説明

パッシブ発振防止用のIII族窒化物トランジスタ

【課題】パッシブ発振制御を有する半導体素子を提供する。
【解決手段】ソース電極202、ゲート電極208およびドレイン電極204を有するIII族窒化物トランジスタ200を含む。ダンピング抵抗器270がパッシブ発振制御をIII族窒化物トランジスタ200に提供するように構成される。ダンピング抵抗器270が少なくとも一つの集中抵抗器R1を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[背景]
本発明は、2011年3月21日に出願した「III族窒化物の最適化された高低のあるカスコード電源素子」の米国仮特許出願第61/454,743号の優先権の利益を主張する。この仮出願における開示を本出願に参照して完全に援用する。
【0002】
[定義]
ここで用いる語句「III族窒化物」または「III-N」は、窒素と、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)およびホウ素(B)を含む少なくとも一つのIII族元素とを含む化合物半導体を指し、限定しないがそのあらゆる合金、例えば窒化アルミニウムガリウム(AlxGa(1-x)N)、窒化インジウムガリウム(AlxInyGa(1-x-y)N)、窒化アルミニウムインジウムガリウム(AlxInyGa(1-x-y)N)、ヒ化リン化窒化ガリウム(GaAsaPbN(1-a-b))、ヒ化リン化窒化アルミニウムインジウムガリウム(AlxInyGa(1-x-y)AsaPbN(1-a-b))が挙げられる。一般に、III族窒化物は、限定しないが、Ga極性、N極性、半極性または無極性の結晶方位を含むあらゆる極性も言及する。III族窒化物材料はまた、ウルツ鉱型、ジンクブレンデ型、あるいは混成の結晶多形を含んでもよく、また単結晶、単結晶質、多結晶質または非結晶質構造を含んでもよい。
【0003】
また、ここで用いる用語「LV素子」、「低電圧半導体素子」、「低電圧トランジスタ」などは、約50Vまでの典型的な電圧範囲を有する低電圧素子を指す。典型的な定格電圧は0〜50Vの低電圧(LV)と、50〜200Vの中間電圧(MV)と、200〜1200Vの高電圧(HV)と、1200V超の超高電圧(UHV)とを含む。該素子は、電界効果トランジスタ(FET)もしくはダイオードまたはFETとダイオードの組合せを形成する任意適当な半導体を含むことができる。適当な半導体材料としては、シリコン、歪みシリコン、SiGe、SiCのようなIV族半導体材料や、III族ヒ化物、III族リン化物、III族窒化物またはこれらの任意の合金を含むIII−V族材料が挙げられる。
【背景技術】
【0004】
III族窒化物材料は、比較的広い直接バンドギャップを有し、また強い圧電極性を有し得る半導体化合物であり、また高破壊電圧、高飽和速度、2次元電子ガス(2DEG)の生成を可能とする。その結果、III族窒化物材料は、例えば空乏モード(例えばノーマリーオン)のパワー電界効果トランジスタ(パワーFET)、高電子移動度トランジスタ(HEMT)およびダイオードのような多くの電力用途に利用される。
【0005】
電源素子のノーマリーオフ特性が望まれる特定の電源管理用途では、空乏モードのIII族窒化物パワートランジスタを低電圧(LV)半導体素子とカスコードして、エンハンスメントモードの複合電源素子をもたらすことができる。しかしながら、かかる複合素子の有用性と耐久性は、III族窒化物パワートランジスタと、併用されるLV半導体素子との特性により制限され得る。例えば、LV半導体素子で実施して大電流用途に用いる複合素子を形成する場合か、あるいは高スルーレート状況中に作動する場合、III族窒化物パワートランジスタのゲートは、半導体パッケージのインダクタンスおよびLV半導体素子の出力キャパシタンスと直列発振し、例えばIII族窒化物パワートランジスタが望ましくないオフオン切り替えを引き起こす傾向がある。制御も減衰もなければ、かかる発振は、複合半導体素子の機能および有用性に悪影響を及ぼすだろうし、また複合半導体素子の耐久性に有害で、減損する場合がある。
【0006】
