説明

ヒトパピローマウイルスを処置するためのポリアミド類

本発明は、ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染した細胞を処置するための、ポリアミド組成物および治療に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、米国仮特許出願第60/797426号(2006年5月4日出願)、およびPCT出願第PCT/US 07/06133号(2007年3月9日出願)(それぞれは、言及することによって、その全体が本明細書に組み込まれる)の利益を主張している。
【0002】
本発明の技術分野
本発明は、ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染した細胞を処置するための、ポリアミド組成物および治療に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明の背景
ヒトパピローマウイルスは、小さい二重鎖DNAウイルスであり、皮膚、口および生殖器の粘膜などの種々の重層上皮にコロニーを形成し、パピローマ(疣贅)またはコンジロームとして知られる自己寛解型(self-limiting)良性腫瘍の形成を誘発する。これらの良性腫瘍の大部分は、宿主の免疫防御の作用により、ひとりでに消失する。しかしながら、HPVには、発癌の可能性を有し、特定のタイプの癌に関連するものがある。Lorincz et al., Obstetrics & Gynecology, 79:328-337 (1992); Beaudenon et al., Nature, 321:246-249 (1986); および Holloway et al., Gynecol. Onc., 41:123-128 (1991) を参照のこと。
【0004】
HPVは、最も流行性の性行為感染ウイルスである。35種以上のHPV遺伝子型が性行為感染することが知られており、比較的少数の遺伝子型が、大部分の肛門生殖器感染の原因である。これらの最も一般的なHPVのタイプのうち、2種で発癌のリスクが高く(HPV16およびHPV18)、2種で大部分の生殖器の疣贅を引き起こす(HPV6およびHPV11)。
【0005】
米国では、毎年推定5,500万人がHPVに感染し、また推定2000万人の米国人が現在感染している (Cates and et al., Lancet, 354, Suppl. SIV62, 1999)。男性および女性の生殖年齢人口の約75%が性行為感染HPVに感染しているが、主な公衆衛生上のリスクは、女性に対して、子宮頸癌について存在する (Koutsky, Am. J. Med., 102(5A), 3-8, 1997)。従って、米国のみでも毎年数百万人が処置を必要とする。PAP塗抹検査が世界中で最も多い公衆衛生スクリーニングプログラムであり、該検査が本質的にHPV感染の検査であることに留意することが重要である。PAP塗抹検査ポジティブを管理するための現行の標準は、“経過観察”である。一般的に、子宮頸部異形成の進行期が観察されない限り処置しないことが推奨されている (CDC Sexually Transmitted Diseases Treatment Guidelines, 2002)。
【0006】
HPVポジティブの患者において、有効なHPV抗ウイルス剤が大いに必要である。現在、HPVまたは疣贅に特異的な処置は存在しない。Aldara(商標)(イミキモド)は、生殖器外部の疣贅を処置するのに用いられる非特異的免疫調節剤であり、これは、市販されているもので最も成功している処置である。有効で特異的なHPV処置は、イミキモドより有意に改善された、またそれと有効に競合し得る可能性を有する。
【0007】
ヒトの子宮頸癌の大多数(95%)が、HPV DNAを含有し、発現し、そして、2種のウイルス性腫瘍性タンパク質E6およびE7の発現が、細胞の癌化および癌化状態の維持に不可欠のようである。特に、4種のHPV(HPV−16、HPV−18、HPV−31およびHPV−45)は、米国において、子宮頸癌の原因の75〜93%に関係している。ことによると、全世界の女性における癌による死亡全体の20%が、HPVに関連した癌に由来すると推定されている。
【0008】
一般的に言えば、HPVは、そのDNA配列の独自性に基づいたタイプにグループ化される。
【0009】
HPV類は、さらに、癌に関係する臨床学的病変、および該病変の癌への進行についての相対的な傾向に基づいて、リスクが高いものと低いものの何れかに分類され得る。低リスクのタイプ、例えばHPVのHPV−1、HPV−2、HPV−3、HPV−4、HPV−5、HPV−7、HPV−8、およびHPV−9は、尋常性疣贅(common wart, verrucae plantaris), 足底疣贅(plantar warts, verrucae plantaris)、モザイク疣贅(mosaic wart)、扁平疣贅(flat wart, verrucae plane)、およびブッチャー疣贅(butcher wart)を引き起こす。さらに、HPVのHPV−6およびHPV−11は、生殖器外部、肛門および子宮頸の疣贅を引き起こす。リスクの高いタイプ、例えばHPV−16、HPV−18、HPV−31、HPV−33およびHPV45は、特に、上皮内の癌腫、腫瘍および癌において一般的である。特に、2種のHPV、すなわちHPV−16およびHPV−18のゲノムは、子宮頸の浸潤性癌腫の約70に関連することが分かっている。
【0010】
HPV感染における現行の処置は、非常に限定されている。対応は、通常、感染した組織の外科的除去、冷凍外科的除去、またはレーザー除去による、疣贅の物理的な破壊を含む。レーザー除去および手術などのこれらの現行の処置の幾つかは、高価であり、処置すべき領域を麻痺させるための麻酔の使用が必要である。冷凍外科的除去は、特別な装置の使用が必要である。さらに、大部分の患者が、処置中および処置後に中程度の疼痛を経験する。
【0011】
局所のクリーム剤および溶液剤、例えば5−フルオロウラシル、イミキモド、シドホビル、ホルムアルデヒド、グルタラール、シメチジン、トリクロロ酢酸、ブレオマイシン、ポドフィロックスおよびポドフィルムの製剤もまた使用されている (Reichman in Harrison's 7 Principles of Internal Medicine, 13th Ed. (Isselbacher et al., eds.); McGraw-Hill, Inc., NY (1993) pp. 801-803)。しかしながら、これらの処置後、通常、再発があり、これはウイルスが皮膚細胞中に潜伏しているという事実によるものである可能性が最も高い。従って、続いて反復した処置が必要であるが、これは健康な組織を損なうかもしれない。これらの処置は子宮頸感染の処置には利用できないか、または承認されていない。
【0012】
インターフェロンは、従来、HPVのための最も有効な処置であったが、その効果は限定されている (Chang et al. (2002) Journal of Virology 76: 8864-74, HPVゲノムに感染した細胞にはほんの数回適用後にインターフェロン処置に耐性となるものが見出されている)。Cowsert (1994) Intervirol. 37:226-230; Bornstein et al. (1993) Obstetrics Gynecol. Sur. 4504:252-260; Browder et al. (1992) Ann. Pharmacother. 26:42-45 もまた参照のこと。
【0013】
幾つかの本明細書に記載した疾患および状態を処置する治療に対する要請がある。
【発明の開示】
【0014】
本発明の概要
本発明は、ポリアミド類、ポリアミド組成物、およびHPV感染細胞を処置する方法を提供する。幾つかの態様において、該ポリアミド抗ウイルス剤は、喉頭乳頭腫、子宮頸部異形成、子宮頸癌および再発性呼吸器乳頭腫(RRP)の処置に非常に適切である。
【0015】
幾つかの態様において、本発明は、式:
Z−(X)−γ−(X)−Y−A
[式中、
m+3は、少なくとも11であり;
n=m−o;
oは、0、1または2であり;
Zは、Q−C(O)−であり;
Qは、H、非置換脂肪族、ハロ−脂肪族、所望により1または2個のアミン基で置換されているC1−4脂肪族、または、所望により脂肪族またはハロ−脂肪族で置換されているヘテロアリールであってもよく;
Xは、それぞれ、独立して、β−アラニン (式III)、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルピロール (式I)、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルイミダゾール (式II)、C1−6脂肪族アミノ酸、天然α−アミノ酸、式X1、式X2、式X3、式X4、式X5、式X6、式X7、または式X8 (表1参照)であってもよく;
γは、γ−アミノ酪酸 (式IV)、(R)−2,4−ジアミノ酪酸 (式VI)、(S)−2,4−ジアミノ酪酸、式γ1、式γ2、式γ3、式γ4、式IX:
【化1】

{式中、Rは、それぞれ、−C(O)−R1Aであってもよく;
1Aは、それぞれ、H、非置換脂肪族またはハロ−脂肪族であってもよい}
であってもよく;
Yは、それぞれ、β−アラニン (式III)、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルピロール (式I)、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルイミダゾール (式II)、式X7、C1−6脂肪族アミノ酸、または天然α−アミノ酸であってもよく;
Aは、式A1、式A2、式A3、式A4、式A5、式A6、式A7、式A8、式A9、式A10、式A11、または
【化2】

{式中、Rは、それぞれ独立して、C1−5脂肪族である。}であってもよい。]
の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0016】
一つの態様において、Z−(X)−γ−(X)−Y−A中の4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルイミダゾール (式II)ユニットの総数が0.10(m+n+2)未満である。
【0017】
別の態様において、Z−(X)−γ−(X)−Y−A中の全てのβ−アラニン (式III)ユニットが、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルピロール (式I)の少なくとも3個の連続ユニット、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルイミダゾール (式II)の少なくとも3個の連続ユニット、あるいは、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルピロール (式I)と4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルイミダゾール (式II)の何れかの組み合わせの少なくとも3個の連続ユニットに隣接している。
【0018】
別の態様において、該化合物は、式:
Z−(P)−(X)−γ−(P)−(β)−(X)−Y−A
[式中、m+3は、少なくとも9であり;
他の置換基は、上記の通りである。]
を有するか、またはその薬学的に許容される塩である。
【0019】
別の態様において、該化合物は、式:
Z−(P)−β−(X)−γ−(P)−β−(X)−Y−A
[式中、m+3は、少なくとも7または少なくとも8であり;
他の置換基は上記の通りである。]
を有するか、またはその薬学的に許容される塩である。
【0020】
上記の態様のうちの一つの態様において、Z−(X)−γ−(X)−Y−A中の4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルイミダゾール (式II)ユニットの総数は、0.10(m+n+2)未満である。
【0021】
別の態様において、Qは、H、所望により1から3個のハロで置換されている(C1−4)脂肪族、または、所望により置換されている単環式ヘテロアリールから選択される。Qはまた、所望により置換されているイミダゾール、N−メチルイミダゾール、CF−、H、所望により1または2個のアミン基で置換されているC1−4脂肪族であってもよい。Qは、単環式または二環式ヘテロアリール、所望により脂肪族またはハロ−脂肪族で置換されている。
【0022】
上記の態様のうちの別の態様において、Zは、式Z1〜17、
【化3】

であってもよく、幾つかの態様において、RはC1−3脂肪族である。
【0023】
別の態様において、Aは、式A1〜A11であってもよい。
【0024】
別の態様において、本発明は、式:
−(X)−γ−(X)−Y−
[式中、m+3は、少なくとも11であり;
他の置換基は上で定義した通りである。]
を含む化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0025】
別の態様において、本発明は、式:
−(P)−β−(X)−γ−(P)−β−(X)−Y−
[式中、m+3は、少なくとも7であり;
他の置換基は上で記載した通りである。]
を含む化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0026】
該態様を他の観点から見れば、γは(R)−2,4−ジアミノ酪酸 (式VI)であり、別の態様において、γはγ−アミノ酪酸 (式IV)である。
【0027】
該態様のうちの別の態様において、mは8と11の間の整数であり、nは6と10の間の整数である。
【0028】
該態様のうちのさらに別の態様において、Yはβ−アラニンである。
【0029】
また、該態様のうちの別の態様において、mは25以下である。
【0030】
別の態様において、本化合物は、
【化4】

【化5】

であってもよい。
【0031】
別の態様において、本発明は、治療有効量の上記の化合物および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0032】
該態様のうちの一つの態様において、本組成物は、さらに抗ウイルス剤を含む。該抗ウイルス剤は、インターフェロン類、イミキモド、シドホビル、ホルムアルデヒド、グルタラール、シメチジン、5−フルオロウラシル、トリクロロ酢酸、ブレオマイシン、ポドフィロックスまたはポドフィルムであってもよい。
【0033】
また、別の態様において、本発明は、HPV感染細胞を処置する方法であって、該細胞を上記の化合物と接触させることを含む方法を提供する。本発明の一つの態様において、本方法は、さらに、該細胞を抗ウイルス剤と接触させることを含む。該抗ウイルス剤は、インターフェロン類、イミキモド、シドホビル、ホルムアルデヒド、グルタラール、シメチジン、5−フルオロウラシル、トリクロロ酢酸、ブレオマイシン、ポドフィロックスまたはポドフィルムであってもよい。
【0034】
さらに別の態様において、本発明は、患者または対象において、HPV感染細胞を処置する方法であって、患者または対象に、本明細書で記載した化合物または医薬組成物を投与することを含む方法を提供する。本発明の一つの態様において、該方法は、さらに、該細胞を抗ウイルス剤と接触させることを含む。該抗ウイルス剤は、インターフェロン類、イミキモド、シドホビル、ホルムアルデヒド、グルタラール、シメチジン、5−フルオロウラシル、トリクロロ酢酸、ブレオマイシン、ポドフィロックスまたはポドフィルムであってもよい。別の態様において、HPVは、HPV11、HPV16、HPV18、HPV1、またはHPV6であってもよい。
【0035】
別の態様において、本発明は、HPV16感染細胞を処置する方法であって、患者に上記の化合物を投与することを含む方法を提供する。
【0036】
さらに別の態様において、本発明は、HPV16感染細胞を処置する方法であって、患者に、式:
Z−(X)−γ−(X)−Y−A
[式中、m+3は、少なくとも10であり;
他の置換基は、上で記載した通りである。]
の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法を提供する。
【0037】
別の態様において、本発明は、患者に、
【化6】

