説明

ニューロン活性を有する化合物

【課題】ニューロン活性を有する化合物を提供すること。
【解決手段】本発明は神経細胞における軸索の成長を刺激するための化合物、方法および薬学的組成物に関する。これらの化合物および組成物ならびにそれらを利用する方法が、単独または神経栄養因子(たとえば、神経成長因子)と組み合わせてのいずれかで使用されて、疾患によって生じるニューロンの損傷および物理的外傷の修復を促進し得る。FKBPと結合せず、MDRを阻害しないが、強力なニューロン活性を有する化合物のいくつかのサブクラスを同定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の技術分野)
本発明は、神経細胞活性を有する化合物、方法および薬学的組成物に関する。この化合物および組成物は、疾患または物理的外傷によって引き起こされる神経細胞の損傷の、処置または予防のための方法において、単独かまたは神経栄養性の因子(例えば、神経成長因子)と組み合わせてのいずれかで使用され得る。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
神経性疾患は、ニューロン細胞の細胞死または傷害を伴う。例えば、黒質中のドーパミン作動性ニューロンの損失は、パーキンソン病の原因である。アルツハイマー病における神経変性の分子機構は未だ確立されていないが、炎症ならびにβ−アミロイドタンパク質および他のそのような薬剤の沈着は、ニューロンの機能または生存を損ない得る。脳虚血または脊髄の損傷を被っている患者において、多数のニューロン細胞死が観察される。現在、これらの疾患のための満足のいく処置は存在しない。
【0003】
神経性疾患を処置する1つのアプローチには、ニューロン細胞死を阻害し得る薬物の使用を含む。より最近のアプローチは、神経突起の伸長を刺激する薬物による神経再生の促進を含む。
【0004】
神経突起の伸長は、神経成長因子(例えばNGF)によりインビトロで刺激され得る。例えば、グリア細胞系由来の神経栄養因子(GDNF)は、神経栄養活性をインビボおよびインビトロの両方で示し、そして現在パーキンソン病の処置のために研究されている。インスリンおよびインスリン様成長因子は、ラット褐色細胞腫PC12細胞、ならびに培養した交感ニューロンおよび感覚ニューロンにおいて神経突起の成長を刺激することが示されている[Recio−Pintoら、J.Neurosci.、6、1211−1219頁(1986)]。インスリンおよびインスリン様成長因子はまた、損傷した運動神経の再生をインビボおよびインビトロで刺激する[Nearら、PNAS、89頁、11716−11720(1992);およびEdbladhら、Brain Res.、641、76−82頁(1994)]。同様に、線維芽細胞成長因子(FGF)は、神経増殖[D. Gospodarowiczら、Cell Differ.、19、1頁(1986)]および神経成長[M.A.Walterら、Lymphokine Cytokine Res.、12、135頁(1993)]を刺激する。
【0005】
しかしながら、神経性疾患を処置するために神経成長因子を使用することはいくつかの不利な点を伴う。それらは、容易には血液脳関門を通過しない。それらは、血漿中で不安定である。そして、それらは薬物送達性において劣っている。
【0006】
近年、小分子がインビボで軸索の伸長を刺激することが示されている。神経性疾患を被っている個体において、この神経突起の伸長の刺激はニューロンをさらなる変性から保護し、そして神経細胞の再生を加速し得る。例えば、エストロゲンは、発達中または損傷した成人脳において、軸索および樹状突起(これらは、互いに伝達するために神経細胞から送り出される神経突起である)の成長を促進することが示されている[(C.Dominique Toran−Allerandら、J.Steroid Biochem.Mol.Biol.、56、169−78頁(1996);およびB.S.McEwenら、Brain Res.Dev.Brain.Res.、87、91−95頁(1995)]。アルツハイマー病の進行は、エストロゲンを摂取する女性においてゆっくりにされ得る。エストロゲンは、NGFおよび他のニューロトロフィンを補完し、そしてそれによりニューロンの分化および生存を助けると仮定される。
【0007】
FK506結合タンパク質(FKBP)との親和性を有する化合物が報告されている。この化合物は、神経成長刺激性活性もまた有する、タンパク質のロタマーゼ(rotamase)活性を阻害する(Lyonsら、PNAS、91、3191−3195頁(1994))。これらのこのような化合物の多くはまた免疫抑制活性を有する。
【0008】
FK506(Tacrolimus)、免疫抑制薬は、PC12細胞および知覚神経節における神経突起の伸長刺激において、NGFと共同的に作用することが示されている(Lyonsら、(1994))。この化合物はまた、焦点脳虚血において神経保護的であること(J.SharkeyおよびS.P.Butcher、Nature、371、336−339頁(1994))、および損傷した座骨神経において軸索の再生速度を増加すること(B.Goldら、J.Neurosci.、15、7509−16頁(1995))を示している。
【0009】
しかしながら、免疫抑制化合物の使用は明らかな弱点を有する。評判を落とすような免疫機能に加えて、これらの化合物を用いた長期の処置が、腎毒性(Koppら、J.Am.Soc.Nephrol.、1、162頁(1991))、神経性欠損(P.C.DeGroenら、N.Eng.J.Med.、317、861頁(1987))および血管性高血圧症(Kahanら、N.Eng.J.Med.、321、1725頁(1989))を引き起こし得る。
【0010】
特許文献1は、FK−506結合タンパク質に対する親和性および免疫抑制活性を有する化合物の属を開示する。国際公報第WO94/07858およびWO95/26337は、それぞれ複数薬物逆転活性(multi−drug reversal activity)を有する化合物の属を開示する。J.Med.Chem.、12(1969)、677−680頁は、モルモット由来の溶血素および相補体によるヒツジ赤血球溶解の阻害における、合成化合物および研究を開示する。Anal.Biochem.、129(1983)502−512は、ブタのペプシンのための蛍光基質の合成を開示する。
【0011】
より最近では、ロタマーゼ活性を阻害するがその称するところによれば免疫抑制活性を欠くFKBP結合化合物のサブクラスが、神経成長の刺激においての使用について開示されている(米国特許第5,614,547号;同第5,696,135号;WO96/40633;WO96/40140;WO97/16190;J.P.Steinerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、94、2019−23頁(1997);およびG.S.Hamiltonら、Bioorg.Med.Chem.Lett.、7、1785−90頁(1997)を参照のこと)。これらの化合物はおそらく、免疫抑制FKBP結合化合物の特定の望まれない副作用を回避するが、これらはまだFKBPに結合し、そしてそのロタマーゼ活性を阻害する。この後者の特性はまだ、哺乳類においてFKBPが果たし得る他の役割に起因して所望されない副作用を導き得る。
【0012】
驚くべきことに、現在では、FKBPへの結合はニューロンの活性のために必要ではないことが公知である。同時係属中の米国特許出願番号第08/748,447号、同第08/748,448号および同第08/749,114号はそれぞれ、FKBP非結合の使用、神経成長刺激のための非免疫抑制化合物および神経変性の予防を記述する。これらのFKBPへの親和性の欠如に起因して、これらの化合物は、FKBP−関連生物化学経路との任意の潜在的な障害を有利に回避する。しかしながら、これらの化合物は、p−糖タンパク質およびMRPの阻害を通して複数薬物耐性(「MDR」)を阻害する。神経成長の刺激および神経変性の予防のために必要なこれらの化合物の用量は、MDRをもたらす用量よりも低いようであるが、作用の他の顕著な機構無しで、神経活性に特異的な化合物を得ることが、未だに所望される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第WO92/21313号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
広範な種々の神経変性障害が神経突起の伸長を刺激することによって処置され得るが、これらの性質を有すると知られている薬剤は、比較的に少ない。さらに、より新しい非免疫抑制化合物は、最近になって生体において試験され始めてきたばかりである。従って、免疫抑制を引き起こすことなく、FKBPを障害することなくおよび細胞ポンプに影響することなく(例えば、p−糖タンパク質またはMRP)、新規の薬学的に受容可能な化合物、および患者の神経突起伸長を刺激する能力および神経変性を予防する能力を有する組成物に対する要求が残されている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の要旨)
出願人らは、FKBPと結合せず、MDRを阻害しないが、強力なニューロン活性を有する化合物のいくつかのサブクラスを同定した。
【0016】
本明細書中で使用される用語「ニューロン活性」には、損傷されたニューロンの刺激、ニューロンの再生の促進、神経変性の予防および神経性障害の処置が挙げられる。本発明の化合物は、末梢神経および中枢神経系の両方において活性を有する。
【0017】
本発明は、例えば以下を提供する。
(項目1) 以下の式の化合物およびそれらの薬学的に受容可能な誘導体:
【化1】


ここで:
AおよびBは、独立して、水素、Ar、(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル、(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニル、(C5〜C7)−シクロアルキル置換−(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル、(C5〜C7)シクロアルキル置換−(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニル、(C5〜C7)−シクロアルケニル置換−(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル、(C5〜C7)−シクロアルケニル置換−(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニル、Ar−置換−(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル、あるいはAr−置換−(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニルから選択され;ここで、AまたはBにおける、上記アルキル、アルケニルまたはアルキニル鎖のCH2基のうちのいずれか1つは、O、S、S(O)、S(O)2またはN(R)で必要に応じて置換される;ここで
Rは、水素、(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル、または(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニルから選択される;
Arは、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、インデニル、アズレニル、(azulenyl)、フルオレニル、アントラセニル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラキソリル(pyraxolyl)、2−ピラゾリニル、ピラゾリジニル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,3−トリアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、ベンゾキサゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、1,3,5−トリアジニル、1,3,5−トリチアニル、インドリジニル、インドリル、イソインドリル、3H−インドリル、インドリニル、ベンゾ[b]フラニル、ベンゾ[b]チオフェニル、1H−インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、プリニル、4H−キノリジニル、キノリニル、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリニル、イソキノリニル、1,2,3,4−テトラヒドロキノリニル、シノリニル(cinnolinyl)、フタラジニル(phthalazinyl)、キナゾリニル(quinazolinyl)、キノキサリニル(quinoxalinyl)、1,8−ナフチリジニル、ペリジニル(pteridinyl)、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニルまたはフェノキサジニル、あるいは他の化学的に可能な単環、二環または三環式環系から選択され、ここで各環は5個から7個の環原子からなり、ここで各環は独立して、N、N(R)、O、S、S(O)、またはS(O)2から選択される0〜3個のヘテロ原子を含み、そしてここで
各Arは、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、−SO3H、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル、(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルケニル、O−[(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル]、O−[(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルケニル]、O−ベンジル、O−フェニル、1,2−メチレンジオキシ、−N(R1)(R2)、カルボキシル、N−(C1〜C5−直鎖または分岐したアルキル、あるいはC2〜C5−直鎖または分岐したアルケニル)カルボキサミド、N,N−ジ−(C1〜C5−直鎖または分岐したアルキルまたはC2〜C5−直鎖または分岐したアルケニル)カルボキサミド、N−(C1〜C5−直鎖または分岐したアルキル、あるいはC2〜C5−直鎖または分岐したアルケニル)スルホンアミド、N,N−ジ−(C1〜C5−直鎖または分岐したアルキルまたはC2〜C5−直鎖または分岐したアルケニル)スルホンアミド、モルホリニル、ピペリジニル、O−Z、CH2−(CH2q−Z、O−(CH2q−Z、(CH2q−Z−O−Z、またはCH=CH−Zから独立して選択される1〜3個の置換基と必要に応じて置換される;
ここでR1およびR2は、(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル、(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニル、水素またはベンジルから独立して選択されるか;あるいはここでR1およびR2は窒素原子と一緒になって結合して5〜7員ヘテロ環式環を形成する;
Zは4−メトキシフェニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、ピラジル、キノリル、3,5−ジメチルイソキサゾイル、イソキサゾイル、2−メチルチアゾイル、チアゾイル、2−チエニル、3−チエニル、またはピリミジルから選択される;そして
qは0、1または2である;
XはN、OまたはC(R)である;
ここで、Xが、NまたはC(R)である場合、Yは、水素、Ar、(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル、(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニル、(C5〜C7)−シクロアルキル置換−(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル、(C5〜C7)−シクロアルキル置換−(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニル、(C5〜C7)−シクロアルケニル置換−(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル、(C5〜C7)−シクロアルケニル置換−(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニル、Ar−置換−(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル、あるいはAr−置換−(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニルから選択される;
Xが、Oである場合、Yは孤立電子対である;
Kは(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル、Ar−置換−(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル、(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニル、Ar−置換−(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニル、あるいはシクロヘキシルメチルから選択され;ここでKにおける上記アルキル、アルケニルまたはアルキニル鎖のCH2基のいずれか1つは、必要に応じてO、S、S(O)、S(O)2またはN(R)で置換される;
nは0、1または2である;
Jは、水素、(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル、(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニル、Ar−置換−(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル、Ar−置換−(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニル、あるいはシクロヘキシルメチルから選択される;そして
Dは、Ar、(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル、(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニル、(C5〜C7)−シクロアルキル置換−(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル、(C5〜C7)シクロアルキル置換−(C2〜C6)直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニル、(C5〜C7)−シクロアルケニル置換(C1〜C6)直鎖または分岐したアルキル、(C5〜C7)シクロアルケニル置換(C2〜C6)直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニル、Ar−置換(C1〜C6)直鎖または分岐したアルキル、あるいはAr置換(C2〜C6)直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニルから選択され;ここで、化合物においてSO2に直接結合したもの以外のDにおける上記アルキル鎖のCH2基のいずれか1つは、必要に応じてO、S、SO、SO2またはNRで置換される。
(項目2) 以下の式の化合物およびそれらの薬学的に受容可能な誘導体:
【化2】