同様に、III族窒化物系HEMTを用いて誘導負荷を駆動する特定の他の電源管理用途では、HEMTを急頻度で切り替えるときに有害な寄生が回路内で起こるのをもたらす場合があり、これもまたIII族窒化物材料の耐久性に有害で、減損する場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、図面の少なくとも一つに示すか、および/またはそれに関連して説明され、より完全には請求の範囲に記載したようなパッシブ発振防止用のIII族窒化物トランジスタに指向するものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】従来のIII族窒化物素子の一例を示す略図である。
【図2】III族窒化物トランジスタの典型的な実施態様の例を示す略図である。
【図3】III族窒化物トランジスタにパッシブ発振制御を提供するための典型的な実施態様を示す例である。
【図4】複合半導体素子にパッシブ発振制御を提供するための典型的な実施態様を示す例である。
【図5】複合半導体素子にパッシブ発振制御を提供するための他の典型的な実施態様を示す例である。
【図6】複合半導体素子にパッシブ発振制御を提供するためのさらに他の典型的な実施態様を示す例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[詳細な説明]
以下の説明は、本開示の実施態様に関与する特定の情報を含む。当業者は、本開示がここで具体的に論述したものと異なる方法で実施し得ることを認識するであろう。本出願の図面およびその付随した詳細な説明は、単に典型的な実施態様を説明するに過ぎない。他に断らない限り、図面中の類似または対応する要素は、類似または対応する参照番号により示されるだろう。さらに、本出願における図面と図示は、一般に正確な縮尺ではなく、また実際の相対寸法への合致を意図するものでもない。
【0010】
III族窒化物の材料は、例えば、窒化ガリウム(GaN)とその合金、例えば窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)、窒化アルミニウムインジウムガリウム(AlInGaN)を含む。これら材料は相対的に広い直接バンドギャップを有し、また強い圧電極性を有することができ、高破壊電圧、高飽和速度および2次元電子ガス(2DEG)の生成を可能とする半導体化合物である。その結果、上述したとおり、GaNのようなIII族窒化物材料は、空乏モード(例えばノーマリーオン)のパワー電界効果トランジスタ(power FET)、高電子移動度トランジスタ(HEMT)およびダイオードのような多くのマイクロエレクトロニクス用途に使用される。
【0011】
さらに前述したとおり、電源素子のノーマリーオフ特性が望ましい電源管理用途では、空乏モードのIII族窒化物パワートランジスタを低電圧(LV)の半導体素子とカスコードしてエンハンスメントモードの複合電源素子をもたらすことができる。しかしながら、かかる複合素子の有用性と耐久性は、共にカスコードしたIII族窒化物パワートランジスタとLV半導体素子との特性により制限される場合がある。例えば、LV半導体素子と一緒に実施して大電流用途に用いる複合素子を形成する場合、III族窒化物パワートランジスタのゲートは、半導体パッケージのインダクタンスおよびLV半導体素子の出力キャパシタンスと直列発振し、例えばIII族窒化物パワートランジスタがオフオン切り替えを引き起こす傾向がある。制御しなければ、かかる発振は破壊的となり、複合半導体素子の耐久性を不所望に減損する場合がある。それゆえ、かかる複合素子を電源管理システムでの操作に適するようにするためには、高スルーレート状況に遭遇する場合、III族窒化物素子を発振抵抗となるように構成すべきである。
【0012】
