説明

ナビゲーションシステム

【課題】情報センターとの通信が不可能となる領域においてもナビゲーションサービスを安定して提供する。
【解決手段】ナビゲーション装置11は、判断部22が車両の進行方向上に情報センター12との通信が不可能となる通信不可能領域が存在すると判断した場合に、走行領域推定部23によって、通信不可能領域において車両が走行する可能性が高い領域を推定し、通信不可能領域のうち走行領域推定部23が推定した領域に対応するデータを、データ取得部25によって、位置/方向検出部14が検出する車両の現在位置が当該通信不可能領域に進入する前に情報センター12から取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報センターと通信しながら動作するナビゲーション装置を備えたナビゲーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のナビゲーションシステムとして、例えば特許文献1に開示されているシステムでは、ナビゲーション装置は、情報センターとの通信が不可能となる領域の地図データを、車両が当該領域に進入する前に予め取得し、情報センターとの通信が不可能となる領域においても、車両を案内する経路案内機能などのナビゲーションサービスの提供を維持する。
しかしながら、例えば情報センターとの通信が不可能となる領域が広大である場合には、ナビゲーション装置が取得するデータ量や通信量が多くなってしまう。そのため、システムの構成上の制約(例えば、ナビゲーション装置が有するデータ記憶用の記憶装置の容量や、情報センターとナビゲーション装置との間の通信回線の性能など)や、通信回線の通信状態などの制約を受け、情報センターとの通信が不可能となる領域におけるナビゲーションサービスを提供できなくなる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−54939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の目的は、情報センターとの通信が不可能となる領域においてもナビゲーションサービスを安定して提供することができるナビゲーションシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、情報センターと通信しながら動作するナビゲーション装置を備えたナビゲーションシステムにおいて、ナビゲーション装置と情報センターとの通信が不可能となる領域におけるナビゲーションサービスの提供を維持するための処理に特徴を有する。
即ち、請求項1の発明によれば、ナビゲーション装置は、判断手段によって、進行方向検出手段が検出する車両の進行方向上に、情報センターとの通信が不可能となる通信不可能領域が存在するか否かを判断し、判断手段が車両の進行方向上に通信不可能領域が存在すると判断した場合に、走行領域推定手段によって、通信不可能領域において車両が走行する可能性が高い領域を推定する。そして、ナビゲーション装置は、データ取得手段によって、通信不可能領域のうち走行領域推定手段が推定した領域に対応するデータを、現在位置検出手段が検出する車両の現在位置が当該通信不可能領域に進入する前に情報センターから取得する。
【0006】
このようにナビゲーション装置は、車両が通信不可能領域に進入する前に、当該通信不可能領域において車両が走行する可能性が高い領域に対応するデータのみを情報センターから取得する。従って、車両が通信不可能領域に進入する前にナビゲーション装置が取得するデータ量や通信量を必要最低限に抑えることができ、システムの構成上の制約や通信回線の通信状態などの制約を受け難い。これにより、通信不可能領域、つまり、情報センターとの通信が不可能となる領域においてもナビゲーションサービスを安定して提供することができる。
【0007】
請求項2の発明によれば、現在位置検出手段による車両の現在位置検出機能に用いるデータ、および、車両を目的地まで案内する経路案内機能に用いるデータは、基本データとしてナビゲーション装置に格納され、現在位置検出機能に用いるデータおよび経路案内機能に用いるデータ以外のデータは、拡張データとして情報センターに格納されている。そして、ナビゲーション装置は、判断手段が車両の進行方向上に通信不可能領域が存在すると判断した場合に、データ取得手段によって、通信不可能領域のうち走行領域推定手段が推定した領域に対応する拡張データを、現在位置検出手段が検出する車両の現在位置が当該通信不可能領域に進入する前に情報センターから取得する。
