説明

ノズル再生方法およびノズル再生装置

【課題】ノズル内面のメンテナンスに際し、ノズル内部の汚染が生じることがなく、塗工液と洗浄用溶剤によるソルベントショックを発生することなく、短時間でしかも簡単にノズル目詰まりの再生が可能なノズル再生方法およびノズル再生装置を提供する。
【解決手段】ニードル位置決め部12によって、ニードル5がX軸、Y軸方向に移動され、ノズル穴9の中心座標とニードル5の中心軸とが合致するように位置決めがなされる。ニードル駆動部10により、ニードル5がZ軸方向(下方)に移動されニードル5がノズル穴9の目詰まり部に差し込まれ、目詰まりの再生を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドにおいて、異物等によりインクを吐出するノズル穴が目詰まりし不吐出となった場合にノズル面にダメージを与えることなく、簡単にヘッド再生を行えるノズル再生方法およびノズル再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットヘッドは、インクジェットプリンターなどに搭載され、一般紙、包装紙、プリント基板などに対する多用途な印刷に用いられ、高速で比較的安定した品質の高い塗工をおこなうことができるが、ノズルの吐出性に影響が出た場合にはノズルクリーニングを行う必要がある。
【0003】
近年、インクジェットヘッドを用いることによりインクの使用量が低減可能なことからコストダウンのために液晶表示装置用カラーフィルターのRGBインク塗工への応用も検討され、インクジェットヘッドが顔料・樹脂・溶剤の入った専用インクの塗布などに使用されるようになっている。
しかし、顔料・溶剤の入ったインクは乾燥し易いため、インクが乾燥するとインクジェットヘッドのノズル穴に乾燥異物として目詰まりし、インクの吐出不良が発生する場合がある。
【0004】
上記のようにノズル穴が目詰まりした場合には、塗工液を抜き出した後、ヘッド内部を溶剤で洗浄するか、ノズル面を外側から洗浄液とウエスで拭いて再度塗工液を用いて加圧圧送して押し出す方法が用いられている。この場合、内部に詰まっている乾燥異物の溶解と除去は困難で、また、ヘッドの構造上から、人手により分解し、清掃をすることができないのが現状である。
【0005】
また、ノズル内部には乾燥したインク以外の他の異物、ゲル状異物が詰まることによる吐出不良も確認されており、このようにノズル穴が閉塞され、吐出不良になったヘッドは廃棄および新規交換となってしまい、コストがかかり、非効率となる不利がある。
【0006】
上記のようなことからインクジェットヘッドのヘッド内部を効率よく洗浄するために、ヘッド内部に洗浄液を供給・洗浄した後に、ノズル部をワイプする洗浄方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
さらに、インクジェトヘッド内の異物を除去するために、超音波をかけながら洗浄液を逆流させ洗浄除去する機構も知られている(例えば、特許文献2参照)。
また、ノズル面を効率よく洗浄するために、カバー部材を取り付けクリーニングする機構も知られている(例えば、特許文献3参照)。
さらに、インクジェットヘッド内の液体を液体置換することにより、目詰まりを発生させない洗浄方法も知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2003-211687
【特許文献2】特開平09-254397
【特許文献3】特開平05-16376
【特許文献4】特開平10-286977
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1には、インクジェットヘッドに洗浄液をインク供給口からポンプで加圧して供給しインクジェットヘッドを内部から洗浄する洗浄工程を有し、洗浄後にはヘッドのノズル部をワイプで拭き取ることが開示されている。
しかしながら、このような方法ではノズル内部に固着した乾燥異物の除去は困難である。
【0009】
特許文献2には、洗浄液の入っている洗浄容器の中にヘッドを設置し超音波をかけながら洗浄液を送液ポンプを使用してヘッド内部を通過させて送液を行いながら洗浄することが開示されている。
しかしながら、このような方法では、ノズル内部の異物が仮に取れたとしても、その異物がヘッド内、配管内に逆流してしまい更に汚染が広がることが懸念される。
