パルス密度変復調回路及び該変復調回路を用いたインバータ制御装置
【課題】伝送路の電気的な絶縁手段としてフォトカプラ等を用いる場合であれ、パルス密度変調信号をより高精度に復調することのできるパルス密度変復調回路、及び該パルス密度変復調回路を用いたインバータ制御装置を提供する。
【解決手段】アナログ信号として抽出される温度検出用ダイオード112の順方向電圧VFをパルス密度変調信号Voutに変調する。こうして変調されたパルス密度変調信号Voutに対してストップビットを付与し、このストップビットの付与された信号SVoutを高圧回路側から低圧回路側に伝送する。そして、この伝送された信号SVoutを受信して一定時間Tc中のパルス数nxをカウントするとともに、この一定時間Tc中に受信し得る最大パルス数n100をパルス密度100%として、最大パルス数n100に対するカウントしたパルス数nxの割合として抽出される温度検出用ダイオード112の順方向電圧VFを復調する。
【解決手段】アナログ信号として抽出される温度検出用ダイオード112の順方向電圧VFをパルス密度変調信号Voutに変調する。こうして変調されたパルス密度変調信号Voutに対してストップビットを付与し、このストップビットの付与された信号SVoutを高圧回路側から低圧回路側に伝送する。そして、この伝送された信号SVoutを受信して一定時間Tc中のパルス数nxをカウントするとともに、この一定時間Tc中に受信し得る最大パルス数n100をパルス密度100%として、最大パルス数n100に対するカウントしたパルス数nxの割合として抽出される温度検出用ダイオード112の順方向電圧VFを復調する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば温度情報等、物理量情報の伝送に用いられるパルス密度変復調回路、及び該変復調回路を用いて例えば電気自動車やハイブリッド車等の車両内での電力変換を行うインバータの駆動を制御するパルス密度変復調回路を用いたインバータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記インバータ制御装置としては、例えば電気自動車やハイブリッド車などにあって、車載バッテリから供給される直流電力をモータ駆動用の三相交流等に変換するなどの電力変換を行うインバータを対象としてその駆動を制御する装置が知られている。このようなインバータ制御装置は通常、駆動対象であるモータに数Kwから数十kw程度の電力を供給するために数十V〜数百V程度の範囲の電圧を必要とする高圧回路と、十数V以下の電圧範囲で動作してモータの駆動を制御する低圧回路(制御部)とを有して構成される。そして、高圧回路から低圧回路に伝送される物理量、例えばインバータに用いられるIGBT(絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ)等の温度検出用のダイオードの順方向電圧に対応した温度情報に基づいてインバータの駆動態様、ひいてはモータの駆動態様に関する制御が実行される。一方、高圧回路と低圧回路とでは、必要とされる電圧の範囲が大幅に異なるために、これら高圧回路と低圧回路とが電気的に絶縁されていないような場合には、低圧回路側にある制御部に過電圧が印加される虞がある。そこで、例えばフォトカプラ等を介して高圧回路と低圧回路とを電気的に絶縁して、上記温度検出用のダイオードの温度情報(電圧情報)を高圧回路側から低圧回路側に伝送するようにしている。図9に、このフォトカプラを用いて高圧回路と低圧回路とを電気的に絶縁して上記インバータの制御を行うインバータ制御装置の一例についてその構成の概要を示す。
【0003】
図9に示すように、このインバータ制御装置では、まず、高圧回路側のインバータ110を構成するIGBT111に内蔵された温度検出用のダイオード112の順方向電圧VFが検出される。次いで、こうして検出されたダイオード112の順方向電圧VFがパルス密度変調回路120によってパルス密度変調(PDM)信号に変換されることにより、アナログ信号がパルス(2値化)信号に一旦変換される。すなわちここでは、温度検出用のダイオード112の順方向電圧VFが高い、すなわちIGBT111の温度が低いときはオン密度の高いパルス密度変調信号に変調されるとともに、温度検出用のダイオード112の順方向電圧VFが低い、すなわちIGBT111の温度が高いときはオン密度の低いパルス密度変調信号に変調される。
【0004】
図10は、こうしたパルス密度変調信号についてその一例を示したものである。同図10に示されるように、ここでは7段階のパルス密度に変調する場合について示しており、例えばIGBT111の温度が「15℃」のときはパルス密度変調信号のオン密度(パルス密度)が「90%」となっており、IGBT111の温度が上昇するにつれてパルス密度変調信号のオン密度が次第に低下するようになる。そして、IGBT111の温度が「150℃」のときには、オン密度が「10%」となる。
【0005】
こうして上記電圧VF(温度情報)がパルス密度変調信号としてパルス密度変調回路120から出力されると、そのパルス密度(パルス幅)に応じてスイッチング素子SW1がオン/オフされ、そのオン/オフ情報がフォトカプラIS1を介して高圧回路側から低圧回路側に伝送される。こうして低圧回路側にパルス密度変調信号が伝送されると、低圧回路では復調回路210により、上記変調されたパルス密度(オン/オフ密度)に応じて電圧値が推移する、すなわち上記電圧VFの推移に対応したアナログ信号として同パルス密
度変調信号が復調される。そして、この復調されたアナログ信号がIGBT111の温度情報としてインバータ制御マイコン220に取り込まれるとともにその内部でA/D(アナログ/デジタル)変換され、その温度情報に基づいて同マイコン220によるIGBT111の駆動指令が生成される。他方、この生成された駆動指令はスイッチング素子SW2を通じてオン/オフ情報に変換され、このオン/オフ情報に変換された駆動指令がフォトカプラIS2を介して低圧回路から高圧回路に伝送(フィードバック)される。そして、高圧回路では、IGBT駆動回路140を通じて、このフィードバックされた駆動指令に基づくIGBT111、ひいてはインバータ110の駆動を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−306709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、フォトカプラを用いて高圧回路側から低圧回路側に電圧情報(温度情報)を伝送することとすれば、これら高圧回路と低圧回路とを電気的に絶縁した状態で、高圧回路側にあるIGBTの温度を低圧回路側にあるマイコンにより監視することができるようにはなる。
【0008】
しかし、上記パルス密度変調信号を復調する復調回路210は、図9にその構成を併せて示すように、トランジスタQ1をはじめ、分圧回路(R4〜R6)やフィルタ回路(R7、C7)等からなるアナログ回路によって構成されている。このため、同復調回路210を通じてパルス密度変調信号をアナログ信号に復調する際、上記トランジスタQ1がオン状態となるたびにそのコレクタ−エミッタ間に飽和電圧が発生し、この飽和電圧がばらつきを持つために、抵抗R4に印加される電圧も電源電圧からこの飽和電圧のばらつきを引いた誤差を持つ値となってしまう。しかも、抵抗R4及びR5による分圧値、及び抵抗R5及びR6による分圧値も、それら抵抗自身のばらつきに起因するばらつきを持つようになるために、結局は、その入力信号たる抵抗R3に印加される電圧も誤差を持った値となってしまう。
【0009】
このように、上記復調回路210によってパルス密度変調信号をアナログ信号に変換する際には、こうした各種の誤差が無視できないものとなり、その復調されたアナログ信号自体が信頼性の低いものとなっている。
【0010】
一方、このような信頼性の低下は、上記フォトカプラにおいても生じる。すなわちフォトカプラには通常、そのスイッチングに伴い、(イ)オン動作に入るまでの時間、(ロ)オン状態になるまでの時間、(ハ)オフ動作に入るまでの時間、(ニ)オフ状態になるまでの時間、といった4種類の遅延が生じる。このうち、(イ)と(ハ)の遅延時間、及び(ロ)と(ニ)の遅延時間がそれぞれ同等であればパルス歪みによるデューティの誤差は生じないが、実際には数十から数百μsecのパルス遅延やパルス歪みが発生し、このことも復調精度の悪化の一因となっている。
【0011】
なお従来、例えば特許文献1に見られるように、デルタシグマ変復調回路を用いて電圧値等の物理量をモニタする装置も知られてはいる。しかしこのような装置であれ、信号伝送路を電気的に絶縁する手段として簡易かつ安易なフォトカプラを利用しようとすれば、上述した復調精度の悪化が避けられず、変復調回路としての複雑さとも併せて、なお改良の余地を残すものとなっている。
【0012】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、伝送路の電気的な絶縁手段としてフ
ォトカプラ等を用いる場合であれ、パルス密度変調信号をより高精度に復調することのできるパルス密度変復調回路、及び該パルス密度変復調回路を用いたインバータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、アナログ信号として抽出される物理量情報をその都度の信号の大きさに対応したパルス密度を有するとともに基本クロックに同期した信号であるパルス密度変調信号に変調するパルス密度変調回路と、この変調されたパルス密度変調信号の分解能に対応してその末尾を前記基本クロックの1周期の時間からなる論理「0」レベルのストップビットとするストップビット付与回路と、このストップビットの付与されたパルス密度変調信号を伝送する伝送路と、この伝送されたストップビットの付与されたパルス密度変調信号を受信して一定時間中のパルス数をカウントするとともに、この一定時間中に受信し得る最大パルス数をパルス密度100%として、前記最大パルス数に対する前記カウントしたパルス数の割合として前記抽出される物理量情報を復調する復調回路と、を備えることを要旨とする。
【0014】
上記構成によれば、パルス密度変調回路によって変調されたパルス密度変調信号のパルス密度が上記ストップビットの付与によってパルス数に変換され、この変換されたパルス数の割合として上記パルス密度変調された物理量情報を抽出することができるようになる。すなわち、伝送路を介して受信されたパルス密度変調信号を復調する上で、そのパルス幅に影響を受けることなく、単なるパルス数として上記物理量情報を復調することができるようになる。これにより、伝送路に電気的な絶縁を図る手段としてフォトカプラ等が設けられたとしても、このフォトカプラ等に起因するパルス遅延、パルス歪等の誤差がパルス密度変調信号に変調された物理量情報に影響を与えることがなく、高い精度のもとにパルス密度変調信号を復調することができるようになる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のパルス密度変復調回路において、前記ストップビット付与回路は、前記基本クロックを前記パルス密度変調信号の分解能を決定する所定の比率で分周した信号と前記パルス密度変調信号との論理積によって当該パルス密度変調信号に前記ストップビットを付与するものであることを要旨とする。