このように、車両が通信不可能領域に進入する前にナビゲーション装置が取得するデータを基本データ以外の拡張データのみとしたので、データ量や通信量を一層抑えることができ、通信不可能領域におけるナビゲーションサービスを一層安定して提供することができる。また、車両が通信不可能領域に進入した後においても、現在位置検出機能および経路案内機能といった基本的なナビゲーションサービスを常に安定して提供することができる。
【0008】
請求項3の発明によれば、走行領域推定手段は、車両の進行方向に沿う案内経路の周辺領域を、通信不可能領域において車両が走行する可能性が高い領域として推定する。また、請求項4の発明によれば、ナビゲーション装置は、車両の走行履歴に関するデータを記憶する履歴データ記憶手段を備え、走行領域推定手段は、履歴データ記憶手段に記憶されているデータに基づいて、通信不可能領域において車両が走行する可能性が高い領域を推定する。また、請求項5の発明によれば、走行領域推定手段は、車両の進行方向に向かって遠ざかるほど、通信不可能領域において車両が走行する可能性が高い領域として推定する領域の範囲を狭く設定する。これらの発明のように、走行領域推定手段が、通信不可能領域において車両が走行する可能性が高い領域として推定する領域やその推定態様は、適宜変更して設定することができる。そして、このような構成によっても、通信不可能領域におけるナビゲーションサービスを安定して提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るものであり、ナビゲーションシステムの構成を示すブロック図
【図2】制御内容を示すフローチャート
【図3】表示器の表示画面を示す図
【図4】通信可能領域および通信不可能領域とナビゲーションサービスの提供レベルとの関係を示す図
【図5】本発明の第2の実施形態に係る図1相当図
【図6】図3相当図
【図7】変形例に係る図3相当図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について図1から図4を参照しながら説明する。
図1は、ナビゲーションシステム10の構成を概略的に示す機能ブロック図である。ナビゲーションシステム10は、ナビゲーション装置11と情報センター12とからなる。
ナビゲーション装置11は、例えば自動車などの車両に搭載され、制御装置13、位置/方向検出部14、データ入力部15、操作スイッチ部16、外部メモリ17、表示器18、音声コントローラ19、リモコンセンサ20、通信部21などを備えている。制御装置13は、図示しないCPU、ROMおよびRAMを有するマイクロコンピュータを主体として構成されている。ナビゲーション装置11は、制御装置13のCPUにおいて制御プログラムを実行することにより、判断部22、走行領域推定部23、データ送信要求部24およびデータ取得部25をソフトウェアによって仮想的に実現する。
【0011】
位置/方向検出部14は、現在位置検出手段および進行方向検出手段として機能するものである。即ち、位置/方向検出部14は、GPS(Global Positioning System)により車両の現在位置を測位する構成であり、GPS受信器31がGPS衛星(図示せず)から受信した電波に基づいて、ナビゲーション装置11を搭載した車両の現在位置を検出する。また、位置/方向検出部14は、方位センサ32が検出する車両の方位およびジャイロセンサ33が検出する車両の回転角度に基づいて、ナビゲーション装置11を搭載した車両の進行方向を検出する。位置/方向検出部14は、さらに、車両の走行距離を検出する距離センサ34を有している。
【0012】
データ入力部15は、データ記憶部35から地図データなどの各種のデータを取得する。データ記憶部35に記憶されているデータは、図示しないドライブ装置によってデータ入力部15に読み取られる。データ記憶部35としては、例えばDVDやCDなどの大容量記憶媒体、メモリカードあるいはハードディスクドライブなどの記憶媒体が用いられる。
データ記憶部35に記憶されているデータは、複数のノードおよびノード同士をつなぐリンクにより形成された道路データ、背景データ、目印データ、マップマッチング用データ、目的地データ、交通情報を道路データに変換するためのテーブルデータなどの各種のデータを含んでいる。また、データ記憶部35に記憶されているデータは、表示器18に表示される地図(例えば図3参照)において、ナビゲーション装置11と情報センター12との通信が可能である通信可能領域Aと、ナビゲーション装置11と情報センター12との通信が不可能となる通信不可能領域Bとを識別するための領域識別データを含んでいる。なお、この場合、図3に示す破線よりも下側の領域が通信可能領域Aであり、破線よりも上側の領域が通信不可能領域Bである。
