説明

パターン形成方法、パターン形成装置及び回路基板

【課題】加熱される液滴吐出ヘッドを、簡単な構成で冷却でき液滴の吐出重量の安定性を
向上させかつ精度の高いパターンを短時間に形成するパターン形成方法、パターン形成装
置及び回路基板を提供する。
【解決手段】前記基台21の一側には、冷却機構40が設けられている。冷却機構40は
、ベース41に対して冷却台42が設けられている。冷却台42の上面にはペルチェ素子
PTが設けられている。ペルチェ素子PTは、その冷却部が、上方に向くように冷却台4
2の上面に取着されている。ペルチェ素子PTは、冷却台42とともに上下動して吐出ヘ
ッド30のノズルプレートに当接するようになっている。そして、ペルチェ素子PTがノ
ズルプレートに当接することによって、吐出ヘッド30を冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成方法、パターン形成装置及び回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液滴吐出ヘッドにて機能液を液滴として吐出させて基板上に所望にパターンを形
成するインクジェット方式が有効な手段として注目されている(例えば、特許文献1)。
一般に、インクジェット方式は、ステージに載置した基板と、機能材料を含有した機能
液を液滴として基板に吐出する液滴吐出ヘッドと、基板(ステージ)と液滴吐出ヘッドを
2次元的に相対移動させる機構を備えている。そして、液滴吐出ヘッドから吐出させた液
滴を基板表面の任意の位置に配置させる。このとき、基板表面に順次配置される各液滴に
ついて、その液滴の濡れ拡がる範囲が互いに重なるように液滴を順次配置することにより
、基板表面に隙間無く機能液で覆われたパターンを形成することができる。
【0003】
ところで、基板表面が、機能液に対して撥液性を有している場合には、基板表面と機能
液とが引き合う力よりも、互いに接する液滴同士が表面張力によって引き合う力が強く、
機能液が局所的に集中するといった現象が起こる。このような局所的な集中が生じると、
基板表面が機能液で均一に覆われなくなり、最悪な場合には、基板表面の一部が機能液の
欠如のため露出するといった問題が生じる。
【0004】
そのため、互いに接する液滴同士を重ねる場合、先に着弾した液滴が充分に乾燥した後
に次の液滴を着弾させる必要があり、パターン形成に時間を要していた。そこで、基板を
予め加熱をしておき、着弾した液滴を速やかに乾燥させる方法が提案されている(例えば
、特許文献2、特許文献3)。
【特許文献1】特開2004−347695号 公報
【特許文献2】特開2004−306372号 公報
【特許文献3】特開平11−281985号 公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、液滴吐出ヘッドのノズル形成面と基板との間の距離が非常に狭い。その
結果、上記のように基板を加熱した状態で液滴を吐出して基板上にパターンを形成する際
に、液滴吐出ヘッドは、加熱された基板からの熱で加熱される。その結果、液滴吐出ヘッ
ドから吐出される機能液は加温され粘性が低下、ノズルプレートの熱膨張により、ノズル
ピッチの変動、液滴吐出ヘット内部に付着した溶液の乾燥等、種々の問題を含んでいた。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、加熱される液
滴吐出ヘッドを、簡単な構成で冷却でき液滴の吐出重量の安定性を向上させかつ精度の高
いパターンを短時間に形成することができるパターン形成方法、パターン形成装置及び回
路基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のパターン形成方法は、液滴吐出ヘッドにて機能材料を含む機能液の液滴を基体
に向かって順次吐出し、前記基体の表面にパターンを描画するパターン形成方法であって
、前記基体の表面温度を、吐出時の機能液の温度以上かつ機能液に含まれる液体組成の沸
点未満の温度に加熱した状態で、前記液滴を前記基体に吐出させる第1の行程と、前記液
滴吐出ヘッドを、前記基体の表面温度未満の冷却手段に接触させて冷却する第2の行程と
を有し、第1の行程と第2の行程を適宜選択しながらパターンを描画するパターン形成方
法である。
【0008】
本発明のパターン形成方法によれば、第1の行程によって、加熱された基体に着弾した
液滴は、基体上で突沸することなく直ちに乾燥されることからパターンを短時間に形成す
ることができる。また、加熱されている基体からの放熱によって加温される液滴吐出ヘッ
ドは、第2の行程によって冷却されて、液滴吐出ヘッド中の機能液の温度上昇が抑えられ
る。
【0009】
本発明のパターン形成装置は、液滴吐出ヘッドを基体に対して相対移動させ、前記液滴
吐出ヘッドにて機能材料を含む機能液の液滴を前記基体に向かって順次吐出させて、前記
基体の表面にパターンを描画するパターン形成装置であって、前記パターンの描画エリア
から離間した位置に配置された冷却手段と、前記液滴吐出ヘッドを前記描画エリアから前
記冷却手段に移動させる移動手段とを備えた。
【0010】
本発明のパターン形成装置によれば、液滴を吐出させて基体上にパターンを描画してい
る液滴吐出ヘッドは、冷却手段まで移動させて、同冷却手段にて冷却される。従って、例
えば、液滴の乾燥速度を上げるために基体が加熱されその熱によりヘッドが加熱され機能
液の温度が上昇しても、液滴吐出ヘッドを描画エリアの外に配置した冷却手段に接触させ
ればその温度上昇はおさえられる。
【0011】
このパターン形成装置において、前記冷却手段は、前記描画エリアから離間した位置に
配置された基台と、前記基台の上面に、その冷却部が前記液滴吐出ヘッドのノズル形成面
と相対向するように配置したペルチェ素子とからなり、前記移動手段は、前記液滴吐出ヘ
ッドを、前記ノズル形成面が前記基台に設けられた前記ペルチェ素子と相対向する位置に
移動させる第1の移動手段と、前記基台を、前記ペルチェ素子の冷却部が前記液滴吐出ヘ
