説明

パターン形成方法

【課題】 側壁スペーサー法において、フォトレジストパターン上に珪素酸化膜を形成したときのフォトレジストパターンの変形やLWRの増大を防ぐことができるパターン形成方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 少なくとも、基板上にフォトレジスト膜を成膜し、該フォトレジスト膜を高エネルギー線で露光し、現像液を用いて現像し、フォトレジストパターンを形成した後、該フォトレジストパターンの側壁にスペーサーを形成する方法により基板上にパターンを形成するパターン形成方法において、少なくとも、前記フォトレジストパターンは、膜強度としてのハードネスが0.4GPa以上またはヤングモジュラスが9.2GPa以上のものを形成し、該フォトレジストパターンの側壁に、前記スペーサーとして珪素酸化膜を形成することによって基板にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側壁スペーサー法を用いたパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が求められている中、現在汎用技術として用いられている光露光では、光源の波長に由来する本質的な解像度の限界に近づきつつある。レジストパターン形成の際に使用する露光光として、1980年代には水銀灯のg線(436nm)もしくはi線(365nm)を光源とする光露光が広く用いられた。更なる微細化のための手段として、露光波長を短波長化する方法が有効とされ、1990年代の64Mビット(加工寸法が0.25μm以下)DRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー)以降の量産プロセスには、露光光源としてi線(365nm)に代わって短波長のKrFエキシマレーザー(248nm)が利用された。
【0003】
しかし、更に微細な加工技術(加工寸法が0.2μm以下)を必要とする集積度256M及び1G以上のDRAMの製造には、より短波長の光源が必要とされ、10年ほど前からArFエキシマレーザー(193nm)を用いたフォトリソグラフィーが本格的に検討されてきた。当初ArFリソグラフィーは180nmノードのデバイス作製から適用されるはずであったが、KrFエキシマリソグラフィーは130nmノードデバイス量産まで延命され、ArFリソグラフィーの本格適用は90nmノードからである。更に、NAを0.9にまで高めたレンズと組み合わせて65nmノードデバイスの検討が行われている。次の45nmノードデバイスには露光波長の短波長化が推し進められ、波長157nmのFリソグラフィーが候補に挙がった。しかしながら、投影レンズに高価なCaF単結晶を大量に用いることによるスキャナーのコストアップ、ソフトペリクルの耐久性が極めて低いためのハードペリクル導入に伴う光学系の変更、レジスト膜のエッチング耐性低下等の種々問題により、Fリソグラフィーの先送りと、ArF液浸リソグラフィーの早期導入が提唱された(非特許文献1)。
【0004】
ArF液浸リソグラフィーにおいて、投影レンズとウエハーの間に水を含浸させることが提案されている。193nmにおける水の屈折率は1.44であり、NA(開口数)1.0以上のレンズを使ってもパターン形成が可能で、理論上はNAを1.44近くにまで上げることができる。当初、水温変化に伴う屈折率変化による解像性の劣化やフォーカスのシフトが指摘された。水温を1/100℃以内にコントロールすることと、露光によるレジスト膜からの発熱による影響もほぼ心配ないことが確認され、屈折率変化の問題が解決された。水中のマイクロバブルがパターン転写されることも危惧されたが、水の脱気を十分に行うことと、露光によるレジスト膜からのバブル発生の心配がないことが確認された。
【0005】
1980年代の液浸リソグラフィーの初期段階では、ステージを全て水に浸ける方式が提案されていたが、高速スキャナーの動作に対応するために投影レンズとウエハーの間のみに水を挿入し、水の給排水ノズルを備えたパーシャルフィル方式が採用された。水を用いた液浸によって原理的にはNAが1以上のレンズ設計が可能になったが、従来の屈折率系による光学系では巨大なレンズになってしまい、レンズが自身の自重によって変形してしまう問題が生じた。よりコンパクトなレンズ設計のために反射屈折(Catadioptric)光学系が提案され、NA1.0以上のレンズ設計が加速された。NA1.2以上のレンズと強い超解像技術の組み合わせで45nmノードの可能性が示され(非特許文献2)、更にはNA1.35のレンズの開発も行われている。
【0006】
32nmノードのリソグラフィー技術としては、波長13.5nmの真空紫外光(EUV)リソグラフィーが候補に挙げられている。EUVリソグラフィーの問題点としてはレーザーの高出力化、レジスト膜の高感度化、高解像度化、低ラインエッジラフネス(LWR)化、無欠陥MoSi積層マスク、反射ミラーの低収差化などが挙げられ、克服すべき問題が山積している。
【0007】
NA1.35レンズを使った水液浸リソグラフィーの最高NAで到達できる解像度は40〜38nmであり、32nmには到達できない。そこで更にNAを高めるための高屈折率材料の開発が行われている。レンズのNAの限界を決めるのは投影レンズ、液体、レジスト膜の中で最小の屈折率である。水液浸の場合、投影レンズ(合成石英で屈折率1.5)、レジスト膜(従来のメタクリレート系で屈折率1.7)に比べて水の屈折率が最も低く、水の屈折率によって投影レンズのNAが決まっていた。最近、屈折率1.65の高透明な液体が開発されてきている。この場合、合成石英による投影レンズの屈折率が最も低く、屈折率の高い投影レンズ材料を開発する必要がある。LUAG(LuAl12)は屈折率が2以上であり、最も期待される材料ではあるが、複屈折率と吸収が大きい問題を持っている。また、屈折率1.8以上の投影レンズ材料が開発されたとしても屈折率1.65の液体ではNAは1.55止まりであり、32nmを解像できない。
【0008】
32nmを解像するには屈折率1.8以上の液体が必要である。今のところ吸収と屈折率がトレードオフの関係にあり、このような材料は未だ見つかっていない。アルカン系化合物の場合、屈折率を上げるためには直鎖状よりは有橋環式化合物の方が好ましいが、環式化合物は粘度が高いために露光装置ステージの高速スキャンに追随できない問題も孕んでいる。また、屈折率1.8の液体が開発された場合、屈折率の最小がフォトレジスト膜になるために、フォトレジスト膜も1.8以上に高屈折率化する必要がある。
【0009】
ここで最近注目を浴びているのは1回目の露光と現像でパターンを形成し、2回目の露光で1回目のパターンの丁度間にパターンを形成するダブルパターニングプロセスである(非特許文献3)。ダブルパターニングの方法としては多くのプロセスが提案されている。例えば、1回目の露光と現像でラインとスペースが1:3の間隔のフォトレジストパターンを形成し、ドライエッチングで下層のハードマスクを加工し、その上にハードマスクをもう1層敷いて1回目の露光のスペース部分にフォトレジスト膜の露光と現像でラインパターンを形成してハードマスクをドライエッチングで加工して初めのパターンのピッチの半分のラインアンドスペースパターンを形成する方法である。また、1回目の露光と現像でスペースとラインが1:3の間隔のフォトレジストパターンを形成し、ドライエッチングで下層のハードマスクをドライエッチングで加工し、その上にフォトレジスト膜を塗布してハードマスクが残っている部分に2回目のスペースパターンを露光しハードマスクをドライエッチングで加工する。いずれも2回のドライエッチングでハードマスクを加工する。
【0010】
前者の方法では、ハードマスクを2回敷く必要があり、後者の方法ではハードマスクが1層で済むが、ラインパターンに比べて解像が困難なトレンチパターンを形成する必要がある。後者の方法では、トレンチパターンの形成にネガ型レジスト材料を使う方法がある。これだとポジパターンでラインを形成するのと同じ高コントラストの光を用いることができるが、ポジ型レジスト材料に比べてネガ型レジスト材料の方が溶解コントラストが低いために、ポジ型レジスト材料でラインを形成する場合に比較してネガ型レジスト材料で同じ寸法のトレンチパターンを形成した場合を比較するとネガ型レジスト材料を使った方が解像性が低い。後者の方法で、ポジ型レジスト材料を用いて広いトレンチパターンを形成してから、基板を加熱してトレンチパターンをシュリンクさせるサーマルフロー法や、現像後のトレンチパターンの上に水溶性膜をコートしてから加熱してレジスト膜表面を架橋させることによってトレンチをシュリンクさせるRELACS(登録商標)法を適用させることも考えられるが、プロキシミティーバイアスが劣化するという欠点やプロセスが更に煩雑化し、スループットが低下する欠点が生じる。
【0011】
前者、後者の方法においても、基板加工のエッチングは2回必要なため、スループットの低下と2回のエッチングによるパターンの変形や位置ずれが生じる問題がある。
【0012】
エッチングを1回で済ませるために、1回目の露光でネガ型レジスト材料を用い、2回目の露光でポジ型レジスト材料を用いる方法がある。1回目の露光でポジ型レジスト材料を用い、2回目の露光でポジ型レジスト材料が溶解しない炭素4以上の高級アルコールに溶解させたネガ型レジスト材料を用いる方法もある。これらの場合、解像性が低いネガ型レジスト材料を使う解像性の劣化が生じる。
【0013】