ここで、A、B、Y、D、およびそれらの小成分は、項目1に定義されたとおりであり;
mは0、1または2であり;
n+mは1、2、または3であり;
示された環は飽和、部分不飽和または不飽和であり;
示された環において1〜2個の炭素原子は、O、S、S(O)、S(O)2またはNRから独立して選択されるヘテロ原子で必要に応じて置換される;そして
示された環は必要に応じてベンゾ縮合される(benzofused)。
(項目3) AおよびBの少なくとも1つが末端をピリジルで置換された(C1〜C6)−直鎖アルキルである、項目1または2に記載の化合物。
(項目4) Xが窒素または酸素である、項目1に記載の化合物。
(項目5) Jが(C1〜C3)−直鎖アルキルである、項目1に記載の化合物。
(項目6) Kが末端をフェニルで置換された(C1〜C3)−直鎖アルキルである、項目1に記載の化合物。
(項目7) Dが、(C1〜C6)直鎖または分岐したアルキル、Ar、Ar−置換(C1〜C6)直鎖または分岐したアルキル、Ar−置換(C2〜C6)直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニル、あるいは−CH2−S(O)2−(C1〜C4)直鎖または分岐したアルキルから選択される、項目1または2に記載の化合物。
(項目8) Dが、アミノフェニル、ニトロフェニル、イソプロピル、ベンジル、フルオロフェニル、シアノフェニル、メトキシフェニル、ジメトキシフェニル、メチルスルホニルメチル、エチレンフェニル、ジニトロアニリノフェニル、N,N−ジメチルアミノフェニルアゾフェニルN,N−ジメチルアミノナフチルまたはアセトアミドフェニルから選択される、項目7に記載の化合物。
(項目9) Yがメチルである、項目1または2に記載の化合物。
(項目10) nが0である、項目1または2に記載の化合物。
(項目11) nが0であり;
mが2であり;そして
前記示された環が完全に飽和している、項目2に記載の化合物。
(項目12) 前記化合物が、表1の化合物2、または4〜18のいずれか1つ、あるいは表2の化合物1または3のいずれか1つから選択される、項目1または2に記載の化合物。
(項目13) 以下の式の化合物およびそれらの薬学的に受容可能な誘導体:
【化3】


ここで:
A、B、X、Y、K、J、nおよびそれらの小成分が、項目1で定義されたとおりであり;そして
3は、(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル、Ar−置換−(C1〜C6)直鎖または分岐したアルキル、(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニル、あるいはAr−置換−(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニルから選択され;
ここでR3における該アルキル、アルケニルまたはアルキニル鎖のCH2基のいずれか1つが、O、S、S(O)、S(O)2またはN(R)で必要に応じて置換され;そして
ここで窒素に結合しているCH2基をのぞいて、R3における該アルキル、アルケニルまたはアルキニルのCH2基のいずれか1つは、必要に応じてC(O)で置換される。
(項目14) 以下の式の化合物およびそれらの薬学的に受容可能な誘導体;
【化4】


ここで:
A、B、X、Y、m、pおよびそれらの小成分は、項目2で定義されたとおりであり;そして
3は(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル、Ar−置換−(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル、(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニル、あるいはAr−置換−(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニルから選択され;
ここで、R3における該アルキル、アルケニルまたはアルキニル鎖のCH2基のいずれか1つは、O、S、S(O)、S(O)2またはN(R)で必要に応じて置換され;
ここで、窒素に結合したCH2基をのぞいて、R3における該アルキル、アルケニルまたはアルキニルのCH2基のいずれか1つは、C(O)で必要に応じて置換され;そしてここで
nが0でありmが1である場合、R3の該アルキル、アルケニルまたはアルキニル鎖における第2のCH2基はC(O)で置換されない。
(項目15) AまたはBの少なくとも1つがAr−置換(C1〜C6)−アルキル鎖である、項目13または14に記載の化合物。
(項目16) AまたはBの少なくとも1つが末端をフェニルまたはピリジニルで置換された(C1〜C6)アルキル鎖である、項目15に記載の化合物。
(項目17) XがNまたはOである、項目13または14に記載の化合物。
(項目18) Kがベンジルである、項目13に記載の化合物。
(項目19) Jが水素またはメチルである、項目13に記載の化合物。
(項目20) R3が水素、(C1〜C6)−アルキル、末端をピリジルで置換された(C1〜C6)−アルキル、あるいは3,4,5−トリメチルオキシベンゾイルメチル(trimethyoxybenzoylmethyl)から選択される、項目13または14に記載の化合物。
(項目21) nが0である、項目13に記載の化合物。
(項目22) pが0であり;
mが2であり;そして
前記示された環が完全に飽和している、項目14に記載の化合物。
(項目23) 前記化合物が表3の化合物101〜113にいずれか1つから選択される、項目13または14に記載の化合物。
(項目24) 以下によって特徴付けられる化合物:
a.ニューロン活性を有する;
b.細胞質Ca2+濃度を増加する能力またはリアノジン受容体への結合を有する;
c.FKBPへ結合しない;ならびに
d.MDR逆転活性を有さない。
(項目25) 以下を含む組成物:
a)項目1、2、13または14のいずれか1項に記載の神経栄養量の化合物;および
b)薬学的に適切なキャリア。
(項目26) 前記組成物が薬学的に受容可能な組成物として処方される、項目25に記載の組成物。
(項目27) さらに神経栄養因子を含む、項目26に記載の組成物。
(項目28) 前記神経栄養因子が、神経成長因子(NGF)、インスリン増殖因子(IGF)およびそれらの能動的に切断された誘導体、酸性線維芽増殖因子(aFGF)、塩基性線維芽増殖因子(bFGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、脳由来神経栄養因子(brain−derived neurotrophic factor)(BDNF)、毛様体神経栄養因子(ciliary neurotrophic factor)(CNTF)、グリア細胞由来神経栄養因子(glial cell−derived neurotrophic factor)(GDNF)、ニューロトロフィン−3(NT−3)ならびにニューロトロフィン4/5(NT−4/5)から選択される、項目27に記載の組成物。
(項目29) 前記神経栄養因子が神経成長因子(NGF)である、項目28に記載の組成物。
(項目30) 患者またはエキソビボで神経細胞におけるニューロン活性を刺激する方法であって、該患者または該神経細胞に神経栄養量の項目1、2,13または14のいずれか1項に記載の化合物を投与する工程を包含する、方法。
(項目31) 前記化合物を薬学的に受容可能な組成物中に薬学的に適切なキャリアと一緒に患者に投与し、そして処方する、項目30に記載の方法。
(項目32) 前記患者に前記化合物と一緒に複数投薬形態の部分としてまたは分割投薬形態としてのいずれかで神経栄養因子を投与するさらなる工程を含む、項目31に記載の方法。
(項目33) 前記神経栄養因子が、神経成長因子(NGF)、インスリン増殖因子(IGF)およびそれらの能動的に切断された誘導体、酸性線維芽増殖因子(aFGF)、塩基性線維芽増殖因子(bFGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、ニューロトロフィン−3(NT−3)ならびにニューロトロフィン4/5(NT−4/5)から選択される、項目32に記載の方法。
(項目34) 前記神経栄養因子が神経成長因子(NGF)である、項目33に記載の方法。
(項目35) 前記方法が以下を罹患した患者を処置するために使用される、項目30に記載の方法:
三叉神経痛、舌咽神経痛、ベル麻痺、重症筋無力症、筋ジストロフィー、筋肉損傷、進行性筋萎縮、進行性延髄遺伝性筋萎縮(progressive bulbar inherited muscular atrophy)、ヘルニア、脱出無脊椎症候群(ruptured or prolapsed invertebrae disk syndrome’s)、頸椎症、神経叢疾患(plexus disorder)、胸郭出口症候群、末梢神経疾患(たとえば、鉛、ダプソン、マダニまたはポルフィリン症によって生じる疾患)、他の末梢ミエリン疾患(peripheral myelin disorder)、アルツハイマー病、グライン−バレー症候群(Gullain−Barre syndrome)、パーキンソン病および他のパーキンソン症候群疾患、ALS、多発性硬化症、他の中心ミエリン疾患(central myelin disorder)、発作および発作に関連する虚血、神経性パロパシー(neural paropathy)、他の神経変性疾患、運動ニューロン疾患、座骨挫傷(sciatic crush)、糖尿病に関連する神経疾患、脊髄損傷、顔面神経挫傷および他の外傷、化学療法および他の投薬誘導神経疾患およびハンティングトン病。
(項目36) 前記方法をエキソビボで神経再生を刺激するために使用する、項目30に記載の方法。
(項目37) 前記神経細胞を神経栄養因子と接触させる工程をさらに包含する、項目36に記載の方法。
(項目38) 前記神経栄養因子が、神経成長因子(NGF)、インスリン増殖因子(IGF)およびそれらの能動的に切断された誘導体、酸性線維芽増殖因子(aFGF)、塩基性線維芽増殖因子(bFGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、ニューロトロフィン−3(NT−3)ならびにニューロトロフィン4/5(NT−4/5)から選択される、項目37に記載の方法。
(項目39) 前記神経栄養因子が神経成長因子(NGF)である、項目38に記載の方法。
(項目40) 患者またはエキソビボで神経細胞におけるニューロン活性を刺激する方法であって、該患者または該神経細胞に神経栄養量の項目24に記載の化合物を投与する工程を包含する、方法。
【0018】
2つのこれらの亜属は、WO92/21313で記述される化合物の属に属する。これらの化合物は、以下の式によって特徴付けられる:
【0019】
【化6】

