説明

ハイブリッド自動車

【課題】浄化触媒の暖機を迅速に行なうと共に排気エミッションの悪化を抑制する。
【解決手段】浄化触媒の暖機が要求されているとき(S120)、車両が停車し(S130)、且つ、エンジンの要求パワーPe*が所定パワーPref以上の場合には(S140)、エンジンから要求パワーPe*を出力(負荷運転)しながら浄化触媒の暖機を行なう暖機制御を実行し(S150〜S170)、車両が停車し且つ要求パワーPe*が所定パワーPref未満のときには、エンジンをアイドリング回転数Nidleで自立運転しながら浄化触媒の暖機を行なう暖機制御を実行する(S200〜S220)。これにより、エンジンの負荷運転により浄化触媒を迅速に暖機することができると共に要求パワーPe*が比較的小さい状態で負荷運転を継続することによる排気エミッションの悪化を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気系に浄化触媒が設けられたエンジンと、動力を入出力可能な発電機と、前記エンジンの出力軸と前記発電機の回転軸と駆動軸とに接続されたプラネタリギヤと、前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、前記浄化触媒の暖機が要求されたときには該浄化触媒が暖機されるよう前記エンジンと前記発電機とを制御する触媒暖機制御を実行する触媒暖機制御手段とを備えるハイブリッド自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハイブリッド自動車としては、三元触媒を有する浄化装置が排気系に取り付けられたエンジンと、発電が可能なモータMG1と、エンジンの出力軸とモータMG1の回転軸と駆動軸とに接続された遊星歯車機構と、駆動軸に動力を入出力可能なモータMG2とを備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この自動車では、浄化装置の暖機要求がなされているときには、モータMG1のトルクを値0としてエンジンがアイドル回転数で自立運転するようエンジンとモータMG1とを運転制御すると共に要求トルクがモータMG2から駆動軸に出力されるようモータMG2を駆動制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−274628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したハイブリッド自動車では、自立運転だけでエンジンを暖機すると、暖機に要する時間が長くなる。一方、上述したタイプのハイブリッド自動車は、モータMG1を発電させながらエンジンを負荷運転させることができるため、エンジンが負荷運転するよう運転制御することにより、エンジンを暖機することも考えられる。しかしながら、浄化触媒が活性化していない状態で長時間に亘ってエンジンの負荷運転が継続されると、排気エミッションが悪化してしまう。
【0005】
本発明のハイブリッド自動車は、浄化触媒の暖機を迅速に行なうと共に排気エミッションの悪化を抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハイブリッド自動車は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のハイブリッド自動車は、
排気系に浄化触媒が設けられたエンジンと、動力を入出力可能な発電機と、前記エンジンの出力軸と前記発電機の回転軸と駆動軸とに接続されたプラネタリギヤと、前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、前記浄化触媒の暖機が要求されたときには該浄化触媒が暖機されるよう前記エンジンと前記発電機とを制御する触媒暖機制御を実行する触媒暖機制御手段とを備えるハイブリッド自動車において、
前記触媒暖機制御手段は、停車時には、前記触媒暖機制御として、前記エンジンを自立運転しながら前記浄化触媒が暖機されるよう該エンジンと前記発電機とを制御する自立運転触媒暖機制御と、前記エンジンを負荷運転しながら前記浄化触媒が暖機されるよう該エンジンと前記発電機とを制御する負荷運転触媒暖機制御とを切り替えて実行する手段である
ことを要旨とする。
【0008】
この本発明のハイブリッド自動車では、浄化触媒の暖機が要求されたときには浄化触媒が暖機されるようエンジンと発電機とを制御する触媒暖機制御として、停車時には、エンジンを自立運転しながら浄化触媒が暖機されるようエンジンと発電機とを制御する自立運転触媒暖機制御と、エンジンを負荷運転しながら浄化触媒が暖機されるようエンジンと発電機とを制御する負荷運転触媒暖機制御とを切り替えて実行する。これにより、排気エミッションを良好にした状態で浄化触媒を暖機する自立運転触媒暖機制御と、浄化触媒の暖機を迅速に行なう負荷運転触媒暖機制御とを必要に応じて切り替えることで、浄化触媒の暖機を迅速に行なうと共に排気エミッションの悪化を抑制することができる。
【0009】
こうした本発明のハイブリッド自動車において、前記触媒暖機制御手段は、前記エンジンに要求される要求負荷が所定負荷未満のときには前記自立運転触媒暖機制御を実行し、前記要求負荷が前記所定負荷以上のときには前記負荷運転触媒暖機制御を実行する手段であるものとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】エンジン22の構成の概略を示す構成図である。
