パーキンソン病およびその症候の治療におけるピマバンセリンの使用
吸収または薬物動態に大きく影響することなく、ピマバンセリンを食物と一緒にあるいは食物なしで投与可能であることが分かる。また、運動症状を大幅に増悪することなく、ピマバンセリンを使用してパーキンソン病精神障害を治療することもできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2007年5月18日に出願された米国仮特許出願第60/938,985号ならびに2007年6月8日に出願された同第60/942,990号(いずれもその全体を本明細書に援用する)の優先権の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、化学および医薬の分野に関する。特に、本明細書に開示されるのは、ピマバンセリンの投与方法および使用方法である。
【背景技術】
【0003】
一般的な進行性神経変性疾患のひとつにパーキンソン病(PD)がある。その臨床診断は、静止時振戦、動作緩慢、固縮、姿勢保持障害をはじめとする、中核となる神経症候の有無に基づいている。また、患者には、同等に対処すべき多数の非運動症状が認められる。これには、精神障害および行動障害、痛み、感覚症状、鬱、痴呆が含まれる。このうち、羅患率および生活の質の観点からおそらく最も重要であり、なおかつ最も治療が困難なのが、精神障害である。PDが進行期にある患者の20%から40%に精神病的な症候が生じる。そして主に幻覚(ほとんどが目に見える)や妄想(通常はパートナーに対する偏執的な主題(paranoid theme)と関連がある)としてパーキンソン病精神障害(PDP)が現れる。初期症状は、存在感覚または通過感であることが多い。痴呆患者のほうがPDの精神障害になりやすい場合もある。
【0004】
PDの患者における精神障害の発症は進行性であって、介護施設への入所につながり、介護者に多大なるストレスを与え、患者集団での死亡の危険性を著しく高めることから、壊滅的であることが多い。PDPに関しては、安全性と有効性が証明された治療過程は存在しない。精神病的な症候が認められると、まずはドパミン系治療薬の投与量の低減が標準的な治療行為になることが多いが、この治療行為では必ずしも精神障害が軽減されるわけではなく、抗精神病的な利点が短期間のあいだ得られるだけである。また、運動機能不足の増大にもつながるのが普通である。
【0005】
PDの患者には共通して睡眠の問題が見られる。全体の80%を超えるPD患者に安眠できない睡眠障害があるとする研究もいくつか存在する。PD患者で一般的な睡眠の問題として、夜間睡眠分断、日中の過剰な眠気、下肢静止不能症候群、レム睡眠行動障害、睡眠時無呼吸、夢遊病、寝言、悪夢、夜驚症、パニック発作があげられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
抗精神薬およびドパミン受容体遮断薬が精神病的な症候の寛解に有効な場合がある。残念ながら、これらの化合物の多くは、PD患者のドパミン受容体遮断によるドパミン低下状態に付随して、患者の運動機能を大幅に低下させるものである。
【0007】
食物の摂取によって薬剤の吸収や薬物動態が変化することもある。食事と一緒に服用することが推奨される薬剤もあれば、空腹時に服用しなければならない薬剤もある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示された一実施形態は、医薬組成物と、処方情報と、容器とを含むキットであって、医薬組成物が治療有効量のピマバンセリンを含み、処方情報が、医薬組成物を食物と一緒にあるいは食物なしで服用可能であることを患者に伝えるものである、キットを含む。
【0009】
本明細書に開示された別の実施形態は、医薬組成物と、処方情報と、容器とを含むキットであって、医薬組成物が治療有効量のピマバンセリンを含み、処方情報が、食物がピマバンセリンの吸収率または吸収の度合いのいずれにも影響しない旨を患者に伝えるものである、キットを含む。
【0010】
本明細書に開示された別の実施形態は、治療用量のピマバンセリンを患者に与え、ピマバンセリンを食物と一緒にあるいは食物なしで服用可能であることを患者に伝えることを含む、患者にピマバンセリンによる治療を施すための方法を含む。
【0011】
本明細書に開示された別の実施形態は、治療用量のピマバンセリンを患者に与え、食物がピマバンセリンの吸収率または吸収の度合いのいずれにも影響しない旨を患者に伝えることを含む、患者にピマバンセリンによる治療を施すための方法を含む。
【0012】
本明細書に開示された別の実施形態は、患者にピマバンセリンを投与する方法であって、投与することが、ピマバンセリンを含む医薬組成物を、医薬組成物を食物と一緒にあるいは食物なしで服用可能であることを患者に伝える印刷ラベルの付された容器に入れて患者に提供することを含む、方法を含む。
【0013】
本明細書に開示された別の実施形態は、患者にピマバンセリンを投与する方法であって、投与することが、ピマバンセリンを含む医薬組成物を、食物がピマバンセリンの吸収率または吸収の度合いのいずれにも影響しない旨を患者に伝える印刷ラベルの付された容器に入れて患者に提供することを含む、方法を含む。
【0014】
本明細書に開示された別の実施形態は、パーキンソン病精神障害の治療方法であって、精神障害の症候を呈するパーキンソン病患者にピマバンセリンを投与することを含む、方法を含む。
【0015】
本明細書に開示された別の実施形態は、パーキンソン病の非運動症状の治療方法であって、ピマバンセリンを非運動症状の寛解に十分な量でパーキンソン病患者に投与することを含む、方法を含む。
【0016】
本明細書に開示された別の実施形態は、パーキンソン病に羅患している被験者における睡眠障害の寛解方法であって、睡眠障害を訴えているパーキンソン病被験者にピマバンセリンを投与することを含む、方法を含む。
【0017】
本明細書に開示された別の実施形態は、パーキンソン病に羅患している被験者における睡眠障害および精神障害の寛解方法であって、睡眠障害に羅患し、かつ精神障害の1つまたは複数の症候を呈しているパーキンソン病被験者に、ピマバンセリンを投与することを含む、方法を含む。
【0018】
本明細書に開示された別の実施形態は、痴呆のあるパーキンソン病患者における精神障害の寛解方法であって、精神障害の1つまたは複数の症候と痴呆の1つまたは複数の症候とを呈しているパーキンソン病患者に、ピマバンセリンを投与することを含む、方法を含む。
【0019】
本明細書に開示された別の実施形態は、日中の眠気を訴えている被験者にピマバンセリンを投与することを含む、日中の眠気を低減する方法を含む。
【0020】
本明細書に開示された別の実施形態は、介護者の世話でパーキンソン病患者にピマバンセリンを投与することを含む、介護者の生活の質を改善する方法を含む。
【0021】
本明細書に開示された別の実施形態は、死亡の危険性を低減するのに十分な量で患者にピマバンセリンを投与することを含む、パーキンソン病患者の死亡率を低下させる方法を含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】食物と一緒に投与した場合と食物なしで投与した場合のピマバンセリンの血漿中濃度を示すグラフである。
【0023】
【図2】食物と一緒に投与した場合と食物なしで投与した場合のピマバンセリンのCmax値を示すグラフである。
【0024】
【図3】食物と一緒に投与した場合と食物なしで投与した場合のピマバンセリンのAUC値を示すグラフである。
【0025】
【図4A】ピマバンセリンまたは偽薬の投与時におけるUPDRSパートIIおよびIIIの尺度のベースラインの変化を示す棒グラフである。
【0026】
【図4B】ベースラインとピマバンセリンまたは偽薬の投与28日後のUPDRSパートIIおよびIIIの尺度を示す棒グラフである。
【0027】
【図5A】ピマバンセリンまたは偽薬の投与時におけるUPDRSパートIの尺度のベースラインの変化を示す棒グラフである。
【0028】
【図5B】ベースラインとピマバンセリンまたは偽薬の投与28日後のUPDRSパートIの尺度を示す棒グラフである。
【0029】
【図6A】ピマバンセリンまたは偽薬の投与時における、全体、幻覚および妄想でのSAPSの尺度のベースラインの変化を示す棒グラフである。
【0030】
【図6B】ベースラインとピマバンセリンまたは偽薬の投与28日後の全体のSAPS尺度を示す棒グラフである。
【0031】
【図6C】ベースラインとピマバンセリンまたは偽薬の投与28日後の幻覚でのSAPS尺度を示す棒グラフである。
【0032】
【図6D】ベースラインとピマバンセリンまたは偽薬の投与28日後の妄想でのSAPS尺度を示す棒グラフである。
【0033】
【図7A】ピマバンセリンまたは偽薬の投与時におけるCGI尺度のベースラインの変化を示す棒グラフである。
【0034】
【図7B】ベースラインとピマバンセリンまたは偽薬の投与28日後のCGI尺度を示す棒グラフである。
【0035】
【図7C】ピマバンセリンまたは偽薬の投与時におけるCGI尺度の増大または低下を経験している被験者の割合を示す棒グラフである。
【0036】
【図8A】ピマバンセリンまたは偽薬の投与時におけるUPDRSパートIVの尺度のベースラインの変化を示す棒グラフである。
【0037】
【図8B】ベースラインとピマバンセリンまたは偽薬の投与28日後のUPDRSパートIVの尺度を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N−(4−フルオロフェニルメチル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミド、N−[(4−フルオロフェニル)メチル]−N−(1−メチル−4−ピペリジニル)−N’−[[4−(2−メチルプロポキシ)フェニル]メチル]−尿素、1−(4−フルオロベンジル)−1−(1−メチルピペリジン−4−イル)−3−[4−(2−メチルプロポキシ)ベンジル]尿素またはACP−103としても知られるピマバンセリンは、式(I)の構造を有する。
【化1】
【0039】
ピマバンセリンの製造に適した方法は周知であり、たとえば、2004年1月15日に出願された米国特許出願公開第2004−0213816号明細書ならびに、2007年5月15日に出願された同第2007−0260064号明細書(いずれもその全体を本明細書に援用する)に記載されている。
【0040】
ピマバンセリンはセロトニン受容体で活性を呈し、5−HT2A受容体の逆作動薬として作用する。5−HT2A受容体のヒト表現型を一時的に発現する細胞で実施した実験では、このような受容体に作用するリガンドが他に存在しなければ、この受容体のシグナル伝達がピマバンセリンによって減弱されることが明らかになっている。このように、ピマバンセリンが5−HT2A受容体で逆作動薬活性を持ち、この受容体の示す基本的な非作動薬刺激構成シグナル伝達応答を減弱できることが見いだされた。ピマバンセリンが5−HT2A受容体の逆作動薬であるという観察結果から、ピマバンセリンには内因性作動薬または外来性の合成作動薬リガンドが媒介する5−HT2A受容体の活性化に拮抗する機能があることも分かる。ピマバンセリンは、5−HT2A受容体に対してpKi>9という高い親和性を呈する。in vivoでのヒトおよび非ヒト動物による研究から、ピマバンセリンが、抗精神病、抗ジスキネジア、抗不眠症活性を呈することも明らかになっている。ピマバンセリンのこのような特性が、発明の名称「SELECTIVE SEROTONIN 2A/2C RECEPTOR INVERSE AGONISTS AS THERAPEUTICS FOR NEURODEGENERATIVE DISEASES」で2004年1月15日に出願された米国特許出願公開第2004−0213816号明細書(その内容全体を、図面も含めて本明細書に援用する)に記載されている。
【0041】
ピマバンセリンは、5−HT2A受容体で選択的活性を呈する。具体的には、ピマバンセリンは、36のヒトモノアミン受容体のうち、5−HT1A、5−HT1B、5−HT1D、5−HT1E、5−HT1F、5−HT2B、5−HT3、5−HT4、5−HT6A、5−HT7A、アドレナリンα1A、アドレナリンα1B、アドレナリンα1D、アドレナリンα2A、アドレナリンα2B、アドレナリンβ2、ドパミンD1、ドパミンD2、ドパミンD3、ドパミンD4、ヒスタミンH1、ヒスタミンH2、ヒスタミンH3をはじめとする31の受容体で機能的活性を欠く(pEC50またはpKi<6)。このため、ピマバンセリンは、他のほとんどのモノアミン受容体とは親和性がほとんどないかまったくない状態で、5−HT2A受容体で高い親和性を示す。
【0042】
また、ピマバンセリンは安定性が高く、経口バイオアベイラビリティが良好で、半減期が長い。具体的には、ピマバンセリンはin vitroでのヒトミクロソームからのクリアランス速度が遅く(<10μL/分・mg)、ヒトに経口投与したときの半減期が約55時間である。
【0043】
本明細書に記載の方法では、さまざまな形態のピマバンセリンを使用することが可能である。たとえば、ピマバンセリンの多数の塩および結晶形態を使用できる。塩の例としては、酒石酸塩、ヘミ酒石酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、エジシル酸塩(エタンジスルホン酸塩)があげられる。特に上述したイオンを含むピマバンセリン塩が、発明の名称「SALTS OF N−(4−FLUOROBENZYL)−N−(1−METHYLPIPERIDIN−4−YL)−N’−(4−(2−METHYLPROPYLOXY)PHENYLMETHYL)CARBAMIDE AND THEIR PREPARATION」で2005年9月26日に出願された米国特許出願公開第2006−0111399号明細書(その内容全体を本明細書に援用する)に記載されている。酒石酸塩の2つの結晶形態は、それぞれ結晶形態Aおよび形態Cと呼ばれ、発明の名称「SYNTHESIS OF N−(4−FLUOROBENZYL)−N−(1−METHYLPIPERIDIN−4−YL)−N’−(4−(2−METHYLPROPYLOXY)PHENYLMETHYL)CARBAMIDE AND ITS TARTRATE SALT AND CRYSTALLINE FORMS」で2006年9月26日に出願された米国特許出願公開第2006−0106063号明細書(その内容全体を本明細書に援用する)に記載されている。各々が発明の名称「PHARMACEUTICAL FORMULATIONS OF PIMAVANSERIN」で、2007年5月15日に出願された米国特許出願公開第2007−0260064号明細書ならびに、2007年5月15日に出願された同第2007−0264330号明細書(その内容全体を本明細書に援用する)にさらに詳細に記載されているように、ピマバンセリン(酒石酸塩などを含む)を錠剤に処方してもよい。
【0044】
同様に、単離された実質的に純粋なピマバンセリンの代謝物を使用してもよい。使用可能な好適な代謝物は、以下の式(II)〜(V)に示す化学構造を有する。
【化2】
【0045】
本明細書で説明するような式(II)、(III)、(IV)、(V)の化合物は、さまざまな方法で調製できるものである。式(II)、(III)、(IV)、(V)の化合物の一般的な合成経路をスキームA〜Dに示す。図示の経路は一例にすぎず、本発明の範囲をいかなる火達でも限定することを意図したものではなく、そのように解釈されるものでもない。当業者であれば、ここに開示の合成に対する改変例が分かるであろうし、本明細書の開示をもとに別の合成経路を考案できるであろう。このような改変と別の経路もすべて本発明の範囲内である。
【0046】
(スキームA)
【化3】
スキームAは、式(II)の化合物を形成するための一般的な反応スキームを示す。スキームAに示されるように、二級アミンとイソシアネートを組み合わせて、式(II)の化合物の4−メトキシベンジル誘導体を生成することもできる。たとえば、三ハロゲン化ホウ素を用いて式(II)の化合物を形成するなど、当業者間で周知の方法を使用し、メトキシ基をヒドロキシ基に変換することが可能である。
【0047】
(スキームB)
【化4】
式(III)の化合物を合成するための方法の例をスキームBに示す。保護された4−ピペリドイノン(piperidoinone)および4−フルオロベンジルアミンに還元的アミノ化をほどこし、N−(4−フルオロベンジル)−4−アミノ−1−トリフルオロアセチルピペリジンを形成することが可能である。次に、こうして得られる二級アミンを適当なイソシアネートと反応させれば、窒素保護カルバミドを形成することができる。炭酸カリウムなどのアルカリ金属塩を用いてアシル保護基を切断し、式(III)の化合物を形成することが可能である。
【0048】
(スキームC)
【化5】
式(IV)の化合物を合成するためのひとつの方法をスキームCに示す。式(II)の化合物をイソブチレンオキシドと反応させれば、エポキシドの求核的開環によって式(IV)の化合物を形成することができる。
【0049】
(スキームD)
【化6】
スキームDは、式(V)の化合物を形成するための一般的な反応スキームを示す。スキームDに示されるように、式(II)の化合物をハロヒドリンと反応させれば、式(V)の化合物を形成することができる。本明細書に記載の化合物はいずれも、当業者間で周知の方法を用いて精製可能なものである。さらに、単離された実質的に純粋なピマバンセリンの代謝物である、式(II)、(III)、(IV)、(V)の化合物は、発明の名称「N−SUBSTITUTED PIPERIDINE DERIVATIVES AS SEROTONIN RECEPTOR AGENTS」で2007年9月21日に出願された米国仮特許出願第60/974,426号明細書(その内容全体を本明細書に援用する)に記載されている。
【0050】
特に明記しないかぎり、本明細書で使用するピマバンセリンには、化合物の遊離塩基、そのすべての塩、水和物、溶媒和物、多形、その単離された実質的に純粋な代謝物を、個々にまたは組み合わせで含む。一実施形態において、使用するピマバンセリンの形態がその酒石酸塩である。
【0051】
(食物による影響)
驚くべきことに、食物と一緒にピマバンセリンを投与する場合と食物なしでピマバンセリンを投与する場合で、薬物動態には何ら有意な差異が認められないという発見があった。このため、いくつかの実施形態では、食物と一緒にあるいは食物なしでピマバンセリンを患者に投与する。いくつかの実施形態では、治療用量のピマバンセリンを患者に与え、患者は、書面または口頭で、その用量を食物と一緒にあるいは食物なしで服用可能である旨を伝えられる。いくつかの実施形態において、患者は、食物がピマバンセリンの吸収率または吸収の度合いのいずれにも影響しない旨を伝えられる。いくつかの実施形態では、患者への通知が、ピマバンセリン剤形を含む容器に付された印刷ラベルによってなされる。一実施形態は、ピマバンセリン製薬剤形と、容器と、上述した通知を含む処方情報とを含むキットを含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、上述した通知に従ってピマバンセリンを別の抗精神病薬との組み合わせで投与する。たとえば、いくつかの実施形態では、ピマバンセリンをリスペリドンとの組み合わせで投与する。リスペリドンは、それ自体が食物と一緒にあるいは食物なしで薬物動態に有意な差異を生じることなく服用可能なものである。
【0053】
(パーキンソン病精神障害)
また、ピマバンセリンを使用してパーキンソン病の非運動症状を治療できるという発見もあった。さまざまな実施形態では、非運動症状としては、鬱、痴呆、無気力、幻覚、よだれ、便秘、痛み、泌尿生殖器の異常、睡眠障害のうちの1つまたは複数があげられる。パーキンソン病の非運動症状については、当業者間で周知のNMSQUESTの質問を用いて測定できる。このため、一実施形態では、ピマバンセリンをパーキンソン患者に投与して、NMSQUESTの質問に表れる非運動症状を改善する。
【0054】