【0020】
本発明の化合物の2つの他の亜属は、以下の式を有する:
【0021】
【化7】

【0022】
本発明はまた、化合物(I)から(IV)のいずれかの薬学的に受容可能な誘導体を含む。
【0023】
これらの化合物のそれぞれにおいて、AおよびBは独立して、水素、Ar、(C1−C6)−直鎖または分枝アルキル、(C2−C6)−直鎖または分枝アルケニルまたはアルキニル、(C5−C7)−シクロアルキル置換(C1−C6)−直鎖または分枝アルキル、(C5−C7)−シクロアルキル置換−(C2−C6)−直鎖または分枝アルケニルまたはアルキニル、(C5−C7)−シクロアルケニル置換−(C1−C6)−直鎖または分枝アルキル、(C5−C7)−シクロアルケニル置換−(C2−C6)−直鎖または分枝アルケニルまたはアルキニル、Ar−置換−(C1−C6)−直鎖または分枝アルキル、またはAr−置換−(C2−C6)−直鎖または分枝アルケニルまたはアルキニルから選択され;ここで、AまたはBにおける、上記アルキニル、アルケニルまたはアルキル鎖のCH2基の任意の1つは、必要に応じて、O、S、S(O)、S(O)2、またはN(R)によって置換され;ここで
Rは、水素、(C1−C6)−直鎖または分枝アルキル、または(C2−C6)−直鎖または分枝アルケニルまたはアルキニルから選択され;
Arは、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、インデニル、アズレニル、フルオレニル、アントラセニル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル(pyraxolyl)、2−ピラゾリニル、ピラゾリジニル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,3−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、ベンゾキサゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、1,3,5−トリアジニル、1,3,5−トリチアニル、インドリジニル、インドリル、イソインドリル、3H−インドリル、インドリニル、ベンゾ[b]フラニル、ベンゾ[b]チオフェニル、1H−インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、プリニル、4H−キノリジニル、キノリニル、1,2,3,4−テトラヒドロ−イソキノリニル、イソキノリニル、1,2,3,4−テトラヒドロ−イソキノリニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、1,8−ナフチリジニル、ペリジニル(peridinyl)、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、またはフェノキサジニルまたは他の化学的に可能な単環式、二環式または三環式環系から選択され、ここで、各環は、5〜7個の環原子からなりかつここで各環は独立して、N、N(R)、O、S、S(O)、またはS(O)2から選択される0〜3個のヘテロ原子を含み、そしてここで、
各Arは、必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、−SO3H、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、(C1−C6)−直鎖または分枝アルキル、(C2−C6)−直鎖または分枝アルケニル、O−[(C1−C6)−直鎖または分枝アルキル]、O−[(C2−C6)−直鎖または分枝アルケニル]、O−ベンジル、O−フェニル、1,2−メチレンジオキシ、−N(R1)(R2)、カルボキシル、N−(C1−C5−直鎖または分枝アルキルあるいはC2−C5−直鎖または分枝アルケニル)カルボキサミド、N,N−ジ−(C1−C5−直鎖または分枝アルキルあるいはC2−C5−直鎖または分枝アルケニル)カルボキサミド、N−(C1−C5−直鎖または分枝アルキルあるいはC2−C5−直鎖または分枝アルケニル)スルホンアミド、N,N−ジ−(C1−C5−直鎖または分枝アルキルあるいはC2−C5−直鎖または分枝アルケニル)スルホンアミド、モルホリニル、ピペリジニル、O−Z、CH2−(CH2q−Z、O−(CH2q−Z、(CH2q−Z−O−Z、またはCH=CH−Zから独立して選択される1〜3個の置換基で置換され;
ここでR1およびR2は、独立して、(C1−C6)−直鎖または分枝アルキル、(C2−C6)−直鎖または分枝アルケニルまたはアルキニル、水素またはベンジルから選択されるか;あるいはここでR1およびR2は窒素原子と一緒になって結合して、5〜7員ヘテロ環式環を形成し;
Zは、4−メトキシフェニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、ピラジル、キノリル、3,5−ジメチルイソキサゾイル、イソキサゾイル、2−メチルチアゾイル、チアゾイル、2−チエニル、3−チエニル、またはピリミジルから選択され;および
qは0、1、または2であり;
XはN、OまたはCHであって;
XがNまたはCHである場合、Yは、水素、Ar、(C1−C6)−直鎖または分枝アルキル、(C2−C6)−直鎖または分枝アルケニルまたはアルキニル、(C5−C7)−シクロアルキル置換−(C1−C6)−直鎖または分枝アルキル、(C5−C7)−シクロアルキル置換−(C2−C6)−直鎖または分枝アルケニルまたはアルキニル、(C5−C7)−シクロアルケニル置換−(C1−C6)−直鎖または分枝アルキル、(C5−C7)−シクロアルケニル置換−(C2−C6)−直鎖または分枝アルキニルのアルケニル、Ar−置換−(C1−C6)−直鎖または分枝アルキル、またはAr−置換−(C2−C6)−直鎖または分枝アルケニルまたはアルキニルから選択され;
XがOの場合、Yは孤立電子対であって;
nは0、1または2であって;
mは0、1または2であって;
n+mは4未満かつ0より大きく;
式IIおよびIVにおいて示される環は、飽和、部分的不飽和または不飽和であって;
式IIおよびIVの環中の1〜2個の炭素原子は、必要に応じて、O、S、S(O)、S(O)2またはNRから独立して選択されるヘテロ原子によって置換され;および
式IIおよびIV中の上記環は、必要に応じてベンゾ縮合(benzofused)される。
【0024】
Jは、水素、(C1−C6)−直鎖または分枝アルキル、(C2−C6)−直鎖または分枝アルケニルまたはアルキニル、Ar−置換−(C1−C6)−直鎖または分枝アルキル、Ar−置換−(C2−C6)−直鎖または分枝アルケニルまたはアルキニル、またはシクロヘキシルメチルから選択され;
Kは、(C1−C6)−直鎖または分枝アルキル、Ar−置換−(C1−C6)−直鎖または分枝アルキル、(C2−C6)−直鎖または分枝アルケニルまたはアルキニル、Ar−置換−(C2−C6)−直鎖または分枝アルケニルまたはアルキニル、またはシクロヘキシルメチルから選択され;ここで、K中の上記アルキル、アルケニルまたはアルキニル鎖のCH2基のいずれか1つは、必要に応じてO、S、S(O)、S(O)2またはN(R)で置換される;
Dは、Ar、(C1−C6)−直鎖または分枝アルキル、(C2−C6)−直鎖または分枝アルケニルまたはアルキニル (C5−C7)−シクロアルキル置換(C1−C6)−直鎖または分枝アルキル、(C5−C7)−シクロアルキル置換(C2−C6)−直鎖または分枝アルケニルまたはアルキニル、(C5−C7)−シクロアルケニル置換(C1−C6)−直鎖または分枝アルキル、(C5−C7)−シクロアルケニル置換(C2−C6)−直鎖または分枝アルキニルのアルケニル、Ar−置換(C1−C6)−直鎖または分枝アルキル、またはAr−置換(C2−C6)直鎖または分枝アルケニルまたはアルキニルから選択され;
ここで、化合物中でSO2に直接結合しているもの以外の、D中の上記アルキル鎖のCH2基のいずれか1つは、必要に応じてO、S、SO、SO2またはNRで置換される;
3は、(C1−C6)−直鎖または分枝アルキル、Ar−置換−(C1−C6)−直鎖または分枝アルキル、(C2−C6)−直鎖または分枝アルケニルまたはアルキニル、またはAr−置換−(C2−C6)−直鎖または分枝アルケニルまたはアルキニルであって;ここで、R3中の上記アルキル、アルケニルまたはアルキニル鎖のCH2基のいずれか1つは、必要に応じてO、S、S(O)、S(O)2またはN(R)で置換され;そしてここで、R3中の上記アルキル、アルケニルまたはアルキニル鎖のCH2基の、窒素と結合したCH2を除いた内のいずれか1つは、必要に応じてC(O)で置換され、但し、式IIにおいて、nが0であってかつmが1である場合、R3のアルキル鎖中の二番目のCH2基はC(O)で置換されない。
【0025】
本明細書中で開示された組成物は、本発明の化合物、キャリア、および必要に応じてニューロンの成長因子を含む。
【0026】
本明細書で開示された神経成長刺激および神経変性予防の方法は、上記の化合物を、単独かまたはニューロンの成長因子と組み合わせてのいずれかで使用する。この方法は、種々の神経性疾患および物理的外傷およびまたエキソビボの神経再生によって引き起こされる神経の損傷を治療または予防するのに有用である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(発明の詳細な説明)
出願人らは、ニューロン活性を有する(FKBPと結合せず、かつ複数薬物耐性逆転活性を有しない)化合物の多様な属を発見した。理論に束縛されること無く、出願人らは、本出願で開示された化合物がこれらのニューロン活性を発揮すると考える。これは、細胞質のCa2+濃度を増加させることによって起こる。これは、カルシウム放出チャンネル(例えば、神経細胞の小胞体中の、リアノジンレセプターまたはイソシトール1,4,5−トリスホスフェートレセプター)との直接的または間接的のいずれかでの相互作用によって達成されるようである。
【0028】
従って、1実施態様によれば、本発明は、神経細胞と以下の化合物との接触による、神経成長の刺激または神経変性の予防の方法を提供する:
a.細胞質のCa2+濃度を増加するかまたはリアノジンレセプターに結合する;
b.FKBPに結合しない;および
c.MDR逆転活性を有しない。
【0029】
関連した実施態様に従って、本発明は以下の化合物を提供する:
a.ニューロン活性を有する;
b.細胞質のCa2+濃度を増加するかまたはリアノジンレセプターに結合する;
c.FKBPに結合しない;および
d.MDR逆転活性を有しない。
【0030】
本明細書中で使用される用語「細胞質のCa2+濃度の増加」は、適切なコントロールとの比較として、このような化合物の存在下で以下に記述される、単一チャンネル記録アッセイにおいて記録されるチャンネル電流の、検出可能な増加を表す。あるいは、本明細書中で使用される用語「細胞質のCa2+濃度の増加」は、本明細書中で記載される細胞アッセイにおける蛍光スペクトルの検出可能なシフトを表す。
【0031】
本明細書中で使用される用語「リアノジンレセプターへの結合」は、以下で記述されるアッセイにおけるミクロソームへの結合のために、化合物が、リアノジンと特異的に競合することを表す。
【0032】
本明細書中で使用される用語「FKBPに結合しない」は、以下で記述される少なくとも1つのロタマーゼ阻害アッセイにおいて、化合物が10μM以上のKiを示すことを表す。
【0033】
本明細書中で使用される用語「MDR逆転活性を有しない」は、以下で記述される少なくとも1つのMDRアッセイにおいて、2.5μMの濃度で、化合物が、7.0未満の、および好ましくは3.0未満のMDR比を有することを表す。
【0034】
単一−チャンネル記録実験は、本発明の化合物が細胞質のCa2+濃度の必要な増加を引き起こすかどうかを、決定するために有用である。これらの実験は、E.Kaftanら、Circulation Research、78、990−997頁(1996)で記述されるように行なわれ、その開示の内容は本明細書中で参考として援用される。単一チャンネル記録は、CsCl接合部を介して溶液と接触される一対のAg/AgCl電極を用いて、電圧固定条件下で行なわれる。ベシクルは、シスチャンバーに添加され、そしてホスファチジルエタノールアミン/ホスファチジルコリン(3:1、30mg/ml(デカン中)、Avanti Polar Lipids)で構成される平面脂質二層と融合される。トランスチャンバーは250mMのHEPESおよび53mMのBa(OH)2を含み(pH7.35);シスチャンバーは250mMのHEPES−Trisを含む(pH7.35)。メタノールに溶解した化合物はシスチャンバーに添加される。チャンネル電流は、二層固定増幅器(BC−525A、Warner
Instruments)を用いて増幅され、そしてVHSテープ(Dagen Corp.)に記録される。データは、8−極Besselフィルター(Frequency Devices)で500Hzにフィルターされ、2kHzでデジタル化され、パーソナルコンピュータに転送され、pClampバージョン6.0(Axon Instruments)を用いて分析される。単一チャンネル記録は、各化合物条件で少なくとも3回行なわれる。
【0035】
リアノジン結合は、36mMのトリス(pH7.2)および50mMのKClを含む緩衝液中で、試験化合物の非存在および存在下で、ミクロソームタンパク質を3H−リアノジンとインキュベートすることによって測定され得る。最大結合の制御は、0.72mMのATPおよび36μMのCaCl2の存在下で行なわれた。非特異的結合は、25μMの標識されていないリアノジンの存在下で測定された。結合反応は、室温で2時間インキュベートされ、次いで、30,000xgで15分間遠心分離した。ペレットを可溶化し、放射活性をシンチレーション計測によって測定した。
【0036】
あるいは、細胞質のCa2+の、細胞中への流れを、蛍光的に行い得る。例えば、ニューロン細胞は、NGFおよびカルシウム結合蛍光色素(例えばFura−2)とともに、カルシウム含有緩衝液中でインキュベートされ得る。細胞は、本発明の試験化合物の添加前および添加後の両方で連続して画像化される。次いで、化合物の添加前および添加後の蛍光強度の違いを、340nmおよび380nmで、蛍光単位の比としてプロットする。
【0037】
本発明の化合物を試験することにより、当該分野で公知のいくつかのアッセイを使用して達成され得て10μM以上のKiを有するFKBP12と結合することが確認される。特に、これらの化合物は、ロタマーゼを阻害する能力(またはその欠如)のためにアッセイされ得る。FKBP12ロタマーゼ活性の阻害を測定するアッセイの例は、人工的な基質−−N−スクシニル−Ala−Ala−Pro−Phe−p−ニトロアニリド−−の異性化が、分光光度的に行なわれるものである(M.W.Hardingら、Nature、341、758−60頁(1989);J.J.Siekierkaら、Nature、341、755−57頁(1989);およびS.T.Parkら、J.Biol.Chem.、267、3316−24頁(1992))。アッセイには、基質のシス形態、FKBP12、試験されるべき化合物およびキモトリプシンを含む。キモトリプシンは、基質のトランス形態からp−ニトロアニリドを切断することができるが、シス形態からはできない。p−ニトロアニリドの放出が測定される。
【0038】
他のFKBP結合アッセイには、リポートリガンドとして標識されたFK−506を使用する競合的LH20結合アッセイを含む。これらは、M.W.Hardingら、Nature、341、758−60頁(1989)およびJ.J.Siekierkaら、Nature、341、755−57頁(1989)によって記載される。
【0039】
本発明に従った化合物が必要なMDR比(7.0未満)を有するかどうかを決定するために、米国特許第5,543,423号、同第5,717,092号、同第5,726,184号または同第5,744,485号に記載されたいずれかのアッセイ(その開示の内容は、本明細書によって参考として援用される)が利用され得る。
【0040】
特に、特定の薬物に耐性のあることが公知の細胞系が使用される。これらの細胞系には、L1210、P388D、HL60およびMCF7細胞系が挙げられるがこれに限定されない。あるいは、耐性細胞系が発生され得る。細胞系は、耐性がある薬物かまたは試験化合物に曝露される;次いで、細胞の生存度が測定され、そして試験化合物の存在下で薬物に曝露された細胞の生存度と比較される(「MDR比」)。
【0041】
1つの実施態様によれば、本発明は以下の式の化合物およびその薬学的に受容可能な誘導体を提供する:
【0042】
【化8】