ダブルパターニングにおいて最もクリティカルな問題となるのは、1回目のパターンと2回目のパターンの合わせ精度である。位置ずれの大きさがラインの寸法のバラツキとなるために、例えば32nmのラインを10%の精度で形成しようとすると3.2nm以内の合わせ精度が必要となる。現状のスキャナーの合わせ精度が8nm程度であるので、大幅な精度の向上が必要である。
【0014】
スキャナーの合わせ精度の問題や、1つのパターンを2つに分割することが困難であるため、1回の露光でピッチを半分にする方法が検討されている。
ラインパターン両側の側壁に膜を付けてこれによってピッチを半分にする方法が提案されている(非特許文献4)。この側壁スペーサー法としては、レジスト下層のハードマスクとその側壁に付けた膜と膜の間のスペースに埋めこんだ膜とをエッチングパターンとして用いるスペーサースペース法と、レジスト下層のハードマスク側壁に付けた膜をエッチングパターンとして用いるスペーサーライン法が提案されている(非特許文献5)。どちらの方法に於いてもレジスト下のハードマスクの側壁に付けた膜をエッチングマスクとして用いている。レジストラインがターゲット寸法からずれるとスペーサースペース法ではエッチングマスクとして用いるラインCDがまちまちになるし、スペーサーライン法ではライン位置のばらつきにつながる。どちらの方法に於いても側壁スペーサーの膜厚制御と現像後のレジストパターンの寸法制御の両方の高精度化が必要である。側壁スペーサー法はいずれの方法を用いても1回の露光でピッチを半分に出来るが、ラインの端点はドーナツ状になり、最も端のラインが不必要だったりすることがあるため、これを消去するための露光が必要であり、少なくとも2回の露光が必要である。しかしながら、この場合の2回目の露光に於いてピッチを半分にするための非常に高精度なアライメントは必要ない。
【0015】
ここで、非特許文献5に記載されている側壁スペーサー法のスペーサースペース法を図2に示し、工程を以下に示す。
基板21上に被加工層22、ハードマスク23を形成し、その上にレジスト膜を形成した後フォトレジストパターン24を得る(図2−1)。ハードマスク23にドライエッチングでフォトレジストパターン24を転写し(図2−2)、得られたハードマスクパターン23’上に珪素酸化膜25をCVD法で形成する(図2−3)。ドライエッチングでハードマスクパターン23’上部とスペース部分27の珪素酸化膜を取りスペーサー26を形成し(図2−4)、スペース部分27にスペーサースペース28を埋め込み、ハードマスクパターン23’上部とスペーサー26上部のスペーサースペースを取り(図2−5)、スペーサー26を除去して(図2−6)、被加工層22’を得る(図2−7)。このように、ハードマスクパターン23’の側壁に付いたスペーサー26がパターン反転されて被加工層22に転写され、被加工層22’を得る。
側壁スペーサー法のスペーサーラインプロセスを図3に示し、工程を以下に示す。
基板31上に被加工層32、ハードマスク33を形成し、その上にフォトレジスト膜を形成した後フォトレジストパターン34を得る(図3−1)。ハードマスク33にドライエッチングでレジストパターン34を転写し、ハードマスクパターン33’を得る(図3−2)。ハードマスクパターン33’上に珪素酸化膜35をCVD法で形成する(図3−3)。ドライエッチングでハードマスクパターン33’上部とスペース部分37の珪素酸化膜を取りスペーサー36を形成する(図3−4)。ハードマスクパターン33’を除去してスペーサーライン38を残し(図3−5)、これをマスクにして被加工層32を加工し、被加工層32’を得る(図3−6)。
ハードマスクとしては、SiO、SiN、SiON、p−Si、TiN、カーボン膜などが用いられ、CVD法またはスピンコートで形成される。ハードマスクとフォトレジスト膜との間には有機反射防止膜を敷いてもよいし、反射防止膜機能を有するSOG膜とカーボン膜からなるトライレイヤーを形成していても良い。側壁スペーサー法では、スペーサーとしては、ハードマスクとその下の基板を加工するために、ハードマスクとは異なる材質が用いられる。
【0016】
このような側壁スペーサー法は、ハードマスクの側壁だけに付けた膜を元にエッチングパターンとするために、ハードマスク上とスペーサーに付いた膜の除去を行わなければならない。スペーサースペース法では、スペース埋めこみ後に側壁パターンの除去が必要であり、スペーサーライン法ではハードマスクの側壁にスペースパターンを形成後、ハードマスクだけを除去しなければならない。エッチング加工と膜の除去工程数が多く、スループットが低く、高価なプロセスである。
【0017】
気相成長(Chemical Vapor Deposition;CVD)法でレジストパターン上に直接珪素酸化膜を形成してホールパターン径を縮小する方法が提案されており(非特許文献6)、レジストパターンに直接珪素酸化膜を付ける検討が進んでいる。ALD(Atomic Layer Deposition)法はCVD法の一種であり、原子レベルの酸化珪素を積層させていく方法である(非特許文献7)。膜のコンフォーマル性、膜厚の均一性に優れ、側壁スペーサー用の珪素酸化膜の形成に適していると考えられる。ALD法の欠点はスループットが低いことであったが、大量のウェハーをバッチ処理することによって、1枚当たりの単位時間での処理能力が高くなってきている。
【0018】
CVD、ALD法を用いてベースポリマーのガラス転移点(Tg)温度以下の温度で珪素酸化膜を形成することによって、レジストパターンを大きく変形せずにレジストパターンに直接珪素酸化膜を付けることが可能になっている。しかしながら、珪素酸化膜付着後のレジストパターンの形状を観察すると、ラインウィドスラフネス(LWR)が増大するという問題が生じている。
【0019】
薄膜の機械的強度の測定方法としては、引っ張り試験機、超音波音速測定法、振動リード法などが挙げられるが、極薄膜のサンプル形成が困難である。極薄膜、特には数十nmの膜応力の測定には、基板の変形量をニュートンリング法や触針法で求めたり、ラマン散乱から求める方法等があるが、近年、ナノインテンデーションによる測定法による局所的微細パターン機械強度有効性が示されており、Low−k膜の機械的強度の測定結果が報告されている(非特許文献8)。ナノインデンターによる機械的強度を限定したレジスト下層膜についての提案も行われている(特許文献1)。
【0020】
珪素酸化膜の付着によってもフォトレジストパターンの変形やLWRの増大が生じないフォトレジストパターンの形成方法が求められているのである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Proc. SPIE Vol. 4690 xxix
【非特許文献2】Proc. SPIE Vol. 5040 p724
【非特許文献3】Jpn. J. App. Phys. Vol.33(1994)p 6874−6877、Part 1, No.12B, December 1994)
【非特許文献4】J. Vac. Sci. Technol. B 17(6)、 Nov/Dec 1999
【非特許文献5】第4回液浸シンポジウム(2007年) 講演番号;PR−01、題名;Implementation of immersion lithography to NAND/CMOS lithography to NAND/CMOS device manufacturing
【非特許文献6】Proc. SPIE Vol.6923 p692333−1 (2008)
【非特許文献7】日立評論 2007年4月号45 nmノード対応縦型ALD成膜装置「ALDINNA」 Vertical Batch Atomic Layer Deposition Equipment ALDINNA for 45−nm Node Devices
【非特許文献8】神戸製鋼技報Vol.52 No.2 p74 Sep.(2002)
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2007−218943号公開
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
上述したように、フォトレジストパターンの側壁にスペーサーとして珪素酸化膜系の膜を形成し、このスペーサーを元に下地を加工する側壁スペーサー法において、フォトレジストパターンに直接酸化膜を形成したときにフォトレジストパターンの変形が生じ、フォトレジストパターン寸法が縮小したり、LWRが増大したりする問題が発生した。
【0024】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、フォトレジストパターンの側壁にスペーサーとして珪素酸化膜を形成し、このスペーサーを元に下地を加工する側壁スペーサー法において、フォトレジストパターン上に珪素酸化膜を形成したときのフォトレジストパターンの変形やLWRの増大を防ぐことができるパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記課題を解決するため、本発明では、少なくとも、基板上にフォトレジスト膜を成膜し、該フォトレジスト膜を高エネルギー線で露光し、現像液を用いて現像し、フォトレジストパターンを形成した後、該フォトレジストパターンの側壁にスペーサーを形成する方法により基板上にパターンを形成するパターン形成方法において、少なくとも、前記フォトレジストパターンは、膜強度としてのハードネスが0.4GPa以上またはヤングモジュラスが9.2GPa以上のものを形成し、該フォトレジストパターンの側壁に、前記スペーサーとして珪素酸化膜を形成することによって基板にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0026】
