説明

パルスブラックライト

【課題】画像を取込む時の短い時間だけランプ電流を増大させて紫外線強度を上げ、探傷精度を向上させた紫外線探傷灯を提供する。
【解決手段】紫外線探傷灯8は、蛍光物質を散布した被検査体2の表層部に紫外線を照射し、カメラ9で表層部の探傷を行う蛍光探傷試験に用いるものであり、灯具11に収納した放電管22と、この放電管22を点灯させるための安定器24とを備え、整流器26およびコンデンサ27からなるパルス電力制御手段25を備えるとともに、パルス電力制御手段25が、定格より低い電力で駆動する放電管22に、コンデンサ27で蓄えたパルス電流を重ね合わせて、高強度の紫外線を瞬間的かつ断続的に発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光物質を散布した被検査体の表層部に紫外線を照射し、カメラで表層部の探傷を行う蛍光探傷試験に用いる紫外線探傷灯に関し、より詳細には、紫外線探傷灯が、整流器およびコンデンサからなるパルス電力制御手段を備えるとともに、パルス電力制御手段が、定格より低い電力で駆動する放電管に、コンデンサで蓄えたパルス電流を重ね合わせて、高強度の紫外線を瞬間的かつ断続的に発生させる紫外線探傷灯に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送中の鋼材(ビレット)を自動で磁粉探傷する装置において、カメラを用いた鋼材表面の探傷に際し、例えば特許文献1に示すような、鋼材表面に散布した蛍光磁粉や蛍光浸透液に含まれる蛍光物質を励起して発光させるために紫外線探傷灯(ブラックライト)が使用されている。
【0003】
ところで、上述したように蛍光磁粉や蛍光浸透液を散布した鋼材表面を紫外線探傷灯で照射し、該表面をカメラ撮影してその画像を装置に取り込む際に、カメラの取り込み時間が長いと、画像が流れてしまうとともに、カメラの取り込み時間が短くすると、暗い画像となり、それぞれ傷部を正確に検出できなくなるという問題がある。そこで、鋼材の流れに同期した回動ミラーや反射ミラーを使用することで、明るい画像を得るものがある。(例えば、特許文献2〜3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−35942号公報
【特許文献2】特開2000−230923号公報
【特許文献3】特開2001−133415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、鋼材表面の一部には曲がりを有しているものがあり、上述のようなミラーを備える装置においても、磁粉探傷装置の所定の位置に設置された紫外線探傷灯では、この紫外線探傷灯から照射される紫外線は、鋼材表面を均一の紫外線強度で照射できず、さらには、曲がりによって鋼材が搬送方向に移動(振動)するため、鋼材がカメラ方向に振動した場合には、カメラの焦点がぼけて得られる指示模様が暗くなり、鋼材表面のカメラ撮影に伴う画像処理が不安定となり、探傷精度が低下するという問題があった。
【0006】
従って、この発明の目的は、画像を取込む時の短い時間だけランプ電流を増大させて紫外線強度を上げ、探傷精度を向上させた紫外線探傷灯を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、請求項1に記載の発明は、蛍光物質を散布した被検査体の表層部に紫外線を照射し、カメラで前記表層部の探傷を行う蛍光探傷試験に用いるものであり、灯具に収納した放電管と、該放電管を点灯させるための安定器とを備える紫外線探傷灯において、
該紫外線探傷灯は、整流器およびコンデンサからなるパルス電力制御手段を備えるとともに、前記パルス電力制御手段が、定格より低い電力で駆動する前記放電管に、前記コンデンサで蓄えたパルス電流を重ね合わせて、高強度の前記紫外線を瞬間的かつ断続的に発生させることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の紫外線探傷灯において、前記パルス電力制御手段は、前記コンデンサにスイッチを接続するとともに、該スイッチは、コントローラを介して前記カメラに接続し、前記カメラによる前記被検査体表層部の画像取り込み前に、前記コントローラが前記スイッチを投入