【0010】
特許文献3には、撥液性のノズル面にカバー部材を突き当て噴射したインクでカバー内を充填させノズル面に付着した微小なインク滴を合体させてから吸引してノズル面のクリーニングを行うことが開示されている。
しかしながら、このような方法では、ノズル面は洗浄ができてもノズル内部の洗浄を行うには不向きである。
【0011】
特許文献4には、インクジェットヘッド内の液体を液体置換する方法が開示されており、ヘッドに少なくとも1種類以上の洗浄液による置換を異種類のインク間でのインク切り替え途中で行うことが開示されている。
しかしながら、この方法では、インク交換の液体置換は行えても、乾燥異物、異物には効果がなく、更にノズル内部に固着した異物の洗浄は困難と考えられ、ソルベントショック懸念も残る。
【0012】
本発明は上記した従来の問題点を省みてなされたものであり、その目的は、ノズル内面のメンテナンスに際し、ノズル内部の汚染が生じることがなく、塗工液と洗浄用溶剤によるソルベントショックを発生することなく、短時間でしかも簡単にノズル目詰まりの再生が可能なノズル再生方法およびノズル再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記の問題を解決するために成されたもので、請求項1、12に係る発明は乾燥異物、その他の異物などでインクジェットヘッドのノズル穴が目詰まりし、閉塞状態となった場合にヘッドのみを取り外し、そのノズル穴径よりも小さいか、もしくは同サイズの先端径を有する、すなわち、ノズル穴に挿通可能な直径を有するニードルを閉塞されたノズル穴に挿入し押し込み、目詰まりで閉塞されたノズル穴の目詰まりを解消することにより吐出不良部を再生することができる。
【0014】
また、請求項2に係る発明は、ニードルは少なくともその先部の直径を20μm以上100μm以下の寸法で形成することにより、ノズル穴の閉塞部へ通過性をより良好なものとし、なおかつ開放する穴径を広げていく機能を有するものである。
【0015】
請求項3、4に係る発明は、ニードル材質を指定するもので、硬度、耐溶剤性、耐久性、洗浄性、加工性を考慮するとステンレス、アルミニウムといった金属系の材質が良好であるが、ヘッド面へのダメージを考慮した場合、フッ素等の樹脂系材質を使用することも可能としたものである。
【0016】
また、請求項5、13に係る発明は、処理を行うノズル穴径が50μm以下の場合が多く、再生の精度を高めるために画像処理を使用し、座標点をモニター表示で指定していくもので、その設定座標からの実際のニードルのメカ的な位置決め精度が高精度なものである。
【0017】
また、請求項6に係る発明は、処理を行うノズル穴径が50μm以下の場合が多く、モニター上での確認、座標設定、再生後の外観確認を行い易くするために光学顕微鏡とモニターを搭載したものである。
【0018】
また、請求項7に係る発明は、請求項5、16を実現するための設定精度を規定するもので、特に、Z軸のニードル高さの方向の位置決め精度に関しては、ニードル押し込み量の再現性を良好なものとし、再生するノズル穴径サイズの再現性を安定させることができる機構を有するものである。
【0019】
また、請求項8に係る発明は、ニードルを交換した場合など、装置的な設定が異なった場合に、ニードル先端とノズル穴の位置補正が簡単にできる機構を有するものである。
【0020】
また、請求項9に係る発明は、エアー圧力等によりニードル圧(荷重)が変更できるような機構を有するものである。
【0021】
また、請求項10に係る発明は、複数のノズル穴の中心座標を設定しておくことで、複数箇所の再生を自動かつ連続で行えるものである。
【0022】
また、請求項11に係る発明は、ニードル径を制御するための方法で、Z軸側への移動量を変更することにより穴径を制御するものである。
【0023】
本発明の請求項14に係る発明は薬液ディッシュを有しニードルが下降移動して、その薬液をニードル先端に付着させた後、薬液を閉塞されたノズル穴に塗布することにより、その薬液がノズル穴に付着した異物、および乾燥インクを膨潤・溶解させて、異物の剥離性を促進させることが可能となる。また、薬液により再生用ニードルのノズル穴通過時に異物が飛散することを防止するものである。
