説明

ハイブリッド自動車

【課題】走行中の内燃機関の始動を走行状態に応じてより適したものとする。
【解決手段】走行中にエンジンを始動する際には、車速Vが高いほど大きくなる傾向にモータリングトルクの最大トルクTm1maxを設定し(S210)、設定した最大トルクTm1maxを用いてモータによってエンジンをモータリングする(S220〜S290)。これにより、高車速で走行している最中にエンジンを始動する際に、バッテリの性能をより発揮させてエンジンをより迅速にモータリングして始動することができると共に、エンジンの回転数が共振回転数帯で滞留する時間をより短くして共振による振動などをより抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド自動車に関し、詳しくは、内燃機関と、動力を入出力可能な発電機と、車軸に連結された駆動軸と内燃機関の出力軸と発電機の回転軸とが共線図上で駆動軸,出力軸,回転軸の順に3つの回転要素に接続された遊星歯車機構と、駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、発電機および電動機と電力のやりとりが可能な二次電池と、を備えるハイブリッド自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハイブリッド自動車としては、エンジンと、モータMG1と、エンジンの出力軸とモータMG1の回転軸と車軸に連結された駆動軸とにキャリアとサンギヤとリングギヤとが接続された動力分配統合機構と、駆動軸に接続されたモータMG2と、モータMG1,MG2と電力をやりとりするバッテリとを備えるものにおいて、停車中にエンジンを始動するときには比較的小さな上昇レートや最大トルクを用いてエンジンをクランクキングし、走行中にエンジンを始動するときには比較的大きな上昇レートや最大トルクを用いてエンジンをクランキングするものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このハイブリッド自動車では、こうした制御により、停車中にエンジンを始動するときには、クランキングに伴うマウント反力を小さくしてマウント反力に起因する振動を抑制し、走行中にエンジンを始動するときには、エンジンの回転数を共振回転数帯をより迅速に通過させることによって共振による振動などを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−76580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうしたハイブリッド自動車では、車速によって、走行中にモータMG1によってエンジンをクランキングして始動する際におけるエンジンのクランキング開始から始動完了までの間のモータMG1の回転数の変化範囲が異なるため、この際のモータMG1の消費電力の最大値(発電電力の最小値)なども異なる。このため、走行中にエンジンを始動する際に、車速に拘わらず一定の最大トルクを用いてモータMG1によってエンジンをクランキングするものとすると、車速によっては二次電池の性能を十分に生かし切れない場合が生じる。
【0005】
本発明のハイブリッド自動車は、走行中の内燃機関の始動を走行状態に応じてより適したものとすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハイブリッド自動車は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のハイブリッド自動車は、
内燃機関と、動力を入出力可能な発電機と、車軸に連結された駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸とが共線図上で前記駆動軸,前記出力軸,前記回転軸の順に3つの回転要素に接続された遊星歯車機構と、前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、前記発電機および前記電動機と電力のやりとりが可能な二次電池と、を備えるハイブリッド自動車であって、
走行中に前記内燃機関の始動指示がなされたとき、車速が高いほど大きくなる傾向のモータリングトルクが前記発電機から出力されて前記内燃機関がモータリングされるよう該発電機を制御し、該モータリングに伴って前記内燃機関が始動されるよう該内燃機関を制御する制御手段、
を備えることを要旨とする。
【0008】
このハイブリッド自動車では、走行中に内燃機関の始動指示がなされたときには、車速が高いほど大きくなる傾向のモータリングトルクが発電機から出力されて内燃機関がモータリングされるよう発電機を制御し、モータリングに伴って内燃機関が始動されるよう内燃機関を制御する。共線図上で駆動軸および電動機の回転軸,内燃機関の出力軸,発電機の回転軸の順となる構成では、内燃機関の運転を停止して走行しているときには車速が高いほど発電機の回転数が小さくなる(反対方向に大きくなる)ため、走行中に内燃機関を始動する際には、車速が高いほど、発電機による消費電力の最大値(発電電力の最小値)や内燃機関の始動に要する消費電力量が小さくなりやすく(発電電力量として大きくなりやすく)、二次電池からの出力が最大許容電力に対して余裕を生じやすい。したがって、車速が高いほど大きなモータリングトルクを発電機から出力して内燃機関をモータリングして始動することにより、高車速で走行している最中に内燃機関を始動する際に、二次電池の性能をより発揮させて内燃機関を迅速にモータリングして始動することができると共に、内燃機関の回転数が共振回転数帯で滞留する時間をより短くして共振による振動などをより抑制することができる。即ち、内燃機関の始動を走行状態に応じてより適したものとすることができる。
