説明

バルブ装置

【課題】拡張室或いはチャンバの大型化を招かずに逆流圧の伝播を抑制できるバルブ装置を提供すること。
【解決手段】入力ポート11aと出力ポート12c、弁体13及びアクチュエータ15を有するバルブ本体10の入力ポート11aに出口32aから入口31aへの流れを阻止する逆止め弁30の出口32aを接続してなるバルブ装置において、逆止め弁30に前記入口31aと前記出口32aとを常に連通するバイパス通路33bを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体流路の開閉を行うバルブ装置に関し、バルブ装置の閉弁時に生じる脈動(具体的には、流体の供給側に逆流伝播する圧力変動)を抑える技術に関する。
【背景技術】
【0002】
バルブ装置において、弁体によって弁口を急激に閉塞すると、流体の流れが急激に停止し、弁口の上流側へ向けて圧力波が発生する現象(所謂、ウォーターハンマー現象)が知られている。
【0003】
具体的な一例を示すと、エンジンの吸気側とキャニスタとの間に接続されパージバルブとして用いられる電磁弁(バルブ装置の一例)が閉弁された際、閉弁に伴う圧力波が電磁弁で発生し、その圧力波がキャニスタに伝わって、キャニスタから電磁弁の閉弁に伴う作動音(騒音)が発生する。
【0004】
この作動音は弱(低)いが、異音として知覚されるため、特に乗用車では問題となる。電磁弁の閉弁時に生じる脈動を抑える技術として、入力ポートの上流側に拡張室を設ける技術や、弁口と入力ポートとの間の流体通路にチャンバ(容積を大きくしたボリューム室)を設ける技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−295960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
脈動低減効果は、拡張室或いはチャンバの容積(ボリューム)に依存する。近年、パージバルブの大流量化が図られ、それによる逆流圧力の増加に伴い拡張室或いはチャンバを大型化する必要があった。拡張室或いはチャンバを大型化すると、設置スペースが大きくなり配管の取り回し等が煩雑になるといった問題を有していた。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、拡張室或いはチャンバの大型化を招かずに逆流圧の伝播を阻止できるバルブ装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するためになされた本発明のバルブ装置は、流体の供給を受ける入力ポートと、流体の排出を行う出力ポートと、前記入力ポートと前記出力ポートを連通する弁口の開閉を行う弁体と、前記弁体を駆動するアクチュエータと、を有するバルブ本体と、出口から入口への流れを阻止する逆止め弁とを備え、前記バルブ本体の前記入力ポートに前記逆止め弁の前記出口が接続されていることを特徴とする。
【0009】
入力ポートに逆止め弁が接続されているので、拡張室なしで上流側への逆流圧の伝播を阻止することができる。
【0010】
上記のバルブ装置において、逆止め弁が前記入口と前記出口とを常に連通するバイパス通路を備えるとよい。
【0011】
バイパス通路を備えているのでバルブ装置を用いたシステム全体の漏れ検査を行うことができる。
【0012】
また、前記バイパス通路は断面積が8mm未満の穴を備えるとよい。
【0013】
穴の断面積が8mm未満であるので、逆流圧の上流側への伝播を抑制してシステムの漏れ検査を効率よく行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
入力ポートに逆止め弁が接続されているので、拡張室なしで上流側への逆流圧の伝播を阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態に係るバルブ装置の断面図である。
【図2】図1のバルブ装置の逆止め弁の動作を説明する図である。
【図3】実施形態に係るバルブ装置について測定した逆流圧伝播波形を示すグラフである。
【図4】パージシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態)
本実施形態のバルブ装置は、図1、2に示すように、パージバルブとして用いられるノーマリ・クローズタイプのバルブ本体(電磁弁)10と逆止め弁30を備えている。
【0017】
バルブ本体10は、流体の供給を受ける入力ポート11aを側壁に備え流体の流路R及びチャンバCHを形成するハウジング11と、一端側に流路Rに連通する弁口12aを備え他端側にエンジンの吸気管に接続される出力ポート12cが形成され且つハウジング11の上部開口を覆うフランジ12dを備える出力ポート部12とを有している。また、入力ポート11aと出力ポート12cを連通する弁口12aの開閉を行う弁体13と、弁体13を駆動して弁口12aを閉じる電磁駆動部(アクチュエータ)15を備えている。なお、16は、フィルタである。