本出願は、パッシブ発振制御を有するIII族窒化物トランジスタを対象とする。一実施態様によれば、III族窒化物トランジスタはIII族窒化物電界効果トランジスタ(III−N FET)またはIII族窒化物高電子移動度トランジスタ(III−N HEMT)のようなノーマリーオン素子でもよいIII族窒化物パワートランジスタとすることができ、他の半導体素子と共に構成して、例えばスイッチや整流器として作用する複合半導体素子を形成することができる。ここに開示するように、当該III族窒化物パワートランジスタのゲート電極は、パッシブ発振制御をIII族窒化物素子に提供するように構成したダンピング抵抗器を含んでもよい。III族窒化物トランジスタはまた、例えばシリコンや他のIV族FETのようなLV素子とカスコードしてもよい。LV素子とノーマリーオンなIII族窒化物パワートランジスタとのカスコード結合を実施して、ノーマリーオフな複合半導体素子を創出することができる。さらに前述したとおり、複合半導体素子は、LV素子がパッシブ発振制御をノーマリーオフな複合半導体素子に提供するように構成したダンピング抵抗器を介してノーマリーオンなIII族窒化物パワートランジスタのゲートを駆動するように構成してもよい。
【0013】
図1では従来のIII族窒化物トランジスタ100を概略的に示す。図示のIII族窒化物トランジスタ100は、例えばIII−N HEMTとすることができ、ソース電極102、ドレイン電極104およびゲート電極106を含む。図1はまた、ゲート電極106に付随した分布ゲート抵抗170を示す。
【0014】
図2は、本発明に係るIII族窒化物トランジスタの典型的な実施態様の一例を示す。図示のIII族窒化物トランジスタ200は、例えばIII−N FETまたはIII−N HEMTとすることができ、ソース電極202、ドレイン電極204およびゲート電極206を含む。本実施態様によると、図1における従来のIII族窒化物HEMT100の分布ゲート抵抗170が、異なる特定の分布ゲート抵抗をダンピング抵抗器270として提供するように設計したゲート電極206に置き換わる。さらに、III族窒化物トランジスタ200は、分布抵抗器R1として実現されるダンピング抵抗器270を含むようにゲート電極206を形成することによりパッシブ発振制御を有するように設計されたトランジスタとして実施することができる。あるいはまた、パッシブ発振制御をダンピング抵抗器270の最適化によりもたらしてもよい。例えば、III族窒化物トランジスタ200を大電流作動用に設計する用途では、例えば発振をIII族窒化物トランジスタ200のゲート208により防止するために、ダンピング抵抗器270が約2〜5Ωのような高い値を担わせるのが好ましい場合がある。一実施態様では、ダンピング抵抗器270のこのような高い値は、III族窒化物パワートランジスタ200の設計や配置における分布抵抗として実現できる。さらに、いくつかの実施態様では、ダンピング抵抗器270をIII族窒化物トランジスタ200のゲート208への相互接続用の金属狭線の使用によるか、または例えば通常用いるアルミニウム(Al)の代わりに窒化タンタル(TaN)または窒化チタン(TiN)のような高抵抗金属材料の使用によって作り出してもよい。
【0015】
他の実施態様では、さらに後述するように、ゲート電極206がダンピング分布抵抗を提供しないようにゲート電極206を形成することが有利となり得る。例えば、ゲート電極206が分布抵抗器と集中抵抗器とを含む場合、該集中抵抗器は発振制御用のダンピング抵抗を提供することができるが、分布抵抗器は複合半導体素子配置に必要である場合があるので低抵抗材料で形成することができる。すなわち、いくつかの実施態様では、ダンピング抵抗器270は、高抵抗金属材料からなる少なくとも一つの集中抵抗器を含むことができ、またさらに低抵抗金属材料からなる分布抵抗器を含んでもよい。
【0016】
上述したとおり、III族窒化物トランジスタ200は、例えばIII族窒化物ヘテロ構造のFET(III−N HFET)としてもよい。一実施態様では、III族窒化物トランジスタ200は金属−酸化物−半導体FET(MOSFET)のような金属−絶縁体−半導体FET(MISFETまたはMISHFET)の形をとってもよい。あるいはまた、HFETとして実行する場合、III族窒化物トランジスタ200は2DEGをもたらすように構成したHEMTとしてもよい。一実施態様によれば、III族窒化物トランジスタ200は、例えばおよそ600Vのドレイン電圧を維持するように構成し、およそ40Vのゲート定格を有する高電圧(HV)素子としてもよい。