治療にあたってピマバンセリンが有効な非運動症状のひとつにパーキンソン病精神障害(PDP)があるという発見があった。このため、一実施形態は、精神障害の症候を呈するパーキンソン病患者にピマバンセリンを投与することによるパーキンソン病精神障害の治療方法を含む。いくつかの実施形態では、ピマバンセリンで治療されるパーキンソン病精神障害が薬剤誘発性ではない。一実施形態では、投与が患者の陽性症状評価尺度(SAPS)を小さくするのに十分なものである。一実施形態では、投与が幻覚の重症度および/または頻度を下げるのに十分なものである。一実施形態では、投与が妄想の重症度および/または頻度を下げるのに十分なものである。さまざまな実施形態では、投与によって、SAPSの総スコア、幻覚のサブスコアおよび/または妄想のサブスコアが少なくとも約10%、20%、30%、40%または50%小さくなる。いくつかの実施形態では、パーキンソン病精神障害の低減を、臨床全般印象(CGI)尺度の低下によっても示す。さまざまな実施形態では、投与によって、CGI尺度が少なくとも約5%、10%、15%または20%小さくなる。いくつかの実施形態では、パーキンソン病精神障害の低減を、統一パーキンソン病評価尺度(UPDRS)のパートI(精神機能、行動および気分)の低下によって示す。さまざまな実施形態では、投与によって、UPDRSのパートIが少なくとも約10%、20%、30%または40%小さくなる。
【0055】
パーキンソン病のもうひとつの非運動症状に日中の眠気がある。一実施形態では、ピマバンセリンをパーキンソン病患者に投与して、日中の眠気を減少させる。一実施形態では、日中の眠気の減少をSCOPA−睡眠尺度の改善によって示す。
【0056】
いくつかの実施形態は、介護者の世話でパーキンソン病患者にピマバンセリンを投与することによって介護者の生活の質を改善することを含む。一実施形態では、投与が介護者の介護者負担感尺度を小さくするのに十分なものである。
【0057】
一実施形態では、ピマバンセリンを投与しても運動症状の有意な増悪を生じない。一実施形態では、運動症状の有意な増悪の欠如を、統一パーキンソン病評価尺度(UPDRS)、特に尺度のパートII(日常生活動作)およびIII(運動能力検査)における有意な増悪の欠如によって示す。さまざまな実施形態では、パーキンソン病精神障害を改善するのに十分な薬用量のピマバンセリンを投与することで、パートIIおよびIIIのUPDRSスコアが約15%未満、10%未満、5%未満または3%未満で変化する。
【0058】
一実施形態では、投与によってパーキンソン病患者の死亡率が低下する。一実施形態では、パーキンソン病患者がパーキンソン病精神障害に羅患している。
【0059】
上述したようにして投与されるピマバンセリンの薬用量は、効果のある結果を得るのに適した薬用量であればよい。いくつかの実施形態では、ピマバンセリンを約5mg〜約100mgで1日1回投与する。一実施形態では、約40mgのピマバンセリンを1日1回投与する。一実施形態では、約10mgのピマバンセリンを1日1回投与する。一実施形態では、約20mgのピマバンセリンを1日1回投与する。
【0060】
上述した方法のいくつかの実施形態では、ピマバンセリンを抗パーキンソン病薬と同時投与する。一実施形態では、抗パーキンソン病薬がレボドパを含む。一実施形態では、抗パーキンソン病薬がSINEMET(登録商標)(カルビドパ−レボドパの組み合わせ)を含む。一実施形態では、抗パーキンソン病薬がラサギリンである。
【実施例】
【0061】
(実施例1−食物による影響)
8名の被験者で、単一施設無作為化非盲検比較第3相不完全クロスオーバーデザインでの試験を実施した。被験者は1日目にチェックインし、処置ごとに合計5.5日間にわたり施設で過ごした。1日目に、絶食条件下または食事条件下のいずれかで被験者全員にピマバンセリンを単回投与(100mg)した。投薬216時間後まで単一の薬物動態サンプルを収集した。ピマバンセリンについては以下のとおり投与した。
処置A:絶食条件下にて経鼻胃管経由でピマバンセリン100mg(20mg/mLのピマバンセリン溶液5mL)
処置B:絶食条件下にてピマバンセリン100mg(20mgの錠剤5個)を経口投与
処置C:食事条件下にてピマバンセリン100mg(20mgの錠剤5個)を経口投与
【0062】
各々被験者2名を無作為化し、以下の処置順のうちのひとつに割り付けた。ABC、CBA、BACまたはCAB。食事下での処置の場合、高脂肪の朝食の直後に単回経口用量のピマバンセリンを投与した。処置と処置との間隔を少なくとも14日間あけた。
【0063】
ピマバンセリンについては、ポリ塩化ビニル(PVC)製の経鼻胃管経由で溶液として、あるいは20mgの錠剤として投与した。溶液の場合、粉末のピマバンセリンを濃度20mg/mLまで水で再構成した。摂取後、被験者に十分な水を飲むよう求め、合計で240mLの容量を摂取できるようにした。ピマバンセリン錠剤は240mLの水と一緒に投与した。
【0064】
(被験者)
体格指数(BMI)19〜28kg/m2で18歳から45歳までの喫煙をせず若くて健康な男性を、この試験への参加者に選んだ。臓器に著しい異常または疾患がある場合、スクリーニング時にバイタルサインまたは臨床検査結果に異常が認められた場合、あるいは試験開始前1年以内に重篤な身体の病気をしたことがある場合は、被験者から除外した。また、腎疾患、肝疾患、消化器疾患、循環器疾患または血液疾患、発作、癲癇、重度の頭部外傷、多発性硬化症または他の周知の神経症状、B型肝炎またはC型肝炎(あるいはB型肝炎表面抗原検査またはC型肝炎抗体検査で陽性)またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)あるいはアルコール乱用または薬物乱用(またはスクリーニング時に尿中薬物検査またはアルコール検査で陽性)の既往歴がある場合、あるいは、試験期間中に外科手術を受けることを検討しているまたは外科手術を受ける予定になっている場合も、試験に参加する被験者から除外した。さらに、試験開始前30日以内に血漿または血液を提供した被験者、試験開始前14日以内に薬での治療が必要だった被験者、試験開始前3か月以内に周知の肝クリアランスまたは腎クリアランス調整剤を用いた被験者、試験開始前3か月以内に試験中の薬を摂取または試験中の装置を使用した被験者または特別な食事が必要な被験者も除外した。被験者には、法的な合意ができるだけの知能があることを要件とした。
【0065】
合計で8名の健康で喫煙をしない男性被験者が試験に登録した。登録被験者の平均年齢は28.3±7.4歳(19〜40歳の範囲)で、平均体重74.96±11.75kg(63.0〜96.9kgの範囲)、平均身長176.38±8.19cm(163.0〜189.0cmの範囲)であった。体格指数の平均は24.1±2.3kg/m2(21〜28kg/m2の範囲)であった。参加した8名の健康な男性被験者のうち、7名(87.5%)が白人で、1名(12.5%)は白人、黒人、アジア人、東洋人以外の人種であった。
【0066】
(手法)
組み入れ/除外基準を含めて各処置期間にチェックインする前に、病歴、健康診断、12誘導ECG、臨床検査結果、バイタルサイン、尿中薬物スクリーニング、血清スクリーニングを含むスクリーニング法を実施した。インフォームドコンセントについては、初回の処置期間の前に一度だけ得た。1日目に試験を開始する前に尿中薬物スクリーニング検査の結果を見直した。
【0067】
処置AまたはB(絶食)が割り付けられる予定になっていた被験者は全員、1日目の夜に軽食を取った後に絶食を開始し、一晩中10時間にわたって絶食した。10時間の絶食後にピマバンセリンを投与した。処置C(食事)が割り付けられる予定になっていた被験者は、1日目の投薬30分前に高脂肪の朝食を取った。処置Cの被験者には、朝食を25分以内で完食するよう求めた(すなわち、薬剤投与の5分以内)。高脂肪の朝食の内訳は、卵2個をバターで目玉焼きにし、ベーコン2枚、バタートースト2枚、ハッシュブラウンポテト4オンス、全乳(脂肪約55g、タンパク質33g、炭水化物58g)8オンスとした。各処置期間の1日目には、全用量投与の厳密な時刻と朝食の時間を正確に記録した。各試験期間の1日目の昼食は、被験者全員に投薬の4時間後に与えた。それ以外の食事はいずれも、被験者全員に同じ時刻に与え、3つの期間のすべての用量群で特定の食事時間について同一の内容とした。水については、投薬2時間後以降は自由に飲めるようにしておいた。
【0068】
血漿ピマバンセリン濃度の測定および臨床検査用に、血液サンプルを採取した。少なくとも1つの処置期間での薬物動態パラメータのデータのある被験者は全員を統計解析の対象にした。ヘパリン処理したヒト血漿中のピマバンセリン濃度の定量判断のための高速液体クロマトグラフィ/タンデム質量分析(LC/MS/MS)法を確認した。確認後の方法では、ヘパリン処理したヒト血漿100μLを用いて、この分析物での標準曲線の範囲が0.5〜500ng/mLであった。
【0069】
試験の間に以下の変数を収集し、安全性と組み入れ基準を評価した:変更を加えた健康診断;ベースライン(スクリーニング)で年齢、性別、人種、身長、体重を含む人口統計と病歴を収集した;3とおりの姿勢での血圧および脈拍数(仰臥位で5分、座位で1分、立位で3分)、呼吸数、口腔体温を含むバイタルサインを収集し、12誘導ECGを記録し、QRS、PR、QT、QTc間隔を含むECGの標準パラメータを測定した。また、ピマバンセリン投薬に続く最初の12時間、II誘導連続ECGモニタリングを実施した(神経学的検査、12誘導ECGの測定、被験者がトイレ設備を利用するときはII誘導連続モニタリングを中断した)。スクリーニングでHepB、HepCおよびHIV抗体試験を実施した。スクリーニングおよび各処置期間へのチェックイン時に、定性尿中薬物(コカイン、アヘン、アンフェタミン、アルコール、ベンゾジアゼピン、バルビツレート、尿中クレアチニン)およびアルコール試験を実施した。
【0070】
8時間の絶食後に臨床検査を実施したが、これには以下の項目を含めた。血液検査:ヘマトクリット、ヘモグロビン、赤血球数・指数(平均赤血球容積、平均赤血球ヘモグロビン、平均赤血球ヘモグロビン濃度)、白血球数および絶対値での白血球百分率(好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球)、血小板(血小板数、プロトロンビン時間、活性化部分トロンボプラスチン時間);血清生化学検査:アルブミン、アルカリホスファターゼ、血中尿素窒素、γ−グルタミルトランスフェラーゼ、カルシウム、クレアチニン、グルコース、コレステロール(高密度リポ蛋白コレステロールおよび低密度リポ蛋白コレステロールを含む)、トリグリセリド、ホスフェート、カリウム、アスパラギン酸トランスアミナーゼ、アラニントランスアミナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、ナトリウム、塩化物、ビリルビン(総ビリルビン、直接ビリルビン、間接ビリルビン)、総蛋白、尿酸;尿検査:肉眼的(pH、比重、グルコース、蛋白、ケトン、血液)および顕微鏡(RBCs/hpf、WBCs/hpf、細菌、円柱、上皮細胞、粘液糸、結晶)。
【0071】
(薬物動態解析)
WinNonlin(登録商標)プロフェッショナルバージョン4.01(Pharsight Corp.、Mountain View、California)を使用して、非コンパートメント解析によって、遊離塩基としてのピマバンセリンの血漿中濃度から薬物動態パラメータを算出した。Windows用のSAS(登録商標)バージョン8.2(SAS Institute、Cary、North Carolina)またはSigmaPlot(登録商標)7.101(SPSS,Inc.、Chicago、Illinois)を用いて画像を作成した。血漿薬物動態の算出はいずれも実際のサンプリング時間を基準におこなった。
【0072】
自然対数変換したAUC0−∞、AUC0−z、Cmaxを処置間で比較評価した。それぞれのパラメータについて、系列、系列でネストした被験者、時期、処置を要因とした分散分析(ANOVA)を実施した。このANOVAから、処置ごとの最小二乗平均、処置間の差の推定値、処置間の差に対する90%信頼区間を算出した。これらの対数変換結果を累乗法で正規スケールに変換して、調整平均、処置の比、これらの比に対する90%信頼区間を得た。錠剤製剤の相対的バイオアベイラビリティを評価するために、絶食した被験者への錠剤および溶液投与後の薬物動態パラメータのピマバンセリン比を算出した。溶液は参照基準として用いた。高脂肪の食事がピマバンセリンのPKに対しておよぼす影響について評価するために、錠剤「食事」処置のPKパラメータを錠剤「絶食」処置のPKパラメータと比較した。この場合、錠剤「絶食」を参照基準として用いた。一元配置の統計比較はAUC0−∞およびCmaxをもとにした。AUC0−∞およびCmaxの比に対する90%信頼区間が70〜143%の範囲に入れば、食物はピマバンセリンのPKに何ら影響しないという仮説を許容した。
【0073】
(結果)
濃度の被験者間のばらつきは概して50%未満であった。ピマバンセリンの平均血漿中濃度は投薬後約6時間で最高に達した後、単一指数的に下降した。処置間で全身曝露に差異はほとんどなかった。
【0074】
Tmaxの中央値は、処置Aおよび処置Bで6時間、処置Cで10.5時間であった。平均Cmaxは、処置Aで約51ng/mL、処置Bで57ng/mL、処置Cで52ng/mLであった。各処置群の平均薬物動態プロファイルを図1に示し、処置ごとの個別および平均Cmaxを図2に示す。処置A、B、Cの平均AUC0−∞値は、それぞれ3847、3871、4269ng×時間/mLであった。処置ごとの個別および平均AUC0−∞を図3に示す。半減期および経口クリアランスの値は処置間で同様であった。
【0075】
処置B/処置Aと処置C/処置Bの対について、統計的な一対比較を実施した。異なる処置条件でのピマバンセリン100mgの単回経口または経鼻胃投与後の血漿ピマバンセリン薬物動態パラメータを表1にあげておく。それぞれの比較で90パーセント信頼区間(90%CI)が80〜125%の範囲内であったことから、錠剤製剤と溶液の生物学的同等性ならびに、ピマバンセリンの薬物動態に対する食物による影響がないことが分かる。錠剤製剤の相対的な生物学的同等性は99.7%であった。
【表1】
【0076】
(考察)
ピマバンセリンの薬物動態への食物による影響はなかった。用量溶液に対する錠剤製剤の相対的な生物学的同等性は99.7%であった。ピマバンセリンの薬物動態プロファイルは処置群間で一貫していた。ピマバンセリンはTmaxの中央値が6時間、平均半減期が55〜60時間であった。ピマバンセリン100mgの投薬後、平均Cmaxが50〜60ng/mL、平均AUC0−∞は3800〜4300時間×ng/mLの範囲であった。
【0077】
高脂肪食は錠剤製剤として投与した場合のACP−103の全身曝露に何ら影響せず、その吸収、曝露またはクリアランスが食物で変わらないことが分かる。また、報告のあった概して軽度の有害事象も食事条件と絶食条件とで同様であった。
【0078】
(実施例2−パーキンソン病第II相試験)
この試験については、系列群において入院単一施設無作為化二重盲検偽薬制御用量漸増試験を実施した。各服用量について被験者6名ずつの2つの異なる群を登録し、偽薬(N=2)またはピマバンセリン(N=4/用量;25mgまたは100mg)を与えた。この試験の開始用量は、健康な被験者で最大耐用量(MTD)(100mg)の四分の一に基づいて、25mgであった。第1群では反復投与10日後に安全性変数の中間解析を実施し、第2群の用量を求めた。さらに、1日目の24時間連続血液/血漿採取後のピマバンセリンの薬物動態(PK)を、第1の服用量で評価し、パーキンソン病被験者のピマバンセリン曝露と健康な被験者のピマバンセリン曝露とを比較した上で、第2の服用量に漸増した。2回以上参加した被験者はいなかった。
【0079】
(被験者)
特発性パーキンソン病の臨床診断で健康状態が良好(静止時振戦、固縮、動作緩慢および/または無動症、パーキンソン病に典型的な姿勢保持障害という基本的特徴のうち少なくとも3つが該当し、別の説明または非定型の特徴がないと定義)でありさえすれば年齢と人種を問わない男性および女性の被験者が、試験への参加適任者であった。HoehnおよびYahr(H/Y分類)尺度で疾患の重症度を評価し、5度であったらその被験者を除外した。女性は妊娠の可能性のない人でなければならず、あるいは受胎に対して二重にバリア保護する方法で集める必要があった。被験者全員、ミニメンタルステータス検査(MMSA)のスコアが25以上であり、なおかつ試験1日目の少なくとも1週間前に抗パーキンソン薬で安定している必要があった。試験期間中、併用薬はいずれも安定したままであった。末期症状、臨床的に有意な発病前精神症状あるいは、有意な血液病、腎疾患、肝疾患、内分泌疾患、神経疾患(パーキンソン病以外)または心血管疾患が認められるか、過去3か月以内に既往歴がある場合には、その被験者を除外した。抗精神薬、選択的セロトニン再取り込み阻害剤またはパーキンソン病で承認された以外の精神神経薬ならびに周知の肝クリアランスまたは腎クリアランス調整剤を併用または最近使用した被験者も除外した。乱用薬物、B型肝炎またはC型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の検査で陽性であるか既往歴がある場合も除外対象とした。被験者には、試験に参加する前にインフォームドコンセントを提供するよう求めた。
【0080】
この試験には合計12名の被験者が登録し、12名の被験者全員が大きなプロトコールの偏差なく試験手順を終えた。用量群での被験者の人口統計は、体重およびBMI以外は同様であった。ピマバンセリン100mgの用量群は、偽薬群よりも平均体重が約17ポンド軽く、ピマバンセリン25mgの用量群よりも13ポンド軽い被験者で構成し、ピマバンセリン100mgの用量群の平均BMIは偽薬群よりも約8%小さく、ピマバンセリン25mgの用量群よりも21%小さかった。
【0081】
8名(66.7%)の被験者が男性、4名(33.3%)が女性であった。登録被験者の平均年齢は65.0±8.1歳(48〜78歳の範囲)で、平均体重79.53±18.11kg(60.0〜124.7kgの範囲)、平均身長167.30±8.13cm(150.0〜177.8cmの範囲)であった。体格指数の平均は28.59±7.16kg/m2(22.0〜45.2kg/m2の範囲)であった。12名の被験者のうち、8名(66.7%)が白色人種、2名(16.7%)がヒスパニック、1名(8.3%)がアフリカ系アメリカ人、1名(8.3%)がイラン人であった。
【0082】
11名(91.7%)の被験者が、1日目に尿中薬物およびアルコールスクリーン試験で陰性であった。1名の被験者はベンゾジアゼピン試験で陽性であり、試験への参加を免除された。
【0083】
(試験手順)
試験薬を用いてから21日以内に被験者をスクリーニングした。1日目に被験者を入院させ、合計で18泊19日拘束した。1日目のチェックイン後、これに続く投与日の予想ピマバンセリンTmaxとほぼ同時に、被験者全員の選択安全性および薬力学的測定値を集めた。
【0084】
1日目〜14目には、経口用量の試験薬を毎朝被験者に投与した。試験薬は、5mg、20mgまたは偽薬の入った、視覚的に揃っているコート錠で構成した(25mg群の被験者が5mgの錠剤1個と20mgの錠剤1個または偽薬錠剤2個を摂取;100mg群の被験者が20mgの錠剤5個または偽薬錠剤5個を摂取するなど)。朝食終了の1時間後に合計240mLの水で各用量を投与した。
【0085】
1日目に、投薬前(0時間)と試験薬の投与2時間後、4時間後、6時間後、9時間後、12時間後、24時間後に連続血液サンプルを採取した。血漿中トラフ濃度を判断するために、7日目、10日目および13日目にも投薬前に血液サンプルを採取した。14日目に、投薬前(0時間)と試験薬の投与2時間後、4時間後、6時間後、9時間後、12時間後、24時間後、48時間後、72時間後、96時間後、144時間後、216時間後に連続血液サンプルを採取した。試験の間をとおして、バイタルサイン、心電図(ECG)測定値、神経学的評価および臨床試験(8時間の絶食後に測定)を定期的に集めた。また、1日目(1日目の投薬の24時間前)から2日目(ピマバンセリンまたは偽薬の初回投薬の24時間後)にかけて48時間連続の2誘導Holterモニタリングを実施し、試験の7日目から9日目にかけて2回の投与間隔をあけてこのモニタリングを再度実施した。報告または観察された有害事象を集めた。
