説明

バリア用コポリマー

【課題】コポリマーの化学量論組成によって定義された、酸素に対する、または、水蒸気に対する制御された特異的なガス拡散性を示す組成物を提供する。
【解決手段】コポリマーの総重量を基準として、約90重量%〜約99.9重量%のクロロトリフルオロエチレン(CTFE)、約10重量%〜約0.1重量%のフルオロモノマー、フッ素化されていないコモノマーを含み、実質的に水分を透過しない、水分バリアコポリマーを提供する。かかるバリアコポリマーを製造するための方法もまた提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、ガス拡散性が制御可能であるコポリマーをバリア材料として含有する、ポリビニリデンジフルオライドの使用に関する。より特定的には、本発明は、コポリマーの組成によりバリア特性が定義される組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素を含有するモノマー類、ポリマー類、コポリマー類が、米国特許第2,970,988号明細書、米国特許第2,931,840号明細書、米国特許第2,996,555号明細書、米国特許第3,085,996号明細書、米国特許第6,486,281号明細書、米国特許第6,867,273号明細書(カラム3、第29〜50行を参照のこと)、および米国特許第6,703,450号明細書(モノマーに関して、カラム2、第42行〜カラム3、第5行を参照のこと)に記載されている。フッ化ビニリデンコポリマーは、米国特許第3,893,987号明細書に記載され、フルオロオレフィンコポリマーを製造するための方法は、米国特許第3,240,757号明細書に記載されている。フッ化ビニリデン/クロロトリフルオロエチレンコポリマーは米国特許第5,292,816号明細書および米国特許第3,053,818号明細書に記載されている。フッ化ビニリデン/3,3,3−トリフルオロ−2−トリフルオロメチルプロペンコポリマーおよびフッ化ビニリデン/3,3,3−トリフルオロ−2−トリフルオロメチルプロペンコポリマーを製造するための方法については、米国特許第3,706,723号明細書に記載されている。
【0003】
フルオロオレフィンとともに作られる他のコポリマーは、米国特許第2,599,640号明細書、米国特許第2,919,263号明細書、米国特許第3,812,066号明細書、米国特許第4,943,473号明細書、米国特許第5,200,480号明細書、米国特許第6,342,569号明細書、および米国特許第6,361,641号明細書に記載されている。
【0004】
フルオロカーボン/アクリレートコーティングは米国特許第3,716,599号明細書に記載され、パウダーコーティングは米国特許第5,030,394号明細書に記載されている。
【0005】
溶剤をベースにしたブレンディングは、米国特許第3,324,069号明細書に記載されている。ポリフッ化ビニリデン/ポリメチルメタクリレートブレンドは米国特許第6,362,271号明細書に記載されている。他のブレンドは米国特許第5,051,345号明細書、米国特許第5,496,889号明細書(相溶化ブレンド)、および米国特許第4,990,406号明細書(F−ターポリマー/アクリレートブレンド)に記載されている。グラフトコポリマーは米国特許第4,308,359号明細書に記載されている。
【0006】
多種多様な熱可塑性ポリマーが知られており、同様にかかる熱可塑性ポリマーから形成されたフィルムも知られている。かかるフィルムの重要な物理的特徴としては、ガス、臭い、および/または水蒸気などの蒸気に対するバリアを含むフィルムのバリア特性、ならびに靭性、耐摩耗性、耐侯性、および光透過性などの物理的特徴が挙げられる。例えば食品または医療製品のための包装材料としてフィルムを使用する際のようなフィルム用途において、これらの特性は特に重要である。
【0007】
フルオロポリマーの多層フィルムを生産することは、当技術分野において良く知られている。例えば、米国特許第4,146,521号明細書、米国特許第4,659,625号明細書、米国特許第4,677,017号明細書、米国特許第5,139,878号明細書、米国特許第5,855,977号明細書、米国特許第6,096,428号明細書、米国特許第6,138,830号明細書、および米国特許第6,197,393号明細書を参照のこと。多くのフルオロポリマー材料がその優れた水分および蒸気バリア特性のために一般に知られており、それ故に包装フィルムの望ましい構成物である。加えて、フルオロポリマーは高い熱安定性および優れた靭性を示す。
【0008】
ポリクロロトリフルオロエチレンは、高性能水分バリアポリマーとして用いられている。フッ化ビニリデンなどのコモノマーは、水透過速度または他の物理的特性を変更するために導入されている(国際特許出願公開第93/06159号明細書、及び米国特許出願公開第2007/128393号明細書)。2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンおよびクロロトリフルオロエチレンのコポリマーを含む様々なフルオロコポリマーが、保護コーティングにおいて有用であるとして、またエラストマーとして、米国特許第2,970,988号明細書に開示された。
【0009】
フルオロポリマーフィルムおよびフィルム構造における更なる改良、特に異なったガスおよび/または水蒸気に対してバリア性能に差があることを特徴とするフィルム構造を提供する改良に対して、当技術分野における絶え間ない要求が存在する。本発明は、コポリマーの化学量論組成によって定義された、酸素に対する、また、水蒸気に対する制御された特異的なガス拡散性を示す組成物を提供する。
【0010】
この理由のために、本発明にしたがったコポリマー組成物およびこれらの組成物を製造するための方法は、潜在的に商業的に有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第2,970,988号明細書
【特許文献2】米国特許第2,931,840号明細書
【特許文献3】米国特許第2,996,555号明細書
【特許文献4】米国特許第3,085,996号明細書
【特許文献5】米国特許第6,486,281号明細書
【特許文献6】米国特許第6,867,273号明細書
【特許文献7】米国特許第6,703,450号明細書
【特許文献8】米国特許第3,893,987号明細書
【特許文献9】米国特許第3,240,757号明細書
【特許文献10】米国特許第5,292,816号明細書
【特許文献11】米国特許第3,053,818号明細書
【特許文献12】米国特許第3,706,723号明細書
【特許文献13】米国特許第2,599,640号明細書
【特許文献14】米国特許第2,919,263号明細書
【特許文献15】米国特許第3,812,066号明細書
【特許文献16】米国特許第4,943,473号明細書
【特許文献17】米国特許第5,200,480号明細書
【特許文献18】米国特許第6,342,569号明細書
【特許文献19】米国特許第6,361,641号明細書
