説明

バッファ回路

【課題】出力波形を高調波が発生しない様に調整する事ができ、高次高調波の抑圧効果の高い水晶発振回路の提供。
【解決手段】水晶振動子を振動源とする発振回路部と、この発振回路部の出力信号を入力とするCMOSトランジスタのインバータからなる複数段のバッファ回路部11、12、13と、このバッファ回路部の出力から直流成分をカットするキャパシタCB1、CB2を介して増幅するCMOSプッシュプル型増幅回路14とを備えた水晶発振回路に於いて、バッファ回路部13のCMOSトランジスタTp4とCMOSトランジスタTn4間に抵抗素子R3、R4を接続し、その中間点はバッファ回路部13の出力として、前記抵抗素子と前記キャパシタとからなる時定数で出力信号の波形成形を行い、且つ前記抵抗素子のバイパス回路16をメモリ設定にて、MOSスイッチ手段17のオン/オフ切り替えにより可能とするメモリを備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水晶発振回路に関わり、特に低消費電力タイプの温度補償型水晶発振器(TCXO)等に適用できる発信回路に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の携帯機器の小型軽量化に伴って、これら携帯機器の周波数基準として用いられる水晶発振回路においても小型化が求められている。
特許文献1は公知の水晶発振器について記載している。図10は特許文献1に記載されている水晶発振回路の回路構成例を示した図である。この図10において、X1は水晶振動子、Rfは高周波抵抗、C1、C2は発振用容量、0は発振増幅回路、1は第1のバッファ回路(初段バッファ回路)、2は第2のバッファ回路(2段目バッファ回路)、3は第3のバッファ回路(3段目バッファ回路)、R1、R2は抵抗、CB1、CB2はコンデンサ、4は出力増幅回路、5は安定化電源、CVREGはバイパスコンデンサ、VREGは安定化電源5から出力される基準電圧である。
【0003】
発振増幅回路0はPch−CMOSトランジスタM1とNch−CMOSトランジスタM2とからなるインバータ増幅器、第1のバッファ回路1はPch−CMOSトランジスタM3とNch−CMOSトランジスタM4とからなるインバータ増幅器、第2のバッファ回路2はPch−CMOSトランジスタM5とNch−CMOSトランジスタM6とからなるインバータ増幅器、第3のバッファ回路3はPch−CMOSトランジスタM7とNch−CMOSトランジスタM8とからなるインバータ増幅器である。また出力増幅回路4はNch−CMOSトランジスタM9とPch−CMOSトランジスタM10とからなるCMOSプッシュプル型増幅回路である。
【0004】
図10において、発振増幅回路0の出力は、第1のバッファ回路1で充分な振幅にまで増幅され、第2、第3のバッファ回路2、3で波形成形されてコンデンサCB1、CB2を介して出力増幅回路4のNch−CMOSトランジスタM9とPch−CMOSトランジスタM10のそれぞれのゲートに印加される。
【0005】
出力増幅回路4は、低インピーダンスで出力端子(OUT端子)より負荷へ出力電流を供給する。上述の各部位へは安定化電源5から基準電圧VREGが供給される。安定化電源5の出力ラインと接地電位(GND)との間にはバイパスコンデンサCVREGが接続されており、安定化電源5の高周波ノイズを除去している。
【0006】
したがって、特許文献1に開示の技術によれば、発振増幅回路0、帰還抵抗Rf、水晶振動子X1、容量C1、C2で構成されるインバータ発振回路部の出力信号をさらにインバータを介してクリップド・サイン波(振幅制限された矩形波)として出力することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−74416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、従来の一般的インバータ発振回路では、出力が矩形波に近く、波形の立ち上がりが鋭くなっているため、所望の基本波以外の高次高調波成分を、目的とするレベルまで、抑圧することが困難となっている。この出力波形の鋭さを鈍らせることで高調波が抑制されるため、その1つの手法として、使用しているMOSトランジスタのゲート幅を小さくして出力電流を低下させることで波形が鈍ることを利用することが考えられる。しかし、この種のインバータ発振回路では、負荷が接続される関係で出力電流を大きくとる必要が生じている。このため高調波抑制を取るか出力電流を大きくとるかのいずれかを選択しなければならないという二律背反の問題を生じてしまう。特に、発振回路をICに集積化した場合においては、ゲート幅を変更するなどして最終段の出力用トランジスタの駆動能力を任意に調節するのは、ICチップの面積増加につながるので好ましくない。
