バルブ装置
【課題】 全開側の圧力損失を極めて小さく抑えることのできるEGRバルブを提供する。
【解決手段】 EGR流路1内においてシャフト4を分断することと、円板弁7、第1、第2弁支持部8、9の3者をプレス成形品で略コ字形に設けて弁本体3を極めて薄くすることにより、全開側における流路抵抗を極めて小さくすることができ、超低圧損を実現できる。また、弁本体3をプレス成形品で設けることで、弁本体3のコストを低く抑えることができる。さらに、ベローズ14および3つの薄肉膨出部のバネ作用によって弁座リング12を全三次元方向へ変位可能に支持することと、弁座リング12に設けたテーパ面に円板弁7が調芯することにより、弁本体3をプレス成形品で設けることによる精度低下を吸収させることができ、閉弁時におけるEGRガスの漏れを確実に防ぐことができる。
【解決手段】 EGR流路1内においてシャフト4を分断することと、円板弁7、第1、第2弁支持部8、9の3者をプレス成形品で略コ字形に設けて弁本体3を極めて薄くすることにより、全開側における流路抵抗を極めて小さくすることができ、超低圧損を実現できる。また、弁本体3をプレス成形品で設けることで、弁本体3のコストを低く抑えることができる。さらに、ベローズ14および3つの薄肉膨出部のバネ作用によって弁座リング12を全三次元方向へ変位可能に支持することと、弁座リング12に設けたテーパ面に円板弁7が調芯することにより、弁本体3をプレス成形品で設けることによる精度低下を吸収させることができ、閉弁時におけるEGRガスの漏れを確実に防ぐことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁本体の回動により、流体通路の開閉、あるいは流体通路の通路面積を可変させるバタフライタイプのバルブ装置に関し、例えば、エンジン(燃料の燃焼により動力を発生させる内燃機関)の排出した排気ガスの一部を、吸気通路に戻すEGRバルブ等に用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
バタフライタイプのバルブ装置は、ハウジング(バルブハウジング)に形成された流体通路を垂直に横切るように貫通して配置されるシャフトと、流体通路内においてシャフトに固定される円板形状を呈する弁本体とを備え、シャフトをハウジングの外部より回動操作することで弁本体を流体通路内で回動させて、流体通路の開閉あるいは流体通路の通路面積を可変させるものである(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
しかしながら、従来のバタフライタイプのバルブ装置は、シャフトが流体通路を横切るように貫通して配置される構造であったため、弁本体が流体通路を大きく開く側(以下、全開側)において、シャフトが流体通路を塞ぐ割合(流体の流れ方向から見た流体通路内におけるシャフトの占める面積割合)が大きくなる。このため、従来のバタフライタイプのバルブ装置は、全開側において流体通路内のシャフトが圧力損失の上昇を招く不具合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−170735号公報
【特許文献2】特開2008−057431号公報
【特許文献3】特開2009−036108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、流体通路の中心線に対してシャフトが垂直に配置されるタイプにおいて、全開側の圧力損失を抑えることのできるバルブ装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔請求項1の手段〕
請求項1の手段のバルブ装置は、流体通路の中心線と、シャフトの中心線とが垂直に配置されるものである。
シャフトは、駆動力が付与される第1シャフトと、この第1シャフトの中心軸上に配置される第2シャフトとからなり、第1シャフトと第2シャフトとがハウジングに対して回転自在に支持されるとともに、第1シャフトと第2シャフトとが流体通路の内部で離れた状態で配置される。
また、弁本体は、流体通路を閉塞可能な円板弁と、この円板弁の外周側に設けられて円板弁と第1シャフトを連結する第1弁支持部と、この第1弁支持部とは異なった側における円板弁の外周側に設けられて円板弁と第2シャフトを連結する第2弁支持部とを備え、板面に沿う方向から見て、円板弁、第1、第2弁支持部の3者によって略コ字形状を成すように設けられている。
【0007】
このように設けられることにより、全開側において、(i)シャフトが流体通路を塞ぐ割合を抑えることができるとともに、(ii)弁本体が流体の流れ方向から見て略コ字形状を成すことで、弁本体が流体通路を塞ぐ割合を小さく抑えることができる。
このように、請求項1の手段を採用するバルブ装置は、流体通路の中心線に対してシャフトが垂直に配置されるタイプであるが、全開側においてシャフトおよび弁本体が流体通路を塞ぐ割合を小さくできるため、バルブ装置の圧力損失を低く抑えることができ、全開側において流体を大量に流すことができる。あるいは、全開側の圧力損失を低く抑えることができるため、バルブ装置を小型化することができる。
【0008】
〔請求項2の手段〕
請求項2の手段のバルブ装置における円板弁、第1、第2弁支持部の3者は、金属板のプレス成形によって一体に設けられる。
このように、弁本体を構成する円板弁、第1、第2弁支持部の3者を金属板のプレス成形品で設けることで、弁本体を極めて薄くすることができ、全開側の圧力損失を極めて小さくすることができる。
また、弁本体をプレス成形品で設けることができるため、弁本体のコストを低く抑えることができ、バルブ装置のコストを抑えることができる。
【0009】
また、請求項2の手段のバルブ装置は、弁本体が流体通路を閉塞する際に円板弁の外周部に当接して、流体通路と円板弁との隙間を閉塞する弁座リングを有した弁座部品を備えるものであり、弁座リングにおいて円板弁が当接する弁座シート面は、円板弁が配置される方向に向かって曲線的あるいは直線的に拡径するテーパ面に設けられている。
そして、弁座部品は、弁座リングを流体通路の流れ方向へ変位可能に支持する流れ方向変位支持手段(例えば、後述するベローズ)と、弁座リングを流体通路の全ての径方向へ変位可能に支持する径方向変位支持手段(例えば、後述する3箇所以上の薄肉膨出部)とを有するものである。
これにより、(i)流れ方向変位支持手段と径方向変位支持手段によって弁座リングが三次元の全方向へ変位可能に支持されることと、(ii)閉弁時に円板弁が弁座シート面(テーパ面)に着座することで生じる調芯作用とによって、弁本体をプレス成形品で設けることで生じた精度低下を吸収させることができる。
即ち、弁本体をプレス成形品で設けても、閉弁時のシール漏れを防ぐことができる。
【0010】
〔請求項3の手段〕
請求項3の手段のバルブ装置における第1、第2シャフトには、円板弁が流体通路を開く際に弁座リングと接触し、この弁座リングを円板弁から離れる側に押圧して移動させるシャフトカム部が形成される。
これにより、第1、第2シャフトが回動して、円板弁が流体通路を開く際に、第1、第2シャフトの回動に伴うシャフトカム部の作用によって、弁座リングが円板弁から離れる側へ移動して、弁座リングと円板弁の間に隙間が形成される。
このように、円板弁が流体通路を開く際に、弁座リングと円板弁の間に隙間が形成されることにより、弁座リングと円板弁の接触摩耗を回避することができるとともに、弁座リングと円板弁の接触抵抗が抑えられるので、円板弁(第1、第2シャフト)の回動に要するトルクを減らすことができる(例えば、電動アクチュエータを小型化することができる)。
また、開弁時に弁座リングと円板弁とが強制的に離されることで、弁本体が閉弁ロックする不具合を回避することができ、バルブ装置の信頼性を高めることができる。
【0011】
〔請求項4の手段〕
請求項4の手段のバルブ装置における流れ方向変位支持手段は、円板弁より流体上流側に配置されるベローズである。
そして、このベローズは、流体上流側において流体通路の内壁に形成された段差に係合する環状係合部を備え、この環状係合部より流体下流側にベローズの蛇腹部および弁座リングが配置される。
ベローズは、その内側にかかる圧力と外側にかかる圧力とが打消合う圧力キャンセル構造になっているが、ベローズの凹凸が流体の流れの影響を受ける。これにより、(i)環状係合部が段差に押し付けられて、環状係合部と段差の間のシール性が若干高まる作用が得られるとともに、(ii)弁座リングが円板弁側に押し付けられて、円板弁と弁座リングとのシール性が若干高まる作用が得られる。
一方、ベローズによる圧力キャンセル構造とは別に、(i)環状係合部に流体の受圧面を確保することで、流体圧の影響により環状係合部が段差に押し付けられて、環状係合部と段差の間のシール性を高める作用が得られるとともに、(ii)弁座リングに流体の受圧面を確保することで、流体圧の影響により弁座リングが円板弁側に押し付けられて、円板弁と弁座リングとのシール性を高める作用が得られる。
即ち、流体の流れや圧力を利用したセルフシールを得ることができる。
【0012】
〔請求項5の手段〕
請求項5の手段のバルブ装置における径方向変位支持手段は、弁座リングの外周側に設けた3箇所以上の薄肉膨出部によって設けられるものであり、この薄肉膨出部によるバネ作用によって弁座リングが流体通路の全ての径方向へ変位可能に支持される。
このように、3箇所以上の薄肉膨出部を介して弁座リングが支持される構造であるため、弁座リングの耐振動性を向上させることができる。
【0013】
〔請求項6の手段〕
請求項6の手段のバルブ装置における弁座部品は、表面が円滑な樹脂材料{例えばテフロン(登録商標)等}によって一部品で設けられている。
これにより、弁本体と弁座リングとの接触抵抗を下げることができる。また、上記請求項3を採用する場合では、シャフトカム部と弁座リングとの接触抵抗を下げることができる。
このように、弁座リングに対する接触抵抗を減らすことができるため、円板弁(第1、第2シャフト)の回動に要するトルクを減らすことができる(例えば、電動アクチュエータを小型化することができる)。
【0014】
また、弁座シート面にデポジット等の不純物が付着する不具合が抑えられることにより、デポジット等の不純物の付着による弁本体の回動抵抗の増加が抑えられることになり、その結果、円板弁(第1、第2シャフト)の回動に要するトルクを減らすことができる(例えば、電動アクチュエータを小型化することができる)。
同様に、弁座シート面の溌水効果により水分の付着が抑えられることにより、付着した水分が凍結して起きる弁本体の回動抵抗の増加が抑えられることになり、その結果、円板弁(第1、第2シャフト)の回動に要するトルクを減らすことができる(例えば、電動アクチュエータを小型化することができる)。
【0015】
〔請求項7の手段〕
請求項7の手段のバルブ装置は、円板弁において弁座リングに当接する弁側当接部が、球面形状に設けられている。
これにより、円板弁が弁座リングに接触して回動する範囲において、円板弁の回動がスムーズになり、円板弁(第1、第2シャフト)の回動に要するトルクを減らすことができる(例えば、電動アクチュエータを小型化することができる)。
また、閉弁時における円板弁と弁座リングの接触面積が大きくなり、円板弁における弁座リングとの接触部の摩耗を抑えることができる。
【0016】
〔請求項8の手段〕
請求項8の手段のバルブ装置は、弁側当接部よりさらに外周に設けられる円板弁の外周先端が、全周に亘ってナイフエッジ形状に設けられている。
このように設けられることにより、開弁時に円板弁が流体から受ける影響を小さくすることができる。これによって、開弁状態において円板弁(第1、第2シャフト)の回動に要するトルクを減らすことができる(例えば、電動アクチュエータを小型化することができる)。
【0017】
〔請求項9の手段〕
請求項9の手段のバルブ装置は、上述した請求項2の「流れ方向変位支持手段」と「径方向変位支持手段」の2つの機能を、1つの「径方向ベローダイヤフラム」にて行なうものである。
具体的に、この請求項9の手段は、上記請求項2と同様、円板弁、第1、第2弁支持部の3者が、金属板のプレス成形によって一体に設けられるものであり、弁本体を構成する円板弁、第1、第2弁支持部の3者を金属板のプレス成形品で設けることで、弁本体を極めて薄くすることができ、全開側の圧力損失を極めて小さくすることができる。
また、弁本体をプレス成形品で設けることができるため、弁本体のコストを低く抑えることができ、バルブ装置のコストを抑えることができる。
【0018】
また、請求項9の手段のバルブ装置は、上記請求項2と同様、弁本体が流体通路を閉塞する際に円板弁の外周部に当接して、流体通路と円板弁との隙間を閉塞する弁座リングを有した弁座部品を備えるものであり、弁座リングにおいて円板弁が当接する弁座シート面は、円板弁が配置される方向に向かって曲線的あるいは直線的に拡径するテーパ面に設けられている。
そして、請求項9の手段の弁座部品は、上記請求項2の「流れ方向変位支持手段」および「径方向変位支持手段」に代わり、「径方向ベローダイヤフラム」を設けたものである。この径方向ベローダイヤフラムは、弁座リングの外径側に設けられ、径方向に弾性変形可能な蛇腹部を成し、弁座リングを流体通路の流れ方向および流体通路の全ての径方向へ変位可能に支持するものである。
径方向ベローダイヤフラムによって、弁座リングが三次元の全方向へ変位可能に支持される。そして、閉弁時に円板弁が弁座シート面(テーパ面)に着座することで、円板弁に対して弁座リングを調芯させることができる。
その結果、弁本体をプレス成形品で設けることで生じた精度低下を吸収させることができる。即ち、弁本体をプレス成形品で設けても、閉弁時のシール漏れを防ぐことができる。