ッドのノズル形成面に当接する位置に移動させる第2の移動手段とからなる。
【0012】
このパターン形成装置によれば、液滴吐出ヘッドのノズル形成面はペルチェ素子の冷却
部と当接することによって、効率良く液滴吐出ヘッドは冷却される。
このパターン形成装置において、前記冷却手段は、前記描画エリアから離間した位置に
配置された基台と、前記基台の上面に、冷媒を循環させて冷却された面が前記液滴吐出ヘ
ッドのノズル形成面と相対向するように配置した冷却板とからなり、前記移動手段は、前
記液滴吐出ヘッドを、前記ノズル形成面が前記基台に設けられた前記冷却板と相対向する
位置に移動させる第1の移動手段と、前記基台を、前記冷却板の冷却された面が前記液滴
吐出ヘッドのノズル形成面に当接する位置に移動させる第2の移動手段とからなる。
【0013】
このパターン形成装置によれば、液滴吐出ヘッドのノズル形成面は、冷媒循環式の冷却
板と当接することによって、効率良く液滴吐出ヘッドは冷却される。
このパターン形成装置において、前記液滴吐出ヘッドのノズルをキャップ部材にて封止
し、キャップ部材にて封止した封止空間を負圧にして前記液滴吐出ヘッド内の機能液を吸
引排出するクリーニング装置を備え、前記冷却手段は、前記液滴吐出ヘッドに密着する密
着面を冷却するための冷媒と、前記キャップ部材に形成した前記冷媒を循環させる循環流
路とからなる。
【0014】
このパターン形成装置によれば、クリーニング装置に冷却手段を設けたので、冷却手段
を独立に設けるのに比べて構造が複雑にならず省スペース化を図ることができる。
このパターン形成装置において、前記基体は、多孔質性基板であってセラミック粒子と
樹脂とから構成される低温焼成用シートであり、前記機能液は、機能材料として金属粒子
を分散させた液体である。
【0015】
このパターン形成装置によれば、多孔質性基板上に金属膜からなるパターンを綺麗にし
かも短時間に形成することができる。
本発明の回路基板は、回路素子を実装するとともにその実装した回路素子に対して電気
的に接続された配線が形成された回路基板において、請求項2〜6のいずれか1に記載の
パターン形成装置で形成した配線を有した。
【0016】
本発明の回路基板によれば、より生産性を上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を、LTCC多層基板(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics
多層基板)に半導体チップを実装してなる回路モジュールであって、そのLTCC多層基
板を構成する複数の低温焼成基板(グリーンシート)に描画する配線パターンの形成に具
体化した一実施形態を図1〜図9に従って説明する。
【0018】
まず、LTCC多層基板に半導体チップを実装してなる回路モジュールについて説明す
る。図1は、回路モジュール1の断面図を示し、回路モジュール1は、板状に形成された
LTCC多層基板2と、そのLTCC多層基板2の上側に、ワイヤーボンディング接続さ
れた半導体チップ3とを有している。
【0019】
LTCC多層基板2は、シート状に形成された複数の低温焼成基板4の積層体である。
各低温焼成基板4は、それぞれガラスセラミック系材料(例えば、ホウケイ酸アルカリ酸
化物などのガラス成分とアルミナなどのセラミック成分の混合物)の焼結体(多孔質性基
板)であって、その厚みが数百μmで形成されている。
【0020】
そして、低温焼成基板4は、その焼結前のものをグリーンシート4G(図2参照)とい
う。グリーンシート4Gは、ガラスセラミック系材料の粉末と分散媒をバインダー、整泡
剤などとともに混合してスラリーを作成しこれを板状にした後に乾燥したものである。
【0021】
各低温焼成基板4には、抵抗素子、容量素子、コイル素子などの各種の回路素子5と、
各回路素子5を電気的に接続する内部配線6と、スタックビア構造、サーマルビア構造を
呈する所定の孔径(例えば、20μm)を有した複数のビアホール7と、該ビアホール7
に充填されたビア配線8と、がそれぞれ回路設計に基づいて適宜形成されている。
【0022】
各低温焼成基板4上の各内部配線6は、それぞれ銀や銀合金などの金属微粒子の焼結体
であって、図2に示す液滴吐出装置20を利用した配線パターン形成方法によって形成さ
れる。
【0023】
図2は、液滴吐出装置20を説明する全体斜視図である。
図2において、液滴吐出装置20は、直方体形状に形成された基台21を有している。
基台21の上面には、その長手方向(Y矢印方向)に沿って延びる一対の案内溝22が形
成されている。案内溝22の上方には、案内溝22に沿ってY矢印方向及び反Y矢印方向
に移動するステージ23が備えられている。
【0024】
ステージ23の上面には、載置部24が形成されて、焼成前の基体としての低温焼成基
板4(グリーンシート4G)を載置する。載置部24は、載置された状態のグリーンシー
ト4Gをステージ23に対して位置決め固定して、グリーンシート4GをY矢印方向及び
反Y矢印方向に搬送する。前記ステージ23の上面には、ラバーヒータHが配設されてい
る。載置部24に載置されたグリーンシート4Gは、その上面全体がラバーヒータHにて
所定の温度に加熱されるようになっている。
【0025】
基台21には、Y矢印方向と直交する方向(X矢印方向)に跨ぐ門型のガイド部材25
が架設されている。ガイド部材25の上側には、X矢印方向に延びるインクタンク26が
配設されている。インクタンク26は、機能液としての金属インクFを貯留し、貯留する
金属インクFを液滴吐出ヘッド(以下単に、吐出ヘッドという。)30に所定の圧力で供
給する。そして、吐出ヘッド30に供給された金属インクFは、吐出ヘッド30から液滴
Fb(図4参照)となってグリーンシート4Gに向かって吐出されるようになっている。
【0026】
金属インクFは、機能材料としての金属微粒子、例えば粒径が数nmの機能材料として
の金属微粒子を溶媒に分散させた分散系金属インクを用いることができる。
