説明

ナビゲーション装置及びナビゲーション用プログラム

【課題】同乗者が安心できる走行経路を案内する。
【解決手段】走行経路の探索(再探索を含む)を行う際の考慮内容に、同乗者の状態から得た情報を加味する事で、同乗者に配慮した走行経路の案内を行う。すなわち、車両が走行している間に、同乗者が運転方法や道路状況に緊張や不安を感じていると思われる所定の動作を検知した場合に、検知した場所や緊張度合い等の緊張場所情報をルート(例えば、道路情報を構成するリンクデータ)に紐づけて保持しておく。そして、同乗者がいる場合は保持した緊張場所情報と運転しやすい道の情報を優先して使用し、同乗者がリラックスできるルートを提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置及びナビゲーション用プログラムに係り、詳細には、走行経路の探索に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されて目的地までの走行経路を探索して車両を案内するナビゲーション装置が広く普及している。ナビゲーション装置では、入力された目的地までの走行経路を探索し、探索した走行経路について音声出力や画面表示により案内するようになっている。
このようなナビゲーション装置において、特許文献1では、画面表示した質問文に対する回答から運転者の技量を判断し、判断した技量に応じた走行経路を探索する技術について提案されている。
この特許文献1記載技術では、運転者の技量を判断することで苦手な経路、例えば右折が多い経路を避けた走行経路が探索される。このため運転者にとって安心感の得られる走行経路の案内が行われる。
【0003】
しかし、特許文献1では、技量に基づいて運転者が安心して走行できる経路が探索されるが、同乗者については考慮されていない。
このため、運転者にとって不安を感じることがない走行経路であっても、同乗者としては怖いと感じる等、緊張や恐怖を感じたりする場合があり、同乗者が出来るだけリラックスできる走行経路を探索することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−300496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、同乗者が安心できる走行経路を案内することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)請求項1記載の発明では、目的地を取得する目的地取得手段と、設定された探索条件に従って前記目的地までの走行経路を探索する経路探索手段と、前記探索した走行経路を案内する経路案内手段と、同乗者の有無を検出する同乗者検出手段と、を備え、前記経路探索手段は、同乗者を検出した場合に、同乗者が検出されない場合とは異なる検索条件に基づいて目的地までの走行経路を探索する、ことを特徴とするナビゲーション装置を提供する。
(2)請求項2記載の発明では、同乗者の緊張や不安を表す緊張動作を検出する緊張検出手段を備え、前記経路探索手段は、同乗者を検出し、かつ緊張動作を検出した場合に、探索条件を変更して目的地までの走行経路を探索する、ことを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置を提供する。
(3)請求項3記載の発明では、前記緊張動作を検出した場所を緊張動作情報として保存する緊張動作情報保存手段を備え、前記経路探索手段は、緊張動作を検出したリンクの探索コストを増加して目的地までの走行経路を探索する、ことを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載のナビゲーション装置を提供する。
(4)請求項4記載の発明では、道路形状に基づいて緊張道路情報を設定する緊張道路情報設定手段を備え、前記経路探索手段は、前記設定した緊張道路情報に対応するリンクの探索コストを増加して目的地までの走行経路を探索する、ことを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置を提供する。
(5)請求項5記載の発明では、目的地を取得する目的地取得機能と、設定された探索条件に従って前記目的地までの走行経路を探索する経路探索機能と、前記探索した走行経路を案内する経路案内機能と、同乗者の有無を検出する同乗者検出機能と、をコンピュータに実現させるナビゲーション用プログラムであって、前記経路探索機能は、同乗者を検出した場合に、同乗者が検出されない場合とは異なる検索条件に基づいて目的地までの走行経路を探索する、ことを特徴とするナビゲーション用プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、同乗者を検出した場合に、同乗者が検出されない場合とは異なる検索条件に基づいて目的地までの走行経路を探索することで、同乗者に合わせた走行経路を案内することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態におけるナビゲーション装置のシステム構成図である。