【0013】
また、データ記憶部35に記憶されているデータは、ナビゲーション装置11に例えば製品出荷時から予め格納されている基本データと、後述する情報センター12に格納され当該情報センター12からナビゲーション装置11に配信される拡張データとを含む。基本データは、ナビゲーション装置11が備える基本機能に用いるデータであり、例えば、位置/方向検出部14による車両の現在位置検出機能に用いるデータ、2次元の地図表示により車両を目的地まで案内する経路案内機能に用いるデータなどからなる。拡張データは、ナビゲーション装置11が備える拡張機能に用いるデータであり、例えば、特定の施設や地点(例えば、コンビニエンスストア、デパート、レストラン、駅、レジャー施設、宿泊施設、マンション、地名、地域名)などを探索する探索機能に用いるデータ、3次元の地図表示により車両を目的地まで案内する経路案内機能に用いるデータ、高速道路や有料道路などの特定の道路における車両の経路案内を行う専用ナビゲーション機能に用いるデータなど、上記した基本機能に用いるデータ以外のデータであって精度が高く付加価値の高いデータからなる。
【0014】
操作スイッチ部16は、表示器18の画面の近傍に設けられているメカニカルスイッチ、および、表示器18の画面に設けられているタッチパネルスイッチなどから構成されている。ユーザは、操作スイッチ部16の各スイッチを用いて、車両の目的地、表示器18の画面や表示態様の切り替え(例えば、地図縮尺の変更、メニュー画面の選択、経路の探索、経路案内の開始、現在位置の修正および音量の調整など)を行う各種のコマンドの入力を行う。これにより、ナビゲーション装置11は、ユーザの指示に従って作動する。リモコンセンサ20は、リモコン36との間でコマンドなどの送受信を行う。リモコン36には、複数の操作スイッチが設けられている。リモコン36の操作スイッチを操作することにより、リモコン36からリモコンセンサ20を経由して各種の指令信号が制御装置13へ送信される。操作スイッチ部16およびリモコン36は、何れの操作によっても制御装置13へ同一の機能を実行させることができる。
【0015】
外部メモリ17は、例えば着脱可能なフラッシュメモリカードやハードディスクドライブによって構成されている。なお、外部メモリ17は、例えばナビゲーション装置11の制御装置13に設けられているRAMやEEPROM、あるいはデータ記憶部35などと共用してもよい。表示器18は、例えば液晶や有機ELなどのカラーディスプレイを有している。表示器18の画面は、車両の現在位置周辺の地図が各種縮尺で表示されるとともに、この地図表示に重ねて車両の現在位置および進行方向を示す現在地マーク(図3に符号Nで示す)が表示される。また、目的地までの経路案内を実行するとき、表示器18の画面には経路案内用の画面が表示される。
音声コントローラ19は、車載スピーカ37に接続している。音声コントローラ19は、制御装置13からの音声出力信号に基づいて、音声出力信号を車載スピーカ37へ出力する。車載スピーカ37から出力される音声は、案内に関する音声、操作説明に関する音声、盗難防止機能の動作中であることを報知する音声、ならびに音声認識結果に応じたトークバック音声などである。
【0016】
制御装置13は、車両が走行経路に沿って移動可能とするために、表示器18の画面に現在地周辺の道路地図を表示するとともに、車両の現在位置および進行方向を示す現在地マークを道路に重ねて表示する。この場合、車両の走行に伴って現在地の表示は、表示器18に表示された地図上を移動する。表示器18に表示された地図は、車両の現在位置に応じてスクロールされる。このとき、制御装置13は、車両の現在位置を道路上にあわせるマップマッチングを実施する。
【0017】
通信部21は、通信回線38を経由して情報センター12との間でデータ通信を行う。
判断部22は、位置/方向検出部14によって検出された車両の進行方向上に、情報センター12との通信が不可能となる通信不可能領域が存在するか否かを判断する。この場合、判断部22は、データ記憶部35に記憶されている領域識別データに基づいて、車両の進行方向上における通信不可能領域の存否を判断する。
走行領域推定部23は、判断部22が車両の進行方向上に通信不可能領域が存在すると判断した場合に、通信不可能領域において車両が走行する可能性が高い領域を推定する。この推定処理の内容については後述する。
【0018】