して、前記放電管の紫外線強度を上昇させることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の紫外線探傷灯において、前記灯具内には、前記コントローラに接続した紫外線検出器を設置するとともに、前記コントローラは、前記紫外線検出器の検出情報から、前記放電管の紫外線強度が、設定した累計紫外線強度になると、前記コンデンサから供給される電流を制御することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の紫外線探傷灯において、前記灯具は、密閉構造にするとともに、前記灯具の外側に冷却ファンを設置したことを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の紫外線探傷灯において、前記灯具には、延長反射板を設置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、蛍光物質を散布した被検査体の表層部に紫外線を照射し、カメラで表層部の探傷を行う蛍光探傷試験に用いるものであり、灯具に収納した放電管と、この放電管を点灯させるための安定器とを備える紫外線探傷灯において、この紫外線探傷灯は、整流器およびコンデンサからなるパルス電力制御手段を備えるとともに、パルス電力制御手段が、定格より低い電力で駆動する放電管に、コンデンサで蓄えたパルス電流を重ね合わせて、高強度の紫外線を瞬間的かつ断続的に発生させるので、カメラ撮影(画像取込み)時にのみ放電管を発熱させ、高強度の紫外線を被検査体に照射させることから、放電管の発熱を抑えて放電管の損傷を防ぐとともに、撮影位置での被検査体表面が受ける紫外線強度を高く均一なものとして、取込み画像の明るさを均一にすることができる。また、瞬間的に発生させた高強度の紫外線により画像取込み時間を短くでき、被検査体の振動に伴う画像の流れを防ぐことができる。従って、探傷精度を向上させた紫外線探傷灯を提供することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、パルス電力制御手段は、コンデンサにスイッチを接続するとともに、このスイッチは、コントローラを介してカメラに接続し、カメラによる被検査体表層部の画像取り込み前に、コントローラがスイッチを投入して、放電管の紫外線強度を上昇させるので、簡単な構成により、画像取り込み寸前に、自動的に撮影位置での被検査体表面が受ける紫外線強度を上げ、被検査体表面の探傷を正確に行うことができる。従って、探傷精度を向上させた紫外線探傷灯を提供することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、灯具内には、コントローラに接続した紫外線検出器を設置するとともに、コントローラは、紫外線検出器の検出情報から、放電管の紫外線強度が、設定した累計紫外線強度になると、コンデンサから供給される電流を制御するので、電源電圧の変動や放電管の経時変化などによらず、紫外線検出器による放電管からの実際の紫外線強度に基づいて電流を制御し、安定した紫外線強度を得ることができる。従って、探傷精度を向上させた紫外線探傷灯を提供することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、灯具は、密閉構造にするとともに、灯具の外側に冷却ファンを設置したので、灯具内への外部からの塵芥や異物など汚れの進入を防ぎ、紫外線検出器により紫外線強度を正確に測定することができる。また、放電管から発生する熱を灯具の外側から冷却し、放電管の限界温度を抑えて放電管の損傷を防ぎ、放電管の紫外線強度を長期間安定保持できる。従って、経済的かつ探傷精度を向上させた紫外線探傷灯を提供することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、灯具には、延長反射板を設置したので、放電管から放射される高強度紫外線の、被検査体観察面外への散乱を防ぐことができる。従って、安全性および探傷精度を向上させた紫外線探傷灯を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一例を示す、紫外線探傷灯を含む自動探傷装置の概略構成図である。
