説明

ナビゲーション装置

【課題】半導体メモリの記憶容量が小さくても、ハードディスク装置が使用不能な高地において、経路案内処理が可能なナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】現在高度がハードディスク装置40の使用可能上限高度を超えている場合(S1がYes)、DRAM50に地図データを転送する(S4)。ただし、DRAM50の高地地図データ記憶領域54の記憶容量と、ハードディスク装置40から転送しようとする地図データのデータ量とを比較し、高地地図データ記憶領域54の記憶容量の方が小さい場合、経路案内において優先順位の低い側から順に属性データを除いて転送するデータのデータ量を高地地図データ記憶領域54の記憶容量以下にする。これによってDRAM50の高地地図データ記憶領域54が小さくても、ハードディスク装置40が使用不能な高地において経路案内処理が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置に関し、特に、ハードディスク装置に地図データを格納したナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーション装置は、近年、ハードディスク装置を備え、そのハードディスク装置に地図データが格納されることが多くなっている。しかし、一般的に、ハードディスク装置は標高が高い場所では使用できない。この理由は、ハードディスク装置は、磁気ヘッドとディスクとの間に非常に小さい隙間を保ちながら使用するものであるが、高地になると気圧が低下するので、磁気ヘッドとディスクとの隙間を維持することができなくなり、磁気ヘッドがディスクに接触してディスクや磁気ヘッドが破損してしまう恐れがあるからである。
【0003】
そこで、ナビゲーション装置に半導体メモリを備えておき、車両が所定の標高となったら、車両が現在走行している位置を中心に所定のエリアの地図データを一括してハードディスク装置から半導体メモリへ転送する技術が提案されている(たとえば、特許文献1)。
【0004】
また、特許文献1には、標高が3000m以上である全ての地域の地図データを予め半導体メモリに記憶させておき、車両の現在位置の標高が3000mを越えたら、地図データのアクセス先をハードディスク装置から半導体メモリに切り替える技術も提案されている。
【特許文献1】特開2004−317385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のように、車両が所定の標高となったら、車両が現在走行している位置を中心に所定のエリアの地図データを一括して半導体メモリへ転送するようにする場合、あるいは、標高が3000m以上である全ての地域の地図データを予め半導体メモリに記憶させておく場合、相当に記憶容量の大きい半導体メモリが必要となってしまうという問題がある。
【0006】
しかも、ナビゲーション装置に備えられている半導体メモリは、一般に、経路計算など各種演算時に用いられるバッファ領域、地図スクロールの際にスムーズにスクロールが可能となるように、表示領域の周辺地図をバックアップしておく表示バックアップ領域、ユーザ設定値など各種設定を記憶しておく設定値記憶領域等の領域が必要である。そのため、半導体メモリの全ての記憶領域をハードディスク装置から転送される地図データを記憶するための領域とすることは困難であり、これら、ハードディスク装置から転送される地図データを記憶するための記憶領域以外の記憶領域を確保することも考慮すると、半導体メモリの総記憶容量をさらに大きくする必要がある。しかし、半導体メモリの記憶容量を大きくすることは、コスト的に困難である場合も生じる。
【0007】
加えて、仮に、ハードディスク装置に記憶されている地図データにおいて所定の標高以上の地図データの容量を基にして半導体メモリの記憶容量を設定したとしても、地図が更新されて所定の標高以上の地図データの容量が大きくなってしまうと、半導体メモリの容量が不足することとなり、ハードディスク装置から半導体メモリへ地図データを一括して転送することができなくなってしまい、結果として、所定の標高以上の高地において経路案内処理が全く不能になってしまう恐れがある。
【0008】
本発明は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、半導体メモリの記憶容量が小さくても、ハードディスク装置が使用不能な高地において、経路案内処理が可能なナビゲーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
その目的を達成するための請求項1記載の発明は、複数の属性データが組み合わせられて構成される地図データをハードディスク装置に格納したナビゲーション装置であって、
車両の現在高度に関連する現在高度関連値を逐次検出する現在高度関連値検出手段と、
半導体メモリと、
前記車両が、前記ハードディスク装置を使用することができる高度の上限である使用可能上限高度以上を走行すると判断したことに基づいて、地図データの転送が必要であると判断する転送判断手段と、