【0024】
また、本発明の請求項15に係る発明は、薬液ディッシュに乾燥防止用蓋を取り付け、ニードルに薬液を付着させる時に蓋を開き、それ以外の時には薬液の乾燥防止の為に蓋が閉じて、密閉状態となる機構を有するものである。
【0025】
次ぎに、本発明の請求項16に係る発明は、ニードルが2本針の構成となっており、一方のニードルが薬液塗布用でもう一方のニードルがノズル穴を通過させる再生用ニードルという役割分担を持たせることにより、薬液塗布用ニードルの材質、先端形状、先端径をノズル穴再生用ニードルとは個別のものにするものである。
【0026】
また、本発明の請求項17に係る発明は、薬液塗布用ニードルの形状が、再生用ニードルの形状と同形状もしくは先端形状が円形であり、その直径が50μm以上で、薬液塗布エリアがノズル穴を十分にカバーするものである。
【0027】
また、本発明の請求項18に係る発明は、薬液塗布用ニードルの形状が、再生用ニードルの形状と同形状もしくは先端形状が矩形であり、その1辺の長さが50μm以上で、薬液塗布エリアがノズル穴を十分にカバーするものである。
【0028】
また、本発明の請求項19に係る発明は、前記再生方法および装置は、薬液塗布用ニードルの形状が、ノズル穴面と接触する先端部分が平面であり薬液ホールド性とノズル穴面に対する塗布性を良好としたものである。
【0029】
また、本発明の請求項20に係る発明は、ニードル先端部分の自動洗浄が可能で、洗浄液による洗浄後は不活性ガスなどによる乾燥機能を有し、ニードルに付着した異物に対する洗浄が可能で、常にニードル先端および表面に付着物が無い状態で清浄な状態で管理するものである。
【発明の効果】
【0030】
洗浄液、超音波では除去が不可能な乾燥異物、その他の異物でインクジェットヘッドのノズル穴が目詰まりし、不吐出となった部分に対して、そのノズル穴に挿通可能な直径を有するニードルを目詰まりしたノズル穴に押し込むことにより、ノズル穴の目詰まりの解消が可能となる。
このときに、ニードル先端はノズル穴径よりも小さく、できるだけ鋭利な形状な方がより目詰まり解消が行い易く、ニードルホールド側がノズル穴径よりも大きい円錐形状であればニードルのノズル内へ入る量が大きくなればなるほど、再生できる穴径を大きくすることが可能となる。
【0031】
また、光学顕微鏡、モニター、画像処理を使用してノズル穴径中心点の座標設定をすることにより、ノズル穴とニードルの位置決めが行い易くなり、精密位置決め機構を使用することにより精度の高い位置合わせが可能となる。
【0032】
さらに、再生箇所が複数箇所になる場合には、再生するノズル穴位置の座標点を複数箇所設定しておくことにより、連続かつ、自動でのノズル再生が可能となる。
【0033】
また、本発明によるノズル再生を実施した後に、薬液を使用したヘッド内洗浄を実施することにより、ヘッド内の異物対策、ノズル穴の吐出性はより良好なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
ニードルをノズル穴に押し込む前処理として薬液をノズル穴に塗布することで、乾燥インキ、乾燥異物を膨潤・溶解させ、その後の再生用ニードルでの異物除去において、さらに異物の剥離性を良好なものにし、効率よくノズルの再生が可能となってくる。
【0035】
また、薬液を入れる薬液ディッシュは乾燥防止用の開閉蓋が付き、薬液の揮発を抑えて薬液品質の低下を防ぐと共に、薬液の交換頻度を少なくすることが可能となってくる。
【0036】
さらに、ニードルを2本化して、専用の薬液塗布用ニードルを具備することにより、薬液を転写しやすい独自のニードル形状にすることが可能とり、その専用形状により薬液の最適量の塗布が可能となってくる。
【0037】
また、薬液塗布用ニードルの先端形状は、円形もしくは矩形とすることで、薬液の塗布形状が安定し、さらにノズル穴面に接触するニードル先端部分の形状を平面にすることにより、ノズル穴面へのダメージが軽減されると共に薬液保持量が一定化し、薬液のノズル穴面への転写量が均一化するといった効果がある。
【0038】
また、薬液塗布用ニードル、ノズル穴再生用ニードルともにニードル先端および外周部が洗浄液により自動洗浄することが可能で、更に洗浄後は不活性ガスなどによる乾燥を行うことにより、ニードルは常に清浄な状態を維持することが可能となってくる。
