説明

バランスポペット式電磁弁

【課題】弁部に対するポペット弁の組付性を向上させて組立性を向上させることができるバランスポペット式電磁弁を提供する。
【解決手段】バランスポペット式電磁弁10は、第1弁座18と第2弁座19のうち、第2弁座19がボディ12に組付けられた弁座形成体17によって形成されるとともに、弁座形成体17によりボディ12の一方の開口が封止されている。また、ポペット弁41には、ボディ12内に区画された一端側圧力室S1と他端側圧力室S2とを連通させる第1連通路42cと第2連通路43cが形成されるとともに正圧空気の圧力によりポペット弁41が平衡状態に維持されるように構成されている。ポペット弁41には、一端側圧力室S1と供給ポート13との間をシールするシール部材45が設けられるとともに、シール部材45はボディ12における弁座形成体17が組付けられた側に配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バランスポペット式電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電磁弁としては、例えば特許文献1の電磁弁が挙げられる。図4に示すように、電磁弁80は、弁部81とソレノイド部100とを一体に備える。弁部81における金属製の弁本体82の中心には弁孔83が形成されている。また、弁孔83の長さ方向のほぼ中央には、弁孔83より大径をなす弁室84が設けられている。弁本体82には弁孔83に連通する入口ポート85、出口ポート86及び排出ポート87が形成されるとともに、入口ポート85と出口ポート86との間には第1弁座88が設けられ、出口ポート86と排出ポート87との間には第2弁座89が設けられている。
【0003】
ポペット弁90は弁孔83内に摺動可能に挿嵌された弁棒91を備えるとともに、弁棒91の長さ方向のほぼ中央には弁室84内に位置するように弁体92が設けられている。弁棒91の一端は弁孔83の下端小径部83a内にシール部材等を使用することなく直接挿嵌支持されるとともに、弁棒91の一端と弁孔83の下端との間には第1ばね93が介装されている。また、弁棒91の他端側には弁棒91より大径をなす大径部91bが形成されるとともに、この大径部91bの周面にはシール部材94が嵌着され、弁棒91の他端側はこのシール部材94を介して弁孔83に挿嵌支持されている。
【0004】
また、弁本体82には連通孔95が凹設され、この連通孔95を介して弁孔83が入口ポート85に連通されている。弁棒91の中心には連通路91aが貫通形成され、この連通路91aを介して弁孔83の下端側空間83bと上端側空間83cとが連通されている。ソレノイド部100は電磁コイル101、コア102及びプランジャ103を備え、コア102とプランジャ103との間には第2ばね104が介装されている。
【0005】
そして、上記構成の電磁弁80において、入口ポート85における流体の圧力は弁体92の下面に作用し、ポペット弁90には上向きの摺動力が付与される。それと同時に、入口ポート85の流体圧力が連通孔95から弁孔83の下端側空間83bに至ると共に、弁棒91内の連通路91aから弁孔83の上端側空間83cに至ってシール部材94の上面に作用し、ポペット弁90には下向きの摺動力が付与される。このとき、シール部材94により、弁棒91と弁孔83との間のシール性が確保され、上端側空間83cの流体が弁室84へ漏れることが抑制される。従って、ポペット弁90は上向きと下向きの摺動力を同時に受けて平衡状態に維持され、第1ばね93と第2ばね104とのばね力差のみにより弁体92と第1弁座88との間のシール性が確保されている。
【0006】
この状態で電磁コイル101に通電されると、プランジャ103が第2ばね104の作用に抗してコア102に吸着される。すると、弁体92が第1弁座88を開放するとともに第2弁座89を閉鎖する位置に配置され、流体の流れ方向が切換えられる。この状態においても、ポペット弁90が平衡状態に維持され、第1ばね93のばね力のみにより弁体92と第2弁座89との間のシール性が確保されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公平6−36371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1の電磁弁80においては、弁棒91に弁体92を一体に備えたポペット弁90を弁孔83内に挿嵌する際、大径部91bが第2弁座89に接触して第2弁座89が損傷を受けないようにする必要があるとともに、弁体92が弁孔83の内周面に摺接しないようにする必要がある。特許文献1には図示及び開示されていないが、弁本体82の下端側には、弁室84と同径の孔が形成されるとともに、この孔は図示しない蓋部材により閉鎖されている。そして、ポペット弁90は、その他端側から弁本体82の孔へ挿嵌されている。このとき、弁棒91の他端側には、ポペット弁90を平衡状態に維持するための大径部91b及びシール部材94が設けられているが、大径部91b及びシール部材94の外径と、弁孔83の孔径とはシール性確保のためにほぼ同じになっている。このため、弁棒91の他端側を弁孔83に挿嵌してのポペット弁90の弁部81への組付けは作業性が悪く、電磁弁80の組立性が悪いという問題があった。