その転送判断手段で地図データの転送が必要であると判断されたことに基づいて、前記ハードディスク装置に記憶されている地図データのうち、高度が前記使用可能上限高度以上であって経路案内処理に必要な地図データを前記半導体メモリへ転送する転送処理手段と、
前記現在高度関連値検出手段によって検出された現在高度関連値が、現在高度が前記使用可能上限高度以上であることを示す値であることに基づいて、前記半導体メモリに記憶されている地図データを用いて経路案内処理を行なう経路案内処理手段とを備え、
前記転送処理手段は、前記半導体メモリの地図データ記憶領域の記憶容量と、前記半導体メモリへ転送しようとする地図データの大きさとを比較して、前記地図データ記憶領域の記憶容量の方が小さい場合には、転送しようとする地図データのうち、経路案内処理において優先順位の低い側から属性データを順に除いていくことにより、転送しようとする地図データの大きさを前記地図データ記憶領域の記憶容量よりも小さくした後に、地図データを転送することを特徴とする。
【0010】
このように、地図データをハードディスク装置から半導体メモリへ転送する際、半導体メモリの地図データ記憶領域の記憶容量と、ハードディスク装置から転送しようとする地図データのデータ量とを比較し、地図データ記憶領域の記憶容量の方が小さい場合、経路案内において優先順位の低い側から順に属性データを除いて転送するデータを地図データ記憶領域の記憶容量以下にすれば、半導体メモリの地図データ記憶領域が小さくても、ハードディスク装置が使用不能な高地において経路案内処理が可能となる。
【0011】
ここで、上記転送判断手段は、出発地から目的地までの案内経路が設定されている場合、その案内経路に前記使用可能上限高度以上の地点がある場合に、地図データの転送が必要であると判断することができる。
【0012】
このように、案内経路に基づいて地図データの転送が必要であるか否かを判断すれば、車両がハードディスク装置の使用可能上限高度以上の高度を実際に走行する前に、地図データを半導体メモリに転送しておくことが可能となる。
【0013】
また、転送判断手段は、前記車両が走行しているときに、前記現在高度関連値検出手段によって検出された現在高度関連値が、現在高度が前記使用可能上限高度以上であることを示す値となったときに、地図データの転送が必要であると判断してもよい。
【0014】
このようにすれば、車両が走行しているときの実際の車両の高度に基づいて転送が必要であるか否かを判断していることになるので、地図データの無駄な転送を抑制することができる。
【0015】
また、転送判断手段は、ナビゲーション装置に電源が投入されたときに、前記現在高度関連値検出手段によって検出された現在高度関連値が、現在高度が前記使用可能上限高度以上であることを示す値である場合、地図データの転送が必要であると判断してもよい。
【0016】
このように、電源投入時に地図データを半導体メモリへ転送するようにすれば、前記使用可能上限高度以上の地点において車両の走行を開始する場合に、迅速に、半導体メモリ内の地図データを利用した経路案内処理を開始することができる。
【0017】
ところで、案内経路の途中では、道路の分岐点や分岐点の角度、カーブのきつさといった道路形状の情報が重要となる一方で、目的地付近では、目的地をユーザに知らせる上で、目的地となっている施設の情報が重要となる。このように、情報の種類の重要度は、案内経路の途中である場合と案内経路の目的地付近とで変化する。
【0018】
そこで、前記転送処理手段は、高度が前記使用可能上限高度以上であって経路案内処理に必要な地図データが、前記案内経路の途中である場合と前記案内経路の目的地を含む場合とで、前記属性データに対する優先順位を変更することが好ましい。
【0019】
このようにすれば、経路案内処理において、高度が使用可能上限高度以上の地域が案内経路の途中であっても、また、高度が使用可能上限高度以上の地域が案内経路の目的地付近であっても、ユーザにとってより有用な情報を提供できる。
【0020】
また、前記転送処理手段は、前記属性データの一種である施設データに対しては、転送しようとする地図データに複数の施設データが含まれている場合、前記案内経路を走行する際の目印としての有用性に応じて、前記複数の施設データの優先順位を細分化することも好ましい。
【0021】
このようにすれば、案内経路を走行する際に有用性の高い施設データは、案内経路を走行する際に有用性の低い施設データよりも優先して半導体メモリに転送されることになるので、半導体メモリ内の地図データを用いた経路案内において、より有用な情報をユーザに提供することができる。
【0022】
また、現在高度関連値検出手段は、次のようにして検出することができる。たとえば、ナビゲーション装置に、GPS受信機、気圧センサ、高度センサのいずれかを備え、GPS受信機からの信号、気圧センサからの信号、高度センサからの信号のいずれかに基づいて、現在高度関連値を逐次検出することができる。なお、気圧センサによって検出されるのは大気圧であるが、大気圧と高度とは略対応関係にあると考えることができるので、大気圧を現在高度関連値としているのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態となるナビゲーション装置1の構成を示すブロック図である。この図1に示すナビゲーション装置1は、位置検出器10、出力部30、ハードディスク装置40、DRAM50、制御部60を備えている。
