説明

ハンダ材分離装置及びこれを用いるハンダ材分離方法

【課題】使用済みのクリームハンダからハンダを分離することができるハンダ材分離装置を提供する。
【解決手段】ハンダ材を槽内で溶融し、そして徐冷により分離されたフラックスと固化ハンダとを槽外に取り出すことができるハンダ材分離装置であって、
ハンダとフラックスを含有するハンダ材が投入される分離槽と、
該分離槽を回動または傾動可能に支持する支持機構と、
前記分離槽を回動または傾動させ、そしてその上向き姿勢から所定の回動または傾動角度にて停止させる駆動制御機構と、
前記分離槽を加熱し、該槽内のハンダ材を溶融することができる加熱手段と、
前記分離槽内の温度をハンダの融点より低い高温に維持することができる温度制御機構とを備えてなる、ハンダ材分離装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリームハンダや糸ハンダなどの使用済みハンダ材からハンダとフラックスとを分離するハンダ材分離装置に関するものであり、詳細には、ハンダ材が投入される分離槽と、該槽内のハンダ材を溶融することができる加熱手段と、槽内の温度をハンダの融点より低い高温に維持することができる温度制御機構と、該分離槽を回動または傾動可能に支持する支持機構と、前記分離槽を所定の回動または傾動角度にて停止させる駆動制御機構とを備えてなるハンダ材分離装置及びこれを用いるハンダ材分離方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、マスク版による印刷法(例えば特許文献1に記載のもの)を利用して電子部品を配線基板の表面上に実装する表面実装技術が知られている。かかる表面実装技術では、まず、マスク版を用いて配線基板上にクリームハンダのパターンを印刷し、そのパターンの上に各種の電子部品をマウントする。そして、配線基板を電子部品とともにリフロー炉に投入してクリームハンダ中のハンダを溶融させることで、配線基板の電極パッドと、電子部品の底面の電極パッドとを接合する。
【0003】
このような表面実装技術では、クリームハンダ中に含まれるフラックスの主成分である溶剤の揮発性が高いことから、印刷工程での使用に伴ってクリームハンダの粘性が徐々に高くなる。そして、その粘性の高まりとともに、マスク版の微小貫通孔からのハンダ抜け性が低下して印刷不良を引き起こし易くなっていく。このため、容器から取り出された後のクリームハンダは、数時間〜数十時間といったごく短時間で寿命となり、その間に使い切れなかった分は処理業者に引き取られて処分される。
【0004】
低コスト化の観点からすれば、クリームハンダを使い切れる量だけ容器から取り出して使用することが望ましいが、マスク版の表面に十分量のクリームハンダを載せておかないと印刷不良を引き起こしてしまう。このため、クリームハンダを無駄なく使い切ることは非常に困難であり、処分しなければならなくなるものがどうしても発生してしまう。少量多品種生産に対応したオンデマンド受注では、マスク版やクリームハンダの仕様(ハンダ粒の粒径など)の切換が早くなることから、処分せざるを得ないクリームハンダの量が多くなり易い。
【0005】
一方、ハンダ付けロボットに用いられる糸ハンダは、糸状のハンダ材の中にフラックスを内包しており、このフラックスが劣化すると、ハンダが基板両面で弾かれてハンダ付け不良を引き起こす。このため、糸ハンダも、1〜3年程度で寿命を迎えることになり、その間に使用されなかった分は処分されることになる。更には、ロボットで使用可能な寸法未満の破棄短線が発生し、これはロボットに使用することができないため、たとえ寿命を迎えていなくても処分されることになる。
【0006】
工場から処理業者に引き取られた使用済みのクリームハンダや糸ハンダは、焼却によって非金属成分が除去された後、電気分解等によって銀、銅、スズ、鉛などといった具合に金属の種類毎に分離精製されてリサイクルされるのが一般的である。
【0007】
ところが、溶剤の揮発によって粘性を高めてしまったクリームハンダ、フラックスの劣化によって寿命を迎えてしまった糸ハンダ、あるいは上述の破棄短線であっても、その中のハンダ成分については、フラックスから分離して所定の形状に固めることで、ハンダ資源として有効利用することが可能である。にもかかわらず、ハンダ資源として利用しない
ままに処理業者によるリサイクルに回してしまうのは、資源及びエネルギー消費の低減化の面で好ましくない。
