説明

ナビゲーション装置、ナビゲーション方法及びナビゲーション機能付携帯電話機

【課題】本発明は、GPS信号を受信できない環境下においても移動体の現在位置を高精度に通知できるようにする。
【解決手段】本発明は、GPS信号に基づいて現在位置を測位し、現在位置を示す自車マークPMを周辺地図に重ねて表示し、現リンクに対する次リンクの属性情報を読み出し、当該次リンクに対して衛星信号の受信感度が悪いと想定されるエリアであると判断した場合、現リンクから次リンクへ移った後はGPS信号に基づく現在位置を用いるのではなく、自律的に推測した現在位置に従って自車マークPMを止めることなく周辺地図に表示し続けるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置、ナビゲーション方法及びナビゲーション機能付携帯電話機に関し、例えば携帯型ナビゲーション装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ナビゲーション装置においては、複数のGPS(Global Positioning System)衛星からの測位信号(以下、これをGPS信号とも呼ぶ)を受信し、当該GPS信号に基づいて車両の現在位置を算出するようになされている。
【0003】
しかしながらこのようなナビゲーション装置では、当該ナビゲーション装置を載置した車両が例えばトンネルや地下駐車場等に入った場合、GPS衛星からのGPS信号を受信できないため、当該GPS信号に基づいて車両の現在位置を算出し得なくなる。
【0004】
そこでナビゲーション装置のなかには、GPS信号が受信できなくなった場合であっても、コーナリング時において、車両の進行方向に直交した水平方向の加速度と、当該進行方向に直交した垂直軸周りの角速度とを基に進行方向の速度を算出し、当該進行方向の速度に基づいて現在位置を算出するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
またナビゲーション装置においては、車両の現在位置がトンネル内であるかどうかを判定し、トンネル内であるときに地図画面上のトンネルを強調表示することにより、車両がトンネル通過中であることを知らせ、自車位置を見失うことを防止するものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−76389公報
【特許文献2】特開平6−317650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで上述した特許文献2のナビゲーション装置では、トンネルを強調表示することにより自車位置がトンネル通過中であることを通知するだけであって、自車位置を正確に通知し得ないという問題があった。
【0008】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、GPS信号を受信できない環境下においても移動体の現在位置を高精度に通知し得るナビゲーション装置、ナビゲーション方法及びナビゲーション機能付携帯電話機を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため本発明のナビゲーション装置においては、衛星から受信した衛星信号に基づいて現在位置を測位する測位手段と、現在位置を含む周辺地図を記憶手段から読み出して表示手段に表示する地図表示手段と、現在位置を示す所定形状のマークを生成し、周辺地図に重ねて表示する現在位置通知手段と、衛星信号を受信できない通信環境下になったとき、現在位置を推測することにより推測現在位置を得る推測現在位置取得手段と、現在位置が含まれている現リンクに対する次リンクの属性情報を読み出し、当該次リンクに対して衛星信号の受信感度が悪いと想定されるエリアであると判断した場合、現リンクから次リンクへ移った後は測位手段による現在位置を用いるのではなく推測現在位置に従ってマークを止めることなく周辺地図に表示し続ける制御手段とを有するようにする。
【0010】
これにより、次リンクに対して衛星信号の受信感度が悪いエリアと判断した場合、現リンクから次リンクへ移った後は推測現在位置に従ってマークを止めることなく周辺地図に表示し続けることができるので、マークを止めて表示する場合に比べて推測現在位置により移動体の現在位置を正確に提示することができる。
【0011】
また本発明のナビゲーション方法においては、所定の測位手段が衛星から受信した衛星信号に基づいて現在位置を測位する測位ステップと、所定の地図読出手段が現在位置を含む周辺地図を記憶手段から読み出して表示手段に表示する地図表示ステップと、所定の現在位置通知手段が現在位置を示す所定形状のマークを生成し、周辺地図に重ねて表示する現在位置通知ステップと、衛星信号を受信できない通信環境下になったとき、所定の推測現在位置取得手段が現在位置を推測することにより推測現在位置を得る推測現在位置取得ステップと、所定の制御手段が、現在位置が含まれている現リンクに対する次リンクの属性情報を読み出し、当該次リンクについて衛星信号の受信感度が悪いと想定されるエリアであると判断した場合、現リンクから次リンクへ移った後は測位手段による上記現在位置を用いるのではなく推測現在位置に従ってマークを止めることなく周辺地図に表示し続ける制御ステップとを有するようにする。
【0012】
これにより、次リンクに対して衛星信号の受信感度が悪いエリアと判断した場合、現リンクから次リンクへ移った後は推測現在位置に従ってマークを止めることなく周辺地図に表示し続けることができるので、マークを止めて表示する場合に比べて推測現在位置により移動体の現在位置を正確に提示することができる。
【0013】
さらに本発明のナビゲーション機能付携帯電話機においては、携帯電話ユニットと、衛星から受信した衛星信号に基づいて現在位置を測位する測位手段と、現在位置を含む周辺地図を記憶手段から読み出して表示手段に表示する地図表示手段と、現在位置を示す所定形状のマークを生成し、周辺地図に重ねて表示する現在位置通知手段と、衛星信号を受信できない通信環境下になったとき、所定の推測現在位置取得手段が現在位置を推測することにより推測現在位置を得る推測現在位置取得手段と、現在位置が含まれている現リンクに対する次リンクの属性情報を読み出し、当該次リンクについて衛星信号の受信感度が悪いと想定されるエリアであると判断した場合、現リンクから次リンクへ移った後は測位手段による現在位置を用いるのではなく推測現在位置に従ってマークを止めることなく周辺地図に表示し続ける制御手段とからなるナビゲーション装置とを有するようにする。
【0014】
これによりナビゲーション機能付携帯電話機では、次リンクに対して衛星信号の受信感度が悪いエリアと判断した場合、現リンクから次リンクへ移った後は推測現在位置に従ってマークを止めることなく周辺地図に表示し続けることができるので、マークを止めて表示する場合に比べて推測現在位置により移動体の現在位置を正確に提示することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、次リンクに対して衛星信号の受信感度が悪いエリアと判断した場合、現リンクから次リンクへ移った後は推測現在位置に従ってマークを止めることなく周辺地図に表示し続けることができるので、マークを止めて表示する場合に比べて推測現在位置により移動体の現在位置を正確に提示し得るナビゲーション装置、ナビゲーション方法及びナビゲーション機能付携帯電話機を提案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】PNDの全体構成を示す略線図である。
【図2】PNDの座標系の定義を示す略線図である。
【図3】凹凸路面の走行時の様子を示す略線図である。
【図4】カーブ走行時の様子を示す略線図である。
【図5】速度及び角度を用いた現在位置算出手法を示す略線図である。
【図6】PNDにおけるセンサ構成を示す略線図である。
【図7】PNDの回路構成を示す略線図である。
【図8】速度算出部の構成を示す略線図である。
【図9】高度及び角度の関係を示す略線図である。
【図10】低速時における路面角度の様子を示す略線図である。
【図11】高速時における路面角度の様子を示す略線図である。
【図12】超低速時における路面角度の様子を示す略線図である。
【図13】クレードルによる振動の様子を示す略線図である。
【図14】ハイパスフィルタ処理後の加算加速度及び加算角速度を示す略線図である。
【図15】4096データ点ごとにフーリエ変換を施した加算角速度を示す略線図である。
【図16】4096データ点ごとにフーリエ変換を施した加算加速度を示す略線図である。
【図17】加算加速度に対するローパスフィルタ処理の比較を示す略線図である。
【図18】加算角速度に対するローパスフィルタ処理の比較を示す略線図である。
【図19】低速時におけるフロント加速度及びリア加速度の関係を示す略線図である。
【図20】中速及び高速時におけるフロント加速度及びリア加速度の関係を示す略線図である。
【図21】3種類の設置位置による加速度、ピッチレート及び速度のシミュレーション例を示す略線図である。
【図22】最大値及び最小値の関係を示す略線図である。
【図23】速度とデータ点数との関係を示す略線図である。
【図24】異なる円弧の長さによる加速度及びピッチレートの様子を示す略線図である。
【図25】速度算出処理を用いた現在位置算出処理手順の説明に供するフローチャートである。
【図26】自車マークをトンネル内に留める表示制御の説明に供する略線図である。
【図27】自車マークをトンネル内に留めることなく継続する表示制御の説明に供する略線図である。
【図28】自車マーク表示制御処理手順を示すフローチャートである。
【図29】他の実施の形態によるナビゲーション機能付携帯電話機の回路構成を示す略線的ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態
2.他の実施の形態
【0018】
<1.実施の形態>
[1−1.PNDの外観構成]
本発明において、図1は本実施の形態における携帯型ナビゲーション装置(以下、これをPND(Personal Navigation Device)とも呼ぶ)を示す。このPND1は、当該PND1における前面に表示部2が設けられており、当該PND1に内蔵された例えば不揮発性メモリ(図示せず)に格納されている地図データに応じた地図画像等を表示部2に対して表示し得るようになされている。
【0019】
またPND1は、車両のダッシュボード上に吸盤3Aを介して取付けられたクレードル3によって保持されると共に、当該PND1とクレードル3とが機械的かつ電気的に接続される。
【0020】
これによりPND1は、クレードル3を介して車両のバッテリから供給される電源電力により動作すると共に、当該クレードル3から取り外されたときには内蔵のバッテリから供給される電力によって独立した状態でも動作するようになされている。
【0021】
