説明

ハイブリッド車両

【課題】 高電圧システムを起動している状態でエンジンが始動する状況になっても、作業者に対しエンジンの始動を始動前に確実に認識させる。
【解決手段】 高電圧システムの起動中に、フードが開いていることがフードスイッチ21により検出されると、報知手段22により警報を発生させると共に、禁止手段によりエンジン2の始動を遅延させ、エンジン2が始動する前に作業者に対してエンジン2の始動を警報により認識させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータにより駆動力を得るハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両として、エンジンによりバッテリを充電しバッテリからの電力による電動モータの駆動力で車両を走行させるハイブリッド電気自動車や、エンジンによりバッテリを充電すると共に電動モータ及び(または)エンジンの駆動力で車両を走行させるハイブリッド電気自動車、電動モータの駆動力により車両を走行させる電気自動車が知られている。
【0003】
例えば、エンジン及び電動モータの少なくとも一方の駆動力で車両を走行させるハイブリッド電気自動車には、高電圧のバッテリが備えられている。電動モータにより車両を走行させる際には高電圧のバッテリから電力が供給され、適宜エンジンが駆動されて電力が高電圧のバッテリに蓄電される。また、電動モータ及び(または)エンジンにより車両を走行させる際には、エンジンの駆動力が走行の動力源とされて用いられる。
【0004】
ハイブリッド電気自動車では、エンジンが停止している場合でも、高電圧のバッテリの充電状況等によりエンジンが駆動して高電圧のバッテリを充電する運転が行われるようになっている。この場合、エンジンルーム内の機器のメンテナンス等を実施していると、作業中にエンジンが起動されることが想定される。
【0005】
このため、ハイブリッドシステムが起動している状態で、エンジンルームのフードが開いていることが検出されると、作業者に注意を促す目的で警報を発するようにしたハイブリッド電気自動車が従来から提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示された技術を用いることで、フードが開いている状況下で、エンジンが起動する可能性がある時やエンジンが起動している時には、警報により作業者に知らせることができる。
【0006】
しかし、ハイブリッド電気自動車では、高電圧のバッテリの状況等によっては、フードを開いた直後や、メンテナンス作業を開始した直後に、警報と同時にエンジンが起動することも考えられる。この場合、警報が発せられる時期とエンジンや補器類が起動する時期が重なり、警報を認識しても作業中にエンジンや補器類が起動してしまうことが考えられる。
【0007】
このようなことは、電動モータの駆動力により車両を走行させる電動車両であっても、システムが起動している状態でメンテナンス等を実施している場合に、電動モータや、高電圧のバッテリ、インバータ等を冷却するためのラジエータファンが起動することが同様に考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−308210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、制御システムが起動している状態で機器類が起動する状況になっても、作業者に対し機器の起動を起動前に確実に認識させることができるハイブリッド車両を提供することを目的とする。
【0010】
特に、高電圧のバッテリの充電及び(または)車両の走行駆動力を得るエンジンを備えたハイブリッド電気自動車において、ハイブリッド制御システムが起動している状態でエンジンが起動する状況になっても、作業者に対しエンジンの起動を起動前に確実に認識させることができるハイブリッド車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明のハイブリッド車両は、バッテリから供給される電力により駆動する電動モータと、所定条件が揃うと始動し発電機を駆動させて前記バッテリを充電するエンジンと、該エンジンが収納されるエンジンルームを開閉するフードと、該フードの開閉を検出する開閉検出手段と、該フードの開状態が検出されている際に前記所定条件が揃ったことを報知する報知手段とを有するハイブリッド車両において、前記報知手段により報知した後、所定時間内は前記エンジンの始動を禁止する禁止手段を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項1に係る本発明では、制御システムの起動中に、開閉検出手段によりフードの開状態が検出されると、報知手段により警報を発生させると共に、エンジンの起動の開始を遅延させ、エンジンが起動する前に作業者に対してエンジンの始動開始を警報により認識させることができる。このため、制御システムが起動している状態でエンジンが起動する状況になっても、作業者に対しエンジンの始動を始動前に確実に認識させることができる。