【化7】

から選択される化合物を投与することによって、HPV16感染細胞を処置する方法を提供する。
【0038】
該態様を他の観点から見れば、該方法は、さらに、抗ウイルス剤を投与するこを含む。該抗ウイルス剤は、インターフェロン類、イミキモド、シドホビル、ホルムアルデヒド、グルタラール、シメチジン、5−フルオロウラシル、トリクロロ酢酸、ブレオマイシン、ポドフィロックスまたはポドフィルムであってもよい。
【0039】
本発明のポリアミド類は、HPV関連疾患の処置において、HPVに対してシドホビルまたはインターフェロンの力価よりも優れたin vitro力価を示す。これらの疾患は、生殖器または皮膚の疣贅、口内組織または子宮頸上皮を含む生殖器組織のHPV感染、肛門の癌、HPVによって引き起こされる腫瘍病変または過剰増殖病変、結膜乳頭腫、尖圭コンジローマおよび再発性呼吸器乳頭腫(RRP)を含み得る。
【0040】
図面の簡単な説明
図1は、HPV16複製数に対するシドホビル(cidafovir)およびIFNγの効果を、2種のポリアミドと比較している。
【0041】
図2Aは、ポリアミドのIC50値を決定するためのQ−PCRの結果の代表的なグラフを示す。図2Bは、ポリアミドで処理した細胞中のHPV16 DNA複製数における投与量依存性減少、およびポリアミドの細胞生存率に対する効果を示す。
【0042】
図3は、HPV16エピソームに対するポリアミド類の投与量依存性の効果を示したグラフを示す。
【0043】
図4は、ポリアミドによるHPV DNAクリアランスのサザン・ブロットを示す。
【0044】
図5は、HPV16複製数に対する濃度変化させたポリアミド 1037の力価と、ジスタマイシンAおよびシドホビルの力価を比較し、またそれぞれの細胞生存率に対する対応する効果を比較する。
【0045】
図6は、例示的ポリアミドの化学構造を示す。
【0046】
図7は、HPV16エピソームへの、ケラチン生成細胞からポリアミドを離脱した効果を示す。
【0047】
図8は、異なるポリアミド結合モチーフの図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
本発明の詳細な説明
I. 定義
本明細書で用いるとき、特記しない限り、下記の定義を適用する。
【0049】
本発明の目的において、化学元素は、the Elements, CAS version, Handbook of Chemistry and Physics, 75th Edの周期表に従って識別される。さらに、有機化学の一般的原理は、“Organic Chemistry”, Thomas Sorrell, University Science Books, Sausalito: 1999、および“March's Advanced Organic Chemistry”, 5th Ed., Ed.: Smith, M.B. and March, J., John Wiley & Sons, New York: 2001 に記載されている。
【0050】
本明細書で用いるとき、用語“脂肪族”は、用語アルキル、アルケニル、アルキニルを包含し、それぞれは、下に示した通り所望により置換されている。
【0051】
本明細書で用いるとき、“アルキル”基は、1〜8個(例えば1〜6個または1〜4個)の炭素原子を含む飽和脂肪族炭化水素基を言う。アルキル基は、直鎖であっても分枝鎖であってもよい。アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘプチルまたは2−エチルヘキシルを含み、これらに限定されない。アルキル基は、1個以上の置換基、例えばハロ;シクロアリファチック(cycloaliphatic) [例えば、シクロアルキルまたはシクロアルケニル];ヘテロシクロアリファチック [例えば、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロシクロアルケニル];アリール;ヘテロアリール;アルコキシ;アロイル;ヘテロアロイル;アシル [例えば、(脂肪族)カルボニル、(シクロアリファチック)カルボニル、または(ヘテロシクロアリファチック)カルボニル];ニトロ;シアノ;アミド [例えば、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノ アルキルアミノカルボニル、シクロアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクロアルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、またはヘテロアリールアミノカルボニル];アミノ [例えば、脂肪族アミノ、シクロアリファチックアミノ、またはヘテロシクロアリファチックアミノ];スルホニル [例えば、脂肪族−S(O)−];スルフィニル;スルファニル;スルホキシ;ウレア;チオウレア;スルファモイル;スルファミド;オキソ;カルボキシ;カルバモイル;シクロアリファチックオキシ;ヘテロシクロアリファチックオキシ;アリールオキシ;ヘテロアリールオキシ;アラルキルオキシ;ヘテロアリールアルコキシ;アルコキシカルボニル;アルキルカルボニルオキシ;またはヒドロキシで置換され得る(すなわち、所望により置換され得る)。置換アルキルの幾つかの例は、カルボキシアルキル (例えばHOOC−アルキル、アルコキシカルボニルアルキル、およびアルキルカルボニルオキシアルキル);シアノアルキル;ヒドロキシアルキル;アルコキシアルキル;アシルアルキル;アラルキル;(アルコキシアリール)アルキル;(スルホニルアミノ)アルキル (例えばアルキル−S(O)−アミノアルキル);アミノアルキル;アミドアルキル;(シクロアリファチック)アルキル;またはハロアルキルを含み、これらに限定されない。
【0052】
本明細書で用いるとき、ハロ−脂肪族基は、1〜3個のハロ原子で置換された脂肪族基を言い、ここで脂肪族およびハロは、本明細書で定義されている。置換は、化学的に可能な炭素原子の全てで起こり得る。
【0053】
本明細書で用いるとき、“アルケニル”基は、2〜8個(例えば2〜6個または2〜4個)の炭素原子を含み、かつ少なくとも1個の二重結合を含む脂肪族炭素基を言う。アルキル基と同様に、アルケニル基は、直鎖であっても分子鎖であってもよい。アルケニル基の例は、アリル、イソプレニル、2−ブテニルおよび2−ヘキセニルを含み、これらに限定されない。アルケニル基は、所望により、1個以上の置換基、例えばハロ;シクロアリファチック [例えば、シクロアルキルまたはシクロアルケニル];ヘテロシクロアリファチック [例えば、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロシクロアルケニル];アリール;ヘテロアリール;アルコキシ;アロイル;ヘテロアロイル;アシル [例えば、(脂肪族)カルボニル、(シクロアリファチック)カルボニル、または(ヘテロシクロアリファチック)カルボニル];ニトロ;シアノ;アミド [例えば、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノ、アルキルアミノカルボニル、シクロアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクロアルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、またはヘテロアリールアミノカルボニル];アミノ [例えば、脂肪族アミノ、シクロアリファチックアミノ、ヘテロシクロアリファチックアミノ、または脂肪族スルホニルアミノ];スルホニル [例えば、アルキル−S(O)−、シクロアリファチック−S(O)−、またはアリール−S(O)−];スルフィニル;スルファニル;スルホキシ;ウレア;チオウレア;スルファモイル;スルファミド;オキソ;カルボキシ;カルバモイル;シクロアリファチックオキシ;ヘテロシクロアリファチックオキシ;アリールオキシ;ヘテロアリールオキシ;アラルキルオキシ;ヘテロアラルコキシ;アルコキシカルボニル;アルキルカルボニルオキシ;またはヒドロキシで置換され得る。置換されたアルケニルの幾つかの例は、シアノアルケニル、アルコキシアルケニル、アシルアルケニル、ヒドロキシアルケニル、アラルケニル、(アルコキシアリール)アルケニル、(スルホニルアミノ)アルケニル (例えば(アルキル−S(O)−アミノアルケニル)、アミノアルケニル、アミドアルケニル、(シクロアリファチック)アルケニル、またはハロアルケニルを含み、これらに限定されない。
【0054】
本明細書で用いるとき、“アルキニル”基は、2〜8個(例えば2〜6個または2〜4個)の炭素原子を含み、かつ少なくとも1個の三重結合を有する脂肪族炭素基を言う。アルキニル基は、直鎖であっても分枝鎖であってもよい。アルキニル基の例は、プロパルギルおよびブチニルを含み、これらに限定されない。アルキニル基は、所望により、1個以上の置換基、例えばアロイル;ヘテロアロイル;アルコキシ;シクロアルキルオキシ;ヘテロシクロアルキルオキシ;アリールオキシ;ヘテロアリールオキシ;アラルキルオキシ;ニトロ;カルボキシ;シアノ;ハロ;ヒドロキシ;スルホ;メルカプト;スルファニル [例えば、脂肪族−S−またはシクロアリファチック−S−];スルフィニル [例えば、脂肪族−S(O)−またはシクロアリファチック−S(O)−];スルホニル [例えば、脂肪族−S(O)−、脂肪族アミノ−S(O)−、またはシクロアリファチック−S(O)−];アミド [例えば、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクロアルキルアミノカルボニル、シクロアルキルカルボニルアミノ、アリールアミノカルボニル、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノまたはヘテロアリールアミノカルボニル];ウレア;チオウレア;スルファモイル;スルファミド;アルコキシカルボニル;アルキルカルボニルオキシ;シクロアリファチック;ヘテロシクロアリファチック;アリール;ヘテロアリール;アシル [例えば、(シクロアリファチック)カルボニルまたは(ヘテロシクロアリファチック)カルボニル];アミノ [例えば、脂肪族アミノ];スルホキシ;オキソ;カルバモイル;(シクロアリファチック)オキシ;(ヘテロシクロアリファチック)オキシ;または(ヘテロアリール)アルコキシで置換され得る。
【0055】
本明細書で用いるとき、“アミド”は、“アミノカルボニル”および“カルボニルアミノ”の双方を包含する。単独でまたは他の基と連結して用いたとき、これらの用語はアミド基、例えば末端で用いたときは−N(R)−C(O)−Rまたは−C(O)−N(R)を言い、そして、内部で用いたときは−C(O)−N(R)−または−N(R)−C(O)−を言う。ここで、RおよびRは下で定義されている。アミド基の例は、アルキルアミド (例えばアルキルカルボニルアミノまたはアルキルアミノカルボニル)、(ヘテロシクロアリファチック)アミド、(ヘテロアラルキル)アミド、(ヘテロアリール)アミド、(ヘテロシクロアルキル)アルキルアミド、アリールアミド、アラルキルアミド、(シクロアルキル)アルキルアミドまたはシクロアルキルアミドを含む。
【0056】
本明細書で用いるとき、“アミノ”基は、−NRを言い、ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアリファチック、(シクロアリファチック)脂肪族、アリール、アラリファチック(araliphatic)、ヘテロシクロアリファチック、(ヘテロシクロアリファチック)脂肪族、ヘテロアリール、カルボキシ、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、(脂肪族)カルボニル、(シクロアリファチック)カルボニル、((シクロアリファチック)脂肪族)カルボニル、アリールカルボニル、(アラリファチック)カルボニル、(ヘテロシクロアリファチック)カルボニル、((ヘテロシクロアリファチック)脂肪族)カルボニル、(ヘテロアリール)カルボニル、または(ヘテロアラリファチック)カルボニルであり、該基はそれぞれ本明細書で定義されており、所望により置換されている。アミノ基の例は、アルキルアミノ、ジアルキルアミノまたはアリールアミノを含む。用語“アミノ”が末端の基ではないとき(例えばアルキルカルボニルアミノ)、それは−NR−によって表される。Rは、上で定義した意味と同一の意味を有する。
【0057】
本明細書で用いるとき、単独で、あるいは、“アラルキル”、“アラルコキシ”または“アリールオキシアルキル”などのより大きい部分の一部として用いる“アリール”基は、単環式(例えばフェニル);二環式(例えばインデニル、ナフタレニル、テトラヒドロナフチル、テトラヒドロインデニル);および三環式(例えばフルオレニル、テトラヒドロフルオレニル、またはテトラヒドロアントラセニル、アントラセニル)の環系を言い、ここで、単環式環系は芳香族性であり、あるいは、二環式または三環式環系の少なくとも1個の環は芳香族性である。該二環式および三環式基は、ベンゾ縮合した二〜三環式炭素環式環を含む。例えば、ベンゾ縮合基は、2個以上のC4−8炭素環部分と縮合したフェニルを含む。アリールは、所望により、脂肪族 [例えば、アルキル、アルケニル、またはアルキニル];シクロアリファチック;(シクロアリファチック)脂肪族;ヘテロシクロアリファチック;(ヘテロシクロアリファチック)脂肪族;アリール;ヘテロアリール;アルコキシ;(シクロアリファチック)オキシ;(ヘテロシクロアリファチック)オキシ;アリールオキシ;ヘテロアリールオキシ;(アラリファチック)オキシ;(ヘテロアラリファチック)オキシ;アロイル;ヘテロアロイル;アミノ;オキソ (ベンゾ縮合二環式または三環式アリールの非芳香族性炭素環上で);ニトロ;カルボキシ;アミド;アシル [例えば、脂肪族カルボニル、(シクロアリファチック)カルボニル、((シクロアリファチック)脂肪族)カルボニル、(アラリファチック)カルボニル、(ヘテロシクロアリファチック)カルボニル、((ヘテロシクロアリファチック)脂肪族)カルボニル、または(ヘテロアラリファチック)カルボニル];スルホニル [例えば、脂肪族−S(O)−またはアミノ−S(O)−];スルフィニル [例えば、脂肪族−S(O)−またはシクロアリファチック−S(O)−];スルファニル [例えば、脂肪族−S−];シアノ;ハロ;ヒドロキシ;メルカプト;スルホキシ;ウレア;チオウレア;スルファモイル;スルファミド;またはカルバモイルを含む1個以上の置換基で置換されている。あるいは、アリールは非置換であってもよい。
【0058】
置換アリールの非限定的な例は、ハロアリール [例えば、モノ−、ジ−(例えばp,m−ジハロアリール)、および、(トリハロ)アリール];(カルボキシ)アリール [例えば、(アルコキシカルボニル)アリール、((アラルキル)カルボニルオキシ)アリール、および(アルコキシカルボニル)アリール];(アミド)アリール [例えば、(アミノカルボニル)アリール、(((アルキルアミノ)アルキル)アミノカルボニル)アリール、(アルキルカルボニル)アミノアリール、(アリールアミノカルボニル)アリール、および、(((ヘテロアリール)アミノ)カルボニル)アリール];アミノアリール [例えば、((アルキルスルホニル)アミノ)アリールまたは((ジアルキル)アミノ)アリール];(シアノアルキル)アリール;(アルコキシ)アリール;(スルファモイル)アリール [例えば、(アミノスルホニル)アリール];(アルキルスルホニル)アリール;(シアノ)アリール;(ヒドロキシアルキル)アリール;((アルコキシ)アルキル)アリール;(ヒドロキシ)アリール、((カルボキシ)アルキル)アリール;(((ジアルキル)アミノ)アルキル)アリール;(ニトロアルキル)アリール;(((アルキルスルホニル)アミノ)アルキル)アリール;((ヘテロシクロアリファチック)カルボニル)アリール;((アルキルスルホニル)アルキル)アリール;(シアノアルキル)アリール;(ヒドロキシアルキル)アリール;(アルキルカルボニル)アリール;アルキルアリール;(トリハロアルキル)アリール;p−アミノ−m−アルコキシカルボニルアリール;p−アミノ−m−シアノアリール;p−ハロ−m−アミノアリール;または(m−(ヘテロシクロアリファチック)−o−(アルキル))アリールを含む。
【0059】
本明細書で用いるとき、“アラリファチック”、例えば“アラルキル”基は、アリール基で置換されている脂肪族基(例えばC1−4アルキル基)を言う。“脂肪族”、“アルキル”および“アリール”は、本明細書で定義されている。アラリファチック、例えばアラルキル基の例は、ベンジルである。
【0060】
本明細書で用いるとき、“アラルキル”基は、アリール基で置換されているアルキル基(例えばC1−4アルキル基)を言う。“アルキル”および“アリール”は両方とも上で定義されている。アラルキル基の例はベンジルである。アラルキルは、所望により、1個以上の置換基、例えば脂肪族 [例えば、アルキル、アルケニル、またはアルキニル (カルボキシアルキル、ヒドロキシアルキル、またはハロアルキル、例えばトリフルオロメチルを含む)];シクロアリファチック [例えば、シクロアルキルまたはシクロアルケニル];(シクロアルキル)アルキル;ヘテロシクロアルキル;(ヘテロシクロアルキル)アルキル;アリール;ヘテロアリール;アルコキシ;シクロアルキルオキシ;ヘテロシクロアルキルオキシ;アリールオキシ;ヘテロアリールオキシ;アラルキルオキシ;ヘテロアラルキルオキシ;アロイル;ヘテロアロイル;ニトロ;カルボキシ;アルコキシカルボニル;アルキルカルボニルオキシ;アミド [例えば、アミノカルボニル、アルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルカルボニルアミノ、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、またはヘテロアラルキルカルボニルアミノ];シアノ;ハロ;ヒドロキシ;アシル;メルカプト;アルキルスルファニル;スルホキシ;ウレア;チオウレア;スルファモイル;スルファミド;オキソ;またはカルバモイルで置換されている。
【0061】
本明細書で用いるとき、“二環式環系”は、2個の環を形成した8〜12員(例えば、9員、10員または11員)の構造を含み、該2個の環は、少なくとも1個の共有原子(例えば2個の共有原子)を有する。二環式環系は、ビシクロアリファチック(例えばビシクロアルキルまたはビシクロアルケニル)、ビシクロヘテロアリファチック、二環式アリール、および二環式ヘテロアリールを含む。
【0062】
本明細書で用いるとき、“シクロアリファチック”基(脂環式基)は、“シクロアルキル”基および“シクロアルケニル”基を包含し、それぞれは、所望により下で示した通り置換されている。
【0063】
本明細書で用いるとき、“シクロアルキル”基は、3〜10個(例えば5〜10個)の炭素原子を有する飽和炭素環式単環または二環式環(縮合したまたは架橋した)を言う。シクロアルキル基の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル、ノルボルニル、キュビル、オクタヒドロ−インデニル、デカヒドロ−ナフチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[3.3.1]ノニル、ビシクロ[3.3.2.]デシル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンチル、アザシクロアルキル、または((アミノカルボニル)シクロアルキル)シクロアルキルを含む。“シクロアルケニル”基は、本明細書で用いるとき、3〜10個(例えば4〜8個)の炭素原子を有し、かつ1個以上の二重結合を有する非芳香族性炭素環式環を言う。シクロアルケニル基の例は、シクロペンテニル、1,4−シクロヘキサ−ジ−エニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル、ヘキサヒドロ−インデニル、オクタヒドロ−ナフチル、シクロヘキセニル、シクロペンテニル、ビシクロ[2.2.2]オクテニル、またはビシクロ[3.3.1]ノネニルを含む。シクロアルキル基またはシクロアルケニル基は、所望により、1個以上の置換基、例えば脂肪族 [例えば、アルキル、アルケニル、またはアルキニル];シクロアリファチック;(シクロアリファチック)脂肪族;ヘテロシクロアリファチック;(ヘテロシクロアリファチック)脂肪族;アリール;ヘテロアリール;アルコキシ;(シクロアリファチック)オキシ;(ヘテロシクロアリファチック)オキシ;アリールオキシ;ヘテロアリールオキシ;(アラリファチック)オキシ;(ヘテロアラリファチック)オキシ;アロイル;ヘテロアロイル;アミノ;アミド [例えば、(脂肪族)カルボニルアミノ、(シクロアリファチック)カルボニルアミノ、((シクロアリファチック)脂肪族)カルボニルアミノ、(アリール)カルボニルアミノ、(アラリファチック)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアリファチック)カルボニルアミノ、((ヘテロシクロアリファチック)脂肪族)カルボニルアミノ、(ヘテロアリール)カルボニルアミノ、または(ヘテロアラリファチック)カルボニルアミノ];ニトロ;カルボキシ [例えば、HOOC−、アルコキシカルボニル、またはアルキルカルボニルオキシ];アシル [例えば、(シクロアリファチック)カルボニル、((シクロアリファチック)脂肪族)カルボニル、(アラリファチック)カルボニル、(ヘテロシクロアリファチック)カルボニル、((ヘテロシクロアリファチック)脂肪族)カルボニル、または(ヘテロアラリファチック)カルボニル];シアノ;ハロ;ヒドロキシ;メルカプト;スルホニル [例えば、アルキル−S(O)−およびアリール−S(O)−];スルフィニル [例えば、アルキル−S(O)−];スルファニル [例えば、アルキル−S−];スルホキシ;ウレア;チオウレア;スルファモイル;スルファミド;オキソ;またはカルバモイルで置換され得る。
【0064】
本明細書で用いるとき、“環状部分”は、シクロアリファチック、ヘテロシクロアリファチック、アリールまたはヘテロアリールを含み、それぞれは、上で定義している。
【0065】
本明細書で用いるとき、用語“ヘテロシクロアリファチック”は、ヘテロシクロアルキル基およびヘテロシクロアルケニル基を包含し、それぞれは、下で示した通り所望により置換されている。
【0066】
本明細書で用いるとき、“ヘテロシクロアルキル”基は、3〜10員の単環式または二環式(縮合したまたは架橋した)(例えば、5員から10員の単環式または二環式)飽和環構造であって、1個以上の環原子がヘテロ原子(例えば、N、O、S、またはその組み合わせ)であるものを言う。ヘテロシクロアルキル基の例は、ピペリジル、ピペラジル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフリル、1,4−ジオキソラニル、1,4−ジチアニル、1,3−ジオキソラニル、オキサゾリジル、イソオキサゾリジル、モルホリニル、チオモルホリル、オクタヒドロベンゾフリル、オクタヒドロクロメニル、オクタヒドロチオクロメニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロピリンジニル、デカヒドロキノリニル、オクタヒドロベンゾ[b]チオフェニル、2−オキサ−ビシクロ[2.2.2]オクチル、1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクチル、3−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクチル、および、2,6−ジオキサ−トリシクロ[3.3.1.03,7]ノニルを含む。単環式ヘテロシクロアルキル基は、フェニル部分と縮合し、ヘテロアリール、例えばテトラヒドロイソキノリンを形成してもよい。“ヘテロシクロアルケニル”基は、本明細書で用いるとき、1個以上の二重結合を有し、かつ1個以上の環原子がヘテロ原子(例えば、N、O、またはS)である、単環式または二環式(例えば5員から10員の単環式または二環式)の非芳香環構造を言う。単環式および二環式ヘテロアリファチックは、標準的な化学命名法に従って番号付けされる。
【0067】
ヘテロシクロアルキルまたはヘテロシクロアルケニル基は、所望により、1個以上の置換基、例えば脂肪族 [例えば、アルキル、アルケニル、またはアルキニル];シクロアリファチック;(シクロアリファチック)脂肪族;ヘテロシクロアリファチック;(ヘテロシクロアリファチック)脂肪族;アリール;ヘテロアリール;アルコキシ;(シクロアリファチック)オキシ;(ヘテロシクロアリファチック)オキシ;アリールオキシ;ヘテロアリールオキシ;(アラリファチック)オキシ;(ヘテロアラリファチック)オキシ;アロイル;ヘテロアロイル;アミノ;アミド [例えば、(脂肪族)カルボニルアミノ、(シクロアリファチック)カルボニルアミノ、((シクロアリファチック)脂肪族)カルボニルアミノ、(アリール)カルボニルアミノ、(アラリファチック)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアリファチック)カルボニルアミノ、((ヘテロシクロアリファチック)脂肪族)カルボニルアミノ、(ヘテロアリール)カルボニルアミノ、または(ヘテロアラリファチック)カルボニルアミノ];ニトロ;カルボキシ [例えば、HOOC−、アルコキシカルボニル、またはアルキルカルボニルオキシ];アシル [例えば、(シクロアリファチック)カルボニル、((シクロアリファチック) 脂肪族)カルボニル、(アラリファチック)カルボニル、(ヘテロシクロアリファチック)カルボニル、((ヘテロシクロアリファチック)脂肪族)カルボニル、または(ヘテロアラリファチック)カルボニル];ニトロ;シアノ;ハロ;ヒドロキシ;メルカプト;スルホニル [例えば、アルキルスルホニルまたはアリールスルホニル];スルフィニル [例えば、アルキルスルフィニル];スルファニル [例えば、アルキルスルファニル];スルホキシ;ウレア;チオウレア;スルファモイル;スルファミド;オキソ;またはカルバモイルで置換され得る。
【0068】
“ヘテロアリール”基は、本明細書で用いるとき、4から15個の環原子を有し、かつ1個以上の環原子がヘテロ原子(例えば、N、O、S、またはその組み合わせ)であり、かつ単環式環系が芳香族性であって、二環式または三環式環系の少なくとも1個の環が芳香族性である、単環式、二環式、または三環式の環系を言う。ヘテロアリール基は、2から3個の環を有するベンゾ縮合環系を含む。例えば、ベンゾ縮合基は、ベンゾ縮合した1個または2個の4から8員のヘテロシクロアリファチック部分を含む(例えばインドリジル、インドリル、イソインドリル、3H−インドリル、インドリニル、ベンゾ[b]フリル、ベンゾ[b]チオフェニル、キノリニルまたはイソキノリニル)。ヘテロアリールの幾つかの例は、アゼチジニル、ピリジル、1H−インダゾリル、フリル、ピロリル、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、テトラゾリル、ベンゾフリル、イソキノリニル、ベンゾチアゾリル、キサンテン、チオキサンテン、フェノチアジン、ジヒドロインドール、ベンゾ[1,3]ジオキソール、ベンゾ[b]フリル、ベンゾ[b]チオフェニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、プリル、シンノリル(cinnolyl)、キノリル、キナゾリル、シンノリル、フタラジル、キナゾリル、キノキサリル、イソキノリル、4H−キノリジル、ベンゾ−1,2,5−チアジアゾリル、または1,8−ナフチリジルである。