【0086】
(データ解析)
各処置期間の1日目にピマバンセリン単回投薬後の血漿中濃度から算出したPKパラメータには、以下の項目を含めた:最高血漿中濃度(Cmax)、最高血漿中濃度到達時間(Tmax)、線形台形法に基づく総和によって算出した反復投与(24時間)で使用する時刻0から投薬間隔(τ)の終わりまでの血漿中濃度時間曲線下血漿面積[AUC(0−τ)]。14日目の最後の投薬後に血漿中濃度からの算出対象とするパラメータには以下の項目を含めた:定常状態の最高血漿中濃度(Cmax,ss)、定常状態の最低血漿中濃度(Cmin,ss)、AUC(0−τ)ssを投与間隔(τ)で割って求めた定常状態の平均血漿中濃度(Cavg,ss)、定常状態での最高血漿中濃度到達時間(Tmax,ss)、定常状態での最低血漿中濃度到達時間(Tmin,ss)、線形台形法に基づく総和によって算出した時刻0から定常状態での投与間隔の終わり(τ=24時間)までの血漿中濃度時間曲線下面積[AUC(0−τ),ss]、対数線形血漿中濃度時間曲線の終点の線形回帰で求めた定常状態での消失速度定数(λz,ss)、ln(2)/λz,ssとして求めた定常状態での終末半減期(t1/2,ss)、用量/AUC(0−τ)ssによって算出した見かけの経口クリアランス(CLpo,ss)、(Cmax,ss−Cmin,ss)/Cavg,ss×100%として算出した変動率(%Fluct)、AUC(0−τ)ss/AUC(0−τ)として算出した蓄積比[AR(1)]、Cmax,ss/Cmaxとして算出した蓄積比[AR(2)]。補正係数2×427.561/1005.2=0.851を用いて、ピマバンセリン二塩基塩の用量の重さ(1005.2g/mol)を遊離塩基の重さに調節した(427.561g/mol)。
【0087】
少なくとも1用量の試験薬を用いた被験者から得られるすべての安全性データを安全性解析に含めた。有害事象の頻度を一覧にした。試験内と試験の終わりのベースライン、ベースラインの研究室データからの変化、バイタルサイン、ECGパラメータをまとめた。実験パラメータごとにシフトテーブルを作成した。
【0088】
(結果)
1日目の25mgと100mgの投与2時間後に血漿中の平均ピマバンセリン濃度を測定した。1日目に血漿中の平均ピマバンセリン濃度が最大値に達するまでの時間は、25mgのピマバンセリン投与では約9時間後、100mgのピマバンセリン投与では12時間後であった。1日目の血漿中の平均ピマバンセリン濃度は、25mgと100mgのピマバンセリン投薬後の24時間後で定量化可能であった。
【0089】
ピマバンセリン25mgおよび100mgの反復投与後、14日目に血漿中の投薬前平均ピマバンセリン濃度を測定した。14日目に血漿中の平均ピマバンセリン濃度が最大値に達するまでの時間は、ピマバンセリン用量25mgと100mgの両方で約9時間であった。14日目の血漿中の平均ピマバンセリン濃度は、25mgと100mgの投薬後312時間で定量化可能であった。
【0090】
変動係数の割合(CV%)で測定した濃度の被験者間のばらつきは、試験開始時(1日目および14日目に投薬後最大6時間まで)と最後の用量後(72時間から試験終了後まで)を除き、概してピマバンセリン用量25mgの場合で50%未満であった。被験者間のばらつきは、ピマバンセリン用量100mgのほうがピマバンセリン用量25mgよりも概して小さかった。
【0091】
各用量群についての14日間の投薬期間(15日目に集めた24時間サンプルも含める)でのピマバンセリンの平均トラフ濃度の解析から、基本的には投与10〜13日以内で定常状態に達することが分かった。7日目、10日目、13日目、14日目、15日目に取得したトラフ濃度の統計解析から、7日目までにトラフ濃度が定常状態に達することが分かった。7日目の平均トラフ濃度は、14日目と15日目に観察された値の約20%であった。サンプルサイズが小さい(用量群あたりN=4)ため、統計解析では7日目とそれ以後のPKサンプリング日との間のトラフ濃度のわずかな差異を見極められなかった。
【0092】
実際のサンプル収集時間を用いて非コンパートメント解析で血漿中ピマバンセリン濃度時間データを解析した。中央値Tmaxは、1日目にピマバンセリン用量25mgで10.58時間、100mgで10.53時間であった。ピマバンセリン25mgおよび100mgの投与後、1日目の平均Cmax値はそれぞれ11.37および43.65ng/mLであり、平均Cmaxは用量の漸増に比例して増加するように見えた。1日目の平均AUC(0−t)値は、ピマバンセリン25mgの投与後に198.5ng×時間/mL、100mgの投与後に761.5ng×時間/mLであった。ピマバンセリン用量100mgでピマバンセリン用量25mgの場合と比してAUC(0−t)の4倍増が観察されたが、これは1日目のAUC(0−t)が用量に比例して増加したことを示唆するものである。
【0093】
14日目に、中央値Tmax,ss値は、ピマバンセリン用量25mgで7.50時間、100mgで9.00時間であった。1日目のTmaxの範囲よりも14日目のTmaxの範囲のほうが狭くなった(4.00から12.00時間)。平均Cmax,ss値は用量25mgで53.00、用量100mgで142.8ng/mLであった。平均Cmin,ss値は用量25mgで39.08、用量100mgで97.15ng/mLであった。平均Cavg,ss値は用量25mgで46.70、用量100mgで121.8ng/mLであった。用量が4倍になると、これらの薬物動態パラメータの約2.6倍増が観察された。この比は、100mgと25mgの用量での平均AUC(0−t),ssの比較結果(2920対1121ng×時間/mL)と一致した。しかしながら、この試験ではサンプルサイズが小さい(N=4)ことを考慮すると、用量比例性の推論をすることはできない。
【0094】
平均t1/2,ssは、用量25mgで77.2時間、用量100mgで50.9時間であり、用量とは無関係であるように見えた。平均経口クリアランス(CLpo,ss)は、用量25mgで21.23L/時間、用量100mgで29.43L/時間であった。この試験での最高濃度と最低濃度との間には変動がほとんどなかった。平均変動率31%および39%は、ピマバンセリン用量25mgと100mgで同様であった。
【0095】
平均Cmax,ss対Cmax比は、ピマバンセリン25mgで4.8、100mgで3.5であった。平均AUC(0−t),ss対AUC(0−t)比は、25mgで5.8、100mgで4.1であった。どちらの用量群でも14日目に有意なピマバンセリンの蓄積が観察された。
【0096】
19日間の拘束期間ならびに試験終了時とフォローアップ時をとおして、有害事象を連続的にモニタした。全体として有害事象は概して強度が穏やかであった。どの有害事象にも用量関連の増加は認められず、最大耐量には達しなかった。この試験の実施時に重大な有害事象は発生しなかった。
【0097】
ピマバンセリンの用量を増やしながら投与して、臨床検査データ、血液学的な分析物、血清生化学分析物、尿検査結果またはバイタルサイン値に、臨床的に有意な変化または傾向は観察されなかった。安全性の値はピマバンセリン処置被験者と偽薬被験者で同様であった。12名(100.0%)の被験者が、1日目から1日目(48時間)と7日目から9日目(48時間)に実施したII誘導Holter ECGモニタリングに異常なエピソードを少なくとも1回経験した。しかしながら、臨床的に重要であるとみなされたのは、これらの異常なII誘導Holter指標のうちの1つだけであり、その1つの事象は偽薬を投与された被験者で生じたものであった。12誘導の機械読み取り式ECGの結果では有害事象は報告されず、臨床的に重要であるとされるHR、PR、QRS、QT、QTcBまたはQTcF間隔が認められた被験者はいなかった。いずれの処置群にも、500msecを超えるQT、QTcBまたはQTcF間隔が認められた被験者はおらず、ベースラインからの60msecを超える変化と関連したQTcBまたはQTcFの境界値または延長が認められた被験者もいなかった。神経学的検査および運動機能評価では、ピマバンセリンに対する臨床的に有意な所見は何ら明らかにならなかった。
【0098】
(考察)
パーキンソン病の患者においてピマバンセリンで得られた薬物動態結果は、健康な男性の被験者での前の反復用量試験で得られたものと一致した。交絡している疾患状態および/または併用薬とは関係なく、パーキンソン病の患者ではピマバンセリン薬物動態の被験者間のばらつきは小さかった。蓄積は、この試験で観察された50〜80時間の半減期ならびに、前の反復用量試験でのデータと一致した。7日目までに、平均トラフ濃度が15日目に得られた値の約20%以内になり、ピマバンセリン1日1回投与の10〜13日以内で定常状態に達した。
【0099】
ピマバンセリンは、パーキンソン病の患者にとって安全かつ忍容性が高いと思われ、運動機能を増悪させなかった。本試験では、パーキンソン病の高齢の患者個体群でピマバンセリンが1日1回投与に合った薬物動態を呈し、忍容性も高いことが示唆される。
【0100】
(実施例3−パーキンソン病精神障害第II相試験)
処置誘導された精神障害のあるパーキンソン病の患者におけるピマバンセリンの抗精神病的有効性および安全性を測定するために、第II相試験を実施した。治験には複数の臨床現場で60名の患者が登録した。この試験では、安定したドパミン補充療法も受けている患者に対し、28日間の期間にわたってピマバンセリンまたは偽薬のいずれかを1日1回経口投与した。この試験のデザインでは、最初のピマバンセリンの用量20mgを40mgに、続いて60mgへと、試験期間のあいだに2通りのあらかじめ定められた間隔で用量の漸増が可能であった。偽薬処置患者と比べてピマバンセリンでは用量を漸増させる患者が減り、ピマバンセリンの平均総用量は偽薬の平均総用量よりもかなり少なかった(p=0.05)。治験での質問に答えた医師の回答では、2つの群でのこのような用量漸増の差は、主に忍容性がゆえに用量の制限ではなく漸増しなかった患者で陽性の臨床反応が出たことによるものであった。
【0101】
ピマバンセリン処置群と偽薬処置群との間に、統一パーキンソン病評価尺度(UPDRS−詳細については実施例4で後述)のサブセクションのパートII(日常生活動作)およびIII(運動能力検査)で測定した場合の運動機能に統計差がない(p=0.22)旨を示すことで、治験の主要エンドポイントが満たされた。主要エンドポイントでは、包括解析個体群についてUPDRSのピマバンセリン群と偽薬群でのベースラインから試験28日までの絶対的な変化を評価した。ピマバンセリンおよび偽薬の治療群について、UPDRSパートIIおよびIIIのベースラインからの変化を図4Aに示す。ベースラインと28日目のUPDRSパートIIおよびIIIのスコアを図4Bに示す。この試験は、UPDRSのサブセクションパートIIおよびIIIで測定した場合にピマバンセリンと偽薬との間の臨床的に有意な5ポイントの差を検出するために、統計的検出力95%で設計した。ピマバンセリン群と偽薬処置群との間に統計的有意性が欠如していることから、ピマバンセリンが処置誘導された精神障害のあるパーキンソン病の患者の運動機能を増悪させないことが分かった。
【0102】
この試験には、以下の3つの異なる評価尺度を用いる抗精神病的有効性の副次エンドポイントも含めるようにした。精神障害の重症度を評価する項目を含む精神的欠陥を測定するUPDRSのパートI;幻覚および妄想を測定する陽性症状評価尺度(SAPS−詳細については実施例4で後述);精神疾患の患者の全体的な重症度についての一般的な評価を反映した臨床全般印象−病気の重症度の尺度(CGI−S−詳細については実施例4で後述)。ピマバンセリンおよび偽薬治療群でのUPDRSパートIのスコアのベースラインからの変化を図5Aに示す。ベースラインおよび28日目のUPDRSパートIのスコアを図5Bに示す。ピマバンセリンでは、UPDRSパートIに偽薬と比べて統計的に有意な改善が認められ(p<0.05)、この結果は幻覚および妄想に対する影響に起因するものであった。
【0103】
SAPS尺度全体ならびに幻覚および妄想の下位尺度のベースラインからの変化を図6Aに示す。ベースラインおよび28日目のSAPSスコア全体を図6Bに示す。同様に、図6Cおよび図6Dは、それぞれベースラインおよび28日目の幻覚と妄想の下位尺度を示す。ベースラインからの絶対的な変化で測定した場合に、SAPSスコア全体で偽薬に比してピマバンセリンに統計的な傾向が認められた(p<0.09)。事後解析を実施したところ、SAPSのベースライン解析からの相対変化率(p=0.05)を用いてピマバンセリンに偽薬とは有意な差が認められた。
【0104】
2つの処置治療群でのCGI−S尺度のベースラインからの変化を図7Aに示す。ベースラインおよび28日目のCGI−Sスコアを図7Bに示す。CGI−Sでは偽薬と比べてピマバンセリンは有意な効果を示さなかった。しかしながら、図7Cに示されるように、偽薬処置群の患者(18%)よりもピマバンセリン処置群の患者(42%)のほうが、多くの人数でCGI−Sスコアが小さくなった。
【0105】
ピマバンセリンおよび偽薬処置群のベースラインから試験28日までの平均変化スコアと平均ベースラインスコアを表2に示す平均変化の下にある負の数字は改善を示す。p値はピマバンセリンと偽薬の差を反映している(n.s.=有意ではない)。
【表2】
【0106】
この試験では、臨床的変動(すなわちオン/オフ期間)、ジスキネジア、パーキンソン療法で用いられるドパミン系処置薬に共通する他の合併症を測定するUPDRSパートIVを用いてパーキンソン病療法の他の合併症についても評価した。2つの処置治療群でのUPDRSパートIVスコアのベースラインからの変化を図8Aに示す。ベースラインと28日目の絶対UPDRSパートIVスコアを図8Bに示す。UPDRSパートIVでは偽薬に対して、ピマバンセリンに改善の統計的な傾向が認められた(p<0.06)ことから、ピマバンセリンがパーキンソン病のさまざまな機能障害の治療に有用ではないかと思われた。
【0107】
ピマバンセリンは、処置誘導された精神障害のあるパーキンソン病の患者にとって安全かつ忍容性が高かった。調査員らの申告によれば、試験では処置関連の重篤な有害事象は発生しなかった。有害事象の大半が事実上軽度から中程度で、有害事象の頻度もピマバンセリン処置群と偽薬処置群でほぼ同様であった。ピマバンセリンは、ECG、バイタルサイン、血液学、尿検査および臨床化学をはじめとする試験時をとおして評価した広範囲にわたる臨床測定で安全であった。
【0108】
実施例4−パーキンソン病精神障害第III相試験
パーキンソン病精神障害のある患者へのピマバンセリンの投与を含む偽薬制御された二重盲検多施設第III相試験を実施する。各治療群に約93名の被験者を無作為化して、2通りの服用量(10mgおよび40mg)で6週間の処置期間にわたってピマバンセリンを投与し、アクティブな治療群各々を偽薬単剤治療群と比較する。この治験では、スクリーニング時、実験1日目(ベースライン)、実験8日目、実験15日目、実験29日目、実験42日目に来院して、外来ベースで実施する。非盲検延長プロトコールを継続しない被験者では、最終日の調査薬の投与から4週間後にフォローアップでの来院(実験70日目)を実施する。
【0109】
処置期間は6週間である。処置開始の21日前を超えない範囲で被験者をスクリーニングし、さらに調査薬を最後に投与した日から4週間後にフォローアップをしてもよい。被験者ごとの最大試験期間は13週間である。ピマバンセリンまたはマッチング偽薬を10mg(2×5mgの錠剤)または40mg(2×20mgの錠剤)のいずれかの用量で錠剤の形にて1日1回経口投与する。
【0110】
(被験者)
試験個体群には、別の説明または非定型の特徴がなく、静止時振戦、固縮、動作緩慢および/または無動症、姿勢保持障害という基本的特徴のうちの少なくとも3つが該当するとして定義された特発性パーキンソン病の臨床診断が1年という最小期間でなされた、年齢40歳以上の男性または女性の被験者を含む。被験者には、スクリーニングでの来院前の4週間のあいだに発生している幻覚および/または幻聴および/または妄想がある。これらの症候は、抗精神病薬での治療を正当化できるほど重篤である。精神病的な症候は1か月を超えて存在し、PDの診断が確定したあとに発症する。被験者は、実験1日目(ベースライン)の1か月前ならびに治験時に抗パーキンソン薬を安定投与されている。
【0111】
(併用療法)
試験時には併用薬を最小限に維持する。被験者は実験1日目(ベースライン)の少なくとも1か月前に抗パーキンソン薬を安定投与されており、試験時をとおしてこの安定用量を維持する。
【0112】
(スクリーニング評価)
(ミニメンタルステート検査(MMSE))
ミニメンタルステート検査(MMSE)は、認知を定量的に評価するのに用いられる30点満点の簡単な質問である(Folstein M,Folstein S,McHugh P.Mini−Mental State.A practical method for grading the cognitive state of patients for the clinician.J Psych Res 1975;12:189〜198)。MMSE試験には、試験の時間と場所、単語を繰り返したリスト、計算、言語使用能力および理解力、図形の書き写しなど、多くの分野の簡単な質問と課題が含まれる。この試験は、認知障害のスクリーニング、特定時点での認知障害の重症度の推測、個人における経時的な認知変化過程の追跡、治療に対する個人の応答の文書化に使用可能である。
【0113】
(神経精神医学的インベントリー(NPI))
痴呆患者の精神病理を評価するために、神経精神医学的インベントリー(NPI)が開発された(Cummings JL,Mega M,Gray K,Rosenberg−Thompson S,Carusi DA and Gornbein J(1994).The Neuropsychiatric Inventory:comprehensive assessment of psychopathology in dementia.Neurology,44:2308〜2314)。これは、痴呆に共通する12項目の神経精神病学的障害すなわち、妄想、幻覚、動揺、不快、不安、無気力、易刺激性、多幸感、脱抑制、奇異な運動行動、夜間の行動障害、食欲、食行動異常を評価するものである。スクリーニング時には、NPIの幻覚と妄想のドメインを使って、その総スコア(幻覚の頻度×重症度+妄想の頻度×重症度)が4以上になるような患者の精神障害の度合いを評価する。
【0114】
(有効性の評価)
(主要エンドポイント−陽性症状評価尺度(SAPS))
主要エンドポイントは、PDPの核になる症候である幻覚と妄想の重症度および/または頻度の低下を示す目安である。主要エンドポイントの評価にはSAPSを用いる(Andreason,N.,Scale for the Positive Assessment of Positive Symptoms.Iowa City,IA,University of Iowa,1984)。SAPSは、特に統合失調症における精神病的な陽性症状を評価するために設計された。陽性症状としては、妄想、幻覚、言語および挙動の異常、思考過程障害があげられる。この治験では、SAPSの2つの下位尺度である幻覚と妄想を用いる。これらのドメインの選択は主に、そのPDP個体群の特定症候との関連性、これらの症状の重症度評価での有用性(頻度と期間を反映)、評価者間信頼性の高さである。
【0115】
集中評価サービスを利用して、現場間の評価者間変動を制御するとともに、被験者の症状の重症度と変化についての「盲検」評価を得る。集中サービス業者の遠隔地の盲検評価者(すなわちメンタルヘルスを評価する者)が、ビデオ会議技術を用いてSAPSをリアルタイムに実施する。遠隔地の評価者には、試験の設計、組み入れ基準、訪問回数、処置の割付けは知らせない。このSAPS評価は、実験1日目(ベースライン)、実験8日目、実験15日目、実験29日目、実験42日目に実施する。
