説明

ハイブリッド車両の制御装置

【課題】走行モードの切り替えを適切に実施し、運転性を向上させる。
【解決手段】動力源としてのエンジン及びモータジェネレータと、電力源としてのバッテリと、を備えるハイブリッド車両の制御装置であって、アクセル操作量に基づいてアクセル操作速度を算出するアクセル操作速度算出手段(S7)と、アクセル操作量に遅れ処理を施した補正アクセル操作量を算出する補正アクセル操作量算出手段(S7)と、少なくとも蓄電量及び補正アクセル操作量に基づいて、EVモード、又は、HEVモードへの移行を要求する走行モード移行要求手段(S10)と、EVモードへの移行要求があったときに、アクセル操作速度がアクセルペダル踏み込み中と判定できる正のEVモード移行禁止速度よりも大きいときは、EVモードへの移行を禁止するEVモード移行禁止手段(S11)と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のハイブリッド車両として、モータジェネレータのみを動力源として車両を駆動するEV(Electric Vehicle)モードと、エンジンを動力源として含みながら車両を駆動するHEV(Hybrid Electric Vehicle)モードと、の2つの走行モードを備えるものがある。この従来のハイブリッド車両は、車速と、アクセルペダルの踏み込み量(以下「アクセル操作量」という。)と、に基づいて、EVモードで走行するかHEVモードで走行するかを切り替えていた。具体的には、アクセル操作量が、車速ごとに設定されている閾値よりも大きくなったときに、EVモードからHEVモードへと切り替えていた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−296897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、バッテリ蓄電量の低下を抑制するには、前述した車速ごとに設定されているアクセル操作量の閾値を、バッテリ蓄電量が低下するにつれて小さくすることが望ましい。しかしながら、このようにバッテリ蓄電量に応じてアクセル操作量の閾値を変化させようとすると、バッテリ蓄電量の低下時に走行モードの切り替えが頻繁に発生し、運転性が悪化するという問題点があった。
【0005】
本発明はこのような問題点に着目してなされたものであり、走行モードの切り替えが頻発に発生するのを抑制し、運転性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、動力源としてのエンジン及びモータジェネレータと、電力源としてのバッテリと、を備えるハイブリッド車両の制御装置である。そして、バッテリの蓄電量を検出する蓄電量検出手段と、アクセル操作量を検出するアクセル操作量検出手段と、アクセル操作量に基づいてアクセル操作速度を算出するアクセル操作速度算出手段と、アクセル操作量に遅れ処理を施した補正アクセル操作量を算出する補正アクセル操作量算出手段と、少なくとも蓄電量及び補正アクセル操作量に基づいて、モータジェネレータのみを動力源として走行するEVモード、又は、エンジンを動力源として含みながら走行するHEVモードへの移行を要求する走行モード移行要求手段と、EVモードへの移行要求があったときに、アクセル操作速度がアクセルペダル踏み込み中と判定できる正のEVモード移行禁止速度よりも大きいときは、EVモードへの移行を禁止するEVモード移行禁止手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、加速意思があってアクセルペダルを踏み込んでいる途中にEV走行モードへ移行するのを防止でき、エンジンを停止した後にすぐ再始動させることを防止できる。そのため、走行モードの切り替えが頻繁に発生せず、運転性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態によるフロントエンジン・リアドライブ方式のハイブリッド車両の概略構成図である。
【図2】統合コントローラで実行される処理について説明するブロック図である。
【図3】定常目標駆動トルク算出マップを示す図である。
【図4】目標アシストトルク算出マップを示す図である。
【図5】目標走行モード選択部の詳細な構成について説明するブロック図である。
【図6】目標発電トルク算出部の詳細について説明するブロック図である。
【図7】目標走行モード選択部で行われる処理の内容について説明するフローチャートである。
【図8】目標走行モードの選択制御について説明するタイムチャートである。
