル系の形成が記述されている。
【0008】
PCT特許公報WO02/45868 A2号では、圧縮二酸化炭素を用いた、ウエハ表面上でパターンを作成する方法が開示されている。その方法は、材料を、圧縮二酸化炭素を含む溶媒相に溶解または懸濁させる段階と、溶液または懸濁液をウエハの表面上に堆積させる段階とを含み、溶媒相を蒸発させるとパターニングされた材料堆積物が残る。ウエハを、リソグラフィーを用いて予めパターニングすると、親水性および疎水性領域を有するウエハが提供される。
【0009】
米国特許第6,471,327号では、30nm未満のサイズを有する有機材料粒子で印刷するのに適した方法が開示されている。本明細書では、「ナノ結晶(nanocrystals)」および「ナノ結晶の(nanocrystalline)」という用語ならびに同様の用語を使用して、10〜30nmの範囲のサイズを有する粒子を示す。ナノ結晶粒子は、平均/メジアン粒子サイズが30nm未満の粒子サイズ分布を有する。「バルク結晶(bulk crystal)」および「バルク微粒子(bulk particulates)」という用語ならびに同様の用語は、30nmを1または複数次元超える粒子および微粒子を示す。
【0010】
多型(polymorphism)は、大きな(バルク状態)有機/分子結晶の現象である。多型は同じ分子実体の多結晶構造として規定される(J.ベルンスタイン(Bernstein)およびJ.ヘンク(Henk)、「X線回折の工業的適用(Industrial Applications of X−ray Diffraction)」、25章、F.H.チャング(Chung)およびD.K.スミス(Smith)編、マーセルデッカー(Marcel Dekker)社(Inc.)、ニューヨーク、p.531−532(2000))。特定の有機/分子材料の多型バルク結晶は、異なる物理特性および機械特性、例えば、溶解度、色、吸収、発光、体積弾性率、などを有するバルク多結晶構造を示す。多型を示す物質の例は、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウムである。α、βおよびγとして識別される3つの多型は、M.ブリンクマン(Brinkman)ら、ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ(Jorunal of the American Chemical Society)、122巻、p.5147−5157(2000)で報告されており、紫外光で励起すると、αおよびβは黄色−緑色蛍光を示し、γは青色蛍光を示す(M.ブラウン(Braun)ら、ジャーナル・オブ・ケミカル・フィジックス(J.Chem.Phys.)、114巻(21号)、p.9625−9632(2001))。
【0011】
本明細書では、「ナノ形態(nanomorph)」および「ナノ形態微粒子(nanomorphic particulate)」ならびに同様の用語を使用して、バルク状態の同じ粒子または微粒子から変化した特性を示すナノ結晶粒子およびナノ結晶微粒子を示す。この定義のために、同じ粒子または微粒子は同じ化学化合物または同じ比率の複数の化合物により構成される。開始材料から決定されるように、分子量、および元素組成が同じであり、結晶、半結晶、またはアモルファスとすることができる。立体化学などの変化は考慮しない。特別な化合物により示されるナノ形態の型および数は、バルク結晶の同じ有機/分子材料の多型の型と数に直接相関しない。ナノ形態材料中の化学化合物は100〜100,000ダルトンの範囲の分子量を有する。
【0012】
ナノ結晶H−またはJ−凝集体を形成する有機化合物が、いくつかのハロゲン化銀系写真製品において使用される。H−およびJ−凝集体ナノ結晶は、バルク固体の性質とは異なる独特の特性を示す(A.ヘルツ(Herz)、Photog.Sci.Eng.、18巻、p.323−335(1974);E.ジェリー(Jelley)、ネイチャー(Nature)、138巻、p.1009−1010(1936))。このように、これらの材料はナノ形態である。
【0013】
下記はナノ結晶材料の調製および圧縮流体印刷を開示する参考文献の例である。米国特許第6,471,327号、米国特許出願公開番号第2003/0121447 A1号、米国特許出願公開番号第2003/0122106 A1号、米国特許出願公開番号第2003/0117471 A1号、米国特許出願公開番号第2003/0107614 A1号、米国特許出願公開番号第2003/0030706 A1号、米国特許出願公開番号第2002/0118246 A1号、米国特許出願公開番号第2002/0118245 A1号。これらはすべて、参照により本明細書に組み入れられる。他の例は、EP1 321 303 A1、WO03/006563 A1、WO03/053561である。
【0014】
【特許文献1】米国特許第4,734,227号明細書
【特許文献2】米国特許第5,789,505号明細書
【特許文献3】米国特許第5,944,996号明細書
【特許文献4】米国特許第6,131,421号明細書
【特許文献5】米国特許第6,228,826号明細書
【特許文献6】国際公開第02/45868号パンフレット
【特許文献7】米国特許第6,471,327号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第1321303号明細書
【特許文献9】国際公開第03/006563号パンフレット
【特許文献10】国際公開第03/053561号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
このように、特別な材料の調製に関する、物理的特徴に依存する認証方法および装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は請求の範囲により規定される。本発明は、より広い観点では、ナノ結晶材料を含む識別マーキングを認証する認証システム、装置および方法を提供する。マーキングの1または複数の特性を確認し、測定プロファイルを提供する。測定プロファイルを、参照プロファイルの閉集合の少なくとも1つのメンバーと比較する。各参照プロファイルは1または複数の特性の予め決定された値を有する。各参照プロファイルは集合内でユニークである。少なくとも1つの参照プロファイルはナノ結晶形態のインジケータ材料の特徴を示し、バルク形態の同じインジケータ材料の特徴を示さない。
【発明の効果】
【0017】
圧縮流体印刷または圧縮流体堆積生成物を使用した印刷により、意図的なおよび不測の誤用に対し物理的な制限を与える、認証スウォッチを提供する改善された方法および装置を提供することが本発明の有利な効果である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の上記および他の特徴ならびに目的、それらを達成する様式は、添付の図面と共に行った本発明の1つの態様の下記記述を参照すれば、より明白となり、本発明自体がよりよく理解されるであろう。
【0019】
圧縮流体印刷、ならびに圧縮流体により生成および堆積された微粒子を使用した従来の印刷の製品は、より単純なプロセスにより模倣することが困難ないくつかの特性を示す。認証法およびシステムは1または複数のそれらの特性を使用し、認証を提供する。改ざんに対しさらに複雑さおよび耐性を付加するために、様々な方法およびシステムは特性の組み合わせを使用することができる。さらに、方法およびシステムは、公知の認証法、例えば符号化の使用と組み合わせることができる。
【0020】
図1〜2について説明すると、印刷された圧縮流体または圧縮流体により生成および堆積された微粒子のスウォッチ10は、認証を必要とする基質12、例えば、通貨または流通証券、切手などの上に印刷することができる。基質12は予め決められた特性について試験することにより容易に認証することができる。それらの特性は容易に捏造することができない。識別マーキングにおいて使用した同じ化合物は、バルク状態で、および従来の印刷により使用されると、異なる特性を有するからである。
【0021】
基質は任意の固体材料、例えば、有機、無機、有機金属、金属、合金、セラミック、合成および/または天然ポリマ、ゲル、ガラス、または複合材料とすることができる。基質は多孔質または非多孔質とすることができる。基質は複数の層を有することができる。基質は予め決められたサイズのシートまたは連続ウエブとすることができ、複雑な三次元形状を有する物品とすることも可能である。基質は、それ自体で、または別の物品の一部として使用するためのものとすることができる。例えば、基質は別の物品に適用することができる粘着ラベルとすることができる。
【0022】
方法およびシステムについては一般的に、本明細書では、スウォッチ10、すなわち認証目的専用のドキュメントまたは他の支持体の一部、を有する基質12(ドキュメントまたは他の品目)の認証に関連して、説明する。スウォッチは分離した境界を有するものとして図示されている。これに限定されない。スウォッチは基質の残りと連続することができる。
【0023】
スウォッチの印刷部分は本明細書では、「識別マーキング(identification marking)14」と呼ばれる。方法およびシステムは、基質のほんの一部に局在するスウォッチ10との使用に限定されず、むしろ、基質の大部分および全体を占めるスウォッチを含む。そのような大きなスウォッチは典型的には拡散性であり、基質の他の使用を妨害しない。ドキュメントなどの上では、この型のスウォッチは時として「透かし(watermark)」と呼ばれる。識別マーキングを基質から取り除き、その後に分析する方法も認証に適用可能である。本明細書で記述したほとんどの目的に対し、取り除いた基質は材料の収集サンプルの形態をとることができる。
【0024】
方法およびシステムについては一般的に、本明細書で、圧縮流体を印刷した、または圧縮流体により生成される成分を含むインクまたは他の印刷媒体を使用して従来通りに印刷したスウォッチについても関連して、説明する。第1の場合では、スウォッチは圧縮流体印刷プロセスの人工物である特性を示す。どちらの場合でも、スウォッチは圧縮流体印刷または堆積により生成されるナノ形態特性を示す。これらの特性は認証法およびシステムにより使用される。便宜上、認証方法およびシステムは一般に本明細書では、ナノ形態特性を示す圧縮流体印刷スウォッチに関して、記述されている。従来通りに印刷された、圧縮流体により生成する成分を含むスウォッチに適用可能な方法および装置は文脈から明らかになるであろう。方法および装置はまた、特別な方法または装置に対し要求される特性を示すが、異なる方法により作成されるスウォッチおよびタガント(taggant)にも適用できる。
【0025】
圧縮流体印刷および圧縮流体により生成される微粒子の調製のための適した手順は、組み入れられた参考文献中で記述されており、以下で、様々なナノ形態材料およびスウォッチの調製と共に提供する。
【0026】
<圧縮流体印刷および圧縮流体により生成される微粒子の調製>
圧縮流体印刷および圧縮流体微粒子の堆積はナノ結晶材料の調製から開始される。圧縮流体印刷では、ナノ結晶微粒子は直接レシーバ上に堆積される。圧縮流体により生成される微粒子の堆積では、微粒子を収集し、インクまたは他の印刷媒体に添加し、その後、従来の印刷方法および装置を用いて印刷する。便宜上、「インク」という用語は、本明細書では、インクジェットインク、電子写真トナー、熱転写材料などを含む全ての種類の印刷材料を示す。ナノ結晶材料およびインク調合物は、取扱または使用中にインク調合物中でナノ結晶材料が溶解しないように選択される。
【0027】
ナノ結晶微粒子は、バルク状態の開始材料の非反応性処理により形成させることができる。開始材料はバルク状態ではなくナノ結晶状態、または両方状態の混合とすることができる。これにより、製品の再利用が可能となるが、通常、バルク材料の使用に比べ、都合がよくない。(便宜上、単一のバルク状態の化合物からなる開始材料について、下記において、一般に記述する。同様の考察が他の開始材料に適用される)。
【0028】
バルク状態開始材料をキャリヤ流体中に分散または溶解させる。キャリヤ流体は、圧縮ガス、液体および/または超臨界流体相で存在し、その密度は選択した温度および圧力状態で0.1g/cc以上である。キャリヤ流体は単一の圧縮流体または複数の圧縮流体の混合物である。開始材料を可溶化/分散させることができる1または複数の共溶媒または適した界面活性剤および/または分散剤材料を含有させることができる。
【0029】
堆積前に、キャリヤ流体を、バルク機能材料を圧縮流体中に溶解および/または分散させるのに適した温度および圧力で維持する。この前駆体調合物の減圧制御によりキャリヤ流体の蒸発およびナノ結晶微粒子の形成が起こる。
【0030】
キャリヤ流体として使用可能な材料としては、二酸化炭素、亜酸化窒素、アンモニア、キセノン、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、ブタン、イソブタン、クロロトリフルオロメタン、モノフルオロメタン、六フッ化硫黄、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。二酸化炭素は、好都合な特性、例えば、低コスト、有用性の広さなどのため、多くの用途において一般に好ましい
【0031】
本明細書で開示した特別な態様では、キャリヤ流体は二酸化炭素である。堆積前に、圧縮二酸化炭素流体を0〜100℃の範囲の温度および1を超える〜約400atm、より好ましくは150〜300atmの範囲の圧力で維持する。
【0032】
二酸化炭素は独特な物理的性質を有し、一般に、今日まで、CO2中でかなり溶解する材料は少数しか知られていない。かなり溶解するこれらの材料はCO2−親和性と呼ぶ。CO2中に実質的に溶解しない材料はCO2−非親和性と呼ぶ。
【0033】
圧縮CO2に溶解する開始材料を溶解させる。圧縮CO2に実質的に溶解しない開始材料は、連続圧縮CO2相中に、開始材料に対し親和性を有するCO2−親和性部分およびCO2−非親和性部分を有する界面活性剤の助けを借りて分散させる。前駆体調合物中に含まれる界面活性剤は開始材料および圧縮二酸化炭素と相互作用し、凝集系(ミセル集合体、マイクロエマルジョンを含むことができる)を形成するように選択される。この凝集系は、界面活性剤および開始材料分子を含む、平均直径が10nm未満である複数の凝集体が分散されたCO2連続相を含む。
【0034】
界面活性剤はバルク相に溶解可能な成分およびバルク相に溶解しない成分を含む両親媒性の実体である。水性(またはさらに言えば、非水性)媒体中での可溶化のために使用される従来の界面活性剤は、親水性および疎水性成分を含むものとして分類される。親水性部分は水溶性成分であり、疎水性部分は不水溶性成分である。この専門用語から引き出すと、本発明のプロセスにおいて圧縮CO2中でCO2−非親和性材料の凝集体の分散物を形成させるために使用すべき界面活性剤は、圧縮CO2相中に溶解可能なCO2−親和性部分および圧縮CO2相中に溶解できず、機能性材料に対し親和性を有するCO2−非親和性、機能性材料−親和性部分を含むものとして規定される。一般に、親水性成分はCO2−非親和性であるが、疎水性成分はCO2−親和性であっても、そうでなくてもよく、すなわち、圧縮CO2中で材料を可溶化させるために使用すべき特定の界面活性剤の選択(識別)の基準は、従来の液体(水性または非水性)相系中で使用される界面活性剤の知識のみを基本にすることはできない。
【0035】
本発明に従い使用してもよいCO2−親和性およびCO2−非親和性部分を含む代表的な界面活性剤としては、例えば、米国特許第5,789,505号、同第5,944,996号、同第6,131,421号、および同第6,228,826号において記述されているものが挙げられる。これらの開示内容は参照により本明細書に組み入れられる。本発明により使用される界面活性剤のCO2−親和性部分の意義は、界面活性剤をCO2バルク相中に導入することである。フルオロカーボン類およびシロキサン類が、一般に、界面活性剤中のCO2−親和性成分として機能する2つの好ましいクラスの材料として識別されている(例えば、「超臨界流体洗浄(Supercritical Fluid Cleaning)」、J.マクハーディ(McHardy)およびS.サワン(Sawan)、編、ノイエスパブリケーションズ(Noyes Publications)、ニュージャージー州ウエストウッド(1998)、pp.87−120、5章、上記引用、ならびに米国特許第5,944,996号、同第6,131,421号および同第6,228,826号を参照のこと)。最近発見された別の部分はポリ−エーテルカーボネート界面活性剤である(サーブ(Sarbu)、T.、スチランス(Styrance)、T.、ベックマン(Beckman)、E.J.、「低圧に至るまで超臨界CO2中で高い溶解度を有する非フルオラスポリマ類(Non−Fluorous Polymers with Very High Solubility in Superctirical CO2 down to Low Pressures)」、ネイチャー(Nature)(2000)、405、165)。CO2中で表面活性特性を示すアセチレンアルコール類およびジオール類が米国特許第5,789,505号において記述されている。
【0036】
CO2−非親和性基の例としては、様々な官能基を含む分子ユニット、例えばアミド類、エステル類、スルホン類、スルホンアミド類、イミド類、チオール類、アルコール類、ジエン類、ジオール類、酸類(例えばカルボン酸、スルホン酸、リン酸)、酸類の塩類、エーテル類、ケトン類、シアノ類、アミン類、第四アンモニウム塩類、およびチアゾール類、ならびにエチレン、α−オレフィン類、スチレン系類、アクリレート類、エチレンおよびプロピレンオキシド類、イソブチレン、ビニルアルコール類、アクリル酸、メタクリル酸、およびビニルピロリドンなどのモノマ類から形成される脂溶性、親油性、および芳香族ポリマ類またはオリゴマ類が挙げられる。本発明により使用される界面活性剤のCO2−非親和性部分の意義は、機能性材料に対し親和性を有するこの部分の正しい選択により、対象となるCO2不溶性機能性材料(親水性であろうと疎水性であろうと関係なく)および圧縮CO2相に分散させた界面活性剤を含む凝集体の形成が可能となる。イオン性または他の親水性基を含む機能性材料を分散させるために、界面活性剤のCO2−非親和性、機能性材料−親和性部分を、公知の親水性基および特にイオン性官能基の中から有利に選択してもよい。
【0037】
本発明のプロセスにおいて有益であるかもしれない市販のフルオロカーボン系界面活性剤(しばしばペルフルオロポリエーテル)の例としては、フォムブリン(Fomblin、商標)(アウジモント モンテジソン(Ausimont Montedison)グループ)、フルオロリンク(Fluorolink、商標)(アウジモント)およびクリトックス(Krytox、商標)(デュポン(Dupont))ファミリーの界面活性剤が挙げられる。本発明において使用するために特に好ましい界面活性剤としては、フルオロリンク7004(商標)(アウジモントモンテジソングループ)およびフォムブリンMF−300(商標)(アウジモント)が挙げられる。本発明に従い使用してもよいシロキサン系界面活性剤(しばしば、ポリジメチルシロキサン)の記述および例としては、米国特許第6,228,826号において記述されている末端官能性ポリシロキサン界面活性剤が挙げられる。
【0038】
開始材料は、圧縮二酸化炭素にかなり溶解可能な種から選択することができる。かなりの溶解度とは、前駆体調合の温度および圧力での、圧縮二酸化炭素における0.010重量%(wt%)を超える、より好ましくは0.5wt%を超える溶解度を意味するものとする。温度は好ましくは、−100〜+100℃の範囲であり、圧力は1×10-8〜1000atmの範囲である。そのような材料は、有機、有機金属、ポリマ、オリゴマ、合成および/または天然ポリマ、ならびに前述したこれらの複合材料などの型としてもよい。開始材料は、例えば、染料または顔料、農薬、市販の化学薬品、精製化学製品、食品、栄養素、殺虫剤、写真薬剤、火薬、化粧品、保護剤、金属コーティング前駆体、または望ましい形態が堆積フィルム、微粒子分散物、または粉末である他の工業用物質とすることができる。染料および顔料は、圧縮流体印刷および圧縮流体堆積材料のための好ましい開始材料である。
【0039】
さらに、CO2中に不溶性の、またはやや溶けにくい開始材料は、CO2−親和性基、例えば、フルオロカーボン類、シロキサンおよび他のCO2−親和性部分を用いて官能基化することができ、そうすると、界面活性剤の助け無しで直接分散および/または溶解させることができる。
【0040】
調合物を製造するために使用してもよい装置は、係属中の米国特許出願第09/794,671号(参照により本明細書に組み入れられる)に開示されている。追加の適した装置は、米国特許第4,582,731号、同第4,734,227号、同第4,582,731号、同第4,734,451号、同第5,301,664号、同第5,639,441号、同第6,177,103号、同第6,299,906号および同第6,316,030号において記述されている。
【0041】
装置において、開始材料を制御可能なように調合リザーバ中に、好ましくは粉末形態で導入する。圧縮CO2流体もまた、制御可能なように調合リザーバに導入する。調合リザーバの中身を、混合装置を用いて混合し、開始材料と、もし使用していれば界面活性剤と、圧縮流体とが確実に密接に接触するようにする。混合が進むにつれ、開始材料は圧縮流体中に溶解し、または分散される。この溶解または分散プロセスは、存在する開始材料、開始材料の最初の粒子サイズおよび粒子サイズ分布(固体として供給される場合)、調合リザーバ内の温度および圧力に依存する。溶解または分散プロセスが完了すると、熱力学的に安定または準安定な状態に到達し、リザーバ内の温度および圧力の熱力学的条件が変化しなければ、調合チャンバ内では開始材料粒子の沈降、沈澱、および/または凝集はほとんどなく、またはまったくない。得られた溶液または分散物はまた、本明細書では、「準備流体(ready fluid)」と呼ばれる。
【0042】
準備流体を急速に減圧すると、開始材料がナノ結晶堆積物として沈澱する。圧縮CO2は減圧中にガス化する。減圧はノズル(下記)内で起きる。減圧は真空または雰囲気空気または選択した雰囲気中で起こすことができる。
【0043】
沈澱したナノ結晶材料のサイズは、ノズルのオリフィス、温度、圧力、流速、溶液/分散物中の濃度、ならびにCO2−非親和性材料の場合、界面活性剤および開始材料の相対濃度を変化させることにより調節することができる。
【0044】
沈澱したナノ結晶微粒子は直接、レシーバ上に噴射/堆積させることができ、すなわち、圧縮流体が印刷され、またはナノ結晶微粒子のストリームを、遊離微粒子として獲得および保持することができる。これは、材料の沈澱ストリームを非溶媒液中に導入することにより容易に達成することができる。溶媒を直ちにまたはすぐに蒸発させると、ナノ結晶微粒子が得られる。ナノ結晶微粒子をその後、インク調合物に、実質的には顔料として添加することができる。
【0045】
圧縮流体印刷装置は、入口および出口を有する放出装置を含むプリントヘッドを有する。放出装置の一部が送達経路を規定する。放出装置の一部が調合リザーバに、前に記述したように、解除可能に接続されるように適合される。放出装置は、流体が放出装置の出口を越えた位置ではガス状となるように、インジケータ材料の適した形状のビームを生成するような形状とされる。放出は、ドロップ・オン・デマンドおよび連続インクジェットプリンタと同様の様式で制御することができる。
【0046】
下記の特別な態様では、プリンタは異なる色または異なるスペクトル効果の波長範囲を提供する。プリンタはまた、単一のスペクトル範囲に限定することができる。プリンタはまた、3またはそれ以上の異なる「インク」を使用することができる。各「インク」は単一のナノ結晶材料に限定することができ、または複数の材料を組み合わせることができる。
【0047】
図3について説明すると、圧縮流体印刷装置は、プリントヘッド103を有し、プリントヘッド103は放出装置105と動作機構104とを含む。媒体輸送体(media transport)150(ドラムとして図示)は、基質106を、印刷中にプリントヘッド103の使用位置と隣接して配置する。媒体輸送機構は周知であり、使用する特定の型は重要ではない。例えば、媒体輸送体150はx−y並進ステージ、または一連のローラをドラムの代わりに使用することができる。図示した態様では、プリントヘッド103は1方向に移動し、ドラムは第2軸の移動を提供し、二次元プリントが作成される。代用として、プリントヘッドを基質に対し移動させることができる。