【0016】
上記構成によれば、パルス密度変調信号に対するストップビットの付与が、基本クロックが所定の比率で分周された信号とパルス密度変調信号との論理積によって行われる。これにより、ストップビットの付与されたパルス密度変調信号のパルス数と上記最大パルス数との割合の抽出としての復調を行う上で、その復調にかかる精度もより高められるようになる。なお、パルス密度変調信号の分解能を決定する比率としては、パルス密度変調信号の最小パルス幅(最小パルス密度)よりも小さいものが望ましく、これにより、パルス数と最大パルス数との割合の抽出としての復調をより高精度に行うことができるようになる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のパルス密度変復調回路において、前記パルス密度変調信号の分解能を決定する前記基本クロックの所定の分周の比率が「7:1」であることを要旨とする。
【0018】
上記構成によるように、パルス密度変調信号の分解能を決定する基本クロックの所定の分周の比率を「7:1」とすれば、従来から汎用されている先の図10に例示したような7段階での物理量表現も容易となる。すなわち、高い実用性を得ることができるようになる。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のパルス密度変復調回路において、前記復調回路は前記カウントするパルスのパルス幅を併せて測定するものであり、この測定したパルス幅をTwとして、そのパルス周期Ttを
Tt=Tw×(8/7)
として求めるとともに、前記パルス数をカウントする一定時間をTcとして、前記パルス密度100%とする前記一定時間中に受信し得る最大パルス数n100を
n100=Tc/Tt
として定めることを要旨とする。
【0020】
上記構成によるように、ストップビットの付与されたパルス密度変調信号の復調に際し、上記測定されたパルス幅Twに基づきそのパルス周期Ttを求め、このパルス周期Ttに基づいて同パルス数をカウントした一定時間Tc内で受信し得る最大パルス数n100を求めることとすれば、これら最大パルス数n100に対する上記カウントされたパルス数との割合の抽出による復調をより望ましいかたちで行うことができるようになる。
【0021】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のパルス密度変復調回路において、前記パルス密度変調回路が前記パルス密度変調信号に変調する物理量情報の最大値をPmax、同物理量情報の最小値をPminとするとき、前記復調回路は、前記一定時間中にカウントしたパルス数をnxとして、前記復調するその都度の物理量Pxを、前記最大パルス数n100に対する前記カウントしたパルス数nxの割合に基づき
Px=Pmax−(Pmax−Pmin)×(nx/n100)
として求めることを要旨とする。
【0022】
上記構成によるように、ストップビットの付与されたパルス密度変調信号から物理量情報への復調を、この物理量情報の最大値Pmax及び最小値Pminに基づくその都度の物理量の算出として行うこととすれば、一定時間中にカウントされたパルス数の割合の抽出による復調をより高い精度のもとに行うことができるようになる。
【0023】
請求項6に記載の発明は、車載バッテリから供給される直流電力を電力変換するインバータの駆動制御に必要とされる物理量情報をパルス密度変復調回路を介してモニタしつつ同インバータの駆動を制御するパルス密度変復調回路を用いたインバータ制御装置において、前記パルス密度変復調回路として請求項1〜5のいずれか一項に記載のパルス密度変復調回路を用いることを要旨とする。
【0024】
上記パルス密度変復調回路は、請求項6にかかる発明のように、車載バッテリから供給される直流電力を電力変換するインバータの駆動制御に必要とされる物理量情報をパルス密度変復調回路を介してモニタするインバータ制御装置に適用して特に有効であり、このインバータ制御装置を構成する低圧回路と高圧回路とがフォトカプラ等によって電気的に絶縁されたとしても、精度の高い物理量情報のモニタを行うことができるようになる。
【0025】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のパルス密度変復調回路を用いたインバータ制御装置において、前記インバータの駆動制御に必要とされる物理量情報が、当該インバータの温度を検出する温度検出用ダイオードの順方向電圧であることを要旨とする。
【0026】
通常、上記インバータ制御装置は、温度検出対象となるIGBT及び温度検出用ダイオード等を有する高圧回路と、この高圧回路から電気的に絶縁されて上記温度検出用ダイオードにより検出された温度情報に基づいて上記インバータの駆動を制御する低圧回路とによって構成される。この点、上記構成によれば、パルス密度変調信号に変調された物理量情報としての順方向電圧を、フォトカプラ等を介して高圧回路から低圧回路に伝送する場合であれ、この順方向電圧を高い精度のもとに復調し、モニタすることできるようになる。
【0027】
請求項8に記載の発明は、請求項6に記載のパルス密度変復調回路を用いたインバータ制御装置において、前記インバータの駆動制御に必要とされる物理量情報が、当該インバータの駆動電圧を生成する昇圧回路の昇圧電圧であることを要旨とする。
【0028】
上記パルス密度変復調回路は、請求項8にかかる発明のように、インバータの駆動制御に必要とされる物理量情報として、このインバータの駆動電圧を生成する昇圧回路の昇圧回路を用いるインバータ制御装置に適用しても有効であり、フォトカプラ等を介して物理量情報としての昇圧電圧を伝送する場合であれ、この昇圧電圧を高い精度のもとに復調し、モニタすることできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明にかかるインバータ制御装置の第1の実施の形態について、その構成を模式的に示すブロック図。
【図2】同実施の形態のパルス密度変復調回路で生成されるパルス密度変調信号の推移例を示すタイムチャート。
【図3】同実施の形態のクロック分周回路についてその構成例を示すブロック図。
【図4】同実施の形態のクロック分周回路による分周態様を示すタイムチャート。
【図5】(a)〜(d)は、同実施の形態にかかるパルス密度変調信号に対するストップビットの付与態様を示すタイムチャート。
【図6】同実施の形態のインバータ制御マイコンにおいてカウントの対象とされるストップビットの付与されたパルス密度変調信号を拡大して示すタイムチャート。
【図7】(a)〜(c)は、同実施の形態のインバータ制御マイコンにおいて実行されるストップビットの付与されたパルス密度変調信号の復調態様を示すタイムチャート。
【図8】本発明にかかるインバータ制御装置の第2の実施の形態について、その構成を模式的に示すブロック図。
【図9】従来のインバータ制御装置についてその構成を模式的に示すブロック図。
【図10】従来のパルス密度変復調回路で生成されるパルス密度変調信号のパルス密度と温度検出用ダイオードの検出に基づく温度情報との関係を示すタイムチャート。
【図11】本発明にかかるパルス密度変復調回路で生成されるストップビットの付与されたパルス密度変調信号と温度検出用のダイオードの検出に基づく温度情報との関係を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第1の実施の形態)
図1に、本発明にかかるインバータ制御装置を具体化した第1の実施の形態についてその構成を示す。
【0031】
図1に示されるように、このインバータ制御装置は、例えば駆動対象とするモータに数Kwから数十kw程度の電力を供給するために数十V〜数百V程度の範囲の電圧を必要とする高圧回路と、十数V以下の電圧範囲で動作してインバータ110の駆動を制御する低圧回路(制御部)とを有して構成されている。
【0032】
はじめに、本実施の形態にかかるインバータ制御装置としての全体の構成について説明する。
このインバータ制御装置では、まず、高圧回路側のインバータ110を構成するIGBT111に内蔵された温度検出用のダイオード112の順方向電圧VFが物理量情報として検出される。次いで、こうして検出されたダイオード112の順方向電圧VFがパルス密度変調回路120によってパルス密度変調(PDM)信号に変換されることにより、アナログ信号がパルス(2値化)信号に変換される。そしてここでは、先の図10に示されるように、温度検出用のダイオード112の順方向電圧VFが高い、すなわちIGBT111の温度が低いときにはオン密度(パルス密度)の高いパルス密度変調信号に変調されるとともに、温度検出用のダイオード112の順方向電圧VFが低い、すなわちIGBT111の温度が高いときにはオン密度の低いパルス密度変調信号に変調される。
【0033】
こうして上記電圧VF(温度情報)がパルス密度変調信号としてパルス密度変調回路120から出力されると、このパルス密度変調信号がクロック分周回路131とAND回路132によって構成されるストップビット付与回路130に入力され、ここで先の図10に対応して図11に例示するようなストップビット付きのパルス密度変調信号に変換される。次いで、このストップビット付与回路130からこうしたストップビット付きのパルス密度変調信号が出力されると、そのパルス信号に応じてスイッチング素子SW1がオン/オフされ、そのオン/オフ情報がフォトカプラIS1を介して高圧回路側から低圧回路側に伝送される。こうして低圧回路側にストップビット付きパルス密度変調信号が伝送されると、低圧回路ではこの変調信号がトランジスタTr1によりパルス電圧が調整されてインバータ制御マイコン300に取り込まれる。そして、インバータ制御マイコン300では、この取り込まれた変調信号を温度情報に復調して上記IGBT111の温度をモニタし、これが過熱もしくは低温であることが検知された場合には、駆動制限や駆動を停止するなどのフエールセーフを実行しつつ、IGBT111を駆動する上でのPWM(パルス幅変調)指令を生成する。
【0034】
ちなみに、IGBT111は駆動に伴う発熱が大きく、過熱に起因する性能劣化を招く虞がある。このため、インバータ制御マイコン300では、IGBT111の温度をモニタし、このIGBT111の温度が規定の温度を超える前に予めIGBT111の駆動制限や駆動停止を行うことによってIGBT111の性能劣化を抑制するようにしている。また、IGBT111の耐圧は、IGBT111の低温時に低下するために、低温時において常温時あるいは高温時と同等の電圧が印加されるような場合には、IGBT111の性能劣化を招く虞がある。このため、インバータ制御マイコン300では、IGBT111の温度をモニタし、このIGBT111の温度が規定の温度に達していない場合には、IGBT111に対する印加電圧を制限することによってIGBT111の性能劣化を抑制するようにしている。
【0035】
こうして生成されたIGBT駆動指令は、スイッチング素子SW2を通じてオン/オフ情報に変換され、このオン/オフ情報に変換された駆動指令がフォトカプラIS2を介して低圧回路から高圧回路に伝送(フィードバック)される。そして、高圧回路では、IGBT駆動回路140を通じて、このフィードバックされたIGBT駆動指令に基づくIGBT111の駆動、ひいてはインバータ110の駆動を実行することとなる。