【0018】
電磁駆動部15は、弁体13が取り付けられたムービングコア15aの他に、このムービングコア15aを閉弁方向に付勢するリターンスプリング15bと、このリターンスプリング15bの付勢力(閉弁力)に抗してムービングコア15aを開弁方向へ磁気吸引するソレノイド15cとを備える。
【0019】
ムービングコア15aは、上端に弁体13が取り付けられたカップ形状を呈する可動子であり、磁性体金属(例えば、鉄などの強磁性材料)製である。
【0020】
リターンスプリング15bは、ムービングコア15aを閉弁方向(上方向)へ付勢する圧縮コイルスプリングであり、ムービングコア15aとムービングコア15a内に設けられたスプリング保持部15dとの間で圧縮配置される。
【0021】
ソレノイド15cは、コイル21、磁気固定子(ヨーク22、ステータ23、磁性リング(不図示))を備え、コネクタ(不図示)によって通電制御されるものである。
【0022】
逆止め弁30は、ケース31とケース31の一端側開口部を覆うカップ32と、ケース31とカップ32で区画される部屋を第1室R1と第2室R2に分割するホルダー33を備えている。
【0023】
ケース31は第1室R1に開口する入口31aを備え、カップ32は第2室R2に開口する出口32aを備えている。
【0024】
ホルダー33には第1室R1と第2室R2を連通するメイン通路33aが形成されている。また、ホルダー33には、第1室R1が第2室R2より圧力が低いときメイン通路33aを閉塞するゴム製のアンブレラ34が装着されている。
【0025】
アンブレラ34は、傘部34aと軸部34bと座部34cとを備えており、座部34cが第1室R1側に配置され、傘部34aが第2室R2側に配置されている。第1室R1と第2室R2との間に圧力差がないときは、傘部34aの周縁部がホルダー33の第2室R2側の面に当接している。
【0026】
第2室R2が第1室R1より圧力が高いとき、その圧力差で傘部34aは弾性変形してその周縁部がホルダー33の第2室R2側の面に押し付けられ、メイン通路33aが完全に閉塞される。したがって、出口32aから入口31aへのメイン通路33aを通しての逆流れが阻止され、逆流圧の伝播が阻止される。
【0027】
一方、第2室R2が第1室R1より圧力が低いとき、その圧力差で弾性変形して軸部34bが伸びると共に傘部34aの周縁部がホルダー33の第2室R2側の面から離れ、メイン通路33aが開かれる(図2参照。)。したがって、入口31aから出口32aへの順流れが可能になる。
【0028】
バルブ本体10の漏れも検査することができるように、ホルダー33には第1室R1と第2室R2を連通するバイパス通路33bが形成されている。バイパス通路33bは、アンブレラ34の外側に形成されており、アンブレラ34の作用を受けることがない。したがって、第1室R1と第2室R2とはバイパス通路33bで常に連通している。
【0029】
しかし、バイパス通路33bの穴の断面積が大きいと、バイパス通路33bを通しての逆流圧の伝播が増えてしまう。発明者らの実験によれば、バイパス通路33bの穴の断面積が8mm未満(円形の穴であれば、直径が3mm未満程度)であれば、逆流圧の伝播が許容されることが分かった。
【0030】
一方、バイパス通路33bの穴の断面積が小さいと漏れ検査の時間が長くなってしまうので、逆流圧の伝播量と漏れ検査時間との間にはトレードオフの関係がある。発明者らの実験によれば、バイパス通路33bの穴の断面積が約0.8mm(直径1mmの穴)であれば、逆流圧の伝播量と漏れ検査時間の両方にとって、好ましいことが分かった。
【0031】
そこで、本実施形態では、バイパス通路33bの穴の断面積を0.8mm(バイパス通路33bを直径1mmの円形通路)にしてある。
【0032】
次に、上記構成よりなるバルブ装置の基本動作を説明する。
【0033】
バルブ本体10の出力ポート12cを負圧発生部(エンジン吸気管:不図示)に接続した状態で電子制御装置(不図示)により、バルブ本体10がON(具体的には電磁駆動部15のコイル21に電流が供給)されると、ムービングコア15aがステータ23に磁気吸引されて、リターンスプリング15bの付勢力に抗してムービングコア15aが下方(開弁方向)へ移動する。その結果、ムービングコア15aに取り付けられた弁体13も開弁方向へ移動し、弁体13が弁口12aを開く。これによって、入力ポート11aと出力ポート12cが弁口12aを介して連通する。
【0034】
すると、入力ポート11aに接続された逆止め弁30の出口32aを介して第2室R2が負圧になり、アンブレラ34が弾性変形して軸部34bが伸びると共に傘部34aの周縁部がホルダー33の第2室R2側の面から離れ、メイン通路33aが開かれる(図2参照。)。その結果、流体が入口31aから吸引される。
【0035】