【0048】
システムは、圧縮流体供給源100から、チューブ101、110、調合リザーバ102a、b、c、材料選択装置160を通って、プリントヘッド103まで高圧下にある。チューブは剛性または可撓性とすることができるが、高圧のため、可撓性チューブ110を除外することが望ましいかもしれない。大きな壁厚および曲げ半径が必要となるかもしれないからである。可撓性チューブ110の例としては、ミシガン州ウィクソン所在のコードインダストリアル(Kord Industrial)から入手可能なチテフレックス(Titeflex)超高圧ホースP/N R157−3(内径0.110、4000psi、曲げ半径2インチ)が挙げられる。このホースは全ての態様においては適していないかもしれない。例えば、使用位置からクリーニングおよび較正ステーション162の位置までプリントヘッドが移動させられる場合、ホースは問題となるかもしれない。
【0049】
この態様では、複数の色が、同時ではなく、順次印刷される。この方法は、あらゆる画素部位であらゆる色に対し動作機構104および放出装置105の組み合わせ全てを使用するという利点があり、このため、プリントヘッドの解像度が最大となる。プリントヘッド103および媒体輸送体150が、材料選択装置160により第1の色を選択することにより、調合リザーバ102aから第1の色を印刷する。プリントヘッド103はその後、クリーニング/較正位置まで移動する。ライン110およびプリントヘッド103内の残った着色剤は、その後、材料選択装置160により純粋な圧縮流体100を選択することによりステーション162内にパージされる。その後、プリントヘッド103は媒体輸送体150に位置する印刷位置に戻り、材料選択装置はその後、調合リザーバ102bを選択し、第2の色が印刷される。ライン110およびプリントヘッド103は前と同じようにパージされ、必要とされる色が全て印刷されるまでプロセスが繰り返される。3つの調合リザーバ102a、b、cおよび純粋な圧縮流体が図示されている。本発明は、追加の色を含む任意の数の「色」まで拡張可能であり、全範囲(gamut)または効率、プレコート、オーバーコート、などが改善されることは認識される。この方法は、正確な色の位置あわせを維持するプリントヘッドおよび基質トランスレータの機械的な移動における十分な精度に依存する。別のプリントヘッドは、同時に調合リザーバの全てから、カラーインクジェットプリンタと同様の様式で印刷することができる。
【0050】
インジケータ材料がラインから完全にパージされたかどうかを決定するために、およびプリンタを較正するために、クリーニング/較正ステーション162にセンサ163を備えることができる。プリンタが始動し、インジケータ材料または媒体が変更され、重要な印刷ジョブを実施させる前に、またはプリンタの較正がなくなると、そのような較正が実施される。センサ163は放出装置から出てくる材料ストリームを検査することができ、または二次動作において使用され、試験媒体の一片上のストリームにより生成される密度または色を見ることができる。プリンタ較正を実施するための印刷走査および較正アルゴリズムは印刷業界では周知である。
【0051】
特別な態様では、プリントヘッド103内の放出装置105は、図4〜5で示されるように、第1の一定領域セクション120、続く第1の可変領域セクション118を含む。第2の可変領域セクション122は一定領域セクション120から放出装置105の端まで発散する。第1の可変領域セクション118は第1の一定領域セクション120に収束する。第1の一定領域セクション118は第1の可変領域セクション120の出口直径に実質的に等しい直径を有する。また、放出装置105は可変領域セクション122後に配置された第2の一定領域セクション125を含む(図示せず)。第2の一定領域セクション125は可変領域セクション122の出口直径に実質的に等しい直径を有する。さらに、少なくとも1つの追加の可変領域セクションを第1の一定領域セクション120の一端に接続させることができる。この型の放出装置105はニューヨーク州イーストオーロラ所在のムーグ(Moog)、カルフォルニア州サンラモン所在のヴィンダムエンジニアリング社(Vindum Engineering Inc.)から市販されている。
【0052】
動作機構104が放出装置105内に、開放位置と閉鎖位置との間で移動可能なように配置され、図4〜5に示されるように密閉機構130を有する。閉鎖位置では、動作機構104における密閉機構130が一定領域セクション120と接触し、放出が阻止される。開放位置では、堆積が起きる。動作機構104はまた、特別な印刷用途、所望の堆積速度などにより、様々な部分的に開いた位置に配置することができる。また、動作機構104は開放位置および閉鎖位置を有する電磁弁とすることができる。動作機構104が電磁弁である場合、放出装置を通過する質量流量を制御する追加の位置制御可能な動作機構をも含むことが好ましい。動作機構104は複数の周波数で動作可能である。
【0053】
好ましい態様では、放出装置105の第1の一定領域セクション120の直径は約10μm〜約2,000μmの範囲である。より好ましい態様では、放出装置105の第1の一定領域セクション120の直径は約10μm〜約20μmの範囲である。さらに、第1の一定領域セクション120は、印刷用途により、第1の一定領域セクション120の直径の約0.1〜約10倍の予め決められた長さを有する。密閉機構130は様々な形状を有することができ、例えば円錐または円板形状である。
【0054】
再び図3に戻ると、圧縮流体プリンタ205は、選択したキャリヤ流体と開始材料を圧縮流体状態にし、溶液および/分散物を生成し、準備流体を平行ビームおよび/または集束ビームとして、制御された様式で基質106上に送達する構成要素100、102、103および104を有する。
【0055】
図3の調合リザーバ102a、b、cを使用して、開始材料をキャリヤ流体中に、分散剤および/または界面活性剤を用いて、または用いずに、温度、圧力、体積および濃度の望ましい調合状態で、溶解および/または分散させる。図3の調合リザーバ102a、b、cは、調合条件で安全に動作することができる任意の適した材料から作製することができる。圧力が0.001気圧(1.013×102Pa)〜1000気圧(1.013×108Pa)および−25℃〜1000℃の動作範囲が一般に好ましい。典型的には、好ましい材料としては、様々なグレードの高圧ステンレス鋼が挙げられるが、特定の堆積用途が温度および/または圧力状態に極端に影響しなければ、他の材料を使用することが可能である。
【0056】
図3の調合リザーバ102a、b、cは、動作条件(圧力、温度および体積)に対し十分制御するべきである。開始材料の溶解度/分散性は、調合リザーバ102a、b、c内の条件に依存する。そのようなものとして、調合リザーバ102a、b、c内の動作条件の小さな変化は、インジケータ材料溶解度/分散性に望ましくない影響を有することがある。開始材料およびキャリヤ流体は、制御可能に、調合リザーバ102a、b、cに導入することができる。混合装置を用いて混合し、全ての材料間での密接な接触を確かなものとする。
【0057】
溶解および/または分散プロセスは、使用した材料、粒子サイズおよび分布(固体の場合)、リザーバ内への導入状態、温度および圧力に依存する。混合プロセスが完了すると、インジケータ材料が圧縮流体中に溶解または分散され、調合チャンバ内の温度および圧力が一定に維持されるように永久に維持されるという点で、溶液/分散物は熱力学的に安定/準安定である。この状態は、リザーバ内の温度および圧力の熱力学的条件が変化しなければ、調合チャンバ内では粒子の沈降、沈澱、および/または凝集がないという点で、他の物理混合物と区別される。そのようなものとして、準備流体は熱力学的に安定/準安定ということができる。準備流体は、調合リザーバ102a、b、cから、材料選択装置160を通して、制御可能に放出される。材料選択装置160は熱力学的に安定/準安定な混合物または調合物のどれを、動作機構104を介して放出装置105まで流すかを制御する。図3に示した材料選択装置160は、4つの入力および1つの出力を有する。入力は調合リザーバ102a、b、cおよび圧縮流体供給源100に接続される。1つの単純な形態では、材料選択装置は、プリントヘッド104上で使用される型の4つの個々の装置とすることができ、これらは、先に述べたように、ニューヨーク州イーストオーロラのムーグ、カリフォルニア州サンラモンのヴィンダムエンジニアリング社から市販されている。これらの4つの装置の出力は、プレナム(plenum)により可撓性ホース110に結合される。
【0058】
放出プロセス中、沈澱したインジケータ材料は、ビームとして基質に向かって進み、好ましくは集束および/または平行化される。沈澱および/または凝集インジケータ材料ストリームのサイズが放出装置105の出口直径と実質的に等しい場合、沈澱および/または凝集インジケータ材料ストリームは放出装置105により平行化されている。沈澱および/または凝集インジケータ材料ストリームのサイズが放出装置105の出口直径よりも小さい場合、沈澱および/または凝集インジケータ材料ストリームは放出装置105により集束される。
【0059】
複数の放出装置105を共に作製し、複数のビームを提供するプリントヘッドを形成させることができる。放出装置を制御し、放出装置105の内側および/または外側で圧縮流体を蒸発させることができる。
【0060】
基質106の、動作機構104を有する放出装置105からの距離は、圧縮流体が基質106に到達する前にガス相に到達するように選択される。このため、その後のレシーバ乾燥プロセスは必要ない。基質106は電気的または静電的に帯電させることができ、そのため、レシーバ106中のインジケータ材料の位置を制御することができる。
【0061】
インジケータ材料の個々の粒子が動作機構104を有する放出装置105から噴射される速度を制御することが望ましい。プリントヘッド103内部から動作環境までかなりの圧力降下が存在するので、圧力差により、プリントヘッド103のポテンシャルエネルギがインジケータ材料粒子を基質106内まで推進する運動エネルギに変換される。許容される運動エネルギで、粒子は表面層またはそれより下のレシーバ内に埋め込まれる。許容されない運動エネルギでは、粒子はレシーバを通り抜ける。
【0062】
前に記述したプリンタ構造内では、各色に対しグレースケールレベルを提供することができる。圧縮流体印刷を用いると、ほとんど無限の数の色を達成することができる。これらの色は、クリーニングおよび較正ステーション162で実施する較正に応じて、ルックアップテーブルによりそれらの名目値から修正することができる。動作機構により決定される各着色剤に対する可変印刷継続時間を用いると、可変量の着色剤を印刷されるあらゆる画素に送達させることができる。そのような結果は、着色剤濃度などの、圧縮流体系における他の変数により達成することもできる。ドット面積を変動させることも、異なるレベルの色を達成する1つの方法である。
【0063】
図15について説明すると、別の圧縮流体印刷装置を使用して、連続可変ナノ形態特性を有するスウォッチを作製することができる。例えば、1または複数の調合リザーバ内で、および/または、1つのマーキング材料を使用して複数の色および/または複数の色あいを有する物品を生成する材料噴射中に、圧力を変動させることにより、マーキング材料の反射スペクトルピークを変動させることができる。他のプロセスパラメータ、例えば、温度、および材料(溶質および/または分散剤)濃度を変動させても同様の効果が得られる。(便宜上、図15〜16の下記記述は、反射スペクトルピークのみに関するものである。同じ因子に依存する他のナノ形態特性は同様に変動させることができる)。
【0064】
図15にまた戻ると、送達システム312は、圧縮流体の供給源100、主調合物混合タンク300、最高圧送達タンク301、中圧送達タンク302、および最低圧送達タンク303を含む。流体供給源100およびタンク300、301、302、303は高圧チューブ101を通して流体接続される。送達システム312により、選択したマーキング材料を、0.1g/cc3を越える密度を有する圧縮流体中に溶解および/または分散させることができる。
【0065】
送達システム312により、プリントヘッド323に、マーキング材料の溶液および/または分散液が異なる圧力条件下で供給され、その溶液および/または分散液により同じマーキング材料から異なる色が生成される。図15に示した態様では、プリントヘッドにマーキング材料を3つの異なる圧力で供給するために、3つのタンク301、302、303が示されている。要望通り、送達システム312に追加のタンクを組み入れることができ、またはより少ないタンクを組み入れることができる。
【0066】
堆積中、ノズル401(最高圧送達タンク301に接続された1または複数のノズルの例)を通して噴射されるマーキング材料により第1の色のマーキング材料が生成する。ノズル402(中圧送達タンク302に接続された1または複数のノズルの例)を通して噴射されるマーキング材料により第2の色のマーキング材料が生成する。ノズル403(最低圧送達タンク303に接続された1または複数のノズルの例)を通して噴射されるマーキング材料により第3の色のマーキング材料が生成する。中圧タンク302および低圧タンク303内の圧力を減少させるために、一般に入手可能な条件制御装置310を使用する。圧力調節システムの場合、これらの装置は圧力調節弁である。適した条件制御装置310の1つの型は一般に、減圧弁と呼ばれ、例えば、オハイオ州ノーウッド所在のケイデル・サプライ社(Keidel Supply Co.)、テキサス州ヒューストン所在のチコバルブズ・アンド・コントロールズ(Tyco valves and Controls)から市販されている。この構造では、送達システム312は、材料が噴射されると典型的に圧力変動が起きたとしても、個々のタンク301〜303内の圧力が最適レベルに維持できるという点で、自動制御システムである。さらに、圧力に関する条件制御については減圧弁を参照して記述してきたが、圧力を制御する他の方法(例えば、圧力を生成および/または減少させる方法)が存在する。例えば、圧縮流体の個々の供給源は、異なる圧力でシステムに提供することができる。
【0067】
システムを温度について設計する場合、条件制御装置310は温度制御装置または任意の他の適した条件制御機構とすることができる。例えば、温度制御装置は加熱機構(加熱コイルなど)および/または冷却機構(ウォータージャケット、など)を含むことができる。同様に、システムが溶質濃度を基に動作する場合、送達タンクはそれぞれ、様々な濃度のマーキング材料を含む。
【0068】
送達システム312は、図16に示されるように、一定圧力送達タンク301〜303、およびより多くの色を生成するために追加の圧力を提供するように動作中に調節することができる条件制御装置310を使用して、変更することができる。圧力変動を使用して、用途に応じ、色域および/または色あいを増加させることもできる。送達システムはまた、調合を連続して変動させるようにも変更することができる。他の構造も可能である。例えば、異なる調合物を連続して、または同時に印刷することができる。基質106へのマーキング材料の浸透深さもまた変動させることができる(例えば、米国特許出願US2003/0030706 A1を参照のこと)。
【0069】
<スウォッチ>
図6〜10は認証法およびシステムにより使用することができる、異なる型のスウォッチのいくつかを図示したものである。図6はナノ結晶材料の連続および均一堆積物である。この特別なスウォッチは識別マーキングの存在に関して、はい/いいえ(yes/no)情報を提供する。図7は、印刷中にイメージ通り(imagewise)に調節された均一色のグレイスケール堆積物であり、ヒトが読み取ることができる情報、例えば記号または英数字メッセージを提供する。このスウォッチは識別マーキングの位置のより顕著な表示を提供し、図6のスウォッチよりも多くの情報を有する。調節では、グレイスケール変化または色の変化あるいは材料の変化を使用することもできる。図8は(単純化した形態で)、同様に調節し、機械で読み取ることができる2次元バーコードを形成させたスウォッチを示したものである。このスウォッチはかなり大量の情報を含むことができる。図9は機械で読み取ることができるバーコード、記号、および英数字文字列を組み合わせたスウォッチを示したものである。バーコードおよび英数字文字列を暗号化し、追加の安全保障レベルを提供することができる。図10は4つの四角からなる長方形パターンの形態のスウォッチを示したものである。各四角は、異なるナノ結晶材料および/または異なるナノ形態/圧縮流体印刷特性を有する。この特徴、連続するまたは段階的な、ナノ形態/圧縮流体印刷特性の変動を、前の図面のスウォッチの特徴と任意に組み合わせて使用し、安全保障を増強させ、またはさらなる情報を提供することができ、あるいはその両方が可能である。
【0070】
<特定のスウォッチの調製>
調合リザーバに100mgの銅フタロシアニン(以後、CuPcと呼ぶ)、および196gのCO2を入れた。その後、リザーバを60℃まで350atmで加熱した。その後、CO2とCuPcの混合物を激しく撹拌し、固体材料全てをCO2に溶解した。材料が圧縮流体CO2に完全に溶解した後、撹拌機を止め、系を少なくとも5分間撹拌しなかった。15mlのイソプロピルアルコール(以後、IPAと呼ぶ)を含むガラス瓶を拡張室(expansion chamber)内の中細ノズルの開口の真下に配置した。その後、ガラス瓶を一時的にプラスチックシートで覆った。プラスチックシートはいずれの噴霧物質にも曝露されないようにするシャッタとして機能した。その後、リザーバに接続されたニードル弁を開くと、目視観察により決定される、定常噴霧の最小流が得られた。このプロセスにかかる時間は通常1分以内であった。流量が一定になった後、プラスチックシートを取り除き、沈澱CuPcを含むジェット噴霧をIPAガラス瓶内に5分間誘導した。チャンバ内部の圧力はずっと350atmに維持した。IPAに不溶のCuPcは、このプロセスでは、IPAに分散され、安定な分散物が生成した。
【0071】
CuPc分散物を石英スライド(2.5インチ×2.5インチ)上に下記のように印刷した。石英ガラスプレートをノズルの先端から2.25インチの距離で平坦に保った。その後、石英ガラスプレートを一時的にプラスチックシートで覆った。プラスチックシートはいずれの噴霧物質にも曝露されないようにするシャッタとして機能した。その後、ニードル弁を開くと、目視観察により決定される、定常噴霧の最小流が得られた。このプロセスにかかる時間は通常1分以内であった。シャッタを取り除き、石英ガラスプレートを噴霧に曝露すると、CuPcが石英基質上に堆積した。堆積プロセスを5分間続け、その後、ニードル弁を閉じた。このようにCuPcでコートした石英プレートをデシケータ内で保存した。
【0072】
<参照プロファイル集合>
図11〜13について説明すると、認証方法では、識別マーキングの1または複数の特性が確認され(20)、測定プロファイルが提供される。測定プロファイルは閉集合の参照プロファイルの少なくとも1つのメンバーと比較される(22)。各参照プロファイルは測定特性の予め決められた値を有する。各参照プロファイルは集合内でユニークである。参照プロファイルの少なくとも1つは、ナノ結晶形態のインジケータ材料の特徴を示し、バルク形態の同じインジケータ材料の特徴を示さない。
【0073】
各プロファイルは、1つの特性に関する全ての入手可能な情報に対し、1または複数の特性の完全な分析または減少させたデータ集合を含むことができる。例えば、1つのルミネセンス特性に対し1つのスペクトルを提供することができ、または、1つのプロファイルを、1つの特別な波長または複数の波長での強度に限定することができる。
【0074】
比較工程では、測定した特性の値を、予め決められた参照プロファイルの集合のメンバーの各々と、一致するまで、または一致が見られなくなるまで、繰り返し比較する。比較は、オペレータが実施することができ、または自動化することができる。測定した特性が、サンプリング誤差、機器公差、などに基づく予め決められた範囲内にあれば、比較は一致ということになる。
【0075】
測定をした機器から直接データを受け取るプログラムされたパーソナルコンピュータにより、測定値の予め決められた値の集合との自動化比較を提供することができる。この目的に適したコンピュータソフトウエアおよびハードウエアは当業者には周知である。
【0076】
比較では、測定したプロファイルは、参照プロファイルの集合の1つのメンバーと一致し、または一致しない。一致の有無に応じて、オペレータに、または自動機能の入力として指示が提供される(24)。オペレータへの指示は、好都合な様式で提供することができる。例えば、指示はオペレータに、ディスプレイ上のテキストメッセージにより視覚的に、および/または可聴表示により、提供することができる。自動機能への指示の提供は、手順を中止する、または別の手順を開始する論理フラグの形態とすることができる。自動機能の例は、一致/不一致指示に基づく提示したチケットまたは紙幣の自動販売機の受理または返却である。
【0077】
参照プロファイルのその集合の任意のメンバーへの一致に対しては同じ指標を提供することができ、または異なる参照プロファイルへの一致に対しては異なる指標を提供することができる。後者のアプローチは、予測される偽物を識別するための効率的な方法として使用することができる。一致が得られると比較が中止となるからである。例えば、偽物は、ナノ結晶形態の代わりに材料のバルク形態を使用していることが予測される。この場合、ナノ結晶形態の指示材料の参照プロファイルへの一致は、事実上スウォッチを本物であると認めることを示し、一方、バルク形態の同じインジケータ材料の参照プロファイルへの一致はスウォッチが偽物であることを示す。
【0078】
参照プロファイルの集合は閉集合であり、特別な識別マーキングが1つの集合内にある、またはないことが保証される。この保証は、損傷したまたは劣化したマーキングは一致しない可能性があるという制限を受けやすい。提供することができる、異なる識別マーキングの数は非常に大きい。特別な集合の参照プロファイルのサイズは、必要とされる安全保障レベル、比較に使用できる時間、測定プロファイルを得るのに使用される構成要素の精度に基づき、実質的に決定される。最も簡単な場合では、参照プロファイルの集合は1つのメンバーを有する。これを使用して、パッケージ製品上の品質指標に対する、および暗号化した英数字アクセスコードに対し安全保障の追加のレベルを提供してもよい。
【0079】
参照プロファイル集合は単一メンバー、またはナノ結晶形態の単一インジケータ材料およびバルク形態の1または複数のインジケータ材料に限定することができる。また、参照プロファイル集合内のインジケータ材料は全て、ナノ結晶形態とすることができる。
【0080】
参照プロファイル集合のメンバーは特別な認証システムに対し予め決定される。1つの集合においてどのインジケータ材料を使用するかは、認証を受けた基質の予測される使用により示される要求およびそのシステムにおいて提供される試験装置の制限に基づき、経験的に決定することができる。インジケータ材料は、特別なシステムに対し、ナノ結晶形態のその材料が、同じインジケータ材料のバルク形態から、その系で使用される他のインジケータ材料から、およびシステムにより提供されるスウォッチを模倣する偽造者により使用される可能性のある材料から容易に識別することができる場合にのみ、特別なシステムに対し許容される。後者の材料は、部分的にコストに基づき評価することができる。偽造者は、偽物がオリジナルよりも高くなるような経済的にそんなに高額な材料を使用するとは考えられない。
【0081】
<測定プロファイル>
測定プロファイルは、ナノ結晶形態のインジケータ材料を他の材料と区別する1または複数の特性に対する値を有する。1または複数の特性は、ナノ結晶微粒子の特徴、それ自体または基質と組み合わせたものとすることができる。前者の例は特別なルミネセンスパターンである。後者の例は埋め込みパターンである(どちらも下記で詳細に記述する)。
【0082】
測定した1または複数の特性は、識別マーキングのインジケータ材料を完全に特徴づけることができ、または参照プロファイルの集合のメンバーに関してのみ識別材料を特徴づけることができる。ここで考慮するのは、ユーザにより必要とされる信頼レベルである。模倣が十分困難で考えることができない、または使用するのに実際的でない場合、模倣が可能な特性は、いくつかの状況では許容されるかもしれない。この例は、マーキングの模倣に費用がかかる場合、および比較的安価な製品上に使用されている場合である。