金属インクFに使用する金属微粒子としては、例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(
Cu)、アルミニウム(Al)、パラジウム(Pd)、マンガン(Mn)、チタン(Ti
)、タンタル(Ta)、及びニッケル(Ni)などの材料の他、これらの酸化物、並びに
超電導体の微粒子などが用いられる。金属微粒子の粒径は1nm以上0.1μm以下であ
ることが好ましい。0.1μmより大きいと吐出ヘッド30の吐出ノズルNに目詰まりが
生じるおそれがある。また、1nmより小さいと金属微粒子に対する分散剤の体積比が大
きくなり、得られる膜中の有機物の割合が過多となる。
【0027】
分散媒としては、上記の金属微粒子を分散できるもので凝集を起こさないものであれば
特に限定されない。例えば水系溶媒のほか、メタノール、エタノール、プロパノール、ブ
タノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ドデカン、テトラ
デカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロ
ナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、
またエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン
、1,3−プロパンジオールなどのポリオール類、ポリエチレングリコール、エチレング
リコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコール
メチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコール
ジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエ
タン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系化合物、
さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジ
メチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノン、乳酸エチルなどの極性
化合物を例示できる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性、また液滴吐出法
への適用の容易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好
ましく、より好ましい分散媒としては、水、炭化水素系化合物を挙げることができる。
【0028】
グリーンシート4Gに着弾した金属インクFは、グリーンシート4Gが加熱されている
ことから溶媒あるいは分散媒の蒸発は促進される。そして、グリーンシート4Gに着弾し
た金属インクFは、乾燥とともにその表面の外縁から増粘し、つまり、中央部に比べて外
周部における固形分(粒子)濃度が速く飽和濃度に達することから表面の外縁から増粘し
ていく。外縁の増粘した金属インクFは、グリーンシート4Gの面方向に沿う自身の濡れ
広がりを停止する(ピニングする)。ピニングされた状態の金属インクFは、グリーンシ
ート4Gに固定され重ね打ちされても、グリーンシート4Gに固定状態になっており、液
滴Fbの外径が変化しなくなっているため、次の液滴Fbに引き寄せられることはない。
【0029】
ガイド部材25には、そのX矢印方向略全幅にわたって、X矢印方向に延びる上下一対
のガイドレール28が形成されている。上下一対のガイドレール28には、キャリッジ2
9が取り付けられている。キャリッジ29は、ガイドレール28に案内されてX矢印方向
及び反X矢印方向に移動する。キャリッジ29には、液滴吐出ヘッド30が搭載されてい
る。
【0030】
図3は吐出ヘッド30をグリーンシート4G側から見た下面図を示し、図4は吐出ヘッ
ドの要部断面図を示す。吐出ヘッド30の下側には、ノズルプレート31が備えられてい
る。ノズルプレート31は、その下面(ノズル形成面31a)がグリーンシート4Gの上
面(吐出面4Ga)と略平行に形成されている。ノズルプレート31は、グリーンシート
4Gが吐出ヘッド30の直下に位置するとき、ノズル形成面31aと吐出面4Gaとの間
の距離(プラテンギャップ)を所定の距離(例えば、500μm)に保持する。
【0031】
図3において、ノズル形成面31aには、Y矢印方向に沿って配列された複数のノズル
Nからなる一対のノズル列NLが形成されている。一対のノズル列NLには、それぞれ1
インチ当たりに180個のノズルNが形成されている。なお、図3では、説明の都合上、
一列当りに10個のノズルNのみを記載している。
【0032】
一対のノズル列NLでは、Y矢印方向から見て、一方のノズル列NLの各ノズルNが、
他方のノズル列NLの各ノズルNの間を補間する。すなわち、吐出ヘッド30は、Y矢印
方向に、1インチ当りに180個×2=360個のノズルNを有する(最大解像度が36
0dpiである)。
【0033】
図4において、吐出ヘッド30の上側には、流路としての供給チューブ30Tが連結さ
れている。供給チューブ30Tは、Z矢印方向に延びるように配設されて、インクタンク
26からの金属インクFを吐出ヘッド30に供給する。
【0034】
各ノズルNの上側には、供給チューブ30Tに連通するキャビティ32が形成されてい
る。キャビティ32は、供給チューブ30Tからの金属インクFを収容して、対応するノ
ズルNに金属インクFを供給する。キャビティ32の上側には、上下方向に振動してキャ
ビティ32内の容積を拡大及び縮小する振動板33が貼り付けられている。振動板33の
上側には、ノズルNに対応する圧電素子PZが配設されている。圧電素子PZは、上下方
向に収縮及び伸張して振動板33を上下方向に振動させる。上下方向に振動する振動板3
3は、金属インクFを所定サイズの液滴Fbにして対応するノズルNから吐出させる。吐