【0009】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、弁部に対するポペット弁の組付性を向上させて組立性を向上させることができるバランスポペット式電磁弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、弁部にソレノイド部が一体化されてなり、前記弁部における筒状のボディ内に、ポペット弁が前記ボディの軸方向へ移動可能に収容されるとともに、前記ポペット弁に設けられた弁体が、前記軸方向において前記弁体を挟む位置に配設された一対の弁座に対し接離されることで流体の流路を切り換え可能に構成され、前記一対の弁座のうちの一方が前記ボディに組付けられた弁座形成体によって形成されるとともに、前記弁座形成体により前記ボディの一方の開口が封止されており、さらに、前記ポペット弁に、前記ボディ内に区画された一端側圧力室と他端側圧力室とを連通させる連通路が形成され、前記ポペット弁に、前記一端側圧力室と前記流路との間をシールするシール部材が設けられるとともに、前記シール部材が前記ボディにおける前記弁座形成体が組付けられた側に配設されていることを要旨とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のバランスポペット式電磁弁において、前記シール部材は、前記弁座形成体内に配設されるとともに、前記ポペット弁は、前記シール部材を介して前記弁座形成体に摺動可能に支持されていることを要旨とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のバランスポペット式電磁弁において、前記弁座形成体は合成樹脂材料により円筒状に形成されていることを要旨とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載のバランスポペット式電磁弁において、前記弁座形成体は、前記ボディにおいて前記ソレノイド部とは反対側に組付けられていることを要旨とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載のバランスポペット式電磁弁において、前記弁座形成体は前記ボディに対し螺合により組付けられていることを要旨とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のうちいずれか一項に記載のバランスポペット式電磁弁において、前記ソレノイド部は、磁気カバーに組付けられる固定鉄心を備え、前記固定鉄心は前記磁気カバーに対し位置調節可能に組付けられていることを要旨とする。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6のうちいずれか一項に記載のバランスポペット式電磁弁において、前記弁体における前記弁座に対する接触部は平坦面状に形成されていることを要旨とする。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜請求項7のうちいずれか一項に記載のバランスポペット式電磁弁において、前記弁座形成体には、前記ポペット弁を押圧して移動させる手動軸が設けられるとともに、前記手動軸には前記ポペット弁の押圧時に前記連通路を封止する封止部材が設けられていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、弁部に対するポペット弁の組付性を向上させて組立性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)は実施形態のバランスポペット式電磁弁を示す断面図、(b)は弁座形成体を示す側面図。
【図2】弁座形成体により第2弁座の位置を調節した状態を示す断面図。
【図3】手動軸により連通路を封止した状態を示す断面図。
【図4】背景技術の電磁弁を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図3にしたがって説明する。
図1に示すように、バランスポペット式電磁弁10は、流体としての正圧空気の流路を切り換えるための弁部11と、弁部11を駆動させるためのソレノイド部31とが螺子止めにより一体化されてなる。
【0021】