【0019】
〔請求項10の手段〕
請求項10の手段は、径方向ベローダイヤフラムによって径方向に支持される弁座リングを円板弁に当接させる手段として、「流れ方向スラスト手段」を備える。
この流れ方向スラスト手段は、弁座リングの流体下流側の端部を流体下流側へズラすことで、少なくとも閉弁時に弁座リングを円板弁に圧接させる手段である。
このように、流れ方向スラスト手段によって、弁座リングが円板弁に圧接するように設けられるため、上記請求項9で説明したように、閉弁時に円板弁が弁座シート面(テーパ面)に着座することができ、円板弁に対して弁座リングを調芯させることができる。
【0020】
〔請求項11の手段〕
請求項11の手段は、上記請求項3と同様の技術であり、第1、第2シャフトには、円板弁が流体通路を開く際に弁座リングと接触し、この弁座リングを円板弁から離れる側に押圧して移動させるシャフトカム部が形成される。
これにより、上記請求項3と同様、第1、第2シャフトが回動して、円板弁が流体通路を開く際に、第1、第2シャフトの回動に伴うシャフトカム部の作用によって、弁座リングが円板弁から離れる側へ移動して、弁座リングと円板弁の間に隙間が形成される。
このように、円板弁が流体通路を開く際に、弁座リングと円板弁の間に隙間が形成されることにより、弁座リングと円板弁の接触摩耗を回避することができるとともに、弁座リングと円板弁の接触抵抗が抑えられるので、円板弁(第1、第2シャフト)の回動に要するトルクを減らすことができる(例えば、電動アクチュエータを小型化することができる)。
また、開弁時に弁座リングと円板弁とが強制的に離されることで、弁本体が閉弁ロックする不具合を回避することができ、バルブ装置の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】全開時においてEGRガスの流れ方向から見たEGRバルブの概略断面図、および全閉時に側面方向から見たEGRバルブの概略断面図である(実施例1)。
【図2】弁座部品を流体の流れ方向から見た正面図、および側面断面図である(実施例1)。
【図3】全閉時および半開時におけるEGRバルブの作動説明図である(実施例1)。
【図4】図3(b)のA線に沿う断面図であってシャフトカム部のカム形状を示す断面図である(実施例1)。
【図5】図3(a)のB線に沿う断面図、および丸C内に示す要部拡大図であって円板弁の外周先端に設けられるナイフエッジ形状の説明図である(実施例1)。
【図6】全開時においてEGRガスの流れ方向から見たEGRバルブの概略断面図、および全閉時に側面方向から見たEGRバルブの概略断面図である(実施例2)。
【図7】弁座部品の要部断面図である(実施例2)。
【図8】全閉時および半開時におけるEGRバルブの作動説明図である(実施例2)。
【図9】図8(b)のD線に沿う断面図であってシャフトカム部のカム形状を示す断面図である(実施例2)。
【図10】弁座部品の要部断面図である(実施例3)。
【図11】弁座部品の要部断面図である(実施例4)。
【図12】EGRバルブの組み立て前を示す分解図である(実施例5)。
【図13】EGRバルブの組み立て後を示す組付完了図、および図13(a)のE−E線に沿う断面図である(実施例5)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図面を参照して[発明を実施するための形態]を説明する。
○EGRバルブ(バルブ装置の一例)は、エンジンの排気通路と吸気通路を連通して、排気ガスが通過可能なEGR流路1(流体通路の一例)を内部に形成するハウジング2と、EGR流路1内に配置され、EGR流路1の内部で回動変位することによってEGR流路1の開閉および開度調整(通路面積の可変)を行なう弁本体3と、ハウジング2に回転自在に支持されて弁本体3を回動駆動するシャフト4とを具備し、EGR流路1の中心線と、シャフト4の中心線とが垂直に配置されるものである。即ち、このEGRバルブは、シャフト4がEGR流路1を垂直に横切るタイプである。
【0023】
○このEGRバルブにおけるシャフト4は、外部より回動方向の駆動力が付与される第1シャフト5と、この第1シャフト5の中心軸上に配置される第2シャフト6とからなり、第1シャフト5と第2シャフト6とがEGR流路1の内部で離れた状態で配置されるものである。
○一方、EGRバルブにおける弁本体3は、円板形状を呈してEGR流路1を閉塞可能な円板弁7と、この円板弁7の外周側に設けられて円板弁7と第1シャフト5を連結する第1弁支持部8と、この第1弁支持部8とは異なった側における円板弁7の外周側に設けられて円板弁7と第2シャフト6を連結する第2弁支持部9とを備えるものであり、円板弁7の板面に沿う方向から見て(全開時にEGRガスが流れる方向から見て)、円板弁7、第1、第2弁支持部8、9の3者によって略コ字形状を成すものである。
【実施例1】
【0024】
次に、本発明を車両エンジンに搭載されるEGR装置のEGRバルブに適用した実施例1を、図1〜図5参照して説明する。なお、本実施例において、上記[発明を実施するための形態]と同一符号は、同一機能物を示すものである。
〔EGR装置の説明〕
EGR装置は、エンジンの排出した排気ガスの一部をEGRガスとしてエンジンの吸気側に戻すことで、吸気の一部に不燃ガスであるEGRガスを混入させてエンジン燃焼室の燃焼温度を抑え、効果的に窒素酸化物(NOx)の発生を抑える周知の技術である。
EGR装置は、排気通路を流れる排気ガスの一部を吸気通路へ戻すEGR流路1と、このEGR流路1の開度調整を行なうEGRバルブとを少なくとも備え、このEGRバルブが車両の走行状態に応じてECU(エンジン・コントロール・ユニットの略)によって開度制御される。
【0025】
なお、本発明が適用されるEGRバルブは、吸気通路における高負圧発生範囲(スロットルバルブの吸気下流側)へEGRガスを戻す高圧EGR装置に搭載される高圧EGRバルブであっても良いし、吸気通路における低負圧発生範囲(スロットルバルブの吸気上流側:例えばターボチャージャ搭載車両であればコンプレッサの吸気上流側)へEGRガスを戻す低圧EGR装置に搭載される低圧EGRバルブであっても良い。
【0026】
次に、図1を参照して、EGRバルブを説明する。なお、以下では、図1の図示上側を上、図示下側を下と称して説明するが、この上下は実施例の説明のための方向であり、限定されるものではない。
EGRバルブは、内部にEGR流路1を形成するハウジング2と、EGR流路1中に配置される弁本体3と、この弁本体3を支持するシャフト4と、このハウジング2の外部よりシャフト4に回転力を付与する電動アクチュエータ10とを具備する。
【0027】
ハウジング2の主要部は、アルミニウム合金のダイキャスト製であり、高温のEGRガスが流れるEGR流路1の内壁が耐熱性、耐腐食性に優れた部材(例えば、ステンレス鋼)によって設けられている。
弁本体3は、バタフライ弁であり、シャフト4の回動位置に応じてEGR流路1を開閉可能であるとともに、EGR流路1の開口面積を可変可能であり、EGR流路1の開口面積を可変することで吸気通路へ戻されるEGR量の調整を行なう。この弁本体3の詳細は、後述する。
【0028】
シャフト4は、弁本体3をEGR流路1中において回転可能に支持するものであり、EGR流路1の上下に配置された軸受11によって回転自在に支持されている。このシャフト4の詳細については、後述する。なお、軸受11には、EGRガスの漏れ出しを防ぐシールドタイプが用いられている。
上下の軸受11は、ボールベアリング、ローラベアリング等の転がりベアリング、あるいはメタルベアリング等の滑りベアリングであり、ハウジング2に形成されたベアリング収容筒の内部に圧入等の結合手段によって固定されて、内周に挿通されたシャフト4を回転自在に支持する。
【0029】
電動アクチュエータ10は、ハウジング2の上部に固定されて、シャフト4を回転駆動するものであり、通電により回転動力を発生する周知の電動モータを搭載している。なお、電動モータの一例として、通電による回転角度制御が可能なDCモータを用いたものである。
ここで、電動アクチュエータ10は、電動モータだけで設けられるもの(電動モータの出力軸によりシャフト4を直接駆動するもの)であっても良いし、電動モータとシャフト4の間に減速機構(電動モータの回転出力を減速して、減速により増大化した回転トルクをシャフト4に伝えるもので、例えば歯車減速機構)を介在するものであっても良い。
【0030】
〔実施例1の背景技術1〕
この実施例1のEGRバルブは、図1(b)に示すように、EGR流路1の中心線と、弁本体3を駆動するシャフト4の中心線とが垂直に配置される。
このように、EGR流路1に対してシャフト4が垂直配置される場合、従来のEGRバルブでは、シャフト4がEGR流路1を横切るように貫通して配置される構造であったため、全開側においてシャフト4がEGR流路1を塞ぐ割合が大きくなってしまい、通気抵抗の増大によって全開側のEGR量が低下する不具合があった。
【0031】
〔実施例1の特徴技術1〕
この実施例1は、上記「背景技術1」の問題点を解決するために、以下に示す技術を採用している。
弁本体3を支持するシャフト4は、ハウジング2の上部に配置された電動アクチュエータ10より回動方向の駆動力が付与される第1シャフト5と、この第1シャフト5の中心軸上に配置される第2シャフト6とからなり、図1に示すように、第1シャフト5と第2シャフト6とがEGR流路1の内部で離れた状態で配置されるものである。
【0032】
第1シャフト5は、耐熱性、耐腐食性に優れた部材(例えば、ステンレス鋼)よりなる円柱棒状を呈し、ハウジング2の上側において上下方向に延びて配置されるものであり、ハウジング2に取り付けられた軸受11によって回転自在に支持されるものである。この第1シャフト5の下端には、弁本体3の上部(具体的には、後述する第1弁支持部8)と一体に回転するように接続するための連結手段として、一段細くなった第1二面幅5aが設けられている。
【0033】
第2シャフト6も、第1シャフト5と同様、耐熱性、耐腐食性に優れた部材(例えば、ステンレス鋼)よりなる円柱棒状を呈するものであり、ハウジング2の下側において上下方向に延びて配置され、ハウジング2に取り付けられた軸受11によって回転自在に支持されるものである。この第2シャフト6の上端にも、弁本体3の下部(具体的には、後述する第2弁支持部9)と一体に回転するように接続するための連結手段として、一段細くなった第2二面幅6aが設けられている。
なお、第1、第2シャフト5、6に設けられるシャフトカム部16については後述する。
【0034】
弁本体3は、第1、第2シャフト5、6の間に設けられるものであって、EGR流路1を開閉可能な円板弁7と、この円板弁7の上部において第1シャフト5の下端に連結される第1弁支持部8と、円板弁7の下部において第2シャフト6の上端に連結される第2弁支持部9とからなり、図1(a)に示すように円板弁7の板面に沿う方向から見て、円板弁7、第1、第2弁支持部8、9の3者によって略コ字形状を成すものである。
【0035】
円板弁7は、厚み寸法の小さい円板体であり、図1(b)に示すようにEGR流路1の中心線に対して垂直に配置されることで、EGR流路1を閉塞するものである。
第1弁支持部8は、円板弁7の端部に連続して円板弁7と一体に設けられた厚み寸法の小さい板材であり、第1弁支持部8の板面が円板弁7に対して垂直方向に延びるように設けられている。この第1弁支持部8は、第1シャフト5の下端と一体に回転するように連結されるものであり、第1弁支持部8には、第1シャフト5の下端と一体に回転する連結手段として、第1シャフト5の下端に形成された第1二面幅5aと嵌合する略長丸の第1貫通穴8aが形成されている。
【0036】
第2弁支持部9は、第1弁支持部8とは異なった側における円板弁7の端部において、円板弁7と連続して円板弁7と一体に設けられた厚み寸法の小さい板材であり、第2弁支持部9の板面が第1弁支持部8と対向し、且つ第2弁支持部9の板面が円板弁7に対して垂直に延びるように設けられている。この第2弁支持部9は、第2シャフト6の上端と一体に回転するように連結されるものであり、第2弁支持部9には、第2シャフト6の上端と一体に回転する連結手段として、第2シャフト6の上端に形成された第2二面幅6aと嵌合する略長丸の第2貫通穴9aが形成されている。
【0037】
なお、第1二面幅5aと第1貫通穴8a、および第2二面幅6aと第2貫通穴9aは、EGRバルブの組付け時において、圧入嵌合(あるいはルーズ嵌合)の後、溶接されて固定されるものである。
【0038】
(実施例1の効果1)
この実施例1では、上記の特徴技術1を採用することにより、EGRバルブの全開側(全開を含む)において、(i)EGR流路1内においてシャフト4が分断されているため、EGR流路1の開口面積をシャフト4が塞ぐ割合を減らすことができるとともに、(ii)弁本体3をEGRガスの流れ方向から見て略コ字形状に設け、且つ弁本体3において略コ字形状を成す円板弁7、第1、第2弁支持部8、9の板厚を薄く設けたことでEGR流路1の開口面積を弁本体3が塞ぐ割合を極めて小さく減らすことができる。これにより、EGRバルブの全開側におけるEGR流路1内の流路抵抗を極めて小さくすることができ、全開側におけるEGRバルブの圧力損失を極めて小さくすることができる。
即ち、EGRバルブを低圧損化することができ、全開側でEGRガスを大量に流すことができる。あるいは、全開側でEGRガスを大量に流すことができるため、EGRバルブを小型化することができる。
【0039】
〔実施例1の特徴技術2〕