【0069】
単環式ヘテロアリールは、フリル、チオフェニル、2H−ピロリル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、2H−ピラニル、4H−ピラニル、ピリジル、ピリダジル、ピリミジル、ピラゾリル、ピラジル、または1,3,5−トリアジルを含み、これらに限定されない。単環式ヘテロアリールは、標準的な化学命名法に従って番号付けされる。
【0070】
二環式ヘテロアリールは、インドリジル、インドリル、イソインドリル、3H−インドリル、インドリニル、ベンゾ[b]フリル、ベンゾ[b]チオフェニル、キノリニル、イソキノリニル、インドリジル、イソインドリル、インドリル、ベンゾ[b]フリル、ベンゾ[b]チオフェニル、インダゾリル、ベンゾイミダジル、ベンゾチアゾリル、プリニル、4H−キノリジル、キノリル、イソキノリル、シンノリル、フタラジル、キナゾリル、キノキサリル、1,8−ナフチリジル、またはプテリジルを含み、これらに限定されない。二環式ヘテロアリールは、標準的な化学命名法に従って番号付けされる。
【0071】
ヘテロアリールは、所望により、1個以上の置換基、例えば脂肪族 [例えば、アルキル、アルケニル、またはアルキニル];シクロアリファチック;(シクロアリファチック)脂肪族;ヘテロシクロアリファチック;(ヘテロシクロアリファチック)脂肪族;アリール;ヘテロアリール;アルコキシ;(シクロアリファチック)オキシ;(ヘテロシクロアリファチック)オキシ;アリールオキシ;ヘテロアリールオキシ;(アラリファチック)オキシ;(ヘテロアラリファチック)オキシ;アロイル;ヘテロアロイル;アミノ;オキソ (二環式または三環式ヘテロアリールの非芳香族性炭素環またはヘテロ環式環上で);カルボキシ;アミド;アシル [例えば、脂肪族カルボニル;(シクロアリファチック)カルボニル;((シクロアリファチック)脂肪族)カルボニル;(アラリファチック)カルボニル;(ヘテロシクロアリファチック)カルボニル;((ヘテロシクロアリファチック)脂肪族)カルボニル;または(ヘテロアラリファチック)カルボニル];スルホニル [例えば、脂肪族−S(O)−またはアミノ−S(O)−];スルフィニル [例えば、脂肪族−S(O)−];スルファニル [例えば、脂肪族−S−];ニトロ;シアノ;ハロ;ヒドロキシ;メルカプト;スルホキシ;ウレア;チオウレア;スルファモイル;スルファミド;またはカルバモイルで置換されている。あるいは、ヘテロアリールは非置換であってもよい。
【0072】
置換ヘテロアリールの非限定的な例は、(ハロ)ヘテロアリール [例えば、モノ−およびジ−(ハロ)ヘテロアリール];(カルボキシ)ヘテロアリール [例えば、(アルコキシカルボニル)ヘテロアリール];シアノヘテロアリール;アミノヘテロアリール [例えば、((アルキルスルホニル)アミノ)ヘテロアリールおよび((ジアルキル)アミノ)ヘテロアリール];(アミド)ヘテロアリール [例えば、アミノカルボニルヘテロアリール、((アルキルカルボニル)アミノ)ヘテロアリール、((((アルキル)アミノ)アルキル)アミノカルボニル)ヘテロアリール、(((ヘテロアリール)アミノ)カルボニル)ヘテロアリール、((ヘテロシクロアリファチック)カルボニル)ヘテロアリール、および((アルキルカルボニル)アミノ)ヘテロアリール];(シアノアルキル)ヘテロアリール;(アルコキシ)ヘテロアリール;(スルファモイル)ヘテロアリール [例えば、(アミノスルホニル)ヘテロアリール];(スルホニル)ヘテロアリール [例えば、(アルキルスルホニル)ヘテロアリール];(ヒドロキシアルキル)ヘテロアリール;(アルコキシアルキル)ヘテロアリール;(ヒドロキシ)ヘテロアリール;((カルボキシ)アルキル)ヘテロアリール;[((ジアルキル)アミノ)アルキル]ヘテロアリール;(ヘテロシクロアリファチック)ヘテロアリール;(シクロアリファチック)ヘテロアリール;(ニトロアルキル)ヘテロアリール;(((アルキルスルホニル)アミノ)アルキル)ヘテロアリール;((アルキルスルホニル)アルキル)ヘテロアリール;(シアノアルキル)ヘテロアリール;(アシル)ヘテロアリール [例えば、(アルキルカルボニル)ヘテロアリール];(アルキル)ヘテロアリール、および(ハロアルキル)ヘテロアリール [例えば、トリハロアルキルヘテロアリール]を含む。
【0073】
“ヘテロアラリファチック (例えばヘテロアラルキル基)は、本明細書で用いるとき、ヘテロアリール基で置換された脂肪族基(例えばC1−4アルキル基)を言う。“脂肪族”、“アルキル”および“ヘテロアリール”は上で定義されている。
【0074】
“ヘテロアラルキル”基は、本明細書で用いるとき、ヘテロアリール基で置換されたアルキル基(例えばC1−4アルキル基)を言う。“アルキル”および“ヘテロアリール”は両方とも上で定義されている。ヘテロアラルキルは、所望により、1個以上の置換基、例えばアルキル (例えば、カルボキシアルキル、ヒドロキシアルキル、および、ハロアルキル、例えばトリフルオロメチル);アルケニル;アルキニル;シクロアルキル;(シクロアルキル)アルキル;ヘテロシクロアルキル;(ヘテロシクロアルキル)アルキル;アリール;ヘテロアリール;アルコキシ;シクロアルキルオキシ;ヘテロシクロアルキルオキシ;アリールオキシ;ヘテロアリールオキシ;アラルキルオキシ;ヘテロアラルキルオキシ;アロイル;ヘテロアロイル;ニトロ;カルボキシ;アルコキシカルボニル;アルキルカルボニルオキシ;アミノカルボニル;アルキルカルボニルアミノ;シクロアルキルカルボニルアミノ;(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ;アリールカルボニルアミノ;アラルキルカルボニルアミノ;(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ;(ヘテロシクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ;ヘテロアリールカルボニルアミノ;ヘテロアラルキルカルボニルアミノ;シアノ;ハロ;ヒドロキシ;アシル;メルカプト;アルキルスルファニル;スルホキシ;ウレア;チオウレア;スルファモイル;スルファミド;オキソ;またはカルバモイルで置換されている。
【0075】
本明細書で用いるとき、“アシル”基は、ホルミル基またはR−C(O)− (例えば−アルキル−C(O)−, “アルキルカルボニル”とも記載)を言い、ここで、Rおよび“アルキル”は上で定義されている。アセチルおよびピバロイルは、アシル基の例である。
【0076】
本明細書で用いるとき、“アロイル”または“ヘテロアロイル”は、アリール−C(O)−またはヘテロアリール−C(O)−を言う。アロイルまたはヘテロアロイルのアリール部分およびヘテロアリール部分は、上で定義した通り、所望により置換されている。
【0077】
本明細書で用いるとき、“アルコキシ”基はアルキル−O−基を言い、ここで、“アルキル”は上で定義されている。
【0078】
本明細書で用いるとき、“カルバモイル”基は、構造:−O−CO−NR、または、−NR−CO−O−R (ここで、RおよびRは上で定義されており、Rは脂肪族、アリール、アラリファチック、ヘテロシクロアリファチック、ヘテロアリールまたはヘテロアラリファチックであってもよい。)を有する基を言う。
【0079】
本明細書で用いるとき、“カルボキシ”基は、末端基として用いたときは−COOH、−COOR、−OC(O)H、−OC(O)R;または内部の基として用いたときは−OC(O)−、または、−C(O)O−を言う。
【0080】
本明細書で用いるとき、“ハロ脂肪族”基は1〜3個のハロゲンで置換されている脂肪族基を言う。例えば、用語ハロアルキルは、基−CFを含む。
【0081】
本明細書で用いるとき、“メルカプト”基は、−SHを言う。
【0082】
本明細書で用いるとき、“スルホ”基は、末端で用いたときは−SOH、または、−SOを言い、あるいは、内部で用いたときは−S(O)−を言う。
【0083】
本明細書で用いるとき、“スルファミド”基は、末端で用いたときは構造:−NR−S(O)−NRを言い、そして、内部で用いたときは−NR−S(O)−NR−を言う。ここで、R、RおよびRは上で定義されている。
【0084】
本明細書で用いるとき、“スルファモイル”基は、末端で用いたときは構造:−S(O)−NR、または、−NR−S(O)−Rを言い;あるいは、内部で用いたときは−S(O)−NR−、または、−NR−S(O)−を言う。ここで、R、RおよびRは上で定義されている。
【0085】
本明細書で用いるとき、“スルファニル”基は、末端で用いたときは−S−Rを言い、内部で用いたときは−S−を言う。ここで、Rは上で定義されている。スルファニルの例は、脂肪族−S−、シクロアリファチック−S−、アリール−S−などを含む。
【0086】
本明細書で用いるとき、“スルフィニル”基は、末端で用いたときは−S(O)−Rを言い、内部で用いたときは−S(O)−を言う。ここで、Rは上で定義されている。スルフィニル基の例は、脂肪族−S(O)−、アリール−S(O)−、(シクロアリファチック(脂肪族))−S(O)−、シクロアルキル−S(O)−、ヘテロシクロアリファチック−S(O)−、ヘテロアリール−S(O)−などを含む。
【0087】
本明細書で用いるとき、“スルホニル”基は、末端で用いたときは−S(O)−Rを言い、内部で用いたときは−S(O)−を言う。ここで、Rは上で定義されている。スルホニル基の例は、脂肪族−S(O)−、アリール−S(O)−、(シクロアリファチック(脂肪族))−S(O)−、シクロアリファチック−S(O)−、ヘテロシクロアリファチック−S(O)−、ヘテロアリール−S(O)−、(シクロアリファチック(アミド(脂肪族)))−S(O)−などを含む。
【0088】
本明細書で用いるとき、“スルホキシ”基は、末端で用いたときは−O−SO−Rまたは−SO−O−R、内部で用いたときは−O−S(O)−または−S(O)−O−を言う。ここで、Rは上で定義されている。
【0089】
本明細書で用いるとき、“ハロゲン”または“ハロ”基は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を言う。
【0090】
本明細書で用いるとき、“アルコキシカルボニル”は、用語カルボキシに包含され、また、単独でまたは他の基と連結して用い、例えばアルキル−O−C(O)−基を言う。
【0091】
本明細書で用いるとき、“アルコキシアルキル”は、アルキル基、例えばアルキル−O−アルキル−を言う。ここで、アルキルは上で定義されている。
【0092】
本明細書で用いるとき、“カルボニル”は−C(O)−を言う。
【0093】
本明細書で用いるとき、“オキソ”は=Oを言う。
【0094】
本明細書で用いるとき、“アミノアルキル”は構造:(R)N−アルキル−を言う。
【0095】
本明細書で用いるとき、“シアノアルキル”は構造:(NC)−アルキル−を言う。
【0096】
本明細書で用いるとき、“ウレア”基は、構造:−NR−CO−NRを言い、“チオウレア”基は、末端で用いたときは構造:−NR−CS−NRを言い、内部で用いたときは−NR−CO−NR−または−NR−CS−NR−を言う。ここで、R、RおよびRは上で定義されている。
【0097】
本明細書で用いるとき、“グアニジン”基は、構造:−N=C(N(R))N(R)を言う。ここで、RおよびRは上で定義されている。
【0098】
本明細書で用いるとき、用語“アミジノ”基は、構造:−C=(NR)N(R)を言う。ここで、RおよびRは上で定義されている。
【0099】
一般的に、用語“ビシナル”は、置換基が隣接する炭素原子に結合している2個以上の炭素原子を含む基上の置換基の配置を言う。
【0100】
一般的に、用語“ジェミナル”は、置換基が同一の炭素原子に結合している2個以上の炭素原子を含む基上の置換基の配置を言う。
【0101】
用語“末端に”および“内部で”は、置換基内の基の位置を言う。基が置換基の最後に存在し、化学構造の残りにさらに結合していないとき、その基は末端である。カルボキシアルキル、すなわちRO(O)C−アルキルが、末端に用いたカルボキシ基の一例である。基が置換基の中央に存在し、化学構造の残りに結合した置換基の末端に結合しているとき、その基は内部である。アルキルカルボキシ (例えば、アルキル−C(O)O−またはアルキル−OC(O)−)、および、アルキルカルボキシアリール (例えば、アルキル−C(O)O−アリール−またはアルキル−O(CO)−アリール−)は、内部で用いたカルボキシ基の例である。
【0102】
本明細書で用いるとき、用語“アミジノ”基は構造:−C=(NR)N(R)を言う。ここで、RおよびRは上で定義されている。
【0103】
本明細書で用いるとき、“環状基”は、シクロアリファチック、ヘテロシクロアリファチック、アリールまたはヘテロアリールを含む単環式、二環式および三環式環系を含み、それぞれは、上で定義されている。
【0104】
本明細書で用いるとき、“架橋した二環式環系”は、環が架橋している二環式ヘテロシクロアリファチック環系、または二環式シクロアリファチック環系を言う。架橋した二環式環系の例は、アダマンタニル、ノルボルナニル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[3.3.1]ノニル、ビシクロ[3.2.3]ノニル、2−オキサ−ビシクロ[2.2.2]オクチル、1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクチル、3−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクチル、および2,6−ジオキサ−トリシクロ[3.3.1.03,7]ノニルを含み、これらに限定されない。架橋した二環式環系は、所望により、1個以上の置換基、例えばアルキル (カルボキシアルキル、ヒドロキシアルキル、およびハロアルキル(例えばトリフルオロメチル)を含む)、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクロアルキル、(ヘテロシクロアルキル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアラルキルオキシ、アロイル、ヘテロアロイル、ニトロ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アミノカルボニル、アルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルカルボニルアミノ、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、アシル、メルカプト、アルキルスルファニル、スルホキシ、ウレア、チオウレア、スルファモイル、スルファミド、オキソ、または、カルバモイルで置換され得る。
【0105】
本明細書で用いるとき、“脂肪族鎖”は、分枝鎖または直鎖の脂肪族基(例えば、アルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基)を言う。直鎖の脂肪族鎖は、構造:−[CH]−を有し、ここで、vは1〜6である。分枝した脂肪族鎖は、1個以上の脂肪族基で置換されている直鎖の脂肪族鎖である。分枝した脂肪族鎖は、構造:−[CHQ]−を有し、ここで、Qは水素または脂肪族基であるが、Qは少なくとも1個は脂肪族基であるべきである。用語脂肪族鎖は、アルキル鎖、アルケニル鎖、およびアルキニル鎖を含み、ここで、アルキル、アルケニルおよびアルキニルは上で定義されている。
【0106】
フレーズ“所望により置換されている”は、“置換されているか、または非置換である”と交換して用いられ得る。本明細書で記載されるとき、本発明の化合物は、所望により、1個以上の置換基、例えば上で一般的に例示された基、または本発明の特定のクラス、サブクラスおよび種によって例示された基で置換され得る。本明細書で用いるとき、本明細書に含まれる可変基は、特定の基、例えばアルキルおよびアリールを包含する。特記しない限り、特定の基は、それぞれ、所望により、本明細書に記載した1個以上の置換基で置換され得る。特定の基の置換基はそれぞれ、さらに、所望により、ハロ、シアノ、オキソアルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、アリール、ハロアルキルおよびアルキルのうちの1個から3個で置換されている。例えば、アルキル基は、アルキルスルファニルで置換され得る。そして、該アルキルスルファニルは、次いで、所望により、ハロ、シアノ、オキソアルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、アリール、ハロアルキルおよびアルキルのうちの1個から3個で置換され得る。さらなる例として、(シクロアルキル)カルボニルアミノのシクロアルキル部分は、所望により、ハロ、シアノ、アルコキシ、ヒドロキシ、ニトロ、ハロアルキルおよびアルキルのうちの1個から3個で置換され得る。2個のアルコキシ基が同一または隣接する原子に結合しているとき、該2個のアルコキシ基は、それらが結合している原子と一体となって環を形成し得る。
【0107】
一般的に、用語“置換されている”は、用語“所望により”が先行していてもいなくとも、示された構造中の水素基が特記された置換基で置き換えられていることを言う。特記された置換基は、「定義」において上で記載されているか、またその化合物および実施例の記載において、下で記載されている。特記しない限り、所望により置換されている基は、該基の置換基の位置でそれぞれ置換基を有し得る。示された構造の何れかにおいて、1個以上の位置が、特記された基から選択される1個以上の置換基で置換され得るときは、該置換基は、全ての位置で、同一であっても異なっていてもよい。環置換基、例えばヘテロシクロアルキルは、別の環、例えばシクロアルキルと結合してスピロ二環式環系、例えば、両方の環が1個の共通の原子を有する構造を形成してもよい。本発明によって構想される置換基の組み合わせは、安定な、または化学的に可能な化合物の形成をもたらす組み合わせであると当業者に認識されるであろう。
【0108】
フレーズ“安定なまたは化学的に可能な”は、本明細書で用いるとき、その製造、検出、好ましくは回収、精製および本明細書で開示された1個以上の目的のための使用を可能とする条件下に置いたとき、実質的に変化しない化合物を言う。幾つかの態様において、安定なまたは化学的に可能な化合物は、40℃未満の温度で、湿気または他の化学的に反応性の条件の非存在下で、少なくとも1週間維持したとき、実質的に変化しない化合物である。本発明の化合物は、プロトン化された(カチオン性)形態で機能してもよく、また中性の形態で膜を通過してもよい。
【0109】
本明細書で用いるとき、有効量は、処置した患者に治療効果を与えるのに必要な量として定義され、典型的には患者の年齢、表面積、体重および状態に基づいて決定される。動物およびヒトにおける投与量の相互関係(mg/m2体表面積に基づく)は、Freireich et al., Cancer Chemother. Rep., 50: 219 (1966)によって記載されている。体表面積は、患者の身長および体重からおおよそ決定され得る。例えば、Scientific Tables, Geigy Pharmaceuticals, Ardsley, New York, 537 (1970)を参照のこと。本明細書で用いるとき、“患者”はヒトを含む哺乳動物を言う。
【0110】
特記しない限り、本明細書で記載した構造はまた、該構造の全ての異性体の形態(例えばエナンチオマー、ジアステレオマーおよび幾何(または配座)異性体) ;例えば、それぞれの不斉中心についてのRおよびS配置、(Z)および(E)二重結合異性体、および(Z)および(E)配座異性体を含むことを意味する。従って、本発明の化合物の単一の立体化学的異性体、ならびにエナンチオマー、ジアステレオマー、および幾何(または配座)異性体の混合物は、本発明の範囲内である。特記しない限り、全ての互変異性体の形態の本発明の化合物は、本発明の範囲内である。さらに、特記しない限り、本明細書で記載した構造はまた、1種以上の同位体が多い原子の存在でのみ異なる化合物を含むことを意味する。例えば、水素が重水素またはトリチウムによって置き換えられている以外、本発明の構造を有する化合物、あるいは、炭素が13Cまたは14Cが多い炭素によって置き換えられている以外、本発明の構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。該化合物は、例えば、生物学的アッセイにおける分析ツールまたはプローブとして有用である。
【0111】
II. 化学的背景
特定の窒素ヘテロ環のオリゴマーは、二重鎖DNAの特定の領域に結合するために用いられ得る。特に、N−メチルイミダゾール (I)、デス−アミノ−N−メチルイミダゾール (Im)、およびN−メチルピロール (P)は、特定の塩基に特異的な親和性を有する。この特異性は、これらの化合物が結合している順番に基づいて修飾され得る。G/CはIm/PまたはI/Pと相補的であり、C/GはP/ImまたはP/Iと相補的であり、A/TおよびT/AはP/Pと重複して相補的である点で特異的であることが示されている。
【0112】
効果の点では、N−メチルイミダゾールおよびデス−アミノ−N−メチルイミダゾールが、グアニジンと結合する傾向があるが、N−メチルピロールはシトシン、アデニンおよびチミンと結合している。該ヘテロ環の2本の鎖を提供することによって、1分子または2分子として、二重鎖DNAとの2:1複合体を形成する;逆平行オリゴマーの2本の鎖を提供することによって、G/Cペアが近位にIm/PまたはI/Pを有し、C/GペアがP/ImまたはP/Iを有し、T/Aペアが近位にP/Pを有する。該ヘテロ環オリゴマーは、アミド(カルバミル)基によって結合しており、このときNHは、窒素、特にアデニンの窒素不対電子と水素結合し得る。
【0113】
ポリアミド類は、例えばγ−アミノ酪酸 (γ)またはγ−アミノ−β−アミノ酪酸 (γNH)などの化合物を組み込むことによってヘアピン化合物を形成するよう合成され、1本鎖ポリアミドがDNAと複合体を形成することが可能となり得る。該構造は、ポリアミドの DNA標的配列への結合親和性を著しく増大させることが見出されている。
【0114】
ATまたはTA塩基対が標的配列であるとき、β−アラニン (β)を、N−メチルピロール基のペアと置き換えてもよい。β−アラニンの付加的なフレキシビリティーは、ポリアミド全体をDNA標的配列と「一致させて」存在させるのを助けることができる。
【0115】
幾つかの態様において、ポリアミド分子は、グアノシンに特異的な親和性を有するデス−アミノ−N−メチルイミダゾールで開始する。別の態様において、ポリアミド分子は、3−(ジメチルアミノ)プロピルアミン (Da)、または3,3'−ジアミノ−N−メチルジプロピルアミン (Ta)の何れかで終了する。色素分子は、γ−アミノ−酪酸またはTaのアミノ基、あるいは、同じ分子中で両方が利用可能であるならばその両方に組み込まれ得る。
【0116】
より最近では、新規の芳香族性アミノ酸である3−ヒドロキシ−N−メチルピロール(Hp)を含むことで、ポリアミドに組み込まれて反対側のPyとペアを組むとき、それはA-TとT-Aを区別する方法を提供することが見出された。White S., et al., Nature 391, 436-38 (1998)を参照のこと。予期しないことに、Hp/Pペア中のピロール上の1個の水素原子をヒドロキシ基と置き換えることで、大きさによって、ポリアミドの親和性と特異性が制御される。ポリアミド中にHpをPおよびImまたはIと共に用いて6個の芳香族性アミノ酸ペア(I/P、Im/P、P/Im、P/I、Hp/PおよびP/Hp)を形成することにより、Hpを分解しない環境中で、DNAの副溝中の4個のWatson-Crick塩基対全てを区別するコードが提供される。
【0117】
天然由来のピロール含有ポリアミド類、例えばジスタマイシンおよびネトロプシンならびにそれらのピロール/イミダゾール含有合成アナログは、DNAの副溝と高い親和性を持って結合する。特異的なポリアミド−DNA結合の直接的な証拠は、Dervanのグループによって、X線結晶解析、NMR構造決定および定量的親和性切断法を用いて、広く報告されている (Baird and Dervan, 1998; Pilch et al., Biochemistry, 38, 2143-51, 1999; Pilch et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93, 8306-11 1996; Wang, Ellervik, and Dervan, Bioorg. Med. Chem., 9, 653-7, 2001; White, Baird, and Dervan, Biochemistry, 35, 12532-27, 1996; White, Baird, and Dervan, Chem. Biol., 4, 569-78, 1997, これらは全て言及することによって本明細書に組み込まれている)。水素結合スキームにより、合成ポリアミド類は特異的なDNA配列を認識するよう設計され得る。
【0118】
ポリアミド類によるDNA認識のルールは、以下の段落で要約される(White, Baird, and Dervan, Chem. Biol., 4, 569-78, 1997)。ピロール (典型的にはPyまたはPと略される)は、副溝中に水素結合アクセプターを有する3種のヌクレオチドまたはA、TおよびCに結合する (Kielkopf et al., Science, 282, 111-5, 1998; Kielkopf, et al., Nat. Struct. Biol., 5, 104-9, 1998; Melander, Herman, and Dervan, Chemistry, 6, 4487-97, 2000, これらは全て言及することによって本明細書に組み込まれている)。これらのヌクレオチドは、水素結合アクセプターのみを副溝に提供する:AおよびCはそれぞれ1組の孤立電子対を有するが、TはC2に結合したカルボニル酸素由来の2組の孤立電子対を有する。ヘアピン・ピロールアミノ酸のアミドNHが、水素結合ドナーである。そして、該ピロール環は、B型DNA中に位置するとき、アミドNHを正しい距離にする曲がったスペーサーとして作用し、A、CおよびTによって提供される水素結合アクセプターのパターンと一致するよう歪む。イミダゾール (下記の構造II)は典型的にIと略される。
【化8】