ここでPND1は、その表示部2が車両の進行方向に対してほぼ垂直となるように設置されている。このときPND1の座標系は、図2に示すように、当該車両の前後方向(進行方向)をX軸、当該X軸に直交した水平方向をY軸、上下方向をZ軸によって表される。
【0022】
この座標系では、車両の進行方向をX軸の正と定義し、また右方向をY軸の正と定義し、さらに下方向をZ軸の正と定義することとする。
【0023】
[1−2.速度算出原理]
次に、このPND1において当該PND1を搭載した車両の速度を算出する速度算出原理について説明する。
【0024】
実際上、道路を走行中の車両は、平らな道路を走行することが殆どなく、図3(A)に示すような全体として凹状の道路、及び図3(B)に示すような全体として凸状の道路を走行するのが実状である。
【0025】
ここで車両の座標系は、当該車両の前後方向をX軸、当該X軸に直交した水平方向をY軸、上下方向をZ軸によって表される。
【0026】
この車両の例えばダッシュボード上に載置されたPND1(図示せず)は、車両が凹状の道路(図3(A))を走行したとき、当該PND1に設けられた3軸加速度センサによって、Z軸に沿った下方向の加速度αzを例えば50[Hz]のサンプリング周波数で検出する。
【0027】
またPND1は、当該PND1に設けられたY軸ジャイロセンサによって進行方向に直交したY軸周りの角速度(以下、これをピッチレートとも呼ぶ)ωyを50[Hz]のサンプリング周波数で検出する。
【0028】
ここでPND1では、Z軸に沿った下方向の加速度αzを正と定義し、また図3(A)に示すような凹状の路面に沿って形成される仮想上の円を進行方向に対して上向きに縦回転する際のピッチレートωyを正と定義している。
【0029】
このPND1では、3軸加速度センサによって検出した加速度αz及びY軸ジャイロセンサによって検出したピッチレートωyを用い、次式
【0030】
【数1】

【0031】
によって進行方向の速度(以下、これを自律速度と呼ぶ)Vを1秒間当たり50回、算出し得るようになされている。
【0032】
またPND1は、車両が凸状の道路(図3(B))を走行するとき、当該PND1に設けられた3軸加速度センサによってZ軸に沿った上方向の加速度αz’を例えば50[Hz]のサンプリング周波数で検出し、また当該PND1に設けられたY軸ジャイロセンサによってY軸周りのピッチレートωy’を例えば50[Hz]のサンプリング周波数で検出する。
【0033】
そしてPND1では、3軸加速度センサによって検出した加速度αz’及びY軸ジャイロセンサによって検出したピッチレートωy’を用い、次式
【0034】
【数2】

【0035】
によって進行方向の自律速度V’を1秒間当たり50回、算出し得るようになされている。
【0036】
ここでは説明の便宜上、負の加速度αzを加速度αz’として説明しているが、実際には、3軸加速度センサは加速度αz’を加速度αzの負の値として検出している。またピッチレートωy’についても同様に、負のピッチレートωyをピッチレートωy’として説明しているが、実際には、Y軸ジャイロセンサは、ピッチレートωy’をピッチレートωyの負の値として検出している。従って、実際には自律速度V’も、自律速度Vとして算出される。
【0037】
[1−3.現在位置算出原理]
次に、上述した速度算出原理により算出した自律速度Vと、Z軸回りの角速度とに基づいて現在位置を算出する現在位置算出原理について説明する。
【0038】
図4に示すように、PND1は、車両が例えば左旋回している時のZ軸回りの角速度(以下、これをヨーレートとも呼ぶ)ωzを当該PNDに設けられたZ軸ジャイロセンサによって例えば50[Hz]のサンプリング周波数で検出する。
【0039】
次にPND1は、図5に示すように、前回の位置P0における自律速度Vと、ジャイロセンサにより検出したヨーレートωzにサンプリング周期(この場合、0.02[s])を積算することにより得られる角度θとを基に、前回の位置P0から現在位置P1までの変化量を求める。そしてPND1は、この変化量を前回の位置P0に加えることによって現在位置P1を算出し得るようになされている。
【0040】
[1−4.PNDのセンサ構成]
図6に示すように、PND1は、その内部に3軸加速度センサ4、Y軸ジャイロセンサ5、Z軸ジャイロセンサ6及び気圧センサ7が設けられている。
【0041】
3軸加速度センサ4は、X軸に沿った加速度αx、Y軸に沿った加速度αy、及びZ軸に沿った加速度αzをそれぞれ電圧値として検出するようになされている。
【0042】
またY軸ジャイロセンサ5、Z軸ジャイロセンサ6及び気圧センサ7は、Y軸周りのピッチレートωy、Z軸周りのヨーレートωz及び周囲の気圧PRをそれぞれ電圧値として検出するようになされている。
【0043】
[1−5.PNDの回路構成]
図7に示すように、PND1の制御部11は、CPU(Central Processing Unit)構成でなり、例えば不揮発性メモリ等でなる記憶部12から読み出した基本プログラムによって全体を統括制御するようになされている。
【0044】
またPND1は、制御部11が記憶部12から読み出した各種アプリケーションプログラムに従って後述する速度算出処理等を実行するようになされている。
【0045】
この制御部11は、速度算出処理等を実行する際、GPS処理部21、速度算出部22、角度算出部23、高度算出部24、位置算出部25及びナビゲーション部26として機能するようになされている。
【0046】
このPND1では、GPSアンテナANTによって受信した複数のGPS衛星からのGPS信号を制御部11のGPS処理部21へ送出する。
【0047】
GPS処理部21は、複数のGPS信号をそれぞれ復調することにより得られる軌道データと、複数のGPS衛星から車両までの距離データとに基づいて車両の現在位置を正確に測位することにより現在位置データNPD1を得、これをナビゲーション部26へ送出する。
【0048】
ナビゲーション部26は、現在位置データNPD1を基に車両の現在位置が含まれる周辺の地図データを記憶部12から読み出し、その現在位置が含まれる地図画像を生成した後、表示部2へ出力することにより当該地図画像を表示するようになされている。
【0049】
ところで3軸加速度センサ4は、加速度αx、αy及びαzを例えば50[Hz]のサンプリング周波数で検出し、当該加速度αx、αy及びαzのうち、加速度αzが示された加速度データADを制御部11の速度算出部22へ送出する。
【0050】
Y軸ジャイロセンサ5は、ピッチレートωyを例えば50[Hz]のサンプリング周波数で検出しており、当該ピッチレートωyが示されたピッチレートデータPDを制御部11の速度算出部22へ送出する。
【0051】
速度算出部22は、3軸加速度センサ4から供給された加速度データADに相当する加速度αzと、Y軸ジャイロセンサ5から供給されたピッチレートデータPDに相当するピッチレートωyとを基に、(1)式を用いて1秒当たり50回、自律速度Vを算出し、当該自律速度Vが示された速度データVDを位置算出部25へ送出する。
【0052】
またZ軸ジャイロセンサ6は、ヨーレートωzを例えば50[Hz]のサンプリング周波数で検出しており、当該ヨーレートωzが示されたヨーレートデータYDを制御部11の角度算出部23へ送出する。
【0053】
角度算出部23は、Z軸ジャイロセンサ6から供給されたヨーレートデータYDに相当するヨーレートωzにサンプリング周期(この場合、0.02[s])を積算することにより、車両が右旋回又は左旋回したときの角度θを算出し、その角度θが示された角度データDDを位置算出部25へ送出する。
【0054】
位置算出部25は、速度算出部22から供給された速度データVDに相当する自律速度V、及び角度算出部23から供給された角度データDDに相当する角度θを基に、図5に示したような前回の位置P0から現在位置P1までの変化量を求める。
【0055】
そして位置算出部25は、この変化量を前回の位置P0に加えることによって現在位置P1を算出し、その現在位置P1が示された現在位置データNPD2をナビゲーション部26へ送出する。
【0056】
一方、気圧センサ7は、周囲の気圧PRを例えば50[Hz]のサンプリング周波数で検出しており、当該気圧PRが示された気圧データPRDを高度算出部24へ送出する。
【0057】
高度算出部24は、気圧センサ7から供給された気圧データPRDに相当する気圧PRに基づいて車両の高度を算出し、その高度が示された高度データHDをナビゲーション部26へ送出する。
【0058】
ナビゲーション部26は、位置算出部25から供給された現在位置データNPD2、及び高度算出部24から供給された高度データHDを基に、車両の現在位置が含まれる周辺の地図データを記憶部12から読み出し、その現在位置が含まれる地図画像を生成した後、表示部2へ出力することにより当該地図画像を表示するようになされている。
【0059】
[1−6.自律速度算出処理]
次に、3軸加速度センサ4から供給された加速度データADに相当する加速度αz、及びY軸ジャイロセンサ5から供給されたピッチレートデータPDに相当するピッチレートωyに基づいて自律速度Vを速度算出部22によって算出する自律速度算出処理について詳しく説明する。
【0060】
速度算出部22は、自律速度算出処理を実行する際、図8に示すように、データ取得部31、ハイパスフィルタ部32、ローパスフィルタ部33、速度計算部34、平滑化及びノイズ除去部35及び速度出力部36として機能する。
【0061】
速度算出部22のデータ取得部31は、3軸加速度センサ4から供給される加速度データAD、及びY軸ジャイロセンサ5から供給されるピッチレートデータPDをそれぞれ取得し、当該加速度データAD及びピッチレートデータPDをハイパスフィルタ部32へ送出する。
【0062】
ハイパスフィルタ部32は、データ取得部31から供給された加速度データAD及びピッチレートデータPDの直流成分をカットし、その結果得られる加速度データAD1及びピッチレートデータPD1をローパスフィルタ部33へ送出する。
【0063】
ローパスフィルタ部33は、ハイパスフィルタ部32から供給された加速度データAD1及びピッチレートデータPD1に対して後述するローパスフィルタ処理を施し、その結果得られる加速度データAD2及びピッチレートデータPD2を速度計算部34へ送出する。
【0064】
速度計算部34は、ローパスフィルタ部33から供給された加速度データAD2及びピッチレートデータPD2に対して後述する速度計算処理を施し、その結果得られる速度データVD1を平滑化及びノイズ除去部35へ送出する。
【0065】
平滑化及びノイズ除去部35は、速度計算部34から供給された速度データVD1に対して後述する平滑化及びノイズ除去処理を施し、その結果得られる速度データVDを速度出力部36へ送出する。
【0066】
速度出力部36は、車両の自律速度Vを表すデータとして、平滑化及びノイズ除去部35から供給された速度データVDを位置算出部25へ送出する。
