説明

パワーアシスト装置およびセンサ

【課題】操作者に密着させずに済み、調整も容易なパワーアシスト装置用のセンサ、およびこのセンサを組み込んだパワーアシスト装置を提供する。
【解決手段】脚部35の上端に関節部を介して一端側が回動自在に連結され、操作者の上腕が挿入可能な第1の外装部46と、第1の外装部46と関節部を介して連結され、操作者の前腕が挿入可能な第2の外装部48と、第2の外装部48と関節部を介して連結され、操作者の手が挿入可能な第3の外装部50と、第1の外装部、第2の外装部および第3の外装部のそれぞれを関節部を中心として回動させる複数のアクチュエータ38a,38b,38cと、各外装部内に設けられ、操作者の腕または手によって押圧されて変形する複数の押圧検出センサ52と、いずれかの押圧検出センサ52の変形を検出した場合に、外装部を押圧により変形した距離だけ移動させるように各アクチュエータを制御する制御部78とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作者に装着することによって操作者の動きに追随して動作を補助することができるパワーアシスト装置、およびこれに用いられ、操作者の動きを検出するセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
操作者に装着されて操作者の動作を補助する装置としてパワーアシスト装置がある(例えば、特許文献1参照)。
パワーアシスト装置は、例えば、寝たきりとなっている要介護者を介護者が起こすときや、倉庫内で荷物の積み下ろしをするときなど、腕や足に大きな負担がかかる場合に用いるために開発が進められてきた。
【0003】
パワーアシスト装置は、操作者の動作を補助するものであるため、操作者の動作を検出するセンサを設け、センサが検出した動作に追従するように関節部のモータを制御することが必要となってくる。
操作者の動作を検出するセンサとしては生体電位センサ、圧力センサ、ひずみゲージ等が考えられる。
特許文献1に開示されているパワーアシスト装置では、センサとして圧力センサ、加速度センサ、速度センサ、位置センサ等が用いられることが挙げられている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−105261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
操作者に装着するパワーアシスト装置においては、操作者への装着および取り外しが非常に面倒である場合が多い。特に、センサとして生体電位センサや圧力センサを用いる場合には、センサを操作者に密着させる必要があるので、操作者への装着および取り外しに時間がかかるという課題がある。
【0006】
また、生体電位センサでは、微弱な電流を検出するのでノイズに弱く、誤動作の可能性もあるという課題もある。さらに、生体電位センサを用いた場合、生体電位や筋力は個人差があり、しかも同一人であっても日々の変動が大きい。したがって、センサの調整が困難であるという課題もある。
【0007】
そこで、本発明は上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、操作者に密着させずに済み、調整も容易なパワーアシスト装置用のセンサ、およびこのセンサを組み込んだパワーアシスト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかるパワーアシスト装置によれば、操作者の動きに追随するように動作し、操作者の動きを補助するパワーアシスト装置において、自由に回転する車輪が設けられた基台と、基台から上方に向けて突出する脚部と、脚部の上端に関節部を介して一端側が回動自在に連結され、操作者の上腕が挿入可能な第1の外装部と、一端側が、第1の外装部の他端側と関節部を介して回動自在に連結され、操作者の前腕が挿入可能な第2の外装部と、一端側が、第2の外装部の他端側と関節部を介して回動自在に連結され、操作者の手が挿入可能な第3の外装部と、各関節部に設けられ、第1の外装部、第2の外装部および第3の外装部のそれぞれを関節部を中心として回動させる複数のアクチュエータと、各外装部内に設けられ、操作者の腕および手によって押圧されることにより押圧方向に変形する複数の押圧検出センサと、いずれかの押圧検出センサによって操作者からの押圧を検出した際に、該当する押圧検出センサが設けられているいずれかの外装部を、押圧されて変形した距離分だけ押圧方向に移動させるように各アクチュエータを制御する制御部とを具備することを特徴としている。
