説明

ヒストンデアセチラーゼインヒビターとしてのスルホニルピロール

従って本発明は、ヒストンデアセチラーゼの効果的なインヒビターである式(I)の化合物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬組成物の製造のための医薬品工業で使用される新規のスルホニルピロール誘導体に関する。
【0002】
公知の背景技術
細胞における転写調節は、複雑な生物学的過程である。一つの基本原理は、ヒストンタンパク質、つまり八量体のヒストンコア複合体を形成するヒストンタンパク質H2A/B、H3及びH4の翻訳後修飾による調節である。リジン残基でのアセチル化又はメチル化によるものとセリン残基でのリン酸化による複雑なN末端修飾は、いわゆる"ヒストンコード"(Strahl & Ellis,Nature 403,41−45,2000)の一部を構成する。一つの簡単なモデルにおいては、正に荷電したリジン残基のアセチル化は、負に荷電したDNAへの親和性を下げ、こうして転写因子の到達が容易になる。
【0003】
ヒストンのアセチル化と脱アセチル化は、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)とヒストンデアセチラーゼ(HDAC)によって触媒される。HDACは、転写リプレッサー複合体と関連しており、クロマチンを転写的に不活性なサイレントな構造へとスイッチングする(Marks et al.Nature Cancer Rev 1,194−202,2001)。逆のことは、転写アクチベーター複合体と関連するHATに当てはまる。今までに、HDACの3種の異なるクラス、すなわちクラスI(HDAC1〜3、8)、クラスII(HDAC4〜7、9、10)及びクラスIII(Sir2ホモログ)が記載されており、クラスIはMr=42〜55kDaを有し、主に核内に局在し、そしてトリコスタチンA(TSA)による阻害に対して感受性であり、クラスIIは、Mr=120〜130kDaを有し、TSA感受性を有し、かつクラスIIIは、それらのNAD+依存性及びTSA不感受性によって全く異なる(Ruijter et al.Biochem.J.370,737−749,2003;Khochbin et al.Curr Opin Gen Dev 11,162−166,2001;Verdin et al.Trends Gen 19,286−293,2003)。HDAC11は、Mr=39kDaを有し、これは最近クローニングされ、そしてクラスIIとクラスIIのファミリーのメンバーにホモロジーを示す(Gao et al.J Biol Chem 277,25748−25755,2002)。HATとHDACは、細胞中で転写因子とプラットフォームタンパク質と一緒に大きな複合体で存在する(Fischle et al.Mol Cell 9,45−47,2002)。驚くべきことに、全ての遺伝子のたった約2%だけが、ヒストンアセチル化によって調節されているだけであり、それは340個の遺伝子及び参照HDIとしてのTSAのディファレンシャル・ディスプレイ分析に基づいて見積もられた(von Lint et al.Gene Expression 5,245−253,1996)。複数のミエローマ細胞におけるSAHAによる新たな研究によって、これらの転写的変化が、例えばアポトーシス又は増殖の調節に重要な異なる機能的な遺伝子クラスにまとめることができるということが示された(Mitsiades et al.Proc Natl Acad Sci 101,pp540,2004)。ヒストンタンパク質とは異なる基質が存在する。HDACに関しては、これらは、p53及びTFII Eのような転写因子又はHsp90のようなシャペロンを含む(Johnstone & Licht,Cancer Cell 4,13−18,2003)。従って、HDACの正確な名称は、リジン特異的タンパク質デアセチラーゼである。これらの知見の結果として、HDACのインヒビターは、一般にタンパク質アセチル化の調節によって、クロマチン構造と遺伝子転写だけでなく、タンパク質機能と安定性をも作用する。タンパク質アセチル化におけるこのHDACの機能は、また、HDIでの処理による迅速な遺伝子抑制の理解に重要となる(Lint他著のGene Expression 5,245−253,1996)。この関連で、発癌性の形質転換、アポトーシス調節及び悪性細胞増殖に関連するタンパク質が特に重要となる。
【0004】
種々の文献によって、癌発生についてのヒストンアセチル化の重要性が強調されている(Kramer et al.Trends Endocrin Metabol 12,294−300,2001;Marks et al.Nature Cancer Rev 1,194−202,2001により概説されている)。これらの疾病は、例えば
(i)ルビンスタイン・テイビー症候群に関連するHAT cAMP応答エレメント結合タンパク質(CBP)の突然変異、癌素因(Murata et al.Hum Mol Genet 10,1071−1076,2001)、
(ii)PML−レチノイン酸受容体α融合遺伝子による急性前骨髄球性白血病(APL)における転写因子によるHDAC1活性の異常動員(He et al.Nat genet 18,126−135,1998)、
(iii)非ホジキンリンパ腫で過剰発現されたBCL6タンパク質によるHDAC活性の異常動員(Dhordain et al.Nuceic Acid Res 26,4645−4651,1998)、及び最後に
(iii)急性骨髄性白血病におけるAML−ETO融合タンパク質によるHDAC活性の異常動員(AML M2サブタイプ;Wang et al.Proc Natl Acad Sci USA 95,10860−10865,1998)
である。前記のAMLサブタイプにおいて、HDAC1活性の動員は、結果的に、遺伝子サイレンシング、分化ブロック及び発癌性形質転換をもたらす。
(v)HDAC1遺伝子をマウスにおいてノックアウトすることで、HDAC1は、サイクリン依存性キナーゼインヒビターであるp21waf1及びp27kip1の抑制による胚性幹細胞における重大な機能を有することが示された(Lagger et al.Embo J.21,2672−2681,2002)。p21waf1は多くの癌細胞系統においてHDIにより誘導されるので、HDAC1は、癌細胞増殖でも同様に重要な成分である。初期のsiRNAを基礎とするHeLa細胞での遺伝子ノックダウン試験は、この仮説を支持している(Glaser et al.310,529−536,2003)。
(vi)HDAC2は、結腸癌において、最近にZhu他(Zhu et al)によって報告された機能的な腺腫性結腸ポリポーシス(APC)タンパク質の欠損によるwnt/β−カテニン/TCF−シグナル伝達経路の構成的活性化の後に過剰発現される(Cancer Cell 5,455−463,2004)。
を含む。
【0005】
分子レベルでは、トリコスタチンA(TSA)のような種々のHDACインヒビターによる過剰な公表データにより、多くの癌関連遺伝子がアップレギュレーション又はダウンレギュレーションされていることが示された。HDAC阻害によって、例えば、p21CIP1、サイクリンE、トランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)、p53又はフォンヒッペル・リンダウ(VHL)腫瘍抑制遺伝子はアップレギュレーションされ、一方で、Bcl−XL、bcl2、低酸素症誘導性因子(HIF)1α、血管内皮増殖因子(VEGF)及びサイクリンA/Dはダウンレギュレーションされる(Kramer et al.Trends Endocrin Metabol 12,294−300,2001によって概説されている)。HDACインヒビターが、細胞を細胞周期内のG1とG2/Mで停止させ、S期の細胞が不足することは、デプシペプチドについて一例として示されている(Sandor et al.,British J Cancer 83,817−825,2000)。HDAC阻害性化合物は、p53とカスパーゼ3/8に依存性のアポトーシスを誘導し、該化合物は広範な抗腫瘍活性を有する。抗脈管形成活性も説明されており、これはVEGFとHIF1αのダウンレギュレーションに関連していると考えられる。まとめると、HDAC阻害は、種々の分子レベルで腫瘍細胞に作用し、そして多種の分子タンパク質が対象となる。
【0006】
興味深いことに、HDACインヒビターは、細胞分化を誘発することが見出され、そしてこの薬理学的活性は、同様にその抗癌活性にも寄与しうることが判明した。例えば、最近では、スベロイラニリドヒドロキサム酸(SAHA)が乳癌細胞系統の分化を誘導することが示され、これは、乳脂肪膜球状タンパク質(MFMG)、乳脂肪球状タンパク質及び脂質の再合成によって例示されている(Munster et al.Cancer Res.61,8492,2001)。
【0007】
HDACインヒビターと化学療法剤並びにターゲット特異的癌医薬との相乗効果についての合理性が高まっている。例えば、SAHAとキナーゼ/cdkインヒビターのフラボピリドールとについて(Alemenara et al.Leukemia 16,1331−1343,2002)、CML細胞におけるLAQ−824とbcr−ablキナーゼインヒビターのグリベックとについて(Nimmanapalli et al.Cancer Res.63,5126−5135,2003)、そしてSAHA及びトリコスタチンA(TSA)とエトポシド(VP16)、シスプラチン及びドキソルビシンとについて(Kim et al.Cancer Res.63,7291−7300,2003)、そしてLBH589とhsp90インヒビターの17−アリル−アミド−デメトキシ−ゲルダナマイシン(17−AAG;George et al.Blood online,Oct.28,2004)について相乗作用が示されている。また、HDAC阻害が、乳癌細胞及び前立腺癌細胞におけるエストロゲン受容体又はアンドロゲン受容体の再発現を引き起こすので、これらの腫瘍を抗ホルモン療法に再感作させる能力があることが示されている(Yang et al.Cancer Res.60,6890−6894,2000;Nakayama et al.Lab Invest 80,1789−1796,2000)。
【0008】
種々の化学種からのHDACインヒビターは、4種の最も重要なクラス、すなわち(i)ヒドロキサム酸類似体、(ii)、ベンザミド類似体、(iii)環状ペプチド/ペプトライド及び(iv)脂肪酸類似体をもって文献に記載されている。公知のHDACインヒビターの総括的な概要は、近年公表された(Miller et al.J Med Chem 46,5097−5116,2003)。これらのヒストンデアセチラーゼインヒビターの特異性に関して公表されたデータは限られたものであるに過ぎない。一般に、殆どのヒドロキサメート系HDIは、クラスIとIIのHDAC酵素に関して特異的でない。例えば、TSAは、HDAC類の1、3、4、6及び10を、約20nMのIC50値で阻害する一方で、HDAC8は、IC50=0.49μMで阻害される(Tatamiya et al,AACR Annual Meeting 2004,Abstract #2451)。しかしながら、クラスII酵素のHDAC6について選択的な試験的なHDIであるツバシン(Tubacin)のような例外がある(Haggarty et al.Proc natl Acad Sci USA 100,4389−4394,2003)。更に、ベンザミド系HDIのクラスI選択性についてのデータが浮上している。MS−275は、クラスIのHDAC1とHDAC3を、それぞれIC50=0.51μM及び1.7μMで阻害した。それに対して、クラスIIのHDAC類の4、6、8及び10は、それぞれ>100μM、>100μM、82.5μM及び94.7μMのIC50値で阻害された(Tatamiya et al,AACR Annual Meeting 2004,Abstract #2451)。今までに、HDACクラスI又はクラスIIの酵素又は所定の単独のイソ酵素に対する特異性が、治療効率及び治療指数に関して優れているかは明らかではなかった。
【0009】
癌におけるHDACインヒビターを用いた臨床研究は、すなわちSAHA(Merck Inc.)、バルプロ酸、FK228/デプシペプチド(Gloucester Pharmaceuticals/NCI)、MS275(Berlex−Schering)、NVP LBH−589(Novartis)、PXD−101(Topotarget/Curagen)、MGCD0103(Methylgene Inc.)及びピバロイルオキシメチルブチレート/ピバネックス(Pivanex)(Titan Pharmaceuticals)で進行中である。これらの研究により、初めて臨床的有効度の証拠が示され、最近では、末梢T細胞リンパ腫(Plekarz et al.Blood,98,2865−2868,2001)の患者におけるFK228/デプシペプチドによる、かつびまん性大B細胞リンパ腫(Kelly et al.J.Clin.Oncol.23,3923−3931,2005)の患者におけるSAHAによる、部分的応答と完全応答によって強調されている。
【0010】
また最近の文献は、癌とは異なる疾病におけるHDACインヒビターの可能な医学用途を示している。これらの疾病は、例えば、全身性エリテマトーデス(Mishra et a.J Clin Invest 111,539−552,2003;Reilly et al.J.Immunol.173,4171−4178,2004)、リウマチ様関節炎(Chung et al.Mol Therapy 8,707−717,2003;Nishida et al.Arthritis & Rheumatology 50,3365−3376,2004)、炎症性疾患(Leoni et al.Proc Natl Acad Sci USA 99,2995−3000,2002)及び神経変性疾患、例えばハンチントン病(Steffan et al.Nature 413,739−743,2001,Hockly et al.Proc Natl Acad Sci USA 100(4):2041−6,2003)である。
【0011】
癌化学療法は、増殖が制御不能であり、かつ有糸分裂時の細胞の割合が高い癌細胞を優勢的に死滅させるという概念に基づいて確立されている。標準的な癌化学療法剤は、基本的な細胞過程及び細胞分子、すなわちRNA/DNAを対象とすることにより(アルキル化剤及びカルバミル化剤、プラチン類似体及びトポイソメラーゼインヒビター)、代謝を対象とすることにより(このクラスの薬剤は代謝拮抗薬と呼ばれる)並びに有糸分裂紡錘体装置を対象とすることにより(チューブリンインヒビターの安定化及び脱安定化)、最終的に癌細胞をプログラムされた細胞死("アポトーシス")の誘導により死滅させる。ヒストンデアセチラーゼのインヒビター(HDI)は、分化活性とアポトーシス誘発活性を有する抗癌剤の新たなクラスを構成する。ヒストンデアセチラーゼを対象とすることによって、HDIは、ヒストン(タンパク質)アセチル化とクロマチン構造に作用するため、複雑な転写的再プログラミングが誘発され、このことは、腫瘍抑制遺伝子の再活性化と発癌遺伝子の抑制によって例示される。コアヒストンタンパク質中のN末端リジン残基のアセチル化に作用する他に、ヒートショックプロテイン90(Hsp90)又はp53腫瘍抑制タンパク質のような癌細胞生物学に重要な非ヒストンターゲットが存在する。HDIの医学用途は、癌療法に制限されない。それというのも炎症性疾患、リウマチ様関節炎及び神経変性に関するモデルにおいて有効度が示されたからである。
【0012】
ベンゾイル又はアセチルで置換されたピロリルプロペンアミドは、公表文献においてHDACインヒビターとして記載されている一方で、アシル基の結合性は、ピロール骨格の2位又は3位である(Mai et.al.,Journal Med.Chem.2004,Vol.47,No.5,1098−1109;又はRagno et al.,Journal Med.Chem.2004,Vol.47,No.5,1351−1359)。更なるピロリル置換されたヒドロキサム酸誘導体は、US4960787号でリポキシゲナーゼインヒビターとして又はUS6432999号でシクロオキシゲナーゼインヒビターとして又はEP570594号で細胞増殖のインヒビターとして記載されている。
【0013】
HDACインヒビターとされる種々の化合物は、WO01/38322号;Journal Med.Chem.2003,Vol.46,No.24,5097−5116;Journal Med.Chem.2003,Vol.46,No.4,512−524;Journal Med.Chem.2003,Vol.46,No.5,820−830及びCurrent Opinion Drug Discovery 2002,Vol.5,487−499で報告されている。
【0014】
当該技術分野において、新規で、認容性が良好で、かつより効果的なHDACのインヒビターの要求がある。
【0015】
発明の開示
ここで、以下に非常に詳細に記載され、先行技術の化合物とは極めて異なり、かつヒストンデアセチラーゼの効果的なインヒビターであり、かつ意想外かつ特に有利な特性を有するN−スルホニルピロール誘導体が見出された。
【0016】
従って本発明は、式I
【化1】

[式中、
R1は、水素、C1〜C4−アルキル、ハロゲン又はC1〜C4−アルコキシであり、
R2は、水素又はC1〜C4−アルキルであり、
R3は、水素又はC1〜C4−アルキルであり、
R4は、水素、C1〜C4−アルキル、ハロゲン又はC1〜C4−アルコキシであり、
R5は、水素、C1〜C4−アルキル、ハロゲン又はC1〜C4−アルコキシであり、
R6は、−T1−Q1であり、その際、
T1は、結合又はC1〜C4−アルキレンであり、
Q1は、ナフチル、HAR又はR61及び/又はR62で置換されたARであり、その際、
ARは、ナフチル又はHARであり、その際、
HARは、窒素、酸素及び硫黄からなる群からそれぞれ選択される1〜3個のヘテロ原子を有する、単環式もしくは縮合二環式の5員ないし10員の不飽和の複素芳香族の環であり、
R61は、C1〜C4−アルキル又は−T2−N(R611)R612であり、その際、
T2は、結合であり、かつ
R611は、水素、C1〜C4−アルキル、ヒドロキシ−C2〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ−C2〜C4−アルキル、フェニル−C1〜C4−アルキル又はHar1−C1〜C4−アルキルであり、その際、
Har1は、R6111及び/又はR6112によって置換されていてよく、かつ窒素、酸素及び硫黄からなる群からそれぞれ選択される1〜3個のヘテロ原子を有する、単環式もしくは縮合二環式の5員ないし10員の不飽和の複素芳香族の環であり、
R6111は、ハロゲン又はC1〜C4−アルキルであり、
R6112は、C1〜C4−アルキルであり、かつ
R612は、水素、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ−C2〜C4−アルキル又はヒドロキシ−C2〜C4−アルキルであるか、もしくは
R611及びR612は、一緒になって、それらが結合される窒素原子を含んで、複素環式の環Het1を形成し、その際、
Het1は、モルホリノ、チオモルホリノ、S−オキソ−チオモルホリノ、S,S−ジオキソ−チオモルホリノ、ピペリジノ、ピロリジノ、ピペラジノ又は4N−(C1〜C4−アルキル)−ピペラジノであるか、又は
T2は、C1〜C4−アルキレン又は酸素によって中断されたC2〜C4−アルキレンであり、かつ
R611は、水素、C1〜C4−アルキル、ヒドロキシ−C2〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ−C2〜C4−アルキル、フェニル−C1〜C4−アルキル又はHar1−C1〜C4−アルキルであり、その際、
Har1は、R6111及び/又はR6112によって置換されていてよく、かつ窒素、酸素及び硫黄からなる群からそれぞれ選択される1〜3個のヘテロ原子を有する、単環式もしくは縮合二環式の5員ないし10員の不飽和の複素芳香族の環であり、
R6111は、ハロゲン又はC1〜C4−アルキルであり、
R6112は、C1〜C4−アルキルであり、かつ
R612は、水素、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ−C2〜C4−アルキル又はヒドロキシ−C2〜C4−アルキルであるか、もしくは
R611及びR612は、一緒になって、それらが結合される窒素原子を含んで、複素環式の環Het1を形成し、その際、
Het1は、モルホリノ、チオモルホリノ、S−オキソ−チオモルホリノ、S,S−ジオキソ−チオモルホリノ、ピペリジノ、ピロリジノ、ピペラジノ、4N−(C1〜C4−アルキル)−ピペラジノ、イミダゾロ、ピロロ、トリアゾロ又はピラゾロであり、
R62は、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、ハロゲン、シアノ、C1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルキルカルボニルアミノ又はC1〜C4−アルキルスルホニルアミノであり、
R7は、ヒドロキシル又はCyc1であり、その際、
Cyc1は、式Ia
【化2】

で示される環系であり、その際、
Aは、C(炭素)であり、
Bは、C(炭素)であり、