【0024】
位置検出器10は、衛星からの電波に基づいて車両の位置を測定するグローバルポジショニングシステム(GPS)のためのGPS受信機11と、ジャイロスコープ12とを備えている。
【0025】
位置検出器10は、GPS受信機11によって受信されたGPS衛星からの電波に基づいて、車両の現在位置(緯度、経度、標高)を逐次検出する。また、ジャイロスコープ12によって検出された信号に基づいて車両の相対方位や車両の角速度を逐次算出する。そして、それら車両の現在位置、相対方位、角速度を出力する。出力部30は、地図、経路案内情報、このナビゲーション装置1の状態などをユーザに知らせる部分であり、たとえば、ディスプレイ装置や音声出力装置である。
【0026】
ハードディスク装置40は、内部のディスクに地図データ等が記憶されている。このハードディスク装置40内のディスクに記憶されているデータ構造については後述する。また、ハードディスク装置40は、高地になると気圧の低下により磁気ヘッドがディスクに接触してしまう恐れがあるので、使用可能上限高度が設定されている。この使用可能上限高度は本実施形態では3000mである。ただし、この使用可能上限高度を超えた高度においてハードディスク装置40が全く使用できない分けではない。使用可能上限高度とは、その高度を超えると、磁気ヘッドとディスクとが接触する恐れが高まるので、ハードディスク装置40の使用を極力少なくすべき高度を意味する。
【0027】
請求項の半導体メモリに相当するDRAM50は、制御部60の演算結果やハードディスク装置40から読み出された地図データ等を一時的に記憶する。なお、DRAMに代えて、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリを用いることもでき、SRAM等のDRAM以外のRAMを用いることもできる。
【0028】
制御部60は、内部に周知のCPU、ROM、RAM、I/Oおよびこれらの構成を接続するためのバスラインを備えている。ROMには、制御部60が実行するためのプログラムが書き込まれており、このプログラムに従ってCPU等が所定の演算処理を実行する。また、制御部60が実行するプログラムの一部はハードディスク装置40に記憶されている。
【0029】
この制御部60は、位置検出器10から供給される車両の現在位置に基づいて、現在位置周辺の地図をディスプレイ装置に表示する地図表示処理を行なう。なお、GPS受信機11やジャイロスコープ12からの信号を用いて制御部60が車両の現在位置を算出してもよい。
【0030】
また、制御部60は、目的地を設定する目的地設定処理、出発地から目的地までの経路を1つまたは複数探索する経路探索処理、その探索された経路が案内経路に設定された場合に、車両が案内経路を走行するように案内する経路案内処理、メニュー表示選択処理、ディスプレイに表示されている地図をスクロールさせたり、縮尺を変更したりする地図表示処理、メニュー表示選択処理、音量調整処理等を実行する。
【0031】
上記制御部60が実行する種々の処理のうち、目的地設定処理、経路探索処理、経路案内処理、地図表示処理については、地図データを使用することになる。特に、経路案内処理は出発地を出発してから目的地付近に到達するまでの長時間にわたり、地図データを使用する。この地図データはハードディスク装置40に記憶されているが、車両の現在高度(すなわち、車両の標高)が前述の使用可能上限高度を超えている場合には、その時点であるいは事前に、ハードディスク装置40からDRAM50に地図データを転送し、DRAM50内の地図データを使用する。
【0032】
制御部60は、上記地図データをハードディスク装置40からDRAM50に転送する必要があるか否かを判断するために転送判断処理を行い、地図データの転送が必要であると判断した場合には転送処理を行なう。これら転送判断処理と転送処理については後に詳述する。
【0033】
なお、図1には図示していないが、ナビゲーション装置1には、ユーザがナビゲーション装置1に種々の命令を入力するために、操作スイッチ群やマイクが設けられる。また、ナビゲーション装置1が外部の機器と無線通信をするための通信装置が設けられていてもよい。
【0034】
図2は、ハードディスク装置40内のデータ構造を示す図である。この図2に示すように、ハードディスク装置40は、5つの記憶領域41〜45を有している。記憶領域41には、ナビゲーション装置1を作動させるためのプログラムデータが記憶されている。記憶領域42には、アイコンや画面デザインデータを含む意匠データ、各言語のフォントデータが記憶されている。記憶領域43には地図データが記憶されている。この地図データの構造は、図3を用いて次に説明する。記憶領域44は音楽データ記憶領域であり、再生させるための音楽データが記憶されている。記憶領域45は車両の情報などの各種パラメータが記憶されている。
【0035】