データ送信要求部24は、走行領域推定部23が推定した領域(通信不可能領域において車両が走行する可能性が高い領域)を特定する領域特定データを通信部21を介して情報センター12に送信し、当該領域に対応する拡張データの送信を情報センター12に要求する。
データ取得部25は、判断部22が車両の進行方向上に通信不可能領域が存在すると判断した場合に、当該通信不可能領域のうち走行領域推定部23が推定した領域に対応する拡張データを、位置/方向検出部14が検出する車両の現在位置が当該通信不可能領域に進入する前に、通信部21を介して情報センター12から受信して取得する。
【0019】
情報センター12は、制御装置41、通信部42、拡張データ記憶部43などを備えている。制御装置41は、図示しないCPU、ROMおよびRAMを有するマイクロコンピュータを主体として構成されている。情報センター12は、制御装置41のCPUにおいて制御プログラムを実行することにより、データ抽出部44およびデータ送信部45をソフトウェアによって仮想的に実現する。
【0020】
通信部42は、通信回線38を経由して各車両のナビゲーション装置11との間でデータ通信を行う。
拡張データ記憶部43は、上述した拡張データを記憶するデータベースである。
データ抽出部44は、ナビゲーション装置11からデータ送信の要求を受けた場合に、受信した領域特定データに基づいて、ナビゲーション装置11の走行領域推定部23が推定した領域を特定し、その特定した領域に対応する拡張データを拡張データ記憶部43から抽出する。
データ送信部45は、データ抽出部44が拡張データ記憶部43から抽出した拡張データを、通信部42を介してナビゲーション装置11に送信する。
【0021】
上記構成のナビゲーションシステム10において、ナビゲーション装置11の制御装置13は、通信可能領域においては、基本データおよび情報センター12から適宜配信される拡張データに基づいて、基本機能による各種のナビゲーションサービスおよび拡張機能による各種のナビゲーションサービスを提供する。そして、通信不可能領域においても、一定レベル以上(少なくとも基本機能のみによる提供レベル以上)のナビゲーションサービスを提供することが可能である。次に、このよう一定レベル以上のナビゲーションサービスを提供する場合のナビゲーションシステム10の動作内容、即ち、ナビゲーション装置11の制御装置13および情報センター12の制御装置41による制御内容について説明する。図2は、ナビゲーション装置11の制御装置13および情報センター12の制御装置41が実行する制御内容を示すフローチャートである。
【0022】
ナビゲーション装置11の制御装置13は、データ記憶部35に記憶されている各種のデータに基づいて表示器18に経路案内用の地図を表示すると(ステップA1)、当該ナビゲーション装置11が搭載された車両の現在位置および進行方向を位置/方向検出部14によって検出する(ステップA2)。そして、制御装置13は、検出した車両の進行方向上に、情報センター12との通信が不可能となる通信不可能領域が存在するか否かを判断部22によって判断する(ステップA3)。制御装置13は、通信不可能領域が存在しないと判断した場合には(ステップA3にてNO)、ステップA2に移行する。一方、制御装置13は、検出した車両の進行方向上に、情報センター12との通信が不可能となる通信不可能領域が存在すると判断した場合には(ステップA3にてYES)、当該通信不可能領域において車両が走行する可能性が高い領域を推定する(ステップA4)。この場合、制御装置13は、図3に示すように、検出した車両の進行方向に沿う案内経路R1の周辺領域r1を、通信不可能領域において車両が走行する可能性が高い領域として推定する。また、制御装置13は、案内経路R1上を車両の現在位置Nから当該車両の進行方向(図3では上方向)に向かって遠ざかるほど、車両が走行する可能性が高い領域として推定する領域r1の範囲を狭く設定する。
次に、制御装置13は、車両の現在位置が通信不可能領域に進入する前に、データ送信の要求処理を実行する(ステップA5)。このデータ送信の要求処理では、制御装置13は、通信不可能領域のうち車両が走行する可能性が高い領域として推定した領域(この場合、図3に示す領域r1)に対応する拡張データの送信を情報センター12に要求する。
【0023】
情報センター12の制御装置41は、ナビゲーション装置11の制御装置13からデータ送信の要求を受けると(ステップB1にてYES)、通信不可能領域のうち車両が走行する可能性が高い領域として推定された領域(領域r1)に対応する拡張データを拡張データ記憶部43から抽出する(ステップB2)。そして、制御装置41は、抽出した拡張データを、データ送信を要求したナビゲーション装置11に送信する(ステップB3)。
