説明

パターン形成方法、パターン形成装置

【課題】基板W表面に形成された複数のパターンFを跨いでライン状に塗布される塗布液A3を各パターンF間に十分に流動させて、この塗布液A3で構成されるパターンCの断線を抑制可能とする。
【解決手段】パターンCを構成する塗布液A3は、パターンFを構成する塗布液A1よりも粘性が低く、換言すれば高い流動性を有する。そのため、この塗布液A3を各パターンFの間Ifに十分に流動させて塗布することができる。その結果、塗布液A3で構成されるパターンCを各パターンFの間Ifで基板W表面に密接させて、パターンCの断線を抑制することが可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板表面に塗布液を塗布して所定のパターンを形成するパターン形成技術に関するものであり、例えば、光電変換面を有する基板に配線パターンを形成して光電変換デバイスを製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池のような光変換デバイスでは、光を受光して電荷を発生する光電変換面を有する基板に、発生した電荷を集める集電電極が設けられる。例えば、特許文献1に記載の太陽電池では、太陽電池基板の受光面に、フィンガー電極と称される複数の細い電極パターン(フィンガー配線パターン)と、これらを横断するバスバー電極と称される幅広の電極パターン(バス配線パターン)とを組み合わせて、集電電極が形成されている。そして、光電変換面で発生した電荷はフィンガー配線パターンを経由してバス配線パターンに集められた後に、外部へと出力される。
【0003】
ちなみに、このように集電電極を構成した場合、フィンガー配線パターンとバス配線パターンの交点で断線が発生して、フィンガー配線パターンからバス配線パターンに電荷を集電できず、光変換デバイスの出力が低下することがあった。そこで、特許文献1では、フィンガー配線パターンおよびバス配線パターン以外に、補助電極と称される細い電極パターン(補助配線パターン)が複数のフィンガー配線パターンに跨って形成されている。したがって、あるフィンガー配線パターンがバス配線パターンとの間に断線を生じたとしても、このフィンガー配線パターンが集電した電荷は、補助配線パターンから他のフィンガー配線パターンを経由してバス配線パターンへと集められる。こうして、上述のような断線が発生した場合でも、光変換デバイスの出力を維持することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−135655号公報
【特許文献2】特開2001−232269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このようなパターンを基板表面に効率よく形成するために、パターン形成材料を含む塗布液を公知の塗布技術を用いて基板表面に塗布することが考えられる。例えば、特許文献2には、このような塗布技術として、塗布液を吐出するノズルを用いたものが記載されている。詳述すると、基板表面の上方には塗布液を吐出するノズルが設けられており、このノズルが基板表面に向けて塗布液を吐出しながら基板表面に対して相対移動することで、基板表面に塗布液がライン状に塗布されて、この塗布液によりパターンが構成される。
【0006】
しかしながら、基板表面に形成された複数のフィンガー配線パターンに対してさらに補助配線パターンを形成する場合に、この補助配線パターンが部分的に基板から浮いて形成されてしまうおそれがあった。つまり、この場合、複数のフィンガー配線パターンをライン状に跨ぐようにして塗布液が塗布されて、補助配線パターンが形成される。この際、補助配線パターンが後に断線を起こさないようにするためには、補助配線パターンを構成する塗布液は、複数のフィンガー配線パターンのみならずこれらの間の基板表面に対しても密接して塗布されることが好ましい。しかしながら、複数のフィンガー配線とこれらの間の基板表面では高さが異なるため、塗布液が各フィンガー配線パターンの間に十分に流動せず、その結果、補助配線パターンが各フィンガー配線パターンの間で基板表面から浮いて形成されてしまい、この浮いた部分で補助配線パターンが断線するおそれがあった。