【0008】
また、上述のような表面実装技術又はハンダ付けロボットによる実装技術に加えて、フローハンダ装置を用いる電子部品の実装も並行して行う工場では、これら装置にセットするためのハンダ棒(ハンダのインゴット)が、クリームハンダや糸ハンダとは別に必要になる。そして、ハンダ棒は、使用済みのクリームハンダや糸ハンダに含まれるハンダを利用して製造することが可能である。しかしながら、前述のような工場においては、使用済みのクリームハンダや糸ハンダを処理業者に引き取ってもらう一方で、ハンダ棒を購入するという運用がなされていた。使用済みのクリームハンダや糸ハンダからハンダ棒を得るためには、クリームハンダや糸ハンダからハンダを分離する必要があるが、それを可能にする装置がないために、クリームハンダや糸ハンダの状態で処分せざるを得なかったからである。
【0009】
これまで、使用済みのクリームハンダや糸ハンダに含まれるハンダを有効利用しないままに処分してしまうことによる問題について説明してきた。しかし、金属材料と非金属材料とが混合された混合物中に含まれる金属材料を有効利用しないままに処分すれば、同様の問題が発生し得る。
【0010】
上のような観点から、ハンダ材からハンダを分離することができるハンダ分離装置が提案されている(特許文献2参照。)。
該ハンダ分離装置は、フラックスとハンダとを含有するハンダ材を加熱して溶融液とする溶融槽と、その溶融液を比重差により上下二層に分離した後、溶融状態のまま、上層の溶融フラックス又は下層の溶融ハンダの一方を該溶融槽の外へ移送する移送手段とを備えることを特徴とするものである。
【0011】
上記ハンダ分離装置は、クリームハンダや糸ハンダなどのハンダ材からハンダを分離できるという点で優れた装置といえる。
しかし、液位調整部材を沈めて上層と下層との界面を上昇させて、オーバーフローにより溶融フラックスを分離するという引用文献2に記載のハンダ分離装置を用いる方法では、界面の上昇・下降により、界面付近において、フラックスの溶融ハンダへの混入或いはハンダの溶融フラックスへの混入が起きうる可能性があった。
また、引用文献2に記載のハンダ分離装置を用いる方法は、液位調整部材により上層と下層の界面の高さを調整する工程においても、ハンダを移送管を経由して溶融槽外に移送する工程においても、ハンダは常に溶融状態である必要があり、そのため、上記方法は、ハンダが溶融状態となる比較的高い温度で、種々の操作を行う必要があり、また、その操作法も必ずしも簡便なものとはいえないものもあり、加えて、操作中のハンダの固化を回避するために、例えば、ハンダ移動管を介してハンダを溶融槽の外へ移送するために、各所にヒーター等の加熱装置を設置する必要があり、必ずしも経済性に優れるものとはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平12−79675号公報
【特許文献2】特開2007−224346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の課題は、上記課題を解決し得る、即ち、溶融フラックス・ハンダ間での混入を回避し、ハンダが溶融状態となる比較的高い温度での操作を少なくでき且つより
簡便な操作で分離を達成し得るハンダ材分離装置であって、より簡単な装置構成を有することにより経済性に優れるハンダ材分離装置及びこれを用いるハンダ材分離方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ハンダ材が投入される分離槽と、該槽内のハンダ材を溶融することができる加熱手段と、槽内の温度をハンダの融点より低い高温に維持することができる温度制御機構とを備えることにより、溶融液の上層のフラックスを溶融状態のまま、下層のハンダのみを固化することができ、分離槽を回動または傾動可能に支持する支持機構と、前記分離槽を所定の回動または傾動角度にて停止させる駆動制御機構を備えることにより、分離槽を回動または傾動により横向きの姿勢に保持して分離されたフラックスを分離槽外に流出させること及び下向きの姿勢に保持して分離された固化ハンダを分離槽外に脱落させることができ、これにより、上記構成を備えるハンダ材分離装置は、ハンダ・フラックス間での混入を回避でき、ハンダが溶融状態となる比較的高い温度での操作を少なくでき且つより簡便な操作でハンダ材の分離を達成することができ、更に該装置は、引用文献2に記載のハンダ分離装置に比して、より簡単な装置構成を有するため、経済性にも優れることを見い出し本発明を完成させた。