【図9】本発明の他の実施形態によるフロントエンジン・リアドライブ方式のハイブリッド車両の概略構成図である。
【図10】本発明の他の実施形態によるフロントエンジン・リアドライブ方式のハイブリッド車両の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
【0010】
図1は、本実施形態によるフロントエンジン・リアドライブ方式のハイブリッド車両(以下「FRハイブリッド車両」という。)の概略構成図である。
【0011】
FRハイブリッド車両は、動力源としてのエンジン1及びモータジェネレータ2と、電力源としてのバッテリ3と、動力源の出力を後輪47に伝達するための複数の部品からなる駆動系4と、エンジン1、モータジェネレータ2及び駆動系4の部品を制御するための複数のコントローラ等からなる制御系5と、を備える。
【0012】
エンジン1は、ガソリンエンジンである。ディーゼルエンジンを使用することもできる。
【0013】
モータジェネレータ2は、ロータに永久磁石を埋設し、ステータにステータコイルが巻き付けられた同期型モータジェネレータである。モータジェネレータ2は、バッテリ3からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機としての機能と、ロータが外力により回転しているときにステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機としての機能と、を有する。
【0014】
バッテリ3は、モータジェネレータ2などの各種の電気部品に電力を供給するとともに、モータジェネレータ2で発電された電力を蓄える。
【0015】
FRハイブリッド車両の駆動系4は、第1クラッチ41と、自動変速機42と、第2クラッチ43と、プロペラシャフト44と、終減速差動装置45と、ドライブシャフト46と、を備える。
【0016】
第1クラッチ41は、エンジン1とモータジェネレータ2との間に設けられる。第1クラッチ41は、第1ソレノイドバルブ411によって油流量及び油圧を制御して連続的にトルク容量を変化させることのできる湿式多板クラッチである。第1クラッチ41は、トルク容量を変化させることで、締結状態、スリップ状態(半クラッチ状態)及び解放状態の3つの状態に制御される。
【0017】
自動変速機42は、前進7段・後進1段の有段変速機である。自動変速機42は、4組の遊星歯車機構と、遊星歯車機構を構成する複数の回転要素に接続されてそれらの連係状態を変更する複数の摩擦締結要素(3組の多板クラッチ、4組の多板ブレーキ、2組のワンウェイクラッチ)と、を備える。各摩擦締結要素への供給油圧を調整し、各摩擦締結要素の締結・解放状態を変更することで変速段が切り替わる。
【0018】
第2クラッチ43は、第2ソレノイドバルブ431によって油流量及び油圧を制御して連続的にトルク容量を変化させることのできる湿式多板クラッチである。第2クラッチ43は、トルク容量を変化させることで、締結状態、スリップ状態(半クラッチ状態)及び解放状態の3つの状態に制御される。本実施形態では、自動変速機42が備える複数の摩擦締結要素の一部を第2クラッチ43として流用する。
【0019】
プロペラシャフト44は、自動変速機42の出力軸と終減速差動装置45の入力軸とを接続する。
【0020】
終減速差動装置45は、終減速装置と差動装置とを一体化したものであり、プロペラシャフト44の回転を減速させた上で左右のドライブシャフト46に伝達する。また、カーブ走行時など、左右のドライブシャフト46の回転速度に速度差を生じさせる必要があるときには、自動的に速度差を与えて円滑な走行ができるようにする。左右のドライブシャフト46の先端にはそれぞれ後輪47が取り付けられる。
【0021】
FRハイブリッド車両の制御系5は、統合コントローラ51と、エンジンコントローラ52と、モータコントローラ53と、インバータ54と、第1クラッチコントローラ55と、変速機コントローラ56と、ブレーキコントローラ57と、を備える。各コントローラは、CAN(Controller Area Network)通信線58に接続されており、CAN通信によって互いにデータを送受信できるようになっている。
【0022】
統合コントローラ51には、アクセルストロークセンサ60、車速センサ61、エンジン回転センサ62、モータジェネレータ回転センサ63、変速機入力回転センサ64、変速機出力回転センサ65、SOC(State Of Charge)センサ66、車輪速センサ67及びブレーキストロークセンサ68などのFRハイブリッド車両の走行状態を検出するための各種センサの検出信号が入力される。