【0039】
また、本発明のノズル再生方法および装置を実施した後に、薬液を使用したヘッド内洗浄を実施することにより、ヘッド内の異物対策、ノズル穴の吐出性はより良好なものとなっていく。
【0040】
本発明のノズル再生方法およびノズル再生装置を実施の形態に沿って以下に図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本実施の形態のノズル再生装置2の概略構成図、図2はノズル再生装置2の詳細な構成図である。
【0041】
図1に示すように、目詰まりが発生したインクジェットヘッド1をヘッド本体から取り外し、ノズル再生装置2にノズル面3を上にしてヘッド固定枠4で固定する。
このときにニードル5はその先端が下方向に向き、ニードル5が垂直になるようにその基端がニードルホールド6により固定される。
再生ユニット7にはニードルホールド6およびレボルバータイプの光学顕微鏡8が固定されている。
光学顕微鏡8にはカメラが組み込まれており、カメラで撮影された光学顕微鏡8の映像がモニター13(図2参照)に写しだされ、ノズル面3の状態確認、再生するノズル穴9(図3参照)の座標位置の指定等、各種の設定、画像処理が行えるようになっており、本実施の形態では、光学顕微鏡8の倍率は50倍以上1000倍以下に設定されている。
【0042】
図2を参照して詳細に説明する。
再生ユニット7は、3軸可動テーブル74で構成され、3軸可動テーブル74は、可動台72を互いに直交するX軸、Y軸、Z軸の3軸方向に移動させるものである。
ニードルホールド6および光学顕微鏡8は可動台72に固定され、可動台72と一体的にX軸、Y軸、Z軸方向に移動されるように構成されている。
本実施の形態では、前記X軸および前記Y軸は水平面上を延在し、前記Z軸は鉛直方向に延在している。
【0043】
ニードルホールド6は、ニードル5の基端が着脱可能に装着されるように構成されている。
ニードル5の断面形状は円形であり、ノズル穴9の直径よりも小さいか、もしくは同サイズの直径、すなわち、ノズル穴9に挿入可能な直径で形成されている。
ニードル5は、少なくともその先部の直径が20μm以上100μm以下の寸法の円柱状に形成され、ニードル5の先部には、先端に至るにつれて断面の直径が次第に小さくなる円錐部が形成されている。
【0044】
ノズル再生装置2には、さらに、ニードル駆動部10、ニードル位置決め部11、ノズル穴位置決め部12が設けられている。
ニードル駆動部10は、ニードル5の中心軸をノズル穴9の中心座標と合致させた状態でニードル5をノズル穴9に向けて移動させることによりニードル5をノズル穴9に挿入する(押し込む)ものである。
本実施の形態では、ニードル駆動部10は、可動台72をZ軸方向に移動させる送り機構を備えている。この送り機構は、例えば、モータと、モータによって駆動される送りねじと、送りねじに螺合された雌ねじを備える機構など従来公知の様々な送り機構が採用可能である。
ニードル駆動部10は、ニードル5をノズル穴9に挿入する方向に移動させる際にニードル5に0kg/cm2以上1.0kg/cm2以下の範囲の荷重を掛けるように構成されている。
また、ニードル駆動部10は、ニードルホールド6の移動を1μm単位で行い、かつ、ニードル5のZ軸方向の位置決め精度が5μm以下となるように構成されている。
【0045】
ニードル位置検出部11は、光学顕微鏡8から供給されるノズル穴9の画像に基づいて画像処理を行うことにより、ノズル穴9の中心座標(X軸座標、Y軸座標)を検出するものである。
ニードル位置決め部12は、X軸およびY軸に沿ってニードル5を移動させることにより、ニードル5の中心軸をノズル穴9の中心座標と合致させるように位置決めを行うものである。
本実施の形態では、ニードル位置決め部12は、可動台72をX軸、Y軸方向に移動させる送り機構を備えている。この送り機構は、例えば、モータと、モータによって駆動される送りねじと、送りねじに螺合された雌ねじを備える機構など従来公知の様々な送り機構が採用可能である。
ニードル位置決め部12は、ノズル穴9の中心座標とニードル5の中心軸の座標との誤差を1μm単位で位置補正するように構成されている。
【0046】
次に目詰まりが発生した不吐出ノズル穴9の再生動作について説明する。