【0013】
そして、請求項2に係る本発明のハイブリッド車両は、請求項1に記載のハイブリッド車両において、前記所定条件の内、少なくとも一つは前記バッテリの残存容量が所定値以下となることであることを特徴とする。
【0014】
請求項2に係る本発明では、バッテリの残存容量が所定値を下回った際にエンジンが起動される条件になっているので、即座にエンジンが起動する状況においてエンジンの起動の開始を遅延させることができる。
【0015】
また、請求項3に係る本発明のハイブリッド車両は、請求項1もしくは請求項2に記載のハイブリッド車両において、前記所定時間を任意に設定する禁止時間設定手段を備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項3に係る本発明では、禁止時間設定手段によりエンジンの始動開始の所定時間を任意に設定することができるので、作業の状況等により作業者の意思を加味してエンジンの始動を遅延させることができる。
【0017】
また、請求項4に係る本発明のハイブリッド車両は、請求項3に記載のハイブリッド車両において、前記禁止時間設定手段は、前記報知手段による報知の後、前記任意に設定された所定時間を変更する変更手段を備えたことを特徴とする。
【0018】
請求項4に係る本発明では、任意に設定された所定時間を変更することができるので、作業の状況等により所望の遅延時間を加算してエンジンの始動を遅延させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のハイブリッド車両は、高電圧のバッテリの充電及び(または)車両の走行駆動力を得るエンジンを備えたハイブリッド車両において、ハイブリッド制御システムが起動している状態でエンジンが起動する状況になっても、作業者に対しエンジンの起動を起動前に確実に認識させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施例に係る電動車両の概略図である。
【図2】制御フローチャートである。
【図3】制御フローチャートである。
【図4】タイミングチャートである。
【図5】他の実施例の制御フローチャートである。
【図6】他の実施例の制御フローチャートである。
【図7】他の実施例の制御フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本実施例では、電動車両として、エンジンにより発電機を駆動して高電圧のバッテリを充電すると共に電動モータ及びエンジンの駆動力で車両を走行させるハイブリッド車両を適用した例を挙げて説明してある。
【0022】
図1には本発明の第1実施例に係る電動車両(ハイブリッド車両)の構成を説明する全体概略状況、図2、図3には警報を発生させると共にエンジンの始動を遅延させる制御フローチャート、図4には動作状況の経時変化を示してある。
【0023】
図1に基づいて本発明の第1実施例に係る電動車両の概要を説明する。
【0024】
図に示すように、車両1には、機器としてのエンジン2、及び、エンジン2により駆動される発電機3が備えられている。エンジン2の出力系は変速機4を介して前輪5側の車軸6に接続されている。一方、変速機4には電動モータ7が接続され、電動モータ7、及び、エンジン2の駆動力により車軸6が駆動されて車両1が走行する。電動モータ7、及び、エンジン2の駆動力は、図示しないクラッチ手段を介して適宜選定されて変速機4に伝達される。
【0025】
車両1にはエンジン2に燃料を供給する燃料タンク11が搭載されている。そして、車両1には高電圧のバッテリ12が搭載され、バッテリ12からインバータ13を介して電動モータ7に電力が供給されて電動モータ7が駆動する。また、エンジン2の駆動により発電機3で発電が行われ、発電機3で発電された電力はインバータ13を介してバッテリ12に蓄電(バッテリ12が充電)される。
【0026】
尚、図中の符号で、10はラジエータファンであり、ラジエータファン10によりエンジン2が冷却される。また、電動モータ7や、高電圧のバッテリ12、インバータ13等の機器がラジエータファン10により冷却される。