【0116】
主要エンドポイントは、SAPSの幻覚と妄想の組み合わせスコアのベースライン(実験1日目)から実験42日目までの平均変化である。対象となる比較は、ベースライン(実験1日目)からの変化に差がない帰無仮説を想定した2つのピマバンセリン用量治療群と偽薬治療群の比較である。このとき、ANOVAモデルからの二乗平均を用いて比較試験をする。2つのピマバンセリン用量治療群を偽薬と複数比較することからタイプIの誤差が増加する可能性があるため、Holmの逐次試験法を利用する。主要エンドポイントの2つの比較のうち最も有意なもので有意水準α=0.025とする。この比較が、この水準で有意であれば、有意水準α=0.05で第2の比較試験を実施する。一次解析ではITT個体群を用いる。
【0117】
主要エンドポイントの二次解析は、パープロトコール集団で実施する。測定可能なベースライン(実験1日目)スコアのある被験者で、スコアの各成分すなわち幻覚と妄想を別々に解析する。SAPSの幻覚および妄想のスコアならびに個々の成分についても、実験8日目、実験15日目および実験29日目の他の試験時点で評価する。共変量解析および層別解析を実施し、病気の期間、PD治療期間、治療前MMSEレベルが、SAPSの幻覚および妄想のエンドポイント各々と全体に対しておよぼす影響を評価する。
【0118】
(副次エンドポイント)
PDの運動症状、精神障害の重症度の臨床全般印象、精神障害の改善に、ピマバンセリンがおよぼす影響について扱うために、有効性の副次エンドポイントを設計する。ピマバンセリン用量治療群と偽薬のベースライン(実験1日目)からの平均変化の差について95%両側信頼区間を構築して、統一パーキンソン病評価尺度(UPDRS)パートII&IIIでの評価を分析する。他の副次エンドポイント(臨床全般印象尺度(CGI))については、各処置治療群の記述統計と一緒にまとめておく。ANOVAを用いてベースライン(実験1日目)からの変化について群の比較結果を評価する。
【0119】
(統一パーキンソン病評価尺度(UPDRS))
ピマバンセリンがPDの運動症状におよぼす影響を評価して、ピマバンセリンの有効性がパーキンソニズムを許容できないほど増悪して得られるものではないことを保証する。UPDRSは、コロンビア尺度から導かれた運動および挙動指数の包括的なバッテリ(battery)であり(Fahn S,Elton RL,and Members of the UPDRS Development Committee(1987).Unified Parkinson’s Disease Rating Scale.In:Fahn S,Marsden CD,Calne DB,Lieberman A,eds:Recent developments in Parkinson’s disease.Florham Park,NJ:Macmillan Health Care Information;pp 153〜163)、信頼性の高いかなりの試験を経た明確な評価基準が得られる。実験1日目(ベースライン)と実験42日目にUPDRSの6つのパートをすべてスクリーニング時に適用し、被験者のPDを評価する。スクリーニング時および実験42日目の評価は説明の目的である。パートII(日常生活動作)およびIII(運動能力検査)だけは、実験8日目、実験15日目、実験29日目に適用する。
【0120】
(臨床全般印象尺度(CGI))
臨床全般印象(CGI)尺度(Guy,W.,ECDEU Assessment Manual for Psychopharmacology−Revised(DHEW Publ No ADM 76−338).Rockville MD,U.S.Department of Health,Education,and Welfare Public Health Service,Alcohol,Drug Abuse,and Mental Health Administration,NIMH Psychopharmacology Research Branch,Division of Extramural Research Programs,1976,p.218〜222)を用いて、精神障害の重症度と改善に重点をおいて長手方向の変化(実験1日目(ベースライン)からの変化の割合と平均)を解析する。この尺度は、PDPの被験者で以前に使用したものである。CGIを用いると、研究者は、これらの被験者の精神病がどのくらい重症であるかを他のPD被験者との関連で(CGI−重症度;CGI−S)、また、どれだけの改善が見られるか(CGI−改善;CGI−I)を、グローバルな観点で判断することができる。これは信頼できる尺度であり、研究者は、ベースラインの痴呆、性格特性、通常は臨床的な運動変動やPDの他の特殊な局面を伴う不安の「合理的な」度合いを無視することができる。
【0121】
(別の有効性評価)
介護者負担感尺度、SCOPA−SleepおよびNMSQuestの目安を、それぞれの処置治療群の記述統計と一緒にまとめておく。ANOVAを用いてベースライン(実験1日目)からの変化について群の比較結果を評価する。
【0122】
(介護者負担感尺度)
介護者負担感尺度を被験者に付き添う介護者に適用する。これを用いると、ピマバンセリンが介護者のストレスを寛解する可能性を評価することができる(Zarit SH,Reever KE,Bach−Peterson J.Relatives of the impaired elderly:correlates of feeling of burden.Gerontologist 1980;20:649〜55)。この自己記入式の22項目の質問は、痴呆患者集団の介護者、特にアルツハイマー病の被験者の介護者のあいだで一般に用いられている。とはいえ、PDでも高い信頼性が得られることが報告されている。
【0123】
(SCOPA−Sleep)
睡眠断片化は、PDの被験者に一般的であり、日中の眠気につながることがある。また、PD被験者は、PDに伴う筋肉の痛みがゆえに夜間も頻繁に目を覚ます。ピマバンセリンが被験者の睡眠におよぼす影響をSCOPA−Sleep尺度で評価する(Marinus J;Visser M;van Hilten JJ et al.Assessment of sleep and sleepiness in parkinson’s disease.SLEEP 2003;26(8):1049〜54)。
【0124】
(NMSQuest)
非運動症状の質問(NMSQuestも使用する。NMSQuestは特にPD被験者用に開発された;この新たに開発された質問は自己記入式であり、鬱、痴呆、無気力、幻覚、よだれ、便秘、痛み、泌尿生殖器の異常および睡眠障害などの一定範囲の非運動症状(NMS)の包括的な評価を可能にする(Chaudhuri,KR,Martinez−Martin,P.,Shapira,A.H.,et al.,International multicenter pilot study of the first comprehensive self completed nonmotor symptoms questionnaire for Parkinson’s disease:The NMSQuest study.Mov Disord,2006)。
【0125】
(結果)
この試験から、ピマバンセリン(10mgまたは40mgを1日1回投与など)が、幻覚および/または妄想の重症度および/または頻度を含むパーキンソン病精神障害の治療に有効であるということが分かる。特に、ベースライン(実験1日目)から実験42日目でのSAPSの幻覚と妄想のスコアの組み合わせにおける平均変化の改善が観察されることから、パーキンソン病精神障害の治療に有効であることが分かる。さらに、CGI尺度の改善からも証拠が得られる。また、UPDRS評価基準のパートIIおよびIIIは、ベースラインから実験42日目まで有意に増悪することがなく、ピマバンセリンがパーキンソニズムの有意な増悪なくパーキンソン病精神障害を改善することを示している。
【0126】
最後に、非運動症状の全体的な改善は、自己記入式のNMSQuestの質問での改善から明らかである。睡眠パターンの特定の改善は、SCOPA−Sleep尺度の改善から明らかである。また、介護者負担感尺度が改善されることからも分かるように、ピマバンセリンを投与することで主介護者にかかる負担が軽減される。
【0127】
以上、実施形態および実施例を参照して本発明について説明したが、本発明の主旨を逸脱することなく多数かつ多様な改変が可能であることは理解されたい。よって、本発明は以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2007年5月18日に出願された米国仮特許出願第60/938,985号ならびに2007年6月8日に出願された同第60/942,990号(いずれもその全体を本明細書に援用する)の優先権の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、化学および医薬の分野に関する。特に、本明細書に開示されるのは、ピマバンセリンの投与方法および使用方法である。
【背景技術】
【0003】
一般的な進行性神経変性疾患のひとつにパーキンソン病(PD)がある。その臨床診断は、静止時振戦、動作緩慢、固縮、姿勢保持障害をはじめとする、中核となる神経症候の有無に基づいている。また、患者には、同等に対処すべき多数の非運動症状が認められる。これには、精神障害および行動障害、痛み、感覚症状、鬱、痴呆が含まれる。このうち、羅患率および生活の質の観点からおそらく最も重要であり、なおかつ最も治療が困難なのが、精神障害である。PDが進行期にある患者の20%から40%に精神病的な症候が生じる。そして主に幻覚(ほとんどが目に見える)や妄想(通常はパートナーに対する偏執的な主題(paranoid theme)と関連がある)としてパーキンソン病精神障害(PDP)が現れる。初期症状は、存在感覚または通過感であることが多い。痴呆患者のほうがPDの精神障害になりやすい場合もある。
【0004】
PDの患者における精神障害の発症は進行性であって、介護施設への入所につながり、介護者に多大なるストレスを与え、患者集団での死亡の危険性を著しく高めることから、壊滅的であることが多い。PDPに関しては、安全性と有効性が証明された治療過程は存在しない。精神病的な症候が認められると、まずはドパミン系治療薬の投与量の低減が標準的な治療行為になることが多いが、この治療行為では必ずしも精神障害が軽減されるわけではなく、抗精神病的な利点が短期間のあいだ得られるだけである。また、運動機能不足の増大にもつながるのが普通である。
【0005】
PDの患者には共通して睡眠の問題が見られる。全体の80%を超えるPD患者に安眠できない睡眠障害があるとする研究もいくつか存在する。PD患者で一般的な睡眠の問題として、夜間睡眠分断、日中の過剰な眠気、下肢静止不能症候群、レム睡眠行動障害、睡眠時無呼吸、夢遊病、寝言、悪夢、夜驚症、パニック発作があげられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
抗精神薬およびドパミン受容体遮断薬が精神病的な症候の寛解に有効な場合がある。残念ながら、これらの化合物の多くは、PD患者のドパミン受容体遮断によるドパミン低下状態に付随して、患者の運動機能を大幅に低下させるものである。
【0007】
食物の摂取によって薬剤の吸収や薬物動態が変化することもある。食事と一緒に服用することが推奨される薬剤もあれば、空腹時に服用しなければならない薬剤もある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示された一実施形態は、医薬組成物と、処方情報と、容器とを含むキットであって、医薬組成物が治療有効量のピマバンセリンを含み、処方情報が、医薬組成物を食物と一緒にあるいは食物なしで服用可能であることを患者に伝えるものである、キットを含む。
【0009】
本明細書に開示された別の実施形態は、医薬組成物と、処方情報と、容器とを含むキットであって、医薬組成物が治療有効量のピマバンセリンを含み、処方情報が、食物がピマバンセリンの吸収率または吸収の度合いのいずれにも影響しない旨を患者に伝えるものである、キットを含む。
【0010】
本明細書に開示された別の実施形態は、治療用量のピマバンセリンを患者に与え、ピマバンセリンを食物と一緒にあるいは食物なしで服用可能であることを患者に伝えることを含む、患者にピマバンセリンによる治療を施すための方法を含む。
【0011】
本明細書に開示された別の実施形態は、治療用量のピマバンセリンを患者に与え、食物がピマバンセリンの吸収率または吸収の度合いのいずれにも影響しない旨を患者に伝えることを含む、患者にピマバンセリンによる治療を施すための方法を含む。
【0012】
本明細書に開示された別の実施形態は、患者にピマバンセリンを投与する方法であって、投与することが、ピマバンセリンを含む医薬組成物を、医薬組成物を食物と一緒にあるいは食物なしで服用可能であることを患者に伝える印刷ラベルの付された容器に入れて患者に提供することを含む、方法を含む。
【0013】
本明細書に開示された別の実施形態は、患者にピマバンセリンを投与する方法であって、投与することが、ピマバンセリンを含む医薬組成物を、食物がピマバンセリンの吸収率または吸収の度合いのいずれにも影響しない旨を患者に伝える印刷ラベルの付された容器に入れて患者に提供することを含む、方法を含む。
【0014】
本明細書に開示された別の実施形態は、パーキンソン病精神障害の治療方法であって、精神障害の症候を呈するパーキンソン病患者にピマバンセリンを投与することを含む、方法を含む。
【0015】
本明細書に開示された別の実施形態は、パーキンソン病の非運動症状の治療方法であって、ピマバンセリンを非運動症状の寛解に十分な量でパーキンソン病患者に投与することを含む、方法を含む。
【0016】
本明細書に開示された別の実施形態は、パーキンソン病に羅患している被験者における睡眠障害の寛解方法であって、睡眠障害を訴えているパーキンソン病被験者にピマバンセリンを投与することを含む、方法を含む。
【0017】
本明細書に開示された別の実施形態は、パーキンソン病に羅患している被験者における睡眠障害および精神障害の寛解方法であって、睡眠障害に羅患し、かつ精神障害の1つまたは複数の症候を呈しているパーキンソン病被験者に、ピマバンセリンを投与することを含む、方法を含む。
【0018】
本明細書に開示された別の実施形態は、痴呆のあるパーキンソン病患者における精神障害の寛解方法であって、精神障害の1つまたは複数の症候と痴呆の1つまたは複数の症候とを呈しているパーキンソン病患者に、ピマバンセリンを投与することを含む、方法を含む。
【0019】
本明細書に開示された別の実施形態は、日中の眠気を訴えている被験者にピマバンセリンを投与することを含む、日中の眠気を低減する方法を含む。
【0020】
本明細書に開示された別の実施形態は、介護者の世話でパーキンソン病患者にピマバンセリンを投与することを含む、介護者の生活の質を改善する方法を含む。
【0021】
本明細書に開示された別の実施形態は、死亡の危険性を低減するのに十分な量で患者にピマバンセリンを投与することを含む、パーキンソン病患者の死亡率を低下させる方法を含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】食物と一緒に投与した場合と食物なしで投与した場合のピマバンセリンの血漿中濃度を示すグラフである。
【0023】
【図2】食物と一緒に投与した場合と食物なしで投与した場合のピマバンセリンのCmax値を示すグラフである。
【0024】
【図3】食物と一緒に投与した場合と食物なしで投与した場合のピマバンセリンのAUC値を示すグラフである。
【0025】
【図4A】ピマバンセリンまたは偽薬の投与時におけるUPDRSパートIIおよびIIIの尺度のベースラインの変化を示す棒グラフである。
【0026】
【図4B】ベースラインとピマバンセリンまたは偽薬の投与28日後のUPDRSパートIIおよびIIIの尺度を示す棒グラフである。
【0027】
【図5A】ピマバンセリンまたは偽薬の投与時におけるUPDRSパートIの尺度のベースラインの変化を示す棒グラフである。
【0028】
【図5B】ベースラインとピマバンセリンまたは偽薬の投与28日後のUPDRSパートIの尺度を示す棒グラフである。
【0029】
【図6A】ピマバンセリンまたは偽薬の投与時における、全体、幻覚および妄想でのSAPSの尺度のベースラインの変化を示す棒グラフである。
【0030】
【図6B】ベースラインとピマバンセリンまたは偽薬の投与28日後の全体のSAPS尺度を示す棒グラフである。
【0031】
【図6C】ベースラインとピマバンセリンまたは偽薬の投与28日後の幻覚でのSAPS尺度を示す棒グラフである。
【0032】
【図6D】ベースラインとピマバンセリンまたは偽薬の投与28日後の妄想でのSAPS尺度を示す棒グラフである。
【0033】
【図7A】ピマバンセリンまたは偽薬の投与時におけるCGI尺度のベースラインの変化を示す棒グラフである。
【0034】
【図7B】ベースラインとピマバンセリンまたは偽薬の投与28日後のCGI尺度を示す棒グラフである。
【0035】
【図7C】ピマバンセリンまたは偽薬の投与時におけるCGI尺度の増大または低下を経験している被験者の割合を示す棒グラフである。
【0036】
【図8A】ピマバンセリンまたは偽薬の投与時におけるUPDRSパートIVの尺度のベースラインの変化を示す棒グラフである。
【0037】
【図8B】ベースラインとピマバンセリンまたは偽薬の投与28日後のUPDRSパートIVの尺度を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N−(4−フルオロフェニルメチル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミド、N−[(4−フルオロフェニル)メチル]−N−(1−メチル−4−ピペリジニル)−N’−[[4−(2−メチルプロポキシ)フェニル]メチル]−尿素、1−(4−フルオロベンジル)−1−(1−メチルピペリジン−4−イル)−3−[4−(2−メチルプロポキシ)ベンジル]尿素またはACP−103としても知られるピマバンセリンは、式(I)の構造を有する。
【化1】
【0039】
ピマバンセリンの製造に適した方法は周知であり、たとえば、2004年1月15日に出願された米国特許出願公開第2004−0213816号明細書ならびに、2007年5月15日に出願された同第2007−0260064号明細書(いずれもその全体を本明細書に援用する)に記載されている。
【0040】
ピマバンセリンはセロトニン受容体で活性を呈し、5−HT2A受容体の逆作動薬として作用する。5−HT2A受容体のヒト表現型を一時的に発現する細胞で実施した実験では、このような受容体に作用するリガンドが他に存在しなければ、この受容体のシグナル伝達がピマバンセリンによって減弱されることが明らかになっている。このように、ピマバンセリンが5−HT2A受容体で逆作動薬活性を持ち、この受容体の示す基本的な非作動薬刺激構成シグナル伝達応答を減弱できることが見いだされた。ピマバンセリンが5−HT2A受容体の逆作動薬であるという観察結果から、ピマバンセリンには内因性作動薬または外来性の合成作動薬リガンドが媒介する5−HT2A受容体の活性化に拮抗する機能があることも分かる。ピマバンセリンは、5−HT2A受容体に対してpKi>9という高い親和性を呈する。in vivoでのヒトおよび非ヒト動物による研究から、ピマバンセリンが、抗精神病、抗ジスキネジア、抗不眠症活性を呈することも明らかになっている。ピマバンセリンのこのような特性が、発明の名称「SELECTIVE SEROTONIN 2A/2C RECEPTOR INVERSE AGONISTS AS THERAPEUTICS FOR NEURODEGENERATIVE DISEASES」で2004年1月15日に出願された米国特許出願公開第2004−0213816号明細書(その内容全体を、図面も含めて本明細書に援用する)に記載されている。
【0041】