まず、弁部11について説明する。弁部11は、非磁性材料(合成樹脂材料)により筒状に形成され、両端が開口されたボディ12を備える。ボディ12の中心軸Lの延びる方向を軸方向とすると、ボディ12における軸方向の一端側(図1(a)では右端側)には雌ねじ12bが形成されている。また、ボディ12内には、雌ねじ12bに連続して第1弁孔12aが形成されている。さらに、ボディ12の軸方向他端側には、第1弁孔12aより小径をなす第2弁孔12cが第1弁孔12aに連続するように形成されている。ボディ12内において、第1弁孔12aと第2弁孔12cとの径の差により形成された段差には、第2弁孔12cを取り囲むように第1弁座18が突設されている。また、ボディ12における軸方向他端側には、支持部12dが第2弁孔12cの内周面から突設されている。さらに、支持部12dよりもボディ12の軸方向他端側には、第2弁孔12cより大径をなす収容凹部12fが形成されている。そして、ボディ12は、雌ねじ12b、第1弁孔12a、第2弁孔12c、支持部12d、及び収容凹部12fにより軸方向全体に亘って貫通する筒状に形成されている。また、ボディ12は軸方向一端側(一方)が雌ねじ12bにより開口し、軸方向他端側(他方)が収容凹部12fにより開口している。
【0022】
ボディ12には、その軸方向の一端から他端に向かって、流路を形成する供給ポート13、出力ポート14及び排出ポート15がこの順序で形成されている。供給ポート13及び出力ポート14は、ボディ12内の第1弁孔12aに連通するように形成されるとともに、排出ポート15はボディ12内の第2弁孔12cに連通するように形成されている。供給ポート13には、正圧空気の正圧供給源(図示せず)が接続されるとともに、出力ポート14には、エアシリンダ等の空気圧機器(図示せず)が接続されている。また、排出ポート15には、排気用配管(図示せず)が接続されている。そして、供給ポート13に供給された正圧空気は、バランスポペット式電磁弁10によって出力ポート14へ出力されない場合と、出力ポート14へ出力される場合とに切り換えられるようになっている。
【0023】
ボディ12の雌ねじ12bには弁座形成体17が螺着されるとともに、この弁座形成体17によりボディ12の一方(一端)の開口が封止されている。図1(b)に示すように、弁座形成体17は合成樹脂材料により円筒状に形成され、一端側外周面に雄ねじ17aが形成されるとともに、雄ねじ17aより他端側に筒状の弁収容部17bを備える。弁収容部17bの最大外径は、第1弁孔12aの孔径より僅かに小さくなっている。
【0024】
弁収容部17bの外周面において、雄ねじ17a寄りには第1Oリング17dが装着されるとともに、弁収容部17bの先端側には第2Oリング17eが装着されている。弁収容部17bにおいて、第1Oリング17dと第2Oリング17eとの間には、弁収容部17bの内外を連通させる連通孔17cが形成されている。また、図1(a)に示すように、弁座形成体17の一端側には、弁座形成体17の一端面に開口する嵌合孔17fが形成されるとともに、この嵌合孔17fの孔径は弁収容部17b側が大径に形成されている。そして、弁座形成体17の内周面には当接段差17gが形成されている。
【0025】
嵌合孔17fには手動軸16が摺動可能に嵌合されている。手動軸16は、当接段差17gに当接可能なフランジ部16aと、このフランジ部16aより小径をなし、嵌合孔17fに嵌合される嵌合部16bとから形成されている。そして、フランジ部16aの当接段差17gに対する当接により、手動軸16の弁座形成体17からの抜け出しが防止されている。
【0026】
嵌合部16bの外周面にはOリング16cが装着されるとともに、このOリング16cにより弁座形成体17内(ボディ12内)からの空気漏れが抑制されている。嵌合部16bの端面には操作用凹部16dが形成されている。さらに、フランジ部16aの端面には、ゴム材料よりなる封止部材16fが装着されている。この封止部材16fは、弁収容部17b側の端面が弧状に湾曲形成されるとともに、弾性変形可能に形成されている。そして、上記構成の手動軸16は、弁座形成体17の軸方向に沿って摺動可能に設けられている。
【0027】
上記弁座形成体17は、弁収容部17bが第1弁孔12a内に挿入された状態で雄ねじ17aが、ボディ12の雌ねじ12bに螺合されることによりボディ12に組付けられるとともに、ボディ12の一端側開口を封止している。弁座形成体17がボディ12に組付けられた状態では、連通孔17cにより供給ポート13と弁収容部17b内(第1弁孔12a内)とが連通するようになっている。また、第2Oリング17eは、供給ポート13と出力ポート14の間に位置するボディ12の内周面に圧接している。そして、第2Oリング17eにより、弁座形成体17の外周面と、ボディ12内周面との間を介して供給ポート13と出力ポート14とが連通するのを抑制している。さらに、第1Oリング17dにより、弁座形成体17の外周面と、ボディ12の内周面との間を介して、供給ポート13へ供給された正圧空気がボディ12外へと漏れ出ることを抑制している。
