説明

ニッケル基超合金の補修方法、補修のための予備成形体並びにこれにより補修された構成要素

【課題】より高度に合金化された超合金の出現に伴い必要とされる、強度および微細構造を含む補修技術を提供する。
【解決手段】全体の約10から約35重量%までの、ホウ素のような溶融温度降下剤を含むコバルト基ろう合金及びコバルト基耐摩耗性合金の粉体の焼結混合物を含み、ろう付け合金と耐摩耗性合金の粉体を混合して粉体混合物を形成し、次いで、粉体混合物を焼結して形成される焼結予備成形体。この焼結予備成形体を使用するためには、タービン構成要素10の表面部分を除去して表面下部分20を露出させ、次いで、表面下部分20に予備成形体を拡散接合させ、耐摩耗性合金のマトリックス内に分散されたろう合金を含む耐摩耗性補修材料を形成する。焼結予備成形体により、タービン構成要素10を補修することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、ガスタービン及び他のターボ機械の構成要素などの過度に摩耗を受ける超合金構造体に関する。より具体的には、本発明は、溶接時に亀裂が発生する傾向のあるニッケル基超合金から形成されたガスタービンバケットの摩耗表面を補修する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超合金は、工業用ガスタービンのバケット、ノズル、燃焼器、及び移行部品のような高温で動作する必要のある構成要素の製造に使用される。このような構成要素の過酷な高温条件下での運転中、各種の損傷又は劣化が発生する可能性がある。例えば、隣接するノズルとバケットとの間の摩擦接触の結果として、後段バケットのエンジェルウィング上に、摩耗及び亀裂が生じる傾向がある。超合金で形成された構成要素のコストは相対的に高いので、通常は、これらの構成要素は交換ではなく補修する方が望ましい。同様の理由で、製造欠陥に起因して補修が必要になる新規製作の構成要素もまた、廃棄されるよりも補修される方が好ましい。
【0003】
ニッケル基超合金の補修方法には、ガスタングステンアーク溶接(GTAW)技術が含まれている。GTAWは、母材内に熱影響部分(HAZ)と、溶接金属内に亀裂とを生成する可能性のある高入熱プロセスとして知られる。GTAW補修では通常充填材が使用され、充填材材料は通常、延性充填材であるか又はその化学組成が母材と一致する充填材が選定される。延性充填材を使用する利点は、亀裂発生傾向が低下することである。延性充填材を用いた溶接補修の例は、IN617及びIN625超合金を使用して、IN738とGTD−111などの等軸ニッケル基超合金とから鋳造されたバケットの摩耗したエンジェルウィングを補修することである。化学組成が母材と一致する充填材を使用する有意な利点は、超合金母材の望ましい特性により近く維持する能力である。この手法の一例は、GTD−111又はRene80超合金で形成された溶接ワイヤの使用によるGTD−111超合金バケットの溶接補修である。亀裂発生傾向を低減させるために、通常は母材を、例えば約700から930℃の高温まで予熱する必要がある。いずれの方法を使用しても、GTAWプロセスは、高い残留応力の蓄積に起因して母材を変形させる可能性がある。ガスタービンのバケットのような複雑な形状寸法を備える構成要素は、特に延性充填材を使用することができない場合には、補修方法としてGTAWが不適切となり得る程度までの変形の許容範囲が狭い。
【0004】
より最新の一方向凝固(DS)ニッケル基超合金は、多くの場合、GTD−111超合金のように容易に溶接可能ではなく、溶接金属内及び母材のHAZ内部での亀裂発生リスクが更に高くなる。注目すべき例は、ニッケル基超合金GTD−444であり、これは、望ましい耐クリープ特性により最新の工業用ガスタービンの後段(例えば第2又は第3段)バケットでの使用が見出される。GTD−444は、主としてそのより高いガンマプライム相(N)含有量(約55から59%)に起因して、容易に溶接できず、従来のGTD−444への溶接の試みは、母材のHAZ内及び溶接金属内に許容できない亀裂発生を引き起こしてきている。
