説明

パターン形成方法及び液滴吐出装置

【課題】吐出した液滴にレーザ光を照射して形成するパターンの形状制御性を向上させたパターン形成方法及び液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】液滴吐出ヘッド32を搭載したヘッドユニット30に、液滴Fbからの「蒸発成分Ev」を吸引する吸引ポート33と、着弾した液滴Fbからのレーザ光B(反射散乱光Br)の光学特性(光量)を検出するフォトセンサ35と、を設けた。そして、フォトセンサ35の検出する光量検出信号が乾燥終了電位になるまで、液滴Fbの雰囲気に、気体の流動を抑制した低い吸引速度の吸引を施すようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成方法及び液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置やエレクトロルミネッセンス表示装置等の表示装置には、画像を表示するための基板が備えられている。この種の基板には、品質管理や製造管理を目的として、その製造元や製品番号等の製造情報をコード化した識別コード(例えば、2次元コード)が形成されている。
【0003】
こうした識別コードの製造方法には、金属箔にレーザ光を照射してコードパターンをスパッタ成膜するレーザスパッタ法や、研磨材を含んだ水を基板等に噴射してコードパターンを刻印するウォータージェット法が提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【0004】
しかし、上記レーザスパッタ法では、所望するサイズのコードパターンを得るために、金属箔と基板の間隙を、数〜数十μmに調整しなければならない。そのため、基板と金属箔の表面に対して非常に高い平坦性が要求されて、これらの間隙をμmオーダの精度で調整しなければならなかった。その結果、識別コードを製造する対象基板が制限されて、その汎用性を損なう問題があった。また、ウォータージェット法では、基板の刻印時に、水や塵埃、研磨剤等を飛散させるため、対象基板を汚染させる問題があった。
【0005】
そこで、近年では、こうした問題を解消する識別コードの製造方法として、インクジェット法が注目されている。インクジェット法は、金属微粒子を含む液滴を液滴吐出ヘッドのノズルから吐出させて、その液滴を乾燥させることによってコードパターンを製造する。そのため、識別コードを製造する対象基板の範囲を容易に拡大させることができて、対象基板を汚染させることなく識別コードを製造させることができる。
【特許文献1】特開平11−77340号公報
【特許文献2】特開2003−127537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記するインクジェット法では、コードパターンの形状制御性を向上させるために、着弾した液滴の領域にレーザ光を照射させて、所望のサイズの液滴を瞬時に乾燥させることが望まれている。
【0007】
しかしながら、着弾した液滴の領域にレーザ光を照射させると、液滴からの蒸発成分がレーザ光の光学系に付着して、レーザ光の光量や照射位置の変動を招く問題があった。こうした問題は、レーザ光を照射する照射位置の近傍に、液滴からの蒸発成分を吸引する吸引手段を設けて、蒸発成分による光学系の汚染を回避させることによって解決できると考えられる。しかし、照射位置の近傍で蒸発成分を吸引すると、吸引にともなう気体の流動によって、液滴の位置ズレや形状変動を招き、コードパターンの形状制御性を損なわせる虞があった。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、吐出した液滴にレーザ光を照射して形成するパターンの形状制御性を向上させたパターン形成方法及び液滴吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のパターン形成方法は、対象物に着弾したパターン形成材料を含む液滴にレーザ光を照射して前記対象物にパターンを形成するようにしたパターン形成方法において、前記液滴からの蒸発成分を前記液滴の流動性に対応した吸引速度で吸引するようにした。
【0010】
本発明のパターン形成方法によれば、液滴から蒸発成分を吸引する際に、吸引にともなう気体の流動を、液滴の流動性に対応させることができる。従って、気体の流動に起因する液滴の位置ズレや形状変動を回避させることができる。その結果、レーザ光を照射した液滴からなるパターンの形状制御性を向上させることができる。
【0011】
このパターン形成方法は、前記液滴の流動性が低下するに連れて前記吸引速度を増加するようにしてもよい。
このパターン形成方法によれば、流動性の高い状態(着弾直後)の液滴に対して、低い吸引速度の吸引を施すことができ、流動性の低い状態(乾燥状態)の液滴に対して、高い吸引速度の吸引を施すことができる。従って、レーザ光を照射する液滴の位置ズレや形状変動を回避させることができ、かつ、蒸発成分の吸引効率を向上させることができる。
【0012】
このパターン形成方法は、前記液滴の領域からのレーザ光の光学特性に基づいて前記吸引速度を制御するようにしてもよい。
このパターン形成方法によれば、液滴の流動性を、液滴の領域からのレーザ光の光学特性に対応させることができる。従って、液滴の流動性に対応した吸引を、より確実に施すことができ、液滴の位置ズレや形状変動を、より確実に回避させることができる。
【0013】
このパターン形成方法は、前記液滴の領域からのレーザ光の少なくとも光量、波長、波長分布、偏向状態、偏光状態、位相分布、強度分布のいずれか1つに基づいて前記吸引速度を制御するようにしてもよい。
【0014】
この液滴吐出装置によれば、レーザ光の少なくとも光量、波長、波長分布、偏向状態、偏光状態、位相分布、強度分布のいずれか1つを吸引速度に対応させることができる。従って、蒸発成分を吸引する吸引速度を、より正確に液滴の流動性に対応させることができ、レーザ光を照射する液滴の位置ズレや形状変動を、より確実に回避させることができる。
【0015】
このパターン形成方法は、前記液滴の領域からの前記蒸発成分に基づいて前記吸引速度を制御するようにしてもよい。
このパターン形成方法によれば、液滴の流動性を同液滴の領域からの蒸発成分に対応させることができる。従って、蒸発成分の吸引速度を、より確実に、液滴の流動性に対応させることができ、レーザ光を照射する液滴の位置ズレや形状変動を、より確実に回避させることができる。
【0016】
このパターン形成方法は、前記液滴の領域からの前記蒸発成分の少なくとも量と種別のいずれか一方に基づいて前記吸引速度を制御するようにしてもよい。
この液滴吐出装置によれば、蒸発成分の少なくとも量と種別のいずれか一方を、吸引速度に対応させることができ、蒸発成分を吸引する吸引速度を、さらに正確に液滴の流動性に対応させることができる。
【0017】
本発明の液滴吐出装置は、対象物に向かって液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、前記対象物に着弾した前記液滴の領域にレーザ光を照射するレーザ照射手段と、を備えた液滴吐出装置において、前記レーザ光の照射される前記液滴の領域からの蒸発成分を吸引する吸引手段と、前記レーザ光の照射される前記液滴の流動性に対応させて、前記吸引手段の吸引速度を制御する吸引速度制御手段と、を備えた。
【0018】
本発明の液滴吐出装置によれば、吸引による気体の流動を液滴の流動性に対応させることができる。従って、レーザ光の照射された液滴に対して、吸引に起因した位置ズレや形状変動を回避させることができ、レーザ光の照射された液滴からなるパターンの形状制御性を向上させることができる。
【0019】
この液滴吐出装置は、前記液滴の領域からのレーザ光の光学特性を検出するレーザ光検出手段を備えて、前記吸引速度制御手段は、前記レーザ光検出手段の検出する検出信号に基づいて、前記吸引手段の吸引速度を制御するようにしてもよい。
【0020】
この液滴吐出装置によれば、液滴の領域からのレーザ光に基づいて吸引速度を制御させることができる。従って、液滴の流動性に対応した吸引速度を、より確実に付与させることができる。その結果、レーザ光の照射された液滴に対して、吸引に起因した位置ズレや形状変動を、より確実に回避させることができる。
【0021】
この液滴吐出装置において、前記吸引速度制御手段は、前記レーザ光検出手段の検出する検出信号に基づいて、前記レーザ光の領域に前記液滴が着弾しているか否かを判断し、前記レーザ光の領域に前記液滴が着弾しているときに、前記吸引手段を駆動制御して前記蒸発成分の吸引を開始するようにしてもよい。
【0022】
この液滴吐出装置によれば、液滴が着弾した後に、吸引を開始させることができる。従って、吐出途中の液滴や飛行途中の液滴に対する吸引を回避させることができる。その結果、吐出途中の液滴や飛行途中の液滴に対する大気の流動を抑制させることができ、液滴の吐出動作や飛行動作を安定させることができる。その結果、吸引に起因した液滴の位置ズレや形状変動を、より確実に回避させることができる。
【0023】