【0083】
測定した1つのまたは複数の特性は識別マーキングの同一の特徴とすることができ、または識別マーキングの1または複数の次元に沿って調節することができ、追加の情報、例えばしるしまたは記号を保持させることができる。測定した値と適当な予め決定された値との照合は、特性およびモジュレーションの両方の一致が必要であり、またはモジュレーションを独立した認証特徴として使用することができる。後者では、特性の値を測定するのに使用する手順に関係なく、特性のモジュレーションはユーザに視認可能であり、または機械で読み取ることができることが必要である。所望であれば、モジュレーションによって、装飾機能が簡単に提供される。モジュレートされた特性の特定の例は、識別マーキングの最も長い次元に沿ってモジュレートされたサイズプロファイルおよび二次元バーコードを提供する識別マーキングの二次元に沿ったルミネセンス波長のモジュレーションである。
【0084】
特性はまた特徴を組み合わせることができる。例えば、1つの特性はルミネセンス波長の空間モジュレーションとサイズプロファイルの空間モジュレーションの類似性の程度とすることができる。この場合、照合は、2つのプロファイルの、類似性の程度に対する予め決められた値への類似性の程度である。
【0085】
<ナノ形態ルミネセンス>
幾つかの態様では、インジケータ材料のルミネセンスが測定される。それらの態様では、ナノ結晶形態インジケータ材料は、ナノ形態ルミネセンスパターンを示し、これは同じ材料のバルク形態の対応するルミネセンスパターンとは異なる。ナノ形態ルミネセンスは、染料または他の非微粒子材料により容易に模倣されないことが好ましい。
【0086】
「ルミネセンスパターン(luminescence pattern)」という用語は、本明細書では、特別な励起波長での特別な種に対する完全ルミネセンススペクトル、または異なる励起波長でのそのようなスペクトルの一群、あるいはそのような1または複数のスペクトルの1または複数の部分を示す。実際、ルミネセンスパターンは好ましくは、特別な種のキャラクタリゼーションを提供するスペクトルの部分に限定される。
【0087】
「ナノ形態ルミネセンス(nanomorphic luminescence)」という用語は、本明細書では、同定された化学化合物のナノ結晶形態と関連するルミネセンスを示し、その化学化合物のバルク形態に対する特徴でなく、すなわち、それとは適合しない。
【0088】
方法のいくつかの態様では、測定したプロファイルは識別マーキングのルミネセンスパターンであり、参照プロファイルに対し比較される。参照プロファイルはインジケータ材料に対する予め決められたルミネセンスパターンに限定され、またはそれらを含む。
【0089】
【表1】
【0090】
表1は、ナノ形態ルミネセンスが観察された多くの化合物を列挙したものである。発光パターンとして使用することができる特性ピークを、表1において各化合物に対し示す。これらの材料のいくつかに対する圧縮流体印刷調合物の調製に対する手順の例が、米国特許出願公開番号第2003/0121447 A1および米国特許出願公開番号第2003/0122106 A1(どちらも2003年7月3日に公開)において開示されている。
【0091】
識別マーキングのルミネセンスパターンは分光法により測定される。この目的に適した機器は、測定するルミネセンスの性質および必要とされる励起放射線に依存する。いくつかの態様に対する適した分光計の例は、ニュージャージー州エジソン所在のジョビン−イボン社(Jobin−Yvon Inc.)からのラブラム(LABRAM)インテグレーテッド(integrated)ラマン分光システムである。
【0092】
ナノ形態ルミネセンスは、識別マーキング全体で均一とすることができ、またはマーキングの異なる部分では異なるようにすることができる。その差異は、追加の安全保障特徴を提供する意図的なモジュレーションとすることができる。モジュレーションは、ヒトが読み取ることができるしるし、または、追加の認証レベルとして、スウォッチで適当な励起波長を有する光を誘導することにより、確認することができる装飾的図形とすることができる。機械で読み取ることができる記号および/またはヒトが読み取ることができる暗号を、図形またはしるしの代わりに使用してさらに安全保障を追加することができる。モジュレーションの検出は、使用する検出器の得られた出力の関数である。必要であれば、識別マーキングのサイズを増加させ、より良好なモジュレーションを得ることができる。このアプローチはいくつかの場合、例えば、切手では非現実的であるが、大きなアイテム、例えば発送箱では実際的である。
【0093】
識別マーキングのために使用されるインク調合物は、ナノ形態ルミネセンスを示す1つの化合物に限定することができ、または2以上のそのような化合物を含むことができる。後者は、ユーザにより必要とされる信頼レベル内で、結合された生成ルミネセンスがバルク状態ルミネセンスから区別することができるという制限を受ける。同じ考えが、インク調合物にあてはまり、この場合、他の、非ナノ形態種もまた発光する。例えば、ナノ形態微粒子をバルク状態の同じ化合物の微粒子と混合することができる。そのような調合物は、調合物のルミネセンスパターンがバルク状態材料のルミネセンスパターンと区別できる限り使用可能である。同様の考えがインク調合物の非発光材料にあてはまる。例えば、インク調合物は、ナノ形態ルミネセンスの発光が識別マーキング内でブロックされるほど高い相対パーセントの非発光顔料を有するべきではない。識別マーキングのために使用されるインク調合物は、そのようなインクを調合するのに使用される添加物が好ましくは、選択した材料に特徴的なナノ形態ルミネセンスを変化または破壊させないようなものであるべきである。
【0094】
<識別(identification)>
方法は、参照プロファイルの閉集合を使用する。これらの多くは予め規定されており公知である。いくつかの態様では、測定プロファイルと参照プロファイルとを比較する前に、個々に、または1つの群の1メンバーとして、割り当てられた参照プロファイルが識別される。この場合、比較工程は測定プロファイルを単一のまたは少数の参照プロファイルと比較する工程に限定される。これにより、特に参照プロファイルの集合が多数のメンバーを有する場合、比較に要する時間を大きく減少させることができる。
【0095】
識別マーキングに割り当てられた1または複数の参照プロファイルを識別する様式は重要ではない。最も簡単なアプローチは、特別な化合物に対する識別子をスウォッチ上またはスウォッチに関連させて提供するものである。識別子を読み取り、必要に応じて、解読し、および/またはルックアップテーブルを参照する。
【0096】
「ルックアップテーブル(look−up table)」という用語は、1または複数のコンピュータ内の論理メモリの補数、ならびに論理メモリへのアクセスを制御、提供するために必要な装置およびソフトウエアの両方を示す。「ルックアップテーブル」は、関連する値の対を保存するデータベースに限定されず、むしろ、限られた値の集合に対する同様の関数を提供する1または複数のアルゴリズムを含む。ルックアップテーブルは、1または複数のコンピュータにおいてメモリの一部として提供される。本明細書内で検討される参照ルックアップテーブルは、現場(on−site)で提供することができ、またはネットワークを介して遠隔操作によりアクセスすることができる。
【0097】
使用する識別子の複雑性は、その集合内の化合物の数と、その識別子に対する任意の要求される安全保障の関数である。例えば、識別子は識別材料の化学名を特定することができる。名前は標準文字とすることができ、または暗号化することができる。識別子はまた、ルックアップテーブル内の値を指す数値または他の英数字値とすることができる。識別子はヒトが読み取ることができる、機械で読み取ることができる、またはその両方とすることができる。二次元および三次元バーコードなどの記号を使用することができる。
【0098】
識別は、特別な参照プロファイルまたはプロファイルの群の指定に限定することができる。特別なインジケータ材料の更なる識別は、認証システムにおいて存在する必要はない。比較は参照プロファイルに限定されるからである。自動化比較手順を用いると、参照プロファイルはオペレータにアクセスできないようにすることができる。
【0099】
識別子は印刷マーキングに限定されない。識別子は、包含(included)メモリ、例えば磁気ストライプまたは高周波により作動する識別トランスポンダ(transponder)の電子メモリにより提供することができる。そのようなトランスポンダの例は、テキサス州ダラス所在のテキサスインストルメント社(Texas Instruments Incorporated)により、タグ−イット(Tag−it、登録商標)インレイ(Inlay)として市販されているインレイトランスポンダである。「読み取り(reading)」という用語および同様の用語は、本明細書において、ヒトによる読み取り、バーコード走査および解釈、メモリアクセス、などを含む広い意味で使用される。
【0100】
ナノ形態ルミネセンスを提供する識別マーキングにより読み取り可能な識別子を提供することができる。この場合、スウォッチ内のインジケータ材料の堆積物は、識別マーキングに沿って1または複数の方向にモジュレートされる。実際、インジケータ材料は、しるしまたは記号を提供する染料または顔料として使用することができる。モジュレーションは単色またはグレイスケールとすることができ、識別マーキングに沿ったインジケータ材料の有無または可変量を反映する。また、モジュレーションはインジケータ材料のルミネセンスの波長の変化により、すなわち、ナノ形態ルミネセンスの変化により提供することができる。これは、いくつかのナノ形態化合物に対し、圧縮流体堆積条件、例えば圧力を変化させることにより提供することができる。モジュレートさせたルミネセンスパターンは、1または2の方向の識別マーキングに沿った局在ルミネセンススペクトルを提供する装置により読み取られる。
【0101】
インジケータ材料の識別は識別子の読み取りに限定されない。識別子は、インジケータ材料を識別するのに必要な情報を伝達する任意の形態で提供することができる。例えば、識別子は、スウォッチで1または複数の顔料または染料を使用するカラーコードとすることができる。特性ルミネセンスを有する材料を識別子として使用することができる。例えば、バルク材料が、インジケータ材料の集合の他のメンバーの発光パターンと容易に区別される発光パターンを有する場合、特別な化合物のバルク形態を、同じ化合物のナノ形態に対する識別子として使用することができる。
【0102】
インジケータ材料の識別は、インジケータ材料の予め決められた集合のどのメンバーが存在するかを証明するのに必要な程度まで、化学的キャラクタリゼーションとすることができる。当業者に周知なように、様々な手順および装置をこのために使用することができる。
【0103】
同様に、インジケータ材料は、物理特性、例えば吸収または反射率を決定することにより識別することができる。識別手順は、紫外・可視吸収スペクトルの準備とすることができる。いくつかのインジケータ材料および必要とされる信頼レベルを用いる場合、そのようなスペクトルを、ルミネセンス決定または他の試験の代わりに使用することができる。ナノ結晶形態インジケータ材料は同じ材料のバルク形態に対し、主吸収ピークにおいてシフトを示すからである。特別な態様では、吸収スペクトルと組み合わせた別の試験により、1または複数の参照プロファイルとの比較のための測定プロファイルが提供される。スペクトルの吸収ピークはまた、参照プロファイルの群内での比較試験を提供するのに使用することができるルミネセンス測定のための励起波長を識別することができる。
【0104】
いくつかの場合では、吸収スペクトルは参照プロファイルと比較される測定プロファイルの全てまたは一部であってもよい。これは、バルク形態インジケータ材料に対するナノ形態インジケータ材料における吸収スペクトルのシフトを仮定する。
【0105】
安全保障材料の励起断面は、実施例を、積分球(反射率アクセサリ)を備えた分光計のサンプルポートに配置することにより決定することができる。例えば、ラブスフィア(Labsphere)RSA−HI−40付属部品を備えた日立(Hitachi)U4001 UV/Vis/NIR分光光度計を使用することができる。その後、反射スペクトルは近紫外および全可視スペクトル(250〜700nm)にわたり1nmの分解能で得られる。その後、スペクトルをクベルカ−ムンク(Kubelka−Munk)式を用いてK/Sデータに変換する。ここで、Kは吸収係数である。その後、最適励起範囲を、最大吸収領域から選択することができる。
【0106】
識別工程をルミネセンス測定と組み合わせて、単一の機器で実行することができる連続した手順とする特別な好都合なアプローチは、マイクロ−ラマン分光法によるマイクロ−ルミネセンスである。この目的のために適した装置の例はジョビン−イボンラブラム(Jobin Yvon LABRAM)インテグレーテッドラマン分光システムである。この型の機器を使用するための手順は当業者に周知である。
【0107】
インテグレーテッドラマン分光システムの使用の特定の例は下記の通りである。ガラスまたは溶融石英基質上のモジュレートしていない認証スウォッチの形態の材料について試験した。認証パッチにおいて使用されるインジケータ材料は、デュアシン酸ブルー染料(Duasyn Acid Blue Dye)とした。これはトリフェニルメタン染料であり、下記化学式を有する。
【0108】
【化1】
【0109】
ジョビン−イボンラブラムインテグレーテッドラマン分光システムにより、マイクロ−ルミネセンスおよびマイクロ−ラマンスペクトルが得られた。アルゴンイオンレーザからの488nmまたは514.5mmの励起光を、MSPlan 50×または100×顕微鏡対物レンズを用いて、スウォッチ上に集束させ、約1μmの照射スポットサイズを提供した。ルミネセンスまたは散乱光を、100〜300μmスリットを通して検出すると、検出分解能は0.5nmまたは4cm−1より良好であった。バルク状態インジケータ材料を用いて調製したスウォッチは開始材料に特徴的なラマン線を示し、488nmで励起すると、758nmで主ルミネセンスピークを示した。圧縮流体印刷により調製したスウォッチは543nmおよび670nmの両方で主ピークを有した。
【0110】
銅フタロシアニン(CuPc)を用いて、同様に手順を実施した。バルク状態の粉末の可視結晶は、514.5nmで励起されると、565nm未満の波長で狭いラマン線を示した。液体CO2に分散させ、その後、圧縮流体印刷を用いてガラス上に堆積させると、サイズが1μmを超えるいくつかの粒子が、識別マーキング中、100×光学倍率下、明らかになった。これらの粒子のラマンスペクトルは、常に、CuPcの特性ラマン線を示した。100×倍率下、微細な粒子が明らかにならない同じ膜の領域では、ラマン線が観察されず、膜は、568nmで新しいブロードなルミネセンスバンドを発光した。
【0111】
質量分析を使用して、分子量または分子量範囲のいずれかの観点からインジケータ材料を識別することができる。特別な基準および条件下で試験した場合に、ユニークな値を提供するようにインジケータ材料の1つの集合のメンバーを選択することができる。好都合な手順は二次イオン質量分析(SIMS)である。この手順は、最初にインジケータ材料を抽出せずに、そうでなければスウォッチを準備せずに、スウォッチ上で直接実施することができる。分子情報以外に、SIMSを用いるといくらかの深さ情報および位置情報が得られる。SIMSの技術および装置は当業者に周知であり、下記に記述されている。ニューマン(Newman)、A.Anal.Chem(1996)68(21)683A、ハンドレイ(Handley)、J.Anal.Chem.(2002)74(11)335A、デイ(Day)、R.J、アンガー(Unger)、S.E.、クックス(Cooks)、R.G.Anal.Chem.(1980)52(4)557A)。ほとんどの目的に適したSIMS機器の一例は、ドイツ、ミュエンスターのイオントフ(IONTOF)GmbHにより市販されているトフシムス(TOF SIMS)IVである。
【0112】
SIMSは、分析物を高エネルギイオンビームに曝露することにより実施される。このプロセスにより、中性および帯電種の両方が放出される。帯電種は、使用可能な様々な型の質量分析計のいずれかにより分析することができ、分析情報が記録される。一定のサンプルに対し、様々なSIMS技術を実施することができる。低入射イオンフラックスを用いて静的SIMSを実施すると、分子イオンが形成し、これを使用して材料の分子組成を識別することができる。動的SIMSはより高い入射イオンフラックスを使用し、これにより分析物表面が腐食される。このプロセスを使用して、分析物の深さプロファイルを測定することができ、またはこのプロセスを使用して、材料をエッチングし、静的SIMSのために分析物を曝露させることができる。イメージングSIMSは、表面を横切る入射イオンビームをラスター化し、存在する種のマップを作成する。画像化されると、分析物の3−座標マップが作成される。このように、SIMS実験の様々な組み合わせを使用して、表面上、表面付近、またはサンプル中に埋もれた分析物を識別することができる。
【0113】
識別マーキングのために使用される材料は、SIMS技術によりマップされ、識別される。認証インジケータ材料がマークされている材料の表面上に位置する場合、静的SIMSを使用して、マークするのに使用された材料を識別することができ、一方、イメージングSIMSは、マイクロスケールの識別マーキングのマップを提供することができる。認証インジケータ材料が、マークされている材料の表面で埋め込まれている場合、動的SIMSはマークされている十分な量の材料を除去することができ、静的およびイメージングSIMSにより分析物を識別し、マップすることが可能となる。認証インジケータ材料が基質内に埋もれている場合、動的SIMSは分析物が埋もれている深さを測定し、他の技術により識別およびマップされるように分析物を曝露させることができる。
【0114】
測定することができる別の特性は、特別な元素の存在である。X線蛍光(XRF)を使用して、非破壊的に材料を特徴づけることができ、11またはそれ以上の原子番号、場合によっては、4またはそれ以上の原子番号を有する元素種の存在を識別するのに好都合である。適した機器および技術が当業者に周知であり、例えば、E.P.バーチン(Bertin)、「X線分光分析の原理と実際(Principles and Practice of X−ray Spectrometric Analysis)」、第3章、プレナムプレス(Plenum Press)、ニューヨーク(1970)において記述されている。例えば、塗装表面内の鉛などのアイテムの試験、または無機金属合金の分類のために現在存在するもののような、携帯用EDXRFユニットを使用してX線蛍光元素分析を実施することができる。そのようなユニットの特定の例としては、ニトン(Niton)によるXL−300シリーズ分光計またはオックスフォードインスツルメンツ(Oxford Instruments)によるホリゾン(Horizon)600分光計が挙げられる。
【0115】
X線蛍光は、二次放射により放射されるX線スペクトル線の波長および強度の測定に基づく、化学元素に対する定性および定量分析法である。高エネルギ源(すなわち、X線ビーム)からの一次ビームを対象の材料に照射すると、存在する各化学元素は、その元素に特有の波長(定性分析の基礎)および存在する各元素の濃度に関連する強度(定量分析の基礎)を有する二次X線スペクトル線を放射する。無機物または有機金属であると規定される材料では、XRFは、総組成物のμg/g(100万分の1、ppm)〜%(100分の1)の範囲の無機および有機金属材料を検出することができる。
【0116】
2つのXRF技術、波長分散型(WDXRF)およびエネルギ分散型(EDXRF)が一般に使用される。これらの技術は、例えば、R.ジェンキンス(Jenkins)ら、「定量X線分光法(Quantitative X−ray Spectrometry)」、8章、マーセルデッカー社(Marcel Dekker Inc.)、ニューヨーク(1981)において記述されている。WDXRFにより、より良好な感度(検出下限)およびオーバーラップしたX線発光ピークの分離が得られ、EDXRFにより、より迅速なデータ収集時間が得られる。
【0117】
これらの測定技術では、スウォッチは高エネルギ源により照射され、存在する元素種に特有の発光X線はX線検出器により示される。この方法は、様々な異なる型の基質を有するスウォッチに適しており、特別な準備は要らない。検出された原子種はナノ形態インジケータ材料の化合物内にあるとすることができ、または金属、塩、無機、または有機金属化合物の形態で、トレーサとして追加することができる。
【0118】
<顕微鏡技術>
特別な手順によっては、顕微鏡技術は、他の試験を改善し、補足し、またはそれにとって代わることができる。顕微鏡を使用して、バルク微粒子汚染のない部分を見つけることができる。その部分を検査し、インジケータ材料の予め選択した特性を検出する。予め選択した特性が測定される。測定値は参照プロファイルの閉集合のメンバーと一致する。以下のうちの1または複数が起きると認証は失敗する。バルク微粒子汚染のない部分がない、予め選択した特性がバルク微粒子汚染のない部分で検出されない、および参照プロファイルの集合のメンバーの1つと一致しない。
【0119】
バルク微粒子汚染は、予め選択した特性の測定を阻止する、または予め選択した特性の測定をユーザにより要求される信頼レベル内で信頼できないものにしてしまうのに十分な量のバルク状態粒子の存在である。第1の場合、予め選択した特性は測定できず、認証が不可能である。第2の場合、信頼レベルが、本物ではないアイテムが間違って認証されてしまう危険を示す。これは、基質の性質および状況によって変動する。
【0120】
微粒子汚染のない識別マーキングの一部を見つけるスウォッチの検査は、好都合な任意の様式で実施することができる。光学顕微鏡法は好都合な手順である。ナノ結晶微粒子のサイズ範囲の粒子は光学顕微鏡では視認できないからである。このように、光学的に検出された任意の粒子を、バルク状態材料として処理する。ここでの制限は、調合中にナノ結晶微粒子が凝集して塊にならないように、インク調合物を選択しなければならないことである。適当な材料の選択は、試行錯誤により容易に選択される。
【0121】
光学顕微鏡により決定されるようにバルク微粒子汚染が存在しないことに対する好都合な標準は、測定する識別マーキングの部分内に視認可能な粒子が存在しないことである。視認可能な粒子が識別マーキングの他の部分に存在することがある。それらの視認可能な粒子は、ナノ結晶粒子の塊、インク調合物の一部であるバルク状態顔料またはちりなどの汚染物質であるかもしれない。視認可能な粒子が何であるかを決定する必要はない。視認可能な粒子の有無は、それ自体、真正性を決定しない。
【0122】
特別な態様では、安全保障材料の顕微鏡検査は、サンプルを普通の顕微鏡スライド上に載置する工程と、品質光学顕微鏡(例えば、オリンパスBX−40)の100×対物レンズ(例えば、オリンパス(Olympus)MPlan100×/0.90)下に配置する工程とを含む。普通のタングステン−ハロゲン顕微鏡照明器を用い、透明サンプルは透過または反射状態で照射し、不透明なサンプルは反射状態で照射しなければならない。顕微鏡接眼レンズを用いて、または取り付けたビデオカメラからのモニタ上で観察して、サンプルに焦点を合わせ、照射レベルを最大可視化に調節する。その後、サンプル画像に対し、安全保障材料中に離散粒子が存在する証拠がないかについて検査する。認識できるものがなければ、上限粒子サイズは、1μm未満であると決定され、安全保障材料はナノ形態であると考えられる。
【0123】
バルク微粒子汚染のない識別マーキングの部分を見つけるために、直接的な目視検査を他の技術と組み合わせても使用することができる。この工程は、視認可能な粒子により汚れたスウォッチでは有益であり、さらに検査するために清浄な部分を見いだすことができないと、認証は失敗となる。
【0124】
バルク微粒子汚染をチェックするためのスウォッチの検査では、バルク微粒子汚染のない部分でのナノ結晶微粒子の存在を検出しても、しなくてもよい。最適な顕微鏡法および他の上記手順を用いると、ナノ結晶微粒子は、選択したマーキング部分(バルク微粒子汚染のない部分)において検出されないままである。ナノ結晶微粒子が検出されないままであると、次の工程はナノ結晶微粒子の検出となる。微粒子の特性は、検出工程と同時、またはその後に測定される。検出および測定は、選択した部分の位置決めとともに、連続手順の一部として実施することができる。
