説明

ハイブリッド駆動系の実際状態を決定するための方法

ハイブリッド運転戦略ないしハイブリッド制御の戦略部のための情報として並列タイプのハイブリッド自動車のハイブリッド駆動系の実際状態を決定するための方法であって、ハイブリッド駆動系の実際状態に基づいて、要約的な戦略−実際状態が、ハイブリッド運転戦略ないしハイブリッド制御の戦略部のための情報として形成され、ハイブリッド駆動系の実際状態の各々が、一つの戦略−実際状態に明確に割り当てられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求の範囲の請求項1の上位概念に従う、ハイブリッド運転戦略ないしハイブリッド制御の戦略部のための情報として並列タイプのハイブリッド自動車のハイブリッド駆動系の実際状態を決定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術から、ハイブリッド変速機を有するハイブリッド自動車が知られている。そのような自動車は、内燃エンジンに加えて、少なくとも一つの電気モータないし電気機械を備えている。直列タイプのハイブリッド自動車の場合、ジェネレータ(発電機)が内燃エンジンによって駆動され、当該ジェネレータが車輪を駆動する電気モータに電気エネルギを供給する。更に、並列タイプのハイブリッド自動車も知られている。その場合には、内燃エンジンの回転トルクと、当該内燃エンジンに接続可能な少なくとも一つの電気機械の回転トルクとの、合算(合体、融合)が行われる。この場合、電気機械は、内燃エンジンのベルト駆動系またはクランク軸に結合可能である。内燃エンジン及び/または少なくとも一つの電気機械によって発生される回転トルクは、後置された変速機を介して、駆動される軸に伝達される。
【0003】
内燃エンジンと当該電気機械とが作用結合されている時、ないし、一体型スタータジェネレータを有するハイブリッドシステムの場合において全結合を伴う時、ハイブリッド自動車のハイブリッド運転戦略の機能は、運転モードの要求と、運転者希望トルクないし運転者希望出力の内燃エンジン及び少なくとも一つの電気機械への分配である。
【0004】
従来技術から、少なくとも2つの機能部に分割されるハイブリッド制御部を備えたハイブリッド自動車が知られている。この場合、第1の機能部(戦略部)は、戦略的な関数ないし準定常的な要求(quasistationaere Vorgaben )に関する状態及び連続的な数値を有し、第2の機能部(動作部)は、動作の関数ないし動的な移行を有している。
【0005】
この場合、戦略のための要約的な情報として、自動車のハイブリッド駆動系の実際状態が提供される、ということが重要である。従来技術によれば、戦略ないし戦略部が、固有の実際状態決定部を有している。しかし、不利なことに、当該実際状態決定部によって決定される実際状態は、動作部(制御段階)の駆動系−実施状態には対応しないので、切換時点を調整することが困難である、ということが生じ得る。
【発明の概要】
【0006】
本発明の課題は、ハイブリッド運転戦略ないしハイブリッド制御の戦略部のための情報として並列タイプのハイブリッド自動車のハイブリッド駆動系の実際状態を決定するための方法を提供することである。当該方法の実施によって、ハイブリッド駆動系の実際状態が、簡単な態様で正確に把握される(abgebildet)。
【0007】
本課題は、特許請求の範囲の請求項1に記載された特徴によって解決される。本発明による更なる実施の形態及び利点は、下位請求項より明らかにされる。
【0008】
本発明によれば、ハイブリッド駆動系の実際状態に基づいて、要約的な戦略−実際状態がハイブリッド運転戦略ないしハイブリッド制御の戦略部のための情報として形成され、ハイブリッド駆動系の実際状態の各々が、一つの戦略−実際状態に明確に割り当てられる、ということが提案される。
【0009】
本発明方法においては、形成される(べき)戦略−実際状態に、戦略のための情報が要約化(抽出)されるので、形成される(べき)戦略−実際状態の数は、ハイブリッド駆動系の実際状態の数よりも少ない。
【0010】