この液滴吐出装置において、前記レーザ光検出手段は、前記液滴の領域からのレーザ光の少なくとも光量、波長、波長分布、偏向状態、偏光状態、位相分布、強度分布のいずれか1つを検出するようにしてもよい。
【0024】
この液滴吐出装置によれば、レーザ光の少なくとも光量、波長、波長分布、偏向状態、偏光状態、位相分布、強度分布のいずれか1つを検出させるため、液滴の流動性を、より詳細に検出させることができる。
【0025】
この液滴吐出装置は、前記吸引手段の吸引した蒸発成分を検出する蒸発成分検出手段を備えて、前記吸引速度制御手段は、前記蒸発成分検出手段の検出する検出信号に基づいて、前記吸引手段の吸引速度を制御するようにしてもよい。
【0026】
この液滴吐出装置によれば、液滴の領域からの蒸発成分に基づいて、吸引速度を制御させることができる。従って、液滴の流動性に対応した吸引速度を、より確実に、液滴の領域に付与させることができる。その結果、レーザ光の照射された液滴に対して、吸引に起因した位置ズレや形状変動を、より確実に回避させることができる。
【0027】
この液滴吐出装置において、前記蒸発成分検出手段は、前記液滴の領域からの前記蒸発成分の少なくとも量と種別のいずれか一方を検出するようにしてもよい。
この液滴吐出装置によれば、蒸発成分の少なくとも量と種別のいずれか一方を検出させるため、液滴の流動性を、より詳細に検出させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図8に従って説明する。まず、本発明の
パターン形成方法を利用して形成した識別コードを有する液晶表示装置1について図1に従って説明する。
【0029】
図1において、基板2の一側面(表面2a)には、その略中央位置に液晶分子を封入した四角形状の表示部3が形成されるとともに、その表示部3の外側に、走査線駆動回路4及びデータ線駆動回路5が形成されている。液晶表示装置1は、これら走査線駆動回路4が供給する走査信号と、データ線駆動回路5が供給するデータ信号に基づいて、前記表示部3内の液晶分子の配向状態を制御するようになっている。そして、液晶表示装置1は、図示しない照明装置からの平面光を液晶分子の配向状態によって変調して、表示部3の領域に所望の画像を表示するようになっている。
【0030】
表面2aの左側下隅には、一辺が約1mmの正方形からなるコード領域Sが区画形成されるとともに、そのコード領域S内には、16行×16列のデータセルCが仮想分割されている。コード領域Sの選択されたデータセルCの領域には、それぞれパターンとしてのドットDが形成されるとともに、これら複数のドットDによって、液晶表示装置1の識別コード10が構成している。本実施形態では、ドットDの形成されたデータセルCの中心位置を目標吐出位置Pとし、各データセルCの一辺の長さを「セル幅W」という。
【0031】
各ドットDは、その外径がデータセルCの一辺の長さ(前記「セル幅W」)で形成された半球状のパターンである。このドットDは、液状体F(図5参照)の液滴FbをデータセルCに吐出して、同データセルCに着弾した液滴Fbを乾燥及び焼成させることによって形成されている。詳述すると、本実施形態の液状体Fは、溶媒の中に分散媒で分散させた金属微粒子(例えば、ニッケル微粒子やマンガン微粒子)を含む液状体であって、ドットDは、同液状体Fの液滴Fbの領域に、レーザ光B(乾燥レーザB1及び焼成レーザB2:図5参照)を順次照射させる(乾燥及び焼成させる)ことによって形成されている。そして、識別コード10は、各データセルC内のドットDの有無によって、液晶表示装置1の製品番号やロット番号等を再現させるようになっている。本実施形態では、上記基板2の長手方向をX矢印方向とし、X矢印方向と直交する方向をY矢印方向という。
【0032】
次に、前記識別コード10を形成するための液滴吐出装置20について図2に従って説明する。尚、本実施形態では、複数の前記基板2を切出し可能にした対象物としてのマザー基板2Mに、各基板2に対応する複数の前記識別コード10を形成する場合について説明する。
【0033】
図2において、液滴吐出装置20には、略直方体形状に形成された基台21が備えられて、その基台21の一側(X矢印方向側)には、複数の前記マザー基板2Mを収容可能にする基板ストッカ22が配設されている。基板ストッカ22は、図2における上下方向(Z矢印方向及び反Z矢印方向)に移動して、収容する各マザー基板2Mをそれぞれ基台21上に搬出するとともに、基台21上のマザー基板2Mを対応するスロット内に搬入するようになっている。
【0034】
基台21の上面21aであって、その基板ストッカ22側(反X矢印方向側)には、Y矢印方向に延びる走行装置23が配設されている。走行装置23は、その内部に走行モータMS(図8参照)を有して、走行モータMSの出力軸に駆動連結される搬送装置24を、Y矢印方向及び反Y矢印方向に走行させるようになっている。搬送装置24は、マザー基板2Mの裏面2Mbを吸着把持可能にした搬送アーム24aを有する水平多関節ロボットであって、その内部に配設された搬送モータMT(図8参照)の出力軸に駆動連結される搬送アーム24aを、XY平面上で伸縮自在に回動させるとともに、上下方向に移動させるようになっている。
【0035】
基台21の上面21aであって、前記走行装置23のY矢印方向両側には、マザー基板2Mの表面2Maを上側にして同マザー基板2Mを載置する一対の載置台25R,25Lが併設されている。一対の載置台25R,25Lは、それぞれ載置するマザー基板2Mの裏面2Mb側に、前記搬送アーム24aを抜き出し可能にする空間(凹部25a)を有して、同凹部25a内で前記搬送アーム24aを上動及び下動させることによってマザー基板2Mの搬送及び載置を可能にしている。
【0036】
そして、走行モータMS及び搬送モータMTにマザー基板2Mを搬送させるための信号を供給すると、走行装置23及び搬送装置24は、前記基板ストッカ22内の各マザー基板2Mを搬出して、搬出したマザー基板2Mを、載置台25R,25Lのいずれか一方に載置するようになっている。また、走行装置23及び搬送装置24は、載置台25R,25Lに載置したマザー基板2Mを、基板ストッカ22内の所定のスロット内に搬入して回収するようになっている。
【0037】
尚、本実施形態では、図3に示すように、載置台25R,25Lに載置されたマザー基板2Mのコード領域Sであって、その最もX矢印方向側から順に、1行目コード領域S1、2行目コード領域S2、・・・、5行目コード領域S5という。
【0038】
図2において、基台21の上面21aであって、一対の載置台25R,25Lの間には、相対移動手段としての多関節ロボット(以下単に、スカラロボットという。)26が配設されるとともに、そのスカラロボット26には、基台21の上面21aに固設されて上方(Z矢印方向)に延びる主軸27が備えられている。
【0039】
主軸27の上端には、主軸27に設置された第1モータM1(図8参照)の出力軸に駆動連結される第1アーム28aが水平方向(XY平面方向)に回動可能に連結されている。第1アーム28aの先端には、第1アーム28aに設置された第2モータM2(図8参照)の出力軸に駆動連結される第2アーム28bが水平方向に回動可能に連結されている。第2アーム28bの先端には、第2アーム28bに設置された第3モータM3(図8参照)の出力軸に駆動連結される円柱状の第3アーム28cが、そのZ矢印方向に沿う軸心を回動中心にして回動可能に連結されている。
【0040】
第3アーム28cの先端(下端)には、ヘッドユニット30が配設されて、そのヘッドユニット30には、箱体状に形成されたケース31が備えられている。ケース31の下側には、液滴吐出ヘッド(以下単に、吐出ヘッドという)32と吸引手段を構成する吸引ポート33が配設されている。また、ケース31の一側面には、レーザ照射手段を構成するレーザヘッド34が配設されるとともに、レーザヘッド34と相対向する他側面には、レーザ光検出手段を構成するフォトセンサ35が配設されている。
【0041】
そして、第1、第2及び第3モータM1,M2,M3にヘッドユニット30を走査させるための信号を供給すると、スカラロボット26は、対応する第1、第2及び第3アーム28a,28b,28cを回動して、ヘッドユニット30を、上面21a上の所定領域内で走査させるようになっている。
【0042】
詳述すると、図3に示すように、スカラロボット26は、各目標吐出位置Pの位置座標(教示座標Tp:図8参照)に基づいて生成される滑らかな九十九折状の「目標軌跡R」に沿って、ヘッドユニット30を走査させるようになっている。すなわち、スカラロボット26は、載置台25L上の矢印で示すように、まず第1、第2及び第3アーム28a、28b,28cを回動させて、ヘッドユニット30(第3アーム28cの先端)を、1行目コード領域S1の反Y矢印方向側の位置(以下単に、始点SPという。)に相対させるようになっている。そして、ヘッドユニット30を始点SPに相対させると、スカラロボ
ット26は、その吐出ヘッド32を先行させて、始点SPに位置するヘッドユニット30をY矢印方向に沿って走査させるようになっている。