【0067】
このようにして速度算出部22は、3軸加速度センサ4から供給された加速度データAD、及びY軸ジャイロセンサ5から供給されたピッチレートデータPDに基づいて車両の自律速度Vを算出するようになされている。
【0068】
[1−7.ローパスフィルタ処理]
次に、ハイパスフィルタ部32から供給された加速度データAD1及びピッチレートデータPD1に対してローパスフィルタ部33により施されるローパスフィルタ処理について詳しく説明する。
【0069】
ところで、気圧センサ7により取得された気圧データPRDに相当する気圧PRに基づく高度Hと、Y軸ジャイロセンサ5により取得されたピッチレートデータPDに相当するピッチレートωyに基づくY軸周りの水平方向に対する角度φとの関係を図9に示す。ここで角度φは、進行方向(X軸)に対して上方向を正と定義している。
【0070】
図9における約12001データ点(240[s])から高度Hが急に低くなるとき、すなわち車両が下り坂を下っているとき、角度φも約0.5[deg]から急に約−2.5[deg]へ下がっていることからも明らかなように、高度Hと角度φとの間には相関関係がある。
【0071】
このように高度Hが変化する際、角度φも高度Hの変化に伴って変化しており、このことから、PND1は、Y軸ジャイロセンサ5によって車両の進行方向における路面のうねりを検出できることが分かる。
【0072】
次に、図9における角度φだけを図10(A)に示す。また図10(B)には、図10(A)における5001データ点から6001データ点までの角度φを示し、このとき車両は時速20[km]未満の低速で走行している。図10(B)からも明らかなように、角度φは、1秒間当たり1〜2回振動していることが分かる。
【0073】
従って、車両に搭載されたPND1では、車両が時速20[km]未満の低速で走行している際、Y軸ジャイロセンサ5により取得されたピッチレートデータPDに相当するピッチレートωyに基づく角度φを1〜2[Hz]の振動として検出している。
【0074】
また図11(A)には、図10(A)と同様に、図9における角度φだけを示す。図11(B)には、図11(A)における22001データ点から23001データ点までの角度φを示し、このとき車両は時速60[km]以上の高速で走行している。
【0075】
これによると、PND1では、車両が時速60[km]以上の高速で走行している際、Y軸ジャイロセンサ5により取得されたピッチレートデータPDに相当するピッチレートωyに基づく角度φも1〜2[Hz]の振動として検出している。
【0076】
さらにPND1では、図12に示すように、車両が時速10[km]未満の超低速で走行している際のY軸ジャイロセンサ5により取得されたピッチレートデータPDに相当するピッチレートωyに基づく角度φも1〜2[Hz]の振動として検出している。
【0077】
従ってPND1では、Y軸ジャイロセンサ5によりピッチレートωyを検出する際、車両の走行速度に関わらず、当該ピッチレートωyを1〜2[Hz]の振動として検出している。
【0078】
ところでPND1は、車両のダッシュボード上に吸盤3Aを介して取付けられたクレードル3によって保持されている。図13に示すように、クレードル3は、吸盤3Aの上方に本体部3Bが設けられており、当該本体部3Bの所定高さの位置に設けられた支持点3Cによって一端が支持され、他端によりPND1を支持するPND支持部3Dが設けられている。
【0079】
従ってPND1は、車両が路面のうねりに応じて振動する際、PND支持部3Dの支持点3Cを中心に上下方向に例えば加速度αc及び角速度ωcで振動する。
【0080】
従って、実際上、3軸加速度センサ4は、車両が路面のうねりに応じて振動することにより発生するZ軸方向の加速度αz(図1)に対して、PND支持部3Dの支持点3Cを中心とした振動に伴う加速度αcが加算された加速度(以下、これを加算加速度と呼ぶ)αczを検出していることになる。
【0081】
またY軸ジャイロセンサ5は、車両が路面のうねりに応じて振動することにより発生するY軸周りのピッチレートωy(図1)に対して、PND支持部3Dの支持点3Cを中心とした振動に伴う角速度ωcが加算された角速度(以下、これを加算角速度と呼ぶ)ωcyを検出していることになる。
【0082】
従ってローパスフィルタ部33は、加算加速度αczが示された加速度データAD1と、加算角速度ωcyが示されたピッチレートデータPD1とをデータ取得部31及びハイパスフィルタ部32を介して取得することになる。
【0083】
ここでハイパスフィルタ部32によってハイパスフィルタ処理が施された後の加速度データAD1に相当する加算加速度αcz及びピッチレートデータPD1に相当する加算角速度ωcyを図14に示す。そして図15には、図14に示した加算角速度ωcyを4096データ点ごとにフーリエ変換したグラフを示す。
【0084】
具体的に図15(A)は、図14における1〜4096データ点までの加算角速度ωcyに対してフーリエ変換したグラフである。以下同様に、図15(B)、(C)及び(D)は、図14における4097〜8192データ点、8193〜12288データ点及び12289〜16384データ点までの加算角速度ωcyに対してそれぞれフーリエ変換したグラフである。
【0085】
また図15(E)、(F)、(G)及び(H)は、図14における16385〜20480データ点、20481〜24576データ点、24577〜28672データ点及び28673〜32768データ点までの加算角速度ωcyに対してそれぞれフーリエ変換したグラフである。
【0086】
図15(A)〜(H)のうち、特に図15(C)〜(H)に顕著に表れているように、1〜2[Hz]の周波数成分と、約15[Hz]の周波数成分とが、大きな値を示している。
【0087】
すなわちPND1は、Y軸ジャイロセンサ5によって、上述したような路面のうねりによって1〜2[Hz]で振動するピッチレートωyと、PND1を保持するクレードル3によって約15[Hz]で振動する角速度ωcと合成された加算角速度ωcyを検出している。
【0088】
一方、図16には、図14に示した加算加速度αczを4096データ点ごとにフーリエ変換したグラフを示す。
【0089】
具体的に図16(A)は、図14における1〜4096データ点までの加算加速度αczに対してフーリエ変換したグラフである。以下同様に、図16(B)、(C)及び(D)は、図14における4097〜8192データ点、8193〜12288データ点及び12289〜16384データ点までの加算加速度αczに対してそれぞれフーリエ変換したグラフである。
【0090】
また図16(E)、(F)、(G)及び(H)は、図14における16385〜20480データ点、20481〜24576データ点、24577〜28672データ点及び28673〜32768データ点までの加算加速度αczに対してそれぞれフーリエ変換したグラフである。
【0091】
ここで加算角速度ωcy(図15(C)〜(H))に1〜2[Hz]の周波数成分と約15[Hz]の周波数成分とが発生している以上、加算加速度αczにも1〜2[Hz]の周波数成分と、約15[Hz]の周波数成分とが発生していることが予想される。
【0092】
すなわちPND1は、3軸加速度センサ4によって、上述したような路面のうねりによって1〜2[Hz]で振動する加速度αzと、PND1を保持するクレードル3によって約15[Hz]で振動する加速度αcとが合成された加算加速度αczを検出している。
【0093】
そこでローパスフィルタ部33は、ハイパスフィルタ部32から供給された加速度データAD1及びピッチレートデータPD1に対してローパスフィルタ処理を施し、約15[Hz]の周波数成分、すなわちクレードル3にPND1が保持されることによって発生する加速度αc及び角速度ωcをそれぞれ取り除くようになされている。
【0094】
ここで図16(H)の縦軸を対数軸に変換したグラフを図17(A)に示し、28673〜32768データ点までの加算加速度αczに対してカットオフ周波数2[Hz]のIIR(Infinite Impulse Response)フィルタを2回、4回及び6回施した後にフーリエ変換したグラフをそれぞれ図17(B)、(C)及び(D)に示す。
【0095】
また図18(A)に図15(H)の縦軸を対数軸に変換したグラフを示し、28673〜32768データ点までの加算角速度ωcyに対して、加算加速度αczと同様に、カットオフ周波数2[Hz]のIIRフィルタを2回、4回及び6回施した後にフーリエ変換したグラフをそれぞれ図18(B)、(C)及び(D)に示す。
【0096】
図17(B)〜(D)及び図18(B)〜(D)に示したように、このPND1では、ハイパスフィルタ部32から供給された加速度データAD1及びピッチレートデータPD1に対して、カットオフ周波数2[Hz]のIIRフィルタを4回以上施すことにより、約15[Hz]の周波数成分を取り除くことができる。
【0097】
従って本実施の形態によるローパスフィルタ部33は、ハイパスフィルタ部32から供給された加速度データAD1及びピッチレートデータPD1に対して、カットオフ周波数2[Hz]のIIRフィルタを4回施し、その結果得られる加速度データAD2及びピッチレートデータPD2を速度計算部34へ送出する。
【0098】
従ってローパスフィルタ部33は、加算加速度αczからクレードル3におけるPND支持部3Bの支持点3Cを中心とした振動に伴う加速度αcを取り除くことによって、路面のうねりによって発生する加速度αzだけを抽出することができる。
【0099】
また従ってローパスフィルタ部33は、加算角速度ωcyからクレードル3におけるPND支持部3Bの支持点3Cを中心とした振動に伴う角速度ωcを取り除くことによって、路面のうねりによって発生するピッチレートωyだけを抽出することができる。
【0100】
[1−8.自律速度計算処理]
次に、ローパスフィルタ部33から供給された加速度データAD2及びピッチレートデータPD2を基に、速度計算部34によって自律速度Vを算出する自律速度計算処理について詳しく説明する。
【0101】
まず始めに、車両の前方側であるダッシュボードの上と、当該車両の後方側であるリアガラス付近にそれぞれPND1が載置された状態で、当該車両が時速20[km]未満の低速、時速60[km]未満の中速、及び時速60[km]以上の高速で走行した際の前方側及び後方側の加速度データAD2に相当する加速度αzをそれぞれ図19、図20(A)及び(B)に示す。
【0102】
ここで、図19、図20(A)及び(B)においては、前方側に載置されたPND1で検出された加速度αzをフロント加速度と呼び、後方側に載置されたPND1で検出された加速度αzをリア加速度と呼ぶ。
【0103】
図19、図20(A)及び(B)からも明らかなように、車両の走行速度に関わらず、フロント加速度に対してリア加速度の位相が遅れていることが分かる。この位相遅れは、車両の前輪軸と後輪軸との距離であるホイールベースを走行速度により除算した値とほぼ等しい。