【0017】
図3は、集中ゲート抵抗器を分布ゲート抵抗器と組み合わせ利用してパッシブ発振制御に提供するための実施態様の一例を示す。図3に示すように、III族窒化物トランジスタ300は、ソース電極302と、ドレイン電極304と、ゲート電極306と、ゲート308とを含む。ゲート308は、それは集中抵抗器374および分布抵抗器372を含むように表されたダンピング抵抗器370により駆動される。III族窒化物トランジスタ300は、図2のIII族窒化物トランジスタ200に相当し、前述したかかる対応素子に備わったあらゆる特徴を共有することができる。
【0018】
図3に示した実施態様によると、ダンピング抵抗器370は、分布抵抗器372と集中抵抗器374との和として示される。上述したとおり、分布抵抗器372は素子配置の生成物でもよい。さらに、III族窒化物トランジスタ300に用いるゲート金属の厚さと種類は、このダンピング抵抗器370の分布部分に所望の値を達成するために最適化できる。大電流用途では、安定な高スルーレート動作を可能にするようにダンピング抵抗器370を増大し、さらにパッシブ発振制御を強化するために、追加の外部集中抵抗器を集中抵抗器374として実現することができる。
【0019】
あるいはまた、さらに後述するように、ゲート電極306がダンピング分布抵抗を提供しないようにIII族窒化物トランジスタ300のゲート電極306を形成することが有利となる場合がある。代わりに、ダンピング抵抗器370は、集中抵抗器374を利用して発振制御に値するダンピング抵抗を提供することができる。このことは、図5および図6に関連して以下に述べる複合半導体素子構造に必要とされる場合があるので分布抵抗器372が低抵抗材料からなる場合である。
【0020】
図3の参照を続けると、集中抵抗器374は、分布抵抗器372と直列の個別抵抗器として実現されてもよい。しかしながら、集中抵抗器374をIII族窒化物トランジスタ300内にモノリシックに形成することが有利な場合がある。かかるモノリシックな実施態様では、集中抵抗器374はゲート308および/または分布抵抗器372を形成するのに用いた金属化層を除くIII族窒化物トランジスタ300の金属化層内に金属層(図3に示さない金属化層)で形成してもよい。集中抵抗器374はより高い抵抗を有する金属(例えばAlTi)で形成することができ、これをIII族窒化物トランジスタ300の別の金属化層を用いるより低い抵抗材料(例えばAlまたは銅(Cu))で形成し得るゲート308および分布抵抗器372と電気的に直列接続する。
【0021】
図3に示した実施態様は単一集中抵抗器を描写するが、別の実施態様では一つ以上の集中抵抗器を利用してダンピング抵抗器370をもたらすことができる。従って、ダンピング抵抗器370は一般に少なくとも一つの集中抵抗器に相当すると理解してもよい。
【0022】
また、III族窒化物トランジスタ300をシリコンまたは炭化ケイ素(SiC)のような異質な基板上に形成する実施態様では、集中抵抗器374を基板自体(図3に示さない基板)内またはIII族窒化物材料内にモノリシックに集積してもよいことが注目される。
【0023】
図4に移ると、図4は複合半導体素子の典型的な実行の一例を示す。上述したとおり、電源素子のノーマリーオフ特性が望ましい電源管理用途では、空乏モード(例えばノーマリーオン)のIII族窒化物トランジスタを低電圧(LV)半導体素子とカスコードして、エンハンスメントモード(例えばノーマリーオフ)の複合電源素子を作り出すことができる。しかしながら、そして前述したとおり、LV半導体素子と組合せ実行して大電流用途に用いる複合素子を形成する場合、III族窒化物パワートランジスタのゲートは、半導体パッケージインダクタンスおよびLV半導体素子の出力キャパシタンスとに直列接続して発振するする傾向にあってもよく、例えばおそらく破壊的で、III族窒化物パワートランジスタのオフオンの切り替わりを生起する。かかる複合素子を電源管理システムでの作動に適するようにするためには、高スルーレート状況に遭遇する場合、III族窒化物素子を発振抵抗となるように構成すべきである。