【0043】
ヘッドユニット30をY矢印方向に沿って走査させると、スカラロボット26は、第1、第2及び第3アーム28a、28b,28cを回動させて、マザー基板2MのY矢印方向外側で、ヘッドユニット30を180度だけ左回りに回転させるとともに、2行目コード領域S2のY矢印方向側まで回動させるようになっている。そして、ヘッドユニット30を2行目コード領域S2上に配置させると、スカラロボット26は、そのレーザヘッド34を先行させて、ヘッドユニット30を、反Y矢印方向に沿って走査させるようになっている。
【0044】
以後同様にして、スカラロボット26は、その吐出ヘッド32を先行させて、3行目、4行目、5行目コード領域S3,S4,S5の順に、ヘッドユニット30をY矢印方向(あるいは反Y矢印方向)に沿って走査させて、5行目コード領域S5のY矢印方向側の位置(終点EP)に相対させるようになっている。尚、本実施形態では、ヘッドユニット30の走査される方向を、走査方向RAという。
【0045】
次に、前記ヘッドユニット30について図4〜図7に従って説明する。図4及び図5は、ヘッドユニット30を説明する概略側面図であって、図6は、ヘッドユニット30をマザー基板2Mの表面2Maから見た概略平面図である。図7は、ヘッドユニット30による液滴検出工程、乾燥工程及び焼成工程を説明するためのタイミングチャートである。
【0046】
図4において、ケース31の内部には、前記液状体Fを導出可能に収容する液状体タンク36が配設されて、収容する液状体Fを、その下方に配設された前記吐出ヘッド32に供給するようになっている。
【0047】
図5において、吐出ヘッド32の下側には、ノズルプレート37が備えられるとともに、そのノズルプレート37の下面(ノズル形成面37a)には、マザー基板2Mの法線方向(Z矢印方向)に沿う複数の円形孔(ノズルN)が貫通形成されている。
【0048】
図6において、各ノズルNは、吐出ヘッド32(ヘッドユニット30)の走査方向RAと直交する方向に沿って配列形成されて、その形成ピッチが、データセルCの形成ピッチ(セル幅W)と同じピッチで形成されている。本実施形態では、マザー基板2M上の位置であって、走査させる各ノズルNと相対向する位置を、それぞれ着弾位置PFとし、走査される着弾位置PFの各々が、それぞれ対応する前記目標吐出位置Pを通過するようになっている。
【0049】
図5において、各ノズルNの上側には、液状体タンク36に連通するキャビティ38が形成されて、液状体タンク36の導出する液状体Fを、それぞれ対応するノズルN内に供給するようになっている。各キャビティ38の上側には、上下方向に振動可能な振動板39が貼り付けられて、キャビティ38内の容積を拡大・縮小するようになっている。振動板39の上側には、各ノズルNに対応する複数の圧電素子PZが配設されて、液滴Fbを吐出させるための信号(圧電素子駆動電圧COM:図7及び図8参照)を受けて上下方向に収縮・伸張するようになっている。
【0050】
そして、着弾位置PF(ノズルN)が目標吐出位置P(データセルCの中心位置)に相対するときに、対応する圧電素子PZに対して圧電素子駆動電圧COMを供給する。すると、対応する圧電素子PZが収縮・伸張して、同圧電素子PZに対応するノズルN内の液状体Fの界面が上下方向に振動する。これによって、対応するノズルNから、圧電素子駆動電圧COMに対応するサイズの液滴Fbが吐出される。吐出された液滴Fbは、反Z矢
印方向に沿って飛行して、相対する目標吐出位置Pに着弾する。目標吐出位置Pに着弾した液滴Fbは、表面2Maに沿って濡れ広がって、やがて乾燥及び焼成されるサイズになる(外径がセル幅Wになる)。
【0051】
本実施形態では、液滴Fbの吐出動作の開始時(吐出動作開始時T0:図7参照)から、吐出した液滴Fbの外径がセル幅Wになるとき(照射開始時T1:図7参照)までの時間を、照射待機時間Dt0(図7参照)という。また、本実施形態のヘッドユニット30は、この照射待機時間Dt0の間に、所定の距離(照射待機距離Lw)だけ走査されるようになっている。尚、この照射待機距離Lwは、前記セル幅Wと等しい距離に設定されている。
【0052】
図6の上側において、レーザヘッド34の内部には、各ノズルNに対応する複数の半導体レーザLDが、前記ノズルNの配列方向に沿って配列されている。各半導体レーザLDのマザー基板2M側には、ノズルNの配列方向に沿って形成された反射ミラーMが配設されている。各半導体レーザLDは、それぞれ半導体レーザLDを駆動制御するための信号(レーザ駆動電圧Vz:図7参照)を受けて、液滴Fbの吸収波長に対応した波長領域のレーザ光Bを反射ミラーMに向けて出射するようになっている。
【0053】
詳述すると、半導体レーザLDは、低い電位のレーザ駆動電圧Vz(液滴検出レーザ駆動電圧Vz0:図7参照)を受けて、液滴Fbの濡れ広がりを抑制可能にするとともに、液滴Fbの有無を判別可能にする強度のレーザ光B(液滴検出レーザB0)を出射させるようになっている。この液滴検出レーザB0は、目標吐出位置Pに液滴Fbが着弾しているか否かを検出する液滴検出工程で利用されるようになっている。
【0054】
また、半導体レーザLDは、中間の電位のレーザ駆動電圧Vz(乾燥レーザ駆動電圧Vz1:図7参照)を受けて、液滴検出レーザB0よりも高いエネルギーのレーザ光Bであって、かつ、液滴Fbの溶媒を「蒸発成分Ev」として蒸発可能にする強度のレーザ光B(乾燥レーザB1という。)を出射させるようになっている。この乾燥レーザB1は、液滴Fbの溶媒を蒸発させて、同液滴Fbを乾燥させる工程(乾燥工程)で利用されるようになっている。
【0055】
さらに、半導体レーザLDは、高い電位のレーザ駆動電圧Vz(焼成レーザ駆動電圧Vz2:図7参照)を受けて、乾燥レーザB1よりも高いエネルギーのレーザ光Bであって、かつ、液滴Fbの分散媒を「蒸発成分Ev」として蒸発させて金属微粒子を焼成させる強度のレーザ光B(焼成レーザB2という。)を出射させるようになっている。この焼成レーザB2は、液滴Fbの金属微粒子を焼成させる工程(焼成工程)で利用されるようになっている。
【0056】
反射ミラーMは、各半導体レーザLDからのレーザ光B(液滴検出レーザB0、乾燥レーザB1、焼成レーザB2)を全反射して、対応する目標吐出位置Pの走査方向RAの反対側の位置(照射位置PT)に導くようになっている。照射位置PTに導かれるレーザ光Bは、照射位置PTに位置する液滴Fbあるいは表面2Maに反射散乱されて、その殆どを反射散乱光Brとして走査方向RA側(フォトセンサ35側)に反射散乱させるようになっている。
【0057】
尚、本実施形態では、図5に示すように、液滴Fbの着弾する着弾位置PFとレーザ光Bの照射される照射位置PTとの間の距離が、前記照射待機距離Lwに設定されている。すなわち、前記吐出動作開始時T0から照射待機時間Dt0だけ経過するタイミング(前記照射開始時T1)で、半導体レーザLDからレーザ光Bを出射させる。すると、着弾位置PFに着弾した液滴Fbが、対応する照射位置PTまで相対移動するとともに、半導体
レーザLDからのレーザ光Bが、照射位置PTに相対移動して、セル幅Wの外径を有した液滴Fbの領域に照射されるようになっている。
【0058】
図6において、フォトセンサ35には、前記半導体レーザLDに対応する複数の受光素子PDが、前記半導体レーザLD(ノズルN)の配列方向に沿って配列されている。各受光素子PDは、フォトダイオード等からなる素子であって、対応する照射位置PT(液滴Fb)からの反射散乱光Brを受光するとともに、受光した反射散乱光Brの光学特性に相対する検出信号(光量検出信号Vp)を出力するようになっている。尚、本実施形態の受光素子PDは、反射散乱光Brの光学特性として、反射散乱光Brの光量に相対する信号を出力するようになっているが、これに限らず、例えば、受光素子PDは、反射散乱光Brの波長や波長に対する光量の分布、さらには反射散乱光Brの偏向状態や偏光状態、位相分布、強度分布等を、光学特性として出力する構成にしてもよい。
【0059】
そして、図7に示すように、前記照射開始時T1のタイミングで、半導体レーザLDに、所定の時間(液滴検出時間Dt1)だけ、液滴検出レーザ駆動電圧Vz0を供給する(乾燥開始時T2まで液滴検出工程を実行する)。すると、半導体レーザLDは、液滴検出レーザ駆動電圧Vz0に対応する強度の液滴検出レーザB0を、対応する照射位置PTに照射させる。
【0060】
照射位置PTに照射された液滴検出レーザB0は、照射位置PTに液滴Fbが着弾しているか否かによって、その反射散乱光Brの光量を増減させる。すなわち、照射位置PTに液滴Fbが着弾している場合、照射位置PTに照射された液滴検出レーザB0は、その一部が液滴Fbに吸収されて、液滴Fbの濡れ広がりを抑制するとともに、その反射散乱光Brの光量を低下させる。一方、照射位置PTに液滴Fbが着弾していない場合、照射位置PTに照射された液滴検出レーザB0は、マザー基板2Mに反射されて、同液滴検出レーザB0と略等しい光量の反射散乱光Brを反射散乱させる。
【0061】