出された液滴Fbは、対応するノズルNの反Z矢印方向に飛行して、グリーンシート4G
の吐出面4Gaに着弾する。
【0035】
前記基台21のX矢印方向側であって、上方を前記吐出ヘッド30がX矢印方向及び反
X矢印方向に通過する位置には、冷却手段としての冷却機構40が設けられている。冷却
機構40は、図6に示すように、前記基台21に固設されたベース41の上側に冷却台4
2が配置され、冷却台42が可動ロッド43にてベース41に対して上下動するように設
けられている。冷却台42は、その上面形状が吐出ヘッド30のノズルプレート31より
大きい相似形をなし、その上面にペルチェ素子PTが設けられている。ペルチェ素子PT
は、その冷却部PTaが、上方に向くように冷却台42の上面に取着されている。
【0036】
冷却台42の上面に取着されたペルチェ素子PTは、冷却台42とともに上下動し、図
6(a)に示す最も低い待機位置と、図6(b)に示す最も高い作用位置の2位置の間を
上下動する。そして、ペルチェ素子PTが待機位置にある時、その直上を吐出ヘッド30
が通過可能になっている。ペルチェ素子PTの直上位置に吐出ヘッド30が停止した状態
で、ペルチェ素子PTを作用位置に上動すると、図6(b)に示すように、ペルチェ素子
PTの冷却部PTaがノズルプレート31のノズル形成面31aと当接するようになって
いる。又、ペルチェ素子PTは、ノズルプレート31に形成された各ノズルNに対向する
位置には、貫通孔45が形成されている。そして、ペルチェ素子PTがノズル形成面31
aに当接した時、各ノズルNのノズル孔がペルチェ素子PTと直接に接することがないよ
うにしている。そして、ペルチェ素子PTの冷却部PTaがノズルプレート31のノズル
形成面31aに当接することによって、吐出ヘッド30を冷却する。この時、ペルチェ素
子PTは、形成した貫通孔45によってノズルプレート31のノズル孔に接してないので
、ノズルN中の金属インクFに接触して金属インクFが毛細管現象で漏れ出ることはない

【0037】
次に、上記のように構成した液滴吐出装置20の電気的構成を図5に従って説明する。
図5において、制御装置50は、CPU50A、ROM50B、RAM50Cなどを有
している。制御装置50は、格納された各種データ及び各種制御プログラムに従って、ス
テージ23の搬送処理、キャリッジ29の搬送処理、吐出ヘッド30の液滴吐出処理、ラ
バーヒータHの加熱処理、冷却台42の上下動処理、ペルチェ素子PTの駆動処理などを
実行する。
【0038】
制御装置50には、各種操作スイッチとディスプレイを有した入出力装置51が接続さ
れている。入出力装置51は、液滴吐出装置20が実行する各種処理の処理状況を表示す
る。入出力装置51は、内部配線6を形成するためのビットマップデータBDを生成し、
そのビットマップデータBDを制御装置50に入力する。
【0039】
ビットマップデータBDは、各ビットの値(0あるいは1)に応じて各圧電素子PZの
オンあるいはオフを規定したデータである。ビットマップデータBDは、吐出ヘッド30
(各ノズルN)の通過する描画平面(吐出面4Ga)上の各位置に、配線用の液滴Fbを
吐出するか否かを規定したデータである。すなわち、ビットマップデータBDは、吐出面
4Gaに規定された内部配線6の目標形成位置に配線用の液滴Fbを吐出させるためのデ
ータである。
【0040】
制御装置50には、X軸モータ駆動回路52が接続されている。制御装置50は、駆動
制御信号をX軸モータ駆動回路52に出力する。X軸モータ駆動回路52は、制御装置5
0からの駆動制御信号に応答して、キャリッジ29を移動させるための第1の移動手段を
構成するX軸モータMXを正転又は逆転させる。制御装置50には、Y軸モータ駆動回路
53が接続されている。制御装置50は、駆動制御信号をY軸モータ駆動回路53に出力
する。Y軸モータ駆動回路53は、制御装置50からの駆動制御信号に応答して、ステー
ジ23を移動させるためのY軸モータMYを正転又は逆転させる。
【0041】
制御装置50には、ヘッド駆動回路54が接続されている。制御装置50は、所定の吐
出周波数に同期させた吐出タイミング信号LTをヘッド駆動回路54に出力する。制御装
置50は、各圧電素子PZを駆動するための駆動電圧COMを吐出周波数に同期させてヘ
ッド駆動回路54に出力する。
【0042】
制御装置50は、ビットマップデータBDを利用して所定の周波数に同期したパターン
形成用制御信号SIを生成し、パターン形成用制御信号SIをヘッド駆動回路54にシリ
アル転送する。ヘッド駆動回路54は、制御装置50からのパターン形成用制御信号SI
を各圧電素子PZに対応させて順次シリアル/パラレル変換する。ヘッド駆動回路54は
、制御装置50からの吐出タイミング信号LTを受けるたびに、シリアル/パラレル変換
したパターン形成用制御信号SIをラッチし、パターン形成用制御信号SIによって選択
される圧電素子PZにそれぞれ駆動電圧COMを供給する。
【0043】
制御装置50には、ラバーヒータ駆動回路55が接続されている。制御装置50は、駆
動制御信号をラバーヒータ駆動回路55に出力する。ラバーヒータ駆動回路55は、制御
装置50からの駆動制御信号に応答して、ラバーヒータHを駆動してステージ23に載置
したグリーンシート4Gを予め定めた温度になるように加熱制御する。本実施形態では、
予め定めたグリーンシート4Gの温度(吐出面4Gaの温度)は、吐出ヘッド30から吐
出される時の金属インクFの温度以上かつ金属インクFに含まれる液体組成の沸点未満(
液体組成中の最も沸点の低い温度未満)の温度となるように制御されている。つまり、グ
リーンシート4Gを吐出ヘッド30から吐出される時の金属インクFの温度以上に加熱し
て、吐出される時は吐出ヘッド30で乾燥せず、着弾した液滴Fbはそれ以上の温度で速
やかに加熱し乾燥するとともに、グリーンシート4Gを液滴Fbの沸点未満に加熱して、
着弾した液滴Fbをグリーンシート4G上で突沸しないようする。
【0044】