【0125】
圧縮流体印刷は、高速でのナノ結晶粒子の噴射を含む。かなり柔らかい基質、例えば紙を用いると、基質の表面および/または基質の細孔内に粒子を配置するのではなく、基質内に粒子を埋め込むこととなる。埋め込まれた指紋では、すなわち、基質内に粒子が分布していると、粒子の位置は、圧縮流体印刷中、粒子の運動エネルギ分布の関数となる。
【0126】
スウォッチの埋め込み指紋を、参照プロファイルとの比較において使用することができる。この場合の制限は、そのようなプロファイルは圧縮ガス印刷と一致するが、そのようなプロファイルは決定的ではないことである。そのようなプロファイルは他の技術、例えば非コロイド弾道エアロゾルの使用により模倣できる可能性がある。米国特許第6,116,718号では、非コロイド弾道エアロゾルを用いた印刷が開示されている。そのような技術の相対的な問題は、偽物のアイテムにおける使用を阻止する十分な負担を提供しやすいことである。
【0127】
他方、液体コーティングプロセスにより同様の埋め込み指紋を提供するのは非常に困難である。薄いコーティングは、液体コーティングプロセスによる2つの方法のうちの1つにおいて達成することができる。第1の方法では、湿性固着(レイダウン:laydown)が低く維持される。これにより薄い乾燥コーティングが得られる。第2の方法では、溶液または分散物中の固体が非常に低く維持され、そのため厚い湿性コーティングでさえも非常に薄い乾燥コーティングとなる。このアプローチは、x−y面で微粒子が不均一に分配されたむらのあるコーティングになる可能性がある。どちらの場合でも、異なるサイズの粒子のバンドが、塗布後コーティングを乾燥させるのにどれくらいかかるかによって、コーティングのz軸に沿って分離する。乾燥中のコート層の粘度は、コーティング内の粒子のz−方向の最終的な位置を決定する。このように、粒子が大きくなると、コーティングの底に移動する傾向があり、粒子が小さくなると上面に残る傾向がある。一定サイズの粒子は、全ての面に分配されるのではなく、z−方向では同じ面内に残る傾向がある。
【0128】
液体コート層における1または複数の層内でのこの一般的に均一な分布は、圧縮流体印刷および他の高エネルギプロセスにより提供される分布と対照的である。埋め込みパターンを使用する認証方法では、1または複数の層内での粒子の一般的に均一な分布は認証の失敗を示す状態である。
【0129】
測定した特性(埋め込み指紋)は、スウォッチ内の粒子の埋め込みパターンおよびサイズの組み合わせとすることができる。これを使用して、圧縮流体印刷を、非ナノ結晶サイズの固体微粒子がガスストリームに添加される高エネルギ印刷法と区別することができる。
【0130】
埋め込みパターンは電子顕微鏡で調べることができる。特別な態様では、FC4E冷凍付属部品を備えたレイチャート−ジャング(Reichert−Jung)ウルトラカット(ULTRACUT)E超ミクロトームを用いて、スウォッチを切断し超薄の冷凍乾燥切片とする。その後切片をグリッド上に配置する。切片をグリッド上に配置すると直ちに、冷凍チャンバ内でグリッドをグリッドホルダからピンセットを使用して取り除き、冷凍チャンバ内に配置した切片プレスに移動させ、切片をグリッドに押し付ける。ピンセットを用いグリッドをプレスから取り出し、冷凍グリッドホルダ内に置き、その後、冷凍グリッドキャリヤに移し、その後、冷凍移動試料ホルダ内に冷凍移動させるために液体窒素瓶内に移し、これを冷凍透過型電子顕微鏡(「TEM」)において使用して画像形成させる。TEMにより電子顕微鏡、例えば、120キロボルトで作動するフィリップス(Philips)CM12を用いて、顕微鏡写真を得ることができる。
【0131】
<特別な態様>
図11および12について説明すると、本方法の特別な態様は、吸収を測定し(26)、紫外−可視光バンドにおけるインジケータ材料の吸収のスペクトル(吸収対波長)を準備することから開始する。次に、スウォッチのルミネセンスパターン(発光強度対波長)が得られる(28)。励起は、前に準備した吸収スペクトルにより示される吸収極大で行う。最適顕微鏡法下でスウォッチを調べ(30)、スウォッチの試験した部分に、バルク微粒子汚染がないことを確認する。スウォッチはまた、有機金属または無機トレーサの存在についてX線蛍光により調べる(32)。スウォッチについてはまた、乾燥冷凍超薄切片法により超薄切片を準備し(34)、透過型電子顕微鏡下で調べ(36)、粒子サイズを確認する。
【0132】
試験手順の順は、初期のデータを後の手順において使用する、または現実的な配慮が提供された場合を除き、変更することができる。測定プロファイルを準備すると、一致が得られる、または集合が尽きるまで、参照プロファイルの集合のメンバーの各々と比較する。その後、指示がオペレータに提供されまたは自動手順がとられる。測定プロファイルと参照プロファイルとの比較は、試験が進行する間に始めることができ、初期に一致が得られると、さらなる試験および比較の繰り返しを省略することができる。
【0133】
別の態様では、個々の試験手順を上記のように変更することができる。本明細書で記述した試験手順の多くは特有の不確かさを有する。不確かさに対する高いしきい値では、測定プロファイルがいくかの試験で参照プロファイル値と一致することが必要であるかもしれない。より低い信頼性レベルで、サンプルの信憑性を決定するには全ての試験は必要ないかもしれない。例えば、図13に簡略化したアプローチを図示する。この場合、割り当てた参照プロファイルを、インジケータマーキングを読み取ることにより識別する(38)。ルミネセンスを測定する。予め選択した波長で励起し、またはインジケータにより励起を提示し、またはインジケータマーキングにより提供される英数字キーを使用してアクセスされるルックアップテーブルにより励起が提供される。前に記述したように、比較および指示/自動機能工程が提供される。
【0134】
いずれの場合でも、試験は、使用可能な試験が全て完了するまで、または測定したプロファイルが、較正決定の十分な確実性で一致または不一致の結果を作成する十分なデータを有するまで続けることができる。中間アプローチも、いくつかの試験が常に実施され、他の試験は必要な時にのみ実施されるという点で、実用的である。ここで考慮すべきことは、試験手順の自動化の容易さ、必要とされる機器のコストおよび複雑性とすることができる。試験はまた、階層で提供することができ、この場合、第1のレベルでの認証がチェックされ、1または複数のより高いレベルでは、必要に応じて実証される。同様に、認証システムは、認証アイテムの一定集団を用いて、既存の要求によって、異なる信頼性レベルで動作させることができる。
【0135】
<装置>
図14について説明する、システム200は、前に記述したような圧縮流体プリンタ205と、認証装置207とを含む。装置207はスウォッチ221を受理する試験ステーション230を有する。特別な目的のために要求される場合を除き、試験ステーション230の特別な構造は重要ではない。図に示した試験ステーションは、スウォッチを有するアイテムも移動させるトランスポーター(一対のローラおよびパレットとして図示)を有する。他の固定または移動試験ステーションを提供することができる。
【0136】
装置207は試験ステーション230に隣接して配置された検査ヘッド209を有する。検査ヘッド209は識別マーキングの1または複数の特性を確認し、測定プロファイルを提供することができる。検査ヘッド209は、識別に関し前に検討した1または複数の機能を有する識別ユニット201と、測定プロファイルの決定に関して前に検討した1または複数の機能を有する測定ユニット202とを備える。識別ユニットおよび測定ユニットの特定の例が、前に検討した機能を提供する機器により提供される。例えば、識別ユニットはバーコード読み取り機、紫外−可視光分光光度計、および/またはX線蛍光分光計を含むことができる。
【0137】
図示した態様では、識別ユニット201は、スウォッチに照射210するバーコード読み取り機を有する。バーコードによりモジュレートされた反射光211が読み取られ、応答信号が、識別ユニットにより、信号経路225に沿って制御ユニット218まで送られる。制御ユニットはマイクロプロセッサまたはプログラマブルコンピュータ、などである。識別ユニットにより提供された信号を使用して、参照プロファイルの集合を有するルックアップテーブル219にアクセスする。測定ユニットは識別マーキングに励起光線212を誘導する。ルミネセンス発光213が戻り、測定ユニット202内の分光計により分析され、信号経路に沿って制御装置218まで送られる測定プロファイルが得られる。制御装置内では、ルックアップテーブルにより提供された参照プロファイルと測定プロファイルが比較エンジン217内で比較され、信号がオペレータまたは他の応答動作(スピーカ241として図示)に提供される。図14では、比較エンジンはゲートとして図示されている。別の比較エンジンも当業者には周知である。
【0138】
本発明について、一定の好ましい態様を特に参照して詳細に説明してきたが、本発明の精神および範囲内であれば、変更および改変が可能であることは理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】認証スウォッチを有するドキュメントの正面図である。
【図2】図1のドキュメントの断面図である。
【図3】圧縮流体プリンタの1つの態様の概略図である。
【図4】開放位置で示した、図3のプリンタの放出装置および動作機構の概略図である。
【図5】閉鎖位置で示した、図4と同じ図である。
【図6】様々なスウォッチの例である。
【図7】様々なスウォッチの例である。
【図8】様々なスウォッチの例である。
【図9】様々なスウォッチの例である。
【図10】様々なスウォッチの例である。
【図11】方法の1つの態様の流れ図である。
【図12】図11の方法の確認工程の詳細な流れ図である。
【図13】図11の方法の改良の流れ図である。
【図14】認証装置の1つの態様の概略図である。
【図15】圧縮流体プリンタの別の態様の概略図である。
【図16】圧縮流体プリンタのさらに別の態様の概略図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、超臨界および圧縮流体印刷ならびにマーキング(marking)を認証するための方法および装置に関し、より特定的には、圧縮流体印刷されたスウォッチ(swatch)と共に用いるための認証法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マーキングおよびシールは、ドキュメントの性質または起源および他の項目を認証するために長く使用されている。意図的なおよび不測の誤用を阻止するために努力が続けられている。このため、2つのアプローチが一般に、別個にまたは組み合わせて取られている。1つのアプローチはマーキングにより伝達される情報へのアクセスの難易度を増加させるものである。もう一方のアプローチは、物理的にマーキングを再生する難易度を増加させるものである。
【0003】
第1のアプローチは一般に、暗号化を含むが、これには長所と弱点がある。典型的には、暗号の解読を困難にすると、その暗号を使用するのに必要な装置がより困難で複雑なものとなる。
【0004】
特定の装置を使用しないと読み取ることができない形態の符号化を提供することはよく知られている。機械により読み取ることができるコードまたは「シンボル(symbology)」は、視認可能であってもよく、目に見えなくてもよいが、読み取り、解読するには特別な装置が必要である。「シンボル(symbology)」または「複数のシンボル(symbologies)」という用語は、一般に、要素の空間パターンを示すのに使用され、この場合、各マークは確定形状を有し、空間により隣接する要素から分離される。情報は形状および/または空間により符号化される。「シンボル」という用語は、2−および3−次元バーコードおよび他のコードを含む。典型的には、読取機による解読情報出力を使用して、ルックアップテーブルなどにより他の情報が提供される。「ルックアップテーブル(look−up table)」という用語は、1または複数のコンピュータ・デバイスにおける論理的記憶の補数、および論理的記憶へのアクセスを制御、提供するために必要な装置およびソフトウエアの両方を示す。
【0005】
第2のアプローチ、マーキングの再生に対する物理的制限は、特別な技術により提供される出力により制限される。ある時には、刻印により、再生または模倣が困難な、または高くつく(expensive)出力が提供された。他の印刷技術を改善したものを用いても、刻印はそれ自体では、多くの認証目的に対しもはや十分ではない。
【0006】
圧縮流体溶媒を使用し、薄膜および粒子ストリームを作製する技術が知られている。本明細書では、「圧縮流体(compressed fluid)」という用語および同様の用語を使用して、超臨界流体および圧縮されているが、超臨界ではない他の流体の両方を示す。例えば、1988年3月29日に発行された米国特許第4,734,227号では、固体材料を圧縮流体溶液中に溶解させ、直ちに溶液を膨張させ粒子または膜を形成することにより、固体膜を堆積させ、または微細粉末を形成させるための方法が開示されている。
【0007】
超臨界流体クリーニング(Supercritical Fluid Cleaning)、J.マクファーディ(McHardy)およびS.サワン(Sawan)、編集、ノーイエスパブケーションズ(Noyes Publications)、ウエストウッド、ニュージャージー州(1998)、pp.87−120、第5章、題「超臨界流体中の界面活性剤およびマイクロエマルジョン(Surfactants and Microemulsions in Supercritical Fluids)」(K.ジャクソン(Jackson)およびJ.フルトン(Fulton)による)で記述されているように、超臨界CO2の使用が、有機クリーニング溶媒の代わりとして、特に逆ミセルまたはミクロエマルジョンと組み合わせて示唆されている。米国特許第5,789,505号、同第5,944,996号、同第6,131,421号および同第6,228,826号では、CO2−親和性部分および親水性部分、またはそうでなければCO2−疎性部分を有する界面活性剤と共に、溶媒として二酸化炭素を使用するクリーニングプロセスが記述されている。この場合、CO2および界面活性剤の組み合わせは、基質からCO2−疎性(親水性を含む)汚染物質を除去するのに有益である。米国特許第6,131,421号では、水が二酸化炭素および界面活性剤と共に含まれている場合の、親水性汚染物質を除去するのに有益な逆ミセル系の形成が記述されている。
【0008】
PCT特許公報WO02/45868 A2号では、圧縮二酸化炭素を用いた、ウエハ表面上でパターンを作成する方法が開示されている。その方法は、材料を、圧縮二酸化炭素を含む溶媒相に溶解または懸濁させる段階と、溶液または懸濁液をウエハの表面上に堆積させる段階とを含み、溶媒相を蒸発させるとパターニングされた材料堆積物が残る。ウエハを、リソグラフィーを用いて予めパターニングすると、親水性および疎水性領域を有するウエハが提供される。
【0009】
米国特許第6,471,327号では、30nm未満のサイズを有する有機材料粒子で印刷するのに適した方法が開示されている。本明細書では、「ナノ結晶(nanocrystals)」および「ナノ結晶の(nanocrystalline)」という用語ならびに同様の用語を使用して、10〜30nmの範囲のサイズを有する粒子を示す。ナノ結晶粒子は、平均/メジアン粒子サイズが30nm未満の粒子サイズ分布を有する。「バルク結晶(bulk crystal)」および「バルク微粒子(bulk particulates)」という用語ならびに同様の用語は、30nmを1または複数次元超える粒子および微粒子を示す。
【0010】
多型(polymorphism)は、大きな(バルク状態)有機/分子結晶の現象である。多型は同じ分子実体の多結晶構造として規定される(J.ベルンスタイン(Bernstein)およびJ.ヘンク(Henk)、「X線回折の工業的適用(Industrial Applications of X−ray Diffraction)」、25章、F.H.チャング(Chung)およびD.K.スミス(Smith)編、マーセルデッカー(Marcel Dekker)社(Inc.)、ニューヨーク、p.531−532(2000))。特定の有機/分子材料の多型バルク結晶は、異なる物理特性および機械特性、例えば、溶解度、色、吸収、発光、体積弾性率、などを有するバルク多結晶構造を示す。多型を示す物質の例は、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウムである。α、βおよびγとして識別される3つの多型は、M.ブリンクマン(Brinkman)ら、ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ(Jorunal of the American Chemical Society)、122巻、p.5147−5157(2000)で報告されており、紫外光で励起すると、αおよびβは黄色−緑色蛍光を示し、γは青色蛍光を示す(M.ブラウン(Braun)ら、ジャーナル・オブ・ケミカル・フィジックス(J.Chem.Phys.)、114巻(21号)、p.9625−9632(2001))。
【0011】
本明細書では、「ナノ形態(nanomorph)」および「ナノ形態微粒子(nanomorphic particulate)」ならびに同様の用語を使用して、バルク状態の同じ粒子または微粒子から変化した特性を示すナノ結晶粒子およびナノ結晶微粒子を示す。この定義のために、同じ粒子または微粒子は同じ化学化合物または同じ比率の複数の化合物により構成される。開始材料から決定されるように、分子量、および元素組成が同じであり、結晶、半結晶、またはアモルファスとすることができる。立体化学などの変化は考慮しない。特別な化合物により示されるナノ形態の型および数は、バルク結晶の同じ有機/分子材料の多型の型と数に直接相関しない。ナノ形態材料中の化学化合物は100〜100,000ダルトンの範囲の分子量を有する。
【0012】
ナノ結晶H−またはJ−凝集体を形成する有機化合物が、いくつかのハロゲン化銀系写真製品において使用される。H−およびJ−凝集体ナノ結晶は、バルク固体の性質とは異なる独特の特性を示す(A.ヘルツ(Herz)、Photog.Sci.Eng.、18巻、p.323−335(1974);E.ジェリー(Jelley)、ネイチャー(Nature)、138巻、p.1009−1010(1936))。このように、これらの材料はナノ形態である。
【0013】
下記はナノ結晶材料の調製および圧縮流体印刷を開示する参考文献の例である。米国特許第6,471,327号、米国特許出願公開番号第2003/0121447 A1号、米国特許出願公開番号第2003/0122106 A1号、米国特許出願公開番号第2003/0117471 A1号、米国特許出願公開番号第2003/0107614 A1号、米国特許出願公開番号第2003/0030706 A1号、米国特許出願公開番号第2002/0118246 A1号、米国特許出願公開番号第2002/0118245 A1号。これらはすべて、参照により本明細書に組み入れられる。他の例は、EP1 321 303 A1、WO03/006563 A1、WO03/053561である。
【0014】
【特許文献1】米国特許第4,734,227号明細書
【特許文献2】米国特許第5,789,505号明細書
【特許文献3】米国特許第5,944,996号明細書
【特許文献4】米国特許第6,131,421号明細書
【特許文献5】米国特許第6,228,826号明細書
【特許文献6】国際公開第02/45868号パンフレット
【特許文献7】米国特許第6,471,327号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第1321303号明細書
【特許文献9】国際公開第03/006563号パンフレット
【特許文献10】国際公開第03/053561号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
このように、特別な材料の調製に関する、物理的特徴に依存する認証方法および装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は請求の範囲により規定される。本発明は、より広い観点では、ナノ結晶材料を含む識別マーキングを認証する認証システム、装置および方法を提供する。マーキングの1または複数の特性を確認し、測定プロファイルを提供する。測定プロファイルを、参照プロファイルの閉集合の少なくとも1つのメンバーと比較する。各参照プロファイルは1または複数の特性の予め決定された値を有する。各参照プロファイルは集合内でユニークである。少なくとも1つの参照プロファイルはナノ結晶形態のインジケータ材料の特徴を示し、バルク形態の同じインジケータ材料の特徴を示さない。
【発明の効果】
【0017】
圧縮流体印刷または圧縮流体堆積生成物を使用した印刷により、意図的なおよび不測の誤用に対し物理的な制限を与える、認証スウォッチを提供する改善された方法および装置を提供することが本発明の有利な効果である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の上記および他の特徴ならびに目的、それらを達成する様式は、添付の図面と共に行った本発明の1つの態様の下記記述を参照すれば、より明白となり、本発明自体がよりよく理解されるであろう。
【0019】
圧縮流体印刷、ならびに圧縮流体により生成および堆積された微粒子を使用した従来の印刷の製品は、より単純なプロセスにより模倣することが困難ないくつかの特性を示す。認証法およびシステムは1または複数のそれらの特性を使用し、認証を提供する。改ざんに対しさらに複雑さおよび耐性を付加するために、様々な方法およびシステムは特性の組み合わせを使用することができる。さらに、方法およびシステムは、公知の認証法、例えば符号化の使用と組み合わせることができる。
【0020】
図1〜2について説明すると、印刷された圧縮流体または圧縮流体により生成および堆積された微粒子のスウォッチ10は、認証を必要とする基質12、例えば、通貨または流通証券、切手などの上に印刷することができる。基質12は予め決められた特性について試験することにより容易に認証することができる。それらの特性は容易に捏造することができない。識別マーキングにおいて使用した同じ化合物は、バルク状態で、および従来の印刷により使用されると、異なる特性を有するからである。
【0021】
基質は任意の固体材料、例えば、有機、無機、有機金属、金属、合金、セラミック、合成および/または天然ポリマ、ゲル、ガラス、または複合材料とすることができる。基質は多孔質または非多孔質とすることができる。基質は複数の層を有することができる。基質は予め決められたサイズのシートまたは連続ウエブとすることができ、複雑な三次元形状を有する物品とすることも可能である。基質は、それ自体で、または別の物品の一部として使用するためのものとすることができる。例えば、基質は別の物品に適用することができる粘着ラベルとすることができる。
【0022】
方法およびシステムについては一般的に、本明細書では、スウォッチ10、すなわち認証目的専用のドキュメントまたは他の支持体の一部、を有する基質12(ドキュメントまたは他の品目)の認証に関連して、説明する。スウォッチは分離した境界を有するものとして図示されている。これに限定されない。スウォッチは基質の残りと連続することができる。
【0023】
スウォッチの印刷部分は本明細書では、「識別マーキング(identification marking)14」と呼ばれる。方法およびシステムは、基質のほんの一部に局在するスウォッチ10との使用に限定されず、むしろ、基質の大部分および全体を占めるスウォッチを含む。そのような大きなスウォッチは典型的には拡散性であり、基質の他の使用を妨害しない。ドキュメントなどの上では、この型のスウォッチは時として「透かし(watermark)」と呼ばれる。識別マーキングを基質から取り除き、その後に分析する方法も認証に適用可能である。本明細書で記述したほとんどの目的に対し、取り除いた基質は材料の収集サンプルの形態をとることができる。
【0024】