尚、本実施形態の液滴吐出装置20は、液滴検出工程での受光素子PDが受光した反射散乱光Brに基づく各光量検出信号Vpに従って、後続するレーザ光Bの照射工程(乾燥工程及び焼成工程)を実行させるか否かを判断するようになっている。
【0062】
詳述すると、液滴吐出装置20は、液滴検出時間Dt1における受光素子PDからの光量検出信号Vpが、所定の電位(液滴検出電位Vp0:図7参照)以下に維持されると、対応する照射位置PTに液滴Fbが着弾していると判断して、対応する半導体レーザLDに乾燥レーザB1を出射させるようになっている。反対に、液滴吐出装置20は、液滴検出時間Dt1における受光素子PDからの光量検出信号Vpが、前記液滴検出電位Vp0よりも高くなると、照射位置PTに液滴Fbが着弾していないと判断して、対応する半導体レーザLDに対して、レーザ光Bの出射を停止させるようになっている。
【0063】
そして、図7に示すように、液滴検出工程(液滴検出時間Dt1)における受光素子PDからの光量検出信号Vpが液滴検出電位Vp0以下に維持されると、対応する半導体レーザLDに、乾燥レーザ駆動電圧Vz1が供給される(乾燥開始時T2に乾燥工程が開始される)。すると、対応する半導体レーザLDは、対応する照射位置PT(液滴検出工程の施された液滴Fbの領域)に向かって乾燥レーザB1を照射させる。
【0064】
液滴Fbに照射された乾燥レーザB1は、照射位置PTに位置する液滴Fbの溶媒を「蒸発成分Ev」として徐々に蒸発させて、照射位置PTに位置する液滴Fbの流動性を徐々に低下させる、すなわち乾燥させる。また、液滴Fbに照射された乾燥レーザB1は、液滴Fbの流動性に応じて、その反射散乱光Brの光量を増減させる。すなわち、液滴Fbの中の溶媒が徐々に減少して液滴Fbの流動性が低下すると、液滴Fbに照射された乾
燥レーザB1は、液滴Fbの中の溶媒が蒸発した分だけ、液滴Fbに吸収される光量を減少させて、液滴Fbからの反射散乱光Brの光量を増加させる。
【0065】
尚、本実施形態の液滴吐出装置20は、乾燥工程での受光素子PDからの光量検出信号Vpに基づいて、後続するレーザ光Bの照射工程(焼成工程)のタイミングを判断させるようになっている。
【0066】
詳述すると、液滴吐出装置20は、乾燥工程での受光素子PDからの光量検出信号Vpが所定の電位(乾燥終了電位Vp1:図7参照)よりも低い間、液滴Fbが乾燥されていない(液滴Fbの流動性が高い)と判断して、対応する半導体レーザLDに、乾燥レーザB1の出射を継続させるようになっている。反対に、液滴吐出装置20は、乾燥工程の光量検出信号Vpが、前記乾燥終了電位Vp1)よりも高くなると、対応する液滴Fbが乾燥されている(液滴Fbの流動性が低い)と判断して、対応する半導体レーザLDに、焼成レーザB2を出射させるようになっている。
【0067】
そして、図7に示すように、乾燥工程(乾燥開始時T2以後)の光量検出信号Vpが乾燥終了電位Vp1よりも高くなる(焼成開始時T3になる)。すると、対応する半導体レーザLDに、所定の時間(焼成時間Dt2)だけ、焼成レーザ駆動電圧Vz2が供給される(焼成終了時T4まで焼成工程を実行する)。焼成レーザ駆動電圧Vz2が供給されると、対応する半導体レーザLDは、対応する照射位置PT(乾燥工程の終了した液滴Fbの領域)に焼成レーザB2を照射させる。
【0068】
液滴Fbに照射された焼成レーザB2は、照射位置PTに位置する液滴Fbの分散媒を「蒸発成分Ev」として蒸発させて、照射位置PTに位置する液滴Fb(金属微粒子)の流動性を低下させてマザー基板2Mに密着させる、すなわち焼成させる。
【0069】
図4において、吸引ポート33は、下方を開口した箱体状に形成されて、その内部が、ケース31内に配設される吸引チューブTに連結されている。吸引チューブTは、前記第3アーム28c、第2アーム28b、第1アーム28a及び主軸27の内部に引き回されて、基台21内に配設された吸引ポンプPMに連結されている。
【0070】
吸引ポンプPMは、吸引を開始させるための駆動信号(吸引開始信号TP1:図8参照)を受けて、吸引チューブTを介した吸引ポート33からの吸引を開始させるようになっている。また、吸引ポンプPMは、吸引を終了させるための駆動信号(吸引終了信号TP2:図8参照)を受けて、吸引チューブTを介した吸引ポート33からの吸引を終了させるようになっている。
【0071】
吸引チューブTの途中には、吸引速度制御手段を構成する切替えバルブ40が連結されている。切替えバルブ40は、複数のピエゾバルブを有して、各ピエゾバルブのオン/オフに基づいて、吸引ポート33と吸引ポンプPMとの間の流路抵抗を切替えるようになっている。そして、切替えバルブ40は、吸引ポート33と吸引ポンプPMとの間の流路抵抗を切替えるための信号(切替え信号Vc:図7参照)を受けて、吸引ポート33と吸引ポンプPMとの間の流路抵抗を切替えるとともに、吸引ポート33からの吸引速度を前記切替え信号Vcに対応させて増減させるようになっている。
【0072】
詳述すると、切替えバルブ40は、吸引ポート33と吸引ポンプPMとの間の流路を遮断するための切替え信号Vc(遮断電圧Vc0:図7参照)を受けて、吸引ポート33と吸引ポンプPMとの間の流路を遮断するようになっている。
【0073】
また、切替えバルブ40は、吸引ポート33と吸引ポンプPMとの間の流路抵抗を高く
するための切替え信号Vc(低速切替え電圧Vc1:図7参照)を受けて、吸引ポート33と吸引ポンプPMとの間の流路抵抗を所定の流路抵抗(第1流路抵抗)にするようになっている。尚、この第1流路抵抗は、予め試験等に基づいて設定されて、同第1流路抵抗に対応する吸引速度(低吸引速度)の吸引によって、着弾直後の液滴Fb(流動性の高い液滴Fb)の位置及び形状が変動しない抵抗値に設定されている。
【0074】
さらに、切替えバルブ40は、吸引ポート33と吸引ポンプPMとの間の流路抵抗を低くするための切替え信号Vc(高速切替え電圧Vc2:図7参照)を受けて、吸引ポート33と吸引ポンプPMとの間の流路抵抗を前記第1流路抵抗よりも低い所定の流路抵抗(第2流路抵抗)にするようになっている。尚、この第2流路抵抗は、予め試験等に基づいて設定されて、同第2流路抵抗に対応する吸引速度(高吸引速度)の吸引によって、乾燥した液滴Fb(流動性の低い液滴Fb)の位置及び形状が変動しない抵抗値に設定されている。
【0075】
そして、図7に示すように、液滴検出工程(液滴検出時間Dt1)の光量検出信号Vpが液滴検出電位Vp0以下に維持される(乾燥工程を開始する)タイミングで、切替えバルブ40に、低速切替え電圧Vc1を供給する。すると、吸引ポート33と吸引ポンプPMとの間の流路抵抗が第1流路抵抗に切替えられて、第1流路抵抗に対応する低吸引速度の吸引が開始される。すなわち、吸引ポート33からの低吸引速度の吸引によって、乾燥工程で発生する「蒸発成分Ev」が吸引される。
【0076】
この際、流動性の高い液滴Fbの雰囲気に対して、気体の流動を抑制させた低吸引速度の吸引を施すために、乾燥前の液滴Fbの位置や形状を維持させることができる。従って、「蒸発成分Ev」に起因する光学系(例えば、反射ミラーM)の汚染を回避させることができ、かつ、着弾した液滴Fbの位置ズレや形状変動を回避させることができる。
【0077】
そして、図7に示すように、各光量検出信号Vpが乾燥終了電位Vp1よりも高くなる(焼成工程を開始する)タイミングで、切替えバルブ40に、所定の時間(焼成時間Dt2と予備吸引時間Dt3を加算した時間)だけ、高速切替え電圧Vc2を供給する。すると、吸引ポート33と吸引ポンプPMとの間の流路抵抗が第2流路抵抗に切替えられて、第2流路抵抗に対応する高吸引速度の吸引によって、焼成工程で発生する「蒸発成分Ev」が吸引される。
【0078】
この際、流動性の低い液滴Fbの雰囲気に対して、気体の流動を抑えることの無い高吸引速度の吸引を施すため、焼成前の液滴Fbの位置や形状を維持させた状態で、「蒸発成分Ev」を短時間で吸引させることができる。しかも、焼成工程を終了してから(焼成終了時T4から)予備吸引時間Dt3の分だけ継続して吸引させるために、残留する「蒸発成分Ev」を、吸引の終了時(吸引終了時T5)までに、確実に排気させることができる。
【0079】
従って、「蒸発成分Ev」に起因する光学系(例えば、反射ミラーM)の汚染を確実に回避させることができ、かつ、着弾した液滴Fbの位置ズレや形状変動を回避させることができる。
【0080】
次に、上記のように構成した液滴吐出装置20の電気的構成を図8に従って説明する。
図8において、液滴吐出装置20には、CPU等からなる制御装置51が設けられている。制御装置51は、第3アーム28cの先端(吐出ヘッド32)の現在位置と各種制御プログラムに基づいて、走行装置23、搬送装置24及びスカラロボット26を駆動制御させるとともに、吐出ヘッド32、レーザヘッド34及び切替えバルブ40を駆動制御させるようになっている。
【0081】
制御装置51には、記憶部51Aが設けられて、各種データや識別コード10を製造するための各種プログラムが格納されている。例えば、記憶部51Aには、ビットマップデータBMD、前記目標軌跡Rを作成するための前記教示座標Tp、前記液滴検出電位Vp0に関する情報(液滴検出情報FI)、前記乾燥終了電位Vp1に関する情報(乾燥終了情報EI)等の各種データが格納されている。