図3はニードル5によるノズル穴9の再生動作の説明図、図4(A)、(B)、(C)は図3の断面図である。
図3に示すように、ニードル位置決め部12によって、ニードル5がX軸、Y軸方向に移動され、ノズル穴9の中心座標とニードル5の中心軸とが合致するように位置決めがなされる。
ニードル駆動部10により、ニードル5がZ軸方向(下方)に移動されニードル5がノズル穴9の目詰まり部に差し込まれ、目詰まりの再生を行う。
ニードル5のZ軸方向への移動に際しては、予め設定した荷重により最大1.0Kg/cm2までエアーなどによる圧力をかけることができる。
【0047】
図4に示すように、ニードル5の先端はできるだけ鋭利な形状の方が、より低圧力で異物を通過することができるため有利である。
またニードル5の先端寄りの部分が図4に示すように円錐形状になっているので、ニードル押し込み量ΔLを大きくすることにより、再生されるノズル穴9の穴径を大きくする上で有利である。
【0048】
図5は複数のノズル穴9が設けられたノズル面3の平面図である。
図5に示すように、ノズル詰まりが発生したノズル穴9が複数個ある場合には、ノズル穴位置検出部11によって各ノズル穴9の中心座標を検出し、例えばニードル位置決め部12に設けたメモリーに設定しておく。
これにより、ニードル位置決め部12が前記メモリーに設定された前記中心座標に基づいてニードル5の位置決めを自動的かつ連続的に行なうことができ、ノズル穴9の再生動作の効率化を図る上で有利となる。
【0049】
本発明のノズル再生方法および装置を実施の形態に沿って以下に図面を参照しながら詳細に説明する。
図6は本発明の一実施例で特に2本針構成の実施例を示す概略構成図である。
本発明は既存のインクジェットヘッドに用いることができる。
【0050】
また図7は本発明の薬液塗布用ニードル12と薬液ディッシュ14を示した図である。
薬液塗布用ニードル12が下降移動して薬液ディッシュ14内にディップされることにより、ニードル先端部に薬液13を付着させる。
薬液塗布用ニードル12が上昇移動してニードル先端部に付着された薬液13を先端部にホールドした状態のまま、再生するノズル穴位置までX、Y、Z方向への移動を行う。このときに薬液ディッシュ14は薬液塗布用ニードル12に薬液13を付着させるときには蓋15を開放し、それ以外の時には蓋15が閉じて密閉状態となり薬液13の揮発を防止することが可能となる。
【0051】
次に図8は薬液塗布用ニードル12の先端16の形状を示した図である。
先端16の形状は円形、もしくは矩形とすることで、薬液13の良好なホールドと塗布が可能となる。また、ノズル穴面に接触する先端部分は平面とすることにより、ノズル穴面にダメージを与えること無く塗布が可能となり、薬液13のホールド性も良好なものとなる。
【0052】
また、図9は薬液塗布用ニードル12による薬液13の塗布と、再生用ニードル11によりノズル詰まりの発生した不吐出ノズル穴17の再生中動作を示す図である。
異物18が詰まった不吐出ノズル穴17に薬液塗布用ニードル12により薬液13を10〜50pcl塗布した後、10〜30秒間薬液を目詰まり部に浸透させる。その後、再生用ニードル11で最大1.0kg/cm2荷重をかけることにより、不吐出ノズル穴17の目詰まりを除去してノズル穴19の再生を行う。
【0053】
次に、図10は薬液塗布用ニードル12と再生用ニードル11の洗浄中の図である。
洗浄ポット21において洗浄用の洗浄液20にニードル先端を一定時間DIPした後、乾燥ポット22において窒素等の不活性ガス23を短時間噴射させることによりニードル11、12を洗浄および乾燥させることができる。この洗浄により、ノズル再生に使用した後のニードル11、12を清浄な状態に保つことが可能となる。
【0054】
以上説明したように本実施の形態によれば、インクジェットヘッド1のノズル穴9にニードル5を挿通することによってノズル穴の目詰まりを解消しインクジェットヘッド1を再生することができるので、ノズル内部の汚染が生じることがなく、また、塗工液と洗浄用溶剤によるソルベントショックを発生することなく、短時間でしかも簡単にノズル目詰まりの再生が可能となる。
【0055】