【0119】
さらなるポリアミド構成要素および結合ルールが見出され得る (Urbach et al.,J. Mol. Biol., 320, 55-71, 2002; Wang, Ellervik, and Dervan, Bioorg. Med. Chem., 9, 653-57, 2001, 両者は言及することによって本明細書に組み込まれる)。しかし、これらの試験は、β−アラニン (下記の構造III (β))がA、TおよびCに対して選択的な水素結合ドナーとして作用し得ることを示した。
【化9】

【0120】
さらなる認識については、ヘアピン・ターン(図5を参照のこと。)を形成するよう用いられたγ−アミノ酪酸 (下記の構造IV (γ)) 構成要素が、A/Tに結合するがG/C塩基対には結合しないことが見出された。同様に、大部分のポリアミド類に存在する正に荷電したアミノ尾部において、A/T塩基対がG/C塩基対より優先されることが示されている。これは、ジスタマイシン中のカチオン性グアニジン基を模倣している (Parks, Baird, and Dervan, 1996; Pilch et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93, 8306-11, 1996; Trauger et al., Chem. Biol., 3, 369-77, 1996; Urbach and Dervan, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98, 4343-48, 2001; Urbach et al., J. Mol. Biol., 320, 55-71, 2002; Wang, Ellervik, and Dervan, Bioorg. Med. Chem., 9, 653-57, 2001, それぞれは言及することによって本明細書に組み込まれる)。標準的なヘアピン・ポリアミド類は、5'-WWG-3' (ここで、W=AまたはT)で開始する配列に最も高い親和性を示す。
【化10】

【0121】
他の構成要素は、デスアミノ−イミダゾール (式V (Im))、((R)−2,4−ジアミノ酪酸 (式VI, γNH2))、3−(ジメチルアミノ)プロピルアミン (式VII, Dp)、および、3,3'−ジアミノ−N−メチルジプロピルアミン (式VIII, Ta)を含み、これらに限定されない。
【化11】

【0122】
ポリアミド−DNA結合は、タンパク質−DNA結合を妨げることが報告されており (Fechter and Dervan, J. Am. Chem. Soc., 125, 8476-85, 2003; Nguyen-Hackley et al., Biochemistry, 43, 6880-90, 2004; Schaal et al., Nucl. Acids Res., 31, 1282-91, 2003, これらは全て言及することによって本明細書に組み込まれる)、ポリアミド類は、たぶんDNA結合部位において転写因子と競合することにより、遺伝子発現を阻害することが報告されている (Dickinson et al., Biochemistry, 38, 10801-7, 1999; Supekova et al., Chem. Biol., 9, 821-7, 2002; Weisz, 1997, これらは全て言及することによって本明細書に組み込まれる)。真核生物の遺伝子発現が活性な転写複合体の形成に依存しており、当該複合体の構成要素は、可変であり、かつプロモーター/遺伝子依存性である。転写複合体の集合において、転写因子が、それに関連する一致した配列に結合していることが、最も重要である。多くの遺伝子が転写因子(TF)を共用するが、特異的なTF結合部位と、標的遺伝子に独自の隣接するDNAの組み合わせが、ヒトのゲノム内で比較的特異的な部位を提供し得る。従って、TF結合部位および幾つかの隣接するDNAを認識するようポリアミド類を設計することによって、たとえTFが多くの遺伝子の制御領域中に結合部位を有していても、それが、独自の遺伝子のプロモーター領域を標的とすることが可能となる。
【0123】
III. HPV標的
本発明は、HPV感染および他の疾患を処置するのに有用であるポリアミド類およびポリアミド・ポリマーのアナログを提供する。特定の理論に束縛されることなく、ポリアミド類の抗HPV活性は、全てのHPVサブタイプおよび他の二本鎖DNAウイルスに対してポリアミドを設計するための一般的なルールを予測し開発するための情報を提供する。該方法論は、ポリアミド構造が、エプスタイン・バーウイルス、ヘルペスウイルスおよびポックスウイルスを含む他の二重鎖DNAウイルスに対して広域な抗ウイルス活性を有することを予測するのに有用である。
【0124】
本発明のポリアミド類の抗HPVウイルス作用の時間経過試験により、特定の活性な分子が、薬物処置後30分ほどで、ヒトのケラチン生成細胞中のHPV DNA濃度を>90%まで減少させることが見出された。
【0125】
HPV DNAは、それ自身をヒトの染色体に固定する。これの種々の理由は、ウイルス複製のためにヒトのDNA複製要素と非常に近接する必要があること、エピソームの核の維持が必要なこと、および細胞分割の間で娘細胞にウイルスのエピソームを適切に分離する必要があることを含む。さらに、該プロセスはほとんど理解されていないが、ウイルスのゲノムは、外部または非自己DNAを認識し排除する生来の免疫系を回避する必要がある。
【0126】
理論に束縛されることなく、本発明のポリアミド類は、環状DNAゲノムを宿主の染色体から外した結果エピソームを迅速に喪失させて分解させ得るか、あるいは、ポリアミド類のウイルス性DNAまたは核DNAへの結合により宿主DNA配列からウイルス性DNA配列を特異的に除去し得る。ウイルス性DNAの喪失のための1つの可能性のあるメカニズムは、エピソームを細胞染色体から外すことにより、始めにHPV DNAを宿主の核から外し、次にHPV DNAをヌクレアーゼ酵素によって迅速に酵素分解することを含み得る。さらなる結論は、HPV DNAを宿主染色体に固定する主な理由がウイルス性DNAをこの分解経路から保護することである。あるいは、ポリアミド類は、核中のエピソームDNAの物理的性質を変化させ、その結果、宿主の防御機構によって外部DNAを認識し排除し得る。これらの予測は、DNA副溝に結合する他の薬物に拡張することができ、また、エプスタイン・バーウイルスを含む同様のまたは関連するエピソーム維持戦略を用いる他の二重鎖DNAウイルスに拡張することができる。
【0127】
HPVの場合において、DNA塩基AおよびTの長い配列を介して染色体に固定されることが知られている。これらのAT配列は、天然物ジスタマイシンで見られるようにピロールによってAT塩基対が認識されるために、ピロール含有ポリアミド類の標的であり、DNA結合に用いられるポリアミド構造の部分的前駆体と考えられ得る。ジスタマイシンはATリッチDNAに結合するが、それは十分に小さい分子であり、非常に長いAT配列はジスタマイシンを引き寄せるのに必要ではない:5塩基長のみのAT領域で、ジスタマイシンによる認識に十分である。
【0128】
いわゆる“脆弱DNA”におけるDNAのATリッチ領域は、ジスタマイシンの明らかな標的であり、ジスタマイシン処置に応答して細胞から除去される。さらに、例えば繊毛虫および他の微生物で見出されるDNA再配列およびプロセッシングのモデルシステムにおいて、ゲノム再配列の際に排除するために標的となるのがATリッチ領域であり、細胞が、DNAのプロセッシングおよび排除のための進化的保存メカニズムを保持し得ることが示唆され、また関連するATリッチ領域は、天然由来または合成ポリアミド類のピロールによる結合の標的であり得ることが示唆される。
【0129】
本明細書で記載した本発明から、いわゆる選択性インデックス(SI:IC50とTD50の比)、および選択性指数の最適範囲を決定するための通常の試験を考慮することによって、DNAウイルス、例えばHPVサブタイプに対して有用な薬物を開発し得る。ジスタマイシンそれ自体は、抗ウイルス剤としての大部分のまたは全ての適用に、毒性が強すぎるが、ATリッチDNA領域を標的とする我々の設計したおよび目的に合わせた長鎖ポリアミド類は、非常に毒性が低く、かつ細胞培養物において非常に高いSIを有する。例えば、シドホビルは、2.5のSIを示すが、NV1028は750より大きいSIを示す。幾つかの態様において、SIは500以上である。別の態様において、200以上であり、他ではSIは100より大きい。幾つかの場合において、TD50を達成するのに必要な濃度が化合物の溶解度限界を超え得る。これらの場合では、正確なSIの計算ができない。
【0130】
幾つかの態様において、HPVタイプ、特にHPV1、6、11、16および18の抗HPV活性を示すポリアミド配列は、宿主染色体からHPV DNAを置き換えるまたは排除する能力を示し、その結果、HPV類に対する広い適用可能性を示す。これらは、HPV11(一部は、呼吸器乳頭腫として知られる しばしば重篤となる疾患、ならびに生殖器の疣贅の原因である)、HPV1および6(それぞれ尋常性疣贅、ならびに生殖器外部、肛門および子宮頸の疣贅を引き起こす)、および、HPV16および18(子宮頸癌の原因である)を含む。
【0131】
HPV16、HPV18、HPV11、HPV6bおよびHPV1ゲノムDNA配列は、それぞれ、genbank受付番号 NC_001526、NC_001357、M14119、NC_001355およびNC_001356で見出され得る。
【0132】
IV. ポリアミド類
A. 一般構造
本発明の化合物は、N−メチルピロール−N−メチルイミダゾール・ヘアピン・ポリアミド誘導体として知られる化合物のファミリー中の活性な構造を含む (Zhang, W., T. Bando, and H. Sugiyama (2006) J. Am. Chem. Soc. 128:8766-76, 言及することによって本明細書に組み込まれている)。活性な構造は、下記の式:
Z−(X)−γ−(X)−Y−A
によって示される限定および定義で記載される。
【0133】
Z、X、γq、YおよびAにおいて用いられた幾つかの構成要素の構造は、用語の解説として示した上記の式I〜VIII中で示される。また、下記の表1を参照のこと。ヘテロ環 Im-、-Py-および-Im-のN−メチル基は、N−エチルおよびN−トリフルオロメチル基などによって置き換えられてもよい。式中の用語を以下に定義する。
【0134】
Zは、N−末端キャッピング基であり、トリフルオロアセトアミド、アセトアミド、ホルムアミド (Lacy,et al. (2002) J. Am. Chem. Soc. 124:2153-63, 言及することによって本明細書に組み込まれる)、プロピオンアミド、いわゆるデス−アミノ−イミダゾール (Im-と表す, 式V))などであり得る。Zはまた、式:Q−C(O)− (ここで、QはH、非置換脂肪族、ハロ−脂肪族、所望により1または2個のアミン基で置換されているC1−4脂肪族、および、所望により脂肪族またはハロ−脂肪族で置換されているヘテロアリールから選択される。)によって表され得る。該ヘテロアリールは、6,5または5,6−環系を有する縮合二環式ヘテロアリールであり得る。
【0135】
Xは、主に、N−メチルピロールの4−アミノ−2−カルボン酸誘導体 (-P-(式I)、β−アラニン (β)、N−メチルイミダゾールの4−アミノ−2−カルボン酸誘導体 (-I-(式II))、および、β−アラニン以外のC1−6脂肪族アミノ酸を含むこれらの基の代替物を含む、ポリアミド構成要素を含む。一つの態様において、該アミノ酸は、アミノ基および酸の基についてα−、ω−置換パターンを有する。これらの基についての他の代替物は、天然のα−アミノ酸(例えばグリシン)、および他のヘテロ環のアミノ酸誘導体(Nguyen, et al. (2001) Bioorg. Med. Chem. 9:7-17; Zhan and Dervan (2000) Bioorg. Med. Chem. 8:2467-2474, 両者は言及することによって本明細書に組み込まれる)、または縮合ヘテロ環 (Briehn, et al. (2003) Chemistry--A European Journal 9:2110-2122; Marques, et al. (2004) J. Am. Chem. Soc. 126:10339-10349; Phillion and Bashkin (2004), PCT国際公開第WO 04/099131号; Renneberg and Dervan (2003) J. Am. Chem. Soc. 125:5707-5716, Tsai, et al. (2007) Nucl. Acids. Res. 35:307-16; Buchmueller, et al., Nucl. Acids. Res. (2005) 33:912-21; Buchmueller, et al. (2005) J. Am. Chem. Soc. 127:742-750; Nickols, et al. (2007) Nucl. Acids Res. 33:363-70; Zhang, et al., J. Am. Chem. Soc. (2006) 128:8766-76; Floreancig, et al., J. Am. Chem. Soc. (2000) 122:6342-50; これらは全て言及することによって本明細書に組み込まれる)を含み、これらは1個または2個のピロールおよび/またはイミダゾール基を模倣するよう設計されている。従って、Xは、β−アラニン (式III)、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルピロール (式I)、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルイミダゾール (式II)、C1−6脂肪族アミノ酸、天然α−アミノ酸、式X1、式X2、式X3、式X4、式X5、式X6、式X7、および、式X8 (表1)を含む。
【0136】
γは、γ (式IV)と表すγ−アミノ酪酸構成要素、(R)−2,4−ジアミノ酪酸として知られるγ−アミノ酪酸のキラルアナログ (γ-NH2と表す, 式VI)またはその(S)−異性体、および、トリフルオロ酢酸、酢酸、蟻酸、プロピオン酸などから誘導したγ-NH2のアミド誘導体であり得る。従って、γは、γ−アミノ酪酸 (式IV)、(R)−2,4−ジアミノ酪酸 (式VI)、(S)−2,4−ジアミノ酪酸、式γ1、式γ2、式γ3、式γ4 (表1)、および式IX:
【化12】

{式中、Rは、それぞれ、−C(O)−R1Aから独立して選択され;
1Aはそれぞれ、H、非置換脂肪族、非置換C−C脂肪族アシル、ハロ−脂肪族、天然のカチオン性または天然の極性アミノ酸誘導アミノアシル、およびC−C20ポリエチレングリコールから独立して選択される。}
から選択される。
【0137】
Yは、-P-(式I)、-I-(式II)、β−アラニン (式III)、他のC1−6脂肪族アミノ酸などを含み、ここで、アミノおよび酸は、α−、ω−置換パターン、および、天然のアミノ酸(グリシンを含む)を組み込み得る。Yはまた、式X7 (表1)、C1−6脂肪族アミノ酸、および天然α−アミノ酸を含む。
【0138】
Aはカチオン性である極性基を含み、3−ジメチルアミノ−プロピルアミン (Dp, 式VII)、ビス(アミノプロピルアミン)(Ta, 式VIII)、ならびに、関連する直鎖および環状の脂肪族アミン類、オリゴアミン類およびポリアミン類によって例示されるファミリーから得られる。Aはまた、アミジン類、グアニジン類、第2級アンモニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、および、DNA結合ポリアミド類および関連の天然生成物ジスタマイシンA、ネトロプシン中などで見出される他のカチオン性C末端基から選択され得る。
【0139】
従って、Aは、式A1、式A2、式A3、式A4、式A5、式A6、式A7、式A8、式A9、式A10、式A11 (表1)、および
【化13】

{式中、Rは、それぞれ、独立してC1−5脂肪族である。}
を含み得る。
【0140】
式:Z−(X)-(X)−Y−Aは、下記の条件を有する活性な分子を記載する。
式中、m+3は10または11である。
式中、n=mまたはm−1またはm−2である。
式中、イミダゾール誘導構成要素またはそのアナログは、構成要素2+n+mの総数の約0〜10%としてのみ組み込まれる;数“2”は、構成要素として存在するZおよびγが占める。従って、2+n+m=22を有する活性な分子において、約0から2個のイミダゾール基が典型的に存在する(ここで、Z基として使用されている可能性を含む。)。mは、25ほど大きくてもよく、その結果、構成要素の総数が、50、40、30、20、15または10であってもよい。
【0141】
式中、β−アラニンは、隣接するヘテロ環構成要素の最も長い基が約4であるよう存在し、β−アラニンは、-P-P-P-P-βおよびI-P-P-βによって例示される、2個、3個または4個の隣接するPおよび/またはI構成要素の後ろに存在する。一つの態様において、β−アラニンは、3個または4個の隣接するヘテロ環毎にその後ろに存在する。
【0142】
式中、特定の縮合ヘテロ環または他のヘテロ環を控えめに用いて、DNA結合ポリアミド類について上で記載した-P-、Im-または-I- 構成要素ZおよびX (主として-P-、Im-および-I-基を含む)を置き換え得る (Briehn, et al. (2003) Chemistry--A European Journal 9:2110-2122; .Buchmueller, et al. (2006) Abstracts of Papers, 231st ACS National Meeting, Atlanta, GA, United States, March 26-30, 2006:ORGN-678; Dervan, et al. PCT国際公開第WO 04/078943号; Nguyen, et al. (2001) Bioorg. Med. Chem. 9:7-17; Phillion and Bashkin PCT国際公開第WO 04/099131号; Renneberg and Dervan (2003) J. Am. Chem. Soc. 125:5707-5716; Turlington, et al. (2006) Heterocyclic Communications 12:89-92; Uthe, et al. (2005) Heterocyclic Communications 11:163-166; Zhan and Dervan (2000) Bioorg. Med. Chem. 8:2467-2474 (これらは全て言及することによって本明細書に組み込まれる))。このような場合において、脂肪族アミノ酸(α−、ω−アミノ酸、β−アラニンまたはγなどを含む)は、構成要素-P-、-Im-またはI-の隣接した2〜4個(または3または4個)の置換えの後に存在する。
【0143】
従って、一つの態様において、Z−(X)−γ−(X)−Y−A中の4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルイミダゾール (式II)ユニットの総数は、0.10(m+n+2)未満である。
【0144】
別の態様において、Z−(X)−γ−(X)−Y−A中の全てのβ−アラニン (式III)ユニットが、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルピロール (式I)の少なくとも3個の連続ユニット、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルイミダゾール (式II)の少なくとも3個の連続ユニット、あるいは、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルピロール (式I)および4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルイミダゾール (式II)の何れかの組み合わせの少なくとも3個の連続ユニットに隣接している。
【0145】
別の態様において、該化合物は、式:
Z−(P)−(X)−γ−(P)−(β)−(X)−Y−A,
[式中、m+3は、少なくとも9であり;
他の置換基は上で記載した通りである。]
を有するか、またはその薬学的に許容される塩である。
【0146】
表1 ポリアミド構成要素
【表1】

【0147】
【表2】

【0148】
【表3】

【0149】
構成成分Z、X、YおよびAは、ヘテロ芳香族性縮合二環式構造(すなわち、その一方の環がヘテロ芳香族性であり、他方が芳香族性またはヘテロ芳香族性である構造)を含み得る。これらは、PCT国際公開第WO 04/099131号および第WO 05/033282号(両者は言及することによって本明細書に組み込まれる)に記載されている。この構造は、二重鎖DNAの副溝中のグアニジンに結合するための水素結合アクセプターとして作用し得る。そして、該構造は、ヘテロ原子が水素結合ドナーとなるとき互変異性体を形成し得ない。二環式化合物は、連結部分、例えばアミドまたはアミド含有連結部分を含み得る。従って、一つの態様において、該化合物は、1個以上の連結部分で結合してdsDNAのヌクレオチドと相補的にペアを形成する、少なくとも約2、4、6、8、10以上の環状部分(例えば、本明細書で記載したヘテロ芳香族性部分および縮合二環式構造を含むヘテロ環)のシリーズを含み得る。
【0150】
一つの態様において、縮合二環式構造は、他の縮合二環式構造またはヘテロ環部分(例えば、ピロールまたはイミダゾール環)に直接結合している。従って、ポリアミド中のそれぞれの縮合二環式構造の付加は、水素結合ドナー(例えばアミド・リンカーまたはアミド含有部分)の排除を可能とする。従って、ポリアミド類は、DNAの副溝における相互作用を変化させるまたは増加させることが可能である。縮合二環式構造の具体例は、以下の構造である:
【化14】

ここで、X、XおよびXは、独立して、さらに下で記載されており、ただし、Xは水素結合アクセプターであるヘテロ原子であり、縮合二環式構造のそれぞれの環は、不飽和であり、5員または6員の環員を有し、また両方の環が5員の環員を有する場合を除く。上記構造の点線は、該環が、不飽和、芳香族性またはヘテロ芳香族性であることを示す。
【0151】
該化合物中で水素結合アクセプターとして提供される縮合二環式構造は、一つの態様において、以下の通り特徴付けられ得る:
【化15】