【0024】
図4にかかる構造の一つを示す。図4に示すように、複合半導体素子400はソース402、ドレイン404およびゲート408を有するIII族窒化物パワートランジスタ410と、該III族窒化物パワートランジスタ410にカスコードしたLV素子420とを含む。さらに図4に示すように、LV素子420はソース442、ドレイン444およびゲート446を含むLVトランジスタ440と、LVダイオード430とを含む。また、図4に複合半導体素子400の複合ソース412と、複合ドレイン414と、複合ゲート416とを示す。III族窒化物パワートランジスタ410は、それぞれ図2および3に示したIII族窒化物トランジスタ200および300に相当し、かかる対応素子に備わったあらゆる特徴を含んでもよい。
【0025】
図示するLV素子420は、LVトランジスタ440とLVダイオード430とを含む。一実施態様では、LVダイオード430は単にLVトランジスタ440のボディダイオードとすることができ、一方他の実施態様においてLVダイオード430は、LV素子420をもたらすために図4に示すようなLVトランジスタ440に結合した個別ダイオードとすることができる。LV素子420は、例えばおよそ25Vの破壊電圧を有するLVシリコン素子のようなLVなIV族素子として実現してもよい。一実施態様によれば、LV素子420は、例えばLVボディダイオード430を含むLVシリコンMISFETやMOSFETのようなLVのFETでもよい。
【0026】
III族窒化物パワートランジスタ410とLV素子420とのカスコード結合は、複合半導体素子400を創生し、これは図4に示した実施態様によれば、LV素子420により付与される複合ソース412および複合ゲート416と、III族窒化物パワートランジスタ410により付与される複合ドレイン414とを備えるFETとして事実上機能する複合三端子素子をもたらす。すなわち、LVトランジスタ440のドレイン444をIII族窒化物パワートランジスタ410のソース402に結合し、LVトランジスタ440のソース442は複合半導体素子400用の複合ソース412を提供し、LVトランジスタ440のゲート446は複合半導体素子400用の複合ゲート416を提供する。加えて、III族窒化物パワートランジスタ410のドレイン404は複合半導体素子400用の複合ドレイン414を提供する一方、III族窒化物パワートランジスタ410のゲート408をLVトランジスタ440のソース442に結合する。さらに図4にも示すように、III族窒化物パワートランジスタ410のゲート408をダンピング抵抗器470を介してLVトランジスタ440のソース442に結合する。
【0027】
複合半導体素子400は、パッシブ発振制御を有するように構成したHV複合素子として実現することができる。図4に示すように、複合半導体素子400はまた、ダンピング抵抗器470を含む。大電流用途において、安定な高スルーレート動作を可能にするようにダンピング抵抗器470を増加し、さらにパッシブ発振制御を強化するために、追加の外部集中抵抗器を集中抵抗器474として実現してもよい。こうして、複合半導体素子400は、集中抵抗器474および分布抵抗器472として表されるダンピング抵抗器470を含む。図4に示した実施態様によれば、ダンピング抵抗器470は、分布抵抗器472と集中抵抗器474との和として表される。
【0028】
上述したIII族窒化物トランジスタ300の構造と同様に、複合半導体素子400の集中抵抗器474をIII族窒化物パワートランジスタ410とモノリシックに集積してもよい。一実施態様では、集中抵抗器474をIII族窒化物トランジスタ410内にモノリシックに集積することができる。集中抵抗器474は、III族窒化物パワートランジスタ410のゲート408、分布抵抗器472および複合ソース412の金属層(図4に示さないIII族窒化物パワートランジスタ410の金属層)に電気的に直列接続した高抵抗の金属(例えばAlTi)を用いて別の金属層として形成されるのが有利な場合がある。