なお、本発明のノズル再生方法および装置は、顔料・樹脂・溶剤の入った液晶表示装置用カラーフィルターのRGBインク塗工専用インクのインクジェットヘッドにも用いることができる。顔料・溶剤の入ったインクは乾燥および、凝集し易く、一度乾燥するとノズル穴を乾燥異物が塞いでしまい吐出不良が発生する場合があり、そのようなノズルの目詰まりも本発明のノズル再生方法および装置により再生が可能である。
また、本発明は、インクジェットヘッドを搭載する印刷機械、またはインクとして特殊なインクを使用する液晶表示装置部品製造用、特にカラーフィルター製造用のインクジェットヘッド等に幅広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本実施の形態のノズル再生装置2の概略構成図である。
【図2】ノズル再生装置2の詳細な構成図である。
【図3】ニードル5によるノズル穴9の再生動作の説明図である。
【図4】(A)、(B)、(C)は図3の断面図である。
【図5】複数のノズル穴9が設けられたノズル面3の平面図である。
【図6】本発明を展開させる基本発明のノズル再生方法および装置の一実施例と本発明の組み合わせを示す説明図である。
【図7】本発明の薬液塗布用ニードル12と薬液ディッシュ14を示す説明図である。
【図8】本発明の薬液塗布用ニードル12の形状を示す説明図である。
【図9】本発明を使用したノズル再生方法および装置の一実施例を示す説明図である。
【図10】本発明のニードル洗浄方法の一実施例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0057】
1……インクジェットヘッド、2……ノズル再生装置、3……ノズル面、4……ヘッド固定枠、5……ニードル、6……ニードルホールド、7……再生ユニット、8……光学顕微鏡、9……ノズル穴、10……ニードル駆動部、ΔL……ニードル押し込み量、11……再生用ニードル、12……薬液塗布用ニードル、13……薬液、14……薬液ディッシュ、15……乾燥防止用蓋、16……薬液塗布ニードル先端、17……不吐出ノズル穴、18……異物、19……ノズル穴、20……洗浄液、21……洗浄ポット、22……乾燥ポット、23……不活性ガス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドのノズル部のノズル穴の目詰まりを解消するノズル再生方法であって、
前記ノズル穴に挿入可能な直径を有するニードルを形成し、
前記ニードルの中心軸を前記ノズル穴の中心座標と合致させた状態で前記ニードルを前記ノズル穴に向けて移動させることにより前記ニードルを前記ノズル穴に挿入する、
ことを特徴とするノズル再生方法。
【請求項2】
前記ニードルの断面形状は円形であり、前記ニードルは少なくともその先部の直径が20μm以上100μm以下の寸法で形成されていることを特徴とする請求項1記載のノズル再生方法。
【請求項3】
前記ニードルは金属材料または合成樹脂材料で形成されていることを特徴とする請求項1記載のノズル再生方法。
【請求項4】
前記ニードルはステンレスまたはアルミニウムまたはフッ素系樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1記載のノズル再生方法。
【請求項5】
前記ノズル穴の画像を撮像し、その撮像した画像に基づいて画像処理を行うことにより、前記ニードルの中心軸と直交する平面上で直交するX軸およびY軸の座標に従って前記ノズル穴の中心座標を検出し、
X軸およびY軸に沿って前記ニードルを移動させることにより、前記ニードルの中心軸を前記ノズル穴の中心座標と合致させるように位置決めを行い、
前記ノズル穴の中心座標を1μm単位で検出し、
前記ニードルの中心軸の位置決め精度をX軸方向およびY軸方向に対してそれぞれ5μm以下とした、
ことを特徴とする請求項1記載のノズル再生方法。
【請求項6】
前記ノズル部のノズル穴および前記ニードルの部分を被写体として捉える光学顕微鏡と、前記光学顕微鏡で捉えられた被写体像を表示するモニターとを設け、前記光学顕微鏡の倍率が50倍以上1000倍以下に設定されている、
ことを特徴とする請求項1記載のノズル再生方法。
【請求項7】
前記ニードルの基端を保持するニードルホールドを設け、
前記ニードルの移動は前記ニードルホールドを前記ニードルの中心軸方向であるZ軸方向に移動することで行われ、
前記ニードルホールドの移動を1μm単位で行ない、
前記ニードルのZ軸方向の位置決め精度を5μm以下とした、