【0009】
本発明は、上記従来の問題点に着目し、出力用トランジスタのゲート幅の調整などを必要とせず、出力波形を高調波が発生しないように調整することができ、もって高次高調波の抑圧効果の高い水晶発振回路を提供することを目的とする。
【0010】
また、発振回路を集積化した場合でも、最終段のトランジスタのサイズを変えることなく出力波形の立ち上がりの鋭さを軽減することができるようにして高調波抑制効果を高めることができる水晶発振回路を提供することを目的とする。
更に、出力周波数を分周した場合であっても容易に高調波抑制を実現できる水晶発振回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述の課題のうちの少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0012】
[適用例1]水晶振動子を振動源とする発振回路部と、前記発振回路部の出力信号を入力されるPch−CMOSトランジスタとNch−CMOSトランジスタとで構成されているインバータを含む初段バッファ回路と、他のPch−CMOSトランジスタと他のNch−CMOSトランジスタとで構成されている他のインバータを有しているとともに前記他のPch−CMOSトランジスタにおけるドレインと前記他のNch−CMOSトランジスタにおけるドレインとの間に接続されている時定数変更素子を含み、かつ前記初段バッファ回路部の出力側に入力が接続されている終段バッファ回路部と、前記終段バッファ回路部の出力信号から直流成分をカットするキャパシタを備えるとともに前記キャパシタを介して伝達された前記終段バッファ回路部からの前記出力信号を増幅するCMOSプッシュプル型増幅回路と、前記時定数変更素子をバイパスして前記終段バッファ回路部の前記他のPch−CMOSトランジスタにおけるドレインと前記他のNch−CMOSトランジスタにおけるドレインとを前記終段バッファ回路部の出力に接続するためのバイパス回路と、前記バイパス回路に接続されている前記バイパス回路のオン/オフを制御するためのMOSスイッチ手段と、前記MOSスイッチ手段を制御する信号を出力するメモリ部と、を備えていることを特徴とする水晶発振回路。
【0013】
このような構成を採用することにより、終段バッファ回路部の出力信号は時定数変更素子により決まる時定数だけ遅れて緩やかに立ち上がるように成形される。これにより後段のCMOSプッシュプル型増幅回路へ入力した信号の波形の立ち上がりが鈍り、これによって高次高調波が抑制された状態で出力される。したがって、インバータ発振回路を用いた場合でも、基本波以外の高次高調波レベルを抑圧して発振信号を出力することが可能となる。また、水晶発振回路は通常モードと高調波抑制モードを選択することができる。したがって、負荷の用途に応じて高調波抑制を行うか否かの選択ができる水晶発振回路とすることができる。さらに、メモリ設定により高調波抑制機能を発揮させるか否かを選択することができるのでモード切替が容易である。
【0014】
[適用例2]水晶振動子を振動源とする発振回路部と、前記発振回路部の出力信号を入力されるPch−CMOSトランジスタとNch−CMOSトランジスタとで構成されているインバータを含む初段バッファ回路と、他のPch−CMOSトランジスタと他のNch−CMOSトランジスタとで構成されている他のインバータを有しているとともに前記他のPch−CMOSトランジスタにおけるドレインと前記他のNch−CMOSトランジスタにおけるドレインとの間に接続されている時定数変更素子を含み、かつ前記初段バッファ回路部の出力側に入力が接続されている終段バッファ回路部と、前記終段バッファ回路部の出力信号から直流成分をカットするキャパシタを備えるとともに前記キャパシタを介して伝達された前記終段バッファ回路部からの前記出力信号を増幅するCMOSプッシュプル型増幅回路と、前記終段バッファ回路部と並列接続された分周器と、前記終段バッファ回路部の出力側と前記分周器の出力側に接続され、前記CMOSプッシュプル型増幅器への入力を切り替える選択スイッチ手段と、を備えていることを特徴とする水晶発振器。
この構成により、任意に高調波抑制機能を発揮させるか否かの選択ができる水晶発振回路とすることができるとともに、周波数を分周させることができる。
【0015】