【特許文献20】米国特許第3,716,599号明細書
【特許文献21】米国特許第5,030,394号明細書
【特許文献22】米国特許第3,324,069号明細書
【特許文献23】米国特許第6,362,271号明細書
【特許文献24】米国特許第5,051,345号明細書
【特許文献25】米国特許第5,496,889号明細書
【特許文献26】米国特許第4,990,406号明細書
【特許文献27】米国特許第4,308,359号明細書
【特許文献28】米国特許第4,146,521号明細書
【特許文献29】米国特許第4,659,625号明細書
【特許文献30】米国特許第4,677,017号明細書
【特許文献31】米国特許第5,139,878号明細書
【特許文献32】米国特許第5,855,977号明細書
【特許文献33】米国特許第6,096,428号明細書
【特許文献34】米国特許第6,138,830号明細書
【特許文献35】米国特許第6,197,393号明細書
【特許文献36】国際特許出願公開第9,306,159号明細書
【特許文献37】米国特許出願公開第2007/128393号明細書
【発明の概要】
【0012】
本発明は、酸素バリアコポリマーを提供する。該酸素バリアコポリマーは、
約50重量%〜約99.9重量%のフッ化ビニリデン;および
約0.1重量%〜約50重量%のフッ素化されたコモノマー;
を含み、実質的に酸素を透過しない。
【0013】
本発明はまた、水分または水蒸気バリアコポリマーを提供する。該水分バリアコポリマーは、
約0.1重量%〜約50重量%のフッ化ビニリデン;および
約50重量%〜約99.9重量%のフッ素化されたコモノマー;
を含み、実質的に水分を透過しない。
【0014】
本発明は更に、酸素バリアコポリマーを製造するための方法を提供する。該方法は、反応領域において
フッ化ビニリデン;
フッ素化されたコモノマー;
開始剤;および任意成分として
フッ素化されていないコモノマー;
を接触させる工程を含み、ここで、約50重量%〜約99.9重量%のフッ化ビニリデンおよび約0.1重量%〜約50重量%のフッ素化されたコモノマーを含む組成を有する酸素バリアコポリマーを生産するのに十分な温度、圧力および時間の長さで前記接触を実行する。
【0015】
本発明は更に、水分バリアコポリマーを製造するための方法を提供する。該方法は、反応領域において
フッ化ビニリデン;
フッ素化されたコモノマー;
開始剤;および任意成分として
フッ素化されていないコモノマー;
を接触させる工程を含み、ここで、約0.1重量%〜約50重量%のフッ化ビニリデンおよび約50重量%〜約99.9重量%のフッ素化されたコモノマーを含む組成を有する水分バリアコポリマーを生産するのに十分な温度、圧力および時間の長さで前記接触を実行する。
【0016】
水分および/またはガスバリアコポリマーの別の実施形態もまた提供する。該コポリマーは、約90重量%〜約99.9重量%のクロロトリフルオロエチレンおよび約10重量%〜約0.1重量%のフルオロモノマーを有する。該コポリマーは、コポリマーの総重量を基準として、2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン、CFCF=CF、CFCH=CF、CFCF=CFH、シス−CFCH=CFH、トランス−CFCH=CFH、CFCH=CH、およびこれらの組み合わせから成る群から選択することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、2種類のコポリマー中における酸素拡散の比較を示すチャートである。一方は、フッ化ビニリデン対2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの比が10:1のランダム共重合組成であり、他方は、フッ化ビニリデン対2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの比が1:10のランダム共重合組成である。
【図2】図2は、フッ化ビニリデン対2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの比が10:1のランダム共重合組成であるコポリマー中への水の拡散を示すチャートである。
【図3】図3は、フッ化ビニリデン対2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの比が1:10のランダム共重合組成であるコポリマー中への水の拡散を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、特定のバリア特性を備えるフルオロオレフィンコポリマー、およびそれらを製造するための方法に関する。
本発明の酸素バリアコポリマーは、約50重量%〜約99.9重量%のフッ化ビニリデンおよび約0.1重量%〜約50重量%のフッ素化されたコモノマーを含む。
一方、水分または水蒸気バリアコポリマーは、約0.1重量%〜約50重量%のフッ化ビニリデンおよび約50重量%〜約99.9重量%のフッ素化されたコモノマーを含む。
【0019】
2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペン、2−クロロ−ペンタフルオロプロペン、ヘキサフルオロプロピレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、3,3,3−トリフルオロ−2−トリフルオロメチルプロペン、およびこれらの混合物から選択されるフッ素化されたコモノマーが好ましい。
【0020】
しかし、他のフッ素化されたコモノマーおよび他のフッ素化されていないコモノマーもまた、適度な量で用いても良い。
かかるフッ素化されたコモノマーは、以下の式
C=CR
(式中、R、R、R、およびRはそれぞれ、水素、塩素、フッ素、ヒドロキシ、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アシル、シアノ、1〜6個の炭素原子を有し、任意成分として少なくとも一つのフッ素によって置換された直鎖、分岐鎖または環状アルキル、1〜6個の炭素原子を有し、任意成分として少なくとも一つのフッ素によって置換されたアリール、およびこれらの混合物から独立に選択される。ただしR、R、R、およびR基の少なくとも一つはフッ素又はフッ素含有基である)
によって表されるフルオロオレフィンコモノマーを含む。
【0021】
フルオロオレフィンコモノマーの例としては、CFH=CH、CF=CH、CF=CFH、CF=CF、CClF=CF、CBrF=CF、CFCH=CHF、CFCF=CF、CFCH=CF、シス−CFCF=CHF、トランス−CFCF=CHF、CFCH=CH、CFCF=CH、CFCFCF=CF、CFCFCH=CF、CFCFCF=CHF、CFCFCH=CH、CFCFCF=CH、CFCFCFCF=CF、CFCFCFCH=CF、CFCFCFCF=CHF、CFCFCFCH=CH、CFCFCFCF=CH、CFCH=CHCF、CFCH=CFCF、CFCF=CFCF、HOCHCH=CHF、HOCHCH=CF、HOCHCF=CH、HOCHCF=CHF、HOCHCF=CF、HOCHCF=CH、CFCH=CHCl、CFCCl=CH、CFCCl=CHF、CFCCl=CF、CFCF=CHCl、CFCH=CFCl、(CFC=CH、CFCFCFCFCH=CH、CFCFCFOCF=CF、CFCFCFCFCH=CH、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0022】