【0043】
ここで:
AおよびBは、独立して、水素、Ar、(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル、(C2〜C6)−直鎖あるいは分岐したアルケニルまたはアルキニル、(C5〜C7)−シクロアルキル置換−(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル、(C5〜C7)シクロアルキル置換−(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニル、(C5〜C7)−シクロアルケニル置換−(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル、(C5〜C7)−シクロアルケニル置換−(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニル、Ar−置換−(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル、あるいはAr−置換−(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニルから選択され;ここで、AまたはBにおける、上記アルキル、アルケニルまたはアルキニル鎖のCH2基のうちのいずれか1つは、O、S、S(O)、S(O)2またはN(R)で必要に応じて置き換えられる;ここで
Rは、水素、(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル、または(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニルから選択される;
Arは、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、インデニル、アズレニル、(azulenyl)、フルオレニル、アントラセニル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラキソリル(pyraxolyl)、2−ピラゾリニル、ピラゾリジニル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,3−トリアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,2,3−チアジアゾリル、ベンゾキサゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、1,3,5−トリアジニル、1,3,5−トリチアニル、インドリジニル、インドリル、イソインドリル、3H−インドリル、インドリニル、ベンゾ[b]フラニル、ベンゾ[b]チオフェニル、1H−インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、プリニル、4H−キノリジニル、キノリニル、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリニル、イソキノリニル、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリニル、シノリニル(cinnolinyl)、フタラジニル、キナゾリニル(quinazolinyl)、キノキサリニル(quinoxalinyl)、1,8−ナフチリジニル、ペリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニルまたはフェノキサジニル、あるいは他の化学的に可能な単環、二環または三環式環系から選択され、ここで各環は5個から7個の環原子からなり、ここで各環は独立して、N、N(R)、O、S、S(O)、またはS(O)2から選択される0〜3個のヘテロ原子を含み、そしてここで
各Arは、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、−SO3H、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル、(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルケニル、O−[(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル]、O−[(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルケニル]、O−ベンジル、O−フェニル、1,2−メチレンジオキシ、−N(R1)(R2)、カルボキシル、N−(C1〜C5−直鎖または分岐したアルキル、あるいはC2〜C5−直鎖または分岐したアルケニル)カルボキサミド、N,N−ジ−(C1〜C5−直鎖または分岐したアルキルまたはC2〜C5−直鎖または分岐したアルケニル)カルボキサミド、N−(C1〜C5−直鎖または分岐したアルキル、あるいはC2〜C5−直鎖または分岐したアルケニル)スルホンアミド、N,N−ジ−(C1〜C5−直鎖または分岐したアルキルまたはC2〜C5−直鎖または分岐したアルケニル)スルホンアミド、モルホリニル、ピペリジニル、O−Z、CH2−(CH2q−Z、O−(CH2q−Z、(CH2q−Z−O−Z、またはCH=CH−Zから独立して選択される1〜3個の置換基と必要に応じて置換される;
ここでR1およびR2は、(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル、(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニル、水素またはベンジルから独立して選択されるか;あるいはここでR1およびR2は窒素原子と一緒になって結合して5〜7員ヘテロ環式環を形成する;
Zは、4−メトキシフェニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、ピラジル、キノリル、3,5−ジメチルイソキサゾイル、イソキサゾイル、2−メチルチアゾイル、チアゾイル、2−チエニル、3−チエニル、またはピリミジルから選択される;そして
qは、0、1または2である;
Xは、N、OまたはC(R)である;
ここで、Xが、NまたはC(R)である場合、Yは、水素、Ar、(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル、(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニル、(C5〜C7)−シクロアルキル置換−(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル、(C5〜C7)シクロアルキル置換−(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニル、(C5〜C7)−シクロアルケニル置換−(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル、(C5〜C7)−シクロアルケニル置換−(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルキニルのアルケニル、Ar−置換−(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル、あるいはAr−置換−(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニルから選択される;
Xが、Oである場合、Yは孤立電子対である;
Kは、(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル、Ar−置換−(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル、(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニル、Ar−置換−(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニル、あるいはシクロヘキシルメチルから選択され;ここでKにおける上記アルキル、アルケニルまたはアルキニル鎖のCH2基のいずれか1つは必要に応じてO、S、S(O)、S(O)2またはN(R)で置換される;
nは、0、1または2である;
Jは、水素、(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル、(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニル、Ar−置換−(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル、Ar−置換−(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニル、またはシクロヘキシルメチルから選択される;そして
Dは、Ar、(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル、(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニル、(C5〜C7)−シクロアルキル置換−(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル、(C5〜C7)シクロアルキル置換−(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニル、(C5〜C7)−シクロアルケニル置換−(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル、(C5〜C7)−シクロアルケニル置換−(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルキニルのアルケニル、Ar−置換−(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル、あるいはAr−置換−(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニルから選択され;ここで、化合物においてSO2に直接結合したもの以外のDにおける上記アルキル鎖のCH2基のいずれか1つは、必要に応じてO、S、SO、SO2またはNRで置換される。
【0044】
式Iの1つの好ましい実施態様において、AおよびBは同時に水素であることはない。さらに好ましくは、AおよびBのうち少なくとも1つが末端をAr(これ自体置換されているかまたは未置換である)で置換された(C1〜C6)−直鎖アルキルである場合である。さらに好ましくは、AおよびBのうち少なくとも1つは、末端をピリジン(これ自体置換されているかまたは未置換である)で置換された(C1〜C6)−直鎖アルキルである。
【0045】
別の好ましい式Iの実施態様によれば、Xは窒素または酸素である。
【0046】
別の好ましい式Iの実施態様では、Jは、(C1〜C3)−直鎖アルキルである。
【0047】
なお別の好ましい式Iの実施態様では、Kは、Ar−置換(C1〜C3)−直鎖アルキルである。さらに好ましくは、Kが末端を未置換のフェニルで置換された(C1〜C3)−直鎖アルキルである場合である。
【0048】
別の好ましい式Iの実施態様によれば、Dは、(C1〜C6)直鎖または分岐したアルキル、Ar、Ar−置換(C1〜C6)直鎖または分岐したアルキル、Ar−置換(C2〜C6)直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニル、あるいは−CH2−S(O)2−(C1〜C4)直鎖または分岐したアルキルから選択される。
【0049】
さらに好ましくは、Dは、アミノフェニル、ニトロフェニル、イソプロピル、ベンジル、フルオロフェニル、シアノフェニル、メトキシフェニル、ジメトキシフェニル、メチルスルホニルメチル、エチレンフェニル、ジニトロアニリノフェニル、N,N−ジメチルアミノフェニルアゾフェニルN,N−ジメチルアミノナフチルまたはアセトアミドフェニルから選択される。
【0050】
もっとも好ましくは、Dは、4−アミノフェニル、2−ニトロフェニル、メチルスルホニルメチル、ベンジル、エチレンフェニル、4−フルオロフェニル、4−シアノフェニル、3,4−ジメトキシフェニル、4−メトキシフェニル、4−(2,4−ジニトロアニリノ)フェニル、4−((4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル)アゾ)フェニル、5−(N,N−ジメチルアミノ)ナフチルまたは4−アセトアミドフェニルら選択される。
【0051】
別の好ましい実施態様によれば、Yはメチルである。
【0052】
別の好ましい実施態様において、nは0である。
【0053】
別の実施態様によれば、本発明は、以下の式の化合物およびそれらの薬学的に受容可能な誘導体を提供する:
【0054】
【化9】

【0055】
ここでA、B、Y、D、nおよびそれらの小成分は上記で定義した通りである;
mは、0、1または2である;
n+mは、0より大きく、4未満である;
式IIにおいて示された環は、飽和、部分的に不飽和または不飽和である;
式IIの環における1個〜2個の炭素原子は、独立してO、S、S(O)、S(O)2またはNRから選択されるヘテロ原子で必要に応じて置換される;そして
式IIの上記環は、必要に応じてベンゾ縮合されている(benzofused)。
【0056】
好ましくは、式IIにおいて、nは0であり、mは2であり、そしてその環は完全に飽和している。
【0057】
別の好ましい式IIの実施態様によれば、上記環の1つの炭素は、必要に応じてO、S、SOまたはSO2から選択されるヘテロ原子で置換される。
【0058】
式IIの化合物における個々の構成成分についての好ましい実施態様は、式Iの化合物について上記のものと同じである。
もっとも好ましい式IおよびIIの化合物は、以下の表1および2に記載される:
【0059】
【表4】

【0060】

【0061】
【表5】

【0062】
本発明の別の実施態様によれば、以下の式の化合物およびそれらの薬学的に受容可能な誘導体が提供される;
【0063】
【化10】

【0064】
ここで:
A、B、X、Y、K、J、nおよびそれらの小成分は、式Iの化合物について上記で定義されたとおりである;そして
3は、(C1〜C6)−直鎖または分岐したアルキル、Ar−置換−(C1〜C6)直鎖または分岐したアルキル、(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニル、あるいはAr−置換−(C2〜C6)−直鎖または分岐したアルケニルまたはアルキニルであり;ここでR3における上記アルキル、アルケニルまたはアルキニル鎖のCH2基のいずれか1つは、O、S、S(O)、S(O)2またはN(R)で必要に応じて置換され;そしてここで窒素に結合しているCH2基をのぞいて、R3における上記アルキル、アルケニルまたはアルキニルのCH2基のいずれか1つは、必要に応じてC(O)で置換される。
【0065】
別の実施態様によれば、本発明は以下の式の化合物およびそれらの薬学的に受容可能な誘導体を提供する;
【0066】
【化11】

【0067】
ここで:
A、B、X、Y、n、m、およびそれらの小成分は、式(II)の化合物について定義されたとおりである;そして
3は、式(III)の化合物について定義されたとおりであるが、ただし式(IV)においてはnが0でありmが1のである場合、R3のアルキル、アルケニルまたはアルキニル鎖における第2のCH2基はC(O)で置換されない。
【0068】
用語「R3のアルキル鎖における第2のCH2基」は窒素と結合しているCH2の隣のCH2基をいう(以下の式において太字で示す);
【0069】
【化12】

【0070】
好ましくは、式IIIおよびIVの化合物においてAまたはBの少なくとも1つは、Ar−置換(C1〜C6)−アルキル鎖である。さらにより好ましくは、AまたはBの少なくとも1つが末端をフェニルまたはピリジニルで置換された(C1〜C6)アルキル鎖である場合である。
【0071】
式IIIまたはIVの化合物における別の好ましい実施態様によれば、XはNまたはOである。
【0072】
なお別の好ましい実施態様によれば、式IIIの化合物において、Kは、Ar−置換アルキル、アルケニルまたはアルキニルである。さらに好ましくは、Kはベンジルである。
【0073】
別の好ましい実施態様によれば、式IIIの化合物において、Jは、水素またはアルキル、好ましくはメチルである。
【0074】
式IIIおよびIVの化合物において、R3は好ましくは、水素、(C1〜C6)−アルキル、ピリジルで末端を置換された(C1〜C6)−アルキル、または3,4,5−トリメチルオキシベンゾイルメチル(trimethyoxybenzoylmethyl)である。
【0075】
式IIIの好ましい実施態様において、nは0である。
【0076】
好ましい実施態様において、式IVにおいて示される環は、完全に飽和している。
【0077】
式IVの化合物の別の好ましい実施態様において、m+nは1または2である。さらにより好ましくは、nが0でありmが1または2である場合である。もっとも好ましくは、nは0でありmは2である。
【0078】
もっとも好ましい式IIIおよび式IVの化合物は、以下の表に列挙され、ならびに実施例で記載される:
【0079】
【表6】