この実施例1の弁本体3は、薄板金属(例えば、ステンレス薄板)をプレス加工(打ち抜きと曲折加工)によって略コ字形状の円板弁7、第1、第2弁支持部8、9の3者を一体に設けたものであり、弁本体3は金属板のプレス成形品によって設けられる。
このように、弁本体3を構成する円板弁7、第1、第2弁支持部8、9を金属板のプレス成形品によって設けることで、弁本体3を極めて薄くすることができ、全開側の圧力損失を極めて小さくすることができる。
また、弁本体3をプレス成形品で設けることで、弁本体3のコストを低く抑えることができ、結果的にEGRバルブのコストを抑えることができる。
【0040】
〔実施例1の特徴技術3〕
この実施例1のEGRバルブは、閉弁時(弁本体3がEGR流路1を閉塞する際)に円板弁7の外周部に当接してEGRガスの漏れを防ぐ弁座リング12(シールリング)を有した弁座部品13を備えている。
弁座リング12において円板弁7が当接する弁座シート面12a(バルブ着座面)は、図1(b)に示すように、円板弁7が配置される方向(EGRガス流の下流方向)に向かって直線的に拡径するテーパ面に設けられている。
【0041】
一方、弁座部品13には、(i)図1(b)に示すように、弁座リング12をEGR流路1におけるEGRガスの流れ方向へ変位可能に支持する流れ方向変位支持手段(具体的には、後述するようにベローズ14よりなる)が設けられるとともに、(ii)図2に示すように、弁座リング12をEGR流路1の全ての径方向へ変位可能に支持する径方向変位支持手段15(具体的には、後述するように3つの薄肉膨出部15aよりなる)が設けられる。
【0042】
これにより、(i)流れ方向変位支持手段(ベローズ14)と、径方向変位支持手段15によって弁座リング12が全三次元方向(三次元を示すX軸Y軸Z軸の全方向)へ変位可能に支持されるとともに、(ii)閉弁時に円板弁7が弁座シート面12aのテーパ面に着座することで生じる調芯作用によって、弁本体3をプレス成形品で設けることで生じた精度低下を吸収させることができる。
即ち、弁本体3をプレス成形品で設けても、閉弁時にEGRバルブにおいてEGRガスが漏れる不具合を回避することができ、信頼性を高めることができる。
【0043】
〔実施例1の特徴技術4〕
この実施例1における第1、第2シャフト5、6には、図3に示すように、円板弁7がEGR流路1を開く際に弁座リング12と接触して、この弁座リング12を円板弁7から離れる側に押圧して移動させるシャフトカム部16が形成されている。
このシャフトカム部16は、弁座リング12に対向する部位の第1、第2シャフト5、6に設けられる。具体的に、シャフトカム部16は、弁本体3がEGR流路1を少量開く開度から所定の開度に至る範囲においてシャフトカム部16が弁座リング12を上流側へ移動させるものであり、円板弁7の開度と、弁座リング12がEGRガスの上流側に押されて移動する移動距離との関係は、図4(a)、(b)に示すように、シャフトカム部16の形状(カムプロフィール)によって決定されるものである。
【0044】
このように、第1、第2シャフト5、6にシャフトカム部16を設けることにより、第1、第2シャフト5、6が回動して、円板弁7がEGR流路1を開く際に、第1、第2シャフト5、6の回動に伴うシャフトカム部16の作用によって、弁座リング12が円板弁7から離れる側へ移動して{図3(b’)の矢印F参照}、弁座リング12と円板弁7の間に隙間が形成される。
このように、円板弁7がEGR流路1を開く際に、弁座リング12と円板弁7の間に隙間が形成されることにより、円板弁7と弁座リング12の接触摩耗を回避することができるとともに、円板弁7と弁座リング12の接触抵抗が抑えられることで、円板弁7を駆動するために第1シャフト5の回動に要するトルクを減らすことができ、電動アクチュエータ10を小型化することができる。
また、開弁時に弁座リング12と円板弁7とが強制的に離されることで、弁本体3が閉弁ロックする不具合を回避することができ、EGRバルブの信頼性を高めることができる。
【0045】
〔実施例1の特徴技術5〕
この実施例1は、流れ方向変位支持手段としてベローズ14を用いたものである。ベローズ14は、円板弁7よりEGRガス流の上流側に配置され、弁座リング12と一体に設けられた蛇腹形状のフレキシブル配管である。
このベローズ14のEGRガス流の上流側には、図3(a)に示すように、ハウジング2内に存在するEGR流路1の内壁に形成された段差1a(EGRガス流の上流側に向かって拡径する部位の段差)に係合する環状係合部14aが設けられており、環状係合部14aが段差1aに着座することで、EGR流路1と弁座部品13との間の隙間がシールされる構造を採用している。
【0046】
ベローズ14は、その内側にかかる圧力と外側にかかる圧力とが打消合う圧力キャンセル構造{図3(a)における範囲α参照}になっているが、ベローズ14の凹凸によってEGRガスの流れの影響を受ける。
これにより、(i)環状係合部14aが段差1aに押し付けられて、環状係合部14aと段差1aとのシール性が若干高まる作用が得られるとともに、(ii)弁座リング12が円板弁7側に押し付けられて、円板弁7と弁座リング12とのシール性が若干高まる作用が得られる。
一方、ベローズ14による圧力キャンセル構造とは別に、(i)環状係合部14aに流体の受圧面{図3(a)における範囲β参照}を確保することで、EGRガス圧の影響により環状係合部14aが段差1aに押し付けられて、環状係合部14aと段差1aとのシール性を高めることができる。
あるいは、(ii)弁座リング12に流体の受圧面{図3(a)における範囲γ参照}を確保することで、EGRガス圧の影響により弁座リング12が円板弁7側に押し付けられて、円板弁7と弁座リング12とのシール性を高めることができる。
このように、EGRガスの流れや圧力を利用したセルフシールを採用することにより、閉弁時にEGRバルブにおいてEGRガスが漏れる不具合を無くすことができ、信頼性を高めることができる。
【0047】
〔実施例1の特徴技術6〕
この実施例1における径方向変位支持手段15は、図2に示すように、弁座リング12の外周側に略等間隔に配置した3箇所の薄肉膨出部15aによって設けられる。各薄肉膨出部15aは、図2(a)に示すように、径方向へ円弧状に膨らむ膨出部の内側をナイフ型で打ち抜き、厚み(径方向の厚みと、流体流れ方向の厚みの両方)を薄く設けることでバネ性を持たせたものである。そして、弁座リング12をEGR流路1内における所定の組付位置に挿入配置することで、3箇所の薄肉膨出部15aがEGR流路1の内壁によって内側へ少し弾性変形した状態で組付けられるものであり、この薄肉膨出部15aによるバネ作用によって弁座リング12がEGR流路1の全ての径方向へ変位可能に支持される。
このように、EGR流路1の内壁の内側において3つの薄肉膨出部15aを介して弁座リング12が支持される構造であるため、弁座リング12の耐振動性を向上させることができ、振動による開弁(閉弁時におけるEGRガスの漏れ)を防ぐことができる。
【0048】
〔実施例1の特徴技術7〕
この実施例1の弁座部品13は、表面が円滑な樹脂材料{例えばテフロン(登録商標)や、耐熱性に優れたナイロン樹脂等}によって一部品で設けられている。即ち、3つの薄肉膨出部15aを含む弁座リング12や、環状係合部14aを含むベローズ14が、1つの樹脂材料により一体に設けられている。
このように、表面が円滑な樹脂材料によって弁座部品13が設けられることにより、弁本体3と弁座リング12との接触抵抗を下げることができるとともに、シャフトカム部16と弁座リング12との接触抵抗を下げることができ、電動アクチュエータ10を小型化することができる。
【0049】
また、弁座シート面12aにデポジットが付着する不具合が抑えられる。これにより、デポジットの付着による弁本体3の回動抵抗の増加や弁本体3の閉弁固着が抑えられることになり、電動アクチュエータ10を小型化することができる。
あるいは、弁座シート面12aへの水滴の付着が防がれるため、付着した水滴が凍結して起きる弁本体3の回動抵抗の増加が抑えられることになり、電動アクチュエータ10を小型化することができる。
【0050】
〔実施例1の特徴技術8〕
この実施例1の円板弁7は、閉弁時において弁座リング12に当接する弁側当接部7a(弁座シート面12aに着座する部分)が、球面形状に設けられている。
これにより、円板弁7が弁座リング12に接触して回動する範囲(閉弁状態から開弁側に僅かに開いた回動範囲)において円板弁7の駆動トルクを小さくでき、電動アクチュエータ10を小型化することができる。
また、閉弁時における円板弁7と弁座リング12の接触面積が大きくなり、円板弁7と弁座シート面12aの接触摩耗を抑えることができる。
【0051】
〔実施例1の特徴技術9〕
この実施例1の円板弁7は、図5(b)に示すように、弁側当接部7aよりさらに外周に存在する外周先端7bが、全周に亘ってナイフエッジ形状(ナイフの刃のように尖った形状)に設けられている。このナイフエッジ形状は、円板弁7をプレス形成する際に、プレス加工によって同時に加圧形成され、塑性変形して設けられたものである。
このように、円板弁7の外周先端7bがナイフエッジ形状に設けられることにより、開弁時において、円板弁7がEGRガスの流れから受ける影響を小さくすることができる。これによって、電動アクチュエータ10を小型化することができる。
【実施例2】
【0052】
図6〜図9を参照して実施例2を説明する。なお、以下の各実施例において、上記実施例1と同一符号は、同一機能物を示すものである。
〔実施例2の特徴技術1〕
実施例2は、上記実施例1と弁座部品13が異なるものである。
この実施例2の弁座部品13は、実施例1と同様、閉弁時(弁本体3がEGR流路1を閉塞する際)に円板弁7の外周部に当接してEGRガスの漏れを防ぐ弁座リング12を備えている。
弁座リング12において円板弁7が当接する弁座シート面12aは、実施例1と同様、円板弁7が配置される方向(EGRガス流の下流方向)に向かって直線的に拡径するテーパ面に設けられている。なお、弁座シート面12aは、円板弁7の弁側当接部7a(球面形状)と同一の球面形状(曲面)に設けて、シール性を向上させても良い。
【0053】
実施例2の弁座部品13は、上記実施例1における流れ方向変位支持手段(ベローズ14)と径方向変位支持手段15(3つの薄肉膨出部15a)の機能を果たす径方向ベローダイヤフラム21を備えている。
この径方向ベローダイヤフラム21は、弁座リング12の外径側に設けられ、径方向に弾性変形可能な蛇腹部を成し、弁座リング12をEGRガス流の流れ方向およびEGR流路1の全ての径方向へ変位可能に支持するものである。具体的な径方向ベローダイヤフラム21の一例は、図7に示すように、断面V字形を呈する弾性部材(この実施例2では樹脂製、後述する実施例3では金属製)よりなるリング体を内径側から外径側へ向けて複数連続させた構造を採用するものである。
【0054】
これによって、弁座リング12は、径方向ベローダイヤフラム21によって全三次元方向(三次元を示すX軸Y軸Z軸の全方向)へ変位可能に支持される。この結果、実施例1と同様、閉弁時に円板弁7が弁座シート面12aのテーパ面に着座することで生じる調芯作用によって、弁本体3をプレス成形品で設けることで生じた精度低下を吸収させることができる。
【0055】
また、弁座部品13には、径方向ベローダイヤフラム21の外径側に固定リング22が設けられている。この固定リング22は、EGR流路1の内壁に固定される固定部であり、例えばEGR流路1の内壁における所定の組付位置に圧入されることで弁座部品13がハウジング2に組付けられるものである。
【0056】
このように、実施例2の弁座部品13は、弁座リング12、径方向ベローダイヤフラム21および固定リング22から構成され、これらの弁座リング12、径方向ベローダイヤフラム21および固定リング22は、1つの部材で設けられている。
具体的に、この実施例2では、弁座リング12、径方向ベローダイヤフラム21および固定リング22を、弾性変形可能で耐熱性および耐油性に優れた樹脂部材(ゴムを含む)によって、一体に設けたものである。
【0057】
〔実施例2の特徴技術2〕
実施例2の弁座部品13は、径方向ベローダイヤフラム21によって径方向に支持される弁座リング12を円板弁7に当接させる手段として、流れ方向スラスト手段23を備えている。
この流れ方向スラスト手段23は、弁座リング12のEGRガス流の下流側の端部を、径方向ベローダイヤフラム21の最外径のEGRガスの下流側の端部より、EGRガス流の下流側へズラして配置させる手段である。
【0058】
この実施例2では、流れ方向スラスト手段23を径方向ベローダイヤフラム21に設けている。具体的に、実施例2の径方向ベローダイヤフラム21は、無負荷状態において、径方向ベローダイヤフラム21の外径側より内径側が、EGRガス流の下流側へ位置ズレするように成形されている。
これにより、閉弁時に弁座リング12の弁座シート面12aが円板弁7に押し付けられ、閉弁時において円板弁7が弁座シート面12aに着座するとともに、円板弁7に対して弁座リング12を調芯させることができる。
【0059】
〔実施例2の特徴技術3〕
この実施例2の弁座部品13は、弁座リング12および径方向ベローダイヤフラム21がEGRガス流の影響を受ける。このため、図8(a)に示すように、閉弁時に円板弁7が弁座シート面12aに着座する状態において、弁座リング12、径方向ベローダイヤフラム21がEGRガス圧を受け、弁座リング12が円板弁7に押し付けられる作用が生じ、円板弁7と弁座リング12のシール性を高めることができる。
このように、EGRガスの圧力を利用したセルフシールを採用するため、閉弁時にEGRバルブにおいてEGRガスが漏れる不具合を無くすことができ、信頼性を高めることができる。
