説明

パターン形成方法

【課題】露光工程時において専用のマスク板を必要としないパターン形成方法を提案する。
【解決手段】配線パターン状にニッケル膜26を含むクロム・ニッケル積層体27が形成された石英ガラス基板11の表面11a側にネガレジスト31をコーティングする。その後、ガラス基板11の裏面11b側から露光光32を照射して、クロム・ニッケル積層体27をマスクとして利用してネガレジスト31を露光する。その後、露光されなかったネガレジスト31を除去してニッケル膜26を露出させる。そして、ニッケル膜26の上に金を積層し、ネガレジスト31を剥離して金めっき配線を得る。なお、クロム・ニッケル積層体27のうちクロム膜25は省略できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のプリント基板の製造方法では、プリント基板上に銅膜のパターンを形成し、その銅膜のパターン上にレジストをコーティングする。次に、所定のマスクパターンを有するマスク板を位置合わせしてレジストに極接近させて配置し、レジストを露光する。そして、現像処理をすることにより銅膜のパターンを露出させる。さらに、その露出した銅膜のパターン上にニッケルめっき層を形成し、そのニッケルめっき層上に金めっき層を形成させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3143408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の方法では、めっきの下地とする金属膜(銅膜)を露出させる際に、微細なマスクパターンを有する専用のマスク板を用意する必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第一の態様のパターン形成方法は、表面側にニッケル膜のパターンが形成されたガラス基板の表面側にネガレジストをコーティングするネガレジストコーティング工程と、ネガレジストコーティング工程後に、ガラス基板の裏面側から露光光を照射して、ネガレジストを露光する露光工程と、露光工程後に、ガラス基板を現像してニッケル膜のパターン上のネガレジストを除去するネガレジスト除去工程と、ネガレジスト除去工程後に、ニッケル膜のパターン上に金めっきを積層させる金めっき積層工程とを含むことを特徴とする。
本発明の第二の態様のパターン形成方法は、ガラス基板の表面側にクロム膜のパターンを形成するクロム膜形成工程と、クロム膜形成工程後に、クロム膜のパターン上に同一パターンのニッケル膜を形成するニッケル膜形成工程と、ニッケル膜形成工程後に、ガラス基板の表面側にネガレジストをコーティングするネガレジストコーティング工程と、ネガレジストコーティング工程後に、ガラス基板の裏面側から露光光を照射して、ネガレジストを露光する露光工程と、露光工程後に、ガラス基板を現像してニッケル膜のパターン上のネガレジストを除去するネガレジスト除去工程と、ネガレジスト除去工程後に、ニッケル膜のパターン上に金めっきを積層させる金めっき積層工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によるパターン形成方法によれば、上記の露光工程時において専用のマスク板を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態によるパターン形成方法の工程フローチャートの一例である。
【図2】表面側にニッケル膜のパターンが形成されたガラス基板の作成方法の一例を示す図である。
【図3】ネガレジストコーティング工程と露光工程とネガレジスト除去工程の工程図の一例である。
【図4】金めっき積層工程の工程図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施の形態は、チップオンガラス方式において撮像素子などの電子部品を実装するガラス基板に微細な配線パターンを形成するパターン形成方法に関するものである。図1は、本発明の一実施の形態におけるパターン形成方法の工程を示すフローチャートである。ステップS100では、ガラス基板の表面側にニッケル膜を含む下地金属膜を配線パターン状に形成する。ステップS200では、ガラス基板の表面側にネガレジストをコーティングする。ステップS300では、ガラス基板の裏面側からネガレジストを露光する。ステップS400では、ニッケル膜上のネガレジストを除去し、ニッケル膜を露出させる。ステップS500では、露出したニッケル膜上に金めっきを積層する。
【0009】
図2は、図1のステップS100の工程を説明するための図である。図2(a)においては、石英ガラス基板11には、その表面11aの全面にポジレジスト21が均一にコーティングされる。石英ガラス基板11の裏面11bには、位置合わせに用いる一対のクロス形状のアライメントマーク12が付される。
【0010】
