説明

バリ取り工具を備えたロボット

【課題】バリの取り残しや削りすぎを防止し、かつティーチングを容易にするバリ取り工具をアーム先端に備えたロボットを提供する。
【解決手段】フローティング機構が、圧縮空気が供給された低摩擦シリンダ3によって構成され、低摩擦シリンダ3の出力シャフト15の先端に電動工具2が支持され、通常状態で電動工具2の工具先端4の回転軸がロボットの先端軸21と同軸になるよう構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂(FRP等)の成形品のバリを削除する作業を行うロボットに用いるバリ取り工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりFRP等の合成樹脂成形品のバリ取りをする作業には、ロボットを用いることがある。ロボットの腕の先端部には切削性の良い刃物を装着した電動工具を取り付ける。そして合成樹脂成形品のマスターワーク(仕上げ見本)をもとにして刃物を移動させる動作軌跡をロボットにティーチングし、そのプレイバックにより合成樹脂成形品のバリを刃物で切除するものである(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−301156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来、ロボットによりバリ取り作業を行う場合には、合成樹脂成形品であるFRP製品の寸法誤差が問題となっている。FRP製品が薄肉で大型化すると、反り、ひずみ等により製品の寸法誤差が大きくなり、しかもバリ取り作業の対象となるFRP製品は必ずしも同等の誤差をもっているものでは無いため、ロボットに仕上げ見本をもとにしてティーチングし、プレイバックさせてバリ取り作業をさせた場合、バリの取り残しや削りすぎ(母材を削りすぎて見栄えが悪くなること)を生じ製品価値を損ねるという問題があった。 そこで、特許文献1のように工具にフローティング機構を備えてワークの誤差を吸収させてバリの取り残しや削りすぎを防ぐことが考えられていた。
しかし、特許文献1のようなフローティング機構は、圧縮ばねによって工具をフローティングさせているので、ロボットの姿勢によっては工具の自重によりワークへの加圧力が変化し、製品の品質に悪影響を及ぼすという問題点があった。また、特許文献1のようなフローティング機構はロボットのティーチングのし易さが考慮されておらず、一方、FRP製品は形状が複雑なものがあるため、特許文献1のようなフローティング機構及び工具の構成ではティーチング作業が難しいという問題点もあった。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、合成樹脂成形品のバリ取り作業においてバリの取り残しや、削りすぎを生ずるようなこと防止し、ロボットによるバリ取り作業によって良好にバリ取り仕上げを行えるようにし、かつ、ティーチングが容易なロボット用バリ取り工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したのである。
請求項1記載の発明は、合成樹脂の成形品のバリを除去するための電動工具と、前記電動工具を支持して前記電動工具が前記バリに弾性的に当接可能にするフローティング機構と、からなるバリ取り工具を手首に装着し、予め教示された動作を再生して前記バリを除去するロボットにおいて、前記フローティング機構が、圧縮空気が供給された低摩擦シリンダによって構成され、前記低摩擦シリンダの出力シャフトの先端に前記電動工具が支持されることを特徴としたバリ取り工具を備えたロボットとするものである。
請求項2記載の発明は、前記バリ取り工具は、前記低摩擦シリンダの前記出力シャフトの移動方向が前記ロボットのアームの先端軸に対して垂直になるよう設けられ、かつ、前記電動工具の工具先端の回転軸が前記ロボットの先端軸と同軸になるよう前記電動工具が前記出力シャフトに支持されたことを特徴とする請求項1記載のバリ取り工具を備えたロボットとするものである。
請求項3記載の発明は、前記圧縮空気は、電空レギュレータを介して前記低摩擦シリンダに供給されたことを特徴とする請求項1記載のバリ取り工具を備えたロボットとするものである。