【0015】
即ち、本発明は以下の構成を有するものである。
(1)ハンダ材を槽内で溶融し、そして徐冷により分離されたフラックスと固化ハンダとを槽外に取り出すことができるハンダ材分離装置であって、
ハンダとフラックスを含有するハンダ材が投入される分離槽と、
該分離槽を回動または傾動可能に支持する支持機構と、
前記分離槽を回動または傾動させ、そしてその上向き姿勢から所定の回動または傾動角度にて停止させる駆動制御機構と、
前記分離槽を加熱し、該槽内のハンダ材を溶融することができる加熱手段と、
前記分離槽内の温度をハンダの融点より低い高温に維持することができる温度制御機構とを備えてなる、ハンダ材分離装置。
(2)更に、分離され槽外に流出されるフラックスを受ける容器と分離され槽外に脱落される固化ハンダを受けるトレイとを備える前記(1)記載のハンダ材分離装置。
(3)前記分離槽の上縁部に、更に、分離されたフラックスを樋の出口より流出させる流出樋を備えてなる、前記(1)又は(2)記載のハンダ材分離装置。
(4)前記駆動制御機構は、設定された回動または傾動角度に従い、分離槽をフラックスの流出に適する横向きの姿勢に保持することができ且つ分離槽を固化ハンダの脱落に適する下向きの姿勢に保持することができる機構を備えてなる、前記(1)乃至(3)のいずれか一つに記載のハンダ材分離装置。
(5)前記分離槽の内底面と内側面は、92°乃至110°の鈍角を成すように設計されている、前記(1)乃至(4)のいずれか一つに記載のハンダ材分離装置。
(6)前記温度制御機構は、分離槽内の温度を、ハンダの融点より低い高温の範囲で所望の温度に設定することができる操作パネルを備えてなる、前記(1)乃至(5)のいずれか一つに記載のハンダ材分離装置。
(7)前記駆動制御機構は、分離槽の回動または傾動角度を設定することができる操作パネルを備えてなる、前記(1)乃至(6)のいずれか一つに記載のハンダ材分離装置。
(8)前記(1)乃至(7)のいずれか一つに記載のハンダ材分離装置を使用して、ハンダ材からフラックスとハンダとを分離する方法であって、
上向き姿勢にある分離槽内に投入されたハンダ材を加熱溶融する加熱段階と、
溶融されたハンダ材を徐冷し、該分離槽内の温度をハンダの融点より低い高温に維持することにより、上層のフラックスと下層の固化ハンダとに分離する分離段階と、
前記分離槽を回動または傾動させて、横向きの姿勢に保持することにより、分離されたフラックスを分離槽外に流出させるフラックス流出段階と、
フラックスの流出に続いて、該分離槽を更に回動または傾動させて、下向きの姿勢に保持することにより、分離された固化ハンダを脱落させる固化ハンダ脱落段階とを有してなる、ハンダ材分離方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、ハンダ・フラックス間での混入を回避でき、ハンダが溶融状態となる比較的高い温度での操作を少なくでき且つより簡便な操作で分離を達成し得るハンダ材分離装置であって、より簡単な装置構成を有することにより経済性に優れるハンダ材分離装置が提供される。
本発明のハンダ材分離装置は、ハンダ材が投入される分離槽と、該槽内の使用済みハンダ材を溶融することができる加熱手段と、槽内の温度をハンダの融点より低い高温に維持することができる温度制御機構とを備えることにより、溶融液の上層のフラックスを溶融状態のまま、下層のハンダのみを固化することができ、分離槽を回動または傾動可能に支持する支持機構と、前記分離槽を所定の回動または傾動角度にて停止させる駆動制御機構を備えることにより、分離槽を回動または傾動により横向きの姿勢に保持して分離されたフラックスを分離槽外に流出させること及び下向きの姿勢に保持して分離された固化ハンダを分離槽外に脱落させることができるため、前記で流出されたフラックスと脱落した固化ハンダを受けることができるため、簡単な操作で効率的に、フラックスと固化ハンダを得ることを可能とする。
【0017】
また、分離され槽外に流出されるフラックスを受ける容器と分離され槽外に脱落される固化ハンダを受けるトレイとを備えることにより、フラックスと固化ハンダを効率的に回収することができる。