【図2】車両走行中における、同乗者の緊張の検出状態と緊張場所情報の保存について表した説明図である。
【図3】緊張場所検出処理の内容を表したフローチャートである。
【図4】リラックスルートを探索する場合についての説明図である。
【図5】リラックスルートの再探索処理の内容を表したフローチャートである。
【図6】第2実施形態における経路探索処理についての概念説明図である。
【図7】第2実施形態における経路探索処理について表したフローチャートである。
【図8】第2実施形態におけるリラックスルートの再探索処理の内容を表したフローチャートである。
【図9】第3実施形態において、ノードとリンクから構成される道路と、検出した緊張場所について表した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のナビゲーション装置及びナビゲーション用プログラムにおける好適な実施の形態について、図1から図9を参照して詳細に説明する。
(1)実施形態の概要
本実施形態のナビゲーション装置では、走行経路の探索(再探索を含む)を行う際の考慮内容に、同乗者の状態から得た情報を加味する事で、同乗者に配慮した走行経路の案内を行うようにしたものである。
すなわち、車両が走行している間に、同乗者が運転方法や道路状況に緊張や不安を感じていると思われる所定の動作を検知した場合に、検知した場所や緊張度合い等の緊張場所情報をルート(例えば、道路情報を構成するリンクデータ)に紐づけて保持しておく。
【0010】
そして、同乗者がいる場合は、同乗者がいない場合と異なる探索条件により、保持した緊張場所情報と運転しやすい道の情報を優先して使用して経路探索を行うことで、同乗者に合わせた走行経路、すなわち、同乗者がリラックスできるルートを提案する。
例えば、走行している最中、助手席側の手擦り(アームレスト)が一定時間(5秒以上等)使用された場合、加速度Gセンサーの値が一定値(平均値)を継続して上回った場合、同乗者のシートに対する圧力の値が大きく上がった場合(=同乗物への負担が大きい場合)等に、車内の同乗者に負担の少ないルート(リラックスルート)を再探索し、提案する。
これにより運転者が運転しやすい走行経路や運転者が気に入っている走行経路だけでなく、同乗者の立場で安心できるルートを提案する事ができる。
【0011】
(2)実施形態の詳細
図1は本実施形態が適用されるナビゲーション装置のシステム構成図である。
このナビゲーション装置1は、車両に搭載され、この図1に示すように、現在位置検出装置10、情報処理制御装置20、入出力装置40及び情報記憶装置50、同乗者検出装置60、緊張・不安検出部70とを備えている。
まず、現在位置検出装置10は、以下のような構成を有している。絶対方位センサ11は、例えば、磁石に基づいてN方向の検出から、車両がいずれの方向に位置するかを検出する地磁気センサであり、絶対方位を検出する手段であればよい。
【0012】
相対方位センサ12は、例えば交差点を曲がったか否かを検出するものであり、ハンドルの回転部に取り付けた光学的な回転センサや回転型の抵抗ボリューム或いは車輪部に取り付ける角度センサでもよい。
また、角速度を利用して角度の変化を検出するジャイロセンサを用いてもよい。つまり、基準角度(絶対方位)に対して、相対的に変化した角度を検出することができる手段であればよい。
距離センサ13は、例えば、車輪の回転を検出して計数するものや、加速度を検出して2回積分するものでもよい。つまり、車両の移動距離を計測できる手段であればよい。
【0013】
GPS(グローバル・ポジショニング・システム)受信装置14は、人工衛星からの信号を受信する装置であり、信号の発信時刻、受信装置の位置情報、受信装置の移動速度、受信装置の進行方向などの様々な情報を得ることができる。
ビーコン受信装置15は、特定の地点に設置された送信装置より発信された信号を受信する装置である。特に、VICS情報を入手することができ、渋滞情報、現在位置情報、駐車場情報等車両の走行に関する情報を入手することができる。
【0014】
データ送受信装置16は、電話回線や電波を利用して車両外部と通信をし、情報の交換を行うための装置である。
例えば、自動車電話、ATIS、VICS、GPS補正、車両間通信など様々な利用方法があり、走行に関する情報を入出力することが可能である。
【0015】
次に、情報処理制御装置20は、現在位置検出装置10、入出力装置40から入力される情報及び情報記憶装置50に格納された情報に基づいて演算及び制御を行うとともに、演算結果をディスプレイ42、プリンタ43またはスピーカ44等の出力手段に出力するように制御する手段である。