【0104】
次に、図21(A)〜(C)には、車両のダッシュボード上(前輪軸からホイールベールの30%に相当)、中央及び後輪軸上にそれぞれPND1を載置した際の加速度データAD2に相当する加速度αzとピッチレートデータPD2に相当するピッチレートωyとの関係を表すシミュレーション結果の一例を示す。また図21(D)〜(F)には、図21(A)〜(C)により示すシミュレーション結果により得られた加速度αz及びピッチレートωyとに基づいて、(1)式に従って自律速度Vを算出した結果を示す。
【0105】
ここで、このシミュレーションでは、振幅0.1[m]及び波長20[m]の正弦波でうねる路面上を、ホイールベールが2.5[m]でなる車両が速度5[m/s]で走行する場合を仮定した。
【0106】
図21(A)〜(C)からも明らかなように、この加速度αzは、車両におけるPND1の搭載位置が後方へ移動するに連れて位相が遅れる。一方、ピッチレートωyは、車両におけるPND1の搭載位置に関わらず、位相のずれを生じることはない。
【0107】
従って図21(B)に示したように、PND1を車両の中央に搭載した場合、加速度αzとピッチレートωyとの位相のずれがほとんどなく、そのため図21(E)に示したように、(1)式を用いて算出した自律速度Vは、ほぼ一定となる。
【0108】
しかしながら、図21(A)及び(C)に示したように、PND1を搭載した位置が車両の中央に対して前後に移動すると、加速度αzとピッチレートωyとの位相のずれが大きくなる。そのため図21(D)及び(F)に示したように、(1)式を用いて算出した自律速度Vは、加速度αzとピッチレートωyとの位相のずれにより、PND1を車両の中央に搭載した場合(図21(E))の自律速度Vと比して、誤差が大きくなる。
【0109】
特に、車両の自律速度Vが時速20[km]未満の低速時に、加速度αzとピッチレートωyとの位相のずれが大きくなるので、自律速度Vの算出誤差が大きくなる。
【0110】
そこで速度計算部34は、図22に示すように、ローパスフィルタ部33から供給された加速度データAD2に相当する加速度αzの前回の位置P0(図3)に対応するデータ点Pmを中心とした25データ点又は75データ点分の範囲から、最大値及び最小値をそれぞれ最大加速度αz,max及び最小加速度αz,minとして抽出する。
【0111】
また速度計算部34は、ローパスフィルタ部33から供給されたピッチレートデータPD2に相当するピッチレートωyのデータ点Pmを中心とした25データ点又は75データ点分の範囲から、最大値及び最小値をそれぞれ最大ピッチレートωy,max及び最小ピッチレートωy,minとして抽出する。
【0112】
すなわち速度計算部34は、加速度αz及びピッチレートωyに発生し得る位相のずれよりも広い範囲のなかから、最大加速度αz,max及び最小加速度αz,minと、最大ピッチレートωy,max及び最小ピッチレートωy,minとをそれぞれ抽出する。
【0113】
そして速度計算部34は、加速度データAD2から抽出した最大加速度αz,max及び最小加速度αz,minと、ピッチレートデータPD2から抽出した最大ピッチレートωy,max及び最小ピッチレートωy,minとを用い、上述した(1)式を変形した
【0114】
【数3】

【0115】
によって前回の位置P0(図3)での進行方向の自律速度Vを算出し、その結果得られる速度データVD1を平滑化及びノイズ除去部35へ送出する。
【0116】
すなわち速度計算部34は、(3)式を用いることにより、加速度αz及びピッチレートωyに位相のずれが発生している場合であっても、当該位相のずれの影響を取り除いた自律速度Vを算出することができる。
【0117】
ところで図23に示すように、速度計算部34は、前回の位置P0での進行方向の自律速度Vを算出する際、加速中であれば、前々回の位置(図示せず)の自律速度(以下、これを前値速度とも呼ぶ)Vn-1が時速0[km]から時速35[km]までのとき25データ点分の範囲を用い、前値速度Vn-1が時速35[km]を超えると、75データ点分の範囲を用いるようにする。
【0118】
また速度計算部34は、前回の位置P0での進行方向の自律速度Vを算出する際、減速中であれば、前値速度Vn-1が時速35[km]以上から時速25[km]までのとき75データ点分の範囲を用い、前値速度Vn-1が時速25[km]未満になると、25データ点分の範囲を用いるようにする。
【0119】
従って速度計算部34は、自律速度Vに応じて、最大加速度αz,max及び最小加速度αz,minと、最大ピッチレートωy,max及び最小ピッチレートωy,minとを抽出する際、データ範囲を25データ点又は75データ点に切り替える。
【0120】
このとき速度計算部34は、車両の自律速度Vが例えば25[km]以下の低速である場合には路面の微妙な変化により急激に加速度αz及びピッチレートωyが変化するので、その急激な変化に対応するためにデータ範囲を狭く設定する。
【0121】
また速度計算部34は、車両の自律速度Vが時速35[km]以上である場合には車両のサスペンションの影響も大きく、加速度αz及びピッチレートωyがゆっくり変化するので、そのゆっくりとした変化に対応するためにデータ範囲を広く設定する。
【0122】
このように速度計算部34は、最大加速度αz,max及び最小加速度αz,minと、最大ピッチレートωy,max及び最小ピッチレートωy,minと抽出する際のデータ範囲を車両の自律速度Vに応じて切り替えることにより、当該自律速度Vに応じた路面や車両の状況を反映することができ、自律速度Vの算出精度を向上させることができる。
【0123】
また速度計算部34は、最大加速度αz,max及び最小加速度αz,minと、最大ピッチレートωy,max及び最小ピッチレートωy,minとを抽出する際、加速時と減速時とでデータ範囲を変更するようなヒステリシス性を持たすようになされている。
【0124】
これにより速度計算部34は、自律速度Vを算出する際のデータ範囲にヒステリシス性を持たせなかった場合に生じるデータ範囲の切り替え速度付近での頻繁なデータ範囲の切り替えを行う必要がなくなる。この結果速度計算部34は、このような頻繁な切り替えにより生じる自律速度Vの算出誤差を無くすことができ、その分、自律速度Vの算出精度をより向上させることができる。
【0125】
[1−9.平滑化及びノイズ除去処理]
次に、速度計算部34により算出された速度データVD1に対して、平滑化及びノイズ除去部35により施される平滑化及びノイズ除去処理について詳しく説明する。
【0126】
まず始めに、平滑化及びノイズ除去部35は、速度計算部34から供給された速度データVD1に対して、カットオフ周波数を可変にした1次IIRのローパスフィルタ処理を施すようになされている。
【0127】
具体的に、平滑化及びノイズ除去部35は、前回の位置P0での進行方向の自律速度Vを算出する際、前値速度Vn-1に基づいてカットオフ周波数を決定する。
【0128】
ここで、PND1では、車両の走行速度が例えば時速60[km]以上の高速時、速度計算部34により算出された自律速度Vにノイズが大きく含まれており、当該自律速度Vのばらつきが大きくなる。そこで平滑化及びノイズ除去部35は、前値速度Vn-1が時速60[km]以上であった場合、カットオフ周波数を小さく設定したローパスフィルタを用いる。
【0129】
これに対して平滑化及びノイズ除去部35は、前値速度Vn-1が時速60[km]未満であった場合、カットオフ周波数を大きく設定したローパスフィルタを用いる。
【0130】
ところで、速度計算部34により算出された自律速度Vが例えば時速10[km]未満の超低速であった場合、例えば(1)式又は(3)式の分母の値であるピッチレートωyが小さくなり、その結果、(1)式又は(3)式を用いて算出される自律速度Vが実際値より非常に大きくなってしまうことが考えられる。
【0131】
そこで平滑化及びノイズ除去部35は、ローパスフィルタ部33からローパスフィルタ処理が施された加速度データAD2及びピッチレートデータPD2を取得し、当該ピッチレートデータPD2に相当するピッチレートωyが所定の閾値未満であった場合、自律速度Vが過大であると判断し、ローパスフィルタ処理を施した後の自律速度Vを0とする。
【0132】
一方、図24(A)に示すように、PND1は、路面のうねりの円弧B1が車両のホイールベースWより大きい場合、上述したような基本原理を用いて正確に自律速度Vを算出することができる。
【0133】
しかしながら図24(B)に示すように、例えば路面のうねりの円弧B2が車両のホイールベースWより小さい場合、車両の前輪がうねりを乗り越える際、車両に対して垂直方向の加速度αb及び車両の後輪を中心としたY軸周りの角速度ωbが発生する。
【0134】
このときPND1は、路面のうねりに応じた1〜2[Hz]の振動により発生する加速度αz及びピッチレートωy(図24(A))を検出することなく、加速度αb及び角速度ωb(図24(B))を3軸加速度センサ4及びY軸ジャイロセンサ5によって検出することになる。
【0135】
ここで加速度αbは、路面のうねりの円弧B1が車両のホイールベースWより大きい場合に発生する加速度αzよりも大きな値を取り、また角速度ωbも路面のうねりの円弧B1が車両のホイールベースWより大きい場合に発生するピッチレートωyよりも大きな値を取る。
【0136】
また、路面のうねりの円弧B2が車両のホイールベースWより小さい場合に発生する加速度αb及び角速度ωbを基に(1)式又は(3)式を用いて算出した速度(以下、これを小円弧速度とも呼ぶ。)を速度Vbとする。
【0137】
上述した加速度αbが角速度ωbより大きく変化することから、速度Vbは、路面のうねりの円弧B1が車両のホイールベースWより大きい場合に発生する加速度αz及びピッチレートωyを基に(1)式又は(3)式を用いて算出した自律速度Vよりも、非常に大きな値を取る。
【0138】
このためPND1の速度算出部11は、路面のうねりの円弧B2が車両のホイールベースWより小さい場合、加速度αb及び角速度ωbを用いた小円弧速度Vbを算出することにより、自律速度Vを過大な値として算出してしまうことになる。
【0139】
そこで平滑化及びノイズ除去部35は、ローパスフィルタ部33からローパスフィルタ処理が施された加速度データAD2及びピッチレートデータPD2を取得し、当該加速度データAD2に相当する加速度αz及びピッチレートデータPD2に相当するピッチレートωyが所定の閾値より大きいか否かを判断する。
【0140】
そして平滑化及びノイズ除去部35は、加速度データAD2に相当する加速度αz及びピッチレートデータPD2に相当するピッチレートωyが所定の閾値より大きい場合、速度Vが過大であると判断し、ローパスフィルタ処理を施した後の自律速度Vを用いるのではなく前値速度Vn-1を用いるようにする。すなわち、平滑化及びノイズ除去部35は、超低速時以外で自律速度Vが過大な値をとったとき、自律速度Vが誤っている可能性が高いので前値速度Vn-1を用いるようになされている。