【0023】
アクセルストロークセンサ60は、ドライバの要求駆動トルクを示すアクセルペダルの踏み込み量(以下「アクセル操作量」という。)を検出する。車速センサ61は、FRハイブリッド車両の走行速度(以下「車速」という。)を検出する。エンジン回転センサ62は、エンジン回転速度を検出する。モータジェネレータ回転センサ63は、モータジェネレータ回転速度を検出する。変速機入力センサは、自動変速機42の入力軸421の回転速度(以下「変速機入力回転速度」という。)を検出する。変速機出力センサは、自動変速機42の出力軸422の回転速度を検出する。SOCセンサ66は、バッテリ蓄電量を検出する。車輪速センサ67は、4輪の各車輪速を検出する。ブレーキストロークセンサ68は、ブレーキペダルの踏み込み量(以下「ブレーキ操作量という。」)を検出する。
【0024】
統合コントローラ51は、FRハイブリッド車両全体の消費エネルギを管理し、FRハイブリッド車両を最高効率で走行させるために、入力された各種センサの検出信号に基づいて各コントローラに出力するための制御指令値を算出する。具体的には、制御指令値として目標エンジントルク、目標モータジェネレータトルク、目標第1クラッチトルク容量、目標第2クラッチトルク容量、目標変速段及び回生協調制御指令などを算出し、各コントローラへ出力する。
【0025】
エンジンコントローラ52には、統合コントローラ51で算出された目標エンジントルクがCAN通信線58を介して入力される。エンジンコントローラ52は、エンジントルクが目標エンジントルクとなるようにエンジン1の吸入空気量(スロットル弁の開度)や燃料噴射量を制御する。
【0026】
モータコントローラ53には、統合コントローラ51で算出された目標モータジェネレータトルクがCAN通信線58を介して入力される。モータコントローラ53は、モータジェネレータトルクが目標モータジェネレータトルクとなるようにインバータ54を制御する。
【0027】
インバータ54は、直流と交流の2種類の電気を相互に変換する電流変換機である。インバータ54は、モータトルクが目標モータジェネレータトルクとなるようにバッテリ3からの直流を任意の周波数の三相交流に変換してモータジェネレータ2に供給する。一方、モータジェネレータ2が発電機として機能するときは、モータジェネレータ2からの三相交流を直流に変換してバッテリ3に供給する。
【0028】
第1クラッチコントローラ55には、統合コントローラ51で算出された目標第1クラッチトルク容量がCAN通信線58を介して入力される。第1クラッチコントローラ55は、第1クラッチ41のトルク容量が目標第1クラッチトルク容量となるように第1ソレノイドバルブ411を制御する。
【0029】
変速機コントローラ56には、統合コントローラ51で算出された目標第2クラッチトルク容量及び目標変速段がCAN通信線58を介して入力される。変速機コントローラ56は、第2クラッチ43のトルク容量が目標第2クラッチトルク容量となるように第2ソレノイドバルブ431を制御する。また、自動変速機42の変速段が目標変速段となるように自動変速機42の各摩擦締結要素への供給油圧を制御する。
【0030】
ブレーキコントローラ57には、統合コントローラ51からの回生協調制御指令が入力される。ブレーキコントローラ57は、ブレーキペダルの踏み込み時にブレーク操作量から算出される要求制動力に対して、モータジェネレータによる回生制動力だけでは不足する場合は、その不足分を機械的な制動力で補うように、回生協調制御指令に基づき回生協調ブレーキ制御を実施する。
【0031】
図2は、統合コントローラ51で実行される処理について説明するブロック図である。統合コントローラ51は、この処理を所定の演算周期(例えば10ms)ごとに繰り返し実行する。
【0032】
目標駆動トルク算出部100には、変速機入力回転速度と、アクセル操作量と、が入力される。目標駆動トルク算出部100は、図3に示す定常目標駆動トルク算出マップを参照し、変速機入力回転速度とアクセル操作量とに基づいてエンジン1の定常目標駆動トルクを算出する。同時に、図4に示す目標アシストトルク算出マップを参照し、変速機入力回転速度とアクセル操作量とに基づいてモータジェネレータ2の目標アシストトルクを算出する。
【0033】
目標走行モード選択部200には、車速と、アクセル操作量と、バッテリ蓄電量と、が入力される。目標走行モード選択部は、これらの入力値に基づいて、EV走行モード又はHEV走行モードのいずれか一方を目標走行モードとして選択する。目標走行モード選択部の詳細については、図5を参照して後述する。