例えば、内燃エンジンと少なくとも一つの電気機械とが当該順序で接続されているハイブリッド自動車において、内燃エンジンは、クラッチK1の開放によって、電気機械すなわち駆動系から遮断可能となっており、電気機械のトルクと内燃エンジンのトルクとが融合される加算(合算)変速機の変速機入力部が、第二の選択的なクラッチK2によって、電気機械の出力部と解除可能に接続可能となっており、ハイブリッド駆動系の実際状態から、4種類の可能な戦略−実際状態、「電気走行−内燃エンジンOFF(aus)」「電気走行−内燃エンジンON(ein)」「ハイブリッド走行」及び「充電」が形成される。クラッチK2が設けられない場合、出力部へのパワーフローは、変速機によってのみ(ギヤ段投入/ニュートラル位置)、決定される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ハイブリッド駆動系の実際状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明方法の例示的な実施の形態が、添付図面に基づいて説明される。図1は、クラッチK1とクラッチK2とを有するハイブリッド駆動系の可能な「実際状態」を示している。電気機械と変速機との間にクラッチK2が設けられていない場合、電気機械は変速機に恒久的に接続されている。
【0013】
図1には、並列タイプのハイブリッド自動車のハイブリッド駆動系の可能な「実際状態」が示されている。当該自動車は、内燃エンジンVMと少なくとも一つの電気機械EMとを有しており、それらは当該順序で接続されている。内燃エンジンは、クラッチK1の開放によって、電気機械すなわち駆動系から遮断可能となっており、電気機械のトルクと内燃エンジンのトルクとが融合される加算(合算)変速機の変速機入力部が、第二のクラッチK2によって、電気機械の出力部と解除可能に接続可能となっている。
【0014】
図1において、あるハイブリッド駆動系の実際状態が、0で示されている。その場合、内燃エンジンは停止されており、クラッチK1、K2は共に開放されている。従って、出力部すなわち変速機入力部へのパワーフローは存在しない。内燃エンジンは、電気機械ないし駆動系から遮断されている。
【0015】
内燃エンジンは停止されていて、クラッチK1が締結され、クラッチK2が開放されている状態(内燃エンジンは電気機械と結合されているが、出力部すなわち変速機入力部へのパワーフローは遮断されている状態)は、1で示されている。
【0016】
さらに図1において、内燃エンジンが停止されていて、クラッチK1が開放され、クラッチK2が締結されている状態が、4で示されており、内燃エンジンが停止されていて、クラッチK1、K2が共に締結されている状態が、5で示されている。
【0017】
内燃エンジンは始動されているが、クラッチK1、K2が共に開放されていて、出力部すなわち変速機入力部へのパワーフローは存在していない状態が、2で示されている。
【0018】
内燃エンジンが始動され、クラッチK1が締結されて内燃エンジンは電気機械と接続されているが、クラッチK2が開放されていて出力部すなわち変速機入力部へのパワーフローは遮断されている状態が、3で示されている。この状態では、電気機械が内燃エンジンによって充電される。変速機は、切換位置「ニュートラル」を有し得る。クラッチK2が設けられていない場合、変速機は、切換位置「ニュートラル」を取る。
【0019】
内燃エンジンが始動され、クラッチK1が開放されて内燃エンジンは電気機械ないし駆動系から遮断されているが、クラッチK2が締結されていて変速機は電気機械と結合されている状態が、6で示されている。
【0020】
さらに、内燃エンジンは始動され、クラッチK1、K2が共に締結されていて、内燃エンジンは電気機械と接続され、変速機入力部へのパワーフローは遮断されていないというハイブリッド駆動系の状態が、7で示されている。この状態の際、変速機において、あるギヤ段が投入(係合)される。
【0021】
可能性あるハイブリッド駆動系の実際状態から、4種類の戦略−実際状態、「電気走行−内燃エンジンOFF(aus)」「電気走行−内燃エンジンON(ein)」「ハイブリッド走行」及び「充電」が形成される。(図1の)ハイブリッド駆動系の実際状態0、1、4、5に、戦略−実際状態「電気走行−内燃エンジンOFF(aus)」が割り当てられ、ハイブリッド駆動系の実際状態2、6に、戦略−実際状態「電気走行−内燃エンジンON(ein)」が割り当てられる。さらに、ハイブリッド駆動系の実際状態7に、戦略−実際状態「ハイブリッド」が割り当てられ、ハイブリッド駆動系の実際状態3に、戦略−実際状態「充電」が割り当てられる。