【0005】
上記の観点では、亀裂のない補修品を生じることになる高ガンマプライムニッケル基超合金を補修する代替的補修方法が必要とされる。このような超合金の摩耗し易い表面の補修ではまた、補修材料も優れた耐摩耗性を示す必要がある。このような方法の1つは、活性化拡散回復(ADH)と呼ばれ、その実施例は、発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,902,421号及び第6,530,971号で開示されている。ADHプロセスは、補修されるべき超合金構成要素よりも低い温度で溶融することになる合金粉体又は粉体の混合物を使用する。2つの粉体が組み合わされる場合には、溶融時に2相混合物が形成されるように、粉体の一方が他の粉体よりもよりはるかに低い温度で溶融するように調合される。真空ろう付けにより、ろう付け粉体混合物が溶融して補修される構成要素の超合金と共に合金化されるようになる。次いで、ろう付け後拡散熱処理サイクルが実施され、ろう付け混合物の再溶融温度を上昇させる相互拡散を更に促進させる。
【0006】
Hasz他に付与され、発明の譲受人に譲渡された米国特許第6,398,103号で開示された、別の代替的補修方法は、耐摩耗フォイルを構成要素の摩耗面にろう付けすることを含む。このフォイルは、耐摩耗性材料を支持シート上に溶射することによって形成される。適切な耐摩耗性材料には、クロムカーバイト材料、及び商業的に入手可能なTRIBALOY(登録商標)T400並びにT800合金などのCo−Mo−Cr−Si合金が含まれる。発明の譲受人に譲渡された米国特許シリアル番号10/708,205で開示された更に別の方法は、ろう付け材料と耐摩耗性合金の粉体をバインダー内に含む柔軟なシートを焼成することによって形成されるろう付けテープの使用を含む。このテープは、補修面に貼り付けられ、その後熱処理が実施されてろう付けテープを補修面に拡散接合して、その結果積層表面が形成されるようにし、次いで、補修のために望ましい寸法に機械加工することができる。
【特許文献1】米国特許第5,902,421号公報
【特許文献2】米国特許第6,530,971号公報
【特許文献3】米国特許第6,398,103号公報
【特許文献4】米国特許シリアル番号10/708,205公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
より高度に合金化された超合金の出現に伴い、補修される特定の面に特化され、超合金及び補修によって必要とされる強度及び微細構造を含む、改良された補修方法及び材料が必要とされる。注目すべき例は、複雑な形状寸法を備え且つGTD−444などの高ガンマプライム相組成を有する超合金で形成された構成要素に関して補修を実施するよう調整された材料及びプロセスの必要性である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ターボ機械のタービン構成要素の表面を補修することができるプロセス並びに本プロセスで使用される焼結予備成形体及び本プロセスによって補修されるタービン構成要素を提供する。本プロセス及び予備成形体は特に、特定の例がGTD−444超合金である高ガンマプライム相含有量を有するニッケル基超合金で形成されたタービン構成要素の補修に好適である。本発明のプロセスは、工業用ガスタービンのバケットのエンジェルウィングなどの複雑な形状寸法を補修する際に特に有利な、変形を最小限にする十分低い温度において実施することができる。
【0009】
本発明で使用される焼結予備成形体は、本質的にはコバルト基ろう合金及びコバルト基耐摩耗性合金の粉体の焼結混合物からなる。コバルト基ろう合金は、焼結予備成形体の少なくとも約10から約35重量%までを構成し、コバルト基ろう合金の溶融温度を約2000°Fから約2230°Fまで(約1090℃から約1220℃まで)とする十分な料のホウ素を含む。
【0010】