【図2】紫外線探傷灯の正面模式図である。
【図3】紫外線探傷灯の側面模式図である。
【図4】放電管を含む光源の回路構成図である。
【図5】コントローラによる被検査体への紫外線発光からマーキング操作までの制御ブロック図である。
【図6】放電管の電流と、放電管からの紫外線強度との関係を実測値で示すグラフである。
【図7】紫外線検出器を備える光源の回路構成図である。
【図8】灯具の外側に冷却ファンおよび延長反射板を設けた紫外線探傷灯の側面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。図1は本発明の一例を示す、紫外線探傷灯を含む自動探傷装置の概略構成図である。
【0019】
図1に示すように、この自動探傷装置1は、被検査体2として、例えば長尺鋼材などビレット表層部の傷部を検出する周知の装置であり、被検査体2を搬送する搬送装置3と、この搬送装置3の始端部に設けた磁粉検査液の散布装置4と、搬送装置3の中途部に設けたエアーブロー装置5を備える磁化部6と、搬送装置3の終端部に設けたマーキング装置7と、この磁化部6の近傍位置に設けた紫外線探傷灯8と、カメラ9と、検出部10とから構成される。
【0020】
まず、搬送装置3は、例えば、不図示の搬送ローラにより駆動するコンベア3aを備え、このコンベア3a上の被検査体2が、上流側の磁粉液散布装置4から下流方向(図例では右端側から左方向)に向けて搬送される。
【0021】
次に、散布装置4は、磁化部6の直前位置に配置されており、磁粉の表面を蛍光体で被った磁粉検査液としての蛍光磁粉液を散布するものである。
【0022】
磁化部6は、搬送装置3の前後に対向して配置された貫通コイル6a,6bおよびそれら貫通コイル6a,6b間であって、搬送装置3の前後に2つの極間コイル6c、6dから構成され、貫通コイル6a,6b間で一様な回転磁界を発生させるものであり、貫通コイル6a,6bは、円形状コイルからなり、その中心部に被検査体2を貫通させる。また、極間コイル6c、6dはU字形状を有し、その空隙に被検査体2を通過させる。
【0023】
そして、これらコイルに電流が流れると、貫通コイル6a,6bでは、被検査体2の搬送方向に磁場が作られ、極間コイル6c,6dでは、コイルの空隙方向(被検査体2の搬送方向)と直交する被検査体2の管径方向に磁場が生成される。そして、これら両コイルに位相が90度ずれた正弦波電流が印加されると、両磁場が発生した平面内において、一定の磁界強度で回転する回転磁界が生成され、この回転磁界によって、傷部の方向に関わらず漏洩磁束が生成され、磁粉による指示模様が形成される。
【0024】
エアーブロー装置5は、例えば、前後貫通コイル6a,6b間であって、前側の貫通コイル6aと前側の極間コイル6c、前後極間コイル6c,6d間、後側極間コイル6dと後側貫通コイル6bとの各間に設置されており、被検査体2に向けて重力に逆らう方向にエアーを噴出することにより、被検査体2の表面上に散布された磁粉検査液の流速を制御するものである。
【0025】
紫外線探傷灯8は、詳細を後述するが、前後貫通コイル6a,6b間を搬送される被検査体2上の磁粉検査液の照射に用いるが、磁化部6から発生する強い回転磁界の影響を影響を防ぐため、被検査体2から一定距離(例えば、600mm〜2000mm程度)離した位置に設置される。
【0026】
カメラ9は、CCDカメラなどが用いられ、撮影した画像データは検出部10に送られる。なお、カメラ9は、強い回転磁界の影響を避けるため被検査物から一定距離(例えば、600〜2000mm)だけ離すとともに、磁気シールドして設置される。この磁気シールドは、パーマロイ(鉄ニッケル合金)などから構成した箱体などを用い、この箱体内にカメラ9を内設させてもよい。
【0027】
検出部10は、CPUやメモリを含むハードウェアからなり、後述のコントローラCに接続するとともに、この検出部10には、カメラ9およびマーキング装置7が接続され、カメラ9からの画像データを取込んで信号処理を行い、被検査体2表層部の傷部を検出するものである。
【0028】
マーキング装置7は、検出部10で検出された被検査体2の表層部に有する傷部の位置を特定し、前記コントローラからの指示で、マーキングガンによりその傷部に目視可能なマーキングを行うものである。