【0016】
この情報処理制御装置20は、以下のような構成を有している。
中央処理装置(CPU)21は、ナビゲーション装置全体の総括的な演算及び制御を行う。
第1ROM22はナビゲーションに関するプログラム、特に、現在位置の検出、走行経路の探索、表示案内などに関するナビゲーションプログラム等の各種プログラムを格納している。走行経路の探索用のプログラムでは、同乗者がいない場合の通常ルート探索と、同乗者が緊張している場合のリラックスルート探索(再探索)が行われる。
センサ入力インターフェイス23は、現在位置検出装置10、同乗者検出装置60、緊張・不安検出部70からの情報を受け取る手段である。
【0017】
RAM24は、後述する入力装置41により入力された目的地の情報、通過地点の情報等の利用者が入力した情報を記憶すると共に、利用者の入力情報に基づいてCPU21により演算された結果や、経路探索された結果、または情報記憶装置50から読み込まれた地図情報を格納するための記憶手段である。
通信インタフェース25は、現在位置検出装置10からの情報、特に外部から得られる情報を入出力するための手段である。
【0018】
第2ROM26は、ナビゲーションに関するプログラム、特に、音声案内に関するナビゲーションプログラムを格納している。なお、第1ROM22と第2ROM26を共通する1のROMで構成するようにしてもよい。
画像プロセッサ27は、CPU21で処理されたベクトル情報を画像情報に処理するための処理手段である。
時計28は、時刻を刻む。
画像メモリ29は、画像プロセッサ27により処理された画像情報を格納する手段である。
音声プロセッサ30は、情報記憶装置50から読み込まれた音声情報を処理し、スピーカ44に出力する。
【0019】
入出力装置40は、利用者により目的地、通過地点、探索条件等のデータを入力する入力装置41、画像を表示するディスプレイ42、情報を印刷するプリンタ43、音声を出力するスピーカ44より構成される。入力装置41は、例えば、タッチパネル、タッチスイッチ、ジョイスティック、キースイッチ等で構成される。
ディスプレイ42には、現在地周辺の地図や、目的地までの走行経路が表示される。
【0020】
情報記憶装置50は、伝送路45を介して情報処理制御装置20に接続される。
情報記憶装置50は、地図データファイル51、交差点データファイル52、ノードデータファイル53、道路データファイル54、写真データファイル55、目的地データファイル56、案内地点データファイル57、緊張場所情報データファイル58、その他のデータファイル59を格納している。
この情報記憶装置50は、一般的には、光学的記憶媒体であるDVD−ROM、CD−ROMや磁気的記憶媒体であるハードディスクなどで構成されるが、光磁気ディスク、各種半導体メモリなどの各種情報記憶媒体で構成してもよい。
なお、書き換えが必要な情報については、書き換え可能なハードディスク、フラッシュメモリなどで構成し、その他の固定的な情報についてはCD−ROM、DVD−ROMなどのROMを使用するようにしてもよい。
【0021】
地図データファイル51には、全国道路地図、各地域の道路地図または住宅地図等の地図データが記憶されている。道路地図は、主要幹線道路、高速道路、細街路等の各道路と地上目標物(施設等)から構成される。住宅地図は、地上建造物等の外形を表す図形及び、道路名称等が表示される市街図である。細街路とは、例えば、国道、県道以下の道幅が所定値以下の比較的狭い道路である。
【0022】
交差点データファイル52には交差点の地理的位置座標や名称等の交差点に関するデータが、道路データファイル54には道路の位置と種類及び車線数及び各道路間の接続関係等の道路に関するデータが、写真データファイル55には各種施設や観光地、または主要な交差点等の視覚的表示が要求される場所を写した写真の画像データが、それぞれ記憶されている。
【0023】
ノードデータファイル53には、地図上において経路探索に利用される各ノードの地理座標データ等を表したノードデータが記憶される。
例えば、交差点などの道路の接続点はノードにより表され、接続点の間の道路(即ち道路の内分岐しない領域)はリンクによって表される。このように、ノードデータは、経路の接続関係を表した経路データとして機能している。
また、各リンクには、進入禁止や一方通行など、交通規制により走行が制限されるものに関しては、これを表す属性が付与されている。
【0024】
更に、各リンクには、本実施形態における緊張道路情報が付与されている。
この緊張道路情報は、道路の形状や状態から同乗者が緊張する場合を示す情報で、緊張を与えるようなカーブ、高低差がある区間、平均速度が速すぎたり、逆に遅すぎる区間、大型車両やタクシー、バイク等の特殊車両の通行量が多い区間のリンクに付与されるようになっている。