フッ素化されたコモノマーの追加の例としては、α−トリフルオロメチルアクリレート、α−トリフルオロメチルアクリレート、α−トリフルオロメチルアクリレート、4〜24個の炭素原子を有し、少なくとも一つのフッ素原子によって置換されたビニルエーテル、5〜24の炭素原子を有し、カルボキシレートが少なくとも一つのフッ素によって置換されたビニルカルボキシレート、およびペルフルオロアルキルビニルエーテルが挙げられる。
【0023】
かかるフッ素化されていないコモノマーの例としては、2〜8個の炭素原子を有するアルケン、4〜24個の炭素原子を有するアクリレートエステルまたはメタクリレートエステル、ヒドロキシエチルアクリレートまたはヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレートまたはヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、4〜24個の炭素原子を有し、任意成分として少なくとも一つのヒドロキシ基によって置換されたビニルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、アリルアルコール、メタリルアルコール、ビニルアセテート、5〜24個の炭素原子を有し、カルボキシレートが任意成分として少なくとも一つのヒドロキシ基によって置換されたビニルカルボキシレート、メチルエチルケトン、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、アルキルビニルエーテル、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0024】
フッ素化されていないコモノマーの特定の例としては、2〜8個の炭素原子を有するアルケン、4〜24個の炭素原子を有するアクリレートエステルまたはメタクリレートエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、アリルアルコール、メタリルアルコール、ビニルアセテート、5〜24個の炭素原子を有するビニルカルボキシレート、メチルエチルケトン、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、アルキルビニルエーテル、およびこれらの混合物が挙げられる。フッ素化されていないアクリルコモノマーの例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ドデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェニルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、エチルヘキシメタクリレート、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0025】
フッ化ビニリデンのモノマーおよび第二のフッ素化されたオレフィンのモノマーを含む酸素バリアコポリマーを得るためには、フッ化ビニリデンの重量パーセンテージは少なくとも50%であり99.9%を超えることは無く、第二のフルオロオレフィンの重量パーセンテージは少なくとも0.1%であり50%を越えることは無い。前記組成物は、これらの組成により、酸素の拡散性と、例えば水蒸気の拡散性とが差別化され、水蒸気に対するバリア特性と比較して優れた酸素に対するバリア特性が提供される。
【0026】
フッ化ビニリデンおよび第二のフッ素化されたオレフィンのモノマーを含む水分バリアコポリマーを得るためには、フッ化ビニリデンの重量パーセンテージは少なくとも0.1%であり50%を超えることは無く、第二のフルオロオレフィンの重量パーセンテージは少なくとも50%であり99.9%を越えることは無い。前記組成物は、これらの組成により、水蒸気の拡散性と、例えば酸素の拡散性とが差別化され、酸素に対するバリア特性と比較して優れた水蒸気に対するバリア特性が提供される。
【0027】
フッ化ビニリデン/フルオロオレフィンコポリマーの拡散特性が、コポリマーの組成に依存して、酸素と水分に対して異なることを見出した。それ故に、フッ化ビニリデン/フルオロオレフィンコポリマーは酸素と水分の間に差があるバリア(Differential Barrier)として振舞うことが出来る。フィルムを含む材料を特定のバリア特性を示すように加工しても良い。異なる化学量論組成を有する複数のフィルムを、組み合わせた場合の効果のために互いに接着しても良い。
【0028】
高い割合でフッ化ビニリデンを有するフッ化ビニリデン/2,3,3,3−テトラフルオロプロペンのランダムコポリマーの場合には、該材料は、水分に対しては低いバリア性を有するが、酸素に対しては高いバリア性を有する。モノマーの割合が逆転すると、拡散性の傾向も逆転する。これは、フッ化ビニリデン/フルオロオレフィンコポリマーの化学量論組成を介してガス拡散性が制御可能であることを意味する。
【0029】
理論によって限定されるものではないが、拡散性の差は、ガスのポリマー組成に対する相互作用の差に関係しているように見える。
図1に示すように、本発明は、コポリマー組成物中のフッ化ビニリデン含量が高いほど酸素拡散に対するバリア性が高いフッ化ビニリデン/フルオロオレフィンコポリマー組成物を提供する。それ故に、フッ化ビニリデンは酸素に関して優れたバリア特性を有し、これらの特性は、フッ化ビニリデン対2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの比が10:1のコポリマー組成物において維持される。
【0030】
図2に示すように、本発明は、コポリマー組成物中のフッ化ビニリデン含量が高いほど水分拡散に対するバリア性が低いフッ化ビニリデン/フルオロオレフィンコポリマー組成物を提供する。それ故に、フッ化ビニリデン含量が高いフッ化ビニリデン対2,3,3,3−テトラフルオロプロペンコポリマーは、驚くべきことに水分に関するバリア特性を実証し、これは酸素拡散に関して示されたバリア特性と比較すると、測定可能な逆の相互作用の差を示す。
【0031】
フッ素含有ポリマーおよびコポリマーは、米国特許第2,970,988号明細書、および米国特許第6,077,609号明細書に記載されている。フッ化ビニリデンコポリマーは米国特許第3,893,987号明細書に記載され、フルオロオレフィンコポリマーを製造するための方法は米国特許第3,240,757号明細書に記載されている。ビニリデンジフルオライド/クロロトリフルオロエチレンコポリマーは、米国特許第5,292,816号明細書および米国特許第3,053,818号明細書に記載されている。フッ化ビニリデン/3,3,3−トリフルオロ−2−トリフルオロメチルプロペンコポリマーおよびフッ化ビニリデン/3,3,3−トリフルオロ−2−トリフルオロメチルプロペンコポリマーを製造するための方法は、米国特許第3,706,723号明細書に記載されている。