このように、膜強度としてのハードネスが0.4GPa以上またはヤングモジュラスが9.2GPa以上の機械的強度を有するフォトレジストパターンを用いることによって、スペーサーを形成するための珪素酸化膜を形成した際のフォトレジストパターンの変形や、LWRの増大を防ぐことができる。
【0027】
また、前記珪素酸化膜が、CVD法またはALD法により形成されるものが好ましい。
【0028】
このように珪素酸化膜を形成する工程において、CVD、ALD法を用いることによって、フォトレジスト膜材料に含まれるベースポリマーのガラス転移点(Tg)温度以下の温度で珪素酸化膜を形成することができ、フォトレジストパターンを大きく変形させずに、直接珪素酸化膜を付けることが可能になる。
【0029】
また、前記ハードネスは、ナノインデンター法によって測定されたものであることが好ましい。
【0030】
このように、フォトレジスト膜の機械強度の測定方法としては、ナノインデンター法を好ましく用いることができる。
【0031】
また、前記フォトレジスト膜を成膜するためのフォトレジスト膜材料として、化学増幅ポジ型レジスト材料を用いることが好ましい。
【0032】
このように、フォトレジスト膜を成膜するためのフォトレジスト膜材料として、化学増幅型ポジ型フォトレジスト膜材料を用いれば、極めて高精度なパターンを得ることができる。
【0033】
また、前記フォトレジスト膜材料に含まれるベースポリマーが、ヒドロキシル基、ヒドロキシナフチル基、ヒドロキシアセナフチル基、カルボキシ基、2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシエチル基から選ばれる1以上の密着性基を有するものが好ましい。
【0034】
このように、フォトレジスト膜材料に含まれるベースポリマーとして、ヒドロキシ基、ヒドロキシナフチル基、ヒドロキシアセナフチル基、カルボキシ基、2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシエチル基などの水素結合性を有する水酸基を有するポリマーを使用することで、これらの官能基が水素結合を有することよりポリマーのガラス転移点(Tg)および機械的強度を向上させることができる。
【0035】
また、前記フォトレジストパターンが、現像後の光照射または加熱処理によって硬化されたものであって、該フォトレジストパターンの側壁に前記スペーサーが形成されるものとすることができる。
【0036】
このように、現像後に光照射または加熱処理を行うことにより、フォトレジストパターンの膜強度を更に高めることができる。
【0037】
また、前記フォトレジストパターンの側壁に形成されるスペーサーは、前記フォトレジストパターン上に形成した珪素酸化膜のうち、前記フォトレジストパターンのスペース部分の珪素酸化膜と、該フォトレジストパターン上部の珪素酸化膜を除去することで形成し、該フォトレジストパターンの側壁のスペーサーをマスクにして下層の被加工基板を加工することが好ましい。
【0038】
このような、フォトレジストパターンに直接珪素酸化膜を付ける側壁スペーサー法は、従来のフォトレジスト膜の下地のハードマスクに珪素酸化膜をつける側壁スペーサー法よりもエッチング工程が少ないために、コスト的なメリットが大きい。
【0039】
また、前記被加工基板上に前記フォトレジスト膜を形成する前に、CVD法あるいはスピンコート法により炭素含有率が75重量%以上のカーボン膜を形成し、該カーボン膜は、前記フォトレジストパターンの側壁のスペーサーをマスクとしてドライエッチングにより加工され、加工された該カーボン膜をマスクにして前記被加工基板を加工することができる。
【0040】
このように、炭素密度の高い下層膜を用いることによって、被加工基板のエッチングにおける寸法制御性を向上させることができる。
【0041】
また、前記カーボン膜と前記フォトレジスト膜との間に炭化水素材料からなる反射防止膜を形成することができる。
【0042】
このように、カーボン膜とフォトレジスト膜との間に反射防止膜を形成することにより、レジスト形状の劣化を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0043】
以上説明したように、本発明によれば、少なくとも、基板上にフォトレジスト膜を成膜し、該フォトレジスト膜を高エネルギー線で露光し、現像液を用いて現像し、フォトレジストパターンを形成した後、該フォトレジストパターンの側壁にスペーサーを形成する方法により基板上にパターンを形成するパターン形成方法において、フォトレジストパターンが、膜強度としてのハードネスが0.4GPa以上またはヤングモジュラスが9.2GPa以上の機械的強度が高い材料を用いることによって、珪素酸化膜を成膜した際のパターンの変形やLWRの増大を防ぎ、精度高くパターン形成をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の側壁スペーサー法の一例を示す概略説明図である。
【図2】従来の側壁スペーサー法のスペーサースペースプロセスの一例を示す概略説明図である。
【図3】従来の側壁スペーサー法のスペーサーラインプロセスの一例を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明についてより具体的に説明する。
前述のように、フォトレジストパターンの側壁にスペーサーとして珪素酸化膜系の膜を形成し、このスペーサーを元に下地を加工する側壁スペーサー法において、レジストパターンに直接酸化膜を形成したときにレジストパターンの変形が生じ、レジストパターン寸法が縮小したり、LWRが増大したりする問題が発生した。本発明者は、この原因は、珪素酸化膜の応力がヤングモジュラスが20GPa以上とかなり硬い膜であり、この硬い珪素酸化膜が柔らかなフォトレジストパターンに付着したことによってフォトレジストパターンの変形が生じたものと考えられ、このラインの変形が一様に起こらず、局所的に起こるために、LWRが増大することによるものであることを見出した。
【0046】
そこで、本発明者は、基板上にフォトレジスト膜を成膜し、該フォトレジスト膜を高エネルギー線で露光し、現像液を用いて現像し、フォトレジストパターンを形成した後、該フォトレジストパターンの側壁にスペーサーを形成する方法により基板上にパターンを形成するパターン形成方法において、フォトレジストパターンの変形やLWRの増大を防ぐことができるフォトレジスト膜材料の開発に着手した。
【0047】
本発明者は、ハードネスが0.4GPa未満又はヤングモジュラスが9.2GPa未満フォトレジスト膜材料の側壁に珪素酸化膜を形成すると、レジストトップがシュリンクするなどのパターンの変形やラインウィドスラフネス(LWR)が大きくなり、この問題点を解決するには直接珪素酸化膜を形成するフォトレジストパターンの強度としては、ハードネス0.4GPa以上、ヤングモジュラス9.2GPa以上が必要であることを見出し、好ましくはハードネス0.42GPa以上、ヤングモジュラス9.5GPa以上、より好ましくはハードネス0.45GPa以上、ヤングモジュラス10.0GPa以上、更に好ましくはハードネス0.5GPa以上、ヤングモジュラス10.5GPa以上であることを見出した。
【0048】
その結果、本発明者は、少なくとも、基板上にフォトレジスト膜を成膜し、該フォトレジスト膜を高エネルギー線で露光し、現像液を用いて現像し、フォトレジストパターンを形成した後、該フォトレジストパターンの側壁にスペーサーを形成する方法により基板上にパターンを形成するパターン形成方法において、少なくとも、前記フォトレジストパターンは、膜強度としてのハードネスが0.4GPa以上またはヤングモジュラスが9.2GPa以上の機械的強度を有することによって、珪素酸化膜を形成した際のフォトレジストパターンの変形や、LWRの増大を防ぐことができることを見いだし、本発明を完成したものである。
【0049】
従来、密着性を有するベースポリマーとして、ラクトン基を有するベースポリマーが知られている。しかし、本発明における、膜強度としてのハードネスが0.4GPa以上又はヤングモジュラスが9.2GPa以上の機械的強度を有するフォトレジスト膜材料は、ラクトンのみを密着性基として有するベースポリマーでは達成できない。ラクトンに加えて、水素結合性を有する水酸基を含む密着性基を必要とする。これは、水素結合を有することによってポリマーのガラス転移点(Tg)および機械的強度が向上するためである。
【0050】
水素結合性を有する密着性基としては、ヒドロキシ基、ヒドロキシナフチル基、ヒドロキシアセナフチル基、カルボキシ基、2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシエチル基を挙げることができる。これら繰り返し単位aのうち、これらの中ではヒドロキシナフチル基およびヒドロキシアセナフチル基が最も好ましい。
ヒドロキシナフチル基、ヒドロキシアセナフチル基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(a1)、(a2)に示すことができる。
【0051】
【化1】