[適用例3]前記分周器は、分周回路からの出力の時定数変更素子を備えてなることを特徴とする適用例2記載の水晶発振回路。
この構成により、周波数を分周した場合でも、任意に高調波抑制機能を発揮させるか否かの選択ができる水晶発振回路とすることができる。
【0016】
前記終段バッファ部と並列接続された分周器を備え、この分周器は前記CMOSプッシュプル型増幅回路へ出力可能であり、当該分周器と前記終段バッファ部との入力切り替え回路を設けていることを特徴とする適用例1に記載の水晶発振回路。
この構成により、任意に高調波抑制機能を発揮させるか否かの選択ができる水晶発振回路とすることができるとともに、周波数を分周させることができる。
【0017】
[適用例4]水晶振動子を振動源とする発振回路部と、前記発振回路部の出力信号を入力されるPch−CMOSトランジスタとNch−CMOSトランジスタとで構成されているインバータを含む初段バッファ回路と、他のPch−CMOSトランジスタと他のNch−CMOSトランジスタとで構成されている他のインバータを有しているとともに前記他のPch−CMOSトランジスタにおけるドレインと前記他のNch−CMOSトランジスタにおけるドレインとの間に接続されている時定数変更素子を含み、かつ前記初段バッファ回路部の出力側に入力が接続されている終段バッファ回路部と、前記終段バッファ回路部の出力信号から直流成分をカットするキャパシタを備えるとともに前記キャパシタを介して伝達された前記終段バッファ回路部からの前記出力信号を増幅するCMOSプッシュプル型増幅回路と、前記終段バッファ回路部の前記他のPch−CMOSトランジスタにおけるドレインと前記他のNch−CMOSトランジスタにおけるドレインとを直列接続した複数の抵抗素子の接続中点を前記終段バッファ回路部の出力側とした、前記抵抗素子と前記キャパシタを有する時定数変更用の回路と、前記抵抗素子をバイパスして前記終段バッファ回路部の前記他のPch−CMOSトランジスタにおけるドレインと前記他のNch−CMOSトランジスタにおけるドレインとを前記終段バッファ回路部の出力に接続するためのバイパス回路と、前記バイパス回路に接続されている前記バイパス回路のオン/オフを制御するためのMOSスイッチ手段と、前記MOSスイッチ手段を制御する信号を出力するメモリ部と、を備えていることを特徴とする水晶発振回路。
【0018】
水晶振動子を振動源とする発振回路部と、この発振回路部の出力信号を入力とするPch−CMOSトランジスタとNch−CMOSトランジスタのインバータからなる複数段のバッファ回路部と、このバッファ回路部の出力から直流成分をカットするキャパシタを介して増幅するCMOSプッシュプル型増幅回路とを備えた水晶発振回路であって、前記バッファ回路部における終段バッファ回路部のPch−CMOSトランジスタとNch−CMOSトランジスタ間に抵抗素子を接続してその中間点を終段バッファ回路部の出力とし、前記抵抗素子と前記キャパシタとにより定まる時定数で出力信号の波形成形可能としてなるとともに、前記抵抗素子のバイパス回路と当該バイパス回路部に介在されたMOSスイッチ手段と、メモリ設定により前記MOSスイッチ手段をオン/オフ切り替え可能としたメモリを備えてなることを特徴とする水晶発振回路。
【0019】
この構成により、終段バッファ回路部のPch−CMOSトランジスタとNch−CMOSトランジスタ間に接続した抵抗素子とキャパシタにより定まる時定数によって支配される波形が出力される。この波形の立ち上がりは遅くなり、波形を鈍らせることができる。この結果、これによって高次高調波が抑制された状態で出力される。したがって、インバータ発振回路を用いた場合でも、基本波以外の高次高調波レベルを抑圧して発振信号を出力することが可能となる。
【0020】
[適用例5]前記水晶振動子以外の回路部分をIC内に全て集積化したことを特徴とする適用例4記載の水晶発振回路。
発振回路をICに集積化した場合でも、最終段のトランジスタのサイズを変えることなく、任意に出力波形の矩形波レベルを下げることができ、所望のレベルまで高調波レベルを抑圧することができる。
【0021】
[適用例6]前記終段バッファ回路部と並列接続された分周器を備えており、前記分周器は、分周回路と、前記分周回路の出力側と接続されている他の時定数変更素子と、前記分周回路の出力と前記終段バッファ回路部の出力に接続され、前記CMOSプッシュプル型増幅器への入力を切り替える選択スイッチ手段と、前記分周回路の出力を遮断する遮断素子と、を備えていることを特徴とする適用例4に記載の水晶発振回路。