【0009】
こうした本発明のハイブリッド自動車において、前記制御手段は、前記駆動軸に要求される要求トルクと、前記発電機から出力されて前記駆動軸に作用するトルクをキャンセルするためのキャンセルトルクと、車両の振動を抑制するための制振トルクと、の和に基づくトルクが前記電動機から出力されるよう前記電動機を制御する手段である、ものとすることもできる。こうすれば、車両の振動をより抑制することができる。
【0010】
また、本発明のハイブリッド自動車において、前記制御手段は、前記電動機から出力すべき目標トルクと該電動機の回転数とに基づいて、直流電圧をパルス幅変調電圧として前記電動機に供給するパルス幅変調制御モードと直流電圧を矩形波電圧として前記電動機に供給する矩形波制御モードとを含む複数の制御モードから一つの制御モードを選択し、前記電動機を駆動するインバータ回路を前記選択した制御モードによって制御する手段である、ものとすることもできる。制御モードは、通常、電動機の目標トルクや回転数が低い側から順にパルス幅変調制御モード,矩形波制御モードと定められるから、電動機の回転数が高い領域、即ち、車速が高い領域では、矩形波制御モードが設定される。この矩形波制御モードは、パルス幅変調制御モードに比して大トルクの出力が可能になると共にスイッチング損失などの低減を図ることができるものの制御性が低下するため、車両に振動が生じやすい。したがって、この場合、車速が高いほど大きなモータリングトルクを発電機から出力して内燃機関を迅速にモータリングして始動することの意義が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される始動時駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図4】エンジン22を始動する際の動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を示す説明図である。
【図5】制御モード設定用マップの一例を示す説明図である。
【図6】ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行されるモータリングトルク設定ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図7】最大トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図8】比較的低車速で走行している最中にエンジン22を始動するときと比較的高車速で走行している最中にエンジン22を始動するときのモータリングトルクとしてのモータMG1のトルク指令Tm1*とエンジン22の回転数Neとの時間変化の様子の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、例えばガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関として構成されたエンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して複数のピニオンギヤ33を連結したキャリア34が接続されると共に駆動輪63a,63bにデファレンシャルギヤ62とギヤ機構60とを介して連結された駆動軸としてのリングギヤ軸32aにリングギヤ32が接続されて遊星歯車機構として構成された3軸式の動力分配統合機構30と、例えば周知の同期発電電動機として構成されて動力分配統合機構30のサンギヤ31にロータが接続されたモータMG1と、例えば周知の同期発電電動機として構成されて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに減速ギヤ35を介してロータが接続されたモータMG2と、モータMG1,MG2を駆動するためのインバータ41,42と、例えばリチウムイオン二次電池として構成されてインバータ41,42を介してモータMG1,MG2と電力のやりとりを行なうバッテリ50と、車両全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70と、を備える。
【0014】
エンジン22は、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により吸入空気量調節制御や燃料噴射制御,点火制御などの運転制御を受けている。エンジンECU24には、エンジン22の運転状態を検出する各種センサからの信号、例えば、エンジン22のクランクシャフト26のクランク角を検出する図示しないクランクポジションセンサからのクランクポジションなどが入力されている。また、エンジンECU24からは、エンジン22を運転制御するための種々の制御信号、例えば、スロットルバルブや燃料噴射弁,点火プラグ,可変バルブタイミング機構への駆動制御信号などが出力されている。エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、エンジンECU24は、図示しないクランクポジションセンサからのクランクポジションに基づいてクランクシャフト26の回転数、即ちエンジン22の回転数Neも演算している。
【0015】
モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2のロータの回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からの信号に基づいてモータMG1,MG2の回転角速度ωm1,ωm2や回転数Nm1,Nm2を演算したり、リングギヤ軸32aに換算した駆動輪63a,63bの回転角速度としての駆動輪回転角速度ωbをモータMG2の回転角速度ωm2に基づいて演算したりしている。実施例では、駆動輪回転角速度ωbは、モータMG2から駆動輪39a,39bの間の特性に限定することにより得られる2慣性系の制御系設計モデルに対して制御サンプル時間で0次ホールドを用いて離散化したモデルを用いて演算するものとした。
【0016】
バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧やバッテリ50の正極側の出力端子に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。また、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために、電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいてバッテリ50に蓄えられている蓄電量の全容量(蓄電容量)に対する割合である蓄電割合SOCを演算したり、演算した蓄電割合SOCと電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算したりしている。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の蓄電割合SOCに基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。
【0017】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0018】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや、要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード,エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。なお、トルク変換運転モードおよび充放電運転モードは、いずれもエンジン22の運転を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御するモードであるから、両者を合わせてエンジン運転モードとして考えることができる。
【0019】
エンジン運転モードでは、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accと車速センサ88からの車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*を設定し、設定した要求トルクTr*に駆動軸としてのリングギヤ軸32aの回転数Nr(例えば、モータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除して得られる回転数や車速Vに換算係数を乗じて得られる回転数)を乗じて走行に要求される走行用パワーPdrv*を計算すると共に計算した走行用パワーPdrv*からバッテリ50の蓄電割合SOCに基づいて得られるバッテリ50の充放電要求パワーPb*(バッテリ50から放電するときが正の値)を減じてエンジン22から出力すべきパワーとしての要求パワーPe*を設定し、要求パワーPe*を効率よくエンジン22から出力することができるエンジン22の回転数NeとトルクTeとの関係としての動作ライン(例えば燃費最適動作ライン)を用いてエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定し、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で、エンジン22を目標回転数Ne*で回転させるための回転数フィードバック制御によりモータMG1から出力すべきトルクとしてのトルク指令Tm1*を設定すると共にモータMG1をトルク指令Tm1*で駆動したときにプラネタリギヤ30を介して駆動軸としてのリングギヤ軸32aに作用するトルクを要求トルクTr*から減じてモータMG2のトルク指令Tm2*を設定し、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とについてはエンジンECU24に送信し、トルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40に送信する。そして、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによってエンジン22が運転されるようエンジン22における吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御などを行なう。また、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、モータMG1,MG2がトルク指令Tm1*,Tm2*で駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。このエンジン運転モードでは、エンジン22の要求パワーPe*がエンジン22を効率よく運転するためにエンジン22を運転停止した方がよいとして定められた閾値Pstop以下に至ったときに、エンジン22の運転を停止してモータ運転モードに移行する。