図3は、ハードディスク装置40の記憶領域43に記憶されている地図データの構成を示す図である。図3に示すように、地図データは、複数の属性データ1〜mから構成されている。換言すれば、地図データは、その内容によって複数の属性データに分類されているといえる。そして、各属性データは、1〜mの順に並べられて記憶されている。なお、各属性データ1〜mは、所定の地域毎にも区切られている。
【0036】
この図3の例では、属性データ1は道路データであり、道路データには、経路探索や経路案内に使用される交差点と交差点との間のリンク、2本以上のリンクを結ぶノード情報が含まれている。ノード情報とは、例えば、ノードの緯度・経度・標高情報、ノードが交差点であるか否かを示すノードの属性フラグ等である。
【0037】
属性データ2は道路描画データであり、この道路描画データは、道路地図をディスプレイ装置に表示するために必要な各種のデータである。属性データ3は交差点データであり、この交差点データは、交差点の詳細データである。属性データm−2は施設属性データであり、施設属性データは、施設の電話番号、施設の写真等のデータである。属性データm−1は背景描画データであり、背景描画データは、池や森などの背景を描画するためのデータである。属性データmは施設データであり、施設データは、施設の名称、施設の位置データである。
【0038】
そして、図3に示すように、全ての属性データに対して優先順位が設定されている。ここに示す優先順位は、数字が大きくなるほど優先順位が高いことを示している。従って、優先順位がmである道路データが最も優先順位が高く、優先順位が1である施設属性データが最も優先順位が低い。なお、この図3に示すように、優先順位は属性データの順番と一致する必要はない。
【0039】
図3に示した優先順位は、経路案内処理において重要度が高い属性データほど高くなるように設定されている。そのため、道路データは最も高い優先順位とされ、交差点データはその次に高い優先順位とされ、施設属性データ、背景描画データ、施設データは低い優先順位とされているのである。
【0040】
図4は、DRAM50の記憶領域を示す図である。DRAM50には4つの記憶領域51〜54が設けられている。記憶領域51は、経路計算などの各種演算時に用いられるバッファ領域である。記憶領域52は、地図スクロールの際、スムーズなスクロールを可能とするために、ディスプレイ装置に表示している地図の周辺の地図をバックアップしておく表示バックアップ領域である。記憶領域53は、ユーザ設定値など各種設定値を記憶しておく設定値記憶領域である。記憶領域54は、ハードディスク装置40が使用できない高地において、制御部60へ供給するための地図データをハードディスク装置40に代えて記憶しておく高地地図データ記憶領域である。なお、以下、記憶領域54を高地地図データ記憶領域54という。
【0041】
この高地地図データ記憶領域54は、実際の使用頻度が低頻度であると予想されるので、専用のメモリ領域はあまり確保されておらず、本実施形態では、略4Mbyteが確保されているのみである。
【0042】
図5は、制御部60が実行する処理であって、転送判断処理、転送処理、経路案内処理を示すフローチャートである。この図5に示す処理は経路案内処理を実行中に繰り返し実行する。
【0043】
ステップS1は転送判断手段に相当する処理であり、位置検出器10からの信号に基づいて、車両の現在高度がハードディスク装置40の使用可能上限高度を超えているか否かを判断する。この判断が否定判断である場合にはステップS2へ進む。
【0044】
ステップS2では、ハードディスク装置40にアクセスして、出力部30のディスプレイ装置に地図を表示するための地図データ等、経路案内処理において要求されている地図データを読み出す。
【0045】
一方、ステップS1が肯定判断である場合にはステップS3へ進む。ステップS3では、DRAM50に、現在位置を含む領域の地図データが記憶されているか否かを判断する。ステップS3が肯定判断である場合には、直接、ステップS5へ進み、ステップS3が否定判断である場合には、ステップS4を実行後、ステップS5へ進む。
【0046】
ステップS4は請求項の転送処理手段に相当する処理であり、車両の現在位置を含み、高度が使用可能上限高度以上の連続領域についての地図データを、ハードディスク装置40からDRAM50へ転送する。このステップS4の処理内容は後に詳述する。
【0047】
ステップS5では、DRAM50にアクセスして、出力部30のディスプレイ装置に地図を表示するための地図データ等、経路案内処理において要求されている地図データを読み出す。
【0048】
そして、ステップS6では、ステップS2またはステップS5にて読み出した地図データを用いて出力部30のディスプレイ装置に地図表示を行なう等、ステップS2またはステップS5にて読み出した地図データを用いて経路案内処理を行なう。
【0049】