また、前記分離槽の上縁部に、更に、分離されたフラックスを樋の出口より流出させる流出樋を備えることにより、フラックスを効率的に且つ周りを汚すことなく分離槽外に流出させることができる。
また、前記分離槽の内底面と内側面を、92°乃至110°の鈍角を成すように設計することにより、分離槽を下向きの姿勢に保持した際に、固化ハンダを容易に分離槽外に脱落させることができる。
また、前記温度制御機構による温度設定を操作し得る操作パネルを備えることにより、温度設定の操作を簡便に行うことができる。
また、前記駆動制御機構による分離槽の回動または傾動角度の設定を可能とする操作パネルを備えることにより、分離槽の回動または傾動角度の設定操作を簡便に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】使用済みのクリームハンダaが投入されている分離槽1を示す模式図である。
【図2】加熱溶融により、上層と下層とに分離した溶融液を収容する分離槽1を示す模式図である。
【図3】ハンダ固化後の溶融フラックスbの回収工程を示す模式図である。
【図4】固化したハンダcの脱落による回収工程を示す模式図である。
【図5】本発明に係る実施例のハンダ材分離装置の分離槽及びその付近の正面図である。
【図6】本発明に係る実施例のハンダ材分離装置の分離槽及びその付近の上面図である。
【図7】本発明に係る実施例のハンダ材分離装置の分離槽及びその付近の側面図である。
【図8】本発明に係る実施例のハンダ材分離装置全体の正面図(扉を閉じた状態)である。
【図9】本発明に係る実施例のハンダ分離装置全体の背面図(扉を閉じた状態)である。
【図10】本発明に係る実施例のハンダ分離装置全体の立面図(扉を閉じた状態)である。
【図11】本発明に係る実施例のハンダ分離装置全体の正面図(前面板、背面板、側面板、天板及び底板を取り外した状態)である。
【図12】本発明に係る実施例のハンダ分離装置全体の背面図(前面板、背面板、側面板、天板及び底板を取り外した状態)である。
【図13】本発明に係る実施例のハンダ分離装置全体の側面図(前面板、背面板、側面板、天板及び底板を取り外した状態)である。
【図14】本発明に係る実施例のハンダ分離装置において使用されるフォトセンサ16を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の、ハンダ材分離装置は、ハンダとフラックスを含有するハンダ材が投入される分離槽と、
該分離槽を回動または傾動可能に支持する支持機構と、
前記分離槽を回動または傾動させ、そしてその上向き姿勢から所定の回動または傾動角度にて停止させる駆動制御機構と、
前記分離槽を加熱し、該槽内の使用済みハンダ材を溶融することができる加熱手段と、
前記分離槽内の温度をハンダの融点より低い高温に維持することができる温度制御機構とを備えてなることを特徴とする。
【0020】
本発明のハンダ材分離装置に使用し得る分離槽としては、ハンダを溶融し得るハンダ槽として使用できるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、チタン、ステンレス、鉄鋳物、SHC(スーパーハードキャスティング、特殊鋳物)等の材質のものを使用することができる。
また、分離槽は、表面処理されていてもよく、該表面処理としては、例えば、窒化処理(サーフ処理、CrNの薄層を形成する)、セラミックコーティング(Al23、SiO2、ZrO2等)等が挙げられる。
また、前記分離槽を加熱する加熱手段としては、ハンダ材を加熱して溶融液とし得る加熱手段であれば特に限定されないが、例えば、内蔵型のヒーターや、外付けのヒーター等が挙げられ、好ましくは、内蔵型のヒーターが挙げられる。
前記加熱手段で加熱することにより、分離槽内のハンダ材は、フラックスとハンダとの比重差によって、溶融フラックスからなる上層と溶融ハンダからなる下層とに分離した溶融液となる。
【0021】
ハンダの融点より低い高温に維持する温度制御機構としては、例えば、分離槽内の単数又は複数の温度センサにより、設定温度以下では、分離槽を加熱する加熱手段が働き、設定温度以上では、分離槽を加熱する加熱手段が働かないようにする機構が挙げられる。
尚、ハンダの融点より低い高温とは、具体的には、ハンダの融点より低く且つフラックスの溶融温度より高い温度範囲を意味するものであり、従って、フラックスの種類やハンダの種類により変化するものである。