ピマバンセリンは、5−HT2A受容体で選択的活性を呈する。具体的には、ピマバンセリンは、36のヒトモノアミン受容体のうち、5−HT1A、5−HT1B、5−HT1D、5−HT1E、5−HT1F、5−HT2B、5−HT3、5−HT4、5−HT6A、5−HT7A、アドレナリンα1A、アドレナリンα1B、アドレナリンα1D、アドレナリンα2A、アドレナリンα2B、アドレナリンβ2、ドパミンD1、ドパミンD2、ドパミンD3、ドパミンD4、ヒスタミンH1、ヒスタミンH2、ヒスタミンH3をはじめとする31の受容体で機能的活性を欠く(pEC50またはpKi<6)。このため、ピマバンセリンは、他のほとんどのモノアミン受容体とは親和性がほとんどないかまったくない状態で、5−HT2A受容体で高い親和性を示す。
【0042】
また、ピマバンセリンは安定性が高く、経口バイオアベイラビリティが良好で、半減期が長い。具体的には、ピマバンセリンはin vitroでのヒトミクロソームからのクリアランス速度が遅く(<10μL/分・mg)、ヒトに経口投与したときの半減期が約55時間である。
【0043】
本明細書に記載の方法では、さまざまな形態のピマバンセリンを使用することが可能である。たとえば、ピマバンセリンの多数の塩および結晶形態を使用できる。塩の例としては、酒石酸塩、ヘミ酒石酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、エジシル酸塩(エタンジスルホン酸塩)があげられる。特に上述したイオンを含むピマバンセリン塩が、発明の名称「SALTS OF N−(4−FLUOROBENZYL)−N−(1−METHYLPIPERIDIN−4−YL)−N’−(4−(2−METHYLPROPYLOXY)PHENYLMETHYL)CARBAMIDE AND THEIR PREPARATION」で2005年9月26日に出願された米国特許出願公開第2006−0111399号明細書(その内容全体を本明細書に援用する)に記載されている。酒石酸塩の2つの結晶形態は、それぞれ結晶形態Aおよび形態Cと呼ばれ、発明の名称「SYNTHESIS OF N−(4−FLUOROBENZYL)−N−(1−METHYLPIPERIDIN−4−YL)−N’−(4−(2−METHYLPROPYLOXY)PHENYLMETHYL)CARBAMIDE AND ITS TARTRATE SALT AND CRYSTALLINE FORMS」で2006年9月26日に出願された米国特許出願公開第2006−0106063号明細書(その内容全体を本明細書に援用する)に記載されている。各々が発明の名称「PHARMACEUTICAL FORMULATIONS OF PIMAVANSERIN」で、2007年5月15日に出願された米国特許出願公開第2007−0260064号明細書ならびに、2007年5月15日に出願された同第2007−0264330号明細書(その内容全体を本明細書に援用する)にさらに詳細に記載されているように、ピマバンセリン(酒石酸塩などを含む)を錠剤に処方してもよい。
【0044】
同様に、単離された実質的に純粋なピマバンセリンの代謝物を使用してもよい。使用可能な好適な代謝物は、以下の式(II)〜(V)に示す化学構造を有する。
【化2】
【0045】
本明細書で説明するような式(II)、(III)、(IV)、(V)の化合物は、さまざまな方法で調製できるものである。式(II)、(III)、(IV)、(V)の化合物の一般的な合成経路をスキームA〜Dに示す。図示の経路は一例にすぎず、本発明の範囲をいかなる火達でも限定することを意図したものではなく、そのように解釈されるものでもない。当業者であれば、ここに開示の合成に対する改変例が分かるであろうし、本明細書の開示をもとに別の合成経路を考案できるであろう。このような改変と別の経路もすべて本発明の範囲内である。
【0046】
(スキームA)
【化3】
スキームAは、式(II)の化合物を形成するための一般的な反応スキームを示す。スキームAに示されるように、二級アミンとイソシアネートを組み合わせて、式(II)の化合物の4−メトキシベンジル誘導体を生成することもできる。たとえば、三ハロゲン化ホウ素を用いて式(II)の化合物を形成するなど、当業者間で周知の方法を使用し、メトキシ基をヒドロキシ基に変換することが可能である。
【0047】
(スキームB)
【化4】
式(III)の化合物を合成するための方法の例をスキームBに示す。保護された4−ピペリドイノン(piperidoinone)および4−フルオロベンジルアミンに還元的アミノ化をほどこし、N−(4−フルオロベンジル)−4−アミノ−1−トリフルオロアセチルピペリジンを形成することが可能である。次に、こうして得られる二級アミンを適当なイソシアネートと反応させれば、窒素保護カルバミドを形成することができる。炭酸カリウムなどのアルカリ金属塩を用いてアシル保護基を切断し、式(III)の化合物を形成することが可能である。
【0048】
(スキームC)
【化5】
式(IV)の化合物を合成するためのひとつの方法をスキームCに示す。式(II)の化合物をイソブチレンオキシドと反応させれば、エポキシドの求核的開環によって式(IV)の化合物を形成することができる。
【0049】
(スキームD)
【化6】
スキームDは、式(V)の化合物を形成するための一般的な反応スキームを示す。スキームDに示されるように、式(II)の化合物をハロヒドリンと反応させれば、式(V)の化合物を形成することができる。本明細書に記載の化合物はいずれも、当業者間で周知の方法を用いて精製可能なものである。さらに、単離された実質的に純粋なピマバンセリンの代謝物である、式(II)、(III)、(IV)、(V)の化合物は、発明の名称「N−SUBSTITUTED PIPERIDINE DERIVATIVES AS SEROTONIN RECEPTOR AGENTS」で2007年9月21日に出願された米国仮特許出願第60/974,426号明細書(その内容全体を本明細書に援用する)に記載されている。
【0050】
特に明記しないかぎり、本明細書で使用するピマバンセリンには、化合物の遊離塩基、そのすべての塩、水和物、溶媒和物、多形、その単離された実質的に純粋な代謝物を、個々にまたは組み合わせで含む。一実施形態において、使用するピマバンセリンの形態がその酒石酸塩である。
【0051】
(食物による影響)
驚くべきことに、食物と一緒にピマバンセリンを投与する場合と食物なしでピマバンセリンを投与する場合で、薬物動態には何ら有意な差異が認められないという発見があった。このため、いくつかの実施形態では、食物と一緒にあるいは食物なしでピマバンセリンを患者に投与する。いくつかの実施形態では、治療用量のピマバンセリンを患者に与え、患者は、書面または口頭で、その用量を食物と一緒にあるいは食物なしで服用可能である旨を伝えられる。いくつかの実施形態において、患者は、食物がピマバンセリンの吸収率または吸収の度合いのいずれにも影響しない旨を伝えられる。いくつかの実施形態では、患者への通知が、ピマバンセリン剤形を含む容器に付された印刷ラベルによってなされる。一実施形態は、ピマバンセリン製薬剤形と、容器と、上述した通知を含む処方情報とを含むキットを含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、上述した通知に従ってピマバンセリンを別の抗精神病薬との組み合わせで投与する。たとえば、いくつかの実施形態では、ピマバンセリンをリスペリドンとの組み合わせで投与する。リスペリドンは、それ自体が食物と一緒にあるいは食物なしで薬物動態に有意な差異を生じることなく服用可能なものである。
【0053】
(パーキンソン病精神障害)
また、ピマバンセリンを使用してパーキンソン病の非運動症状を治療できるという発見もあった。さまざまな実施形態では、非運動症状としては、鬱、痴呆、無気力、幻覚、よだれ、便秘、痛み、泌尿生殖器の異常、睡眠障害のうちの1つまたは複数があげられる。パーキンソン病の非運動症状については、当業者間で周知のNMSQUESTの質問を用いて測定できる。このため、一実施形態では、ピマバンセリンをパーキンソン患者に投与して、NMSQUESTの質問に表れる非運動症状を改善する。
【0054】
治療にあたってピマバンセリンが有効な非運動症状のひとつにパーキンソン病精神障害(PDP)があるという発見があった。このため、一実施形態は、精神障害の症候を呈するパーキンソン病患者にピマバンセリンを投与することによるパーキンソン病精神障害の治療方法を含む。いくつかの実施形態では、ピマバンセリンで治療されるパーキンソン病精神障害が薬剤誘発性ではない。一実施形態では、投与が患者の陽性症状評価尺度(SAPS)を小さくするのに十分なものである。一実施形態では、投与が幻覚の重症度および/または頻度を下げるのに十分なものである。一実施形態では、投与が妄想の重症度および/または頻度を下げるのに十分なものである。さまざまな実施形態では、投与によって、SAPSの総スコア、幻覚のサブスコアおよび/または妄想のサブスコアが少なくとも約10%、20%、30%、40%または50%小さくなる。いくつかの実施形態では、パーキンソン病精神障害の低減を、臨床全般印象(CGI)尺度の低下によっても示す。さまざまな実施形態では、投与によって、CGI尺度が少なくとも約5%、10%、15%または20%小さくなる。いくつかの実施形態では、パーキンソン病精神障害の低減を、統一パーキンソン病評価尺度(UPDRS)のパートI(精神機能、行動および気分)の低下によって示す。さまざまな実施形態では、投与によって、UPDRSのパートIが少なくとも約10%、20%、30%または40%小さくなる。
【0055】
パーキンソン病のもうひとつの非運動症状に日中の眠気がある。一実施形態では、ピマバンセリンをパーキンソン病患者に投与して、日中の眠気を減少させる。一実施形態では、日中の眠気の減少をSCOPA−睡眠尺度の改善によって示す。
【0056】
いくつかの実施形態は、介護者の世話でパーキンソン病患者にピマバンセリンを投与することによって介護者の生活の質を改善することを含む。一実施形態では、投与が介護者の介護者負担感尺度を小さくするのに十分なものである。
【0057】
一実施形態では、ピマバンセリンを投与しても運動症状の有意な増悪を生じない。一実施形態では、運動症状の有意な増悪の欠如を、統一パーキンソン病評価尺度(UPDRS)、特に尺度のパートII(日常生活動作)およびIII(運動能力検査)における有意な増悪の欠如によって示す。さまざまな実施形態では、パーキンソン病精神障害を改善するのに十分な薬用量のピマバンセリンを投与することで、パートIIおよびIIIのUPDRSスコアが約15%未満、10%未満、5%未満または3%未満で変化する。
【0058】
一実施形態では、投与によってパーキンソン病患者の死亡率が低下する。一実施形態では、パーキンソン病患者がパーキンソン病精神障害に羅患している。
【0059】
上述したようにして投与されるピマバンセリンの薬用量は、効果のある結果を得るのに適した薬用量であればよい。いくつかの実施形態では、ピマバンセリンを約5mg〜約100mgで1日1回投与する。一実施形態では、約40mgのピマバンセリンを1日1回投与する。一実施形態では、約10mgのピマバンセリンを1日1回投与する。一実施形態では、約20mgのピマバンセリンを1日1回投与する。
【0060】
上述した方法のいくつかの実施形態では、ピマバンセリンを抗パーキンソン病薬と同時投与する。一実施形態では、抗パーキンソン病薬がレボドパを含む。一実施形態では、抗パーキンソン病薬がSINEMET(登録商標)(カルビドパ−レボドパの組み合わせ)を含む。一実施形態では、抗パーキンソン病薬がラサギリンである。
【実施例】
【0061】
(実施例1−食物による影響)
8名の被験者で、単一施設無作為化非盲検比較第3相不完全クロスオーバーデザインでの試験を実施した。被験者は1日目にチェックインし、処置ごとに合計5.5日間にわたり施設で過ごした。1日目に、絶食条件下または食事条件下のいずれかで被験者全員にピマバンセリンを単回投与(100mg)した。投薬216時間後まで単一の薬物動態サンプルを収集した。ピマバンセリンについては以下のとおり投与した。
処置A:絶食条件下にて経鼻胃管経由でピマバンセリン100mg(20mg/mLのピマバンセリン溶液5mL)
処置B:絶食条件下にてピマバンセリン100mg(20mgの錠剤5個)を経口投与
処置C:食事条件下にてピマバンセリン100mg(20mgの錠剤5個)を経口投与
【0062】
各々被験者2名を無作為化し、以下の処置順のうちのひとつに割り付けた。ABC、CBA、BACまたはCAB。食事下での処置の場合、高脂肪の朝食の直後に単回経口用量のピマバンセリンを投与した。処置と処置との間隔を少なくとも14日間あけた。
【0063】
ピマバンセリンについては、ポリ塩化ビニル(PVC)製の経鼻胃管経由で溶液として、あるいは20mgの錠剤として投与した。溶液の場合、粉末のピマバンセリンを濃度20mg/mLまで水で再構成した。摂取後、被験者に十分な水を飲むよう求め、合計で240mLの容量を摂取できるようにした。ピマバンセリン錠剤は240mLの水と一緒に投与した。
【0064】
(被験者)
体格指数(BMI)19〜28kg/m2で18歳から45歳までの喫煙をせず若くて健康な男性を、この試験への参加者に選んだ。臓器に著しい異常または疾患がある場合、スクリーニング時にバイタルサインまたは臨床検査結果に異常が認められた場合、あるいは試験開始前1年以内に重篤な身体の病気をしたことがある場合は、被験者から除外した。また、腎疾患、肝疾患、消化器疾患、循環器疾患または血液疾患、発作、癲癇、重度の頭部外傷、多発性硬化症または他の周知の神経症状、B型肝炎またはC型肝炎(あるいはB型肝炎表面抗原検査またはC型肝炎抗体検査で陽性)またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)あるいはアルコール乱用または薬物乱用(またはスクリーニング時に尿中薬物検査またはアルコール検査で陽性)の既往歴がある場合、あるいは、試験期間中に外科手術を受けることを検討しているまたは外科手術を受ける予定になっている場合も、試験に参加する被験者から除外した。さらに、試験開始前30日以内に血漿または血液を提供した被験者、試験開始前14日以内に薬での治療が必要だった被験者、試験開始前3か月以内に周知の肝クリアランスまたは腎クリアランス調整剤を用いた被験者、試験開始前3か月以内に試験中の薬を摂取または試験中の装置を使用した被験者または特別な食事が必要な被験者も除外した。被験者には、法的な合意ができるだけの知能があることを要件とした。
【0065】
合計で8名の健康で喫煙をしない男性被験者が試験に登録した。登録被験者の平均年齢は28.3±7.4歳(19〜40歳の範囲)で、平均体重74.96±11.75kg(63.0〜96.9kgの範囲)、平均身長176.38±8.19cm(163.0〜189.0cmの範囲)であった。体格指数の平均は24.1±2.3kg/m2(21〜28kg/m2の範囲)であった。参加した8名の健康な男性被験者のうち、7名(87.5%)が白人で、1名(12.5%)は白人、黒人、アジア人、東洋人以外の人種であった。
【0066】
(手法)
組み入れ/除外基準を含めて各処置期間にチェックインする前に、病歴、健康診断、12誘導ECG、臨床検査結果、バイタルサイン、尿中薬物スクリーニング、血清スクリーニングを含むスクリーニング法を実施した。インフォームドコンセントについては、初回の処置期間の前に一度だけ得た。1日目に試験を開始する前に尿中薬物スクリーニング検査の結果を見直した。
【0067】
処置AまたはB(絶食)が割り付けられる予定になっていた被験者は全員、1日目の夜に軽食を取った後に絶食を開始し、一晩中10時間にわたって絶食した。10時間の絶食後にピマバンセリンを投与した。処置C(食事)が割り付けられる予定になっていた被験者は、1日目の投薬30分前に高脂肪の朝食を取った。処置Cの被験者には、朝食を25分以内で完食するよう求めた(すなわち、薬剤投与の5分以内)。高脂肪の朝食の内訳は、卵2個をバターで目玉焼きにし、ベーコン2枚、バタートースト2枚、ハッシュブラウンポテト4オンス、全乳(脂肪約55g、タンパク質33g、炭水化物58g)8オンスとした。各処置期間の1日目には、全用量投与の厳密な時刻と朝食の時間を正確に記録した。各試験期間の1日目の昼食は、被験者全員に投薬の4時間後に与えた。それ以外の食事はいずれも、被験者全員に同じ時刻に与え、3つの期間のすべての用量群で特定の食事時間について同一の内容とした。水については、投薬2時間後以降は自由に飲めるようにしておいた。
【0068】
血漿ピマバンセリン濃度の測定および臨床検査用に、血液サンプルを採取した。少なくとも1つの処置期間での薬物動態パラメータのデータのある被験者は全員を統計解析の対象にした。ヘパリン処理したヒト血漿中のピマバンセリン濃度の定量判断のための高速液体クロマトグラフィ/タンデム質量分析(LC/MS/MS)法を確認した。確認後の方法では、ヘパリン処理したヒト血漿100μLを用いて、この分析物での標準曲線の範囲が0.5〜500ng/mLであった。
【0069】
試験の間に以下の変数を収集し、安全性と組み入れ基準を評価した:変更を加えた健康診断;ベースライン(スクリーニング)で年齢、性別、人種、身長、体重を含む人口統計と病歴を収集した;3とおりの姿勢での血圧および脈拍数(仰臥位で5分、座位で1分、立位で3分)、呼吸数、口腔体温を含むバイタルサインを収集し、12誘導ECGを記録し、QRS、PR、QT、QTc間隔を含むECGの標準パラメータを測定した。また、ピマバンセリン投薬に続く最初の12時間、II誘導連続ECGモニタリングを実施した(神経学的検査、12誘導ECGの測定、被験者がトイレ設備を利用するときはII誘導連続モニタリングを中断した)。スクリーニングでHepB、HepCおよびHIV抗体試験を実施した。スクリーニングおよび各処置期間へのチェックイン時に、定性尿中薬物(コカイン、アヘン、アンフェタミン、アルコール、ベンゾジアゼピン、バルビツレート、尿中クレアチニン)およびアルコール試験を実施した。
【0070】
8時間の絶食後に臨床検査を実施したが、これには以下の項目を含めた。血液検査:ヘマトクリット、ヘモグロビン、赤血球数・指数(平均赤血球容積、平均赤血球ヘモグロビン、平均赤血球ヘモグロビン濃度)、白血球数および絶対値での白血球百分率(好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球)、血小板(血小板数、プロトロンビン時間、活性化部分トロンボプラスチン時間);血清生化学検査:アルブミン、アルカリホスファターゼ、血中尿素窒素、γ−グルタミルトランスフェラーゼ、カルシウム、クレアチニン、グルコース、コレステロール(高密度リポ蛋白コレステロールおよび低密度リポ蛋白コレステロールを含む)、トリグリセリド、ホスフェート、カリウム、アスパラギン酸トランスアミナーゼ、アラニントランスアミナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、ナトリウム、塩化物、ビリルビン(総ビリルビン、直接ビリルビン、間接ビリルビン)、総蛋白、尿酸;尿検査:肉眼的(pH、比重、グルコース、蛋白、ケトン、血液)および顕微鏡(RBCs/hpf、WBCs/hpf、細菌、円柱、上皮細胞、粘液糸、結晶)。
【0071】
(薬物動態解析)
WinNonlin(登録商標)プロフェッショナルバージョン4.01(Pharsight Corp.、Mountain View、California)を使用して、非コンパートメント解析によって、遊離塩基としてのピマバンセリンの血漿中濃度から薬物動態パラメータを算出した。Windows用のSAS(登録商標)バージョン8.2(SAS Institute、Cary、North Carolina)またはSigmaPlot(登録商標)7.101(SPSS,Inc.、Chicago、Illinois)を用いて画像を作成した。血漿薬物動態の算出はいずれも実際のサンプリング時間を基準におこなった。
【0072】