ことを特徴とする請求項1記載のノズル再生方法。
【請求項8】
前記ニードルの中心軸を前記ノズル穴の中心座標と合致させる前記位置決めを行うに際して、前記ノズル穴の中心座標と前記ニードルの中心軸の座標との誤差を1μm単位で補正することを特徴とする請求項5記載のノズル再生方法。
【請求項9】
前記ニードルを前記ノズル穴に挿入する方向に移動させる際に前記ニードルに0kg/cm2以上1.0kg/cm2以下の範囲の荷重を掛けることを特徴とする請求項1記載のノズル再生方法。
【請求項10】
前記ニードルの中心軸を前記ノズル穴の中心座標と合致させる前記位置決めを行うに際して、前記ノズル穴が複数個ある場合、前記各ノズル穴の中心座標を設定しておき、前記設定されている中心座標に応じて前記ニードルの位置決めを自動的かつ連続的に行なうことを特徴とする請求項5記載のノズル再生方法。
【請求項11】
前記ニードルの先部には、先端に至るにつれて直径が次第に小さくなる円錐部が形成されていることを特徴とする請求項1記載のノズル再生方法。
【請求項12】
インクジェットヘッドのノズル部のノズル穴の目詰まりを解消するノズル再生装置であって、
前記ノズル穴に挿入可能な直径で形成されたニードルと、
前記ニードルの中心軸を前記ノズル穴の中心座標と合致させた状態で前記ニードルを前記ノズル穴に向けて移動させることにより前記ニードルを前記ノズル穴に挿入するニードル駆動部と、
を備えることを特徴とするノズル再生装置。
【請求項13】
前記ノズル再生装置は、
前記ノズル穴の画像を撮像し、その撮像した画像に基づいて画像処理を行うことにより、前記ニードルの中心軸と直交する平面上で直交するX軸およびY軸の座標に従って前記ノズル穴の中心座標を検出するノズル穴位置検出部と、
X軸およびY軸に沿って前記ニードルを移動させることにより、前記ニードルの中心軸を前記ノズル穴の中心座標と合致させるように位置決めを行うニードル位置決め部とを備え、
前記位置検出部による前記ノズル穴の中心座標の検出の最小単位が1μmであり、
前記位置決め部による前記ニードルの中心軸の位置決め精度がX軸方向およびY軸方向に対してそれぞれ5μm以下である、
ことを特徴とする請求項12記載のノズル再生装置。
【請求項14】
蓋付きの薬液ディッシュを有し、その薬液を前記ニードル先端に付着させた後、薬液を前記ノズル穴に転写させ、更にその後、前記ニードルを前記ノズル穴に通過させることを特徴とする請求項1記載のノズル再生方法または請求項12記載のノズル再生装置。
【請求項15】
前記薬液ディッシュに乾燥防止用の蓋が付き、待機中は乾燥防止の為に前記蓋により密閉ができることを特徴とする請求項14記載のノズル再生方法またはノズル再生装置。
【請求項16】
前記ニードルは2本針の構成となっており、一方のニードルが薬液塗布用ニードルとして構成され、他方のニードルが前記ノズル穴を通過させる再生用ニードルとして構成されていることを特徴とする請求項14記載のノズル再生方法またはノズル再生装置。
【請求項17】
前記薬液塗布用ニードルの形状が、前記再生用ニードルの形状と同形状もしくは先端形状が円形であり、その直径が50μm以上であることを特徴とする請求項16記載のノズル再生方法またはノズル再生装置。
【請求項18】
前記薬液塗布用ニードルの形状が、前記再生用ニードルの形状と同形状もしくは先端形状が矩形であり、その1辺の長さが50μm以上であることを特徴とする請求項16記載のノズル再生方法またはノズル再生装置。
【請求項19】
前記薬液塗布用ニードルの形状が、前記ノズル穴と接触する面が平面であることを特徴とする請求項16、17または18記載のノズル再生方法およびノズル再生装置。
【請求項20】
前記ニードルの先端部分の自動洗浄が可能で、洗浄液による洗浄後不活性ガスなどによる乾燥機能を有する請求項14記載のノズル再生方法またはノズル再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−261103(P2007−261103A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−89761(P2006−89761)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】