【0080】
本発明は、式I〜IVの化合物の全ての光学異性体およびラセミ異性体、ならびにその薬学的に受容可能なそれらの誘導体を包含する。
【0081】
本明細書中で使用される「薬学的に受容可能な誘導体」とは、ニューロン活性によって特徴付けられる、本発明の化合物あるいは患者への投与の際に本発明の化合物を(直接的にかまたは間接的に)提供し得る任意の他の化合物の、任意の薬学的に受容可能な塩、エステル、プロドラッグ、またはこのようなエステルもしくはプロドラッグの塩、あるいはその代謝物または残渣を示す。
【0082】
驚くべきことでありかつ予想外のことに、本発明の式(I)〜(IV)の化合物は、FKBPには結合せず、そのロタマーゼ(rotamase)活性を阻害せず、そして免疫抑制性ではない。さらに、本発明の化合物は、多剤耐性を逆転させることが公知である化合物に対して、いくらかの構造的類似点を保有するが(米国特許第5,543,423号、WO 95/26337およびWO 94/07858)、本発明の化合物はMDRに対する活性は有さないようである。それゆえ、本発明において開示される化合物は、有利なことに、構造的に類似の化合物によって影響されることが公知である他の経路を干渉することなくニューロン活性を有する。
【0083】
本発明の化合物の神経成長活性は、最初に、当該分野で公知のいくつかの細胞培養アッセイを使用してアッセイされ得る。例えば、本発明の化合物は、Lyonsら、PNAS、91、3191〜3195頁(1994)により記載される、クロム親和性細胞腫PC12細胞を用いる神経突起成長アッセイにおいて試験され得る。類似のアッセイが、SH−SY5Yヒト神経芽腫細胞において実施され得る。あるいは、米国特許第5,614,547号またはG.S.Hamiltonら、Bioorg.Med.Chem.Lett.、(1997)および本明細書中に引用される参考文献に記載されるヒナドリ後根神経節アッセイが利用され得る。
【0084】
本発明の化合物はまた、パーキンソン病のマウスモデル(J.P.Steinerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,94,2019〜23頁(1997)、米国特許第5,721,256号)か、または以下のラットにおける外科的座骨神経挫傷を使用してインビボの神経成長活性についてアッセイされ得る。
【0085】
別の実施態様に従って、本発明は、式(I)〜(IV)のいずれかの化合物および薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物を提供する。好ましくは、本発明の化合物は、哺乳動物への投与のために処方される(すなわち、薬学的組成物)。
【0086】
本発明の化合物の薬学的に受容可能な塩がこれらの組成物中で利用される場合、好ましくは、これらの塩は無機酸または有機酸および塩基に由来する。このような酸の塩には、以下のものが包含される:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、カンホレート(camphorate)、カンファースルホン酸塩(camphorsulfonate)、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パルモエート(palmoate)、ペクチン酸塩(pectinate)、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバレート(pivalate)、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩(tosylate)およびウンデカン酸塩。他の酸(例えば、シュウ酸)は、それ自体は薬学的に受容可能ではないが、本発明の化合物を得る際の中間体として有用な塩の調製物において、およびそれらの薬学的に受容可能な酸付加塩において使用され得る。
【0087】
塩基性の塩には、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウムおよびカリウム塩)、アリカリ土類金属塩(例えば、カルシウムおよびマグネシウム塩)、有機塩基を有する塩(例えば、ジシクロヘキシルアミン塩)、N−メチル−D−グルカミン、ならびにアミノ酸を有する塩(アルギニン、リジンなど)、およびN−(C14アルキル)4塩が挙げられる。
【0088】
また、塩基性窒素含有基は、低級アルキルハロゲン化物、例えば、メチル、エチル、プロピル、およびブチルの塩化物、臭化物およびヨウ化物;スルホン酸ジアルキル、例えばスルホン酸ジメチル、スルホン酸ジエチル、スルホン酸ジブチルおよびスルホン酸ジアミル、長鎖ハロゲン化物、例えばデシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリルの塩化物、臭化物およびヨウ化物、アラルキルハロゲン化物、例えばベンジルおよびフェネチルの臭化物などの試剤よって四級化され得る。これにより、水溶性または油溶性または分散可能な生成物が得られる。
【0089】
本発明の組成物および方法中で使用される化合物は、選択的な生物学的特性を増強するための追加の適切な官能基によっても修飾され得る。このような修飾は当該分野で公知であり、そして所与の生物学的系(例えば、血液、リンパ系、中枢神経系)への生物学的浸透を高める修飾、経口アベイラビリティを高める修飾、注射による投与を可能とするために溶解性を高める修飾、代謝を変化させる修飾および排泄の速度を変化させる修飾が挙げられる。
【0090】
これらの薬学的組成物に使用され得る薬学的に受容可能なキャリアには、イオン交換剤(ion exchanger)、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、自己乳化剤送達システム(SEDDS)(例えば、dα−トコフェロール、ポリエチレングリコール1000スクシネートまたはTPGS)、薬学的投与形態に使用される界面活性剤(例えば、Tweensまたは他の類似のポリマー性送達マトリックス)、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、ゼラチン、緩衝物質(例えば、リン酸塩)、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸ナトリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリ乳酸、ポリ酢酸ポリグリコール酸、クエン酸、セルロースベースの物質、例えば、HPCおよびHPMC、ポリエチレングリコール、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、蝋、ポリエチレンーポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール、および羊毛脂が挙げられるがこれらに限定されない。シクロデキストリン(例えば、α−、β−およびγ−シクロデキストリン)または化学的に修飾された誘導体(例えば、ヒドロキシアルキルシクロデキストリン(これは2−および3−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを含む))、または他の可溶化された誘導体もまた、本発明の化合物の、化合物の送達を増強するために有利に使用され得る。
【0091】
別の実施態様にしたがって、本発明の薬学的組成物はさらに神経栄養因子を含む。用語「神経栄養因子」は本明細書で使用される場合、神経組織の成長または増殖を刺激することができる化合物をいう。本出願で使用される場合、用語「神経栄養因子」は本明細書中に記載の化合物を除外する。
【0092】
多くの神経栄養因子が当該分野で同定されており、そしてこれらの因子のいずれもが本発明の組成物で使用され得る。これらの神経栄養因子としては、神経成長因子(NGF)、インスリン成長因子(IGF−1)、およびその活性短縮型誘導体、例えばgIGF−1、酸性および塩基性線維芽細胞成長因子(各々、aFGFおよびbFGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)、ニューロトロフィン(neurotrophin)−3(NT−3)、ニューロトロフィン4/5(NT−4/5)またはWO 97/36869、WO 96/41609、WO 97/16190、WO 96/40633、WO 97/18828、WO 96/40140またはWO98/13355に記載される化合物のいずれかが挙げられるがこれらに限定されない。本発明の組成物における最も好ましい神経栄養因子はNGFである。
【0093】
本発明の組成物は、経口的、非経口的、吸入スプレーによって、局所的、直腸的、経鼻的、頬的、膣的に、あるいは移植されたリザーバによって投与され得る。用語「非経口」は本明細書で使用される場合、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑膜内、胸骨内、包膜内、肝臓内、病巣内および頭蓋内に注入または灌流する技術を包含する。好ましくは、組成物は経口的、腹腔内的、または静脈内的に投与される。
【0094】
本発明の薬学的組成物には、任意の通常の非毒性の薬学的に受容可能なキャリア、アジュバントまたはビヒクルを含み得る。いくつかの場合において、処方物のpHは、処方された化合物またはその送達形態の安定性を増強するために、薬学的に受容可能な酸、塩基または緩衝剤で調整され得る。
【0095】
本発明の組成物の滅菌注射剤の形態は、水性または油性の懸濁液であり得る。これらの懸濁液は当該分野で公知の技術に従って、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて処方され得る。滅菌注射製剤はまた、非毒性の非経口的に受容可能な希釈剤または溶媒(例えば1,3−ブタンジオール中の溶液)中の滅菌注射用溶液または懸濁液であり得る。用いられ得る受容可能なビヒクルおよび溶媒には、水、リンゲル液および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌された不揮発性油が従来、溶媒または懸濁媒体として使用される。この目的のために、任意の刺激の少ない不揮発性油が使用され得、これには合成のモノまたはジ−グリセリドが包含される。脂肪酸、例えばオレイン酸およびそのグリセリド誘導体が注射剤の調製に有用である(例えば、天然の薬学的に受容可能な油(例えば、オリーブ油またはヒマシ油)、特にそのポリオキシエチル化体である)。これらの油溶液または懸濁液はまた、長鎖アルコール希釈剤または分散剤、例えば、Ph. Helvまたは同様のアルコールを含み得る。
【0096】
本発明の薬学的組成物は、任意の経口的に受容可能な剤形で経口投与され得る。この剤形としては、カプセル剤、錠剤、水性懸濁液または溶液が挙げられるがこれらに限定されない。経口的に使用される錠剤の場合、通常使用されるキャリアとしては乳糖、コーンスターチおよびリン酸二カルシウムおよび微細結晶セルロース(Avicel)が挙げられる。ステアリン酸マグネシウムおよびタルクのような潤滑剤もまた典型的に添加される。カプセル形態での経口投与のためには、有用な希釈剤としては乳糖、乾燥コーンスターチおよびTPGSならびに他の錠剤で使用される他の希釈剤が挙げられる。軟ゼラチンカプセル形態での経口投与のため(本発明の化合物の懸濁液または溶液のいずれかが充填される)に、有用な希釈剤には、PEG400、TPGS、プロピレングリコール、Labrasol、Gelucire、Transcutol、PVPおよび酢酸カリウムが挙げられる。水性懸濁液が経口的に投与される場合、活性成分は乳化剤および懸濁剤(例えば、CMCナトリウム、メチルセルロース、ペクチンおよびゼラチン)と組み合わされる。所望であれば、特定の甘味剤および/または香味剤および/または着色剤もまた添加され得る。
【0097】
あるいは、本発明の薬学的組成物は直腸投与のための坐剤の形態で投与され得る。これらは薬剤を、室温で固体であるが直腸温度で液体であり、そのため直腸内で溶解して薬物を放出する適切な非刺激性の賦形剤と混合することによって調製され得る。このような物質としては、ココアバター、蜜ろう、ゼラチン、グリセリンおよびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0098】
本発明の薬学的組成物はまた、特に処置の標的が局所適用で容易に接近可能な領域または器官を含む場合、局所投与され得る。この処置の標的は、眼、皮膚、または下部消化管の疾患を包含する。適切な局所的処方物は、各々のこのような領域または器官のために容易に調製される。
【0099】
下部消化管のための局所適用は、直腸座薬処方物(上記を参照)または適切な浣腸処方物で達成され得る。局所経皮パッチもまた使用され得る。
【0100】
局所適用のために、薬学的組成物は適切な軟膏として処方され得、これは1つまたはそれ以上の担体に懸濁または溶解した活性成分を含む。本発明の化合物の局所投与のための担体としては、鉱物油、液体ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス、ステアリン酸、ステアリン酸セチル、セチルアルコール、ラノリン、水酸化マグネシウム、カオリンおよび水が挙げられるがこれらに限定されない。あるいは、薬学的組成物は適切なローションまたはクリームとして処方され得、これは1つまたはそれ以上の薬学的に受容可能な担体中に懸濁または溶解された活性成分を含む。適切な担体としては鉱物油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステル、ワックス、セチルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が挙げられるがこれらに限定されない。
【0101】
眼科的使用のためには、薬学的組成物は等張性のpH調節された滅菌生理食塩水中の微細化された(micronized)懸濁液、または好ましくは等張性のpH調節された滅菌生理食塩水中の溶液として処方され得る。これらは塩化ベンジルアルコニウムのような防腐剤を含むまたは含まない。あるいは、眼科的使用のために、薬学的組成物はワセリンのような軟膏として処方され得る。
【0102】
本発明の薬学的組成物はまた経鼻エアロゾルまたは吸入によって投与され得る。このような組成物は薬剤処方の分野で周知の技術によって調製され、そして生理食塩水の溶液として、ベンジルアルコールまたは他の適切な防腐剤、バイオアベイラビリティを増強するための吸収促進剤、フッ化炭素、および/または従来の可溶化剤または分散剤を用いて調製され得る。
【0103】
キャリア物質と組み合わされて単一剤形を産生し得る化合物および神経栄養因子(神経栄養因子を含む組成物中の)の両方の量は、処置される宿主、特定の投与様式に応じて変化する。好ましくは、本発明の組成物は、本発明の化合物の0.01〜10mg/kg体重/日の間の用量が投与され得るように処方されるべきである。より好ましくは、用量は、0.1〜10mg/kg体重/日の間である。
【0104】
神経栄養因子を含むこれらの組成物において、これらの因子および本発明の化合物は相乗的に作用して、神経突起の成長を刺激するかまたは神経変性を予防する。それゆえ、このような組成物中の神経栄養因子の量は、このような因子のみを利用する単独療法で必要とされるよりも少ない。このような組成物において、0.01〜10mg/kg体重/日の間の用量の神経栄養因子が投与され得る。
【0105】
任意の特定の患者のための特定の用量および処置療法は、種々の因子(使用される特定の化合物の活性、年齢、体重、全般的な健康、性別、食餌、投与時間、排泄速度、薬剤の組み合わせ、ならびに処置する医師の判定および処置される特定の疾患の重篤度を包含する)に依存することが理解されるべきである。活性成分の量はまた組成物中の個別の化合物および神経栄養因子に依存する。
【0106】
他の実施態様によれば、本発明は神経突起の成長および神経成長を刺激するための方法ならびに神経変性を予防する方法を提供する。この実施態様の1つの局面では、この方法は患者の神経突起の成長および神経増殖を刺激ならびに神経変性を予防するために使用され、そして患者に、本発明の任意の化合物および薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的に受容可能な組成物を投与することによって達成される。これらの方法で使用される化合物の量は、約0.01mg/kg体重/日と10mg/kg体重/日との間である。
【0107】
この方法は、広域な種類の疾患または物理的外傷によって引き起こされた神経の損傷を処置するため、および神経変性を予防するために使用され得る。これらには、三叉神経痛、舌咽神経痛、ベル麻痺、重症筋無力症、筋ジストロフィー、筋肉損傷、進行性筋萎縮、進行性延髄遺伝性筋萎縮、ヘルニア、破裂性または脱無脊椎椎間板症候群、頸椎症、叢障害、胸郭出口破壊症候群、末梢ニューロパシー、例えば、鉛、ダプソン、チックまたはポルフィリン症によって引き起こされるもの、他の末梢ミエリン障害、アルツハイマー病、Gullain−Barre症候群、パーキンソン病および他のパーキンソン障害、ALS、多発性硬化症、他の中枢ミエリン障害、脳卒中および脳卒中に関連する虚血、神経周囲疾患(neural paropathy)、他の神経変性性疾患、運動神経疾患、座骨挫滅、糖尿病に関連する神経障害、脊髄損傷、顔面神経挫滅および他の外傷、化学療法および他の投薬誘導性ニューロパシーならびにハンチントン病が挙げられるがそれらに限定されない。
【0108】
この実施態様の他の局面では、この方法はエキソビボでの神経の成長を刺激するために使用される。この局面のために、上記の化合物または組成物は、培養中の神経細胞に直接適用され得る。本発明のこの局面はエキソビボでの神経再生のために有用である。
【0109】
別の実施態様によれば、神経突起の成長の刺激方法または神経変性の予防方法は、患者または培養中のエキソビボ神経細胞を神経栄養因子(例えば、上記の本発明の組成物中に含まれる神経栄養因子)で処置するさらなる工程を含む。この実施態様は、化合物および神経栄養性剤を、患者に投与すべきときに、単一剤形または分離した多回剤形で投与する工程を包含する。分離した剤形が利用される場合、これらの剤形は同時、継続的、または互いに約5時間未満以内で投与され得る。
【0110】
本明細書に記載される発明をより完全に理解し得るために、以下の実施例を記述する。これらの実施例は例示のみの目的のためであり、本発明をいかなる様式にも限定すると解釈されるべきではないことが理解されるべきである。
【0111】
(全般的方法)
プロトン核磁気共鳴(1H NMR)スペクトルを500MHzで、Bruker AMX 500で記録した。化学シフトはMe4Siに対する百万分率で報告される。分析的高速液体クロマトグラフィーはHewlett Packard 1050液体クロマトグラフで行われた。
【0112】
(実施例1)
N−(4−アミノベンゼンスルホンアミド)−(S)−ピペリジン−2−カルボン酸−2−((N−メチル)−2−ピリジルエチル)アミド
N−(4−アミノベンゼンスルホンアミド)−(S)−ピペリジン−2−カルボン酸−2−((N−メチル)−2−ピリジルエチル)アミド(化合物1)の合成を、以下で示す。
【0113】
A.(S)−ピペリジン−1,2−ジカルボン酸−1−(Tert−ブチルエステル)−2−((N メチル)−2−ピリジニルエチル)アミド。
【0114】
【化13】