【0028】
また、弁収容部17bの先端面は、ボディ12の軸方向における出力ポート14と供給ポート13の間に配置され、弁収容部17bの先端面により、第2弁座19が形成されている。第2弁座19の位置は、雌ねじ12bに対する雄ねじ17aの螺合量により、ボディ12の軸方向に沿って調節可能になっている。そして、第1弁孔12a内において、第1弁座18と第2弁座19との間に弁室20が形成されている。
【0029】
ボディ12と弁座形成体17内には、ポペット弁41がボディ12の軸方向へ移動可能に収容されている。ポペット弁41は、第1弁棒42と、この第1弁棒42に一体化された第2弁棒43とから形成されている。第1弁棒42は、一端側が弁収容部17b内に収容されるとともに、他端側が支持部12d内に挿通されている。また、第2弁棒43は弁座形成体17の弁収容部17b内に収容されている。
【0030】
第1弁棒42は、軸部42aと、この軸部42aの長さ方向中央部に形成された弁体取付部42bとから形成されている。弁体取付部42bは軸部42aより大径をなすとともに、弁体取付部42bには弁体44が設けられている。ポペット弁41における弁体44での外径は、第2弁孔12cより大径であるとともに第1弁孔12aより小径になっており、この弁体44は第1弁座18と第2弁座19に対向配置されている。すなわち、第1弁座18と第2弁座19は、ボディ12の軸方向において弁体44を挟む位置に配設されている。弁体44の両端面であり、第1弁座18及び第2弁座19に対して接離する面は平坦面状に形成されている。第1弁棒42には、軸部42aの長さ方向全体に亘って延びる第1連通路42cが形成されるとともに、第1弁棒42における第2弁棒43側とは反対側の端面には第1連通路42cと第1弁棒42外部とを連通させる連通溝42dが形成されている。
【0031】
第2弁棒43は、軸部43aと、この軸部43aの長さ方向中央部に形成され軸部43aより大径に形成されたシール取付部43bとから形成されている。シール取付部43bの外径は、弁収容部17bの内径より僅かに小さく設定されている。また、シール取付部43bの外周面には、シール部材45が装着されている。このシール部材45は、ポペット弁41のボディ12内での移動の際に、弁収容部17bの内周面に対し摺接するようになっている。さらに、第2弁棒43には、軸部43aの長さ方向全体に亘って延びる第2連通路43cが形成されている。そして、ポペット弁41においては、第1弁棒42の第1連通路42cと、第2弁棒43の第2連通路43cとは連通して、一本の連通路を形成している。また、第2弁棒43において、第1弁棒42とは反対側の開口端は、第2連通路43cから開口する側に向かうに従い徐々に拡径するようにテーパ状に形成されている。
【0032】
上記構成のポペット弁41は、一端側(第2弁棒43側)がシール部材45を介して弁収容部17b(弁座形成体17)に摺動可能に支持されるとともに、他端側(第1弁棒42側)が支持部12dに摺動可能に支持されている。そして、ポペット弁41は両端側が支持されることにより、ボディ12の軸方向に対する傾きが規制されている。すなわち、シール部材45がポペット弁41一端側の軸受として機能し、支持部12dがポペット弁41他端側の軸受として機能するようになっている。
【0033】
ボディ12内において、ポペット弁41の一端側となる位置には、第2弁棒43と弁座形成体17とから区画される一端側圧力室S1が設けられている。なお、第2弁棒43の第2連通路43cは、一端側圧力室S1に向けて開口している。また、一端側圧力室S1には弁用ばね23が介在されている。そして、ポペット弁41は、弁用ばね23のばね力によって弁体44が第2弁座19から離間する方向、言い換えると、弁体44が第1弁座18に着座する方向へ付勢されている。また、手動軸16は、弁用ばね23のばね力によってポペット弁41から離間する方向へ付勢されている。
【0034】
一方、ボディ12内において、ポペット弁41の他端側となる位置には、ソレノイド部31と収容凹部12fとから区画される他端側圧力室S2が設けられている。そして、一端側圧力室S1と、他端側圧力室S2とは、ポペット弁41の連通溝42d、第1連通路42c、及び第2連通路43cを介して連通し、同じ圧力になっている。
【0035】
次に、ソレノイド部31について説明する。
ソレノイド部31は、ボディ12における弁座形成体17が組付けられた側とは反対側に螺子止めにより一体化されている。ソレノイド部31は、磁性材料により筒状に形成された磁気カバー32を備えるとともに、磁気カバー32においてボディ12側と反対側の内周面には雌ねじ32aが形成されている。磁気カバー32の内側には、コイル33aが複数巻回された筒状のボビン33が配設されている。また、磁気カバー32の内部であって、ボビン33よりもボディ12側には、ガイドリング34が設けられている。