【0009】
この構成を採用することによる作用は以下の通りである。
外装部に挿入された操作者の腕や手が動くと、腕や手が動いた方向に存する押圧サンサに腕や手が当接し、押圧検出センサが押圧されて押圧方向に変形する。制御部は、押圧検出センサが押圧方向に変形した距離分だけ押圧された方向に外装部を移動させるようにアクチュエータを制御する。このため、従来のように、操作者にセンサを常時密着していなくても、押圧時にセンサが変形した距離だけ、外装部が操作者の動きに追従して移動することができる。また、センサに対して、個人差や日々の変動による調整が必要ないので、誰でも簡単に使用することができる。
【0010】
また、前記脚部は少なくとも2本設けられ、前記第1の外装部、前記第2の外装部および前記第3の外装部は、操作者の左右両方の腕および手に対応するように、各一対づつ設けられていることを特徴としてもよい。
これにより、操作者の両腕および両手のアシストが可能となる。
【0011】
また、前記押圧検出センサは、操作者の腕または手が当接する位置に設けられた押圧部と、押圧部と所定の間隔をあけて配置される基準部と、押圧部と基準部とを連結し、押圧部を操作者の腕または手が押圧することにより押圧部と基準部とを結ぶ方向に変形し、操作者の腕または手による押圧が解除された場合には変形が解消するような弾性部材で形成された連結部とを有することを特徴としている。
この構成によれば、押圧検出センサの弾性部材である連結部の変形により操作者の腕または手の移動距離を測定することができるので、低コストでパワーアシスト装置のセンサを構成することができる。
【0012】
さらに、前記押圧部には、基準部と対向する面に光を反射する反射板が設けられ、前記基準部には、反射板に対して光を照射する発光部および反射板から反射された光を受光する受光部が設けられ、前記制御部は、受光部が受光する受光強度に基づいて連結部の変形による押圧部と基準部との距離の変化を算出し、算出された距離だけセンサ部が設けられた外装部が移動するように各アクチュエータを制御することを特徴としてもよい。
このように距離の変化を光の光路長の変化で検出可能とすることで、ノイズに影響されることなく、且つ安価な構成でのセンサを提供することができる。
【0013】
さらに、前記センサ部の反射板、発光部および受光部は、遮光された空間内に配置されていることを特徴としてもよい。
この構成によれば、押圧部と、連結部と、発光部および受光部を取り付けた基準部を含めて内部を遮光した1つのユニットとして構成することができ、パワーアシスト装置への取り付けが容易となる。
【0014】
なお、前記押圧部および前記基準部は金属板で形成されており、前記制御部は、押圧部と基準部との間における静電容量の変化に基づいて、押圧部と基準部との距離の変化を算出することを特徴としてもよい。
このように、距離の変化を静電容量の変化に基づいて算出するようにしても、部品点数を減らして、簡易にセンサを構成することができる。
【0015】
本発明にかかるセンサによれば、操作者の動きに追随するように動作し、操作者の動きを補助するパワーアシスト装置に設けられ、操作者によって押圧されたことを検出するセンサであって、操作者の身体の一部が当接する位置に設けられた押圧部と、押圧部と所定の間隔をあけて配置される基準部と、押圧部と基準部とを連結し、押圧部を操作者の身体の一部が押圧することにより押圧部と基準部とを結ぶ方向に変形し、操作者の身体の一部による押圧が解除された場合には変形が解消するような弾性部材で形成された連結部とを具備することを特徴としている。
この構成を採用することによって、弾性部材である連結部の変形により操作者の身体の一部の移動距離を測定することができるので、低コストでパワーアシスト装置のセンサを構成することができる。
【0016】
また、前記押圧部には、基準部と対向する面に光を反射する反射板が設けられ、前記基準部には、反射板に対して光を照射する発光部および反射板から反射された光を受光する受光部が設けられていることを特徴としてもよい。