ガスタービンのタービン構成要素を補修するために焼結予備成形体を使用するプロセスは、上記に言及したコバルト基ろう合金及びコバルト基耐摩耗性合金の粉体を混合して少なくとも約10から約35重量%までがコバルト基ろう合金である粉体混合物を形成し、次いで該粉体混合物を焼結して焼結予備成形体を形成することによって該焼結予備成形体を作製する段階を含む。予備成形体の使用では、タービン構成要素の表面部分を除去してタービン構成要素の表面下部分を露出させる段階と、次いで焼結予備成形体をタービン構成要素の表面下部分に拡散接合して、耐摩耗性コバルト基合金のマトリックス内に分散されたコバルト基ろう合金からなる耐摩耗性補修材料を形成する段階とが含まれる。その後、所望の最終的形状寸法及び表面特性を得るために補修材料の機械加工を実施することができる。
【0011】
結果として得られる補修された構成要素は、ガスタングステンアーク溶接を行った場合にタービン構成要素に亀裂が生じ易くなる組成及びガンマプライム相含有率を有するニッケル基超合金であるのが好ましい。このような補修済みタービン構成要素は、拡散接合される耐摩耗性補修材料を備える領域を有することによって特徴付けられ、該領域内では耐摩耗性補修材料は、耐摩耗性コバルト基合金のマトリックス材料内に分散されたコバルト基ろう合金からなる。
【0012】
上記の観点から、本発明は、超合金を溶接補修しようとする場合、特に母材と類似した特性を有する充填材材料を使用する場合に亀裂が生じる傾向のある最新のニッケル基超合金を補修するためのプロセス及び材料を提供することが分かる。本発明は、溶接ではなく、溶接によって誘起される熱応力及び変形を回避する拡散接合を使用し、その上、溶接補修が延性充填材材料を用いて行われる場合に可能となるよりも母材の特性により近い特性を有する補修済み領域をもたらす。
【0013】
本発明の他の目的及び利点は、以下の詳細な説明によって十分に理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、工業用ガスタービンのタービンセクション内部で使用されるタイプの第3段タービンバケット10を示す。バケット10は、最終加工前の鋳物として表されており、根元部分14から延びる翼形部12を含む。種々の高温材料を用いて、バケット10を形成することができ、その注目すべき例には、商業的に公知のGTD−111及びGTD−444ニッケル基超合金が含まれる。本発明は、組成式が、重量%で、約9.5−10%のクロム、約7−8%のコバルト、約3.35−3.65%のチタン、約4.1−4.3%のアルミニウム、約5.75−6.25%のタングステン、約1.30−1.705%のモリブデン、約4.60−5.0%のタンタル、約0.06−0.1%の炭素、約0.0080−0.010%のジルコニウム、約0.008−0.0105%のホウ素、及び残部がニッケル並びに不可避的不純物である、GTD−444などの高ガンマプライム相含有量を有する高合金のニッケル基超合金から形成された構成要素に特に関する。GTD−444は、一方向凝固(DS)合金として調合され、高ガンマプライム相含有量(約55−59%)を有する。GTD−444のような高ガンマプライム相含有量の超合金では、溶接補修を実施しようとするときに、超合金に亀裂が生じ易くなる。本発明はまた、複雑な形状寸法を有し、従って溶接補修を試みる場合に変形を生じ易いニッケル基超合金構成要素の補修に関する。図1に示すバケット10は、GTD−444で形成される場合におけるこれら双方の困難な状況の例であり、特にエンジェルウィング16の周囲の領域においては、その複雑な形状寸法が溶接によって容易に変形する可能性がある。
【0015】
当業界で公知のように、エンジェルウィング16は、中にバケット10が組み込まれるガスタービンの隣接するノズル段(図示せず)でシールするように構成される。各ウィング16は、隣接するノズル上でシールとの摩擦接触による損傷を受ける先端18で終端する。先端18とノズルとの接触は、高い圧縮力、並びに製造公差、熱膨張速度の差違、及びタービンの運転中の動的作用の結果としての相対的運動によって特徴付けられる。従って、エンジェルウィング16とその先端18は、補修が必要となる損傷を受け易い。この目的のために、その根元部分上で取り外される表面領域を備えたバケット10が示されており、バケット10の1つの側面上に両方のエンジェルウィング16を包含する表面下領域20が露出している。従って、図1は、バケット10を補修するためのプロセスの第1段階を表し、これによってウィング16の摩耗又は損傷を受けた表面が除去される。