上記温度制御機構を作動させることにより、上記の溶融液は、液状の溶融フラックスのままである上層と固化ハンダとなる下層とに分離した状態となる。
尚、ハンダが溶融している温度から、ハンダを固化する温度への冷却は、単に放置することによる自然冷却により行うこともできるが、例えば、ファンや排気ダクトにより分離槽の周りの空気を流動させることによる空冷や水冷により行うこともできるが、空冷にて行うのが好ましい。
【0022】
分離槽を回動または傾動可能に支持する支持機構は、例えば、分離槽に結合させた回動軸と、該回動軸を装置本体に回動可能に固定する軸受から構成され、回動軸は、例えば、金属等からなり、配線を通すために中空とするのが好ましい。
分離槽を上向き姿勢から所定の回動または傾動角度にて停止させる駆動制御機構としては、所定の回動または傾動角度にて停止させることができるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、直接的又は間接的なモーター等の動力源の伝達により、また、その他の機械的な動力の伝達により行うことができ、また、手動により所定の角度に回動または傾動させることもできる。
また、停止させる機構としては、例えば、分離槽を回動または傾動するための回動軸の周りに設置される、フォトセンサであって、回動軸が設定角度まで回動すると回動軸に形成された穴等を通じて光が通過または遮断されることにより、動力伝達が停止する機構等が挙げられる。
なお、分離槽への動力伝達は、分離槽と、モーターや他の機械的な動力源とを直接結合して行うこともできるが、歯車やベルトを介して回動軸に伝達することにり行うこともできる。
本発明のハンダ分離装置は、好ましい態様として、分離され槽外に流出されるフラックスを受ける容器と分離され槽外に脱落される固化ハンダを受けるトレイとを備える。
フラックスを受ける容器としては、流出したフラックスを受けるのに適した容器であれば特に限定されないが、金属、プラスチック等でできた、例えば、カップ状、箱状の容器が挙げられ、持ち手が付いているのが好ましい。
固化ハンダを受けるトレイとしては、脱落したハンダを受けるのに適した容器であれば特に限定されないが、金属、プラスチック等でできた、箱状の容器が挙げられる。
【0023】
本発明のハンダ分離装置は、好ましい態様として、分離槽の上縁部に分離されたフラックスを樋の出口より流出させる流出樋を備える。
上記、流出樋は、分離槽が回動または傾動により横向きの姿勢に保持された場合に、分離槽から溢れ出た溶融フラックスを受け止めることができる溝のような構成を有するものが好ましく、また、樋の出口の方向に沿って傾斜を有するのが好ましく、これにより、流出樋に受け止められた溶融フラックスは、傾斜に沿って、樋の出口の方向に流れて排出されるため、周りを汚すことなく効率的に排出されることとなる。
【0024】
本発明のハンダ分離装置は、好ましい態様として、前記駆動制御機構は、分離槽をフラックスの流出に適する横向きの姿勢に保持することができ且つ分離槽を固化ハンダの脱落に適する下向きの姿勢に保持することができるものである。
これにより、自動的に分離されたフラックスを分離槽外に流出することができ、且つ、自動的に分離された固化ハンダを分離槽外に脱落させることができる。
【0025】
本発明のハンダ分離装置は、好ましい態様として、分離槽の内底面と内側面を、92°乃至110°の鈍角を成すように設計される。
これにより、分離された固化ハンダを分離槽外のトレイに容易に脱落させることができる。
【0026】
本発明のハンダ分離装置は、好ましい態様として、前記温度制御機構による温度設定を操作し得る操作パネルを備える。
これにより、温度設定の操作を簡便に行うことができる。
本発明のハンダ分離装置は、好ましい態様として、前記駆動制御機構による分離槽の回動または傾動角度の設定を可能とする操作パネルを備える。
これにより、分離槽の回動または傾動角度の設定操作を簡便に行うことができる。
【0027】
また、本発明は、上記のハンダ材分離装置を使用する、ハンダ材からフラックスとハンダとを分離する方法であって、
上向き姿勢にある分離槽内に投入されたハンダ材を加熱溶融する加熱段階と、
溶融されたハンダ材を徐冷し、該分離槽内の温度をハンダの融点より低い高温に維持することにより、上層のフラックスと下層の固化ハンダとに分離する分離段階と、