また、大きい踏み切りなら良いが、小さい踏み切りなどは対向車とすれ違えない等、運転しずらいことが多いために、同乗者に対しても緊張・不安を与えることから、幅が所定距離以下の狭い踏切のある区間のリンクにも緊張道路情報が付与されている。
【0025】
目的地データファイル56には、主要観光地や建物、電話帳に記載されている企業・事業所等の目的地になる可能性の高い場所や施設等の位置と名称等のデータが記憶されている。案内地点データファイル57には、道路に設置されている案内表示板の内容や分岐点の案内等、案内が必要とされる地点の案内データが記憶されている。
【0026】
緊張場所情報データファイル58には、同乗者の緊張や不安を検出した場所、緊張の度合い等を示す緊張場所情報が保存される。緊張場所情報は、緊張場所に対応する道路情報のリンクに紐付けて保存される。
なお、緊張場所情報は、所定の情報センタのサーバに送信するようにしてもよい。この場合、情報センタでは各車両から送信される緊張場所を収集することで緊張場所データベースを作成すると共に、各車両では情報センタから緊張場所情報を取得する。緊張場所情報は、出発地(又は現在位置)と目的地を送信し、走行経路として選択される可能性がある所定領域内の各道路に設定された緊張場所情報を取得する。
【0027】
同乗者検出装置60は、助手席や後部座席の搭乗者を検出する装置であり、各座席に配置される荷重センサや、車両内を撮像する撮像装置と人を認識する画像認識装置により構成される。
【0028】
緊張・不安検出部70は、同乗者が緊張したり不安を感じたりしている状態を検出する。具体的には、助手席や後部座席の手摺り(アームレストやアシストグリップ)に配設された手摺センサ、各シートの背もたれに配置された圧力センサ、及び、加速度センサのうちの少なくとも1つ以上のセンサで構成される。
手摺センサと圧力センサは同乗者の状態から緊張状態等を検出するもので、加速度センサは運転者による運転状況から類推的に検出するものである。
【0029】
手摺センサは、同乗者が一定時間(例えば、2秒以上)手摺りを掴んだ状態を検出した場合に、緊張や不安な状態であると判断する。すなわち、基本的に速度が速い運転や道に対する不安や緊張を持っている場合に、手摺を掴んでいると推定されるためでる。
なお、手摺に圧力センサを配置し、所定以上の圧力を検出した場合や、所定以上の圧力を所定時間以上検出した場合を、同乗者の緊張や不安状態として検出するようにしてもよい。
【0030】
このように構成されたナビゲーション装置では、次のようにして経路案内が行われる。
ナビゲーション装置は、現在位置検出装置10で現在位置を検出し、情報記憶装置50の地図データファイル51から現在位置周辺の地図情報を読み込み、ディスプレイ42に表示する。
そして、入力装置41から目的地が入力されると、情報処理制御装置20は、現在位置から目的地に至る走行経路の候補を複数探索(演算)し、ディスプレイ42に表示した地図上に表示し、運転者がいずれかの走行経路を選択すると、選択した走行経路をRAM24に格納することで、走行経路を取得する(走行経路取得手段)。
【0031】
なお、情報処理制御装置20は、情報処理センタに車両現在位置(又は入力された出発地)と目的地を送信し、情報処理センタで探索された目的地までの走行経路を受信することにより走行経路を取得するようにしてもよい。この場合、目的地や走行経路の通信は通信インターフェイス25を介して、無線通信により行う。
また、自宅等のパーソナルコンピュータ等の情報処理装置を使用して、出発地から目的地までの走行経路を探索し、USBメモリ等の記憶媒体に格納し、該記憶媒体読取装置を介して取得するようにしてもよい。この場合の記憶媒体読取装置は伝送路45を介して情報処理制御装置20に接続される。
【0032】
車両が走行すると、現在位置検出装置10によって検出された現在位置を追跡することにより、経路案内を行う。
経路案内は、探索した走行経路に対応する道路データと現在位置検出装置10で検出される現在位置とのマップマッチングにより、地図上の車両位置を特定し、車両現在位置周辺の地図をディスプレイ42に表示すると共に、探索した走行経路と現在位置とを地図上に表示する。
また、探索した走行経路と現在位置との関係から、案内の必要性、すなわち直進が所定距離以上続く場合、所定の進路変更地点等の走行経路の案内、及び方面案内が必要か否か等について判断し、必要である場合にはディスプレイ42の表示及び音声による案内を実行する。
【0033】
次に本実施形態による同乗者の緊張や不安を解消するリラックスルートの検索について説明する。
図2は、車両走行中における同乗者の緊張の検出状態と緊張場所情報の保存について表したものである。