【0027】
電動モータ7、及び、エンジン2の駆動力の制御、電動モータ7への給電制御、バッテリ12に対する発電機3からの充電制御をはじめとする車両1に対する制御は、制御手段としてのECU15の指令に基づいて統合的に制御される。つまり、ECU15は、カウンタやタイマ類を備え、車両1の制御を管理すると共に、高電圧のバッテリ12の管理を行う手段とされている。
【0028】
例えば、バッテリ12に設けられたリレー16の状況により、ハイブリッド制御システム(高電圧システム)が起動しているか否かが判断される。また、バッテリ12の容量(SOC)に基づいてエンジン2の起動や電動モータ7の起動、変速機4の接続状況等が統合的に制御される。
【0029】
これにより、エンジン2により発電機3を駆動してバッテリ12を充電すると共に、バッテリ12からの電力による電動モータ7の駆動、及び、エンジン2の駆動による駆動力で車両1を走行させる。
【0030】
上述した車両1は、高電圧システムが起動している状態では、車両1の走行中であってもエンジン2が停止していることがある。また、車両1の停車中等にエンジン2が停止していても、バッテリ12の容量(SOC)が低下した際には、エンジン2の始動条件が成立してエンジン2が始動する。
【0031】
このため、高電圧システムが起動している状態でエンジンルームのフードが開けられた際には、警報が発せられ報知されるようになっている。即ち、エンジンルームのフードの開閉を検出する開閉検出手段としてのフードスイッチ21が設けられ、フードスイッチ21の情報がECU15に入力される。ECU15では、フードスイッチ21がオフ状態の時にフードが開けられていると判断され、フードスイッチ21がオン状態の時にフードが閉じられていると判断される。
【0032】
また、車両1には報知手段22が備えられ、高電圧システムが起動している状態でフードが開けられていると判断された場合、エンジン2が停止している際に始動条件が成立するとエンジン2が始動することになるので、ECU15の指令により報知手段22が作動して音声等の報知つまり警報が発せられる。
【0033】
そして、本実施例の車両1(電動車両)では、始動条件が成立すると同時にエンジン2を始動させるのではなく、ECU15の禁止手段によりエンジンの始動(起動の開始)が禁止(遅延)されるようになっている。これにより、フードを開けて作業員が作業している場合であっても、エンジン2が始動する前にエンジン2の始動を作業員に確実に認識させることができる。
【0034】
図2、図3に基づいて警報を発生させると共にエンジンの始動を禁止(遅延)させる制御を具体的に説明する。
【0035】
図2に示すように、ステップS1でハイブリッド制御システム(高電圧システム)が起動しているか否かが判断され、ステップS1で高電圧システムが起動していると判断された場合、ステップS2でエンジン2の始動条件が成立しているか否かが判断される。エンジン2の始動条件は、エンジン2が停止している際に、車両1の状態がエンジン2を始動させる状態になる条件であり、例えば、バッテリ12の容量(SOC)が50%を下回った条件を含んでいる。
【0036】
ステップS2でエンジン2の始動条件が成立していると判断された場合、ステップS3でフードスイッチ21がオフか否か、即ち、エンジンルームのフードが開いているか否かが判断される。ステップS3でフードスイッチ21がオフである判断された場合、ステップS4で車両1が停車しているか否か、即ち、車速が所定車速以下か否かが判断される。ステップS4で車両1が停車していると判断された場合、ステップS5でサービスによりエンジン2を起動させるか否かが判断される。
【0037】
ステップS1で高電圧システムが起動していないと判断された場合、または、ステップS2でエンジン2の始動条件が成立していないと判断された場合、図3のステップS11に移行して始動ディレイカウンタのカウント値Cをクリアし(A)、リターンとなる。
【0038】
また、ステップS3でフードスイッチがオフではない(オン:フード閉)と判断された場合、または、ステップS4で車両1が停車していないと判断された場合、図3のステップS12に移行して始動ディレイカウンタのカウント値Cをクリアし(B)、ステップS21でエンジン2を始動してリターンとなる。
【0039】
また、ステップS5でサービスによりエンジン2を起動させると判断された場合、図3のステップS13に移行し、始動ディレイカウンタのカウント設定値Cjを0にする(C)。
【0040】