このような構成によって、分周された周波数の出力が可能となるとともに、分周出力時にも高調波抑圧モードの選択ができる。
【0022】
[適用例7]前記メモリ部には、デコーダが設けられ、前記デコーダは、前記MOSスイッチ手段と、前記選択スイッチ手段と、前記遮断素子と、を制御することを特徴とする請求項6に記載の水晶発振回路。
【0023】
分周回路によって分周された周波数にて時定数を調整することも可能となるので、分周する場合としない場合で、時定数調整を行う場合と行わない場合の4パターンに適用できる水晶発振回路とすることができ、用途を拡大できる効果が得られる。また、デコーダを利用し、メモリ設定で分周出力する場合でも、高調波抑圧モードを簡単に選択できるメリットが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係る水晶発振回路である。
【図2】同回路の要部出力波形図である。
【図3】同実施形態に係る発振回路の高調波抑圧時の周波数スペクトラムである。
【図4】同実施形態に係る発振回路の通常時の周波数スペクトラムである。
【図5】同実施形態に係る発振回路の出力波形図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る水晶発振回路の出力バッファ回路である。
【図7】同実施形態の2bitデコーダである。
【図8】同実施形態のメモリ設定表である。
【図9】同実施形態の分周回路である。
【図10】従来の水晶発振回路の例である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る最良の実施形態を、図面を参照しながら、詳細に説明する。図1は、本実施形態に係わる水晶発振回路の構成を示す図である。
同図に示すように、本発振回路は、発振部を構成する水晶振動子XTAL、高周波抵抗Rf、発振用容量C1、C2及びPch−CMOSトランジスタTp1、Nch−CMOSトランジスタTn1からなる発振増幅器としてのインバータ増幅器100を備えている。このインバータ増幅器100の出力側には、Pch−CMOSトランジスタTp2、Nch−CMOSトランジスタTn2とからなる初段バッファ回路部としてのインバータ増幅器11と、Pch−CMOSトランジスタTp3、Nch−CMOSトランジスタTn3とからなる2段目バッファ回路部としてのインバータ増幅器12と、Pch−CMOSトランジスタTp4、Nch−CMOSトランジスタTn4とからなる3段目バッファ回路部としてのインバータ増幅器13と、からなる3段増幅器が設けられ、発振出力を波形整形しながら増幅する。
【0026】
そして、複数段のインバータ増幅器11、12、13を経た出力信号は、CMOSプッシュプル型増幅回路14に入力される。CMOSプッシュプル型増幅回路14は、高抵抗R1、R2と、直流カット用のコンデンサCB1、CB2、及びNch−CMOSトランジスタTn5、Pch−CMOSトランジスタTp5とからなる。
【0027】
上記各回路に供給する直流電源VDDの電源は、安定化電源15を介し、発振増幅器100のPch−CMOSトランジスタTp1のソース、バッファとしての各インバータ増幅器11、12、13ごとに設けられているデプレッション型MOSトランジスタTn11、Tn12、Tn13のゲートに、並びにCMOSプッシュプル型増幅回路14の抵抗R1に対し、安定化処理された電源出力VREGが供給される。
【0028】
また、デプレッション型MOSトランジスタTn11、Tn12、Tn13のドレイン及びCMOSプッシュプル型増幅回路14のNch−CMOSトランジスタTn5のドレインは直流電源VDDに直接接続される。
【0029】
上記回路構成において、本実施形態では、特に、複数段あるバッファ回路部の終段バッファ回路部を構成しているインバータ増幅器13における出力の時定数を変更する素子を備えていることを特徴としている。
【0030】
すなわち、終段インバータ増幅器13を構成しているPch−CMOSトランジスタTp4とNch−CMOSトランジスタTn4との間に時定数変更素子としての抵抗素子R3、R4を接続して、その中間点を次段のCMOSプッシュプル型増幅回路14における直流カット用のコンデンサCB1、CB2の中間点に接続し、終段インバータ増幅器13からの出力がRC回路を経由してCMOSプッシュプル型増幅回路14のトランジスタTn5、Tp5のゲートに入力するようにしている。これによって、終段インバータ増幅器13からの出力信号は、Pch−CMOSトランジスタTp4とNch−CMOSトランジスタTn4の各ゲートに加わる入力信号Aに応じてオン、オフされる際、抵抗素子R3、R4からの出力B,コンデンサCB1、CB2を経由した後の出力C、D、最終的にCMOSプッシュプル型増幅回路14からの出力Eは、図2に示すように、各出力B、C、Dの立ち上がりは、抵抗素子R3、R4、コンデンサCB1、CB2で決まる時定数によって支配され、図2に示されるように、立ち上がりが鈍る波形に成形されるのである(但し抵抗素子R3、R4≒2〜4kΩ<<R1、R2≒50Ω)。これによって、高次高調波が発生することが抑圧される。