この構成によれば、距離の変化を光の光路長の変化で検出可能とすることで、ノイズに影響されることなく、且つ安価な構成でのセンサを提供することができる。
【0017】
さらに、前記センサ部の反射板、発光部および受光部は、遮光された空間内に配置されていることを特徴としてもよい。
この構成によれば、センサを、押圧部と、連結部と、発光部および受光部を取り付けた基準部を含めて内部を遮光した1つのユニットとして構成することができ、パワーアシスト装置への取り付けが容易となる。
【0018】
前記押圧部および前記基準部は金属板で形成されていることを特徴としてもよい。
この構成によって、距離の変化を静電容量の変化に基づいて算出するようにしても、部品点数を減らして、簡易にセンサを構成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のパワーアシスト装置およびセンサによれば、操作者にセンサを密着させなくともよいのでパワーアシスト装置の装着や取り外しが容易となり、且つ誤動作のおそれが少なく、調整も容易とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明にかかる好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
本実施形態のパワーアシスト装置30は、倉庫内等において人手により重量物を運搬する用途に用いるものであり、操作者の肩よりも先の腕の部分および手について、腕および手の動作を追随し、操作者の腕および手の代わりに重量物により腕および手にかかる負荷を負担しようとするものである。
【0021】
まず、パワーアシスト装置30の全体構成について説明する。
パワーアシスト装置30は、基台32と、腕部34と、腕部34を基台32に取り付けて支持するための脚部35とを有している。
本実施形態のパワーアシスト装置30は、腕部34を構成する複数の外装部46,48,50のそれぞれを回動可能となるように複数のアクチュエータ38a,38b,38cが取り付けられ、外装部を互いに回動させることによって、装着した操作者の肩、肘および手首の動きを追随する。
【0022】
基台32は、腕部34を所定の位置に移動させることができるように、フリー回転する車輪39,39・・が設けられている。基台32は、操作者の足による移動に伴って地面の上を移動する。
【0023】
基台32は、平面視すると後方が開口したコの字状に形成されている。基台32は、前部32a、右部32b、左部32cの3つの部材が連結されて構成され、それぞれの部材に上述した車輪39,39・・が設けられている。
操作者は、後方の開口した場所から基台32内側へ進入し、操作者の腕を腕部34に装着する。
【0024】
基台32の右部32bと左部32cのそれぞれには、腕部34を基台32に支持するための脚部35、35が上方に向けて突出するように設けられている。
各脚部35は、全体として棒状の部材であって、中途部において曲げることができるようにヒンジ40を介して2本の上脚部35aと下脚部35bとが連結されて構成されている。ヒンジ40は、上脚部35aおよび下脚部35bにヒンジ40を回動させる方向に一定以上の力が加わった場合にのみ回動するような摩擦力を有するように設けられており、通常時は上脚部35aと下脚部35bとが回動しないように保持している。
【0025】
また、各下脚部35bの下端部は、基台32に対して曲げることができるようにヒンジ42を介して、基台32の右部32bおよび左部32cに取り付けられている。ヒンジ42は、下脚部35bにヒンジ42を回動させる方向に一定以上の力が加わった場合にのみ回動するような摩擦力を有するように設けられており、通常時は下脚部35bが基台32に対して回動しないように保持している。
【0026】
次に腕部34について説明する。
腕部34は、右手用と左手用にそれぞれ左右に設けられており、それぞれの後端部が各脚部35の上端部に設けられたアクチュエータ38aによって上脚部35aに回動可能に連結されている。
腕部34は、操作者の肩よりも先の腕および手に装着されるように設けられている。腕部34の後端部と上脚部35aの上端部とが連結されている部位が操作者の肩の位置に該当する。
【0027】