図2のフローチャートに戻り、ステップS5でサービスによりエンジン2を起動させないと判断された場合、ステップS6でバッテリ12の容量(SOC)が所定値以下であるか否かが判断される。ステップS6の判断の基準となるSOCは、ステップS2でエンジン2の始動条件が成立しているか否かの判断に含まれるSOCよりも低い値とされている。
【0041】
ステップS6でバッテリ12の容量(SOC)が所定値以下であると判断された場合、ステップS7でシフトポジションが走行ポジションにあるか否かが判断される。ステップS7でシフトポジションが走行ポジションにあると判断された場合、図3のステップS13に移行し、始動ディレイカウンタのカウント設定値Cjを0にする(C)。
【0042】
ステップS6でバッテリ12の容量(SOC)が所定値以下ではないと判断された場合、または、ステップS7でシフトポジションが走行ポジションにはないと判断された場合、図3のステップS14に移行し、始動ディレイカウンタのカウント設定値CjをT(秒:例えば、60秒)に設定する(D:禁止時間設定手段)。尚、カウント設定値Cjは、作業者の意思を加味して任意の時間に設定することが可能である。
【0043】
図3に示すように、ステップS13で始動ディレイカウンタのカウント設定値Cjを0に設定した後、または、ステップS14で始動ディレイカウンタのカウント設定値CjをT(秒)に設定した後、ステップS15で始動ディレイカウンタのカウントを開始し、ステップS16で報知手段22を作動させて警報を開始する。
【0044】
ステップS16で警報が開始すると、ステップS17で始動ディレイカウンタのカウント値Cとカウント設定値Cjが比較され、ステップS17で始動ディレイカウンタのカウント値Cがカウント設定値Cj以上であると判断された場合、ステップS21でエンジン2を始動してリターンとなる。ステップS17で始動ディレイカウンタのカウント値Cがカウント設定値Cjを超えていないと判断された場合、そのままリターンとなる。
【0045】
つまり、エンジン始動条件が成立し、フードが開いて車両1が停車している場合、サービスによるエンジンの始動の場合は、始動ディレイカウンタのカウント設定値Cjが0であるので、警報と共にエンジン2が始動する。これにより、サービスによるエンジン2の始動であることを作業者に認識させることができる。
【0046】
また、エンジン始動条件が成立し、フードが開いて車両1が停車している場合、サービスによるエンジン2の始動ではない場合は、SOCが所定値以下で始動ディレイカウンタのカウント設定値CjがT(秒)に設定されているので、警報が発せられてからT秒後にエンジン2が始動する。これにより、フードを開いて作業をしている作業員に対して、T秒後にエンジン2が始動することを認識させることができる。
【0047】
また、車両1が停止していることを条件にして警報を発生させると共に、エンジン2の始動を遅延させるので、例えば、意図的にフードを開いて走行する場合や、フードスイッチ21に不具合が生じた場合等の状態では、車両1が停止していない場合であっても、警報が発せられてエンジン2の始動が遅延することがない。
【0048】
図4に基づいて上述した車両1における動作の経時変化を説明する。図4中の(a)は高電圧システムの状況、(b)はエンジン始動条件の成立状況、(c)はフードスイッチ21の状況、(d)は警報の状況、(e)は始動ディレイカウンタのカウント状況、(f)はエンジン回転数の状況を示してある。
【0049】
時刻t1で高電圧システムが起動され(a)、時刻t2でエンジン始動条件が成立すると(b)、エンジン2が始動してエンジン回転数が高くなり(f)、時刻t3でエンジン始動条件が不成立になると(b)、エンジン2が停止してエンジン回転数が0になる(f)。
【0050】
時刻t4でフードスイッチ21がオフになってフードが開いたことが検出され(c)、時刻t5でエンジン始動条件が成立すると(b)、警報が発せられると共に(d)、始動ディレイカウンタがカウントされる(e)。時刻t6で始動ディレイカウンタのカウント値がカウント設定値Cjになり、エンジン始動条件が成立している状態が継続中なので(b)、エンジン2が始動する(f)。時刻t5から時刻t6までの時間がT秒となっている。
【0051】
時刻t7でエンジン2の回転数が所定回転数に達すると(f)、警報が停止する(d)。警報が停止する時期は、エンジン2の始動と同時でもよく、任意の時期に設定することが可能である。時刻t8でエンジン始動条件が不成立になると(b)、始動ディレイカウンタのカウント値がクリアされ(e)、エンジン2が停止してエンジン回転数が0になる(f)。
【0052】