R71は、水素、ハロゲン、C1〜C4−アルキル又はC1〜C4−アルコキシであり、
R72は、水素、ハロゲン、C1〜C4−アルキル又はC1〜C4−アルコキシであり、
Mは、A及びBを含んで、環Ar2か又は環Har2のいずれかであり、その際、
Ar2は、ベンゼン環であり、
Har2は、窒素、酸素及び硫黄からなる群からそれぞれ選択される1〜3個のヘテロ原子を有する、単環式の5員もしくは6員の不飽和の複素芳香族の環である]で示される化合物並びにこれらの化合物の塩に関する。
【0017】
1〜C4−アルキルは、直鎖状又は分枝鎖状の1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を表す。挙げられる例は、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、プロピル基、イソプロピル基及び、有利にはエチル基及びメチル基である。
【0018】
2〜C4−アルキルは、直鎖状又は分枝鎖状の2〜4個の炭素原子を有するアルキル基を表す。挙げられる例は、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソプロピル基及び、有利にはエチル基及びプロピル基である。
【0019】
1〜C4−アルキレンは、1〜4個の炭素原子を有する分枝鎖状の又は、特に直鎖状のアルキレン基である。挙げられる例は、メチレン(−CH2−)基、エチレン(−CH2−CH2−)基、トリメチレン(−CH2−CH2−CH2−)基及びテトラメチレン(−CH2−CH2−CH2−CH2−)基である。
【0020】
酸素によって中断されるC2〜C4−アルキレンは、1〜4個の炭素原子を有する直鎖状のアルキレン基であって、適宜、酸素原子によって中断されたアルキレン基、例えば[−CH2−CH2−O−CH2−CH2−]を表す。
【0021】
1〜C4−アルコキシは、酸素原子の他に直鎖状又は分枝鎖状の1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を有する基を表す。挙げられる例は、ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基及び、有利にはエトキシ基及びメトキシ基である。
【0022】
1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルキルは、前記のC1〜C4−アルキル基の1つであって、それが前記のC1〜C4−アルコキシ基の1つによって置換されている基を表す。挙げられる例は、メトキシメチル、メトキシエチル及びイソプロポキシエチル基、特に2−メトキシエチル及び2−イソプロポキシエチル基である。
【0023】
1〜C4−アルコキシ−C2〜C4−アルキルは、前記のC1〜C4−アルコキシ基の1つによって置換されている前記のC2〜C4−アルキル基の1つを表す。挙げられる例は、メトキシエチル、エトキシエチル及びイソプロポキシエチル基、特に2−メトキシエチル、2−エトキシエチル及び2−イソプロポキシエチル基である。
【0024】
ヒドロキシ−C2〜C4−アルキルは、ヒドロキシ基によって置換された前記のC2〜C4−アルキル基の1つを表す。挙げられる例は、2−ヒドロキシエチル基又は3−ヒドロキシプロピル基である。
【0025】
フェニル−C1〜C4−アルキルは、フェニル基によって置換されている前記のC1〜C4−アルキル基の1つを表す。挙げられる例は、ベンジル基及びフェネチル基である。
【0026】
本発明の意味上の範囲内ではハロゲンは、臭素又は、特に塩素又はフッ素である。
【0027】
1〜C4−アルキルカルボニルは、カルボニル基の他に、前記のC1〜C4−アルキル基の1つを有する基を表す。挙げられる例は、アセチル基である。
【0028】
1〜C4−アルキルカルボニルアミノは、前記のC1〜C4−アルキルカルボニル基の1つにより置換されているアミノ基を表す。挙げられる例は、アセトアミド基[CH3C(O)−NH−]である。
【0029】
1〜C4−アルキルスルホニルアミノは、例えばプロピルスルホニルアミノ[C37S(O)2NH−]基、エチルスルホニルアミノ[C25S(O)2NH−]基及びメチルスルホニルアミノ[CH3S(O)2NH−]基である。
【0030】
HARは、窒素、酸素及び硫黄からなる群からそれぞれ選択される1〜3個のヘテロ原子を有する、単環式もしくは縮合二環式の5員ないし10員の不飽和の複素芳香族の環である。
【0031】
第一の詳細においては、HARは、窒素、酸素及び硫黄からなる群からそれぞれ選択される1個、2個もしくは3個のヘテロ原子を有する、単環式の5員の不飽和の複素芳香族の環基、例えばチオフェニル、ピロリル、フラニル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル(厳密には:1,2,4−トリアゾリル又は1,2,3−トリアゾリル)、チアジアゾリル(厳密には:1,3,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、1,2,3−チアジアゾリル又は1,2,4−チアジアゾリル)又はオキサジアゾリル(厳密には:1,3,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル又は1,2,4−オキサジアゾリル)を含む。
【0032】
第二の詳細においては、HARは、1個もしくは2個の窒素原子を有する、単環式の6員の不飽和の複素芳香族の環基、例えばピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル又はピリダジニルを含む。
【0033】
第三の詳細においては、HARは、窒素、酸素及び硫黄からなる群からそれぞれ選択される1個、2個もしくは3個のヘテロ原子を有する、縮合二環式の9員の不飽和の複素芳香族の環基、例えば前記の5員の単環式のHAR基のベンゾ縮合された誘導体、例えばベンゾチオフェニル、ベンゾフラニル、インドリル、ベンゾキサゾリル、ベンゾチアゾリル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾイソキサゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾフラザニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、イソインドリル、イソフラニル又はイソベンゾチオフェニル又はインドリジニルを含む。
【0034】
第四の詳細においては、HARは、窒素、酸素及び硫黄からなる群からそれぞれ選択される1個もしくは2個のヘテロ原子を有する、縮合二環式の10員の不飽和の複素芳香族の環基、例えば前記の6員の単環式のHAR基のベンゾ縮合された誘導体、例えばキノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、フタラジニル又はシンノリニル又はナフチリジニルを含む。
【0035】
特定の詳細においては、HAR基の例は、ピリジニルを含んでよい。もう一つの特定の詳細においては、HAR基の例は、ベンゾチオフェニルを含んでよい。もう一つの特定の詳細においては、HAR基の例は、ベンゾチアゾリルを含んでよい。もう一つの特定の詳細においては、HAR基の例は、ピラゾリルを含んでよい。もう一つの特定の詳細においては、HAR基の例は、イミダゾリルを含んでよい。もう一つの特定の詳細においては、HAR基の例は、チアゾリルを含んでよい。
【0036】
HARは、環炭素原子を介してT1部に結合されていることに留意すべきである。
【0037】
Har1は、R6111及び/又はR6112によって置換されていてよく、かつ窒素、酸素及び硫黄からなる群からそれぞれ選択される1〜3個のヘテロ原子を有する単環式又は縮合二環式の5員ないし10員の不飽和の(複素芳香族の)ヘテロアリール基である。一つの詳細においては、窒素、酸素及び硫黄からなる群からそれぞれ選択される、1〜3個の、特に1又は2個のヘテロ原子を有する縮合された、特にベンゾ縮合された、二環式の9員又は10員のヘテロアリール基が挙げられるべきである。
【0038】
Har1の例は、これらに制限されないが、チオフェニル、フラニル、ピロリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル又はピリダジニルであり、特にその安定なベンゾ縮合された誘導体、例えばベンゾチオフェニル、ベンゾフラニル、インドリル、ベンゾキサゾリル、ベンゾチアゾリル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾイソキサゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾフラザニル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、フタラジニル又はシンノリニル及びプリニル、インドリジニル、ナフチリジニル又はプテリジニルを含む。
【0039】
特定の詳細においては、Har1基の例としては、ピリジニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾキサゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル及びインドリル、例えばピリジン−2−イル、ピリジン−3−イル、ピリジン−4−イル、ベンゾイミダゾール−2−イル、ベンゾキサゾール−2−イル、ベンゾフラン−2−イル、ベンゾフラン−3−イル、ベンゾチオフェン−2−イル、ベンゾチオフェン−3−イル、インドール−2−イル、インドール−3−イル又はインドール−5−イルを含んでよい。
【0040】
更なる特定の詳細においては、Har1基の例としては、インドリル、例えばインドール−2−イル、インドール−3−イル又はインドール−5−イルであってよい。
【0041】
なおも更なる特定の詳細においては、Har1基の例としては、ピリジニル、例えばピリジン−2−イル、ピリジン−3−イル又はピリジン−4−イルであってよい。
【0042】
Har1の更なる例としては、前記の例示したHar1基のR6111及び/又はR6112で置換された誘導体を挙げることができる。
【0043】
Har1−C1〜C4−アルキルは、前記のHar1基、例えばイミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、インドリル又はピロリルなど又はその置換された誘導体の1つによって置換された前記のC1〜C4−アルキル基、例えばメチル、エチル又はプロピルの1つを表す。例としては、これらに制限されないが、ピリジニルメチル(例えばピリジン−3−イル−メチル)、イミダゾリルメチル、ピロリルメチル、2−イミダゾリルエチル(例えば2−イミダゾール−5−イル−エチル)、2−ピリジニルエチル、3−(ベンゾフラン−2−イル)プロピル、3−(ベンゾイミダゾール−2−イル)プロピル、2−インドリルエチル(例えば2−インドール−2−イル−エチル又は2−インドール−3−イル−エチル)、インドリルメチル(例えばインドール−2−イル−メチル、インドール−3−イル−メチル又はインドール−5−イル−メチル)、2−ベンゾイミダゾリルエチル(例えば2−ベンゾイミダゾール−2−イルエチル)、ベンゾイミダゾリルメチル(例えばベンゾイミダゾール−2−イル−メチル)などを挙げることができる。
【0044】
特定の詳細においては、Har1−C1〜C4−アルキル基の例としては、ピリジニルメチル(例えばピリジン−3−イル−メチル、ピリジン−4−イル−メチル又はピリジン−4−イル−メチル)、2−ピリジニルエチル(例えば2−ピリジン−3−イル−エチル)、インドリルメチル(例えばインドール−2−イル−メチル、インドール−3−イル−メチル又はインドール−5−イル−メチル)又は2−インドリルエチル(例えば2−インドリル−2−イル−エチル又は2−インドリル−3−イル−エチル)を含んでよい。
【0045】
更なる特定の詳細においては、Har1−C1〜C4−アルキル基の例としては、ピリジン−3−イル−メチル、ピリジン−4−イル−メチル、2−ピリジン−3−イル−エチル、インドール−2−イル−メチル、インドール−3−イル−メチル、インドール−5−イル−メチル、2−インドリル−2−イル−エチル又は2−インドリル−3−イル−エチルを含んでよい。
【0046】
基Har1−C1〜C4−アルキル基の関連において、Har1部は、有利には環炭素原子を介してC1〜C4−アルキル部に結合されていると述べられるべきである。
【0047】
Har1−C1〜C4−アルキル基であってHar1部がベンゼン環を有する縮合二環である一実施態様は、Har1部が、有利には1個以上のヘテロ原子を有する環の環炭素原子を介してC1〜C4−アルキル部に結合されている基を指す。
【0048】
Har1−C1〜C4−アルキル基であってHar1部がベンゼン環を有する縮合二環であるもう一つの実施態様は、Har1部が、有利にはベンゼン環の環炭素原子を介してC1〜C4−アルキル部に結合されている基を指す。
【0049】
Har2は、窒素、酸素及び硫黄からなる群からそれぞれ選択される1〜3個のヘテロ原子を有する単環式の5員又は6員の不飽和の複素芳香環を意味する。Har2は、これらに制限されないが、チオフェン、オキサゾール、イソキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン又はピリダジンを含んでよい。
【0050】
特定の詳細においては、Har2基の例は、ピリジンであってよい。
【0051】
Cyc1は、A部を介してカルボキサミド基の窒素原子に結合された式Iaの環系を意味する。Cyc1は、これらに制限されないが、R71及び/又はR72によって置換された2−アミノフェニルを含んでよい。
【0052】
特定の詳細においては、Cyc1基の例は、2−アミノフェニルであってよい。ナフチルは、単独で又は別の基の一部として、ナフタレン−1−イル及びナフタレン−2−イルを含む。
【0053】
本発明の意味においては、本発明による化合物の2個の構造部が"結合"を意味する構成を介して結合されている場合には、前記の2個の部は、単結合を介して互いに直接結合されていると解されるべきである。
【0054】
当業者に知られているように、モルホリノ、4N−(C1〜C4−アルキル)−ピペラジノ、ピロリジノなどは、モルホリン−4−イル、4N−(C1〜C4−アルキル)−ピペラジン−1−イル、ピロリジン−1−イルなどをそれぞれ表す。
【0055】
一般に、特に挙げられない限りは、本願に挙げられる複素環基は、その全ての可能な異性体形を指す。
【0056】
本願で挙げられる複素環基は、特に示されない限りは、特にその全ての可能な位置異性体を指す。
【0057】
例えば、ピリジル又はピリジニルという用語は、単独で又は別の基の部分として、ピリジン−2−イル、ピリジン−3−イル及びピリジン−4−イルを含み、又は同様に、チオフェニルという用語は、単独で又は別の基の部分として、チオフェン−2−イル及びチオフェン−3−イルを含む。
【0058】
本願に記載のように置換されていてよい成分は、特に記載がない限り任意の可能な位置で置換されていてよい。
【0059】
本願に挙げられる炭素環基は、単独で又は他の基の一部として、それらの所定の置換基又は親分子基によって、特に記載がない限り、任意の置換可能な環炭素原子で置換されていてよい。
【0060】
本願に挙げられる複素環基は、単独で又は他の基の部分として、所定の置換基又は親分子基によって、特に示されない限りは、任意の可能な位置で、例えば任意の置換可能な環炭素原子又は環窒素原子で置換されていてよい。
【0061】
第4級化可能なイミノ型の環窒素原子(−N=)を有する環は、有利には、これらのイミノ型の環窒素原子上で前記の置換基又は親分子基によって第4級化されていなくてよい。
【0062】
本願に挙げられる原子価が満たされていない複素環の任意のヘテロ原子は、水素原子を有することで原子価が満たされると見なす。
【0063】
任意の置換基が任意の成分中に1回以上存在する場合には、各定義は無関係である。
【0064】
式1の化合物についての適当な塩(置換基に依存して)は全ての酸付加塩又は塩基との全ての塩である。薬学で慣用に使用される薬理学的に認容性の無機及び有機の酸及び塩基のそれが特に挙げられる。これらの好適なものは、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、酢酸、クエン酸、D−グルコン酸、安息香酸、2−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、酪酸、スルホサリチル酸、マレイン酸、ラウリン酸、リンゴ酸、例えば(−)−L−リンゴ酸又は(+)−D−リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、酒石酸、例えば(+)−L−酒石酸又は(−)−D−酒石酸又はメソ−酒石酸、エンボン酸、ステアリン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸又は3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸のような酸との、一方では、水不溶性の酸付加塩、特に水溶性の酸付加塩であり、その際、前記の酸は塩調製において(一塩基酸又は多塩基酸のどちらが考慮されるかに依存して、そしてどの塩が望ましいかに依存して)等モル量比又はそれとは異なる比で使用される。
【0065】
他方で、置換によっては塩基との塩も適当である。塩基との塩の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、マグネシウム、チタン、アンモニウム、メグルミン又はグアニジニウムの塩であり、その際、この場合にも塩基は塩調製において等モル量比又はそれとは異なる比で使用される。
【0066】
本発明による化合物の工業的規模での製造の間に、例えばプロセス生成物として得ることができる薬理学的に非認容性の塩は当業者に公知の方法によって薬理学的に認容性の塩に変換される。
【0067】
専門知識によれば、本発明の式Iの化合物並びにそれらの塩は、例えば結晶形で単離された場合に、種々の量の溶剤を含有してよい。従って本発明の範囲内では、式Iの化合物の全ての溶媒和物及び、特に全ての水和物、及びまた式Iの化合物の塩の全ての溶媒和物及び、特に全ての水和物が包含される。
【0068】
本発明の一実施態様においては、式Iの化合物の塩は、式Iの化合物と塩酸との塩を含む。
【0069】
式Iの化合物の置換基R61及びR62は、AR環がT1に結合されている結合位置に関して任意の可能な位置で結合されていてよく、その際、R61とR62が環炭素原子に結合されていることが好ましい。
【0070】
一実施態様においては、ARは、R61によって一置換されている。もう一つの実施態様においては、ARは、R62によって一置換されている。もう一つの実施態様においては、ARは、R61及びR62によって置換されている。
【0071】
もう一つの実施態様においては、ARは、R61によって一置換されており、かつピリジニルであり、その際、特に強調されるのは、ピリジニル環がT1部に結合される結合位置に対してメタ位又はパラ位でR61が結合されていることである。更なる特定の一実施態様においては、ARは、6−(R61)−ピリジン−3−イルである。
【0072】
一実施態様においては、本発明によるより挙げるに値する化合物は、式Iで示され、その式中、
R1は、水素又はC1〜C4−アルキルであり、
R2は、水素又はC1〜C4−アルキルであり、
R3は、水素又はC1〜C4−アルキルであり、
R4は、水素又はC1〜C4−アルキルであり、
R5は、水素又はC1〜C4−アルキルであり、
R6は、−T1−Q1であり、その際、
T1は、結合であり、
Q1は、ナフチル、HAR、R61で置換されたAR、R62で置換されたAR又はR61及びR62で置換されたARであり、その際、
ARは、ナフチル又はHARであり、その際、
HARは、
窒素、酸素及び硫黄からなる群からそれぞれ選択される1個、2個もしくは3個のヘテロ原子を有する、単環式の5員の不飽和の複素芳香族の環か、
1個もしくは2個の窒素原子を有する、単環式の6員の不飽和の複素芳香族の環か、
窒素、酸素及び硫黄からなる群からそれぞれ選択される1個、2個もしくは3個のヘテロ原子を有する、縮合二環式の9員の不飽和の複素芳香族の環か、
窒素、酸素及び硫黄からなる群からそれぞれ選択される1個もしくは2個のヘテロ原子を有する、縮合二環式の10員の不飽和の複素芳香族の環か、
のいずれかであり、
R61は、C1〜C4−アルキル又は−T2−N(R611)R612であり、その際、
T2は、結合又はC1〜C4−アルキレンであり、
R611は、水素、C1〜C4−アルキル、フェニル−C1〜C4−アルキル又はHar1−C1〜C4−アルキルであり、その際、
Har1は、
窒素、酸素及び硫黄からなる群からそれぞれ選択される1個、2個もしくは3個のヘテロ原子を有する、単環式の5員の不飽和の複素芳香族の環か、
1個もしくは2個の窒素原子を有する、単環式の6員の不飽和の複素芳香族の環か、
窒素、酸素及び硫黄からなる群からそれぞれ選択される1個、2個もしくは3個のヘテロ原子を有する、縮合二環式の9員の不飽和の複素芳香族の環か、
窒素、酸素及び硫黄からなる群からそれぞれ選択される1個もしくは2個のヘテロ原子を有する、縮合二環式の10員の不飽和の複素芳香族の環か、
のいずれかであり、
R612は、水素、C1〜C4−アルキル又はヒドロキシ−C2〜C4−アルキルであるか、もしくは