【0029】
ここで、自動探傷装置1による被検査体2表層部の傷部検出方法を説明する。まず、搬送装置3により搬送方向に搬送される被検査体2は、散布装置4によって散布された蛍光磁粉液を、被検査体2の表面に付着させた状態で、磁化部6によって形成された回転磁界領域内に搬送される。
【0030】
被検査体2表層部に傷部が存在すると、その傷部に起因する漏洩磁界が生じて、蛍光磁粉液中の磁粉が、その漏洩磁界に引き寄せられるが、このとき磁界は回転しているため、傷部の方向に関わらず漏洩磁束が発生し、磁粉が引きつけられる。そして、被検査体2表面上における蛍光磁粉液の流速が低下して漏洩磁束に捕捉されると、磁粉が傷部に集合して傷部に磁粉指示模様が形成される。このとき、なお、蛍光磁粉液の流速制御は、エアーブロー装置5によって行われる。
【0031】
次いで、磁粉指示模様は、紫外線探傷灯8によって紫外線を照射されることで、蛍光を発し、カメラ9によってその蛍光を有する磁粉指示模様が撮影される。そして、撮影された画像データは、検出部10へ送られ、傷部に起因する磁粉指示模様以外の磁粉ムラによるノイズを低減するシェーディング補正などの信号処理がなされ、傷部が検出されるとともに、検出した傷部の位置情報に基づいて、前記コントローラの指示によりマーキング装置7が、被検査体2表面の当該位置にマーキングする。
【0032】
次に、本願発明の特徴である、紫外線探傷灯について、その具体的構成を説明する。図 2は紫外線探傷灯の正面模式図、図3は紫外線探傷灯の側面模式図、図4は放電管
を含む光源の回路構成図、図5はコントローラによる被検査体への紫外線発光からマー
キング操作までの制御ブロック図、図6は放電管の電流値と、放電管からの紫外線強度との関係を実測値で示すグラフである。
【0033】
本願発明の紫外線探傷灯(パルスブラックライト)8は、図2〜3に示すように、灯具11と、光源21とから構成されるもので、まず灯具11は、前面に開口部を備える金属製またはプラスチック製の材質を加工成形してなるケース12と、該ケース12内の前記開口部に面して、可視光線を遮断するとともに紫外線を通過させる、NiOやCoOなどを含むリン酸系暗色ガラスからなる通過フィルタ13と、この通過フィルタ13後方のケース12内であって、アルミニウムなどの金属を加工成形し、鏡面仕上げされた反射面を通過フィルタ13の面に対向配置させた反射体14とから構成される。
【0034】
また、通過フィルタ13後方のケース12内には、後端部に設置したソケット20を介して光源21を構成する放電管22が取付けられる。この放電管22は、光源管球として、メタルハライドランプが用いられる。
【0035】
次に、図4を用いて、光源21の回路構成を説明する。光源21の回路c1は、放電管22と、交流電源23との間に、安定器24が接続される。この安定器24は、銅鉄安定器として高圧発生器(イグナイタ)と変圧器とから構成される。また、安定器24の出力容量は、後述するコンデンサ27からの電流が加算されるため、放電管22の出力容量超えによる放電管22の破損を防止するために、放電管22の出力容量の1/2〜1/4にすることが好ましい。
【0036】
また、放電管22と、交流電源23との間であって安定器24と並行に、放電管22に高強度の紫外線発光を行わせるパルス電力制御手段25が接続される。このパルス電力制御手段25は、整流器26と、コンデンサ27と、スイッチ28とから構成される。
【0037】
整流器26は、交流電力を直流電力に変換するダイオードなどの整流素子によって構成される周知の装置であり、コンデンサ27は、目的とする紫外線強度に応じて容量を選択可能とするが、本例では、100μF〜30000μFの範囲を用いることが好ましい。
【0038】
スイッチ28は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などの半導体制御によるものを用いることで、放電管22の短時間発光が可能となる。なお、IGBTの許容電流値が小さい場合は、IGBTを並列に使用して対応する。
【0039】