制御装置50には、上下動モータ駆動回路56が接続されている。制御装置50は、駆
動制御信号を上下動モータ駆動回路56に出力する。上下動モータ駆動回路56は、制御
装置50からの駆動制御信号に応答して、前記可動ロッド43と駆動連結した第2の移動
手段としての上下動モータMZを駆動して冷却台42を待機位置と最も高い作用位置の2
位置の間を上下動するように制御する。
【0045】
制御装置50には、ペルチェ素子駆動回路57が接続されている。制御装置50は、ペ
ルチェ素子駆動回路57に駆動制御信号を出力する。ペルチェ素子駆動回路57は、制御
装置50からの駆動制御信号に応答して、ペルチェ素子PTを駆動制御する。つまり、ペ
ルチェ素子PTは、吐出ヘッド30の直下に位置する冷却台42が上動して、その冷却部
PTaがノズルプレート31と当接することによって吐出ヘッド30を冷却する。
【0046】
次に、上記液滴吐出装置20を利用したグリーンシート4Gの配線パターンの形成方法
について説明する。
図2に示すように、吐出面4Gaが上側になるようにグリーンシート4Gをステージ2
3に載置する。このとき、ステージ23は、グリーンシート4Gをキャリッジ29の反Y
矢印方向に配置する。このグリーンシート4Gは、ビアホール7が形成され、そのビアホ
ール7にビア配線8がなされていて、その吐出面4Gaに内部配線6を形成するものとす
る。
【0047】
この状態から、液滴Fbによる内部配線6の配線パターンを形成するためのビットマッ
プデータBDが入出力装置51から制御装置50に入力される。制御装置50は、入出力
装置51からの内部配線6を形成するためのビットマップデータBDを格納する。このと
き、制御装置50は、ラバーヒータ駆動回路55を介してステージ23に設けたラバーヒ
ータHを駆動しステージ23に載置されたグリーンシート4G全体が一様に前記所定の温
度になるように加熱制御している。即ち、グリーンシート4Gの吐出面4Gaは、吐出ヘ
ッド30から吐出される時の金属インクFの温度以上かつ金属インクFに含まれる液体組
成の沸点未満(液体組成中の最も沸点の低い温度未満)の温度となるように制御されてい
る。
【0048】
さらに、制御装置50は、上下動モータ駆動回路56を介して上下動モータMZを駆動
し冷却台42(ペルチェ素子PT)を待機位置に位置するように制御している。さらに、
制御装置50は、ペルチェ素子駆動回路57を介してペルチェ素子PTを駆動し、吐出ヘ
ッド30を冷却できるように待機させている。
【0049】
次いで、制御装置50は、吐出ヘッド30がグリーンシート4Gの所定の直上位置をX
矢印方向に通過するように、Y軸モータ駆動回路53を介してY軸モータMYを駆動して
ステージ23を搬送する。そして、制御装置50は、X軸モータ駆動回路52を介してX
軸モータMXを駆動して吐出ヘッド30の走査(往動)を開始させる。
【0050】
制御装置50は、吐出ヘッド30の走査(往動)を開始させると、ビットマップデータ
BDに基づいてパターン形成用制御信号SIを生成して、パターン形成用制御信号SIと
駆動電圧COMをヘッド駆動回路54に出力する。すなわち、制御装置50は、ヘッド駆
動回路54を介して各圧電素子PZを駆動制御し、内部配線6を形成するための着弾位置
に吐出ヘッド30が位置するたびに、選択されたノズルNから液滴Fbを吐出させる。グ
リーンシート4Gに着弾した液滴Fbは、グリーンシート4Gが吐出時の液滴Fbの温度
以上に加熱されているため、乾燥が開始され速やかに乾燥されていく(第1の行程)。
【0051】
そして、本実施形態では、図7及び図8(a)〜(d)に示すように、吐出される各液
滴Fbは、対応する内部配線6を形成するための着弾位置に順次着弾する。詳述すると、
本実施形態では、パターン形成のために先に着弾し配置された液滴Fbが一部乾燥してグ
リーンシート4Gに対して固定(ピニング)した状態(自身の濡れ広がりを停止した状態
)であって、その先の液滴Fbに対して、次の吐出ヘッド30から吐出されグリーンシー
ト4Gに着弾する液滴Fbは、その一部が重なるように、図7及び図8(a)に1点鎖線
で示す位置に、吐出ヘッド30から吐出されるようになっている。
【0052】
つまり、吐出ヘッド30から吐出させる液滴Fbの吐出タイミングは、液滴Fbが吐出
ヘッド30から吐出してグリーンシート4Gに固定(ピニング)されるに要する時間と、
吐出ヘッド30が先の液滴Fbを吐出した後、次の液滴Fbの一部が先の液滴Fbと重な
る吐出位置に到達するまでに要する移動時間等で決定される。従って、グリーンシート4
Gの加熱温度、吐出ヘッド30の移動速度等から予め、実験等で吐出タイミング(吐出間
隔時間)を設定している。
【0053】
従って、X矢印方向に往動しながら液滴Fbを所定のタイミング(吐出間隔時間)で吐
出させているとき、先にグリーンシート4Gに着弾した液滴Fbは、速やかに乾燥されて
いく。
【0054】
そして、図8(b)に示すように、液滴Fbがグリーンシート4Gに対して固定される
状態になると、その固定状態に入った液滴Fbに対して、その一部が重なるように、次の
液滴Fbは、図8(c)の1点鎖線で示す位置に着弾し配置される。このとき、固定状態
にある先の液滴Fbは、その一部が重なるように着弾配置された次の液滴Fbに引き寄せ
られることがない。また、一部が重なるように着弾配置された次の液滴Fbは、その重な
らない部分は、グリーンシート4Gが加熱されているため、直ちに乾燥が開始され速やか
に乾燥され固定状態になる。従って、先の液滴Fbに、次の液滴Fb引き寄せられること
はない。
【0055】
その結果、吐出ヘッド30をX矢印方向に移動させて、内部配線6を形成するための着
弾位置に順次着弾する液滴Fbは、その着弾位置から偏移することなく乾燥されるため、
図8(d)に示すような、内部配線6のための配線用パターンPが形成される。しかも、
グリーンシート4Gを加熱するとともに通気性基板のグリーンシート4Gを使用したので
、着弾した液滴Fbは速やかに乾燥し固定状態に入るため、次に着弾させる液滴Fbの吐