【0036】
ボビン33内には略円柱状の固定鉄心37が設けられている。この固定鉄心37の先端部には雄ねじ37aが形成されるとともに、この雄ねじ37aが磁気カバー32の雌ねじ32aに螺合されることにより、固定鉄心37が磁気カバー32に組付けられている。また、ガイドリング34及びボビン33内には、可動鉄心35が挿入されている。可動鉄心35は、そのボディ12側の一端面がポペット弁41(第1弁棒42)の端面に当接するとともに、固定鉄心37側の他端面が固定鉄心37と対向するように配設されている。さらに、可動鉄心35の一端側は、ボディ12の収容凹部12f内に入り込むように延在されるとともに、可動鉄心35の一端には、外方に突出する鍔部35aが形成されている。ガイドリング34と鍔部35aとの間に鉄心用ばね36が介在されるとともに、可動鉄心35は、鉄心用ばね36のばね力により固定鉄心37から離間する方向へ付勢されている。この鉄心用ばね36のばね力は、弁用ばね23のばね力より大きくなっている。このため、ソレノイド部31への通電がなされず、鉄心用ばね36のばね力により可動鉄心35が付勢された状態では、ポペット弁41は、弁体44が第2弁座19に着座する方向へ付勢されている。
【0037】
次に、上記構成のバランスポペット式電磁弁10の動作について説明する。
さて、図1(a)の拡大図における2点鎖線に示すように、ソレノイド部31のコイル33aへの通電が行われない状態では、鉄心用ばね36と弁用ばね23とのばね力の差(付勢力)により可動鉄心35がボディ12側へ付勢されている。そして、可動鉄心35は、そのボディ12側の端面が支持部12dに当接しているとともに、可動鉄心35によりポペット弁41がボディ12内に押圧され、弁体44が第2弁座19に着座している。
【0038】
この非通電状態では、供給ポート13における正圧空気の圧力は、弁体44とシール取付部43bに作用する。このとき、弁体44とシール取付部43bの受圧面積が同じになっているため、弁体44及びシール取付部43bに作用する圧力同士が相殺される。また、出力ポート14及び排出ポート15における圧力(大気圧)は、第2弁孔12cから支持部12dと第1弁棒42の軸部42aとの間を通過し、連通溝42dから他端側圧力室S2に作用する。そして、他端側圧力室S2の圧力は、第1弁棒42の第1連通路42c、及び第2弁棒43の第2連通路43cを介して一端側圧力室S1に作用し、一端側圧力室S1と他端側圧力室S2とが同じ圧力になっている。
【0039】
そして、シール部材45により、一端側圧力室S1と供給ポート13(流路)との間のシール性が確保され、一端側圧力室S1の正圧空気が供給ポート13へ漏れることが抑制されている。従って、ポペット弁41はその両端側から同じ力を同時に受けて平衡状態に維持される。このため、ポペット弁41は、鉄心用ばね36と弁用ばね23のばね力の差のみにより第2弁座19に着座し、供給ポート13と出力ポート14との間のシール性が確保され、供給ポート13へ供給された正圧空気は出力ポート14へ出力されないようになっている。
【0040】
そして、コイル33aへの通電がなされると、可動鉄心35が固定鉄心37側に吸引される。この吸引力が鉄心用ばね36のばね力に打ち勝ち、可動鉄心35が固定鉄心37に吸着されると、ポペット弁41は弁用ばね23の付勢力によりソレノイド部31に向けて押圧される。すると、図1に示すように、弁体44が第2弁座19から離間するとともに、第1弁座18に着座し、正圧空気の流路が切換えられる。その結果、供給ポート13から出力ポート14へ正圧空気が供給され、正圧空気が出力ポート14から空気圧機器に供給される。
【0041】
このとき、供給ポート13における正圧空気の圧力は、弁体44とシール取付部43bに作用する。弁体44とシール取付部43bの受圧面積が同じになっているため、弁体44及びシール取付部43bに作用する圧力同士で相殺される。また、排出ポート15における圧力は、第2弁孔12cから支持部12dと第1弁棒42の軸部42aとの間を通過し、連通溝42dから他端側圧力室S2に作用する。そして、他端側圧力室S2の圧力は、第1弁棒42の第1連通路42c、及び第2弁棒43の第2連通路43cを介して一端側圧力室S1に作用し、一端側圧力室S1と他端側圧力室S2とが同じ圧力になっている。このとき、シール部材45により、一端側圧力室S1と供給ポート13との間のシール性が確保され、一端側圧力室S1の正圧空気が供給ポート13へ漏れることが抑制される。よって、ポペット弁41は弁用ばね23のばね力のみにより第1弁座18に着座し、出力ポート14と排出ポート15との間のシール性が確保されている。