時刻t9でエンジン始動条件が成立すると(b)、警報が発せられると共に(d)、始動ディレイカウンタがカウントされる(e)。時刻t9からT秒が経過する前の時刻t10でフードスイッチ21がオンになってフードが閉じられたことが検出されると(c)、警報が停止し(d)、フードが閉じられたことによりエンジン2が始動してエンジン回転数が高くなる(f)。同時に、始動ディレイカウンタのカウント値がクリアされる(e)。
【0053】
時刻t11でエンジン始動条件が不成立になると(b)、エンジン2が停止してエンジン回転数が0になる(f)。時刻t12でフードスイッチ21がオフになってフードが開いたことが検出され(c)、時刻t13でエンジン始動条件が成立すると(b)、警報が発せられると共に(d)、始動ディレイカウンタがカウントされる(e)。時刻t13からT秒が経過する前の時刻t14で高電圧システムが停止されると(a)、警報が停止し(d)、始動ディレイカウンタのカウント値がクリアされる(e)。
【0054】
従って、上述した本実施例の電動車両は、高電圧システムの起動中に、エンジン始動条件が成立し、フードが開いていることが検出されると、報知手段22により警報を発生させると共に、禁止手段によりエンジン2の始動をT秒間遅延させ、エンジン2が始動する前に作業者に対してエンジン2の始動を警報により認識させることができる。このため、高電圧システムを起動している状態でエンジン2が始動する状況になっても、作業者に対しエンジン2の始動を始動前に確実に認識させることができる。
【0055】
図5から図7に基づいて警報を発生させると共にエンジンの始動を遅延させる制御の他の実施例を具体的に説明する。本実施例は、作業者の意思に基づきフードスイッチ21の信号を用いて始動ディレイカウンタの設定値を延長する制御となっている。つまり、予め設定された始動ディレイカウンタのカウント値(禁止時間)に対して追加遅延時間を加算するようになっている。
【0056】
図5に示すように、ステップS51でハイブリッド制御システム(高電圧システム)が起動しているか否かが判断され、ステップS51で高電圧システムが起動していると判断された場合、ステップS52でエンジン2の始動条件が成立しているか否かが判断される。エンジン2の始動条件は、エンジン2が停止している際に、車両1の状態がエンジン2を始動させる状態になる条件であり、例えば、バッテリ12の容量(SOC)が50%を下回った条件を含んでいる。
【0057】
ステップS52でエンジン2の始動条件が成立していると判断された場合、ステップS53でエンジンルームのフードの状態が判定される。即ち、判定の詳細は後述するが、フードが開いているか否かが判断される。ステップS53でフードが開いていると判断された場合、ステップS54で車両1が停車か否か、即ち、車速が所定車速以下か否かが判断される。ステップS54で車両1が停車していると判断された場合、ステップS55でサービスによりエンジン2を起動させるか否かが判断される。
【0058】
ステップS51で高電圧システムが起動していないと判断された場合、または、ステップS52でエンジン2の始動条件が成立していないと判断された場合、図6のステップS61に移行して始動ディレイカウンタのカウント値Cをクリアし(E)、リターンとなる。
【0059】
また、ステップS53でフードが開いていないと判断された場合、または、ステップS54で車両1が停止していないと判断された場合、図6のステップS62に移行して始動ディレイカウンタのカウント値Cをクリアし(F)、ステップS60でエンジン2を始動してリターンとなる。
【0060】
ステップS56でバッテリ12の容量(SOC)が所定値以下であると判断された場合、ステップS57でシフトポジションが走行ポジションにあるか否かが判断される。ステップS57でシフトポジションが走行ポジションにあると判断された場合、図6のステップS63に移行し、始動ディレイカウンタのカウント設定値Ciを0にする(G)。
【0061】
ステップS56でバッテリ12の容量(SOC)が所定値以下ではないと判断された場合、または、ステップS57でシフトポジションが走行ポジションにはないと判断された場合、図6のステップS64に移行し、始動ディレイカウンタのカウント設定値CiをT(秒:例えば、60秒)に設定する(H:禁止時間設定手段)。
【0062】
ここで、ステップS53のフード状態の判定の処理を図7に基づいて具体的に説明する。詳細は後述するが、フードスイッチ21を延長スイッチとして使用してフードスイッチ21のオン・オフを延長の判断に用いるため、フードが開いているか否かは、以下の処理により判断する。
【0063】