【0034】
なお、EV走行モードは、第1クラッチ41を解放し、モータジェネレータ2のみを動力源としてFRハイブリッド車両を駆動する走行モードである。
【0035】
HEV走行モードは、第1クラッチ41を締結し、エンジン1を動力源として含みながらFRハイブリッド車両を駆動する走行モードであって、エンジン走行モード、モータアシスト走行モード及び発電走行モードの3つの走行モードを備える。
【0036】
エンジン走行モードは、エンジン1のみを動力源としてFRハイブリッド車両を駆動するモードである。モータアシスト走行モードは、エンジン1とモータジェネレータ2の2つを動力源としてFRハイブリッド車両を駆動するモードである。発電走行モードは、エンジン1のみを動力源としてFRハイブリッド車両を駆動するとともに、モータジェネレータ2を発電機として機能させるモードである。
【0037】
目標発電トルク算出部300には、バッテリ充電量とエンジン回転速度とが入力され、これらに基づいて目標発電トルクを算出する。目標発電トルク算出部300の詳細については図6を参照して後述する。
【0038】
動作点指令部400には、アクセル操作量と、目標駆動トルクと、目標アシストトルクと、目標走行モードと、車速と、目標発電トルクと、が入力される。動作点指令部400は、これらの入力値に基づいて、目標エンジントルク、目標モータジェネレータトルク、目標第1クラッチトルク容量、目標第2クラッチトルク容量及び目標変速段を算出し、各コントローラへ出力する。
【0039】
図5は、目標走行モード選択部200の詳細な構成について説明するブロック図である。
【0040】
目標走行モード選択部200は、遅れ処理部210と、アクセル操作速度算出部220と、暫定目標走行モード選択部230と、目標走行モード設定部240と、を備える。
【0041】
遅れ処理部210は、アクセル操作量に一次遅れ処理を施した補正アクセル操作量を算出する。
【0042】
アクセル操作速度算出部220は、今回検出したアクセル操作量と、前回検出したアクセル操作量と、に基づいてアクセル操作速度を算出する。
【0043】
暫定目標走行モード選択部230は、暫定目標走行モード選択マップを備え、車速と補正アクセル操作量とに基づいて、暫定目標走行モードを設定する。暫定目標走行モード選択マップには、実線で示したEVモードからHEVモードへの走行モード切替線(以下「エンジン始動線」という。)と、破線で示したHEVモードからEVモードへの走行モード切替線(以下「エンジン停止線」という。)と、が設定される。このエンジン始動線及びエンジン停止線は、バッテリ蓄電量によって変化し、バッテリ蓄電量が低下するほど、エンジン始動線及びエンジン停止線が図中下方に移動する。
【0044】
そして、車速と補正アクセル操作量とによって決まる運転点がエンジン始動線をEVモード側からHEVモード側に跨いだときに、目標走行モードがEVモードからHEVモードに変更される。逆に、車速と補正アクセル操作量とによって決まる運転点がエンジン停止線をHEVモード側からEVモード側に跨いだときに、目標走行モードがHEVモードからEVモードに変更される。
【0045】
目標走行モード設定部240は、暫定目標走行モードと、補正アクセル操作量と、現在の走行モードと、バッテリ蓄電量と、アクセル操作速度と、に基づいて、目標走行モードを設定する。目標走行モード設定部240で行われる処理の内容については図7を参照して後述する。
【0046】
図6は、目標発電トルク算出部300の詳細について説明するブロック図である。
【0047】
目標発電トルク算出部300は、第1目標発電トルク算出部310と、第2目標発電トルク算出部320と、目標発電トルク出力部330と、を備える。
【0048】
第1目標発電トルク算出部310には、バッテリ蓄電量が入力される。第1目標発電トルク算出部310は、第1目標発電トルク算出テーブルを備え、バッテリ蓄電量に基づいて第1目標発電トルクを算出する。
【0049】
第2目標発電トルク算出部320には、演算によって算出された現在のエンジントルクと、現在のエンジン回転速度と、が入力される。第2目標発電トルク算出部320は、エンジントルクとエンジン回転速度とで規定されるエンジン動作点のマップを備え、現在のエンジントルク及び現在のエンジン回転速度に基づいて、現在のエンジン回転速度を維持したままエンジントルクをエンジン動作点マップ上の最良燃費線まで増大させるために必要なエンジントルクを算出し、この算出したエンジントルクを第2目標発電トルクとする。
【0050】