【0022】
この場合、駆動系−実際状態の状態変更と戦略−実際状態の状態変更の切換時点は、常に同一である。
【0023】
本発明のコンセプトによれば、ハイブリッド運転戦略ないしハイブリッド制御の戦略部のための情報として並列タイプのハイブリッド自動車のハイブリッド駆動系の実際状態を決定するための方法が、利用可能とされる。当該方法の実施においては、高コストな機能が必要とされず、状態図(状態グラフ)も必要とされない。
【0024】
さらに、本発明によって形成される戦略−実際状態には、戦略のための情報が要約化(抽出)されているので、戦略段階において、駆動系の構成に関する詳細な知識がほどんど必要ない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド運転戦略ないしハイブリッド制御の戦略部のための情報として並列タイプのハイブリッド自動車のハイブリッド駆動系の実際状態を決定するための方法であって、
ハイブリッド駆動系の実際状態に基づいて、要約的な戦略−実際状態が、ハイブリッド運転戦略ないしハイブリッド制御の戦略部のための情報として形成され、
ハイブリッド駆動系の実際状態の各々が、一つの戦略−実際状態に明確に割り当てられる
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
内燃エンジンと少なくとも一つの電気機械とが当該順序で接続されているハイブリッド自動車において、
内燃エンジンは、クラッチK1の開放によって、電気機械すなわち駆動系から遮断可能となっており、
電気機械のトルクと内燃エンジンのトルクとが融合される加算(合算)変速機の変速機入力部が、第二の選択的なクラッチK2によって、電気機械の出力部と解除可能に接続可能となっており、
ハイブリッド駆動系の実際状態から、4種類の戦略−実際状態、「電気走行−内燃エンジンOFF(aus)」「電気走行−内燃エンジンON(ein)」「ハイブリッド走行」及び「充電」が形成される
ことを特徴とする、請求項1に記載の、ハイブリッド運転戦略ないしハイブリッド制御の戦略部のための情報として並列タイプのハイブリッド自動車のハイブリッド駆動系の実際状態を決定するための方法。
【請求項3】
内燃エンジンが停止されている際のハイブリッド駆動系の実際状態には、戦略−実際状態「電気走行−内燃エンジンOFF(aus)」が割り当てられ、
内燃エンジンが始動されているが駆動系からは遮断されている際のハイブリッド駆動系の実際状態には、戦略−実際状態「電気走行−内燃エンジンON(ein)」が割り当てられ、
内燃エンジンが始動されていて、選択的なクラッチK2が締結され変速機内であるギヤ段が投入されて内燃エンジンが駆動系と接続されている際のハイブリッド駆動系の実際状態には、戦略−実際状態「ハイブリッド」が割り当てられ、
内燃エンジンが始動されていて、クラッチK1が締結される一方で選択的なクラッチK2が開放される、及び/または、変速機が「ニュートラル」の切換位置にある際のハイブリッド駆動系の実際状態には、戦略−実際状態「充電」が割り当てられる
ことを特徴とする、請求項2に記載の、ハイブリッド運転戦略ないしハイブリッド制御の戦略部のための情報として並列タイプのハイブリッド自動車のハイブリッド駆動系の実際状態を決定するための方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−504435(P2011−504435A)
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534432(P2010−534432)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【国際出願番号】PCT/EP2008/064234
【国際公開番号】WO2009/065688
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(500045121)ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト (312)
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
【Fターム(参考)】