【0141】
このように平滑化及びノイズ除去部35は、ローパスフィルタ処理を施した後の自律速度Vが過大な値であった場合、超低速時であったときは自律速度Vを0とし、それ以外のときは前値速度Vn-1を自律速度Vとすることにより、当該自律速度Vを一段と正確に算出することができる。
【0142】
[1−10.自律速度算出処理を用いた位置算出処理手順]
次に、PND1の制御部11が、上述したような自律速度Vを用いて現在位置を算出する位置算出処理手順について、図25のフローチャートを用いて説明する。
【0143】
実際上、制御部11は、ルーチンRT1の開始ステップから入ってステップSP1へ移り、3軸加速度センサ4により検出された加速度データADと、Y軸ジャイロセンサ5により検出されたピッチレートデータPDとを速度算出処理部22のデータ取得部31によって取得した後、次のステップSP2へ移る。
【0144】
ステップSP2において制御部11は、加速度データAD及びピッチレートデータPDに対してハイパスフィルタ処理を速度算出部22のハイパスフィルタ部32により施し、次のステップSP3へ移る。
【0145】
ステップSP3において制御部11は、ハイパスフィルタ処理が施された加速度データAD1及びピッチレートデータPD1に対して、例えばカットオフ周波数1[Hz]の4次IIRフィルタであるローパスフィルタ処理を速度算出部22のローパスフィルタ部33によって施し、次のステップSP4へ移る。
【0146】
ステップSP4において制御部11は、ローパスフィルタ処理が施された加速度データAD2に相当する加速度αz及びピッチレートデータPD2に相当するピッチレートωyを基に、(3)式を用いて速度算出部22の速度計算部34によって自律速度Vを算出し、次のステップSP5へ移る。
【0147】
ステップSP5において制御部11は、ステップSP4において算出された自律速度Vが示す速度データVDに対して平滑化及びノイズ除去処理を施す。
【0148】
具体的に、制御部11は、ステップSP4において算出された自律速度Vが示す速度データVD1に対してカットオフ周波数を可変にしたローパスフィルタ処理を施す。
【0149】
そして制御部11は、ローパスフィルタ処理を施した後の自律速度Vが過大な値であると判断した場合、例えば時速10[km]未満の超低速時であったときは自律速度Vを0とし、それ以外のときは前値速度Vn-1を自律速度Vとし、次のステップSP6へ移る。
【0150】
ステップSP6において制御部11は、Z軸ジャイロセンサ6により検出されたヨーレートデータYDを角度算出部23によって取得し、次のステップSP7へ移る。
【0151】
ステップSP7において制御部11は、ヨーレートデータYDに相当するヨーレートωzにサンプリング周期である0.02[秒]を積算することにより角度θが示された角度データDDを角度算出部23によって算出し、次のステップSP8へ移る。
【0152】
ステップSP8において制御部11は、ステップSP5において平滑化及びノイズ除去処理を施された速度データVD、及びステップSP8において算出された角度データDDに基づいて現在位置データNPD2を算出し、次のステップSP9へ移る。
【0153】
ステップSP9において制御部11は、位置算出部25から供給された現在位置データNPD2を基に、車両の現在位置が含まれる周辺の地図データを記憶部12から読み出し、その現在位置が含まれる地図画像を生成した後、表示部2へ出力し、次のステップSP10へ移って処理を終了する。
【0154】
[1−11.従来の自車マーク表示制御処理]
ところで本発明のPND1による自車マーク表示制御処理の説明を行う前に、従来のPNDが一般的な加速度センサ及びジャイロセンサ(又は気圧センサ等)の出力を用いて自律的に算出した車両の自律現在位置データに従い、当該車両の自車マークを表示する場合の自車マーク表示制御処理について説明する。
【0155】
図26(A)に示すように、従来のPNDでは、トンネルTNに入る手前のGPS信号の受信感度が良いエリア(以下、これをGPS測位区間と呼ぶ)AR1において、GPS信号に基づいて測位したGPS現在位置データに従い地図画像上に車両の自車マークPMを表示することができる。
【0156】
その後、従来のPNDでは、車両の移動に伴って当該車両がトンネルTNの中に入った場合、GPS信号の受信感度が悪いエリア(以下、これを否GPS測位区間と呼ぶ)AR2において、GPS現在位置データから切り換えた自律現在位置データに基づいて車両の自車マークPMを表示することになる。
【0157】
このとき従来のPNDは、自律現在位置データの算出誤差が大きく、否GPS測位区間AR2において自律現在位置データに従い表示した自車マークPMが、真の現在位置から次第にかけ離れてしまう。
【0158】
その結果、従来のPNDでは、トンネルTNの最後の方や、トンネルTNを車両が出てGPS測位区間AR3へ移動した直後における自車マークPM(?で示される)が必ずしも真の現在位置を示していないことになる。
【0159】
このとき従来のPNDでは、図26(B)に示すように、車両がトンネルTNの中に入って、否GPS測位区間AR2へ移動したとき、自律現在位置データに従って自車マークPMを表示し続けていると、次第に自車マークPMが真の現在位置を追い越してオーバーランしてしまうことになる。
【0160】
そのため従来のPNDでは、自律現在位置データに従ってトンネルTNの出口付近に自車マークPMが到達したとき、その場所に自車マークPMを留めることにより、トンネルTNの出口から自車マークPMが出てしまわないようにしている。
【0161】
このとき従来のPNDでは、トンネルTNの出口付近に留めた自車マークPMと、実際に走行中の車両が存在する真の現在位置とが乖離してしまうことになり、自車マークPMによって真の現在位置をユーザへ提示し得なくなっていた。
【0162】
[1−12.本発明による自車マーク表示制御処理]
そこで、本発明のPND1においては、上述した自律速度算出方法に従って算出した自律速度Vが示す速度データVDと、角度データDDとに基づいて算出した従来のPNDよりも高精度な現在位置データNPD2を用いて車両の自車マークを表示することにより、本発明特有の自車マーク表示制御処理を実行するようになされている。
【0163】
実際上PND1の制御部11は、上述したように、複数のGPS信号をそれぞれ復調することにより得られる軌道データと、複数のGPS衛星から車両までの距離データとに基づいて測位した車両の現在位置データNPD1に従い地図画像上に車両の自車マークを表示することができる。
【0164】
またPND1の制御部11は、トンネルの中や地下駐車場のようなGPS信号を受信できない通信環境下では、上述した自律速度Vに基づいて算出した現在位置データNPD2に切り換え、その現在位置データNPD2に従って地図画像上に車両の自車マークを表示することができる。
【0165】
このようにPND1の制御部11は、GPS信号の受信感度が良いエリアから、GPS信号の受信感度が悪いエリアへ移動した場合、車両の自車マークを表示するために用いていた現在位置データNPD1を現在位置データNPD2へ切り換えることができるようになされている。
【0166】
そしてPND1の制御部11は、その逆に、GPS信号の受信感度が悪いエリアから、GPS信号の受信感度が良いエリアへ移動した場合、車両の自車マークを表示するために用いていた現在位置データNPD2を現在位置データNPD1へ切り換えることができるようになされている。
【0167】
このような前提のもと、PND1の制御部11は、図27(A)に示すように、トンネルTN1に入る手前のGPS測位区間AR10において、現在位置データNPD1に従い地図画像上に車両の自車マークPMを表示する。
【0168】
そしてPND1の制御部11は、車両がトンネルTN1の中に入って、GPS測位区間AR10から否GPS測位区間AR11へ移動し、自律的に求めた現在位置データNPD2に従って表示した自車マークPMがトンネルTN1の出口付近に到達したとき、従来のPNDのように、その場所に自車マークPMを留めてしまう場合、以下の問題が生じる。
【0169】
特にPND1の制御部11は、車両がトンネルTN1を出て、次のトンネルTN2に入るまで、例えば100m以下の非トンネル区間があるものの、当該車両が非トンネル区間を走行している時間が非常に短いため、実際にはGPS信号を受信できない。
【0170】
すなわちPND1にとっては、トンネルTN1から非トンネル区間を挟んでトンネルTN2までが実質的に否GPS測位区間AR11となり、その先のトンネルTN2を出た以降がGPS測位区間AR12となる。
【0171】
従ってPND1の制御部11は、車両がトンネルTN1を出た直後、本来ならばGPS信号に基づいて測位した現在位置データNPD1に切り換えて自車マークPMを表示しなければならないところ、自車マークPMをトンネルTN1の出口付近で留めてしまうため、実際の現在位置(破線で示す)と自車マークPMとの間に大きなずれを生じさせる。
【0172】
そこでPND1の制御部11は、図27(B)に示すように、車両がトンネルTN1の中に入って、GPS測位区間AR10から否GPS測位区間AR11へ移動したとき、自律的に求めた現在位置データNPD2に従って自車マークPMをトンネルTN1の中で進ませながら表示する。
【0173】
そしてPND1の制御部11は、トンネルTN1の先の道路がトンネルではないものの、次のトンネルTN2までの距離が100m以下しかないようなGPS信号を受信できない非トンネル区間の場合、次のような表示制御を行う。
【0174】
PND1の制御部11は、トンネルTN1〜TN2までの否GPS測位区間AR11においてトンネルTN1の出口付近に自車マークPMを留めてしまうことなく、自律的に求めた現在位置データNPD2に従って自車マークPMを移動させながら継続表示する。
【0175】
その後、PND1の制御部11は、トンネルTN1〜TN2までの否GPS測位区間AR11から車両が出て、GPS測位区間AR12へ移動したとき、自律的に求めた現在位置データNPD2からGPS信号に基づいて測位した現在位置データNPD1へ切り換えて自車マークPMを表示すれば良い。
【0176】
この場合、PND1の制御部11は、上述した自律速度Vを用いて自律的に算出した高精度な現在位置データNPD2を用い、否GPS測位区間AR11において自車マークPMを継続表示することにより、従来のPNDに比べ、トンネルTN1及びTN2の中であっても、実際の現在位置との誤差が極めて小さい状態で自車マークPMをユーザへ提示し得るようになされている。
【0177】
[1−13.自車マーク表示制御処理手順]
実際上、図28に示すようにPND1の制御部11は、ルーチンRT2の開始ステップから入って次のステップSP11へ移り、現在、GPS測位区間AR10にあってGPSによる現在位置の測位が可能か否かを現リンクの属性情報に基づいて判定する。なお、リンクとは、道路を所定単位のノードによって区分けされた1単位である。