【0082】
ビットマップデータBMDは、直交座標系における描画平面(マザー基板2Mの表面2Ma)を仮想分割した各位置に液滴Fbを吐出させるか否かを示すデータであって、各ビットの値(0あるいは1)に応じて、各圧電素子PZを駆動するか否かを規定するためのデータである。すなわち、ビットマップデータBMDは、吐出ヘッド32を各行目コード領域S1〜S5上に走査させるときに、各ノズルNから液滴Fbを吐出させるか否かを規定させるためのデータである。
【0083】
制御装置51には、補間演算部51Bが設けられて、連続する教示座標Tpの間の空間に所定の補間周期で補間処理(例えば、直線補間や円弧補間等)を施して目標軌跡Rを構成する複数の補間点の位置座標(補間座標)を順次演算するようになっている。そして、補間演算部51Bは、対応する教示座標Tpと同教示座標Tpまでの空間を補間する複数の補間座標とからなる情報(軌跡情報TaI)を生成して、その軌跡情報TaIを逆変換部51Cに順次出力するようになっている。
【0084】
逆変換部51Cは、補間演算部51Bからの軌跡情報TaIに基づいて、第3アーム28cの先端位置を、前記教示座標Tp及び前記補間座標に相対させるためのスカラロボット26の姿勢(各モータM1,M2,M3の回動角等)を順次演算するようになっている。すなわち、逆変換部51Cは、ヘッドユニット30を目標軌跡Rに沿って走査させるためのスカラロボット26の姿勢に関する情報(アーム回動情報θI)を順次生成するようになっている。そして、逆変換部51Cは、生成したアーム回動情報θIを、スカラロボット駆動回路55に出力するようになっている。
【0085】
制御装置51には、入力部52、走行装置駆動回路53、搬送装置駆動回路54、スカラロボット駆動回路55、フォトセンサ駆動回路56、吐出ヘッド駆動回路57、レーザヘッド駆動回路58、吸引ポンプ駆動回路59及び切替えバルブ駆動回路60が接続されている。
【0086】
入力部52は、起動スイッチ、停止スイッチ等の操作スイッチを有して、識別コード10に関する情報を、既定形式の描画データIaとして制御装置51に入力するようになっている。そして、制御装置51は、入力部52からの描画データIaに所定の展開処理を施してビットマップデータBMDを生成するとともに、同ビットマップデータBMDに基づいて、各目標吐出位置Pの直交座標系における位置座標(前記教示座標Tp)を生成するようになっている。さらに、制御装置51は、描画データIaに対してビットマップデータBMDと異なる展開処理を施して、前記圧電素子駆動電圧COM及び前記レーザ駆動電圧Vz(液滴検出レーザ駆動電圧Vz0、乾燥レーザ駆動電圧Vz1、焼成レーザ駆動電圧Vz2)を生成するようになっている。
【0087】
走行装置駆動回路53には、走行モータMSと走行モータ回転検出器MSEが接続されて、制御装置51からの駆動制御信号に応答して走行モータMSを正転または逆転させるとともに、走行モータ回転検出器MSEからの検出信号に基づいて、搬送装置24の移動方向及び移動量を演算するようになっている。
【0088】
搬送装置駆動回路54には、搬送モータMTと搬送モータ回転検出器MTEが接続され
て、制御装置51からの駆動制御信号に応答して搬送モータMTを正転または逆転させるとともに、搬送モータ回転検出器MTEからの検出信号に基づいて、搬送アーム24aの移動方向及び移動量を演算するようになっている。
【0089】
スカラロボット駆動回路55には、第1モータM1、第2モータM2及び第3モータM3が接続されて、制御装置51からのアーム回動情報θIに応答して、第1、第2及び第3モータM1,M2,M3を正転または逆転させるようになっている。また、スカラロボット駆動回路55には、第1モータ回転検出器M1E、第2モータ回転検出器M2E及び第3モータ回転検出器M3Eが接続されて、第1、第2及び第3モータ回転検出器M1E,M2E,M3Eからの検出信号に基づいて、第3アーム28cの先端(吐出ヘッド32)の移動方向及び移動量を演算するようになっている。そして、制御装置51は、スカラロボット駆動回路55を介して、ヘッドユニット30を目標軌跡Rに沿うような九十九折り状に走査させるとともに、スカラロボット駆動回路55からの演算結果(吐出ヘッド32の現在位置)に基づいて各種制御信号を出力するようになっている。
【0090】
詳述すると、制御装置51は、各ノズルN(着弾位置PF)がマザー基板2M上の各目標吐出位置Pに相対する前に、前記圧電素子駆動電圧COM及び前記レーザ駆動電圧Vzを、それぞれ吐出ヘッド駆動回路57及びレーザヘッド駆動回路58に出力するようになっている。また、制御装置51は、各ノズルNに対応するビットマップデータBMDを所定のクロック信号に同期させた吐出制御信号SIとして生成して、同吐出制御信号SIを吐出ヘッド駆動回路57に順次シリアル転送するようになっている。
【0091】
また、制御装置51は、各ノズルN(着弾位置PF)がマザー基板2M上の各目標吐出位置Pに相対するタイミングで、液滴Fbを吐出させるための信号(吐出タイミング信号LP)を生成するとともに、生成した吐出タイミング信号LPを吐出ヘッド駆動回路57に出力するようになっている。
【0092】
さらに、制御装置51は、吐出ヘッド32が始点SP及び終点EPに配置されるタイミングで、前記吸引開始信号TP1及び前記吸引終了信号TP2を生成するとともに、これら吸引開始信号TP1及び吸引終了信号TP2を、それぞれ吸引ポンプ駆動回路59に出力するようになっている。
【0093】
フォトセンサ駆動回路56には、フォトセンサ35(前記複数の受光素子PD)が接続されて、各受光素子PDの受光した反射散乱光Brに対応する光量検出信号Vpを、所定のクロック信号に同期させて、制御装置51に順次出力するようになっている。そして、制御装置51は、フォトセンサ駆動回路56からの各光量検出信号Vpに基づいて、各種制御信号を出力するようになっている。
【0094】
詳述すると、制御装置51は、液滴検出時間Dt1に対応する光量検出信号Vpが液滴検出電位Vp0以下に維持されるときに、同光量検出信号Vpに対応する半導体レーザLDに対して乾燥レーザ駆動電圧Vz1を供給するための乾燥レーザ選択信号KIを生成するようになっている。そして、制御装置51は、生成した乾燥レーザ選択信号KIを、レーザヘッド駆動回路58に出力するようになっている。さらに、この際、制御装置51は、切替えバルブ40に低速切替え電圧Vc1を供給するための低速選択信号LIを生成して、生成した低速選択信号LIを切替えバルブ駆動回路60に出力するようになっている。
【0095】
また、制御装置51は、乾燥工程における各受光素子PDからの光量検出信号Vpが、それぞれ乾燥終了電位Vp1よりも高くなる度に、対応する半導体レーザLDに対して焼成レーザ駆動電圧Vz2を供給するための焼成レーザ選択信号MIを順次生成するように
なっている。そして、制御装置51は、生成した焼成レーザ選択信号MIを、順次レーザヘッド駆動回路58に出力するようになっている。さらに、この際、制御装置51は、対応する全ての半導体レーザLDに焼成レーザ駆動電圧Vz2を供給するタイミングで、切替えバルブ40に高速切替え電圧Vc2を供給するための高速選択信号HIを生成して、生成した高速選択信号HIを切替えバルブ駆動回路60に出力するようになっている。
【0096】
吐出ヘッド駆動回路57は、制御装置51からの吐出制御信号SIを受けて、同吐出制御信号SIを各圧電素子PZに対応させて順次シリアル/パラレル変換するようになっている。そして、吐出ヘッド駆動回路57は、制御装置51からの吐出タイミング信号LPを受けると、シリアル/パラレル変換した吐出制御信号SIに基づいて選択された圧電素子PZに、それぞれ圧電素子駆動電圧COMを供給させるようになっている。また、吐出ヘッド駆動回路57は、制御装置51からの吐出タイミング信号LPを受けると、シリアル/パラレル変換した吐出制御信号SIをレーザヘッド駆動回路58に出力するようになっている。
【0097】
レーザヘッド駆動回路58は、吐出動作開始時T0に、吐出ヘッド駆動回路57からの吐出制御信号SIを受けるようになっている。また、レーザヘッド駆動回路58は、照射待機時間Dt0だけ待機した後(照射開始時T1)に、その吐出制御信号SIに基づいて選択された半導体レーザLDに、それぞれ液滴検出レーザ駆動電圧Vz0を供給するようになっている。そして、レーザヘッド駆動回路58は、液滴Fbを吐出したノズルNに対応する半導体レーザLDから、液滴検出レーザB0を出射させるようになっている。
【0098】
また、レーザヘッド駆動回路58は、乾燥開始時T2に、制御装置51からの乾燥レーザ選択信号KIを受けるようになっている。また、レーザヘッド駆動回路58は、その乾燥レーザ選択信号KIに基づいて選択された半導体レーザLDに、それぞれ乾燥レーザ駆動電圧Vz1を供給するようになっている。そして、レーザヘッド駆動回路58は、液滴Fbの着弾した照射位置PTに対応する半導体レーザLDから、乾燥レーザB1を出射させるようになっている。