出タイミングを短くすることができ、内部配線6のための配線用パターンPを短時間で形
成することができる。さらに、グリーンシート4Gの加熱温度は、液滴Fbの沸点未満の
温度に制御されているので、着弾した液滴Fbが突沸して配線用パターンPの形成が不能
となることはない。
【0056】
吐出ヘッド30が、グリーンシート4Gの端から端までの走査を完了すると、次に、制
御装置50は、内部配線6を形成するためのグリーンシート4G上の新たな位置に液滴F
bを吐出させるべく、Y軸モータ駆動回路53を介してY軸モータMYを駆動してステー
ジ23をY方向に所定の量だけ搬送させた後、吐出ヘッド30を反X矢印方向に走査(復
動)させる。
【0057】
吐出ヘッド30の走査(復動)を開始させると、制御装置50は、前記と同様にビット
マップデータBDに基づいてヘッド駆動回路54を介して各圧電素子PZを駆動制御し、
内部配線6を形成するための着弾位置に吐出ヘッド30が位置するたびに、選択されたノ
ズルNから液滴Fbを吐出させる。この場合にも、前記と同様に、先にグリーンシート4
Gに着弾した液滴Fbは、直ちに乾燥が開始され速やかに乾燥されていく。そして、液滴
Fbがグリーンシート4Gに対す固定される状態になると、その固定状態に入った液滴F
bに対して、その一部が重なるように、次の液滴Fbは着弾し配置される。
【0058】
以後、吐出ヘッド30を、X矢印方向及び反X矢印方向に往復動させるとともに、ステ
ージ23をY矢印方向に搬送させ、吐出ヘッド30の往復動中に液滴Fbをビットマップ
データBDに基づくタイミングで吐出させる動作を繰り返す。これによって、グリーンシ
ート4G上には、着弾した液滴Fbによる内部配線6の配線用パターンPが描画される。
【0059】
一つのグリーンシート4Gに内部配線6の配線用パターンPが描画されると、制御装置
50は、キャリッジ29(X軸モータMZ)を制御して吐出ヘッド30を冷却台42の直
上位置まで案内し一時停止させる。吐出ヘッド30が冷却台42の直上位置で停止すると
、制御装置50は、上下動モータMZを駆動制御して待機位置にある冷却台42を作用位
置に上動させる。これによって、ペルチェ素子PTがノズルプレート31に当接して吐出
ヘッド30を冷却して(第2の行程)、次の新たなグリーンシート4Gの配線用パターン
Pの描画に備える。
【0060】
つまり、吐出ヘッド30は、グリーンシート4Gに配線用パターンPを描画すると、加
熱されているグリーンシート4Gの放熱により加熱される。吐出ヘッド30の温度上昇は
、液滴Fbの粘性の変化、乾燥による目詰まり、ノズルプレート31の膨張などを引き起
こす原因となる。そこで、次の新たなグリーンシート4Gに対する配線用パターンPの描
画に支障をきたさないように、ペルチェ素子PTの冷却部PTaを当接させることによっ
て、吐出ヘッド30の温度上昇を防止している。冷却時間(ペルチェ素子PTを当接させ
ておく時間)は、所定の温度に下がるまでの時間を予め実験等で求め、その求めた時間に
基づいて設定している。従って、冷却時間が経過すると、制御装置50は、上下動モータ
MZを駆動制御して作用位置にある冷却台42を待機位置に下動させる。
【0061】
従って、吐出ヘッド30は、一つのグリーンシート4Gについて配線用パターンPの描
画が完了する毎に、冷却台42のペルチェ素子PTにて冷却される。
ちなみに、図9は、一つのグリーンシート4Gに配線用パターンPを描画し、その描画
完了後に冷却台42のペルチェ素子PTにて冷却させた時の、吐出ヘッド30の温度(ノ
ズルプレート31の表面温度)の推移を示す。吐出ヘッド30は、X矢印方向及び反X矢
印方向に往復動を繰り返して描画している時には、加熱されているグリーンシート4Gに
よって、徐々に温度上昇して行くことがわかる。そして、描画が終了してペルチェ素子P
Tにて冷却されると、吐出ヘッド30の温度は下がることがわかる。なお、図中、1点鎖
線は、ペルチェ素子PTにて冷却されない場合の温度推移を示す。
【0062】
次に、上記のように構成した実施形態の効果を以下に記載する。
(1)上記実施形態によれば、吐出ヘッド30から吐出される時の金属インクFの温度
以上にグリーンシート4Gを加熱したので、着弾した液滴Fbは速やかに加熱され乾燥さ
れることから、次に着弾させる液滴Fbの吐出タイミングを短くすることができ、配線用
パターンPを短時間で形成することができる。
【0063】
(2)上記実施形態によれば、グリーンシート4Gの加熱温度は、液滴Fbの沸点未満
の温度に制御されているので、着弾した液滴Fbが突沸することはない。従って、高密度
・高精細な配線用パターンPを形成することができる。
【0064】
(3)上記実施形態によれば、液滴吐出装置20に、吐出ヘッド30を冷却するペルチ
ェ素子PTを取着した冷却台42よりなる冷却機構40を吐出ヘッド30の移動経路に設
け、グリーンシート4Gからの放熱よる吐出ヘッド30の温度上昇を抑制した。従って、
吐出ヘッド30の温度上昇による液滴Fbの粘性の変化、乾燥による目詰まり、ノズルプ
レート31の膨張を未然に防止できる。その結果、液滴Fbの吐出重量を安定化でき、精
度の高いパターンPを短時間に形成することができる。
【0065】
(4)上記実施形態によれば、冷却機構40は、ペルチェ素子PTを取着した冷却台4
2をパターンPの形成に邪魔にならない基台21の一側に設けるとともに、吐出ヘッド3
0が移動通過する直下に配置した。そして、ペルチェ素子PTを取着した冷却台42を上
下動させるだけで、吐出ヘッド30と当接するように構成した。従って、冷却機構40は
、非常に簡単な構成で同吐出ヘッド30を冷却することができる。しかも、既存の液滴吐
出装置に、冷却機構40を簡単に付加することができる。
【0066】
(5)上記実施形態によれば、先の着弾した液滴Fbが固定状態に入った時、その一部
と重なるように、次の液滴Fbを着弾し配置するようにした。従って、固定状態にある先
の液滴Fbは、その一部が重なるように着弾配置された次の液滴Fbに引き寄せられるこ