図7に示すように、フード状態判定がスタートすると、ステップS71でフード状態の判定(後述するステップS75、ステップS80の結果)が開か否かが判断される。ステップS71でフード状態の判定が開である(フードスイッチ21:オフ)と判断された場合、ステップS72でフードスイッチ21がオンか否かが判断される。ステップS72でフードスイッチ21がオンであると判断された場合、ステップS73で閉カウンタがカウントされ、ステップS74で閉カウンタのカウント値C1と閉判定値Chcが比較される。
【0064】
ステップS74で閉カウンタのカウント値C1が閉判定値Chc以上であると判断された場合、ステップS75でフードが閉じられていると判断され、ステップS76で閉カウンタのカウント値C1をクリアしてエンドとなる。ステップS74で閉カウンタのカウント値C1が閉判定値Chcに満たないと判断された場合、エンドとなる。また、ステップS72でフードスイッチ21がオンではないと判断された場合、ステップS76で閉カウンタのカウント値C1をクリアしてエンドとなる。
【0065】
つまり、フードスイッチ21がオンになってから閉カウンタのカウント値C1が閉判定値Chc以上になった際に(閉状態が所定時間継続した際に)、フードが閉じられていると判定される。
【0066】
一方、ステップS71でフードスイッチ21がオフではないと判断された場合、ステップS77でフードスイッチ21がオフか否かが判断される。ステップS77でフードスイッチ21がオフであると判断された場合、ステップS78で開カウンタがカウントされ、ステップS79で開カウンタのカウント値C2と開判定値Choが比較される。
【0067】
ステップS79で開カウンタのカウント値C2が開判定値Cho以上であると判断された場合、ステップS80でフードが開かれていると判断され、ステップS81で開カウンタのカウント値C2をクリアしてエンドとなる。ステップS79で開カウンタのカウント値C2が開判定値Choに満たないと判断された場合、エンドとなる。また、ステップS77でフードスイッチ21がオフではないと判断された場合、ステップS81で開カウンタのカウント値C2をクリアしてエンドとなる。
【0068】
つまり、フードスイッチ21がオフになってから開カウンタのカウント値C2が開判定値Cho以上になった際に(開状態が所定時間継続した際に)、フードが開いていると判定される。
【0069】
フード状態の判定の処理を実行することにより、フードの開閉状態の判定と、延長スイッチとしての判定を一つのフードスイッチ21により実施することができる。
【0070】
図6の処理に戻り、ステップS63で始動ディレイカウンタのカウント設定値Ciを0に設定した後、または、ステップS64で始動ディレイカウンタのカウント設定値CiをT(秒)に設定した後、ステップS65で延長スイッチがオンであるか否かが判断される。この場合の延長スイッチはフードスイッチ21であり、フード状態判定がスタートしていない状態でフードスイッチ21がオンにされると延長スイッチがオンと判断される。
【0071】
尚、ステップS64ではカウント設定値Ciが設定されていない場合にのみT(秒)に設定する処理を実行する。また、延長スイッチとして、フードスイッチ21を用いることなく専用のスイッチを設けることも可能である。
【0072】
ステップS65で延長スイッチがオンであると判断された場合、変更手段は、ステップS66でカウント設定値Ciに追加延長時間としての延長設定値Xe(例えば、60秒)を加算して新たなカウント設定値Ciとし(Ci=Ci+Xe)、ステップS67で始動ディレイカウンタのカウントを開始し、ステップS68で報知手段22を作動させて警報を開始する。尚、延長設定値Xeは、任意の時間に設定することができる。
【0073】
ステップS65で延長スイッチがオンではないと判断された場合、ステップS69でカウント設定値Ciをそのままの状態のカウント設定値Ciとし(Ci=Ci)、ステップS67で始動ディレイカウンタのカウントを開始し、ステップS68で報知手段22を作動させて警報を開始する。
【0074】
ステップS68で警報が開始すると、ステップS70で始動ディレイカウンタのカウント値Cとカウント設定値Ciが比較され、ステップS70で始動ディレイカウンタのカウント値Cがカウント設定値Ci以上であると判断された場合、ステップS60でエンジン2を始動してリターンとなる。ステップS70で始動ディレイカウンタのカウント値Cがカウント設定値Ciを超えていないと判断された場合、そのままリターンとなる。
【0075】