【0031】
一方、このような高調波抑圧を使用せずに通常状態のまま使用したい場合がある。このため、前記終段インバータ増幅器13に介在させた抵抗素子R3、R4をバイパスさせて時定数調整機能をオフできるようにしている。すなわち、前記終段インバータ増幅器(バッファ回路部)13には、時定数変更素子である抵抗素子R3、R4のバイパス回路16を設け、MOSスイッチ手段17により出力信号の時定数調整のオン/オフの切り替えを可能としている。
【0032】
すなわち、バイパス回路16にPch−CMOSトランジスタTp6とNch−CMOSトランジスタTn6を直列に接続し、その中点位置を次段のCMOSプッシュプル型増幅回路14への出力ラインとしている。したがって、Pch−CMOSトランジスタTp6とNch−CMOSトランジスタTn6が共にオンになれば、抵抗素子R3、R4をバイパスして終段インバータ増幅器13からCMOSプッシュプル型増幅回路14に出力されるので、通常モードで機能する。この通常モードと時定数変更モードとを切り替えるために、上記バイパス回路16上のPch−CMOSトランジスタTp6とNch−CMOSトランジスタTn6のゲートをメモリ部300から入力される“Hi”または“Lo”の信号に基づいてオンオフさせる論理回路18が接続されている。このオンオフ論理回路18は、安定化電源電圧VREGで作動するPch−CMOSトランジスタTp7とNch−CMOSトランジスタTn7から構成されている。通常時はメモリ部300が“Lo”設定でトランジスタTp6、Tn6がそれぞれON、メモリ設定が“Hi”でトランジスタTp6、Tn6がOFFして、抵抗素子R3、R4とキャパシタCB1、CB2による時定数による出力波形の立ち上がり/立ち下がりが緩やかになり、高次高調波レベルが抑圧される。
【0033】
図3は、図1に示した実施形態に係る水晶発振回路による高調波抑圧時の周波数スペクトラムである。メモリ部300からの出力を“Hi”として、図2の出力波形Eを得た場合には、高次高調波が抑圧されていることがよく理解できる。図4は、メモリ部300からの出力を“Lo”として通常モードで作用させた場合の周波数スペクトラムで、高次高調波が抑圧されていないことが明示されている。図5は実際の波形を示しており、高調波抑圧モードの場合(太実線)と通常モードの場合(細実線)を示している。RC回路による時定数が変更され、立ち上がりが鈍っていることが示されている。
【0034】
なお、上記実施形態において、終段インバータ増幅器13の前段には2段のインバータ増幅器11、12を設けた構成として例示しているが、これは単段インバータ増幅器として構成してよい。集積化した場合、インターバ増幅器100(トランジスタTP1、Tn1のゲート側)とCMOSプッシュプル型増幅回路14の出力端との間のカップリング(容量結合)によって起こる異常発振を抑制できる効果がある。また、出力バッファ部の初段バッファの駆動能力が落ちることで、出力波形の立ち上がり/立ち下がりがさらに緩やかになるので、高次高調波レベルの抑圧量がアップする。
【0035】
次に、図6に第2実施形態に係る水晶発振回路の出力バッファ部を示している。この実施形態は、分周器400を設け、分周器で分周した場合でも通常モードと出力信号の時定数調整による高調波抑圧モードを使用できるようにした点が先の実施形態と相違する。
【0036】
このため、前記終段バッファ部であるインバータ増幅器13と並列接続された分周器400を備え、この分周器400は前記CMOSプッシュプル型増幅回路14へ出力可能であり、当該分周器400と前記終段のインバータ増幅器13との入力切り替え回路を設けている。この切り替え回路は終段インバータ増幅器13に対し前段のインバータ増幅器11からの出力信号を入力させる場合には、分周器400への入力を遮断し、分周器400へ入力させる場合は終段インバータ増幅器13への入力を遮断させることで容易に実現できる。この実施形態では、メモリ部300に図7に示したような2bitデコーダ30を設け、図8に示したようなメモリデータD1、D0に基づいて、2bitデコーダ出力B1〜B4、B1(−)〜B4(−)を生成し、高調波抑圧機能をオンするかオフするか、発振出力をオンするかオフするか、あるいは分周出力をオンするかオフするかの選択を行わせるようにしている。したがって、2bitデコーダ30は前記終段インバータ増幅器13と前記分周器400の選択スイッチ手段を構成することになる。