このスイッチ28は、図5に示すように、コントローラCを介してカメラ9に接続されている。なお、本実施例では、自動探傷装置1として、コントローラCには、磁化部6の前後に配置した位置検出器29を接続することで、この位置検出器29により検出(記録)した被検査体2の表面位置を、コントローラCの指示で、紫外線探傷灯8による紫外線照射以降の、カメラ9、検出部10およびマーキング装置7により自動探傷を行わせている。この位置検出器29は、図例のように、位置検出器29a,29bからなり、自動探傷装置1の前部に設置した位置検出器29aは、不図示の光電センサを備え、カメラ9との絶対的な位置関係を検出するとともに、被検査体2の先頭部分の位置を検出し、先頭より後方位置は、位置検出器29bで検出する。また、これら位置検出器29a,29bは、被検査体2の曲がりに追従するため、不図示のエアシリンダで追従ローラ29c,29dを被検査体2に押し当てており、被検査体2の位置は、これら追従ローラ29c,29dの回転を追従ローラ29c,29d内などに取付けた不図示のロータリーエンコーダなどの計測による周知の方法で検出される。なお、位置検出器29の設置に代えて、または併せて、図示しない手動スイッチをコントローラCに接続することで、被検査体2表面における任意の位置や所定の位置を繰り返して紫外線照射以降の探傷操作を手動で行う構成にすることもできる。
【0040】
ここで、パルス電力制御手段25による被検査体2表層部の探傷において、搬送中の被検査体2の表面各位置を、順次放電管22により紫外線照射してカメラ9で撮影する際、その撮影間における放電管22の通常待機時は、コントローラCにより安定器24を介して放電管22に電流を流し、通常の強度(定格より低い電力)の紫外線が発光されている。
【0041】
しかし、被検査体2が次の対象となる探傷表面に位置したことを検出した前記位置検出器からの検出情報に基づいて、コントローラCはスイッチ28を、例えば1msecだけONにして、コンデンサ27の電流(パルス電流)を放電管22に送る。
【0042】
このとき、放電管22は、コンデンサ27からの電流と、安定器24からの電流とが加算された電流によって強く発光するため、被検査体2の表面に高強度の紫外線を短時間照射することができ、この照射した表面をカメラ9で撮影した画像データから、上述したように検出部10が被検査体2表面の傷部を判定する。なお、コントローラCは、スイッチ28のOFF時間を、例えば100msecとして、これらON/OFFを上記所定の時間間隔で繰り返す。
【0043】
この高強度紫外線は、例えば、放電管22が2KWの場合で、放電管22の電圧を100Vとすると、放電管22の電流は約20Aとなる。このとき、安定器24の電流容量を1KWとした場合、コンデンサ27からの電流容量は1KWとなり、コンデンサ27からの実効電流は約10Aとなる。従って、スイッチ28のON時間を1msec、OFF時間を100msecのインターバル時間とすれば、パルス電流として約100Aを放電管22に送ることが可能となる。
【0044】
なお、上述した実効電流は、次式で算出することができる。
Ie=√(o/i×I2
Ie:実効電流,o:スイッチON時間,i:インターバル時間,I:電流
【0045】
そして、図6に示した、放電管22の電流値と、放電管22からの紫外線強度との実測値のように、例えば、放電管22の電流値が20Aのとき、紫外線強度は約55mW/cm2であるとき、放電管22の電流値を5倍の100Aにすると、紫外線強度も5倍の約275mW/cm2となり、両者はほぼ比例関係であることが分かる。
【0046】
以上のような構成にすることで、パルス電力制御手段25が、定格より低い電力で駆動する放電管22に、コンデンサ27で蓄えたパルス電流を重ね合わせて、高強度の紫外線を瞬間的かつ断続的に発生させるので、カメラ9で撮影(画像取込み)時にのみ放電管22を発光させ、高強度の紫外線を被検査体2に照射させることから、放電管22の発熱を抑えて放電管22の損傷を防ぐとともに、撮影位置での被検査体2表面が受ける紫外線強度を高く均一なものとして、取込み画像の明るさを均一にすることができる。
【0047】
また、瞬間的に発生させた高強度の紫外線により画像取込み時間を短くでき、被検査体2の振動に伴う画像の流れを防ぐことができる。そして、このような簡単な構成により、画像取り込み時のみ、自動的に撮影位置での被検査体2表面が受ける紫外線強度を上げ、被検査体2表面の探傷を正確に行うことができる。