【0016】
図2は、図1で表面下領域20を露出するために除去される母材と置き換えるような大きさ及び形状にされた、焼結予備成形体22を示す。エンジェルウィング16の先端18だけを補修するために構成された予備成形体24を図3に示す(図1及び図2と同じ縮尺では示していない)。本発明によれば、予備成形体22及び24は、最大約90重量%までの耐摩耗性コバルト基合金を含有し、残部は本質的には、溶融温度降下剤(好ましくはホウ素)を含むコバルト基ろう合金であり、GTD−444では約1230℃であるベースの超合金の再結晶温度よりも低温で予備成形体22及び24がバケット10へ拡散接合することが可能になる。本明細書で使用されるコバルト基という用語は、その主要成分がコバルトである合金を指す。ろう合金の好ましい特性には、約1220℃までの溶融温度と、GTD−444との親和性、適度の摩耗特性、硬度、及び耐酸化性、機械加工性、低亀裂傾向とが、含まれる。好ましいろう合金は、商業的に公知の超合金Mar M509Bをベースにしており、重量%で約24%のクロム、約10.8%のニッケル、約7.5%のタングステン、約4%のタンタル、約0.25%のチタン、約2.7%のホウ素、約0.6%の炭素、残部がコバルト並びに不可避的不純物である組成式を有する。本発明のろう合金の成分の好適な組成範囲は、重量で約22.00から約24.75%までのクロム、約9.0から約11.0%までのニッケル、約6.5から約7.6%までのタングステン、約3.0から約4.0%までのタンタル、約2.60から3.16%までのホウ素、約0.55から約0.65%までの炭素、約0.15から0.30%までのチタン、約0.30から0.60%までのジルコニウム、最大1.3%の鉄、最大0.4%の珪素、最大0.10%のマンガン、最大0.015の硫黄、残部がコバルト並びに不可避的不純物である。
【0017】
予備成形体22及び24内にろう合金が存在するので、耐摩耗性合金は、ろう合金の溶融温度を越えるがGTD−444母材よりも低い、例えば1090℃より高く1315℃より低い溶融温度を有することができる。耐摩耗性合金の好ましい特性には、GTD−444との親和性、低亀裂傾向、適度な耐摩耗性、硬度、耐酸化性、及び機械加工性が含まれる。商業的に公知の耐摩耗加工材料をベースにした2つのコバルト合金が、耐摩耗性合金の使用に好適な本発明と同定される。第1の合金は、商品名TRIBALOY(登録商標)T800でDeloro Stellite Company,Inc.,から商業的に入手可能なコバルト基合金をベースとする。T800型合金は、重量%で、約27から約30%までのモリブデン、約16.5から約18.5%までのクロム、約3.0から−約3.8%までの珪素、1.5%以下の鉄、1.5%以下のニッケル、0.15%以下の酸素、0.03%以下の硫黄、0.03%以下のリン、及び0.08%以下の炭素、残部はコバルト並びに不可避的不純物を含有する。本発明で使用するためのT800型耐摩耗性合金の好ましい組成は、重量%で、約29%のモリブデン、約18%のクロム、約3.5%の珪素、約0.08%の炭素、残部はコバルト並びに不可避的不純物である。本発明の耐摩耗性合金としての使用に好適な第2の合金は、CM64の名称で種々の供給元から商業的に入手可能なコバルト合金をベースにしており、その一例は、STELLITE(登録商標)694の名称でDeloro Stellite Company,Inc.,から入手可能である。CM64型耐摩耗性合金の好適な組成は、重量%で、約26.0から約30.0%までのクロム、約18.0から約21.0%までのタングステン、約4.0から約6.0%までのニッケル、約0.75から約1.25%までのバナジウム、約0.7から約1.0%までの炭素、3%以下の鉄、1.0%以下のマンガン、0.5%以下のモリブデン、1.0%以下の珪素、0.05%以下のホウ素、残部はコバルト並びに不可避的不純物である。CM64型合金の好ましい組成は、重量%で、約28%のクロム、約19.5%のタングステン、約5%のニッケル、約1%のバナジウム、約0.85%の炭素、及び残部はコバルト並びに不可避的不純物である。