R611及びR612は、一緒になって、それらが結合される窒素原子を含んで、複素環式の環Het1を形成し、その際、
Het1は、モルホリノ、ピペリジノ、ピロリジノ、ピペラジノ又は4N−メチル−ピペラジノであり、
R62は、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ又はハロゲンであり、
R7は、ヒドロキシル又は2−アミノフェニルである、化合物並びにこれらの化合物の塩である。
【0073】
もう一つの実施態様においては、本発明によるより挙げるに値する化合物は、式Iで示され、その式中、
R1は、水素又はC1〜C4−アルキルであり、
R2は、水素又はC1〜C4−アルキルであり、
R3は、水素又はC1〜C4−アルキルであり、
R4は、水素又はC1〜C4−アルキルであり、
R5は、水素又はC1〜C4−アルキルであり、
R6は、−T1−Q1であり、その際、
T1は、結合であり、
Q1は、ナフチル、HAR、R61で置換されたAR又はR62で置換されたARであり、その際、
ARは、ナフチル又はHARであり、その際、
HARは、
窒素、酸素及び硫黄からなる群からそれぞれ選択される1個、2個もしくは3個のヘテロ原子を有する、単環式の5員の不飽和の複素芳香族の環か、
1個もしくは2個の窒素原子を有する、単環式の6員の不飽和の複素芳香族の環か、
窒素、酸素及び硫黄からなる群からそれぞれ選択される1個、2個もしくは3個のヘテロ原子を有する、縮合二環式の9員の不飽和の複素芳香族の環か、
窒素、酸素及び硫黄からなる群からそれぞれ選択される1個もしくは2個のヘテロ原子を有する、縮合二環式の10員の不飽和の複素芳香族の環か、
のいずれかであり、
R61は、C1〜C4−アルキル又は−T2−N(R611)R612であり、その際、
T2は、結合又はC1〜C4−アルキレンであり、
R611は、水素、C1〜C4−アルキル、フェニル−C1〜C4−アルキル又はHar1−C1〜C4−アルキルであり、その際、
Har1は、
窒素、酸素及び硫黄からなる群からそれぞれ選択される1個、2個もしくは3個のヘテロ原子を有する、単環式の5員の不飽和の複素芳香族の環か、
1個もしくは2個の窒素原子を有する、単環式の6員の不飽和の複素芳香族の環か、
窒素、酸素及び硫黄からなる群からそれぞれ選択される1個、2個もしくは3個のヘテロ原子を有する、縮合二環式の9員の不飽和の複素芳香族の環か、
窒素、酸素及び硫黄からなる群からそれぞれ選択される1個もしくは2個のヘテロ原子を有する、縮合二環式の10員の不飽和の複素芳香族の環か、
のいずれかであり、
R612は、水素、C1〜C4−アルキル又はヒドロキシ−C2〜C4−アルキルであるか、もしくは
R611及びR612は、一緒になって、それらが結合される窒素原子を含んで、複素環式の環Het1を形成し、その際、
Het1は、モルホリノ、ピペリジノ、ピロリジノ、ピペラジノ又は4N−メチル−ピペラジノであり、
R62は、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ又はハロゲンであり、
R7は、ヒドロキシル又は2−アミノフェニルである、化合物並びにこれらの化合物の塩である。
【0074】
一実施態様においては、本発明による特に挙げるに値する化合物は、式Iで示され、その式中、
R1は、水素であり、
R2は、水素であり、
R3は、水素であり、
R4は、水素であり、
R5は、水素であり、
R6は、−T1−Q1であり、その際、
T1は、結合であり、
Q1は、ナフチル、R61で置換されたAR、N−メチル−イミダゾリル、N−メチル−ピラゾリル、N−メチル−インドリル、メチルで一置換もしくは二置換されたチアゾリル、メチルで置換されたN−メチル−イミダゾリル又はメチルで置換されたN−メチル−ピラゾリルであり、その際、
ARは、ナフチル又はHARであり、その際、
HARは、ピリジニル、チアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾフラニル、インドリル、キノリニル又はイソキノリニルであり、
R61は、C1〜C4−アルキル又は−T2−N(R611)R612であり、その際、
T2は、結合又はC1〜C2−アルキレンであり、
R611は、水素又はC1〜C4−アルキルであり、
R612は、水素又はC1〜C4−アルキルであるか、もしくは
R611及びR612は、一緒になって、それらが結合される窒素原子を含んで、複素環式の環Het1を形成し、その際、
Het1は、モルホリノ、ピペリジノ、ピロリジノ、ピペラジノ又は4N−メチル−ピペラジノであり、
R7は、ヒドロキシル又は2−アミノフェニルである、化合物並びにこれらの化合物の塩である。
【0075】
もう一つの実施態様においては、本発明による特に挙げるに値する化合物は、式Iで示され、その式中、
R1は、水素であり、
R2は、水素であり、
R3は、水素であり、
R4は、水素であり、
R5は、水素であり、
R6は、−T1−Q1であり、その際、
T1は、結合であり、
Q1は、ナフチル、HAR、R61で置換されたピリジニル又はN−メチル−インドリルであり、その際、
HARは、ピリジニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾフラニル、インドリル、キノリニル又はイソキノリニルであり、
R61は、C1〜C4−アルキル又は−T2−N(R611)R612であり、その際、
T2は、結合又はC1〜C2−アルキレンであり、
R611は、水素又はC1〜C4−アルキルであり、
R612は、水素又はC1〜C4−アルキルであるか、もしくは
R611及びR612は、一緒になって、それらが結合される窒素原子を含んで、複素環式の環Het1を形成し、その際、
Het1は、モルホリノ、ピペリジノ、ピロリジノ、ピペラジノ又は4N−メチル−ピペラジノであり、
R7は、ヒドロキシル又は2−アミノフェニルである、化合物並びにこれらの化合物の塩である。
【0076】
一実施態様においては、本発明による特に挙げるに値する化合物は、式Iで示され、その式中、
R1は、水素であり、
R2は、水素であり、
R3は、水素であり、
R4は、水素であり、
R5は、水素であり、
R6は、−T1−Q1であり、その際、
T1は、結合であり、
Q1は、ナフチル、HAR、R61で置換されたピリジニル、N−メチル−イミダゾリル、N−メチル−ピラゾリル、メチルで一置換もしくは二置換されたチアゾリル、メチルで置換されたN−メチル−イミダゾリル又はメチルで置換されたN−メチル−ピラゾリルであり、その際、
HARは、ピリジニル、チアゾリル、ベンゾチオフェニル又はベンゾチアゾリルであり、
R61は、−T2−N(R611)R612であり、その際、
T2は、結合又はC1〜C2−アルキレンであり、
R611は、水素又はC1〜C2−アルキルであり、
R612は、水素又はC1〜C2−アルキルであるか、もしくは
R611及びR612は、一緒になって、それらが結合される窒素原子を含んで、複素環式の環Het1を形成し、その際、
Het1は、モルホリノ、ピペリジノ、ピロリジノ、ピペラジノ又は4N−メチル−ピペラジノであり、
R7は、ヒドロキシル又は2−アミノフェニルである、化合物並びにこれらの化合物の塩である。
【0077】
もう一つの実施態様においては、本発明によるより特に挙げるに値する化合物は、式Iで示され、その式中、
R1は、水素であり、
R2は、水素であり、
R3は、水素であり、
R4は、水素であり、
R5は、水素であり、
R6は、−T1−Q1であり、その際、
T1は、結合であり、
Q1は、ナフチル、HAR又はR61で置換されたピリジニルであり、その際、
HARは、ピリジニルであり、
R61は、−T2−N(R611)R612であり、その際、
T2は、結合又はC1〜C2−アルキレンであり、
R611は、水素又はC1〜C2−アルキルであり、
R612は、水素又はC1〜C2−アルキルであるか、もしくは
R611及びR612は、一緒になって、それらが結合される窒素原子を含んで、複素環式の環Het1を形成し、その際、
Het1は、モルホリノ、ピペリジノ、ピロリジノ、ピペラジノ又は4N−メチル−ピペラジノであり、
R7は、ヒドロキシル又は2−アミノフェニルである、化合物並びにこれらの化合物の塩である。
【0078】
一実施態様においては、本発明による強調されるべき化合物は、式Iで示され、その式中、
R1は、水素であり、
R2は、水素であり、
R3は、水素であり、
R4は、水素であり、
R5は、水素であり、
R6は、−T1−Q1であり、その際、
T1は、結合であり、
Q1は、ナフチル、HAR、2−(R61)−ピリジン−3−イル、1−メチル−ピラゾール−4−イル、1−メチル−イミダゾール−4−イル、1,2−ジメチル−イミダゾール−4−イル又は2,4−ジメチル−チアゾール−5−イルであり、その際、
HARは、ピリジン−3−イル、ベンゾチオフェン−2−イル又はベンゾチアゾール−6−イルであり、
R61は、−T2−N(R611)R612であり、その際、
T2は、結合又はメチレンであり、
R611は、水素又はメチルであり、
R612は、水素又はメチルであるか、もしくは
R611及びR612は、一緒になって、それらが結合される窒素原子を含んで、複素環式の環Het1を形成し、その際、
Het1は、モルホリノであり、
R7は、ヒドロキシルである、化合物並びにこれらの化合物の塩である。
【0079】
更なる一実施態様においては、本発明による強調されるべき化合物は、式Iで示され、その式中、
R1は、水素であり、
R2は、水素であり、
R3は、水素であり、
R4は、水素であり、
R5は、水素であり、
R6は、−T1−Q1であり、その際、
T1は、結合であり、
Q1は、ナフチル、HAR、2−(R61)−ピリジン−3−イル、1−メチル−ピラゾール−4−イル、1−メチル−イミダゾール−4−イル、1,2−ジメチル−イミダゾール−4−イル又は2,4−ジメチル−チアゾール−5−イルであり、その際、
HARは、ピリジン−3−イル、ベンゾチオフェン−2−イル又はベンゾチアゾール−6−イルであり、
R61は、−T2−N(R611)R612であり、その際、
T2は、結合又はメチレンであり、
R611は、水素又はメチルであり、
R612は、水素又はメチルであるか、もしくは
R611及びR612は、一緒になって、それらが結合される窒素原子を含んで、複素環式の環Het1を形成し、その際、
Het1は、モルホリノであり、
R7は、2−アミノフェニルである、化合物並びにこれらの化合物の塩である。
【0080】
もう一つの実施態様においては、本発明による強調されるべき化合物は、式Iで示され、その式中、
R1は、水素であり、
R2は、水素であり、
R3は、水素であり、
R4は、水素であり、
R5は、水素であり、
R6は、−T1−Q1であり、その際、
T1は、結合であり、
Q1は、ナフチル、HAR又は2−(R61)−ピリジン−3−イルであり、その際、
HARは、ピリジニルであり、
R61は、−T2−N(R611)R612であり、その際、
T2は、結合又はメチレンであり、
R611は、水素又はメチルであり、
R612は、水素又はメチルであるか、もしくは
R611及びR612は、一緒になって、それらが結合される窒素原子を含んで、複素環式の環Het1を形成し、その際、
Het1は、モルホリノであり、
R7は、ヒドロキシル又は2−アミノフェニルである、化合物並びにこれらの化合物の塩である。
【0081】
本発明による化合物において特に関心が持たれるのは、本発明の範囲内で、以下の実施態様の1つ又は可能であれば、それより多くの組合せにより包含される本発明の化合物である:
本発明による化合物の一実施態様は、式Iで示され、その式中、R1、R2、R3、R4及びR5が全て水素である化合物に関する。
【0082】
本発明による化合物の更なる実施態様は、式Iで示され、その式中、R7がヒドロキシルである化合物に関する。
【0083】
本発明による化合物の更なる実施態様は、式Iで示され、その式中、R7が2−アミノフェニルである化合物に関する。
【0084】
本発明による化合物の更なる実施態様は、式Iで示され、その式中、R7がアミノピリジルである化合物に関する。
【0085】
本発明による化合物の更なる実施態様は、式Iで示され、その式中、R7がCyc1であり、その際、その下位実施態様においては、Cyc1が2−フェニルである化合物に関する。
【0086】
本発明による化合物の更なる実施態様は、式Iで示され、その式中、T1が結合である化合物に関する。
【0087】
本発明による化合物の更なる実施態様は、式Iで示され、その式中、R6がナフチルである化合物に関する。
【0088】
本発明による化合物の更なる実施態様は、式Iで示され、その式中、R6がHARである化合物に関する。
【0089】
本発明による化合物の更なる実施態様は、式Iで示され、その式中、R6がベンゾチオフェニル又はベンゾチアゾリルである化合物に関する。
【0090】
本発明による化合物の更なる実施態様は、式Iで示され、その式中、R6が、R61及び/又はR62で置換されたHARである化合物に関する。
【0091】
本発明による化合物の更なる実施態様は、式Iで示され、その式中、R6がR61で置換されたHARである化合物に関する。
【0092】
本発明による化合物の更なる実施態様は、式Iで示され、その式中、R6がR61で置換されたピリジニルである化合物に関する。
【0093】
本発明による化合物の更なる実施態様は、式Iで示され、その式中、R6が6−(R61)−ピリジン−3−イルである化合物に関する。
【0094】
本発明による化合物の更なる一実施態様は、式Iで示され、その式中、R6がN−メチル−イミダゾリル、N−メチル−ピラゾリル、メチルで一置換もしくは二置換されたチアゾリル、メチルで置換されたN−メチル−イミダゾリル又はメチルで置換されたN−メチル−ピラゾリルである化合物に関する。
【0095】
本発明による化合物の更なる実施態様は、式Iで示され、その式中、T2が結合である化合物に関する。
【0096】
本発明による化合物の更なる実施態様は、式Iで示され、その式中、T2がC1〜C4−アルキレン、例えばC1〜C2−アルキレンである化合物に関する。
【0097】
本発明による化合物の更なる実施態様は、式Iで示され、その式中、R1、R2、R3、R4及びR5が全て水素であり、かつR7がヒドロキシルである化合物に関する。
【0098】
本発明による化合物の更なる実施態様は、式Iで示され、その式中、R1、R2、R3、R4及びR5が全て水素であり、かつR7が2−アミノフェニルである化合物に関する。
【0099】
本発明は、また、前に定義した実施態様の任意の又は全ての可能な組み合わせ及び部分集合をも含むと解されるべきである。
【0100】
本発明による例示される化合物は、
(E)−N−ヒドロキシ−3−[1−(ナフタレン−2−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−アクリルアミド
(E)−N−(2−アミノ−フェニル)−3−[1−(ナフタレン−2−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−アクリルアミド
(E)−N−ヒドロキシ−3−[1−(ピリジン−3−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−アクリルアミド
(E)−N−ヒドロキシ−3−[1−(6−モルホリン−4−イル−ピリジン−3−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−アクリルアミド
(E)−N−(2−アミノ−フェニル)−3−[1−(ベンゾ[b]チオフェン−2−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−アクリルアミド
(E)−N−(2−アミノ−フェニル)−3−[1−(ベンゾチアゾール−6−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−アクリルアミド
(E)−N−ヒドロキシ−3−[1−(1−メチル−1H−イミダゾール−4−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−アクリルアミド
(E)−N−ヒドロキシ−3−[1−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−アクリルアミド
(E)−3−[1−(ベンゾ[b]チオフェン−2−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−N−ヒドロキシ−アクリルアミド
(E)−3−[1−(ベンゾチアゾール−6−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−N−ヒドロキシ−アクリルアミド
(E)−3−[1−(2,4−ジメチル−チアゾール−5−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−N−ヒドロキシ−アクリルアミド
(E)−3−[1−(1,2−ジメチル−1H−イミダゾール−4−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−N−ヒドロキシ−アクリルアミド
並びにそれらの塩から選択される任意の1つを含んでよい。
【0101】
本発明による化合物は、例えば以下の反応式に示されるように、かつ以下に特記される反応段階に従って、又は特に以下の実施例に例として記載されるように、又はそれと同様にもしくは類似に当業者に公知の製造手順及び合成ストラテジーを用いて製造することができる。
【0102】
反応式1において、式Vで示され、その式中、R1、R2、R4及びR5が前記の意味を有する化合物の炭素鎖を、例えば縮合反応(マロン酸誘導体との)によって又はウィティッヒ反応又はジュリア反応によって又は、特にR2が水素である場合には、ホーナー・ワズワース・エモンズ反応(β−(アルコキシカルボニル)−ホスホン酸ジアルキルエステルを用いて)によって伸長させて、式IVで示され、その式中、R1、R2、R3、R4及びR5が前記の意味を有し、かつPG1がカルボキシル基に適した一時的な保護基、例えばt−ブチル又は"Protective Groups in Organic Synthesis"、T.GreeneとP.Wuts著(John Wiley & Sons,Inc.1999,3rd Ed.)又は"Protecting Groups(Thieme Foundations Organic Chemistry Series N Group)"、P.Kocienski著(Thieme Medical Publishers,2000)で述べられる当該技術分野で知られる保護基の1つを表す化合物が得られる。
【0103】
式Vで示され、その式中、R1、R2、R4及びR5が前記の意味を有する化合物は、公知であるか、又は当該技術分野で公知の手順に従って製造できるか、又はR2が水素である場合についての以下の実施例に記載されるようにして式VIの化合物から得ることができる。
【0104】
式VIの化合物は、公知であるか、又は公知のように又は以下の実施例に記載されるようにして得ることができる。
【0105】
反応式1
【化3】

【0106】
式IVで示され、その式中、R1、R2、R3、R4及びR5が前記の意味を有し、かつPG1が前記の適した保護基を表す化合物を、式R6−SO2−Xで示され、その式中、R6が前記の意味を有し、かつXが好適な離脱基、例えば塩素である化合物と反応させて、相応の式IIIの化合物を得ることができる。
【0107】
後続の反応段階において、式IIIの化合物の保護基PG1を以下の実施例に記載されるようにして又は当該技術分野で公知のようにして除去して、式IIの化合物を得ることができる。
【0108】
式R6−SO2−Xの化合物は、公知であるか、又は公知のようにも製造できる。
【0109】
式IIで示され、その式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6が前記の意味を有する化合物は、式H2N−O−PG2で示され、その式中、PG2が好適な酸素保護基、例えば好適なシリル保護基又はテトラヒドロピラン−2−イル保護基である化合物又は式IIaで示され、その式中、PG3が好適な窒素保護基、例えばt−ブチルオキシカルボニル保護基である化合物と、アミド結合架橋試薬を用いた反応によって、場合により当業者に公知のカップリング添加剤の存在下でカップリングさせることができる。当業者に公知のアミド結合架橋試薬の挙げられる例は、カルボジイミド(例えばジシクロヘキシルカルボジイミド又は、有利には1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)、アゾジカルボン酸誘導体(例えばジエチルアゾジカルボキシレート)、ウロニウム塩[例えばO−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N′,N′−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート又はO−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N′,N′−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート]及びN,N’−カルボニルジイミダゾールである。
【0110】
選択的に、式IIの化合物を、カップリング反応の前に、酸ハロゲン化物又は酸無水物を形成させ、場合によりインサイチュー法において、酸ハロゲン化物又は酸無水物を単離することなく活性化させることができる。