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、基板表面に形成された複数のパターンを跨いでライン状に塗布される塗布液を各パターン間に十分に流動させて、この塗布液で構成されるパターンの断線を抑制可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明にかかるパターン形成方法は、パターンを形成するための材料を含む塗布液を吐出するノズルを、基板表面の上方で基板表面に対して相対移動させることで、基板表面に塗布液を塗布してパターンを形成するパターン形成方法であって、上記目的を達成するために、第1の塗布液によって構成される第1の方向に延びる複数の第1のパターンがその表面に形成された基板を準備する準備工程と、第1の塗布液よりも粘度の低い第2の塗布液を吐出するノズルを第1の方向に交差する第2の方向に基板表面に対して相対移動させることによって複数の第1のパターンを上方から跨ぐライン状に第2の塗布液を塗布して、複数の第1のパターンに跨る第2のパターンを形成する第2のパターン形成工程とを備えたことを特徴としている。
【0009】
この発明にかかるパターン形成装置は、パターンを形成するための材料を含む塗布液を吐出するノズルを、基板表面の上方で基板表面に対して相対移動させることで、基板表面に塗布液を塗布してパターンを形成するパターン形成装置であって、上記目的を達成するために、第1の塗布液によって構成される第1の方向に延びる複数の第1のパターンがその表面に形成された基板を支持する支持手段と、第1の塗布液よりも粘度の低い第2の塗布液を吐出するノズルを第1の方向に交差する第2の方向に基板表面に対して相対移動させることによって複数の第1のパターンを上方から跨ぐライン状に第2の塗布液を塗布して、複数の第1のパターンに跨る第2のパターンを形成する第2のパターン形成手段とを備えたことを特徴としている。
【0010】
このように構成された発明(パターン形成方法、パターン形成装置)では、複数の第1のパターンを跨ぐライン状に第2の塗布液が塗布されて、これら第1のパターンに跨る第2のパターンが形成される。したがって、第2のパターンを構成する第2の塗布液が、各第1のパターンの間に流動せず第2のパターンが浮いて形成されるおそれがあった。これに対して本発明では、第2のパターンを構成する第2の塗布液は、第1のパターンを構成する第1の塗布液よりも低い粘性を有するため(換言すれば高い流動性を有するため)、この第2の塗布液を各第1のパターンの間に十分に流動させて塗布することができる。その結果、第2の塗布液で構成される第2のパターンを各第1のパターンの間で基板表面に密接させて、第2のパターンの断線を抑制することが可能となっている。
【0011】
ちなみに、この発明は基板表面にパターンを形成する技術全般に適用できるが、特に、基板は太陽電池素子用の基板であり、第1のパターンはフィンガー配線パターンであり、第2のパターンは補助配線パターンである光変換デバイスの製造技術に好適に適用可能である。
【0012】
また、第1の塗布液よりも粘度の低い第3の塗布液を吐出するノズルを第1の方向に交差する第3の方向に基板表面に対して相対移動させることによって複数の第1のパターンを上方から跨ぐようにしてライン状に第3の塗布液を塗布して、複数の第1のパターンに跨る第3のパターンを形成する第3のパターン形成工程を、第2のパターン形成工程の前あるいは後に実行するように構成しても良い。
【0013】
特に、上述の光変換デバイスの製造技術に本発明を適用する場合には、第3のパターンをバス配線パターンとして形成すれば良い。
【0014】
この際、第2の塗布液と第3の塗布液は同じ粘度を有するように、換言すれば、第2および第3のパターンを同じ粘度の塗布液で構成しても良い。これにより、第2および第3のパターンそれぞれの塗布液を共通化することができ、第2および第3のパターン毎に塗布液を調合する必要が無くなるため、パターン形成装置を管理する管理者の負担を軽減できる等の利点が得られる。
【発明の効果】
【0015】
第2のパターンを構成する第2の塗布液は、第1のパターンを構成する第1の塗布液よりも低い粘性を有するため(換言すれば高い流動性を有するため)、この第2の塗布液を各第1のパターンの間に十分に流動させて塗布することができる。その結果、第2の塗布液で構成される第2のパターンを各第1のパターンの間で基板表面に密接させて、第2のパターンの断線を抑制することが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明にかかるパターン形成装置の一実施形態を示す図である。
【図2】図1の装置の電気的構成を示す図である。
【図3】第1ヘッドに設けられたシリンジポンプの構造を示す図である。
【図4】第2ヘッドに設けられたシリンジポンプの構造を示す図である。
【図5】第3ヘッドに設けられたシリンジポンプの構造を示す図である。