【0037】
これを具体的に実現すべく、図6に示しているように、終段インバータ増幅器13には第1実施形態の場合に加えて、遮断素子であるPch−CMOSトランジスタTp8とNch−CMOSトランジスタTn8を、抵抗素子R3、R4の外側であって、インバータを構成するPch−CMOSトランジスタTp4とNch−CMOSトランジスタTn4の内側に直列に接続している。また、バイパス回路16は抵抗素子R3、R4およびPch−CMOSトランジスタTp8とNch−CMOSトランジスタTn8をバイパスするように構成され、ここにモード切り替え用のMOSスイッチ手段17を介装させている。これは、先の実施形態と同様、Pch−CMOSトランジスタTp6とNch−CMOSトランジスタTn6とから構成される。分周器400を用いる場合には、これらMOSスイッチ手段17と上記Pch−CMOSトランジスタTp8とNch−CMOSトランジスタTn8をオフにして電気的に遮断するように、前記2bitデコーダ30から作動信号を出力させる(B1、B1(−)、B2、B2(−))。
【0038】
一方、分周器400を利用して分周された周波数で動作させるときには、分周器400に初段インバータ増幅器11から出力信号が入力し、これを通常モードと高調波抑圧モードを択一的に行わせるのであるから、分周器400の内部回路には終段インバータ増幅器13と同一の回路構成部分が形成される。この分周器400の回路構成を図9に示す。通常モード出力と高調波抑圧モードの切り替え回路部分は、図6の場合と同様であるので説明を省略する。
【0039】
分周回路40の前段には、信号入力オンオフ切り替え回路41が設けられ、これは前述した2bitデコーダ30によって生成された信号によって、分周回路40への信号入力を遮断するか否かを選択する。これらの処理は2bitデコーダ30から作動信号を出力させる(B3、B3(−)、B4、B4(−))ことによって制御される。
【0040】
このような第2実施形態によれば、メモリ部300にデコーダ30を設けることで、分周出力する場合でも、高調波抑圧モードを選択できるようにした。水晶発振回路からの発振信号をそのままの周波数で出力する場合と、分周して出力する場合の双方についても、高調波レベルの抑圧モード選択が可能となる。
分周出力時にも高調波抑圧モードの選択ができるようになり、低周波帯における高調波スペクトル特性の改善に繋がる。
【符号の説明】
【0041】
11………初段インバータ増幅器、12………2段インバータ増幅器、13………終段インバータ増幅器、14………CMOSプッシュプル型増幅回路、15………安定化電源、16………バイパス回路、17………MOSスイッチ手段、18………オンオフ論理回路、30………2bitデコーダ、40………分周回路、41………信号入力オンオフ切り替え回路、100………インバータ増幅器(発振増幅器)、200………出力バッファ部、300………メモリ部、400………分周器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶振動子を振動源とする発振回路部と、
前記発振回路部の出力信号を入力されるPch−CMOSトランジスタとNch−CMOSトランジスタとで構成されているインバータを含む初段バッファ回路と、
他のPch−CMOSトランジスタと他のNch−CMOSトランジスタとで構成されている他のインバータを有しているとともに前記他のPch−CMOSトランジスタにおけるドレインと前記他のNch−CMOSトランジスタにおけるドレインとの間に接続されている時定数変更素子を含み、かつ前記初段バッファ回路部の出力側に入力が接続されている終段バッファ回路部と、
前記終段バッファ回路部の出力信号から直流成分をカットするキャパシタを備えるとともに前記キャパシタを介して伝達された前記終段バッファ回路部からの前記出力信号を増幅するCMOSプッシュプル型増幅回路と、
前記時定数変更素子をバイパスして前記終段バッファ回路部の前記他のPch−CMOSトランジスタにおけるドレインと前記他のNch−CMOSトランジスタにおけるドレインとを前記終段バッファ回路部の出力に接続するためのバイパス回路と、