腕部34は、操作者の表面を覆う外装部44を有している。外装部44は、金属または合成樹脂等で形成された薄板が断面コの字状となるように、操作者の腕の表面を三方から覆うように形成されている。
左右の腕部34の外装部44は、それぞれ腕の内側(操作者の身体側)に開口するように設けられており、操作者は、腕および手を内側から外装部44内に挿入するだけで、パワーアシスト装置30の装着ができる。操作者の腕および手は、腕部34内に挿入させた後は、外装部44に拘束されることはなく、開口側から腕を抜き出すだけで腕部34からの取り外しが可能となる。
【0028】
腕部34の外装部44は、操作者の肩から肘までを覆う上腕部46と、肘から手首までを覆う前腕部48と、手首から指先までを覆う手先部50とから構成されている。上腕部46と前腕部48とはアクチュエータ38bによって回動可能に接続されており、前腕部48と手先部50とはアクチュエータ38cによって回動可能に接続されている。
なお、本実施形態においては、腕部34は、操作者の肘関節と手首とが上方に曲がるように配置されている。したがって、操作者が腕部34を自分の腕に装着する場合には、自分の上腕と前腕の内側および手の平が上を向くようにして腕および手を外装部44に進入させる。このように、本実施形態の腕部34は、主として操作者の前腕部の内側の面および手の平で重量物を支えて運ぶ場合に用いられることを想定している。
【0029】
上腕部46は、操作者の上腕の内側(装着時には上方を向いている肘関節・手首の内側)を覆う上面部46aと、操作者の上腕の外側(装着時には下方を向いている肘関節・手首の外側)を覆う下面部46bと、上面部46aと下面部46bとを連結して操作者の上腕の側面を覆う側面部46cとから構成され、上面部46aと下面部46bとは当接しないように断面コの字状に形成されている。
【0030】
前腕部48は、操作者の前腕の内側(装着時には上方を向いている肘関節・手首の内側)を覆う上面部48aと、操作者の前腕の外側(装着時には下方を向いている肘関節・手首の外側)を覆う下面部48bと、上面部48aと下面部48bとを連結して操作者の前腕の側面を覆う側面部48cとから構成され、上面部48aと下面部48bとは当接しないように断面コの字状に形成されている。
【0031】
手先部50は、操作者の手の平を覆う上面部50aと、操作者の手の甲を覆う下面部50bと、上面部50aと下面部50bとを連結して操作者の手の側面を覆う側面部50cとから構成され、上面部50aと下面部50bとは互いの先端において当接し、断面コの字状となるように形成されている。
【0032】
上腕部46の側面部46cの一端側(後端側)には、アクチュエータ38aの回動軸(図示せず)が取り付けられており、アクチュエータ38aの筐体は上脚部35aの上端部に取り付けられている。このため、アクチュエータ38aの回動軸が駆動すると、上腕部46は上脚部35aに対して回動する。
また、上腕部46の側面部46cの他端側(先端側)には、アクチュエータ38bの筐体が取り付けられており、アクチュエータ38bの回動軸(図示せず)は、前腕部48の側面部48cの後端部に取り付けられている。このため、アクチュエータ38bの回動軸が駆動すると、前腕部48は上腕部46に対して回動する。
前腕部48の側面部48cの先端部には、アクチュエータ38cの筐体が取り付けられており、アクチュエータ38cの回動軸(図示せず)は、手先部50の側面部50cの後端部に取り付けられている。このため、アクチュエータ38cの回動軸が駆動すると、手先部50は前腕部48に対して回動する。
【0033】
腕部34の各外装部46,48,50の内壁面には、操作者の動きを検出するための複数の押圧検出センサ52(以下、単にセンサと称する場合がある)が設けられている。センサ52は、腕部34の外装部44の内側に設けられ、操作者の腕または手が当接して押圧することにより押圧方向に変形する。
センサ52は、操作者の腕または手が押圧して変形させられることによって、変形による距離変化を検出する。
【0034】
このように、本実施形態のパワーアシスト装置30では、外装部44の内壁面と操作者とでは接触している必要はなく、むしろ操作者が動いていない時は接触しておらず、操作者が動作したときに初めて操作者と外装部44の内壁面(センサ52)とが接触するようにすることができる。