【0178】
ここで肯定結果が得られると、このことはGPS信号に基づいて測位した現在位置データNPD1に応じて自車マークPMを表示可能なGPS走行モード(屋外)へ遷移し、次のステップSP13へ移る。
【0179】
ステップSP13においてPND1の制御部11は、GPS測位区間AR10において、GPS信号に基づいて測位した現在位置データNPD1に従い自車マークPMを移動させながら表示した後、再度ステップSP11へ戻る。
【0180】
これに対してステップSP11において否定結果が得られると、このことはGPSによる現在位置の測位が不可能であること、すなわちトンネルTN1に入って否GPS測位区間AR11を車両が移動中であることを表しており、このときPND1の制御部11は次のステップSP14へ移る。
【0181】
ステップSP14においてPND1の制御部11は、車両がトンネルTN1〜TN2までの否GPS測位区間AR11に入ったため、自律的に求めた現在位置データNPD2に応じて自車マークPMを表示可能な自律走行モード(トンネル)へ遷移し、次のステップSP15へ移る。
【0182】
ステップSP15においてPND1の制御部11は、自律速度Vを用いて算出した高精度な現在位置データNPD2に従い自車マークPMを地図上に表示し、次のステップSP16へ移る。
【0183】
ステップSP16においてPND1の制御部11は、否GPS測位区間AR11において、定期的に算出した現在位置データNPD2に従い自車マークPMを進ませながら地図上に表示し、次のステップSP17へ移る。
【0184】
ステップSP17においてPND1の制御部11は、車両が現在走行中の道路に対して次に位置する前方の道路のリンク情報を地図データから読み出すことにより、その道路属性がトンネルであるか否かを判定する。
【0185】
ここで肯定結果が得られると、このことは、次に位置する前方の道路についても引き続きトンネルTN1であることを表しており、このときPND1の制御部11は次のステップSP18へ移る。
【0186】
ステップSP18においてPND1の制御部11は、前方の道路についても引き続きトンネルTN1であるため、現在位置データNPD2に従い自車マークPMをそのまま進ませながら地図上に表示し、再度ステップSP11へ戻る。
【0187】
これに対してステップSP17で否定結果が得られると、このことは次に位置する前方の道路についてはトンネルTN1ではないことを表しており、このときPND1の制御部11は次のステップSP19へ移る。
【0188】
ステップSP19においてPND1の制御部11は、次に位置する前方の道路がトンネルTN1ではないものの、100m以内に次のトンネルTN2が出現するか否かを判定する。
【0189】
ここで否定結果が得られると、このことは100m未満のうちには次のトンネルTN2が出現しないことを表しており、このときPND1の制御部11はステップSP20へ移る。
【0190】
ステップSP20においてPND1の制御部11は、現在位置データNPD2に従い自車マークPMを進ませながら表示し、トンネルTN1の出口付近に自車マークPMが到達した時点で当該自車マークPMを留めて表示し、再度ステップSP11へ戻る。
【0191】
この場合、PND1の制御部11は、トンネルTN1とトンネルTN2との間隔が100m以上も離れており、トンネルTN1とトンネルTN2との間に存在する非トンネル区間においてGPS信号を十分に受信できる。このためPND1の制御部11は、この非トンネル区間がGPS測位区間となるので、GPS信号に基く現在位置データNPD1に従って自車マークPMを移動表示し得るようになされている。
【0192】
ここでPND1の制御部11は、トンネルTN1の出口付近に自車マークPMが到達した時点で当該自車マークPMを留めて表示するが、非常に高精度の現在位置データNPD2に従い自車マークPMを表示しているため、実際の現在位置との誤差を殆ど無い状態で当該自車マークPMによる現在位置を提示し得るようになされている。
【0193】
そのうえPND1の制御部11は、トンネルTN1から次のトンネルTN2までの非トンネル区間がGPS信号を受信可能なGPS測位区間であるため、当該非トンネル区間においてはGPS信号に基く現在位置データNPD1に従って実際の現在位置と誤差の少ない自車マークPMを提示し得るようになされている。
【0194】
このようにPND1の制御部11は、トンネルTN1の中では自律的に求めた高精度の現在位置データNPD2に従い自車マークPMを誤差の少ない状態で表示し、トンネルTN1を出て非トンネル区間(GPS測位区間)へ移動したときは、GPS信号に基く現在位置データNPD1に従って自車マークPMを誤差の少ない状態で表示し得るようになされている。
【0195】
これに対してステップSP19において肯定結果が得られると、このことは100m未満のうちに次のトンネルTN2が出現することを表しており、このときPND1の制御部11は次のステップSP18へ移る。
【0196】
ステップSP18においてPND1の制御部11は、車両がトンネルTN1から出て次のトンネルTN2までの非トンネル区間の長さが100m未満であって、車両走行中ではGPS信号を十分に受信できないため、トンネルTN1から非トンネル区間を挟んでトンネルTN2までが否GPS測位区間AR11であると判断する。
【0197】
そしてPND1の制御部11は、トンネルTN1から非トンネル区間を挟んでトンネルTN2までが否GPS測位区間AR11であり、その先のトンネルTN2を出た以降がGPS測位区間AR12となる。このためPND1の制御部11は、否GPS測位区間AR11を自律的に求めた現在位置データNPD2に従って自車マークPMをトンネルTN1の出口付近に留めることなく、そのまま移動させながら継続表示し、再度ステップSP11へ戻る。
【0198】
ステップSP11においてPND1の制御部11は、当該ステップSP11以降の処理を繰り返すことにより、GPS測位区間AR10、否GPS測位区間AR11、GPS測位区間AR12のような通信環境下を車両が移動する場合でも、実際の現在位置との誤差が極めて少ない自車マークPMを提示するようになされている。
【0199】
[1−14.動作及び効果]
以上の構成において、PND1は、路面のうねりによって発生する車両の進行方向に垂直なZ軸方向の加速度αzを3軸加速度センサ4により検出し、路面のうねりによって発生する当該進行方向と直交したY軸周りのピッチレートωyをY軸ジャイロセンサ5により検出する。
【0200】
そしてPND1は、3軸加速度センサ4によって検出された加速度αz及びY軸ジャイロセンサ5によって検出されたピッチレートωyを基に、(1)式又は(3)式に従って自律速度Vを算出する。
【0201】
従ってPND1は、3軸加速度センサ4及びY軸ジャイロセンサ5だけを用いた簡易な構成により、GPS信号が受信することができない場合であっても車両の自律速度Vを正確に算出し、その自律速度VとZ軸周りのヨーレートωzとに基づいて車両の現在位置を示す現在位置データNPD2を全ての道路環境下で高精度に求めることができる。
【0202】
そのうえPND1は、車両がトンネルTN1(図27(B))の中に入って、GPS測位区間AR10から否GPS測位区間AR11へ移動したとき、自律的に求めた現在位置データNPD2に従って自車マークPMをトンネルTN1の中で進ませながら表示する。
【0203】
そしてPND1の制御部11は、トンネルTN1の先の道路がトンネルではないものの、次のトンネルTN2までの距離が100m以下しかないようなGPS信号を受信できない非トンネル区間の場合、以下のような表示制御を行う。
【0204】
すなわちPND1の制御部11は、否GPS測位区間AR11におけるトンネルTN1の出口付近に自車マークPMを留めてしまうのではなく、自律的に求めた現在位置データNPD2に従ってトンネルTN1〜トンネルTN2までの間、自車マークPMを移動させながら継続表示する。
【0205】
そしてPND1の制御部11は、否GPS測位区間AR11から車両が出て、GPS測位区間AR12へ移動したとき、自律的に求めた現在位置データNPD2からGPS信号に基づく現在位置データNPD1に切り換えて自車マークPMを表示する。
【0206】
このようにPND1の制御部11は、上述した自律速度Vを用いて算出した高精度な現在位置データNPD2を用い、否GPS測位区間AR11において自車マークPMを継続表示することにより、従来のPNDに比べ、トンネルTN1及びTN2の中であっても、自車マークPMを介して実際の現在位置を一段と正確にユーザへ通知することができる。
【0207】
またPND1の制御部11は、トンネルTN1とトンネルTN2との間隔が100m未満であって、車両の高速走行中ではGPS信号を受信できないような場合でも、あえて自律的な現在位置データNPD2からGPS信号に基づく現在位置データNPD1へ切り換えることなく、当該現在位置データNPD2に従って自車マークPMを継続表示する。
【0208】
これによりPND1の制御部11は、トンネルTN1から非トンネル区間を経てトンネルTN2から車両が出るまでの実質的な否GPS測位区間AR11において、自律的な現在位置データNPD2に従い自車マークPMを高精度に継続表示することができるので、従来のPNDに比べて、誤差の少ない高精度な現在位置を通知することができる。
【0209】
以上の構成によれば、PND1はトンネルTN1及びTN2のようなGPS信号を受信できない環境下だけでなく、トンネルTN1とトンネルTN2との間隔が100m未満であって、車両の高速走行中ではGPS信号を受信することが困難であるような通信環境下でも、自車マークPMを介して車両の現在位置を高精度に通知することができる。
【0210】
<2.他の実施の形態>
なお上述した実施の形態においては、速度Vを計算する際、加速度データAD2に相当する加速度αzから抽出した最大加速度αz,max及び最小加速度αz,minと、角速度データDD2に相当するピッチレートωyから抽出した最大角速度ωy,max及び最小角速度ωy,minとを基に、(3)式を用いて自律速度Vを算出するようにした。
【0211】
しかしながら本発明はこれに限らず、速度計算部34は、ローパスフィルタ部33から供給された加速度データAD2に相当する加速度αz、及びピッチレートデータPD2に相当するピッチレートωyの例えば前回の位置P0に対応するデータ点Pを中心とした25データ点又は75データ点分の分散をそれぞれ求める。そして速度算出部34は、加速度αzの分散をピッチレートωyの分散で除算することにより自律速度Vを算出するようにしても良い。
【0212】