【0036】
次に、本実施の形態によるパルス密度変調態様、並びにストップビットの付与態様、すなわち上記パルス密度変調回路120、並びにストップビット付与回路130の構成及び動作について詳述する。
【0037】
まず、上記パルス密度変調回路120によるパルス密度変調態様について、図2を参照して説明する。なお、この図2において、電圧VFは温度検出用ダイオード112の順方
向電圧VFの推移を、電圧VHは上記パルス密度変調回路120のスイッチ125がVH側に切り換えられたときの分圧値を、電圧VLはパルス密度変調回路120のスイッチ125がVL側に切り換えられたときの分圧値をそれぞれ示している。ここで、電圧VHは、温度検出用ダイオード112の温度が「15℃」のときの順方向電圧VFに相当する値となっており、また電圧VLは、温度検出用ダイオード112の温度が「150℃」のときの順方向電圧VFに相当する値となっている。
【0038】
このような前提のもと、上記パルス密度変調回路120において、温度検出用ダイオード112の順方向電圧VFが同パルス密度変調回路120を構成するコンパレータ121の反転入力端子に入力されると、この順方向電圧VFと同コンパレータ121の非反転入力端子に入力されるコンデンサ126の充電電圧VCとの比較が行われる。そして、例えばいま、スイッチ125がVH側にあり、コンデンサ126の充電電圧VCが順方向電圧VFよりも低い場合には、図2に示すように、コンパレータ121の出力が論理「1(ハイ)」レベルとなり、D型フリップフロップ122の出力もクロック発振器123から発振される基本クロックCLKに同期して論理「1」レベルとなる(t0)。こうしてD型フリップフロップ122の出力が論理「1」レベルとなると、この出力信号がNOT回路124によって反転され、この反転された論理「0(ロー)」レベルの信号によりスイッチ125がVH側に維持される。これにより、コンデンサ126も充電状態に維持される(t0−t1)。
【0039】
こうしてコンデンサ126が充電されることによって、温度検出用ダイオード112の順方向電圧VFよりもコンデンサ126の電圧VCが高くなった場合には、コンパレータ121の出力が論理「1」レベルから論理「0」レベルに反転し、D型フリップフロップ122の出力も上記クロックCLKに同期して論理「0」レベルとなる。こうしてD型フリップフロップ122の出力が論理「0」レベルとなると、この出力信号がNOT回路124によって反転され、この反転された論理「1」レベルの信号によりスイッチ125がVH側からVL側に切り換えられる。こうしてスイッチ125が切り換えられると、コンデンサ126は、電圧VL側の分圧抵抗の小さな時定数に基づき急速に放電し、その充電電圧VCも急速に低下するようになる。(t1−t2)。このコンデンサ126の放電に伴ってその電圧VCが温度検出用ダイオード112の順方向電圧VFよりも低下すると、コンパレータ121の出力が再び論理「1」レベルとなり、D型フリップフロップ122の出力もクロックCLKに同期して再び論理「1」レベルとなる。そしてこのときには、電圧VH側の分圧抵抗の大きな時定数に基づきコンデンサ126が緩やかに充電されるようになる(t2−t3)。
【0040】
このようにパルス密度変調回路120では、温度検出用ダイオード112の順方向電圧VFとコンデンサ126の電圧VCとの電位差、並びにCR回路としての時定数の変化に基づきコンデンサ126の充電時間及び放電時間が変化することによって、先の図10に例示したように、温度検出用ダイオード112の温度(電圧VF)に応じたパルス密度を有するパルス密度変調信号が生成されるようになる。
【0041】
次に、こうしてパルス密度変調回路120で生成されたパルス密度変調信号が入力されるストップビット付与回路130のうち、クロック分周回路131で行われるクロック分周態様について図3及び図4を参照しつつ説明する。
【0042】
図3に示すように、上記クロック分周回路131は、4つのD型フリップフロップ131a〜131dと、1つのOR回路131eとによって構成されている。このクロック分周回路131では、まず、先のクロック発振器123から発振される基本クロックCLKに基づきD型フリップフロップ131aから出力される信号Qaが、D型フリップフロップ131bのクロック端子及びOR回路131eの入力端子にそれぞれ入力されている。
また、こうしたD型フリップフロップ131aから出力された信号QaをクロックとしてD型フリップフロップ131bから出力される信号Qbが、D型フリップフロップ131cのクロック端子及びOR回路131eの入力端子にそれぞれ入力されている。一方、こうしたD型フリップフロップ131bから出力される信号QbをクロックとしてD型フリップフロップ131cから出力される信号Qcも、OR回路131eの入力端子に入力されている。他方、OR回路131eでは、これら各信号Qa〜Qcの論理和信号を生成し、その論理和信号QOをD型フリップフロップ131dのデータ端子Dに入力する。そして、このD型フリップフロップ131dには、上記基本クロックCLKがそのクロック端子に入力されており、このクロックCLKに同期して上記OR回路131eによる論理和信号が当該クロック分周回路131の出力Qoutとして出力される。
【0043】
次に、こうしたクロック分周回路131内で生成される各信号Qa〜Qc、QO、Qoutの各推移を図4を参照して説明する。
この図4に示すように、まず、クロック発振器123から発振される基本クロックCLKに基づきD型フリップフロップ131aから出力される信号Qaは、この基本クロックCLKが「2:2」に分周された信号となる。また、こうした信号QaをクロックとしてD型フリップフロップ131bから出力される信号Qbは、上記信号Qaがさらに「2:2」に分周された信号、すなわち、上記基本クロックCLKが「4:4」に分周された信号となる。さらに、こうした出力信号QbをクロックとしてD型フリップフロップ131cから出力される信号Qcは、上記信号Qbがさらに「2:2」に分周された信号、すなわち、上記基本クロックCLKが「8:8」に分周された信号となる。そして、こうしてクロック信号が各々の分周率によって分周された各信号Qa〜Qcの論理和が行われるOR回路131eの出力信号QOは、この図4に示すように、上記基本クロックCLKが「7:1」に分周された信号となる。そして、この基本クロックCLKが「7:1」に分周された信号QOと同クロックCLKとに基づいてD型フリップフロップ131dから出力される信号、すなわちクロック分周回路131の出力信号Qoutも、同じく基本クロックCLKが「7:1」に分周された信号となる。
【0044】
このように、このクロック分周回路131では、上記基本クロックCLKを「7:1」の比率で分周し、この分周した出力信号Qoutによって、上記ストップビット付与回路130としてパルス密度変調信号にストップビットを付与する際の分解能を決定する。
【0045】
次に、このような前提のもとに、ストップビット付与回路130で行われるパルス密度変調信号に対するストップビットの付与態様について、図5を参照しつつ説明する。なお、この図5において、図5(a)は、上記基本クロックCLKの推移を、図5(b)は、この基本クロックCLKが上記クロック分周回路131によって「7:1」の比率で分周された出力信号Qoutの推移をそれぞれ示している。また、図5(c)は、パルス密度変調回路120によって生成(変調)されたパルス密度変調信号Voutの推移を示しており、そして図5(d)は、このパルス密度変調信号にストップビットが付与された信号SVoutの推移を示している。
【0046】
まず、先の図1に示したように、ストップビット付与回路130では、クロック分周回路131にて生成された「7:1」の比率のもとに分周された出力信号Qoutと、パルス密度変調回路120にて生成されたパルス密度変調信号VoutとがAND回路132に入力されることによって、パルス密度変調信号に対するストップビットの付与が行われる。すなわち、図5(d)に示すように、同図5(b)に示す基本クロックCLKが「7:1」の比率のもとに分周された信号Qoutと同図5(c)に示すパルス密度変調回路120にて生成されたパルス密度変調信号Voutとの論理積、すなわちパルス密度変調信号Voutにストップビットの付与された信号SVoutが生成される。ちなみにこの生成された信号SVoutとは、上記変調されたパルス密度変調信号の分解能に対応して
その末尾が上記基本クロックCLKの1周期からなる論理「0」レベルのストップビットが付与された信号となっている。
【0047】
次に、インバータ制御マイコン300によって行われる上記ストップビットの付与されたパルス密度変調信号SVoutの復調態様を図6及び図7を参照して説明する。
まず、温度検出用ダイオード112の順方向電圧VFに基づく温度情報が例えば「19.2℃」であったとすると、この順方向電圧VFがパルス密度変調されたパルス密度変調信号Voutのパルス密度は、図7(a)に示すように「75%」となっている。そして、このパルス密度変調信号Voutにストップビットが付与されると、同図7(b)に示すように、パルス密度変調信号Voutのパルス幅(パルス密度)が7分割された信号SVoutに変換される。こうしてストップビットの付与されたパルス密度変調信号SVoutが前記フォトカプラIS1を介してインバータ制御マイコン300に取り込まれる。そして前述のように、このインバータ制御マイコン300により、ストップビットの付与されたパルス密度変調信号SVoutから物理量情報への復調、すなわち温度検出用ダイオード112の順方向電圧VFへの復調が実行される。
【0048】
この復調に際しては、まず、図7(c)に示すように、一定時間Tc中にインバータ制御マイコン300に取り込まれた信号SVoutのパルス数nxがカウントされるとともに(図7(c)の例ではパルス数「21」)、図6に拡大して示すように、このカウントされるパルスの幅Twが測定される。そして、こうして測定されたパルス幅Twに基づいて、同図6に示すカウント対象とされたパルスのうちの一つのパルスの周期Ttが、次式(1)によって求められる。
【0049】
Tt=Tw×(8/7) …(1)
また、上記パルス密度変調信号のパルス密度を「100%」としたときに上記一定時間Tc中にインバータ制御マイコン300に取り込まれ得る最大パルス数n100(図7(c))が、次式(2)によって求められる。
【0050】
n100=Tc/Tt …(2)
こうして一定時間Tc中の上記パルス数nxと上記最大パルス数n100(ここでの例では「28」)とが求められると、温度検出用ダイオード112の順方向電圧VFの最大値をVFmax、同順方向電圧VFの最小値をVFminとするとき、復調するその都度の温度検出用ダイオード112の順方向電圧VFxが、次式(3)によって求められる。
【0051】
VFx=VFmax−(VFmax−VFmin)×(nx/n100)…(3)
なお、上記最大パルス数n100に対する上記カウントされたパルス数nxの割合は、図7(c)からも明らかなように約「75%」となっており、ストップビットが付与される以前のパルス密度変調信号Voutのパルス密度と等しい割合となっていることが確認できる。そしてこれにより、パルス密度変調信号のパルス密度(ここでの例では「75%」)に代えて、上記最大パルス数n100に対する上記カウントされたパルス数nxの割合に基づくパルス密度変調信号の復調が行われるようになる。