つまり、サービスによるエンジン2の始動の場合を除いて、延長スイッチがオンであると判断された場合、作業者がエンジン2の始動を更に遅らせる意思が働いたとして、警報が発せられてからT秒に加えて延長した時間の後にエンジン2が始動する。延長スイッチがオンではないと判断された場合、作業者がエンジン2の始動を遅らせる意思がないとして、警報が発せられてからT秒後にエンジン2が始動する。
【0076】
このため、変更手段により、予め設定された遅延時間(T秒)に対して追加遅延時間(例えば、60秒)を加算することができ、作業の状況等により所望の遅延時間を加算してエンジン2の始動を遅延させることができる。
【0077】
上述した処理では、ステップS64ではカウント設定値Ciが設定されていない場合にのみT(秒)に設定する処理を実行するようにしているが、ステップS66及びステップS69で延長時間を設定することも可能である。即ち、ステップS66ではCe(延長時間)=Ce(初期値は0)+延長設定値Xeとし、延長スイッチがオンである場合に延長時間を加算し、ステップS69ではCe(延長時間)=Ceとし、延長スイッチがオフである場合には、延長時間を前回値のまま保持をし、ステップS70でカウント値C≧カウント設定値Ci(初期の設定値)+Ce(延長時間)により判定する処理を実行することも可能である。
【0078】
上述した実施例では、フードスイッチ21のオン・オフにより、予め設定された禁止時間(T秒)に対して追加延長時間を加算するようにしたが、追加延長時間を加算するのではなく、遅延時間(T秒)を長く設定し、警報が発せられてから作業者が警報を停止させるまでの間の時間を記憶し、記憶した時間を次回の遅延時間として設定し、延長時間を任意の時間に設定することも可能である。
【0079】
また、上述した実施例では、機器としてエンジン2を例に挙げて説明したが、機器としてはエンジン2に限られるものではない。例えば、電動モータの駆動力により車両を走行させる電動車両を適用した場合、制御システムが起動している状態でメンテナンス等を実施している場合に、電動モータや、高電圧のバッテリ、インバータ等を冷却するためのラジエータファンが起動するので、ラジエータファンの起動の制御に本発明を適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、電動モータにより駆動力を得る電動車両の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 車両
2 エンジン
3 発電機
4 変速機
5 前輪
6 車軸
7 電動モータ
10 ラジエータファン
11 燃料タンク
12 バッテリ
13 インバータ
15 ECU
16 リレー
21 フードスイッチ
22 報知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリから供給される電力により駆動する電動モータと、所定条件が揃うと始動し発電機を駆動させて前記バッテリを充電するエンジンと、該エンジンが収納されるエンジンルームを開閉するフードと、該フードの開閉を検出する開閉検出手段と、該フードの開状態が検出されている際に前記所定条件が揃ったことを報知する報知手段とを有するハイブリッド車両において、
前記報知手段により報知した後、所定時間内は前記エンジンの始動を禁止する禁止手段を備えた
ことを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両において、
前記所定条件の内、少なくとも一つは前記バッテリの残存容量が所定値以下となることである
ことを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項3】
請求項1もしくは請求項2に記載のハイブリッド車両において、
前記所定時間を任意に設定する禁止時間設定手段を備えた
ことを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項4】
請求項3に記載のハイブリッド車両において、
前記禁止時間設定手段は、
前記報知手段による報知の後、前記任意に設定された所定時間を変更する変更手段を備えた
ことを特徴とするハイブリッド車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−131362(P2012−131362A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285024(P2010−285024)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】