このように、外装部44を断面コの字状とし、センサ52も通常時は操作者に非接触となる構成としたので、パワーアシスト装置30は操作者を拘束することがなく、着脱が容易である。さらに、パワーアシスト装置30は操作者を拘束していないので、転倒などの危険がある場合には、操作者は外装部44の開口側からすぐに腕を抜くことができ、操作者はパワーアシスト装置30の転倒に巻き込まれなくてもすむ。
【0035】
また、左右両腕部34、34における外装部44の開口側は、それぞれ操作者の身体内側に向くように設けられている。すなわち、各腕部34,34の外装部44の開口部は、互いに対向するように配置される。
このため、操作者が転倒時等に両腕および両手を外装部44から抜き出すには、腕と手を身体の内側に縮めるようにするだけでよく、瞬時にパワーアシスト装置30からの離脱ができる。
【0036】
以下、図4〜図5に基づいて、センサについて説明する。
本実施形態におけるセンサ52は、光路長の変化を検出して操作者の動きを検出する光センサである。
センサ52は、ほぼ立方体状に形成されており、操作者に当接する側に設けられた板状の部材が押圧部54であり、押圧部54に対向するように設けられた板状の部材が基準部55である。そして、押圧部54と基準部55とを連結し、且つ押圧部54と基準部55との間の空間の周囲を囲むように連結部56が設けられている。
連結部56は、操作者の腕または手が押圧部54に当接して押圧することで容易に変形し、力が加わらなくなった場合にはすぐにもとに戻る性質の弾性部材によって形成されている。連結部56としては、ゴムスポンジ等の弾力性を有する材質が好ましい。
一方、押圧部54と基準部55は、操作者が当接して押圧した程度の力では容易には変形しない金属や合成樹脂等の材質によって板状に形成されている。
【0037】
押圧部54の操作者に当接する面の裏側、つまり押圧部54の基準部55に対向する面側は光が反射するように反射面54aに形成されている。
基準部55には、反射面54aに対してレーザ光を照射するレーザダイオード58と、反射面54aから反射されたレーザ光を受光するフォトディテクタ60とが設けられている。レーザダイオード58が特許請求の範囲でいう発光部に該当し、フォトディテクタ60が特許請求の範囲でいう受光部に該当する。
【0038】
操作者がセンサ52の押圧部54に当接した場合、連結部56が圧縮する方向に変形する。この連結部56の圧縮によって、押圧部54が基準部55に接近する。押圧部54が基準部55に接近するとレーザダイオード58が照射したレーザ光のフォトディテクタ60へ到達するまでの光路長が、連結部56の圧縮前よりも短くなる。フォトディテクタ60は、光路長が変化することに基づいて受光強度の変化を検出することができる。具体的には、フォトディテクタ60は光路長が短くなることによって受光強度が大きくなると、出力電流値が大きくなる。
【0039】
上述のように、センサ52は、押圧部54と基準部55と連結部56とによって直方体もしくは立方体の箱を構成している。押圧部54と基準部55と連結部56とで構成される箱の内部は、外部からの光の影響を受けないように遮光されている。したがって、押圧部54、基準部55および連結部56のそれぞれは遮光性のある材質で形成されるとともに、各部材は隙間が生じないように接合されて成る。
【0040】
図6〜図7に示すように、光センサ52は、2つの光センサ52,52を一組としたセンサユニット62を構成し、センサユニット62が外装部44の内壁面に取り付けられる。
センサユニット62は、断面コの字状に形成された弾性部材64の対向する取り付け部64a、64bのそれぞれにセンサ52が埋め込まれて構成されている。
弾性部材64としては、センサ52の連結部56と同様にゴムスポンジ等を採用することができる。
弾性部材64の取り付け部64a,64bのそれぞれには、センサ52の押圧部54が表面側に位置するように、センサ52が埋め込まれる。また、このときセンサ52の押圧部54の表面と、弾性部材64の取り付け部64a,64bの表面とが同一表面(面一)となるように設けるとよい。
【0041】