【0020】
モータ運転モードでは、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*を設定し、モータMG1のトルク指令Tm1*に値0を設定すると共にバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で要求トルクTr*が駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG2のトルク指令Tm2*を設定してこれらをモータECU40に送信する。そして、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、モータMG1,MG2がトルク指令Tm1*,Tm2*で駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。このモータ運転モードでは、要求トルクTr*に駆動軸としてのリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じて得られる走行用パワーPdrv*からバッテリ50の充放電要求パワーPb*を減じて得られるエンジン22の要求パワーPe*がエンジン22を効率よく運転するためにエンジン22を始動した方がよいとして定められた閾値Pstart以上に至ったときに、エンジン22を始動してエンジン運転モードに移行する。
【0021】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に、エンジン22を始動する際の動作について説明する。図2は、ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される始動時駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【0022】
始動時駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,エンジン22の回転数Ne,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,バッテリ50の入出力制限Win,Woutなど制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、エンジン22の回転数Neは、図示しないクランクポジションセンサからの信号に基づいて演算されたものをエンジンECU24から通信により入力するものとした。また、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44により検出されたモータMG1,MG2のロータの回転位置に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。さらに、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、バッテリ50の電池温度Tbとバッテリ50の蓄電割合SOCとに基づいて設定されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。
【0023】
こうしてデータを入力すると、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいて車両に要求されるトルクとして駆動輪63a,63bに連結された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*を設定する(ステップS110)。要求トルクTr*は、実施例では、アクセル開度Accと車速Vと要求トルクTr*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する要求トルクTr*を導出して設定するものとした。図3に要求トルク設定用マップの一例を示す。
【0024】
続いて、エンジン22をモータリングするためのモータリングトルクとしてのモータMG1のトルク指令Tm1*を設定する(ステップS120)。このモータMG1のトルク指令Tm1*は、実施例では、後述のモータリングトルク設定ルーチンにより設定されるものを用いるものとした。
【0025】
こうしてモータMG1のトルク指令Tm1*を設定すると、要求トルクTr*とモータMG1のトルク指令Tm1*と動力分配統合機構30のギヤ比ρと減速ギヤ35のギヤ比Grと車両の振動(駆動軸としてのリングギヤ軸32aの回転変動)を抑制するための制振トルクTvとを用いてモータMG2から出力すべきトルクの仮の値である仮トルクTm2tmpを次式(1)により計算すると共に(ステップS130)、バッテリ50の入出力制限Win,Woutと設定したトルク指令Tm1*に現在のモータMG1の回転数Nm1を乗じて得られるモータMG1の消費電力(発電電力)との差分をモータMG2の回転数Nm2で割ることによりモータMG2から出力してもよいトルクの上下限としてのトルク制限Tm2min,Tm2maxを式(2)および式(3)により計算し(ステップS140)、設定した仮トルクTm2tmpを式(4)によりトルク制限Tm2min,Tm2maxで制限してモータMG2のトルク指令Tm2*を設定し(ステップS150)、設定したモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40に送信する(ステップS160)。