【0042】
次に、上記構成のバランスポペット式電磁弁10の組立方法について説明する。
まず、ポペット弁41(第1弁棒42、第2弁棒、及び弁体44が一体化されている)の第1弁棒42側を、ボディ12の雌ねじ12b側(一端側)からボディ12内に挿入し、ボディ12にポペット弁41を組付ける。このとき、弁座形成体17がボディ12から取り外されているため、作業者は、ボディ12内を視認しながらポペット弁41を組付ける作業を行うことができる。そして、ポペット弁41は、他端側が第1弁棒42より大径をなす第2弁孔12c内に挿入され、一端側が弁体44及びシール部材45より大径をなす第1弁孔12a及び雌ねじ12b内に挿入されるとともに、シール部材45はボディ12における弁座形成体17側に配設される。このため、ポペット弁41をボディ12内に挿入する際、シール部材45が設けられたシール取付部43bが第2弁座19に衝突することが無くなり、また、弁体44及びシール部材45がボディ12の内周面に接触したりすることが防止される。
【0043】
次に、ポペット弁41の第2弁棒43側に弁用ばね23を配設した状態で、弁座形成体17を弁収容部17b側からボディ12内に挿入するとともに、雄ねじ17aをボディ12の雌ねじ12bに螺合する。すると、弁収容部17bがシール部材45の外周側に配設され、シール部材45が弁収容部17bの内周面に圧接するとともに、弁座形成体17によってボディ12の一端側が封止される。そして、このボディ12において弁座形成体17が組付けられた側と反対側にソレノイド部31を螺子止めにより一体化すると、バランスポペット式電磁弁10が組み立てられる。
【0044】
バランスポペット式電磁弁10を組み立てた後、供給ポート13に正圧空気が供給された状態で、出力ポート14から出力される流量の計測が行われる。このとき、出力ポート14から出力される流量が所望する値でない場合、図2に示すように、ボディ12の雌ねじ12bに対する弁座形成体17の螺合量を調節して、第2弁座19の位置を調節し、流量を調節する。
【0045】
また、バランスポペット式電磁弁10においては、ソレノイド部31における固定鉄心37の磁気カバー32に対する螺合量を調節して、ソレノイド部31における作動電流の調節が行われる。
【0046】
さらに、コイル33aに対する通電を行わず、手動でポペット弁41を移動させて出力ポート14から出力される流量の計測が行われる場合もある。この場合は、図3に示すように、工具Tの先端を手動軸16の操作用凹部16dに挿入し、その工具Tにより手動軸16をボディ12内に押し込む。すると、ポペット弁41が押圧され、弁体44が第1弁座18に着座し、供給ポート13へ供給される正圧空気を、出力ポート14へ出力させることが可能になる。
【0047】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)ボディ12を筒状に形成し、ボディ12の一端側に弁座形成体17を組み付けて、弁座形成体17によりボディ12内に第2弁座19を設けるとともに、その弁座形成体17によりボディ12の一端側開口を封止するようにした。また、ポペット弁41の平衡状態を維持するためのシール部材45が、弁座形成体17側に位置するようにポペット弁41がボディ12に組付けられている。そして、バランスポペット式電磁弁10を組立てる際、ボディ12にポペット弁41を組付けた後に、弁座形成体17がシール部材45の外周側に位置するようにボディ12に組み付けられる。よって、ポペット弁41の他端側は、シール部材45より大径をなす孔に挿入されて組付けられることになるため、シール部材45がボディ12の内周面に接触しにくくなるとともに、シール部材45が装着されたシール取付部43bが第2弁座19に衝突することが無くなる。よって、ポペット弁41をボディ12に組付ける際、シール部材45の第2弁座19への接触や、シール部材45のボディ12の内周面への接触を意識して慎重に組付け作業を行う必要がない。その結果として、ポペット弁41をボディ12に組み付ける作業を簡単に行うことができ、結果としてバランスポペット式電磁弁10の組立性を向上させることができる。
【0048】
(2)ポペット弁41のシール部材45を、ボディ12におけるソレノイド部31が設けられる側とは反対側に位置するように設けた。このため、シール部材45を、通電に伴い温度上昇するコイル33aや、可動鉄心35の固定鉄心37に対する接触により摩耗粉が発生するソレノイド部31から離すことができる。よって、シール部材45を、温度上昇や摩耗粉の影響を受けにくくすることができ、シール部材45の耐久性を向上させることができる。
【0049】