【図6】図1の装置でパターン形成された光電変換デバイスの一実施形態を示す図である。
【図7】図1のパターン形成装置を用いた太陽電池製造プロセスを示すフローチャートである。
【図8】図7のフローチャートで実行される配線パターンの形成動作を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1はこの発明にかかるパターン形成装置の一実施形態を示す図である。また、図2はこの装置の電気的構成を示す図である。このパターン形成装置1は、例えば表面に光電変換層を形成された単結晶シリコンウエハなどの基板W上に導電性を有する電極配線パターンを形成し、例えば太陽電池として利用される光電変換デバイスを製造する装置である。この装置1は、例えば光電変換デバイスの光入射面に集電電極パターンを形成するという用途に好適に使用することができる。
【0018】
このパターン形成装置1では、基台11上にステージ移動機構2が設けられ、基板Wを保持するステージ3がステージ移動機構2により図1に示すX−Y平面内で移動可能となっている。基台11にはステージ3を跨ぐようにして3組のフレーム121、122、123が固定され、フレーム121には第1ヘッド部5、フレーム122には第2ヘッド部7、フレーム123には第3ヘッド部9がそれぞれ取り付けられる。第1ヘッド部5、第2ヘッド部7および第3ヘッド部9は、X方向に互いに離隔して配置されており、これらの間隔は基板WのX方向長さより広く設定されている。
【0019】
ステージ移動機構2は、下段からステージ3をX方向に移動させるX方向移動機構21、Y方向に移動させるY方向移動機構22、および、Z方向を向く軸を中心に回転させるθ回転機構23を有する。X方向移動機構21は、モータ211にボールねじ212が接続され、さらに、Y方向移動機構22に固定されたナット213がボールねじ212に取り付けられた構造となっている。ボールねじ212の上方にはガイドレール214が固定され、モータ211が回転すると、ナット213とともにY方向移動機構22がガイドレール214に沿ってX方向に滑らかに移動する。
【0020】
Y方向移動機構22もモータ221、ボールねじ機構およびガイドレール224を有し、モータ221が回転するとボールねじ機構によりθ回転機構23がガイドレール224に沿ってY方向に移動する。θ回転機構23はモータ231によりステージ3をZ方向を向く軸を中心に回転させる。以上の構成により、第1および第2ヘッド部5,7の基板Wに対する相対的な移動方向および向きが変更可能とされる。ステージ移動機構2の各モータは、装置各部の動作を制御する制御部6により制御される。
【0021】
さらに、θ回転機構23とステージ3との間には、ステージ昇降機構24が設けられている。ステージ昇降機構24は、制御部6からの制御指令に応じてステージ3を昇降させ、基板Wを指定された高さ(Z方向位置)に位置決めする。ステージ昇降機構24としては、例えばソレノイドや圧電素子などのアクチュエータによるもの、ギヤによるもの、楔の噛み合わせによるものなどを用いることができる。
【0022】
第1ヘッド部5、第2ヘッド7および第3ヘッド9は、いずれも液状の塗布液に基板Wに塗布する機能を果たす。つまり、第1、第2および第3ヘッド5、7、9は、ベース51、71、91にシリンジポンプ52、72、92および光照射部53、73、93を取り付けた概略構成を備える。これらシリンジポンプ52、72、92は、図3から図5を用いて後に詳述するように、内部空間に貯留する液状の塗布液を基板Wに吐出するものである。一方、光照射部53、73、93は、シリンジポンプ52、72、92が基板Wに吐出した塗布液にUV光(紫外線)を照射して、この塗布液を硬化させるものである。つまり、光照射部53、73、93は、光ファイバ531、731、931を介して紫外線を発生する光源ユニット532、732、932に接続されている。そして、光源ユニット532、732、932がその光射出部に具備するシャッターを開閉して射出光のオン・オフを行うとともに、このシャッターの開き具合を調整して射出光量を制御する。ちなみに、光源ユニット532、732、932のこれらの動作は制御部6によって制御される。
【0023】
また、これらのヘッド部5、7、9のうち第1ヘッド部5には、光照射部53を挟んでシリンジポンプ52と反対側に、高さ検出センサ54が設けられている。高さ検出センサ54は、例えば光または超音波を下向きに出射し、反射してくる光または超音波を検出して、基板W上面の高さおよび基板W上に形成された構造物の基板W上面からの高さを検出する。高さ検出センサ54の出力信号は制御部6に入力されている。続いて、各ヘッド部5、7、9のシリンジポンプ52、72、92の構成について詳述する。