【0018】
予備成形体22及び24は、ろう付け及び耐摩耗性合金の粉体を混合することによって形成される。ろう付け及び耐摩耗性合金粉体の好適な粒径範囲は、325メッシュサイズ通過である。ろう合金は、予備成形体22及び24内に耐摩耗性合金及びホウ素拡散によるバケット10の母材との金属結合とを実現するような量で存在する。予備成形体22及び24内でのろう合金含有量の下限は、予備成形体内部で多孔率を許容可能な水準に制限するために、約10重量%である。予備成形体22及び24の約35重量%を超えると、ろう合金は、好ましくないことには、補修の機械特性並びに環境特性を低下させる可能性がある。好ましい実施形態では、予備成形体のろう合金含有量は、約15重量%である。予備成形体22及び24を作る際には、ろう付け及び耐摩耗性合金の他には他の構成物質は必要ではない。
【0019】
混合後、粉体を焼結し、良好な構造的強度及び好ましくは2容積%よりも少ない低多孔率の予備成形体22及び24を得る。焼結中、粉体は圧縮され、予備成形体22及び24内の融合を促進して多孔率を低減させる。約15重量%のろう合金を含む好ましい予備成形体組成に基づいて、予備成形体22及び24(及び従って、予備成形体22及び24によって形成される補修品)は、以下の組成式(不可避的不純物は含まず)を有する。
【0020】
【表1】

【0021】
本発明に至までの研究では、本質的に図1に示すタイプのGTD−444超合金から形成された一方向凝固バケットを約0.1インチ(約2.5mm)の深さまで放電加工機(EDM)によって機械加工し、本質的に図1に表すような根元部分の表面領域を除去した。EDMに続いて、露出領域を研磨して放電加工中に形成された改鋳層を完全に除去し、次いでアセトンで清浄化した。次いで露出領域は、Wall Colmonoy Corp.から名称NicroBlast(登録商標)で商業的に入手可能なニッケル−クロム−鉄グリットを使用してグリット・ブラストを施した。グリット・ブラスト作業は、露出領域を清浄化し、表面に圧縮応力を生成してろう付け性を強化し、露出領域の濡れ性を高める平滑なニッケル被覆を堆積させるために実施された。NicroBlast(登録商標)紛末は、最大60メッシュの粒径を有したが、より細かな粒径及びより粗い粒径を使用する可能性があることは予見することができる。
【0022】
研究のために、2つの異なる予備成形体調合物を評価した。調合物は、ろう合金の約15又は10重量%のいずれかを含み、残部はそれぞれ上記のT800型又はCM64型耐摩耗性合金であった。より具体的には、ろう合金は、重量%で約24%のクロム、約10.8%のニッケル、約7.5%のタングステン、約4%のタンタル、約0.25%のチタン、約2.7%のホウ素、約0.6%の炭素、残部はコバルト並びに不可避的不純物である組成式を有する。使用されたT800型耐摩耗性合金は、重量%で約29%のモリブデン、約18%のクロム、約3.5%の珪素、約0.08%の炭素、及び残部はコバルト並びに不可避的不純物である組成式を有した。CM64型耐摩耗性合金は、重量%で約28%のクロム、約20%のタングステン、約5%のニッケル、約3%の鉄、約1%のバナジウム、約0.9%の炭素、残部はコバルト並びに不可避的不純物である組成式を有した。
【0023】
次に、粉体が混合されてモールド内で焼成され、約0.1インチ(約2.5mm)の厚さと2容積%よりも小さな多孔率とを有する予備成形体を形成した。図2に示すのと同様の形状を得るように、予備成形体を水ジェット及びEDMによって切断した後、予備成形体がバケットの露出表面領域に仮溶接された。
【0024】