【0060】
〔実施例2の特徴技術4〕
実施例2における第1、第2シャフト5、6には、実施例1と同様の機構として、図8に示すように、円板弁7がEGR流路1を開く際に弁座リング12と接触して、この弁座リング12を円板弁7から離れる側に押圧して移動させるシャフトカム部16が形成されている。
このシャフトカム部16は、弁座リング12に対向する部位の第1、第2シャフト5、6に設けられる。具体的に、シャフトカム部16は、弁本体3がEGR流路1を少量開く開度から所定の開度に至る範囲においてシャフトカム部16が弁座リング12を上流側へ移動させるものであり、円板弁7の開度と、弁座リング12がEGRガスの上流側に押されて移動する移動距離との関係は、図9(a)、(b)に示すように、シャフトカム部16の形状(カムプロフィール)によって決定されるものである。
【0061】
このように、第1、第2シャフト5、6にシャフトカム部16を設けることにより、第1、第2シャフト5、6が回動して、円板弁7がEGR流路1を開く際に、第1、第2シャフト5、6の回動に伴うシャフトカム部16の作用によって、弁座リング12が円板弁7から離れる側へ移動して{図8(b’)の矢印F参照}、弁座リング12と円板弁7の間に隙間が形成される。
このように、円板弁7がEGR流路1を開く際に、弁座リング12と円板弁7の間に隙間が形成されることにより、円板弁7と弁座リング12の接触摩耗を回避することができるとともに、円板弁7と弁座リング12の接触抵抗が抑えられることで、円板弁7を駆動するために第1シャフト5の回動に要するトルクを減らすことができ、電動アクチュエータ10を小型化することができる。
また、開弁時に弁座リング12と円板弁7とが強制的に離されることで、弁本体3が閉弁ロックする不具合を回避することができ、EGRバルブの信頼性を高めることができる。
【実施例3】
【0062】
図10を参照して実施例3を説明する。
〔実施例3の特徴技術1〕
上記実施例2では、図10(a)に示すように、弁座部品13を樹脂で設ける例を示した。即ち、弁座リング12、径方向ベローダイヤフラム21および固定リング22を、樹脂で一体成形する例を示した。
これに対し、この実施例3では、図10(b)に示すように、弁座部品13を弾性変形可能な金属板(金属スプリング)によって設けるものである。即ち、弁座リング12、径方向ベローダイヤフラム21および固定リング22を、金属スプリングによって一体に設けるものである。このように、弁座部品13を金属材料で設けることで、耐熱性および耐久性を向上させることができ、EGRバルブの信頼性を高めることができる。
【0063】
〔実施例3の特徴技術2〕
上記実施例2では、図10(a)に示すように、流れ方向スラスト手段23(径方向ベローダイヤフラム21によって径方向に支持される弁座リング12を円板弁7に当接させる手段)を径方向ベローダイヤフラム21に設ける例を示した。具体的には、径方向ベローダイヤフラム21の内径側がEGRガス流の下流側へ位置ズレするように成形する例を示した。
これに対し、この実施例3では、図10(b)に示すように、弁座リング12のEGRガス流の下流側の端部を、径方向ベローダイヤフラム21の最内径よりもEGRガス流の下流側に延長することで流れ方向スラスト手段23を設けている。これにより、閉弁時に弁座リング12の弁座シート面12aが円板弁7に押し付けられ、閉弁時において、円板弁7が弁座シート面12aに着座するとともに、円板弁7に対して弁座リング12を調芯させることができる。
【実施例4】
【0064】
図11を参照して実施例4を説明する。
上記実施例1では、図11(a)に示すように、弁座部品13を樹脂で設ける例を示した。即ち、弁座リング12と、環状係合部14aを含むベローズ14とを、樹脂で一体成形する例を示した。
これに対し、この実施例4では、図11(b)に示すように、弁座部品13を弾性変形可能な金属板(金属スプリング)によって設けるものである。即ち、弁座リング12と、環状係合部14aを含むベローズ14とを、金属スプリングによって一体に設けるものである。このように、弁座部品13を金属材料で設けることで、耐熱性および耐久性を向上させることができ、EGRバルブの信頼性を高めることができる。
【実施例5】
【0065】
図12、図13を参照して実施例5を説明する。
〔実施例5の特徴技術1〕
上記実施例1では、EGRバルブの組付け手順として、(i)先ずEGR流路1の内部において、第1シャフト5の下端と第1弁支持部8とのルーズ嵌合を行うとともに、第2シャフト6の上端と第2弁支持部9とのルーズ嵌合を行い、(ii)次に、第1シャフト5の下端と第1弁支持部8とのルーズ嵌合部と、第2シャフト6の上端と第2弁支持部9とのルーズ嵌合部とを、それぞれ溶接することで、弁本体3を第1、第2シャフト5、6に溶接固定する例を示した。
【0066】
これに対し、この実施例5では、図12に示すように、電動アクチュエータ10に組付けられた第1シャフト5および第2シャフト6に、弁本体3を予め溶接等で固定しておく。その後、図13(a)に示すように、弁本体3等が固定された電動アクチュエータ10の環状凸部10aを、EGR流路1を内部に形成するハウジング2の組付開口部2aにインロー嵌合させ、電動アクチュエータ10をハウジング2にネジ等で締結して組付けを完了するものである。このように設けることで、EGRバルブの組付け性を向上させることができる。
なお、第1シャフト5は、電動アクチュエータ10の内部に組付けられた軸受によって回転自在に支持されるものである。
【0067】
〔実施例5の特徴技術2〕
上記に示したこの実施例5の組付け方法を採用すると、図13(a)に示すように、弁座リング12の周囲がEGR流路1の内壁面によって支持されなくなり、弁座リング12が弁本体3の円板弁7に対して位置ズレする可能性がある。
そこで、この実施例5の弁座部品13(具体的には、弁座リング12におけるEGRガス流の下流側の端面)には、図13(b)に示すように、第1シャフト5および第2シャフト6をそれぞれ両側から挟むガイド突起24が一体に設けられている。
【0068】
そして、第1シャフト5および第2シャフト6のそれぞれを、弁座部品13に設けられたガイド突起24で挟むことで、弁座リング12が弁本体3の円板弁7に対して位置ズレする不具合を回避することができる。
なお、第1、第2シャフト5、6を挟むガイド突起24の距離(シャフトが挿入される距離)は、挟まれる部位の第1、第2シャフト5、6のシャフト径より大きく設定されるものであり、円板弁7に対して所定範囲内で弁座リング12が変位可能に支持されて、弁本体3のプレス成形の誤差を吸収できるように設けられている。
【産業上の利用可能性】
【0069】
上記の実施例では、本発明をEGRバルブに適用する例を示したが、流体は排気ガスに限定されるものではなく、気体流体や液体流体の開閉や、流量または圧力調整を行なう他のバルブ装置に本発明を適用しても良い。
【符号の説明】
【0070】
1 EGR流路(流体通路)
1a 段差
2 ハウジング
3 弁本体
4 シャフト
5 第1シャフト
6 第2シャフト
7 円板弁
7a 弁側当接部
7b 円板弁の外周先端
8 第1弁支持部
9 第2弁支持部
12 弁座リング
12a 弁座シート面
13 弁座部品
14 ベローズ(流れ方向変位支持手段)
14a 環状係合部
15 径方向変位支持手段
15a 薄肉膨出部
16 シャフトカム部
21 径方向ベローダイヤフラム
23 流れ方向スラスト手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁本体の回動により、流体通路の開閉、あるいは流体通路の通路面積を可変させるバタフライタイプのバルブ装置に関し、例えば、エンジン(燃料の燃焼により動力を発生させる内燃機関)の排出した排気ガスの一部を、吸気通路に戻すEGRバルブ等に用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
バタフライタイプのバルブ装置は、ハウジング(バルブハウジング)に形成された流体通路を垂直に横切るように貫通して配置されるシャフトと、流体通路内においてシャフトに固定される円板形状を呈する弁本体とを備え、シャフトをハウジングの外部より回動操作することで弁本体を流体通路内で回動させて、流体通路の開閉あるいは流体通路の通路面積を可変させるものである(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
しかしながら、従来のバタフライタイプのバルブ装置は、シャフトが流体通路を横切るように貫通して配置される構造であったため、弁本体が流体通路を大きく開く側(以下、全開側)において、シャフトが流体通路を塞ぐ割合(流体の流れ方向から見た流体通路内におけるシャフトの占める面積割合)が大きくなる。このため、従来のバタフライタイプのバルブ装置は、全開側において流体通路内のシャフトが圧力損失の上昇を招く不具合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−170735号公報
【特許文献2】特開2008−057431号公報
【特許文献3】特開2009−036108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、流体通路の中心線に対してシャフトが垂直に配置されるタイプにおいて、全開側の圧力損失を抑えることのできるバルブ装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔請求項1の手段〕
請求項1の手段のバルブ装置は、流体通路の中心線と、シャフトの中心線とが垂直に配置されるものである。
シャフトは、駆動力が付与される第1シャフトと、この第1シャフトの中心軸上に配置される第2シャフトとからなり、第1シャフトと第2シャフトとがハウジングに対して回転自在に支持されるとともに、第1シャフトと第2シャフトとが流体通路の内部で離れた状態で配置される。
また、弁本体は、流体通路を閉塞可能な円板弁と、この円板弁の外周側に設けられて円板弁と第1シャフトを連結する第1弁支持部と、この第1弁支持部とは異なった側における円板弁の外周側に設けられて円板弁と第2シャフトを連結する第2弁支持部とを備え、板面に沿う方向から見て、円板弁、第1、第2弁支持部の3者によって略コ字形状を成すように設けられている。
【0007】
このように設けられることにより、全開側において、(i)シャフトが流体通路を塞ぐ割合を抑えることができるとともに、(ii)弁本体が流体の流れ方向から見て略コ字形状を成すことで、弁本体が流体通路を塞ぐ割合を小さく抑えることができる。
このように、請求項1の手段を採用するバルブ装置は、流体通路の中心線に対してシャフトが垂直に配置されるタイプであるが、全開側においてシャフトおよび弁本体が流体通路を塞ぐ割合を小さくできるため、バルブ装置の圧力損失を低く抑えることができ、全開側において流体を大量に流すことができる。あるいは、全開側の圧力損失を低く抑えることができるため、バルブ装置を小型化することができる。
【0008】
〔請求項2の手段〕
請求項2の手段のバルブ装置における円板弁、第1、第2弁支持部の3者は、金属板のプレス成形によって一体に設けられる。
このように、弁本体を構成する円板弁、第1、第2弁支持部の3者を金属板のプレス成形品で設けることで、弁本体を極めて薄くすることができ、全開側の圧力損失を極めて小さくすることができる。
また、弁本体をプレス成形品で設けることができるため、弁本体のコストを低く抑えることができ、バルブ装置のコストを抑えることができる。
【0009】
また、請求項2の手段のバルブ装置は、弁本体が流体通路を閉塞する際に円板弁の外周部に当接して、流体通路と円板弁との隙間を閉塞する弁座リングを有した弁座部品を備えるものであり、弁座リングにおいて円板弁が当接する弁座シート面は、円板弁が配置される方向に向かって曲線的あるいは直線的に拡径するテーパ面に設けられている。
そして、弁座部品は、弁座リングを流体通路の流れ方向へ変位可能に支持する流れ方向変位支持手段(例えば、後述するベローズ)と、弁座リングを流体通路の全ての径方向へ変位可能に支持する径方向変位支持手段(例えば、後述する3箇所以上の薄肉膨出部)とを有するものである。
これにより、(i)流れ方向変位支持手段と径方向変位支持手段によって弁座リングが三次元の全方向へ変位可能に支持されることと、(ii)閉弁時に円板弁が弁座シート面(テーパ面)に着座することで生じる調芯作用とによって、弁本体をプレス成形品で設けることで生じた精度低下を吸収させることができる。
即ち、弁本体をプレス成形品で設けても、閉弁時のシール漏れを防ぐことができる。
【0010】
〔請求項3の手段〕
請求項3の手段のバルブ装置における第1、第2シャフトには、円板弁が流体通路を開く際に弁座リングと接触し、この弁座リングを円板弁から離れる側に押圧して移動させるシャフトカム部が形成される。
これにより、第1、第2シャフトが回動して、円板弁が流体通路を開く際に、第1、第2シャフトの回動に伴うシャフトカム部の作用によって、弁座リングが円板弁から離れる側へ移動して、弁座リングと円板弁の間に隙間が形成される。
このように、円板弁が流体通路を開く際に、弁座リングと円板弁の間に隙間が形成されることにより、弁座リングと円板弁の接触摩耗を回避することができるとともに、弁座リングと円板弁の接触抵抗が抑えられるので、円板弁(第1、第2シャフト)の回動に要するトルクを減らすことができる(例えば、電動アクチュエータを小型化することができる)。
また、開弁時に弁座リングと円板弁とが強制的に離されることで、弁本体が閉弁ロックする不具合を回避することができ、バルブ装置の信頼性を高めることができる。