【0052】
以上説明したように、本実施の形態にかかるインバータ制御装置によれば、そのパルス密度変復調回路も含めて、以下の効果が得られるようになる。
(1)物理量情報としての温度検出用ダイオード112の順方向電圧VFをパルス密度変調回路120によりパルス密度変調信号Voutに変調するとともに、これにストップビットを付与することとした。そして、このストップビットを付与したパルス密度変調信号SVoutの一定時間Tc中の最大パルス数に対する同時間Tc中にカウントされたパルス数nxの割合に基づきその復調を行うこととした。これにより、インバータ制御装置を構成する高圧回路側と低圧回路側との伝送路にこれらを電気的に絶縁するフォトカプラIS1を用いる場合であれ、このフォトカプラIS1に起因するパルス遅延、パルス歪等の誤差が生じたとしてもその影響を受けることなく、高い精度のもとにその復調を行うことができるようになる。
【0053】
(2)パルス密度変調信号Voutの分解能を決定する基本クロックの所定の分周の比率を「7:1」とすることとした。これにより、ストップビットの付与されたパルス密度変調信号SVoutのパルス数nxと最大パルス数n100との割合の抽出としての復調を実情に即したより望ましいかたちで行うことができるようになる。
【0054】
(3)ストップビットの付与されたパルス密度変調信号SVoutの一定時間Tc中の最大パルス数に対する同時間Tc中にカウントされたパルス数nxの割合を、同時間Tc中にカウント対象とされたパルスのパルス幅Twとその周期Ttを用いて算出することとした。これにより、上記インバータ制御マイコン300によるストップビットの付与されたパルス密度変調信号SVoutの復調をより容易かつ高精度に行うことができるようになる。
【0055】
(4)上記態様のもとに変復調される物理量情報、すなわち温度検出用ダイオード112の順方向電圧VFを用いてインバータ制御マイコン300によるインバータの駆動制御を行うこととした。これにより、高圧回路と低圧回路とをフォトカプラIS1によって絶縁しつつも、高い精度のもとに信頼性の高いインバータの駆動制御を行うことができるようになる。
【0056】
(第2の実施の形態)
以下、本発明にかかるインバータ制御装置を具体化した第2の実施の形態を図8を参照して説明する。なお、この第2の実施の形態は、インバータの駆動制御に必要とされる物理量情報として、同インバータの駆動電圧(高圧電源電圧)を生成する昇圧回路の昇圧電圧を用いたものである。
【0057】
図8は、先の図1に対応する図として、この第2の実施の形態にかかるインバータ制御装置の構成を示したものである。なお、この図8において、先の図1に示した各要素と同一の要素についてはそれぞれ同一の符号を付して示しており、それら要素についての重複する説明は割愛する。
【0058】
通常、車両に搭載されるインバータ制御装置では、インバータの駆動に必要十分な電圧を同インバータに印加するために、バッテリ電圧である例えば「200V」の電圧を昇圧回路(DC−DCコンバータ)によって例えば「650V」程度まで昇圧することによって、インバータ用の高圧電源電圧を確保するようにしている。このため、バッテリの電圧をインバータ用の高圧電源電圧まで正確に昇圧すべく、この高圧電源電圧の監視に基づき昇圧回路の駆動を制御することが望ましい。そこで、本実施の形態では、こうしたインバータ用の高圧電源電圧を、インバータの駆動制御に必要とされる物理量情報として高圧回路側で検出し、この検出値を低圧回路側のインバータ制御マイコン300に伝送することとする。
【0059】
すなわち、図8に示すように、このインバータ制御装置では、まず、高圧回路側のバッ
テリBTの電圧が昇圧回路150によって例えば「500V」の高圧電源電圧V1まで昇圧される。そして、この昇圧された電圧V1をインバータ110に印加するとともに、分圧抵抗Rdによってこの電圧V1を例えば200分の1に分圧し、この分圧電圧V2(2.5V)を物理量情報として抽出する。次いで、こうして抽出した電圧V2をパルス密度変調回路120によってパルス密度変調(PDM)信号に変調する。ここで、本実施の形態においては、パルス密度変調回路120を構成するスイッチ125によって切り換えられる電圧値がVH側で「5V」、VL側で「0V」となるように設定される。そしてここでは、パルス密度変調回路120に取り込まれた「2.5V」の電圧が、デューティ「50%」となるパルス密度変調信号Voutに変調される。こうして変調されたパルス密度変調信号Voutがパルス密度変調回路120から出力されると、この信号Voutに対して先の第1の実施の形態に準じる態様でストップビットが付与され、このストップビットの付与されたパルス密度変調信号SVoutがフォトカプラIS1を介してインバータ制御マイコン300に取り込まれる。そして、インバータ制御マイコン300では、先の第1の実施の形態に準じる態様で、ストップビットの付与されたパルス密度変調信号SVoutから物量量情報としての電圧V2への復調が行われ、この復調された電圧V2に基づきインバータ110に印加される高圧電源電圧V1が求められる。
【0060】
こうして高圧電源電圧V1が求められると、この高圧電源電圧V1に基づいてインバータ制御マイコン300による昇圧用IGBT(図示省略)の駆動指令が生成される。他方、この生成された駆動指令は、スイッチング素子SW2を通じてオン/オフ情報に変換され、このオン/オフ情報に変換された駆動指令がフォトカプラIS2を介して低圧回路から高圧回路に伝送(フィードバック)される。そして、高圧回路では、昇圧用IGBT駆動回路160を通じて、このフィードバックされた駆動指令に基づくIGBT、ひいては昇圧回路の駆動を実行することとなる。
【0061】
以上説明したように、この第2の実施の形態にかかるインバータ制御装置によっても、第1の実施の形態による前記(1)〜(3)の効果に準じた効果が得られるとともに、前記(4)の効果に代えて以下のような効果が得られるようになる。
【0062】
(5)上記態様のもとに変復調される物理量情報、すなわち高圧回路側に設けられた昇圧回路150からインバータ110に印加される高圧電源情報を用いてインバータ制御マイコン300によるインバータの駆動制御を行うこととした。これにより、高圧回路と低圧回路とをフォトカプラIS1によって絶縁しつつも、高い精度のもとに信頼性の高いインバータの駆動制御を行うことができるようになる。
【0063】
(他の実施の形態)
なお、上記実施の形態は、以下のような形態をもって実施することもできる。
・上記各実施の形態では、パルス密度変調信号Voutの分解能を決定するクロック発振器123による基本クロックの所定の分周の比率を「7:1」として設定した。上記クロック分周回路131によって生成される基本クロックに対する分周の比率としては、パルス密度変調信号Voutとの論理積によって、このパルス密度変調信号Voutを所定の間隔毎に分割することが可能な範囲であればよく、基本クロックに対する分周の比率は何段階のパルス密度に変調するかに応じて任意である。
【0064】
・上記第1の実施の形態では、上記変復調の対象とされる物理量情報として温度検出用ダイオード112の順方向電圧VFを採用することとし、また、上記第2の実施の形態では、変復調の対象とされる物理量情報を分圧抵抗Rdによって分圧された電圧V2を採用することとした。上記変復調の対象とされる物理量情報としては、インバータの駆動制御に必要とされる物理量情報であればよく、これらに限定されるものではない。
【0065】
・上記各実施の形態では、本発明に係るパルス密度変復調回路を、上記インバータ制御装置に適用する場合について例示したが、こうしたインバータ制御装置に限られず、アナログ信号として抽出される物理量情報をフォトカプラ等の絶縁手段を介して変復調するものであれば、本発明の適用は可能である。
【符号の説明】
【0066】
110…インバータ、111…IGBT、112…温度検出用ダイオード、120…パルス密度変調回路、121…コンパレータ、122…D型フリップフロップ、123…クロック発振器、124…NOT回路、125…スイッチ、126…コンデンサ、130…ストップビット付与回路、131…クロック分周回路、131a〜131d…D型フリップフロップ、131e…OR回路、132…AND回路、140…IGBT駆動回路、150…昇圧回路、160…昇圧用IGBT駆動回路、300…インバータ制御マイコン、BT…バッテリ、Tr1…トランジスタ、Rd…分圧抵抗、IS1、IS2…フォトカプラ、SW1、SW2…スイッチング素子。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば温度情報等、物理量情報の伝送に用いられるパルス密度変復調回路、及び該変復調回路を用いて例えば電気自動車やハイブリッド車等の車両内での電力変換を行うインバータの駆動を制御するパルス密度変復調回路を用いたインバータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記インバータ制御装置としては、例えば電気自動車やハイブリッド車などにあって、車載バッテリから供給される直流電力をモータ駆動用の三相交流等に変換するなどの電力変換を行うインバータを対象としてその駆動を制御する装置が知られている。このようなインバータ制御装置は通常、駆動対象であるモータに数Kwから数十kw程度の電力を供給するために数十V〜数百V程度の範囲の電圧を必要とする高圧回路と、十数V以下の電圧範囲で動作してモータの駆動を制御する低圧回路(制御部)とを有して構成される。そして、高圧回路から低圧回路に伝送される物理量、例えばインバータに用いられるIGBT(絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ)等の温度検出用のダイオードの順方向電圧に対応した温度情報に基づいてインバータの駆動態様、ひいてはモータの駆動態様に関する制御が実行される。一方、高圧回路と低圧回路とでは、必要とされる電圧の範囲が大幅に異なるために、これら高圧回路と低圧回路とが電気的に絶縁されていないような場合には、低圧回路側にある制御部に過電圧が印加される虞がある。そこで、例えばフォトカプラ等を介して高圧回路と低圧回路とを電気的に絶縁して、上記温度検出用のダイオードの温度情報(電圧情報)を高圧回路側から低圧回路側に伝送するようにしている。図9に、このフォトカプラを用いて高圧回路と低圧回路とを電気的に絶縁して上記インバータの制御を行うインバータ制御装置の一例についてその構成の概要を示す。
【0003】
図9に示すように、このインバータ制御装置では、まず、高圧回路側のインバータ110を構成するIGBT111に内蔵された温度検出用のダイオード112の順方向電圧VFが検出される。次いで、こうして検出されたダイオード112の順方向電圧VFがパルス密度変調回路120によってパルス密度変調(PDM)信号に変換されることにより、アナログ信号がパルス(2値化)信号に一旦変換される。すなわちここでは、温度検出用のダイオード112の順方向電圧VFが高い、すなわちIGBT111の温度が低いときはオン密度の高いパルス密度変調信号に変調されるとともに、温度検出用のダイオード112の順方向電圧VFが低い、すなわちIGBT111の温度が高いときはオン密度の低いパルス密度変調信号に変調される。