ここで、XおよびXは、O、S、N、NNR、CR、CR=CR”、N=NおよびCRから独立して選択され;
ただし、(i) XおよびXのそれぞれ一方が、CRまたはNから独立して選択されるとき、および(ii) XおよびXのそれぞれ一方がCR=CR、CR=N、N=CRまたはN=Nから独立して選択されるとき、他方は、CRまたはNから独立して選択され;
がN、O、S、CR、NR、CR=CR'、CR=N、N=CRおよびN=Nから独立して選択され、
が、O、S、NおよびCHから独立して選択され、
ただし、(i) XがそれぞれCRまたはNから独立して選択されるとき、XがOまたはSから独立して選択され、(ii) Xが、それぞれ、O、S、NR、CR=CR、CR=N、N=CRまたはN=Nから独立して選択されるとき、XがCHまたはNから独立して選択され;それぞれのR置換基(すなわち、R、R、R”、R、R')は、一般的に、H、または、化合物とdsDNAとの結合を妨げないか、あるいは、結合を強化するよう作用する幾つかの他の置換基を表し、ただし、該構造は、グアニジンが結合するためのヘテロ原子が水素結合ドナーとなる互変異性体を形成しない (例えば、XまたはXがNRであるとき、RはH以外であり、XがNRであるとき、RはH以外である)。
【0152】
上記構造中の点線は、環が、不飽和(芳香族性、または、ヘテロ原子含有環の場合において、ヘテロ芳香族性)であることを示す。許容される置換基(例えばR)は、例えば、H、ヒドロキシ、N−アセチル、ベンジル、置換または非置換C1−6アルキル、置換または非置換C1−6アルキルアミン、置換または非置換C1−6アルキルジアミン、置換または非置換C1−6アルキルカルボキシレート、置換または非置換C2−6アルケニル、置換または非置換C2−6アルキニルなどから独立して選択される基を含み、炭素に結合しているとき、所望によりハロである。
【0153】
縮合二環式構造の第1の環がヘテロ芳香族性であり、該構造が開始末端(すなわち“キャップ”)位置を占める例または態様において、例えばXがNR(例えばN−CH)であるとき、XはC−Hであってもよい。従って、縮合二環式構造がキャップとして提供されるとき、XおよびXの間に存在する炭素は、典型的に、該化合物の残りと第2の環の結合点である。このような例において、該構造は、例えば、以下の通り表され得る:
【化16】

ここで、示されたSP混成炭素から伸びた結合は、該構造と、該化合物の残りとを連結する。
【0154】
一つの態様において、縮合二環式構造の第1の環は、以下の通りである:
【化17】

ここで、X=SまたはN−CH
【0155】
別の態様において、縮合二環式構造の第1の環は、以下の通りである:
【化18】

ここで、X=SまたはN−CH
【0156】
別の態様において、該化合物は、式:
Z−(P)−β−(X)−γ−(P)−β−(X)−Y−A
[式中、m+3は少なくとも7であり、
他の置換基は上で記載した通りである。]
を有するか、またはその薬学的に許容される塩である。
【0157】
別の態様において、本発明は、式:
−(X)−γ−(X)−Y−
[式中、m+3は少なくとも11であり、
他の置換基は上で定義した通りである。]
を含む化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0158】
別の態様において、本発明は、式:
−(P)−β−(X)−γ−(P)−β−(X)−Y−
[式中、m+3は、少なくとも7であり、
他の置換基は上で記載した通りである。]
を含む化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0159】
該態様を他の観点から見れば、γは(R)−2,4−ジアミノ酪酸 (式VI)であり、別の態様において、γはγ−アミノ酪酸 (式IV)である。
【0160】
該態様のうちの別の態様において、mは8と11の間の整数であり、別の態様において、nは6と10の間の整数である。
【0161】
該態様のうちのさらに別の態様において、Yはβ−アラニンである。
【0162】
また、該態様の別の態様において、mは25以下である。
【0163】
本発明のポリアミド類は、以下の化合物を含む:
【化19】

【化20】

[式中、Imは、N−メチル−イミダゾール (式V)であり、
Pは、メチルピロール (式I)であり、
Dpは、ジメチルアミノプロピルアミド (式VII)であり、
βは、β−アラニン (式III)であり、
Iは、N−メチルピロールのアミノ−2−カルボキシル誘導体 (式II)であり、
Taは、ビス(アミノプロピルアミン) (式VIII)である。]
【0164】
本発明の代表的なポリアミドの化学構造を図6に示す。
【0165】
本発明はまた、細胞取り込みおよび核局在化を改善し得るので、C末端位置にβ−アラニンがないアナログ、および、アセチル化ジアミノγターンを有するアナログを含む (Best, et al, (2003) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 100:12063-68; Crowley, et al. (2003) PCT国際公開第WO 03/041128号; Crowley, et al. (2003) Bioorg. Med. Chem. Lett. 13:1565-70; Edelson, et al. (2004) Nucl. Acids Res. 32:2802-18; これらは全て言及することによって本明細書に組み込まれる)。
【0166】
別の態様において、本ポリアミド類は、下記の1以上によって修飾され得る:(1) 本ポリアミドとカチオン性ジアミン尾部Dpを連結するβ−アラニンを除く;(2) トリアミン(Ta)カチオン性尾部を用いて活性なスペルミジン取り込み経路にアクセスする;および(3) ポリアミド類の等電点(pI)を低下させ、酸性小胞中での集積を減少させる。幾つかの態様において、本ポリアミド類は、修飾1、2および3の全てで変更される。
【0167】
さらに別の態様において、本ポリアミド類は、C末端に、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)、BIODIPY、または細胞局在化を測定するのに用いられ得る他の化合物を含む。幾つかの態様において、FITCをC末端に含むポリアミド類が、細胞によって、より容易に取り込まれる。
【0168】
また、別の態様において、ヘアピン構造の形成に加えて、図8に示した通り、本ポリアミド類は二量体を形成することができ、その幾つかが連結している。従って、Dervan に記載されたこれらの代替ポリアミドモチーフを用いて、活性なヘアピンのアナログを作成し得る。例えば、Dervan and Edelson (2003) Curr. Opin. Struct. Biol. 13:284-99 (言及することによって本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0169】
さらに別の態様において、本ポリアミド類は、HPV18、HPV16、HPV11、HPV6、またはHPV1を標的とする。
【0170】
さらなる態様において、本ポリアミド類は、エプスタイン・バーウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルスおよび他の二重鎖DNAウイルスを含むDNAウイルスを標的とする。これらのウイルス内の可能性のある標的は、固定、維持または複製に必要な配列を含み得る。
【0171】
B. 一般的な合成スキーム
本明細書で記載したポリアミド類は市販されているか、または既知の方法によって既知の出発物質から製造され得る。例えばWO 05/033282, Belitsky et al., (2002) Bioorg. Med. Chem., 10, 2767-74; Zhang, et al. (2006) J. Am. Chem. Soc. 128:8766-76; Turner, et al. (2001) Organic Letters, 3:1201-03 (これらは全て言及することによって本明細書に組み込まれている)を参照のこと。
【0172】
ポリアミド類は、手動固相合成および自動固相合成を用いて製造され得る。それぞれのカップリングは、HPLCおよびHPLC/質量分析(またはMWが1500を越えるときはMALDI質量分析)で行われる。
【0173】
溶液相ポリアミド合成において、2種の主要なアミド結合形成経路が用いられ得る:(1) ハロ型反応;および(2) アミンを酸と、DCC、EDCまたはHATUなどのカップリング剤の存在下(必要なとき)で反応させること。我々のヘテロ環構成要素において、該ハロ型反応は、関連のトリクロロケトンが塩化トリクロロアセチルおよび該ヘテロ環から直接製造され得ることから、Xiao et al., (2000) Chin. J. Chem, 18:603-07 および Xiao et al., (2000) J. Org. Chem., 65:5506-13 (両者は言及することによって本明細書に組み込まれている)に記載された方法であり得る(スキームI)。
スキームI:ハロ型反応−出発物質の製造およびダイマー形成における使用
【化21】

【0174】
スキームIの段階は、HおよびPd/Cでのニトロ基の還元によって行われる。得られた遊離アミノ基は、保護されてもよいし、あるいは、すぐにさらなる構成要素とカップリングされてもよい。ポリアミド全体を合成するための溶液法の使用をスキームIIに説明する。共通の構成要素はポリアミドで識別され、十分な溶液相合成を可能とする:P-Pダイマーは、大規模で合成され精製され、次いでスキームIIの通りにそのまま直接用いられるか、さらに加工され、標的配列の主要なセクションを形成し、次いで最終生成物を形成する。
【0175】
スキームII
【化22】

【0176】
スキームIIは、トリマー由来の活性なポリアミドとモノマー構成要素の溶液相の集合に基づくスケールアップ戦略を示す。共通のP-Pユニットを加工し、分子全体を形成する。さらなるピロールを示す。さらにβ−アラニンを示し、分子中で2度N−β−アラニン-Py-Py-Pyフラグメントが見られる(角括弧によって示す)。3つの最終の独特のフラグメントも見られる。例えば、Xiao, et al., J. Org. Chem (2000) 65:5506-13 (言及することによって本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0177】
ピロール−イミダゾール ポリアミドを製造する別の方法は、米国特許公報第US 2004/0171799号(これは言及することによって本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0178】
合成のさらに別の方法は、Boc−β−アラニン−WANG固相合成樹脂または同様の市販の樹脂から開始し、標的配列に必要な構成要素を付加することによって、ポリアミド・オリゴマーを製造することである(実施例8を参照のこと)。
【0179】
ポリアミド化合物の構造は、それぞれのユニットを付加した後、および最終合成段階の後、MALDI質量スペクトルで特性決定される。測定は、Peptides International (Louisville KY)で行った。ポリアミド類は、分取HPLCによって98%以上の純度まで精製され得る(2度目の分取HPLCが必要な場合がある)。分析HPLCおよび質量スペクトル(MALDI)が最終生成物の存在および失敗した配列がないことを示した後、最終生成物のHPLCフラクションを合わせた。
【0180】
V. 医薬組成物
A. 製剤
本発明の別の態様において、薬学的に許容される組成物は、これらの組成物が本明細書で記載した化合物の何れかを含み、また所望により薬学的に許容される担体、アジュバント、またはビークルを含んで提供される。特定の態様において、これらの組成物は、所望によりさらに1種以上のさらなる治療薬を含む。
【0181】
ポリアミド類は、トリフルオロ酢酸(TFA)塩の形態、ならびに塩酸塩、コハク酸塩、アスコルビン酸塩などの形態であり得る。これらはまた、例えばPEG-400、プロピレン グリコールなどの賦形剤と共に製剤化され得る。
【0182】
安定性を増加させるように、ポリアミド薬物は、抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、BHTおよびBHAを含む水溶液中で、より安定な製剤を開発するために水溶液中に調製される (Mayers CL, et al (1993) Pharma Res, 10: 445-448、および Stuhar M, (1984) Farmaceuticky Obzor, 53; 499-504 (共に言及することによって本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。
【0183】
膣および子宮頸に送達するために、ポリアミド類は、溶液、エマルジョン、懸濁液、錠剤、ゲル、泡状物質、坐剤、フィルム、スポンジ、および膣リングで製剤化される。製剤は、ゲル(例えばヒドロキシエチルセルロースおよびポリアクリル酸、例えばCarbopols)、および、標的部位へのアプリケーターによって投与され得るポリビニルアルコールフィルムを含む。あるいは、より粘性の低い液体製剤(例えばPEG溶液)は、子宮頸の周囲にポリウレタンスポンジで送達され得る (Okada, (1991) in “Peptide and Protein Drug Delivery” V.H. Lee, ed., pp. 663-666, Marcel Dekker, NY; Garg, et al. (2001) Pharm. Tech. 25:14-24 (共に言及することによって本明細書に組み込まれる))。ポリアミド類の電荷によって、ポリアミド類は、Carbopolsを用いることによって制御送達ビークルで製剤化され得る。もしポリアミド類が+1または+2の電荷を有するならば、製剤のイオン強度を調節することによって、ポリアミドが該Carbopolに電気的に安定に結合し、それによって、放出速度が制御される。化学的および物理的に安定なPA類を生じる全ての半固体投与形において、半固体投与形からの薬物拡散について、米国薬局方に記載された膜装置で放出速度を評価する (Dipiano, et al., PCT国際公開第WO 04/064913号(言及することによって本明細書に組み込まれる)。carbopolをベースとするゲルで製剤化されたポリアミド類は、著しい降伏応力を示し、また、潜在的な生体接着性を有する (Kieweg, et al. (2004) J. Pharm Sci. 93, 2941-52 (言及することによって本明細書に組み込まれる))。
【0184】
表2に、市販の膣用製剤に用いられる一定の範囲の賦形剤を、評価するために選択した
(Garg et al., 2001)。幾つかの一般的に用いられる賦形剤、例えばPEG(ポリエチレングリコール)、PVA(ポリビニルアルコール)およびTween界面活性剤もまた加えられ得る。抗酸化剤に加えて、さらに、相容剤(compatabilizer)または安定剤も用いられ得る。固体形態は、その物理的状態により、より長い貯蔵寿命を有する、より安定な製剤となり得る。ポリマー(例えばcarbopol)を用いた生体接着剤から製造され得るエマルジョンは有用であり得る。HPMC(ヒドロプロピルメチルセルロース)、PVA (ポリビニルアルコール)および脂質複合体もまた、溶解性の低い薬物で用いられ得る。脂質系は、不溶性ポリアミドを送達するための粘弾性ゲル中に懸濁され得る。
【0185】
表2. ポリアミド類をラフト培養物およびウサギの子宮頸へ経皮送達するための第1製法
【表4】