次に、図5のステップS4の処理を詳述する。図6は、図5のステップS4の処理を詳しく示すフローチャートである。前述のように、DRAM50の高地地図データ記憶領域54は略4Mbyteが確保されているのみであるので、転送しようとする高地領域の地図データ、すなわち、車両の現在位置を含み、高度が使用可能上限高度以上の連続領域(以下、転送対象高地領域という)の地図データを全て高地地図データ記憶領域54に記憶させることができない恐れがある。そこで、この図6における処理では、転送対象高地領域の地図データを構成する複数の属性データのうち、優先順位の低い順に属性データを取り除いていき、実際に転送する地図データを決定するのである。
【0050】
まず、ステップS10では、初期化処理として、n=0、j=0とする。続くステップS11では、転送対象高地領域の地図データの総データ量Xを算出する。続くステップS12では、ステップS11で算出した総データ量Xが、DRAM50の高地地図データ記憶領域54の容量を上回るか否かを判断する。
【0051】
上記ステップS12の判断が否定判断である場合にはステップS13へ進み、転送対象高地領域の地図データを、全部、ハードディスク装置40からDRAM50の高地地図データ記憶領域54へ転送する。
【0052】
一方、ステップS12が肯定判断である場合には、ステップS14においてnに1を加えた後、ステップS15へ進む。ステップS15では、優先順位1〜nまでの属性データを総データ量Xから削除したときのデータ量Xnを算出する。このデータ量Xnの算出方法については後に詳述する。
【0053】
ステップS16では、ステップS15で算出したデータ量Xnが、DRAM50の高地地図データ記憶領域54の容量を上回るか否かを判断する。この判断が肯定判断である場合には、ステップS14以下を再度実行する。これによって、データ量XnがDRAM50の高地地図データ記憶領域54の容量を下回るまで、順に、優先順位の低い属性データが削除されていくことになる。
【0054】
ステップS16が否定判断となった場合にはステップS17以降の処理を実行する。ステップS17以降の処理は、ステップS14乃至S16で決定した「n」以上の属性データを転送する処理である。
【0055】
ステップS17では、jに1を加える。そして、ステップS18では、属性データjの優先順位がnよりも大きいか否かを判断する。この判断が否定判断である場合には、属性データjの地図データを転送せずにステップS17へ戻る。
【0056】
一方、ステップS18が肯定判断である場合にはステップS19へ進み、メモリ属性jの地図データをハードディスク装置40からDRAM50の高地地図データ記憶領域54へ転送する。その後、ステップS20へ進む。
【0057】
ステップS20では、jが全属性データ数を示すmとなったか否かを判断する。この判断が否定判断となった場合は転送を終了し、否定判断の場合にはステップS17へ戻る。このステップS17乃至S20の繰り返しにより、優先順位がnよりも大きい属性データjの地図データを転送することになる。
【0058】
次に、図6のステップS15の内容を詳しく説明する。図7は、図6のステップS15の処理を詳しく示すフローチャートである。まず、ステップS30ではデータ量Xnを、初期値として図6のステップS11で算出した総データ量Xとする。そして、続くステップS31ではpを0に初期化する。
【0059】
ステップS32では、pに1を加える。そして、ステップS33において、属性データpの優先順位がn以下か否かを判断する。この判断が否定判断である場合には、直接、ステップS35へ進む。一方、ステップS33が肯定判断である場合には、ステップS34へ進み、データ量Xnから属性データpのデータ量を減算する。その後、ステップS35へ進む。
【0060】
ステップS35では、pが全属性データ数を示すmとなったか否かを判断する。この判断が否定判断である場合には、ステップS32へ戻り、肯定判断である場合には、このサブルーチンを終了する。このステップS32乃至S35の繰り返しにより、優先順位がn以下の属性データのデータが取り除かれた地図データのデータ量が算出される。
【0061】
以上、説明した本実施形態によれば、地図データをハードディスク装置40からDRAM50へ転送する際、DRAM50の高地地図データ記憶領域54の記憶容量と、ハードディスク装置40から転送しようとする地図データのデータ量とを比較し、高地地図データ記憶領域54の記憶容量の方が小さい場合、経路案内において優先順位の低い側から順に属性データを除いて転送するデータのデータ量を高地地図データ記憶領域54の記憶容量以下にしているので、DRAM50の高地地図データ記憶領域54が小さくても、ハードディスク装置40が使用不能な高地において経路案内処理が可能となる。
【0062】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。この第2実施形態においても、ナビゲーション装置1は図1乃至4に示す構成を有している。また、第2実施形態においても制御部60は図5に示す処理を実行する。加えて、次に説明する図8の処理を案内経路の設定時に実行する。
【0063】