【0004】
図10は、こうしたパルス密度変調信号についてその一例を示したものである。同図10に示されるように、ここでは7段階のパルス密度に変調する場合について示しており、例えばIGBT111の温度が「15℃」のときはパルス密度変調信号のオン密度(パルス密度)が「90%」となっており、IGBT111の温度が上昇するにつれてパルス密度変調信号のオン密度が次第に低下するようになる。そして、IGBT111の温度が「150℃」のときには、オン密度が「10%」となる。
【0005】
こうして上記電圧VF(温度情報)がパルス密度変調信号としてパルス密度変調回路120から出力されると、そのパルス密度(パルス幅)に応じてスイッチング素子SW1がオン/オフされ、そのオン/オフ情報がフォトカプラIS1を介して高圧回路側から低圧回路側に伝送される。こうして低圧回路側にパルス密度変調信号が伝送されると、低圧回路では復調回路210により、上記変調されたパルス密度(オン/オフ密度)に応じて電圧値が推移する、すなわち上記電圧VFの推移に対応したアナログ信号として同パルス密
度変調信号が復調される。そして、この復調されたアナログ信号がIGBT111の温度情報としてインバータ制御マイコン220に取り込まれるとともにその内部でA/D(アナログ/デジタル)変換され、その温度情報に基づいて同マイコン220によるIGBT111の駆動指令が生成される。他方、この生成された駆動指令はスイッチング素子SW2を通じてオン/オフ情報に変換され、このオン/オフ情報に変換された駆動指令がフォトカプラIS2を介して低圧回路から高圧回路に伝送(フィードバック)される。そして、高圧回路では、IGBT駆動回路140を通じて、このフィードバックされた駆動指令に基づくIGBT111、ひいてはインバータ110の駆動を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−306709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、フォトカプラを用いて高圧回路側から低圧回路側に電圧情報(温度情報)を伝送することとすれば、これら高圧回路と低圧回路とを電気的に絶縁した状態で、高圧回路側にあるIGBTの温度を低圧回路側にあるマイコンにより監視することができるようにはなる。
【0008】
しかし、上記パルス密度変調信号を復調する復調回路210は、図9にその構成を併せて示すように、トランジスタQ1をはじめ、分圧回路(R4〜R6)やフィルタ回路(R7、C7)等からなるアナログ回路によって構成されている。このため、同復調回路210を通じてパルス密度変調信号をアナログ信号に復調する際、上記トランジスタQ1がオン状態となるたびにそのコレクタ−エミッタ間に飽和電圧が発生し、この飽和電圧がばらつきを持つために、抵抗R4に印加される電圧も電源電圧からこの飽和電圧のばらつきを引いた誤差を持つ値となってしまう。しかも、抵抗R4及びR5による分圧値、及び抵抗R5及びR6による分圧値も、それら抵抗自身のばらつきに起因するばらつきを持つようになるために、結局は、その入力信号たる抵抗R3に印加される電圧も誤差を持った値となってしまう。
【0009】
このように、上記復調回路210によってパルス密度変調信号をアナログ信号に変換する際には、こうした各種の誤差が無視できないものとなり、その復調されたアナログ信号自体が信頼性の低いものとなっている。
【0010】
一方、このような信頼性の低下は、上記フォトカプラにおいても生じる。すなわちフォトカプラには通常、そのスイッチングに伴い、(イ)オン動作に入るまでの時間、(ロ)オン状態になるまでの時間、(ハ)オフ動作に入るまでの時間、(ニ)オフ状態になるまでの時間、といった4種類の遅延が生じる。このうち、(イ)と(ハ)の遅延時間、及び(ロ)と(ニ)の遅延時間がそれぞれ同等であればパルス歪みによるデューティの誤差は生じないが、実際には数十から数百μsecのパルス遅延やパルス歪みが発生し、このことも復調精度の悪化の一因となっている。
【0011】
なお従来、例えば特許文献1に見られるように、デルタシグマ変復調回路を用いて電圧値等の物理量をモニタする装置も知られてはいる。しかしこのような装置であれ、信号伝送路を電気的に絶縁する手段として簡易かつ安易なフォトカプラを利用しようとすれば、上述した復調精度の悪化が避けられず、変復調回路としての複雑さとも併せて、なお改良の余地を残すものとなっている。
【0012】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、伝送路の電気的な絶縁手段としてフ
ォトカプラ等を用いる場合であれ、パルス密度変調信号をより高精度に復調することのできるパルス密度変復調回路、及び該パルス密度変復調回路を用いたインバータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、アナログ信号として抽出される物理量情報をその都度の信号の大きさに対応したパルス密度を有するとともに基本クロックに同期した信号であるパルス密度変調信号に変調するパルス密度変調回路と、この変調されたパルス密度変調信号の分解能に対応してその末尾を前記基本クロックの1周期の時間からなる論理「0」レベルのストップビットとするストップビット付与回路と、このストップビットの付与されたパルス密度変調信号を伝送する伝送路と、この伝送されたストップビットの付与されたパルス密度変調信号を受信して一定時間中のパルス数をカウントするとともに、この一定時間中に受信し得る最大パルス数をパルス密度100%として、前記最大パルス数に対する前記カウントしたパルス数の割合として前記抽出される物理量情報を復調する復調回路と、を備えることを要旨とする。
【0014】
上記構成によれば、パルス密度変調回路によって変調されたパルス密度変調信号のパルス密度が上記ストップビットの付与によってパルス数に変換され、この変換されたパルス数の割合として上記パルス密度変調された物理量情報を抽出することができるようになる。すなわち、伝送路を介して受信されたパルス密度変調信号を復調する上で、そのパルス幅に影響を受けることなく、単なるパルス数として上記物理量情報を復調することができるようになる。これにより、伝送路に電気的な絶縁を図る手段としてフォトカプラ等が設けられたとしても、このフォトカプラ等に起因するパルス遅延、パルス歪等の誤差がパルス密度変調信号に変調された物理量情報に影響を与えることがなく、高い精度のもとにパルス密度変調信号を復調することができるようになる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のパルス密度変復調回路において、前記ストップビット付与回路は、前記基本クロックを前記パルス密度変調信号の分解能を決定する所定の比率で分周した信号と前記パルス密度変調信号との論理積によって当該パルス密度変調信号に前記ストップビットを付与するものであることを要旨とする。
【0016】
上記構成によれば、パルス密度変調信号に対するストップビットの付与が、基本クロックが所定の比率で分周された信号とパルス密度変調信号との論理積によって行われる。これにより、ストップビットの付与されたパルス密度変調信号のパルス数と上記最大パルス数との割合の抽出としての復調を行う上で、その復調にかかる精度もより高められるようになる。なお、パルス密度変調信号の分解能を決定する比率としては、パルス密度変調信号の最小パルス幅(最小パルス密度)よりも小さいものが望ましく、これにより、パルス数と最大パルス数との割合の抽出としての復調をより高精度に行うことができるようになる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のパルス密度変復調回路において、前記パルス密度変調信号の分解能を決定する前記基本クロックの所定の分周の比率が「7:1」であることを要旨とする。
【0018】
上記構成によるように、パルス密度変調信号の分解能を決定する基本クロックの所定の分周の比率を「7:1」とすれば、従来から汎用されている先の図10に例示したような7段階での物理量表現も容易となる。すなわち、高い実用性を得ることができるようになる。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のパルス密度変復調回路において、前記復調回路は前記カウントするパルスのパルス幅を併せて測定するものであり、この測定したパルス幅をTwとして、そのパルス周期Ttを
Tt=Tw×(8/7)
として求めるとともに、前記パルス数をカウントする一定時間をTcとして、前記パルス密度100%とする前記一定時間中に受信し得る最大パルス数n100を
n100=Tc/Tt
として定めることを要旨とする。
【0020】
上記構成によるように、ストップビットの付与されたパルス密度変調信号の復調に際し、上記測定されたパルス幅Twに基づきそのパルス周期Ttを求め、このパルス周期Ttに基づいて同パルス数をカウントした一定時間Tc内で受信し得る最大パルス数n100を求めることとすれば、これら最大パルス数n100に対する上記カウントされたパルス数との割合の抽出による復調をより望ましいかたちで行うことができるようになる。
【0021】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のパルス密度変復調回路において、前記パルス密度変調回路が前記パルス密度変調信号に変調する物理量情報の最大値をPmax、同物理量情報の最小値をPminとするとき、前記復調回路は、前記一定時間中にカウントしたパルス数をnxとして、前記復調するその都度の物理量Pxを、前記最大パルス数n100に対する前記カウントしたパルス数nxの割合に基づき
Px=Pmax−(Pmax−Pmin)×(nx/n100)
として求めることを要旨とする。
【0022】
上記構成によるように、ストップビットの付与されたパルス密度変調信号から物理量情報への復調を、この物理量情報の最大値Pmax及び最小値Pminに基づくその都度の物理量の算出として行うこととすれば、一定時間中にカウントされたパルス数の割合の抽出による復調をより高い精度のもとに行うことができるようになる。
【0023】
請求項6に記載の発明は、車載バッテリから供給される直流電力を電力変換するインバータの駆動制御に必要とされる物理量情報をパルス密度変復調回路を介してモニタしつつ同インバータの駆動を制御するパルス密度変復調回路を用いたインバータ制御装置において、前記パルス密度変復調回路として請求項1〜5のいずれか一項に記載のパルス密度変復調回路を用いることを要旨とする。
【0024】
上記パルス密度変復調回路は、請求項6にかかる発明のように、車載バッテリから供給される直流電力を電力変換するインバータの駆動制御に必要とされる物理量情報をパルス密度変復調回路を介してモニタするインバータ制御装置に適用して特に有効であり、このインバータ制御装置を構成する低圧回路と高圧回路とがフォトカプラ等によって電気的に絶縁されたとしても、精度の高い物理量情報のモニタを行うことができるようになる。