【0186】
より保持される送達またはより有効な送達のために、薬物を長時間に亘って子宮頸部位で送達し得る利用可能な子宮頸バリアデバイス、例えばペッサリーを用い得る。さらにより連続的な送達のために、膣リングまたは徐放性の埋め込み可能なポリマーフィルムを用いてもよい。さらに、臨床試験における幾つかの新規の膣用送達系、例えば、薬物を子宮頸および膣壁の両方に送達し得る膣用スポンジ法およびSILCSペッサリー、1サイズシリコンデバイス(Cohen, (2004) The Microbiocide Quarterly, 2:15-19 (言及することによって本明細書に組み込まれる))を用いてもよい。延長された時間に亘る薬物の改善された連続送達のために、膣リングは、リングの構成要素からの薬物のゆっくりとした放出に利用可能である (Cohen, 2004; Hussain and Ahsan, (2005), J. Controlled Release 103:301-13 (言及することによって本明細書に組み込まれる))。また、制御された膣の薬物送達のために開発された多くの他のアプリケーターおよび製剤がある (Robinson (1999) Proc. Of the 26th Intl. Symp. Controlled Release of Bioactive Materials, 26:2-3 (言及することによって本明細書に組み込まれる; Hussain and Ahsan, 2005)。
【0187】
経皮送達用製剤は、生殖器の疣贅へのタンパク質医薬の送達のための脂質をベースとする製剤(Foldvari et al., (1999), Biotech. Appl. Biochem. 30:129-37; Leigh (2003) Drugs and the Pharm. Sci., 126:791-800; Lee et al., (2004) Biomaterials, 26:205-10 (これらは全て言及することによって本明細書に組み込まれる))、生体接着製剤(Bogataj and Mrhar (1998) Bioadhesive mucosal drug delivery systems, 49:445-57; Amaral et al. (1999) Contraception, 60:361-66; Barry, (1987) in “Drug Delivery systems”, Johnson and Lloyd-Jones, eds, Ch. 11, Ellis Horwood, Chichester; Vermani, et al. (2002) Drug Dev. Indust. Pharm. 28:1133-46 (これらは全て言及することによって本明細書に組み込まれる))、および新規のポリマー系を含む。新規のポリマーは、部分的に吸収可能な生体分解性抗ウイルス性膣内リング (Shalaby, (2005) 米国特許出願公開第2005/053639号(言及することによって本明細書に組み込まれる))、子宮頸に直接適用される2層生体接着性ポリマーフィルム (Sidhu et al., (1997) Br. J. Obstetrics and Gynaecology, 104:145-49 (言及することによって本明細書に組み込まれる)、新規の子宮頸の粘膜でゆっくりと放出されるポリマーディスク、および生体接着性が非常に上昇し、かつ薬物の保持性が非常に上昇する可能性があるという利点を有する熱ゲル化系 (Saltzman and Radomsky (1990) Polymer Preprints, 31:245-46; Edelman and Mark (1998) Nature Biotech, 16:136-37 (両者は言及することによって本明細書に組み込まれる))を含む。ポリアミド類はまた、細胞膜浸透ペプチドを用いて製剤化されてもよい (Gupta, et al. (2005) Adv. Drug Del Rev. 57:637-51; Wadia and Dowdy (2005) Adv. Drug Del. Rev., 57:579-96 (両者は言及することによって本明細書に組み込まれる))。
【0188】
ポリアミド類はまた、腎クリアランスまでの時間を長くするよう設計された薬学的に許容されるポリマーと共に製剤化され得る。
【0189】
ポリアミド類はまた、肺のエアゾール処置で送達されるよう製剤化され得る。
【0190】
本発明の特定の化合物は、処置のために遊離形で存在してもよく、また、適切な場合は、その薬学的に許容される誘導体またはプロドラッグとして存在してもよいことが認められるであろう。本発明に従って、薬学的に許容される誘導体またはプロドラッグは、薬学的に許容される塩、エステル、該エステルの塩、あるいは、必要な患者への投与後に本明細書で記載した化合物またはその代謝物もしくは残留物を直接または間接的に提供し得る他の何れかの付加物または誘導体を含み、これらに限定されない。
【0191】
本明細書で用いるとき、“薬学的に許容される塩”という用語は、通常の医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激性、アレルギー反応などを示さない、ヒトおよび下等動物の組織と接触して使用するのに適当な、かつ妥当な利益/リスク比を有する塩を言う。“薬学的に許容される塩”は、患者への投与後に、本発明の化合物または阻害活性な代謝物もしくは残留物を直接または間接的に提供し得る、何れかの非毒性の塩またはエステルの塩を意味する。
【0192】
薬学的に許容される塩は当技術分野で周知である。例えば、S. M. Berge, et al.は、薬学的に許容される塩を、J. Pharmaceutical Sciences, 1977, 66, 1-19 (言及することによって本明細書に組み込まれる)に、詳細に記載している。本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、適当な無機および有機の酸および塩基から誘導されるものを含む。薬学的に許容される非毒性の酸付加塩の例は、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸と形成されるアミノ基の塩であるか、または、有機酸、例えば酢酸(トリフルオロ酢酸を含む)、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸またはマロン酸と形成されるアミノ基の塩であるか、または、例えばイオン交換などの当技術分野で用いられる他の方法を用いることによって形成される塩である。他の薬学的に許容される塩は、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、カンファー酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、蟻酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩(pectinate)、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などを含む。適当な塩基から誘導される塩は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩およびN(C1−4アルキル)塩を含む。本発明はまた、本明細書で開示された本化合物の何れかの塩基性窒素含有基の四級化を意図する。水溶性または油溶性、または水または油に分散可能な製剤は、このような四級化によって得られ得る。代表的なアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩は、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの塩を含む。さらに薬学的に許容される塩は、適切なときには、非毒性のアンモニウムカチオン、四級化アンモニウムカチオン、およびアミンカチオンと、カウンターイオン、例えばハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、カルボン酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、低級アルキルスルホン酸イオン、およびアリールスルホン酸イオンを用いて形成される塩を含む。
【0193】
上記の通り、本発明の薬学的に許容される組成物は、さらに、薬学的に許容される担体、アジュバントまたはビークルを含み、本明細書で用いるとき、それらは、望ましい特定の投与形に適当な何れかのおよび全ての溶媒、希釈剤または他の液体ビークル、分散物または懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、濃化剤、または乳化剤、保存料、固体結合剤、滑沢剤などを含む。Remington's Pharmaceutical Sciences, Sixteenth Edition, E. W. Martin (Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1980)は、薬学的に許容される組成物の製剤に用いられる種々の担体およびその既知の製造方法を開示している。慣用の担体は、例えば望ましくない何れかの生物学的効果を生じるか、または薬学的に許容される組成物の他の何れかの成分と心身に有害な方法で相互作用することによって、本発明の化合物と相容性でない場合を除いて、その使用は、本発明の範囲内であることが意図されている。薬学的に許容される担体として提供され得る幾つかの物質の例は、イオン交換剤、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝剤、例えばリン酸塩、グリシン、ソルビン酸、またはソルビン酸カリウム、植物性飽和脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、蝋、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、羊毛脂、糖、例えば乳糖、ブドウ糖、およびショ糖;澱粉、例えばトウモロコシ澱粉およびじゃがいも澱粉;セルロースおよびその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロース ナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロース;粉末状トラガカントゴム;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えばカカオバターおよび坐剤用蝋;油脂、例えば落花生油、綿実油、紅花油、ごま油、オリーブ油、トウモロコシ油、および大豆油;グリコール、例えばプロピレングリコールまたはポリエチレングリコール;エステル類、例えばオレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;パイロジェンを含まない水;等張性食塩水;リンゲル溶液;エチルアルコール、およびリン酸緩衝溶液、ならびに他の非毒性相容性滑沢剤、例えばラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム、ならびに着色料、放出剤、被覆剤、甘味料、風味剤および香料、保存料および抗酸化剤を含み、これらに限定されない。これらは、製剤する者の判断に従って組成物中に存在し得る。
【0194】
本発明に従って、本化合物または薬学的に許容される組成物の“有効量”は、HPV感染を処置するまたはその重症度を軽減するのに有効な量である。
【0195】
B. 投与
本発明の方法に従って、医薬組成物は、慢性HPV疾患を処置するまたはその重症度を軽減するのに有効な、何れかの量および何れかの経路の投与を用いて投与され得る。
【0196】
正確な必要量は、対象の種、年齢、性別、体重、食事、医学的状態および全身の状態、感染の重症度、特定の薬物、その投与方法などに依存して、対象ごとに異なる。投与計画に影響を与える他の因子は、用いられる化合物の薬理学的考察、例えば活性、有効性、薬物動態、および毒性プロファイルを含み、また薬物送達系が用いられるかどうか、および本化合物が他の成分と共に投与されるかどうかを含む。投与量は、慣例的に、当技術分野に既知の標準的な方法を用いて決定され得る。実際に用いられる投与計画は、従って、処置される対象に基づいて広く変化し得る。また、その結果下記の投与計画の例から逸脱してもよい。本発明の化合物は、好ましくは、投与が容易で、かつ投与量が一定となる単位投与形で製剤される。“単位投与形”という表現は、本明細書で用いられるとき、処置される患者に適切な薬物の物理的に別個の単位を言う。しかしながら、本化合物の1日使用量の総量は、適切な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されると理解されるであろう。何れかの特定の患者または生物において特定の有効投与量は、処置される疾患および疾患の重症度;用いられる特定の化合物の活性;用いられる特定の組成物;患者の年齢、体重、一般的な健康、性別および食事;用いられる特定の化合物の投与時間、投与形路および排出速度;処置の持続時間;用いられる特定の化合物と組み合わせて、またはそれと同時に用いられる薬物などの医学業界で既知の因子を含む種々の因子に依存する。“患者”という用語は、本明細書で用いられるとき、動物、例えば哺乳類またはヒトを意味する。
【0197】
本化合物の投与は、1日1回投与、1日多回の間隔を空けた投与、1日置きに1回投与、数日毎に1回投与を必要とする投与計画で、または他の適切な投与計画で行われ得る。
【0198】
例えば、製剤化されたポリアミド類は、1日1回、最終濃度5mg/mL(約2.5mM)で、約4mlのビークル中で、膣用アプリケーターを用いて、例えば後膣円蓋に投与され得る。もし睡眠前の夜に投与されるならば、移動しないために、膣管の最も高い部分に、すなわち子宮頸近くに、最も多くの薬物が保持されると予想される。一つの態様において、ポリアミド製剤は、10日間投与される。
【0199】
本発明の薬学的に許容される組成物は、ヒトおよび他の動物に、経口で、直腸に、非経腸で、大槽内に、膣内に、腹腔内に、局所に(粉末、軟膏または滴剤によって)、頬側に、口用または鼻用スプレーなどとして、処置される感染の重症度に依存して、投与され得る。特定の態様において、本発明の化合物は、経口または非経腸で、1日当たり約0.01mg/kg体重から約50mg/kg体重、好ましくは約1mg/kg体重から約25mg/kg体重、1日1回以上投与して、望ましい治療効果が得られる。
【0200】
経口投与のための液体投与形は、薬学的に許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルを含み、これらに限定されない。活性な化合物に加えて、液体投与形は、当技術分野で一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油脂(特に綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびごま油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール類およびソルビタンの脂肪酸エステルおよびその混合物を含み得る。不活性な希釈剤の他にも、経口の組成物はまた、アジュバント、例えば湿化剤、乳化剤および懸濁剤、甘味料、風味剤および香料を含み得る。
【0201】
注射可能な製剤は、例えば滅菌された注射可能な水性または油性懸濁液は、既知の方法に従って、適当な分散剤または湿化剤および懸濁剤を用いて製剤化され得る。滅菌された注射可能な製剤はまた、非毒性の非経腸で許容される希釈剤または溶媒中で、例えば1,3−ブタンジオールの溶液として、滅菌された注射可能な溶液、懸濁液またはエマルジョンであってもよい。用いられ得る許容されるビークルおよび溶媒は、水、リンゲル溶液(米国薬局方)、および等張性塩化ナトリウム溶液である。さらに、滅菌された固定油は、溶媒または懸濁媒体として慣用的に用いられる。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドを含む全ての混合固定油が用いられ得る。さらに、脂肪酸、例えばオレイン酸は、注射剤の製造に用いられる。
【0202】
注射可能な製剤は、例えば滅菌フィルター(bacterial-retaining filter)での濾過によって、滅菌された水または他の滅菌された注射可能な媒体に使用前に溶解または分散され得る滅菌された固体組成物の形態で滅菌処理された薬物を用いることによって滅菌され得る。
【0203】
本発明の化合物の効果を延長するために、しばしば本化合物の皮下または筋肉内注射からの吸収を遅らせることが望ましい。このことは、水への溶解度が低い結晶性または無晶性物質の液体懸濁液の使用によって達成され得る。本化合物の吸収速度はその溶解速度に依存し、溶解速度はまた、結晶の大きさおよび結晶形に依存し得る。あるいは、非経腸で投与された化合物の形態の遅延吸収は、油性ビークル中に本化合物を溶解または懸濁することによって達成される。注入可能なデポー剤の形態は、生体分解ポリマー(例えばポリラクチド−ポリグリコリド)中に本化合物のマイクロカプセル・マトリックスを形成することによって製造される。化合物とポリマーの比および用いられる特定のポリマーの性質に依存して、化合物の放出速度は制御され得る。他の生体分解ポリマーの例は、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)を含む。デポー注入可能製剤はまた、本化合物を、リポソームまたは体内組織に相容性であるマイクロエマルジョン中にトラップすることによって製造される。
【0204】
直腸または膣の投与のための組成物は、本発明の化合物を、環境温度で固体であるが体温で液体であって、その結果直腸または膣腔内で溶解し活性な化合物を放出する適当な非刺激性賦形剤または担体、例えばカカオバター、ポリエチレングリコールまたは坐剤用蝋と混合することによって製造され得る坐剤であり得る。
【0205】
経口投与のための固体投与形は、カプセル、錠剤、丸薬(pill)、粉剤および顆粒剤を含む。このような投与形において、活性な化合物は、少なくとも1種の不活性な薬学的に許容される賦形剤または担体、例えばクエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム、および/または、(a)充填剤または増量剤、例えば澱粉、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、マンニトールおよびケイ酸、(b)結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギネート類、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、ショ糖およびアラビアゴム、(c)湿潤剤、例えばグリセロール、(d)崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、じゃがいも澱粉またはタピオカ澱粉、アルギン酸、特定のシリケート類、および炭酸ナトリウム、(e)溶液遅延剤、例えばパラフィン、(f)吸収促進剤、例えば四級アンモニウム化合物、(g)湿化剤、例えばセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール、(h)吸収剤、例えばカオリンおよびベントナイト・クレイ、および(i)滑沢剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール類、ラウリル硫酸ナトリウム、およびその混合物と混合される。カプセル、錠剤および丸薬の場合では、投与形はまた、緩衝剤を含んでもよい。
【0206】
同様のタイプの固体組成物はまた、軟および硬ゼラチンカプセル中に充填剤として、例えば乳糖またはミルクシュガーおよび高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いて用いられ得る。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸薬および顆粒剤の固体投与形は、コーティングおよびシェル、例えば腸溶性コーティングおよび他の製薬業界で周知のコーティングを有して製造され得る。それらは、所望により不透明化剤を含んでもよく、また、活性な成分のみを、好ましくは腸管の特定の部位で、所望により遅延した方法で、放出する組成物であり得る。用いられ得る埋め込み組成物(embedding composition)の例は、ポリマー物質および蝋を含む。同様のタイプの固体組成物はまた、軟および硬ゼラチンカプセル中に充填剤として、例えば乳糖またはミルクシュガーおよび高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いて用いられ得る。
【0207】
活性な化合物はまた、上記の1種以上の賦形剤と共にマイクロカプセルに入れた形態であってもよい。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸薬および顆粒剤の固体投与形は、コーティングおよびシェル、例えば腸溶性コーティング、放出制御コーティング、および他の製薬業界で周知のコーティングを有して製造され得る。このような固体投与形において、活性な化合物は、少なくとも1種以上の不活性な希釈剤、例えばショ糖、乳糖または澱粉と混合され得る。このような投与形はまた、一般的な慣行の通り、不活性な希釈剤以外のさらなる物質、例えば錠剤滑沢剤および錠剤化助剤、例えばステアリン酸マグネシウムおよび微晶性セルロースを含んでもよい。カプセル、錠剤および丸薬の場合、投与形はまた、緩衝剤を含んでもよい。それらは、所望により不透明化剤を含んでもよく、また、活性な成分のみを、好ましくは腸管の特定の部位で、所望により遅延した方法で、放出する組成物であり得る。用いられ得る埋め込み組成物の例は、ポリマー物質および蝋を含む。
【0208】
本発明の化合物の局所または経皮投与のための投与形は、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉剤、溶液、スプレー、吸入剤またはパッチを含む。活性な成分は、滅菌された条件下で、薬学的に許容される担体および何れかの必要な保存料、および必要であれば緩衝剤と混合される。眼用製剤、点耳薬、および点眼薬はまた、本発明の範囲内である。さらに、本発明は、化合物の身体への制御送達を提供するという、さらなる利点を有する経皮パッチの使用を意図している。このような投与形は、適切な媒体に本化合物を溶解または分散することによって製造される。吸収増強剤はまた、本化合物が皮膚を通過する流れを増加させるために使用され得る。速度は、速度制御膜を提供することによって、あるいは、ポリマーマトリックスまたはゲル中に本化合物を分散することによって、制御され得る。
【0209】
上で一般的に記載した通り、本発明の化合物は、慢性HPV疾患を含むHPV疾患の処置として有用である。
【0210】
1種以上の本発明の化合物を別個に、同時に、または連続して、感染した細胞に、感染した細胞を含む組織に、感染した臓器に、哺乳類および患者を含む感染した生物に投与され得る。
【0211】
本発明の化合物および薬学的に許容される組成物は、併用治療に用いられ得ると認識されるであろう。すなわち、本化合物および薬学的に許容される組成物は、1種以上の他の望ましい治療薬または医学的手段と同時に、その前に、またはその後に、投与され得る。併用治療計画に用いるための特定の併用治療(治療または方法)は、望ましい治療および/または方法、ならびに達成されるべき望ましい治療効果の相容性を考慮する。用いられる治療は、同一の疾患における望ましい効果を達成し得る(例えば本発明の化合物が同一の疾患を処置するために用いられる他の薬物と同時に投与され得る)こと、あるいは、異なる効果を達成し得る(例えば副作用の制御)ことが認識されるであろう。本明細書で用いるとき、特定の疾患または状態を処置または予防するために通常投与される さらなる治療薬は、“処置される疾患または状態に適切である”ことが知られている。
【0212】
本発明の組成物中に存在するさらなる治療薬の量は、活性な薬物のみとして治療薬を含む組成物において通常投与される量よりも多くない。好ましくは、本明細書に開示された組成物中のさらなる治療薬の量は、治療的に活性な薬物のみとして該薬物を含む組成物中に通常存在する量の50%から100%の範囲の量である。
【0213】
本発明の化合物またはその薬学的に許容される組成物はまた、埋め込み可能な(implantable)医学デバイス、例えばプロステーシス、人工弁、血管用グラフト、ステントおよびカテーテルを被覆する組成物に混合され得る。従って、本発明は、別の態様において、埋め込み可能なデバイスを被覆するための組成物であって、本明細書のクラスおよびサブクラスの上で一般的に記載した本発明の化合物、および埋め込み可能なデバイスを被覆するのに適当な担体を含む組成物を含む。また、別の態様において、本発明は、本明細書のクラスおよびサブクラスの上で一般的に記載した本発明の化合物、および、埋め込み可能なデバイスを被覆するのに適当な担体を含む組成物で被覆された埋め込み可能なデバイスを含む。適当なコーティングおよび被覆された埋め込み可能なデバイスの一般的な製造は、米国特許第6,099,562号;第5,886,026号;および第5,304,121号に記載されている。コーティングは、典型的に、生体適合性ポリマー物質、例えばヒドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレン グリコール、ポリ乳酸、エチレンビニル アセテート、およびその混合物である。該コーティングは、所望により、フルオロシリコン、ポリサッカライド、ポリエチレングリコール、リン脂質またはその組み合わせの適当なトップコートによって、さらに被覆され、組成物に制御放出特性を与え得る。
【0214】
VI. 処置方法
本発明の別の態様は、HPVまたはパピローマウイルスに感染した細胞を処置すること、または、生物サンプルまたは患者中の他のパピローマウイルスを処置すること(例えばin vitroまたはin vivo)に関する。該方法は、患者(ヒトまたは他の動物)に、本明細書で記載したポリアミドを含み医薬組成物を投与すること、あるいは、該生物学的サンプルと、該医薬組成物を接触させることを含む。“生物学的サンプル”という用語は、本明細書で用いるとき、細胞培養物またはその抽出物;哺乳類またはその抽出物から得られる細胞診物質;および血液、唾液、尿、糞便、精液、涙または他の体液またはその抽出液を含み、これらの限定されない。“患者”という用語は、動物を含み、哺乳動物、ヒト、霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ウシ、ヒツジなどを含む。
【0215】
個々の細胞をHPVに曝露し感染させた後、多数のHPVエピソーム複製が感染した細胞内に確立され得る。HPVエピソームは、さらに、細胞分割時に複製され、ほぼ同数のHPVエピソーム複製を新しい細胞中にそれぞれ形成する(例えば細胞分割後、20〜100の複製を含む細胞は、それぞれ約20〜100のエピソーム複製を含む2個の新しい細胞を形成する)。A/Tリッチ領域を標的とするよう設計されたポリアミド類は、HPVエピソームのクリアランスを促進し得る。従って、本発明の方法はまた、HPVを処置するための治療方法として有益に用いられ得る。
【0216】
HPVまたは他のパピローマウイルスを処置するために用いられるポリアミド類は、本明細書に記載されたものを含み、これらに限定されない。
【0217】
一つの態様において、本発明は、HPV感染細胞を処置する方法であって、該細胞を本明細書に記載した化合物と接触させることを含む方法を提供する。本発明の一つの態様において、該方法は、さらに、該細胞を抗ウイルス剤と接触させることを含む。該抗ウイルス剤は、インターフェロン類、イミキモド、シドホビル、ホルムアルデヒド、グルタラール、シメチジン、5−フルオロウラシル、トリクロロ酢酸、ブレオマイシン、ポドフィロックスまたはポドフィルムであり得る。
【0218】
別の態様において、本発明は、患者または対象において、HPV感染細胞を処置する方法であって、患者または対象に、本明細書で記載した化合物または医薬組成物を投与することを含む方法を提供する。本発明の一つの態様において、本方法は、さらに、該細胞を抗ウイルス剤と接触させることを含む。該抗ウイルス剤は、インターフェロン類、イミキモド、シドホビル、ホルムアルデヒド、グルタラール、シメチジン、5−フルオロウラシル、トリクロロ酢酸、ブレオマイシン、ポドフィロックスまたはポドフィルムであり得る。別の態様において、該HPVは、HPV11、HPV16、HPV18、HPV1、HPV6またはHPV31であり得る。
【0219】
別の態様において、本発明は、HPV16感染細胞を処置する方法であって、患者に、式
Z−(X)−γ−(X)−Y−A
[式中、m+3は少なくとも10であり;
他の置換基は上記の通りである。]
の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法を提供する。
【0220】
さらに別の態様において、本発明は、患者に、
【化23】

【化24】

から選択される化合物を投与することによって、HPV16感染細胞を処置する方法を提供する。
【0221】
該態様を他の観点から見れば、該方法は、さらに、抗ウイルス剤を投与することを含む。該抗ウイルス剤は、インターフェロン類、イミキモド、シドホビル、ホルムアルデヒド、グルタラール、シメチジン、5−フルオロウラシル、トリクロロ酢酸、ブレオマイシン、ポドフィロックス、ポドフィルム、アシクロビルおよび他のヘルペス/サイトメガロウイルス薬、および抗HIV剤であり得る。
【0222】
幾つかの態様において、HPV感染細胞を処置するために用いられるポリアミド類は、
【化25】

の群から選択される構造を有する。
【0223】
別の態様において、HPV感染細胞を処置するために用いられるポリアミド類は、
【化26】

【化27】

[ここで、FITCは、フルオレセインのイソチオシアネートの形態を言う。]
の群から選択される構造を有する。
【0224】
別の態様において、HPV感染細胞を処置するために用いられるポリアミド類は、
【化28】

から選択される。
【0225】
また、別の態様において、HPV感染細胞を処置するために用いられるポリアミド類は
【化29】

から選択される。
【0226】
また、別の態様において、HPV感染細胞を処置するために用いられるポリアミド類は
【化30】

から選択される。
【0227】
さらにまた、別の態様において、該ポリアミド類は、他の抗ウイルス剤、例えば、インターフェロン類(例えばインターフェロン−γおよびインターフェロン−β)、イミキモド、シドホビル、ホルムアルデヒド、グルタラール、シメチジン、5−フルオロウラシル、トリクロロ酢酸、ブレオマイシン、ポドフィロックス、ポドフィルム、アシクロビルおよび他のヘルペス/サイトメガロウイルス処置薬、および抗HIV薬(これらに限定されない)と組み合わせて用いられる。該ポリアミド類はまた、光線力学的療法、放射線療法および化学療法と組み合わせて用いられ得る。
【0228】
本明細書に記載された本発明を完全に理解するために、以下の実施例を示す。これらの実施例は、説明の目的のみのためであり、本発明を何れの意味でも限定すると解釈するべきではないことが理解されるべきである。
【実施例】
【0229】
実施例1: ポリアミド類および他の抗HPV化合物
20種以上のポリアミド類をA/T−リッチ領域を標的とするよう設計した。また、コントロール化合物および細胞取り込み試験のためにBOFLXおよびFITC色素標識アナログを調製した。ヘアピン・ターンを、γ−アミノ酪酸および(R)−2,4−ジアミノ酪酸の両方から構成した (Baird and Dervan, 1998)。
【0230】
5'-WWG-3'部位はPA認識に重要であり、ここで、W=AまたはTである。E1標的領域において、HPV16は幾つかのWWG認識モチーフ(太字および1〜5の番号が付けてある, 下記参照)を有する。HPV16の変異株は、下線の部位でGを有する。従って、4に続く長いATは変異体で保持されていない。
【表5】

【0231】
該化合物および質量分析データを表3に示す。
【0232】
表3 ポリアミド類の質量スペクトルデータ
【表6】

【0233】
【表7】

*: MWを、LCMS−ESIまたは直接プローブESIによって決定した。アスタリスク*のない全ての化合物を、MALDI−MSによって分析した。
(M+H2+H)+: 質量分析条件は、時には、見かけ上、‘気相水素化’のポリアミドを生じ、M+2のMWをもたらす。この現象は、以前に、James K. Bashkinによって、他のヘテロ芳香族性ポリアミド分子で観察された。バルク物質のNMR試験により、本化合物の溶解したサンプル中で、水素化された種が存在しないことが、以前に示されている。
【0234】
ポリアミド 1011は、PCT国際出願WO 04/099131に以前に記載されている;ポリアミド 1012、1014、1017および1021は、PCT国際出願WO 98/37067に記載されている;ポリアミド 1005、1006、1007、1008および1020は、PCT国際出願WO 05/033282 に記載されている。
【0235】
該ポリアミドをHPV16 DNAを保持する細胞において試験し、他の抗ウイルス処置と比較した。幾つかの抗ウイルス処置は、HPV誘発病変を処置するのに利用可能である。シドホビルは、HPV感染によって引き起こされる気道の珍しい疾患である再発性呼吸器乳頭腫(RRP)に対して、幾らかの有効性を有する非環状ヌクレオシド ホスフェートである (Snoeck et al., 1998, J. Med. Virol. 54(3): 219-225)。シドホビルは、臨床的には、喉頭の病変部に直接注射することによって用いられる。シドホビルおよびインターフェロンは、この重篤な疾患の処置のための、2つの主要な選択肢である。シドホビルおよびインターフェロンγと、HPV16に対する抗ウイルス活性を有するポリアミドの抗ウイルス活性の比較により、試験されたポリアミドのIC50が、シドホビルおよびインターフェロンγ(IFNγ)のIC50より少なくとも1/1000低いことが示された(図1)。
【0236】
HPV16 DNAを保持する細胞を、シドホビル、インターフェロンγまたはポリアミドの存在下、72時間培養した。次いで、ウイルス性DNAをリアルタイムPCRを用いて定量し、ビークル(DMSO)処置コントロール培養と比較した。図1に示した通り、シドホビルは、総HPV DNA量の約40%の喪失をもたらした(しかし非常に高濃度である)。(該IC50は、in vitroでのウイルス複製の50%阻害に必要な化合物の濃度である)。これらの結果は、HPVエピソームDNAに対するシドホビルの効果の以前の研究より有利である(Spanos et al., 2005, Ann Oto. Rhino. Laryngol. 114(11): 840-846)。
【0237】
対照的に、ポリアミド類は、非常に低い濃度で、ウイルス性エピソームDNA量の著しい減少を引き起こす (図1および表4参照のこと)。実際、NV1028は、細胞を5μMの濃度で曝露させたとき(200ngのDNAがPCR反応のインプット量であった)、HPVエピソームを、QPCRによって検出不能な濃度まで減少させた。NV1028は、HPV16に対して0.1μMのIC50を有する。これらの結果は、本発明の化合物が、細胞培養物中で、HPVによって引き起こされる病変の処置のために現在臨床的に用いられている薬物よりも非常に優れた効果を有することを示している。これらのアッセイにおいて、ポリアミド類は、細胞傷害性でもあるインターフェロンと比較して、力価の増加を示した。インターフェロンγにおける結果を図1に示した。また、同様の結果が、インターフェロンβでも得られた。
【0238】
化合物は、始めに、W12E細胞において、Q−PCR(Taqman(商標))によって、3種の濃度範囲(0.1、1および10μM)に亘って、HPV16エピソームDNA濃度に対する効果について試験した。W12E細胞は、M. Stanley (Cambridge University)によって始めに同定され、その後、P. Lambert (U. of Wisconsin)によって最適化され提供された子宮頸ケラチン生成細胞株である。これらの濃度で用量依存性阻害の証拠が示された化合物を、次に、1.0nMから10μMの範囲に亘って最小6回の投与を用いて試験し、その結果、IC50値を得た。全ての場合(初期試験およびフォローアップIC50試験)において、用量試験をトリプリケートで行った。それぞれの化合物について、対数用量−応答をプロットし、Microsoft Excel, Xlfit (version 2.0; ID Business Solutions, Guildford, UK)(非線形回帰を用いてカーブ・フィッティングが可能)によって、最もフィットした曲線を引いた。データを%阻害vs用量としてプロットし、IC50を、HPV DNAにおいて、ビークル処置(0.1% DMSO)コントロールと比較して、50%減少に必要な薬物濃度として定義した。さらに、全ての試験をトリプリケートで複数回行った。次いで、データを合わせて、IC50値を計算し、偏差を決定し、データのモデルに対するフィットとその信頼性を明らかにした。最も強力なポリアミドの1つである1028についてのデータを図2に示す。活性な化合物についての全ての試験を、この方法で行った。
【0239】
ポリアミド処置(n=4, 独立して試験)後のHPV16 DNA複製数の用量依存性減少を図2Bに示す。細胞生存率に対する付随効果(MTTアッセイ)を観察した。細胞を、ポリアミドの存在下、5日間培養した。%細胞生存率=(OD590薬物/OD590コントロール)×100;n=3。
【0240】
表4は、例示的なポリアミドおよび不活性なポリアミドと、HPV16に対するIC50の概要を表している。
【0241】
表4 ポリアミド類のHPV 16に対するIC50
【表8】