一例を示すと、現在のエンジン動作点がエンジン動作点マップ上のA点であれば、矢印に沿ってB点まで増大させるために必要なエンジントルクが第2目標発電トルクとなる。
【0051】
目標発電トルク出力部330は、第1目標発電トルクと第2目標発電トルクを比較し、小さいほうを目標発電トルクとして出力する。
【0052】
図7は、主に目標走行モード選択部200で行われる処理の内容について説明するフローチャートである。統合コントローラ51は、このルーチンを所定の演算周期(例えば10ms)ごとに繰り返し実行する。
【0053】
ステップS1において、統合コントローラ51は、バッテリ蓄電量が所定の強制発電開始量以下か否かを判定する。統合コントローラ51は、バッテリ蓄電量が強制発電開始量以下であれば、ステップS2の処理を行う。一方で、バッテリ蓄電量が強制発電開始量より大きければ、ステップS4の処理を行う。
【0054】
ステップS2において、統合コントローラ51は、強制発電フラグを1に設定する。
【0055】
ステップS3において、統合コントローラ51は、目標走行モードをHEVモードに設定する。
【0056】
このように、バッテリ蓄電量が強制発電開始量以下の場合は、強制的に発電を実施するために、車速及び補正アクセル操作量に関係なく目標走行モードをHEVモードに設定する。
【0057】
ステップS4において、統合コントローラ51は、強制発電フラグが1か否かを判定する。統合コントローラ51は、強制発電フラグが1であればステップS5の処理を行い、強制発電フラグが0であればステップS7の処理を行う。
【0058】
ステップS5において、統合コントローラ51は、バッテリ蓄電量が所定の強制発電停止量以上か否かを判定する。強制発電停止量は強制発電開始量よりも大きい値である。統合コントローラ51は、バッテリ蓄電量が強制発電停止量以上であればステップS6の処理を行い、そうでなければ引き続き強制発電を実施するためにステップS3の処理を行う。
【0059】
ステップS6において、統合コントローラ51は、強制発電フラグを0に設定する。
【0060】
ステップS7において、統合コントローラ51は、アクセル操作量を検出し、その検出したアクセル操作量に一次遅れ処理を施した補正アクセル操作量を算出する。また、前回検出したアクセル操作量と、今回検出したアクセル操作量と、に基づいて、ドライバの加速意思又は減速意思を示すアクセル操作速度を算出する。
【0061】
ステップS8において、統合コントローラ51は、現在の走行モードがEV走行モードであるか否かを判定する。統合コントローラ51は、現在の走行モードがEV走行モードであれば、ステップS9の処理を行う。一方で、現在の走行モードがHEV走行モードであれば、ステップS13の処理を行う。
【0062】
ステップS9において、統合コントローラ51は、補正アクセル操作量が強制HEVモード移行操作量以下であるか否かを判定する。強制HEVモード移行操作量は、バッテリ蓄電量が最大となっている場合におけるエンジン始動線上のアクセル操作量である。統合コントローラ51は、補正アクセル操作量が強制HEVモード移行操作量以下であれば、ステップS10の処理を行う。一方で、補正アクセル操作量が強制HEVモード遷移操作量より大きければ、アクセル操作速度にかかわらず目標走行モードをHEV走行モードに設定すべくステップS3の処理を行う。
【0063】
ステップS10において、統合コントローラ51は、暫定目標走行モードがHEV走行モードか否かを判定する。統合コントローラ51は、暫定目標走行モードがHEV走行モードであればステップS11の処理を行い、そうでなければステップS12の処理を行う。
【0064】
ステップS11において、統合コントローラ51は、ドライバに減速意思があるか否か、すなわち、ドライバがアクセルペダルを戻している途中か否かを判定する。具体的には、アクセル操作速度が負の所定値であるHEVモード移行禁止速度以下か否かを判定する。統合コントローラ51は、ドライバに減速意思があると判定したときは、暫定目標走行モードがHEV走行モードであっても目標走行モードをEV走行モードに維持すべくステップS12の処理を行う。一方で、ドライバに減速意思がないと判定したときは、暫定目標走行モードとして設定されたHEV走行モードを目標走行モードとすべくステップS3の処理を行う。これにより、EV走行モード中にアクセルペダルを戻しながらHEV走行モードに遷移することがないので、ドライバに違和感を与えることがない。
【0065】
ステップS12において、統合コントローラ51は、目標走行モードをEV走行モードに設定する。
【0066】