方法およびシステムについては一般的に、本明細書で、圧縮流体を印刷した、または圧縮流体により生成される成分を含むインクまたは他の印刷媒体を使用して従来通りに印刷したスウォッチについても関連して、説明する。第1の場合では、スウォッチは圧縮流体印刷プロセスの人工物である特性を示す。どちらの場合でも、スウォッチは圧縮流体印刷または堆積により生成されるナノ形態特性を示す。これらの特性は認証法およびシステムにより使用される。便宜上、認証方法およびシステムは一般に本明細書では、ナノ形態特性を示す圧縮流体印刷スウォッチに関して、記述されている。従来通りに印刷された、圧縮流体により生成する成分を含むスウォッチに適用可能な方法および装置は文脈から明らかになるであろう。方法および装置はまた、特別な方法または装置に対し要求される特性を示すが、異なる方法により作成されるスウォッチおよびタガント(taggant)にも適用できる。
【0025】
圧縮流体印刷および圧縮流体により生成される微粒子の調製のための適した手順は、組み入れられた参考文献中で記述されており、以下で、様々なナノ形態材料およびスウォッチの調製と共に提供する。
【0026】
<圧縮流体印刷および圧縮流体により生成される微粒子の調製>
圧縮流体印刷および圧縮流体微粒子の堆積はナノ結晶材料の調製から開始される。圧縮流体印刷では、ナノ結晶微粒子は直接レシーバ上に堆積される。圧縮流体により生成される微粒子の堆積では、微粒子を収集し、インクまたは他の印刷媒体に添加し、その後、従来の印刷方法および装置を用いて印刷する。便宜上、「インク」という用語は、本明細書では、インクジェットインク、電子写真トナー、熱転写材料などを含む全ての種類の印刷材料を示す。ナノ結晶材料およびインク調合物は、取扱または使用中にインク調合物中でナノ結晶材料が溶解しないように選択される。
【0027】
ナノ結晶微粒子は、バルク状態の開始材料の非反応性処理により形成させることができる。開始材料はバルク状態ではなくナノ結晶状態、または両方状態の混合とすることができる。これにより、製品の再利用が可能となるが、通常、バルク材料の使用に比べ、都合がよくない。(便宜上、単一のバルク状態の化合物からなる開始材料について、下記において、一般に記述する。同様の考察が他の開始材料に適用される)。
【0028】
バルク状態開始材料をキャリヤ流体中に分散または溶解させる。キャリヤ流体は、圧縮ガス、液体および/または超臨界流体相で存在し、その密度は選択した温度および圧力状態で0.1g/cc以上である。キャリヤ流体は単一の圧縮流体または複数の圧縮流体の混合物である。開始材料を可溶化/分散させることができる1または複数の共溶媒または適した界面活性剤および/または分散剤材料を含有させることができる。
【0029】
堆積前に、キャリヤ流体を、バルク機能材料を圧縮流体中に溶解および/または分散させるのに適した温度および圧力で維持する。この前駆体調合物の減圧制御によりキャリヤ流体の蒸発およびナノ結晶微粒子の形成が起こる。
【0030】
キャリヤ流体として使用可能な材料としては、二酸化炭素、亜酸化窒素、アンモニア、キセノン、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、ブタン、イソブタン、クロロトリフルオロメタン、モノフルオロメタン、六フッ化硫黄、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。二酸化炭素は、好都合な特性、例えば、低コスト、有用性の広さなどのため、多くの用途において一般に好ましい
【0031】
本明細書で開示した特別な態様では、キャリヤ流体は二酸化炭素である。堆積前に、圧縮二酸化炭素流体を0〜100℃の範囲の温度および1を超える〜約400atm、より好ましくは150〜300atmの範囲の圧力で維持する。
【0032】
二酸化炭素は独特な物理的性質を有し、一般に、今日まで、CO2中でかなり溶解する材料は少数しか知られていない。かなり溶解するこれらの材料はCO2−親和性と呼ぶ。CO2中に実質的に溶解しない材料はCO2−非親和性と呼ぶ。
【0033】
圧縮CO2に溶解する開始材料を溶解させる。圧縮CO2に実質的に溶解しない開始材料は、連続圧縮CO2相中に、開始材料に対し親和性を有するCO2−親和性部分およびCO2−非親和性部分を有する界面活性剤の助けを借りて分散させる。前駆体調合物中に含まれる界面活性剤は開始材料および圧縮二酸化炭素と相互作用し、凝集系(ミセル集合体、マイクロエマルジョンを含むことができる)を形成するように選択される。この凝集系は、界面活性剤および開始材料分子を含む、平均直径が10nm未満である複数の凝集体が分散されたCO2連続相を含む。
【0034】
界面活性剤はバルク相に溶解可能な成分およびバルク相に溶解しない成分を含む両親媒性の実体である。水性(またはさらに言えば、非水性)媒体中での可溶化のために使用される従来の界面活性剤は、親水性および疎水性成分を含むものとして分類される。親水性部分は水溶性成分であり、疎水性部分は不水溶性成分である。この専門用語から引き出すと、本発明のプロセスにおいて圧縮CO2中でCO2−非親和性材料の凝集体の分散物を形成させるために使用すべき界面活性剤は、圧縮CO2相中に溶解可能なCO2−親和性部分および圧縮CO2相中に溶解できず、機能性材料に対し親和性を有するCO2−非親和性、機能性材料−親和性部分を含むものとして規定される。一般に、親水性成分はCO2−非親和性であるが、疎水性成分はCO2−親和性であっても、そうでなくてもよく、すなわち、圧縮CO2中で材料を可溶化させるために使用すべき特定の界面活性剤の選択(識別)の基準は、従来の液体(水性または非水性)相系中で使用される界面活性剤の知識のみを基本にすることはできない。
【0035】
本発明に従い使用してもよいCO2−親和性およびCO2−非親和性部分を含む代表的な界面活性剤としては、例えば、米国特許第5,789,505号、同第5,944,996号、同第6,131,421号、および同第6,228,826号において記述されているものが挙げられる。これらの開示内容は参照により本明細書に組み入れられる。本発明により使用される界面活性剤のCO2−親和性部分の意義は、界面活性剤をCO2バルク相中に導入することである。フルオロカーボン類およびシロキサン類が、一般に、界面活性剤中のCO2−親和性成分として機能する2つの好ましいクラスの材料として識別されている(例えば、「超臨界流体洗浄(Supercritical Fluid Cleaning)」、J.マクハーディ(McHardy)およびS.サワン(Sawan)、編、ノイエスパブリケーションズ(Noyes Publications)、ニュージャージー州ウエストウッド(1998)、pp.87−120、5章、上記引用、ならびに米国特許第5,944,996号、同第6,131,421号および同第6,228,826号を参照のこと)。最近発見された別の部分はポリ−エーテルカーボネート界面活性剤である(サーブ(Sarbu)、T.、スチランス(Styrance)、T.、ベックマン(Beckman)、E.J.、「低圧に至るまで超臨界CO2中で高い溶解度を有する非フルオラスポリマ類(Non−Fluorous Polymers with Very High Solubility in Superctirical CO2 down to Low Pressures)」、ネイチャー(Nature)(2000)、405、165)。CO2中で表面活性特性を示すアセチレンアルコール類およびジオール類が米国特許第5,789,505号において記述されている。
【0036】
CO2−非親和性基の例としては、様々な官能基を含む分子ユニット、例えばアミド類、エステル類、スルホン類、スルホンアミド類、イミド類、チオール類、アルコール類、ジエン類、ジオール類、酸類(例えばカルボン酸、スルホン酸、リン酸)、酸類の塩類、エーテル類、ケトン類、シアノ類、アミン類、第四アンモニウム塩類、およびチアゾール類、ならびにエチレン、α−オレフィン類、スチレン系類、アクリレート類、エチレンおよびプロピレンオキシド類、イソブチレン、ビニルアルコール類、アクリル酸、メタクリル酸、およびビニルピロリドンなどのモノマ類から形成される脂溶性、親油性、および芳香族ポリマ類またはオリゴマ類が挙げられる。本発明により使用される界面活性剤のCO2−非親和性部分の意義は、機能性材料に対し親和性を有するこの部分の正しい選択により、対象となるCO2不溶性機能性材料(親水性であろうと疎水性であろうと関係なく)および圧縮CO2相に分散させた界面活性剤を含む凝集体の形成が可能となる。イオン性または他の親水性基を含む機能性材料を分散させるために、界面活性剤のCO2−非親和性、機能性材料−親和性部分を、公知の親水性基および特にイオン性官能基の中から有利に選択してもよい。
【0037】
本発明のプロセスにおいて有益であるかもしれない市販のフルオロカーボン系界面活性剤(しばしばペルフルオロポリエーテル)の例としては、フォムブリン(Fomblin、商標)(アウジモント モンテジソン(Ausimont Montedison)グループ)、フルオロリンク(Fluorolink、商標)(アウジモント)およびクリトックス(Krytox、商標)(デュポン(Dupont))ファミリーの界面活性剤が挙げられる。本発明において使用するために特に好ましい界面活性剤としては、フルオロリンク7004(商標)(アウジモントモンテジソングループ)およびフォムブリンMF−300(商標)(アウジモント)が挙げられる。本発明に従い使用してもよいシロキサン系界面活性剤(しばしば、ポリジメチルシロキサン)の記述および例としては、米国特許第6,228,826号において記述されている末端官能性ポリシロキサン界面活性剤が挙げられる。
【0038】
開始材料は、圧縮二酸化炭素にかなり溶解可能な種から選択することができる。かなりの溶解度とは、前駆体調合の温度および圧力での、圧縮二酸化炭素における0.010重量%(wt%)を超える、より好ましくは0.5wt%を超える溶解度を意味するものとする。温度は好ましくは、−100〜+100℃の範囲であり、圧力は1×10-8〜1000atmの範囲である。そのような材料は、有機、有機金属、ポリマ、オリゴマ、合成および/または天然ポリマ、ならびに前述したこれらの複合材料などの型としてもよい。開始材料は、例えば、染料または顔料、農薬、市販の化学薬品、精製化学製品、食品、栄養素、殺虫剤、写真薬剤、火薬、化粧品、保護剤、金属コーティング前駆体、または望ましい形態が堆積フィルム、微粒子分散物、または粉末である他の工業用物質とすることができる。染料および顔料は、圧縮流体印刷および圧縮流体堆積材料のための好ましい開始材料である。
【0039】
さらに、CO2中に不溶性の、またはやや溶けにくい開始材料は、CO2−親和性基、例えば、フルオロカーボン類、シロキサンおよび他のCO2−親和性部分を用いて官能基化することができ、そうすると、界面活性剤の助け無しで直接分散および/または溶解させることができる。
【0040】
調合物を製造するために使用してもよい装置は、係属中の米国特許出願第09/794,671号(参照により本明細書に組み入れられる)に開示されている。追加の適した装置は、米国特許第4,582,731号、同第4,734,227号、同第4,582,731号、同第4,734,451号、同第5,301,664号、同第5,639,441号、同第6,177,103号、同第6,299,906号および同第6,316,030号において記述されている。
【0041】
装置において、開始材料を制御可能なように調合リザーバ中に、好ましくは粉末形態で導入する。圧縮CO2流体もまた、制御可能なように調合リザーバに導入する。調合リザーバの中身を、混合装置を用いて混合し、開始材料と、もし使用していれば界面活性剤と、圧縮流体とが確実に密接に接触するようにする。混合が進むにつれ、開始材料は圧縮流体中に溶解し、または分散される。この溶解または分散プロセスは、存在する開始材料、開始材料の最初の粒子サイズおよび粒子サイズ分布(固体として供給される場合)、調合リザーバ内の温度および圧力に依存する。溶解または分散プロセスが完了すると、熱力学的に安定または準安定な状態に到達し、リザーバ内の温度および圧力の熱力学的条件が変化しなければ、調合チャンバ内では開始材料粒子の沈降、沈澱、および/または凝集はほとんどなく、またはまったくない。得られた溶液または分散物はまた、本明細書では、「準備流体(ready fluid)」と呼ばれる。
【0042】
準備流体を急速に減圧すると、開始材料がナノ結晶堆積物として沈澱する。圧縮CO2は減圧中にガス化する。減圧はノズル(下記)内で起きる。減圧は真空または雰囲気空気または選択した雰囲気中で起こすことができる。
【0043】
沈澱したナノ結晶材料のサイズは、ノズルのオリフィス、温度、圧力、流速、溶液/分散物中の濃度、ならびにCO2−非親和性材料の場合、界面活性剤および開始材料の相対濃度を変化させることにより調節することができる。
【0044】
沈澱したナノ結晶微粒子は直接、レシーバ上に噴射/堆積させることができ、すなわち、圧縮流体が印刷され、またはナノ結晶微粒子のストリームを、遊離微粒子として獲得および保持することができる。これは、材料の沈澱ストリームを非溶媒液中に導入することにより容易に達成することができる。溶媒を直ちにまたはすぐに蒸発させると、ナノ結晶微粒子が得られる。ナノ結晶微粒子をその後、インク調合物に、実質的には顔料として添加することができる。
【0045】
圧縮流体印刷装置は、入口および出口を有する放出装置を含むプリントヘッドを有する。放出装置の一部が送達経路を規定する。放出装置の一部が調合リザーバに、前に記述したように、解除可能に接続されるように適合される。放出装置は、流体が放出装置の出口を越えた位置ではガス状となるように、インジケータ材料の適した形状のビームを生成するような形状とされる。放出は、ドロップ・オン・デマンドおよび連続インクジェットプリンタと同様の様式で制御することができる。
【0046】
下記の特別な態様では、プリンタは異なる色または異なるスペクトル効果の波長範囲を提供する。プリンタはまた、単一のスペクトル範囲に限定することができる。プリンタはまた、3またはそれ以上の異なる「インク」を使用することができる。各「インク」は単一のナノ結晶材料に限定することができ、または複数の材料を組み合わせることができる。
【0047】
図3について説明すると、圧縮流体印刷装置は、プリントヘッド103を有し、プリントヘッド103は放出装置105と動作機構104とを含む。媒体輸送体(media transport)150(ドラムとして図示)は、基質106を、印刷中にプリントヘッド103の使用位置と隣接して配置する。媒体輸送機構は周知であり、使用する特定の型は重要ではない。例えば、媒体輸送体150はx−y並進ステージ、または一連のローラをドラムの代わりに使用することができる。図示した態様では、プリントヘッド103は1方向に移動し、ドラムは第2軸の移動を提供し、二次元プリントが作成される。代用として、プリントヘッドを基質に対し移動させることができる。
【0048】
システムは、圧縮流体供給源100から、チューブ101、110、調合リザーバ102a、b、c、材料選択装置160を通って、プリントヘッド103まで高圧下にある。チューブは剛性または可撓性とすることができるが、高圧のため、可撓性チューブ110を除外することが望ましいかもしれない。大きな壁厚および曲げ半径が必要となるかもしれないからである。可撓性チューブ110の例としては、ミシガン州ウィクソン所在のコードインダストリアル(Kord Industrial)から入手可能なチテフレックス(Titeflex)超高圧ホースP/N R157−3(内径0.110、4000psi、曲げ半径2インチ)が挙げられる。このホースは全ての態様においては適していないかもしれない。例えば、使用位置からクリーニングおよび較正ステーション162の位置までプリントヘッドが移動させられる場合、ホースは問題となるかもしれない。
【0049】
この態様では、複数の色が、同時ではなく、順次印刷される。この方法は、あらゆる画素部位であらゆる色に対し動作機構104および放出装置105の組み合わせ全てを使用するという利点があり、このため、プリントヘッドの解像度が最大となる。プリントヘッド103および媒体輸送体150が、材料選択装置160により第1の色を選択することにより、調合リザーバ102aから第1の色を印刷する。プリントヘッド103はその後、クリーニング/較正位置まで移動する。ライン110およびプリントヘッド103内の残った着色剤は、その後、材料選択装置160により純粋な圧縮流体100を選択することによりステーション162内にパージされる。その後、プリントヘッド103は媒体輸送体150に位置する印刷位置に戻り、材料選択装置はその後、調合リザーバ102bを選択し、第2の色が印刷される。ライン110およびプリントヘッド103は前と同じようにパージされ、必要とされる色が全て印刷されるまでプロセスが繰り返される。3つの調合リザーバ102a、b、cおよび純粋な圧縮流体が図示されている。本発明は、追加の色を含む任意の数の「色」まで拡張可能であり、全範囲(gamut)または効率、プレコート、オーバーコート、などが改善されることは認識される。この方法は、正確な色の位置あわせを維持するプリントヘッドおよび基質トランスレータの機械的な移動における十分な精度に依存する。別のプリントヘッドは、同時に調合リザーバの全てから、カラーインクジェットプリンタと同様の様式で印刷することができる。
【0050】
インジケータ材料がラインから完全にパージされたかどうかを決定するために、およびプリンタを較正するために、クリーニング/較正ステーション162にセンサ163を備えることができる。プリンタが始動し、インジケータ材料または媒体が変更され、重要な印刷ジョブを実施させる前に、またはプリンタの較正がなくなると、そのような較正が実施される。センサ163は放出装置から出てくる材料ストリームを検査することができ、または二次動作において使用され、試験媒体の一片上のストリームにより生成される密度または色を見ることができる。プリンタ較正を実施するための印刷走査および較正アルゴリズムは印刷業界では周知である。
【0051】
特別な態様では、プリントヘッド103内の放出装置105は、図4〜5で示されるように、第1の一定領域セクション120、続く第1の可変領域セクション118を含む。第2の可変領域セクション122は一定領域セクション120から放出装置105の端まで発散する。第1の可変領域セクション118は第1の一定領域セクション120に収束する。第1の一定領域セクション118は第1の可変領域セクション120の出口直径に実質的に等しい直径を有する。また、放出装置105は可変領域セクション122後に配置された第2の一定領域セクション125を含む(図示せず)。第2の一定領域セクション125は可変領域セクション122の出口直径に実質的に等しい直径を有する。さらに、少なくとも1つの追加の可変領域セクションを第1の一定領域セクション120の一端に接続させることができる。この型の放出装置105はニューヨーク州イーストオーロラ所在のムーグ(Moog)、カルフォルニア州サンラモン所在のヴィンダムエンジニアリング社(Vindum Engineering Inc.)から市販されている。
【0052】
動作機構104が放出装置105内に、開放位置と閉鎖位置との間で移動可能なように配置され、図4〜5に示されるように密閉機構130を有する。閉鎖位置では、動作機構104における密閉機構130が一定領域セクション120と接触し、放出が阻止される。開放位置では、堆積が起きる。動作機構104はまた、特別な印刷用途、所望の堆積速度などにより、様々な部分的に開いた位置に配置することができる。また、動作機構104は開放位置および閉鎖位置を有する電磁弁とすることができる。動作機構104が電磁弁である場合、放出装置を通過する質量流量を制御する追加の位置制御可能な動作機構をも含むことが好ましい。動作機構104は複数の周波数で動作可能である。
【0053】
好ましい態様では、放出装置105の第1の一定領域セクション120の直径は約10μm〜約2,000μmの範囲である。より好ましい態様では、放出装置105の第1の一定領域セクション120の直径は約10μm〜約20μmの範囲である。さらに、第1の一定領域セクション120は、印刷用途により、第1の一定領域セクション120の直径の約0.1〜約10倍の予め決められた長さを有する。密閉機構130は様々な形状を有することができ、例えば円錐または円板形状である。
【0054】
再び図3に戻ると、圧縮流体プリンタ205は、選択したキャリヤ流体と開始材料を圧縮流体状態にし、溶液および/分散物を生成し、準備流体を平行ビームおよび/または集束ビームとして、制御された様式で基質106上に送達する構成要素100、102、103および104を有する。
【0055】
図3の調合リザーバ102a、b、cを使用して、開始材料をキャリヤ流体中に、分散剤および/または界面活性剤を用いて、または用いずに、温度、圧力、体積および濃度の望ましい調合状態で、溶解および/または分散させる。図3の調合リザーバ102a、b、cは、調合条件で安全に動作することができる任意の適した材料から作製することができる。圧力が0.001気圧(1.013×102Pa)〜1000気圧(1.013×108Pa)および−25℃〜1000℃の動作範囲が一般に好ましい。典型的には、好ましい材料としては、様々なグレードの高圧ステンレス鋼が挙げられるが、特定の堆積用途が温度および/または圧力状態に極端に影響しなければ、他の材料を使用することが可能である。
【0056】
図3の調合リザーバ102a、b、cは、動作条件(圧力、温度および体積)に対し十分制御するべきである。開始材料の溶解度/分散性は、調合リザーバ102a、b、c内の条件に依存する。そのようなものとして、調合リザーバ102a、b、c内の動作条件の小さな変化は、インジケータ材料溶解度/分散性に望ましくない影響を有することがある。開始材料およびキャリヤ流体は、制御可能に、調合リザーバ102a、b、cに導入することができる。混合装置を用いて混合し、全ての材料間での密接な接触を確かなものとする。
【0057】
溶解および/または分散プロセスは、使用した材料、粒子サイズおよび分布(固体の場合)、リザーバ内への導入状態、温度および圧力に依存する。混合プロセスが完了すると、インジケータ材料が圧縮流体中に溶解または分散され、調合チャンバ内の温度および圧力が一定に維持されるように永久に維持されるという点で、溶液/分散物は熱力学的に安定/準安定である。この状態は、リザーバ内の温度および圧力の熱力学的条件が変化しなければ、調合チャンバ内では粒子の沈降、沈澱、および/または凝集がないという点で、他の物理混合物と区別される。そのようなものとして、準備流体は熱力学的に安定/準安定ということができる。準備流体は、調合リザーバ102a、b、cから、材料選択装置160を通して、制御可能に放出される。材料選択装置160は熱力学的に安定/準安定な混合物または調合物のどれを、動作機構104を介して放出装置105まで流すかを制御する。図3に示した材料選択装置160は、4つの入力および1つの出力を有する。入力は調合リザーバ102a、b、cおよび圧縮流体供給源100に接続される。1つの単純な形態では、材料選択装置は、プリントヘッド104上で使用される型の4つの個々の装置とすることができ、これらは、先に述べたように、ニューヨーク州イーストオーロラのムーグ、カリフォルニア州サンラモンのヴィンダムエンジニアリング社から市販されている。これらの4つの装置の出力は、プレナム(plenum)により可撓性ホース110に結合される。
【0058】
放出プロセス中、沈澱したインジケータ材料は、ビームとして基質に向かって進み、好ましくは集束および/または平行化される。沈澱および/または凝集インジケータ材料ストリームのサイズが放出装置105の出口直径と実質的に等しい場合、沈澱および/または凝集インジケータ材料ストリームは放出装置105により平行化されている。沈澱および/または凝集インジケータ材料ストリームのサイズが放出装置105の出口直径よりも小さい場合、沈澱および/または凝集インジケータ材料ストリームは放出装置105により集束される。
【0059】
複数の放出装置105を共に作製し、複数のビームを提供するプリントヘッドを形成させることができる。放出装置を制御し、放出装置105の内側および/または外側で圧縮流体を蒸発させることができる。
【0060】
基質106の、動作機構104を有する放出装置105からの距離は、圧縮流体が基質106に到達する前にガス相に到達するように選択される。このため、その後のレシーバ乾燥プロセスは必要ない。基質106は電気的または静電的に帯電させることができ、そのため、レシーバ106中のインジケータ材料の位置を制御することができる。
【0061】