【0115】
(S)−ピペリジン−1,2−ジカルボン酸 1−tert−ブチルエステル(5.0g、21.8 mmol)の塩化メチレン(50 ml)溶液に、EDC(6.0g、191.71、31.2 mmol)を添加し、続いて、2−(2−メチルアミノエチル)ピリジン(3.0g、22 mmol)を添加した。この混合物を、室温で、24時間攪拌させた。
【0116】
この溶液を、酢酸エチル200 mlおよび水(50 ml)で希釈した。その水層を、pH 12〜13に達するまで、2N NaOHの添加により、塩基性にした。分離した有機物を、無水MgSO4で乾燥し、そして減圧下にて濃縮した。その粗生成物を、中圧液体クロマトグラフィー(これは、1:99のメタノール/塩化メチレンに続いて2:98のメタノール/塩化メチレン溶液の勾配溶媒系を使用する)により精製して、無色のオイルとして、表題化合物3.8g(収率50%)を得た。TLC:Rf=0.49(5:95のメタノール/塩化メチレン)、構造に一致した[1H]−NMR(CDCl3)。
【0117】
B.(S)−ピペリジン−2−カルボン酸−2−((N メチル)−2−ピリジルエチル)アミド。
【0118】
【化14】

【0119】
塩化メチレン(25 ml)中のA部の化合物(3.8g、10.9 mmol)に、トリフルオロ酢酸(10 ml、130 mmol)を添加した。この混合物を、室温で、2時間攪拌させた。この溶液を、減圧下にて、乾燥状態まで濃縮した。その残留物を酢酸エチル(200 ml)および水(50 ml)中に取った。その水層を、pH 14〜15に達するまで、2N NaOHの添加により、塩基性にした。
【0120】
分離した有機物を、無水MgSO4で乾燥し、そして減圧下にて濃縮した。その粗生成物を、中圧液体クロマトグラフィー(これは、1:99のメタノール/塩化メチレンに続いて1:10:90のNH4OH/メタノール/塩化メチレンの勾配溶媒系を使用する)により精製して、無色のオイルとして、表題化合物2.2g(収率81%)を得た。TLC:Rf=0.11(1:10:90のNH4OH/メタノール/塩化メチレン)、HPLC:Rt=5.22分、構造に一致した[1H]−NMR(CDCl3)。
【0121】
C.N−(4−ニトロベンゼンスルホンアミド)−(S)−ピペリジン−2−カルボン酸−2−((N メチル)−2−ピリジルエチル)アミド。
【0122】
【化15】

【0123】
塩化メチレン(5 ml)中のB部の化合物(200 mg、0.81 mmol)の溶液に、トリエチルアミン(2.0 ml、101.19、19.8 mmol)を添加し、続いて、4−ニトロベンゼンスルホニルクロライド(260 mg、1.22 mmol)を添加した。この混合物を、室温で、24時間攪拌させた。この溶液を、酢酸エチル100 mlおよび重炭酸ナトリウム飽和溶液(50 ml)で希釈した。分離した有機物を、無水MgSO4で乾燥し、そして減圧下にて濃縮した。その粗生成物を、中圧液体クロマトグラフィー(これは、塩化メチレンに続いて1:99のメタノール/塩化メチレン溶液の勾配溶媒系を使用する)により精製して、黄色がかったオイルとして、表題化合物273 mg(収率78%)を得た。TLC:Rf=0.57(5:95のメタノール/塩化メチレン)、構造に一致した[1H]−NMR(CDCl3)。
【0124】
D.N−(4−アミノベンゼンスルホンアミド)−(S)−ピペリジン−2−カルボン酸−2−((N−メチル)−2−ピリジルエチル)アミド(化合物1)。
【0125】
【化16】

【0126】
酢酸エチル(10 ml)およびエタノール(10 ml)中の工程Cに由来の化合物(273 mg、0.63 mmol)の溶液を、室温にて、炭素担持の10%パラジウム150 mgで処理し、そして水素の僅かな陽圧下にて、24時間水素化した。この混合物を濾過し、そして真空中で濃縮し、その粗生成物を、中圧液体クロマトグラフィー(これは、塩化メチレンに続いて、2:98のメタノール/塩化メチレンに続いて0.5:5:95のNH4OH/メタノール/塩化メチレン溶液を溶媒系として使用する)により精製して、黄色がかったオイルとして、表題化合物102 mg(収率40%)を得た。TLC:Rf=0.36(1:10:90のNH4OH/メタノール/塩化メチレン)、HPLC:Rt=6.86分、構造に一致した[1H]−NMR(CDCl3)。
【0127】
(実施例2)
(S)−(N−メチル)−2−(メチル−(4−アミノ−ベンゼンスルファニルアミド))−3−フェニル−N−(2−(ピリジン−2−イル)エチル)プロピオンアミド
(S)−(N−メチル)−2−(メチル−(4−アミノベンゼンスルファニルアミド))−3−フェニル−N−(2−(ピリジン−2−イル)エチル)プロピオンアミド(化合物2)の合成を、以下で示す。
【0128】
A.(N−メチル)−2−(メチル−2−(tertブチルオキシカルボニル)アミノ−3−フェニル−N−(3−ピリジン−4−イル)−プロピルブチルプロピオンアミド。
【0129】
【化17】

【0130】
Boc−(N−メチル)フェニルアラニン(5.0g、17.8 mmol)の塩化メチレン(50 ml)溶液に、EDC(6.0g、191.71、31.2 mmol)を添加し、続いて、2−(2−メチルアミノエチル)ピリジン(2.5g、18.4 mmol)を添加した。この混合物を、室温で、24時間攪拌させた。この溶液を、酢酸エチル200 mlおよび水(50 ml)で希釈した。その水層を、pH 12に達するまで、2N NaOHの添加により、塩基性にした。分離した有機物を、無水MgSO4で乾燥し、そして減圧下にて濃縮した。その粗生成物を、中圧液体クロマトグラフィー(これは、1:99のメタノール/塩化メチレンに続いて2:98のメタノール/塩化メチレン溶液の勾配溶媒系を使用する)により精製して、無色のオイルとして、表題化合物2.83g(収率40%)を得た。TLC:Rf=0.56(5:95のメタノール/塩化メチレン)、構造に一致した[1H]−NMR(CDCl3)。
【0131】
B. (N−メチル)−2−(メチルアミノ)−3−フェニル−N−(2−(ピリジン−2−イル)エチル)プロピオンアミド。
【0132】
【化18】

【0133】
塩化メチレン(25 ml)中の工程Aに由来の化合物(2.83g、7.1
mmol)に、トリフルオロ酢酸(10 ml、130 mmol)を添加した。この混合物を、室温で、2時間攪拌させた。この溶液を、減圧下にて、乾燥状態まで濃縮した。その残留物を酢酸エチル(200 ml)および水(50 ml)中に取った。その水層を、pH 14〜15に達するまで、2N NaOHの添加により、塩基性にした。
【0134】
分離した有機物を、無水MgSO4で乾燥し、そして減圧下にて濃縮した。その粗生成物を、中圧液体クロマトグラフィー(これは、1:99のメタノール/塩化メチレンに続いて1:10:90のNH4OH/メタノール/塩化メチレンの勾配溶媒系を使用する)により精製して、無色のオイルとして、表題化合物1.53g(収率75%)を得た。TLC:Rf=0.70(1:10:90のNH4OH/メタノール/塩化メチレン)、HPLC:Rt=5.54分、構造に一致した[1H]−NMR(CDCl3)。
【0135】
C. (S)−(N−メチル)−2−(メチル−(4−ニトロ−ベンゼンスルファニルアミド))−3−フェニル−N−(2−(ピリジン−2イル)エチル)プロピオンアミド。
【0136】
【化19】

【0137】
塩化メチレン(15 ml)中の工程Bに由来の化合物(300 mg、1.05 mmol)の溶液に、トリエチルアミン(2.0 ml、101.19、19.8 mmol)を添加し、続いて、4−ニトロベンゼンスルホニルクロライド(330 mg、1.56 mmol)を添加した。この混合物を、室温で、24時間攪拌させた。この溶液を、酢酸エチル100 mlおよび重炭酸ナトリウム飽和溶液(50 ml)で希釈した。分離した有機物を、無水MgSO4で乾燥し、そして減圧下にて濃縮した。その粗生成物を、中圧液体クロマトグラフィー(これは、塩化メチレンに続いて1:99のメタノール/塩化メチレン溶液の勾配溶媒系を使用する)により精製して、黄色がかったオイルとして、表題化合物453 mg(収率89%)を得た。TLC:Rf=0.63(5:95のメタノール/塩化メチレン)、構造に一致した[1H]−NMR(CDCl3)。
【0138】
D.(S)−(N−メチル)−2−(メチル−(4−アミノ−ベンゼンスルファニルアミド))−3−フェニル−N−(2−(ピリジン−2イル)エチル)プロピオンアミド(化合物2)
【0139】
【化20】

【0140】
工程Cに由来の化合物(453 mg、0.94 mmol)の酢酸エチル(20 ml)溶液を、室温にて、炭素担持の10%パラジウム150 mgで処理し、そして水素の僅かな陽圧下にて、24時間水素化した。この混合物を濾過し、そして真空中で濃縮し、その粗生成物を、中圧液体クロマトグラフィー(これは、2:98のメタノール/塩化メチレンに続いて0.5:5:95のNH4OH/メタノール/塩化メチレン溶液を溶媒系として使用する)により精製して、黄色がかったオイルとして、表題化合物194 mg(収率46%)を得た。TLC:Rf=0.46(1:10:90のNH4OH/メタノール/塩化メチレン)、HPLC:Rt=9.04分、構造に一致した[1H]−NMR(CDCl3)。
【0141】
(実施例3)
N−(4−ニトロベンゼンスルホンアミド)−(S)−ピペリジン−2−カルボン酸−((N メチル)−3−(ピリジン−3−イル)プロピル)アミド
N−(4−ニトロベンゼンスルホンアミド)−(S)−ピペリジン−2−カルボン酸−((N−メチル)−3−(ピリジン−3−イル)プロピル)アミド(化合物3)の合成を、以下で示す。
【0142】
A.3−(3−ブロモプロピル)−ピリジン。
【0143】
【化21】

【0144】
3−ピリジンプロパノール(9.50g、69.3 mmol)のDMF(50 ml)溶液に、トリフェニルホスフィン(20.0g、76.2 mmol)を添加し、続いて、臭素(5.4 ml、104 mmol)を添加した。この混合物を、室温で、48時間攪拌させた。この溶液を、水200 mlで希釈し、その水層を、pH 12〜13に達するまで、2N NaOHの添加により、塩基性にした。その有機物を、酢酸エチル(200 ml)中に取った。分離した有機物を無水MgSO4で乾燥し、そして減圧下にて濃縮した。その粗生成物を、中圧液体クロマトグラフィー(これは、塩化メチレンに続いて1:99のメタノール/塩化メチレン溶液の勾配溶媒系を使用する)により精製して、黄色がかった橙色のオイルとして、表題化合物11.8g(収率85%)を得た。TLC:Rf=0.8(3:97のメタノール/塩化メチレン)、構造に一致した[1H]−NMR(CDCl3)。
【0145】
B. N−メチル−3−(3−アミノプロピル)−ピリジン。
【0146】
【化22】

【0147】
工程Aに由来の化合物(11.8g、59 mmol)のメタノール(50 ml)溶液に、飽和するまで、10〜15分間にわたって、N−メチルアミン気体をバブリングした。フラスコを密封し、この混合物を、室温で、一晩攪拌させた。この混合物を、真空中で乾燥し、その残留物を酢酸エチルおよび水中に取った。その水層を、pH 14〜15に達するまで、2N NaOHの添加により、塩基性にした。有機物を酢酸エチル中に取った。分離した有機物を、無水MgSO4で乾燥し、そして減圧下にて濃縮した。その粗生成物を、中圧液体クロマトグラフィー(これは、塩化メチレン、続いて5:95のメタノール/塩化メチレン、続いて1:10:90のNH4OH/メタノール/塩化メチレン溶液を溶媒系として使用する)により精製して、無色のオイルとして、表題化合物3.2g(収率36%)を得た。TLC:Rf=0.14(1:10:90のNH4OH/メタノール/塩化メチレン)、構造に一致した[1H]−NMR(CDCl3)。
【0148】
C. N−メチル−(S)−ピペリジン−1,2−ジカルボン酸−1−(tert−ブチルエステル)−3−((ピリジン−3−イル)プロピル)アミド。
【0149】
【化23】

【0150】
(S)−ピペリジン−1,2−ジカルボン酸 1−tert−ブチルエステル(2.28g、9.9 mmol)の塩化メチレン(30 ml)溶液に、EDC(2.0g、191.71、10.4 mmol)を添加し、続いて、工程Bに由来の化合物(11.8g、59 mmol)を添加した。この混合物を、室温で、24時間攪拌させた。この溶液を、酢酸エチル200 mlおよび重炭酸ナトリウム飽和溶液(50 ml)で希釈した。分離した有機物を、無水MgSO4で乾燥し、そして減圧下にて濃縮した。
【0151】
その粗生成物を、中圧液体クロマトグラフィー(これは、1:99のメタノール/塩化メチレンに続いて5:95のメタノール/塩化メチレン溶液の勾配溶媒系を使用する)により精製して、無色のオイルとして、表題化合物1.2g(収率33%)を得た。TLC:Rf=0.28(5:95のメタノール/塩化メチレン)、構造に一致した[1H]−NMR(CDCl3)。
【0152】
D.(S)−ピペリジン−2−カルボン酸−((N−メチル)−3−(ピリジン−3−イル)プロピル)アミド
【0153】
【化24】