【0032】
フッ化ビニリデン/フルオロオレフィンコポリマーのフルオロオレフィンコモノマーは、特定のバリア特性を有するコポリマーを与える適切な反応性のフルオロオレフィンであれば如何なるものでも構わない。本発明の好ましい実施形態の一つにおいては、第二のフルオロオレフィンコモノマーを、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペン、および2−クロロペンタフルオロプロペンから選択する。本発明のより好ましい実施形態において、第二のフルオロオレフィンコモノマーは、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンである。本発明の更に別のより好ましい実施形態においては、第二のフルオロオレフィンコモノマーは、1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペンである。
【0033】
本発明の別の好ましい実施形態においては、第二のフルオロオレフィンコモノマーを、ヘキサフルオロプロペン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、および3,3,3−トリフルオロ−2−トリフルオロメチルプロペンから選択する。
【0034】
本発明のフッ化ビニリデン/フルオロオレフィン酸素バリアコポリマーは、50重量%〜99.9重量%のフッ化ビニリデンコモノマー、および0.1重量%〜50重量%の第二のフルオロオレフィンコモノマーを含む。本発明の好ましい実施形態において、コポリマー中のフッ化ビニリデンコモノマーの重量パーセンテージは70%〜95%であり、コポリマー中の第二のフルオロオレフィンコモノマーの重量パーセンテージは5%〜30%である。本発明の更に好ましい実施形態において、コポリマー中のフッ化ビニリデンコモノマーの重量パーセンテージは85%〜95%であり、コポリマー中の第二のフルオロオレフィンコモノマーの重量パーセンテージは5%〜15%である。
【0035】
本発明のフッ化ビニリデン/フルオロオレフィン水分バリアコポリマーは、0.1重量%〜50重量%のフッ化ビニリデンコモノマー、および50重量%〜99.9重量%の第二のフルオロオレフィンコモノマーを含む。本発明の好ましい実施形態において、コポリマー中のフッ化ビニリデンコモノマーの重量パーセンテージは5%〜30%であり、コポリマー中の第二のフルオロオレフィンコモノマーの重量パーセンテージは70%〜95%である。本発明の更に好ましい実施形態において、コポリマー中のフッ化ビニリデンコモノマーの重量パーセンテージは5%〜15%であり、コポリマー中の第二のフルオロオレフィンコモノマーの重量パーセンテージは85%〜95%である。
【0036】
本発明はまた更に、特定の用途のために設計された目的のコポリマー組成を得るような比で、1,1−ジフルオロエチレン、フッ素化されたコモノマー、開始剤、および任意成分としてフッ素化されていないコモノマーを反応領域において接触させる工程を含む、本発明の制御されたバリア性を有するフッ化ビニリデン/フルオロオレフィンコポリマーを形成するための方法を提供する。
【0037】
好ましくは、前記フルオロオレフィンコポリマーを生産するのに十分な温度、圧力、および時間の長さで該接触を実行する。
本発明はまた更に、前記反応領域が好ましくは水、エチルアセテート、ブチルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、2−ヘプタノン、1−メトキシ−2−プロパノールアセテート、1,1,1−トリクロロエタン、およびこれらの混合物から選択した溶媒を含む、前記方法を提供する。反応領域における好ましい溶媒は、水である。
【0038】
本発明の方法の別の側面は、選択されたフリーラジカル開始剤を使用することである。不飽和モノマーのフリーラジカル重合のために用いられる通常の開始剤は、目的とする特質および特性に依存するが、本発明の方法においては一般的に申し分ない。例えば、アゾタイプ開始剤は、分子量の分布において高い多分散性を生じ、一方でペルエステルタイプのペルオキシドは狭い分子量の分布を生ずるので好ましくは大抵の場合において用いられる。
【0039】
開始剤の例としては、アゾビスシアノアクリレート、t−ブチルペルオクトエートおよびt−アミルペルオクトエートなどの脂肪族ペルエステル、tert−ブチルペルオキシドなどの脂肪族ペルオキシド、tert−ブチルハイドロペルオキシドなどの脂肪族ハイドロペルオキシド、ペルオキシドナトリウムなどの無機ペルオキシド、ペルサルフェートカリウムなどの無機ペルサルフェート、酸化剤としてのペルサルフェートおよび還元剤としてのメタビサルファイトナトリウムなどのサルファイトを含むレドックス開始剤、t−ブチルペルオキシド−2−エチルヘキシルカーボネートなどのペルカーボネート、ペルオキシジカーボネート、ペルハロアセチルペルオキシド、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0040】
一般的に、ペルエステル開始剤は、モノマーの総重量を基準として20重量%未満の濃度で用いる。通常は、ペルエステル開始剤は12重量%未満の濃度で用い、0.1〜1.0重量%の範囲が好ましい。
【0041】
好ましくは、ペルエステル開始剤は、モノマー反応体、即ちこれまで述べたようにモノマーの共沸混合物とともに反応領域に添加する。しかし、重合反応が実質的に終了した後、仕上げの工程として少量のペルオキシドを添加しても良い。そのような仕上げの工程は、少量の未反応のモノマーを取り除く目的があり、目的とする最終的な使用または用途に直接的に使用可能な反応領域の生産物を得る手助けとなる。
【0042】
それ故に、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも80重量%のペルオキシドをモノマーとともに添加し、残量分の開始剤を重合反応の間に添加することが重要である。
重合化プロセスは、第三級アミンまたは第三級メルカプタンタイプ連鎖移動剤の存在下で実施しても良い。連鎖移動剤の使用により、結果として、必要とされる有機溶媒溶解性を有するために適した分子量のコポリマーが得られる。
【0043】
一般的に、連鎖移動剤は、反応領域に添加したモノマーの重量を基準として、5重量%未満の濃度で用いる。
本方法は、連続式、回分式、気相、固定床、溶液、乳化、または懸濁重合法として実行することが出来る。
【0044】