図2(b)においては、ポジレジスト21にマスク板22を極接近させて配置する。マスク板22は、所定のマスクパターン22aと、一対のアライメントマーク22bとが付されている石英ガラス板である。マスク板22は、石英ガラス基板11に一対のアライメントマーク22が点線で示すように一対のアライメントマーク12に一致するように位置合わせされている。また、マスク板22は、マスクパターン22aが付されている面がポジレジスト21側に向けられて配置される。図2(c)においては、不図示の露光装置によりマスク板22を介してポジレジスト21へ露光光24を照射する。露光光24の照射に際して、マスク板22にはアライメントマーク22bの周辺をマスクするための露光防止マスキング23が付される。露光後の石英ガラス基板11を現像すると、ポジレジスト21の露光された部分が除去され、図2(d)に示すようにポジレジスト21のレジストパターンが作製される。ポジレジスト21が除去された部分においては、石英ガラス基板11の表面11aが露出する。
【0011】
図2(e)においては、ポジレジスト21のレジストパターンと石英ガラス基板11の表面11aの露出した部分とには、真空蒸着によりクロム膜25が形成される。図2(f)においては、クロム膜25の形成に引き続き、クロム膜25の上にニッケル膜26が真空蒸着により形成される。真空蒸着によりニッケル膜26を石英ガラス基板11上に直接形成すると、ニッケル膜26は石英ガラス基板11との密着性が弱いためクロム膜25を形成する図2(e)の工程が必要となる。図2(g)においては、石英ガラス基板11からポジレジスト21が剥離される。この剥離により、石英ガラス基板11の表面11aには配線パターン状のクロム・ニッケル積層体27が残存する。
【0012】
図3(a)は、図1のステップS200の工程を示す。図3(a)においては、上記のクロム・ニッケル積層体27が積層された石英ガラス基板11には、その表面11aの全面にネガレジスト31が均一にコーティングされている。図3(b)は、図1のステップS300の工程を示す。図3(b)においては、不図示の露光装置により石英ガラス基板11の裏面11b側から露光光32が照射されている。露光光32は、石英ガラス基板11を透過し、石英ガラス基板11の表面11aにパターニングされたクロム・ニッケル積層体27をマスクとしてネガレジスト31を露光する。このように、クロム・ニッケル積層体27をマスクとして使用して露光するため、ネガレジスト31の露光においては専用のマスク板は不要である。
【0013】
図3(c)は、図1のステップS400を示す。図3(c)においては、石英ガラス基板11を現像する。この現像によって、ニッケル膜26上のネガレジスト31が除去され、ニッケル膜26が露出する。
【0014】
図4は、図1のステップS500の工程を示す。図4(a)においては、図3(c)の石英ガラス基板11にニッケル膜26と同一のパターン状の薄い置換金めっき層41を、無電解金めっきの置換金めっき処理により積層する。図4(b)においては、置換金めっき層41の上に同一のパターン状の厚い還元金めっき層42を、無電解金めっきの還元金めっき処理により積層する。図4(c)においては、図4(b)の石英ガラス基板11からネガレジスト31を剥離する。これにより、配線パターン状の金めっき配線が得られる。
【0015】
以上説明した実施の形態によれば、次の作用効果を奏する。
以上で説明したパターン形成方法は、配線パターン状にニッケル膜26が形成された石英ガラス基板11の表面11aにネガレジスト31をコーティングする(図1のステップS200および図3(a))。その後、石英ガラス基板11の裏面11b側から露光光32を照射し、配線パターン状のクロム・ニッケル積層体27をマスクとして利用してネガレジスト31を露光する(図1のステップS300および図3(b))。またその後、ニッケル膜26上のネガレジスト31を除去する(図1のステップS400および図3(c))。さらにその後、ニッケル膜26上に無電解金めっきにより金めっきを積層させる(図1のステップS500および図4)。このようにすることにより、クロム・ニッケル積層体27をマスクとして使用して露光するため、金めっきを積層させるニッケル膜26を露出させるために専用のマスク板が不要となる。なお、本実施の形態に示すパターン形成方法により、ラインアンドスペースが1マイクロメートル/1マイクロメートルの微細な金めっき配線が得られることが実験により確認されている。
【0016】
以上の各実施の形態は、以下のように変形して実施できる。
〔1〕図2(e)および図2(f)の処理では、石英ガラス基板11の表面11a上に真空蒸着によりニッケル膜26を含むクロム・ニッケル積層体27を形成した。しかし、石英ガラス基板11上にニッケル膜26を形成する方法は真空蒸着だけに限定しない。たとえば、ニッケル膜26を石英ガラス基板11の表面11aにスパッタリングにより直接形成してもよい。この場合、石英ガラス基板11の表面11aとニッケル膜26との間にクロム膜25を介在させる必要はない。なお、スパッタリングによりニッケル膜26を石英ガラス基板11に直接形成するときは、石英ガラス基板11の表面11aを逆スパッタやドライエッチングなどにより事前に処理しておくことが望ましい。
【0017】