とがなく高密度・高精細な配線用パターンPが形成される。
【0067】
(6)上記実施形態によれば、ラバーヒータHにて、グリーンシート4Gの上面全体を
一様に所定の温度になるように加熱した。従って、グリーンシート4Gに着弾配置された
液滴Fbは、外周部から蒸発して中央部に比べて外周部における固形分(粒子)濃度が速
く飽和濃度に達して、グリーンシート4Gの面方向に沿う自身の濡れ広がりを停止する。
つまり、着弾配置された液滴Fbは外周部から固定状態になることから、着弾時の外形形
状が変形されることはない。その結果、高密度・高精細なパターンを形成することができ
る。
【0068】
(7)上記実施形態によれば、着弾した液滴Fbが固定される時間を予め求め、その時
間を吐出間隔時間とし液滴Fbを吐出するようにしているため、確実に液滴が固定状態に
なった後に、次の液滴を吐出させることができる。
【0069】
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、第2の行程について、一つのグリーンシート4Gについて配線用
パターンPの描画が完了する毎に、冷却台42のペルチェ素子PTにて冷却するようにし
た。これを、例えば、吐出ヘッド30が、グリーンシート4GのX矢印方向側に走査され
る毎に、冷却台42のペルチェ素子PTにて冷却するようにしてもよい。また、例えば、
吐出ヘッド30の温度を検出し予め定めた温度に達したら、吐出ヘッド30を冷却したり
、描画中であって予め定めた時間になったら、冷却するようにして実施してもよい。
【0070】
・上記実施形態では、上下動さする冷却台42の上面にペルチェ素子PTを取着して吐
出ヘッド30を冷却した。これを、図10に示すように、冷却台42の上面に、冷媒、例
えば冷却水を通す流路STを形成した例えば金属製又は合成樹脂性の冷却板46を取着す
る。そして、冷却板46の流路STに冷却水を巡回させて、冷却板46を冷却し、その冷
却した冷却板46を吐出ヘッド30(ノズルプレート31)に当接させるようにしてもよ
い。勿論、冷却板46の上面には、ペルチェ素子PTに形成した貫通孔45と同様な目的
でノズルNと接触しないように、凹部を形成してもよい。
【0071】
さらに、図11に示すように、吐出ヘッド30をクリーニングするクリーニング機構の
吐出ヘッド30内の液滴Fbを吸引し廃棄するクリーニング装置70の吸引治具、即ち、
吐出ヘッド30と嵌着してノズルプレート31の周辺を密閉空間にするキャップ71の側
壁内に、冷媒、例えば冷却水を通す例えば金属製又は合成樹脂性の冷却管74を配設する
。そして、吐出ヘッド30がキャップ71に嵌着するとき、キャップ71に当接するよう
にする。これによって、吐出ヘッド30は、クリーニング装置70でクリーニングされる
毎に冷却される。従って、既存のクリーニング装置70に冷却機構40を設けたので、冷
却機構40を独立に設けるのに比べて構造が複雑にならず省スペース化を図ることができ
る。勿論、クリーニングの目的でなく冷却だけの目的でキャップ71に当接させるように
してもよい。
【0072】
・上記実施形態では、吐出ヘッド30が往動する毎に、吐出ヘッド30を冷却するよう
にしたが、一定の回数の往動毎に、吐出ヘッド30を冷却するようにしてもよい。
・上記実施形態では、冷却機構40を基台21の一側に設けたが、両側に設けて実施し
てもよい。この場合、吐出ヘッド30が復動する毎に、吐出ヘッド30を冷却するように
してもよいし、一定の回数の復動毎に、吐出ヘッド30を冷却するようにしてもよい。
【0073】
・上記実施形態では、先の液滴Fbに対して、一部重ねて液滴Fbを着弾配置する際、
先の液滴Fbがグリーンシート4Gに固定状態になった後に、着弾配置するようにしたが
、先の液滴Fbがグリーンシート4Gに固定状態になる前に、次の液滴Fbを着弾配置す
るようにして実施してもよい。
【0074】
・上記実施形態では、先の液滴Fbに対して、その一部重なるように次の液滴Fbを着
弾配置するように実施したが、一部重ならないように次の液滴Fbを着弾配置するように
実施してもよい。
【0075】
・上記実施形態では、固定のための最初の液滴Fbは、先に着弾した液滴Fbに対して
、その着弾径の半分のピッチで重ねるようにしたが、一部か重なるならば、その重なり具
合は適宜変更して実施してもよい。
【0076】
・上記実施形態では、順次吐出した液滴Fbに対して順番に一部が重なるように、着弾
配置して配線用パターンPを形成した。これを、例えば、図12(a)〜(f)に示すよ
うな順番で液滴Fbを吐出して配線用パターンPを形成してもよい。
【0077】
すなわち、図12(a)に示すように、パターン形成のために先の液滴Fbが、所定に
位置に着弾配置されると、着弾した液滴Fbから離間した1点鎖線で示す着弾位置A1に
、次の液滴Fbを着弾配置する。着弾位置A1に液滴Fbを配置すると、次に吐出する液
滴Fbを、最初に配置した液滴Fbにその一部が重なるように、図12(b)に1点鎖線
で示す着弾位置A2に着弾配置する。
【0078】
着弾位置A2に液滴Fbを配置すると、次に吐出する液滴Fbを、着弾位置A1に配置
した液滴Fbにその一部が重なるように、図12(c)に1点鎖線で示す着弾位置A3に
着弾配置する。以後、同様に、図12(d)、(e)に示す順にて、着弾位置A4,A5
に液滴Fbを着弾配置すれば、図12(f)に示すような、液滴Fbによる内部配線6の
配線用パターンPを描画することができる。
【0079】
・上記実施形態では、ラバーヒータHにてグリーンシート4Gを加熱したが、その他の
加熱手段にて加熱するようにしてもよい。
・上記実施形態では、機能液を、金属インクFとして具体化した。これに限らず、例え
ば、液晶材料を含有した機能液に具体化してもよい。つまり、パターンを形成するための
吐出させる機能液であればよい。
【0080】
・上記実施形態では、グリーンシート4Gに液滴Fbを配置し、パターンPを形成した