前記バイパス回路に接続されている前記バイパス回路のオン/オフを制御するためのMOSスイッチ手段と、
前記MOSスイッチ手段を制御する信号を出力するメモリ部と、
を備えていることを特徴とする水晶発振回路。
【請求項2】
水晶振動子を振動源とする発振回路部と、
前記発振回路部の出力信号を入力されるPch−CMOSトランジスタとNch−CMOSトランジスタとで構成されているインバータを含む初段バッファ回路と、
他のPch−CMOSトランジスタと他のNch−CMOSトランジスタとで構成されている他のインバータを有しているとともに前記他のPch−CMOSトランジスタにおけるドレインと前記他のNch−CMOSトランジスタにおけるドレインとの間に接続されている時定数変更素子を含み、かつ前記初段バッファ回路部の出力側に入力が接続されている終段バッファ回路部と、
前記終段バッファ回路部の出力信号から直流成分をカットするキャパシタを備えるとともに前記キャパシタを介して伝達された前記終段バッファ回路部からの前記出力信号を増幅するCMOSプッシュプル型増幅回路と、
前記終段バッファ回路部と並列接続された分周器と、
前記終段バッファ回路部の出力側と前記分周器の出力側に接続され、前記CMOSプッシュプル型増幅器への入力を切り替える選択スイッチ手段と、
を備えていることを特徴とする水晶発振回路。
【請求項3】
前記分周器は、分周回路からの出力の時定数変更素子を備えてなることを特徴とする請求項2記載の水晶発振回路。
【請求項4】
水晶振動子を振動源とする発振回路部と、
前記発振回路部の出力信号を入力されるPch−CMOSトランジスタとNch−CMOSトランジスタとで構成されているインバータを含む初段バッファ回路と、
他のPch−CMOSトランジスタと他のNch−CMOSトランジスタとで構成されている他のインバータを有しているとともに前記他のPch−CMOSトランジスタにおけるドレインと前記他のNch−CMOSトランジスタにおけるドレインとの間に接続されている時定数変更素子を含み、かつ前記初段バッファ回路部の出力側に入力が接続されている終段バッファ回路部と、
前記終段バッファ回路部の出力信号から直流成分をカットするキャパシタを備えるとともに前記キャパシタを介して伝達された前記終段バッファ回路部からの前記出力信号を増幅するCMOSプッシュプル型増幅回路と、
前記終段バッファ回路部の前記他のPch−CMOSトランジスタにおけるドレインと前記他のNch−CMOSトランジスタにおけるドレインとを直列接続した複数の抵抗素子の接続中点を前記終段バッファ回路部の出力側とした、前記抵抗素子と前記キャパシタを有する時定数変更用の回路と、
前記抵抗素子をバイパスして前記終段バッファ回路部の前記他のPch−CMOSトランジスタにおけるドレインと前記他のNch−CMOSトランジスタにおけるドレインとを前記終段バッファ回路部の出力に接続するためのバイパス回路と、
前記バイパス回路に接続されている前記バイパス回路のオン/オフを制御するためのMOSスイッチ手段と、
前記MOSスイッチ手段を制御する信号を出力するメモリ部と、
を備えていることを特徴とする水晶発振回路。
【請求項5】
前記水晶振動子以外の回路部分をIC内に全て集積化したことを特徴とする請求項4記載の水晶発振回路。
【請求項6】
前記終段バッファ回路部と並列接続された分周器を備えており、
前記分周器は、分周回路と、前記分周回路の出力側と接続されている他の時定数変更素子と、
前記分周回路の出力と前記終段バッファ回路部の出力に接続され、前記CMOSプッシュプル型増幅器への入力を切り替える選択スイッチ手段と、
前記分周回路の出力を遮断する遮断素子と、
を備えていることを特徴とする請求項4に記載の水晶発振回路。
【請求項7】
前記メモリ部には、デコーダが設けられ、
前記デコーダは、前記MOSスイッチ手段と、前記選択スイッチ手段と、前記遮断素子と、
を制御することを特徴とする請求項6に記載の水晶発振回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−31217(P2013−31217A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−214712(P2012−214712)
【出願日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【分割の表示】特願2007−236183(P2007−236183)の分割
【原出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】