図8では、まず、ステップS40において目的地を設定する。続くステップS41では、現在位置からステップS40で設定した目的地までの案内経路を設定する。続くステップS42は請求項の転送判断手段としての処理である。ステップS42では、ステップS41で設定した案内経路中に、ハードディスク装置40の使用可能上限高度以上の領域があるか否かを判断する。この場合には、ハードディスク装置40の使用可能上限高度以上の地域を走行することを事前に判断することになる。この判断が否定判断である場合には、図8の処理をそのまま終了する。
【0064】
一方、ステップS42の判断が肯定判断である場合には、ステップS43へ進む。このステップS43は請求項の転送処理手段として機能するものであり、ステップS41で設定した案内経路においてハードディスク装置40の使用可能上限高度を最初に超える領域を転送対象高地領域として、前述の図6の処理を実行して、上記転送対象高地領域の地図データを、ハードディスク装置40からDRAM50へ予め転送しておく。
【0065】
この図8の処理を実行後は、前述の図5の処理を実行する。そのため、第2実施形態においては、現在高度が使用可能上限高度を最初に超えたことにより、図5のステップS1の判断が最初に肯定判断となった場合には、地図データを転送するステップS4の処理を省略してステップS5へ進むことができる。
【0066】
以上、説明した第2実施形態によれば、案内経路に基づいて地図データの転送が必要であるか否かを判断しているので、車両がハードディスク装置40の使用可能上限高度以上の高度を実際に走行する前に、地図データをDRAM50に転送しておくことが可能となる。
【0067】
次に、本発明の第3実施形態を説明する。この第3実施形態においても、ナビゲーション装置1は図1乃至4に示す構成を有している。また、第3実施形態においても制御部60は図5に示す処理を実行する。加えて、電源投入時に、次に説明する図9の処理を実行する。
【0068】
図9において、ステップS50では、位置検出器10からの信号に基づいて車両の現在位置(緯度、経度、標高)を検出する。その後、ステップS51を実行する。ステップS51も請求項の転送判断手段に相当する処理であり、ステップS50で検出した高度(標高)が、ハードディスク装置40の使用可能上限高度を超えているか否かを判断する。
【0069】
上記ステップS51の判断が否定判断である場合には、ステップS52へ進み、ハードディスク装置40にアクセスして、出力部30のディスプレイ装置に地図を表示するための地図データを読み出す。
【0070】
一方、ステップS51が肯定判断である場合にはステップS53へ進む。ステップS53は請求項の転送処理手段に相当する処理であり、車両の現在位置を含み、高度が使用可能上限高度以上の連続領域についての地図データを、ハードディスク装置40からDRAM50へ転送する。その内容は、図5のステップS4と同一である。
【0071】
ステップS53を実行後はステップS54へ進み、DRAM50にアクセスして、出力部30のディスプレイ装置に地図を表示するための地図データを読み出す。そして、ステップS52またはステップS54を実行後は、ステップ55へ進み、ステップS52またはステップS54で読み出した地図データを用いて、出力部30のディスプレイ装置に地図表示を行なう。このステップS55を実行後は、第3実施形態においても、図5の処理を実行する。
【0072】
以上、説明した第3実施形態によれば、電源投入時に地図データをDRAM50へ転送しているので、ハードディスク装置40の使用可能上限高度以上の地点において車両の走行を開始する場合に、迅速に、DRAM50内の地図データを利用した経路案内処理を開始することができる。
【0073】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0074】
たとえば、前述の実施形態では、属性データの優先順位は変更されることがなかったが、転送対象高地領域が案内経路の途中である場合と目的地を含む場合とで、属性データの優先順位を異ならせてもよい。具体例を図10を例にして説明する。
【0075】
図10は、現在地aを出発地とし施設bを目的地に設定した時の案内経路70および案内経路70の周辺施設を概略的に示す図である。この案内経路70は、ハードディスク装置40の使用可能上限高度よりも標高が高い高地エリアcを通過した後、一旦、上記使用可能上限高度よりも標高が低いエリアである低地エリアを経て、再度、上記使用可能上限高度よりも標高が高い高地エリアdへ入る経路であり、高地エリアd内に目的地である施設bが存在する。
【0076】
この案内経路70が設定された場合、前述の第2実施形態によれば、高地エリアcの地図データがDRAM50へ転送されることになるが、その際、優先順位の高い道路データ、交差点データが優先的に転送される。そのため、優先順位が低く設定されている施設eや施設fに関するデータは、DRAM50に転送されない可能性がある。しかし、一般的に、高地は山岳地帯となることが多いので、高地を走行する際には、道路の分岐点、分岐点の角度、カーブのきつさといった道路の形状に関するデータが重要となる。そのため、案内経路の途中である場合には、道路データ、交差点データの優先順位を高くしておけばよい。
【0077】