この図2において、太い実線が道路を表し、点線が探索した走行経路(案内ルート)を表し、円内にGを記した記号が目的地を表し、円内に黒塗りの三角を記した記号が車両の現在地を表している(以下他の図も同じ)。
【0034】
図2に示すように、車両走行中において、緊張・不安検出部70において同乗者の緊張や不安を示す動作や状態を検出すると、当該検出場所k1、k2、…に関する情報を緊張場所情報として、緊張場所情報データファイル58に順次保存する。
なお、この緊張場所の検出と緊張場所情報の保存については、探索した走行経路の案内中だけでなく、探索した走行経路以外の道路を自由に走行(任意走行)している場合にも行われる。
同乗者の緊張を検出した場合の緊張場所情報は、緊張場所情報データファイル58に保存するが、情報センタにアップロードするようにしてもよい。
【0035】
同乗者による緊張等を示す動作や状態の検出は、次のようにして行われる。
(a)助手席、後部座席にて手擦りを一定時間(例えば、2秒以上等)掴んだままの状態を検出した場合、緊張動作として検出する。
すなわち、掴む癖のある人はいるかもしれないが、基本的には速度が速い運転や道に対する不安・緊張を示す動作であると考えられるので、緊張状態として検出する。
(b)加速度センサ(Gセンサ)の振れ幅が平均値を大幅に超過した場合も緊張状態として検出する。
すなわち、走行速度が速いまま曲がってしまいがちなルートや、急なハンドル操作をしてしまうルートなど、同乗者として不安・緊張を感じる状態として検出する。
(c)シートに配設した圧力センサに対しての圧力が所定値以上あがった場合にも、緊張動作として検出する。
すなわち、主に走行速度が速いなど、不安・緊張時に同乗者が体を安定させるために背もたれなどに掛ける圧力が上がった結果であるとして検出する。
【0036】
図3は、緊張場所検出処理の内容を表したフローチャートである。
情報処理制御装置20は、同乗者検出装置60により、助手席や後部座席に同乗者がいるか否かを判断する(ステップ31)。同乗者がいなければ(ステップ31;N)、情報処理制御装置20はステップ34に移行し、走行が終了するまで途中乗車した同乗者がいるか否かの監視を継続する。
【0037】
同乗者がいると判断された場合(ステップ31;Y)、情報処理制御装置20は、同乗者が緊張しているか否かを検出する(ステップ32)。
すなわち、情報処理制御装置20は、緊張・不安検出部70により、上述した(a)〜(c)により同乗者が緊張や不安を示す動作や状態か否かを判断する。
【0038】
同乗者の緊張が検出されなければ(ステップ32;N)、情報処理制御装置20は、ステップ34に移行し、走行が終了するまで同乗者の緊張等の検出を継続する。
一方、緊張・不安検出部70により、同乗者の緊張等の動作や状態を検出した場合、情報処理制御装置20は、検出した場所等の情報を緊張場所情報として緊張場所情報データファイル58に保存する(ステップ33)。
【0039】
その後、情報処理制御装置20は、走行が終了したか否かを判断する(ステップ34)。走行が終了したか否かについては、例えば、イグニッションがオフされたか否かにより判断する。
情報処理制御装置20は、走行が終了した場合(ステップ34;Y)には処理を終了し、一方、走行が終了していなければ(ステップ34;N)ステップ31に戻り、車両が走行している間、同乗者による緊張検出を継続する。
【0040】
以上のように車両が走行している間、同乗者による緊張場所を検出して緊張場所情報を蓄積する。
この緊張場所情報は、上述したように無線通信により情報センタに送信し、情報センタで緊張場所情報を収集してデーターベース化するようにしてもよい。これにより各ナビゲーション装置は、自車で実際に走行した経路に限定されていた緊張場所情報だけでなく、情報センタから、より詳しい緊張場所情報を取得することができ、未走行の道路に対しても後述する同乗者がいる場合のリラックスルートを探索することが可能になる。
【0041】
次に、このようにして収集した緊張場所情報を利用したリラックスルートの探索について説明する。
図4は、リラックスルートを探索する場合についての説明図である。
本実施形態では、同乗者の有無にかかわらず、予め目的地までの走行経路として通常ルート探索がされる。
そして、通常ルート探索により探索された走行経路の走行中において、同乗者の緊張や不安の動作や状態を検出した場合、例えば、図4(a)に示すように、カーブのある道路を走行していることで助手席の同乗者の緊張、不安を検出したものとする。
【0042】
すると、情報処理制御装置20は、現在位置から目的地までのリラックスルート探索により、同乗者が安心して乗車できる走行経路を再探索する。
この場合の再探索では、図4(b)に示すように、通常ルート探索による走行経路は、分岐点Bから目的地までの経路もそれ以前の経路と同様にカーブが連続しているので、分岐点Bから目的地までは、少し遠回りとなったとしても簡単なルート、すなわち、カーブが少なく比較的直線からなる走行経路をリラックスルート探索により探索する。