【0111】
式H2N−O−PG2又はIIaの化合物は、公知であるか、又は当該技術分野で公知の方法に従って製造することができる。
【0112】
保護基PG2又はPG3の除去を、当業者に公知のように又は以下の実施例に記載されるようにして行い、式Iで示され、その式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7が前記の意味を有する化合物を得ることができる。
【0113】
代替的な合成経路においては、式H2N−O−PG2又はIIaの化合物での活性化/カップリングは、式R6−SO2−Xの化合物との反応前に行ってよい。
【0114】
式Iで示され、その式中、T2がC1〜C4−アルキレン、特にメチレンである化合物は、以下の反応式2〜5に概説され、かつ以下に特記したようにして又は以下の実施例で例として記載したようにして又はそれと同様又は類似に製造することができる。
【0115】
反応式2に示されるように、式VIIで示され、その式中、ARが前記の意味を有し、T2がC1〜C4−アルキレン、特にメチレンであり、かつY1が好適な離脱基、例えばヨウ素、塩素又は、特に臭素であり、かつPG4がカルボキシル基に適した一時的な保護基、例えばt−ブチルである化合物を、式HN(R611)R612の化合物を反応させて、当該技術分野で公知の求核置換反応において、相応のアミノ化合物が得られ、それをPG4の除去により脱保護して、式VIIIの相応の遊離酸が得られ、それを式H2N−O−PG2又はIIaで示される前記の化合物とカップリングさせて、PG2及びPG3の除去後に、式Iiの相応の化合物を得ることができる。
【0116】
反応式2:
【化4】

【0117】
選択的に、反応式3に示されるように、式VIIで示され、その式中、ARが前記の意味を有し、T2がC1〜C4−アルキレン、特にメチレンであり、かつY1が好適な離脱基、例えばヨウ素、塩素又は、特に臭素であり、かつPG4がカルボキシル基に適した一時的な保護基、例えばt−ブチルである化合物を、一時的に保護されたアミン(第一級又は、特に第二級のアミン)、例えばフタルイミドと反応させて、当該技術分野で公知の求核置換反応において、相応のアミノ化合物が得られ、それをPG4の除去により脱保護して、式IXの相応の遊離酸が得られ、それを式H2N−O−PG2又はIIaで示される前記の化合物とカップリングさせて、式Xの相応の化合物を得ることができる。
【0118】
反応式3:
【化5】

【0119】
式Xの化合物のアミノ部を当該技術分野で公知のようにして脱保護して、例えばフタルイミド保護基が使用される場合には、式XIの相応の化合物が得られ、前記保護基は当業者に自体慣用のように、例えばヒドラジンを用いて除去することができる。
【0120】
式XIの化合物を脱保護して、相応の式Iiiの化合物を得ることができる。
【0121】
選択的に、反応式4に示されるように、式XIの化合物を、式R611−Y1及び/又はR612−Y2で示され、その式中、R611及びR612が前記の意味を有し、水素とは異なり、かつY1及びY2が好適な離脱基、例えば塩素、臭素、ヨウ素又はスルホネート(例えばトリフレート)保護基である化合物と反応させて、当該技術分野で公知の求核置換反応において、相応の式XII又はXII′の化合物を得ることができる。式XII又はXII′の化合物を脱保護して、相応の式Iiii又はIivの化合物をそれぞれ得ることができる。
【0122】
反応式4:
【化6】

【0123】
更に選択的に、反応式5に示されるように、式XIの化合物を、アルデヒド又はケトンと還元的アミノ化反応において反応させて、例えば式XIの化合物をベンゾアルデヒド又は式C1〜C3−アルキル−CHO又はHar1−CHOで示されるHar1が前記の意味を有する化合物と反応させて、当該技術分野で公知の還元的アミノ化反応において、相応の式XIIIの化合物を得ることができる。式XIIIの化合物を脱保護して、相応の式Ivの化合物を得ることができる。
【0124】
反応式5:
【化7】

【0125】
好適な出発化合物から出発して、式VIIの化合物は、反応式1に示される合成経路に従って、かつ前記のように、当該技術分野で知られる手順に従って、又はそれらと同様にもしくは類似にして得ることができる。
【0126】
前記の式HN(R611)R612、R611−Y1、R612−Y2、C1〜C3−アルキル−CHO又はHar1−CHOで示される化合物は、公知であるか、又は当該技術分野で公知の手順に従って得ることができる。
【0127】
保護基PG2又はPG3を脱保護するか又は無機酸もしくは有機酸(例えば塩酸又はギ酸)の存在下で精製を実施する場合に、式Iの化合物を、それらの個々の化学的性質及び使用される酸の個々の性質に応じて、遊離塩基として又は化学量論的もしくは非化学的量論的な量で前記酸を含有して得ることができる。含まれる酸の量は、当該技術分野で知られる手順に従って、例えば滴定によって測定することができる。
【0128】
式Iの化合物がキラル化合物(例えば1つ以上のキラル中心を有することによって)である場合に、本発明は、全ての考えられる立体異性体、例えばジアステレオマー及びエナンチオマー、実質的に純粋な形並びに任意の混合比で、例えばラセミ体並びにそれらの塩を指す。
【0129】
一般に、本発明のエナンチオマー的に純粋な化合物は、当該技術分野で知られる方法に従って、例えば不斉合成を介して、キラルシントン又はキラル試薬を用いることによって;キラル分離カラム上でのクロマトグラフィー分離によって;ラセミ化合物と光学活性の酸又は塩基との塩の形成と、それに引き続く塩の分割及び該塩からの所望の化合物の遊離によって;キラル補助試薬を用いた誘導体化と、それに引き続くジアステレオマー分離及びキラル補助基の除去によって;又は好適な溶剤からの(分別)結晶化によって製造することができる。
【0130】
前記に挙げられた反応は、当業者に公知の方法と類似にか、又は以下の実施例に例として記載されるように適宜実施できる。
【0131】
更に当業者には、多数の反応中心が出発化合物又は中間体化合物に存在する場合には、1つ以上の反応中心を反応が所望の反応中心だけで行われるように保護基で封鎖する必要があることもあることは知られている。多数の証明された保護基の使用のための詳細な記載は、例えば"Protective Groups in Organic Synthesis"、T.Greene and P.Wuts著(John Wiley & Sons,Inc.1999,3rd Ed)又は"Protecting Groups(Thieme Foundations Organic Chemistry Series N Group)"、P.Kocienski著(Thieme Medical Publishers,2000)で述べられている。
【0132】
本発明による物質の単離及び精製は、自体公知の方法で、例えば真空中で溶剤を留去し、そして得られた残留物を適当な溶剤から再結晶させるか、又は慣用の精製法の1つ、例えば適当な担体材料上でのカラムクロマトグラフィーを実施することによって行われる。
【0133】
場合により式Iの化合物をその塩に変換できるか、又は場合により式Iの化合物の塩を式Iの遊離の化合物に変換することができる。
【0134】
塩は、遊離の化合物を所望の酸又は塩基を含有する適当な溶剤(例えばケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン又はメチルイソブチルケトン、エーテル、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン又はジオキサン、塩素化炭化水素、塩化メチレン又はクロロホルム又は低分子量の脂肪族アルコール、例えばメタノール、エタノール又はイソプロパノール)中に、又は所望の酸又は塩基がその後に添加される溶剤中に溶解させることによって得られる。塩は、付加塩のための非溶剤を用いる濾過、再沈殿、沈殿又は溶剤の蒸発によって得られる。得られた塩を、アルカリ性化又は酸性化によって遊離の化合物に変換してよく、該化合物はまた塩に変換してもよい。前記のように、薬理学的に非認容性の塩を薬理学的に認容性の塩に変換できる。
【0135】
適宜、本発明に挙げられる転化は、当業者に自体公知の方法と類似して又は同様にして実施することができる。
【0136】
当業者はその知識に基づいて、本発明の明細書中に示され記載されたこれらの合成経路に基づいて、式Iの化合物に関して他の可能な合成経路をどのように見いだすかを知っている。全てのこれらの他の可能な合成経路もまた本発明を構成する部分である。
【0137】
また本発明は、本発明による化合物の合成に有用な中間体、例えばそれらの塩、方法、及びプロセスに関する。
【0138】
本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの記載される特性又は実施態様のみに制限されるものではない。当業者に明らかなように、記載される本発明に対する改変、類推、変更、誘導、対応及び適合はこの分野で知られる知識及び/又は、特に本発明の開示(例えば明示、暗示又は本来の開示)に基づき、付随する特許請求の範囲の範囲によって定義される本発明の主旨及び範囲から逸脱することなくなされてよい。
【0139】
以下の実施例は本発明を更に説明するものであり、それを制限するものではない。同様に製造方法が明記されていない、塩を含む式Iの他の化合物は、同様に又は当業者に公知の方法で慣用の処理技術を用いて製造できる。
【0140】
以下の実施例に最終生成物として挙げられる任意の又は全ての式Iの化合物及びそれらの塩は本発明の有利な対象である。
【0141】
実施例において、MSは、質量スペクトルを表し、Mは分子イオンを表し、TSPはサーモスプレーイオン化を表し、ESIはエレクトロスプレーイオン化を表し、EIは電子衝撃イオン化を表し、hは時間を表し、minは分を表す。本願で使用される他の略語は、当業者に自体慣用の意味を有する。
【0142】
実施例
最終生成物
1. (E)−N−ヒドロキシ−3−[1−(ナフタレン−2−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−アクリルアミド
0.5gの(E)−3−[1−(ナフタレン−2−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−N−(テトラヒドロ−ピラン−2−イルオキシ)−アクリルアミド(化合物A1)を2mlのメタノール中に入れた混合物に、11.3mlの0.5Mの水性HClを添加し、そして該反応混合物を一晩撹拌する。得られた懸濁液を、メタノールで希釈し、そして該混合物を更に4℃で3日間にわたり反応させる。得られた固体を分離し、そして残留物をジクロロメタンによって結晶化させる。ほぼ無色の固体が、融点152.8℃で得られる。
【0143】
2. (E)−N−(2−アミノ−フェニル)−3−[1−(ナフタレン−2−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−アクリルアミド
HBrを酢酸中に溶かした33%の溶液10mlを、−10℃に冷却する。この溶液に、0.2gの(2−{(E)−3−[1−(ナフタレン−2−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−アラノイルアミノ}−フェニル)−カルバミン酸 t−ブチルエステル(化合物A2)を2mlの酢酸エチル中に溶かした溶液を添加する。この混合物を−10℃で撹拌した後に、その反応を、重炭酸ナトリウムの5%水溶液20mlで停止させる。得られた混合物を、25mlの酢酸エチルで抽出し、有機相を乾燥させ、そして蒸発させる。粗生成物を、ジクロロメタンから結晶化させる。
【0144】
融点:186.6℃。
【0145】
3. (E)−N−ヒドロキシ−3−[1−(ピリジン−3−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−アクリルアミド
38mgの(E)−3−[1−(ピリジン−3−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−N−(テトラヒドロ−ピラン−2−イルオキシ)−アクリルアミド(化合物A3)を1mlのメタノール中に入れた混合物に、5mlの0.1Mの水性HClを添加し、そして該混合物を一晩撹拌する。該混合物を蒸発させ、そして残留物を水から結晶化させる。該化合物は、HClを含有してよい。
【0146】
融点:161.4〜176.4℃。
【0147】
4. (E)−N−ヒドロキシ−3−[1−(6−モルホリン−4−イル−ピリジン−3−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−アクリルアミド
該表題化合物は、実施例1と同様に製造される。表題化合物が帯褐色の油状物として単離される。
【0148】
5. (E)−N−(2−アミノ−フェニル)−3−[1−(ベンゾ[b]チオフェン−2−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−アクリルアミド、塩酸との化合物
78mgの(2−{(E)−3−[1−(ベンゾ[b]チオフェン−2−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−アラノイルアミノ}−フェニル)−カルバミン酸 t−ブチルエステルを、5mlの4Mのジオキサン中HCl中に懸濁させる。該懸濁液を、周囲温度で一晩撹拌する。溶剤を蒸発させ、そして残留物をアセトニトリル/水中に溶解させ、そして凍結乾燥させる。この方法によって、65mgの黄色の固体が得られる。該化合物は、HClを含有する。該化合物は、101℃で焼結する。
【0149】
6. (E)−N−(2−アミノ−フェニル)−3−[1−(ベンゾチアゾール−6−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−アクリルアミド、塩酸との化合物
267mgの(2−{(E)−3−[1−(ベンゾチアゾール−6−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−アラノイルアミノ}−フェニル)−カルバミン酸 t−ブチルエステルを、18mlの4Mのジオキサン中HCl中に懸濁させる。該懸濁液を、周囲温度で一晩撹拌する。一晩で、桃色の懸濁液が形成される。溶剤を蒸発させ、残留物を回収し、そしてジイソプロピルエーテルで洗浄する。該生成物を高真空で乾燥させる。この方法によって、201mgのベージュ色の固体が得られる。該化合物は、HClを含有する。該化合物は161℃で分解する。
【0150】
7. (E)−N−ヒドロキシ−3−[1−(1−メチル−1H−イミダゾール−4−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−アクリルアミド、塩酸との化合物
90mgの(E)−3−[1−(1−メチル−1H−イミダゾール−4−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−N−(テトラヒドロ−ピラン−2−イルオキシ)−アクリルアミドを、3mlのメタノール中に溶解させる。11mlの1Mの水性HClを添加し、そしてその溶液を周囲温度で24時間撹拌する。溶剤を蒸発させ、水を添加し、そして生成物を凍結乾燥させる。残留物を、酢酸エチルで洗浄する。この方法によって、10mgの白色の固体が得られる。該化合物は、HClを含有する。融点は、154〜158℃である。
【0151】
8. (E)−N−ヒドロキシ−3−[1−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−アクリルアミド、塩酸との化合物
79mgの(E)−3−[1−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−N−(テトラヒドロ−ピラン−2−イルオキシ)−アクリルアミドを、3mlのメタノール中に溶解させる。9mlの1Mの水性HClを添加することによって、固体が沈殿し、そしてその溶液を周囲温度で24時間撹拌する。色が黄色から桃色へと変化する。溶剤を蒸発させ、残留物を、酢酸エチルで洗浄し、そして真空中で乾燥させる。この方法によって、23mgの桃色の固体が得られる。該化合物は、HClを含有する。融点は、163〜166℃である。
【0152】
9. (E)−3−[1−(ベンゾ[b]チオフェン−2−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−N−ヒドロキシ−アクリルアミド
196mgの(E)−3−[1−(ベンゾ[b]チオフェン−2−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−N−(テトラヒドロ−ピラン−2−イルオキシ)−アクリルアミドを、5mlのメタノール中に溶解させる。17mlの1Mの水性HClを添加することによって、固体が沈殿し、そしてその溶液を周囲温度で24時間撹拌する。該懸濁液を濾過し、そして残留物を、水、酢酸エチルで洗浄し、そして真空中で乾燥させる。この方法によって、121mgの白色の固体が得られる。該化合物は、幾らかのHClを含有してよい。融点は、186〜188℃である。
【0153】
10. (E)−3−[1−(ベンゾチアゾール−6−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−N−ヒドロキシ−アクリルアミド
190mgの(E)−3−[1−(ベンゾチアゾール−6−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−N−(テトラヒドロ−ピラン−2−イルオキシ)−アクリルアミドを、7mlのメタノール中に溶解させる。20mlの1Mの水性HClを添加することによって、固体が沈殿し、そしてその溶液を周囲温度で24時間撹拌する。該懸濁液を濾過し、そして残留物を、水、酢酸エチルで洗浄し、そして真空中で乾燥させる。粗生成物をHPLCによって精製する。該化合物は、HPLCバッファー由来のギ酸を含有してよい。この方法によって、87mgの白色の固体が得られる。融点は、225〜229℃である。
【0154】
11. (E)−3−[1−(2,4−ジメチル−チアゾール−5−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−N−ヒドロキシ−アクリルアミド、塩酸との化合物
200mgの(E)−3−[1−(2,4−ジメチル−チアゾール−5−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−N−(テトラヒドロ−ピラン−2−イルオキシ)−アクリルアミドを、6mlのメタノール中に溶解させる。19mlの1Mの水性HClを添加することによって、固体が沈殿し、そしてその溶液を周囲温度で24時間撹拌する。その固体を濾過し、酢酸エチルで洗浄し、そして真空中で乾燥させる。この方法によって、124mgの白色の固体が得られる。該化合物は、HClを含有する。融点:181〜182℃。
【0155】
12. (E)−3−[1−(1,2−ジメチル−1H−イミダゾール−4−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−N−ヒドロキシ−アクリルアミド
64mgの(E)−3−[1−(1,2−ジメチル−1H−イミダゾール−4−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−N−(テトラヒドロ−ピラン−2−イルオキシ)−アクリルアミドを、2mlのメタノール中に溶解させる。5mlの1Mの水性HClを添加すると、固体が沈殿する。その溶液を、周囲温度で24時間撹拌する。その赤色の溶液を、凍結乾燥させ、そしてシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによって精製する。この方法によって、5mgの明ベージュ色の固体が得られる。融点:190〜194℃。
【0156】
本願に記載されるのと同様の手順を用いるが、好適な出発材料を選択して、更なる本発明による化合物を製造することができる。
【0157】
出発材料
A1. (E)−3−[1−(ナフタレン−2−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−N−(テトラヒドロ−ピラン−2−イルオキシ)−アクリルアミド
0.863gの(E)−3−[1−(ナフタレン−2−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−アクリル酸(化合物B1)を50mlのDMF中に溶かした溶液に、0.404gのN−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(HOBt×H2O)及び2.67gのトリエチルアミンを添加する。該混合物を、周囲温度で30分間撹拌し、そして次いで1.52gの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC×HCl)を添加し、そして該混合物を更に45分間にわたり撹拌する。ここで、0.309gのO−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−ヒドロキシルアミンを添加し、そして該反応混合物を周囲温度で4時間撹拌する。溶剤を真空中で除去し、そして残留物を酢酸エチルと水との間で分ける。水相を、酢酸エチルで2回抽出し、そして合した有機相を乾燥させ、そして蒸発させる。粗生成物を、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによって精製する。1.03gのほぼ無色のフォーム状物が得られる。