次に、車両が高地エリアdへ到達した場合には、図5の処理によって、ハードディスク装置40からDRAM50へ高地エリアdの地図データが転送されることになる。この高地エリアdは前述のように目的地である施設bを含んでいる。この施設bの情報は目的地到着を知らせる上で重要となる。そこで、高地エリア(すなわち転送対象高地領域)が目的地を含む場合には、施設データの優先順位をそれまでよりも高い順位(たとえば、道路データよりも高い優先順位、あるいは、道路データと交差点データとの間の優先順位)に変更する。このようにすれば、高地エリアが案内経路の途中であっても、また、高地エリアが案内経路の目的地付近であっても、ユーザにとってより有用な情報を提供できる。
【0078】
また、前述の実施形態では、各属性データ内のデータは全て同一の優先順位であり、転送対象高地領域の各属性データを単位として、転送する地図データのデータ量を増減させていた。しかし、各属性データ内のデータを分類し、優先順位を細分化した上で、転送する地図データのデータ量を増減させてもよい。
【0079】
たとえば、図10において、高地エリアcにおいては、施設データの中でも、分岐gにある施設eはユーザが分岐地点、方向を知る上で重要となる。一方で、直線路の脇にある施設fの情報は案内経路の途中の高地エリアにおいては重要ではない。そこで、案内経路の途中の高地エリアにおいては、分岐付近にある施設に関する施設データの優先順位を高くし、直線路付近や経路から離れた施設に関する施設データの優先順位を低くすることにしてもよい。
【0080】
また、目的地を含む高地エリアdでは、前述のように、目的地である施設bの情報は重要である。一方、高地エリアd内の施設であっても、案内経路70から離れた施設hの情報は重要ではない。そこで、目的地を含む高地エリアにおいては、目的地および案内経路周辺に位置する施設に関する施設データの優先順位を高くし、それ以外の施設に関する施設データの優先順位を低くすることにしてもよい。
【0081】
なお、施設データの優先順位を細分化する場合、細分化した一つ一つのデータの優先順位は必ずしも連続させる必要はない。従って、分岐付近にある施設に関する施設データの優先順位は、交差点データよりも高くする一方で、他の施設データに関しては、図3に示したように低いままとしてもよい。ただし、細分化した一つ一つのデータの優先順位を連続させてもよい。
【0082】
また、前述の実施形態では、位置検出器10からの信号に基づいて車両の現在高度を検出していたが、高度センサからの信号を用いて車両の現在高度を検出してもよい。また、標高と大気圧とは略対応関係にあるので、気圧センサを設け、その気圧センサによって検出される気圧が所定気圧以下となった場合に、現在高度が使用可能上限高度を超えたと判断してもよい。
【0083】
また、前述の使用可能上限高度を、ハードディスク装置40の設計上の設定値よりも低い高度に設定してもよい。このようにすれば、一層、ハードディスク装置40の破損を防止できる。
【0084】
また、現在高度が上記使用可能上限高度を下回った場合に、すぐに地図データのアクセス先をハードディスク装置40へ変更せず、地図データのアクセス先をDRAM50からハードディスク装置40へ切り替える場合の高度を前述の使用可能上限高度よりも低い高度としてもよい。このようにすれば、車両の現在高度が短時間の間に使用可能上限高度の上下に変化する場合に、地図データのアクセス先が頻繁に変更されてしまうことを防止できる。
【0085】
また、一部の属性データを削除して地図データを転送した場合に、ユーザにその旨を通知するようにしてもよい。属性データの一部を削除して地図データを転送した場合には、経路案内処理において一部機能が制限されることになるので、ユーザにその旨を知らせるためである。また、制限される機能を通知するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の実施形態となるナビゲーション装置1の構成を示すブロック図である。
【図2】ハードディスク装置40内のデータ構造を示す図である。
【図3】ハードディスク装置40の記憶領域43に記憶されている地図データの構成を示す図である。
【図4】DRAM50の記憶領域を示す図である。
【図5】制御部60が実行する処理であって、転送判断処理、転送処理、経路案内処理を示すフローチャートである。
【図6】図5のステップS4の処理を詳しく示すフローチャートである。
【図7】図6のステップS15の処理を詳しく示すフローチャートである。
【図8】第2実施形態において案内経路の設定時に実行する処理を示すフローチャートである。
【図9】第3実施形態において電源投入時に実行する処理を示すフローチャートである。
【図10】現在地aを出発地とし施設bを目的地に設定した時の案内経路70および案内経路70の周辺施設を概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0087】