このように、センサ52を2つ1組としたセンサユニット62として、腕部34の外装部44の内側に、センサユニット62の開口側が外装部44の開口側と一致するように装着することにより、センサ52の取り付けおよび腕および手の出し入れが容易となる。また、操作者の腕および手の移動方向の検出と、その移動方向と反対の方向への移動の検出も容易となる。
【0042】
センサユニット62は、外装部44の複数箇所に取り付けられている。本実施形態では、センサユニット62は、上腕部46の後端部側に取り付けられ、センサ52は、上面部46aの内壁面および下面部46bの内壁面に配置される。
さらに、センサユニット62は、前腕部48の後端部側にも取り付けられ、センサ52は、上面部48aの内壁面および下面部48bの内壁面に配置される。
さらに、センサユニット62は、手先部50の後端部側にも取り付けられ、センサ52は、上面部50aの内壁面および下面部50bの内壁面に配置される。
【0043】
上腕部46の上面部46aに設けられたセンサ52は、操作者の上腕が上方に移動すると操作者の上腕が当接することで連結部56が変形して押圧部54と基準部55との間の距離が接近するので、接近した距離に応じた値の出力電流を出力する。
上腕部46の下面部46bに設けられたセンサ52は、操作者の上腕が下方に移動すると操作者の上腕が当接することで連結部56が変形して押圧部54と基準部55との間の距離が接近するので、接近した距離に応じた値の出力電流を出力する。
【0044】
前腕部48の上面部48aに設けられたセンサ52は、操作者の前腕が上方に移動すると操作者の前腕が当接することで連結部56が変形して押圧部54と基準部55との間の距離が接近するので、接近した距離に応じた値の出力電流を出力する。
前腕部48の下面部48bに設けられたセンサ52は、操作者の前腕が下方に移動すると操作者の前腕が当接することで連結部56が変形して押圧部54と基準部55との間の距離が接近するので、接近した距離に応じた値の出力電流を出力する。
【0045】
手先部50の上面部50aに設けられたセンサ52は、操作者の手が上方に移動すると操作者の手が当接することで連結部56が変形して押圧部54と基準部55との間の距離が接近するので、接近した距離に応じた値の出力電流を出力する。
手先部50の下面部50bに設けられたセンサ52は、操作者の手が下方に移動すると操作者の手が当接することで連結部56が変形して押圧部54と基準部55との間の距離が接近するので、接近した距離に応じた値の出力電流を出力する。
【0046】
次に、図8および図9にパワーアシスト装置の制御系のブロック図を示し、これに基づいて制御を行うための回路構成について説明する。なお、図8に示すブロック図は片腕分の回路構成のみを示しており、2つの腕部34を有するパワーアシスト装置30全体ではこの図と同様の回路構成が2つ設けられていることになる。
本実施形態のアクチュエータ38a、38b、38cとしてはサーボモータを用いており、サーボモータを制御するサーボドライバ70、70・・が、各サーボモータに接続されている。また、各サーボモータにはエンコーダ72,72・・が設けられており、各エンコーダ72によって検出された各サーボモータにおける位置信号はサーボドライバ70に入力される。
【0047】
サーボドライバ70内には、CPU74、ROM75および複数のトランジスタから構成されるブリッジ回路76が内蔵されている。サーボドライバ70は、エンコーダ72から入力される位置信号に基づいてサーボモータの回転角を制御する。
【0048】
また、各センサ52,52・・は、制御部78に接続されており、制御部78には各センサ52,52・・のフォトディテクタが出力する出力電流が入力される。制御部78は、メモリ内に記憶されている制御プログラムを読み込んで制御動作を実行するCPU80、メモリであるROM81およびRAM82等から構成されている。
【0049】
制御部78は、各外装部44,44・・に設けられた各センサ52,52・・からの出力電流を操作者移動信号として受信する。
制御部78は、各センサ52からの操作者移動信号を受信すると、操作者移動信号の大きさに基づいた距離だけ、操作者移動信号を出力したセンサ52が設けられている外装部44が移動するように、該当する外装部44に設けられたサーボモータを、所定の回転数だけ回転させるように演算する。制御部78は、演算した結果に基づいてサーボモータが駆動するように該当するサーボモータのサーボドライバ70へ制御信号を出力する。