【0158】
A2. (2−{(E)−3−[1−(ナフタレン−2−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−アラノイルアミノ}−フェニル)−カルバミン酸 t−ブチルエステル
0.5gの(E)−3−[1−(ナフタレン−2−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−アクリル酸(化合物B1)と、30mlのDMFと、0.234gのHOBt×H2Oと、1.54gのトリエチルアミンとの混合物を、周囲温度で30分間撹拌する。ここで、0.88gのEDC×HClを添加し、そして該混合物を周囲温度で45分間撹拌する。次いで、0.319gのN−boc−o−フェニレンジアミンを添加し、そして該反応混合物を19.5時間撹拌する。該反応混合物を、高真空下で蒸発させ、そして残留物を酢酸エチルと水との間で分ける。合した有機相を、乾燥させ、そして蒸発させる。粗生成物を、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによって精製する。
【0159】
ここで挙げられる又は記載された化合物と同様にもしくは類似に得ることができる好適な出発材料の選択によって、本発明の最終生成物をもたらす更なる関連の出発化合物を、ここに記載されるのと同様にもしくは類似に製造することができる。
【0160】
A3. (E)−3−[1−(ピリジン−3−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−N−(テトラヒドロ−ピラン−2−イルオキシ)−アクリルアミド
表題化合物は、化合物A1と同様にして製造することができる。
【0161】
A4. (E)−3−[1−(ベンゾチアゾール−6−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−N−(テトラヒドロ−ピラン−2−イルオキシ)−アクリルアミド
(E)−3−[1−ベンゾチアゾール−6−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−アクリル酸(240mg)及びN−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)(110mg)をDMF(10ml)中に溶かした溶液に、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)(412mg)及びトリエチルアミン(0.9ml)を添加する。該混合物を周囲温度で0.5時間撹拌する。この溶液に、o−(テトラヒドロ−ピラン−2−イル)−ヒドロキシルアミン(84mg)を添加する。反応が完了した後に、該混合物を高真空で蒸発させ、そして生成物を酢酸エチルと水との間で分ける。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、そして粗生成物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによって精製する。ほぼ無色の油状物(190mg)が60%の収率で得られる。
【0162】
以下の化合物は同様にして製造することができる:
(E)−3−[1−(ベンゾ[b]チオフェン−2−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−N−(テトラヒドロ−ピラン−2−イルオキシ)−アクリルアミド
(E)−3−[1−(1−メチル−1H−イミダゾール−−4−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−N−(テトラヒドロ−ピラン−2−イルオキシ)−アクリルアミド
(2−{(E)−3−[1−(ベンゾ[b]チオフェン−2−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−アラノイルアミノ}−フェニル)−カルバミン酸 t−ブチルエステル
(2−{(E)−3−[1−(ベンゾチアゾール−6−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−アラノイルアミノ}−フェニル)−カルバミン酸t−ブチルエステル
A5. (E)−3−[1−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−N−(テトラヒドロ−ピラン−2−イルオキシ)−アクリルアミド
153mgのNaHを、30mlのDMF中に懸濁させる。300mgの(E)−3−(1H−ピロール−3−イル)−N−(テトラヒドロ−ピラン−2−イルオキシ)−アクリルアミドを添加し、そして該懸濁液を周囲温度で10分間撹拌する。1−メチル−ピラゾリジン−4−スルホニルクロリドを添加し、そして褐色の懸濁液を周囲温度で一晩撹拌する。その生成物を、酢酸エチルと水との間で抽出する。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、そして粗生成物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによって精製する。この方法によって、79mgの表題化合物が得られる。
【0163】
B1. (E)−3−[1−(ナフタレン−2−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−アクリル酸
1.044gの(E)−3−[1−(ナフタレン−2−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−アクリル酸 t−ブチルエステル(化合物C1)を40mlのジクロロメタン及び4mlのTFA中に入れた混合物を、周囲温度で3日間にわたって撹拌する。該反応混合物を蒸発させ、そして粗生成物をジクロロメタンと水との間で分ける。有機相を乾燥させ、そして蒸発させる。表題化合物がほぼ無色の固体として得られる。
【0164】
C1. (E)−3−[1−(ナフタレン−2−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−アクリル酸 t−ブチルエステル
0.695gの水素化ナトリウム(油中60%)及び50mlの無水THFの混合物を、−30℃に冷却する。この混合物に、(E)−3−(1H−ピロール−3−イル)−アクリル酸 t−ブチルエステル(化合物D1)を添加する。その懸濁液を、周囲温度で1時間撹拌し、そして−30℃に冷却する。5.62gのナフチル−2−スルホニルクロリドを添加し、そして該混合物を周囲温度で3時間撹拌する。10mlの水を添加した後に、該混合物を酢酸エチルで抽出し、そして有機相を乾燥させ、そして蒸発させる。粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィーによって精製する。
【0165】
D1. (E)−3−(1H−ピロール−3−イル)−アクリル酸 t−ブチルエステル
5.29gの水素化ナトリウム60%を、窒素下で−30℃において100mlのテトラヒドロフラン中に懸濁させる。27.81gのt−ブチルジホスホノアセテートを該懸濁液に添加し、そしてゆっくりと室温に加温し、そして30分間撹拌する。その後に、該混合物を−30℃に再冷却し、そして5.24gの1H−ピロール−3−カルバルデヒド(化合物E1)を添加し、そして−30℃で30分間撹拌する。該懸濁液を、ゆっくりと室温で温め、そして200mlのアンモニア水溶液を添加する。次いで、それを、酢酸エチルで抽出する。合した有機相をNa2SO4上で乾燥させ、濾過し、そして真空下に蒸発させる。粗生成物を、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによって、n−ヘキサン/酢酸エチルのグラジエント2:1〜1:1を用いて精製して、9.68gの表題化合物が淡黄色の固体として得られる。
【0166】
1H−NMR(DMSO−d6):1.45(s,9H);5.96(d,J=15.7Hz,1H);6.40(m,1H);6.78(m,1H);7.19(m,1H);7.47(d,J=15.7Hz,1H);11.11(bs,交換可能,1H)
E1. 1H−ピロール−3−カルバルデヒド
4.70gのジメチル−(1H−ピロール−3−イルメチレン)−アンモニウムクロリド(化合物F1)を、5.0%の水酸化ナトリウム水溶液500ml中に溶解させ、そして周囲温度で4時間撹拌する。その後に、該反応混合物をCH2Cl2で徹底的に抽出する。合した有機相をNa2SO4上で乾燥させる。次いで、濾過し、そして真空下に蒸発させる。粗生成物を、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによって、石油エーテル/ジエチルエーテル(1:1)溶出剤を用いて精製することで、3.01gの表題化合物が淡黄色の固体として得られる。
【0167】
MS(EI):95.1(M+,100%)。
【0168】
1H−NMR(DMSO−d6):6.42(dd,J1=1.5Hz,J2=6.5Hz,1H);6.90(m,1H),7.69(dd,J1=1.5Hz,J2=6.4Hz,1H);9.68(s,1H);11.59(bs,交換可能,1H)
F1. ジメチル−(1H−ピロール−3−イルメチレン)−アンモニウムクロリド
10.60gの(クロロメチレン)ジメチルアンモニウムクロリド及び6.25gのN−(トリイソプロピルシリル)−ピロールを、200mlのCH2Cl2中に窒素下で0〜5℃において懸濁させる。該懸濁液を60℃に加温し、そして30分間撹拌する。その後に、該混合物を周囲温度に冷却する。該懸濁液を濾過し、そしてジエチルエーテルで洗浄することで、5.67gの表題化合物が灰色の固体として得られる。
【0169】
MS(ESI):123.3(MH+,100%)。
【0170】
1H−NMR(DMSO−d6):3.55(s,3H);3.63(s,3H);6.82(m,J1=1.4Hz,J2=1.5Hz,J3=J4=4.8Hz,1H);7.22(dd,J1=4.7Hz,J2=4.9,1H),8.00(dd,J1=1.6Hz,J2=1.7Hz,1H);8.78(s,1H);12.94(bs,交換可能,1H)
上述の実施例に記載されるのと同様の手順を用いるが、本願に明記される又は当業者に公知のように製造できる又は本願に記載される材料と同様にもしくは類似に製造できる出発材料を好適に選択することで、更なる関連化合物を製造することができる。
【0171】
産業上利用性
本発明による化合物は、有用な薬理学的特性及び作用を有し、それにより産業上利用可能であり、例えば該化合物は、ヒストンデアセチラーゼ活性及び機能の阻害と関連した特性によって産業上利用可能である。
【0172】
"ヒストンデアセチラーゼ"(HDAC)は、基質タンパク質内のリジン残基のε−アセチル基に対して活性を有する酵素を意味する。HDACの基質は、ヒストンタンパク質H2A、H2B、H3又はH4及びイソ型であるが、制限されずヒートショックプロテイン90(Hsp90)、チューブリン又は腫瘍抑制タンパク質p53のようなヒストンとは異なるタンパク質基質が存在する。特に、ヒストンデアセチラーゼは、これらの基質タンパク質内のリジン残基のε−アセチル基を加水分解して、リジンの遊離アミノ基を形成することを触媒する。
【0173】
本発明による化合物によるヒストンデアセチラーゼの阻害は、1種以上のHDACイソ酵素、特に今までに知られるヒストンデアセチラーゼ、すなわちHDAC1、2、3及び8(クラスI)及びHDAC4、5、6、7、10(クラスII)、HDAC11並びにNDA+依存性のクラスIII(Sir2ホモログ)から選択されるイソ酵素の活性及び機能を阻害することを意味する。幾つかの有利な実施態様では、この阻害は、少なくとも約50%、より有利には少なくとも75%、なおも有利には約90%である。有利には、この阻害は、特定のヒストンデアセチラーゼクラス(例えばHDACのクラスI酵素)、非常に高い病態生理学的関連性のイソ酵素の選択(例えばHDAC1、2、3酵素)又は単独のイソ酵素(例えばHDAC1酵素)に特異的である。従って、本発明の意味におけるヒストンデアセチラーゼインヒビターは、ヒストンデアセチラーゼと相互作用が可能であり、かつその活性、特に酵素活性を阻害することが可能な化合物である。この文脈で、"ヘッドグループ"は、ヒストンデアセチラーゼインヒビター内で、酵素の活性部位、例えばZn2+イオンと相互作用することを担う残基を規定している。
【0174】
ヒストンデアセチラーゼの阻害は、種々の形式及び酵素活性源の生化学的アッセイで測定される。HDAC活性は、核抽出物又は細胞抽出物から得られるか、又は大腸菌、昆虫細胞又は哺乳類細胞中での規定のHDACイソ酵素の異種発現によって得られる。HDACイソ酵素は、多タンパク質複合体で活性であり、ホモダイマーとヘテロダイマーを形成するので、ヒトの癌細胞、例えばヒトの子宮頸癌細胞系統のHeLaから得られた核抽出物が好ましい。これらの核抽出物は、クラスIとクラスIIの酵素を含有するが、クラスI酵素に富んでいる。組み換えHDACイソ酵素の発現のために、HEK293細胞のような哺乳動物発現系が好ましい。HDACイソ酵素は、FLAGエピトープのようなアフィニティータグとの融合タンパク質として発現される。アフィニティークロマトグラフィーによって、タグ付けされたタンパク質は、単独で又は内因性タンパク質(例えば他のHDACイソ酵素及びコアクチベーター/プラットフォームタンパク質)との複合体において精製される。生化学的アッセイは、よく説明されており、かつ当業者によく知られている。基質としては、ヒストンタンパク質、ヒストンタンパク質から得られるペプチド又は他のHDAC基質並びにアセチル化されたリジンミメティックスが使用される。一つの有利な混雑したHDAC基質は、蛍光体7−アミノメチルクマリン(AMC)と結合されたトリペプチドAc−NH−GGK(Ac)である。
【0175】
本発明は、更に、本発明による化合物を、細胞及び組織においてヒストンデアセチラーゼ活性を阻害して、基質タンパク質の過剰アセチル化を引き起こし、そして機能的結果として、例えば遺伝子発現の誘導又は抑制、タンパク質分解の誘導、細胞周期停止、分化の誘発及び/又はアポトーシスの誘発を引き起こすために用いる使用に関する。
【0176】
ヒストンデアセチラーゼインヒビターの細胞活性は、ヒストンデアセチラーゼ阻害に関連する任意の細胞性効果、特にタンパク質過剰アセチル化、転写抑制及び転写活性化、アポトーシス、分化及び/又は細胞毒性の誘導を含む。
【0177】
用語"アポトーシスの誘導"とそれに似た用語は、接触した細胞においてプログラムされた細胞死が引き起こされる化合物を特定するのに使用される。"アポトーシス"は、接触した細胞内での複雑な生化学的事象、例えばシステイン特異的プロテイナーゼ("カスパーゼ")の活性化及びクロマチンの断片化によって定義される。該化合物と接触した細胞におけるアポトーシスの誘導は、必ずしも細胞増殖又は細胞分化の阻害と結びつかない。有利には、増殖、分化の誘導及び/又はアポトーシスの誘導は、異常細胞増殖を伴う細胞に特異的である。
【0178】
"分化の誘導"は、G0における可逆的又は不可逆的な細胞周期停止と、一定の特定された正常な細胞型又は組織に典型的な遺伝子のサブセットの再発現(例えば乳癌細胞での乳脂肪タンパク質及び脂肪の再発現)とに導く細胞の再プログラミングの過程として定義される。
【0179】
一般に"細胞毒性"は、哺乳動物細胞、特にヒトの癌細胞において、インビトロで、増殖を停止させること及び/又はアポトーシス性細胞死を誘導することを意味する。
【0180】
細胞増殖、アポトーシス又は分化の定量のためのアッセイは、専門家及び当業者によく知られている。例えば、代謝活性は、細胞増殖と結びついており、その活性は、Alamar Blue/Resazurinアッセイ(O'Brian et al.Eur j Biochem 267,5421−5426,2000)を用いて定量され、かつアポトーシスの誘導は、ロシェ社により販売される細胞死検出ELISAを用いてクロマチン断片化を測定することによって定量される。HDAC基質の過剰アセチル化の測定のための細胞アッセイの例は、ウェスタンブロットによる特異抗体を用いたコアヒストンアセチル化の測定によるか、それぞれの反応性プロモーター又はプロモーターエレメント(例えばp21プロモーター又は反応性エレメントとしてのsp1部位)を用いたレポーター遺伝子アッセイによるか、又は最後に、これもコアヒストンタンパク質についてのアセチル化特異抗体を用いた画像解析により特定される。
【0181】
本発明による化合物は、それに反応性の疾病、例えば以下に挙げる任意の疾病の治療又は予防に有用なHDAC阻害活性、抗増殖活性及び/又はアポトーシス誘導活性のため産業上利用可能である。
【0182】
本発明は、更に、細胞新形成の治療、改善又は予防のための方法であって有効量の本発明による化合物をかかる治療が必要な哺乳動物、特にヒトに投与することによる方法に関する。"新形成"は、異常細胞増殖及び/又は異常細胞生存及び/又は分化の妨害を示す細胞によって定義される。新形成という用語は、"良性新形成"を含み、これは、インビボで攻撃的な転移をする腫瘍を形成できない細胞の過剰増殖によって説明され、かつ前記用語は、それに対して、"悪性新形成"を含み、これは、全身性疾病を引き起こすことができる、例えば離れた器官に腫瘍転移を形成しうる多くの細胞性及び生化学的な異常性を有する細胞によって説明される。
【0183】
本発明による化合物は、特に、離れた器官又は組織に最終的に転移する腫瘍細胞に特徴付けられる悪性新形成(癌としても記載される)の治療に使用できる。本発明による化合物で治療される悪性新形成の例は、充実性腫瘍と血液学的腫瘍を含む。充実性腫瘍は、胸部、膀胱、骨、脳、中枢神経系及び末梢神経系、結腸、内分泌腺(例えば甲状腺及び副腎皮質)、食道、子宮内膜、生殖細胞、頭部及び頚部、腎臓、肝臓、肺、喉頭及び下咽頭の腫瘍、中皮腫、卵巣、膵臓、前立腺、直腸、腎臓、小腸、軟部組織、精巣、胃、皮膚、尿管、膣及び肛門の腫瘍によって例示される。悪性新形成は、網膜芽腫及びウィルムス腫瘍によって例示される遺伝性癌を含む。更に、悪性新形成は、前記の器官における一次腫瘍と別の器官における相応の二次腫瘍("腫瘍転移")を含む。血液学的腫瘍は、白血病及びリンパ腫の進行性形及び無痛性形、すなわち非ホジキン病、慢性及び急性の骨髄性白血病(CML/AML)、急性のリンパ芽球性白血病(ALL)、ホジキン病、多発性骨髄腫及びT細胞リンパ腫によって例示される。また骨髄異形成症候群、形質細胞新形成、経産婦腫瘍性症状、未知の原発部位の癌並びにAIDS関連悪性疾患が含まれる。
【0184】
癌疾患並びに悪性新形成は、離れた器官に転移を形成することを必ずしも必要としないことに留意すべきである。一定の腫瘍は、その一次器官にそれらの攻撃的な増殖特性を通じて破壊的な作用を発揮する。これらは、組織及び器官の構造の破壊をもたらし、最終的に器官に割り当てられた機能の不全を引き起こすことがある。
【0185】
腫瘍細胞増殖は、通常の細胞挙動と器官機能をもたらすこともある。例えば新生血管の形成は血管新生として記載される過程であり、これは腫瘍又は腫瘍転移によって誘発される。本発明による化合物は、良性の細胞増殖又は腫瘍細胞増殖によって引き起こされる病態生理学的な関連過程、例えば制限されないが、血管内皮細胞の非生理学的増殖による血管新生の治療のために産業上利用可能である。
【0186】
標準的な癌療法の屡々起こる不具合について、薬剤耐性が特に重要である。この薬剤耐性は、種々の細胞性及び分子性の機構、例えば薬剤流出ポンプの過剰発現又は細胞標的タンパク質又は染色体転座によって形成される融合タンパク質内の突然変異によって引き起こされる。本発明による化合物の産業上利用可能性は、患者の第一選択薬試験に制限されるものではない。癌化学療法薬又は標的特異的な抗癌剤に耐性を有する患者を、例えば第二又は第三選択薬試験周期用の化合物での治療のために改めることが可能である。顕著な一例は、レチノイドによる標準的な治療に耐性を持った、PML−RARα融合タンパク質を有する急性前骨髄球性白血病患者によって特定される。これらの患者は、本発明による化合物のようなHDACインヒビターでの治療によってレチノイドに対して再感作させることができる。
【0187】
更に、本発明は、ヒストンデアセチラーゼインヒビター治療に感受性な細胞性新形成とは異なる疾病を有する哺乳動物、特にヒトの治療方法において、前記の哺乳動物に薬理学的に有効で、かつ治療学的に有効で許容される量の本発明による化合物を投与することを含む方法を提供する。これらの非悪性疾患は、
(i)関節症及び骨病理学的症状、例えばリウマチ様関節炎、変形性関節症、痛風、多発関節炎及び乾癬性関節炎、
(ii)全身性エリテマトーデス及び移植拒絶反応のような自己免疫疾患、
(iii)過剰増殖性疾患、例えば乾癬又は血管増殖疾患、アテローム性動脈硬化症及び再狭窄のような平滑筋細胞増殖、
(iv)急性及び慢性の炎症症状及び皮膚症状、例えば潰瘍性結腸炎、クローン病、アレルギー性鼻炎、アレルギー性皮膚炎、嚢胞性線維症、慢性気管支炎及び喘息、
(v)子宮内膜症、子宮類線維腫、子宮内膜増殖症及び良性前立腺肥大症、
(vi)心不全、
(vii)HIV感染症のような免疫抑制症状の阻害、