【0024】
図3は第1ヘッドに設けられたシリンジポンプの構造を示す図である。より具体的には、図3(a)は第1ヘッド部5に設けられたシリンジポンプ52の内部構造を示す側面図であり、また図3(b)はシリンジポンプ52下面に設けられた吐出ノズルの構造を示す図である。図3(a)に示すように、シリンジポンプ52の筐体521の内部は空洞となっており、当該空洞の上端が上方に向かって開口する一方、当該空洞の下面が筐体521の下面522に設けられた吐出ノズル523に連通する。この吐出ノズル523の吐出口525の開口方向は真下(−Z方向)ではなく、図3(a)に示すように、吐出口525を含む面の法線方向Dnは、(−Z)方向から角度θだけX方向に傾いている。なお、この例ではこの角度θを45度としているが、これに限定されるものではない。
【0025】
一方、筐体521内部の空洞の上端開口部からは、制御部6からの制御指令に応じて上下動するプランジャ524が挿入されている。こうして筐体521の内壁とプランジャ524とで形成される筐体521の内部空間SPに、後述する組成の塗布液が貯留されており、制御部6からの制御指令によってプランジャ524が押し下げられると、内部空間SPに連通する吐出ノズル523の吐出口525から塗布液が連続的に吐出される。すなわち、このパターン形成装置1は、ノズルディスペンス法を採用した塗布装置である。
【0026】
そして、図3(b)に示すように、第1ヘッド部5における吐出ノズル523は、シリンジポンプ筐体521の下面522にY方向に等間隔に離隔して多数(この例では16個)設けられている。また、各吐出ノズル523先端の開口部525の形状はX方向に長い矩形であり、X方向の開口A5xが約100μm、Y方向の開口A5yが約50μmである。後述するように、このパターン形成装置1では、ステージ3に載置した基板WをX方向に移動させながら吐出口525から塗布液を吐出させるので、上記形状を有する吐出口525から吐出される塗布液は、基板W上に比較的狭い幅で、かつ厚く塗布されることになる。
【0027】
図4は第2ヘッドに設けられたシリンジポンプの構造を示す図である。より具体的には、図4(a)は第2ヘッド部7に設けられたシリンジポンプ72の内部構造を示す側面図であり、また図4(b)はシリンジポンプ72下面に設けられた吐出ノズルの構造を示す図である。図4(a)に示すように、第2ヘッド部7のシリンジポンプ72は、第1ヘッド部5のシリンジポンプ52と略同様の概略構成を備えており、制御部6からの制御指令によってプランジャ724が押し下げられると、筐体721の内部空間SPに連通する吐出ノズル723の吐出口725から塗布液が連続的に吐出される。ただし、第2ヘッド部7では、シリンジポンプ72の下面722に設けられた吐出ノズル723の構成が第1ヘッド部5と相違する。つまり、この吐出ノズル723の吐出口725の開口方向はX方向に傾いておらず、真下(−Z方向)に向いている。
【0028】
図4(b)に示すように、第2ヘッド部7におけるシリンジポンプ72の下面722には、Y方向に所定の距離(例えば50mm)だけ離隔した2つの吐出ノズル723が設けられている。各吐出ノズル723の吐出口725の開口形状はY方向に長い矩形であり、X方向の開口A7xが例えば20μm、Y方向の開口A7yはこれより大きく例えば2mmである。
【0029】
図5は第3ヘッドに設けられたシリンジポンプの構造を示す図である。より具体的には、図5(a)は第3ヘッド部9に設けられたシリンジポンプ92の内部構造を示す側面図であり、また図5(b)はシリンジポンプ92下面に設けられた吐出ノズルの構造を示す図である。図5(a)に示すように、第3ヘッド部9のシリンジポンプ92は、第1ヘッド部5のシリンジポンプ52と略同様の概略構成を備えており、制御部6からの制御指令によってプランジャ724が押し下げられると、筐体921の内部空間SPに連通する吐出ノズル723の吐出口725から塗布液が連続的に吐出される。
【0030】
図5(b)に示すように、第3ヘッド部9におけるシリンジポンプ92の下面922には、Y方向に所定の距離(例えば155mm)だけ離隔した2つの吐出ノズル923が設けられている。なお、第3ヘッド部9の2つの吐出ノズル923、923のY方向への間隔は、第2ヘッド部7の2つの吐出ノズル723、723のY方向への間隔よりも広く、第3ヘッド部9の2つの吐出ノズル923、923は、第2ヘッド部7の2つの吐出ノズル723、723のY方向の両外側に位置する。また、各吐出ノズル923の吐出口925の開口形状はX方向に長い矩形であり、X方向の開口A9xが例えば100μm、Y方向の開口A9yはこれより小さく例えば50μmである。