電子制御装置により、バルブ本体10がOFF(具体的には電磁駆動部15のコイル21への電流の供給が停止)されると、コイル21の発生していた磁力が喪失するため、リターンスプリング15bの付勢力によってムービングコア15aが上方(閉弁方向)へ移動する。その結果、ムービングコア15aに取り付けられた弁体13も閉弁方向へ移動し、弁体13が弁口12aを閉塞する。
【0036】
弁体13が弁口12aを閉塞すると、弁口12aから上流側に圧力波が発生する。発生した圧力波は、出口32aから第2室R2に伝播する。すると、第2室R2が第1室R1より圧力が高くなり、アンブレラ34が弾性変形して軸部34bが縮む共に傘部34aの周縁部がホルダー33の第2室R2側の面に押し付けられ、メイン通路33aが閉塞される(図1参照。)。したがって、出口32aから入口31aへのメイン通路33aを通しての逆流れが阻止され、逆流圧の伝播が抑制される。
【0037】
次に、本実施形態に係るバルブ装置の逆流圧の伝播量を調べた結果を説明する。図3はバルブ本体10の出力ポート12cに負圧発生部(不図示)から−66.7kPaの負圧を印加し、逆止め弁30の入口31aに圧力センサを装着して測定した圧力波形である。圧力波形Eが入口30aにおける波形である。圧力波形Cは比較のための波形であり、従来のバルブ装置(本発明のバルブ装置から逆止め弁30を削除したバルブ本体10に相当)の入力ポート11aにおける波形である。
【0038】
図3において、0.035sで弁口が開から閉に切り替わるが、比較例の波形Cでは逆流圧P〜0.6kPaであるのに対して、波形Eでは逆流圧P〜0.06kPaであることがわかる。すなわち、本発明のバルブ装置の逆流圧は従来のバルブ装置の逆流圧の約10分の1であることがわかる。
【0039】
次に、漏れ検査の方法を説明する。自動車には、図4に示すように、燃料タンク1で気化した燃料を吸着して保持するキャニスタ2が設けられている。このキャニスタ2は、大気導入通路3を介して大気が導入可能に設けられている。また、キャニスタ2は、パージ通路4を介して吸気管5の負圧発生部分(スロットルバルブ6の下流)に接続されている。そして、エンジンの運転中に、大気導入通路3に設けられた大気解放弁7を開いて、外部からキャニスタ2内に空気を導入するとともに、パージ通路4に設けられたパージバルブ(本発明のバルブ装置)8を開いて、キャニスタ2内に保持された気化燃料を吸気管5へ導くように設けられている。パージバルブ8と燃料タンク1との間には圧力センサ9が装着されている。なお、図4中の符号10はフィルタである。
【0040】
エンジンが停止すると、大気解放弁7が閉じられて圧力センサ9でパージバルブ8と燃料タンク1の間の圧力がモニタされる。パージバルブ8と燃料タンク1の間に漏れがないと、エンジン停止以降、温度低下により圧力が低下し、最終的に一定の低い圧力値を示す。漏れがあると、最終の圧力値は漏れがないときの圧力値より高いので、漏れを検出することができる。本発明のバルブ装置8は逆止め弁30の第1室R1と第2室R2が常にバイパス通路33bで連通されているので、燃料タンク1からバルブ本体10の弁口12aまでの間の漏れを検査することができる。
【0041】
本実施形態のバルブ装置では逆止め弁30にアンブレラ式逆止め弁を用いたが、ポペット式逆止め弁でもボール式逆止め弁でもよい。
【符号の説明】
【0042】
10・・・・・・・バルブ本体
11a・・・・・入力ポート
12c・・・・・出力ポート
12a・・・・・弁口
13・・・・・・弁体
15・・・・・・アクチュエータ(電磁駆動部)
30・・・・・・・逆止め弁
31a・・・・・入口
32a・・・・・出口
33b・・・・・バイパス通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の供給を受ける入力ポートと、流体の排出を行う出力ポートと、前記入力ポートと前記出力ポートを連通する弁口の開閉を行う弁体と、前記弁体を駆動するアクチュエータと、を有するバルブ本体と、
出口から入口への流れを阻止する逆止め弁と、を備え、
前記バルブ本体の前記入力ポートに前記逆止め弁の前記出口が接続されていることを特徴とするバルブ装置。
【請求項2】
前記逆止め弁は、前記入口と前記出口とを常に連通するバイパス通路を備える請求項1に記載のバルブ装置。
【請求項3】
前記バイパス通路は断面積が8mm未満の穴を備える請求項2に記載のバルブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−24399(P2013−24399A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162885(P2011−162885)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(592056908)浜名湖電装株式会社 (59)
【Fターム(参考)】