(viii)パーキンソン病、アルツハイマー病又はポリグルタミン関連疾患のような神経病理学的疾患、
(ix)遺伝子治療における内因性遺伝子発現の増強並びに導入遺伝子発現の強化による治療に改めることが可能な病理学的症状
を含む。
【0188】
本発明による化合物は、前記の良性及び悪性の挙動の疾病、例えば(過剰)増殖性の疾病及び/又はアポトーシスの誘導に反応を示す疾患及び/又は細胞分化に反応を示す疾患、例えば良性又は悪性の新形成、特に癌、例えば前記の癌疾病のいずれかを治療、予防又は改善するために産業上利用可能であってよい。
【0189】
本願に挙げられる特性、機能及び有用性の関連において、本発明による化合物は、それらと関連する有用かつ所望の効果、例えば低い毒性、優れた一般的な生物学的利用能(例えば良好な腸内吸収)、優れた治療ウィンドウ、重篤な副作用の不在及び/又はそれらの治療的かつ製剤的な適性に関連する更なる有用な効果の点で卓越していることが見込まれる。
【0190】
更に本発明は前記の疾患の1つ以上に罹患するヒトを含む哺乳動物の治療のための方法に関する。該方法は、ヒストンデアセチラーゼの阻害と、一般に、タンパク質アセチル化の変更によって機能し、種々の細胞性効果を誘導し、特に遺伝子発現の誘導又は抑制を誘導し、細胞増殖停止、細胞分化の誘導及び/又はアポトーシスの誘導を引き起こす、本発明による化合物1種以上を薬理学的に有効で、かつ治療学的に有効かつ許容可能な量で、かかる治療を必要とする被験体に投与することを含む。
【0191】
更に、本発明は、ヒストンデアセチラーゼの阻害に応答性又は感受性の疾病及び/又は疾患、特に前記の疾病、例えば細胞性新形成又は前記の細胞性新形成とは異なる疾病をそれらを患う哺乳動物、例えばヒトにおいて治療するための方法において、それを必要とする哺乳動物に、薬理学的に有効で、かつ治療学的に有効かつ許容可能な量の本発明による化合物1種以上を投与することを含む方法を含む。
【0192】
更に本発明は、前記の疾病、特に癌において、インビボで、タンパク質アセチル化、遺伝子発現、細胞増殖、細胞分化及び/又はアポトーシスを変更するのに有用な治療方法において、かかる治療を必要とする被験体に、ヒストンデアセチラーゼの阻害により機能する、本発明による化合物1種以上の薬理学的に有効で、かつ治療学的に有効かつ許容可能な量を投与することを含む方法を含む。
【0193】
更に、本発明は、細胞と前記の本発明による化合物とを接触させることによって同種又は異種のプロモーター活性を調節するための方法を提供する。
【0194】
更に、本発明は、本発明による化合物を、前記の疾病、疾患、病気及び/又は症状の治療及び/又は予防及び/又は改善のために使用される医薬組成物の製造のために用いる使用に関する。
【0195】
更に、本発明は、本発明による化合物を、ヒストンデアセチラーゼの阻害に応答性又は感受性の疾病及び/又は疾患、特に前記の疾病、例えば細胞性新形成又は前記の細胞性新形成とは異なる疾病の治療及び/又は予防のために使用される医薬組成物の製造のために用いる使用に関する。
【0196】
更に、本発明は、本発明による化合物を、ヒストンデアセチラーゼ阻害活性を有する医薬組成物の製造のために用いる使用に関する。
【0197】
更に、本発明は、本発明による化合物を、細胞性新形成、例えば良性又は悪性の新形成、例えば癌の抑制又は治療のための医薬組成物の製造のために用いる使用に関する。
【0198】
更に、本発明は、本発明による化合物を、異常細胞増殖の停止に反応を示す疾病、例えば良性又は悪性の挙動の(過剰)増殖性の疾病、例えば前記の疾病のいずれか、特に癌、例えば前記の癌疾病のいずれかを治療、予防又は改善するために使用できる医薬組成物の製造のために用いる使用に関する。
【0199】
更に本発明は、本発明による化合物を、アポトーシスの誘導に反応を示す疾患、例えば前記の疾病のいずれか、特に癌、例えば前記の癌疾病のいずれかの治療、予防又は改善のために使用できる医薬組成物の製造のために用いる使用に関する。
【0200】
更に本発明は、本発明による化合物を、分化の誘導に反応を示す疾患、例えば前記の疾病のいずれか、特に癌、例えば前記の癌疾病のいずれかの治療、予防又は改善のために使用できる医薬組成物の製造のために用いる使用に関する。
【0201】
更に本発明は、本発明による化合物を、良性又は悪性の新形成、特に癌、例えば前記の癌疾病のいずれかの治療、予防又は改善のために使用できる医薬組成物の製造のために用いる使用に関する。
【0202】
更に、本発明は、本発明による化合物を、細胞性新形成とは異なり、ヒストンデアセチラーゼインヒビター治療に感受性の疾病、例えば前記の非悪性疾患の治療のための医薬組成物の製造のために用いる使用に関する。
【0203】
更に、本発明は、ヒストンデアセチラーゼ活性の阻害をその阻害及びその機能的な結果に反応性の疾病の治療において行うための医薬組成物の製造のために、本発明による化合物を用いる使用に関する。
【0204】
更に、本発明は、哺乳動物、特にヒトの患者における前記の疾病、疾患、病気及び/又は症状を治療、予防又は改善のための方法において、薬理学的に有効で、かつ治療学的に有効かつ許容可能な量の本発明による化合物1種以上を、それを必要とする前記の動物に投与することを含む方法に関する。
【0205】
更に本発明は疾病、特に前記の疾病の治療及び/又は予防における使用のための本発明による化合物に関する。
【0206】
更に本発明は、1種以上の本発明による化合物と製剤学的に認容性の担体又は希釈剤を含有する医薬組成物に関する。
【0207】
更に本発明は、1種以上の本発明による化合物と製剤学的に認容性の助剤及び/又は賦形剤を含有する医薬組成物に関する。
【0208】
更に、本発明は、本発明による1種以上の化合物と、製剤学的に認容性の希釈剤、賦形剤及び/又は担体とを含有する、良性又は悪性の挙動の(過剰)増殖性の疾病及び/又はアポトーシスの誘導に反応を示す疾患、例えば良性又は悪性の新形成、例えば癌、例えば前記の癌疾病のいずれかを治療、予防又は改善するための組合せ物に関する。
【0209】
更に本発明は、ヒストンデアセチラーゼ阻害活性を有する本発明による医薬組成物に関する。
【0210】
更に本発明は、アポトーシス誘導活性を有する本発明による医薬組成物に関する。
【0211】
更に本発明は、抗増殖活性を有する本発明による医薬組成物に関する。
【0212】
更に本発明は、細胞分化誘導活性を有する本発明による医薬組成物に関する。
【0213】
更に、本発明は、本発明による化合物1種以上と製剤学的に認容性の担体又は希釈剤とを含有する医薬組成物を、前記の疾病の治療及び/又は予防で使用するための医薬品、例えば市販パッケージの製造において用いる使用に関する。
【0214】
更に、本発明は、包装材料及びその包装材料中に包含される医薬品からなる製品であって、該医薬品はヒストンデアセチラーゼの効果を阻害するため、ヒストンデアセチラーゼに媒介される疾患の症状の改善のために治療学的に有効であり、かつ該包装材料は、該医薬品がヒストンデアセチラーゼに媒介される疾患の予防又は治療のために有用である旨を示すラベル又は添付文書を含み、かつ前記の医薬品が本発明による式Iの少なくとも1種の化合物を含有する製品に関する。包装材料、ラベル及び添付文書は、その他の点で、関連の利用性を有する医薬品のための標準的な包装材料、ラベル及び添付文書として一般に考慮されるものに対応又は類似している。
【0215】
本発明による医薬組成物は、自体公知かつ当業者によく知られた方法によって製造される。医薬組成物としては、本発明による化合物(=有効化合物)はそれ自体で、又は有利には適当な医薬品助剤及び/又は賦形剤と組み合わせて、例えば錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、カプレット剤、坐剤、パッチ剤(例えばTTS)、乳剤、懸濁剤、ゲル剤又は液剤の形で使用され、その際、有効化合物の含有率は有利には0.1〜95%であり、かつ助剤及び/又は賦形剤の適当な選択によって、有効化合物に厳密に適合された、及び/又は作用の所望の開始に厳密に適合された医薬品投与形(例えば遅延放出形又は腸溶形)を達成できる。
【0216】
当業者はその専門知識により所望の医薬品製剤に適した助剤、ビヒクル、賦形剤、希釈剤、担体又はアジュバントに精通している。溶剤、ゲル形成剤、軟膏基材及び他の有効化合物の他に、賦形剤、例えば酸化防止剤、分散剤、乳化剤、保存剤、溶解剤、着色剤、錯化剤又は侵透促進剤を使用してよい。
【0217】
本発明による化合物、医薬組成物又は組合せ物の投与は、この分野で利用できる一般的に許容される任意の様式で実施できる。好適な投与様式の実例は、例えば静脈内、経口、経鼻、非経口、局所、経皮及び直腸内の送達である。経口及び静脈内の送達が好ましい。
【0218】
皮膚病の治療のためには、本発明による化合物を、特に局所適用のために適当な医薬組成物の形で適用する。該医薬組成物の製造のために、本発明による化合物(=有効化合物)を有利には適当な製薬学的賦形剤と混合し、更に加工して適当な医薬品製剤を得る。適当な医薬品製剤は、例えば粉剤、乳剤、懸濁剤、スプレー剤、オイル剤、軟膏剤、脂肪軟膏剤、クリーム剤、ペースト剤、ゲル剤又は液剤である。
【0219】
本発明による医薬組成物は自体公知の方法によって製造される。本発明の化合物(=有効化合物)の投与は、ヒストンデアセチラーゼインヒビターについて慣用のオーダーで行われる。従って皮膚病の治療のための局所適用形(例えば軟膏)は有効化合物を、例えば0.1〜99%の濃度で含有する。全身療法(経口)の場合の慣用の用量は、0.03〜60mg/kg/日であり、(静脈内で)0.03〜60mg/kg/時間であってよい。もう一つの実施態様においては、全身療法の場合の慣用の用量は、経口で0.3〜30mg/kg/日であり、静脈内で0.3〜30mg/kg/時間である。
【0220】
その都度必要とされる最適な投与計画及び投薬期間、特に有効化合物の用量及び投与様式の選択は、当業者によってその専門知識に基づいて決定することができる。
【0221】
治療されるべき又は予防されるべき特定の疾病によっては、その疾病を治療又は予防するのに通常投与される付加的な治療的活性剤を場合により同時投与してよい。本願で使用される場合に、特定の疾病を治療又は予防するのに通常投与される付加的な治療的活性剤は、治療される疾病に好適であるとして知られている。
【0222】
例えば、本発明による化合物を、前記の疾病の治療に使用される1種以上の標準的な療法剤又は放射線と組み合わせてもよい。
【0223】
このように、特定の一実施態様においては、本発明による化合物を、1種以上の当該技術分野で公知の抗癌剤、例えば以下に記載される1種以上の当該技術分野で公知の化学療法薬及び/又は標的特異的な抗癌剤及び/又は放射線と組み合わせることができる。
【0224】
組み合わせ療法で頻繁に使用される公知の化学療法抗癌剤の例は、これらに制限されないが、(i)アルキル化剤/カルバミル化剤、例えばシクロホスファミド(エンドキサン(登録商標))、イフォスファミド(ホロキサン(登録商標))、チオテパ(チオテパレダーレ(登録商標))、メルファラン(アルケラン(登録商標))又はクロロエチルニトロソウレア(BCNU);(ii)白金誘導体、例えばシスプラチン(プラチネックス(登録商標)BMS)、オキサリプラチン又はカルボプラチン(カルボプラット(登録商標)BMS);(iii)有糸分裂阻害剤/チューブリン阻害剤、例えばビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン)、タキサン類、例えばパクリタキセル(タキソール(登録商標))、ドセタキセル(タキソテレ(登録商標))及び類似体並びにその新規の製剤及びコンジュゲート、エポチロン、例えばエポチロンB(パツピロン(登録商標))、アザエポチロン(イクサベピロン(登録商標))又はZK−EPO、全合成エポチロンB類似体;(iv)トポイソメラーゼインヒビター、例えばアントラサイクリン類(例えばドキソルビシン/アドリブラスチン(登録商標))、エピポドフィロトキシン類(例えばエトポシド/エトポフォス(登録商標))及びカンプトテシン及びカンプトテシン類似体(例えばイリノテカン/カンプトサール(登録商標)又はテポテカン/ハイカムチン(登録商標));(v)ピリミジンアンタゴニスト、例えば5−フルオロウラシル(5−FU)、カペシタビン(キセロダ(登録商標))、アラビノシルシトシン/シタラビン(アレキサン(登録商標))又はゲムシタビン(ゲムザール(登録商標));(vi)プリンアンタゴニスト、例えば6−メルカプトプリン(プリネトール(登録商標))、6−チオグアニン又はフルダラビン(フルダラ(登録商標))及び最後に(vii)葉酸アンタゴニスト、例えばメトトレキセート(ファルミトレキセート(登録商標))又はペメトレキセド(アリムタ(登録商標))を含む。
【0225】
実験的及び標準的癌療法で使用される標的特異的抗癌剤クラスの例は、これらに制限されないが、(i)キナーゼインヒビター、例えばイマチニブ(グリベック(登録商標))、ZD−1839/ゲフィチニブ(イレッサ(登録商標))、Bay43−9006(ソラフェニブ)、SU11248/スニチニブ(ステント(登録商標))又はOSI−774/エルロチニブ(タルセバ(登録商標));(ii)プロテアソームインヒビター、例えばPS−341/ボルテゾニブ(ベルカデ(登録商標));(iii)ヒートショックタンパク質90インヒビター、例えば17−アリルアミノゲルダナマイシン(17−AAG);(iv)血管標的剤(VAT)、例えばコンブレタスタチンA4リン酸又はAVE8062/AC7700及び抗脈管形成剤、例えばVEGF抗体、例えばベバシズマブ(アバスチン(登録商標))又はKDRチロシンキナーゼインヒビター、例えばPTK787/ZK222584(バタラニブ);(v)モノクローナル抗体、例えばトラスツズマブ(ヘルセプチン(登録商標))又はリツキシマブ(マブテラ/リツキサン(登録商標))又はアレムツツマブ(キャンパス(登録商標))又はトシツマブ(ベキサール(登録商標))又はC225/セツキシマブ(エルビタックス(登録商標))又はアバシン(前記参照)並びに突然変異体及びモノクローナル抗体のコンジュゲート、例えばゲムツツマブ オゾガマイシン(ミロタルグ(登録商標))又はイブリツモマブ チウキセタン(ゼバリン(登録商標))及び抗体フラグメント並びに突然変異体及びモノクローナル抗体と抗体フラグメントのコンジュゲート;(vi)オリゴヌクレオチド系治療薬、例えばG−3139/オブリメルセン(ゲナセンス(登録商標));(vii)Toll様レセプター/TLR9アゴニスト、例えばプロムン(登録商標)、TLR7アゴニスト、例えばイミキモッド(アルダラ(登録商標))又はイサトリビン及びその類似体、又はTLR7/8アゴニスト、例えばレシキモッド並びにTLR7/8アゴニストとしての免疫刺激性RNA;(viii)プロテアーゼインヒビター(ix)ホルモン療法剤、例えば抗エストロゲン類(例えばタモキシフェン又はラロキシフェン)、抗アンドロゲン類(例えばフルタミド又はカソデックス)、LHRH類似体(例えばロイプロリド、ゴセレリン又はトリプトレリン)及びアロマターゼインヒビターを含む。
【0226】
組合せ療法のために使用できる他の公知の標的特異的な抗癌剤は、ブレオマイシン、レチノイド類、例えばオール−トランスレチノイン酸(ATRA)、DNAメチルトランスフェラーゼインヒビター、例えば2−デオキシシチジン誘導体のデシタビン(ドカゲン(登録商標))及び5−アザシチジン、アラノシン、サイトカイン類、例えばインターロイキン−2、インターフェロン類、例えばインターフェロンα2又はインターフェロン−γ、デス受容体アゴニスト、例えばTRAIL、DR4/5アゴニスト抗体、FasL及びTNF−Rアゴニスト及び最後に、本発明による化合物とは異なるヒストンデアセチラーゼインヒビター、例えばSAHA、PXD101、MS275、MGCD0103、デプシペプチド/FK228、NVP−LBH589、NVP−LAQ824、バルプロ酸(VPA)及びブチラート類を含む。
【0227】
本発明による化合物と一緒に同時療法において使用するための本願で挙げられる抗癌剤の例としては、これらに制限されないが、以下の任意の薬剤
5FU、アクチノマイシンD、アバレリックス、アブシキシマブ、アクラルビシン、アダパレン、アレムツズマブ、アルトレタミン、アミノグルテチミド、アミプリローズ、アムルビシン、アナステロゾール、アンシタビン、アルテミシニン、アザチオプリン、バシリキシマブ、ベンダムスチン、ベバシツマブ、ベキサール、ビカルタミド、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブロクスリジン、ブスルファン、キャンパス、カペシタビン、カルボプラチン、カルボクオン、カルムスチン、セトロレリックス、クロラムブシル、クロロメチン、シスプラチン、クラドリビン、クロミフェン、シクロホスファミド、ダカルバジン、ダクリズマブ、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デシタビン、デスロレリン、デキシラゾキサン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、ドロロキシフェン、ドロスタノロン、エデルフォシン、エフロルニチン、エミテフール、エピルビシン、エピチオスタノール、エプタプラチン、エルビツックス、エルロチニブ、エストラムスチン、エトポシド、エキセメスタン、ファドロゾール、フィナステリド、フロクスリジン、フルシトシン、フルダラビン、フルオロウラシル、フルタミド、フォルメスタン、フォスカルネット、フォスフェストロール、フォテムスチン、フルベストラント、ゲフィチニブ、ジェナセンス、ゲムシタビン、グリベック、ゴセレリン、グスペリムス、ヘルセプチン、イダルビシン、イドクスリジン、イフォスファミド、イマチニブ、イムプロスルファン、インフリキシマブ、イリノテカン、イキサベピロン、ランレオチド、レトロゾール、ロイプロレリン、ロバプラチン、ロムスチン、ルプロリド、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキセート、メツレデパ、ミボプラチン、ミフェプリストン、ミルテフォシン、ミリモスチム、ミトグアゾン、ミトラクトール、ミトマイシン、ミトキサントロン、ミゾリビン、モテキサフィン、マイロターグ、ナルトグラスチム、ネバズマブ、ネダプラチン、ニルタミド、ニムスチン、オクトレオチド、オルメロキシフェン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パリビズマブ、パツピロン、ペガスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペメトレキセド、ペンテトレオチド、ペントスタチン、ペルフォスファミド、ピポスルファン、ピラルビシン、プリカマイシン、プレドニムスチン、プロカルバジン、プロパゲルマニウム、塩化プロスピジウム、ラロキシフェン、ラルチトレキセド、ラニムスチン、ランピルナーゼ、ラスブリカーゼ、ラゾキサン、リツキシマブ、リファンピシン、リトロスルファン、ロムルチド、ルボキシスタウリン、サルグラモスチム、サトラプラチン、シロリムス、ソブゾキサン、ソラフェニブ、スピロムスチン、ストレプトゾシン、スニチニブ、タモキシフェン、タソネルミン、テガフール、テモポルフィン、テモゾロミド、テニポシド、テストラクトン、チオテパ、チマルファシン、チアミプリン、トポテカン、トレミフェン、トレイル、トラスツズマブ、トレオスルファン、トリアジクオン、トリメトレキセート、トリプトレリン、トロフォスファミド、ウレデパ、バルルビシン、バタラニブ、ベルテポルフィン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ボロゾール及びゼバリンが挙げられる。
【0228】
本発明による化合物の組み合わせ相手として本願に上述した抗癌剤は、その製剤学的に認容性の誘導体、例えばその製剤学的に認容性の塩を含むことを意図する。
【0229】
当業者は、その専門知識に基づいて、同時投与される付加的な治療剤の種類、全日用量及び投与形を認識している。前記の全日用量は広い範囲で変更できる。
【0230】
本発明の実施において、かつ前記のそれらの使用の詳細、特性又は目的に依存して、本発明による化合物は、組合せ療法において、別々に、連続的に、同時に、併用して又は時間的にずらして(例えば組合せ単位投与形として、別々の単位投与形として、隣接した不連続な単位投与形として、固定組合せ物又は非固定組合せ物として、小分けキットとして又は混合物として)、1種以上の標準的な療法剤、特に当該技術分野で知られる抗癌剤(化学療法薬及び/又は標的特異的な抗癌剤)、例えば前記のいずれかと一緒に投与してよい。
【0231】
この文脈で、更に、本発明は、本発明による化合物少なくとも1種である第一の有効成分と、当該技術分野で公知の標準的な治療剤、例えば当該技術分野で公知の抗癌剤、例えば本願で前記の治療剤1種以上である第二の有効成分とを含有し、療法において、例えば本願で述べたあらゆる疾病の療法において、別々に、連続的に、同時に、併用して又は時間的にずらして使用するための組合せ物に関する。
【0232】
本発明による用語"組合せ物"は、固定組合せ物、非固定組合せ物又は小分けキットとして存在してよい。
【0233】
"固定組合せ物"は、前記の第一の有効成分と第二の有効成分とが1つの単位用量で又は単一物で一緒に存在する組合せ物として定義される。"固定組合せ物"の一例は、前記の第一の有効成分と前記の第二の有効成分とが、例えば一製剤中に同時の投与のために混合物で存在する医薬組成物である。"固定組合せ物"のもう一つの例は、前記の第一の有効成分と前記の第二の有効成分とが、混合されることなく1つの単位で存在する医薬品組合せ物である。