【0154】
塩化メチレン(20 mL)中の工程Cに由来の化合物(1.2g、3.3 mmol)に、トリフルオロ酢酸(10 ml、130 mmol)を添加した。この混合物を、室温で、3時間攪拌させた。この溶液を、減圧下にて、乾燥状態まで濃縮した。その残留物を酢酸エチル(200 ml)および2N NaOH(50 ml)中に取った。分離した有機物を、無水MgSO4で乾燥し、そして減圧下にて濃縮した。その粗生成物を、中圧液体クロマトグラフィー(これは、5:95のメタノール/塩化メチレンに続いて1:10:90のNH4OH/メタノール/塩化メチレンの勾配溶媒系を使用する)により精製して、無色のオイルとして、表題化合物850 mg(収率98%)を得た。TLC:Rf=0.17(1:10:90のNH4OH/メタノール/塩化メチレン)、HPLC:Rt=6.67分、構造に一致した[1H]−NMR(CDCl3)。
【0155】
E.N−(4−ニトロベンゼンスルホンアミド)−(S)−ピペリジン−2−カルボン酸((N−メチル)−3−(ピリジン−3−イル)プロピル)アミド
【0156】
【化25】

【0157】
工程Dに由来の化合物(250 mg、0.96 mmol)の塩化メチレン(15 ml)溶液に、トリエチルアミン(2.0 ml、101.19、19.8 mmol)を添加し、続いて、4−ニトロベンゼンスルホニルクロライド(300 mg、1.42 mmol)を添加した。この混合物を、室温で、24時間攪拌させた。この溶液を、酢酸エチル200 mlおよび重炭酸ナトリウム飽和溶液(50 ml)で希釈した。分離した有機物を、無水MgSO4で乾燥し、そして減圧下にて濃縮した。その粗生成物を、中圧液体クロマトグラフィー(これは、塩化メチレンに続いて1:99のメタノール/塩化メチレン溶液の勾配溶媒系を使用する)により精製して、黄色がかったオイルとして、表題化合物165 mg(収率37%)を得た。TLC:Rf=0.52(5:95のメタノール/塩化メチレン)、構造に一致した[1H]−NMR(CDCl3)。
【0158】
F.N−(4−ニトロベンゼンスルホンアミド)−(S)−ピペリジン−2−カルボン酸−((N−メチル)−3−(ピリジン−3−イル)プロピル)アミド(化合物3)
【0159】
【化26】

【0160】
工程Eに由来の化合物(165 mg、0.35 mmol)の酢酸エチル(20 ml)溶液を、室温にて、炭素担持の10%パラジウム150 mgで処理し、そして水素の僅かな陽圧下にて、24時間水素化した。この混合物を濾過し、そして真空中で濃縮し、その粗生成物を、中圧液体クロマトグラフィー(これは、塩化メチレン、続いて2:98のメタノール/塩化メチレン、続いて0.5:5:95のNH4OH/メタノール/塩化メチレン溶液を溶媒系として使用する)により精製して、黄色がかったオイルとして、表題化合物60 mg(収率41%)を得た。TLC:Rf=0.20(5:95のメタノール/塩化メチレン)、HPLC:Rt=7.25分、構造に一致した[1H]−NMR(CDCl3)。
【0161】
(実施例4)
(S)−(N−メチル)−2−(メチル−(4−アミノ−ベンゼンスルファニルアミド))−3−フェニル−N−(4−(ピリジン−3−イル)−1−(3−(ピリジン−3−イル)プロピル)ブチル)プロピオンアミド
(S)−(N−メチル)−2−(メチル−(4−アミノ−ベンゼンスルファニルアミド))−3−フェニル−N−(4−(ピリジン−3−イル)−1−(3−(ピリジン−3イル)プロピル)ブチル)プロピオンアミドの合成を、以下で示す。
【0162】
A.(S)−(N−メチル)−2−(メチル−2−(tertブチルオキシカルボニル)アミノ)−3−フェニル−N−(4−(ピリジン−3−イル)−1−(3−(ピリジン−3−イル)プロピル)ブチル)プロピオンアミド。
【0163】
【化27】

【0164】
Boc−(N−メチル)フェニルアラニン(1.42g、5.1 mmol)の塩化メチレン(10 ml)溶液に、EDC(0.98g、191.71、5.1 mmol)を添加し、続いて、N−メチル−1,7−ビス(3−ピリジル)−4−ヘプチルアミン(1.2g、18.4 mmol)を添加した。この混合物を、室温で、24時間攪拌させた。この溶液を、酢酸エチル100 mlおよび重炭酸ナトリウム飽和溶液(50 ml)で希釈した。分離した有機物を、無水MgSO4で乾燥し、そして減圧下にて濃縮した。その粗生成物を、中圧液体クロマトグラフィー(これは、2:98のメタノール/塩化メチレン溶液を使用する)により精製して、無色のオイルとして、表題化合物970 mg(収率42%)を得た。TLC:Rf=0.51(5:95のメタノール/塩化メチレン)、構造に一致した[1H]−NMR(CDCl3)。
【0165】
B. (S)−(N−メチル)−2−(メチルアミノ)−3−フェニル−N−(3−(ピリジン−4−イル)−1−(4−(ピリジン−3−イル)プロピル)ブチル)プロピオンアミド。
【0166】
【化28】

【0167】
塩化メチレン(20 ml)中の工程Aに由来の化合物(5.0g、9.2 mmol)に、トリフルオロ酢酸(20 ml、260 mmol)を添加した。この混合物を、室温で、3時間攪拌させた。この溶液を、減圧下にて、乾燥状態まで濃縮した。その残留物を酢酸エチル(200 ml)および重炭酸ナトリウム飽和溶液(100 ml)中に取った。分離した有機物を、無水MgSO4で乾燥し、そして減圧下にて濃縮した。その粗生成物を、中圧液体クロマトグラフィー(これは、1:99のメタノール/塩化メチレンに続いて5:95のメタノール/塩化メチレンに続いて1:10:90のNH4OH/メタノール/塩化メチレンの勾配溶媒系を使用する)により精製して、無色のオイルとして、表題化合物3.12g(収率76%)を得た。TLC:Rf=0.38(1:10:90のNH4OH/メタノール/塩化メチレン)、HPLC:Rt=9.52分、構造に一致した[1H]−NMR(CDCl3)。
【0168】
C. (S)−(N−メチル)−2−(メチル−(4−ニトロベンゼンスルファニルアミド))−3−フェニル−N−(4−(ピリジン−3−イル)−1−(3−(ピリジン−3−イル)プロピル)ブチル)プロピオンアミド。
【0169】
【化29】

【0170】
工程Bに由来の化合物(1.5g、3.4 mmol)の塩化メチレン(20
ml)溶液に、トリエチルアミン(5.0 ml、101.19、35.8 mmol)を添加し、続いて、4−ニトロベンゼンスルホニルクロライド(1.0g、4.7 mmol)を添加した。この混合物を、室温で、24時間攪拌させた。この溶液を、酢酸エチル150 mlで希釈し、そして水(50 ml)で洗浄した。分離した有機物を、無水MgSO4で乾燥し、そして減圧下にて濃縮した。その粗生成物を、中圧液体クロマトグラフィー(これは、塩化メチレンに続いて1:99のメタノール/塩化メチレン溶液の勾配溶媒系を使用する)により精製して、黄色がかったオイルとして、表題化合物1.75g(収率83%)を得た。TLC:Rf=0.67(5:95のメタノール/塩化メチレン)、構造に一致した[1H]−NMR(CDCl3)。
【0171】
D.(S)−(N−メチル)−2−(メチル−(4−アミノ−ベンゼンスルファニルアミド))−3−フェニル−N−(4−(ピリジン−3−イル)−1−(3−(ピリジン−3−イル)プロピル)ブチル)プロピオンアミド(化合物4)。
【0172】
【化30】

【0173】
工程Cの化合物(1.75g、2.78 mmol)の酢酸エチル(50 ml)溶液を、室温にて、炭素担持の10%パラジウム1.0gで処理し、そして水素の僅かな陽圧下にて、24時間水素化した。この混合物を濾過し、そして真空中で濃縮し、その粗生成物を、中圧液体クロマトグラフィー(これは、塩化メチレンに続いて1:99のメタノール/塩化メチレンに続いて3:97のメタノール/塩化メチレン溶液を溶媒系として使用する)により精製して、黄色がかったオイルとして、表題化合物0.79 mg(収率47%)を得た。TLC:Rf=0.36(1:10:90のNH4OH/メタノール/塩化メチレン)、HPLC:Rt=7.97分、構造に一致した[1H]−NMR(CDCl3)。
【0174】
本発明の他の化合物(上記表1で列挙したものを含めて)の合成は、当業者に周知の適当な試薬を用いて、実施例1〜4で示した合成スキームを改良することにより、達成され得る。
【0175】
(実施例5)
(S)−ピペリジン−2−カルボン酸、(4−ピリジルメチル)アミド、クエン酸塩
(S)−ピペリジン−2−カルボン酸−1−(tert−ブチルエステル)−2−(4−ピリジルメチル)アミド、クエン酸塩(化合物1)の合成を、以下で示す。
【0176】
A.(S)−ピペリジン−1,2−ジカルボン酸−1−(tert−ブチルエステル)−2−(4−ピリジルメチル)アミド
【0177】
【化31】

【0178】
実施例1、A部で記述した方法に従って、(S)−ピペリジン−1,2−ジカルボン酸−1−(tert−ブチルエステル)(2.0g、8.72 mmol)および4−(アミノメチル)ピリジン(3.18g、29.41 mmol)を、0.75g(収率27%)の生成物に転化した。構造に一致した[1H]−NMR(CDCl3)。
【0179】
B.(S)−ピペリジン−2−カルボン酸、(4−ピリジルメチル)アミド
【0180】
【化32】

【0181】
実施例1、B部の方法に従って、(S)−ピペリジン−1−カルボン酸−1−(tert−ブチルエステル)−2−(4−ピリジルメチル)アミド(0.75g、2.35 mmol)から、表題化合物0.49g(収率95%)を得た。構造に一致した[1H]−NMR(CDCl3)。
【0182】
C.(S)−ピペリジン−2−カルボン酸、(4−ピリジルメチル)アミド、クエン酸塩
【0183】
【化33】

【0184】
B部に由来のアミン(107 mg、0.48 mmol)およびクエン酸(94 mg、0.48 mmol)の無水エタノール溶液を、溶解するまで、60℃まで暖めた。この溶液を真空中で濃縮し、その残留物を無水エタノールに溶解し、そして真空中で濃縮して、発泡体を得た。構造に一致した[1H]−NMR(CDCl3)。
【0185】
(実施例6)
(S)−ピペリジン−2−カルボン酸、(4−ピリジルメチル)アミド、クエン酸塩
(S)−ピペリジン−1,2−ジカルボン酸−1−(tert−ブチルエステル)−2−(3−ピリジルメチル)アミド、クエン酸塩の合成を、以下で示す。
【0186】
A.(S)−ピペリジン−1,2−ジカルボン酸−1−(tert−ブチルエステル)−2−(3−ピリジルメチル)アミド
【0187】
【化34】

【0188】
実施例1、A部で記述した方法に従って、(S)−ピペリジン−1,2−ジカルボン酸−1−(tert−ブチルエステル)(2.0g、8.72 mmol)および3−(アミノメチル)ピリジン(3.18g、29.41 mmol)を、1.0g(収率36%)の生成物に転化した。構造に一致した[1H]−NMR(CDCl3)。
【0189】
B.(S)−ピペリジン−2−カルボン酸、(3−ピリジルメチル)アミド
【0190】
【化35】

【0191】
実施例1、B部の方法に従って、(S)−ピペリジン−1,2−ジカルボン酸−1−(tert−ブチルエステル)−2−(3−ピリジルメチル)アミド(1.0g、3.13 mmol)から、表題化合物0.56g(収率82%)を得た。構造に一致した[1H]−NMR(CDCl3)。
【0192】
C.(S)−ピペリジン−2−カルボン酸、(2−ピリジルメチル)アミド、クエン酸塩
【0193】
【化36】

【0194】
B部のアミン(111 mg、0.51 mmol)およびクエン酸(97 mg、0.51 mmol)の溶液を、溶解するまで、60℃まで暖めた。この溶液を真空中で濃縮し、その残留物を無水エタノールに溶解し、そして真空中で濃縮して、発泡体を得た。構造に一致した[1H]−NMR(CDCl3)。
【0195】
(実施例7)
(S)−ピペリジン−2−カルボン酸−2−((N メチル)−2−ピリジルエチル)アミド、クエン酸塩
【0196】
【化37】

【0197】
実施例5、C部で記述した方法に従って、(S)−ピペリジン−2−カルボン酸−2−((N メチル)−2−ピリジルエチル)アミド(実施例1、B部の生成物)を、クエン酸塩に転化した。構造に一致した[1H]−NMR(CDCl3)。
【0198】
(実施例8)
(S)−ピペリジン−2−カルボン酸−((N−メチル)−3−(ピリジン−3−イル)プロピル)アミド、クエン酸塩
【0199】
【化38】

【0200】
実施例6、C部で記述した手順に従って、(S)−ピペリジン−2−カルボン酸−((N−メチル)−3−(ピリジン−3−イル)プロピル)アミド(実施例3、D部の生成物)を、クエン酸塩に転化した。構造に一致した[1H]−NMR(CDCl3)。
【0201】
(実施例9)
(S)−ピペリジン−2−カルボン酸、(1,7−ジ−ピリジン−3−イル)ヘプタン−4−イル)エステル、フマル酸塩
A.(S)−ピペリジン−1,2−ジカルボン酸−1−(Tert−ブチルエステル)−2−(1,7−ジ−ピリジン−3−イル)ヘプタン4−イル)エステル
【0202】
【化39】