反応領域は、溶媒または複数の溶媒の混合物などの希釈剤を更に含むことが出来る。非水性重合法において用いる溶媒は、好ましくは、反応媒体として用いられる非極性、非反応性、非重合性、非プロトン溶媒である。しかし、本発明のモノマーおよびコポリマー生産物の両方を溶解する非干渉性非重合性液体などの他の溶媒を用いても良い。適切な反応溶媒としては、エステル類、ケトン類、エーテル類、芳香族炭化水素類、塩素化された炭化水素類、脂肪族炭化水素類、およびこれらの混合物が挙げられる。溶媒の実例は、エチルアセテート、ブチルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、2−ヘプタノン、および1,1,1−トリ−クロロエタンである。これらの混合物もまた使用できる。水性重合反応は、好ましくは、水溶性開始剤、必要とされるpHレベルを維持するための無機リン酸塩または無機炭化水素などの緩衝液、ペルフルオロアルキルカーボネートまたはスルフォネートの塩などの必要とされる乳化剤を用いて実施する。
【0045】
実施すると、好ましくは少なくとも10重量%の反応体が生産物に転化する。より好ましくは、最大で少なくとも80重量%までの反応体が生産物に転化し、最も好ましくは、少なくとも90重量%の反応体が生産物に転化する。
【0046】
本発明の方法を高い転化条件で実施するには、特に回分式条件あるいは溶液条件、一般的には乳化条件または懸濁条件の下で操作することが好ましい。しかし、連続式反応、気相反応、または固定床反応についても、本発明は未反応の出発材料を再利用するという特有の利点を提供し、それによって他の既知の先行技術の方法に対してコスト面の利点を提供する。
【0047】
ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス・エー:ポリマー・ケミストリー(J. Polymer Sci. A:Polym. Chem.) (1997) 35, 1593−1604、および米国特許第2,970,988号明細書、米国特許第3,893,987号明細書(実施例2を参照のこと)、米国特許第3,240,757号明細書、米国特許第5,292,816号明細書、米国特許第3,053,818号明細書(実施例6を参照のこと)、米国特許第3,812,066号明細書、米国特許第2,599,640号明細書、米国特許第6,342,569号明細書、米国特許第5,200,480号明細書、米国特許第2,919,263号明細書に記載されている方法のような、当技術分野において知られ、記載されている方法と本質的に同じやり方で重合を実行できる。
【0048】
反応領域は、好ましくは均一性およびプロセス制御を支援するための攪拌および熱交換の為の設備を有する。
本方法は、連続式、回分式、気相、固定床、溶液、乳化、または懸濁タイプの重合法として、実行できる。
【0049】
反応領域は、更に溶媒または溶媒の混合物などの希釈剤を含むことが出来る。適切な反応溶媒としては、水、または20℃で液体であるペルフルオロ(Perfluorinated)およびペルクロロ(Perchlorinated)アルカンを含む非重合性有機溶媒が挙げられる。他の適切な反応溶媒としては、エステル類、ケトン類、エーテル類、芳香族炭化水素類、塩素化された炭化水素類、脂肪族炭化水素類、およびこれらの混合物が挙げられる。溶媒の実例は、1,1,1−トリクロロエタン、エチルアセテート、ブチルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、および2−ヘプタノンである。これらの混合物もまた使用できる。
【0050】
本発明において、水分バリアコポリマーの別の実施形態が存在する。このコポリマーは、望ましい熱特性を示しながら、水分およびガスの透過に対する高い抵抗を提供する。本コポリマーは、約90重量%〜約99.9重量%のCTFE(クロロトリフルオロエチレン)モノマーおよび約10重量%〜約0.1重量%のフルオロモノマーを有する。フルオロモノマーは、好ましくは、コポリマーの総重量を基準として、2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン、CFCF=CF、CFCH=CF、CFCF=CFH、シス−CFCH=CFH、トランス−CFCH=CFH、CFCH=CH、およびこれらの組み合わせから成る群から選択する。CTFEおよび1234yf(2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン)のコポリマーが好ましい。コポリマーは、好ましくは約93重量%〜約99.9重量%のクロロトリフルオロエチレンおよび約7重量%〜約0.1重量%のフルオロモノマーを有する。コポリマーは、好ましくは約96重量%〜約99.9重量%のクロロトリフルオロエチレンおよび約4重量%〜約0.1重量%のフルオロモノマーを有する。コポリマーは、約0.25gm−mil/(100平方インチ・日)(9.8×10−8gm・m/(mm・日))以下、好ましくは約0.2gm−mil/(100平方インチ・日)(7.9×10−8gm・m/(mm・日))以下の水分透過性を示す。透過性は約0.1gm−mil/(100平方インチ・日)〜約0.25gm−mil/(100平方インチ・日)(4.0〜9.8×10−8gm・m/(mm・日))以下の範囲である。コポリマーは、これまでに説明したような他のフッ素化されたモノマーのコモノマーおよび/またはフッ素化されていないコモノマーを内部に有しても良い。
【0051】
本発明に従った特定のバリア特性を示すバリアコポリマーを用いてフィルムを製造することができる。加えて、個々のフィルムのバリア特性を組み合わせた効果を有する多層フィルムを生産するために、異なった組成を有する複数のこれらコポリマーフィルムを互いに接着しても良い。
【0052】
以下の非限定的な実施例は、本発明の様々な実施形態を例示する。本発明の範囲から逸脱すること無く、当技術分野において知られている多くのものの中から他の変更を選択することは、当業者の能力の範囲内である。
【0053】
従って、これらの実施例は本発明を更に説明するために用いるべきであり、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0054】
実施例1:1234yfおよびVDFの乳化共重合
当技術分野において知られている方法によって反応体を添加した、攪拌されたステンレス鋼のオートクレーブにおいて、典型的な重合を実施する。1.0mlの脱酸素/脱イオン水に溶解した(NH(アンモニウムペルサルフェート)0.14g、1.0mlの脱酸素/脱イオン水に溶解したNa(メタサルファイトナトリウム)0.3g、緩衝溶液に溶解したFeSO(硫酸第一鉄)0.005g、1.34/0.68gを180mlに溶解したNaHPO/NaHPO緩衝液、緩衝液により溶解したC15CO(NH)界面活性剤2.44gを、30mlのオートクレーブに添加する。18mlの(水/NaHPO/NaHPO/FeSO/C15CO(NH))乳液を添加する。
【0055】
重合の間、10モル%の1234yfおよび90モル%のVDFの混合物9.5gを添加しながら、溶液の混合物を攪拌し、自己生成的な圧力を10℃で得る。該圧力を重合の間保持して、一定のモノマー濃度を得る。48時間後に、重合を停止してモノマーをオートクレーブから放出する。重合ラテックスを25%HCl中で凝固させ、ポリマーを洗浄し、乾燥した。2.3gの白いコポリマーが得られた。