1:ナビゲーション装置、 10:位置検出器、 11:GPS受信部、 12:ジャイロスコープ、 30:出力部、 40:ハードディスク装置、 41:記憶領域、 42:記憶領域、 43:記憶領域、 44:記憶領域、 45:記憶領域、 50:DRAM(半導体メモリ)、 51:記憶領域、 52:記憶領域、 53:記憶領域、 54:記憶領域(高地地図データ記憶領域)、 60:制御部(転送判断手段、転送処理手段、経路案内処理手段)、 70:案内経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の属性データが組み合わせられて構成される地図データをハードディスク装置に格納したナビゲーション装置であって、
車両の現在高度に関連する現在高度関連値※1を逐次検出する現在高度関連値検出手段と、
半導体メモリと、
前記車両が、前記ハードディスク装置を使用することができる高度の上限である使用可能上限高度以上を走行すると判断したことに基づいて、地図データの転送が必要であると判断する転送判断手段と、
その転送判断手段で地図データの転送が必要であると判断されたことに基づいて、前記ハードディスク装置に記憶されている地図データのうち、高度が前記使用可能上限高度以上であって経路案内処理に必要な地図データを前記半導体メモリへ転送する転送処理手段と、
前記現在高度関連値検出手段によって検出された現在高度関連値が、現在高度が前記使用可能上限高度以上であることを示す値であることに基づいて、前記半導体メモリに記憶されている地図データを用いて経路案内処理を行なう経路案内処理手段とを備え、
前記転送処理手段は、前記半導体メモリの地図データ記憶領域の記憶容量と、前記半導体メモリへ転送しようとする地図データの大きさとを比較して、前記地図データ記憶領域の記憶容量の方が小さい場合には、転送しようとする地図データのうち、経路案内処理において優先順位の低い側から属性データを順に除いていくことにより、転送しようとする地図データの大きさを前記地図データ記憶領域の記憶容量よりも小さくした後に、地図データを転送することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記転送判断手段は、出発地から目的地までの案内経路が設定されている場合、その案内経路に前記使用可能上限高度以上の地点がある場合に、地図データの転送が必要であると判断することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかにおいて、
前記転送判断手段は、前記車両が走行しているときに、前記現在高度関連値検出手段によって検出された現在高度関連値が、現在高度が前記使用可能上限高度以上であることを示す値となったときに、地図データの転送が必要であると判断することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、
前記転送判断手段は、ナビゲーション装置に電源が投入されたときに、前記現在高度関連値検出手段によって検出された現在高度関連値が、現在高度が前記使用可能上限高度以上であることを示す値である場合、地図データの転送が必要であると判断することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項5】
請求項2において、
前記転送処理手段は、高度が前記使用可能上限高度以上であって経路案内処理に必要な地図データが、前記案内経路の途中である場合と前記案内経路の目的地を含む場合とで、前記属性データに対する優先順位を変更することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項6】
請求項2または5において、
前記転送処理手段は、前記属性データの一種である施設データに対しては、転送しようとする地図データに複数の施設データが含まれている場合、前記案内経路を走行する際の目印としての有用性に応じて、前記複数の施設データの優先順位を細分化することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項において、
衛星からの電波に基づいて車両の位置を測定するグローバルポジショニングシステムのためのGPS受信機を備え、
前記現在高度関連値検出手段は、前記GPS受信機によって受信される信号に基づいて、現在高度を逐次検出することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか1項において、
気圧センサをさらに備え、
前記現在高度関連値検出手段は、前記気圧センサによって検出される信号に基づいて、現在高度を逐次検出することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれか1項において、
高度センサをさらに備え、
前記現在高度関連値検出手段は、前記高度センサによって検出される信号に基づいて、前記現在高度関連値としての大気圧を逐次検出することを特徴とするナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−115555(P2009−115555A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−287685(P2007−287685)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】