【0029】
上述したように、ダンピング抵抗器470の分布抵抗器472は、素子配置の生成物でもよい。さらに、III族窒化物パワートランジスタ410に用いるゲート金属の厚さと種類は、所望の値を分布抵抗器472に達成するために最適化できる。
【0030】
特定の別な複合半導体素子の実施態様では、増大した抵抗を有する分布抵抗器472を集中抵抗器474と組み合わせて用いることによりダンピング抵抗器470を増加するのが望ましくない場合がある。例えば、高効率な電源管理システムにおいて、スイッチオン抵抗(Rdson)の比較的低い値(例えば、約0.25Ω未満のRdson)を示す複合半導体素子400に相当する複合半導体素子が通常望ましい場合、複合素子のオン抵抗を増加させる傾向のあらゆる付加的または不必要な分布抵抗は望ましくないであろう。実際、いくつかの実施態様では、Rdsonをできるだけ低く示すように複合半導体素子400を設計することが有利となるであろう。その結果、III族窒化物パワートランジスタ410をゲート408上の集中抵抗器474で形成して、発振を防止するためのダンピング抵抗を提供するように複合半導体素子400を構成するが、複合半導体素子400のRdsonを最小化するように電極を複合ソース402において設計することが望ましい場合がある。図5はかかる構成の典型的な実施態様を示す。
【0031】
図5に示すように、複合半導体素子500は一般に図4の複合半導体素子400に相当し、前述した該対応複合素子に備わったあらゆる特徴を含んでもよい。しかしながら、図5に示すように、本実施態様によれば、分布抵抗器572を複合ソース512で金属化し、これを集中抵抗器574により付与されたダンピング抵抗を介してLV素子520のソースと、III族窒化物パワートランジスタ510のゲート508との両方に結合する。この実施態様では、分布抵抗器572は、複合半導体素子500が極太金属線の使用または低抵抗の金属、例えばAlおよび/またはCuの使用により低いRdsonを示すように設計することができる。集中抵抗器574は回路配置における個別の結合抵抗器であるか、または図4の参照により説明したようにIII族窒化物パワートランジスタ410にモノリシックに集積してもよい。
【0032】
さて、図6を参照すると、複合半導体素子のさらに別の典型的な実施態様が示されている。複合半導体素子600は、III族窒化物パワートランジスタ610と、該III族窒化物トランジスタ610とカスコードしたLV素子620とを含む。図示のIII族窒化物パワートランジスタ610は、ソース602、ドレイン604およびゲート608を含む。III族窒化物パワートランジスタ610は、図4/5のIII族窒化物パワートランジスタ410/510に相当し、前述したIII族窒化物パワートランジスタ410/510に備わったあらゆる特徴を共有してもよい。図6はまた、複合半導体素子600の複合アノード603と複合アノード605とを示す。
【0033】
図6に示した実施態様によると、LV素子620はアノード623およびカソード625を含むLVダイオードであり、例えばLVシリコンダイオードのようなLVのIV族ダイオードとして実現することができる。LV素子620をIII族窒化物パワートランジスタ610とカスコードして複合半導体素子600をもたらす。すなわち、LV素子620のカソード625をIII族窒化物パワートランジスタ610のソース602に結合し、LV素子620のアノード623は複合半導体素子600用の複合アノード603を提供し、III族窒化物パワートランジスタ610のドレイン604は複合半導体素子600用の複合カソード605を提供し、III族窒化物パワートランジスタ610のゲート608をLV素子620のアノード623に結合する。
【0034】
III族窒化物パワートランジスタ610とLV素子620のカスコード結合は、複合半導体素子600を創出し、これは図6に示した実施態様によると、LV素子620により付与された複合アノード603と、III族窒化物パワートランジスタ610により付与された複合カソード605とを有するダイオードとして事実上機能する複合二端子素子をもたらす。さらに、複合半導体素子600は、集中抵抗器674の付加に起因するパッシブ発振制御を有するように構成されたHV複合素子として実現できる。