【0025】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のパルス密度変復調回路を用いたインバータ制御装置において、前記インバータの駆動制御に必要とされる物理量情報が、当該インバータの温度を検出する温度検出用ダイオードの順方向電圧であることを要旨とする。
【0026】
通常、上記インバータ制御装置は、温度検出対象となるIGBT及び温度検出用ダイオード等を有する高圧回路と、この高圧回路から電気的に絶縁されて上記温度検出用ダイオードにより検出された温度情報に基づいて上記インバータの駆動を制御する低圧回路とによって構成される。この点、上記構成によれば、パルス密度変調信号に変調された物理量情報としての順方向電圧を、フォトカプラ等を介して高圧回路から低圧回路に伝送する場合であれ、この順方向電圧を高い精度のもとに復調し、モニタすることできるようになる。
【0027】
請求項8に記載の発明は、請求項6に記載のパルス密度変復調回路を用いたインバータ制御装置において、前記インバータの駆動制御に必要とされる物理量情報が、当該インバータの駆動電圧を生成する昇圧回路の昇圧電圧であることを要旨とする。
【0028】
上記パルス密度変復調回路は、請求項8にかかる発明のように、インバータの駆動制御に必要とされる物理量情報として、このインバータの駆動電圧を生成する昇圧回路の昇圧回路を用いるインバータ制御装置に適用しても有効であり、フォトカプラ等を介して物理量情報としての昇圧電圧を伝送する場合であれ、この昇圧電圧を高い精度のもとに復調し、モニタすることできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明にかかるインバータ制御装置の第1の実施の形態について、その構成を模式的に示すブロック図。
【図2】同実施の形態のパルス密度変復調回路で生成されるパルス密度変調信号の推移例を示すタイムチャート。
【図3】同実施の形態のクロック分周回路についてその構成例を示すブロック図。
【図4】同実施の形態のクロック分周回路による分周態様を示すタイムチャート。
【図5】(a)〜(d)は、同実施の形態にかかるパルス密度変調信号に対するストップビットの付与態様を示すタイムチャート。
【図6】同実施の形態のインバータ制御マイコンにおいてカウントの対象とされるストップビットの付与されたパルス密度変調信号を拡大して示すタイムチャート。
【図7】(a)〜(c)は、同実施の形態のインバータ制御マイコンにおいて実行されるストップビットの付与されたパルス密度変調信号の復調態様を示すタイムチャート。
【図8】本発明にかかるインバータ制御装置の第2の実施の形態について、その構成を模式的に示すブロック図。
【図9】従来のインバータ制御装置についてその構成を模式的に示すブロック図。
【図10】従来のパルス密度変復調回路で生成されるパルス密度変調信号のパルス密度と温度検出用ダイオードの検出に基づく温度情報との関係を示すタイムチャート。
【図11】本発明にかかるパルス密度変復調回路で生成されるストップビットの付与されたパルス密度変調信号と温度検出用のダイオードの検出に基づく温度情報との関係を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第1の実施の形態)
図1に、本発明にかかるインバータ制御装置を具体化した第1の実施の形態についてその構成を示す。
【0031】
図1に示されるように、このインバータ制御装置は、例えば駆動対象とするモータに数Kwから数十kw程度の電力を供給するために数十V〜数百V程度の範囲の電圧を必要とする高圧回路と、十数V以下の電圧範囲で動作してインバータ110の駆動を制御する低圧回路(制御部)とを有して構成されている。
【0032】
はじめに、本実施の形態にかかるインバータ制御装置としての全体の構成について説明する。
このインバータ制御装置では、まず、高圧回路側のインバータ110を構成するIGBT111に内蔵された温度検出用のダイオード112の順方向電圧VFが物理量情報として検出される。次いで、こうして検出されたダイオード112の順方向電圧VFがパルス密度変調回路120によってパルス密度変調(PDM)信号に変換されることにより、アナログ信号がパルス(2値化)信号に変換される。そしてここでは、先の図10に示されるように、温度検出用のダイオード112の順方向電圧VFが高い、すなわちIGBT111の温度が低いときにはオン密度(パルス密度)の高いパルス密度変調信号に変調されるとともに、温度検出用のダイオード112の順方向電圧VFが低い、すなわちIGBT111の温度が高いときにはオン密度の低いパルス密度変調信号に変調される。
【0033】
こうして上記電圧VF(温度情報)がパルス密度変調信号としてパルス密度変調回路120から出力されると、このパルス密度変調信号がクロック分周回路131とAND回路132によって構成されるストップビット付与回路130に入力され、ここで先の図10に対応して図11に例示するようなストップビット付きのパルス密度変調信号に変換される。次いで、このストップビット付与回路130からこうしたストップビット付きのパルス密度変調信号が出力されると、そのパルス信号に応じてスイッチング素子SW1がオン/オフされ、そのオン/オフ情報がフォトカプラIS1を介して高圧回路側から低圧回路側に伝送される。こうして低圧回路側にストップビット付きパルス密度変調信号が伝送されると、低圧回路ではこの変調信号がトランジスタTr1によりパルス電圧が調整されてインバータ制御マイコン300に取り込まれる。そして、インバータ制御マイコン300では、この取り込まれた変調信号を温度情報に復調して上記IGBT111の温度をモニタし、これが過熱もしくは低温であることが検知された場合には、駆動制限や駆動を停止するなどのフエールセーフを実行しつつ、IGBT111を駆動する上でのPWM(パルス幅変調)指令を生成する。
【0034】
ちなみに、IGBT111は駆動に伴う発熱が大きく、過熱に起因する性能劣化を招く虞がある。このため、インバータ制御マイコン300では、IGBT111の温度をモニタし、このIGBT111の温度が規定の温度を超える前に予めIGBT111の駆動制限や駆動停止を行うことによってIGBT111の性能劣化を抑制するようにしている。また、IGBT111の耐圧は、IGBT111の低温時に低下するために、低温時において常温時あるいは高温時と同等の電圧が印加されるような場合には、IGBT111の性能劣化を招く虞がある。このため、インバータ制御マイコン300では、IGBT111の温度をモニタし、このIGBT111の温度が規定の温度に達していない場合には、IGBT111に対する印加電圧を制限することによってIGBT111の性能劣化を抑制するようにしている。
【0035】
こうして生成されたIGBT駆動指令は、スイッチング素子SW2を通じてオン/オフ情報に変換され、このオン/オフ情報に変換された駆動指令がフォトカプラIS2を介して低圧回路から高圧回路に伝送(フィードバック)される。そして、高圧回路では、IGBT駆動回路140を通じて、このフィードバックされたIGBT駆動指令に基づくIGBT111の駆動、ひいてはインバータ110の駆動を実行することとなる。
【0036】
次に、本実施の形態によるパルス密度変調態様、並びにストップビットの付与態様、すなわち上記パルス密度変調回路120、並びにストップビット付与回路130の構成及び動作について詳述する。
【0037】
まず、上記パルス密度変調回路120によるパルス密度変調態様について、図2を参照して説明する。なお、この図2において、電圧VFは温度検出用ダイオード112の順方
向電圧VFの推移を、電圧VHは上記パルス密度変調回路120のスイッチ125がVH側に切り換えられたときの分圧値を、電圧VLはパルス密度変調回路120のスイッチ125がVL側に切り換えられたときの分圧値をそれぞれ示している。ここで、電圧VHは、温度検出用ダイオード112の温度が「15℃」のときの順方向電圧VFに相当する値となっており、また電圧VLは、温度検出用ダイオード112の温度が「150℃」のときの順方向電圧VFに相当する値となっている。
【0038】
このような前提のもと、上記パルス密度変調回路120において、温度検出用ダイオード112の順方向電圧VFが同パルス密度変調回路120を構成するコンパレータ121の反転入力端子に入力されると、この順方向電圧VFと同コンパレータ121の非反転入力端子に入力されるコンデンサ126の充電電圧VCとの比較が行われる。そして、例えばいま、スイッチ125がVH側にあり、コンデンサ126の充電電圧VCが順方向電圧VFよりも低い場合には、図2に示すように、コンパレータ121の出力が論理「1(ハイ)」レベルとなり、D型フリップフロップ122の出力もクロック発振器123から発振される基本クロックCLKに同期して論理「1」レベルとなる(t0)。こうしてD型フリップフロップ122の出力が論理「1」レベルとなると、この出力信号がNOT回路124によって反転され、この反転された論理「0(ロー)」レベルの信号によりスイッチ125がVH側に維持される。これにより、コンデンサ126も充電状態に維持される(t0−t1)。
【0039】
こうしてコンデンサ126が充電されることによって、温度検出用ダイオード112の順方向電圧VFよりもコンデンサ126の電圧VCが高くなった場合には、コンパレータ121の出力が論理「1」レベルから論理「0」レベルに反転し、D型フリップフロップ122の出力も上記クロックCLKに同期して論理「0」レベルとなる。こうしてD型フリップフロップ122の出力が論理「0」レベルとなると、この出力信号がNOT回路124によって反転され、この反転された論理「1」レベルの信号によりスイッチ125がVH側からVL側に切り換えられる。こうしてスイッチ125が切り換えられると、コンデンサ126は、電圧VL側の分圧抵抗の小さな時定数に基づき急速に放電し、その充電電圧VCも急速に低下するようになる。(t1−t2)。このコンデンサ126の放電に伴ってその電圧VCが温度検出用ダイオード112の順方向電圧VFよりも低下すると、コンパレータ121の出力が再び論理「1」レベルとなり、D型フリップフロップ122の出力もクロックCLKに同期して再び論理「1」レベルとなる。そしてこのときには、電圧VH側の分圧抵抗の大きな時定数に基づきコンデンサ126が緩やかに充電されるようになる(t2−t3)。
【0040】
このようにパルス密度変調回路120では、温度検出用ダイオード112の順方向電圧VFとコンデンサ126の電圧VCとの電位差、並びにCR回路としての時定数の変化に基づきコンデンサ126の充電時間及び放電時間が変化することによって、先の図10に例示したように、温度検出用ダイオード112の温度(電圧VF)に応じたパルス密度を有するパルス密度変調信号が生成されるようになる。
【0041】
次に、こうしてパルス密度変調回路120で生成されたパルス密度変調信号が入力されるストップビット付与回路130のうち、クロック分周回路131で行われるクロック分周態様について図3及び図4を参照しつつ説明する。
【0042】
図3に示すように、上記クロック分周回路131は、4つのD型フリップフロップ131a〜131dと、1つのOR回路131eとによって構成されている。このクロック分周回路131では、まず、先のクロック発振器123から発振される基本クロックCLKに基づきD型フリップフロップ131aから出力される信号Qaが、D型フリップフロップ131bのクロック端子及びOR回路131eの入力端子にそれぞれ入力されている。