。しかしながら、グリーンシート4Gに代えて、ポリイミドからなる基板、ガラス基板、
エポキシ基板、ガラスエポキシ基板、セラミック基板、またはシリコン基板などが利用さ
れてよい。上記実施形態で説明した効果と同様な効果が得られる。また、液滴Fbが配置
される表面は、基板の表面に限定されない。ほぼ平坦な絶縁層の表面またはほぼ平坦な導
電層の表面であってもよい。
【0081】
・上記実施形態では、液滴吐出手段を、圧電素子駆動方式の液滴吐出ヘッド30に具体
化した。これに限らず、液滴吐出ヘッドを、抵抗加熱方式や静電駆動方式の吐出ヘッドに
具体化してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】回路モジュールの側断面図。
【図2】液滴吐出装置の全体斜視図。
【図3】液滴吐出ヘッドをグリーンシート側から見た下面図。
【図4】液滴吐出ヘッドの要部側断面図。
【図5】液滴吐出装置の電気的構成を説明するための電気ブロック回路図。
【図6】冷却機構の構成を説明するための説明図であって、(a)は待機位置、(b)は作用位置に位置する図。
【図7】パターン形成の作用を説明するための説明図。
【図8】(a)〜(d)はパターン形成の液滴の吐出順序を示す図。
【図9】液滴吐出ヘッドの温度の推移を示す図。
【図10】別例の冷却機構の構成を説明するための説明図。
【図11】別例の冷却機構の構成を説明するための説明図。
【図12】(a)〜(f)はその他の順序でパターンの形成を示す図。
【符号の説明】
【0083】
1…回路モジュール、2…LTCC多層基板、4…低温焼成基板、5…回路素子、4G
…基体としてのグリーンシート、6…内部配線、20…液滴吐出装置、23…ステージ、
30…液滴吐出ヘッド、31a…ノズル形成面、40…冷却機構、42…冷却台、45…
貫通孔、46…冷却板、50…制御装置、70…クリーニング装置、74…冷却管74、
F…機能液としての金属インク、Fb…液滴、PT…ペルチェ素子、PTa…冷却部、P
Z…圧電素子、P…配線用パターン、H…ラバーヒータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴吐出ヘッドにて機能材料を含む機能液の液滴を基体に向かって順次吐出し、前記基体
の表面にパターンを描画するパターン形成方法であって、
前記基体の表面温度を、吐出時の機能液の温度以上かつ機能液に含まれる液体組成の沸
点未満の温度に加熱した状態で、前記液滴を前記基体に吐出させる第1の行程と、
前記液滴吐出ヘッドを、前記基体の表面温度未満の冷却手段に接触させて冷却する第2
の行程と
を有し、前記第1の行程と前記第2の行程を適宜選択しながらパターンを描画することを
特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
液滴吐出ヘッドを基体に対して相対移動させ、前記液滴吐出ヘッドにて機能材料を含む機
能液の液滴を前記基体に向かって順次吐出させて、前記基体の表面にパターンを描画する
パターン形成装置であって、
前記パターンの描画エリアから離間した位置に配置された冷却手段と、
前記液滴吐出ヘッドを前記描画エリアから前記冷却手段に移動させる移動手段と
を備えたことを特徴とするパターン形成装置。
【請求項3】
請求項2に記載のパターン形成装置において、
前記冷却手段は、
前記描画エリアから離間した位置に配置された基台と、
前記基台の上面に、その冷却部が前記液滴吐出ヘッドのノズル形成面と相対向するよう
に配置したペルチェ素子と
からなり、
前記移動手段は、
前記液滴吐出ヘッドを、前記ノズル形成面が前記基台に設けられた前記ペルチェ素子と
相対向する位置に移動させる第1の移動手段と、
前記基台を、前記ペルチェ素子の冷却部が前記液滴吐出ヘッドのノズル形成面に当接す
る位置に移動させる第2の移動手段と
からなることを特徴とするパターン形成装置。
【請求項4】
請求項2に記載のパターン形成装置において、
前記冷却手段は、
前記描画エリアから離間した位置に配置された基台と、
前記基台の上面に、冷媒を循環させて冷却された面が前記液滴吐出ヘッドのノズル形成
面と相対向するように配置した冷却板と、
からなり、
前記移動手段は、
前記液滴吐出ヘッドを、前記ノズル形成面が前記基台に設けられた前記冷却板と相対向
する位置に移動させる第1の移動手段と、
前記基台を、前記冷却板の冷却された面が前記液滴吐出ヘッドのノズル形成面に当接す
る位置に移動させる第2の移動手段と
からなることを特徴とするパターン形成装置。
【請求項5】
請求項2に記載のパターン形成装置において、
前記液滴吐出ヘッドのノズル形成面をキャップ部材にて封止し、キャップ部材にて封止
した封止空間を負圧にして前記液滴吐出ヘッド内の機能液を吸引排出するクリーニング装
置を備え、
前記冷却手段は、
前記液滴吐出ヘッドに密着する密着面を冷却するための冷媒と、
前記キャップ部材に形成した前記冷媒を循環させる循環流路と
からなることを特徴とするパターン形成装置。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1に記載のパターン形成装置において、
前記基体は、多孔質性基板であってセラミック粒子と樹脂とから構成される低温焼成用
シートであり、
前記機能液は、機能材料として金属粒子を分散させた液体であることを特徴とするパタ
ーン形成装置。
【請求項7】
回路素子を実装するとともにその実装した回路素子に対して電気的に接続された配線が形
成された回路基板において、
請求項2〜6のいずれか1に記載のパターン形成装置で形成した配線を有した回路基板


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−132450(P2008−132450A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321262(P2006−321262)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】