(式中、Rは同一又は異種の水素原子又はメチル基を示す。Xは単結合、又は−C(=O)−O−であり、Yは単結合、又は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基で、エステル基又はエーテル基を有していてもよい。m、nは1又は2である。)
ここで、炭素数1〜6のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、n−ペンチレン基、イソペンチレン基、シクロペンチレン基、n−ヘキシレン基、シクロヘキシレン基が挙げられる。
【0052】
一般式(a1)、(a2)で示される繰り返し単位を得るためのモノマーとしては、下記一般式(Ma1)、(Ma2)で示される。ここで、R、X、Y、m、nは前述と同じである。
【化2】

【0053】
一般式(Ma1)で示されるモノマーとしては、具体的には下記に例示することができる。
【化3】

【0054】
【化4】

【0055】
【化5】

【0056】
一般式(Ma2)で示されるモノマーとしては、具体的には下記に例示することができる。
【化6】

【0057】
ヒドロキシ基、またはカルボキシ基を有する繰り返し単位を得るためのモノマーとしては下記に例示することができる。
【化7】

【0058】
2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシエチル基を有する繰り返し単位を得るためのモノマーとしては以下に挙げることができる。
【化8】

【0059】
【化9】

【0060】
【化10】

【0061】
上記ヒドロキシ基、ヒドロキシナフチル基、ヒドロキシアセナフチル基、カルボキシ基、2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシエチル基に、加えてラクトン、エーテル基、カルボニル基、カーボネート基、スルホン酸アミドを有する繰り返し単位bを共重合することも出来る。
ラクトン及びエーテル基を有する繰り返し単位の中でも、下記一般式(b1)又は(b2)で示される7−オキサノルボルナン環を有する繰り返し単位は酸と熱によって架橋反応が起こり、これによって膜の機械強度を向上させる効果があるために好ましく用いることが出来る。
【0062】
【化11】

(式中、R、Rは水素原子又はメチル基を示す。R、R10は単結合、又は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基であり、エーテル基又はエステル基を有していてもよいが、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基の場合、式中のエステル基に連結した炭素原子は1級又は2級である。R、R、R、R11、R12、R13、R14は水素原子、又は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基である。)
【0063】
7−オキサノルボルナン環を有する繰り返し単位を得るためのモノマーとしては、下記一般式(Mb1)、(Mb2)で示される。ここで、R〜R14は前述と同じである。
【化12】