自然対数変換したAUC0−∞、AUC0−z、Cmaxを処置間で比較評価した。それぞれのパラメータについて、系列、系列でネストした被験者、時期、処置を要因とした分散分析(ANOVA)を実施した。このANOVAから、処置ごとの最小二乗平均、処置間の差の推定値、処置間の差に対する90%信頼区間を算出した。これらの対数変換結果を累乗法で正規スケールに変換して、調整平均、処置の比、これらの比に対する90%信頼区間を得た。錠剤製剤の相対的バイオアベイラビリティを評価するために、絶食した被験者への錠剤および溶液投与後の薬物動態パラメータのピマバンセリン比を算出した。溶液は参照基準として用いた。高脂肪の食事がピマバンセリンのPKに対しておよぼす影響について評価するために、錠剤「食事」処置のPKパラメータを錠剤「絶食」処置のPKパラメータと比較した。この場合、錠剤「絶食」を参照基準として用いた。一元配置の統計比較はAUC0−∞およびCmaxをもとにした。AUC0−∞およびCmaxの比に対する90%信頼区間が70〜143%の範囲に入れば、食物はピマバンセリンのPKに何ら影響しないという仮説を許容した。
【0073】
(結果)
濃度の被験者間のばらつきは概して50%未満であった。ピマバンセリンの平均血漿中濃度は投薬後約6時間で最高に達した後、単一指数的に下降した。処置間で全身曝露に差異はほとんどなかった。
【0074】
Tmaxの中央値は、処置Aおよび処置Bで6時間、処置Cで10.5時間であった。平均Cmaxは、処置Aで約51ng/mL、処置Bで57ng/mL、処置Cで52ng/mLであった。各処置群の平均薬物動態プロファイルを図1に示し、処置ごとの個別および平均Cmaxを図2に示す。処置A、B、Cの平均AUC0−∞値は、それぞれ3847、3871、4269ng×時間/mLであった。処置ごとの個別および平均AUC0−∞を図3に示す。半減期および経口クリアランスの値は処置間で同様であった。
【0075】
処置B/処置Aと処置C/処置Bの対について、統計的な一対比較を実施した。異なる処置条件でのピマバンセリン100mgの単回経口または経鼻胃投与後の血漿ピマバンセリン薬物動態パラメータを表1にあげておく。それぞれの比較で90パーセント信頼区間(90%CI)が80〜125%の範囲内であったことから、錠剤製剤と溶液の生物学的同等性ならびに、ピマバンセリンの薬物動態に対する食物による影響がないことが分かる。錠剤製剤の相対的な生物学的同等性は99.7%であった。
【表1】
【0076】
(考察)
ピマバンセリンの薬物動態への食物による影響はなかった。用量溶液に対する錠剤製剤の相対的な生物学的同等性は99.7%であった。ピマバンセリンの薬物動態プロファイルは処置群間で一貫していた。ピマバンセリンはTmaxの中央値が6時間、平均半減期が55〜60時間であった。ピマバンセリン100mgの投薬後、平均Cmaxが50〜60ng/mL、平均AUC0−∞は3800〜4300時間×ng/mLの範囲であった。
【0077】
高脂肪食は錠剤製剤として投与した場合のACP−103の全身曝露に何ら影響せず、その吸収、曝露またはクリアランスが食物で変わらないことが分かる。また、報告のあった概して軽度の有害事象も食事条件と絶食条件とで同様であった。
【0078】
(実施例2−パーキンソン病第II相試験)
この試験については、系列群において入院単一施設無作為化二重盲検偽薬制御用量漸増試験を実施した。各服用量について被験者6名ずつの2つの異なる群を登録し、偽薬(N=2)またはピマバンセリン(N=4/用量;25mgまたは100mg)を与えた。この試験の開始用量は、健康な被験者で最大耐用量(MTD)(100mg)の四分の一に基づいて、25mgであった。第1群では反復投与10日後に安全性変数の中間解析を実施し、第2群の用量を求めた。さらに、1日目の24時間連続血液/血漿採取後のピマバンセリンの薬物動態(PK)を、第1の服用量で評価し、パーキンソン病被験者のピマバンセリン曝露と健康な被験者のピマバンセリン曝露とを比較した上で、第2の服用量に漸増した。2回以上参加した被験者はいなかった。
【0079】
(被験者)
特発性パーキンソン病の臨床診断で健康状態が良好(静止時振戦、固縮、動作緩慢および/または無動症、パーキンソン病に典型的な姿勢保持障害という基本的特徴のうち少なくとも3つが該当し、別の説明または非定型の特徴がないと定義)でありさえすれば年齢と人種を問わない男性および女性の被験者が、試験への参加適任者であった。HoehnおよびYahr(H/Y分類)尺度で疾患の重症度を評価し、5度であったらその被験者を除外した。女性は妊娠の可能性のない人でなければならず、あるいは受胎に対して二重にバリア保護する方法で集める必要があった。被験者全員、ミニメンタルステータス検査(MMSA)のスコアが25以上であり、なおかつ試験1日目の少なくとも1週間前に抗パーキンソン薬で安定している必要があった。試験期間中、併用薬はいずれも安定したままであった。末期症状、臨床的に有意な発病前精神症状あるいは、有意な血液病、腎疾患、肝疾患、内分泌疾患、神経疾患(パーキンソン病以外)または心血管疾患が認められるか、過去3か月以内に既往歴がある場合には、その被験者を除外した。抗精神薬、選択的セロトニン再取り込み阻害剤またはパーキンソン病で承認された以外の精神神経薬ならびに周知の肝クリアランスまたは腎クリアランス調整剤を併用または最近使用した被験者も除外した。乱用薬物、B型肝炎またはC型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の検査で陽性であるか既往歴がある場合も除外対象とした。被験者には、試験に参加する前にインフォームドコンセントを提供するよう求めた。
【0080】
この試験には合計12名の被験者が登録し、12名の被験者全員が大きなプロトコールの偏差なく試験手順を終えた。用量群での被験者の人口統計は、体重およびBMI以外は同様であった。ピマバンセリン100mgの用量群は、偽薬群よりも平均体重が約17ポンド軽く、ピマバンセリン25mgの用量群よりも13ポンド軽い被験者で構成し、ピマバンセリン100mgの用量群の平均BMIは偽薬群よりも約8%小さく、ピマバンセリン25mgの用量群よりも21%小さかった。
【0081】
8名(66.7%)の被験者が男性、4名(33.3%)が女性であった。登録被験者の平均年齢は65.0±8.1歳(48〜78歳の範囲)で、平均体重79.53±18.11kg(60.0〜124.7kgの範囲)、平均身長167.30±8.13cm(150.0〜177.8cmの範囲)であった。体格指数の平均は28.59±7.16kg/m2(22.0〜45.2kg/m2の範囲)であった。12名の被験者のうち、8名(66.7%)が白色人種、2名(16.7%)がヒスパニック、1名(8.3%)がアフリカ系アメリカ人、1名(8.3%)がイラン人であった。
【0082】
11名(91.7%)の被験者が、1日目に尿中薬物およびアルコールスクリーン試験で陰性であった。1名の被験者はベンゾジアゼピン試験で陽性であり、試験への参加を免除された。
【0083】
(試験手順)
試験薬を用いてから21日以内に被験者をスクリーニングした。1日目に被験者を入院させ、合計で18泊19日拘束した。1日目のチェックイン後、これに続く投与日の予想ピマバンセリンTmaxとほぼ同時に、被験者全員の選択安全性および薬力学的測定値を集めた。
【0084】
1日目〜14目には、経口用量の試験薬を毎朝被験者に投与した。試験薬は、5mg、20mgまたは偽薬の入った、視覚的に揃っているコート錠で構成した(25mg群の被験者が5mgの錠剤1個と20mgの錠剤1個または偽薬錠剤2個を摂取;100mg群の被験者が20mgの錠剤5個または偽薬錠剤5個を摂取するなど)。朝食終了の1時間後に合計240mLの水で各用量を投与した。
【0085】
1日目に、投薬前(0時間)と試験薬の投与2時間後、4時間後、6時間後、9時間後、12時間後、24時間後に連続血液サンプルを採取した。血漿中トラフ濃度を判断するために、7日目、10日目および13日目にも投薬前に血液サンプルを採取した。14日目に、投薬前(0時間)と試験薬の投与2時間後、4時間後、6時間後、9時間後、12時間後、24時間後、48時間後、72時間後、96時間後、144時間後、216時間後に連続血液サンプルを採取した。試験の間をとおして、バイタルサイン、心電図(ECG)測定値、神経学的評価および臨床試験(8時間の絶食後に測定)を定期的に集めた。また、1日目(1日目の投薬の24時間前)から2日目(ピマバンセリンまたは偽薬の初回投薬の24時間後)にかけて48時間連続の2誘導Holterモニタリングを実施し、試験の7日目から9日目にかけて2回の投与間隔をあけてこのモニタリングを再度実施した。報告または観察された有害事象を集めた。
【0086】
(データ解析)
各処置期間の1日目にピマバンセリン単回投薬後の血漿中濃度から算出したPKパラメータには、以下の項目を含めた:最高血漿中濃度(Cmax)、最高血漿中濃度到達時間(Tmax)、線形台形法に基づく総和によって算出した反復投与(24時間)で使用する時刻0から投薬間隔(τ)の終わりまでの血漿中濃度時間曲線下血漿面積[AUC(0−τ)]。14日目の最後の投薬後に血漿中濃度からの算出対象とするパラメータには以下の項目を含めた:定常状態の最高血漿中濃度(Cmax,ss)、定常状態の最低血漿中濃度(Cmin,ss)、AUC(0−τ)ssを投与間隔(τ)で割って求めた定常状態の平均血漿中濃度(Cavg,ss)、定常状態での最高血漿中濃度到達時間(Tmax,ss)、定常状態での最低血漿中濃度到達時間(Tmin,ss)、線形台形法に基づく総和によって算出した時刻0から定常状態での投与間隔の終わり(τ=24時間)までの血漿中濃度時間曲線下面積[AUC(0−τ),ss]、対数線形血漿中濃度時間曲線の終点の線形回帰で求めた定常状態での消失速度定数(λz,ss)、ln(2)/λz,ssとして求めた定常状態での終末半減期(t1/2,ss)、用量/AUC(0−τ)ssによって算出した見かけの経口クリアランス(CLpo,ss)、(Cmax,ss−Cmin,ss)/Cavg,ss×100%として算出した変動率(%Fluct)、AUC(0−τ)ss/AUC(0−τ)として算出した蓄積比[AR(1)]、Cmax,ss/Cmaxとして算出した蓄積比[AR(2)]。補正係数2×427.561/1005.2=0.851を用いて、ピマバンセリン二塩基塩の用量の重さ(1005.2g/mol)を遊離塩基の重さに調節した(427.561g/mol)。
【0087】
少なくとも1用量の試験薬を用いた被験者から得られるすべての安全性データを安全性解析に含めた。有害事象の頻度を一覧にした。試験内と試験の終わりのベースライン、ベースラインの研究室データからの変化、バイタルサイン、ECGパラメータをまとめた。実験パラメータごとにシフトテーブルを作成した。
【0088】
(結果)
1日目の25mgと100mgの投与2時間後に血漿中の平均ピマバンセリン濃度を測定した。1日目に血漿中の平均ピマバンセリン濃度が最大値に達するまでの時間は、25mgのピマバンセリン投与では約9時間後、100mgのピマバンセリン投与では12時間後であった。1日目の血漿中の平均ピマバンセリン濃度は、25mgと100mgのピマバンセリン投薬後の24時間後で定量化可能であった。
【0089】
ピマバンセリン25mgおよび100mgの反復投与後、14日目に血漿中の投薬前平均ピマバンセリン濃度を測定した。14日目に血漿中の平均ピマバンセリン濃度が最大値に達するまでの時間は、ピマバンセリン用量25mgと100mgの両方で約9時間であった。14日目の血漿中の平均ピマバンセリン濃度は、25mgと100mgの投薬後312時間で定量化可能であった。
【0090】
変動係数の割合(CV%)で測定した濃度の被験者間のばらつきは、試験開始時(1日目および14日目に投薬後最大6時間まで)と最後の用量後(72時間から試験終了後まで)を除き、概してピマバンセリン用量25mgの場合で50%未満であった。被験者間のばらつきは、ピマバンセリン用量100mgのほうがピマバンセリン用量25mgよりも概して小さかった。
【0091】
各用量群についての14日間の投薬期間(15日目に集めた24時間サンプルも含める)でのピマバンセリンの平均トラフ濃度の解析から、基本的には投与10〜13日以内で定常状態に達することが分かった。7日目、10日目、13日目、14日目、15日目に取得したトラフ濃度の統計解析から、7日目までにトラフ濃度が定常状態に達することが分かった。7日目の平均トラフ濃度は、14日目と15日目に観察された値の約20%であった。サンプルサイズが小さい(用量群あたりN=4)ため、統計解析では7日目とそれ以後のPKサンプリング日との間のトラフ濃度のわずかな差異を見極められなかった。
【0092】
実際のサンプル収集時間を用いて非コンパートメント解析で血漿中ピマバンセリン濃度時間データを解析した。中央値Tmaxは、1日目にピマバンセリン用量25mgで10.58時間、100mgで10.53時間であった。ピマバンセリン25mgおよび100mgの投与後、1日目の平均Cmax値はそれぞれ11.37および43.65ng/mLであり、平均Cmaxは用量の漸増に比例して増加するように見えた。1日目の平均AUC(0−t)値は、ピマバンセリン25mgの投与後に198.5ng×時間/mL、100mgの投与後に761.5ng×時間/mLであった。ピマバンセリン用量100mgでピマバンセリン用量25mgの場合と比してAUC(0−t)の4倍増が観察されたが、これは1日目のAUC(0−t)が用量に比例して増加したことを示唆するものである。
【0093】
14日目に、中央値Tmax,ss値は、ピマバンセリン用量25mgで7.50時間、100mgで9.00時間であった。1日目のTmaxの範囲よりも14日目のTmaxの範囲のほうが狭くなった(4.00から12.00時間)。平均Cmax,ss値は用量25mgで53.00、用量100mgで142.8ng/mLであった。平均Cmin,ss値は用量25mgで39.08、用量100mgで97.15ng/mLであった。平均Cavg,ss値は用量25mgで46.70、用量100mgで121.8ng/mLであった。用量が4倍になると、これらの薬物動態パラメータの約2.6倍増が観察された。この比は、100mgと25mgの用量での平均AUC(0−t),ssの比較結果(2920対1121ng×時間/mL)と一致した。しかしながら、この試験ではサンプルサイズが小さい(N=4)ことを考慮すると、用量比例性の推論をすることはできない。
【0094】
平均t1/2,ssは、用量25mgで77.2時間、用量100mgで50.9時間であり、用量とは無関係であるように見えた。平均経口クリアランス(CLpo,ss)は、用量25mgで21.23L/時間、用量100mgで29.43L/時間であった。この試験での最高濃度と最低濃度との間には変動がほとんどなかった。平均変動率31%および39%は、ピマバンセリン用量25mgと100mgで同様であった。
【0095】
平均Cmax,ss対Cmax比は、ピマバンセリン25mgで4.8、100mgで3.5であった。平均AUC(0−t),ss対AUC(0−t)比は、25mgで5.8、100mgで4.1であった。どちらの用量群でも14日目に有意なピマバンセリンの蓄積が観察された。
【0096】
19日間の拘束期間ならびに試験終了時とフォローアップ時をとおして、有害事象を連続的にモニタした。全体として有害事象は概して強度が穏やかであった。どの有害事象にも用量関連の増加は認められず、最大耐量には達しなかった。この試験の実施時に重大な有害事象は発生しなかった。
【0097】
ピマバンセリンの用量を増やしながら投与して、臨床検査データ、血液学的な分析物、血清生化学分析物、尿検査結果またはバイタルサイン値に、臨床的に有意な変化または傾向は観察されなかった。安全性の値はピマバンセリン処置被験者と偽薬被験者で同様であった。12名(100.0%)の被験者が、1日目から1日目(48時間)と7日目から9日目(48時間)に実施したII誘導Holter ECGモニタリングに異常なエピソードを少なくとも1回経験した。しかしながら、臨床的に重要であるとみなされたのは、これらの異常なII誘導Holter指標のうちの1つだけであり、その1つの事象は偽薬を投与された被験者で生じたものであった。12誘導の機械読み取り式ECGの結果では有害事象は報告されず、臨床的に重要であるとされるHR、PR、QRS、QT、QTcBまたはQTcF間隔が認められた被験者はいなかった。いずれの処置群にも、500msecを超えるQT、QTcBまたはQTcF間隔が認められた被験者はおらず、ベースラインからの60msecを超える変化と関連したQTcBまたはQTcFの境界値または延長が認められた被験者もいなかった。神経学的検査および運動機能評価では、ピマバンセリンに対する臨床的に有意な所見は何ら明らかにならなかった。
【0098】
(考察)
パーキンソン病の患者においてピマバンセリンで得られた薬物動態結果は、健康な男性の被験者での前の反復用量試験で得られたものと一致した。交絡している疾患状態および/または併用薬とは関係なく、パーキンソン病の患者ではピマバンセリン薬物動態の被験者間のばらつきは小さかった。蓄積は、この試験で観察された50〜80時間の半減期ならびに、前の反復用量試験でのデータと一致した。7日目までに、平均トラフ濃度が15日目に得られた値の約20%以内になり、ピマバンセリン1日1回投与の10〜13日以内で定常状態に達した。
【0099】
ピマバンセリンは、パーキンソン病の患者にとって安全かつ忍容性が高いと思われ、運動機能を増悪させなかった。本試験では、パーキンソン病の高齢の患者個体群でピマバンセリンが1日1回投与に合った薬物動態を呈し、忍容性も高いことが示唆される。
【0100】
(実施例3−パーキンソン病精神障害第II相試験)
処置誘導された精神障害のあるパーキンソン病の患者におけるピマバンセリンの抗精神病的有効性および安全性を測定するために、第II相試験を実施した。治験には複数の臨床現場で60名の患者が登録した。この試験では、安定したドパミン補充療法も受けている患者に対し、28日間の期間にわたってピマバンセリンまたは偽薬のいずれかを1日1回経口投与した。この試験のデザインでは、最初のピマバンセリンの用量20mgを40mgに、続いて60mgへと、試験期間のあいだに2通りのあらかじめ定められた間隔で用量の漸増が可能であった。偽薬処置患者と比べてピマバンセリンでは用量を漸増させる患者が減り、ピマバンセリンの平均総用量は偽薬の平均総用量よりもかなり少なかった(p=0.05)。治験での質問に答えた医師の回答では、2つの群でのこのような用量漸増の差は、主に忍容性がゆえに用量の制限ではなく漸増しなかった患者で陽性の臨床反応が出たことによるものであった。
【0101】
ピマバンセリン処置群と偽薬処置群との間に、統一パーキンソン病評価尺度(UPDRS−詳細については実施例4で後述)のサブセクションのパートII(日常生活動作)およびIII(運動能力検査)で測定した場合の運動機能に統計差がない(p=0.22)旨を示すことで、治験の主要エンドポイントが満たされた。主要エンドポイントでは、包括解析個体群についてUPDRSのピマバンセリン群と偽薬群でのベースラインから試験28日までの絶対的な変化を評価した。ピマバンセリンおよび偽薬の治療群について、UPDRSパートIIおよびIIIのベースラインからの変化を図4Aに示す。ベースラインと28日目のUPDRSパートIIおよびIIIのスコアを図4Bに示す。この試験は、UPDRSのサブセクションパートIIおよびIIIで測定した場合にピマバンセリンと偽薬との間の臨床的に有意な5ポイントの差を検出するために、統計的検出力95%で設計した。ピマバンセリン群と偽薬処置群との間に統計的有意性が欠如していることから、ピマバンセリンが処置誘導された精神障害のあるパーキンソン病の患者の運動機能を増悪させないことが分かった。
【0102】
この試験には、以下の3つの異なる評価尺度を用いる抗精神病的有効性の副次エンドポイントも含めるようにした。精神障害の重症度を評価する項目を含む精神的欠陥を測定するUPDRSのパートI;幻覚および妄想を測定する陽性症状評価尺度(SAPS−詳細については実施例4で後述);精神疾患の患者の全体的な重症度についての一般的な評価を反映した臨床全般印象−病気の重症度の尺度(CGI−S−詳細については実施例4で後述)。ピマバンセリンおよび偽薬治療群でのUPDRSパートIのスコアのベースラインからの変化を図5Aに示す。ベースラインおよび28日目のUPDRSパートIのスコアを図5Bに示す。ピマバンセリンでは、UPDRSパートIに偽薬と比べて統計的に有意な改善が認められ(p<0.05)、この結果は幻覚および妄想に対する影響に起因するものであった。