ステップS13において、統合コントローラ51は、HEVモードへの移行要求があるかを判定する。具体的には、暫定目標走行モードがEV走行モードか否かを判定する。統合コントローラ51は、暫定目標走行モードがEV走行モードであればステップS14の処理を行い、そうでなければステップS15の処理を行う。
【0067】
ステップS14において、統合コントローラ51は、ドライバに加速意思があるか否か、すなわち、ドライバがアクセルペダルを踏み込んでいる途中か否かを判定する。具体的には、アクセル操作速度が正の所定値であるEVモード移行禁止速度より大きいか否かを判定する。統合コントローラ51は、ドライバに加速意思があると判定したときは、暫定目標走行モードがEV走行モードであっても目標走行モードをHEV走行モードに維持すべくステップS15の処理を行う。一方で、ドライバに加速意思がないと判定したときは、暫定目標走行モードとして設定されたEV走行モードを目標走行モードとすべくステップS16の処理を行う。これにより、HEV走行モード中にアクセルペダルを踏み込みながらEV走行モードに遷移することがないので、ドライバに違和感を与えることがない。
【0068】
ステップS15において、統合コントローラ51は、目標走行モードをHEV走行モードに設定する。
【0069】
ステップS16において、統合コントローラ51は、目標走行モードをEV走行モードに設定する。
【0070】
図8は、目標走行モードの選択制御について説明するタイムチャートである。
【0071】
時刻t1で、バッテリ蓄電量が強制発電開始量まで下がると、強制発電フラグが1になって、車速及び補正アクセル操作量に関係なく目標走行モードが強制的にHEVモードに切り替わり、エンジン1が始動される。
【0072】
時刻t2で、バッテリ蓄電量が強制発電停止量に達すると、強制発電フラグが0になる。
【0073】
そうすると、従来では車速及びアクセル操作量に基づいて目標走行モードが設定されることとなり、この場合はアクセル操作量がエンジン停止線の下方にあるので目標走行モードをEVモードに設定していた。
【0074】
しかしながら、時刻t2ではアクセルペダルが踏み込まれている途中であり、アクセル操作速度もEVモード移行禁止速度より大きいのでドライバとしては加速意思があることになる。ドライバは、アクセルペダルを踏み込んだときにエンジン1が始動されてHEVモードに移行し、アクセルペダルを戻したときにエンジン1が停止されてEVモードに移行するのが通常の動作と思っている場合が多い。そのため、加速意思があってアクセルペダルを踏み込んでいる途中にEVモードに移行してエンジンを停止すると、ドライバに違和感を与えるおそれがある。
【0075】
また、加速意思があってアクセルペダルが踏み込まれている場合は、時刻t2でEVモードに移行しても、その直後(時刻t3)にアクセル操作量がエンジン始動線を越えて目標走行モードがHEVモードに設定される場合が多い。そうすると、エンジン1の停止後、すぐにエンジン1を再始動することになって、ドライバに違和感を与えるとともに、運転性も悪化する。
【0076】
これに対し、本実施形態では、車速及び補正アクセル操作量に基づいて設定した暫定目標走行モードがEV走行モードであった場合でも、アクセル操作速度がEVモード移行禁止速度より大きく、ドライバに加速意思があると判断したときは、目標走行モードをHEVモードに設定し、HEV走行モードを維持する。
【0077】
これにより、加速意思があってアクセルペダルを踏み込んでいる途中にEV走行モードへ移行するのを防止でき、エンジン1を停止した後にすぐ再始動させることもない。そのため、ドライバに違和感を与えることがなく、運転性を向上させることができる。
【0078】
以上説明した本実施形態によれば、車速及び補正アクセル操作量に基づいて設定した暫定目標走行モードがEV走行モードであった場合でも、アクセル操作速度がEVモード移行禁止速度より大きく、ドライバに加速意思があると判断したときは、目標走行モードをHEVモードに設定し、HEV走行モードを維持する。
【0079】
これにより、加速意思があってアクセルペダルを踏み込んでいる途中にEV走行モードへ移行するのを防止でき、エンジン1を停止した後にすぐ再始動させることもない。そのため、ドライバに違和感を与えることがなく、運転性を向上させることができる。
【0080】
逆に、車速及び補正アクセル操作量に基づいて設定した暫定目標走行モードがHEV走行モードであった場合でも、アクセル操作速度がEVモード移行禁止速度より小さく、ドライバに減速意思があると判断したときは、目標走行モードをEVモードに設定し、EV走行モードを維持する。