(3)弁座形成体17における弁収容部17bの内側にシール部材45が配設され、このシール部材45によりポペット弁41の一端側が摺動可能に支持される。よって、弁座形成体17は、ボディ12に第2弁座19を設けるための機能に加え、ポペット弁41の軸受としての機能も兼ね備える。したがって、ボディ12に第2弁座19を設けるための機能を発揮する部品、ポペット弁41の軸受としての機能を発揮する部品それぞれを別々にボディ12に設ける場合と比べると、バランスポペット式電磁弁10の構成を簡単にすることができる。
【0050】
(4)弁座形成体17は合成樹脂材料により円筒状に形成されている。このため、弁座形成体17の真円度を高めることができる。弁座形成体17内ではポペット弁41のシール部材45が摺接することになるが、弁座形成体17の真円度が高められることで、シール部材45の摺動性を高め、ポペット弁41の摺動性を高めることができる。
【0051】
(5)弁座形成体17は、雄ねじ17aを備え、その雄ねじ17aをボディ12の雌ねじ12bに螺合することでボディ12に組み付けられる。そして、雄ねじ17aの螺合量を調節することで、第2弁座19の位置を調節することができ、バランスポペット式電磁弁10の流量調節を容易に行うことができる。
【0052】
(6)ソレノイド部31において、固定鉄心37には雄ねじ37aが設けられるとともに、その雄ねじ37aを磁気カバー32の雌ねじ32aに螺合することで、固定鉄心37が磁気カバー32に一体に組み付けられる。そして、雄ねじ37aの螺合量を調節することで、固定鉄心37の位置を調節することができるとともに、可動鉄心35のストローク量を調節することができ、バランスポペット式電磁弁10の作動電流の調節を容易に行うことができる。したがって、上記(5)に記載の効果から、バランスポペット式電磁弁10は、弁座形成体17による第2弁座19の位置調節による流量調節と、固定鉄心37の位置調節による作動電流調節の2つの調節を行うことができる。
【0053】
(7)弁体44において、第1弁座18及び第2弁座19に対する接触部は平坦面状に形成されている。このため、弁体44が第1弁座18又は第2弁座19に着座したとき、確実にシールすることができる。
【0054】
(8)弁座形成体17には、手動軸16が設けられ、この手動軸16を操作してポペット弁41を手動で移動させることができる。手動軸16には、手動軸16によりポペット弁41を移動させたとき、ポペット弁41の第2連通路43cを封止する封止部材16fを備えている。手動軸16によりポペット弁41が中心軸Lに対し傾いて押されてしまい、シール部材45によるシール機能が低下して供給ポート13からの正圧空気が一端側圧力室S1に洩れてしまったとする。このとき、手動軸16の封止部材16fにより、第2連通路43cが封止されるため、一端側圧力室S1の圧力が第2連通路43cから第1連通路42c及び連通溝42dを介して第2弁孔12cへ漏れてしまうことが抑制される。その結果、供給ポート13へ供給される正圧空気は、一端側圧力室S1から漏れることが抑制され、出力ポート14への出力が低下することが抑制される。
【0055】
(9)手動軸16に設けた封止部材16fは、端面が弧状に湾曲形成されている。このため、手動軸16によりポペット弁41を押圧した際、封止部材16fは第2連通路43cの開口端の形状に沿って密接しやすく、封止部材16fにより第2連通路43cの開口を確実に封止することができる。
【0056】
(10)ボディ12の一端側に、円筒状に形成された弁座形成体17を組み付けて、弁座形成体17によりボディ12内に第2弁座19を設けるとともに、ポペット弁41の平衡状態を維持するためのシール部材45を、弁座形成体17側に位置するようにした。シール部材45は、ポペット弁41と一体に移動し、弁座形成体17の内周面を摺動するため、シール部材45のシール取付部43bからの潰し代(突出量)は僅かに設定してあり、シール部材45の密接する弁座形成体17としてはその真円度が要求される。しかし、本実施形態では、弁座形成体17を合成樹脂材料により円筒状に形成し、その真円度を容易に出すことができるため、シール部材45を弁座形成体17の内周面に全周に亘って密接させてシール機能を十分に発揮させることができる。したがって、本実施形態では、ポペット弁41の平衡状態を維持するために、シール部材45をボディ12の内周面に密接させる必要がなく、ボディ12を合成樹脂で製造することが可能になる。よって、背景技術のように、ポペット弁の平衡状態を維持するためのシール部材を全周に亘って弁孔に密接させるために、弁本体を金属で形成し、かつ真円度の高い弁孔を切削により形成する場合と比べると、ボディ12の製造コストを抑えることができ、バランスポペット式電磁弁10の製造コストを低減することができる。
【0057】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 弁体44における第1弁座18又は第2弁座19への接触部は平坦面状に形成されていなくてもよい。