【0103】
SAPS尺度全体ならびに幻覚および妄想の下位尺度のベースラインからの変化を図6Aに示す。ベースラインおよび28日目のSAPSスコア全体を図6Bに示す。同様に、図6Cおよび図6Dは、それぞれベースラインおよび28日目の幻覚と妄想の下位尺度を示す。ベースラインからの絶対的な変化で測定した場合に、SAPSスコア全体で偽薬に比してピマバンセリンに統計的な傾向が認められた(p<0.09)。事後解析を実施したところ、SAPSのベースライン解析からの相対変化率(p=0.05)を用いてピマバンセリンに偽薬とは有意な差が認められた。
【0104】
2つの処置治療群でのCGI−S尺度のベースラインからの変化を図7Aに示す。ベースラインおよび28日目のCGI−Sスコアを図7Bに示す。CGI−Sでは偽薬と比べてピマバンセリンは有意な効果を示さなかった。しかしながら、図7Cに示されるように、偽薬処置群の患者(18%)よりもピマバンセリン処置群の患者(42%)のほうが、多くの人数でCGI−Sスコアが小さくなった。
【0105】
ピマバンセリンおよび偽薬処置群のベースラインから試験28日までの平均変化スコアと平均ベースラインスコアを表2に示す平均変化の下にある負の数字は改善を示す。p値はピマバンセリンと偽薬の差を反映している(n.s.=有意ではない)。
【表2】
【0106】
この試験では、臨床的変動(すなわちオン/オフ期間)、ジスキネジア、パーキンソン療法で用いられるドパミン系処置薬に共通する他の合併症を測定するUPDRSパートIVを用いてパーキンソン病療法の他の合併症についても評価した。2つの処置治療群でのUPDRSパートIVスコアのベースラインからの変化を図8Aに示す。ベースラインと28日目の絶対UPDRSパートIVスコアを図8Bに示す。UPDRSパートIVでは偽薬に対して、ピマバンセリンに改善の統計的な傾向が認められた(p<0.06)ことから、ピマバンセリンがパーキンソン病のさまざまな機能障害の治療に有用ではないかと思われた。
【0107】
ピマバンセリンは、処置誘導された精神障害のあるパーキンソン病の患者にとって安全かつ忍容性が高かった。調査員らの申告によれば、試験では処置関連の重篤な有害事象は発生しなかった。有害事象の大半が事実上軽度から中程度で、有害事象の頻度もピマバンセリン処置群と偽薬処置群でほぼ同様であった。ピマバンセリンは、ECG、バイタルサイン、血液学、尿検査および臨床化学をはじめとする試験時をとおして評価した広範囲にわたる臨床測定で安全であった。
【0108】
実施例4−パーキンソン病精神障害第III相試験
パーキンソン病精神障害のある患者へのピマバンセリンの投与を含む偽薬制御された二重盲検多施設第III相試験を実施する。各治療群に約93名の被験者を無作為化して、2通りの服用量(10mgおよび40mg)で6週間の処置期間にわたってピマバンセリンを投与し、アクティブな治療群各々を偽薬単剤治療群と比較する。この治験では、スクリーニング時、実験1日目(ベースライン)、実験8日目、実験15日目、実験29日目、実験42日目に来院して、外来ベースで実施する。非盲検延長プロトコールを継続しない被験者では、最終日の調査薬の投与から4週間後にフォローアップでの来院(実験70日目)を実施する。
【0109】
処置期間は6週間である。処置開始の21日前を超えない範囲で被験者をスクリーニングし、さらに調査薬を最後に投与した日から4週間後にフォローアップをしてもよい。被験者ごとの最大試験期間は13週間である。ピマバンセリンまたはマッチング偽薬を10mg(2×5mgの錠剤)または40mg(2×20mgの錠剤)のいずれかの用量で錠剤の形にて1日1回経口投与する。
【0110】
(被験者)
試験個体群には、別の説明または非定型の特徴がなく、静止時振戦、固縮、動作緩慢および/または無動症、姿勢保持障害という基本的特徴のうちの少なくとも3つが該当するとして定義された特発性パーキンソン病の臨床診断が1年という最小期間でなされた、年齢40歳以上の男性または女性の被験者を含む。被験者には、スクリーニングでの来院前の4週間のあいだに発生している幻覚および/または幻聴および/または妄想がある。これらの症候は、抗精神病薬での治療を正当化できるほど重篤である。精神病的な症候は1か月を超えて存在し、PDの診断が確定したあとに発症する。被験者は、実験1日目(ベースライン)の1か月前ならびに治験時に抗パーキンソン薬を安定投与されている。
【0111】
(併用療法)
試験時には併用薬を最小限に維持する。被験者は実験1日目(ベースライン)の少なくとも1か月前に抗パーキンソン薬を安定投与されており、試験時をとおしてこの安定用量を維持する。
【0112】
(スクリーニング評価)
(ミニメンタルステート検査(MMSE))
ミニメンタルステート検査(MMSE)は、認知を定量的に評価するのに用いられる30点満点の簡単な質問である(Folstein M,Folstein S,McHugh P.Mini−Mental State.A practical method for grading the cognitive state of patients for the clinician.J Psych Res 1975;12:189〜198)。MMSE試験には、試験の時間と場所、単語を繰り返したリスト、計算、言語使用能力および理解力、図形の書き写しなど、多くの分野の簡単な質問と課題が含まれる。この試験は、認知障害のスクリーニング、特定時点での認知障害の重症度の推測、個人における経時的な認知変化過程の追跡、治療に対する個人の応答の文書化に使用可能である。
【0113】
(神経精神医学的インベントリー(NPI))
痴呆患者の精神病理を評価するために、神経精神医学的インベントリー(NPI)が開発された(Cummings JL,Mega M,Gray K,Rosenberg−Thompson S,Carusi DA and Gornbein J(1994).The Neuropsychiatric Inventory:comprehensive assessment of psychopathology in dementia.Neurology,44:2308〜2314)。これは、痴呆に共通する12項目の神経精神病学的障害すなわち、妄想、幻覚、動揺、不快、不安、無気力、易刺激性、多幸感、脱抑制、奇異な運動行動、夜間の行動障害、食欲、食行動異常を評価するものである。スクリーニング時には、NPIの幻覚と妄想のドメインを使って、その総スコア(幻覚の頻度×重症度+妄想の頻度×重症度)が4以上になるような患者の精神障害の度合いを評価する。
【0114】
(有効性の評価)
(主要エンドポイント−陽性症状評価尺度(SAPS))
主要エンドポイントは、PDPの核になる症候である幻覚と妄想の重症度および/または頻度の低下を示す目安である。主要エンドポイントの評価にはSAPSを用いる(Andreason,N.,Scale for the Positive Assessment of Positive Symptoms.Iowa City,IA,University of Iowa,1984)。SAPSは、特に統合失調症における精神病的な陽性症状を評価するために設計された。陽性症状としては、妄想、幻覚、言語および挙動の異常、思考過程障害があげられる。この治験では、SAPSの2つの下位尺度である幻覚と妄想を用いる。これらのドメインの選択は主に、そのPDP個体群の特定症候との関連性、これらの症状の重症度評価での有用性(頻度と期間を反映)、評価者間信頼性の高さである。
【0115】
集中評価サービスを利用して、現場間の評価者間変動を制御するとともに、被験者の症状の重症度と変化についての「盲検」評価を得る。集中サービス業者の遠隔地の盲検評価者(すなわちメンタルヘルスを評価する者)が、ビデオ会議技術を用いてSAPSをリアルタイムに実施する。遠隔地の評価者には、試験の設計、組み入れ基準、訪問回数、処置の割付けは知らせない。このSAPS評価は、実験1日目(ベースライン)、実験8日目、実験15日目、実験29日目、実験42日目に実施する。
【0116】
主要エンドポイントは、SAPSの幻覚と妄想の組み合わせスコアのベースライン(実験1日目)から実験42日目までの平均変化である。対象となる比較は、ベースライン(実験1日目)からの変化に差がない帰無仮説を想定した2つのピマバンセリン用量治療群と偽薬治療群の比較である。このとき、ANOVAモデルからの二乗平均を用いて比較試験をする。2つのピマバンセリン用量治療群を偽薬と複数比較することからタイプIの誤差が増加する可能性があるため、Holmの逐次試験法を利用する。主要エンドポイントの2つの比較のうち最も有意なもので有意水準α=0.025とする。この比較が、この水準で有意であれば、有意水準α=0.05で第2の比較試験を実施する。一次解析ではITT個体群を用いる。
【0117】
主要エンドポイントの二次解析は、パープロトコール集団で実施する。測定可能なベースライン(実験1日目)スコアのある被験者で、スコアの各成分すなわち幻覚と妄想を別々に解析する。SAPSの幻覚および妄想のスコアならびに個々の成分についても、実験8日目、実験15日目および実験29日目の他の試験時点で評価する。共変量解析および層別解析を実施し、病気の期間、PD治療期間、治療前MMSEレベルが、SAPSの幻覚および妄想のエンドポイント各々と全体に対しておよぼす影響を評価する。
【0118】
(副次エンドポイント)
PDの運動症状、精神障害の重症度の臨床全般印象、精神障害の改善に、ピマバンセリンがおよぼす影響について扱うために、有効性の副次エンドポイントを設計する。ピマバンセリン用量治療群と偽薬のベースライン(実験1日目)からの平均変化の差について95%両側信頼区間を構築して、統一パーキンソン病評価尺度(UPDRS)パートII&IIIでの評価を分析する。他の副次エンドポイント(臨床全般印象尺度(CGI))については、各処置治療群の記述統計と一緒にまとめておく。ANOVAを用いてベースライン(実験1日目)からの変化について群の比較結果を評価する。
【0119】
(統一パーキンソン病評価尺度(UPDRS))
ピマバンセリンがPDの運動症状におよぼす影響を評価して、ピマバンセリンの有効性がパーキンソニズムを許容できないほど増悪して得られるものではないことを保証する。UPDRSは、コロンビア尺度から導かれた運動および挙動指数の包括的なバッテリ(battery)であり(Fahn S,Elton RL,and Members of the UPDRS Development Committee(1987).Unified Parkinson’s Disease Rating Scale.In:Fahn S,Marsden CD,Calne DB,Lieberman A,eds:Recent developments in Parkinson’s disease.Florham Park,NJ:Macmillan Health Care Information;pp 153〜163)、信頼性の高いかなりの試験を経た明確な評価基準が得られる。実験1日目(ベースライン)と実験42日目にUPDRSの6つのパートをすべてスクリーニング時に適用し、被験者のPDを評価する。スクリーニング時および実験42日目の評価は説明の目的である。パートII(日常生活動作)およびIII(運動能力検査)だけは、実験8日目、実験15日目、実験29日目に適用する。
【0120】
(臨床全般印象尺度(CGI))
臨床全般印象(CGI)尺度(Guy,W.,ECDEU Assessment Manual for Psychopharmacology−Revised(DHEW Publ No ADM 76−338).Rockville MD,U.S.Department of Health,Education,and Welfare Public Health Service,Alcohol,Drug Abuse,and Mental Health Administration,NIMH Psychopharmacology Research Branch,Division of Extramural Research Programs,1976,p.218〜222)を用いて、精神障害の重症度と改善に重点をおいて長手方向の変化(実験1日目(ベースライン)からの変化の割合と平均)を解析する。この尺度は、PDPの被験者で以前に使用したものである。CGIを用いると、研究者は、これらの被験者の精神病がどのくらい重症であるかを他のPD被験者との関連で(CGI−重症度;CGI−S)、また、どれだけの改善が見られるか(CGI−改善;CGI−I)を、グローバルな観点で判断することができる。これは信頼できる尺度であり、研究者は、ベースラインの痴呆、性格特性、通常は臨床的な運動変動やPDの他の特殊な局面を伴う不安の「合理的な」度合いを無視することができる。
【0121】
(別の有効性評価)
介護者負担感尺度、SCOPA−SleepおよびNMSQuestの目安を、それぞれの処置治療群の記述統計と一緒にまとめておく。ANOVAを用いてベースライン(実験1日目)からの変化について群の比較結果を評価する。
【0122】
(介護者負担感尺度)
介護者負担感尺度を被験者に付き添う介護者に適用する。これを用いると、ピマバンセリンが介護者のストレスを寛解する可能性を評価することができる(Zarit SH,Reever KE,Bach−Peterson J.Relatives of the impaired elderly:correlates of feeling of burden.Gerontologist 1980;20:649〜55)。この自己記入式の22項目の質問は、痴呆患者集団の介護者、特にアルツハイマー病の被験者の介護者のあいだで一般に用いられている。とはいえ、PDでも高い信頼性が得られることが報告されている。
【0123】
(SCOPA−Sleep)
睡眠断片化は、PDの被験者に一般的であり、日中の眠気につながることがある。また、PD被験者は、PDに伴う筋肉の痛みがゆえに夜間も頻繁に目を覚ます。ピマバンセリンが被験者の睡眠におよぼす影響をSCOPA−Sleep尺度で評価する(Marinus J;Visser M;van Hilten JJ et al.Assessment of sleep and sleepiness in parkinson’s disease.SLEEP 2003;26(8):1049〜54)。
【0124】
(NMSQuest)
非運動症状の質問(NMSQuestも使用する。NMSQuestは特にPD被験者用に開発された;この新たに開発された質問は自己記入式であり、鬱、痴呆、無気力、幻覚、よだれ、便秘、痛み、泌尿生殖器の異常および睡眠障害などの一定範囲の非運動症状(NMS)の包括的な評価を可能にする(Chaudhuri,KR,Martinez−Martin,P.,Shapira,A.H.,et al.,International multicenter pilot study of the first comprehensive self completed nonmotor symptoms questionnaire for Parkinson’s disease:The NMSQuest study.Mov Disord,2006)。
【0125】
(結果)
この試験から、ピマバンセリン(10mgまたは40mgを1日1回投与など)が、幻覚および/または妄想の重症度および/または頻度を含むパーキンソン病精神障害の治療に有効であるということが分かる。特に、ベースライン(実験1日目)から実験42日目でのSAPSの幻覚と妄想のスコアの組み合わせにおける平均変化の改善が観察されることから、パーキンソン病精神障害の治療に有効であることが分かる。さらに、CGI尺度の改善からも証拠が得られる。また、UPDRS評価基準のパートIIおよびIIIは、ベースラインから実験42日目まで有意に増悪することがなく、ピマバンセリンがパーキンソニズムの有意な増悪なくパーキンソン病精神障害を改善することを示している。
【0126】
最後に、非運動症状の全体的な改善は、自己記入式のNMSQuestの質問での改善から明らかである。睡眠パターンの特定の改善は、SCOPA−Sleep尺度の改善から明らかである。また、介護者負担感尺度が改善されることからも分かるように、ピマバンセリンを投与することで主介護者にかかる負担が軽減される。
【0127】
以上、実施形態および実施例を参照して本発明について説明したが、本発明の主旨を逸脱することなく多数かつ多様な改変が可能であることは理解されたい。よって、本発明は以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬組成物と、処方情報と、容器とを含むキットであって、前記医薬組成物が治療有効量のピマバンセリンを含み、前記処方情報が、前記医薬組成物を食物と一緒にあるいは食物なしで服用可能であることを患者に伝えるものである、キット。
【請求項2】
別の抗精神病薬を含む、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記別の抗精神病薬がリスペリドンである、請求項2に記載のキット。
【請求項4】
医薬組成物と、処方情報と、容器とを含むキットであって、前記医薬組成物が治療有効量のピマバンセリンを含み、前記処方情報が、食物がピマバンセリンの吸収率または吸収の度合いのいずれにも影響しない旨を患者に伝えるものである、キット。
【請求項5】
別の抗精神病薬を含む、請求項4に記載のキット。
【請求項6】
前記別の抗精神病薬がリスペリドンである、請求項5に記載のキット。
【請求項7】
治療用量のピマバンセリンを患者に与え、
ピマバンセリンを食物と一緒にあるいは食物なしで服用可能であることを前記患者に伝えることを含む、患者にピマバンセリンによる治療を施すための方法。
【請求項8】
前記患者に書面で伝える、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記患者に口頭で伝える、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
別の抗精神病薬を前記患者に与えることを含む、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記別の抗精神病薬がリスペリドンである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
治療用量のピマバンセリンを患者に与え、
食物がピマバンセリンの吸収率または吸収の度合いのいずれにも影響しない旨を前記患者に伝えることを含む、患者にピマバンセリンによる治療を施すための方法。
【請求項13】
前記患者に書面で伝える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記患者に口頭で伝える、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
別の抗精神病薬を前記患者に与えることを含む、請求項12〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記別の抗精神病薬がリスペリドンである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
患者にピマバンセリンを投与する方法であって、投与することが、ピマバンセリンを含む医薬組成物を、医薬組成物を食物と一緒にあるいは食物なしで服用可能であることを前記患者に伝える印刷ラベルの付された容器に入れて前記患者に提供することを含む、方法。
【請求項18】
別の抗精神病薬を前記患者に与えることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記別の抗精神病薬がリスペリドンである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