請求項4記載の発明は、前記低摩擦シリンダは、前記出力シャフトが一定以上移動したときに信号を変化させるスイッチを備え、前記信号を検出したとき前記ロボットが停止されるように構成されたことを特徴とする請求項1記載のバリ取り工具を備えたロボットとするものである。
請求項5記載の発明は、前記低摩擦シリンダの前記出力シャフトは、前記電動工具を支持するとともに、前記工具先端が前記成形品に所定量以上に接近したときに前記成形品に当接して前記工具先端が前記成形品に接近しすぎないようにするガイドブロックを備えたことを特徴とする請求項1記載のバリ取り工具を備えたロボットとするものである。
請求項6記載の発明は、前記ガイドブロックは、前記出力シャフトに調整ピンを介して支持され、前記調整ピンによって前記ガイドブロックと前記工具先端との相対的な距離を調節可能に構成されたことを特徴とする請求項5記載のバリ取り工具を備えたロボットとするものである。
【発明の効果】
【0005】
以上、本発明によると、ロボット用いた合成樹脂(FRP等)の成形品のバリを削除する作業において、バリの取り残しや、削りすぎを生ずるようなこと防止することができる。また、ロボットアーム先端軸と電動工具の工具先端の回転軸とを同軸に位置することによりティーチングを容易にし、複雑な形状のバリ取りを可能にする。また、電空レギュレータを用いたロボット側からによる加圧力の制御により、ロボットの姿勢の変化による工具自重による加圧力の変化に対応し、安定した品質の製品の製造を提供している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0007】
図2は、本発明のバリ取り工具を備えたロボット1を示す外観側面図である。ロボット1は本実施例においては6軸の自由度を備えた垂直多関節ロボットを用いている。場合により7軸の自由度を備えたものを用いる。エンドミル等の切削性の高い刃物を装着した電動工具2をロボット1の手首に枢着している。
【0008】
図1はロボット1の手首部の詳細を示す側面図である。先端軸21はロボット1のアームの最先端の回転軸を示している。先端軸21によって回転するフランジ11の面に支柱12の一端が固定されている。支柱12は先端軸21と平行に複数設けられている。支柱12の他端にプレート13が固定されている。そして、プレート13の一部に固定部材16が固定され、固定部材16に低摩擦シリンダ3が支持されている。低摩擦シリンダ3は図示しないエアチューブなどから供給される圧縮空気によって動作するエアシリンダで、通常のエアシリンダよりも低摩擦シリンダ3の出力となるシャフト15の動作が低摩擦で動作するものを使用している。低摩擦シリンダ3は、シャフト15が図1の左右方向、すなわち先端軸21とは直角の方向になるよう固定部材16によって支持されている。シャフト15の先端にはベースプレート9が固定されている。ベースプレート9の一部にはツールホルダ7が固定されている。そして、ツールホルダ7によって電動工具2が固定されている。電動工具2はエンドミル等の切削性の高い刃物を装着した電動工具であって、工具先端4が回転してワークのバリを除去する工具である。ここで電動工具2の工具先端4は、ワークと接触していないとき、その回転軸が先端軸21と同一(同軸)となるようにツールホルダ7によって固定されている。つまり、通常状態においては、上記低摩擦シリンダ3とツールホルダ7とによって電動工具2の工具先端4はその回転軸が先端軸21と同一(同軸)となるように構成されている。このように構成することで、ロボット1をマスターワークに対して教示する場合、従来のような構成に比して工具先端4の位置も計算上把握しやすいことから、教示作業が簡単になる。
ところで、シャフト15は圧縮空気による作用で、常にエアシリンダの本体から突出する方向で維持されて、通常状態で上記のように先端軸21と同軸となるように工具先端4を保持しているが、工具先端4がワークのバリに当接してシャフト15をエアシリンダの本体側に押し戻す一定以上の力が加わると、図1の二点鎖線で示すように、電動工具2ら全体がエアシリンダ本体側に移動できるように構成されていて、ワークのバリに対して弾性的に接触できるように電動工具2のフローティング動作を行えるようになっている。