【0203】
(1,7−ジ−ピリジン−3−イル)ヘプタン−4−オール(6.6g、24.41 mmol)のTHF(30 ml)溶液を、(S)−ピペリジン−1,2 ジカルボン酸−1−(tert−ブチルエステル)(5.0g、21.81
mmol)およびEDC(4.7g、24.52 mmol)に添加し、そして室温で、18時間攪拌させた。この反応系を酢酸エチル(200 ml)で希釈し、そして水で洗浄した。その有機層をMgSO4で乾燥し、真空中で濃縮し、そして中圧液体クロマトグラフィー(これは、1:100のメタノール/塩化メチレンを溶媒系として使用する)により精製して、表題化合物2.0g(収率20%)を得た。構造に一致した[1H]−NMR(CDCl3)。
【0204】
B.(S)−ピペリジン−2−カルボン酸、(1,7−ジ−ピリジン−3−イル)ヘプタン−4−イル)エステル
【0205】
【化40】

【0206】
実施例1、B部の方法に従って、実施例10、A部の化合物(1.0g、4.30 mmol)から、表題化合物1.45g(収率88%)を得た。構造に一致した[1H]−NMR(CDCl3)。
【0207】
C.(S)−ピペリジン−2−カルボン酸、(1,7−ジ−ピリジン−3−イル)ヘプタン−4−イル)エステル、ビス−フマル酸塩
【0208】
【化41】

【0209】
実施例6、C部の手順に従って、実施例10、C部のアミンを、このアミン1当量およびフマル酸2当量を用いて、表題化合物に転化し得る。構造に一致した[1H]−NMR(CDCl3)。
【0210】
(実施例10)
(S)−1−メチル−ピペリジン−2−カルボン酸、(1,7−ジ−ピリジン−3−イル)ヘプタン−4−イル)エステル
【0211】
【化42】

【0212】
メタノール(15 ml)中の実施例10、B部に由来のアミン(300 mg、0.79 mmol)およびパラホルムアルデヒド(500 mg)の混合物を、Na(CN)BH3(500 mg)に添加した。この混合物を、室温で、65時間攪拌した。この反応系を、真空中で濃縮し、そして2N NaOH水中に取り、そして酢酸エチル(150 ml)で抽出した。その有機層を、MgSO4で乾燥し、真空中で濃縮し、そして中圧液体クロマトグラフィー(これは、2:98のメタノール/塩化メチレンに続いて0.5:5:95のNH4OH/メタノール/塩化メチレンの勾配溶媒系を使用する)により精製して、透明なオイルとして、表題化合物230 mg(収率74%)を得た。構造に一致した[1H]−NMR(CDCl3)。
【0213】
(実施例11)
(S)−1−(2−メチルプロピル)−ピペリジン−2−カルボン酸、(1,7−ジ−ピリジン−3−イル)ヘプタン−4−イル)エステル
【0214】
【化43】

【0215】
実施例10で記述した方法に従って、メタノール(15 ml)中の実施例10、B部に由来のアミン(300 mg、0.79 mmol)および2−メチルプロピオンアルデヒド(1.6g、22.0 mmol)の混合物を、Na(CN)BH3(500 mg)に添加した。この混合物を、室温で、65時間攪拌した。この反応系を、真空中で濃縮し、そして2N NaOH水(20 ml)中に取り、そして酢酸エチル(150 ml)で抽出した。その有機層を、MgSO4で乾燥し、真空中で濃縮し、そして中圧液体クロマトグラフィー(これは、2:98のメタノール/塩化メチレンに続いて0.5:5:95のNH4OH/メタノール/塩化メチレンの勾配溶媒系を使用する)により精製して、透明なオイルとして、表題化合物170 mg(収率49%)を得た。構造に一致した[1H]−NMR(CDCl3)。
【0216】
(実施例12)
(S)−1−(ビリジン−4−イルメチル)−ピペリジン−2−カルボン酸、(1,7−ジ−ピリジン−3−イル)ヘプタン−4−イル)エステル
【0217】
【化44】

【0218】
実施例10で記述した方法に従って、メタノール(15 ml)中の実施例10、B部に由来のアミン(300 mg、0.79 mmol)および4−ピリジンカルボキサルデヒド(0.5g、4.67 mmol)の混合物を、Na(CN)BH3(500 mg)に添加した。この混合物を、室温で、65時間攪拌した。この反応系を、真空中で濃縮し、そして2N NaOH水(20 ml)中に取り、そして酢酸エチル(150 ml)で抽出した。その有機層を、MgSO4で乾燥し、真空中で濃縮し、そして中圧液体クロマトグラフィー(これは、2:98のメタノール/塩化メチレンに続いて0.5:5:95のNH4OH/メタノール/塩化メチレンの勾配溶媒系を使用する)により精製して、透明なオイルとして、表題化合物70 mg(収率19%)を得た。構造に一致した[1H]−NMR(CDCl3)。
【0219】
(実施例13)
(S)−(N−メチル)−2−(メチルアミノ)−3−フェニル−N−(2−(ピリジン−2−イル)エチル)プロピオンアミド、クエン酸塩
【0220】
【化45】

【0221】
実施例6、C部で記述した方法に従って、(N−メチル)−2−(メチルアミノ)−3−フェニル−N−(2−(ピリジン−2−イル)エチル)プロピオンアミド(実施例2、B部の生成物)を、クエン酸塩に転化した。構造に一致した[1H]−NMR(CDCl3)。
【0222】
(実施例14)
(S)−(N−メチル)−2−(メチルアミノ)−3−フェニル−N−(3−(ピリジン−4−イル)−1−(4−(ピリジン−3−イル)プロピル)ブチル)プロピオンアミド、クエン酸塩
【0223】
【化46】

【0224】
実施例6、C部で記述した方法に従って、(S)−(N−メチル)−2−(メチルアミノ)−3−フェニル−N−(3−(ピリジン−4−イル)−1−(4−(ピリジン−3イル)プロピル)ブチル)プロピオンアミド(実施例4、B部の生成物)を、クエン酸塩に転化した。構造に一致した[1H]−NMR(CDCl3)。
【0225】
(実施例15)
ロタマーゼ(Rotamase)阻害アッセイ
FKBP酵素活性の阻害は、S. T. Parkら、J. Biol. Chem., 267, pp. 3316−24 (1992)(その開示内容は、本明細書中で参考として援用されている)で記述されているPPIaseアッセイで決定した。これは、キモトリプシン結合アッセイであり、ここで、FKBPは、ペプチド基質であるSuc−Ala−Leu−Pro−Phe−pNAのLeu−Pro結合のシスからトランス異性化を触媒する。このトランス形状(シス形状ではなく)を、キモトリプシンにより切断する。解離Phe−pNAを、400 nmでの吸光度によりモニターした。キモトリプシン切断は、非常に急速であり、従って、シス−から−トランスへの異性化(cis−to−trans isomerization)は、律速である。
【0226】
各反応混合物は、0.1 M Tris緩衝液(pH 7.8)、15 nM
FKBP、30μM基質および0.5 nM〜10μMの試験化合物(これは、Me2SOで希釈した)からなっていた。この混合物を15℃で5分間インキュベートし、次いで、キモトリプシン(100μg/mlの最終濃度)の添加により反応を開始し、続いて、5分間、分光測光した。全反応容量は、1 mlであった。本発明の化合物のいずれも、以下の表で示すように、10 μM未満のKiを示さなかった。
【0227】
【表7】

【0228】
(実施例16)
MDR感作アッセイ
本発明による化合物が、MDR逆転活性を有しないことを立証するために、特定の薬剤に耐性であることが知られている細胞系を使用した。
【0229】
本発明者らは、L1210vMDRC.06またはHL60/Vinc細胞系を用いて、多剤耐性逆転(MDR)アッセイを行った。L1210vMDRC.06は、Pastanら、Proc. Nalt. Acad. Sci. USA, 85, pp. 4486〜4490 (1988)により記述されているように、MDR1 cDNAを運ぶpHaMDR1/Aレトロウイルスで形質転換したL1210マウス白血病細胞である。このL1210vMDRC.06多剤耐性系は、形質転換した細胞を0.06μg/mlのコルヒチン中で培養することにより、薬剤耐性とした。このHL60/Vincヒト前骨髄球性の白血病細胞系は、ビンクリスチンの濃度を高めて選択することによりHL60薬剤感受性の親細胞から誘導した多剤耐性細胞系である。
【0230】
L1210vMDRC.06を用いて、U. Germannら、Anti−Cancer Drugs, 8, pp. 125〜140 (1997)で記述されているように、96ウェルマイクロタイタープレートにて1×104細胞/ウェルをプレートすること、そして本発明の化合物の存在または不在(0.1、0.25、0.5、1.0または2.5μM)下にて、それらを、一定濃度範囲のドキソルビシン(50 nM〜10μM)に晒すことにより、多剤耐性逆転アッセイを行った。3日間の培養後、ミトコンドリア機能を評価するために、XTT染料を用いて、細胞の生存度を定量した[Roehmら、J. Immunol. Methods, 142, pp. 257〜265、(1991)]。全ての定量は、少なくとも4個の複製物で行った。結果は、ドキソルビシン単独に関するIC50とドキソルビシン+化合物に関するIC50との比較により、定量した。MDR比を計算し(IC50 Dox/IC50 Dox+阻害剤)、そして化合物の効力を比較するために、その整数値を使用した。
【0231】
HL60/Vinc細胞を用いたアッセイは、96ウェルマイクロタイタープレートにて、4×104細胞/ウェルの濃度で、細胞をプレートすることにより、実施した。これらの細胞を、次いで、U. Germannら、Anti−Cancer Drugs, 8, pp. 141〜155 (1997)で記述されているように、種々の濃度(0.5、1.0、2.5、5.0または10μM)で、本発明の種々の化合物の存在または不在下にて、種々の濃度のドキソルビシン(9 nM〜6.7μM)に晒した。これらの細胞を3日間培養した後、ミトコンドリア機能を評価するために、XTT染料法を用いて、それらの生存度を定量した(Roehmら、前出)。結果は、ドキソルビシン単独に関するIC50のドキソルビシン+化合物に関するIC50に対する比として、表わした。全てのアッセイでは、HL60/Vinc細胞について、これらのMDR阻害剤の固有の抗増殖性または細胞毒性活性もまた、決定した。
【0232】
本発明の数個の化合物に関するこれらのアッセイの結果は、以下の表に記載する。
【0233】
【表8】

【0234】
* 化合物5、6および7を10μMで試験したこと以外は、2.5μMの化合物濃度で試験したMDR比。
【0235】
これらの結果から分かり得るように、構造とMDR比との間には、強い相関があるようには思われない。この原因となり得る要因には、この化合物が上記細胞に入る能力、この化合物の毒性およびこの化合物の細胞内部での代謝がある。そういうものとして、7より大きなMDR比を有する化合物は、本発明のパラメータによれば、MDR逆転活性を欠いた化合物には含まれない。
【0236】
(実施例17)
PC12細胞系での神経突起成長の定量
本発明で記述した化合物の神経栄養性活性を直接決定するために、Lyonsら、(1994)により記述されるように、クロム親和細胞腫PC12細胞を用いて、その神経突起成長アッセイを行った。
【0237】
PC12細胞を、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(これは、10%熱不活性化ウマ血清、5%熱不活性化ウシ胎児血清(FBS)、および1%グルタメートで補充する)中で、37℃および5% CO2で維持した。
【0238】
これらの細胞を、次いで、96ウェルプレート(これは、5 m/cm2のラット尾部コラーゲンで被覆した)にて、1ウェルあたり105個でプレートし、そして一晩付着させた。この培地を、次いで、DMEM、2%熱不活性化ウマ血清、1%グルタメート、1〜5 ng/mlのNGF(Sigma)、および濃度を変えた(0.01 nM〜10000 nM)本発明の化合物で置き換えた。そのバックグラウンドコントロール培養物を、化合物なしで、105 ng/mlのNGF単独で、投与した。ポジティブコントロール培養物は、高濃度のNGF(50 ng/ml)と共に、投与した。これらの細胞を、次いで、37℃で、5% CO2で、72時間インキュベートし、3%ホルムアルデヒドで固定し、0〜4のスケールで、神経成長を視覚的に決定した。
【0239】
これらの結果は、以下の表で示す。
【0240】
【表9】

【0241】
* アッセイは、試験した各濃度に対して、三度で行った。表示した結果は、3個の試料の平均である。
【0242】
** アッセイは、2回繰り返し、そのたびに、三度で行った。表示した結果は、6個の試料の平均である。
【0243】
*** アッセイは、試験した各濃度に対して、四度で行った。表示した結果は、3個の試料の平均である。
【0244】
本発明の化合物は、化合物1〜18、101、および103〜113により例示されているように、バックグラウンドコントロール培養物よりも著しい神経突起成長の増加を引き起こした。ある種の化合物の高化合物濃度にて、神経成長刺激活性がないこと(「0」で表示されている)は、高濃度でのこれらの細胞に対するこれらの化合物の毒性効果に起因している。化合物103に対するネガティブな結果は、3つの濃度の各々でアッセイした1個の試料での1回だけの実験の結果であった。本発明者らは、この化合物が、この実験を繰り返したとき、このPC12アッセイにて、ある程度の神経成長刺激活性を示すと考えている。
【0245】
本発明の他の化合物もまた、著しい神経成長刺激活性を示す。
【0246】
本発明者らは、先に、本発明の多数の実施態様を提示したものの、本発明の基本的な構成は、本発明の方法を使用する他の実施態様を提供するために、変更できることが明らかである。従って、本発明の範囲は、例として、先に提示した特定の実施態様よりもむしろ、ここに添付した特許請求の範囲により規定されることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の方法。

【公開番号】特開2010−100643(P2010−100643A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298892(P2009−298892)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【分割の表示】特願2000−507669(P2000−507669)の分割
【原出願日】平成10年8月27日(1998.8.27)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】