前記分離槽を回動または傾動させて、横向きの姿勢に保持することにより、分離されたフラックスを分離槽外に流出させるフラックス流出段階と、
フラックスの流出に続いて、該分離槽を更に回動または傾動させて、下向きの姿勢に保持することにより、分離された固化ハンダを分離槽外に脱落させる固化ハンダ脱落段階とを有してなる、ハンダ材分離方法にも関するものである。
尚、各段階は、上記で説明したのと同様に行うことができる。
【0028】
次に、本実施形態に係るハンダ材分離装置を用いることによる、ハンダの分離操作の例を概略図(図1ないし4)を用いて説明する。
クリームハンダからハンダを分離するには、まず、図1に示すように、使用済みのクリームハンダaを、流出樋2を備える分離槽1内に投入する。なお、使用済みのクリームハンダは、本実施形態に係るハンダ材分離装置が設置されている工場内において、印刷用のマスク版の表面から回収されたものである。日々発生する使用済みのクリームハンダを回収容器内にストックしておき、ある程度まとまった量になった時点で、本実施形態に係るハンダ材分離装置によって処理する。
ここで使用される分離槽1は、該分離槽1内からの固化ハンダの回収を容易にするために、例えば、該槽の内底面と内側面は92°ないし110°の鈍角を成すように設計し、窒化処理(サーフ処理、CrNの薄層を形成する)、セラミックコーティング(Al23、SiO2、ZrO2等)等の表面処理が施されるのが好ましい。
【0029】
分離槽1内へのクリームハンダaの投入が終わったら、内蔵型のヒーターや、外付けのヒーター等の加熱手段により、分離槽1内のクリームハンダaを加熱して溶融させる。
上記加熱により、分離槽1内では、溶融ハンダcが溶融フラックスbとの比重差によって沈降して、分離槽1の下部に集まっていく。これにより、図2に示すように、分離槽1内において、溶融フラックスbからなる上層と、溶融ハンダcからなる下層とに分離した溶融液が得られる。
【0030】
上層と下層との分離が終わったら、分離槽1内の温度を、温度制御機構により、ハンダcの融点より低い高温(ハンダcは固形化するが、フラックスbは溶融したままとなる温度)に制御維持する。温度制御機構は、例えば、分離槽1内に設置された、単数又は複数の温度センサにより、設定温度以下では、加熱手段が働き、設定温度以上では、加熱手段が働かないようにする機構等を用いることにより行われ得る。
また、上記設定温度までの冷却は、例えば、ファンや排気ダクトにより空気を流動させる空冷等により行うのが好ましい。
上記温度制御機構を作動させることにより、結果として、上層のフラックスbは液体のままで、下層のハンダcのみが固化した状態となる。
【0031】
上層3の溶融フラックスを回収するために、図3に示されるように、分離槽1を回動または傾動させて、横向きの姿勢(即ち、約90度)に保持する。この操作により溶融フラックスbは、分離槽1の側面に沿って流出樋2に流れ落ちる。流出樋2には、例えば、傾斜がつけられ、それにより溶融フラックスbは、該傾斜に沿って下降し、流出樋2の下部に設置された樋の出口により排出されて、容器に回収される。
上記分離槽1の回動または傾動は、モータや他の機械的手段により、直接的に又は間接的に回動または傾動させるのが好ましいが、手動により制御することもできる。
また、前記モータや他の機械的手段は、フォトセンサ等により分離槽1を回動または傾
動させて、横向きの姿勢(即ち、約90°)に保持し得る駆動制御機構を備えるのが好ましい。
【0032】
フラックスの回収後、図4に示されるように、分離槽1を、更に回動または傾動させて、下向きの姿勢(即ち、約180°)に保持することにより、下層の固化したハンダcを、自重により脱落させて、例えば、インゴットのような形状としてトレイに回収する。
【0033】
図5ないし7に、本発明に係る実施例のハンダ材分離装置の分離槽及びその付近の部分図を示した。
尚、図5は正面図を示し、図6は、上面図、図7は、側面図をそれぞれ示すものである。
図5ないし7から判るように、分離槽1には、該槽の幅より長い流出樋2が設けられ、流出樋2は先端部に樋の出口3を有する。該出口3は、分離槽1が横向きの姿勢(即ち、約90度)に保持された時に、フラックス回収容器8の真上となるように設計される。また、図6で示されるように、流出樋2は、先端部の出口方向に傾斜を有する。
また、分離槽1は、固化ハンダの自重により脱落を容易にするために、その内底面と内側面は、92°乃至110°の鈍角を成す。