【0050】
なお、制御部78は、各センサ52のうちのいずれか1つからの操作者移動信号を受信した場合において、1つのサーボモータのみを駆動させるように制御するのではなく、1つのセンサ52からの操作者移動信号に対して複数のサーボモータを駆動させて外装部44を移動させるようにしてもよい。かかる場合、制御部78は、入力された操作者移動信号に対して複数のサーボモータをどの程度回転させるかそれぞれのサーボモータの回転角度を演算し、演算した回転角度で各サーボモータが駆動するように各サーボドライバ70へ制御信号を出力する。
【0051】
なお、上述した実施形態では、センサは光センサを採用したものであった。しかし、センサとしては、光センサではなく、静電容量センサであってもよい(図示せず)。
静電容量センサは、押圧部54および基準部55が、それぞれ金属板で構成され、コンデンサの電極としての機能を有する。操作者の腕または手が押圧部54に当接すると、連結部が変形し、押圧部54と基準部55との間の距離が短くなる。押圧部54と基準部55との間の距離が短くなると、静電容量が増加する。この静電容量の変化を検出することによって、操作者の腕または手の移動距離を検出することができる。
【0052】
また、上述してきた実施形態では、各脚部35を構成する上脚部35aと下脚部35bとを連結する部位にヒンジ40を設け、さらに各下脚部35bと基台32とを連結する部位にヒンジ42を設ける構成とした。
したがって、脚部35の駆動はアクチュエータによる駆動ではなく、操作者の力により動くものであった。
しかし、脚部35における上脚部35aと下脚部35bとを連結する部位、および下脚部35bと基台32とを連結する部位のそれぞれにアクチュエータを設け、腕部34に設けられた複数のセンサ52が出力する操作者移動信号に基づいて、腕部34に設けられた各アクチュエータと、脚部35に設けたアクチュエータとで各アクチュエータの動作距離を分配し、脚部35の動作も制御部78によって制御するようにしてもよい。
【0053】
なお、本発明のセンサは、操作者の腕および手のアシストに用いるだけでなく、操作者の身体の他の部位の移動を検出する場合に用いることもできる。
【0054】
以上本発明につき好適な実施例を挙げて種々説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明のパワーアシスト装置を斜め後方からみたところを示す説明図である。
【図2】パワーアシスト装置を内側からみた側面図である。
【図3】腕部を内側の斜め後方からみたところを示す説明図である。
【図4】センサの説明図である。
【図5】センサの側面図である。
【図6】センサユニットの説明図である。
【図7】センサユニットの側面図である。
【図8】制御回路のブロック図である。
【図9】サーボドライバの内部構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0056】
30 パワーアシスト装置
32 基台
32a 前部
32b 右部
32c 左部
34 腕部
35 脚部
35a 上脚部
35b 下脚部
38a アクチュエータ
38b アクチュエータ
38c アクチュエータ
39 車輪
40 ヒンジ
42 ヒンジ
44 外装部
46 上腕部
46a 上面部
46b 下面部
46c 側面部
48 前腕部
48a 上面部
48b 下面部
48c 側面部
50 手先部
50a 上面部
50b 下面部
50c 側面部
52 センサ
54 押圧部
54a 反射面
55 基準部
56 連結部
58 レーザダイオード
60 フォトディテクタ
62 センサユニット
64 弾性部材
64a,64b 取り付け部
70 サーボドライバ
74 CPU
75 ROM
72 エンコーダ
76 ブリッジ回路
78 制御部
80 CPU
81 ROM
82 RAM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者の動きに追随するように動作し、操作者の動きを補助するパワーアシスト装置において、
自由に回転する車輪が設けられた基台と、
基台から上方に向けて突出する脚部と、