【0234】
"小分けキット"は、前記の第一の有効成分と前記の第二の有効成分とが1単位より多くで存在する組合せ物として定義される。"小分けキット"の一例は、前記の第一の有効成分と前記の第二の有効成分とが別々に存在する組合せ物である。小分けキットの成分は、別々に、連続的に、同時に、併用して又は時間的にずらして投与してよい。
【0235】
更に本発明は、本発明による化合物少なくとも1種である第一の有効成分と、少なくとも1種の当該技術分野で公知の少なくとも1種の抗癌剤、例えば本願で前記の抗癌剤1種以上である第二の有効成分と、場合により製剤学的に認容性の担体又は希釈剤とを含有し、療法、例えばヒストンデアセチラーゼの阻害に反応を示す又は感受性の疾病、特にアポトーシスの誘導に反応を示す(過剰)増殖性の疾病及び/又は疾患、例えば本願に挙げられる疾病のいずれか、例えば良性又は悪性の新形成、殊に癌、特に前記の癌疾病のいずれかの治療において別々に、連続的に、同時に、併用して又は時間的にずらして使用するための医薬組成物に関する。
【0236】
更に、本発明は、a)本発明による少なくとも1種の化合物と製剤学的に認容性の担体又は希釈剤との配合物及びb)少なくとも1種の当該技術分野で知られる抗癌剤、例えば前記の1種以上の抗癌剤と製剤学的に認容性の担体又は希釈剤との配合物を含有する組合せ製品に関する。
【0237】
更に本発明は、本発明による化合物である第一の有効成分と製剤学的に認容性の担体又は希釈剤の調剤;当該技術分野で知られる抗癌剤、例えば前記の抗癌剤の1つある第二の有効成分と製剤学的に認容性の担体又は希釈剤の調剤を含有する、療法において同時に、併用して、連続的に、別々に又は時間的にずらして使用するための小分けキットに関する。場合により、前記のキットは、治療において、例えばヒストンデアセチラーゼの阻害に反応を示す又は感受性の疾病、例えば細胞性新形成又は前記の細胞性新形成とは異なる疾病、特に癌、例えば前記の癌疾病のいずれかを治療するために使用することについての説明書を含む。
【0238】
更に本発明は、本発明による少なくとも1種の化合物と少なくとも1種の当該技術分野で知られる抗癌剤とを含有する、同時に、併用して、連続的に又は別々に投与するための組合せ調剤に関する。
【0239】
この関連で、本発明は更に、ヒストンデアセチラーゼ阻害活性を有する本発明による組合せ物、組成物、製剤、調剤又はキットに関する。
【0240】
またこの関連で、本発明は更に、抗(過剰)増殖特性及び/又はアポトーシス誘導特性を有する本発明による組合せ物、組成物、製剤、調剤又はキットに関する。
【0241】
加えて更に、本発明は、患者において、ヒストンデアセチラーゼの阻害に反応を示す又は感受性の疾病、例えばアポトーシスの誘導に反応を示す(過剰)増殖性の疾病及び/又は疾患、例えば癌を組み合わせ治療において治療する方法において、それを必要とする患者に、本願に記載される組合せ物、組成物、製剤、調剤又はキットを投与することを含む方法に関する。
【0242】
加えて更に、本発明は、患者において、ヒストンデアセチラーゼの阻害に反応を示す又は感受性の疾病、例えば癌を治療する方法において、組合せ療法において、別々に、同時に、併用して、連続的に又は時間的にずらして、本発明による化合物及び製剤学的に認容性の担体又は希釈剤を含有する製剤学的に有効かつ治療学的に有効かつ認容性の量の医薬組成物及び製剤学的に有効かつ治療学的に有効かつ認容性の量の1種以上の当該技術分野で知られる抗癌剤、例えば前記の抗癌剤の1種以上をそれを必要とする患者に投与することを含む方法に関する。
【0243】
更に加えて、本発明は、患者において、アポトーシスの誘導に反応を示す(過剰)増殖性の疾病及び/又は疾患、例えば良性又は悪性の新形成、例えば癌、特に本願に挙げられる癌疾病のいずれかを治療、予防又は改善するための方法において、それを必要とする患者に、本発明による化合物である第一の有効化合物の量と、第二の有効化合物の量とを、別々に、同時に、併用して、連続的に又は時間的にずらして投与することを含み、前記の少なくとも1種の第二の有効化合物が、標準的な治療剤、特に少なくとも1種の当該技術分野で公知の抗癌剤、例えば本願に挙げられる1種以上の前記の化学療法剤及び標的特異的抗癌剤であり、その際、第一の有効化合物の量と第二の有効化合物の量が治療効果をもたらす方法に関する。
【0244】
なおも更に加えて、本発明は、患者において、アポトーシスの誘導に反応を示す(過剰)増殖性の疾病及び/又は疾患、例えば良性又は悪性の新形成、例えば癌、特に本願に挙げられる癌疾病のいずれかを治療、予防又は改善するための方法において、本発明による組合せ物を投与することを含む方法に関する。
【0245】
加えて更に、本発明は、ヒストンデアセチラーゼの阻害に反応を示す又は感受性の疾病、特に前記の疾病、例えば良性又は悪性の新形成を治療、予防又は改善するための医薬製品、例えば市販パッケージ又は医薬品の製造における、本発明による組成物、組合せ物、製剤、調剤又はキットの使用に関する。
【0246】
更に本発明は、1種以上の本発明による化合物を含有し、それと一緒に、1種以上の化学療法剤及び/又は標的特異的抗癌剤、例えば前記の任意のものと同時に、併用して、連続的に又は別々に使用するための説明書を含有する市販パッケージに関する。
【0247】
更に本発明は、唯一の有効成分としての1種以上の本発明による化合物を必須とし、それと一緒に、1種以上の化学療法剤及び/又は標的特異的抗癌剤、例えば前記の任意のものと同時に、併用して、連続的に又は別々に使用するための説明書を含有する市販パッケージに関する。
【0248】
更に本発明は、1種以上の化学療法剤及び/又は標的特異的抗癌剤、例えば前記の任意のものを含有し、それと一緒に、1種以上の本発明による化合物と同時に、併用して、連続的に又は別々に使用するための説明書を含有する市販パッケージに関する。
【0249】
本発明による組合せ療法の文脈で挙げられた組成物、組合せ物、調剤、製剤、キット又はパッケージは、また本発明による化合物1種以上及び/又は当業者に公知の挙げられる抗癌剤1種以上も含む。
【0250】
本発明による組合せ物又は小分けキットの第一の有効成分と第二の有効成分は、組合せ療法において、同時に、連続的に、別々に又は時間的にずらして使用するために後に一緒にされる別々の製剤(すなわち互いに独立している)として提供することができ、又は組合せ療法において、同時に、併用して、連続的に、別々に又は時間的にずらして使用するための組合せパッケージの別々のコンポーネントとして一緒に包装され一緒に存在することができる。
【0251】
本発明による組合せ物又は小分けキットの第一の有効成分と第二の有効成分の医薬製剤の型は同様であってよい、すなわち両方の成分は、別々の錠剤又はカプセル剤で製剤されているか、又は前記の医薬製剤の型は異なってよい、すなわち異なる投与形に適合せることができる、例えば一方の有効成分を錠剤又はカプセル剤として製剤し、もう一方を、例えば静脈内投与用に製剤する。
【0252】
本発明による組合せ物、組成物又はキットの第一の有効成分と第二の有効成分の量は、一緒になって、ヒストンデアセチラーゼの阻害に反応を示す又は感受性の疾病、例えば前記の疾病の1つ、例えば良性又は悪性の新形成、特に癌、例えば本願に挙げられる癌疾病のいずれかの治療、予防又は改善のために治療学的に有効な量を含んでよい。
【0253】
更に、本発明による化合物は癌の術前又は術後の治療に使用することができる。
【0254】
更に加えて、本発明による化合物は、放射線療法と組み合わせて、標準的な放射線療法に対する癌患者の感作において使用することができる。
【0255】
本発明による組合せ物は、本発明による化合物と他の有効な抗癌剤との両者を固定組合せで含有する組成物(固定単位投与形)又は2種以上の有効成分を不連続な別々の投与形として含有する医薬品パッケージ(非固定組合せ物)を指すことができる。2種以上の有効成分を含有する医薬品パックの場合に、有効成分は、有利にはコンプライアンスの改善に適したブリスターカード中に入れられる。
【0256】
各ブリスターカードは、有利には一日の治療に摂取されるべき医薬品を含有する。それらの薬品が一日の異なる時点で摂取される場合には、これらの薬剤は、一日のなかでそれらが摂取される時間の種々の範囲に応じてブリスターカードの種々の区画に割り付けてよい。一日の特定の時点で一緒に摂取されるべき医薬品のためのブリスター空隙は一日の時間のそれぞれの範囲で調節される。一日の種々の時間は、もちろんまた明瞭に見えるようにブリスターに付けられる。またもちろん、例えば医薬品を摂取すべき期間を指示する、例えばそれらの時間を述べることも可能である。
【0257】
一日の区画は、ブリスターカードの1本の線に相当することがあり、そしてその際、一日の時間はこの列の時間的順序で確認される。
【0258】
一日の特定の時間で一緒に摂取せねばならない医薬品は、有利には距離を離さず、それらが容易にブリスターから押し出せ、そしてブリスターからその投与形を取り出すのを忘れないという趣旨で、ブリスターカードに適切な時間で一緒に配置される。
【0259】
生物学的調査
HeLa細胞核からのHDAC活性の単離
HDAC活性を、HeLa核抽出物から、Dignam他によって当初記載された方法(Nucl.Acids Res.11,pp1475,1983)に従って単離する。簡潔には、HeLa細胞(CIL SA,Seneffe、ベルギー在)から単離された核を、バッファーC(20mMのHepes(pH7.9)、25%(容量:容量)のグリセロール、0.42MのNaCl、1.5mMのMgCl2、0.2mMのEDTA、0.5mMのPefaBloc及び0.5mMのDTT)中に再懸濁し、そして氷上で30分間撹拌する。遠心分離後に、上清を、4℃で5時間、バッファーD(40mMのTris HCl(pH7.4)、100mMのKCl、0.2mMのEDTA、0.5mMのDTT及び25%(容量:容量)のグリセロール)に対して透析する。透析し、かつ遠心分離した後に、上清を、アリコートで−80℃で貯蔵し、それを以下に記載するようにしてウェスタンブロット分析並びに酵素アッセイのために用いる。
【0260】
rHDAC1の単離
フラッグエピトープと融合されたヒトHDAC1は、Hek293細胞中で安定的に発現される。補助物質と2%の仔ウシ血清を含むDMEM中での大量培養後に、細胞を溶解させ、そしてフラッグ−HDAC1を、M2−アガロースアフィニティークロマトグラフィーによって説明のとおりに(Sigma Art.No.A−2220)精製する。以下に記載されるようにして、精製したもののフラクションを、ウェスタンブロットによって分析し、並びに酵素活性について試験する。
【0261】
蛍光測定的HDAC活性アッセイ
HDAC酵素活性アッセイを、Wegener他によって記載されるように(Chem.& Biol.10,61−68,2003)実施する。1:100希釈(=0.4μl)のHeLa核抽出物40μl(クラスIとクラスIIのHDACの混合物)、29μlの酵素バッファー(15mMのTris HCl(pH8.1)、0.25mMのEDTA、250mMのNaCl、10%(容量:容量)のグリセロール)及び1μlの試験化合物を、96ウェルのマイクロタイタープレートの1つのウェルに添加し、そして30μlの基質(Ac−NH−GGK(Ac)−AMC;最終濃度25μM及び最終容量100μl)を添加することによって反応を開始させる。30℃で90分間インキュベートした後に、25μlの停止溶液(50mMのTris HCl(pH8)、100mMのNaCl、0.5mg/mlのトリプシン及び2μMのTSA)を添加することによって反応を止める。室温で更に40分間インキュベートした後に、Wallac Victor 1420マルチラベル計数器(Ex355nm、Em460nm)を用いて、脱アセチル化されたペプチドのトリプシン分解によって生ずるAMC(7−アミノ−4−メチルクマリン)の定量のために蛍光を測定する。IC50の計算のために、試験化合物を含まないウェル(1%のDMSO、ネガティブコントロール)中の蛍光を100%の酵素活性として設定し、そして2μMのTSAを含むウェル(ポジティブコントロール)中の蛍光を0%の酵素活性で設定する。化合物のHDAC阻害活性についての相応のIC50値を濃度−作用曲線から非線形回帰によって測定する。
【0262】
HDAC1酵素アッセイを実施したが、HEK293細胞溶解物から単離された組み換えフラッグ−HDAC1タンパク質を用いることで僅かに変更する。約10ng/ウェルのフラッグ−HDAC1を、6μMのAc−NH−GGK(Ac)−AMC基質と一緒に30℃で3時間インキュベートする。反応の停止と全ての更なる工程は、HDAC酵素活性用の由来物としてHeLa細胞核抽出物について記載したのと同様に実施する。
【0263】
HeLa細胞核抽出物から得られたHDAC活性は、実施例1〜4によって、そして実施例7〜12によって、2.5μM〜0.0039μMの範囲のIC50値で阻害される。Hek293細胞で発現される組み換えヒトHDAC1は、実施例1〜3によって、そして実施例7〜12によって、1μM〜0.0039μMの範囲のIC50値で阻害される。
【0264】
細胞性ヒストンH3過剰アセチル化アッセイ
ヒストンデアセチラーゼインヒビターのインビトロでの細胞性有効度を評価するために、黒色の透明な底部の96ウェルプレート中で計画し、そしてヒストンアセチル化の定量的計算用のCellomisc社の"ArrayScan II"上で使用するために最適化する。そのプロトコールは、Alexa Fluor 488標識されたヤギ抗ウサギIgGを対比染色に用いた、固定化細胞上のヒトヒストンH3のアセチル化されたリジン23又は、選択的にアセチル化されたリジン9+14に特異的に結合するポリクローナルウサギ抗体を用いる(Braunger et al. AACR annual conference 2003, Abstract 4556から変更)。10%の仔ウシ血清を含有するダルベッコ変性イーグル培地(DMEM)200μl中に5×103のHeLa子宮頸癌細胞/ウェル(ATCC CCL−2)を、1日目にPackard社のview plate中に播種し、そして標準的な細胞培養条件下で24時間インキュベートする。2日目に、1μlの試験化合物(200×の最終濃度)を添加し、そして更に24時間インキュベートを続ける。3日目に、その培養培地を廃棄し、そして付着した細胞を、100μlの固定化バッファー(3.7%(容量:容量)のホルムアルデヒド、リン酸緩衝生理食塩水/PBS中)を添加することによって室温で15分間固定化する。固定化バッファーを廃棄し、そしてブロッキング溶液(1%のBSA、0.3%のTween20、PBS中)で1回洗浄した後に、細胞を、100μl/ウェルの浸透化バッファー(30.8mMのNaCl、0.54mMのNa2HPO4、0.31mMのKH2PO4、0.1%(容量:容量)のTriton X−100)を室温で添加することによって、室温で15分間浸透化させる。浸透化バッファーを破棄し、そして100μl/ウェルのブロッキング溶液により室温で洗浄した後に、一次抗体(抗K23ヒストンH3抗体、Cell Signaling 番号9674又は選択的に、抗K9+14ヒストンH3抗体、Calbiochem 番号382158)をブロッキング溶液(50μl/ウェル)中に入れたものを添加する。室温で1時間インキュベートした後に、それらのウェルを室温で100μl/ウェルのブロッキング溶液で2回洗浄してから、ブロッキング溶液(50μl/ウェル)中二次抗体(ヤギ抗ウサギAlexa Fluor 488;MiBiTec 番号A−11008)を添加する。室温で更に1時間インキュベートした後に、それらのウェルを100μl/ウェルのブロッキング溶液で室温において2回洗浄する。最後に、100μl/ウェルのPBSを添加し、そしてCellomics社の"ArrayScan II"プラットフォーム上で画像解析を実施する。EC50測定のために、核蛍光を示すポジティブな細胞の百分率を測定し、EC50計算は、濃度−作用曲線から非線形回帰によって行う。較正のために、ポジティブコントロール(SAHA又はLBH589のような参照HDACインヒビター)及びネガティブコントロールが含まれる。
【0265】
HeLa細胞における細胞性ヒストン過剰アセチル化は、実施例1、2、4、9及び10によって、EC50=10μM〜0.19μMの範囲で誘導される。
【0266】
細胞毒性アッセイ
本願に記載されるヒストンデアセチラーゼ阻害性化合物の抗増殖活性を、HeLa子宮頸癌細胞系統(ATCC CCL2)及びA549の非小細胞肺癌細胞系統(ATCC CCL 185)で、Alamar Blue(レザズリン)細胞生存度アッセイ(O'Brien et al.Eur J Biochem 267,5421−5426,2000)を用いて評価した。レザズリンは、細胞性デヒドロゲナーゼ活性によって、生存可能で増殖している細胞と相関して、蛍光性のレゾルフィンへと還元される。試験化合物を、ジメチルスルホキシド(DMSO)中に20mMの溶液として溶解させ、引き続き片対数段階で希釈する。HeLa細胞又はA549細胞を、96ウェル平底プレート中に、1ウェルあたり1000細胞と2000細胞の密度で、それぞれウェルあたり200μlの容量で播種する。播種24時間後に、それぞれ1μlの化合物希釈物を96ウェルプレートの各ウェルに添加する。各化合物希釈物を四重反復試験として試験する。未処理の対照細胞を含有するウェルを、0.5%(容量:容量)のDMSOを含有するDMEM培地200μlで満たす。次いでこれらの細胞を物質と一緒に37℃で48時間もしくは72時間、5%の二酸化炭素を含有する湿潤雰囲気中でインキュベートする。細胞の生存度を測定するために、20μlのレザズリン溶液(Sigma社;90mg/l)を添加した。37℃で4時間インキュベートした後に、励起波長544nm及び蛍光波長590nmで蛍光を測定する。細胞生存度の計算のために、未処理の細胞からの蛍光値を100%の生存度に設定し、未処理の細胞の蛍光率を未処理の細胞の値について設定する。生存度は%値として表現する。化合物の細胞毒性活性についての相応のIC50値を濃度−作用曲線から非線形回帰によって測定した。
【0267】
A549のNSCLC細胞系統における実施例1ないし4、8ないし10の抗増殖性/細胞毒性の活性は、IC50=6.2μM〜0.313μMの範囲で測定され、そしてHeLa子宮頸癌細胞系統においては、IC50=4.2μM〜0.23μMの範囲で測定される。
【0268】
アポトーシス誘導
アポトーシスの誘導を、細胞死検出ELISA(Art.No.1774425,Roche Biochemicals社、ドイツ・マンハイム在)を用いて測定する。A549 NSCLC細胞を96ウェル平底プレート中に、1ウェルあたり3×10E3個の細胞の密度で、1ウェルあたり200μlの全容量で播種する。播種の24時間後に、DMEM中の化合物希釈物それぞれ1μlを、各ウェル中に200μlの全容量中に添加した(最終容量200μl/ウェル)。各化合物の希釈物は少なくとも三重反復試験で試験する。未処理の対照細胞を含有するウェルを、0.5容量%のDMSOを含有するDMEM200μlで満たす。これらの細胞を試験化合物と一緒に37℃で48時間、5%の二酸化炭素を含有する湿潤雰囲気中でインキュベートする。アポトーシスの誘発についてのポジティブコントロールとして、細胞を50μMのシスプラチン(Gry Pharmaceuticals、ドイツ・キルヒザルテン在)で処理する。次いで培地を除去し、細胞を200μlの溶解バッファー中で溶解させる。製造元によって記載されるように遠心分離した後に、10μlの細胞溶解物をプロトコールに記載されるように処理する。アポトーシスの程度は以下のように計算する:50μMのシスプラチンで処理された細胞からの溶解物で得られた405nmでの吸光度を100cpu(シスプラチン単位)として設定し、一方で405nmでの吸光度0.0を0.0cpuとして設定した。アポトーシスの程度は、50μMのシスプラチンで処理された細胞から得られた溶解物で達成された100cpuの値に対するcpuとして表現される。
【0269】
A549細胞におけるアポトーシス誘導は、実施例1と実施例2のそれぞれについて、10μMで、310cpu及び46cpuである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

[式中、
R1は、水素、C1〜C4−アルキル、ハロゲン又はC1〜C4−アルコキシであり、
R2は、水素又はC1〜C4−アルキルであり、
R3は、水素又はC1〜C4−アルキルであり、
R4は、水素、C1〜C4−アルキル、ハロゲン又はC1〜C4−アルコキシであり、
R5は、水素、C1〜C4−アルキル、ハロゲン又はC1〜C4−アルコキシであり、
R6は、−T1−Q1であり、その際、
T1は、結合又はC1〜C4−アルキレンであり、
Q1は、ナフチル、HAR又はR61及び/又はR62で置換されたARであり、その際、
ARは、ナフチル又はHARであり、その際、
HARは、窒素、酸素及び硫黄からなる群からそれぞれ選択される1〜3個のヘテロ原子を有する、単環式もしくは縮合二環式の5員ないし10員の不飽和の複素芳香族の環であり、
R61は、C1〜C4−アルキル又は−T2−N(R611)R612であり、その際、
T2は、結合であり、かつ
R611は、水素、C1〜C4−アルキル、ヒドロキシ−C2〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ−C2〜C4−アルキル、フェニル−C1〜C4−アルキル又はHar1−C1〜C4−アルキルであり、その際、