【0043】
リラックスルート探索では、現在地から目的地までの経路探索をする場合に、通常ルート探索の場合に比べて、緊張場所情報データファイル58に格納された緊張場所が紐付けされたリンク、及び緊張道路情報が付与されているリンクのコストを所定量加算し、又は所定割合で増加させたうえで経路探索を行う。
本実施形態において緊張場所情報及び緊張道路情報は、自装置内の情報記憶装置50から取得するが、両者又は緊張場所情報を情報センタから取得するようにしてもよい。この場合、緊張場所情報と緊張道路情報の要求と共に車両の現在位置と目的地の情報を、情報センタに送信する。
【0044】
この結果、図4(b)に示されるように、分岐点Bから目的地までの走行経路として、緊張道路情報によるコスト増加によって、カーブが続く通常ルート探索による経路ではなく、コスト加算のないリラックスルートが再探索されることになる。
【0045】
図5は、リラックスルートの再探索処理の内容を表したフローチャートである。
情報処理制御装置20は、同乗者検出装置60により、同乗者があるか否かを判断する(ステップ51)。このように通常ルート探索による走行経路を走行している途中で同乗者が乗った場合を含めて同乗者の検出が行われている。
同乗者が検出された場合(ステップ51;Y)、情報処理制御装置20は、同乗者が緊張や不安を感じているか否かを検出する(ステップ52)。
【0046】
同乗者の緊張等を検出した場合(ステップ52;Y)、情報処理制御装置20は、現在位置検出装置10で検出した車両の現在地から、設定済みの目的地までの走行経路を、リラックスルート探索により再探索し(ステップ53)、メインルーチンにリターンする。
本実施形態によりリラックスルートが再探索された場合、情報処理制御装置20は、通常ルート探索で探索した走行経路(図4(a))から、再探索したリラックスルート(図4(b))に変更して経路案内が行われる。
【0047】
一方、情報処理制御装置20は、同乗者が検出されていない場合(ステップ51;N)、及び同乗者が検出(ステップ51;Y)されたがその同乗者の緊張が検出されない場合(ステップ52;N)、メインルーチンにリターンし、通常ルート探索で探索されている走行経路の案内が継続されることになる。
なお、リラックスルートの再探索処理は、目的地に到着するまでの間、所定時間間隔ごとに実行され、同乗者の有無と緊張についての検出が継続的に行われる。但し、一度リラックスルートの再探索をした後は、実行しないようにしてもよい。
【0048】
以上説明したように、本実施形態では、同乗者の緊張を検出した場合に、通常ルート探索による走行経路から、同乗者による緊張場所や緊張道路をなるべく回避したリラックスルートを再探索するようにしたので、同乗者が安心できる走行経路を案内することができる。
【0049】
次に第2実施形態について説明する。
説明した第1実施形態では、同乗者の有無にかかわらず通常ルート探索を行い、探索した通常ルートの走行中において同乗者の緊張状態等を検出した場合に、リラックスルート探索による再探索を行うようにした。
これに対して第2実施形態では、経路探索の際に同乗者がいる場合には最初からリラックスルート探索を行うものである。
例えば、図6(a)に示す道路において、車両の現在地から目的地までの経路探索を行う場合、同乗者がいなければ図6(b)に示すように運転者に対する最適な推奨ルートを通常ルート探索により行う。
一方、同乗者がいる場合には、図6(c)に示すように、同乗者の緊張や不安をなるべく回避するリラックスルート探索を行う。
なお、第2実施形態におけるナビゲーション装置の構成は図1と同様である。
【0050】
図7は、第2実施形態における経路探索処理について表したフローチャートである。
情報処理制御装置20は、目的地設定画面からユーザによって入力された目的地を取得し、RAM24に保存する(ステップ71)。
そして、情報処理制御装置20は、同乗者検出装置60により助手席や後部座席に同乗者がいるか否かを判断する(ステップ72)。
情報処理制御装置20は、同乗者が検出されない場合(ステップ72;N)には、通常ルート探索により、運転者に対する最適な推奨ルートを探索し(ステップ73)、処理を終了する。
一方、同乗者を検出した場合(ステップ72;Y)、情報処理制御装置20は、リラックスルート探索により、緊張場所や緊張道路によるリンクへのコスト加算を行うことで、同乗者に緊張を与えにくいリラックスルートを探索し(ステップ74)、処理を終了する。
【0051】
図8は、第2実施形態におけるリラックスルートの再探索処理の内容を表したフローチャートである。