【0064】
繰り返し単位(b1)、(b2)を得るためのモノマーとしては、具体的に下記に挙げることができる。
【化13】

【0065】
(b1)、(b2)以外のラクトンまたはエーテル基を有するモノマーとしては、以下に挙げることが出来る。
【化14】

【0066】
【化15】

【0067】
ヒドロキシ基と、ラクトン環または環状エーテルの両方を有する繰り返し単位を共重合することも出来る。
【化16】

【0068】
【化17】

【0069】
スルホンアミドを有する繰り返し単位としては以下に挙げることが出来る。
【化18】

【0070】
カーボネートを有する繰り返し単位としては、以下に例示することが出来る。
【化19】

【0071】
このように、本発明のパターン形成方法に用いられるベースポリマーとしては、水素結合性を有するヒドロキシル基、ヒドロキシナフチル基、ヒドロキシアセナフチル基、カルボキシ基、2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシエチル基から選ばれる1以上の密着性基を有するものが挙げられる。水素結合によって膜の機械的強度が向上し、レジストパターンに直接珪素酸化膜を形成した時のパターンの変形を抑えることができるためである。
【0072】
また、波長200nm以下の光照射によって、フェノール性の水酸基を有する化合物が架橋、硬化することはよく知られている。しかしながら、クレゾールノボラックやポリヒドロキシスチレンは、パターンを形成するための波長193nmのArFエキシマレーザーに極めて強い吸収を持つために、パターンを形成することができない。
【0073】
一方、ヒドロキシナフチル基はフェノール性の水酸基を有するために波長200nm以下の光照射による架橋を促進させる。また、ナフタレン環は波長193nmにおける吸収がそれほど大きくないために、ヒドロキシナフチルを密着性基として有する高分子化合物をベースポリマーとするフォトレジスト膜材料は、ArFエキシマレーザーリソグラフィーにおいてパターン形成が可能である。
【0074】
また、1級のヒドロキシ基とフェノール性水酸基は、酸と熱による架橋反応によって膜を硬化させる性質を有する。ナフトールの光照射による硬化反応と、光照射によって発生した酸と熱による1級のヒドロキシ基とナフトールの架橋反応を組み合わせることによって、より強固な膜を形成することができる。
【0075】
このように、1級のヒドロキシ基又はフェノール性水酸基を含むヒドロキシ基、ヒドロキシナフチル基、ヒドロキシアセナフチル基、カルボキシ基、2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシエチル基は更に架橋性を有し、特にヒドロキシナフチル基は波長200nmの光照射によって架橋が進行することによってかなり強度な膜を形成することが可能である。
【0076】
上記のベースポリマーであって、化学増幅型ポジ型フォトレジスト膜材料であれば、更に、ベース樹脂が酸不安定基を有する繰り返し単位を有することで、露光時に酸発生剤が発生する酸により酸不安定基を脱離させて、レジスト露光部を現像液に溶解させるように変換することにより、極めて高精度なパターンを得ることができる。
【0077】
また、化学増幅型ポジ型レジスト材料として機能させるために添加するベースポリマーとしては、前記繰り返し単位a、bに加えて、下記一般式(c1)で示される酸不安定基を有する繰り返し単位cを有することが好ましい。
【化20】

(式中、R15は水素原子又はメチル基を示す。R16は酸不安定基である。)
【0078】
一般式(c1)で示される酸不安定基を有する繰り返し単位を得るためのモノマーとしては、下記一般式(Mc1)で示される。ここで、R15、R16は前述と同じである。
【化21】

酸不安定基R16としては、特開2008−111103号公報(0083)〜(0104)段落、具体的には(0114)〜(0117)段落に記載されている。
【0079】
ここで、a、b、cの共重合比率としては、0<a<0.9、0≦b<0.9、0<c<1.0、好ましくは0.05≦a≦0.8、0.1≦b≦0.8、0.1≦c≦0.8、より好ましくは0.1≦a≦0.7、0.2≦b≦0.7、0.12≦c≦0.7である。
【0080】
本発明のパターン形成方法に用いられるレジストのベースポリマーとなる高分子化合物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量が1,000〜500,000、特に2,000〜30,000であることが好ましい。重量平均分子量が小さすぎるとフォトレジスト膜現像後の熱架橋における架橋効率が低下するものとなり、大きすぎるとアルカリ溶解性が低下し、パターン形成後に裾引き現象が生じ易くなる可能性がある。
【0081】
更に、本発明のパターン形成方法に用いられるフォトレジスト膜材料に含まれるベースポリマーとなる高分子化合物においては、分子量分布(Mw/Mn)が広い場合は低分子量や高分子量のポリマーが存在するために露光後、パターン上に異物が見られたり、パターンの形状が悪化したりするおそれがある。それ故、パターンルールが微細化するに従ってこのような分子量、分子量分布の影響が大きくなり易いことから、微細なパターン寸法に好適に用いられるフォトレジスト膜材料を得るには、使用する多成分共重合体の分子量分布は1.0〜2.0、特に1.0〜1.5と狭分散であることが好ましい。
【0082】
また、組成比率や分子量分布や分子量が異なる2つ以上のポリマーをブレンドすることも可能である。
【0083】
これら高分子化合物を合成するには、1つの方法としては不飽和結合を有するモノマーを有機溶剤中、ラジカル開始剤を加え加熱重合を行う方法があり、これにより高分子化合物を得ることができる。重合時に使用する有機溶剤としては、トルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等が例示できる。重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等が例示でき、好ましくは50〜80℃に加熱して重合できる。反応時間としては2〜100時間、好ましくは5〜20時間である。酸不安定基は、モノマーに導入されたものをそのまま用いてもよいし、酸不安定基を酸触媒によって一旦脱離し、その後保護化あるいは部分保護化してもよい。なお、上記ベースポリマーを構成する高分子化合物は1種に限らず2種以上を添加することができる。複数種の高分子化合物を用いることにより、フォトレジスト膜材料の性能を調整することができる。
【0084】
本発明のパターン形成に用いるフォトレジスト膜材料は、特に化学増幅ポジ型レジスト材料として機能させるために酸発生剤を含んでもよく、例えば、活性光線又は放射線に感応して酸を発生する化合物(光酸発生剤)を含有してもよい。光酸発生剤の成分としては、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であればいずれでも構わない。好適な光酸発生剤としてはスルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド、オキシム−O−スルホネート型酸発生剤等がある。以下に詳述するが、これらは単独であるいは2種以上混合して用いることができる。酸発生剤の具体例としては、特開2008−111103号公報(0122)〜(0142)段落に記載されている。
【0085】
さらに、現像後に加熱を行うことによって、フォトレジスト膜材料を硬化するために熱酸発生剤を添加することができる。熱酸発生剤であるアンモニウム塩をフォトレジスト膜材料のベースポリマー100質量部に対して0.001〜20質量部、好ましくは0.01〜10質量部添加しておいて、加熱して酸を発生させることもできる。この場合、酸の発生と架橋反応は同時に進行する。加熱の条件は100〜300℃、特に130〜250℃の温度範囲で10〜300秒の範囲が好ましい。このような熱酸発生剤を使用した場合、機械的強度が向上したフォトレジスト膜が形成される。
【0086】
なお、上記アンモニウム塩の熱酸発生剤としては、下記一般式(Pla−2)が挙げられる。
【化22】