或いは、速度計算部34は、ローパスフィルタ部33から供給された加速度データAD2に相当する加速度αz、及びピッチレートデータPD2に相当するピッチレートωyの例えば前回の位置P0に対応するデータ点Pを中心とした25データ点又は75データ点分の範囲の偏差をそれぞれ求める。そして速度算出部34は、加速度αzの偏差をピッチレートωyの偏差で除算することにより自律速度Vを算出するようにしても良い。
【0213】
また上述した実施の形態においては、3軸加速度センサ4、Y軸ジャイロセンサ5及びZ軸ジャイロセンサ6により50[Hz]のサンプリング周波数で加速度αx、αy、αz、ピッチレートωy及びヨーレートωzを測定するようにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、3軸加速度センサ4、Y軸ジャイロセンサ5及びZ軸ジャイロセンサ6は、50[Hz]以外にも例えば10[Hz]等の所定のサンプリング周波数により加速度αx、αy、αz、角速度ωy及び角速度ωzを検出するようにしても良い。
【0214】
さらに上述した実施の形態においては、50[Hz]のサンプリング周波数で検出した加速度αz及びピッチレートωyを用いて自律速度Vを算出するようにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、PND1の速度算出部22は、50[Hz]のサンプリング周波数で検出した加速度αz及びピッチレートωyの例えば25データ点毎の平均値を取り、当該加速度αz及びピッチレートωyの平均値を用いて自律速度Vを算出するようにしても良い。
【0215】
この場合、PND1の速度算出部22は、50[Hz]のサンプリング周波数で検出した加速度αz及びピッチレートωyの例えば25データ点毎の平均値を取ることにより、自律速度Vを1秒当たり2回だけ算出することになる。これによりPND1の制御部11は、自律速度算出処理に対する処理負荷を軽減することができる。
【0216】
さらに上述した実施の形態においては、3軸加速度センサ4及びY軸ジャイロセンサ5によりそれぞれ検出した加速度データAD及びピッチレートデータPDに対して、ハイパスフィルタ部22及びローパスフィルタ部23によりハイパスフィルタ処理及びローパスフィルタ処理を施すようにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、PND1は、加速度データAD及びピッチレートデータPDに対して、ハイパスフィルタ処理及びローパスフィルタ処理に加えて、移動平均フィルタ処理を施すようにしてもよい。またPND1は、加速度データAD及びピッチレートデータPDに対して、ハイパスフィルタ処理、ローパスフィルタ処理及び移動平均フィルタ処理を任意に組み合わせた処理を施すようにしても良い。
【0217】
さらに上述した実施の形態においては、加速度αz及びピッチレートωyを用いて例えば前回の位置P0の自律速度Vを算出する際、当該前回の位置P0の自律速度Vが過大であると判断した場合、前値速度Vn-1を前回の位置P0の自律速度Vとするようにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、PND1の速度算出部22は、前回の位置P0の自律速度Vが前値速度Vn-1より所定の閾値以上大きかった場合、前回の位置P0の自律速度Vを、前値速度Vn-1に車両が加速できるであろう分を加算した値とするようにしてもよい。
【0218】
またPND1の速度算出部22は、前回の位置P0の自律速度Vが前値速度Vn-1より所定の閾値以上小さかった場合、前回の位置P0の自律速度Vを、前値速度Vn-1に車両が減速できるであろう分を減算した値とするようにしてもよい。
【0219】
さらに上述した実施の形態においては、加速度αz及びピッチレートωyを基に、(3)式を用いて自律速度Vを算出するようにした場合について述べた。
【0220】
しかしながら本発明はこれに限らず、PND1の制御部11は、加速度αz及びピッチレートωyを基に(3)式を用いて算出した自律速度Vと、GPS信号を基に算出したGPS速度Vgとを比較する。
【0221】
そしてPND1の制御部11は、自律速度VとGPS速度Vgとに誤差が生じていた場合、例えば自律速度Vとの誤差が最小となるように一次関数や2次以上の高次関数等により補正するための補正係数を算出し、記憶部12へ当該補正係数を記憶する。
【0222】
従ってPND1の速度算出部22は、3軸加速度センサ4及びY軸ジャイロセンサ5によりそれぞれ検出した加速度αz及びピッチレートωyを基に(3)式を用いて自律速度Vを算出した後、記憶部12から補間係数を読み出し、当該補間係数を用いて当該自律速度Vを一次関数や2次以上の高次関数等により補正する。
【0223】
このようにPND1は、GPS信号を基に算出したGPS速度Vgを基に自律速度Vの補正係数を予め学習しておくことにより、当該自律速度Vの算出精度をより向上させることができる。
【0224】
なお、PND1の制御部11は、自律速度VとGPS速度Vgとの補正係数を算出する際、例えば超低速、低速、中速及び高速等のような複数の速度領域に自律速度Vを分割し、当該複数の速度領域ごとに補正係数を算出するようにしても良い。
【0225】
またPND1の制御部11は、自律速度VとGPS速度Vgとの補正係数を算出する際、所定例えば時速60[km]以上の高速時に対してだけ、補正係数を算出するようにしても良い。
【0226】
さらに上述した実施の形態においては、PND1が、電源電力の供給を受けている間、現在位置算出処理手順に従ってナビゲーションを行うにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、PND1は、電源ボタン(図示せず)がユーザによって押下操作されることによってオフされた場合、当該電源ボタンが押下された時点での現在位置及び高度等を記憶部12へ記憶する。そしてPND1は、再び電源ボタンがユーザによって押下操作されることによってオンされた場合、記憶部12から現在位置及び高度等を読み出し、当該現在位置及び高度等から再び現在位置算出処理手順に従ってナビゲーションを行うようにしても良い。
【0227】
さらに上述した実施の形態においては、PND1が、車両のダッシュボード上に載置されたクレードル3によって保持されている状態で、自律速度Vを算出するようにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、PND1が、クレードル3から機械的或いは電気的に取り外されたことを認識すると、自律速度Vを0とする、或いは前値速度Vn-1のまま継続するようにしても良い。
【0228】
さらに上述した実施の形態においては、3軸加速度センサ4、Y軸ジャイロセンサ5、Z軸ジャイロセンサ6及び気圧センサ7がPND1の内部に設けられているようにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、3軸加速度センサ4、Y軸ジャイロセンサ5、Z軸ジャイロセンサ6及び気圧センサ7が、PND1の外部に設けられているようにしてもよい。
【0229】
またPND1は、3軸加速度センサ4、Y軸ジャイロセンサ5、Z軸ジャイロセンサ6及び気圧センサ7の取り付け角度を調節できるような調節機構を例えば当該PND1の側面に設けるようにしても良い。
【0230】
これによりPND1は、その表示部2が車両の進行方向に対してほぼ垂直となるように設置されていない場合であっても、調節機構をユーザに調節させることによって、例えばY軸ジャイロセンサ5の回転軸を車両の垂直方向と揃えることができる。
【0231】
さらに上述した実施の形態においては、ピッチレートデータPD2に相当するピッチレートωyが所定の閾値未満であった場合、及び加速度データAD2に相当する加速度αz及びピッチレートデータPD2に相当するピッチレートωyがそれぞれ所定の閾値より大きい場合、自律速度Vが過大であると判断するようにした。しかしながら本発明はこれに限らず、制御部11は、速度計算部34によって算出された自律速度Vが前値速度Vn-1より所定速度以上の大きな値を取ったとき、自律速度Vが過大であると判断するようにしても良い。
【0232】
この場合、平滑化及びノイズ除去部35は、速度計算部34によって算出された自律速度Vが前値速度Vn-1より所定速度以上の大きな値を取ったときで、かつ前値速度が例えば時速10[km]未満の超低速時であった場合、自律速度Vを0とする。また平滑化及びノイズ除去部35は、速度計算部34によって算出された自律速度Vが前値速度Vn-1より所定速度以上の大きな値を取ったときで、かつ前値速度が例えば時速10[km]以上であった場合、前値速度Vn-1を自律速度Vとするようにすればよい。
【0233】
さらに上述した実施の形態においては、PND1の制御部11が、予め記憶部12に格納されているアプリケーションプログラムに従い、上述したルーチンRT1の現在位置算出処理手順や、ルーチンRT2の自車マーク表示制御処理手順を行うようにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、PND1の制御部11が、記憶媒体からインストールしたアプリケーションプログラムや、インターネットからダウンロードしたアプリケーションプログラム、その他種々のルートによってインストールしたアプリケーションプログラムに従って上述した現在位置算出処理手順や自車マーク表示制御処理手順を行うようにしても良い。
【0234】
さらに上述した実施の形態においては、車両がトンネルTN1及びTN2を走行しているときを否GPS測位区間AR11であると認識し、その間、自律的な現在位置データNPD2に従って自車マークPMを高精度に継続表示するようにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、道路の属性情報に基づいてGPS信号を受信し難いと想定される高速道路の高架下近傍を走行しているときや、地下駐車場を走行しているときを否GPS測位区間AR11であると認識し、その間、自律的な現在位置データNPD2に従って自車マークPMを高精度に継続表示するようにしても良い。
【0235】
さらに上述した実施の形態においては、ステップSP20で現在位置データNPD2に従い自車マークPMを進ませながら表示し、トンネルTN1の出口付近に自車マークPMが到達した時点で当該自車マークPMを留めるようにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、自律的に測位した現在位置データNPD2が従来よりも高精度であるため、あえてトンネルTN1の出口付近に自車マークPMを留めることなく、現在位置データNPD2に従って自車マークPMを継続表示するようにしても良い。
【0236】
さらに上述した実施の形態においては、本発明のナビゲーション装置をPND1に適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、ナビゲーション装置を搭載した携帯電話機に適用するようにしても良い。
【0237】