【0031】
なお、各シリンジポンプ52、72、92に貯留される塗布液としては、導電性ペースト、すなわち導電性および光硬化性を有し、例えば導電性粒子、有機ビヒクル(溶剤、樹脂、増粘剤等の混合物)および光重合開始剤を含むペースト状の混合液を用いることができる。導電性粒子は電極の材料たる例えば銀粉末であり、有機ビヒクルは樹脂材料としてのエチルセルロースと有機溶剤を含む。また、この実施形態では、第1ヘッド部5のシリンジポンプ52に貯留される塗布液の粘度よりも、第2・第3ヘッド部7、9のシリンジポンプ72、92に貯留される塗布液の粘度が低く設定されている。具体的には、第1ヘッド部5のシリンジポンプ52に貯留される高粘度の塗布液の粘度は100Pa・s〜1000Pa・sであり、第2・第3ヘッド部7、9のシリンジポンプ72、92に貯留される低粘度の塗布液の粘度は10Pa・s〜100Pa・sである。ちなみに、この塗布液の粘度の調整は、溶剤の比率を変化させることで実行できる。
【0032】
図6は、図1の装置でパターン形成された光電変換デバイスの一実施形態を示す図である。この太陽電池モジュールMは、太陽電池用基板S(図8)の光電変換面を覆うように反射防止膜R(図8)が形成されてなる基板Wの表面(光電変換面および反射防止膜Rが設けられた面)に導電性ペーストを塗布することにより、幅が細く高さのある多数のフィンガー配線パターンFと、これらを横断するように設けられたより幅広のバス配線パターンBとを設けた構造を有している。フィンガー配線パターンFとバス配線パターンBとはその交点において電気的に接続されている。以下では、フィンガー配線パターンFの延設方向を符号Df、バス配線パターンBの延設方向を符号Dbで表し、これらが直交しているものとするが、他の角度を持って交わるものであってもよい。
【0033】
光入射によって光電変換面へ発生した電荷は、基板上に多数形成されたフィンガー配線パターンFによって捕捉され、さらにバス配線パターンBに集められて外部に取り出される。いずれの電極パターンも電気抵抗が低いことが求められるが、基板表面に多数形成されるフィンガー配線パターンFについては入射光の遮蔽を抑えるべく幅を小さくする必要があり、その分高さが必要となる。すなわち、フィンガー配線パターンFとしては高アスペクト比のパターンが求められる。一方、数の少ないバス配線パターンBについては入射光の遮蔽の問題よりも低抵抗化がより求められ、より幅広のパターンが求められる。
【0034】
また、この実施形態では、Y方向の略中央に形成された2本のバス配線パターンBの両外側それぞれに1本ずつ、延設方向Dbに延びる補助配線パターンCが、複数のフィンガー配線パターンFに上方から跨って形成されている。特に、図6に示すように、各補助配線パターンCは、延設方向Dbに平行に揃う各フィンガー配線パターンFの端に交差するように設けられており、フィンガー配線パターンFとの交差部分で当該フィンガー配線パターンFに電気的に接続されている。このように補助配線パターンCを設けることで、例えば、図6中の×印より外側のフィンガー配線パターンFが当該×印の部分でバス配線パターンBとの間で断線したとしても、×印より外側のフィンガー配線パターンFにより集電された電荷は、図6中の破線矢印で例示するように、補助配線パターンCおよび他のフィンガー配線パターンFを経由してバス配線パターンBまで到ることができる。このように太陽電池モジュールMは、フィンガー配線パターンFが断線した場合であっても、その出力を維持できるように構成されている。続いて、この太陽電池モジュールの製造プロセスについて説明する。
【0035】
図7は図1のパターン形成装置を用いた太陽電池製造プロセスを示すフローチャートである。図8は、図7のフローチャートで実行される配線パターンの形成動作を示す模式図である。より詳しくは、図8(a)は、図7に示すステップS103でのフィンガー配線パターンの形成動作を示し、図8(b)は、図7に示すステップS106でのバス配線パターンの形成動作を示し、図8(c)は、図7に示すステップS107での補助配線パターンの形成動作を示している。
【0036】