【表9】

+++ は、0.1未満のIC50を示し;
++ は、0.1と1.0の間のIC50を示し;
+ は、の1.0以上のIC50を示し;
NA は、該化合物が、活性がない、すなわち用量応答が得られなかったことを示す。
【0242】
驚くべきことに、NV1020は、HPV16に対して有効であり、0.1と1.0μMの間のIC50を有した。
【0243】
より短いポリアミド類およびより慣例的でない(less-traditional)ポリアミド構造 (Laemmli and Janssen, 2002a; Laemmli and Janssen, 2002b; Maeshima et al., EMBO J., 20, 3218-28, 2001)は、この試験で不活性であった。不活性な化合物のうち、3-Ta、すなわち ImPPPPγ(NH2)PPPPPβTaは、2,4−ジアミノ−ヘアピン:γ(NH2)を含む。化合物3-Taは、3-Taが8塩基対のみに結合するのに対して、2-Taおよび4-Taは10塩基対に結合する以外、2-Taおよび4-Taと類似のDNA標的を認識する。
【0244】
実施例2:ポリアミド毒性試験−TC50は300μMで到達しない
毒性試験を、3種の別個のポリアミドについて行った。2種の異なるラット肝細胞腫アッセイを用いた。なおこれらはin vivo毒性を予測するための業界標準である。ATPについてのアッセイおよび膜完全性アッセイ(membrane integrity assay)を以下に詳細に記載する。従って、ラットの肝細胞腫(H4IIE)を、96ウェル・プレートに植え付け、20%ウシ血清を含む培地中で培養した。48時間平衡化した後、細胞を、試験化合物によって、種々の濃度で、24時間、37℃で、5%CO中で処理した。ポリアミド化合物は、2種の別個のアッセイにおいて、毒性について試験した。TC50(細胞の半数を死亡させるのに必要な濃度)は、試験した広い濃度範囲に亘って、試験されたポリアミド類全てについて、到達しなかった(NV1028についてのTC50は300μMより大きいと見積もった)。他方、コントロール化合物であるロテノンおよびカンプトテシン(データ示さず)は、膜完全性アッセイにおいて、0.49μM (ロテノン)および5.0μM (カンプトテシン)のTC50値を生じ、ATPアッセイにおいて、0.05 (ロテノン)、および、0.9(カンプトテシン)のTC50値を得た。さらに、シドホビルは、MTTアッセイ中で、750μMのTC50を得た。
【0245】
アッセイの簡単な説明を以下に行う。
A. 細胞内ATP濃度
細胞のアデノシン三リン酸(ATP)濃度を、ATP+D−ルシフェリン+ルシフェラーゼによって酸素触媒されたオキシルシフェリン+AMP+PPi+CO+光の間の反応に基づくアッセイを用いて決定した。放出光が存在するATPの量に比例する。非常に短い半減期を有する“flash”タイプのシグナルよりむしろ、このアッセイは、シグナル半減期を5時間まで伸張する特有の“grow”法を利用している。さらに、独特の細胞溶解試薬が内在性ATPアーゼを阻害し、その結果、ADPへの分解が妨げられることによって細胞のATPを安定化する。ATPは、全ての生存細胞中に存在し、細胞の死後速やかに減少する。さらに、このアッセイは、MTTアッセイと組み合わせて、細胞のミトコンドリア活性およびエネルギー状態のインジケーターを提供する。
【0246】
24時間曝露終了時に、培地を細胞から除去し、ATP細胞溶解緩衝液をそれぞれのウェルに加えた。プレートをすぐに分析するか、必要になるまで−20℃で保存する。分析する日にプレートを解凍し、サンプルと同じ液体マトリックス中のATPで較正曲線を引いた。ATPをATP基質溶液を添加することによって定量し、次いで Packard Fusion Luminescence または同等のプレート・リーダーで、発光を測定した。
【0247】
B. 膜完全性法/修飾ヨウ化プロピジウム法
修飾ヨウ化プロピジウム(PI)法を用いて、細胞増殖/生存率を評価する。この特異的な核酸結合色素は、核酸内にインターカレートしたときに蛍光を発する。15nmのシフトがPI発光を約20倍増強し、一方で、励起光の最大値が30〜40nmシフトする。方法開発試験の間で、Triton-X-100がH4IIE細胞を透過処理するのに最も良い溶液であることが決定し、それによって、PIが細胞内のRNAおよびDNAに近づくことを可能とした。発光を、Packard Fusion プレート・リーダーを用いて、励起光540nm、放出光610nmで測定した。
【0248】
C. MTTアッセイ
MTT[臭化 3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム]アッセイ (Mosmannによって1983に初めて記載された)は、生存細胞由来のミトコンドリアのデヒドロゲナーゼ酵素が薄黄色のMTTのテトラゾリウム環を切断し、細胞膜をほとんど透過しない暗青色のホルマザン結晶を形成し、その結果健康な細胞内でそれが蓄積する能力に基づいている。界面活性剤の添加による細胞の溶解は、この結晶の遊離をもたらし、該結晶は可溶化する。生存細胞数は、生じたホルマザン生成物の濃度に正比例する。この色は、単純な比色アッセイを用いて定量化され得る。結果は、マルチウェル走査型分光光度計(ELISAリーダー)で測定され得る(Mosmann T., Rapid colorimetric assay for cellular growth and survival: application to proliferation and cytotoxicity assays, J Immunol Methods, 65, 55-63, 1983)。
【0249】
HPVウイルス性DNAは、培養されたW12E細胞において、以前に記載された通りに、Taqman プライマーとプローブを用いて、定量化されている(Peggy Garner-Hamrick and Fisher, C, HPV Episomal Copy Number Closely Correlates with Cell Size in Keratinocyte Monolayers, Virology 2002; 301: 334-341)。
【0250】
実施例3:ポリアミド類の試験
ポリアミド類は、Dickerson および Dervanによって主として確立されたDNA結合ルールに従って再現可能性をもって示されている。本発明のポリアミド類は、ポリアミド類とそれにマッチしたDNA配列の間で高い結合定数を有する。これらの試験において、DNA標的は、ビオチン−アビジン親和性によってBIAcoreチップに固定されて、ポリアミド類の結合の動力学および熱力学の両面が検討された。
【0251】
細胞培養アッセイ
非常に定量的なリアルタイムPCRアッセイ(Garner-Hamrick and Fisher, Virology, 301, 334-41, 2002)を用いて、細胞をポリアミド類で処理した後、HPV16エピソームDNA濃度を測定した。HPV16エピソームを維持するケラチン生成細胞を、ポリアミド類の濃度を増加させて処理した。図3に示した5種のポリアミド類は、絶対的なHPV16 DNA量に対して用量依存効果を示している。著しいことに、高用量の1031、1037、1028および1004は、幾つかの試験において、検出可能なウイルス性DNAをほぼ完全に除去した(図3)。
【0252】
抗HPV16結果は、幾つかの理由により細胞毒性によって引き起こされるものではないようである。この理由の一つは、全ての試験において、細胞計数および細胞密度によって測定したところ、細胞は形態学的に正常であり、また正常に増殖し続けていることである。細胞生存率もまた、MTTアッセイで慣用的に評価した。図3において、試験で用いたアッセイは、HPV16 L1遺伝子のTaqman(商標) PCR増幅を利用した(Garner-Hamrick and Fisher, Virology, 301, 334-41, 2002)。
【0253】
幾つかの代替のアプローチを用いて、我々の化合物のウイルス性DNAに対する効果を確認した。これらのさらなる手順は、DNeasy (総ゲノムDNA) Qiagen スピン・カラム、DNAzol 総ゲノムDNA調製物、および Hirt (低分子量DNA調製物;(Hirt, (1967), J Mol Biol. 26:365-9)を含む異なる手順による総DNA、DNAの調製物での標準化を含む。全ての場合において、我々の結果は、我々の化合物によって、細胞中のエピソームDNA量が減少する点で完全に一致している。最後に、サザン・ブロット法で、Q−PCRを用いて測定したウイルス性DNAの減少が、より伝統的であるが定量的でない手順と一致していることを確認した。図4は、ポリアミドに培地を曝露した、HPV DNAを有するヒトのケラチン生成細胞細胞株由来のHPVエピソームDNAの用量依存性減少を示しているサザン・ブロットを示している。DMSOは、ビークル・コントロールであり;HPV DNAは、線状HPV DNAを用いてDIG-dUTP (Roche)でランダムプライム標識を介してハイブリダイゼーション・プローブを形成したものを示す。ハイブリダイゼーション後、ブロットを抗DIG-APコンジュゲートと共にインキュベートし、HPV DNAを、ECF基質(Amersham)およびStorm phosphorimagerを用いて検出する。約1.3μMのIC50を有する NV1020 (1μM、10μMとマークされたレーンによって示されている)は、エピソームDNA量の予測される減少を示す。他のNV化合物は、同様に、サザン・ブロット法によって、ウイルス性DNAの予測される減少を示す。
【0254】
ポリアミド類はまた、天然由来のポリアミド類、ネトロプシンおよびジスタマイシンよりも強力であり、また、ネトロプシンおよびジスタマイシンと異なり、細胞生存率への影響はほとんどないことが見出された(図5)。図5は、1037、ジスタマイシンAおよびシドホビルの、HPVウイルス性DNAおよび細胞生存率への相対的な効果を比較している。ポリアミド 1037は、ウイルス性DNA濃度の劇的な減少を示し、かつ細胞生存率への影響がほとんどないことを示している。シドホビルおよびジスタマイシンAは、高濃度でのみ、HPV DNAに対して有効であり、また細胞生存率に影響を及ぼす。
【0255】
実施例4:HPV16エピソームに対するポリアミド離脱効果
この試験は、ポリアミドを細胞から離脱した後もHPV16エピソームの減少が維持されるかどうかを測定するために行った。細胞を試験の1日目にプレートに置き、10μMのNV1028を加えた。細胞を3日間培養し、細胞を洗浄し、新しく1028を加えた。1028の存在下で、示した日数(x軸)で、15日間継代培養を行った。17日目で薬物を洗浄して除き、細胞を薬物の非存在下で2週間継代培養を行って、HPV16エピソームDNAのリバウンドをチェックした。コントロールW12E細胞に0.1% DMSOを与えた。図7により、ポリアミドを離脱したときに、HPVエピソームDNAのリバウンドがいくらか起こるが、その回復は、ポリアミド離脱後少なくとも2週間では、コントロールの量に近づかないことが示されている。
【0256】
実施例5:ポリアミド類の細胞取り込み制御および核局在化
上記の通り、本発明のポリアミド類は、ケラチン生成細胞の核にすぐに局在化する。しかし、種々の形質転換された細胞を含む他の細胞タイプにおいて、ポリアミド類は、しばしば、細胞の処置後に小胞コンパートメント内に局在化する。ポリアミド取り込みおよび細胞分布は、ポリアミド全体の変化および酸性度の影響、および多剤耐性阻害剤の取り込みに対する影響を研究することによって得られた (Crowley et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 13, 1565-70, 2003)。
【0257】
この試験により、BODIPY標識ポリアミド類が、哺乳動物の細胞の細胞質中で、酸性の小胞、主にリソソームに集積することが明らかとなった。このことは、穏やかな塩基である多くの薬物および化合物で観察される現象である。酸性の小胞のホメオスタシスを乱す薬物であるベラパミルは、小胞の集積をブロックし、BODIPY標識ポリアミドの核の集積をもたらす。この結果、塩基性アミン基は、一般的に、合成ポリアミド鎖の末端で、哺乳動物の細胞中の細胞質小胞中で集積する原因である。この示唆に基づいて、我々は、アミン尾部のBODIPY部分をフルオレセイン部分と置き換えることによって、ポリアミドの電荷を修飾し、細胞質小胞に集積せずにむしろ細胞の核に局在化する新規の分子を得た。
【0258】
核のDNAがポリアミド標的であるため、ポリアミド類は、実際、本明細書に記載した2つの戦略の一方がポリアミド類の標的を核とするために用いられるとき、哺乳動物の細胞における遺伝子発現を制御するのに有用な化合物であり得る (Crowley et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 13, 1565-70, 2003)(Best et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 100, 12063-68, 2003; Edelson et al., Nucl. Acids Res., 32: 2802-18, 2004を参照のこと)。
【0259】
実施例6:HPV18に対するポリアミド類の識別
本発明のDNA結合ポリアミド類は、HPV16に対して指向性であり、ヒトのケラチン生成細胞中のウイルス性エピソームDNA濃度が強力にかつ劇的に減少する。ここで、HPV18に対する抗ウイルス剤を見出すためのアプローチを記載する。1つのアプローチにおいて、HPVが宿主染色体に固定されている箇所を、HPVを標的とするために用いる。
【0260】
ポリアミド類は、文献の方法 (例えば Belitsky et al., Bioorg. Med. Chem., 10, 2767-74, 2002)および下記の実施例8に記載された方法によって、社内で合成された構成要素を用いて製造される。これらは、固相合成(例えばMerrifield合成)、および溶液合成法を含む。全ての最終生成物は、HPLCによって、純度>98%まで精製され、次いでアリコートとし、凍結乾燥し、使用するまで冷凍保存される。ポリアミド類がその名目上のDNA標的に結合する能力は、BIAcore分析によって評価される。十分量が予備的毒性試験のために製造される。
【0261】
ポリアミド類の、HPV18の A/T リッチ領域を標的とするための設計は、4つの既知の認識ルールに基づく。β−アラニン、γ−ターンおよびアミノ尾部は、全て、ヌクレオチドAまたはTを認識し、イミダゾールはGを認識する。HPVに対して有効なポリアミド類の3つの重要な側面は、次に示すものを含む:(1) HPV18の切断を起こすポリアミド配列;(2) 有効性と取り込みの釣り合いがとれたポリアミドの長さの発見;(3) β−アラニンがポリアミドに最もよく組み込まれるという発見。
【0262】
表5 HPV18に対するポリアミド類
【表10】

【0263】
表5に示した全てのポリアミド類は、化合物1を除いて、かなり長い。それぞれのポリアミドの複数のバージョンは、DNAにこれらの長い分子をフィットするときに表れる僅かな不完全性によるポリアミド骨格の歪みを緩和するために、β−アラニン(β)を組み込んで製造される。Gと好ましくない相互作用をする場合を除く以外に、β−アラニンがどこにあるべきかについてルールはない。γ−ターンの何れかの側にβを加えたポリアミド組成物のバリエーションの代表例を表6に示す。
【0264】
表6 β−アラニンで修飾した化合物をベースとするポリアミド配列
【表11】

【0265】
さらに、ポリアミド類の端を短くしたバージョンを製造し試験する。これは、取り込みを改善し、予測される長さと選択性についてのパラメーターを決定するのを助ける。表5中の2種の最も長いポリアミド類のうちの一方である、ポリアミド5に基づくポリアミド類の端を短くした例を表7に示す。
【0266】
表7 移入時により短い塩基対(bp)を認識する切断されたポリアミド類
【表12】