情報処理制御装置20は、最初に現在走行している走行経路がリラックスルートか通常ルートかを判断し(ステップ81)、リラックスルートであれば(ステップ81;Y)改めてリラックスルートを再探索する必要がないのでメインルーチンにリターンする。
【0052】
一方、リラックスルートでない場合、すなわち、通常ルートを走行中である場合(ステップ81;N)、情報処理制御装置20は、同乗者検出装置60により同乗者がいるか否かを判断する(ステップ82)。
この判断は、当初に経路探索する場合には同乗者がいないために通常ルート探索(ステップ73)が行われたが、その後通常ルートの走行途中から同乗者が同乗する場合を想定した判断である。
【0053】
同乗者が検出されなければ(ステップ82;N)、情報処理制御装置20はメインルーチンにリターンし、現在の通常ルートに従って経路案内が継続される。
一方、同乗者が検出された場合(ステップ82;Y)、情報処理制御装置20は、車両現在位置から目的地までのリラックスルートを再探索し(ステップ83)、メインルーチンにリターンし、以後、再探索したリラックスルートによる走行経路案内が継続される。
【0054】
次に第3実施形態について説明する。
第1及び第2実施形態では、緊張道路情報をノードデータファイル53のリンクに付加して保存し、緊張場所情報を緊張場所情報データファイル58に保存するようにしたが、この第3実施形態では、両者共にリンク情報として保持するものである。
【0055】
図9は、第3実施形態において、ノードとリンクから構成される道路と、検出した緊張場所について表したものである。
この図9において、丸付き数字の1〜6がノードデータで、各ノード1〜6間を結ぶ道路がリンクA〜Fである。
そして、各リンクA〜Fについては、リラックスルート探索において次のように判定される。
【0056】
(a)リンクAの特徴
(i)カーブ:ノード1とノード2の直線距離とリンク距離との差が大きいため、カーブがきつい道路と判定される。なお、カーブについては、ハンドル操作で左右のカーブを判別するようにしてもよい。
(ii)傾度:ノード2の高度からノード1の高度を引いた値(高度差)がマイナスなので上り坂で、高度差を距離(リンク距離)で割った値が所定のしきい値より小さいため、緩やかな上り坂と判定される。
(iii)道路:中央分離帯の無い道(道路データファイル54から判断、以下同じ)である。
(iv)不安度合い:同乗者不安度合いが高い。すなわち、緊張場所検出処理(図3)において、同乗者の緊張を検出した時間の総計や回数で判断する。例えば、緊張場所k1で同乗者が10秒間手擦りを使用し、緊張場所k2で5秒間手擦りを使用した場合、このリンクAの不安度合いとして、総継続時間15秒、又は/及び、総回数2回が保存される。
【0057】
このリンクAの特徴において、カーブ、傾度、道路のうち、所定の閾値を越える場合や所定条件に当てはまる場合(例えば、幅がtm未満の1車線道路)に緊張道路情報としてリンク情報に保存される。
一方、不安度合いは、同乗者の緊張検出による緊張場所情報としてリンク情報に保存される。この場合、リンク情報に保存される不安度合いとして、総継続時間、又は/及び総回数を保存するが、不安度合いをn段階(例えば、3段階)に分類するようにしてもよい。
【0058】
(b)リンクBの特徴
(i)カーブ:ノード2とノード3の直線距離とリンク距離の差が大きいため、カーブがきつい道路と判定される。
(ii)傾度:ノード3とノード2の高度差がマイナスで、高度差をリンク距離で割った値の絶対値が所定のしきい値より小さいため、緩やかな上り坂と判定される。
(iii)道路:中央分離帯の無い道路である。
【0059】
(c)リンクCの特徴
(i)カーブ:ノード2とノード4の直線距離とリンク距離の差が微少であることから、直線の道路と判定される。
(ii)傾度:ノード4とノード2の高度差がマイナスで、高度差をリンク距離で割った値の絶対値が所定のしきい値より小さいため、緩やかな上り坂と判定される。
(iii)道路:中央分離帯の無い道である。
【0060】
(d)リンクDの特徴
(i)カーブ:ノード4とノード5の直線距離とリンク距離の差が微少であることから、直線の道路と判定される。
(ii)傾度:ノード5とノード4の高度差と、リンク距離とから、緩やかな上り坂と判定される。
(iii)道路:片側1車線の道である。
(e)リンクE
リンクA〜Dと同様に判断される。
【0061】
なお、道路形状(カーブ、傾度、道路)を緊張道路としてコスト増加させるのではなく、緊張場所情報が保存されている他の道路との類似判定に使用するようにしてもよい。
例えば、図9におけるリンクBは緊張場所情報(不安度合い)が保存されていないが、
道路形状の特徴がリンクAと類似していることから、リンクAをリンクBの類似形状道路と判定する。そして、リンクAに保存されている緊張場所情報(不安度合い)である総継続時間15秒、又は/及び、総回数2回を、リンクAのコスト計算だけでなく、リンクBのコスト計算にも使用(コスト増加)する。