まず、光電変換面に反射防止膜を形成した基板Wがパターン形成装置1に搬入されて、初期位置(図1に示す位置)に位置決めされたステージ3に載置される(ステップS101)。続いて、ステージ3が(+X)方向に移動を開始する(ステップS102)。この状態で第1ヘッド部5の吐出ノズル523が塗布液を吐出することにより、塗布液が基板W表面に塗布されて、フィンガー配線パターンFが形成される(ステップS103)。
【0037】
つまり、図8(a)に示すように、基板Wを(+X)方向に移動させながら、シリンジポンプ52の吐出ノズル523から比較的粘度の高い塗布液A1を吐出させ、吐出直後の塗布液A1に対して光照射部53から光L1を照射することにより、幅が狭いとともに高さの高いフィンガー配線パターンF(つまり、高アスペクト比のフィンガー配線パターンF)が基板W表面に形成される。第1ヘッド5において吐出ノズル523はY方向に16個並べて設けられているため、フィンガー配線パターンFはY方向に16本並べて平行に形成される。また、ステップS103では、形成したフィンガー配線パターンFの高さが、高さ検出センサ54によって実測される。なお、このステップS103を終えた段階では、フィンガー配線パターンFの延設方向Dfは基板移動方向であるX方向に等しい。
【0038】
図7に戻って太陽電池製造プロセスの説明を続ける。ステップS104では、上記のようにフィンガー配線パターンFが形成された基板Wを載置するステージ3が90度回動する。これにより、フィンガー配線パターンFの延設方向DfはY方向となる。また、後続のステップS106において第2ヘッド部7により形成されるバス配線パターンBの延設方向DbはX方向となるため、結果的にフィンガー配線パターンFの延設方向Dfとバス配線パターンBの延設方向Dbとは基板W上で直交することとなる。
【0039】
ステージ3の回動とともに、フィンガー配線パターンFの高さ検出結果に基づいてステージ昇降機構24が動作して、ステージ3の高さ調整が実行される(ステップS105)。それに続いて、第2ヘッド部7により、基板W上にバス配線パターンBが形成される(ステップS106)。
【0040】
つまり、図8(b)に示すように、フィンガー配線パターンFを形成済みの基板WをX方向に移動させながら吐出ノズル723の吐出口725から比較的粘度の低い塗布液A2を吐出させ基板Wに塗布する。こうして、基板W表面に対して延設方向Dbに相対移動する吐出ノズル723によって、16本のフィンガー配線パターンFを上方から延設方向Dbへ跨ぐライン状に塗布液A2が塗布される。このとき基板W表面に塗布される塗布液A2は比較的低粘度であって高い流動性を有する。したがって、フィンガー配線パターンF上に供給された塗布液A2は、フィンガー配線パターンF上に留まることなく流動して、Y方向に広がるとともにその自重により各フィンガー配線パターンFの間Ifに流れ込む。
【0041】
さらに、塗布直後の塗布液A2に対しては光照射部73から光L2が照射される。こうして、16本のフィンガー配線パターンFを延設方向Dbへ跨ぐバス配線パターンBが形成される。なお、第2ヘッド7において吐出ノズル723はY方向に2個並べて設けられているため、バス配線パターンBはY方向に2本並べて平行に形成される。
【0042】
図7に戻って太陽電池製造プロセスの説明を続ける。ステップS107では、上記のようにフィンガー配線パターンFおよびバス配線パターンBが形成された基板Wに対して、第3ヘッド部9によって基板W上に補助配線パターンCが形成される。つまり、図8(c)に示すように、フィンガー配線パターンFおよびバス配線パターンBを形成済みの基板WをX方向に移動させながら吐出ノズル923の吐出口925から比較的粘度の低い塗布液A3を吐出させ基板Wに塗布する。こうして、基板W表面に対して延設方向Dbに相対移動する吐出ノズル923によって、16本のフィンガー配線パターンFを上方から延設方向Dbへ跨ぐライン状に塗布液A3が塗布される。このとき基板W表面に塗布される塗布液A3は比較的低粘度であって高い流動性を有する。したがって、フィンガー配線パターンF上に供給された塗布液A3は、フィンガー配線パターンF上に留まることなく流動して、Y方向に広がるとともにその自重により各フィンガー配線パターンFの間Ifに流れ込む。
【0043】
さらに、塗布直後の塗布液A3に対して光照射部93から光L3が照射されて、16本のフィンガー配線パターンFを延設方向Dbへ跨ぐ補助配線パターンCが形成される。なお、第3ヘッド9では、このような吐出ノズル923、923が2つ、第2ヘッド部7が有する2つの吐出ノズル723、723のY方向の両外側に設けられている。したがって、Y方向の略中央に形成された2本のバス配線パターンBの両外側それぞれに1本ずつ補助配線パターンCが形成されることとなる。