【0056】
この実施例のコポリマーをO拡散についてテストした。結果を図1に示す。該コポリマーを水透過についてもテストした。結果を図3に示す。水に対する一般的な通過傾向はOに対する傾向と反対であり、1234yfが水をブロックする手助けとなった。
【0057】
上記のコポリマーと同様の方法で、90モル%の1234yfおよび10モル%のVDFを有する類似したコポリマーを製造した。該類似したコポリマーをO拡散についてテストした。結果を図1に示す。該類似したコポリマーを水透過についてもテストした。結果を図2に示す。
【0058】
実施例2:VDF/CH=CFCF/CF=CFClの乳化型三元共重合化
当技術分野において知られている方法によって反応体を添加した、攪拌されたステンレス鋼のオートクレーブにおいて、典型的な重合を実施する。40mlの脱酸素/脱イオン水に1.12gの(NH(アンモニウムペルサルフェート)を溶解した溶液22ml、40mlに2.4gのNa(メタサルファイトナトリウム)を溶解した溶液12.5ml、緩衝溶液に溶解したFeSO(硫酸第一鉄)0.005g、1.34/0.68gを180mlの脱酸素/脱イオン水に溶解したNaHPO/NaHPO緩衝液、緩衝液により溶解したC15CO(NH)界面活性剤2.44gを、300mlのオートクレーブに添加する。180mlの(水/NaHPO/NaHPO/FeSO/C15CO(NH))乳液を添加する。
【0059】
重合の間、10.1モル%の1234yfおよび88.1モル%のCTFEおよび1.8モル%のVDFの混合物62.4gを添加しながら、溶液の混合物を攪拌し、自己生成的な圧力を10℃で得る。該圧力を重合の間保持して、一定のモノマー濃度を得る。6時間後に、重合を停止してモノマーをオートクレーブから放出する。重合ラテックスを25%HCl中で凝固させ、ポリマーを洗浄し、乾燥した。26gの白いコポリマーが得られた。
【0060】
実施例3:クロロトリフルオロエチレン/1234yfコポリマー、および他のクロロトリフルオロエチレンポリマーとの水分透過比較
CTFE/1234yfコポリマーの乳化重合
脱イオン水を窒素でパージし、300mlの反応器を真空に引いた。10mlの脱酸素/脱イオン水に溶解した(NH(アンモニウムペルサルフェート)0.3g、40mlの脱酸素/脱イオン水に溶解したNa(メタサルファイトナトリウム)4.5g、緩衝溶液に溶解したFeSO(硫酸第一鉄)0.005g、180mlの脱酸素/脱イオン水に溶解したNaHPO/NaHPO緩衝液それぞれ1.34/0.68g、緩衝液とともに溶解したC15CO(NH)界面活性剤2.44gを、使用する直前に、固体を個別に量り分け、別々にそれぞれの固体を溶解することによって重合開始剤溶液を製造した。反応混合物の温度を約10℃に保持する。180mlの(水/NaHPO/NaHPO/FeSO/C15CO(NH))乳液を添加し、シリンジを用いてオートクレーブ内に注ぎ込む。最初の充填のために、シリンジを用いて、(NHおよびNa溶液をオートクレーブに添加し(今後の充填のためには定量ポンプを用いる)、混合物を攪拌する。それぞれ95対5のモルパーセント比、すなわち52.25gと2.75gのCTFE/1234yfでISCOシリンジポンプを満たす。最初に圧力が約70psig(4.8×10Pa)の系にCTFE/1234yf溶液を急速に添加し、全てのCFTE/1234yfを添加するまで、100ml/minの一定フローを持続する。反応を持続させ、必要に応じて調整を行う。系の圧力を監視することによって、反応を望ましい完了レベルに進める。
【0061】
CTFE−1234yfコポリマーの懸濁重合
3重量%の1234yf(2,3,3,3−テトラフルオロプロペン)および97重量%のCTFE(クロロテトラフルオロエチレン)を有するコポリマーを以下のように製造した。脱イオン水を窒素でパージし、系を真空に引いた。40mlの脱酸素/脱イオン水に溶解した(NH(アンモニウムペルサルフェート)2.5g、40mlの脱酸素/脱イオン水に溶解したNa(メタサルファイトナトリウム)4.5g、緩衝溶液に溶解したCuCl(塩化第二銅)0.01g、それぞれ3/1.5gを400mlの脱酸素/脱イオン水に溶解したNaHPO/NaHPO緩衝液を、使用する直前に、固体を個別に量り分け、別々にそれぞれの固体を水中に完全に溶解することによって重合開始剤溶液を製造した。200mlの水/NaHPO/NaHPO/CuCl溶液を添加し、定量ポンプまたはシリンジを用いて500mlのオートクレーブ内に注ぎ込む。定量ポンプを用いて、15mlのNa溶液をオートクレーブに添加し、混合物を攪拌する。反応混合物の温度を20〜21℃に保持する。定量ポンプを用いて、15mlの(NH溶液をオートクレーブに添加し、モノマーを添加している間、ゆっくりと混合物を攪拌する。−35℃で、95対5のモルパーセント比のCTFE/1234yfでISCOシリンジポンプを満たす。典型的には、系に使用されている水の重量を基準として約15%のモノマーを添加する。最初に圧力が100psig(6.9×10Pa)の系にCTFE/1234yf溶液を急速に添加し、全てのCFTE/1234yfを添加するまで、100ml/minの一定フローを持続する。Na溶液を0.01ml/minでゆっくりと量り入れることによって、回分式反応で重合を開始する。反応を持続させ、必要に応じて調整を行う。系の圧力を監視することによって反応を望ましい完了レベルに進める。約8時間で、約80%の固体ポリマーが形成される。
【0062】
1450、1421、1380、1346、および1070cm−1にいくつかの弱い赤外スペクトルピークが存在し、これはポリマー中にTFPが取り込まれていることを示唆する。1346および1070cm−1の二つのピークが定量のために有用であるように思われる。ポリマー中の水素量が低レベルであるために、水素を用いた元素分析は使用の限界にある。しかし、炭素およびフッ素の元素分析は条件を満たす。
【0063】
フィルムゲージおよび加熱カーバープレス(Carver Press)を用いることによって、CTFE/1234yfコポリマーを1.00mil(2.5×10−3cm)圧のフィルムに形成した。
【0064】
CTFE/1234yfコポリマーを、CTFEホモポリマーおよび二種類のCTFE/ビニリデンジフルオライド(VF)コポリマー(3重量%および5重量%フッ化ビニリデン)と比較して水分透過に対してテストした。CTFE/1234yfコポリマーに対して行ったものと実質的に同一の方法で、CTFEホモポリマーおよび二種類のCTFE/ビニリデンジフルオライド(VF)コポリマーのフィルムを製造した。フィルムは、典型的には面積が50cmで、厚みが1.00mil(2.5×10−3cm)であった。MOCON水蒸気透過装置を測定に用いた。
【0065】
結果から、CTFE/1234yfコポリマーのフィルムがCTFE/VFコポリマーのフィルムよりも優れた水分バリア性能、すなわち低い水分透過性を示すことが分かる。少量の1234yfは、ホモポリマーと比較して望ましい熱特性に変更し、その熱特性を提供すると同時に、高いバリア保護を維持する。以下の表に結果を説明する。