【0035】
図5に示した実施態様と同様に、図6の実施態様によると、分布抵抗器672は、複合半導体素子600が極太金属線の使用または低抵抗の金属、例えばAlおよび/またはCuの使用により低いRdsonを示すように設計してもよい。集中抵抗器674は、回路配置における個別の結合抵抗器であるか、または図4の参照により説明されるようにIII族窒化物パワートランジスタ610にモノリシックに集積してもよい。
【0036】
このようにして、ここに開示したIII族窒化物素子と複合半導体素子とは、パッシブ発振制御を有するように設計される。その結果、III族窒化物パワートランジスタおよび/または複合素子は、大電流用途で高耐久性および安定な性能を示す頑丈な素子動作を提供するように設計できる。
【0037】
上記の記述から、本出願において説明された概念を実現するために、当該概念を逸脱することなく様々な技術が用いられることは明らかである。さらに、この概念は特にある実施態様に関連して説明されているが、当業者であれば、本概念の精神および範囲を逸脱することなく形式上も詳細にも変更がなされることを認識するだろう。また、説明された実施態様は、例としてはあらゆる点で考慮されているが、限定的ではない。本出願はここで説明された特定の実施態様に制限さるのではなく、多くの変形、改良、および置換が、本発明の範囲を逸脱することなく可能であると理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッシブ発振制御を含むIII族窒化物トランジスタであって、
ソース電極、ゲート電極およびドレイン電極と、
前記パッシブ発振制御をIII族窒化物トランジスタに提供するように構成したダンピング抵抗器とを備え、
前記ダンピング抵抗器が少なくとも一つの集中抵抗器を含むことを特徴とするIII族窒化物トランジスタ。
【請求項2】
前記III族窒化物トランジスタが、III族窒化物電界効果トランジスタ(III−N FET)およびIII族窒化物高電子移動度トランジスタ(III−N HEMT)の一つを含む請求項1に記載のIII族窒化物トランジスタ。
【請求項3】
前記ダンピング抵抗器が、前記集中抵抗器と分布抵抗器とを含む請求項1に記載のIII族窒化物トランジスタ。
【請求項4】
前記集中抵抗器が高抵抗の金属材料からなり、前記分布抵抗器が低抵抗な金属材料からなる請求項3に記載のIII族窒化物トランジスタ。
【請求項5】
前記集中抵抗器がIII族窒化物トランジスタにモノリシックに集積される請求項1に記載のIII族窒化物トランジスタ。
【請求項6】
前記集中抵抗器を前記III族窒化物トランジスタのゲートを形成するのに用いて金属化層以外のIII族窒化物トランジスタの金属層にモノリシックに集積される請求項1に記載のIII族窒化物トランジスタ。
【請求項7】
前記集中抵抗器がIII族窒化物材料からなる請求項1に記載のIII族窒化物トランジスタ。
【請求項8】
前記集中抵抗器が、III族窒化物トランジスタの基板内にモノリシックに集積される請求項1に記載のIII族窒化物トランジスタ。
【請求項9】
前記III族窒化物トランジスタを少なくとも一つの他の半導体素子と集積して複合半導体素子を形成する請求項1に記載のIII族窒化物トランジスタ。
【請求項10】
前記複合半導体素子がノーマリーオフな複合半導体素子である請求項9に記載のIII族窒化物トランジスタ。
【請求項11】
前記ノーマリーオフな複合半導体素子が約0.25Ω未満のスイッチオン抵抗(Rdson)を示す請求項10に記載のIII族窒化物トランジスタ。
【請求項12】
パッシブ発振制御を含む複合半導体素子であって、
III族窒化物パワートランジスタと、
低電圧(LV)トランジスタとを備え、
前記LVトランジスタのドレインをIII族窒化物パワートランジスタのソースに結合し、前記LVトランジスタのソースが複合半導体素子用の複合ソースを提供し、前記LVトランジスタのゲートが複合半導体素子用の複合ゲートを提供し、前記III族窒化物パワートランジスタのドレインが複合半導体素子用の複合ドレインを提供し、前記III族窒化物パワートランジスタのゲートを前記LVトランジスタのソースにダンピング抵抗器を介して結合し、