エンジン22を始動する際の動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を図4に示す。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤ31の回転数を示し、C軸はエンジン22の回転数Neであるキャリア34の回転数を示し、R軸はモータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除したリングギヤ32の回転数Nrを示す。なお、R軸上の2つの太線矢印は、モータMG1から出力されたトルクTm1がリングギヤ軸32aに作用するトルクと、モータMG2から出力されるトルクTm2が減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに作用するトルクとを示す。式(1)の右辺第1項は、この共線図を用いれば容易に導くことができる。また、制振トルクTvは、実施例では、リングギヤ軸32aに換算した駆動輪63a,63bの回転角速度としての駆動輪回転角速度ωbとモータMG2の回転角速度ωm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除したものとの差に制御ゲインkvを乗じたものとして式(5)により計算するものとした。なお、駆動輪回転角速度ωbやモータMG2の回転角速度ωm2は、回転位置検出センサ44により検出されたモータMG2の回転子の回転位置に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。したがって、モータMG2から出力するトルクは、要求トルクTr*とモータMG1から出力されてリングギヤ軸32aに作用するトルク(−Tm1*/ρ)と制振トルクTvとの和のトルクをバッテリ50の入出力制限Win,Woutで制限したトルクとなる。さらに、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*,Tm2*でモータMG1,MG2が駆動されるインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。こうしたモータMG1,MG2の制御により、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で、車両の振動を抑制しつつモータMG1によってエンジン22をモータリングしながら走行することができる。
【0026】
Tm2tmp=(Tr*+Tm1*/ρ)/Gr+Tv (1)
Tm2min=(Win-Tm1*・Nm1)/Nm2 (2)
Tm2max=(Wout-Tm1*・Nm1)/Nm2 (3)
Tm2*=max(min(Tm2tmp,Tm2max),Tm2min) (4)
Tv=kv(ωb-ωm2/Gr) (5)
【0027】
ここで、インバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御について説明する。実施例では、モータECU40は、モータMG1の回転数Nm1とトルク指令Tm1*に基づいて複数の制御モードから一つの制御モードを選択してインバータ41のスイッチング素子をスイッチング制御すると共に、モータMG2の回転数Nm2とトルク指令Tm2*とに基づいて複数の制御モードから一つの制御モードを選択してインバータ42のスイッチング素子をスイッチング制御するものとした。ここで、インバータ41,42の制御モードは、実施例では、それぞれ、回転数Nm1,Nm2とトルク指令Tm1*,Tm2*と制御モードとの関係を予め定めて図示しないROMに記憶しておき、回転数Nmとトルク指令Tm*とが与えられると記憶したマップから対応する制御モードを導出して設定するものとした。図5に制御モード設定用マップの一例を示す。図5では、トルク指令Tm1*,Tm2*をまとめてトルク指令Tm*として示し、回転数Nm1,Nm2をまとめて回転数Nmとして示した。インバータ41,42の制御モードは、図5に示すように、回転数Nm1,Nm2やトルク指令Tm1*,Tm2*が小さい領域から順に、三角波比較によるパルス幅変調(PWM)制御において三角波の振幅以下の振幅の正弦波状の電圧指令を用いて擬似的三相交流電圧としてのPWM信号を生成してインバータ41,42のスイッチング素子をスイッチングする正弦波制御モード,パルス幅変調制御において三角波の振幅より大きな振幅の正弦波状の電圧指令を用いて過変調電圧としてのPWM信号を生成してインバータ41,42のスイッチング素子をスイッチングする過変調制御モード,矩形波電圧を用いてインバータ41,42のスイッチング素子をスイッチングする矩形波制御モードが選択されるよう定められている。モータMG1,MG2やインバータ41,42の特性として、矩形波制御モード,過変調制御モード,正弦波制御モードの順で、モータMG1,MG2の出力応答性や制御性が良くなり、出力可能なトルクが小さくなり、インバータ41,42のスイッチング損失などの損失が大きくなることが分かっているから、低回転数低トルクの領域では、正弦波制御モードでインバータ41,42を制御することにより、モータMG1,MG2の出力応答性や制御性を良くすることができ、高回転数高トルク領域では、矩形波制御モードを用いてインバータ41,42を制御することにより、より大きなトルクを出力可能とすると共にインバータ41,42のスイッチング損失などの損失を低減することができる。
【0028】