【0011】
〔請求項4の手段〕
請求項4の手段のバルブ装置における流れ方向変位支持手段は、円板弁より流体上流側に配置されるベローズである。
そして、このベローズは、流体上流側において流体通路の内壁に形成された段差に係合する環状係合部を備え、この環状係合部より流体下流側にベローズの蛇腹部および弁座リングが配置される。
ベローズは、その内側にかかる圧力と外側にかかる圧力とが打消合う圧力キャンセル構造になっているが、ベローズの凹凸が流体の流れの影響を受ける。これにより、(i)環状係合部が段差に押し付けられて、環状係合部と段差の間のシール性が若干高まる作用が得られるとともに、(ii)弁座リングが円板弁側に押し付けられて、円板弁と弁座リングとのシール性が若干高まる作用が得られる。
一方、ベローズによる圧力キャンセル構造とは別に、(i)環状係合部に流体の受圧面を確保することで、流体圧の影響により環状係合部が段差に押し付けられて、環状係合部と段差の間のシール性を高める作用が得られるとともに、(ii)弁座リングに流体の受圧面を確保することで、流体圧の影響により弁座リングが円板弁側に押し付けられて、円板弁と弁座リングとのシール性を高める作用が得られる。
即ち、流体の流れや圧力を利用したセルフシールを得ることができる。
【0012】
〔請求項5の手段〕
請求項5の手段のバルブ装置における径方向変位支持手段は、弁座リングの外周側に設けた3箇所以上の薄肉膨出部によって設けられるものであり、この薄肉膨出部によるバネ作用によって弁座リングが流体通路の全ての径方向へ変位可能に支持される。
このように、3箇所以上の薄肉膨出部を介して弁座リングが支持される構造であるため、弁座リングの耐振動性を向上させることができる。
【0013】
〔請求項6の手段〕
請求項6の手段のバルブ装置における弁座部品は、表面が円滑な樹脂材料{例えばテフロン(登録商標)等}によって一部品で設けられている。
これにより、弁本体と弁座リングとの接触抵抗を下げることができる。また、上記請求項3を採用する場合では、シャフトカム部と弁座リングとの接触抵抗を下げることができる。
このように、弁座リングに対する接触抵抗を減らすことができるため、円板弁(第1、第2シャフト)の回動に要するトルクを減らすことができる(例えば、電動アクチュエータを小型化することができる)。
【0014】
また、弁座シート面にデポジット等の不純物が付着する不具合が抑えられることにより、デポジット等の不純物の付着による弁本体の回動抵抗の増加が抑えられることになり、その結果、円板弁(第1、第2シャフト)の回動に要するトルクを減らすことができる(例えば、電動アクチュエータを小型化することができる)。
同様に、弁座シート面の溌水効果により水分の付着が抑えられることにより、付着した水分が凍結して起きる弁本体の回動抵抗の増加が抑えられることになり、その結果、円板弁(第1、第2シャフト)の回動に要するトルクを減らすことができる(例えば、電動アクチュエータを小型化することができる)。
【0015】
〔請求項7の手段〕
請求項7の手段のバルブ装置は、円板弁において弁座リングに当接する弁側当接部が、球面形状に設けられている。
これにより、円板弁が弁座リングに接触して回動する範囲において、円板弁の回動がスムーズになり、円板弁(第1、第2シャフト)の回動に要するトルクを減らすことができる(例えば、電動アクチュエータを小型化することができる)。
また、閉弁時における円板弁と弁座リングの接触面積が大きくなり、円板弁における弁座リングとの接触部の摩耗を抑えることができる。
【0016】
〔請求項8の手段〕
請求項8の手段のバルブ装置は、弁側当接部よりさらに外周に設けられる円板弁の外周先端が、全周に亘ってナイフエッジ形状に設けられている。
このように設けられることにより、開弁時に円板弁が流体から受ける影響を小さくすることができる。これによって、開弁状態において円板弁(第1、第2シャフト)の回動に要するトルクを減らすことができる(例えば、電動アクチュエータを小型化することができる)。
【0017】
〔請求項9の手段〕
請求項9の手段のバルブ装置は、上述した請求項2の「流れ方向変位支持手段」と「径方向変位支持手段」の2つの機能を、1つの「径方向ベローダイヤフラム」にて行なうものである。
具体的に、この請求項9の手段は、上記請求項2と同様、円板弁、第1、第2弁支持部の3者が、金属板のプレス成形によって一体に設けられるものであり、弁本体を構成する円板弁、第1、第2弁支持部の3者を金属板のプレス成形品で設けることで、弁本体を極めて薄くすることができ、全開側の圧力損失を極めて小さくすることができる。
また、弁本体をプレス成形品で設けることができるため、弁本体のコストを低く抑えることができ、バルブ装置のコストを抑えることができる。
【0018】
また、請求項9の手段のバルブ装置は、上記請求項2と同様、弁本体が流体通路を閉塞する際に円板弁の外周部に当接して、流体通路と円板弁との隙間を閉塞する弁座リングを有した弁座部品を備えるものであり、弁座リングにおいて円板弁が当接する弁座シート面は、円板弁が配置される方向に向かって曲線的あるいは直線的に拡径するテーパ面に設けられている。
そして、請求項9の手段の弁座部品は、上記請求項2の「流れ方向変位支持手段」および「径方向変位支持手段」に代わり、「径方向ベローダイヤフラム」を設けたものである。この径方向ベローダイヤフラムは、弁座リングの外径側に設けられ、径方向に弾性変形可能な蛇腹部を成し、弁座リングを流体通路の流れ方向および流体通路の全ての径方向へ変位可能に支持するものである。
径方向ベローダイヤフラムによって、弁座リングが三次元の全方向へ変位可能に支持される。そして、閉弁時に円板弁が弁座シート面(テーパ面)に着座することで、円板弁に対して弁座リングを調芯させることができる。
その結果、弁本体をプレス成形品で設けることで生じた精度低下を吸収させることができる。即ち、弁本体をプレス成形品で設けても、閉弁時のシール漏れを防ぐことができる。
【0019】
〔請求項10の手段〕
請求項10の手段は、径方向ベローダイヤフラムによって径方向に支持される弁座リングを円板弁に当接させる手段として、「流れ方向スラスト手段」を備える。
この流れ方向スラスト手段は、弁座リングの流体下流側の端部を流体下流側へズラすことで、少なくとも閉弁時に弁座リングを円板弁に圧接させる手段である。
このように、流れ方向スラスト手段によって、弁座リングが円板弁に圧接するように設けられるため、上記請求項9で説明したように、閉弁時に円板弁が弁座シート面(テーパ面)に着座することができ、円板弁に対して弁座リングを調芯させることができる。
【0020】
〔請求項11の手段〕
請求項11の手段は、上記請求項3と同様の技術であり、第1、第2シャフトには、円板弁が流体通路を開く際に弁座リングと接触し、この弁座リングを円板弁から離れる側に押圧して移動させるシャフトカム部が形成される。
これにより、上記請求項3と同様、第1、第2シャフトが回動して、円板弁が流体通路を開く際に、第1、第2シャフトの回動に伴うシャフトカム部の作用によって、弁座リングが円板弁から離れる側へ移動して、弁座リングと円板弁の間に隙間が形成される。
このように、円板弁が流体通路を開く際に、弁座リングと円板弁の間に隙間が形成されることにより、弁座リングと円板弁の接触摩耗を回避することができるとともに、弁座リングと円板弁の接触抵抗が抑えられるので、円板弁(第1、第2シャフト)の回動に要するトルクを減らすことができる(例えば、電動アクチュエータを小型化することができる)。
また、開弁時に弁座リングと円板弁とが強制的に離されることで、弁本体が閉弁ロックする不具合を回避することができ、バルブ装置の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】全開時においてEGRガスの流れ方向から見たEGRバルブの概略断面図、および全閉時に側面方向から見たEGRバルブの概略断面図である(実施例1)。
【図2】弁座部品を流体の流れ方向から見た正面図、および側面断面図である(実施例1)。
【図3】全閉時および半開時におけるEGRバルブの作動説明図である(実施例1)。
【図4】図3(b)のA線に沿う断面図であってシャフトカム部のカム形状を示す断面図である(実施例1)。
【図5】図3(a)のB線に沿う断面図、および丸C内に示す要部拡大図であって円板弁の外周先端に設けられるナイフエッジ形状の説明図である(実施例1)。
【図6】全開時においてEGRガスの流れ方向から見たEGRバルブの概略断面図、および全閉時に側面方向から見たEGRバルブの概略断面図である(実施例2)。
【図7】弁座部品の要部断面図である(実施例2)。
【図8】全閉時および半開時におけるEGRバルブの作動説明図である(実施例2)。
【図9】図8(b)のD線に沿う断面図であってシャフトカム部のカム形状を示す断面図である(実施例2)。
【図10】弁座部品の要部断面図である(実施例3)。
【図11】弁座部品の要部断面図である(実施例4)。
【図12】EGRバルブの組み立て前を示す分解図である(実施例5)。
【図13】EGRバルブの組み立て後を示す組付完了図、および図13(a)のE−E線に沿う断面図である(実施例5)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図面を参照して[発明を実施するための形態]を説明する。
○EGRバルブ(バルブ装置の一例)は、エンジンの排気通路と吸気通路を連通して、排気ガスが通過可能なEGR流路1(流体通路の一例)を内部に形成するハウジング2と、EGR流路1内に配置され、EGR流路1の内部で回動変位することによってEGR流路1の開閉および開度調整(通路面積の可変)を行なう弁本体3と、ハウジング2に回転自在に支持されて弁本体3を回動駆動するシャフト4とを具備し、EGR流路1の中心線と、シャフト4の中心線とが垂直に配置されるものである。即ち、このEGRバルブは、シャフト4がEGR流路1を垂直に横切るタイプである。
【0023】
○このEGRバルブにおけるシャフト4は、外部より回動方向の駆動力が付与される第1シャフト5と、この第1シャフト5の中心軸上に配置される第2シャフト6とからなり、第1シャフト5と第2シャフト6とがEGR流路1の内部で離れた状態で配置されるものである。
○一方、EGRバルブにおける弁本体3は、円板形状を呈してEGR流路1を閉塞可能な円板弁7と、この円板弁7の外周側に設けられて円板弁7と第1シャフト5を連結する第1弁支持部8と、この第1弁支持部8とは異なった側における円板弁7の外周側に設けられて円板弁7と第2シャフト6を連結する第2弁支持部9とを備えるものであり、円板弁7の板面に沿う方向から見て(全開時にEGRガスが流れる方向から見て)、円板弁7、第1、第2弁支持部8、9の3者によって略コ字形状を成すものである。
【実施例1】
【0024】
次に、本発明を車両エンジンに搭載されるEGR装置のEGRバルブに適用した実施例1を、図1〜図5参照して説明する。なお、本実施例において、上記[発明を実施するための形態]と同一符号は、同一機能物を示すものである。
〔EGR装置の説明〕
EGR装置は、エンジンの排出した排気ガスの一部をEGRガスとしてエンジンの吸気側に戻すことで、吸気の一部に不燃ガスであるEGRガスを混入させてエンジン燃焼室の燃焼温度を抑え、効果的に窒素酸化物(NOx)の発生を抑える周知の技術である。
EGR装置は、排気通路を流れる排気ガスの一部を吸気通路へ戻すEGR流路1と、このEGR流路1の開度調整を行なうEGRバルブとを少なくとも備え、このEGRバルブが車両の走行状態に応じてECU(エンジン・コントロール・ユニットの略)によって開度制御される。
【0025】
なお、本発明が適用されるEGRバルブは、吸気通路における高負圧発生範囲(スロットルバルブの吸気下流側)へEGRガスを戻す高圧EGR装置に搭載される高圧EGRバルブであっても良いし、吸気通路における低負圧発生範囲(スロットルバルブの吸気上流側:例えばターボチャージャ搭載車両であればコンプレッサの吸気上流側)へEGRガスを戻す低圧EGR装置に搭載される低圧EGRバルブであっても良い。
【0026】
次に、図1を参照して、EGRバルブを説明する。なお、以下では、図1の図示上側を上、図示下側を下と称して説明するが、この上下は実施例の説明のための方向であり、限定されるものではない。
EGRバルブは、内部にEGR流路1を形成するハウジング2と、EGR流路1中に配置される弁本体3と、この弁本体3を支持するシャフト4と、このハウジング2の外部よりシャフト4に回転力を付与する電動アクチュエータ10とを具備する。
【0027】
ハウジング2の主要部は、アルミニウム合金のダイキャスト製であり、高温のEGRガスが流れるEGR流路1の内壁が耐熱性、耐腐食性に優れた部材(例えば、ステンレス鋼)によって設けられている。
弁本体3は、バタフライ弁であり、シャフト4の回動位置に応じてEGR流路1を開閉可能であるとともに、EGR流路1の開口面積を可変可能であり、EGR流路1の開口面積を可変することで吸気通路へ戻されるEGR量の調整を行なう。この弁本体3の詳細は、後述する。
【0028】
シャフト4は、弁本体3をEGR流路1中において回転可能に支持するものであり、EGR流路1の上下に配置された軸受11によって回転自在に支持されている。このシャフト4の詳細については、後述する。なお、軸受11には、EGRガスの漏れ出しを防ぐシールドタイプが用いられている。
上下の軸受11は、ボールベアリング、ローラベアリング等の転がりベアリング、あるいはメタルベアリング等の滑りベアリングであり、ハウジング2に形成されたベアリング収容筒の内部に圧入等の結合手段によって固定されて、内周に挿通されたシャフト4を回転自在に支持する。