【0099】
さらに、レーザヘッド駆動回路58は、焼成開始時T3に、制御装置51からの焼成レーザ選択信号MIを受けるようになっている。また、レーザヘッド駆動回路58は、焼成レーザ選択信号MIに基づいて選択された半導体レーザLDに、順次焼成レーザ駆動電圧Vz2を供給するようになっている。そして、レーザヘッド駆動回路58は、乾燥工程の終了した液滴Fbに対応する半導体レーザLDから順に、焼成レーザB2を出射させるようになっている。
【0100】
吸引ポンプ駆動回路59には、吸引ポンプPMが接続されるとともに、制御装置51からの吸引開始信号TP1及び吸引終了信号TP2に応答して、吸引ポンプPMの吸引を開始及び終了させるようになっている。そして、制御装置51は、ヘッドユニット30を目標軌跡Rに沿って走査させる間、吸引ポンプPMを駆動させて、吸引ポート33からの吸引を継続させるようになっている。
【0101】
切替えバルブ駆動回路60は、乾燥開始時T2に、制御装置51からの低速選択信号LIを受けて、切替えバルブ40に、低速切替え電圧Vc1を供給するようになっている。そして、切替えバルブ駆動回路60は、液滴Fbの乾燥工程を開始するタイミングで、吸引ポート33からの低吸引速度の吸引を開始させるようになっている。
【0102】
また、切替えバルブ駆動回路60は、全ての液滴Fbの乾燥工程を終了するタイミングで、制御装置51からの高速選択信号HIを受けて、切替えバルブ40に、高速切替え電圧Vc2を供給するようになっている。そして、切替えバルブ駆動回路60は、全ての液
滴Fbの乾燥工程を終了するタイミングで、吸引ポート33からの高吸引速度の吸引を開始させるようになっている。
【0103】
次に、液滴吐出装置20を使って識別コード10を形成する方法について説明する。
まず、入力部52を操作して描画データIaを制御装置51に入力する。すると、制御装置51は、走行装置23及び搬送装置24を駆動制御して基板ストッカ22のマザー基板2Mを搬出し、搬出したマザー基板2Mを載置台25R(あるいは載置台25L)に載置させる。また、制御装置51は、入力部52からの描画データIaに所定の展開処理を施して、ビットマップデータBMD、教示座標Tp、前記圧電素子駆動電圧COM及び前記レーザ駆動電圧Vz(液滴検出レーザ駆動電圧Vz0、乾燥レーザ駆動電圧Vz1、焼成レーザ駆動電圧Vz2)を生成する。
【0104】
そして、描画データIaに基づいた各種データを生成すると、制御装置51は、生成したビットマップデータBMD及び教示座標Tpを記憶部51Aに格納するとともに、スカラロボット駆動回路55を介して、第3アーム28cの先端を始点SPまで移動させる。
【0105】
この間、制御装置51は、補間演算部51Bを介して、1行目コード領域S1の始点SP側に位置する教示座標Tpから順に、後続する教示座標Tpまでの間を補間する複数の補間座標を順次生成して、複数の補間座標と後続する教示座標Tpとからなる軌跡情報TaIを逆変換部51Cに順次出力する。軌跡情報TaIを逆変換部51Cに出力すると、制御装置51は、逆変換部51Cを介して、複数の補間座標と後続する教示座標Tpのそれぞれに対応したアーム回動情報θIを順次生成する。
【0106】
そして、第3アーム28cの先端(吐出ヘッド32)が始点SPに配置されると、制御装置51は、生成したアーム回動情報θIを順次スカラロボット駆動回路55に出力して、ヘッドユニット30の走査を開始させるとともに、吸引開始信号TP1を吸引ポンプ駆動回路59に出力して吸引ポンプPMを駆動させる。
【0107】
この間、制御装置51は、前記圧電素子駆動電圧COM及び前記レーザ駆動電圧Vzを、それぞれ吐出ヘッド駆動回路57及びレーザヘッド駆動回路58に出力する。そして、制御装置51は、スカラロボット駆動回路55からの演算結果に基づいて、ヘッドユニット30の走査とともに移動する着弾位置PFが、1行目コード領域S1の最も反Y矢印方向側に位置する目標吐出位置Pに到達したか否かを判断する。
【0108】
ここで、着弾位置PFが1行目コード領域S1の最も反Y矢印側に位置する目標吐出位置Pに到達すると、制御装置51は、吐出ヘッド駆動回路57に吐出タイミング信号LPを出力して、吐出制御信号SIに基づいて選択された圧電素子PZに、それぞれ圧電素子駆動電圧COMを供給する。すると、選択されたノズルNから液滴Fbが一斉に吐出されて、吐出された各液滴Fbが対応する着弾位置PF(目標吐出位置P)に着弾する。目標吐出位置Pに着弾した流動性の高い液滴Fbは、対応する目標吐出位置Pの領域(データセルC内)で濡れ広がって、吐出動作の開始から「照射待機時間Dt0」だけ経過すると、その外径をセル幅Wにする。
【0109】
また、着弾位置PFが1行目コード領域S1の最も反Y矢印側に位置する目標吐出位置Pに到達すると、制御装置51は、吐出ヘッド駆動回路57を介して、シリアル/パラレル変換した吐出制御信号SIをレーザヘッド駆動回路58に出力する。すると、制御装置51は、スカラロボット駆動回路55を介して、ヘッドユニット30を「照射待機時間Dt0」だけ走査し、各照射位置PTを対応する目標吐出位置Pに相対させて、ヘッドユニット30を静止させる。
【0110】
各照射位置PTを対応する目標吐出位置Pに相対させると、制御装置51は、液滴検出工程を開始する。
すなわち、制御装置51は、レーザヘッド駆動回路58を介して、吐出制御信号SIに基づいて選択された各半導体レーザLDに、それぞれ液滴検出時間Dt1だけ、液滴検出レーザ駆動電圧Vz0を供給する。すると、選択された半導体レーザLDからの液滴検出レーザB0が一斉に出射されて、出射された液滴検出レーザB0が、対応する照射位置PTに照射される。各照射位置PTに照射された液滴検出レーザB0は、それぞれ対応する照射位置PTに液滴Fbが着弾しているか否かによって、対応する反射散乱光Brの光量検出信号Vpを増減させる。
【0111】
そして、液滴検出時間Dt1だけ経過すると、制御装置51は、フォトセンサ駆動回路56からの光量検出信号Vpに基づいて、各照射位置PTに液滴Fbが着弾しているか否かを判断する。すなわち、制御装置51は、各光量検出信号Vpが液滴検出電位Vp0以下であるか否かを判断して、光量検出信号Vpが液滴検出電位Vp0以下となる受光素子PDに対応した半導体レーザLDに乾燥レーザ駆動電圧Vz1を供給させるための乾燥レーザ選択信号KIを生成する。
【0112】
乾燥レーザ選択信号KIを生成すると、制御装置51は、着弾した液滴Fbを乾燥させるための乾燥工程を開始する。
すなわち、制御装置51は、生成した乾燥レーザ選択信号KIをレーザヘッド駆動回路58に供給して、選択した半導体レーザLDからの乾燥レーザB1を、対応する照射位置PT、すなわち液滴検出工程の施された液滴Fbの領域に照射させる。さらに、この際、制御装置51は、前記低速選択信号LIを生成するとともに、生成した低速選択信号LIを切替えバルブ駆動回路60に出力して、吸引ポート33からの低吸引速度の吸引を開始させる。
【0113】
すると、選択した半導体レーザLDからの乾燥レーザB1が対応する液滴Fbの領域に照射されて、照射位置PTに位置する液滴Fbの溶媒が、「蒸発成分Ev」として徐々に蒸発する。蒸発した「蒸発成分Ev」は、吸引ポート33の低吸引速度の吸引によって、レーザ光Bの光学系に付着することなく徐々に吸引される。これによって、「蒸発成分Ev」による光学系(例えば、反射ミラーM)の汚染を回避させることができ、かつ、流動性の高い液滴Fbの位置ズレや形状変動を回避させることができる。
【0114】
この間、制御装置51は、フォトセンサ駆動回路56からの各光量検出信号Vpに基づいて、各液滴Fbが乾燥したか否かを判断する。すなわち、制御装置51は、各液滴Fbに対応する受光素子PDからの光量検出信号Vpが乾燥終了電位Vp1より高いか否かを判断する。
【0115】
そして、受光素子PDからの光量検出信号Vpが乾燥終了電位Vp1よりも高くなると、制御装置51は、同受光素子PDに対応する半導体レーザLDに焼成レーザ駆動電圧Vz2を供給させるための焼成レーザ選択信号MIを生成して、生成した焼成レーザ選択信号MIをレーザヘッド駆動回路58に順次出力する。また、制御装置51は、各液滴Fbに対応する全ての光量検出信号Vpが乾燥終了電位Vp1よりも高くなると、切替えバルブ40に高速切替え電圧Vc2を供給するための高速選択信号HIを生成して、生成した高速選択信号HIを切替えバルブ駆動回路60に出力する。
【0116】
すると、焼成レーザ選択信号MIに対応する半導体レーザLDからの焼成レーザB2が、対応する液滴Fbの領域に照射されて、照射位置PTに位置する液滴Fbの分散媒が、「蒸発成分Ev」として蒸発する。これによって、液滴Fb(金属微粒子)が焼成されてマザー基板2Mに密着する、すなわちドットDが形成される。
【0117】