また、このフローティング動作が低摩擦シリンダ3がどのような姿勢であっても常に一定の力で行えるよう、低摩擦シリンダ3へ供給する圧縮空気は図示しない電空レギュレータによって供給圧力が一定の範囲内になるよう制御されている。つまり電空レギュレータ用いてロボット1の姿勢による工具の自重による加圧力の変化をロボット側から制御できる。このように、本発明では従来のように圧縮バネのような付勢手段でフローティング動作を行わないため、工具の姿勢によってフローティング動作が変化せず、安定したバリ取り動作を行える。
【0009】
ベースプレート9の一部には調整ピン6を介してガイドブロック5が延設されている。ガイドブロック5は工具先端4付近にまで延設されていて、調整ピン6によって工具先端4の回転軸に対して相対的に直角に摺動可能に構成されている。ガイドブロック5の先端は工具先端4の一部を隙間を介して取り囲むように形成されていて、工具先端4がワークに対して所定量以上に当接したとき、ガイドブロック5の先端がワークに当接することで工具先端4がワークに近づき過ぎないように作用してワークの削りすぎを防ぐ。一方、低摩擦シリンダ3の本体部にはオートスイッチ20が設置されていて、電動工具2すなわちシャフト15が低摩擦シリンダ3の本体側に異常に移動したときを検知する。オートスイッチ20が検知されるとロボット1が停止されるようロボット1の図示しない制御装置によって制御される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例を示すバリ取り工具を備えたロボットハンド部の詳細側面図
【図2】本発明のバリ取り工具を備えたロボットの外観側面図
【符号の説明】
【0011】
1 ロボット
2 電動工具
3 低摩擦シリンダ
4 工具先端
5 ガイドブロック
6 調整ピン
7 ツールホルダ
9 ベースプレート
11 フランジ
12 支柱
13 プレート
15 シャフト
16 固定部材
20 オートスイッチ
21 先端軸



【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂の成形品のバリを除去するための電動工具と、前記電動工具を支持して前記電動工具が前記バリに弾性的に当接可能にするフローティング機構と、からなるバリ取り工具を手首に装着し、予め教示された動作を再生して前記バリを除去するロボットにおいて、
前記フローティング機構が、圧縮空気が供給された低摩擦シリンダによって構成され、前記低摩擦シリンダの出力シャフトの先端に前記電動工具が支持されることを特徴としたバリ取り工具を備えたロボット。
【請求項2】
前記バリ取り工具は、前記低摩擦シリンダの前記出力シャフトの移動方向が前記ロボットのアームの先端軸に対して垂直になるよう設けられ、かつ、前記電動工具の工具先端の回転軸が前記ロボットの先端軸と同軸になるよう前記電動工具が前記出力シャフトに支持されたことを特徴とする請求項1記載のバリ取り工具を備えたロボット。
【請求項3】
前記圧縮空気は、電空レギュレータを介して前記低摩擦シリンダに供給されたことを特徴とする請求項1記載のバリ取り工具を備えたロボット。
【請求項4】
前記低摩擦シリンダは、前記出力シャフトが一定以上移動したときに信号を変化させるスイッチを備え、前記信号を検出したとき前記ロボットが停止されるように構成されたことを特徴とする請求項1記載のバリ取り工具を備えたロボット。
【請求項5】
前記低摩擦シリンダの前記出力シャフトは、前記電動工具を支持するとともに、前記工具先端が前記成形品に所定量以上に接近したときに前記成形品に当接して前記工具先端が前記成形品に接近しすぎないようにするガイドブロックを備えたことを特徴とする請求項1記載のバリ取り工具を備えたロボット。
【請求項6】
前記ガイドブロックは、前記出力シャフトに調整ピンを介して支持され、前記調整ピンによって前記ガイドブロックと前記工具先端との相対的な距離を調節可能に構成されたことを特徴とする請求項5記載のバリ取り工具を備えたロボット。




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−172692(P2009−172692A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−11884(P2008−11884)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】