(式中、Kはα位の少なくとも1つがフッ素化されたスルホン酸、又はパーフルオロアルキルイミド酸もしくはパーフルオロアルキルメチド酸である。R101d、R101e、R101f、R101gはそれぞれ水素原子、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、オキソアルキル基又はオキソアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜12のアラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示し、これらの基の水素原子の一部又は全部がアルコキシ基によって置換されていてもよい。R101dとR101e、R101dとR101eとR101fとは環を形成してもよく、環を形成する場合には、R101dとR101e及びR101dとR101eとR101fは炭素数3〜10のアルキレン基、又は式中の窒素原子を環の中に有する複素芳香族環を示す。)
【0087】
として具体的には、トリフレート、ノナフレート等のパーフルオロアルカンスルホン酸、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロブチルスルホニル)イミド等のイミド酸、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、トリス(パーフルオロエチルスルホニル)メチドなどのメチド酸、更には下記一般式(K−1)に示されるα位がフルオロ置換されたスルホネート、下記一般式(K−2)に示されるα位がフルオロ置換されたスルホネートが挙げられる。
【化23】

【0088】
一般式(K−1)中、R102は水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアシル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又は炭素数6〜20のアリール基又はアリーロキシ基であり、エーテル基、エステル基、カルボニル基、ラクトン環を有していてもよく、又はこれらの基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されていてもよい。一般式(K−2)中、R103は水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又は炭素数6〜20のアリール基である。
【0089】
本発明のフォトレジスト膜材料は、更に、有機溶剤、塩基性化合物、溶解制御剤、界面活性剤、アセチレンアルコール類のいずれか1つ以上を含有することができる。
有機溶媒の具体例としては、特開2008−111103号公報(0144)〜(0145)、塩基性化合物としては(0146)〜(0164)、界面活性剤は(0165)〜(0166)段落、溶解制御剤としては特開2008−122932号公報(0155)〜(0178)段落、アセチレンアルコール類は(0179)〜(0182)段落に記載されている。
【0090】
このようなフォトレジスト膜材料から得られた、場合によっては現像後に光照射や加熱処理を行うことで得られた、膜強度としてのハードネスが0.4GPa以上またはヤングモジュラスが9.2GPa以上のフォトレジストパターンを使用することによって、その後のフォトレジストパターンの側壁にスペーサーとして珪素酸化膜を形成する工程を行った場合に、フォトレジストパターンの変形やLWRの増大を抑えることができる。以下に上述したフォトレジスト膜材料を用いた本発明のパターン形成方法について詳述する。図1に本発明の工程フロー図を示し、以下に工程を説明する。
【0091】
本発明では、基板1上に被加工層2を形成し、その上にカーボン膜3を形成する。その上に上述したフォトレジスト膜を形成し、露光、現像を経てフォトレジストパターン4を得る(図1−1)。現像後のフォトレジストパターン4の側壁に珪素酸化膜5を気相成長法などで形成する(図1−2)。フォトレジスト上部7とスペース部分6の珪素酸化膜を除去してスペーサー8を形成し(図1−3)、スペーサー8をマスクにカーボン膜3を加工し(図1−4)、加工後のカーボン膜3’をマスクに被加工層2を加工し、被加工層2’を得る(図1−5)。出来上がるパターンは従来のハードマスクに直接珪素酸化膜を形成する図3のスペーサーライン法と同じパターンになるが、本発明のパターン形成方法は、従来のスペーサーライン法よりも、ハードマスクのエッチングが無い分だけプロセスが短縮できる。
【0092】
本発明において、基板としては、シリコン基板が一般的に用いられる。基板上に形成される被加工層としては、SiO、SiN、SiON、SiOC、p−Si、α−Si、TiN、WSi、BPSG、SOG、Cr、CrO、CrON、MoSi、低誘電膜及びそのエッチングストッパー膜が挙げられ、フォトレジスト膜とは異なるものが用いられる。
【0093】
本発明では、被加工層上にカーボン膜を形成することが好ましい。このカーボン膜はCVD法で形成してもよく、スピンコートで行っても良い。カーボン膜の炭素含有率は75重量%以上であり、好ましくは80重量%以上であり、更に好ましくは85重量%以上である。炭素の割合が80%以上の下層膜を適用する3層レジストプロセスによるパターン形成方法が特許3504247号に示されている。炭素密度の高い下層膜を用いることによって、エッチング中の下層膜パターンの変形や寸法変化が小さく被加工層をエッチング加工できる。本発明のパターン形成方法に於いても、炭素密度の高い下層膜によって、被加工層エッチングにおける寸法制御性の向上が期待できる。スピンコートによるカーボン膜としては特許3981825号、特開2005−128509号、同2006−293298号、同2007−199653号に開示されている。
【0094】
カーボン膜とレジスト膜との間に有機反射防止膜を敷いても良い。カーボン膜は波長193nmでのk値が0.3以上のものが多く、カーボン膜からレジスト膜への基板反射が1%を超えてしまう。基板反射率が1%以上の基板では定在波の発生によりレジスト形状が劣化し、寸法均一性が劣化する。基板反射率を1%以下に抑えるためには、カーボン膜とレジストの間に、k値が0.05〜0.2に調整された有機反射防止膜を形成することが効果的である。カーボン膜と、有機反射防止膜の2層の反射防止膜による反射防止効果は優れており、1.0以上のNAを用いて入射角度が大きく反射率が高い液浸リソグラフィーに於いても1%以下の基板反射率に抑えることが出来る。
【0095】
レジスト膜の厚さとしては、10〜1,000nm、特に20〜500nmであることが好ましい。このレジスト膜は、露光前に加熱(プリベーク)を行うが、この条件としては60〜180℃、特に70〜150℃で10〜300秒間、特に15〜200秒間行うことが好ましい。
【0096】
露光は波長140〜250nmの高エネルギー線、その中でもArFエキシマレーザーによる193nmの露光が最も好ましく用いられる。露光は大気中や窒素気流中のドライ雰囲気でもよいし、水中の液浸露光であってもよい。ArF液浸リソグラフィーにおいては液浸溶媒として純水、又はアルカンなどの屈折率が1以上で露光波長に高透明の液体が用いられる。液浸リソグラフィーでは、プリベーク後のレジスト膜と投影レンズの間に、純水やその他の液体を挿入する。これによってNAが1.0以上のレンズ設計が可能となり、より微細なパターン形成が可能になる。液浸リソグラフィーはArFリソグラフィーを45nmノードまで延命させるための重要な技術である。液浸露光の場合は、レジスト膜上に残った水滴残りを除去するための露光後の純水リンス(ポストソーク)を行ってもよいし、レジスト膜からの溶出物を防ぎ、膜表面の滑水性を上げるために、プリベーク後のレジスト膜上に保護膜を形成させてもよい。液浸リソグラフィーに用いられるレジスト保護膜としては、例えば、水に不溶でアルカリ現像液に溶解する1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する高分子化合物をベースとし、炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、及びこれらの混合溶媒に溶解させた材料が好ましい。フォトレジスト膜形成後に、純水リンス(ポストソーク)を行うことによって膜表面からの酸発生剤などの抽出、あるいはパーティクルの洗い流しを行ってもよいし、露光後に膜上に残った水を取り除くためのリンス(ポストソーク)を行ってもよい。
【0097】
露光における露光量は1〜200mJ/cm程度、好ましくは10〜100mJ/cm程度となるように露光することが好ましい。次に、ホットプレート上で60〜150℃、1〜5分間、好ましくは80〜120℃、1〜3分間ポストエクスポジュアーベーク(PEB)する。
【0098】
更に、現像としては、0.1〜5質量%、好ましくは2〜3質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、0.1〜3分間、好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像することにより基板上に目的のパターンが形成される。
【0099】
現像後のレジストパターンの硬化には加熱処理、あるいは波長320nm以下の光照射をすることによって膜強度の向上につながる。加熱処理は、架橋反応を促進させ、現像後の光照射は波長320nm以下の高エネルギー線、具体的には、波長206nmのKrBrエキシマ光、波長222nmのKrClエキシマ光、波長248nmのKrFエキシマ光、波長283nmのXeBrエキシマ光、波長308nmのXeClエキシマ光、又は波長254nmを含む低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、波長193nmのArFエキシマ光、波長172nmのXeエキシマ光、157nmのFエキシマ光、146nmのKrエキシマ光、126nmのArエキシマ光が好ましく、露光量は光の場合は露光量10mJ/cm〜10J/cmの範囲である。波長200nm以下、特には193nm、172nm、157nm、146nm、122nmのエキシマレーザーや、エキシマランプの照射は、光酸発生剤からの酸の発生だけでなく、光照射による架橋反応を促進させる。
高圧水銀灯からは、254、264、291、297、302、313、365、405、436、546、577nmの輝線が発せられるが、365nmより長波長の光はフォトレジストに添加させられている酸発生剤の分解を起こすことが少ないので、320nmより短波長の照射が効果的である。320nmより長波長の光はフィルターやミラーを装着することによってカットすることもできるし、320nm以上の光のカットを行わなくても良い。メタルハライドランプは高圧水銀灯のような輝度の高いスペクトルではなく、ブロードで連続的な波長の紫外線が発せられるが、高圧水銀灯のように長波長側をカットしてもしなくても良い。高圧水銀灯やメタルハライドランプは安価であり、光強度も強く、多波長の光を発するので低在波の発生がないためにパターンの膜方向に対してまんべんなく酸の発生と硬化を行うことができるメリットがある。
【0100】
なお、波長180nm以下の光照射を大気中で行うと、オゾンの発生によりレジスト表面が酸化され、膜厚がかなり減少してしまう。光照射によるオゾン酸化は、基板に付着した有機物のクリーニングに用いられているので、レジスト膜もオゾンによってクリーニングされ、露光量が多いと膜が消失してしまう。そこで、波長172nm、157nm、146nm、122nmのエキシマレーザーや、エキシマランプを照射する場合は、窒素ガスや、Heガス、アルゴンガス、Krガスなどの不活性ガスでパージし、酸素や水分濃度が10ppm以下の雰囲気で光照射することが望ましい。
【0101】
レジスト膜の機械強度の測定方法としては、ナノインデンター法が好ましく用いることができる。ナノインデンターによる測定は、ダイヤモンドチップからなる正三角錐の圧子を薄膜に押しつけて圧子にかかる荷重から薄膜の強度を求める。レジスト膜の強度を測定する場合、Si基板にレジスト溶液を塗布し、プリベーク後膜厚200nm〜1000nmの範囲に調整した膜で測定を行う。レジストのパターニングは100nm程度の膜厚で行われるが、膜が薄すぎると基板の強度の情報も加わるために、測定すべき膜の本来の強度が求められない。そこで、パターニングするときよりも厚い膜で強度の測定を行う。
【0102】
本発明は、膜強度としてのハードネスが0.4GPa以上又はヤングモジュラスが9.2GPa以上のフォトレジストパターン上にCVD(Chemical Vapor Deposition)法、あるいは原子層堆積法;ALD(Atomic Layer Deposition)法を用いて珪素酸化膜を形成するパターン形成方法を提案するものである。
【0103】
CVD、ALD法による珪素酸化膜の形成方法は、フォトレジスト膜材料に含まれるベースポリマーのガラス転移点(Tg)温度以下の温度で珪素酸化膜を形成することで、フォトレジストパターンを大きく変形せずにフォトレジストに直接珪素酸化膜を付けることが可能であるため好ましい。ALDによる膜の形成方法は特開2005−197561、Applied Surface Science82/83 (1994) p460−467、Applied Surface Science130−132 (1998) p202−207に示されている。SiO、SiN、HfO、Al等各種金属酸化物や金属窒化物の膜を形成することができる。特にSiO膜では100℃付近の低温での膜形成が可能である。SiO膜を形成する場合、シラン系のガスを提供し、レジスト膜にシランモノマーを吸着させ、次にプラズマで励起された酸化系ガスによって珪素を酸化させる。このシランの吸着と酸化を繰り返し行い、1分子ずつ珪素酸化物を積み重ねるように成長させていく。シランガスとしては、クロロシラン系ガス、アルコキシシラン系ガス、イソシアネートシラン系ガスが好ましく用いられる。酸化系ガスとしては、酸素、水、オゾンが用いられ、これらの混合ガスでも良く、N、Ar、He等の不活性ガスを混合しても良いし、各ステップ毎に残留ガスをクリーニングするためにN、Ar、He等の不活性ガスを流しても良い。基板温度はレジストパターンの変形を抑えるには、200℃以下、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下である。
【実施例】
【0104】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例等に制限されるものではない。なお、重量平均分子量(Mw)はGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量を示す。
【0105】
ベースポリマー合成例
フォトレジスト膜材料に添加されるベースポリマーとして、以下に示す各々のモノマーを組み合わせてテトラヒドロフラン溶媒下で共重合反応を行い、メタノールに晶出し、更にヘキサンで洗浄を繰り返した後に単離、乾燥して、以下に示す組成のベースポリマー(ポリマー1〜9及び比較ポリマー1、2)を得た。得られた各ベースポリマーの組成はH−NMR、分子量及び分散度はゲルパーミエーションクロマトグラフにより確認した。
【0106】
ポリマー1
分子量(Mw)=8,100
分散度(Mw/Mn)=1.77
【化24】