さらに、対応する全ての焼成レーザB2が照射されるタイミングで、吸引ポート33と吸引ポンプPMとの間の流路抵抗が第2流路抵抗に切替えられて、第2流路抵抗に対応する高吸引速度の吸引が、焼成開始時T3から吸引終了時T5まで施される。これによって、流動性の低い液滴Fbの雰囲気に対して高い吸引速度の吸引を施すことができ、「蒸発成分Ev」を、短時間で吸引させることができる。従って、ドットDを形成する間に、「蒸発成分Ev」によるレーザ光Bの光学系の汚染を回避させることができ、かつ、液滴Fb(ドットD)の位置ズレや形状変動を回避させることができる。
【0118】
以後同様に、制御装置51は、着弾位置PFを順次目標吐出位置Pに相対させて、選択したノズルNから液滴Fbを吐出させる。続いて、着弾した液滴Fbがセル幅Wになるタイミングで、同液滴Fbの領域に、順次液滴検出レーザB0、乾燥レーザB1及び焼成レーザB2を照射させる。そして、乾燥レーザB1を照射するときに低吸引速度の吸引を施して、全ての液滴Fbの乾燥工程を終了するときに、高吸引速度の吸引を施す。これによって、制御装置51は、各識別コード10を形成する間に、「蒸発成分Ev」による光学系の汚染を回避させることができ、かつ、全てのドットDの位置ズレや形状変動を回避させることができる。
【0119】
そして、全てのドットDを形成してヘッドユニット30を終点EPまで走査させると、制御装置51は、吸引終了信号TP2を吸引ポンプ駆動回路59に出力して、吸引ポンプPMによる吸引ポート33からの吸引を終了させる。吸引ポート33からの吸引を終了させると、制御装置51は、走行装置23及び搬送装置24を駆動制御して、ドットDの形成されたマザー基板2Mを基板ストッカ22に搬入して、識別コード10の形成動作を終了する。
【0120】
次に、上記のように構成した本実施形態の効果を以下に記載する。
(1)上記実施形態によれば、液滴吐出ヘッド32を搭載したヘッドユニット30に、液滴Fbからの「蒸発成分Ev」を吸引する吸引ポート33と、着弾した液滴Fbからのレーザ光B(反射散乱光Br)の光学特性(光量)を検出するフォトセンサ35と、を設けた。そして、フォトセンサ35の検出する各光量検出信号Vpが乾燥終了電位Vp1になるまで、吸引ポート33と吸引ポンプPMとの間の流路抵抗を第1流路抵抗に維持させて、液滴Fbの近傍(雰囲気)に、気体の流動を抑制した低い吸引速度の吸引を施すようにした。
【0121】
従って、流動性の高い液滴Fbに対して、気体の流動を抑制した低い吸引速度の吸引を施すことができる。その結果、「蒸発成分Ev」による光学系の汚染を回避させることができ、かつ、吸引動作に起因する液滴Fbの位置ズレや形状変動を回避させることができる。そのため、液滴FbからなるドットDの形状制御性を向上させることができる。
(2)上記実施形態によれば、全ての光量検出信号Vpが乾燥終了電位Vp1よりも高くなるタイミングで、高い吸引速度の吸引を施すようにした。
【0122】
従って、乾燥された流動性の低い液滴Fbの雰囲気に対して、高い吸引速度の吸引を施すことができる。その結果、「蒸発成分Ev」を短時間で吸引させることができ、「蒸発成分Ev」の吸引効率を向上させることができる。
(3)上記実施形態によれば、乾燥工程を施す前に、各照射位置PTに対して、液滴検出レーザB0を照射させるようにした。そして、光量検出信号Vpが液滴検出電位Vp0以下に維持される照射位置PTに対して、乾燥工程と焼成工程を施すようにした。
【0123】
従って、液滴Fbの着弾していない領域への過剰なレーザ照射を回避させることができる。
(4)上記実施形態によれば、低吸引速度の吸引を実行する前に、各照射位置PTに対し
て、液滴検出レーザB0を照射させるようにした。そして、光量検出信号Vpが液滴検出電位Vp0以下に維持される場合に限り、低吸引速度の吸引を開始させるようにした。
【0124】
従って、液滴Fbを吐出させる間や飛行させる間の吸引を、確実に停止させることができる。その結果、液滴Fbの吐出動作や飛行動作を安定させることができ、液滴Fbの位置ズレや形状変動を、より確実に回避させることができる。ひいては、液滴FbからなるドットDの形状制御性を向上させることができる。
(5)上記実施形態によれば、乾燥工程を施す前に、照射位置PTの液滴Fbに対して、液滴検出レーザB0を照射させて、液滴Fbの濡れ広がりを抑制させるようにした。そして、液滴検出工程を行う液滴検出時間Dt1の間だけ、吸引動作を停止させるようにした。
【0125】
従って、液滴Fbの濡れ広がりが抑制されるまで、吸引動作を遅延させることができる。その結果、液滴Fbの位置ズレや形状変動を、より確実に回避させることができる。
(6)上記実施形態によれば、液滴検出レーザB0、乾燥レーザB1及び焼成レーザB2を同一の半導体レーザLDから出射させる構成にした。従って、液滴検出工程、乾燥工程、焼成工程で利用する光源を、より簡単な構成にさせることができる。
【0126】
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、液滴Fbからの反射散乱光Brに基づいて、吸引ポート33からの吸引速度を制御させる構成にした。これに限らず、例えば、液滴Fbを透過したレーザ光Bに基づいて、吸引ポート33からの吸引速度を制御させる構成にしてもよい。つまり、液滴Fbの領域からのレーザ光Bに基づいて、吸引速度を制御する構成であればよい。
・上記実施形態では、反射散乱光Brの光量に基づいて、吸引ポート33からの吸引速度を制御させる構成にした。これに限らず、例えば、反射散乱光Brの少なくとも光量、波長、波長分布、偏向状態、偏光状態、位相分布、強度分布のいずれか1つに基づいて、吸引速度を制御させる構成にしてもよい。
【0127】
これによれば、少なくとも光量、波長、波長分布、偏向状態、偏光状態、位相分布、強度分布のいずれか1つに基づいて、液滴Fbのサイズや表面形状、構成成分や密度等、液滴Fbの流動性に対応する各種パラメータを検出させることができる。従って、液滴Fbの流動性を、より正確に検出させることができ、液滴Fbの流動性に対応した吸引を、より確実に施すことができる。
・上記実施形態では、液滴検出工程を実行して、液滴Fbが各目標吐出位置Pに着弾しているか否かを検出させる構成にした。これに限らず、液滴吐出動作の直後に、乾燥工程を実行させる構成にしてもよい。
・上記実施形態では、全ての光量検出信号Vpが乾燥終了電位Vp1になるタイミングで、吸引ポート33からの吸引を、低吸引速度の吸引から高吸引速度の吸引に切替えさせるようにした。
【0128】
これに限らず、例えば、光量検出信号Vpが所定の電位よりも高くなる(液滴Fbの濡れ広がりが抑制される)タイミングで、低吸引速度の吸引を開始させるようにしてもよい。これによれば、液滴Fbの流動性に対応させて吸引を開始させることができ、液滴Fbからなるパターンの形状制御性を、さらに向上させることができる。
【0129】
あるいは、光量検出信号Vpが所定の電位よりも低くなる(焼成された金属部粒子による正反射によって、反射散乱光Brの光量が低下する)タイミングで、高吸引速度の吸引を停止させるようにしてもよい。これによれば、過剰な吸引を抑制させることができ、液滴Fbからなるパターンの生産性を向上させることができる。
・上記実施形態では、液滴検出工程、乾燥工程及び焼成工程の間、ヘッドユニット30を静止させる構成にした。これに限らず、例えば、照射する各レーザ光B(液滴検出レーザB0、乾燥レーザB1及び焼成レーザB2)を走査可能にして、ヘッドユニット30を走査させながら、液滴検出工程、乾燥工程及び焼成工程を実行する構成にしてもよい。これによれば、液滴Fbからなるパターンの生産性を向上させることができる。
・上記実施形態では、吸引手段を、各ノズルNに共通する吸引ポート33に具体化した。これに限らず、例えば、図9に示すように、吸引手段を、各ノズルN(各照射位置PT)に対応する位置で、それぞれ「蒸発成分Ev」を吸引可能にした複数の吸引ノズル33Nに具体化してもよい。尚、この際、各吸引ノズル33Nと吸引ポンプPMとの間に、それぞれ吸引ノズル33Nに対応する切替えバルブ40を設けて、各液滴Fbからの光量検出信号Vpに基づいて、各切替えバルブ40の切替え動作を制御させる構成が好ましい。
【0130】
これによれば、着弾した液滴Fb毎に、その流動性に対応した吸引を施すことができる。その結果、過剰な吸引を回避させることができ、液滴Fbからなるパターンの形状制御性を、より向上させることができる。
・上記実施形態では、液滴Fbの領域からのレーザ光B(反射散乱光Br)に基づいて、吸引速度を制御させる構成にした。これに限らず、例えば、図9に示すように、吸引チューブTの途中に、吸引した「蒸発成分Ev」の総量又は種別を検出可能にする蒸発成分検出手段としてのガスセンサ35Sを設けて、ガスセンサ35Sの検出する検出信号に基づいて吸引速度を制御させる構成にしてもよい。
【0131】
すなわち、ガスセンサ35Sの検出する検出信号に基づいて、吸引した「蒸発成分Ev」の総量が所定量よりも大きくなるタイミングで、高い吸引速度の吸引を施す構成にしてもよい。又は、ガスセンサ35Sの検出する検出信号に基づいて、吸引した「蒸発成分Ev」の種別が、溶媒から分散媒に切り替わるタイミングで、高い吸引速度の吸引を施す構成にしてもよい。これによれば、液滴Fbの流動性を、液滴Fbからの「蒸発成分Ev」に対応させることができる。従って、「蒸発成分Ev」を吸引する吸引速度を、液滴Fbの流動性に、確実に対応させることができる。