【0024】
ナビゲーション装置11の制御装置13は、情報センター12の制御装置41から拡張データを受信して取得すると(ステップA6にてYES)、車両が通信不可能領域に進入した後において、予め保有する基本データおよび情報センター12から取得した拡張データに基づいて動作し、基本機能による各種のナビゲーションサービスおよび拡張機能による各種のナビゲーションサービスを提供する(ステップA7)。
【0025】
ここで、このようなナビゲーションシステム10によって提供されるナビゲーションサービスのレベル(安定して提供されるサービスのレベル)について図4を参照して説明する。即ち、通信可能領域においては、ナビゲーション装置11は、基本データに基づく基本機能によるナビゲーションサービス、および、情報センター12から取得した拡張データに基づく拡張機能によるナビゲーションサービスの双方のサービスを提供できる。そして、車両が通信可能領域から通信不可能領域に進入した後においては、拡張機能によるナビゲーションサービスの提供レベルが徐々に低下していく。即ち、車両が通信不可能領域に進入した直後では、基本機能によるナビゲーションサービスおよび拡張機能によるナビゲーションサービスの双方のサービスを提供できるが、車両が通信不可能領域を進行するに従って利用できる拡張データが少なくなり、拡張機能によるナビゲーションサービスの提供レベルが徐々に低下してく。そして、車両の進行に伴い利用できる拡張データが無くなると、ナビゲーション装置11が提供できるナビゲーションサービスは基本機能によるサービスのみとなる。なお、車両が通信不可能領域から通信可能領域に進行した場合には、ナビゲーション装置11が情報センター12から拡張データを受信できる状態が復帰することから、再び基本機能によるナビゲーションサービスおよび拡張機能によるナビゲーションサービスの双方のサービスを提供できるようになる。
【0026】
以上に説明したように本実施形態によれば、ナビゲーション装置11は、車両が通信不可能領域に進入する前に、当該通信不可能領域において車両が走行する可能性が高い領域に対応する拡張データのみを情報センター12から取得する。従って、車両が通信不可能領域に進入する前にナビゲーション装置11が取得するデータ量や通信量を必要最低限に抑えることができ、システムの構成上の制約や通信回線の通信状態などの制約を受け難い。これにより、通信不可能領域、つまり、ナビゲーション装置11と情報センター12との通信が不可能となる領域においてもナビゲーションサービスを一定以上(少なくとも基本機能のみによる提供レベル以上)のレベルで安定して提供することができる。
【0027】
また、車両が通信不可能領域に進入する前にナビゲーション装置11が取得するデータを基本データ以外の拡張データのみとしたので、データ量や通信量を一層抑えることができ、通信不可能領域におけるナビゲーションサービスを一層安定して提供することができる。また、車両が通信不可能領域に進入した後においても、ナビゲーション装置11は、現在位置検出機能および経路案内機能といった基本的な機能に基づくナビゲーションサービスを常に安定して提供することができる。
【0028】
また、制御装置13が走行領域推定部23によって推定する領域を、車両の進行方向に向かって遠ざかるほど狭くするように設定した。従って、車両が通信不可能領域に進入した後における拡張機能によるナビゲーションサービスの提供レベルは、急激に低下するのではなく徐々に低下していく。これにより、車両が通信不可能領域に進入した途端にナビゲーションサービスの提供レベルが急激に変化することがなく、ユーザに違和感を与えることがない。
【0029】
また、基本データをナビゲーション装置11に予め格納する構成としたので、車両が通信不可能領域に進入した後においても、基本機能のみによるサービスの提供レベル以上のレベルでナビゲーションサービスを提供することができる。即ち、ナビゲーションサービスの提供レベルが、基本機能のみによるサービスの提供レベルよりも低下することがない。
また、拡張データを情報センター12からナビゲーション装置11に配信する構成としたので、情報センター12において拡張データを一括して管理することができ、データの修正や更新などを容易に行うことができる。
【0030】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について図5から図7を参照しながら説明する。本実施形態は、ナビゲーションシステム10の構成と制御内容が上述の第1の実施形態と異なる。以下、上述の第1の実施形態と異なる点のみを説明する。