インジケータ材料の個々の粒子が動作機構104を有する放出装置105から噴射される速度を制御することが望ましい。プリントヘッド103内部から動作環境までかなりの圧力降下が存在するので、圧力差により、プリントヘッド103のポテンシャルエネルギがインジケータ材料粒子を基質106内まで推進する運動エネルギに変換される。許容される運動エネルギで、粒子は表面層またはそれより下のレシーバ内に埋め込まれる。許容されない運動エネルギでは、粒子はレシーバを通り抜ける。
【0062】
前に記述したプリンタ構造内では、各色に対しグレースケールレベルを提供することができる。圧縮流体印刷を用いると、ほとんど無限の数の色を達成することができる。これらの色は、クリーニングおよび較正ステーション162で実施する較正に応じて、ルックアップテーブルによりそれらの名目値から修正することができる。動作機構により決定される各着色剤に対する可変印刷継続時間を用いると、可変量の着色剤を印刷されるあらゆる画素に送達させることができる。そのような結果は、着色剤濃度などの、圧縮流体系における他の変数により達成することもできる。ドット面積を変動させることも、異なるレベルの色を達成する1つの方法である。
【0063】
図15について説明すると、別の圧縮流体印刷装置を使用して、連続可変ナノ形態特性を有するスウォッチを作製することができる。例えば、1または複数の調合リザーバ内で、および/または、1つのマーキング材料を使用して複数の色および/または複数の色あいを有する物品を生成する材料噴射中に、圧力を変動させることにより、マーキング材料の反射スペクトルピークを変動させることができる。他のプロセスパラメータ、例えば、温度、および材料(溶質および/または分散剤)濃度を変動させても同様の効果が得られる。(便宜上、図15〜16の下記記述は、反射スペクトルピークのみに関するものである。同じ因子に依存する他のナノ形態特性は同様に変動させることができる)。
【0064】
図15にまた戻ると、送達システム312は、圧縮流体の供給源100、主調合物混合タンク300、最高圧送達タンク301、中圧送達タンク302、および最低圧送達タンク303を含む。流体供給源100およびタンク300、301、302、303は高圧チューブ101を通して流体接続される。送達システム312により、選択したマーキング材料を、0.1g/cc3を越える密度を有する圧縮流体中に溶解および/または分散させることができる。
【0065】
送達システム312により、プリントヘッド323に、マーキング材料の溶液および/または分散液が異なる圧力条件下で供給され、その溶液および/または分散液により同じマーキング材料から異なる色が生成される。図15に示した態様では、プリントヘッドにマーキング材料を3つの異なる圧力で供給するために、3つのタンク301、302、303が示されている。要望通り、送達システム312に追加のタンクを組み入れることができ、またはより少ないタンクを組み入れることができる。
【0066】
堆積中、ノズル401(最高圧送達タンク301に接続された1または複数のノズルの例)を通して噴射されるマーキング材料により第1の色のマーキング材料が生成する。ノズル402(中圧送達タンク302に接続された1または複数のノズルの例)を通して噴射されるマーキング材料により第2の色のマーキング材料が生成する。ノズル403(最低圧送達タンク303に接続された1または複数のノズルの例)を通して噴射されるマーキング材料により第3の色のマーキング材料が生成する。中圧タンク302および低圧タンク303内の圧力を減少させるために、一般に入手可能な条件制御装置310を使用する。圧力調節システムの場合、これらの装置は圧力調節弁である。適した条件制御装置310の1つの型は一般に、減圧弁と呼ばれ、例えば、オハイオ州ノーウッド所在のケイデル・サプライ社(Keidel Supply Co.)、テキサス州ヒューストン所在のチコバルブズ・アンド・コントロールズ(Tyco valves and Controls)から市販されている。この構造では、送達システム312は、材料が噴射されると典型的に圧力変動が起きたとしても、個々のタンク301〜303内の圧力が最適レベルに維持できるという点で、自動制御システムである。さらに、圧力に関する条件制御については減圧弁を参照して記述してきたが、圧力を制御する他の方法(例えば、圧力を生成および/または減少させる方法)が存在する。例えば、圧縮流体の個々の供給源は、異なる圧力でシステムに提供することができる。
【0067】
システムを温度について設計する場合、条件制御装置310は温度制御装置または任意の他の適した条件制御機構とすることができる。例えば、温度制御装置は加熱機構(加熱コイルなど)および/または冷却機構(ウォータージャケット、など)を含むことができる。同様に、システムが溶質濃度を基に動作する場合、送達タンクはそれぞれ、様々な濃度のマーキング材料を含む。
【0068】
送達システム312は、図16に示されるように、一定圧力送達タンク301〜303、およびより多くの色を生成するために追加の圧力を提供するように動作中に調節することができる条件制御装置310を使用して、変更することができる。圧力変動を使用して、用途に応じ、色域および/または色あいを増加させることもできる。送達システムはまた、調合を連続して変動させるようにも変更することができる。他の構造も可能である。例えば、異なる調合物を連続して、または同時に印刷することができる。基質106へのマーキング材料の浸透深さもまた変動させることができる(例えば、米国特許出願US2003/0030706 A1を参照のこと)。
【0069】
<スウォッチ>
図6〜10は認証法およびシステムにより使用することができる、異なる型のスウォッチのいくつかを図示したものである。図6はナノ結晶材料の連続および均一堆積物である。この特別なスウォッチは識別マーキングの存在に関して、はい/いいえ(yes/no)情報を提供する。図7は、印刷中にイメージ通り(imagewise)に調節された均一色のグレイスケール堆積物であり、ヒトが読み取ることができる情報、例えば記号または英数字メッセージを提供する。このスウォッチは識別マーキングの位置のより顕著な表示を提供し、図6のスウォッチよりも多くの情報を有する。調節では、グレイスケール変化または色の変化あるいは材料の変化を使用することもできる。図8は(単純化した形態で)、同様に調節し、機械で読み取ることができる2次元バーコードを形成させたスウォッチを示したものである。このスウォッチはかなり大量の情報を含むことができる。図9は機械で読み取ることができるバーコード、記号、および英数字文字列を組み合わせたスウォッチを示したものである。バーコードおよび英数字文字列を暗号化し、追加の安全保障レベルを提供することができる。図10は4つの四角からなる長方形パターンの形態のスウォッチを示したものである。各四角は、異なるナノ結晶材料および/または異なるナノ形態/圧縮流体印刷特性を有する。この特徴、連続するまたは段階的な、ナノ形態/圧縮流体印刷特性の変動を、前の図面のスウォッチの特徴と任意に組み合わせて使用し、安全保障を増強させ、またはさらなる情報を提供することができ、あるいはその両方が可能である。
【0070】
<特定のスウォッチの調製>
調合リザーバに100mgの銅フタロシアニン(以後、CuPcと呼ぶ)、および196gのCO2を入れた。その後、リザーバを60℃まで350atmで加熱した。その後、CO2とCuPcの混合物を激しく撹拌し、固体材料全てをCO2に溶解した。材料が圧縮流体CO2に完全に溶解した後、撹拌機を止め、系を少なくとも5分間撹拌しなかった。15mlのイソプロピルアルコール(以後、IPAと呼ぶ)を含むガラス瓶を拡張室(expansion chamber)内の中細ノズルの開口の真下に配置した。その後、ガラス瓶を一時的にプラスチックシートで覆った。プラスチックシートはいずれの噴霧物質にも曝露されないようにするシャッタとして機能した。その後、リザーバに接続されたニードル弁を開くと、目視観察により決定される、定常噴霧の最小流が得られた。このプロセスにかかる時間は通常1分以内であった。流量が一定になった後、プラスチックシートを取り除き、沈澱CuPcを含むジェット噴霧をIPAガラス瓶内に5分間誘導した。チャンバ内部の圧力はずっと350atmに維持した。IPAに不溶のCuPcは、このプロセスでは、IPAに分散され、安定な分散物が生成した。
【0071】
CuPc分散物を石英スライド(2.5インチ×2.5インチ)上に下記のように印刷した。石英ガラスプレートをノズルの先端から2.25インチの距離で平坦に保った。その後、石英ガラスプレートを一時的にプラスチックシートで覆った。プラスチックシートはいずれの噴霧物質にも曝露されないようにするシャッタとして機能した。その後、ニードル弁を開くと、目視観察により決定される、定常噴霧の最小流が得られた。このプロセスにかかる時間は通常1分以内であった。シャッタを取り除き、石英ガラスプレートを噴霧に曝露すると、CuPcが石英基質上に堆積した。堆積プロセスを5分間続け、その後、ニードル弁を閉じた。このようにCuPcでコートした石英プレートをデシケータ内で保存した。
【0072】
<参照プロファイル集合>
図11〜13について説明すると、認証方法では、識別マーキングの1または複数の特性が確認され(20)、測定プロファイルが提供される。測定プロファイルは閉集合の参照プロファイルの少なくとも1つのメンバーと比較される(22)。各参照プロファイルは測定特性の予め決められた値を有する。各参照プロファイルは集合内でユニークである。参照プロファイルの少なくとも1つは、ナノ結晶形態のインジケータ材料の特徴を示し、バルク形態の同じインジケータ材料の特徴を示さない。
【0073】
各プロファイルは、1つの特性に関する全ての入手可能な情報に対し、1または複数の特性の完全な分析または減少させたデータ集合を含むことができる。例えば、1つのルミネセンス特性に対し1つのスペクトルを提供することができ、または、1つのプロファイルを、1つの特別な波長または複数の波長での強度に限定することができる。
【0074】
比較工程では、測定した特性の値を、予め決められた参照プロファイルの集合のメンバーの各々と、一致するまで、または一致が見られなくなるまで、繰り返し比較する。比較は、オペレータが実施することができ、または自動化することができる。測定した特性が、サンプリング誤差、機器公差、などに基づく予め決められた範囲内にあれば、比較は一致ということになる。
【0075】
測定をした機器から直接データを受け取るプログラムされたパーソナルコンピュータにより、測定値の予め決められた値の集合との自動化比較を提供することができる。この目的に適したコンピュータソフトウエアおよびハードウエアは当業者には周知である。
【0076】
比較では、測定したプロファイルは、参照プロファイルの集合の1つのメンバーと一致し、または一致しない。一致の有無に応じて、オペレータに、または自動機能の入力として指示が提供される(24)。オペレータへの指示は、好都合な様式で提供することができる。例えば、指示はオペレータに、ディスプレイ上のテキストメッセージにより視覚的に、および/または可聴表示により、提供することができる。自動機能への指示の提供は、手順を中止する、または別の手順を開始する論理フラグの形態とすることができる。自動機能の例は、一致/不一致指示に基づく提示したチケットまたは紙幣の自動販売機の受理または返却である。
【0077】
参照プロファイルのその集合の任意のメンバーへの一致に対しては同じ指標を提供することができ、または異なる参照プロファイルへの一致に対しては異なる指標を提供することができる。後者のアプローチは、予測される偽物を識別するための効率的な方法として使用することができる。一致が得られると比較が中止となるからである。例えば、偽物は、ナノ結晶形態の代わりに材料のバルク形態を使用していることが予測される。この場合、ナノ結晶形態の指示材料の参照プロファイルへの一致は、事実上スウォッチを本物であると認めることを示し、一方、バルク形態の同じインジケータ材料の参照プロファイルへの一致はスウォッチが偽物であることを示す。
【0078】
参照プロファイルの集合は閉集合であり、特別な識別マーキングが1つの集合内にある、またはないことが保証される。この保証は、損傷したまたは劣化したマーキングは一致しない可能性があるという制限を受けやすい。提供することができる、異なる識別マーキングの数は非常に大きい。特別な集合の参照プロファイルのサイズは、必要とされる安全保障レベル、比較に使用できる時間、測定プロファイルを得るのに使用される構成要素の精度に基づき、実質的に決定される。最も簡単な場合では、参照プロファイルの集合は1つのメンバーを有する。これを使用して、パッケージ製品上の品質指標に対する、および暗号化した英数字アクセスコードに対し安全保障の追加のレベルを提供してもよい。
【0079】
参照プロファイル集合は単一メンバー、またはナノ結晶形態の単一インジケータ材料およびバルク形態の1または複数のインジケータ材料に限定することができる。また、参照プロファイル集合内のインジケータ材料は全て、ナノ結晶形態とすることができる。
【0080】
参照プロファイル集合のメンバーは特別な認証システムに対し予め決定される。1つの集合においてどのインジケータ材料を使用するかは、認証を受けた基質の予測される使用により示される要求およびそのシステムにおいて提供される試験装置の制限に基づき、経験的に決定することができる。インジケータ材料は、特別なシステムに対し、ナノ結晶形態のその材料が、同じインジケータ材料のバルク形態から、その系で使用される他のインジケータ材料から、およびシステムにより提供されるスウォッチを模倣する偽造者により使用される可能性のある材料から容易に識別することができる場合にのみ、特別なシステムに対し許容される。後者の材料は、部分的にコストに基づき評価することができる。偽造者は、偽物がオリジナルよりも高くなるような経済的にそんなに高額な材料を使用するとは考えられない。
【0081】
<測定プロファイル>
測定プロファイルは、ナノ結晶形態のインジケータ材料を他の材料と区別する1または複数の特性に対する値を有する。1または複数の特性は、ナノ結晶微粒子の特徴、それ自体または基質と組み合わせたものとすることができる。前者の例は特別なルミネセンスパターンである。後者の例は埋め込みパターンである(どちらも下記で詳細に記述する)。
【0082】
測定した1または複数の特性は、識別マーキングのインジケータ材料を完全に特徴づけることができ、または参照プロファイルの集合のメンバーに関してのみ識別材料を特徴づけることができる。ここで考慮するのは、ユーザにより必要とされる信頼レベルである。模倣が十分困難で考えることができない、または使用するのに実際的でない場合、模倣が可能な特性は、いくつかの状況では許容されるかもしれない。この例は、マーキングの模倣に費用がかかる場合、および比較的安価な製品上に使用されている場合である。
【0083】
測定した1つのまたは複数の特性は識別マーキングの同一の特徴とすることができ、または識別マーキングの1または複数の次元に沿って調節することができ、追加の情報、例えばしるしまたは記号を保持させることができる。測定した値と適当な予め決定された値との照合は、特性およびモジュレーションの両方の一致が必要であり、またはモジュレーションを独立した認証特徴として使用することができる。後者では、特性の値を測定するのに使用する手順に関係なく、特性のモジュレーションはユーザに視認可能であり、または機械で読み取ることができることが必要である。所望であれば、モジュレーションによって、装飾機能が簡単に提供される。モジュレートされた特性の特定の例は、識別マーキングの最も長い次元に沿ってモジュレートされたサイズプロファイルおよび二次元バーコードを提供する識別マーキングの二次元に沿ったルミネセンス波長のモジュレーションである。
【0084】
特性はまた特徴を組み合わせることができる。例えば、1つの特性はルミネセンス波長の空間モジュレーションとサイズプロファイルの空間モジュレーションの類似性の程度とすることができる。この場合、照合は、2つのプロファイルの、類似性の程度に対する予め決められた値への類似性の程度である。
【0085】
<ナノ形態ルミネセンス>
幾つかの態様では、インジケータ材料のルミネセンスが測定される。それらの態様では、ナノ結晶形態インジケータ材料は、ナノ形態ルミネセンスパターンを示し、これは同じ材料のバルク形態の対応するルミネセンスパターンとは異なる。ナノ形態ルミネセンスは、染料または他の非微粒子材料により容易に模倣されないことが好ましい。
【0086】
「ルミネセンスパターン(luminescence pattern)」という用語は、本明細書では、特別な励起波長での特別な種に対する完全ルミネセンススペクトル、または異なる励起波長でのそのようなスペクトルの一群、あるいはそのような1または複数のスペクトルの1または複数の部分を示す。実際、ルミネセンスパターンは好ましくは、特別な種のキャラクタリゼーションを提供するスペクトルの部分に限定される。
【0087】
「ナノ形態ルミネセンス(nanomorphic luminescence)」という用語は、本明細書では、同定された化学化合物のナノ結晶形態と関連するルミネセンスを示し、その化学化合物のバルク形態に対する特徴でなく、すなわち、それとは適合しない。
【0088】
方法のいくつかの態様では、測定したプロファイルは識別マーキングのルミネセンスパターンであり、参照プロファイルに対し比較される。参照プロファイルはインジケータ材料に対する予め決められたルミネセンスパターンに限定され、またはそれらを含む。
【0089】
【表1】
【0090】
表1は、ナノ形態ルミネセンスが観察された多くの化合物を列挙したものである。発光パターンとして使用することができる特性ピークを、表1において各化合物に対し示す。これらの材料のいくつかに対する圧縮流体印刷調合物の調製に対する手順の例が、米国特許出願公開番号第2003/0121447 A1および米国特許出願公開番号第2003/0122106 A1(どちらも2003年7月3日に公開)において開示されている。
【0091】
識別マーキングのルミネセンスパターンは分光法により測定される。この目的に適した機器は、測定するルミネセンスの性質および必要とされる励起放射線に依存する。いくつかの態様に対する適した分光計の例は、ニュージャージー州エジソン所在のジョビン−イボン社(Jobin−Yvon Inc.)からのラブラム(LABRAM)インテグレーテッド(integrated)ラマン分光システムである。
【0092】
ナノ形態ルミネセンスは、識別マーキング全体で均一とすることができ、またはマーキングの異なる部分では異なるようにすることができる。その差異は、追加の安全保障特徴を提供する意図的なモジュレーションとすることができる。モジュレーションは、ヒトが読み取ることができるしるし、または、追加の認証レベルとして、スウォッチで適当な励起波長を有する光を誘導することにより、確認することができる装飾的図形とすることができる。機械で読み取ることができる記号および/またはヒトが読み取ることができる暗号を、図形またはしるしの代わりに使用してさらに安全保障を追加することができる。モジュレーションの検出は、使用する検出器の得られた出力の関数である。必要であれば、識別マーキングのサイズを増加させ、より良好なモジュレーションを得ることができる。このアプローチはいくつかの場合、例えば、切手では非現実的であるが、大きなアイテム、例えば発送箱では実際的である。
【0093】
識別マーキングのために使用されるインク調合物は、ナノ形態ルミネセンスを示す1つの化合物に限定することができ、または2以上のそのような化合物を含むことができる。後者は、ユーザにより必要とされる信頼レベル内で、結合された生成ルミネセンスがバルク状態ルミネセンスから区別することができるという制限を受ける。同じ考えが、インク調合物にあてはまり、この場合、他の、非ナノ形態種もまた発光する。例えば、ナノ形態微粒子をバルク状態の同じ化合物の微粒子と混合することができる。そのような調合物は、調合物のルミネセンスパターンがバルク状態材料のルミネセンスパターンと区別できる限り使用可能である。同様の考えがインク調合物の非発光材料にあてはまる。例えば、インク調合物は、ナノ形態ルミネセンスの発光が識別マーキング内でブロックされるほど高い相対パーセントの非発光顔料を有するべきではない。識別マーキングのために使用されるインク調合物は、そのようなインクを調合するのに使用される添加物が好ましくは、選択した材料に特徴的なナノ形態ルミネセンスを変化または破壊させないようなものであるべきである。
【0094】
<識別(identification)>
方法は、参照プロファイルの閉集合を使用する。これらの多くは予め規定されており公知である。いくつかの態様では、測定プロファイルと参照プロファイルとを比較する前に、個々に、または1つの群の1メンバーとして、割り当てられた参照プロファイルが識別される。この場合、比較工程は測定プロファイルを単一のまたは少数の参照プロファイルと比較する工程に限定される。これにより、特に参照プロファイルの集合が多数のメンバーを有する場合、比較に要する時間を大きく減少させることができる。
【0095】
識別マーキングに割り当てられた1または複数の参照プロファイルを識別する様式は重要ではない。最も簡単なアプローチは、特別な化合物に対する識別子をスウォッチ上またはスウォッチに関連させて提供するものである。識別子を読み取り、必要に応じて、解読し、および/またはルックアップテーブルを参照する。
【0096】
「ルックアップテーブル(look−up table)」という用語は、1または複数のコンピュータ内の論理メモリの補数、ならびに論理メモリへのアクセスを制御、提供するために必要な装置およびソフトウエアの両方を示す。「ルックアップテーブル」は、関連する値の対を保存するデータベースに限定されず、むしろ、限られた値の集合に対する同様の関数を提供する1または複数のアルゴリズムを含む。ルックアップテーブルは、1または複数のコンピュータにおいてメモリの一部として提供される。本明細書内で検討される参照ルックアップテーブルは、現場(on−site)で提供することができ、またはネットワークを介して遠隔操作によりアクセスすることができる。
【0097】
使用する識別子の複雑性は、その集合内の化合物の数と、その識別子に対する任意の要求される安全保障の関数である。例えば、識別子は識別材料の化学名を特定することができる。名前は標準文字とすることができ、または暗号化することができる。識別子はまた、ルックアップテーブル内の値を指す数値または他の英数字値とすることができる。識別子はヒトが読み取ることができる、機械で読み取ることができる、またはその両方とすることができる。二次元および三次元バーコードなどの記号を使用することができる。
【0098】
識別は、特別な参照プロファイルまたはプロファイルの群の指定に限定することができる。特別なインジケータ材料の更なる識別は、認証システムにおいて存在する必要はない。比較は参照プロファイルに限定されるからである。自動化比較手順を用いると、参照プロファイルはオペレータにアクセスできないようにすることができる。
【0099】
識別子は印刷マーキングに限定されない。識別子は、包含(included)メモリ、例えば磁気ストライプまたは高周波により作動する識別トランスポンダ(transponder)の電子メモリにより提供することができる。そのようなトランスポンダの例は、テキサス州ダラス所在のテキサスインストルメント社(Texas Instruments Incorporated)により、タグ−イット(Tag−it、登録商標)インレイ(Inlay)として市販されているインレイトランスポンダである。「読み取り(reading)」という用語および同様の用語は、本明細書において、ヒトによる読み取り、バーコード走査および解釈、メモリアクセス、などを含む広い意味で使用される。
【0100】
ナノ形態ルミネセンスを提供する識別マーキングにより読み取り可能な識別子を提供することができる。この場合、スウォッチ内のインジケータ材料の堆積物は、識別マーキングに沿って1または複数の方向にモジュレートされる。実際、インジケータ材料は、しるしまたは記号を提供する染料または顔料として使用することができる。モジュレーションは単色またはグレイスケールとすることができ、識別マーキングに沿ったインジケータ材料の有無または可変量を反映する。また、モジュレーションはインジケータ材料のルミネセンスの波長の変化により、すなわち、ナノ形態ルミネセンスの変化により提供することができる。これは、いくつかのナノ形態化合物に対し、圧縮流体堆積条件、例えば圧力を変化させることにより提供することができる。モジュレートさせたルミネセンスパターンは、1または2の方向の識別マーキングに沿った局在ルミネセンススペクトルを提供する装置により読み取られる。