脚部の上端に関節部を介して一端側が回動自在に連結され、操作者の上腕が挿入可能な第1の外装部と、
一端側が、第1の外装部の他端側と関節部を介して回動自在に連結され、操作者の前腕が挿入可能な第2の外装部と、
一端側が、第2の外装部の他端側と関節部を介して回動自在に連結され、操作者の手が挿入可能な第3の外装部と、
各関節部に設けられ、第1の外装部、第2の外装部および第3の外装部のそれぞれを関節部を中心として回動させる複数のアクチュエータと、
各外装部内に設けられ、操作者の腕および手によって押圧されることにより押圧方向に変形する複数の押圧検出センサと、
いずれかの押圧検出センサによって操作者からの押圧を検出した際に、該当する押圧検出センサが設けられているいずれかの外装部を、押圧されて変形した距離分だけ押圧方向に移動させるように各アクチュエータを制御する制御部とを具備することを特徴とするパワーアシスト装置。
【請求項2】
前記脚部は少なくとも2本設けられ、
前記第1の外装部、前記第2の外装部および前記第3の外装部は、操作者の左右両方の腕および手に対応するように、各一対づつ設けられていることを特徴とする請求項1記載のパワーアシスト装置。
【請求項3】
前記押圧検出センサは、
操作者の腕または手が当接する位置に設けられた押圧部と、
押圧部と所定の間隔をあけて配置される基準部と、
押圧部と基準部とを連結し、押圧部を操作者の腕または手が押圧することにより押圧部と基準部とを結ぶ方向に変形し、操作者の腕または手による押圧が解除された場合には変形が解消するような弾性部材で形成された連結部とを有することを特徴とする請求項1または請求項2記載のパワーアシスト装置。
【請求項4】
前記押圧部には、基準部と対向する面に光を反射する反射板が設けられ、
前記基準部には、反射板に対して光を照射する発光部および反射板から反射された光を受光する受光部が設けられ、
前記制御部は、受光部が受光する受光強度に基づいて連結部の変形による押圧部と基準部との距離の変化を算出し、算出された距離だけセンサ部が設けられた外装部が移動するように各アクチュエータを制御することを特徴とする請求項3記載のパワーアシスト装置。
【請求項5】
前記センサ部の反射板、発光部および受光部は、遮光された空間内に配置されていることを特徴とする請求項4記載のパワーアシスト装置。
【請求項6】
前記押圧部および前記基準部は金属板で形成されており、
前記制御部は、押圧部と基準部との間における静電容量の変化に基づいて、押圧部と基準部との距離の変化を算出し、出された距離だけセンサ部が設けられた外装部が移動するように各アクチュエータを制御することを特徴とする請求項3記載のパワーアシスト装置。
【請求項7】
操作者の動きに追随するように動作し、操作者の動きを補助するパワーアシスト装置に設けられ、操作者によって押圧されたことを検出するセンサであって、
操作者の身体の一部が当接する位置に設けられた押圧部と、
押圧部と所定の間隔をあけて配置される基準部と、
押圧部と基準部とを連結し、押圧部を操作者の身体の一部が押圧することにより押圧部と基準部とを結ぶ方向に変形し、操作者の身体の一部による押圧が解除された場合には変形が解消するような弾性部材で形成された連結部とを具備することを特徴とするセンサ。
【請求項8】
前記押圧部には、基準部と対向する面に光を反射する反射板が設けられ、
前記基準部には、反射板に対して光を照射する発光部および反射板から反射された光を受光する受光部が設けられていることを特徴とする請求項7記載のセンサ。
【請求項9】
前記センサ部の反射板、発光部および受光部は、遮光された空間内に配置されていることを特徴とする請求項8記載のセンサ。
【請求項10】
前記押圧部および前記基準部は金属板で形成されていることを特徴とする請求項7記載のセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−6161(P2008−6161A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−181261(P2006−181261)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(000106944)シナノケンシ株式会社 (316)
【Fターム(参考)】