また、こうしたD型フリップフロップ131aから出力された信号QaをクロックとしてD型フリップフロップ131bから出力される信号Qbが、D型フリップフロップ131cのクロック端子及びOR回路131eの入力端子にそれぞれ入力されている。一方、こうしたD型フリップフロップ131bから出力される信号QbをクロックとしてD型フリップフロップ131cから出力される信号Qcも、OR回路131eの入力端子に入力されている。他方、OR回路131eでは、これら各信号Qa〜Qcの論理和信号を生成し、その論理和信号QOをD型フリップフロップ131dのデータ端子Dに入力する。そして、このD型フリップフロップ131dには、上記基本クロックCLKがそのクロック端子に入力されており、このクロックCLKに同期して上記OR回路131eによる論理和信号が当該クロック分周回路131の出力Qoutとして出力される。
【0043】
次に、こうしたクロック分周回路131内で生成される各信号Qa〜Qc、QO、Qoutの各推移を図4を参照して説明する。
この図4に示すように、まず、クロック発振器123から発振される基本クロックCLKに基づきD型フリップフロップ131aから出力される信号Qaは、この基本クロックCLKが「2:2」に分周された信号となる。また、こうした信号QaをクロックとしてD型フリップフロップ131bから出力される信号Qbは、上記信号Qaがさらに「2:2」に分周された信号、すなわち、上記基本クロックCLKが「4:4」に分周された信号となる。さらに、こうした出力信号QbをクロックとしてD型フリップフロップ131cから出力される信号Qcは、上記信号Qbがさらに「2:2」に分周された信号、すなわち、上記基本クロックCLKが「8:8」に分周された信号となる。そして、こうしてクロック信号が各々の分周率によって分周された各信号Qa〜Qcの論理和が行われるOR回路131eの出力信号QOは、この図4に示すように、上記基本クロックCLKが「7:1」に分周された信号となる。そして、この基本クロックCLKが「7:1」に分周された信号QOと同クロックCLKとに基づいてD型フリップフロップ131dから出力される信号、すなわちクロック分周回路131の出力信号Qoutも、同じく基本クロックCLKが「7:1」に分周された信号となる。
【0044】
このように、このクロック分周回路131では、上記基本クロックCLKを「7:1」の比率で分周し、この分周した出力信号Qoutによって、上記ストップビット付与回路130としてパルス密度変調信号にストップビットを付与する際の分解能を決定する。
【0045】
次に、このような前提のもとに、ストップビット付与回路130で行われるパルス密度変調信号に対するストップビットの付与態様について、図5を参照しつつ説明する。なお、この図5において、図5(a)は、上記基本クロックCLKの推移を、図5(b)は、この基本クロックCLKが上記クロック分周回路131によって「7:1」の比率で分周された出力信号Qoutの推移をそれぞれ示している。また、図5(c)は、パルス密度変調回路120によって生成(変調)されたパルス密度変調信号Voutの推移を示しており、そして図5(d)は、このパルス密度変調信号にストップビットが付与された信号SVoutの推移を示している。
【0046】
まず、先の図1に示したように、ストップビット付与回路130では、クロック分周回路131にて生成された「7:1」の比率のもとに分周された出力信号Qoutと、パルス密度変調回路120にて生成されたパルス密度変調信号VoutとがAND回路132に入力されることによって、パルス密度変調信号に対するストップビットの付与が行われる。すなわち、図5(d)に示すように、同図5(b)に示す基本クロックCLKが「7:1」の比率のもとに分周された信号Qoutと同図5(c)に示すパルス密度変調回路120にて生成されたパルス密度変調信号Voutとの論理積、すなわちパルス密度変調信号Voutにストップビットの付与された信号SVoutが生成される。ちなみにこの生成された信号SVoutとは、上記変調されたパルス密度変調信号の分解能に対応して
その末尾が上記基本クロックCLKの1周期からなる論理「0」レベルのストップビットが付与された信号となっている。
【0047】
次に、インバータ制御マイコン300によって行われる上記ストップビットの付与されたパルス密度変調信号SVoutの復調態様を図6及び図7を参照して説明する。
まず、温度検出用ダイオード112の順方向電圧VFに基づく温度情報が例えば「19.2℃」であったとすると、この順方向電圧VFがパルス密度変調されたパルス密度変調信号Voutのパルス密度は、図7(a)に示すように「75%」となっている。そして、このパルス密度変調信号Voutにストップビットが付与されると、同図7(b)に示すように、パルス密度変調信号Voutのパルス幅(パルス密度)が7分割された信号SVoutに変換される。こうしてストップビットの付与されたパルス密度変調信号SVoutが前記フォトカプラIS1を介してインバータ制御マイコン300に取り込まれる。そして前述のように、このインバータ制御マイコン300により、ストップビットの付与されたパルス密度変調信号SVoutから物理量情報への復調、すなわち温度検出用ダイオード112の順方向電圧VFへの復調が実行される。
【0048】
この復調に際しては、まず、図7(c)に示すように、一定時間Tc中にインバータ制御マイコン300に取り込まれた信号SVoutのパルス数nxがカウントされるとともに(図7(c)の例ではパルス数「21」)、図6に拡大して示すように、このカウントされるパルスの幅Twが測定される。そして、こうして測定されたパルス幅Twに基づいて、同図6に示すカウント対象とされたパルスのうちの一つのパルスの周期Ttが、次式(1)によって求められる。
【0049】
Tt=Tw×(8/7) …(1)
また、上記パルス密度変調信号のパルス密度を「100%」としたときに上記一定時間Tc中にインバータ制御マイコン300に取り込まれ得る最大パルス数n100(図7(c))が、次式(2)によって求められる。
【0050】
n100=Tc/Tt …(2)
こうして一定時間Tc中の上記パルス数nxと上記最大パルス数n100(ここでの例では「28」)とが求められると、温度検出用ダイオード112の順方向電圧VFの最大値をVFmax、同順方向電圧VFの最小値をVFminとするとき、復調するその都度の温度検出用ダイオード112の順方向電圧VFxが、次式(3)によって求められる。
【0051】
VFx=VFmax−(VFmax−VFmin)×(nx/n100)…(3)
なお、上記最大パルス数n100に対する上記カウントされたパルス数nxの割合は、図7(c)からも明らかなように約「75%」となっており、ストップビットが付与される以前のパルス密度変調信号Voutのパルス密度と等しい割合となっていることが確認できる。そしてこれにより、パルス密度変調信号のパルス密度(ここでの例では「75%」)に代えて、上記最大パルス数n100に対する上記カウントされたパルス数nxの割合に基づくパルス密度変調信号の復調が行われるようになる。
【0052】
以上説明したように、本実施の形態にかかるインバータ制御装置によれば、そのパルス密度変復調回路も含めて、以下の効果が得られるようになる。
(1)物理量情報としての温度検出用ダイオード112の順方向電圧VFをパルス密度変調回路120によりパルス密度変調信号Voutに変調するとともに、これにストップビットを付与することとした。そして、このストップビットを付与したパルス密度変調信号SVoutの一定時間Tc中の最大パルス数に対する同時間Tc中にカウントされたパルス数nxの割合に基づきその復調を行うこととした。これにより、インバータ制御装置を構成する高圧回路側と低圧回路側との伝送路にこれらを電気的に絶縁するフォトカプラIS1を用いる場合であれ、このフォトカプラIS1に起因するパルス遅延、パルス歪等の誤差が生じたとしてもその影響を受けることなく、高い精度のもとにその復調を行うことができるようになる。
【0053】
(2)パルス密度変調信号Voutの分解能を決定する基本クロックの所定の分周の比率を「7:1」とすることとした。これにより、ストップビットの付与されたパルス密度変調信号SVoutのパルス数nxと最大パルス数n100との割合の抽出としての復調を実情に即したより望ましいかたちで行うことができるようになる。
【0054】
(3)ストップビットの付与されたパルス密度変調信号SVoutの一定時間Tc中の最大パルス数に対する同時間Tc中にカウントされたパルス数nxの割合を、同時間Tc中にカウント対象とされたパルスのパルス幅Twとその周期Ttを用いて算出することとした。これにより、上記インバータ制御マイコン300によるストップビットの付与されたパルス密度変調信号SVoutの復調をより容易かつ高精度に行うことができるようになる。
【0055】
(4)上記態様のもとに変復調される物理量情報、すなわち温度検出用ダイオード112の順方向電圧VFを用いてインバータ制御マイコン300によるインバータの駆動制御を行うこととした。これにより、高圧回路と低圧回路とをフォトカプラIS1によって絶縁しつつも、高い精度のもとに信頼性の高いインバータの駆動制御を行うことができるようになる。
【0056】
(第2の実施の形態)
以下、本発明にかかるインバータ制御装置を具体化した第2の実施の形態を図8を参照して説明する。なお、この第2の実施の形態は、インバータの駆動制御に必要とされる物理量情報として、同インバータの駆動電圧(高圧電源電圧)を生成する昇圧回路の昇圧電圧を用いたものである。
【0057】
図8は、先の図1に対応する図として、この第2の実施の形態にかかるインバータ制御装置の構成を示したものである。なお、この図8において、先の図1に示した各要素と同一の要素についてはそれぞれ同一の符号を付して示しており、それら要素についての重複する説明は割愛する。
【0058】
通常、車両に搭載されるインバータ制御装置では、インバータの駆動に必要十分な電圧を同インバータに印加するために、バッテリ電圧である例えば「200V」の電圧を昇圧回路(DC−DCコンバータ)によって例えば「650V」程度まで昇圧することによって、インバータ用の高圧電源電圧を確保するようにしている。このため、バッテリの電圧をインバータ用の高圧電源電圧まで正確に昇圧すべく、この高圧電源電圧の監視に基づき昇圧回路の駆動を制御することが望ましい。そこで、本実施の形態では、こうしたインバータ用の高圧電源電圧を、インバータの駆動制御に必要とされる物理量情報として高圧回路側で検出し、この検出値を低圧回路側のインバータ制御マイコン300に伝送することとする。
【0059】
すなわち、図8に示すように、このインバータ制御装置では、まず、高圧回路側のバッ