【0101】
インジケータ材料の識別は識別子の読み取りに限定されない。識別子は、インジケータ材料を識別するのに必要な情報を伝達する任意の形態で提供することができる。例えば、識別子は、スウォッチで1または複数の顔料または染料を使用するカラーコードとすることができる。特性ルミネセンスを有する材料を識別子として使用することができる。例えば、バルク材料が、インジケータ材料の集合の他のメンバーの発光パターンと容易に区別される発光パターンを有する場合、特別な化合物のバルク形態を、同じ化合物のナノ形態に対する識別子として使用することができる。
【0102】
インジケータ材料の識別は、インジケータ材料の予め決められた集合のどのメンバーが存在するかを証明するのに必要な程度まで、化学的キャラクタリゼーションとすることができる。当業者に周知なように、様々な手順および装置をこのために使用することができる。
【0103】
同様に、インジケータ材料は、物理特性、例えば吸収または反射率を決定することにより識別することができる。識別手順は、紫外・可視吸収スペクトルの準備とすることができる。いくつかのインジケータ材料および必要とされる信頼レベルを用いる場合、そのようなスペクトルを、ルミネセンス決定または他の試験の代わりに使用することができる。ナノ結晶形態インジケータ材料は同じ材料のバルク形態に対し、主吸収ピークにおいてシフトを示すからである。特別な態様では、吸収スペクトルと組み合わせた別の試験により、1または複数の参照プロファイルとの比較のための測定プロファイルが提供される。スペクトルの吸収ピークはまた、参照プロファイルの群内での比較試験を提供するのに使用することができるルミネセンス測定のための励起波長を識別することができる。
【0104】
いくつかの場合では、吸収スペクトルは参照プロファイルと比較される測定プロファイルの全てまたは一部であってもよい。これは、バルク形態インジケータ材料に対するナノ形態インジケータ材料における吸収スペクトルのシフトを仮定する。
【0105】
安全保障材料の励起断面は、実施例を、積分球(反射率アクセサリ)を備えた分光計のサンプルポートに配置することにより決定することができる。例えば、ラブスフィア(Labsphere)RSA−HI−40付属部品を備えた日立(Hitachi)U4001 UV/Vis/NIR分光光度計を使用することができる。その後、反射スペクトルは近紫外および全可視スペクトル(250〜700nm)にわたり1nmの分解能で得られる。その後、スペクトルをクベルカ−ムンク(Kubelka−Munk)式を用いてK/Sデータに変換する。ここで、Kは吸収係数である。その後、最適励起範囲を、最大吸収領域から選択することができる。
【0106】
識別工程をルミネセンス測定と組み合わせて、単一の機器で実行することができる連続した手順とする特別な好都合なアプローチは、マイクロ−ラマン分光法によるマイクロ−ルミネセンスである。この目的のために適した装置の例はジョビン−イボンラブラム(Jobin Yvon LABRAM)インテグレーテッドラマン分光システムである。この型の機器を使用するための手順は当業者に周知である。
【0107】
インテグレーテッドラマン分光システムの使用の特定の例は下記の通りである。ガラスまたは溶融石英基質上のモジュレートしていない認証スウォッチの形態の材料について試験した。認証パッチにおいて使用されるインジケータ材料は、デュアシン酸ブルー染料(Duasyn Acid Blue Dye)とした。これはトリフェニルメタン染料であり、下記化学式を有する。
【0108】
【化1】
【0109】
ジョビン−イボンラブラムインテグレーテッドラマン分光システムにより、マイクロ−ルミネセンスおよびマイクロ−ラマンスペクトルが得られた。アルゴンイオンレーザからの488nmまたは514.5mmの励起光を、MSPlan 50×または100×顕微鏡対物レンズを用いて、スウォッチ上に集束させ、約1μmの照射スポットサイズを提供した。ルミネセンスまたは散乱光を、100〜300μmスリットを通して検出すると、検出分解能は0.5nmまたは4cm−1より良好であった。バルク状態インジケータ材料を用いて調製したスウォッチは開始材料に特徴的なラマン線を示し、488nmで励起すると、758nmで主ルミネセンスピークを示した。圧縮流体印刷により調製したスウォッチは543nmおよび670nmの両方で主ピークを有した。
【0110】
銅フタロシアニン(CuPc)を用いて、同様に手順を実施した。バルク状態の粉末の可視結晶は、514.5nmで励起されると、565nm未満の波長で狭いラマン線を示した。液体CO2に分散させ、その後、圧縮流体印刷を用いてガラス上に堆積させると、サイズが1μmを超えるいくつかの粒子が、識別マーキング中、100×光学倍率下、明らかになった。これらの粒子のラマンスペクトルは、常に、CuPcの特性ラマン線を示した。100×倍率下、微細な粒子が明らかにならない同じ膜の領域では、ラマン線が観察されず、膜は、568nmで新しいブロードなルミネセンスバンドを発光した。
【0111】
質量分析を使用して、分子量または分子量範囲のいずれかの観点からインジケータ材料を識別することができる。特別な基準および条件下で試験した場合に、ユニークな値を提供するようにインジケータ材料の1つの集合のメンバーを選択することができる。好都合な手順は二次イオン質量分析(SIMS)である。この手順は、最初にインジケータ材料を抽出せずに、そうでなければスウォッチを準備せずに、スウォッチ上で直接実施することができる。分子情報以外に、SIMSを用いるといくらかの深さ情報および位置情報が得られる。SIMSの技術および装置は当業者に周知であり、下記に記述されている。ニューマン(Newman)、A.Anal.Chem(1996)68(21)683A、ハンドレイ(Handley)、J.Anal.Chem.(2002)74(11)335A、デイ(Day)、R.J、アンガー(Unger)、S.E.、クックス(Cooks)、R.G.Anal.Chem.(1980)52(4)557A)。ほとんどの目的に適したSIMS機器の一例は、ドイツ、ミュエンスターのイオントフ(IONTOF)GmbHにより市販されているトフシムス(TOF SIMS)IVである。
【0112】
SIMSは、分析物を高エネルギイオンビームに曝露することにより実施される。このプロセスにより、中性および帯電種の両方が放出される。帯電種は、使用可能な様々な型の質量分析計のいずれかにより分析することができ、分析情報が記録される。一定のサンプルに対し、様々なSIMS技術を実施することができる。低入射イオンフラックスを用いて静的SIMSを実施すると、分子イオンが形成し、これを使用して材料の分子組成を識別することができる。動的SIMSはより高い入射イオンフラックスを使用し、これにより分析物表面が腐食される。このプロセスを使用して、分析物の深さプロファイルを測定することができ、またはこのプロセスを使用して、材料をエッチングし、静的SIMSのために分析物を曝露させることができる。イメージングSIMSは、表面を横切る入射イオンビームをラスター化し、存在する種のマップを作成する。画像化されると、分析物の3−座標マップが作成される。このように、SIMS実験の様々な組み合わせを使用して、表面上、表面付近、またはサンプル中に埋もれた分析物を識別することができる。
【0113】
識別マーキングのために使用される材料は、SIMS技術によりマップされ、識別される。認証インジケータ材料がマークされている材料の表面上に位置する場合、静的SIMSを使用して、マークするのに使用された材料を識別することができ、一方、イメージングSIMSは、マイクロスケールの識別マーキングのマップを提供することができる。認証インジケータ材料が、マークされている材料の表面で埋め込まれている場合、動的SIMSはマークされている十分な量の材料を除去することができ、静的およびイメージングSIMSにより分析物を識別し、マップすることが可能となる。認証インジケータ材料が基質内に埋もれている場合、動的SIMSは分析物が埋もれている深さを測定し、他の技術により識別およびマップされるように分析物を曝露させることができる。
【0114】
測定することができる別の特性は、特別な元素の存在である。X線蛍光(XRF)を使用して、非破壊的に材料を特徴づけることができ、11またはそれ以上の原子番号、場合によっては、4またはそれ以上の原子番号を有する元素種の存在を識別するのに好都合である。適した機器および技術が当業者に周知であり、例えば、E.P.バーチン(Bertin)、「X線分光分析の原理と実際(Principles and Practice of X−ray Spectrometric Analysis)」、第3章、プレナムプレス(Plenum Press)、ニューヨーク(1970)において記述されている。例えば、塗装表面内の鉛などのアイテムの試験、または無機金属合金の分類のために現在存在するもののような、携帯用EDXRFユニットを使用してX線蛍光元素分析を実施することができる。そのようなユニットの特定の例としては、ニトン(Niton)によるXL−300シリーズ分光計またはオックスフォードインスツルメンツ(Oxford Instruments)によるホリゾン(Horizon)600分光計が挙げられる。
【0115】
X線蛍光は、二次放射により放射されるX線スペクトル線の波長および強度の測定に基づく、化学元素に対する定性および定量分析法である。高エネルギ源(すなわち、X線ビーム)からの一次ビームを対象の材料に照射すると、存在する各化学元素は、その元素に特有の波長(定性分析の基礎)および存在する各元素の濃度に関連する強度(定量分析の基礎)を有する二次X線スペクトル線を放射する。無機物または有機金属であると規定される材料では、XRFは、総組成物のμg/g(100万分の1、ppm)〜%(100分の1)の範囲の無機および有機金属材料を検出することができる。
【0116】
2つのXRF技術、波長分散型(WDXRF)およびエネルギ分散型(EDXRF)が一般に使用される。これらの技術は、例えば、R.ジェンキンス(Jenkins)ら、「定量X線分光法(Quantitative X−ray Spectrometry)」、8章、マーセルデッカー社(Marcel Dekker Inc.)、ニューヨーク(1981)において記述されている。WDXRFにより、より良好な感度(検出下限)およびオーバーラップしたX線発光ピークの分離が得られ、EDXRFにより、より迅速なデータ収集時間が得られる。
【0117】
これらの測定技術では、スウォッチは高エネルギ源により照射され、存在する元素種に特有の発光X線はX線検出器により示される。この方法は、様々な異なる型の基質を有するスウォッチに適しており、特別な準備は要らない。検出された原子種はナノ形態インジケータ材料の化合物内にあるとすることができ、または金属、塩、無機、または有機金属化合物の形態で、トレーサとして追加することができる。
【0118】
<顕微鏡技術>
特別な手順によっては、顕微鏡技術は、他の試験を改善し、補足し、またはそれにとって代わることができる。顕微鏡を使用して、バルク微粒子汚染のない部分を見つけることができる。その部分を検査し、インジケータ材料の予め選択した特性を検出する。予め選択した特性が測定される。測定値は参照プロファイルの閉集合のメンバーと一致する。以下のうちの1または複数が起きると認証は失敗する。バルク微粒子汚染のない部分がない、予め選択した特性がバルク微粒子汚染のない部分で検出されない、および参照プロファイルの集合のメンバーの1つと一致しない。
【0119】
バルク微粒子汚染は、予め選択した特性の測定を阻止する、または予め選択した特性の測定をユーザにより要求される信頼レベル内で信頼できないものにしてしまうのに十分な量のバルク状態粒子の存在である。第1の場合、予め選択した特性は測定できず、認証が不可能である。第2の場合、信頼レベルが、本物ではないアイテムが間違って認証されてしまう危険を示す。これは、基質の性質および状況によって変動する。
【0120】
微粒子汚染のない識別マーキングの一部を見つけるスウォッチの検査は、好都合な任意の様式で実施することができる。光学顕微鏡法は好都合な手順である。ナノ結晶微粒子のサイズ範囲の粒子は光学顕微鏡では視認できないからである。このように、光学的に検出された任意の粒子を、バルク状態材料として処理する。ここでの制限は、調合中にナノ結晶微粒子が凝集して塊にならないように、インク調合物を選択しなければならないことである。適当な材料の選択は、試行錯誤により容易に選択される。
【0121】
光学顕微鏡により決定されるようにバルク微粒子汚染が存在しないことに対する好都合な標準は、測定する識別マーキングの部分内に視認可能な粒子が存在しないことである。視認可能な粒子が識別マーキングの他の部分に存在することがある。それらの視認可能な粒子は、ナノ結晶粒子の塊、インク調合物の一部であるバルク状態顔料またはちりなどの汚染物質であるかもしれない。視認可能な粒子が何であるかを決定する必要はない。視認可能な粒子の有無は、それ自体、真正性を決定しない。
【0122】
特別な態様では、安全保障材料の顕微鏡検査は、サンプルを普通の顕微鏡スライド上に載置する工程と、品質光学顕微鏡(例えば、オリンパスBX−40)の100×対物レンズ(例えば、オリンパス(Olympus)MPlan100×/0.90)下に配置する工程とを含む。普通のタングステン−ハロゲン顕微鏡照明器を用い、透明サンプルは透過または反射状態で照射し、不透明なサンプルは反射状態で照射しなければならない。顕微鏡接眼レンズを用いて、または取り付けたビデオカメラからのモニタ上で観察して、サンプルに焦点を合わせ、照射レベルを最大可視化に調節する。その後、サンプル画像に対し、安全保障材料中に離散粒子が存在する証拠がないかについて検査する。認識できるものがなければ、上限粒子サイズは、1μm未満であると決定され、安全保障材料はナノ形態であると考えられる。
【0123】
バルク微粒子汚染のない識別マーキングの部分を見つけるために、直接的な目視検査を他の技術と組み合わせても使用することができる。この工程は、視認可能な粒子により汚れたスウォッチでは有益であり、さらに検査するために清浄な部分を見いだすことができないと、認証は失敗となる。
【0124】
バルク微粒子汚染をチェックするためのスウォッチの検査では、バルク微粒子汚染のない部分でのナノ結晶微粒子の存在を検出しても、しなくてもよい。最適な顕微鏡法および他の上記手順を用いると、ナノ結晶微粒子は、選択したマーキング部分(バルク微粒子汚染のない部分)において検出されないままである。ナノ結晶微粒子が検出されないままであると、次の工程はナノ結晶微粒子の検出となる。微粒子の特性は、検出工程と同時、またはその後に測定される。検出および測定は、選択した部分の位置決めとともに、連続手順の一部として実施することができる。
【0125】
圧縮流体印刷は、高速でのナノ結晶粒子の噴射を含む。かなり柔らかい基質、例えば紙を用いると、基質の表面および/または基質の細孔内に粒子を配置するのではなく、基質内に粒子を埋め込むこととなる。埋め込まれた指紋では、すなわち、基質内に粒子が分布していると、粒子の位置は、圧縮流体印刷中、粒子の運動エネルギ分布の関数となる。
【0126】
スウォッチの埋め込み指紋を、参照プロファイルとの比較において使用することができる。この場合の制限は、そのようなプロファイルは圧縮ガス印刷と一致するが、そのようなプロファイルは決定的ではないことである。そのようなプロファイルは他の技術、例えば非コロイド弾道エアロゾルの使用により模倣できる可能性がある。米国特許第6,116,718号では、非コロイド弾道エアロゾルを用いた印刷が開示されている。そのような技術の相対的な問題は、偽物のアイテムにおける使用を阻止する十分な負担を提供しやすいことである。
【0127】
他方、液体コーティングプロセスにより同様の埋め込み指紋を提供するのは非常に困難である。薄いコーティングは、液体コーティングプロセスによる2つの方法のうちの1つにおいて達成することができる。第1の方法では、湿性固着(レイダウン:laydown)が低く維持される。これにより薄い乾燥コーティングが得られる。第2の方法では、溶液または分散物中の固体が非常に低く維持され、そのため厚い湿性コーティングでさえも非常に薄い乾燥コーティングとなる。このアプローチは、x−y面で微粒子が不均一に分配されたむらのあるコーティングになる可能性がある。どちらの場合でも、異なるサイズの粒子のバンドが、塗布後コーティングを乾燥させるのにどれくらいかかるかによって、コーティングのz軸に沿って分離する。乾燥中のコート層の粘度は、コーティング内の粒子のz−方向の最終的な位置を決定する。このように、粒子が大きくなると、コーティングの底に移動する傾向があり、粒子が小さくなると上面に残る傾向がある。一定サイズの粒子は、全ての面に分配されるのではなく、z−方向では同じ面内に残る傾向がある。
【0128】
液体コート層における1または複数の層内でのこの一般的に均一な分布は、圧縮流体印刷および他の高エネルギプロセスにより提供される分布と対照的である。埋め込みパターンを使用する認証方法では、1または複数の層内での粒子の一般的に均一な分布は認証の失敗を示す状態である。
【0129】
測定した特性(埋め込み指紋)は、スウォッチ内の粒子の埋め込みパターンおよびサイズの組み合わせとすることができる。これを使用して、圧縮流体印刷を、非ナノ結晶サイズの固体微粒子がガスストリームに添加される高エネルギ印刷法と区別することができる。
【0130】
埋め込みパターンは電子顕微鏡で調べることができる。特別な態様では、FC4E冷凍付属部品を備えたレイチャート−ジャング(Reichert−Jung)ウルトラカット(ULTRACUT)E超ミクロトームを用いて、スウォッチを切断し超薄の冷凍乾燥切片とする。その後切片をグリッド上に配置する。切片をグリッド上に配置すると直ちに、冷凍チャンバ内でグリッドをグリッドホルダからピンセットを使用して取り除き、冷凍チャンバ内に配置した切片プレスに移動させ、切片をグリッドに押し付ける。ピンセットを用いグリッドをプレスから取り出し、冷凍グリッドホルダ内に置き、その後、冷凍グリッドキャリヤに移し、その後、冷凍移動試料ホルダ内に冷凍移動させるために液体窒素瓶内に移し、これを冷凍透過型電子顕微鏡(「TEM」)において使用して画像形成させる。TEMにより電子顕微鏡、例えば、120キロボルトで作動するフィリップス(Philips)CM12を用いて、顕微鏡写真を得ることができる。
【0131】
<特別な態様>
図11および12について説明すると、本方法の特別な態様は、吸収を測定し(26)、紫外−可視光バンドにおけるインジケータ材料の吸収のスペクトル(吸収対波長)を準備することから開始する。次に、スウォッチのルミネセンスパターン(発光強度対波長)が得られる(28)。励起は、前に準備した吸収スペクトルにより示される吸収極大で行う。最適顕微鏡法下でスウォッチを調べ(30)、スウォッチの試験した部分に、バルク微粒子汚染がないことを確認する。スウォッチはまた、有機金属または無機トレーサの存在についてX線蛍光により調べる(32)。スウォッチについてはまた、乾燥冷凍超薄切片法により超薄切片を準備し(34)、透過型電子顕微鏡下で調べ(36)、粒子サイズを確認する。
【0132】
試験手順の順は、初期のデータを後の手順において使用する、または現実的な配慮が提供された場合を除き、変更することができる。測定プロファイルを準備すると、一致が得られる、または集合が尽きるまで、参照プロファイルの集合のメンバーの各々と比較する。その後、指示がオペレータに提供されまたは自動手順がとられる。測定プロファイルと参照プロファイルとの比較は、試験が進行する間に始めることができ、初期に一致が得られると、さらなる試験および比較の繰り返しを省略することができる。
【0133】
別の態様では、個々の試験手順を上記のように変更することができる。本明細書で記述した試験手順の多くは特有の不確かさを有する。不確かさに対する高いしきい値では、測定プロファイルがいくかの試験で参照プロファイル値と一致することが必要であるかもしれない。より低い信頼性レベルで、サンプルの信憑性を決定するには全ての試験は必要ないかもしれない。例えば、図13に簡略化したアプローチを図示する。この場合、割り当てた参照プロファイルを、インジケータマーキングを読み取ることにより識別する(38)。ルミネセンスを測定する。予め選択した波長で励起し、またはインジケータにより励起を提示し、またはインジケータマーキングにより提供される英数字キーを使用してアクセスされるルックアップテーブルにより励起が提供される。前に記述したように、比較および指示/自動機能工程が提供される。
【0134】
いずれの場合でも、試験は、使用可能な試験が全て完了するまで、または測定したプロファイルが、較正決定の十分な確実性で一致または不一致の結果を作成する十分なデータを有するまで続けることができる。中間アプローチも、いくつかの試験が常に実施され、他の試験は必要な時にのみ実施されるという点で、実用的である。ここで考慮すべきことは、試験手順の自動化の容易さ、必要とされる機器のコストおよび複雑性とすることができる。試験はまた、階層で提供することができ、この場合、第1のレベルでの認証がチェックされ、1または複数のより高いレベルでは、必要に応じて実証される。同様に、認証システムは、認証アイテムの一定集団を用いて、既存の要求によって、異なる信頼性レベルで動作させることができる。
【0135】
<装置>
図14について説明する、システム200は、前に記述したような圧縮流体プリンタ205と、認証装置207とを含む。装置207はスウォッチ221を受理する試験ステーション230を有する。特別な目的のために要求される場合を除き、試験ステーション230の特別な構造は重要ではない。図に示した試験ステーションは、スウォッチを有するアイテムも移動させるトランスポーター(一対のローラおよびパレットとして図示)を有する。他の固定または移動試験ステーションを提供することができる。
【0136】
装置207は試験ステーション230に隣接して配置された検査ヘッド209を有する。検査ヘッド209は識別マーキングの1または複数の特性を確認し、測定プロファイルを提供することができる。検査ヘッド209は、識別に関し前に検討した1または複数の機能を有する識別ユニット201と、測定プロファイルの決定に関して前に検討した1または複数の機能を有する測定ユニット202とを備える。識別ユニットおよび測定ユニットの特定の例が、前に検討した機能を提供する機器により提供される。例えば、識別ユニットはバーコード読み取り機、紫外−可視光分光光度計、および/またはX線蛍光分光計を含むことができる。
【0137】
図示した態様では、識別ユニット201は、スウォッチに照射210するバーコード読み取り機を有する。バーコードによりモジュレートされた反射光211が読み取られ、応答信号が、識別ユニットにより、信号経路225に沿って制御ユニット218まで送られる。制御ユニットはマイクロプロセッサまたはプログラマブルコンピュータ、などである。識別ユニットにより提供された信号を使用して、参照プロファイルの集合を有するルックアップテーブル219にアクセスする。測定ユニットは識別マーキングに励起光線212を誘導する。ルミネセンス発光213が戻り、測定ユニット202内の分光計により分析され、信号経路に沿って制御装置218まで送られる測定プロファイルが得られる。制御装置内では、ルックアップテーブルにより提供された参照プロファイルと測定プロファイルが比較エンジン217内で比較され、信号がオペレータまたは他の応答動作(スピーカ241として図示)に提供される。図14では、比較エンジンはゲートとして図示されている。別の比較エンジンも当業者には周知である。
【0138】
本発明について、一定の好ましい態様を特に参照して詳細に説明してきたが、本発明の精神および範囲内であれば、変更および改変が可能であることは理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】認証スウォッチを有するドキュメントの正面図である。
【図2】図1のドキュメントの断面図である。
【図3】圧縮流体プリンタの1つの態様の概略図である。
【図4】開放位置で示した、図3のプリンタの放出装置および動作機構の概略図である。
【図5】閉鎖位置で示した、図4と同じ図である。
【図6】様々なスウォッチの例である。
【図7】様々なスウォッチの例である。
【図8】様々なスウォッチの例である。
【図9】様々なスウォッチの例である。
【図10】様々なスウォッチの例である。
【図11】方法の1つの態様の流れ図である。