前記ダンピング抵抗器がパッシブ発振制御を複合半導体素子に提供するように構成されることを特徴とする複合半導体素子。
【請求項13】
前記III族窒化物パワートランジスタが、III族窒化物電界効果トランジスタ(III−N FET)およびIII族窒化物高電子移動度トランジスタ(III−N HEMT)の一つである請求項12に記載の複合半導体素子。
【請求項14】
前記LVトランジスタがLVの第IV族トランジスタを含む請求項12に記載の複合半導体素子。
【請求項15】
前記III族窒化物パワートランジスタとLVトランジスタとをモノリシックに集積する請求項12に記載の複合半導体素子。
【請求項16】
前記ダンピング抵抗器が少なくとも一つの集中抵抗器を含む請求項12に記載の複合半導体素子。
【請求項17】
前記少なくとも一つの集中抵抗器がIII族窒化物パワートランジスタにモノリシックに集積される請求項16に記載の複合半導体素子。
【請求項18】
前記ダンピング抵抗器が分布抵抗器を含む請求項12に記載の複合半導体素子。
【請求項19】
前記ダンピング抵抗器が集中抵抗器と分布抵抗器とを含む請求項12に記載の複合半導体素子。
【請求項20】
前記複合半導体素子がノーマリーオフな複合半導体素子である請求項12に記載の複合半導体素子。
【請求項21】
前記複合半導体素子が約0.25Ω未満のスイッチオン抵抗(Rdson)を示す請求項12に記載の複合半導体素子。
【請求項22】
パッシブ発振制御を含む複合半導体素子であって、
III族窒化物パワートランジスタと、
低電圧(LV)ダイオードとを備え、
前記LVダイオードのカソードをIII族窒化物パワートランジスタのソースに結合し、前記LVダイオードのアノードが複合半導体素子用の複合アノードを提供し、前記III族窒化物パワートランジスタのドレインが複合半導体素子用の複合カソードを提供し、前記III族窒化物パワートランジスタのゲートをダンピング抵抗器を介してLVダイオードのアノードに結合し、
前記ダンピング抵抗器がパッシブ発振制御を複合半導体素子に提供するように構成されることを特徴とする複合半導体素子。
【請求項23】
前記III族窒化物パワートランジスタがIII族窒化物電界効果トランジスタ(III−N FET)およびIII族窒化物高電子移動度トランジスタ(III−N HEMT)の一つである請求項22に記載の複合半導体素子。
【請求項24】
前記LVダイオードはLVの第IV族ダイオードを含む請求項22に記載の複合半導体素子。
【請求項25】
前記III族窒化物パワートランジスタとLVダイオードとがモノリシックに集積される請求項22に記載の複合半導体素子。
【請求項26】
前記ダンピング抵抗器が少なくとも一つの集中抵抗器を含む請求項22に記載の複合半導体素子。
【請求項27】
前記少なくとも一つの集中抵抗器がIII族窒化物パワートランジスタにモノリシックに集積される請求項26に記載の複合半導体素子。
【請求項28】
前記ダンピング抵抗器が分布抵抗器を含む請求項22に記載の複合半導体素子。
【請求項29】
前記ダンピング抵抗器が集中抵抗器と分布抵抗器とを含む請求項22に記載の複合半導体素子。
【請求項30】
前記複合半導体素子がノーマリーオフな複合半導体素子である請求項22に記載の複合半導体素子。
【請求項31】
前記複合半導体素子が、約0.25Ω未満のスイッチオン抵抗(Rdson)を示す請求項22に記載の複合半導体素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−199549(P2012−199549A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−61228(P2012−61228)
【出願日】平成24年3月16日(2012.3.16)
【出願人】(597161115)インターナショナル レクティフィアー コーポレイション (71)
【Fターム(参考)】