【0048】
なお、光源21の回路を以下の構成にすることもできる。図7は紫外線検出器を備える光源の回路構成図である。
【0049】
この回路c2は、上述同様に、放電管22と、交流電源23との間であって安定器24と並行に、放電管22に高強度の紫外線発光を行わせるパルス電力制御手段25´が接続されるが、このパルス電力制御手段25´は、整流器26と、コンデンサ27と、半導体による制御回路29とから構成される。そして、制御回路29は、コントローラCに接続される。なお、安定器24、整流器26、コンデンサ27は、上述の回路で用いたものと同様である。
【0050】
さらに、密閉構造の灯具11内であって、後述する図8に示すように、例えば、放電管22前方の通過フィルタ13近傍には、周知のフォトダイオードによる紫外線検出器30が設置されており、この紫外線検出器30は、制御回路29に接続されている。
【0051】
ここで、上述同様にパルス電力制御手段25´による被検査体2表層部の探傷において、回路c2に交流電源23が投入された場合、安定器24に内蔵される前記高圧発生器により放電管22に電流が流れ始めるとともに、コンデンサ27には整流器26を介して電荷が蓄えられる。
【0052】
なお、安定器24の出力容量が大きいほど放電管22が安定するまでの時間が短縮されるため、安定器24を図示しない位相制御し、電源投入時は安定器24の出力容量で使用し、放電管22が安定すると、安定器24を低出力で使用することで、放電管22の安定までに要する時間を短縮することができる。
【0053】
次いで、放電管22が安定した後、コントローラCからの指示で制御回路29が作動し、コンデンサ27で蓄えたパルス電流を放電管22に流す。そして、コントローラCは、カメラ9のシャッターを開くとともに、上述同様に放電管22が高強度の紫外線を発光する。
【0054】
また、コンデンサ27からパルス電流が流れ始めると同時に、コントローラCからの指示で、紫外線検出器30が放電管22から照射される紫外線強度の測定を開始し、この紫外線強度の経時変化を累積測定する。そして、放電管22が、予め設定した累積紫外線強度に達すると、コントローラCは、制御回路29を作動させて、放電管22に流れるコンデンサ27からのパルス電流を遮断し、次の被検査体2表面位置の画像撮影に伴う放電管22の高強度紫外線発光のため、コンデンサ27に電荷を蓄える。
【0055】
なお、カメラ9のシャッター開放時間は固定されているため、このシャッター開放時間を過ぎても、紫外線検出器30の検出による累積紫外線強度が設定値に達しない場合には、コントローラCが図示しない警報装置に警報信号(ブザー音や警告灯など)を発生させて、作業者に注意を喚起する。
【0056】
以上のような構成により、電源電圧23の変動や放電管22の経時変化に伴う発光状態などによらず、紫外線検出器30による放電管22からの実際の紫外線強度に基づいて電流を制御し、安定した紫外線強度を得ることができる。そして、従来の自動探傷装置における放電管では、紫外線強度が4000μW/cm2〜20000μW/cm2の範囲で使用されているが、本願発明の放電管22では、500000μW/cm2以上の紫外線強度を得ることができ、被検査体2表面を鮮明に画像撮影できる結果、正確な画像解析を可能とし、探傷性能の大幅な安定化を行うことができる。
【0057】
なお、紫外線探傷灯は、以下のような構成にすることもできる。図8は灯具の外側に冷却ファンおよび延長反射板を設けた紫外線探傷灯の側面模式図である。
【0058】
この図8に示すように、紫外線探傷灯8´を構成する密閉構造の灯具11における、例えば、ケース12の後部天面(限定しない)には、ケース12に冷却風を送風するための冷却ファン31aが設置されるとともに、ケース12内の放電管22近傍にも、放電管22の図示しない封止部に送風するための冷却ファン31bが設置される。
【0059】