【0066】
【表1】

【0067】
好ましい実施形態を特定的に参照して本発明を説明してきた。本発明の精神および範囲から逸脱すること無く、当業者によってこれらの変更形態および修飾形態が考案可能なことは理解すべきである。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲に含まれる全てのそのような変更形態、修飾形態および変化形態を包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約50重量%〜約99.9重量%のフッ化ビニリデン;および
約0.1重量%〜約50重量%のフッ素化されたコモノマー;
を含み、実質的に酸素を透過しない、酸素バリアコポリマー。
【請求項2】
コポリマーの約70重量%〜約95重量%がフッ化ビニリデンであり、コポリマーの約5重量%〜約30重量%がフッ素化されたコモノマーである、請求項1に記載の酸素バリアコポリマー。
【請求項3】
コポリマーの約85重量%〜約95重量%がフッ化ビニリデンであり、コポリマーの約5重量%〜約15重量%がフッ素化されたコモノマーである、請求項1に記載の酸素バリアコポリマー。
【請求項4】
フッ素化されたコモノマーが、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペン、2−クロロ−ペンタフルオロプロペン、ヘキサフルオロプロピレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、3,3,3−トリフルオロ−2−トリフルオロメチルプロペン、およびこれらの混合物から成る群から選択される、請求項1に記載の酸素バリアコポリマー。
【請求項5】
フッ素化されていないコモノマーを更に含む、請求項1に記載の酸素バリアコポリマー。
【請求項6】
フッ素化されていないコモノマーが、2〜8個の炭素原子を有するアルケン、4〜24個の炭素原子を有するアクリレートエステルまたはメタクリレートエステル、ヒドロキシエチルアクリレートまたはヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレートまたはヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、4〜24個の炭素原子を有し、任意成分として少なくとも一つのヒドロキシ基によって置換されたビニルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、アリルアルコール、メタリルアルコール、ビニルアセテート、5〜24個の炭素原子を有し、カルボキシレートが任意成分として少なくとも一つのヒドロキシ基によって置換されたビニルカルボキシレート、メチルエチルケトン、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、アルキルビニルエーテル、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項5に記載の酸素バリアコポリマー。
【請求項7】
フッ化ビニリデン;
フッ素化されたコモノマー;
開始剤;および任意成分として
フッ素化されていないコモノマー;
を反応領域において接触させる工程を含み、前記接触が約50重量%〜約99.9重量%のフッ化ビニリデンおよび約0.1重量%〜約50重量%のフッ素化されたコモノマーを含む組成を有する酸素バリアコポリマーを生産するのに十分な温度、圧力および時間の長さで実行される、請求項1に記載の酸素バリアコポリマーを製造するための方法。
【請求項8】
反応領域が、水、エチルアセテート、ブチルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、2−ヘプタノン、1−メトキシ−2−プロパノールアセテート、1,1,1−トリクロロエタン、およびこれらの混合物から成る群から選択される溶媒を更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
フッ素化されたコモノマーが、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペン、2−クロロ−ペンタフルオロプロペン、ヘキサフルオロプロピレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、3,3,3−トリフルオロ−2−トリフルオロメチルプロペン、およびこれらの混合物から成る群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
フッ素化されていないコモノマーを更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
フッ素化されていないコモノマーが、2〜8個の炭素原子を有するアルケン、4〜24個の炭素原子を有するアクリレートエステルまたはメタクリレートエステル、ヒドロキシエチルアクリレートまたはヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレートまたはヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、4〜24個の炭素原子を有し、任意成分として少なくとも一つのヒドロキシ基によって置換されたビニルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、アリルアルコール、メタリルアルコール、ビニルアセテート、5〜24個の炭素原子を有し、カルボキシレートが任意成分として少なくとも一つのヒドロキシ基によって置換されたビニルカルボキシレート、メチルエチルケトン、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、アルキルビニルエーテル、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
約0.1重量%〜約50重量%のフッ化ビニリデン;および
約50重量%〜約99.9重量%のフッ素化されたコモノマー;
を含み、実質的に水分を透過しない、水分バリアコポリマー。
【請求項13】
コポリマーの約5重量%〜約30重量%がフッ化ビニリデンであり、コポリマーの約70重量%〜約95重量%がフッ素化されたコモノマーである、請求項12に記載の水分バリアコポリマー。
【請求項14】
コポリマーの約5重量%〜約15重量%がフッ化ビニリデンであり、コポリマーの約85重量%〜約95重量%がフッ素化されたコモノマーである、請求項12に記載の水分バリアコポリマー。
【請求項15】
フッ素化されたコモノマーが、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペン、2−クロロ−ペンタフルオロプロペン、ヘキサフルオロプロピレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、3,3,3−トリフルオロ−2−トリフルオロメチルプロペン、およびこれらの混合物から成る群から選択される、請求項12に記載の水分バリアコポリマー。