【図3】ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される触媒暖機制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図4】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、ガソリンや軽油などを燃料として動力を出力するエンジン22と、エンジン22を駆動制御するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にキャリアが接続されると共に駆動輪63a,63bにデファレンシャルギヤ62を介して連結された駆動軸32にリングギヤが接続されたプラネタリギヤ30と、例えば同期発電電動機として構成されて回転子がプラネタリギヤ30のサンギヤに接続されたモータMG1と、例えば同期発電電動機として構成されて回転子が駆動軸32に接続されたモータMG2と、モータMG1,MG2を駆動するためのインバータ41,42と、インバータ41,42の図示しないスイッチング素子をスイッチング制御することによってモータMG1,MG2を駆動制御するモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40と、例えばリチウムイオン二次電池として構成されたバッテリ50と、インバータ41,42が接続された電力ライン(以下、高電圧系電力ラインという)54aとバッテリ50が接続された電力ライン(以下、電池電圧系電力ラインという)54bとに接続されて高電圧系電力ライン54aと電池電圧系電力ライン54bとの間で電力のやりとりを行なう昇圧コンバータ55と、バッテリ50を管理するバッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52と、車両の駆動系全体を制御するハイブリッド用電子制御ユニット(以下、HVECUという)70と、を備える。
【0013】
エンジン22は、図2に示すように、エアクリーナ122により清浄された空気をスロットルバルブ124を介して吸入すると共に燃料噴射弁126からガソリンを噴射して吸入された空気とガソリンとを混合し、この混合気を吸気バルブ128を介して燃料室に吸入し、点火プラグ130による電気火花によって爆発燃焼させて、そのエネルギにより押し下げられるピストン132の往復運動をクランクシャフト26の回転運動に変換する。エンジン22からの排気は、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC),窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する浄化触媒(三元触媒)134aを有する浄化装置134を介して外気へ排出される。
【0014】
エンジンECU24は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。エンジンECU24には、エンジン22の状態を検出する種々のセンサからの信号、例えば、クランクシャフト26の回転位置を検出するクランクポジションセンサ140からのクランクポジションθcrやエンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサ142からの冷却水温Tw,燃焼室内に取り付けられた圧力センサからの筒内圧力Pin,燃焼室へ吸排気を行なう吸気バルブ128や排気バルブを開閉するカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサ144からのカムポジションθca,スロットルバルブ124のポジションを検出するスロットルバルブポジションセンサ146からのスロットル開度TH,吸気管に取り付けられたエアフローメータ148からの吸入空気量Qa,同じく吸気管に取り付けられた温度センサ149からの吸気温Ta,浄化触媒134aの温度を検出する温度センサ134bからの触媒温度Tc,排気系に取り付けられた空燃比センサ135aからの空燃比AF,同じく排気系に取り付けられた酸素センサ135bからの酸素信号O2などが入力ポートを介して入力されている。また、エンジンECU24からは、エンジン22を駆動するための種々の制御信号、例えば、燃料噴射弁126への駆動信号や、スロットルバルブ124のポジションを調節するスロットルモータ136への駆動信号、イグナイタと一体化されたイグニッションコイル138への制御信号、吸気バルブ128の開閉タイミングを変更可能な可変バルブタイミング機構150への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。なお、エンジンECU24は、HVECU70と通信しており、HVECU70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータを出力する。なお、エンジンECU24は、クランクポジションセンサ140からのクランクポジションθcrに基づいてクランクシャフト26の回転数即ちエンジン22の回転数Neを演算している。また、エンジンECU24は、温度センサ134bからの触媒温度Tcが浄化触媒143aが活性化する温度範囲の下限付近に定められている活性化温度未満のときには、浄化触媒134aの暖気が必要と判断して触媒暖気要求フラグFcに値1を設定し、触媒温度Tcが活性化温度以上のときには、浄化触媒134aの暖気は不要あるいは完了したと判断して触媒暖気要求フラグFcを値0を設定している。なお、触媒暖機フラグFcは、触媒温度Tcを直接に検出する温度センサ134bを用いて設定するものに限られず、水温センサ142からの冷却水温Twなどに基づいて設定するものとしてもよい。
【0015】
モータECU40は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する図示しない回転位置検出センサからの回転位置θm1,θm2や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力ポートを介して入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42の図示しないスイッチング素子へのスイッチング制御信号などが出力ポートを介して出力されている。また、モータECU40は、HVECU70と通信しており、HVECU70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをHVECU70に出力する。なお、モータECU40は、回転位置検出センサからのモータMG1,MG2の回転子の回転位置θm1,θm2に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2も演算している。