【0107】
ポリマー2
分子量(Mw)=8,800
分散度(Mw/Mn)=1.77
【化25】

【0108】
ポリマー3
分子量(Mw)=7,500
分散度(Mw/Mn)=1.82
【化26】

【0109】
ポリマー4
分子量(Mw)=8,100
分散度(Mw/Mn)=1.94
【化27】

【0110】
ポリマー5
分子量(Mw)=7,800
分散度(Mw/Mn)=1.55
【化28】

【0111】
ポリマー6
分子量(Mw)=7,200
分散度(Mw/Mn)=1.75
【化29】

【0112】
ポリマー7
分子量(Mw)=7,700
分散度(Mw/Mn)=1.71
【化30】

【0113】
ポリマー8
分子量(Mw)=8,500
分散度(Mw/Mn)=1.90
【化31】

【0114】
ポリマー9
分子量(Mw)=6,300
分散度(Mw/Mn)=1.69
【化32】

【0115】
比較ポリマー1
分子量(Mw)=8,900
分散度(Mw/Mn)=1.86
【化33】

【0116】
比較ポリマー2
分子量(Mw)=8,300
分散度(Mw/Mn)=1.83
【化34】

【0117】
(実施例1〜15、比較例1、2)
ポジ型レジスト材料の調製
上記で合成したベースポリマー(ポリマー1〜9及び比較ポリマー1、2)を用いて、下記表1に示す組成で溶解させた溶液を0.2μmサイズのフィルターで濾過してレジスト溶液を調製した。
表1中の各レジスト膜材料に添加される酸発生剤、塩基性化合物、及び有機溶剤の組成は次の通りである。
酸発生剤:PAG1、PAG2、TAG(下記式参照)
【化35】