予備成形体は、2つの真空熱処理機の1つを使用して露出表面領域に拡散接合された。T800型耐摩耗性合金を含む予備成形体に対する熱処理は、約30分間保持される約1200°F(約650℃)のソーク温度までの約25°F/分(約14℃/分)の速度での加熱、約30分間保持される約1800°F(約980℃)のソーク温度までの約25°F/分の速度での加熱、約20分間保持される約2210°F(約1210℃)の最高ソーク温度までの約35°F/分(約20℃/分)の速度での加熱、約2050°F(約1120℃)の温度までの炉の冷却と約60分間の保持、約1500°F(約815℃)の温度までの炉の冷却、及び最後に室温までの冷却を含む。CM64型耐摩耗性合金を含む予備成形体に対する熱処理サイクルは、最高ソーク温度が約2240°F(約1227℃)で使用する以外は基本的に同一であった。全ての補修品は、熱処理後概ね所要の形状寸法特性に機械加工された。
【0025】
補修後のエンジェルウィングの幾つかの金相断面は、補修品が極めて均質であり、且つ結合境界部分全体が空隙を含まず、優れた金属接合をもたらすことを示した。他の補修後のバケットは、蛍光浸透検査(FPI)によって非破壊検査され、補修及び下地の超合金母材には亀裂が無いことが証明された。
【0026】
その後の研究において、GTD−444から形成されたバケット先端は、ろう合金の約15重量%を含み残部がT800型耐摩耗性合金である予備成形体調合物で補修された。T800型耐摩耗性合金を含む前回の予備成形体調合に対して本質的に上述のようにろう付け熱処理の後では、ブレードに亀裂が無く、結果として得られた補修品はオリジナルのGTD−444材料よりも優れた耐摩耗性を示した。
【0027】
本発明を特定の実施形態に関して説明したが、当業者により他の形態を取り入れることができる点は明らかである。従って、本発明の範囲は、添付の請求項によってのみ限定されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の補修プロセスに従う補修用に準備された第3段バケット用鋳造物の側面図。
【図2】図1のバケットの補修に好適な焼結予備成形体を表す図。
【図3】図1のバケットの補修に好適な焼結予備成形体を表す図。
【符号の説明】
【0029】
10 タービン構成要素
22、24 予備成形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コバルト基ろう合金及びコバルト基耐摩耗性合金の粉体の焼結混合物を含む焼結予備成形体(22、24)であって、前記コバルト基ろう合金が、前記焼結予備成形体(22、24)の約10から約35重量%を構成し、且つコバルト基ろう合金の溶融温度が約1090℃から約1230℃となるような十分な量のホウ素を含有する焼結予備成形体(22、24)。
【請求項2】
前記コバルト基ろう合金が、重量%で、約22.00から約24.75%までのクロム、約9.0から約11.0%までのニッケル、約6.5から約7.6%までのタングステン、約3.0から4.0%までのタンタル、約2.60から3.16%までのホウ素、約0.55から約0.65%までの炭素、約0.15から0.30%までのチタン、約0.30から0.60%までのジルコニウム、1.3%以下の鉄、0.4%以下の珪素、0.10%以下のマンガン、0.015%以下の硫黄、及び残部がコバルト並びに不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1に記載の焼結予備成形体(22、24)。
【請求項3】
前記コバルト基耐摩耗性合金が、重量%で、約27から約30%までのモリブデン、約16.5から約18.5%までのクロム、約3.0から約3.8%までの珪素、1.5%以下の鉄、1.5%以下のニッケル、0.15%以下の酸素、0.03%以下の硫黄、0.03%以下のリン、及び0.08%以下の炭素、残部がコバルト並びに不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1及び2のいずれか1項に記載の焼結予備成形体(22、24)。
【請求項4】