【請求項16】
フッ素化されていないコモノマーを更に含む、請求項12に記載の水分バリアコポリマー。
【請求項17】
フッ素化されていないコモノマーが、2〜8個の炭素原子を有するアルケン、4〜24個の炭素原子を有するアクリレートエステルまたはメタクリレートエステル、ヒドロキシエチルアクリレートまたはヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレートまたはヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、4〜24個の炭素原子を有し、任意成分として少なくとも一つのヒドロキシ基によって置換されたビニルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、アリルアルコール、メタリルアルコール、ビニルアセテート、5〜24個の炭素原子を有し、カルボキシレートが任意成分として少なくとも一つのヒドロキシ基によって置換されたビニルカルボキシレート、メチルエチルケトン、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、アルキルビニルエーテル、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項16に記載の水分バリアコポリマー。
【請求項18】
フッ化ビニリデン;
フッ素化されたコモノマー;
開始剤;および任意成分として
フッ素化されていないコモノマー;
を反応領域において接触させる工程を含み、前記接触が、約0.1重量%〜約50重量%のフッ化ビニリデンおよび約50重量%〜約99.9重量%のフッ素化されたコモノマーを含む組成を有する水分バリアコポリマーを生産するのに十分な温度、圧力および時間の長さで実行される、請求項12に記載の水分バリアコポリマーを製造するための方法。
【請求項19】
反応領域が、水、エチルアセテート、ブチルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、2−ヘプタノン、1−メトキシ−2−プロパノールアセテート、1,1,1−トリクロロエタン、およびこれらの混合物から成る群から選択される溶媒を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
フッ素化されたコモノマーが、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペン、2−クロロ−ペンタフルオロプロペン、ヘキサフルオロプロピレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、3,3,3−トリフルオロ−2−トリフルオロメチルプロペン、およびこれらの混合物から成る群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
フッ素化されていないコモノマーを更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
フッ素化されていないコモノマーが、2〜8個の炭素原子を有するアルケン、4〜24個の炭素原子を有するアクリレートエステルまたはメタクリレートエステル、ヒドロキシエチルアクリレートまたはヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレートまたはヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、4〜24個の炭素原子を有し、任意成分として少なくとも一つのヒドロキシ基によって置換されたビニルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、アリルアルコール、メタリルアルコール、ビニルアセテート、5〜24個の炭素原子を有し、カルボキシレートが任意成分として少なくとも一つのヒドロキシ基によって置換されたビニルカルボキシレート、メチルエチルケトン、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、アルキルビニルエーテル、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
コポリマーの総重量を基準として、約90重量%〜約99.9重量%のクロロトリフルオロエチレン;および
CFCF=CH、CFCF=CF、CFCH=CF、CFCF=CFH、シス−CFCH=CFH、トランス−CFCH=CFH、CFCH=CH、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される約10重量%〜約0.1重量%のフルオロモノマー;を含む、水分バリアコポリマー。
【請求項24】
クロロトリフルオロエチレンが約93重量%〜約99.9重量%であり、フルオロモノマーが約7重量%〜約0.1重量%である、請求項23に記載のコポリマー。
【請求項25】
クロロトリフルオロエチレンが約96重量%〜約99.9重量%であり、フルオロモノマーが約4重量%〜約0.1重量%である、請求項23に記載のコポリマー。
【請求項26】
水分透過性が約0.25gm−mil/(100平方インチ・日)(9.8×10−8gm・m/(mm・日))以下である、請求項23に記載のコポリマー。
【請求項27】
水分透過性が約0.2gm−mil/(100平方インチ・日)(7.9×10−8gm・m/(mm・日)))以下である、請求項23に記載のコポリマー。
【請求項28】
水分透過性が約0.1〜約0.25gm−mil/(100平方インチ・日)(4.0〜9.8×10−8gm・m/(mm・日))以下である、請求項23に記載のコポリマー。
【請求項29】
フルオロモノマーがCFCF=CHである、請求項23に記載のコポリマー。
【請求項30】
異なるフッ素化されたコモノマーおよび/またはフッ素化されていないコモノマーを更に含む、請求項23に記載のコポリマー。
【請求項31】
コポリマーがフィルムの形態である、請求項23に記載のコポリマー。
【請求項32】
コポリマーの総重量を基準として、
約90重量%〜約99.9重量%のクロロトリフルオロエチレン;および
約10重量%〜約0.1重量%のフルオロモノマー;
を含み、実質的に水分を透過しない、水分バリアコポリマー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−197445(P2012−197445A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−120513(P2012−120513)
【出願日】平成24年5月28日(2012.5.28)
【分割の表示】特願2009−543224(P2009−543224)の分割
【原出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】