【0016】
バッテリECU52は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧Vbやバッテリ50の出力端子に接続された電力ラインに取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流Ib,バッテリ50に取り付けられた図示しない温度センサからの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりHVECU70に送信する。また、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために、電流センサにより検出された充放電電流Ibの積算値に基づいてそのときのバッテリ50から放電可能な電力の容量の全容量に対する割合である蓄電割合SOCを演算したり、演算した蓄電割合SOCと電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算したりしている。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の蓄電割合SOCに基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。
【0017】
HVECU70は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。HVECU70には、シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSPやアクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。HVECU70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0018】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20では、運転者によるアクセルペダルの踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸32に出力すべき要求トルクTr*を計算し、この要求トルクTr*に対応する要求動力が駆動軸32に出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2との運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてがプラネタリギヤ30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されて駆動軸32に出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや、要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部がプラネタリギヤ30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力が駆動軸32に出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード,エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力を駆動軸32に出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。なお、トルク変換運転モードと充放電運転モードとは、いずれもエンジン22の運転を伴って要求動力が駆動軸32に出力されるようエンジン22とモータMG1とモータMG2とを制御するモードであり、実質的な制御における差異はないため、以下、両者を合わせてエンジン運転モードという。
【0019】
エンジン運転モードでは、HVECU70は、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accと車速センサ88からの車速Vとに基づいて駆動軸32に出力すべき要求トルクTr*を設定し、設定した要求トルクTr*に駆動軸32の回転数Nr(例えば、モータMG2の回転数Nm2や車速Vに換算係数を乗じて得られる回転数)を乗じて走行に要求される走行用パワーPdrv*を計算すると共に計算した走行用パワーPdrv*からバッテリ50の蓄電割合SOCに基づいて得られるバッテリ50の充放電要求パワーPb*(バッテリ50から放電するときが正の値)を減じ更にロス(損失)を加えることによりエンジン22から出力すべきパワーとしての要求パワーPe*を設定する。そして、要求パワーPe*を効率よくエンジン22から出力することができるエンジン22の回転数NeとトルクTeとの関係としての動作ライン(例えば燃費最適動作ライン)を用いてエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定し、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で、エンジン22の回転数Neが目標回転数Ne*となるようにするための回転数フィードバック制御によってモータMG1から出力すべきトルクとしてのトルク指令Tm1*を設定すると共にモータMG1をトルク指令Tm1*で駆動したときにプラネタリギヤ30を介して駆動軸32に作用するトルクを要求トルクTr*から減じてモータMG2のトルク指令Tm2*を設定し、設定した目標回転数Ne*と目標トルクTe*とについてはエンジンECU24に送信し、トルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40に送信する。目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによってエンジン22が効率よく運転されるようエンジン22の吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御などを行ない、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、モータMG1,MG2がトルク指令Tm1*,Tm2*で駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。