前記コバルト基耐摩耗性合金が、重量%で、約26.0から約30.0%までのクロム、約18.0から約21.0%までのタングステン、約4.0から約6.0%までのニッケル、約0.75から約1.25%までのバナジウム、約0.7から約1.0%までの炭素、3.0%以下の鉄、1.0%以下のマンガン、0.5%以下のモリブデン、1.0%以下の珪素、0.05%以下のホウ素、及び残部がコバルト並びに不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の焼結予備成形体(22、24)。
【請求項5】
ガスタービンの補修済みタービン構成要素(10)であって、該タービン構成要素(10)が、ガスタングステン溶接を施される場合に前記タービン構成要素(10)に亀裂を生じさせる組成及びガンマプライム相含有量を有するニッケル基超合金から形成されており、前記タービン構成要素(10)が、拡散接合される耐摩耗性補修材料を使用して補修される領域を有し、前記耐摩耗性補修材料が耐摩耗性コバルト基合金のマトリックス材料内に分散されたコバルト基ろう合金からなる補修済みタービン構成要素(10)。
【請求項6】
前記耐摩耗性補修材料が、重量%で、約18.5%のクロム、約0.92%のニッケル、約0.64%のタングステン、約0.34%のタンタル、約0.23%のホウ素、約0.12%の炭素、約0.021%のチタン、約26.5%のモリブデン、約3.2%の珪素、及び残部がコバルト並びに不可避的不純物からなる組成式を有することを特徴とする、請求項5に記載の補修済みタービン構成要素(10)。
【請求項7】
前記耐摩耗性補修材料が、重量%で、約27.6%のクロム、約5.5%のニッケル、約18.9%のタングステン、約0.36%のタンタル、約0.24%のホウ素、約0.87%の炭素、約0.023%のチタン、約2.7%の鉄、約0.91%のバナジウム、及び残部がコバルト並びに不可避的不純物からなる組成式を有することを特徴とする、請求項5及び6のいずれか1項に記載の補修済みタービン構成要素(10)。
【請求項8】
前記ニッケル基超合金が、重量%で、約9.5から約10%までのクロム、約7から約8%までのコバルト、約3.35から約3.65%までのチタン、約4.1から約4.3%までのアルミニウム、約5.75から約6.25%までのタングステン、約1.3から約1.7%までのモリブデン、約4.60から約5.0%までのタンタル、約0.06から約0.1%までの炭素、約0.0080から約0.010%までのジルコニウム、約0.008から約0.0105%までのホウ素、及び残部がニッケル並びに不可避的不純物からなることを特徴とする、請求項5から7までのいずれか1項に記載の補修済みタービン構成要素(10)。
【請求項9】
ガスタービンのタービン構成要素(10)を補修する方法であって、
コバルト基ろう合金及びコバルト基耐摩耗性合金の粉体を混合して混合物を形成し、前記コバルト基ろう合金が粉体混合物の約10から約35重量%までを構成し、且つ前記コバルト基ろう合金の溶融温度が約1090℃から約1230℃までとなる十分な量のホウ素を前記コバルト基ろう合金が含むようにする段階と、
前記粉体混合物を焼結して焼結予備成形体(22、24)を形成する段階と、
前記タービン構成要素(10)の表面部分を除去して該タービン構成要素(10)の表面下部分(20)を露出する段階と、
前記タービン構成要素(10)の表面下部分(20)に前記焼結予備成形体(22、24)を拡散接合して、前記耐摩耗性コバルト基合金のマトリックス内に分散された前記コバルト基ろう合金からなる耐摩耗性補修材料を形成する段階と、を含むことを特徴とする補修方法。
【請求項10】
前記拡散接合段階の前に、前記タービン構成要素(10)の表面下部分(20)上にニッケル含有被覆を堆積させる段階を更に含む請求項9に記載の補修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−188760(P2006−188760A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−359694(P2005−359694)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】