Har1は、R6111及び/又はR6112によって置換されていてよく、かつ窒素、酸素及び硫黄からなる群からそれぞれ選択される1〜3個のヘテロ原子を有する、単環式もしくは縮合二環式の5員ないし10員の不飽和の複素芳香族の環であり、
R6111は、ハロゲン又はC1〜C4−アルキルであり、
R6112は、C1〜C4−アルキルであり、かつ
R612は、水素、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ−C2〜C4−アルキル又はヒドロキシ−C2〜C4−アルキルであるか、もしくは
R611及びR612は、一緒になって、それらが結合される窒素原子を含んで、複素環式の環Het1を形成し、その際、
Het1は、モルホリノ、チオモルホリノ、S−オキソ−チオモルホリノ、S,S−ジオキソ−チオモルホリノ、ピペリジノ、ピロリジノ、ピペラジノ又は4N−(C1〜C4−アルキル)−ピペラジノであるか、又は
T2は、C1〜C4−アルキレン又は酸素によって中断されたC2〜C4−アルキレンであり、かつ
R611は、水素、C1〜C4−アルキル、ヒドロキシ−C2〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ−C2〜C4−アルキル、フェニル−C1〜C4−アルキル又はHar1−C1〜C4−アルキルであり、その際、
Har1は、R6111及び/又はR6112によって置換されていてよく、かつ窒素、酸素及び硫黄からなる群からそれぞれ選択される1〜3個のヘテロ原子を有する、単環式もしくは縮合二環式の5員ないし10員の不飽和の複素芳香族の環であり、
R6111は、ハロゲン又はC1〜C4−アルキルであり、
R6112は、C1〜C4−アルキルであり、かつ
R612は、水素、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ−C2〜C4−アルキル又はヒドロキシ−C2〜C4−アルキルであるか、もしくは
R611及びR612は、一緒になって、それらが結合される窒素原子を含んで、複素環式の環Het1を形成し、その際、
Het1は、モルホリノ、チオモルホリノ、S−オキソ−チオモルホリノ、S,S−ジオキソ−チオモルホリノ、ピペリジノ、ピロリジノ、ピペラジノ、4N−(C1〜C4−アルキル)−ピペラジノ、イミダゾロ、ピロロ、トリアゾロ又はピラゾロであり、
R62は、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、ハロゲン、シアノ、C1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルキルカルボニルアミノ又はC1〜C4−アルキルスルホニルアミノであり、
R7は、ヒドロキシル又はCyc1であり、その際、
Cyc1は、式Ia
【化2】

で示される環系であり、その際、
Aは、C(炭素)であり、
Bは、C(炭素)であり、
R71は、水素、ハロゲン、C1〜C4−アルキル又はC1〜C4−アルコキシであり、
R72は、水素、ハロゲン、C1〜C4−アルキル又はC1〜C4−アルコキシであり、
Mは、A及びBを含んで、環Ar2か又は環Har2のいずれかであり、その際、
Ar2は、ベンゼン環であり、
Har2は、窒素、酸素及び硫黄からなる群からそれぞれ選択される1〜3個のヘテロ原子を有する、単環式の5員もしくは6員の不飽和の複素芳香族の環である]で示される化合物並びにこれらの化合物の塩。
【請求項2】
式Iで示され、その式中、
R1は、水素又はC1〜C4−アルキルであり、
R2は、水素又はC1〜C4−アルキルであり、
R3は、水素又はC1〜C4−アルキルであり、
R4は、水素又はC1〜C4−アルキルであり、
R5は、水素又はC1〜C4−アルキルであり、
R6は、−T1−Q1であり、その際、
T1は、結合であり、
Q1は、ナフチル、HAR、R61で置換されたAR、R62で置換されたAR又はR61及びR62で置換されたARであり、その際、
ARは、ナフチル又はHARであり、その際、
HARは、
窒素、酸素及び硫黄からなる群からそれぞれ選択される1個、2個もしくは3個のヘテロ原子を有する、単環式の5員の不飽和の複素芳香族の環か、
1個もしくは2個の窒素原子を有する、単環式の6員の不飽和の複素芳香族の環か、
窒素、酸素及び硫黄からなる群からそれぞれ選択される1個、2個もしくは3個のヘテロ原子を有する、縮合二環式の9員の不飽和の複素芳香族の環か、
窒素、酸素及び硫黄からなる群からそれぞれ選択される1個もしくは2個のヘテロ原子を有する、縮合二環式の10員の不飽和の複素芳香族の環か、
のいずれかであり、
R61は、C1〜C4−アルキル又は−T2−N(R611)R612であり、その際、
T2は、結合又はC1〜C4−アルキレンであり、
R611は、水素、C1〜C4−アルキル、フェニル−C1〜C4−アルキル又はHar1−C1〜C4−アルキルであり、その際、
Har1は、
窒素、酸素及び硫黄からなる群からそれぞれ選択される1個、2個もしくは3個のヘテロ原子を有する、単環式の5員の不飽和の複素芳香族の環か、
1個もしくは2個の窒素原子を有する、単環式の6員の不飽和の複素芳香族の環か、
窒素、酸素及び硫黄からなる群からそれぞれ選択される1個、2個もしくは3個のヘテロ原子を有する、縮合二環式の9員の不飽和の複素芳香族の環か、
窒素、酸素及び硫黄からなる群からそれぞれ選択される1個もしくは2個のヘテロ原子を有する、縮合二環式の10員の不飽和の複素芳香族の環か、
のいずれかであり、
R612は、水素、C1〜C4−アルキル又はヒドロキシ−C2〜C4−アルキルであるか、もしくは
R611及びR612は、一緒になって、それらが結合される窒素原子を含んで、複素環式の環Het1を形成し、その際、
Het1は、モルホリノ、ピペリジノ、ピロリジノ、ピペラジノ又は4N−メチル−ピペラジノであり、
R62は、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ又はハロゲンであり、
R7は、ヒドロキシル又は2−アミノフェニルである、請求項1記載の化合物並びにこれらの化合物の塩。
【請求項3】
式Iで示され、その式中、
R1は、水素であり、
R2は、水素であり、
R3は、水素であり、
R4は、水素であり、
R5は、水素であり、
R6は、−T1−Q1であり、その際、
T1は、結合であり、
Q1は、ナフチル、HAR、R61で置換されたAR、N−メチル−イミダゾリル、N−メチル−ピラゾリル、N−メチル−インドリル、メチルで一置換もしくは二置換されたチアゾリル、メチルで置換されたN−メチル−イミダゾリル又はメチルで置換されたN−メチル−ピラゾリルであり、その際、
ARは、ナフチル又はHARであり、その際、
HARは、ピリジニル、チアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾフラニル、インドリル、キノリニル又はイソキノリニルであり、
R61は、C1〜C4−アルキル又は−T2−N(R611)R612であり、その際、
T2は、結合又はC1〜C2−アルキレンであり、
R611は、水素又はC1〜C4−アルキルであり、
R612は、水素又はC1〜C4−アルキルであるか、もしくは
R611及びR612は、一緒になって、それらが結合される窒素原子を含んで、複素環式の環Het1を形成し、その際、
Het1は、モルホリノ、ピペリジノ、ピロリジノ、ピペラジノ又は4N−メチル−ピペラジノであり、
R7は、ヒドロキシル又は2−アミノフェニルである、請求項1記載の化合物並びにこれらの化合物の塩。
【請求項4】
式Iで示され、その式中、
R1は、水素であり、
R2は、水素であり、
R3は、水素であり、
R4は、水素であり、
R5は、水素であり、
R6は、−T1−Q1であり、その際、
T1は、結合であり、
Q1は、ナフチル、HAR、R61で置換されたピリジニル、N−メチル−イミダゾリル、N−メチル−ピラゾリル、メチルで一置換もしくは二置換されたチアゾリル、メチルで置換されたN−メチル−イミダゾリル又はメチルで置換されたN−メチル−ピラゾリルであり、その際、
HARは、ピリジニル、チアゾリル、ベンゾチオフェニル又はベンゾチアゾリルであり、
R61は、−T2−N(R611)R612であり、その際、
T2は、結合又はC1〜C2−アルキレンであり、
R611は、水素又はC1〜C2−アルキルであり、
R612は、水素又はC1〜C2−アルキルであるか、もしくは
R611及びR612は、一緒になって、それらが結合される窒素原子を含んで、複素環式の環Het1を形成し、その際、
Het1は、モルホリノ、ピペリジノ、ピロリジノ、ピペラジノ又は4N−メチル−ピペラジノであり、
R7は、ヒドロキシル又は2−アミノフェニルである、請求項1記載の化合物並びにこれらの化合物の塩。
【請求項5】
式Iで示され、その式中、
R1は、水素であり、
R2は、水素であり、
R3は、水素であり、
R4は、水素であり、
R5は、水素であり、
R6は、−T1−Q1であり、その際、
T1は、結合であり、
Q1は、ナフチル、HAR、2−(R61)−ピリジン−3−イル、1−メチル−ピラゾール−4−イル、1−メチル−イミダゾール−4−イル、1,2−ジメチル−イミダゾール−4−イル又は2,4−ジメチル−チアゾール−5−イルであり、その際、
HARは、ピリジン−3−イル、ベンゾチオフェン−2−イル又はベンゾチアゾール−6−イルであり、
R61は、−T2−N(R611)R612であり、その際、
T2は、結合又はメチレンであり、
R611は、水素又はメチルであり、
R612は、水素又はメチルであるか、もしくは
R611及びR612は、一緒になって、それらが結合される窒素原子を含んで、複素環式の環Het1を形成し、その際、
Het1は、モルホリノであり、
R7は、ヒドロキシル又は2−アミノフェニルである、請求項1記載の化合物並びにこれらの化合物の塩。
【請求項6】
式Iで示され、その式中、
R1は、水素であり、
R2は、水素であり、
R3は、水素であり、
R4は、水素であり、
R5は、水素であり、
R6は、−T1−Q1であり、その際、
T1は、結合であり、
Q1は、ナフチル、HAR又は2−(R61)−ピリジン−3−イルであり、その際、
HARは、ピリジニルであり、
R61は、−T2−N(R611)R612であり、その際、
T2は、結合又はメチレンであり、
R611は、水素又はメチルであり、
R612は、水素又はメチルであるか、もしくは
R611及びR612は、一緒になって、それらが結合される窒素原子を含んで、複素環式の環Het1を形成し、その際、
Het1は、モルホリノであり、
R7は、ヒドロキシル又は2−アミノフェニルである、請求項1記載の化合物並びにこれらの化合物の塩。
【請求項7】
式Iで示され、以下の
(E)−N−ヒドロキシ−3−[1−(ナフタレン−2−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−アクリルアミド
(E)−N−(2−アミノ−フェニル)−3−[1−(ナフタレン−2−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−アクリルアミド
(E)−N−ヒドロキシ−3−[1−(ピリジン−3−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−アクリルアミド
(E)−N−ヒドロキシ−3−[1−(6−モルホリン−4−イル−ピリジン−3−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−アクリルアミド
(E)−N−(2−アミノ−フェニル)−3−[1−(ベンゾ[b]チオフェン−2−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−アクリルアミド
(E)−N−(2−アミノ−フェニル)−3−[1−(ベンゾチアゾール−6−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−アクリルアミド
(E)−N−ヒドロキシ−3−[1−(1−メチル−1H−イミダゾール−4−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−アクリルアミド
(E)−N−ヒドロキシ−3−[1−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−アクリルアミド
(E)−3−[1−(ベンゾ[b]チオフェン−2−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−N−ヒドロキシ−アクリルアミド
(E)−3−[1−(ベンゾチアゾール−6−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−N−ヒドロキシ−アクリルアミド
(E)−3−[1−(2,4−ジメチル−チアゾール−5−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−N−ヒドロキシ−アクリルアミド、及び
(E)−3−[1−(1,2−ジメチル−1H−イミダゾール−4−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]−N−ヒドロキシ−アクリルアミド
から選択される請求項1記載の化合物又はそれらの塩。
【請求項8】
疾病の治療において使用するための請求項1から7までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項9】
請求項1から7までのいずれか1項記載の1種以上の化合物と一緒に慣用の医薬品賦形剤及び/又は助剤を含有する医薬組成物。
【請求項10】
請求項1から7までのいずれか1項記載の化合物を、ヒストンデアセチラーゼ活性の阻害に反応性又は感受性の疾病の治療用の医薬組成物の製造のために用いる使用。
【請求項11】
請求項1から7までのいずれか1項記載の化合物を、良性新形成及び/又は悪性新形成、例えば癌の治療のための医薬組成物の製造のために用いる使用。
【請求項12】
患者において、良性又は悪性の挙動の過剰増殖性の疾病及び/又はアポトーシスの誘導に反応を示す疾患、例えば良性又は悪性の新形成、例えば癌を治療、予防又は改善するための方法において、前記患者に、請求項1から7までのいずれか1項記載の化合物の治療学的に有効かつ許容可能な量を投与することを含む方法。
【請求項13】
患者における良性新形成及び/又は悪性新形成、例えば癌を治療するための方法において、前記患者に、治療学的に有効かつ許容可能な量の請求項1から7までのいずれか1項記載の化合物を、場合により1種以上の更なる治療剤と同時に、連続的に又は別々に投与することを含む方法。
【請求項14】
請求項1から7までのいずれか1項記載の少なくとも1種の化合物である第一の有効成分と、化学療法的抗癌剤及び標的特異的抗癌剤からなる群から選択される少なくとも1種の抗癌剤である第二の有効成分とを有する組合せ物であって、療法、例えば良性新形成又は悪性新形成の療法、例えば癌の療法において、別々に、連続的に、同時に、併用して又は時間的にずらして使用するための組合せ物。
【請求項15】
患者において、過剰増殖性の疾病及び/又はアポトーシスの誘導に反応を示す疾患、例えば良性又は悪性の新形成、例えば癌を治療、予防又は改善するための方法において、それを必要とする前記患者に、請求項1から7までのいずれか1項記載の化合物である第一の有効化合物の量と、少なくとも1種の第二の有効化合物の量とを、別々に、同時に、併用して、連続的又は時間的にずらして投与することを含み、その際、前記第二の有効化合物が、化学療法的抗癌剤及び標的特異的抗癌剤からなる群から選択される抗癌剤であり、第一の有効化合物の量と第二の有効化合物の量が、治療効果をもたらす方法。
【請求項16】
請求項14又は15記載の組合せ物又は方法であって、前記化学療法的抗癌剤が、(i)シクロホスファミド、イフォスファミド、チオテパ、メルファラン及びクロロエチルニトロソウレアを含むアルキル化剤/カルバミル化剤;(ii)シスプラチン、オキサリプラチン及びカルボプラチンを含む白金誘導体;(iii)ビンカアルカロイド類を含む有糸分裂阻害剤/チューブリン阻害剤、例えばビンクリスチン、ビンブラスチン又はビノレルビン、タキサン類、例えばパクリタキセル、ドセタキセル及び類似体並びにその製剤及びコンジュゲート、及びエポチロン類、例えばエポチロンB、アザエポチロン又はZK−EPO;(iv)アントラサイクリン類を含むトポイソメラーゼインヒビター、例えばドキソルビシン、エピポドフィロトキシン類、例えばエトポシド及びカンプトテシン及びカンプトテシン類似体、例えばイリノテカン又はテポテカン;(v)5−フルオロウラシル、カペシタビン、アラビノシルシトシン/シタラビン及びゲムシタビンを含むピリミジンアンタゴニスト;(vi)6−メルカプトプリン、6−チオグアニン及びフルダラビンを含むプリンアンタゴニスト;及び(vii)メトトレキセート及びペメトレキセドを含む葉酸アンタゴニストから選択される組合せ物又は方法。
【請求項17】
請求項14、15又は16に記載の組合せ物又は方法であって、前記の標的特異的抗癌剤が、(i)イマチニブ、ZD−1839/ゲフィチニブ、BAY43−9006/ソラフェニブ、SU11248/スニチニブ及びOSI−774/エルロチニブを含むキナーゼインヒビター;(ii)PS−341/ボルテゾニブを含むプロテアソームインヒビター;(iii)SAHA、PXD101、MS275、MGCD0103、デプシペプチド/FK228、NVP−LBH589、NVP−LAQ−824、バルプロン酸(VPA)及び酪酸塩を含むヒストンデアセチラーゼインヒビター;(iv)17−アリルアミノゲルダナマイシン(17−AAG)を含むヒートショックタンパク質90インヒビター;(v)コンブレタスタチンA4リン酸又はAVE8062/AC7700を含む血管標的剤(VAT)及びVEGF抗体を含む抗脈管形成剤、例えばベバシズマブ及びKDRチロシンキナーゼインヒビター、例えばPTK787/ZK222584(バタラニブ);(vi)トラスツズマブ、リツキシマブ、アレムツツマブ、トシツマブ、セツキシマブ及びベバシツマブを含むモノクローナル抗体並びに突然変異体及びモノクローナル抗体のコンジュゲート、例えばゲムツツマブ オゾガマイシン又はイブリツモマブ チウキセタン及び抗体フラグメント;(vii)G−3139/オブリメルセンを含むオリゴヌクレオチド系治療薬;(viii)プロムン(登録商標)を含むToll様レセプター/TLR9アゴニスト、イミキモッド及びイサトリビン及びその類似体を含むTLR7アゴニスト又はレシキモッドを含むTLR7/8アゴニスト並びにTLR7/8アゴニストとしての免疫刺激性のRNA;(ix)プロテアーゼインヒビター;(x)抗エストロゲン類を含むホルモン療法剤、例えばタモキシフェン又はラロキシフェン、抗アンドロゲン類、例えばフルタミド又はカソデックス、LHRH類似体、例えばロイプロリド、ゴセレリン又はトリプトレリン及びアロマターゼインヒビター;ブレオマイシン、オールトランスレチノイン酸(ATRA)を含むレチノイド類;2−デオキシシチジン誘導体デシタビン及び5−アザシチジンを含むDNAメチルトランスフェラーゼインヒビター;アラノシン;インターロイキン−2を含むサイトカイン;インターフェロンα2及びインターフェロン−γを含むインターフェロン;及びTRAIL、DR4/5アゴニスト抗体、FasLアゴニスト及びTNF−Rアゴニストを含むデス受容体アゴニストから選択される組合せ物又は方法。
【請求項18】
請求項11から15までのいずれか1項に記載の使用、方法又は組合せ物であって、前記の癌が、胸部、膀胱、骨、脳、中枢神経系及び末梢神経系、結腸、内分泌腺、食道、子宮内膜、生殖細胞、頭部及び頚部、腎臓、肝臓、肺、喉頭及び下咽頭の癌、中皮腫、肉腫、卵巣、膵臓、前立腺、直腸、腎臓、小腸、軟部組織、精巣、胃、皮膚、尿管、膣及び肛門の癌;遺伝性癌、網膜芽腫及びウィルムス腫瘍;白血病、リンパ腫、非ホジキン病、慢性及び急性の骨髄性白血病、急性のリンパ芽球性白血病、ホジキン病、多発性骨髄腫及びT細胞リンパ腫;骨髄異形成症候群、形質細胞新形成、経産婦腫瘍性症状、未知の原発部位の癌並びにAIDS関連悪性疾患からなる群から選択される使用、方法又は組合せ物。
【請求項19】
請求項1から7までのいずれか1項記載の化合物を、悪性の新形成とは異なる疾病、例えば関節症及び骨病理学的疾病、移植片拒絶反応を含む自己免疫疾病、急性及び悪性の炎症性疾病、過剰増殖性疾病又は神経病理学的疾患の治療用の医薬組成物の製造のために用いる使用。

【公表番号】特表2008−534637(P2008−534637A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504694(P2008−504694)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【国際出願番号】PCT/EP2006/003171
【国際公開番号】WO2006/105979
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(507229021)ニコメッド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (90)
【氏名又は名称原語表記】Nycomed GmbH
【住所又は居所原語表記】Byk−Gulden−Str. 2, D−78467 Konstanz, Germany
【Fターム(参考)】