その結果車両現在位置からノード3を目的地とするリラックスルート探索では、リンクAとリンクBについてのコストが増加されて、図9に点線で示すように、同乗者の緊張や不安をできるだけ避けたリラックスルートが探索されることになる。
【0062】
以上、本実施形態のナビゲーション装置及びナビゲーション用プログラムについて説明したが、本発明の範囲で種々の変形を行うことが可能である。
例えば、説明した実施形態では、リラックスルート探索において、各経路に対するリンクのコスト計算を行う場合に、緊張場所情報によるコスト増加と、緊張道路情報によるコスト増加の両者を採用したが、緊張場所情報によるコスト増加だけでリラックスルートを探索するようにしてもよい。
【0063】
また、リラックスルート探索を、同乗者がいる場合の最初の探索で行う第1リラックスルート探索と、同乗者の緊張状態を実際に検出した場合の第2リラックスルート探索の2種類を採用するようにしてもよい。
この場合、第1リラックスルート探索では、同乗者が検出されるものの、探索経路の走行を開始する前なので同乗者の緊張を検出することができないので、緊張場所情報によるコスト増加、又は緊張道路情報によるコスト増加のいずれか一方のみを行う。
一方、第2リラックスルート探索では、同乗者の緊張が実際に検出されているので、緊張場所と緊張道路の両者によるコスト増加を行う。
【0064】
本実施形態では、同乗者が緊張している状態の検出を、同乗者が手摺りを所定時間以上使用した場合に検出するようにしたが、他の方法によることも可能である。
例えば、助手席や後部座席を撮像する撮像装置を車両内に配設し、その撮像画像から同乗者を検出すると共に、検出した同乗者の顔の表情や仕草(手摺りを使用する仕草等)から不安を検出するようにしてもよい。
また、音声認識装置により同乗者の緊張した声や会話から緊張を検出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10 現在位置検出装置
20 情報処理制御装置
40 入出力装置
50 情報記憶装置
58 緊張場所情報データファイル
60 同乗者検出装置
70 緊張・不安検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的地を取得する目的地取得手段と、
設定された探索条件に従って前記目的地までの走行経路を探索する経路探索手段と、
前記探索した走行経路を案内する経路案内手段と、
同乗者の有無を検出する同乗者検出手段と、を備え、
前記経路探索手段は、同乗者を検出した場合に、同乗者が検出されない場合とは異なる検索条件に基づいて目的地までの走行経路を探索する、
ことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
同乗者の緊張や不安を表す緊張動作を検出する緊張検出手段を備え、
前記経路探索手段は、同乗者を検出し、かつ緊張動作を検出した場合に、探索条件を変更して目的地までの走行経路を探索する、
ことを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記緊張動作を検出した場所を緊張動作情報として保存する緊張動作情報保存手段を備え、
前記経路探索手段は、緊張動作を検出したリンクの探索コストを増加して目的地までの走行経路を探索する、
ことを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
道路形状に基づいて緊張道路情報を設定する緊張道路情報設定手段を備え、
前記経路探索手段は、前記設定した緊張道路情報に対応するリンクの探索コストを増加して目的地までの走行経路を探索する、
ことを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
目的地を取得する目的地取得機能と、
設定された探索条件に従って前記目的地までの走行経路を探索する経路探索機能と、
前記探索した走行経路を案内する経路案内機能と、
同乗者の有無を検出する同乗者検出機能と、をコンピュータに実現させるナビゲーション用プログラムであって、
前記経路探索機能は、同乗者を検出した場合に、同乗者が検出されない場合とは異なる検索条件に基づいて目的地までの走行経路を探索する、
ことを特徴とするナビゲーション用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−203793(P2010−203793A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46661(P2009−46661)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】