【0044】
再び図7に戻って、太陽電池製造プロセスの説明を続ける。上記のようにして基板W上にフィンガー配線パターンF、バス配線パターンBおよび補助配線パターンCが形成されると、ステージ3の移動が停止し(ステップS108)、パターン形成済みの基板Wが搬出される(ステップS109)。この時点ではこれらの配線パターンは単に反射防止膜R上に付着しているにすぎないため、反射防止膜Rを貫通させて光電変換面と配線パターンとを導通させる(ファイヤースルー)ための加熱処理が、図示しない加熱装置によって実行される(ステップS109)。
【0045】
以上のように、この実施形態では、16本のフィンガー配線パターンFを跨ぐライン状に塗布液A3が塗布されて、これらフィンガー配線パターンFに跨る補助配線パターンCが形成される。したがって、補助配線パターンCを構成する塗布液A3が、各フィンガー配線パターンFの間Ifに流動せず補助配線パターンCが浮いて形成されるおそれがあった。これに対して本実施形態では、補助配線パターンCを構成する塗布液A3は、フィンガー配線パターンFを構成する塗布液A1よりも粘性が低く、換言すれば、高い流動性を有している。そのため、この塗布液A3を各フィンガー配線パターンFの間Ifに十分に流動させて塗布することができる。その結果、塗布液A3で構成される補助配線パターンCを各フィンガー配線パターンFの間Ifで基板W表面に密接させて、補助配線パターンCの断線を抑制することが可能となっている。
【0046】
以上説明したように、この実施形態では、塗布液A1が本発明の「第1の塗布液」に相当し、塗布液A3が本発明の「第2の塗布液」に相当し、塗布液A2が本発明の「第3の塗布液」に相当し、フィンガー配線パターンFが本発明の「第1のパターン」に相当し、補助配線パターンCが本発明の「第2のパターン」に相当し、バス配線パターンBが本発明の「第3のパターン」に相当し、延設方向Dfが本発明の「第1の方向」に相当し、延設方向Dbが本発明の「第2の方向」「第3の方向」に相当し、図7に示すステップS101〜ステップS105が本発明の「準備工程」に相当し、図7に示すステップS107が本発明の「第2のパターン形成工程」に相当し、ステップS106が本発明の「第3のパターン形成工程」に相当している。また、ステージ3が本発明の「支持手段」に相当し、ステージ移動機構2と第3ヘッド部9が協同して本発明の「第2のパターン形成手段」として機能している。
【0047】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記では、太陽電池モジュールMの補助配線パターンCを形成する場合を例示して本発明の実施形態を説明したが、本発明の適用範囲はこれに限られない。つまり、本発明は、基板表面に形成された複数のパターンを跨いでライン状に塗布される塗布液によって、さらに別のパターンを形成するパターン形成技術全般に適用可能である。
【0048】
また、上記実施形態では、フィンガー配線パターンFの両端それぞれに対して、補助配線パターンCが形成されていた。しかしながら、補助配線パターンCの本数や位置はこれに限られず、適宜変更可能である。また、その他のフィンガー配線パターンFおよびバス配線パターンBの本数や位置についても適宜変更可能である。
【0049】
また、上記実施形態では、バス配線パターンB用の塗布液A2と補助配線パターン用の塗布液A3との粘性関係については特に説明しなかったが、これら塗布液A2、A3の粘性は互いに異なっていても良く、あるいは等しくても良い。なお、塗布液A2、A3の粘性が等しい場合には、補助配線パターンCおよびバス配線パターンBそれぞれの塗布液A2、A3を共通化することができ、各配線パターンB、C毎に塗布液を調合する必要が無くなるため、パターン形成装置を管理する管理者の負担を軽減できる等の利点が得られる。
【0050】
この場合、例えば、比較的粘度の低い塗布液を調合して一箇所に貯留するとともに、この塗布液をマニホールドによって第2、第3ヘッド部5、7のシリンジポンプ72、92へと供給するように構成しても良い。
【0051】
また、上記実施形態では、フィンガー配線パターンF、バス配線パターンB、補助配線パターンCの順番で配線パターンを形成した。しかしながら、これらの形成順序も適宜変更可能であり、具体的には、フィンガー配線パターンF、補助配線パターンC、バス配線パターンBの順番や、バス配線パターンB、フィンガー配線パターンF、補助配線パターンCの順番で配線パターンを形成することもできる。
【0052】