続いて、エンジン22の回転数Neをエンジン22の燃料噴射制御や点火制御を開始する回転数としての閾値Nref(例えば、1000rpmや1200rpmなど)と比較し(ステップS170)、エンジン22の回転数Neが閾値Nref未満のときには、ステップS100に戻ってステップS100〜S170の処理を繰り返し実行し、エンジン22の回転数Neが閾値Nref以上に至ると、燃料噴射制御や点火制御を指示するための制御信号をエンジンECU24に送信し(ステップS180)、エンジン22が完爆に至ったか否かを判定し(ステップS190)、未だ完爆に至っていないときにはステップS100に戻り、完爆に至ったときに本ルーチンを終了する。
【0029】
次に、モータMG1のトルク指令Tm1*を設定する処理について図6のモータリングトルク設定ルーチンを用いて設定する。このルーチンは、図2の始動時駆動制御ルーチンと並行してハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される。
【0030】
モータリングトルク設定ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、車速Vを入力すると共に(ステップS200)、入力した車速Vに基づいてモータリングトルクの最大トルクTm1maxを設定する(ステップS210)。ここで、最大トルクTm1maxは、エンジン22を閾値Nref以上の回転数までモータリングすることができる範囲のトルクとして設定されるものであり、実施例では、車速Vと最大トルクTm1maxとの関係を予め定めて最大トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、車速Vが与えられると記憶したマップから対応する最大トルクTm1maxを導出して設定するものとした。最大トルク設定用マップの一例を図7に示す。最大トルクTm1maxは、図示するように、車速Vが高いほど大きくなる傾向に設定するものとした。即ち、車速Vが高いほど大きなモータリングトルクをモータMG1から出力してエンジン22をモータリングするのである。この理由については後述する。
【0031】
こうして最大トルクTm1maxを設定すると、モータMG1のトルク指令Tm1*に値0を設定し(ステップS220)、続いて、モータMG1のトルク指令Tm1*が最大トルクTm1maxに至るまでトルク指令Tm1*を上昇レートTupずつ増加させる処理を実行し(ステップS230,S240)、モータMG1のトルク指令Tm1*が最大トルクTm1maxに至ったときにモータMG1のトルク指令Tm1*に最大トルクTm1maxを設定し(ステップS250)、エンジン22の回転数Neが閾値Nref以上に至るのを待つ(ステップS260,S270)。そして、エンジン22の回転数Neが閾値Nref以上に至ると、モータMG1のトルク指令Tm1*が値0以下に至るまでトルク指令Tm1*を下降レートTdownずつ減少させる処理を実行し(ステップS280)、エンジン22が完爆するのを待って(ステップS290)、モータリングトルク設定ルーチンを終了する。ここで、上昇レートTupや下降レートTdownは、それぞれトルク指令Tm1*の上昇の程度,下降の程度を定めるレート値であり、トルク指令Tm1*を上昇レートTupずつ増加させる処理,トルク指令Tm1*を下降レートTdownずつ減少させる処理を繰り返す時間間隔によって定められる。
【0032】
ここで、車速Vが高いほど大きくなる傾向に最大トルクTm1maxを設定する理由について説明する。モータMG1によってエンジン22をモータリングするときには、上述の図4の共線図から分かるように、モータMG1は、その回転数Nm1が負の領域では回生駆動され、回転数Nm1が正の領域では力行駆動される。そして、モータMG1によるエンジン22のモータリング開始から始動完了までの間のモータMG1の回転数Nm1の変化範囲は車速Vが高いほど小さい側(負の方向に大きい側)となるから、モータMG1によってエンジン22をモータリングする際のモータMG1の消費電力の最大値(発電電力の最小値)である始動時最大消費電力や、エンジン22のモータリング開始から始動完了までの間のモータMG1の消費電力量(発電電力量)である始動時消費電力量は、車速Vが高いほど小さくなる(発電側の値として大きくなる)。また、実施例では、モータ運転モードで走行している最中に走行用パワーPdrv*(=Tr*・Nr)からバッテリ50の充放電要求パワーPb*を減じて得られるエンジン22の要求パワーPe*が閾値Pstart以上に至ったときにエンジン22を始動するものとしたから、エンジン22のモータリングを開始する際のモータMG2の消費電力は車速Vによらず略一定であると考えられる。これらを踏まえると、エンジン22をモータリングする際のバッテリ50からの出力は、車速Vが高いほど出力制限Woutに対して余裕を生じやすいと考えられる。車速Vに拘わらず最大トルクTm1maxを一定とする場合には、停止時や極低車速での走行時にエンジン22を始動する際(モータMG1の始動時最大消費電力や始動時消費電力量が比較的大きいとき)を考慮して最大トルクTm1maxを設定する必要があるため、最大トルクTm1maxを比較的小さく設定しなければならないが、実施例では、車速Vが高いほど大きくなる傾向に最大トルクTm1maxを設定することにより、高車速で走行している最中にエンジン22をモータリングして始動する際に、バッテリ50の性能をより発揮させてエンジン22をより迅速にモータリングして始動することができる。この結果、高車速で走行している最中にエンジン22を始動する際に、エンジン22の回転数Neが共振回転数帯(例えば、200rpm〜700rpmなど)で滞留する時間をより短くすることができ、共振による振動などをより抑制することができる。しかも、実施例では、上述したように、高車速時(モータMG2の回転数Nm2が高いとき)には、矩形波制御モードでインバータ42のスイッチング素子をスイッチング制御するものとしたから、正弦波制御モードや過変調制御モードでインバータ42のスイッチング素子をスイッチング制御する場合に比して制御性が低下することにより、車両の振動を十分に抑制できない場合が生じ得る。このため、このように高車速でエンジン22をより迅速に始動できるようにすることの意義が大きい。