テリBTの電圧が昇圧回路150によって例えば「500V」の高圧電源電圧V1まで昇圧される。そして、この昇圧された電圧V1をインバータ110に印加するとともに、分圧抵抗Rdによってこの電圧V1を例えば200分の1に分圧し、この分圧電圧V2(2.5V)を物理量情報として抽出する。次いで、こうして抽出した電圧V2をパルス密度変調回路120によってパルス密度変調(PDM)信号に変調する。ここで、本実施の形態においては、パルス密度変調回路120を構成するスイッチ125によって切り換えられる電圧値がVH側で「5V」、VL側で「0V」となるように設定される。そしてここでは、パルス密度変調回路120に取り込まれた「2.5V」の電圧が、デューティ「50%」となるパルス密度変調信号Voutに変調される。こうして変調されたパルス密度変調信号Voutがパルス密度変調回路120から出力されると、この信号Voutに対して先の第1の実施の形態に準じる態様でストップビットが付与され、このストップビットの付与されたパルス密度変調信号SVoutがフォトカプラIS1を介してインバータ制御マイコン300に取り込まれる。そして、インバータ制御マイコン300では、先の第1の実施の形態に準じる態様で、ストップビットの付与されたパルス密度変調信号SVoutから物量量情報としての電圧V2への復調が行われ、この復調された電圧V2に基づきインバータ110に印加される高圧電源電圧V1が求められる。
【0060】
こうして高圧電源電圧V1が求められると、この高圧電源電圧V1に基づいてインバータ制御マイコン300による昇圧用IGBT(図示省略)の駆動指令が生成される。他方、この生成された駆動指令は、スイッチング素子SW2を通じてオン/オフ情報に変換され、このオン/オフ情報に変換された駆動指令がフォトカプラIS2を介して低圧回路から高圧回路に伝送(フィードバック)される。そして、高圧回路では、昇圧用IGBT駆動回路160を通じて、このフィードバックされた駆動指令に基づくIGBT、ひいては昇圧回路の駆動を実行することとなる。
【0061】
以上説明したように、この第2の実施の形態にかかるインバータ制御装置によっても、第1の実施の形態による前記(1)〜(3)の効果に準じた効果が得られるとともに、前記(4)の効果に代えて以下のような効果が得られるようになる。
【0062】
(5)上記態様のもとに変復調される物理量情報、すなわち高圧回路側に設けられた昇圧回路150からインバータ110に印加される高圧電源情報を用いてインバータ制御マイコン300によるインバータの駆動制御を行うこととした。これにより、高圧回路と低圧回路とをフォトカプラIS1によって絶縁しつつも、高い精度のもとに信頼性の高いインバータの駆動制御を行うことができるようになる。
【0063】
(他の実施の形態)
なお、上記実施の形態は、以下のような形態をもって実施することもできる。
・上記各実施の形態では、パルス密度変調信号Voutの分解能を決定するクロック発振器123による基本クロックの所定の分周の比率を「7:1」として設定した。上記クロック分周回路131によって生成される基本クロックに対する分周の比率としては、パルス密度変調信号Voutとの論理積によって、このパルス密度変調信号Voutを所定の間隔毎に分割することが可能な範囲であればよく、基本クロックに対する分周の比率は何段階のパルス密度に変調するかに応じて任意である。
【0064】
・上記第1の実施の形態では、上記変復調の対象とされる物理量情報として温度検出用ダイオード112の順方向電圧VFを採用することとし、また、上記第2の実施の形態では、変復調の対象とされる物理量情報を分圧抵抗Rdによって分圧された電圧V2を採用することとした。上記変復調の対象とされる物理量情報としては、インバータの駆動制御に必要とされる物理量情報であればよく、これらに限定されるものではない。
【0065】
・上記各実施の形態では、本発明に係るパルス密度変復調回路を、上記インバータ制御装置に適用する場合について例示したが、こうしたインバータ制御装置に限られず、アナログ信号として抽出される物理量情報をフォトカプラ等の絶縁手段を介して変復調するものであれば、本発明の適用は可能である。
【符号の説明】
【0066】
110…インバータ、111…IGBT、112…温度検出用ダイオード、120…パルス密度変調回路、121…コンパレータ、122…D型フリップフロップ、123…クロック発振器、124…NOT回路、125…スイッチ、126…コンデンサ、130…ストップビット付与回路、131…クロック分周回路、131a〜131d…D型フリップフロップ、131e…OR回路、132…AND回路、140…IGBT駆動回路、150…昇圧回路、160…昇圧用IGBT駆動回路、300…インバータ制御マイコン、BT…バッテリ、Tr1…トランジスタ、Rd…分圧抵抗、IS1、IS2…フォトカプラ、SW1、SW2…スイッチング素子。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ信号として抽出される物理量情報をその都度の信号の大きさに対応したパルス密度を有するとともに基本クロックに同期した信号であるパルス密度変調信号に変調するパルス密度変調回路と、
この変調されたパルス密度変調信号の分解能に対応してその末尾を前記基本クロックの1周期の時間からなる論理「0」レベルのストップビットとするストップビット付与回路と、
このストップビットの付与されたパルス密度変調信号を伝送する伝送路と、
この伝送されたストップビットの付与されたパルス密度変調信号を受信して一定時間中のパルス数をカウントするとともに、この一定時間中に受信し得る最大パルス数をパルス密度100%として、前記最大パルス数に対する前記カウントしたパルス数の割合として前記抽出される物理量情報を復調する復調回路と、
を備えるパルス密度変復調回路。
【請求項2】
前記ストップビット付与回路は、前記基本クロックを前記パルス密度変調信号の分解能を決定する所定の比率で分周した信号と前記パルス密度変調信号との論理積によって当該パルス密度変調信号に前記ストップビットを付与するものである
請求項1に記載のパルス密度変復調回路。
【請求項3】
前記パルス密度変調信号の分解能を決定する前記基本クロックの所定の分周の比率が「7:1」である
請求項2に記載のパルス密度変復調回路。
【請求項4】
前記復調回路は前記カウントするパルスのパルス幅を併せて測定するものであり、この測定したパルス幅をTwとして、そのパルス周期Ttを
Tt=Tw×(8/7)
として求めるとともに、前記パルス数をカウントする一定時間をTcとして、前記パルス密度100%とする前記一定時間中に受信し得る最大パルス数n100を
n100=Tc/Tt
として定める
請求項3に記載のパルス密度変復調回路。
【請求項5】
前記パルス密度変調回路が前記パルス密度変調信号に変調する物理量情報の最大値をPmax、同物理量情報の最小値をPminとするとき、前記復調回路は、前記一定時間中にカウントしたパルス数をnxとして、前記復調するその都度の物理量Pxを、前記最大パルス数n100に対する前記カウントしたパルス数nxの割合に基づき
Px=Pmax−(Pmax−Pmin)×(nx/n100)
として求める
請求項4に記載のパルス密度変復調回路。
【請求項6】
車載バッテリから供給される直流電力を電力変換するインバータの駆動制御に必要とされる物理量情報をパルス密度変復調回路を介してモニタしつつ同インバータの駆動を制御するパルス密度変復調回路を用いたインバータ制御装置において、
前記パルス密度変復調回路として請求項1〜5のいずれか一項に記載のパルス密度変復調回路を用いる
ことを特徴とするパルス密度変復調回路を用いたインバータ制御装置。
【請求項7】
前記インバータの駆動制御に必要とされる物理量情報が、当該インバータの温度を検出する温度検出用ダイオードの順方向電圧である
請求項6に記載のパルス密度変復調回路を用いたインバータ制御装置。
【請求項8】
前記インバータの駆動制御に必要とされる物理量情報が、当該インバータの駆動電圧を生成する昇圧回路の昇圧電圧である
請求項6に記載のパルス密度変復調回路を用いたインバータ制御装置。
【請求項1】
アナログ信号として抽出される物理量情報をその都度の信号の大きさに対応したパルス密度を有するとともに基本クロックに同期した信号であるパルス密度変調信号に変調するパルス密度変調回路と、
この変調されたパルス密度変調信号の分解能に対応してその末尾を前記基本クロックの1周期の時間からなる論理「0」レベルのストップビットとするストップビット付与回路と、
このストップビットの付与されたパルス密度変調信号を伝送する伝送路と、
この伝送されたストップビットの付与されたパルス密度変調信号を受信して一定時間中のパルス数をカウントするとともに、この一定時間中に受信し得る最大パルス数をパルス密度100%として、前記最大パルス数に対する前記カウントしたパルス数の割合として前記抽出される物理量情報を復調する復調回路と、
を備えるパルス密度変復調回路。
【請求項2】
前記ストップビット付与回路は、前記基本クロックを前記パルス密度変調信号の分解能を決定する所定の比率で分周した信号と前記パルス密度変調信号との論理積によって当該パルス密度変調信号に前記ストップビットを付与するものである
請求項1に記載のパルス密度変復調回路。
【請求項3】
前記パルス密度変調信号の分解能を決定する前記基本クロックの所定の分周の比率が「7:1」である
請求項2に記載のパルス密度変復調回路。
【請求項4】
前記復調回路は前記カウントするパルスのパルス幅を併せて測定するものであり、この測定したパルス幅をTwとして、そのパルス周期Ttを
Tt=Tw×(8/7)
として求めるとともに、前記パルス数をカウントする一定時間をTcとして、前記パルス密度100%とする前記一定時間中に受信し得る最大パルス数n100を
n100=Tc/Tt
として定める
請求項3に記載のパルス密度変復調回路。
【請求項5】
前記パルス密度変調回路が前記パルス密度変調信号に変調する物理量情報の最大値をPmax、同物理量情報の最小値をPminとするとき、前記復調回路は、前記一定時間中にカウントしたパルス数をnxとして、前記復調するその都度の物理量Pxを、前記最大パルス数n100に対する前記カウントしたパルス数nxの割合に基づき
Px=Pmax−(Pmax−Pmin)×(nx/n100)
として求める
請求項4に記載のパルス密度変復調回路。
【請求項6】
車載バッテリから供給される直流電力を電力変換するインバータの駆動制御に必要とされる物理量情報をパルス密度変復調回路を介してモニタしつつ同インバータの駆動を制御するパルス密度変復調回路を用いたインバータ制御装置において、
前記パルス密度変復調回路として請求項1〜5のいずれか一項に記載のパルス密度変復調回路を用いる
ことを特徴とするパルス密度変復調回路を用いたインバータ制御装置。
【請求項7】
前記インバータの駆動制御に必要とされる物理量情報が、当該インバータの温度を検出する温度検出用ダイオードの順方向電圧である
請求項6に記載のパルス密度変復調回路を用いたインバータ制御装置。
【請求項8】
前記インバータの駆動制御に必要とされる物理量情報が、当該インバータの駆動電圧を生成する昇圧回路の昇圧電圧である
請求項6に記載のパルス密度変復調回路を用いたインバータ制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−273042(P2010−273042A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122301(P2009−122301)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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