【0029】
電動アクチュエータ10は、ハウジング2の上部に固定されて、シャフト4を回転駆動するものであり、通電により回転動力を発生する周知の電動モータを搭載している。なお、電動モータの一例として、通電による回転角度制御が可能なDCモータを用いたものである。
ここで、電動アクチュエータ10は、電動モータだけで設けられるもの(電動モータの出力軸によりシャフト4を直接駆動するもの)であっても良いし、電動モータとシャフト4の間に減速機構(電動モータの回転出力を減速して、減速により増大化した回転トルクをシャフト4に伝えるもので、例えば歯車減速機構)を介在するものであっても良い。
【0030】
〔実施例1の背景技術1〕
この実施例1のEGRバルブは、図1(b)に示すように、EGR流路1の中心線と、弁本体3を駆動するシャフト4の中心線とが垂直に配置される。
このように、EGR流路1に対してシャフト4が垂直配置される場合、従来のEGRバルブでは、シャフト4がEGR流路1を横切るように貫通して配置される構造であったため、全開側においてシャフト4がEGR流路1を塞ぐ割合が大きくなってしまい、通気抵抗の増大によって全開側のEGR量が低下する不具合があった。
【0031】
〔実施例1の特徴技術1〕
この実施例1は、上記「背景技術1」の問題点を解決するために、以下に示す技術を採用している。
弁本体3を支持するシャフト4は、ハウジング2の上部に配置された電動アクチュエータ10より回動方向の駆動力が付与される第1シャフト5と、この第1シャフト5の中心軸上に配置される第2シャフト6とからなり、図1に示すように、第1シャフト5と第2シャフト6とがEGR流路1の内部で離れた状態で配置されるものである。
【0032】
第1シャフト5は、耐熱性、耐腐食性に優れた部材(例えば、ステンレス鋼)よりなる円柱棒状を呈し、ハウジング2の上側において上下方向に延びて配置されるものであり、ハウジング2に取り付けられた軸受11によって回転自在に支持されるものである。この第1シャフト5の下端には、弁本体3の上部(具体的には、後述する第1弁支持部8)と一体に回転するように接続するための連結手段として、一段細くなった第1二面幅5aが設けられている。
【0033】
第2シャフト6も、第1シャフト5と同様、耐熱性、耐腐食性に優れた部材(例えば、ステンレス鋼)よりなる円柱棒状を呈するものであり、ハウジング2の下側において上下方向に延びて配置され、ハウジング2に取り付けられた軸受11によって回転自在に支持されるものである。この第2シャフト6の上端にも、弁本体3の下部(具体的には、後述する第2弁支持部9)と一体に回転するように接続するための連結手段として、一段細くなった第2二面幅6aが設けられている。
なお、第1、第2シャフト5、6に設けられるシャフトカム部16については後述する。
【0034】
弁本体3は、第1、第2シャフト5、6の間に設けられるものであって、EGR流路1を開閉可能な円板弁7と、この円板弁7の上部において第1シャフト5の下端に連結される第1弁支持部8と、円板弁7の下部において第2シャフト6の上端に連結される第2弁支持部9とからなり、図1(a)に示すように円板弁7の板面に沿う方向から見て、円板弁7、第1、第2弁支持部8、9の3者によって略コ字形状を成すものである。
【0035】
円板弁7は、厚み寸法の小さい円板体であり、図1(b)に示すようにEGR流路1の中心線に対して垂直に配置されることで、EGR流路1を閉塞するものである。
第1弁支持部8は、円板弁7の端部に連続して円板弁7と一体に設けられた厚み寸法の小さい板材であり、第1弁支持部8の板面が円板弁7に対して垂直方向に延びるように設けられている。この第1弁支持部8は、第1シャフト5の下端と一体に回転するように連結されるものであり、第1弁支持部8には、第1シャフト5の下端と一体に回転する連結手段として、第1シャフト5の下端に形成された第1二面幅5aと嵌合する略長丸の第1貫通穴8aが形成されている。
【0036】
第2弁支持部9は、第1弁支持部8とは異なった側における円板弁7の端部において、円板弁7と連続して円板弁7と一体に設けられた厚み寸法の小さい板材であり、第2弁支持部9の板面が第1弁支持部8と対向し、且つ第2弁支持部9の板面が円板弁7に対して垂直に延びるように設けられている。この第2弁支持部9は、第2シャフト6の上端と一体に回転するように連結されるものであり、第2弁支持部9には、第2シャフト6の上端と一体に回転する連結手段として、第2シャフト6の上端に形成された第2二面幅6aと嵌合する略長丸の第2貫通穴9aが形成されている。
【0037】
なお、第1二面幅5aと第1貫通穴8a、および第2二面幅6aと第2貫通穴9aは、EGRバルブの組付け時において、圧入嵌合(あるいはルーズ嵌合)の後、溶接されて固定されるものである。
【0038】
(実施例1の効果1)
この実施例1では、上記の特徴技術1を採用することにより、EGRバルブの全開側(全開を含む)において、(i)EGR流路1内においてシャフト4が分断されているため、EGR流路1の開口面積をシャフト4が塞ぐ割合を減らすことができるとともに、(ii)弁本体3をEGRガスの流れ方向から見て略コ字形状に設け、且つ弁本体3において略コ字形状を成す円板弁7、第1、第2弁支持部8、9の板厚を薄く設けたことでEGR流路1の開口面積を弁本体3が塞ぐ割合を極めて小さく減らすことができる。これにより、EGRバルブの全開側におけるEGR流路1内の流路抵抗を極めて小さくすることができ、全開側におけるEGRバルブの圧力損失を極めて小さくすることができる。
即ち、EGRバルブを低圧損化することができ、全開側でEGRガスを大量に流すことができる。あるいは、全開側でEGRガスを大量に流すことができるため、EGRバルブを小型化することができる。
【0039】
〔実施例1の特徴技術2〕
この実施例1の弁本体3は、薄板金属(例えば、ステンレス薄板)をプレス加工(打ち抜きと曲折加工)によって略コ字形状の円板弁7、第1、第2弁支持部8、9の3者を一体に設けたものであり、弁本体3は金属板のプレス成形品によって設けられる。
このように、弁本体3を構成する円板弁7、第1、第2弁支持部8、9を金属板のプレス成形品によって設けることで、弁本体3を極めて薄くすることができ、全開側の圧力損失を極めて小さくすることができる。
また、弁本体3をプレス成形品で設けることで、弁本体3のコストを低く抑えることができ、結果的にEGRバルブのコストを抑えることができる。
【0040】
〔実施例1の特徴技術3〕
この実施例1のEGRバルブは、閉弁時(弁本体3がEGR流路1を閉塞する際)に円板弁7の外周部に当接してEGRガスの漏れを防ぐ弁座リング12(シールリング)を有した弁座部品13を備えている。
弁座リング12において円板弁7が当接する弁座シート面12a(バルブ着座面)は、図1(b)に示すように、円板弁7が配置される方向(EGRガス流の下流方向)に向かって直線的に拡径するテーパ面に設けられている。
【0041】
一方、弁座部品13には、(i)図1(b)に示すように、弁座リング12をEGR流路1におけるEGRガスの流れ方向へ変位可能に支持する流れ方向変位支持手段(具体的には、後述するようにベローズ14よりなる)が設けられるとともに、(ii)図2に示すように、弁座リング12をEGR流路1の全ての径方向へ変位可能に支持する径方向変位支持手段15(具体的には、後述するように3つの薄肉膨出部15aよりなる)が設けられる。
【0042】
これにより、(i)流れ方向変位支持手段(ベローズ14)と、径方向変位支持手段15によって弁座リング12が全三次元方向(三次元を示すX軸Y軸Z軸の全方向)へ変位可能に支持されるとともに、(ii)閉弁時に円板弁7が弁座シート面12aのテーパ面に着座することで生じる調芯作用によって、弁本体3をプレス成形品で設けることで生じた精度低下を吸収させることができる。
即ち、弁本体3をプレス成形品で設けても、閉弁時にEGRバルブにおいてEGRガスが漏れる不具合を回避することができ、信頼性を高めることができる。
【0043】
〔実施例1の特徴技術4〕
この実施例1における第1、第2シャフト5、6には、図3に示すように、円板弁7がEGR流路1を開く際に弁座リング12と接触して、この弁座リング12を円板弁7から離れる側に押圧して移動させるシャフトカム部16が形成されている。
このシャフトカム部16は、弁座リング12に対向する部位の第1、第2シャフト5、6に設けられる。具体的に、シャフトカム部16は、弁本体3がEGR流路1を少量開く開度から所定の開度に至る範囲においてシャフトカム部16が弁座リング12を上流側へ移動させるものであり、円板弁7の開度と、弁座リング12がEGRガスの上流側に押されて移動する移動距離との関係は、図4(a)、(b)に示すように、シャフトカム部16の形状(カムプロフィール)によって決定されるものである。
【0044】
このように、第1、第2シャフト5、6にシャフトカム部16を設けることにより、第1、第2シャフト5、6が回動して、円板弁7がEGR流路1を開く際に、第1、第2シャフト5、6の回動に伴うシャフトカム部16の作用によって、弁座リング12が円板弁7から離れる側へ移動して{図3(b’)の矢印F参照}、弁座リング12と円板弁7の間に隙間が形成される。
このように、円板弁7がEGR流路1を開く際に、弁座リング12と円板弁7の間に隙間が形成されることにより、円板弁7と弁座リング12の接触摩耗を回避することができるとともに、円板弁7と弁座リング12の接触抵抗が抑えられることで、円板弁7を駆動するために第1シャフト5の回動に要するトルクを減らすことができ、電動アクチュエータ10を小型化することができる。
また、開弁時に弁座リング12と円板弁7とが強制的に離されることで、弁本体3が閉弁ロックする不具合を回避することができ、EGRバルブの信頼性を高めることができる。
【0045】
〔実施例1の特徴技術5〕
この実施例1は、流れ方向変位支持手段としてベローズ14を用いたものである。ベローズ14は、円板弁7よりEGRガス流の上流側に配置され、弁座リング12と一体に設けられた蛇腹形状のフレキシブル配管である。
このベローズ14のEGRガス流の上流側には、図3(a)に示すように、ハウジング2内に存在するEGR流路1の内壁に形成された段差1a(EGRガス流の上流側に向かって拡径する部位の段差)に係合する環状係合部14aが設けられており、環状係合部14aが段差1aに着座することで、EGR流路1と弁座部品13との間の隙間がシールされる構造を採用している。
【0046】
ベローズ14は、その内側にかかる圧力と外側にかかる圧力とが打消合う圧力キャンセル構造{図3(a)における範囲α参照}になっているが、ベローズ14の凹凸によってEGRガスの流れの影響を受ける。
これにより、(i)環状係合部14aが段差1aに押し付けられて、環状係合部14aと段差1aとのシール性が若干高まる作用が得られるとともに、(ii)弁座リング12が円板弁7側に押し付けられて、円板弁7と弁座リング12とのシール性が若干高まる作用が得られる。
一方、ベローズ14による圧力キャンセル構造とは別に、(i)環状係合部14aに流体の受圧面{図3(a)における範囲β参照}を確保することで、EGRガス圧の影響により環状係合部14aが段差1aに押し付けられて、環状係合部14aと段差1aとのシール性を高めることができる。
あるいは、(ii)弁座リング12に流体の受圧面{図3(a)における範囲γ参照}を確保することで、EGRガス圧の影響により弁座リング12が円板弁7側に押し付けられて、円板弁7と弁座リング12とのシール性を高めることができる。
このように、EGRガスの流れや圧力を利用したセルフシールを採用することにより、閉弁時にEGRバルブにおいてEGRガスが漏れる不具合を無くすことができ、信頼性を高めることができる。
【0047】
〔実施例1の特徴技術6〕
この実施例1における径方向変位支持手段15は、図2に示すように、弁座リング12の外周側に略等間隔に配置した3箇所の薄肉膨出部15aによって設けられる。各薄肉膨出部15aは、図2(a)に示すように、径方向へ円弧状に膨らむ膨出部の内側をナイフ型で打ち抜き、厚み(径方向の厚みと、流体流れ方向の厚みの両方)を薄く設けることでバネ性を持たせたものである。そして、弁座リング12をEGR流路1内における所定の組付位置に挿入配置することで、3箇所の薄肉膨出部15aがEGR流路1の内壁によって内側へ少し弾性変形した状態で組付けられるものであり、この薄肉膨出部15aによるバネ作用によって弁座リング12がEGR流路1の全ての径方向へ変位可能に支持される。
このように、EGR流路1の内壁の内側において3つの薄肉膨出部15aを介して弁座リング12が支持される構造であるため、弁座リング12の耐振動性を向上させることができ、振動による開弁(閉弁時におけるEGRガスの漏れ)を防ぐことができる。
【0048】
〔実施例1の特徴技術7〕
この実施例1の弁座部品13は、表面が円滑な樹脂材料{例えばテフロン(登録商標)や、耐熱性に優れたナイロン樹脂等}によって一部品で設けられている。即ち、3つの薄肉膨出部15aを含む弁座リング12や、環状係合部14aを含むベローズ14が、1つの樹脂材料により一体に設けられている。
このように、表面が円滑な樹脂材料によって弁座部品13が設けられることにより、弁本体3と弁座リング12との接触抵抗を下げることができるとともに、シャフトカム部16と弁座リング12との接触抵抗を下げることができ、電動アクチュエータ10を小型化することができる。
【0049】
また、弁座シート面12aにデポジットが付着する不具合が抑えられる。これにより、デポジットの付着による弁本体3の回動抵抗の増加や弁本体3の閉弁固着が抑えられることになり、電動アクチュエータ10を小型化することができる。