分離槽1には、該槽内のハンダ材を溶融することができるヒーターが内蔵され、また該槽内の複数箇所には温度センサが設置される。そして、前記内臓ヒーターと温度センサにより、例えば、設定温度以下では、内臓ヒーターの電源がONとなり、設定温度以上では、内臓ヒーターの電源がOFFとなる回路を構成することにより、温度制御機構が構成される。
これにより、温度制御は、例えば、ハンダ材の溶融時には、ハンダの融点以上の設定温度にして加熱し、比重差により溶融フラックスとハンダが分離した後は、ハンダの融点より低い高温の範囲(即ち、ハンダの融点より低く、フラックスの融点より高い温度範囲)の温度に設定することにより達成される。
分離槽1は、回動軸5により結合され、該回動軸5は、2箇所の軸受により回動または傾動可能に支持され、モータ4によりベルトを介して回動または傾動され、また、回動軸5には、フォトセンサ16が設置される。
例えば、設定された特定の回動または傾動角度で、フォトセンサ16において光が通過又は遮断されるようにし、これによりモータ4の電源がOFFとなるような回路を構成することにより、駆動制御機構が構成される。
上記駆動制御機構により、分離槽をフラックスの流出に適する横向きの姿勢(約90°)に保持することができ且つ分離槽を固化ハンダの脱落に適する下向きの姿勢(約180°)に保持される。
分離槽1を、横向きの姿勢(即ち、約90度)に保持して、溶融フラックスを回収する時、流出したフラックスは、流出樋2の出口3を介して、フラックス回収容器8の中に回収される。
分離槽1を下向きの姿勢(即ち、約180°)に保持して、固化したハンダを回収する時、自重により脱落したハンダは、ハンダ移送板11により移送されてハンダ回収容器9の中に回収される。回収されたハンダは、回収容器9中に設けられた引き出し構造のハンダ回収トレイ12により外部へ取り出される。
また、該分離装置は、所望により、空冷のためにファン10を設置することができる。
【0034】
図8ないし16に、本発明に係る実施例のハンダ分離装置全体の図を示した。
図8ないし10は、該装置の扉を閉じた状態の外見を示す図(図8:正面図、図9:背面図、図10:上面図)であり、図11ないし15は、前面板、背面板、側面板、天板及び底板を取り外した状態の該装置の外見を示す図(図11:正面図、図12:背面図、図13:側面図)であり、図14は、該装置で使用されるフォトセンサ16を示す概略図である。
図8ないし10から判るように、該ハンダ材分離装置は、縦長の形状を有し、全面が金属の板で覆われた構成となる。尚、前面には、該分離装置は、の使用時に開放され得る前面扉13を有する。
【0035】
図11ないし15から判るように、該分離装置には、排気のために、分離槽1の上に排気フード14を備える排気ダクト15が設置される。排気ダクト15は、該分離装置の下部に設置されるフィルター18に結合され、該フィルター18は、ファン19に連結される。また、該分離装置の前面の下部には、分離槽1を所望の温度に設定することができ、また、分離槽の回動または傾動角度を設定することができる操作パネル17が設けられる。また、操作パネル17において、時間設定や半自動モードと手動モードとの切り替え等ができるようにすることもできる。
【0036】
図16から判るように、フォトセンサ16は、中心部に回動軸5を通すために穴が開いており、その周りに該軸の回動と連動する連動部20を有する。該連動部20には回動軸5が90度及び180度回動した場合に、左右への光が通過可能となるように、穴部21を有する。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明により、ハンダ・フラックス間での混入を回避でき、ハンダが溶融状態となる比較的高い温度での操作を少なくでき且つより簡便な操作で分離を達成し得るハンダ材分離装置であって、より簡単な装置構成を有することにより経済性に優れるハンダ材分離装置が提供される。
また、本発明のハンダ分離装置は、使用済みのクリームハンダからハンダを分離して、ハンダ棒に加工し直すことで、ハンダ資源をハンダとして使用しないままリサイクルに回してしまうことによる地球全体の物質循環系におけるエネルギー消費量の増大を抑えることができる。また、使用済みのクリームハンダの処分費支出によるコストアップを回避したり、ハンダ棒の購入量を低減して低コスト化を実現したりすることもできる。特に、地球環境保護の観点から、安価な「鉛含有ハンダ」よりも、高価な「無鉛ハンダ」が多く用いられるようになってきた近年においては、高価な無鉛のハンダ棒の購入量を減らすことで、コスト削減量を非常に大きくすることができる。