図29に示すように、携帯電話機100はCPU構成の統括制御部101が、携帯電話機としての機能を司る携帯電話ユニット102を制御する。
【0238】
また携帯電話機100は、上述したPND1のナビゲーション機能を実現するための図7に示した制御部11、3軸加速度センサ4、Y軸ジャイロセンサ5、Z軸ジャイロセンサ6及び気圧センサ7を有するナビゲーションユニット106を統括制御部101により制御する。ここでは、制御部11の構成については同じであるため、便宜上その説明を省略する。
【0239】
なお携帯電話機100は、各種データの保存等に用いられる半導体メモリ等でなる記憶部103、各種表示を行うLCD(Liquid Crystal Device)でなる表示部104、入力釦等の操作部105を有している。
【0240】
携帯電話機100は、通常モードの場合、通話機能や電子メール機能を実現すべく携帯電話ユニット102を用いる。実際上、携帯電話機100の携帯電話ユニット102は、アンテナ110を介して受信した受信信号を送受信部111へ送出する。
【0241】
送受信部111は、送信部及び受信部によって構成されており、受信信号を所定の方式に従って復調等することにより受信データに変換し、これをデコーダ112へ送出する。デコーダ112はマイクロコンピュータ構成でなる携帯電話制御部114の制御に従って受信データをデコードすることにより相手方の通話音声データを復元し、スピーカ113へ出力する。スピーカ113は通話音声データを基に相手方の通話音声を出力する。
【0242】
一方、携帯電話ユニット102は、マイクロフォン115から集音した音声信号をエンコーダ116へ送出する。エンコーダ116は、携帯電話制御部114の制御に従って音声信号をデジタル変換した後に所定の方式でエンコードすることにより得た音声データを送受信部111へ送出する。
【0243】
送受信部111は、音声データを所定の方式に従って変調した後、アンテナ110を介して基地局へ無線送信する。
【0244】
このとき携帯電話ユニット102の携帯電話制御部114は、操作部105からの操作命令に応じて表示部104に相手方の電話番号や電波受信状況等を表示する。
【0245】
なお携帯電話ユニット102の携帯電話制御部114は、送受信部111からデコーダ112へ供給された受信データが電子メールの場合、受信データをデコードすることにより復元した電子メールデータを表示部104へ送出し、当該表示部104に電子メールを表示すると共に、記憶部103に記憶する。
【0246】
また携帯電話ユニット102の携帯電話制御部114は、操作部105を介して入力された電子メールデータが供給された場合、これをエンコーダ116によってエンコードした後、送受信部111及びアンテナ110を経由して無線送信するようになされている。
【0247】
一方、携帯電話機100は、ナビゲーションモードの場合、統括制御部101がナビゲーションユニット106を制御し、上述したような、自車マーク表示制御処理手順(図28)を実行し得るようになされている。
【0248】
さらに上述した実施の形態においては、上述した自律速度算出方法に従って算出した自律速度Vが示す速度データVDと、角度データDDとに基づいて算出した従来のPNDよりも高精度な現在位置データNPD2を用いて自車マークPMを表示するようにした場合について述べた。しかしながら、本発明はこれに限らず、現在位置データNPD2と同程度の精度を有するのであれば、車両の進行方向に直交した水平方向の加速度と、当該進行方向に直交した垂直軸周りの角速度とを基に進行方向の速度を算出し、当該進行方向の速度に基づいて算出した現在位置を用いて自車マークPMを表示したり、その他種々の方法によって自律的に算出した車両の自律現在位置データを用いて自車マークPMを表示するようにしても良い。
【0249】
さらに上述した実施の形態においては、測位手段としてのGPS処理部21、地図表示手段及び現在位置通知手段としてのナビゲーション部26、推測現在位置取得手段としての速度算出部22及び位置算出部25、制御手段としてのナビゲーション部26によって本発明のナビゲーション装置としてのPND1を構成するようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、この他種々の構成でなる測位手段、地図表示手段、現在位置通知手段、推測現在位置取得手段及び制御手段によってナビゲーション装置を構成するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0250】
本発明のナビゲーション装置、ナビゲーション方法及びナビゲーション機能付携帯電話機は、例えば車両以外にも、バイク、電車等のその他種々に実装されたPNDや据置型のナビゲーション装置等に適用することができる。
【符号の説明】
【0251】
1……PND、2、104……表示部、3……クレードル、4……3軸加速度センサ、5……Y軸ジャイロセンサ、6……Z軸ジャイロセンサ、7……気圧センサ、11……制御部、12、103……記憶部、21……GPS処理部、22、52……速度算出部、23……角度算出部、24……高度算出部、25……位置算出部、26……ナビゲーション部、31……データ取得部、32、62……ハイパスフィルタ部、33、63……ローパスフィルタ部、34……速度計算部、35……平滑化及びノイズ除去部、36……速度出力部、100……ナビゲーション機能付携帯電話機、101……統括制御部、102……携帯電話ユニット、105……操作部、110……アンテナ、111……送受信部、112……デコーダ、113……スピーカ、114……携帯電話制御部、115……マイクロフォン、116……エンコーダ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星から受信した衛星信号に基づいて現在位置を測位する測位手段と、
上記現在位置を含む周辺地図を記憶手段から読み出して表示手段に表示する地図表示手段と、
上記現在位置を示す所定形状のマークを生成し、上記周辺地図に重ねて表示する現在位置通知手段と、
上記衛星信号を受信できない通信環境下になったとき、上記現在位置を推測することにより推測現在位置を得る推測現在位置取得手段と、
上記現在位置が含まれている現リンクに対する次リンクの属性情報を読み出し、当該次リンクについて上記衛星信号の受信感度が悪いと想定されるエリアであると判断した場合、上記現リンクから上記次リンクへ移った後は上記測位手段による上記現在位置を用いるのではなく上記推測現在位置に従って上記マークを止めることなく上記周辺地図に表示し続ける制御手段と
を有するナビゲーション装置。
【請求項2】
上記制御手段は、上記現リンクが上記衛星信号の受信感度が悪いと想定されるエリアであり、上記次リンクに対して上記衛星信号の受信感度が悪いと想定されるエリアではないと判断した場合、上記測位手段による上記現在位置を用いて上記マークを上記周辺地図に重ねて表示するように切り換える
請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
上記制御手段は、上記次リンクに対して上記衛星信号の受信感度が悪いと想定されるエリアではないと判断した場合で、その状態が所定距離以上連続する場合、上記次リンクへ移るまでは上記推測現在位置に従って上記現リンクの最終位置付近で上記マークを留めたまま表示する
請求項2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
上記制御手段は、上記次リンクに対して上記衛星信号の受信感度が悪いと想定されるエリアではないと判断した場合でも、その状態が所定距離以上連続しない場合、上記次リンクへ移るまで上記現在位置推測手段による上記推測現在位置に従って上記マークを留めることなく上記周辺地図に表示し続ける
請求項2に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
上記制御手段は、上記次リンクの属性情報を読み出すことにより当該次リンクがトンネルであることを認識したとき、当該次リンクが衛星信号の受信感度が悪いと想定されるエリアであると判断する
請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
上記制御手段は、上記次リンクの属性情報を読み出すことにより当該次リンクが高架下近傍であることを認識したとき、当該次リンクが衛星信号の受信感度が悪いと想定されるエリアであると判断する
請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
所定の測位手段が衛星から受信した衛星信号に基づいて現在位置を測位する測位ステップと、
所定の地図読出手段が上記現在位置を含む周辺地図を記憶手段から読み出して表示手段に表示する地図表示ステップと、
所定の現在位置通知手段が上記現在位置を示す所定形状のマークを生成し、上記周辺地図に重ねて表示する現在位置通知ステップと、
上記衛星信号を受信できない通信環境下になったとき、所定の推測現在位置取得手段が上記現在位置を推測することにより推測現在位置を得る推測現在位置取得ステップと、
所定の制御手段が、上記現在位置が含まれている現リンクに対する次リンクの属性情報を読み出し、当該次リンクについて上記衛星信号の受信感度が悪いと想定されるエリアであると判断した場合、上記現リンクから上記次リンクへ移った後は上記測位手段による上記現在位置を用いるのではなく上記推測現在位置に従って上記マークを止めることなく上記周辺地図に表示し続ける制御ステップと
を有するナビゲーション方法。
【請求項8】
携帯電話ユニットと、
衛星から受信した衛星信号に基づいて現在位置を測位する測位手段と、
上記現在位置を含む周辺地図を記憶手段から読み出して表示手段に表示する地図表示手段と、
上記現在位置を示す所定形状のマークを生成し、上記周辺地図に重ねて表示する現在位置通知手段と、
上記衛星信号を受信できない通信環境下になったとき、所定の推測現在位置取得手段が上記現在位置を推測することにより推測現在位置を得る推測現在位置取得手段と、
上記現在位置が含まれている現リンクに対する次リンクの属性情報を読み出し、当該次リンクについて上記衛星信号の受信感度が悪いと想定されるエリアであると判断した場合、上記現リンクから上記次リンクへ移った後は上記測位手段による上記現在位置を用いるのではなく上記推測現在位置に従って上記マークを止めることなく上記周辺地図に表示し続ける制御手段と
からなるナビゲーション装置と
を有するナビゲーション機能付携帯電話機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2011−64501(P2011−64501A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213448(P2009−213448)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】