塩基性化合物:Quencher1(下記式参照)
【化36】

有機溶剤:PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
CyH(シクロヘキサノン)
【0118】
膜強度の測定
表1に示す実施例1〜15、比較例1、2の組成のレジスト膜材料をヘキサメチルジシラザン(HMDS)ベーパープライム処理したSiウェハー上に塗布し、110℃で60秒間ベークし、膜厚250nmの膜厚に調整した。
実施例9はArFエキシマレーザーを100mJ/cm照射し、200℃で60秒間ベークした。実施例10、11は200℃で60秒間ベークした。実施例13はKrFエキシマレーザーを100mJ/cm照射し、200℃で60秒間ベークした。実施例14は100Wの高圧水銀灯を10秒照射し、200℃で60秒間ベークした。実施例15は100Wのメタルハライドランプを10秒照射し、200℃で60秒間ベークした。
MTSシステム 株式会社製ナノインデンター SA2を用いて測定した。
【0119】
【表1】

【0120】
カーボン系下層膜としては、信越化学工業 株式会社製ODL−50を用い、Siウェハー上にスピンコートで塗布し、300℃で60秒間ベークして膜厚200nmのカーボン膜を作成した。下層膜の元素分析の結果、炭素含有率が80.5重量%であった。元素分析は、酸素気流中閃光燃焼フロンタルクロマトグラフ(TCD)法によって求めた。その上に日産化学工業 株式会社製有機反射防止膜ARC−29Aを塗布し、200℃で60秒間ベークして膜厚80nmの反射防止膜を作成し、基板とした。
表1中に示される実施例1〜15、比較例1、2で調製したレジスト膜材料を基板上にスピンコーティングし、ホットプレートを用いて110℃で60秒間ベークし、レジスト膜の厚みを120nmにした。
これをArFエキシマレーザースキャナー(株式会社 ニコン製、NSR−S307E,NA0.85、σ0.93/0.69、20度ダイポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)を用いて露光し、露光後、直ちに100℃で60秒間ベークし、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で30秒間現像を行って、寸法が50nmでピッチが130nmのポジ型のパターンを得た。実施例9で調整したレジスト膜で形成されたフォトレジストパターンはArFエキシマレーザーを100mJ/cm照射し、200℃で60秒間ベークした。実施例10、11で調整したレジスト膜で形成されたフォトレジストパターンは200℃で60秒間ベークした。実施例13で調整したレジスト膜で形成されたフォトレジストパターンはKrFエキシマレーザーを100mJ/cm照射し、200℃で60秒間ベークした。実施例14で調整したレジスト膜で形成されたフォトレジストパターンは100Wの高圧水銀灯を10秒照射し、200℃で60秒間ベークした。実施例15で調整したレジスト膜で形成されたフォトレジストパターンは100Wのメタルハライドランプを10秒照射し、200℃で60秒間ベークした。
【0121】
上記フォトレジストパターン上に株式会社 日立国際電気製バッチ式ALD装置ALDINNA(登録商標)を用いて、厚み30nmの珪素酸化膜を形成した。珪素酸化膜形成前と後のパターンのラフネス(LWR)を株式会社 日立ハイテクノロジーズ社製測長SEM(S−9380)を用いて測定した結果を表2に示す。本発明のハードネスが0.4GPa以上又はヤングモジュラスが9.2GPa以上のフォトレジストパターン上に珪素酸化膜を形成することによって、ラフネスが低減される効果が確認された。
【0122】
【表2】

【0123】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に含有される。
【符号の説明】
【0124】
1…基板、 2…被加工層、 3…カーボン膜、 3’…加工後のカーボン膜 4…フォトレジストパターン、 5…珪素酸化膜、 6…スペース部分、 7…フォトレジスト上部、 8…スペーサー、
21…基板、 22…被加工層、 22’…加工後の被加工層 23…ハードマスク、 23’…ハードマスクパターン、 24…フォトレジストパターン、 25…珪素酸化膜、 26…スペーサー、 27…スペース部分 28…スペーサースペース
31…基板、 32…被加工層、 32’…加工後の被加工層 33…ハードマスク、 33’…ハードマスクパターン、 34…フォトレジストパターン、 35…珪素酸化膜、 36…スペーサー、 37…スペース部分、 38…スペーサーライン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基板上にフォトレジスト膜を成膜し、該フォトレジスト膜を高エネルギー線で露光し、現像液を用いて現像し、フォトレジストパターンを形成した後、該フォトレジストパターンの側壁にスペーサーを形成する方法により基板上にパターンを形成するパターン形成方法において、少なくとも、前記フォトレジストパターンは、膜強度としてのハードネスが0.4GPa以上またはヤングモジュラスが9.2GPa以上のものを形成し、該フォトレジストパターンの側壁に、前記スペーサーとして珪素酸化膜を形成することによって基板にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
前記珪素酸化膜が、CVD法またはALD法により形成されることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
前記ハードネスは、ナノインデンター法によって測定されたものとすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
前記フォトレジスト膜を成膜するためのフォトレジスト膜材料として、化学増幅ポジ型レジスト材料を用いることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項5】
前記フォトレジスト膜材料に含まれるベースポリマーが、ヒドロキシ基、ヒドロキシナフチル基、ヒドロキシアセナフチル基、カルボキシ基、2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシエチル基から選ばれる1以上の密着性基を有することを特徴とする請求項4に記載のパターン形成方法。
【請求項6】
前記フォトレジストパターンが、現像後の光照射または加熱処理によって硬化されたものであって、該フォトレジストパターンの側壁に前記スペーサーが形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項7】
前記フォトレジストパターンの側壁に形成されるスペーサーは、前記フォトレジストパターン上に形成した珪素酸化膜のうち、前記フォトレジストパターンのスペース部分の珪素酸化膜と、該フォトレジストパターン上部の珪素酸化膜を除去することで形成し、該フォトレジストパターンの側壁のスペーサーをマスクにして下層の被加工基板を加工することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項8】
前記被加工基板上に前記フォトレジスト膜を形成する前に、CVD法あるいはスピンコート法により炭素含有率が75重量%以上のカーボン膜を形成し、該カーボン膜は、前記フォトレジストパターンの側壁のスペーサーをマスクとしてドライエッチングにより加工され、加工された該カーボン膜をマスクにして前記被加工基板を加工することを特徴とする請求項7に記載のパターン形成方法。
【請求項9】
前記カーボン膜と前記フォトレジスト膜との間に炭化水素材料からなる反射防止膜を形成することを特徴とする請求項8記載のパターン形成方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−85977(P2010−85977A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166373(P2009−166373)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】