患者にピマバンセリンを投与する方法であって、投与することが、ピマバンセリンを含む医薬組成物を、食物がピマバンセリンの吸収率または吸収の度合いのいずれにも影響しない旨を前記患者に伝える印刷ラベルの付された容器に入れて前記患者に提供することを含む、方法。
【請求項21】
別の抗精神病薬を前記患者に与えることを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記別の抗精神病薬がリスペリドンである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
精神障害の症候を呈するパーキンソン病患者にピマバンセリンを投与することを含む、パーキンソン病精神障害の治療方法。
【請求項24】
前記精神障害が薬剤誘発性ではない、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記投与が前記患者の陽性症状評価尺度(SAPS)を小さくするのに十分なものである、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記SAPSの低下が少なくとも約20%である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記SAPSの低下が少なくとも約30%である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記投与が幻覚の重症度および/または頻度を下げるのに十分なものである、請求項23〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記投与が妄想の重症度および/または頻度を下げるのに十分なものである、請求項23〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記投与が臨床全般印象(CGI)尺度を小さくするのに十分なものである、請求項23〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記CGI尺度の低下が少なくとも約5%である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記CGI尺度の低下が少なくとも約10%である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記投与が統一パーキンソン病評価尺度(UPDRS)のパートIを小さくするのに十分なものである、請求項23〜32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記UPDRSのパートIの低下が少なくとも約10%である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記UPDRSのパートIの低下が少なくとも約20%である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記投与が運動症状の有意な増悪を生じない、請求項23〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記投与が統一パーキンソン病評価尺度(UPDRS)のパートIIまたはパートIIIの有意な変化を生じない、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記投与がUPDRSのパートIIおよびパートIIIの約10%未満の変化を引き起こす、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記投与がUPDRSのパートIIおよびパートIIIの約3%未満の変化を引き起こす、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
ピマバンセリンを非運動症状の寛解に十分な量でパーキンソン病患者に投与することを含む、パーキンソン病の非運動症状の治療方法。
【請求項41】
前記非運動症状が幻覚である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記非運動症状が睡眠障害である、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記非運動症状が、鬱、痴呆、無気力、よだれ、便秘、痛み、泌尿生殖器の異常のうちの1つまたは複数からなる群から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記投与がNMSQUESTの質問に表れる非運動症状を改善するのに十分なものである、請求項40〜43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
パーキンソン病に羅患している被験者における睡眠障害の寛解方法であって、睡眠障害を訴えているパーキンソン病被験者にピマバンセリンを投与することを含む、方法。
【請求項46】
パーキンソン病に羅患している被験者における睡眠障害および精神障害の寛解方法であって、睡眠障害に羅患し、かつ精神障害の1つまたは複数の症候を呈しているパーキンソン病被験者に、ピマバンセリンを投与することを含む、方法。
【請求項47】
痴呆のあるパーキンソン病患者における精神障害の寛解方法であって、精神障害の1つまたは複数の症候と痴呆の1つまたは複数の症候とを呈しているパーキンソン病患者に、ピマバンセリンを投与することを含む、方法。
【請求項48】
日中の眠気を訴えている被験者にピマバンセリンを投与することを含む、日中の眠気を低減する方法。
【請求項49】
前記被験者にパーキンソン病がある、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記投与がSCOPA−睡眠尺度を改善するのに十分なものである、請求項48または49に記載の方法。
【請求項51】
介護者の世話でパーキンソン病患者にピマバンセリンを投与することを含む、介護者の生活の質を改善する方法。
【請求項52】
前記投与が介護者の介護者負担感尺度を小さくするのに十分なものである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
死亡の危険性を低減するのに十分な量で患者にピマバンセリンを投与することを含む、パーキンソン病患者の死亡率を低下させる方法。
【請求項54】
前記患者がパーキンソン病精神障害に羅患している、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記投与されるピマバンセリンの量が1日1回40mgである、請求項17〜54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記投与されるピマバンセリンの量が1日1回10mgである、請求項17〜54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記投与されるピマバンセリンの量が1日1回20mgである、請求項17〜54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
抗パーキンソン病薬を同時投与することを含む、請求項17〜54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記抗パーキンソン病薬がレボドパを含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記抗パーキンソン病薬がSINEMET(登録商標)である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記抗パーキンソン病薬がラサギリンである、請求項59に記載の方法。
【請求項1】
医薬組成物と、処方情報と、容器とを含むキットであって、前記医薬組成物が治療有効量のピマバンセリンを含み、前記処方情報が、前記医薬組成物を食物と一緒にあるいは食物なしで服用可能であることを患者に伝えるものである、キット。
【請求項2】
別の抗精神病薬を含む、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記別の抗精神病薬がリスペリドンである、請求項2に記載のキット。
【請求項4】
医薬組成物と、処方情報と、容器とを含むキットであって、前記医薬組成物が治療有効量のピマバンセリンを含み、前記処方情報が、食物がピマバンセリンの吸収率または吸収の度合いのいずれにも影響しない旨を患者に伝えるものである、キット。
【請求項5】
別の抗精神病薬を含む、請求項4に記載のキット。
【請求項6】
前記別の抗精神病薬がリスペリドンである、請求項5に記載のキット。
【請求項7】
治療用量のピマバンセリンを患者に与え、
ピマバンセリンを食物と一緒にあるいは食物なしで服用可能であることを前記患者に伝えることを含む、患者にピマバンセリンによる治療を施すための方法。
【請求項8】
前記患者に書面で伝える、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記患者に口頭で伝える、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
別の抗精神病薬を前記患者に与えることを含む、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記別の抗精神病薬がリスペリドンである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
治療用量のピマバンセリンを患者に与え、
食物がピマバンセリンの吸収率または吸収の度合いのいずれにも影響しない旨を前記患者に伝えることを含む、患者にピマバンセリンによる治療を施すための方法。
【請求項13】
前記患者に書面で伝える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記患者に口頭で伝える、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
別の抗精神病薬を前記患者に与えることを含む、請求項12〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記別の抗精神病薬がリスペリドンである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
患者にピマバンセリンを投与する方法であって、投与することが、ピマバンセリンを含む医薬組成物を、医薬組成物を食物と一緒にあるいは食物なしで服用可能であることを前記患者に伝える印刷ラベルの付された容器に入れて前記患者に提供することを含む、方法。
【請求項18】
別の抗精神病薬を前記患者に与えることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記別の抗精神病薬がリスペリドンである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
患者にピマバンセリンを投与する方法であって、投与することが、ピマバンセリンを含む医薬組成物を、食物がピマバンセリンの吸収率または吸収の度合いのいずれにも影響しない旨を前記患者に伝える印刷ラベルの付された容器に入れて前記患者に提供することを含む、方法。
【請求項21】
別の抗精神病薬を前記患者に与えることを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記別の抗精神病薬がリスペリドンである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
精神障害の症候を呈するパーキンソン病患者にピマバンセリンを投与することを含む、パーキンソン病精神障害の治療方法。
【請求項24】
前記精神障害が薬剤誘発性ではない、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記投与が前記患者の陽性症状評価尺度(SAPS)を小さくするのに十分なものである、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記SAPSの低下が少なくとも約20%である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記SAPSの低下が少なくとも約30%である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記投与が幻覚の重症度および/または頻度を下げるのに十分なものである、請求項23〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記投与が妄想の重症度および/または頻度を下げるのに十分なものである、請求項23〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記投与が臨床全般印象(CGI)尺度を小さくするのに十分なものである、請求項23〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記CGI尺度の低下が少なくとも約5%である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記CGI尺度の低下が少なくとも約10%である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記投与が統一パーキンソン病評価尺度(UPDRS)のパートIを小さくするのに十分なものである、請求項23〜32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記UPDRSのパートIの低下が少なくとも約10%である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記UPDRSのパートIの低下が少なくとも約20%である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記投与が運動症状の有意な増悪を生じない、請求項23〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記投与が統一パーキンソン病評価尺度(UPDRS)のパートIIまたはパートIIIの有意な変化を生じない、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記投与がUPDRSのパートIIおよびパートIIIの約10%未満の変化を引き起こす、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記投与がUPDRSのパートIIおよびパートIIIの約3%未満の変化を引き起こす、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
ピマバンセリンを非運動症状の寛解に十分な量でパーキンソン病患者に投与することを含む、パーキンソン病の非運動症状の治療方法。
【請求項41】
前記非運動症状が幻覚である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記非運動症状が睡眠障害である、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記非運動症状が、鬱、痴呆、無気力、よだれ、便秘、痛み、泌尿生殖器の異常のうちの1つまたは複数からなる群から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記投与がNMSQUESTの質問に表れる非運動症状を改善するのに十分なものである、請求項40〜43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
パーキンソン病に羅患している被験者における睡眠障害の寛解方法であって、睡眠障害を訴えているパーキンソン病被験者にピマバンセリンを投与することを含む、方法。
【請求項46】
パーキンソン病に羅患している被験者における睡眠障害および精神障害の寛解方法であって、睡眠障害に羅患し、かつ精神障害の1つまたは複数の症候を呈しているパーキンソン病被験者に、ピマバンセリンを投与することを含む、方法。
【請求項47】
痴呆のあるパーキンソン病患者における精神障害の寛解方法であって、精神障害の1つまたは複数の症候と痴呆の1つまたは複数の症候とを呈しているパーキンソン病患者に、ピマバンセリンを投与することを含む、方法。
【請求項48】
日中の眠気を訴えている被験者にピマバンセリンを投与することを含む、日中の眠気を低減する方法。
【請求項49】
前記被験者にパーキンソン病がある、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記投与がSCOPA−睡眠尺度を改善するのに十分なものである、請求項48または49に記載の方法。
【請求項51】
介護者の世話でパーキンソン病患者にピマバンセリンを投与することを含む、介護者の生活の質を改善する方法。
【請求項52】
前記投与が介護者の介護者負担感尺度を小さくするのに十分なものである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
死亡の危険性を低減するのに十分な量で患者にピマバンセリンを投与することを含む、パーキンソン病患者の死亡率を低下させる方法。
【請求項54】
前記患者がパーキンソン病精神障害に羅患している、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記投与されるピマバンセリンの量が1日1回40mgである、請求項17〜54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記投与されるピマバンセリンの量が1日1回10mgである、請求項17〜54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記投与されるピマバンセリンの量が1日1回20mgである、請求項17〜54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
抗パーキンソン病薬を同時投与することを含む、請求項17〜54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記抗パーキンソン病薬がレボドパを含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記抗パーキンソン病薬がSINEMET(登録商標)である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記抗パーキンソン病薬がラサギリンである、請求項59に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【公表番号】特表2010−527938(P2010−527938A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508634(P2010−508634)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/064154
【国際公開番号】WO2008/144665
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(508338751)アカドイア プハルマセウチカルス インコーポレーテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/064154
【国際公開番号】WO2008/144665
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(508338751)アカドイア プハルマセウチカルス インコーポレーテッド (4)
【Fターム(参考)】
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