【0033】
図8は、比較的低車速で走行している最中にエンジン22を始動するときと比較的高車速で走行している最中にエンジン22を始動するときのモータリングトルクとしてのモータMG1のトルク指令Tm1*とエンジン22の回転数Neとの時間変化の様子の一例を示す説明図である。図示するように、比較的低車速で走行している最中にエンジン22を始動するときには、エンジン22の始動指示がなされると(時刻T1)、モータMG1のトルク指令Tm1*が比較的小さな最大トルクTm1maxまで上昇レートTupによって上昇して保持されることによってエンジン22の回転数Neが比較的緩やかに上昇し、その後に、エンジン22の回転数Neが閾値Nref以上に至ると(時刻T3)、モータMG1のトルク指令Tm1*が下降レートTdownによって値0まで減少する。したがって、モータMG1の始動時最大消費電力や始動時消費電力量が過剰に大きくなるのを抑制しつつエンジン22をモータリングして始動することができる。一方、比較的高車速で走行している最中にエンジン22を始動するときには、エンジン22の始動指示がなされると(時刻T1)、モータMG1のトルク指令Tm1*が比較的大きな最大トルクTm1maxまで上昇レートTupによって上昇して保持されることによってエンジン22の回転数Neが比較的迅速に上昇し、その後に、エンジン22の回転数Neが閾値Nref以上に至ると(時刻T2)、モータMG1のトルク指令Tm1*が下降レートTdownによって値0まで減少する。したがって、バッテリ50の性能をより発揮させてエンジン22をより迅速にモータリングして始動することができる。また、エンジン22の回転数Neが共振回転数帯で滞留する時間をより短くすることができ、共振による振動などをより抑制することができる。
【0034】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、走行中にエンジン22を始動する際には、車速Vが高いほど大きくなる傾向の最大トルクTm1maxを用いてモータMG1によってエンジン22がモータリングされて始動されるようエンジン22とモータMG1とを制御するから、高車速で走行している最中にエンジン22を始動する際に、バッテリ50の性能をより発揮させてエンジン22をより迅速にモータリングして始動することができると共に、エンジン22の回転数Neが共振回転数帯で滞留する時間をより短くして共振による振動などをより抑制することができる。
【0035】
実施例のハイブリッド自動車20では、走行中にエンジン22を始動する際には、要求トルクTr*とモータMG1から出力されてリングギヤ軸32aに作用するトルク(−Tm1*/ρ)と制振トルクTvとの和のトルクをバッテリ50の入出力制限Win,Woutで制限したトルクをモータMG2から出力するものとしたが、制振トルクTvを考慮せず、要求トルクTr*とモータMG1から出力されてリングギヤ軸32aに作用するトルク(−Tm1*/ρ)との和のトルクをバッテリ50の入出力制限Win,Woutで制限したトルクをモータMG2から出力するものとしてもよい。
【0036】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2のトルク指令Tm2*と回転数Nm2とに基づいて、正弦波制御モード,過変調制御モード,矩形波制御モードから一つの制御モードを選択してインバータ42のスイッチング素子をスイッチング制御するものとしたが、トルク指令Tm2*と回転数Nm2とのうち一方だけに基づいて制御モードを選択してインバータ42のスイッチング素子をスイッチング制御するものとしてもよいし、トルク指令Tm2*や回転数Nm2に拘わらず予め定められた制御モードでインバータ42のスイッチング素子をスイッチング制御するものとしてもよい。
【0037】
実施例のハイブリッド自動車20では、走行中にエンジン22を始動する際には、車速Vが高いほど大きくなる傾向に最大トルクTm1maxを設定し、上昇レートTupや下降レートTdownについては車速Vに拘わらず一定値としたが、上昇レートTupや下降レートTdownについても車速Vが高いほど大きくなる傾向に設定するものとしてもよい。
【0038】
実施例のハイブリッド自動車20では、駆動輪回転角速度ωbについては、モータMG2から駆動輪63a,63bの間の特性に限定することにより得られる2慣性系の制御系設計モデルに対して制御サンプル時間で0次ホールドを用いて離散化したモデルを用いて演算するものとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、駆動輪63a,63bに車輪速センサを取り付けて車輪速センサからの信号に基づいて演算するものなどとしてもよい。