【0020】
モータ運転モードでは、HVECU70は、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸32に出力すべき要求トルクTr*を設定し、モータMG1のトルク指令Tm1*に値0を設定する共にバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で要求トルクTr*が駆動軸32に出力されるようモータMG2のトルク指令Tm2*を設定してモータECU40に送信する。そして、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、モータMG1,MG2がトルク指令Tm1*,Tm2*で駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。
【0021】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に、浄化触媒134aを暖機する際の動作について説明する。図3は、HVECU70のCPU72により実行される触媒暖気制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば、数msec毎)に繰り返し実行される。
【0022】
触媒暖気制御ルーチンが実行されると、HVECU70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度AccやモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,車速センサ88からの車速V,触媒暖気要求フラグFcなどの制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサからのモータMG1,MG2の回転子の回転位置θm1,θm2に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。また、触媒暖気要求フラグFcは、前述したように、エンジンECU24により設定されたものを通信により入力するものとした。
【0023】
こうして必要なデータを入力すると、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸32に要求される要求トルクTr*を設定すると共にエンジン22から出力すべき要求パワーPe*を設定する(ステップS110)。なお、要求パワーPe*は、前述したように、要求トルクTr*に駆動軸32の回転数Nrを乗じたものからバッテリ50の充放電要求パワーPb*(バッテリ50から放電するときが正の値)を減じてロス(損失)を加えることにより設定することができる。
【0024】
次に、触媒暖機要求フラグFcが値1か否か、即ち、浄化触媒134aの暖機が要求されているか否かを判定する(ステップS120)。触媒暖機要求フラグFcが値1でないときには、浄化触媒134aの暖機は要求されていないと判断し、そのまま本ルーチンを終了する。一方、触媒暖機要求フラグFcが値1のときには、車速Vが停車とみなせる所定車速(例えば、時速5kmなど)Vref未満か否か(ステップS130)、要求パワーPe*が所定パワー(例えば、1kwなど)Pref未満か否か(ステップS140)をそれぞれ判定する。ここで、停車時を考えると、車速Vは値0付近にあり、走行用パワーPdrv*は実質的に値0となるから、ステップS140の判定は充放電要求パワーPb*にマイナスの符号を付したものとロス(損失)との和のパワー、即ちバッテリ50に要求される充電パワーが所定パワーPref未満か否かを判定するものとなる。車速Vが所定車速Vref以上と判定されたり、要求パワーPe*が所定パワーPref以上と判定されたときには、要求パワーPe*を効率良くエンジン22から出力するためのエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定してエンジンECU24に送信すると共に(ステップS150)、浄化触媒134aの暖機を促進させるために点火時期を遅角させる点火遅角指令をエンジンECU24に送信する(ステップS160)。そして、入出力制限Win,Woutの範囲内で、回転数フィードバック制御によりエンジン22の回転数Neが目標回転数Ne*となるようにするためのモータMG1のトルク指令Tm1*を設定すると共に(ステップS170)、要求トルクTr*を駆動軸32に出力するためのモータMG2のトルク指令Tm2*を設定し(ステップS180)、設定したトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40に送信して(ステップS190)、本ルーチンを終了する。このように、要求パワーPe*が所定パワーPref以上のときにはエンジン22から要求パワーPe*を出力(負荷運転)しながら浄化触媒134aを暖機することで、比較的短時間で暖機を完了させることができる。
【0025】