このような構成により、密閉構造の灯具にすることで、外部からの塵芥や異物など汚れの進入を防ぎ、紫外線検出器30により紫外線強度を正確に測定することができる。また、放電管22から発生する熱を灯具11の外側から冷却ファン31aにより冷却し、放電管22の限界温度を抑えて放電管22の損傷を防ぎ、放電管22の紫外線強度を長期間安定保持することができる。さらには、ケース12内の放電管22近傍に設置した冷却ファン31bによって、点灯により放電管22が発熱しても、放電管22のガラス管と、配線との間を封止する前記封止部を冷却し、膨張を抑えることで、前記封止部からの放電管22内に密封されたガスの漏洩を防止することができる。
【0060】
また、図8に示したように、ケース12前面の開口部外周には、通過フィルタ13を介して反射体14を延設させた延長反射体32が、照射対象に向かって設置される。
【0061】
このような構成にすることで、放電管22から放射される高強度の紫外線を被検査体2の観察面に集光させて、高強度紫外線を安定して得るとともに、この高強度紫外線を外方に漏らさず、作業者にかかることを防ぐことができる。
【0062】
以上詳述したように、本願発明の紫外線探傷灯8は、蛍光物質を散布した被検査体2の表層部に紫外線を照射し、カメラ9で表層部の探傷を行う蛍光探傷試験に用いるものであり、灯具11に収納した放電管22と、この放電管22を点灯させるための安定器24とを備え、整流器26およびコンデンサ27からなるパルス電力制御手段25を備えるとともに、パルス電力制御手段25が、定格より低い電力で駆動する放電管22に、コンデンサ27で蓄えたパルス電流を重ね合わせて、高強度の紫外線を瞬間的かつ断続的に発生させるものである。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、蛍光物質を散布した被検査体の表層部に紫外線を照射し、カメラ撮影により表層部の探傷を行う自動探傷装置に備える、あらゆる紫外線探傷灯に適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 自動探傷装置
2 被検査体
8 紫外線探傷灯
9 カメラ
11 灯具
12 ケース
22 放電管
25 パルス電力制御手段
26 整流器
27 コンデンサ
28 スイッチ
29 制御回路
30 紫外線検出器
31a,31b 冷却ファン
32 延長反射体
C コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光物質を散布した被検査体の表層部に紫外線を照射し、カメラで前記表層部の探傷を行う蛍光探傷試験に用いるものであり、
灯具に収納した放電管と、
該放電管を点灯させるための安定器と、
を備える紫外線探傷灯において、
該紫外線探傷灯は、整流器およびコンデンサからなるパルス電力制御手段を備えるとともに、
前記パルス電力制御手段が、定格より低い電力で駆動する前記放電管に、前記コンデンサで蓄えたパルス電流を重ね合わせて、高強度の前記紫外線を瞬間的かつ断続的に発生させることを特徴とする紫外線探傷灯。
【請求項2】
前記パルス電力制御手段は、前記コンデンサにスイッチを接続するとともに、該スイッチは、コントローラを介して前記カメラに接続し、前記カメラによる前記被検査体表層部の画像取り込み前に、前記コントローラが前記スイッチを投入して、前記放電管の紫外線強度を上昇させることを特徴とする、請求項1に記載の紫外線探傷灯。
【請求項3】
前記灯具内には、前記コントローラに接続した紫外線検出器を設置するとともに、前記コントローラは、前記紫外線検出器の検出情報から、前記放電管の紫外線強度が、設定した累計紫外線強度になると、前記コンデンサから供給される電流を制御することを特徴とする、請求項1〜2に記載の紫外線探傷灯。
【請求項4】
前記灯具は、密閉構造にするとともに、前記灯具の外側に冷却ファンを設置したことを特徴とする、請求項1〜2に記載の紫外線探傷灯。
【請求項5】
前記灯具には、延長反射板を設置したことを特徴とする、請求項1に記載の紫外線探傷灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−122957(P2012−122957A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275903(P2010−275903)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(390002808)マークテック株式会社 (42)
【Fターム(参考)】