【図12】図11の方法の確認工程の詳細な流れ図である。
【図13】図11の方法の改良の流れ図である。
【図14】認証装置の1つの態様の概略図である。
【図15】圧縮流体プリンタの別の態様の概略図である。
【図16】圧縮流体プリンタのさらに別の態様の概略図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マーキングの1または複数の特性を確認し、測定プロファイルを提供する工程と、
前記測定プロファイルを、参照プロファイルの閉集合の少なくとも1つのメンバーと比較する工程と、
を含み、
前記参照プロファイルの各々は前記1または複数の特性の予め決定された値を有し、前記参照プロファイルの各々は前記集合内でユニークであり、前記参照プロファイルの少なくとも1つはナノ結晶形態のインジケータ材料の特徴を示し、バルク形態の同じインジケータ材料の特徴は示さない、識別マーキングの認証方法。
【請求項2】
前記集合の別の前記参照プロファイルは、バルク形態の前記インジケータ材料の特徴を示し、ナノ結晶形態の前記インジケータ材料の特徴を示さない、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ナノ結晶形態の前記インジケータ材料は、紫外−可視光範囲において1つの吸収ピークを有し、前記確認工程は、紫外−可視光バンドで前記マーキングの吸収スペクトルを測定する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記ナノ結晶形態の前記インジケータ材料は、紫外−可視光範囲で、バルク形態の同じ材料の対応する吸収ピークに対しシフトした波長の吸収ピークを有し、前記確認工程は、前記波長で前記マーキングの吸収を測定する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記ナノ結晶形態の前記インジケータ材料は、バルク形態の同じ材料の対応する発光ピークに対しシフトしたルミネセンス発光ピークを有し、前記確認工程は、前記吸収ピークの前記波長で励起中の前記波長で前記マーキングの発光を測定する工程をさらに含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記確認工程は、前記測定が、非ナノ結晶粒子が実質的にない前記マーキング材料の領域であるかどうかを決定する工程をさらに含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記決定工程が、前記領域を光学顕微鏡により検査する工程をさらに含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記マーキングが、11またはそれ以上の原子番号を有する少なくとも1つの原子種を有する無機、有機−無機、または有機金属化合物を含み、前記測定工程が、前記マーキングのX線蛍光スペクトルを準備する工程をさらに含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記決定工程が、波長分散型X線蛍光分析およびエネルギ分散型X線蛍光分析のうちの1つによる、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記無機、有機−無機、または有機金属化合物が前記インジケータ材料とは異なる、請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記測定工程が、さらに、
乾燥冷凍超薄切片法により前記マーキングの切片を準備する工程と、
前記切片を透過型電子顕微鏡法により検査する工程と、
をさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項12】
前記検査工程が、ナノ結晶微粒子を見つける工程を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記検査工程が、前記微粒子の埋め込み深さを決定する工程を含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記ナノ結晶形態の前記インジケータ材料が、バルク形態の同じ材料の対応する発光ピークに対しシフトしたルミネセンス発光ピークを有し、前記測定工程が、前記波長で前記マーキングの発光を測定する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記確認工程が、前記測定が、非ナノ結晶粒子が実質的にない前記マーキングの領域であるかどうかを決定する工程をさらに含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記決定工程が、前記領域を光学顕微鏡により検査する工程をさらに含む、請求項14記載の方法。
【請求項17】
前記マーキングが、11またはそれ以上の原子番号を有する少なくとも1つの原子種を有する無機、有機−無機、または有機金属化合物を含み、前記測定工程が、前記マーキングのX線蛍光スペクトルを準備する工程をさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記決定工程が、波長分散型X線蛍光分析である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記決定工程が、エネルギ分散型X線蛍光分析である、請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記無機、有機−無機、または有機金属化合物が、前記インジケータ材料とは異なる、請求項17記載の方法。
【請求項21】
前記マーキングが、11またはそれ以上の原子番号を有する少なくとも1つの原子種を有する無機、有機−無機、または有機金属化合物を含み、前記測定工程が、前記マーキングのX線蛍光スペクトルを決定する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項22】
前記無機、有機−無機、または有機金属化合物が、前記インジケータ材料とは異なる、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記決定工程が、前記領域を光学顕微鏡により検査する工程をさらに含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記比較の前に、前記識別マーキングに割り当てられた参照プロファイルの前記閉集合の1つのメンバーを識別する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項25】
前記識別工程が、識別子を読み取る工程をさらに含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記識別子が、符号化され、前記識別工程が、前記読み取り後、前記識別子を解読する工程をさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記識別工程が、前記化合物を化学的に特徴づける工程をさらに含む、請求項24記載の方法。
【請求項28】
前記特徴づけ工程が、質量分析により前記化合物を分析する工程を含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記特徴づけ工程が、前記化合物の分子量を決定する工程を含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記特徴づけ工程が、前記マーキングの二次イオン質量分析を実施する工程を含む、請求項27記載の方法。
【請求項31】
前記マーキングは、前記マーキングの1または複数の次元に沿って延在する1または複数の特性のモジュレーションを有し、前記識別工程は前記モジュレーションを読み取る工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項32】
前記モジュレーションは機械で読み取り可能である、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記インジケータ材料は、10〜100,000ダルトンの範囲の分子量を有する化合物である、請求項1記載の方法。
【請求項34】
前記インジケータ材料は、10〜20,000ダルトンの範囲の分子量を有する化合物である、請求項1記載の方法。
【請求項35】
前記インジケータ材料は、10〜10,000ダルトンの範囲の分子量を有する化合物である、請求項1記載の方法。
【請求項36】
前記インジケータ材料は、直径が50nm未満の粒子を有する微粒子である、請求項1記載の方法。
【請求項37】
前記直径が30nm未満である、請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記直径が20nm未満である、請求項36記載の方法。
【請求項39】
前記参照プロファイルの各々は、インジケータ材料の各々がナノ結晶形態である複数のインジケータ材料の混合物の特徴を示し、前記参照プロファイルの各々は、各々がバルク形態である同じインジケータ材料の対応する混合物の特徴を示さない、請求項1記載の方法。
【請求項40】
前記確認工程前に、前記識別マーキングを有するスウォッチを印刷する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項41】
前記確認工程前に、接着ラベル上に前記識別マーキングを有するスウォッチを印刷する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項42】
スウォッチを受理する試験ステーションと、
前記ステーションに隣接して配置され、マーキングの1または複数の特性を確認し、測定プロファイルを提供することができる検査ヘッドと、
参照プロファイルの閉集合を有し、前記参照プロファイルの各々が前記集合内でユニークであり、前記参照プロファイルの少なくとも1つがナノ結晶形態のインジケータ材料の特徴を示し、バルク形態の同じインジケータ材料の特徴を示さない、ルックアップテーブルと、
前記検査ヘッドと前記ルックアップテーブルに動作可能に接続され、前記測定プロファイルを前記参照プロファイルの各々と比較することができる比較エンジンと、
を備える、識別マーキングを有する認証スウォッチと共に使用するための認証装置。
【請求項43】
前記検査ヘッドは、紫外−可視光分光計を含む、請求項42記載の装置。
【請求項44】
前記検査ヘッドは、マイクロ−ルミネセンスおよびマイクロ−ラマン分光法のための分光システムを含む、請求項42記載の装置。
【請求項45】
前記検査ヘッドは、X線蛍光分光計を含む、請求項44記載の装置。
【請求項46】
前記検査ヘッドが、光学顕微鏡を含む、請求項45記載の装置。
【請求項47】
各スウォッチが識別マーキングを有し、前記マーキングはナノ結晶形態のインジケータ材料を含む、複数のスウォッチと、
認証装置と、
を備える認証システムであって、前記認証装置が、
前記スウォッチを受理するように構成された試験ステーションと、
前記ステーションに隣接して配置され、前記識別マーキングの1または複数の特性を確認し、測定プロファイルを提供することができる検査ヘッドと、
参照プロファイルの閉集合を有し、前記参照プロファイルの各々が前記1または複数の特性の予め決められた値を有し、前記参照プロファイルの各々がナノ結晶形態の個々の前記インジケータ材料の特徴を示し、バルク形態の同じインジケータ材料の特徴を示さない、ルックアップテーブルと、
前記検査ヘッドと前記ルックアップテーブルに動作可能に接続され、前記測定プロファイルを前記参照プロファイルの各々と比較することができる比較エンジンと、
を備える、認証システム。
【請求項48】
前記インジケータ材料を作成し、前記スウォッチを印刷することができる圧縮流体プリンタをさらに備える、請求項47記載のシステム。
【請求項49】
前記インジケータ材料を作成することができる圧縮流体堆積装置と、前記スウォッチを印刷することができるプリンタと、をさらに備える請求項47記載のシステム。
【請求項1】
マーキングの1または複数の特性を確認し、測定プロファイルを提供する工程と、
前記測定プロファイルを、参照プロファイルの閉集合の少なくとも1つのメンバーと比較する工程と、
を含み、
前記参照プロファイルの各々は前記1または複数の特性の予め決定された値を有し、前記参照プロファイルの各々は前記集合内でユニークであり、前記参照プロファイルの少なくとも1つはナノ結晶形態のインジケータ材料の特徴を示し、バルク形態の同じインジケータ材料の特徴は示さない、識別マーキングの認証方法。
【請求項2】
前記集合の別の前記参照プロファイルは、バルク形態の前記インジケータ材料の特徴を示し、ナノ結晶形態の前記インジケータ材料の特徴を示さない、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ナノ結晶形態の前記インジケータ材料は、紫外−可視光範囲において1つの吸収ピークを有し、前記確認工程は、紫外−可視光バンドで前記マーキングの吸収スペクトルを測定する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記ナノ結晶形態の前記インジケータ材料は、紫外−可視光範囲で、バルク形態の同じ材料の対応する吸収ピークに対しシフトした波長の吸収ピークを有し、前記確認工程は、前記波長で前記マーキングの吸収を測定する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記ナノ結晶形態の前記インジケータ材料は、バルク形態の同じ材料の対応する発光ピークに対しシフトしたルミネセンス発光ピークを有し、前記確認工程は、前記吸収ピークの前記波長で励起中の前記波長で前記マーキングの発光を測定する工程をさらに含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記確認工程は、前記測定が、非ナノ結晶粒子が実質的にない前記マーキング材料の領域であるかどうかを決定する工程をさらに含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記決定工程が、前記領域を光学顕微鏡により検査する工程をさらに含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記マーキングが、11またはそれ以上の原子番号を有する少なくとも1つの原子種を有する無機、有機−無機、または有機金属化合物を含み、前記測定工程が、前記マーキングのX線蛍光スペクトルを準備する工程をさらに含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記決定工程が、波長分散型X線蛍光分析およびエネルギ分散型X線蛍光分析のうちの1つによる、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記無機、有機−無機、または有機金属化合物が前記インジケータ材料とは異なる、請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記測定工程が、さらに、
乾燥冷凍超薄切片法により前記マーキングの切片を準備する工程と、
前記切片を透過型電子顕微鏡法により検査する工程と、
をさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項12】
前記検査工程が、ナノ結晶微粒子を見つける工程を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記検査工程が、前記微粒子の埋め込み深さを決定する工程を含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記ナノ結晶形態の前記インジケータ材料が、バルク形態の同じ材料の対応する発光ピークに対しシフトしたルミネセンス発光ピークを有し、前記測定工程が、前記波長で前記マーキングの発光を測定する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記確認工程が、前記測定が、非ナノ結晶粒子が実質的にない前記マーキングの領域であるかどうかを決定する工程をさらに含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記決定工程が、前記領域を光学顕微鏡により検査する工程をさらに含む、請求項14記載の方法。
【請求項17】
前記マーキングが、11またはそれ以上の原子番号を有する少なくとも1つの原子種を有する無機、有機−無機、または有機金属化合物を含み、前記測定工程が、前記マーキングのX線蛍光スペクトルを準備する工程をさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記決定工程が、波長分散型X線蛍光分析である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記決定工程が、エネルギ分散型X線蛍光分析である、請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記無機、有機−無機、または有機金属化合物が、前記インジケータ材料とは異なる、請求項17記載の方法。
【請求項21】
前記マーキングが、11またはそれ以上の原子番号を有する少なくとも1つの原子種を有する無機、有機−無機、または有機金属化合物を含み、前記測定工程が、前記マーキングのX線蛍光スペクトルを決定する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項22】
前記無機、有機−無機、または有機金属化合物が、前記インジケータ材料とは異なる、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記決定工程が、前記領域を光学顕微鏡により検査する工程をさらに含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記比較の前に、前記識別マーキングに割り当てられた参照プロファイルの前記閉集合の1つのメンバーを識別する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項25】
前記識別工程が、識別子を読み取る工程をさらに含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記識別子が、符号化され、前記識別工程が、前記読み取り後、前記識別子を解読する工程をさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記識別工程が、前記化合物を化学的に特徴づける工程をさらに含む、請求項24記載の方法。
【請求項28】
前記特徴づけ工程が、質量分析により前記化合物を分析する工程を含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記特徴づけ工程が、前記化合物の分子量を決定する工程を含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記特徴づけ工程が、前記マーキングの二次イオン質量分析を実施する工程を含む、請求項27記載の方法。
【請求項31】
前記マーキングは、前記マーキングの1または複数の次元に沿って延在する1または複数の特性のモジュレーションを有し、前記識別工程は前記モジュレーションを読み取る工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項32】
前記モジュレーションは機械で読み取り可能である、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記インジケータ材料は、10〜100,000ダルトンの範囲の分子量を有する化合物である、請求項1記載の方法。
【請求項34】
前記インジケータ材料は、10〜20,000ダルトンの範囲の分子量を有する化合物である、請求項1記載の方法。
【請求項35】
前記インジケータ材料は、10〜10,000ダルトンの範囲の分子量を有する化合物である、請求項1記載の方法。
【請求項36】
前記インジケータ材料は、直径が50nm未満の粒子を有する微粒子である、請求項1記載の方法。
【請求項37】
前記直径が30nm未満である、請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記直径が20nm未満である、請求項36記載の方法。
【請求項39】
前記参照プロファイルの各々は、インジケータ材料の各々がナノ結晶形態である複数のインジケータ材料の混合物の特徴を示し、前記参照プロファイルの各々は、各々がバルク形態である同じインジケータ材料の対応する混合物の特徴を示さない、請求項1記載の方法。
【請求項40】
前記確認工程前に、前記識別マーキングを有するスウォッチを印刷する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項41】
前記確認工程前に、接着ラベル上に前記識別マーキングを有するスウォッチを印刷する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項42】
スウォッチを受理する試験ステーションと、
前記ステーションに隣接して配置され、マーキングの1または複数の特性を確認し、測定プロファイルを提供することができる検査ヘッドと、
参照プロファイルの閉集合を有し、前記参照プロファイルの各々が前記集合内でユニークであり、前記参照プロファイルの少なくとも1つがナノ結晶形態のインジケータ材料の特徴を示し、バルク形態の同じインジケータ材料の特徴を示さない、ルックアップテーブルと、
前記検査ヘッドと前記ルックアップテーブルに動作可能に接続され、前記測定プロファイルを前記参照プロファイルの各々と比較することができる比較エンジンと、
を備える、識別マーキングを有する認証スウォッチと共に使用するための認証装置。
【請求項43】
前記検査ヘッドは、紫外−可視光分光計を含む、請求項42記載の装置。
【請求項44】
前記検査ヘッドは、マイクロ−ルミネセンスおよびマイクロ−ラマン分光法のための分光システムを含む、請求項42記載の装置。
【請求項45】
前記検査ヘッドは、X線蛍光分光計を含む、請求項44記載の装置。
【請求項46】
前記検査ヘッドが、光学顕微鏡を含む、請求項45記載の装置。
【請求項47】
各スウォッチが識別マーキングを有し、前記マーキングはナノ結晶形態のインジケータ材料を含む、複数のスウォッチと、
認証装置と、
を備える認証システムであって、前記認証装置が、
前記スウォッチを受理するように構成された試験ステーションと、
前記ステーションに隣接して配置され、前記識別マーキングの1または複数の特性を確認し、測定プロファイルを提供することができる検査ヘッドと、
参照プロファイルの閉集合を有し、前記参照プロファイルの各々が前記1または複数の特性の予め決められた値を有し、前記参照プロファイルの各々がナノ結晶形態の個々の前記インジケータ材料の特徴を示し、バルク形態の同じインジケータ材料の特徴を示さない、ルックアップテーブルと、
前記検査ヘッドと前記ルックアップテーブルに動作可能に接続され、前記測定プロファイルを前記参照プロファイルの各々と比較することができる比較エンジンと、
を備える、認証システム。
【請求項48】
前記インジケータ材料を作成し、前記スウォッチを印刷することができる圧縮流体プリンタをさらに備える、請求項47記載のシステム。
【請求項49】
前記インジケータ材料を作成することができる圧縮流体堆積装置と、前記スウォッチを印刷することができるプリンタと、をさらに備える請求項47記載のシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2006−528809(P2006−528809A)
【公表日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521095(P2006−521095)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/021695
【国際公開番号】WO2005/010801
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/021695
【国際公開番号】WO2005/010801
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】
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