【0081】
これにより、減速意思があってアクセルペダルを戻している途中にHEV走行モードへ移行するのを防止できる。したがって、ドライバに違和感を与えることがなく、運転性を向上させることができる。
【0082】
また、本実施形態のように遅れ処理を施した補正アクセル操作量に基づいて走行モードを切り替える場合、アクセル操作速度が約0としても補正アクセル操作量が上昇しているシーンが考えられる。そのようなシーンでは、HEVモードに移行したいのに移行できないことがある。そこで、本実施形態のように、補正アクセル操作量が必ずHEVモードに移行したい操作量である強制HEVモード移行操作量を超えたときは、アクセル操作速度にかかわらずHEVモードに移行するようにしたので、上記の問題を解決することができる。
【0083】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【0084】
例えば、FRハイブリッド車両の第2クラッチ43は、図9に示すように、モータジェネレータ22と自動変速機42との間に別途に設けても良いし、図10に示すように、自動変速機42の後方に別途に設けても良い。またこれらに限らず、第2クラッチ43は、モータジェネレータ22から後輪47までの間に設けてあれば良い。
【符号の説明】
【0085】
1 エンジン
2 モータジェネレータ
3 バッテリ
60 アクセルストロークセンサ(アクセル操作量検出手段)
66 SOCセンサ(蓄電量検出手段)
S7 補正アクセル操作量検出手段
S9 走行モード強制移行手段
S10、S13 走行モード移行要求手段
S11 EVモード移行禁止手段
S14 HEVモード移行禁止手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源としてのエンジン及びモータジェネレータと、
電力源としてのバッテリと、
を備えるハイブリッド車両の制御装置であって、
前記バッテリの蓄電量を検出する蓄電量検出手段と、
アクセル操作量を検出するアクセル操作量検出手段と、
前記アクセル操作量に基づいてアクセル操作速度を算出するアクセル操作速度算出手段と、
前記アクセル操作量に遅れ処理を施した補正アクセル操作量を算出する補正アクセル操作量算出手段と、
少なくとも前記蓄電量及び前記補正アクセル操作量に基づいて、前記モータジェネレータのみを動力源として走行するEVモード、又は、前記エンジンを動力源として含みながら走行するHEVモードへの移行を要求する走行モード移行要求手段と、
前記EVモードへの移行要求があったときに、前記アクセル操作速度がアクセルペダル踏み込み中と判定できる正のEVモード移行禁止速度よりも大きいときは、EVモードへの移行を禁止するEVモード移行禁止手段と、
を備えることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
動力源としてのエンジン及びモータジェネレータと、
電力源としてのバッテリと、
を備えるハイブリッド車両の制御装置であって、
前記バッテリの蓄電量を検出する蓄電量検出手段と、
アクセル操作量を検出するアクセル操作量検出手段と、
前記アクセル操作量に基づいてアクセル操作速度を算出するアクセル操作速度算出手段と、
前記アクセル操作量に遅れ処理を施した補正アクセル操作量を算出する補正アクセル操作量算出手段と、
少なくとも前記蓄電量及び前記補正アクセル操作量に基づいて、前記モータジェネレータのみを動力源として走行するEVモード、又は、前記エンジンを動力源として含みながら走行するHEVモードへの移行を要求する移行要求手段と、
前記HEVモードへの移行要求があったときに、前記アクセル操作速度がアクセルペダル戻し中と判定できる負のHEVモード移行禁止速度よりも小さいときは、HEVモードへの移行を禁止するHEVモード移行禁止手段と、
を備えることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
EVモードでの走行時に前記補正アクセル操作量が所定量以上となったときは、走行モードを強制的にHEVモードに移行する走行モード強制移行手段を備える、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−86798(P2012−86798A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237507(P2010−237507)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】