【符号の説明】
【0038】
a:クリームハンダ
b:フラックス
c:ハンダ
1:分離槽
2:流出樋
3:出口
4:モータ(駆動源)
5:回動軸
6:軸受
7:ベルト
8:フラックス回収容器
9:ハンダ回収容器
10:ファン
11:ハンダ移送板
12:ハンダ回収トレイ
13:前面扉
14:排気フード
15:排気ダクト
16:フォトセンサ
17:操作パネル
18:フィルター
19:ファン
20:連動部
21:穴部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンダ材を槽内で溶融し、そして徐冷により分離されたフラックスと固化ハンダとを槽外に取り出すことができるハンダ材分離装置であって、
ハンダとフラックスを含有するハンダ材が投入される分離槽と、
該分離槽を回動または傾動可能に支持する支持機構と、
前記分離槽を回動または傾動させ、そしてその上向き姿勢から所定の回動または傾動角度にて停止させる駆動制御機構と、
前記分離槽を加熱し、該槽内のハンダ材を溶融することができる加熱手段と、
前記分離槽内の温度をハンダの融点より低い高温に維持することができる温度制御機構とを備えてなる、ハンダ材分離装置。
【請求項2】
更に、分離され槽外に流出されるフラックスを受ける容器と分離され槽外に脱落される固化ハンダを受けるトレイとを備える請求項1記載のハンダ材分離装置。
【請求項3】
前記分離槽の上縁部に、更に、分離されたフラックスを樋の出口より流出させる流出樋を備えてなる、請求項1又は2記載のハンダ材分離装置。
【請求項4】
前記駆動制御機構は、設定された回動または傾動角度に従い、分離槽をフラックスの流出に適する横向きの姿勢に保持することができ且つ分離槽を固化ハンダの脱落に適する下向きの姿勢に保持することができる機構を備えてなる、請求項1乃至請求項3のいずれか一項記載のハンダ材分離装置。
【請求項5】
前記分離槽の内底面と内側面は、92°乃至110°の鈍角を成すように設計されている、請求項1乃至請求項4のいずれか一項記載のハンダ材分離装置。
【請求項6】
前記温度制御機構は、分離槽内の温度を、ハンダの融点より低い高温の範囲で所望の温度に設定することができる操作パネルを備えてなる、請求項1乃至請求項5のいずれか一項記載のハンダ材分離装置。
【請求項7】
前記駆動制御機構は、分離槽の回動または傾動角度を設定することができる操作パネルを備えてなる、請求項1乃至請求項6のいずれか一項記載のハンダ材分離装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項記載のハンダ材分離装置を使用して、ハンダ材からフラックスとハンダとを分離する方法であって、
上向き姿勢にある分離槽内に投入されたハンダ材を加熱溶融する加熱段階と、
溶融されたハンダ材を徐冷し、該分離槽内の温度をハンダの融点より低い高温に維持することにより、上層のフラックスと下層の固化ハンダとに分離する分離段階と、
前記分離槽を回動または傾動させて、横向きの姿勢に保持することにより、分離されたフラックスを分離槽外に流出させるフラックス流出段階と、
フラックスの流出に続いて、該分離槽を更に回動または傾動させて、下向きの姿勢に保持することにより、分離された固化ハンダを脱落させる固化ハンダ脱落段階とを有してなる、ハンダ材分離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−175095(P2010−175095A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15979(P2009−15979)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(593128172)リコーマイクロエレクトロニクス株式会社 (52)
【出願人】(591239494)セイテック株式会社 (3)
【出願人】(593036165)西華産業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】