あるいは、弁座シート面12aへの水滴の付着が防がれるため、付着した水滴が凍結して起きる弁本体3の回動抵抗の増加が抑えられることになり、電動アクチュエータ10を小型化することができる。
【0050】
〔実施例1の特徴技術8〕
この実施例1の円板弁7は、閉弁時において弁座リング12に当接する弁側当接部7a(弁座シート面12aに着座する部分)が、球面形状に設けられている。
これにより、円板弁7が弁座リング12に接触して回動する範囲(閉弁状態から開弁側に僅かに開いた回動範囲)において円板弁7の駆動トルクを小さくでき、電動アクチュエータ10を小型化することができる。
また、閉弁時における円板弁7と弁座リング12の接触面積が大きくなり、円板弁7と弁座シート面12aの接触摩耗を抑えることができる。
【0051】
〔実施例1の特徴技術9〕
この実施例1の円板弁7は、図5(b)に示すように、弁側当接部7aよりさらに外周に存在する外周先端7bが、全周に亘ってナイフエッジ形状(ナイフの刃のように尖った形状)に設けられている。このナイフエッジ形状は、円板弁7をプレス形成する際に、プレス加工によって同時に加圧形成され、塑性変形して設けられたものである。
このように、円板弁7の外周先端7bがナイフエッジ形状に設けられることにより、開弁時において、円板弁7がEGRガスの流れから受ける影響を小さくすることができる。これによって、電動アクチュエータ10を小型化することができる。
【実施例2】
【0052】
図6〜図9を参照して実施例2を説明する。なお、以下の各実施例において、上記実施例1と同一符号は、同一機能物を示すものである。
〔実施例2の特徴技術1〕
実施例2は、上記実施例1と弁座部品13が異なるものである。
この実施例2の弁座部品13は、実施例1と同様、閉弁時(弁本体3がEGR流路1を閉塞する際)に円板弁7の外周部に当接してEGRガスの漏れを防ぐ弁座リング12を備えている。
弁座リング12において円板弁7が当接する弁座シート面12aは、実施例1と同様、円板弁7が配置される方向(EGRガス流の下流方向)に向かって直線的に拡径するテーパ面に設けられている。なお、弁座シート面12aは、円板弁7の弁側当接部7a(球面形状)と同一の球面形状(曲面)に設けて、シール性を向上させても良い。
【0053】
実施例2の弁座部品13は、上記実施例1における流れ方向変位支持手段(ベローズ14)と径方向変位支持手段15(3つの薄肉膨出部15a)の機能を果たす径方向ベローダイヤフラム21を備えている。
この径方向ベローダイヤフラム21は、弁座リング12の外径側に設けられ、径方向に弾性変形可能な蛇腹部を成し、弁座リング12をEGRガス流の流れ方向およびEGR流路1の全ての径方向へ変位可能に支持するものである。具体的な径方向ベローダイヤフラム21の一例は、図7に示すように、断面V字形を呈する弾性部材(この実施例2では樹脂製、後述する実施例3では金属製)よりなるリング体を内径側から外径側へ向けて複数連続させた構造を採用するものである。
【0054】
これによって、弁座リング12は、径方向ベローダイヤフラム21によって全三次元方向(三次元を示すX軸Y軸Z軸の全方向)へ変位可能に支持される。この結果、実施例1と同様、閉弁時に円板弁7が弁座シート面12aのテーパ面に着座することで生じる調芯作用によって、弁本体3をプレス成形品で設けることで生じた精度低下を吸収させることができる。
【0055】
また、弁座部品13には、径方向ベローダイヤフラム21の外径側に固定リング22が設けられている。この固定リング22は、EGR流路1の内壁に固定される固定部であり、例えばEGR流路1の内壁における所定の組付位置に圧入されることで弁座部品13がハウジング2に組付けられるものである。
【0056】
このように、実施例2の弁座部品13は、弁座リング12、径方向ベローダイヤフラム21および固定リング22から構成され、これらの弁座リング12、径方向ベローダイヤフラム21および固定リング22は、1つの部材で設けられている。
具体的に、この実施例2では、弁座リング12、径方向ベローダイヤフラム21および固定リング22を、弾性変形可能で耐熱性および耐油性に優れた樹脂部材(ゴムを含む)によって、一体に設けたものである。
【0057】
〔実施例2の特徴技術2〕
実施例2の弁座部品13は、径方向ベローダイヤフラム21によって径方向に支持される弁座リング12を円板弁7に当接させる手段として、流れ方向スラスト手段23を備えている。
この流れ方向スラスト手段23は、弁座リング12のEGRガス流の下流側の端部を、径方向ベローダイヤフラム21の最外径のEGRガスの下流側の端部より、EGRガス流の下流側へズラして配置させる手段である。
【0058】
この実施例2では、流れ方向スラスト手段23を径方向ベローダイヤフラム21に設けている。具体的に、実施例2の径方向ベローダイヤフラム21は、無負荷状態において、径方向ベローダイヤフラム21の外径側より内径側が、EGRガス流の下流側へ位置ズレするように成形されている。
これにより、閉弁時に弁座リング12の弁座シート面12aが円板弁7に押し付けられ、閉弁時において円板弁7が弁座シート面12aに着座するとともに、円板弁7に対して弁座リング12を調芯させることができる。
【0059】
〔実施例2の特徴技術3〕
この実施例2の弁座部品13は、弁座リング12および径方向ベローダイヤフラム21がEGRガス流の影響を受ける。このため、図8(a)に示すように、閉弁時に円板弁7が弁座シート面12aに着座する状態において、弁座リング12、径方向ベローダイヤフラム21がEGRガス圧を受け、弁座リング12が円板弁7に押し付けられる作用が生じ、円板弁7と弁座リング12のシール性を高めることができる。
このように、EGRガスの圧力を利用したセルフシールを採用するため、閉弁時にEGRバルブにおいてEGRガスが漏れる不具合を無くすことができ、信頼性を高めることができる。
【0060】
〔実施例2の特徴技術4〕
実施例2における第1、第2シャフト5、6には、実施例1と同様の機構として、図8に示すように、円板弁7がEGR流路1を開く際に弁座リング12と接触して、この弁座リング12を円板弁7から離れる側に押圧して移動させるシャフトカム部16が形成されている。
このシャフトカム部16は、弁座リング12に対向する部位の第1、第2シャフト5、6に設けられる。具体的に、シャフトカム部16は、弁本体3がEGR流路1を少量開く開度から所定の開度に至る範囲においてシャフトカム部16が弁座リング12を上流側へ移動させるものであり、円板弁7の開度と、弁座リング12がEGRガスの上流側に押されて移動する移動距離との関係は、図9(a)、(b)に示すように、シャフトカム部16の形状(カムプロフィール)によって決定されるものである。
【0061】
このように、第1、第2シャフト5、6にシャフトカム部16を設けることにより、第1、第2シャフト5、6が回動して、円板弁7がEGR流路1を開く際に、第1、第2シャフト5、6の回動に伴うシャフトカム部16の作用によって、弁座リング12が円板弁7から離れる側へ移動して{図8(b’)の矢印F参照}、弁座リング12と円板弁7の間に隙間が形成される。
このように、円板弁7がEGR流路1を開く際に、弁座リング12と円板弁7の間に隙間が形成されることにより、円板弁7と弁座リング12の接触摩耗を回避することができるとともに、円板弁7と弁座リング12の接触抵抗が抑えられることで、円板弁7を駆動するために第1シャフト5の回動に要するトルクを減らすことができ、電動アクチュエータ10を小型化することができる。
また、開弁時に弁座リング12と円板弁7とが強制的に離されることで、弁本体3が閉弁ロックする不具合を回避することができ、EGRバルブの信頼性を高めることができる。
【実施例3】
【0062】
図10を参照して実施例3を説明する。
〔実施例3の特徴技術1〕
上記実施例2では、図10(a)に示すように、弁座部品13を樹脂で設ける例を示した。即ち、弁座リング12、径方向ベローダイヤフラム21および固定リング22を、樹脂で一体成形する例を示した。
これに対し、この実施例3では、図10(b)に示すように、弁座部品13を弾性変形可能な金属板(金属スプリング)によって設けるものである。即ち、弁座リング12、径方向ベローダイヤフラム21および固定リング22を、金属スプリングによって一体に設けるものである。このように、弁座部品13を金属材料で設けることで、耐熱性および耐久性を向上させることができ、EGRバルブの信頼性を高めることができる。
【0063】
〔実施例3の特徴技術2〕
上記実施例2では、図10(a)に示すように、流れ方向スラスト手段23(径方向ベローダイヤフラム21によって径方向に支持される弁座リング12を円板弁7に当接させる手段)を径方向ベローダイヤフラム21に設ける例を示した。具体的には、径方向ベローダイヤフラム21の内径側がEGRガス流の下流側へ位置ズレするように成形する例を示した。
これに対し、この実施例3では、図10(b)に示すように、弁座リング12のEGRガス流の下流側の端部を、径方向ベローダイヤフラム21の最内径よりもEGRガス流の下流側に延長することで流れ方向スラスト手段23を設けている。これにより、閉弁時に弁座リング12の弁座シート面12aが円板弁7に押し付けられ、閉弁時において、円板弁7が弁座シート面12aに着座するとともに、円板弁7に対して弁座リング12を調芯させることができる。
【実施例4】
【0064】
図11を参照して実施例4を説明する。
上記実施例1では、図11(a)に示すように、弁座部品13を樹脂で設ける例を示した。即ち、弁座リング12と、環状係合部14aを含むベローズ14とを、樹脂で一体成形する例を示した。
これに対し、この実施例4では、図11(b)に示すように、弁座部品13を弾性変形可能な金属板(金属スプリング)によって設けるものである。即ち、弁座リング12と、環状係合部14aを含むベローズ14とを、金属スプリングによって一体に設けるものである。このように、弁座部品13を金属材料で設けることで、耐熱性および耐久性を向上させることができ、EGRバルブの信頼性を高めることができる。
【実施例5】
【0065】
図12、図13を参照して実施例5を説明する。
〔実施例5の特徴技術1〕
上記実施例1では、EGRバルブの組付け手順として、(i)先ずEGR流路1の内部において、第1シャフト5の下端と第1弁支持部8とのルーズ嵌合を行うとともに、第2シャフト6の上端と第2弁支持部9とのルーズ嵌合を行い、(ii)次に、第1シャフト5の下端と第1弁支持部8とのルーズ嵌合部と、第2シャフト6の上端と第2弁支持部9とのルーズ嵌合部とを、それぞれ溶接することで、弁本体3を第1、第2シャフト5、6に溶接固定する例を示した。
【0066】
これに対し、この実施例5では、図12に示すように、電動アクチュエータ10に組付けられた第1シャフト5および第2シャフト6に、弁本体3を予め溶接等で固定しておく。その後、図13(a)に示すように、弁本体3等が固定された電動アクチュエータ10の環状凸部10aを、EGR流路1を内部に形成するハウジング2の組付開口部2aにインロー嵌合させ、電動アクチュエータ10をハウジング2にネジ等で締結して組付けを完了するものである。このように設けることで、EGRバルブの組付け性を向上させることができる。
なお、第1シャフト5は、電動アクチュエータ10の内部に組付けられた軸受によって回転自在に支持されるものである。
【0067】
〔実施例5の特徴技術2〕
上記に示したこの実施例5の組付け方法を採用すると、図13(a)に示すように、弁座リング12の周囲がEGR流路1の内壁面によって支持されなくなり、弁座リング12が弁本体3の円板弁7に対して位置ズレする可能性がある。
そこで、この実施例5の弁座部品13(具体的には、弁座リング12におけるEGRガス流の下流側の端面)には、図13(b)に示すように、第1シャフト5および第2シャフト6をそれぞれ両側から挟むガイド突起24が一体に設けられている。
【0068】
そして、第1シャフト5および第2シャフト6のそれぞれを、弁座部品13に設けられたガイド突起24で挟むことで、弁座リング12が弁本体3の円板弁7に対して位置ズレする不具合を回避することができる。
なお、第1、第2シャフト5、6を挟むガイド突起24の距離(シャフトが挿入される距離)は、挟まれる部位の第1、第2シャフト5、6のシャフト径より大きく設定されるものであり、円板弁7に対して所定範囲内で弁座リング12が変位可能に支持されて、弁本体3のプレス成形の誤差を吸収できるように設けられている。
【産業上の利用可能性】
【0069】
上記の実施例では、本発明をEGRバルブに適用する例を示したが、流体は排気ガスに限定されるものではなく、気体流体や液体流体の開閉や、流量または圧力調整を行なう他のバルブ装置に本発明を適用しても良い。
【符号の説明】
【0070】
1 EGR流路(流体通路)
1a 段差
2 ハウジング
3 弁本体
4 シャフト
5 第1シャフト
6 第2シャフト
7 円板弁
7a 弁側当接部
7b 円板弁の外周先端
8 第1弁支持部
9 第2弁支持部
12 弁座リング
12a 弁座シート面
13 弁座部品
14 ベローズ(流れ方向変位支持手段)
14a 環状係合部
15 径方向変位支持手段
15a 薄肉膨出部
16 シャフトカム部
21 径方向ベローダイヤフラム
23 流れ方向スラスト手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が通過可能な流体通路(1)を形成するハウジング(2)と、前記流体通路(1)内で回動することで前記流体通路(1)を開閉あるいは前記流体通路(1)の通路面積を可変させる弁本体(3)と、前記ハウジング(2)に対して回転自在に支持されて前記弁本体(3)を回動駆動するシャフト(4)とを具備し、