〔2〕図4(a)では、置換金めっき層41をニッケル膜26の上に積層したが、この工程の代わりに、図2(f)の工程後かつ図2(g)の工程前に金蒸着法によりニッケル膜26の上に金蒸着膜を成膜させてもよい。ニッケル膜26の上に金蒸着膜を成膜した後は、図2(g)のようにポジレジスト21を剥離する。これにより、配線パターン形状のクロム・ニッケル積層体27の上に同一パターンの金蒸着膜が積層されたクロム・ニッケル・金積層体が石英ガラス基板11の上に残存する。さらに、クロム・ニッケル・金積層体が積層された石英ガラス基板11に対して図3と同様の処理を行う。これにより、図4(a)の置換金めっき層41が金蒸着膜に置換された石英ガラス基板11が得られる。このような石英ガラス基板11に対しても図4(b)のように無電解金めっきの還元金めっきを実施することができる。そして、ネガレジスト31を剥離することにより配線パターン状の金めっき配線を得ることができる。
【0018】
〔3〕変形例〔1〕と変形例〔2〕とは、組み合わせて実行してもよい。すなわち、真空蒸着によるクロム膜25の形成を省略してスパッタリングによりニッケル膜26を石英ガラス基板11の表面11a上に直接形成した後に、図2(g)の工程前に金蒸着法によりニッケル膜26の上に金蒸着膜を成膜させてもよい。
【0019】
〔4〕以上で説明した実施形態や各種変形例では、めっき配線を石英ガラス基板11に形成したが、石英ガラス基板以外のガラス基板に形成してもよい。たとえば、露光光32が透過するガラス基板であれば、ソーダライムガラス基板や、ホウ珪酸ガラス基板などを用いてもよい。
【0020】
以上で説明した実施形態や各種変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されない。
【符号の説明】
【0021】
11 石英ガラス基板
11a (石英ガラス基板11の)表面
11b (石英ガラス基板11の)裏面
21 ポジレジスト
25 クロム膜
26 ニッケル膜
27 クロム・ニッケル積層体
31 ネガレジスト
24,32 露光光
41 置換金めっき層
42 還元金めっき層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側にニッケル膜のパターンが形成されたガラス基板の前記表面側にネガレジストをコーティングするネガレジストコーティング工程と、
前記ネガレジストコーティング工程後に、前記ガラス基板の裏面側から露光光を照射して、前記ネガレジストを露光する露光工程と、
前記露光工程後に、前記ガラス基板を現像して前記ニッケル膜のパターン上のネガレジストを除去するネガレジスト除去工程と、
前記ネガレジスト除去工程後に、前記ニッケル膜のパターン上に金めっきを積層させる金めっき積層工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載のパターン形成方法において、
前記表面側にニッケル膜のパターンが形成されたガラス基板は、前記ガラス基板と前記ニッケル膜のパターンとの間に、前記ニッケル膜のパターンと同一パターンのクロム膜が存在することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項3】
ガラス基板の表面側にクロム膜のパターンを形成するクロム膜形成工程と、
前記クロム膜形成工程後に、前記クロム膜のパターン上に同一パターンのニッケル膜を形成するニッケル膜形成工程と、
前記ニッケル膜形成工程後に、前記ガラス基板の表面側にネガレジストをコーティングするネガレジストコーティング工程と、
前記ネガレジストコーティング工程後に、前記ガラス基板の裏面側から露光光を照射して、前記ネガレジストを露光する露光工程と、
前記露光工程後に、前記ガラス基板を現像して前記ニッケル膜のパターン上のネガレジストを除去するネガレジスト除去工程と、
前記ネガレジスト除去工程後に、前記ニッケル膜のパターン上に金めっきを積層させる金めっき積層工程と、
を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項4】
請求項3に記載のパターン形成方法において、
前記金めっき積層工程は、
第1の金めっき積層方法により前記ニッケル膜のパターン上に薄い第1の金めっき層を積層し、第2の金めっき積層方法により前記第1の金めっき層上に前記第1の金めっき層より厚い第2の金めっき層を同一パターンに積層したものであることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項5】
請求項3に記載のパターン形成方法において、
前記ニッケル膜形成工程後に、前記ニッケル膜のパターン上に同一パターンの金蒸着膜を形成する金蒸着膜形成工程をさらに含み、
前記ネガレジストコーティング工程は、前記金蒸着膜形成工程後に実行され、
前記金めっき積層工程は、前記ニッケル膜のパターン上に形成された前記金蒸着膜の上に第2の金めっき積層方法により金めっきを積層させることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項6】
請求項1から5に記載のパターン形成方法において、
前記ガラス基板は、チップオンガラス方式により電子部品を実装するためのものであることを特徴とするパターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−214858(P2012−214858A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81844(P2011−81844)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】