図5に示すように、本実施形態では、ナビゲーション装置11の制御装置13は、履歴データ記憶部51を備えている。この履歴データ記憶部51は、ユーザの行動履歴(車両の走行履歴)や嗜好などに関するデータを記憶するものである。この場合、履歴データ記憶部51には、ユーザが実際に訪れた例えばコンビニエンスストアなどの施設を特定するデータが記憶されている。なお、制御装置13は、例えば、車両の経路案内の目的地や経由地として設定された施設、車両が所定時間(少なくとも信号待ち時間よりも長い時間)停車した地点に存在する施設、ユーザが操作スイッチ部16やリモコン36などを介して好みの施設として入力した施設などを履歴データ記憶部51に記憶する。また、制御装置13は、各施設を、当該施設にユーザが実際に立ち寄った回数とともに履歴データ記憶部51に記憶する。なお、各施設に立ち寄った回数は、例えば、その施設が経路案内の目的地や経由地として設定された回数、その施設に車両が所定時間(少なくとも信号待ち時間よりも長い時間)停車した回数、ユーザが操作スイッチ部16やリモコン36などを介して好みの施設として入力した回数などに基づいて特定することができる。
【0031】
このような構成のナビゲーション装置11において、走行領域推定部23は、判断部22が車両の進行方向上に通信不可能領域が存在すると判断した場合に、履歴データ記憶部51に記憶されているデータに基づいて、通信不可能領域において車両が走行する可能性が高い領域を推定する。具体的には、走行領域推定部23は、通信不可能領域内に存在する施設のうち、ユーザが実際に訪れた回数が多い施設、あるいは、当該施設と同系列の施設(同一の商号の施設、同一の店名の施設、同一の商品を取り扱う施設など)を抽出する。そして、走行領域推定部23は、図6に示すように、抽出した施設(図示せず)へ連なる経路R2の周辺領域r2を、車両が走行する可能性が高い領域として推定する。なお、この場合、走行領域推定部23は、施設へ連なる経路R2上を車両の現在位置Nから遠ざかるほど、車両が走行する可能性が高い領域として推定する領域r2の範囲を狭く設定する。
そして、ナビゲーション装置11の制御装置13は、車両が通信不可能領域に進入する前に、当該領域r2に対応する拡張データを情報センター12から取得し、車両が通信不可能領域に進入した後において、予め保有する基本データおよび情報センター12から取得した拡張データに基づいて、基本機能および拡張機能による各種のナビゲーションサービスを提供する。
【0032】
以上に説明したように、走行領域推定部23が、通信不可能領域において車両が走行する可能性が高い領域として推定する領域は、案内経路の周辺領域に限られるものではなく、適宜変更して設定することができる。そして、このような実施形態によっても、上述の第1の実施形態と同様に、通信不可能領域において、ナビゲーションサービスを一定以上のレベルで安定して提供することができる。
なお、例えば図7に示すように、走行領域推定部23は、通信不可能領域において車両が走行する可能性が高い領域として複数の領域を推定するように構成し、ナビゲーション装置11は、これら複数の領域に対応するデータを情報センター12から取得するように構成してもよい。
【0033】
(その他の実施形態)
本発明は、上述した各実施形態にのみ限定されるものではなく、例えば次のように変形または拡張することができる。
走行領域推定部23が、通信不可能領域において車両が走行する可能性が高い領域として推定する領域は、例えば以下のように設定してもよい。
例えば、車両が通信不可能領域に進入する時間帯が、ユーザが食事をする可能性が高い時間帯であれば、走行領域推定部23は、通信不可能領域内に存在するレストランなどの飲食店を探索し、当該飲食店に連なる経路の周辺領域を、通信不可能領域において車両が走行する可能性が高い領域として推定するようにしてもよい。
【0034】
さらに、履歴データ記憶部51に、ユーザが実際に訪れた飲食店を特定するデータと、当該飲食店に訪れた時間帯とを対応付けて記憶しておき、走行領域推定部23は、車両が通信不可能領域に進入する時間帯が履歴データ記憶部51に記憶されている時間帯の何れかに該当する場合には、当該時間帯に対応付けて履歴データ記憶部51に記憶されている飲食店あるいは当該飲食店と同系列の飲食店を探索し、当該飲食店に連なる経路の周辺領域を、通信不可能領域において車両が走行する可能性が高い領域として推定するようにしてもよい。
【0035】
また、車両の燃料の残量が、通信不可能領域内で給油が必要なほど少なくなっている場合には、走行領域推定部23は、通信不可能領域内に存在する給油所を探索し、当該給油所に連なる経路の周辺領域を、通信不可能領域において車両が走行する可能性が高い領域として推定するようにしてもよい。