前記流体通路(1)の中心線に対して、前記シャフト(4)の中心線が垂直に配置されるバルブ装置において、
前記シャフト(4)は、外部より回動方向の駆動力が付与される第1シャフト(5)と、この第1シャフト(5)の中心軸上に配置される第2シャフト(6)とからなり、前記第1シャフト(5)と前記第2シャフト(6)とが前記流体通路(1)の内部で離れた状態で配置されるものであり、
前記弁本体(3)は、
円板形状を呈して前記流体通路(1)を閉塞可能な円板弁(7)と、
この円板弁(7)の外周側に設けられて前記円板弁(7)と前記第1シャフト(5)を連結する第1弁支持部(8)と、
この第1弁支持部(8)とは異なった側における前記円板弁(7)の外周側に設けられて前記円板弁(7)と前記第2シャフト(6)を連結する第2弁支持部(9)とを備え、 前記円板弁(7)の板面に沿う方向から見て、前記円板弁(7)、前記第1、第2弁支持部(8、9)の3者によって略コ字形状を成すことを特徴とするバルブ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のバルブ装置において、
このバルブ装置は、前記弁本体(3)が前記流体通路(1)を閉塞する際に前記円板弁(7)の外周部に当接して、前記流体通路(1)と前記円板弁(7)との隙間を閉塞する弁座リング(12)を有した弁座部品(13)を備え、
前記円板弁(7)、前記第1、第2弁支持部(8、9)の3者は、金属板のプレス成形品であり、
前記弁座リング(12)において前記円板弁(7)が当接する弁座シート面(12a)は、前記円板弁(7)の配置方向に向かって曲線的あるいは直線的に拡径するテーパ面に設けられ、
前記弁座部品(13)は、前記弁座リング(12)を前記流体通路(1)の流れ方向へ変位可能に支持する流れ方向変位支持手段(14)と、前記弁座リング(12)を前記流体通路(1)の全ての径方向へ変位可能に支持する径方向変位支持手段(15)とを有することを特徴とするバルブ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のバルブ装置において、
前記第1、第2シャフト(5、6)には、前記円板弁(7)が前記流体通路(1)を開く際に前記弁座リング(12)と接触して、この弁座リング(12)を前記円板弁(7)から離れる側に押圧移動させるシャフトカム部(16)が形成されていることを特徴とするバルブ装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のバルブ装置において、
前記流れ方向変位支持手段(14)は、前記円板弁(7)より流体上流側に配置されるベローズであり、
このベローズ(14)は、流体上流側において前記流体通路(1)の内壁に形成された段差(1a)に係合する環状係合部(14a)を備え、この環状係合部(14a)より流体下流側に前記ベローズ(14)の蛇腹部および前記弁座リング(12)が配置されることを特徴とするバルブ装置。
【請求項5】
請求項2〜請求項4のいずれかに記載のバルブ装置において、
前記径方向変位支持手段(15)は、前記弁座リング(12)の外周側に設けた3箇所以上の薄肉膨出部(15a)によって設けられ、
この薄肉膨出部(15a)によるバネ作用により、前記弁座リング(12)が前記流体通路(1)の全ての径方向へ変位可能に支持されることを特徴とするバルブ装置。
【請求項6】
請求項2〜請求項5のいずれかに記載のバルブ装置において、
前記弁座部品(13)は、表面が円滑な樹脂材料によって一部品で設けられていることを特徴とするバルブ装置。
【請求項7】
請求項2〜請求項6のいずれかに記載のバルブ装置において、
前記円板弁(7)において前記弁座リング(12)に当接する弁側当接部(7a)は、球面形状に設けられていることを特徴とするバルブ装置。
【請求項8】
請求項7に記載のバルブ装置において、
前記円板弁(7)において前記弁側当接部(7a)よりさらに外周に設けられる外周先端(7b)は、全周に亘ってナイフエッジ形状に設けられていることを特徴とするバルブ装置。
【請求項9】
請求項1に記載のバルブ装置において、
このバルブ装置は、前記弁本体(3)が前記流体通路(1)を閉塞する際に前記円板弁(7)の外周部に当接して、前記流体通路(1)と前記円板弁(7)との隙間を閉塞する弁座リング(12)を有した弁座部品(13)を備え、
前記円板弁(7)、前記第1、第2弁支持部(8、9)の3者は、金属板のプレス成形品であり、
前記弁座リング(12)において前記円板弁(7)が当接する弁座シート面(12a)は、前記円板弁(7)の配置方向に向かって曲線的あるいは直線的に拡径するテーパ面に設けられ、
前記弁座部品(13)は、
前記弁座リング(12)の外径側に設けられ、径方向に弾性変形可能な蛇腹部を成し、前記弁座リング(12)を、前記流体通路(1)の流れ方向および前記流体通路(1)の全ての径方向へ変位可能に支持する径方向ベローダイヤフラム(21)と、
この径方向ベローダイヤフラム(21)の外径側に設けられ、前記流体通路(1)の内壁に固定される固定リング(22)とを備えることを特徴とするバルブ装置。
【請求項10】
請求項9に記載のバルブ装置において、
前記弁座部品(13)は、前記弁座リング(12)の流体下流側の端部を、前記径方向ベローダイヤフラム(21)の最外径の流体下流側の端部より、流体下流側へズレて配置させる流れ方向スラスト手段(23)を備え、
この流れ方向スラスト手段(23)は、
前記径方向ベローダイヤフラム(21)に対する無負荷状態において、前記径方向ベローダイヤフラム(21)の最外径より最内径が流体下流側へ位置ズレするように前記径方向ベローダイヤフラム(21)を成形することで設けられる、
あるいは、前記径方向ベローダイヤフラム(21)の最内径よりも、前記弁座リング(12)の流体下流側の端部を流体下流側に延長することで設けられることを特徴とするバルブ装置。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載のバルブ装置において、
前記第1、第2シャフト(5、6)には、前記円板弁(7)が前記流体通路(1)を開く際に前記弁座リング(12)と接触して、この弁座リング(12)を前記円板弁(7)から離れる側に押圧移動させるシャフトカム部(16)が形成されていることを特徴とするバルブ装置。
【請求項1】
流体が通過可能な流体通路(1)を形成するハウジング(2)と、前記流体通路(1)内で回動することで前記流体通路(1)を開閉あるいは前記流体通路(1)の通路面積を可変させる弁本体(3)と、前記ハウジング(2)に対して回転自在に支持されて前記弁本体(3)を回動駆動するシャフト(4)とを具備し、
前記流体通路(1)の中心線に対して、前記シャフト(4)の中心線が垂直に配置されるバルブ装置において、
前記シャフト(4)は、外部より回動方向の駆動力が付与される第1シャフト(5)と、この第1シャフト(5)の中心軸上に配置される第2シャフト(6)とからなり、前記第1シャフト(5)と前記第2シャフト(6)とが前記流体通路(1)の内部で離れた状態で配置されるものであり、
前記弁本体(3)は、
円板形状を呈して前記流体通路(1)を閉塞可能な円板弁(7)と、
この円板弁(7)の外周側に設けられて前記円板弁(7)と前記第1シャフト(5)を連結する第1弁支持部(8)と、
この第1弁支持部(8)とは異なった側における前記円板弁(7)の外周側に設けられて前記円板弁(7)と前記第2シャフト(6)を連結する第2弁支持部(9)とを備え、 前記円板弁(7)の板面に沿う方向から見て、前記円板弁(7)、前記第1、第2弁支持部(8、9)の3者によって略コ字形状を成すことを特徴とするバルブ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のバルブ装置において、
このバルブ装置は、前記弁本体(3)が前記流体通路(1)を閉塞する際に前記円板弁(7)の外周部に当接して、前記流体通路(1)と前記円板弁(7)との隙間を閉塞する弁座リング(12)を有した弁座部品(13)を備え、
前記円板弁(7)、前記第1、第2弁支持部(8、9)の3者は、金属板のプレス成形品であり、
前記弁座リング(12)において前記円板弁(7)が当接する弁座シート面(12a)は、前記円板弁(7)の配置方向に向かって曲線的あるいは直線的に拡径するテーパ面に設けられ、
前記弁座部品(13)は、前記弁座リング(12)を前記流体通路(1)の流れ方向へ変位可能に支持する流れ方向変位支持手段(14)と、前記弁座リング(12)を前記流体通路(1)の全ての径方向へ変位可能に支持する径方向変位支持手段(15)とを有することを特徴とするバルブ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のバルブ装置において、
前記第1、第2シャフト(5、6)には、前記円板弁(7)が前記流体通路(1)を開く際に前記弁座リング(12)と接触して、この弁座リング(12)を前記円板弁(7)から離れる側に押圧移動させるシャフトカム部(16)が形成されていることを特徴とするバルブ装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のバルブ装置において、
前記流れ方向変位支持手段(14)は、前記円板弁(7)より流体上流側に配置されるベローズであり、
このベローズ(14)は、流体上流側において前記流体通路(1)の内壁に形成された段差(1a)に係合する環状係合部(14a)を備え、この環状係合部(14a)より流体下流側に前記ベローズ(14)の蛇腹部および前記弁座リング(12)が配置されることを特徴とするバルブ装置。
【請求項5】
請求項2〜請求項4のいずれかに記載のバルブ装置において、
前記径方向変位支持手段(15)は、前記弁座リング(12)の外周側に設けた3箇所以上の薄肉膨出部(15a)によって設けられ、
この薄肉膨出部(15a)によるバネ作用により、前記弁座リング(12)が前記流体通路(1)の全ての径方向へ変位可能に支持されることを特徴とするバルブ装置。
【請求項6】
請求項2〜請求項5のいずれかに記載のバルブ装置において、
前記弁座部品(13)は、表面が円滑な樹脂材料によって一部品で設けられていることを特徴とするバルブ装置。
【請求項7】
請求項2〜請求項6のいずれかに記載のバルブ装置において、
前記円板弁(7)において前記弁座リング(12)に当接する弁側当接部(7a)は、球面形状に設けられていることを特徴とするバルブ装置。
【請求項8】
請求項7に記載のバルブ装置において、
前記円板弁(7)において前記弁側当接部(7a)よりさらに外周に設けられる外周先端(7b)は、全周に亘ってナイフエッジ形状に設けられていることを特徴とするバルブ装置。
【請求項9】
請求項1に記載のバルブ装置において、
このバルブ装置は、前記弁本体(3)が前記流体通路(1)を閉塞する際に前記円板弁(7)の外周部に当接して、前記流体通路(1)と前記円板弁(7)との隙間を閉塞する弁座リング(12)を有した弁座部品(13)を備え、
前記円板弁(7)、前記第1、第2弁支持部(8、9)の3者は、金属板のプレス成形品であり、
前記弁座リング(12)において前記円板弁(7)が当接する弁座シート面(12a)は、前記円板弁(7)の配置方向に向かって曲線的あるいは直線的に拡径するテーパ面に設けられ、
前記弁座部品(13)は、
前記弁座リング(12)の外径側に設けられ、径方向に弾性変形可能な蛇腹部を成し、前記弁座リング(12)を、前記流体通路(1)の流れ方向および前記流体通路(1)の全ての径方向へ変位可能に支持する径方向ベローダイヤフラム(21)と、
この径方向ベローダイヤフラム(21)の外径側に設けられ、前記流体通路(1)の内壁に固定される固定リング(22)とを備えることを特徴とするバルブ装置。
【請求項10】
請求項9に記載のバルブ装置において、
前記弁座部品(13)は、前記弁座リング(12)の流体下流側の端部を、前記径方向ベローダイヤフラム(21)の最外径の流体下流側の端部より、流体下流側へズレて配置させる流れ方向スラスト手段(23)を備え、
この流れ方向スラスト手段(23)は、
前記径方向ベローダイヤフラム(21)に対する無負荷状態において、前記径方向ベローダイヤフラム(21)の最外径より最内径が流体下流側へ位置ズレするように前記径方向ベローダイヤフラム(21)を成形することで設けられる、
あるいは、前記径方向ベローダイヤフラム(21)の最内径よりも、前記弁座リング(12)の流体下流側の端部を流体下流側に延長することで設けられることを特徴とするバルブ装置。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載のバルブ装置において、
前記第1、第2シャフト(5、6)には、前記円板弁(7)が前記流体通路(1)を開く際に前記弁座リング(12)と接触して、この弁座リング(12)を前記円板弁(7)から離れる側に押圧移動させるシャフトカム部(16)が形成されていることを特徴とするバルブ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−69482(P2011−69482A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235408(P2009−235408)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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