・上記実施形態では、液滴Fbの領域からのレーザ光B(反射散乱光Br)に基づいて吸引速度を制御させる構成にした。これに限らず、吐出開始時T0からの経過時間に基づいて、吸引速度を制御させるようにしてもよい。これによれば、フォトセンサ35やガスセンサ35Sを要することなく、より簡便な構成によって、「蒸発成分Ev」による光学系の汚染を回避させることができ、かつ、吸引動作に起因する液滴Fbの位置ズレや形状変動を回避させることができる。
・上記実施形態では、液滴検出レーザB0、乾燥レーザB1及び焼成レーザB2を同一の半導体レーザLDから出射させる構成にした。これに限らず、例えば、液滴検出レーザB0用の光源(あるいは光学系)を別途設けて、その光源(あるいは光学系)からの光を液滴Fbに照射する構成にしてもよい。さらに、その液滴Fbからの散乱光、反射光、透過光等を光量検出信号Vpとして検出する液滴検出用のフォトセンサを、別途設ける構成にしてもよい。そして、検出した光量検出信号Vpに基づいて、乾燥工程を開始させる構成にしてもよい。
【0132】
これによれば、液滴Fbの乾燥あるいは焼成に必要なレーザ光の光学特性に関わらず、液滴検出工程において、液滴Fbに対応した液滴検出レーザB0を照射させることができる。さらに、フォトセンサ35の検出能力に関わらず、液滴Fbを介した液滴検出レーザB0を検出させることができる。従って、検出可能な液状体Fの構成範囲を拡大させることができる。また、液滴Fbの検出精度を向上させることができる。
・上記実施形態では、ヘッドユニット30をスカラロボット26に搭載してマザー基板2M上で2次元方向に移動させる構成にした。これに限らず、例えば、ヘッドユニット30を固定して、マザー基板2Mの載置台を移動させる構成にしてもよく、あるいはヘッドユ
ニット30をキャリッジに搭載してマザー基板2M上で1次元方向に移動させる構成にしてもよい。
・上記実施形態では、照射位置PTに照射するレーザ光Bによって、液滴Fbの有無を検出させて、液滴Fbを乾燥及び焼成させる構成にした。これに限らず、例えば照射するレーザ光Bのエネルギーによって、液滴Fbを所望の方向に流動させる構成にしてもよい。あるいは、液滴Fbの外縁のみにレーザ光Bを照射して、液滴Fbをピニングさせる構成にしてもよい。すなわち、液滴Fbの領域に照射するレーザ光Bによって液滴Fbからなるパターンを形成する構成であればよい。
・上記実施形態では、液滴Fbによって半円球状のドットDを形成する構成にしたが、これに限らず、例えば、楕円形状のドットや線状のパターンを形成する構成であってもよい。
・上記実施形態では、パターンをドットDに具体化した。これに限らず、例えば、パターンを、液晶表示装置1に設けられる各種薄膜、金属配線、カラーフィルタ等に具体化してもよく、さらには蛍光物質を発光させる平面状の電子放出素子を備えた電界効果型装置(FEDやSED等)等の各種表示装置に設けられる各種薄膜や金属配線に具体化してもよい。すなわち、レーザ光Bを照射した液滴Fbからなるパターンであればよい。
・上記実施形態では、対象物をマザー基板2Mに具体化したが、これに限らず、例えばシリコン基板やフレキシブル基板、あるいは金属基板等であってもよく、着弾した液滴Fbによってパターンを形成する対象物であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】本実施形態における液晶表示装置を示す平面図。
【図2】同じく、液滴吐出装置を示す概略斜視図。
【図3】同じく、液適吐出装置を示す概略平面図。
【図4】同じく、ヘッドユニットを説明する概略側面図。
【図5】同じく、液滴吐出ヘッドを説明する概略側面図。
【図6】同じく、ヘッドユニットを説明する説明図。
【図7】同じく、液滴検出工程、乾燥工程及び焼成工程を説明するタイミングチャート。
【図8】同じく、液滴吐出装置の電気的構成を示す電気ブロック回路図。
【図9】変更例における液滴吐出ヘッドを説明する概略側面図。
【符号の説明】
【0134】
2M…対象物としてのマザー基板、20…液滴吐出装置、32…液滴吐出ヘッド、33…吸引手段を構成する吸引ポート、34…レーザ照射手段としてのレーザヘッド、35…レーザ光検出手段としてのフォトセンサ、40…吸引速度制御手段を構成する切替えバルブ、51…吸引速度制御手段を構成する制御装置、B…レーザ光、Ev…蒸発成分、Fb…液滴、Vp…検出信号としての光量検出信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に着弾したパターン形成材料を含む液滴の領域にレーザ光を照射して前記対象物にパターンを形成するようにしたパターン形成方法において、
前記液滴からの蒸発成分を前記液滴の流動性に対応した吸引速度で吸引するようにしたことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載のパターン形成方法において、
前記液滴の流動性が低下するに連れて前記吸引速度を増加するようにしたことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のパターン形成方法において、
前記液滴の領域からのレーザ光の光学特性に基づいて前記吸引速度を制御するようにしたことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項4】
請求項3に記載のパターン形成方法において、
前記液滴の領域からのレーザ光の少なくとも光量、波長、波長分布、偏向状態、偏光状態、位相分布、強度分布のいずれか1つに基づいて前記吸引速度を制御するようにしたことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のパターン形成方法において、
前記液滴の領域からの前記蒸発成分に基づいて前記吸引速度を制御するようにしたことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項6】
請求項5に記載のパターン形成方法において、
前記液滴の領域からの前記蒸発成分の少なくとも量と種別のいずれか一方に基づいて前記吸引速度を制御するようにしたことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項7】
対象物に向かって液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、前記対象物に着弾した前記液滴の領域にレーザ光を照射するレーザ照射手段と、を備えた液滴吐出装置において、
前記レーザ光の照射される前記液滴の領域からの蒸発成分を吸引する吸引手段と、
前記レーザ光の照射される前記液滴の流動性に対応させて、前記吸引手段の吸引速度を制御する吸引速度制御手段と、
を備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の液滴吐出装置において、
前記液滴の領域からのレーザ光の光学特性を検出するレーザ光検出手段を備えて、
前記吸引速度制御手段は、前記レーザ光検出手段の検出する検出信号に基づいて、前記吸引手段の吸引速度を制御することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項9】
請求項8に記載の液滴吐出装置において、
前記吸引速度制御手段は、前記レーザ光検出手段の検出する検出信号に基づいて、前記レーザ光の領域に前記液滴が着弾しているか否かを判断し、前記レーザ光の領域に前記液滴が着弾しているときに、前記吸引手段を駆動制御して前記蒸発成分の吸引を開始することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の液滴吐出装置において、
前記レーザ光検出手段は、前記液滴の領域からのレーザ光の少なくとも光量、波長、波長分布、偏向状態、偏光状態、位相分布、強度分布のいずれか1つを検出することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項11】
請求項7に記載の液滴吐出装置において、
前記吸引手段の吸引した蒸発成分を検出する蒸発成分検出手段を備えて、
前記吸引速度制御手段は、前記蒸発成分検出手段の検出する検出信号に基づいて、前記吸引手段の吸引速度を制御することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項12】
請求項11に記載の液滴吐出装置において、
前記蒸発成分検出手段は、前記液滴の領域からの前記蒸発成分の少なくとも量と種別のいずれか一方を検出することを特徴とするパターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−152250(P2007−152250A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−352273(P2005−352273)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】