また、上記実施形態では、バス配線パターンBと補助配線パターンCとは、いずれも同じ延設方向Dbに延設して形成される。そこで、第2ヘッド部7に、バス配線パターンB用の吐出ノズル723以外に、補助配線パターンC用の吐出ノズル923も一緒に形成しておき、このように構成された第2ヘッド部7によって、パス配線パターンBの形成と補助配線パターンCの形成とを同時並行して実行しても良い。
【0053】
吐出ノズル523の構成(吐出口525の形状や傾き等)についても、上記実施形態で例示したものに限られず、必要に応じて適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
この発明は、基板上のパターン、例えば太陽電池基板上の電極配線パターンを形成する装置および方法に適用可能であり、特に、複数のフィンガー配線パターンFに対して補助配線パターンCを形成する装置および方法に対して特に好適に適用できる。
【符号の説明】
【0055】
1…パターン形成装置
2…ステージ移動機構
24…ステージ昇降機構
3…ステージ
5…第1ヘッド部
523…吐出ノズル
7…第2ヘッド部
723…吐出ノズル
9…第3ヘッド部
923…吐出ノズル
A1、A2、A3…塗布液
F…フィンガー配線パターン
B…バス配線パターン
C…補助配線パターン
W…基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンを形成するための材料を含む塗布液を吐出するノズルを、基板表面の上方で前記基板表面に対して相対移動させることで、前記基板表面に塗布液を塗布してパターンを形成するパターン形成方法において、
第1の塗布液によって構成される第1の方向に延びる複数の第1のパターンがその表面に形成された基板を準備する準備工程と、
前記第1の塗布液よりも粘度の低い第2の塗布液を吐出するノズルを前記第1の方向に交差する第2の方向に前記基板表面に対して相対移動させることによって前記複数の第1のパターンを上方から跨ぐライン状に前記第2の塗布液を塗布して、前記複数の第1のパターンに跨る第2のパターンを形成する第2のパターン形成工程と
を備えたことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
前記基板は太陽電池素子用の基板であり、前記第1のパターンはフィンガー配線パターンであり、前記第2のパターンは補助配線パターンである請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
前記第1の塗布液よりも粘度の低い第3の塗布液を吐出するノズルを前記第1の方向に交差する第3の方向に前記基板表面に対して相対移動させることによって前記複数の第1のパターンを上方から跨ぐようにしてライン状に前記第3の塗布液を塗布して、前記複数の第1のパターンに跨る第3のパターンを形成する第3のパターン形成工程を、前記第2のパターン形成工程の前あるいは後に実行する請求項1または2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
前記基板は太陽電池素子用の基板であり、前記第3のパターンはバス配線パターンである請求項3に記載のパターン形成方法。
【請求項5】
前記第2の塗布液と前記第3の塗布液は同じ粘度を有する請求項3または4に記載のパターン形成方法。
【請求項6】
パターンを形成するための材料を含む塗布液を吐出するノズルを、基板表面の上方で前記基板表面に対して相対移動させることで、前記基板表面に塗布液を塗布してパターンを形成するパターン形成装置において、
第1の塗布液によって構成される第1の方向に延びる複数の第1のパターンがその表面に形成された基板を支持する支持手段と、
前記第1の塗布液よりも粘度の低い第2の塗布液を吐出するノズルを前記第1の方向に交差する第2の方向に前記基板表面に対して相対移動させることによって前記複数の第1のパターンを上方から跨ぐライン状に前記第2の塗布液を塗布して、前記複数の第1のパターンに跨る第2のパターンを形成する第2のパターン形成手段と
を備えたことを特徴とするパターン形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−71245(P2012−71245A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217312(P2010−217312)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】