一方、ステップS130で車速Vが所定車速Vref未満と判定され且つステップS140で要求パワーPe*が所定パワーPref未満と判定されると、目標回転数Ne*にアイドリング回転数Nidleを設定し、エンジン22が目標回転数Ne*で自立運転するようエンジンECU24に自立運転指令を送信すると共に(ステップS200)、点火時期が遅角されるよう前述した点火遅角指令をエンジンECU24に送信する(ステップS210)。そして、モータMG1のトルク指令Tm1*に値0を設定すると共に(ステップS220)、要求トルクTr*を駆動軸32に出力するためのモータMG2のトルク指令Tm2*を設定し(ステップS180)、設定したトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40に送信して(ステップS190)、本ルーチンを終了する。このように、停車時に要求パワーPe*即ちバッテリ50に要求される充電パワーが所定パワーPref未満のときには、エンジン22をアイドリング回転数Nidleで自立運転しながら浄化触媒134aを暖機する。これは、要求パワーPe*が小さく低負荷でエンジン22の運転を継続すると、排気エミッションが悪化することに基づく。
【0026】
なお、こうした制御によって浄化触媒134aの暖機が完了すると、触媒暖機要求フラグFcには値0が設定されるため、ステップS120では否定的な判定がなされ、ステップS130〜S220の処理は実行されなくなる。
【0027】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、車両の停車時に浄化触媒134aの暖機が要求されているとき、エンジン22の要求パワーPe*が所定パワーPref以上の場合にはエンジン22から要求パワーPe*を出力(負荷運転)しながら浄化触媒134aが暖機されるようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御し、要求パワーPe*が所定パワーPref未満の場合にはエンジン22を自立運転しながら浄化触媒134aが暖機されるようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御するから、エンジン22の負荷運転により浄化触媒134aを迅速に暖機することができると共に要求パワーPe*が比較的小さい状態で負荷運転を継続することによる排気エミッションの悪化を抑制することができる。
【0028】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2からの動力を駆動軸32に出力するものとしたが、図4の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2からの動力を駆動軸32が接続された車軸(駆動輪63a,63bが接続された車軸)とは異なる車軸(図4における車輪64a,64bに接続された車軸)に接続するものとしてもよい。
【0029】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「エンジン」に相当し、モータMG1が「発電機」に相当し、モータMG2が「電動機」に相当し、図3の触媒暖機制御ルーチンを実行するHVECU70とエンジン22を運転制御するエンジンECU24とモータMG1,MG2を駆動制御するモータECU40とが「触媒暖機制御手段」に相当する。なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0030】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、自動車産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0032】
20,120 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、30 プラネタリギヤ、32 駆動軸、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、50 バッテリ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、64a,64b 車輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット(HVECU)、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、122 エアクリーナ、124 スロットルバルブ、126 燃料噴射弁、128 吸気バルブ、130 点火プラグ、132 ピストン、134 浄化装置、134a 浄化触媒、134b 温度センサ、135a 空燃比センサ、135b 酸素センサ、136 スロットルモータ、138 イグニッションコイル、140 クランクポジションセンサ、142 水温センサ、144 カムポジションセンサ、146 スロットルバルブポジションセンサ、148 エアフローメータ、149 温度センサ、150 可変バルブタイミング機構、MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気系に浄化触媒が設けられたエンジンと、動力を入出力可能な発電機と、前記エンジンの出力軸と前記発電機の回転軸と駆動軸とに接続されたプラネタリギヤと、前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、前記浄化触媒の暖機が要求されたときには該浄化触媒が暖機されるよう前記エンジンと前記発電機とを制御する触媒暖機制御を実行する触媒暖機制御手段とを備えるハイブリッド自動車において、
前記触媒暖機制御手段は、停車時には、前記触媒暖機制御として、前記エンジンを自立運転しながら前記浄化触媒が暖機されるよう該エンジンと前記発電機とを制御する自立運転触媒暖機制御と、前記エンジンを負荷運転しながら前記浄化触媒が暖機されるよう該エンジンと前記発電機とを制御する負荷運転触媒暖機制御とを切り替えて実行する手段である
ことを特徴とするハイブリッド自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−67297(P2013−67297A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208145(P2011−208145)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】