さらに、探索した給油所までの経路が渋滞している場合や当該経路に工事区間がある場合には、制御装置13は、通信可能領域内に存在する給油所を探索し、当該給油所までの経路を迂回路としてユーザに報知するようにしてもよい。そして、制御装置13は、ユーザが当該迂回路を設定経路として選択した場合には、走行領域推定部23による領域の推定処理や情報センター12からの拡張データの取得処理を行わないようにするとよい。
基本機能に含む機能、あるいは、拡張機能に含む機能は、ユーザやシステム管理者が適宜設定することができる。
【符号の説明】
【0036】
図面中、10はナビゲーションシステム、11はナビゲーション装置、12は情報センター、14は位置/方向検出部(現在位置検出手段、進行方向検出手段)、22は判断部(判断手段)、23は走行領域推定部(走行領域推定手段)、25はデータ取得部(データ取得手段)、51は履歴データ記憶部(履歴データ記憶手段)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報センターと通信しながら動作するナビゲーション装置を備えたナビゲーションシステムにおいて、
前記ナビゲーション装置は、
当該ナビゲーション装置が搭載された車両の現在位置を検出する現在位置検出手段と、
前記車両の進行方向を検出する進行方向検出手段と、
前記進行方向検出手段が検出する前記車両の進行方向上に、前記情報センターとの通信が不可能となる通信不可能領域が存在するか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段が前記車両の進行方向上に前記通信不可能領域が存在すると判断した場合に、前記通信不可能領域において前記車両が走行する可能性が高い領域を推定する走行領域推定手段と、
前記判断手段が前記車両の進行方向上に前記通信不可能領域が存在すると判断した場合に、当該通信不可能領域のうち前記走行領域推定手段が推定した領域に対応するデータを、前記現在位置検出手段が検出する前記車両の現在位置が当該通信不可能領域に進入する前に前記情報センターから取得するデータ取得手段と、
を備えることを特徴とするナビゲーションシステム。
【請求項2】
前記現在位置検出手段による前記車両の現在位置検出機能に用いるデータ、および、前記車両を目的地まで案内する経路案内機能に用いるデータは、基本データとして前記ナビゲーション装置に格納され、
前記現在位置検出機能に用いるデータおよび前記経路案内機能に用いるデータ以外のデータは、拡張データとして前記情報センターに格納され、
前記データ取得手段は、
前記判断手段が前記車両の進行方向上に前記通信不可能領域が存在すると判断した場合に、当該通信不可能領域のうち前記走行領域推定手段が推定した領域に対応する前記拡張データを、前記現在位置検出手段が検出する前記車両の現在位置が当該通信不可能領域に進入する前に前記情報センターから取得することを特徴とする請求項1記載のナビゲーションシステム。
【請求項3】
前記走行領域推定手段は、前記車両の進行方向に沿う案内経路の周辺領域を、前記通信不可能領域において前記車両が走行する可能性が高い領域として推定することを特徴とする請求項1または2に記載のナビゲーションシステム。
【請求項4】
前記ナビゲーション装置は、前記車両の走行履歴に関するデータを記憶する履歴データ記憶手段を備え、
前記走行領域推定手段は、前記履歴データ記憶手段に記憶されているデータに基づいて、前記通信不可能領域において前記車両が走行する可能性が高い領域を推定することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のナビゲーションシステム。
【請求項5】
前記走行領域推定手段は、前記車両の進行方向に向かって遠ざかるほど、前記通信不可能領域において前記車両が走行する可能性が高い領域として推定する領域の範囲を狭く設定することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のナビゲーションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−220802(P2011−220802A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89434(P2010−89434)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】