【0058】
○ ソレノイド部31における固定鉄心37は磁気カバー32に対し移動不能に一体化されていてもよい。
○ 弁座形成体17は、ボディ12に対して螺合ではなく、圧入、嵌合等によりボディ12に組み付けられていてもよい。
【0059】
○ 弁座形成体17は、ボディ12における他方の開口側、すなわちソレノイド部31側に組み付けられていてもよい。
○ 弁座形成体17は、円筒状でなく、角筒状に形成されていてもよい。
【0060】
○ シール部材45は、弁座形成体17内ではなく、弁座形成体17よりソレノイド部31側に配設されていてもよく、この場合、ボディ12内における弁座形成体17よりソレノイド部31側には、シール部材45が摺接可能な別部材が配設される。
【0061】
○ 実施形態では、ボディ12にポペット弁41を収容した後、ボディ12に弁座形成体17を組付けて、ボディ12とソレノイド部31を一体化したが、以下のように変更してもよい。すなわり、ボディ12にソレノイド部31が組付けられた状態で、ボディ12にポペット弁41を組付けた後、ボディ12に弁座形成体17を組付けてもよい。
【0062】
○ 実施形態では、弁部11とソレノイド部31とを螺子止めにより一体化したが、弁部11とソレノイド部31とは、カシメ、溶接、弾性体を利用した固定方法等により一体化されていてもよい。
【符号の説明】
【0063】
S1…一端側圧力室、S2…他端側圧力室、11…弁部、12…ボディ、13…流路としての供給ポート、16…手動軸、16f…封止部材、17…弁座形成体、18…第1弁座、19…第2弁座、31…ソレノイド部、32…磁気カバー、37…固定鉄心、41…ポペット弁、42c…第1連通路、43c…第2連通路、44…弁体、45…シール部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁部にソレノイド部が一体化されてなり、前記弁部における筒状のボディ内に、ポペット弁が前記ボディの軸方向へ移動可能に収容されるとともに、前記ポペット弁に設けられた弁体が、前記軸方向において前記弁体を挟む位置に配設された一対の弁座に対し接離されることで流体の流路を切り換え可能に構成され、
前記一対の弁座のうちの一方が前記ボディに組付けられた弁座形成体によって形成されるとともに、前記弁座形成体により前記ボディの一方の開口が封止されており、
さらに、前記ポペット弁に、前記ボディ内に区画された一端側圧力室と他端側圧力室とを連通させる連通路が形成され、
前記ポペット弁に、前記一端側圧力室と前記流路との間をシールするシール部材が設けられるとともに、前記シール部材が前記ボディにおける前記弁座形成体が組付けられた側に配設されているバランスポペット式電磁弁。
【請求項2】
前記シール部材は、前記弁座形成体内に配設されるとともに、前記ポペット弁は、前記シール部材を介して前記弁座形成体に摺動可能に支持されている請求項1に記載のバランスポペット式電磁弁。
【請求項3】
前記弁座形成体は合成樹脂材料により円筒状に形成されている請求項1又は請求項2に記載のバランスポペット式電磁弁。
【請求項4】
前記弁座形成体は、前記ボディにおいて前記ソレノイド部とは反対側に組付けられている請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載のバランスポペット式電磁弁。
【請求項5】
前記弁座形成体は前記ボディに対し螺合により組付けられている請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載のバランスポペット式電磁弁。
【請求項6】
前記ソレノイド部は、磁気カバーに組付けられる固定鉄心を備え、前記固定鉄心は前記磁気カバーに対し位置調節可能に組付けられている請求項1〜請求項5のうちいずれか一項に記載のバランスポペット式電磁弁。
【請求項7】
前記弁体における前記弁座に対する接触部は平坦面状に形成されている請求項1〜請求項6のうちいずれか一項に記載のバランスポペット式電磁弁。
【請求項8】
前記弁座形成体には、前記ポペット弁を押圧して移動させる手動軸が設けられるとともに、前記手動軸には前記ポペット弁の押圧時に前記連通路を封止する封止部材が設けられている請求項1〜請求項7のうちいずれか一項に記載のバランスポペット式電磁弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−214612(P2011−214612A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81273(P2010−81273)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【Fターム(参考)】