【0039】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「内燃機関」に相当し、モータMG1が「発電機」に相当し、動力分配統合機構30が「遊星歯車機構」に相当し、モータMG2が「電動機」に相当し、バッテリ50が「二次電池」に相当し、図2の始動時駆動制御ルーチンや図3のモータリングトルク設定ルーチンを実行するハイブリッド用電子制御ユニット70と、エンジンECU24と、モータECU40とが「制御手段」に相当する。
【0040】
ここで、「内燃機関」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関として構成されたエンジン22に限定されるものではなく、水素エンジンなど、如何なるタイプの内燃機関であっても構わない。「発電機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG1に限定されるものではなく、誘導電動機など、動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの発電機であっても構わない。「遊星歯車機構」としては、遊星歯車機構として構成された3軸式の動力分配統合機構30に限定されるものではなく、車軸に連結された駆動軸と内燃機関の出力軸と発電機の回転軸とが共線図上で駆動軸,出力軸,回転軸の順に3つの回転要素に接続されたものであれば如何なるものとしても構わない。「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、駆動軸に動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「二次電池」としては、リチウムイオン二次電池として構成されたバッテリ50に限定されるものではなく、ニッケル水素二次電池やニッケルカドミウム二次電池,鉛蓄電池など、発電機や電動機と電力のやりとりが可能なものであれば如何なるタイプの二次電池であっても構わない。「制御手段」としては、ハイブリッド用電子制御ユニット70とエンジンECU24とモータECU40とからなる組み合わせに限定されるものではなく、単一の電子制御ユニットにより構成されるなどとしてもよい。また、「制御手段」としては、走行中にエンジン22を始動する際には、車速Vが高いほど大きくなる傾向の最大トルクTm1maxを用いてモータMG1によってエンジン22がモータリングされて始動されるようエンジン22とモータMG1とを制御するものに限定されるものではなく、走行中に内燃機関の始動指示がなされたとき、車速が高いほど大きくなる傾向のモータリングトルクが発電機から出力されて内燃機関がモータリングされるよう発電機を制御し、モータリングに伴って内燃機関が始動されるよう内燃機関を制御するものであれば如何なるものとしても構わない。
【0041】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0042】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、ハイブリッド自動車の製造産業に利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
20 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、64a,64b 車輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、動力を入出力可能な発電機と、車軸に連結された駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸とが共線図上で前記駆動軸,前記出力軸,前記回転軸の順に3つの回転要素に接続された遊星歯車機構と、前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、前記発電機および前記電動機と電力のやりとりが可能な二次電池と、を備えるハイブリッド自動車であって、
走行中に前記内燃機関の始動指示がなされたとき、車速が高いほど大きくなる傾向のモータリングトルクが前記発電機から出力されて前記内燃機関がモータリングされるよう該発電機を制御し、該モータリングに伴って前記内燃機関が始動されるよう該内燃機関を制御する制御手段、
を備えるハイブリッド自動車。
【請求項2】
請求項1記載のハイブリッド自動車であって、
前記制御手段は、前記駆動軸に要求される要求トルクと、前記発電機から出力されて前記駆動軸に作用するトルクをキャンセルするためのキャンセルトルクと、車両の振動を抑制するための制振トルクと、の和に基づくトルクが前記電動機から出力されるよう前記電動機を制御する手段である、
ハイブリッド自動車。
【請求項3】
請求項1または2記載のハイブリッド自動車であって、
前記制御手段は、前記電動機から出力すべき目標トルクと該電動機の回転数とに基づいて、直流電圧をパルス幅変調電圧として前記電動機に供給するパルス幅変調制御モードと直流電圧を矩形波電圧として前記電動機に供給する矩形波制御モードとを含む複数の制御モードから一つの制御モードを選択し、前記電動機を駆動するインバータ回路を前記選択した制御モードによって制御する手段である、
ハイブリッド自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−171599(P2012−171599A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38762(P2011−38762)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】