【0267】
本発明のポリアミド化合物はまた、HPVライフサイクルをプローブするためのツールとして有用である。
【0268】
HPVエピソームを保持するものを含むヒトのケラチン生成細胞を、マイトマイシンC処置J2 3T3細胞上で、3部のダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM)および1部のF12培地を含む培地中で、公表された方法(Rheinwald and Green, 1975)の我々の修飾で、培養する。培地(E Media)は、0.4μg/mLのヒドロコルチゾン、10ng/mLのコレラ毒素、5μg/mLのインシュリン、24μg/mLのアデニン、5μg/mLのトランスフェリン、5μg/mLの3,3',5−トリヨード−チロニン(T)、10ng/mLの上皮増殖因子(EGF)、1%のペニシリン−ストレプトマイシン、および5%のウシ胎児血清(FBS)を加える。全ての細胞を、70%コンフルエンスで、1:5の分割比で継代する。
【0269】
HPV18に対するポリアミドを、10mMで、100% DMSOに溶解し、HOで1mMまで希釈する。ポリアミド類をE培地中の細胞に、最終濃度0.1〜10μMで、最終DMSO濃度0.1%で加える。コントロールとして、細胞を、通常E培地および“ビークル”である0.1% DMSOを含むE培地と共に、インキュベートする。次いでHPV DNA濃度を、以前に公表された手順(Garner-Hamrick and Fisher, Virology, 301, 334-41, 2002)に従って定量する。インキュベーション後、トリプシン処理によって、または、プロテイナーゼK消化緩衝液(PK緩衝液:100mM NaCl、10mM Tris(pH 8)、25mM EDTA、0.5% SDS、0.1mg/mL プロテイナーゼK)で直接溶解することによって、細胞をプレートから回収する。トリプシン処理した細胞を血球計数器で計数し、遠心分離によってペレットにする。エピソームHPVを、Hirt法(Hirt, 1967)によって単離し、細胞のペレットを、0.6%のSDS中、10mMのEDTAで溶解する。次にNaClを加え最終濃度1Mとする。4℃で終夜インキュベートした後、染色体DNAを含む沈殿物を遠心分離し(spin down)、エピソームDNAをイソプロパノールの添加によって沈殿させた。PK緩衝液に直接溶解した細胞をマイクロチューブに移し、50℃で2時間インキュベートする。次いでライセートをフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールで抽出し、phase lock gel (Eppendorf, Hamburg, Germany)で分離する。次いで総DNAを0.3MのNaOAcおよび2.5vol.のエタノールで沈殿させ、Tris−EDTA(TE)緩衝液に再度懸濁する。
【0270】
次にウイルス性DNA濃度を、我々の以前に公表した方法(Garner-Hamrick and Fisher, Virology, 301, 334-41, 2002)のバリエーションによって定量する。定量的PCRを、リアルタイムPCR法を用いて、ABI PRISM 7700 Sequence Detectorで行う。全てのプライマーおよびプローブを、Primer Express 1.0 (ABI)を用いて設計した。HPV18については、PCRプライマー−プローブのセットを、L1遺伝子内に設計した:
センス 5'-TTTGGTTCAGGCTGGATTGC (配列番号3);
アンチセンス 5'-GCAGATGGAGCAGAACGTTTG (配列番号4);
プローブ 5'-TCGCAAGCCCACCATAGGCCC (配列番号5)。
PCRのためのHPV31のプライマー−プローブのセットをまた、L1遺伝子内に設計した:
センス 5'-CTGCTATTTTGGAAGATTGGAAT (配列番号6);
アンチセンス 5'-GGCCTGTGAGGTGACAAACC (配列番号7);
プローブ 5'-TTGGATTGACCACACCTCCCTCAGGTT (配列番号8)。
【0271】
全てのプライマーおよびプローブを合成し、Applied Biosystems (Foster City, CA)によってHPLCで精製する。HPVプローブを、5'レポーター色素FAM(6−カルボキシ−フルオレセイン)および3'クエンチャー色素TAMRA(6−カルボキシテトラメチル−ローダミン)で標識する。10から10複製数/反応の範囲のクローン化ゲノムHPV31またはHPV18 DNAを用いて、次の式を用いて標準曲線を引く:(1.82×1015)(μg/μL ストックDNA)/(塩基対の長さ)(2)=複製数/μL ストックDNA。PCR反応は、最終濃度1×Universal Master Mix (PE Applied Biosystems)、200nMのそれぞれのプライマー、および250nMのプローブ(PE Applied Biosystems)を、反応容積25μL中に含む。Hirt単離DNAサンプルをそれぞれ、エピソームHPVについてトリプリケートの反応で分析する。複製数/反応を標準曲線から決定し、複製数/細胞を次の式に従って決定する:(複製数/反応)(DNA希釈)/(総細胞数)=複製数/細胞。
【0272】
実施例7:初期in vitro毒性試験
HPV18 DNA濃度を著しく減少させるポリアミド類は、さらに、一連のフォローアップ試験で試験され得る。フォローアップ試験は、大規模でのポリアミド類の再合成を必要とする。
【0273】
サザン・ブロット法は、リアルタイムPCR法を用いて測定されたHPV18 DNA濃度に対するポリアミド類の効果を確認するために用いられる。該試験は、以前に記載された通りに行う(Garner-Hamrick and Fisher, Virology, 301, 334-41, 2002)。簡単には、ポリアミド処理細胞およびコントロール細胞由来の総細胞DNA5μgを、BamHIで消化し、0.7%のアガロース・ゲル上に流す。Nytran (Schleicher & Scheull, Keene, NH)に移した後、DNAを、pUC19からBamHIで遊離し、DIG-UTP (Roche)の存在下でランダムプライムを行い、ゲル精製全長HPV18でプローブする。抗DIG AP(アルカリホスファターゼ)と共にインキュベートした後、HPV DNAを、ECF基質と蛍光造影剤で検出する。該試験は、Taqman(商標)アッセイ結果を確認すべきであり、それらは活性の独立の直行アッセイを提供する。
【0274】
次に、50%および90%有効濃度値(EC50およびEC90)を、それぞれのポリアミドについて、10nMから50μMの用量範囲(10nM、100nM、500nM、1μM、5μM、10μMおよび50μM)に亘って、Taqmanデータを用いて測定する。我々の以前の研究により、この範囲が適当な用量応答曲線を提供することが示されている。細胞当たりのHPV DNAの最終濃度をそれぞれのポリアミド濃度について測定し、データを、ビークル処置コントロールに関する%阻害として表す。次いで、EC50を非線形回帰分析を用いて、Sigmaplot softwareで計算する。
【0275】
HPV18に対して活性が見出された各ポリアミドの毒性を、正常なヒトのケラチン生成細胞において、MTT細胞生存率アッセイを用いてモニターする(Denizot and Lang, 1986)。ポリアミド類は、始めに、増殖培地中の正常なケラチン生成細胞に、10nM、100nM、1μM、10μM、100μM、500μM、1mMおよび10mMの濃度で加えられる。サンプルのそれぞれのセットを、トリプリケートで、透明な96ウェル・プレート中に提供する。テトラゾリウム色素(臭化 3−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウムまたはMTT, Sigma)を、ポリアミド類の添加から48時間後、細胞培養物に加える。4時間後、細胞を1回PBSで濯ぎ、0.04N HClを含むイソプロパノール(isoproanol)を加えて細胞を溶解し、MTTホルマザンを可溶化する。プレートをプレート・リーダーで、試験波長570nm、参照波長630nmで測定する。HPV DNA濃度に対する効果の分析について、データをビークル処置コントロールの%阻害として表し、IC50を非線形回帰分析を用いて、Sigmaplot softwareで計算する。
【0276】
次いで、それぞれの効果的なポリアミドについての選択性指数を、EC50とIC50の比(SI=EC50/IC50)として決定する。SIの5が、許容される出発点と考えられる。
【0277】
最後に、ポリアミド類の多回投与の効果をin vitroで試験した。これらの試験の目的は、ポリアミド類が免疫系の非存在下で、エピソームDNAの細胞をどの程度除くかを測定することである。一般的に、損なわれていない免疫系が最適な抗ウイルス効果に重要であると認識されているが、これらの試験は、動物試験で、ウイルス性DNAを除くよう設計された化合物を優先して選択するのを助けるために重要である。典型的な臨床的な抗ウイルス治療計画は、1週間から2週間以上続くために、我々はHPV18ポジティブなケラチン生成細胞に、、培地交換毎に新しいポリアミドを提供することによって、6日間、9日間、および12日間投与し得る。HPV18ケラチン生成細胞を、必要に応じてこれらの試験にかける。投与量は、該濃度が上記で著しい毒性を示さない限り、>EC90値の濃度であり得る。次いで処置された細胞を、Taqman分析で収集し、また、新しい培地に再度植える。この再度植えた細胞を、さらに7日間回復し、その後収集し、ウイルス性DNA量をTaqmanによって分析する。次いで、回復した細胞のウイルス性DNA量を、処置計画の最後の細胞のウイルス性DNA量と比較する。
【0278】
HPVについてのデータは、ウイルス性DNA濃度の著しく大きい減少を示す。しかし、48時間処理後にウイルス性DNAの回復または“リバウンド”が起こることは重要である。ポリアミド類を48時間で培養物から除くと、数日後にHPV DNA濃度のリバウンドが起こる。従って、全ての元のポリアミド投与は細胞中に6日存在するならば、細胞の倍増により少なくとも4の因子によって希釈された。大部分の抗ウイルス治療計画が少なくとも7から14日続く(数ヶ月間続いてもよい)ことから、我々は、ここで記載されたより長い多回投与アプローチで、HPVが続くin vitro試験で回復する能力を減少させると予想しており、また、幾つかのポリアミド類は、HPV DNAのクリアランスを起こし得ると予想している。
【0279】
実施例8:ポリ−N−メチルイミダゾール−N−メチルピロール・ポリアミド類およびβ−アラニンがC末端ヘテロ環とC末端カチオン末端基の間に存在しないアナログの製造方法
合成方法の一つは、Boc−β−アラニン−WANG固相合成樹脂で開始し、標的配列に必要な構成要素を添加して、ポリアミド・オリゴマーを製造することである。ポリアミド類のC末端で遊離カルボン酸を作ることは、ポリアミド分子から、さらに、溶液相カップリングによって種々の構造(C末端極性基(例えば脂肪族ジアミン類およびトリアミン類から誘導されるカチオン性基)に直接隣接したβ−アラニンがない分子を含む)を合成することを可能とする。Wang樹脂、特にFmoc−β−アラニン−Wang形態の樹脂が、この化学に有用である。これらの樹脂は、例えば、トリフルオロ酢酸切断可能な Novabiochem(登録商標)材料 [NovaSyn(登録商標) TG HMPとして知られる]、NovaPeg Wang、HMPA-PEGAおよびHMPA NovaGel(商標) 樹脂を含む。
【0280】
ポリアミドをトリフルオロ酢酸で樹脂から切断する。ポリアミドをWangまたはWang様樹脂からトリフルオロ酢酸によって切断した後、トリフルオロ酢酸を生成物から除去し、その後、C−末端カルボキシレートと新しいアミンをカップリングさせ、C−末端アミドを形成する。一般的に、凍結乾燥および/またはイオン交換を用いてトリフルオロ酢酸またはそのアニオンを除去し、その後、アミドカップリング反応を行って、ポリアミドを合成する。さらに、イオン交換でカチオン性ポリアミドの塩酸塩(または類似塩)を製造し、その後に、アミド結合形成するのが望ましい。
【0281】
次いで、脂肪族β−アミノ酸がC−末端カチオン基に直接隣接する位置にないものを除いて、得られたC−末端での遊離カルボン酸を、DNAを認識するポリアミドのための標準的な構成要素からなる分子を含む溶液中で反応させる。
【0282】
C−末端アミン類の適当な例は、下記の構造を含む:
【化31】

ここで、
X=CH、N;
PG=必要なアミド結合形成条件に対して安定な保護基。
適当な保護基の例は、FMOC、BocおよびTBDMSを含む。
【0283】
それぞれのユニットを加えた後、ポリアミド化合物をMALDI質量スペクトルで確認した。測定は、Peptides International (Louisville KY)で行った。ポリアミド類は、分取HPLCによって98%以上の純度まで精製された (2回目の分取HPLCにかける必要がある場合がある)。HPLCフラクションを合わせて、最終生成物を得た。その後、分析的HPLCおよび質量スペクトル(MALDI)により、最終生成物が存在することおよび失敗した配列が存在しないことが示された。
【0284】
本明細書で引用された全ての引用文献は、言及することによってその全体が組み込まれている。
【0285】
他の態様
本発明は、その詳細な説明と併せて記載されているが、前述の記載は説明することを意図したものであって本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は請求項の範囲によって規定されると理解されるべきである。他の態様、利点および修飾は、請求項の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0286】
【図1】HPV16複製数に対するシドホビル(cidafovir)およびIFNγの効果を、2種のポリアミドと比較している。
【図2】図2Aは、ポリアミドのIC50値を決定するためのQ−PCRの結果の代表的なグラフを示す。図2Bは、ポリアミドで処理した細胞中のHPV16 DNA複製数における投与量依存性減少、およびポリアミドの細胞生存率に対する効果を示す。
【図3】HPV16エピソームに対するポリアミド類の投与量依存性の効果を示したグラフを示す。
【図4】ポリアミドによるHPV DNAクリアランスのサザン・ブロットを示す。
【図5】HPV16複製数に対する濃度変化させたポリアミド 1037の力価と、ジスタマイシンAおよびシドホビルの力価を比較し、またそれぞれの細胞生存率に対する対応する効果を比較する。
【図6】例示的ポリアミドの化学構造を示す。
【図7】HPV16エピソームへの、ケラチン生成細胞からポリアミドを離脱した効果を示す。
【図8】異なるポリアミド結合モチーフの図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
Z−(X)−γ−(X)−Y−A
[式中、
m+3は、少なくとも11であり;
n=m−o;
oは、0、1または2であり;
Zは、Q−C(O)−であり;
Qは、H、非置換脂肪族、ハロ−脂肪族、所望により1〜2個のアミン基で置換されているC1−4脂肪族、および、所望により脂肪族またはハロ−脂肪族で置換されているヘテロアリールから選択され;
Xは、それぞれ、β−アラニン (式III)、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルピロール (式I)、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルイミダゾール (式II)、C1−6脂肪族アミノ酸、天然α−アミノ酸、式X1、式X2、式X3、式X4、式X5、式X6、式X7、および式X8 (それぞれは表1に示される)からなる群から独立して選択され;
γは、γ−アミノ酪酸(式IV)、(R)−2,4−ジアミノ酪酸 (式VI)、(S)−2,4−ジアミノ酪酸、式γ1、式γ2、式γ3、式γ4 (それぞれは表1に示される)、式IX:
【化1】

{式中、Rは、それぞれ、−C(O)−R1Aから独立して選択され;
1Aは、それぞれ、H、非置換脂肪族およびハロ−脂肪族から独立して選択される。}、
および、式IXのエナンチオマーからなる群から選択され;
Yは、β−アラニン (式III)、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルピロール (式I)、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルイミダゾール (式II)、式X7 (表1に示される)、およびC1−6脂肪族アミノ酸、および天然α−アミノ酸からなる群から独立して選択され;
Aは、式A1、式A2、式A3、式A4、式A5、式A6、式A7、式A8、式A9、式A10、式A11 (それぞれは表1に示される)、および、
【化2】

{式中、Rはそれぞれ独立してC1−5脂肪族である。}からなる群から選択される。]
の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
Z−(X)−γ−(X)−Y−A中の4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルイミダゾール (式II)ユニットの総数が、0.10(m+n+2)未満である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Z−(X)−γ−(X)−Y−A中の全てのβ−アラニン (式III)ユニットが、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルピロール (式I)の少なくとも3個の連続ユニット、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルイミダゾール (式II)の少なくとも3個の連続ユニット、あるいは、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルピロール (式I)と4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルイミダゾール (式II)の何れかの組み合わせの少なくとも3個の連続ユニットに隣接している、請求項1〜2の何れか1項に記載の化合物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の化合物であって、式:
Z−(P)−(X)−γ−(P)−(β)−(X)−Y−A
[式中、
m+3は、少なくとも9であり;
n=m−o−3;
oは、0、1または2であり;
Zは、Q−C(O)−であり;
Qは、H、非置換脂肪族、ハロ−脂肪族、所望により1または2個のアミン基で置換されているC1−4脂肪族、および、所望により脂肪族またはハロ−脂肪族で置換されているヘテロアリールから選択され;
Xは、それぞれ、β−アラニン (式III)、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルピロール (式I)、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルイミダゾール (式II)、C1−6脂肪族アミノ酸、天然α−アミノ酸、式X1、式X2、式X3、式X4、式X5、式X6、式X7、および式X8からなる群から独立して選択され;
γは、γ−アミノ酪酸 (式IV)、(R)−2,4−ジアミノ酪酸 (式VI)、(S)−2,4−ジアミノ酪酸、式γ1、式γ2、式γ3、式γ4、および、式IX:
【化3】

{式中、Rは、それぞれ、−C(O)−R1Aであり;
1Aは、H、非置換脂肪族またはハロ−脂肪族である。}
からなる群から選択され;
Yは、それぞれ、β−アラニン (式III)、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルピロール (式I)、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルイミダゾール (式II)、式X7、C1−6脂肪族アミノ酸、および、天然α−アミノ酸からなる群から独立して選択され;
Aは、式A1、式A2、式A3、式A4、式A5、式A6、式A7、式A8、式A9、式A10、式A11、
【化4】

{式中、Rはそれぞれ独立してC1−5脂肪族である。}からなる群から選択される。]
を有する化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
式:
Z−(P)−β−(X)−γ−(P)−β−(X)−Y−A
[式中、
m+3は、少なくとも7であり;
n=m−o;
oは、0、1または2であり;
Zは、Q−C(O)−であり;
Qは、H、非置換脂肪族、ハロ−脂肪族、所望により1または2個のアミン基で置換されているC1−4脂肪族、および、所望により脂肪族またはハロ−脂肪族で置換されているヘテロアリールから選択され;
Xは、それぞれ、β−アラニン (式III)、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルピロール (式I)、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルイミダゾール (式II)、C1−6脂肪族アミノ酸、天然α−アミノ酸、式X1、式X2、式X3、式X4、式X5、式X6、式X7、および式X8からなる群から独立して選択され;
γは、γ−アミノ酪酸 (式IV)、(R)−2,4−ジアミノ酪酸 (式VI)、(S)−2,4−ジアミノ酪酸、式γ1、式γ2、式γ3、式γ4、および、式IX:
【化5】

{式中、Rは、−C(O)−R1Aであり;
1Aは、H、非置換脂肪族またはハロ−脂肪族である。}
からなる群から選択され;
Yは、β−アラニン (式III)、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルピロール (式I)、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルイミダゾール (式II)、式X7、C1−6脂肪族アミノ酸、および天然α−アミノ酸からなる群から独立して選択され;
Aは、式A1、式A2、式A3、式A4、式A5、式A6、式A7、式A8、式A9、式A10、式A11、
【化6】

{式中、Rはそれぞれ独立してC1−5脂肪族である。}
からなる群から選択される。]
の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
Z−(X)−γ−(X)−Y−A中の4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルイミダゾール (式II)ユニットの総数が、0.10(m+n+2)未満である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
Qが、H、所望により1から3個のハロで置換されているC1−4脂肪族、または、所望により置換されている単環式ヘテロアリールから選択される、請求項1〜6の何れか1項に記載の化合物。
【請求項8】
Qが、所望により置換されているイミダゾールである、請求項1〜7の何れか1項に記載の化合物。
【請求項9】
QがN−メチルイミダゾールである、請求項1〜8の何れか1項に記載の化合物。
【請求項10】
Qが(CF)−である、請求項1〜8の何れか1項に記載の化合物。
【請求項11】
QがHである、請求項1〜8の何れか1項に記載の化合物。
【請求項12】
Qが、所望により1または2個のアミン基で置換されているC1−4脂肪族である、請求項1〜6の何れか1項に記載の化合物。
【請求項13】
Qが、所望により脂肪族またはハロ−脂肪族で置換されている単環式または二環式ヘテロアリールである、請求項1〜6の何れか1項に記載の化合物。
【請求項14】
Zが、式Z1、式Z2、式Z3、式Z4、式Z5、式Z6、式Z7、式Z8、式Z9、式Z10、式Z11、式Z12、式Z13、式Z14、式Z15、式Z16、および式Z17からなる群から選択される、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
Aが、
【化7】

である、請求項1〜14の何れか1項に記載の化合物。
【請求項16】
Aが、
【化8】

である、請求項1〜14の何れか1項に記載の化合物。
【請求項17】
が、C1−3脂肪族である、請求項15または16に記載の化合物。
【請求項18】
Aが、式A1、式A2、式A3、式A4、式A5、式A6、式A7、式A8、式A9、式A10、および式A11からなる群から選択される、請求項1〜16の何れか1項に記載の化合物。
【請求項19】
式:
−(X)−γ−(X)−Y−
[式中、
m+3は、少なくとも11であり;
n=m−o;
oは、0、1または2であり;
Xは、それぞれ、β−アラニン (式III)、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルピロール (式I)、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルイミダゾール (式II)、C1−6脂肪族アミノ酸、天然α−アミノ酸、式X1、式X2、式X3、式X4、式X5、式X6、式X7、および式X8からなる群から独立して選択され;
γは、γ−アミノ酪酸 (式IV)、(R)−2,4−ジアミノ酪酸 (式VI)、(S)−2,4−ジアミノ酪酸、式γ1、式γ2、式γ3、式γ4、および式IX:
【化9】

からなる群から選択され;
は、それぞれ、−C(O)−R1Aから独立して選択され;
1Aは、それぞれ、H、非置換脂肪族およびハロ−脂肪族から独立して選択され;
Yは、それぞれ、β−アラニン (式III)、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルピロール (式I)、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルイミダゾール (式II)、式X7、C1−6脂肪族アミノ酸、および天然α−アミノ酸からなる群から独立して選択される。]
を含む化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項20】
式:
−(P)−β−(X)−γ−(P)−β−(X)−Y−
[式中、
m+3は、少なくとも7であり;
n=m−o;
oは、0、1または2であり;
Xは、それぞれ、β−アラニン (式III)、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルピロール (式I)、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルイミダゾール (式II)、C1−6脂肪族アミノ酸、天然α−アミノ酸、式X1、式X2、式X3、式X4、式X5、式X6、式X7、および式X8からなる群から独立して選択され;
γは、γ−アミノ酪酸 (式IV)、(R)−2,4−ジアミノ酪酸 (式VI)、(S)−2,4−ジアミノ酪酸、式γ1、式γ2、式γ3、式γ4、および式IX:
【化10】

{式中、Rは−C(O)−R1Aである。}
からなる群から選択され;
1Aは、H、非置換脂肪族またはハロ−脂肪族であり;
Yは、β−アラニン (式III)、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルピロール (式I)、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルイミダゾール (式II)、式X7、C1−6脂肪族アミノ酸、および天然α−アミノ酸からなる群から独立して選択される。]
を含む化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項21】
γが(R)−2,4−ジアミノ酪酸 (式VI)である、請求項1〜20の何れか1項に記載の化合物。
【請求項22】
γがγ−アミノ酪酸 (式IV)である、請求項1〜20の何れか1項に記載の化合物。
【請求項23】
mが8、9、10または11である、請求項1〜4、7〜19および21〜22の何れか1項に記載の化合物。
【請求項24】
nが6と10の間の整数である請求項1〜4、7〜19および21〜22の何れか1項に記載の化合物。
【請求項25】
Yがβ−アラニンである、請求項1〜24の何れか1項に記載の化合物。
【請求項26】
式:
Z−(P)−(X)−γ−(P)−(β)−(X)−Y−A
[式中、
m+3は、少なくとも8であり;
n=m−o−3;
oは、0、1または2であり;
Zは、Q−C(O)−であり;
Qは、H、非置換脂肪族、ハロ−脂肪族、所望により1または2個のアミン基で置換されているC1−4脂肪族、および、所望により脂肪族またはハロ−脂肪族で置換されているヘテロアリールから選択され;
Xは、それぞれ、β−アラニン (式III)、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルピロール (式I)、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルイミダゾール (式II)、C1−6脂肪族アミノ酸、天然α−アミノ酸、式X1、式X2、式X3、式X4、式X5、式X6、式X7、および式X8からなる群から独立して選択され;
γは、γ−アミノ酪酸 (式IV)、(R)−2,4−ジアミノ酪酸 (式VI)、(S)−2,4−ジアミノ酪酸、式γ1、式γ2、式γ3、式γ4、および式IX:
【化11】

{式中、Rは−C(O)−R1Aであり;
1Aは、H、非置換脂肪族またはハロ−脂肪族である。}
からなる群から選択され;
Yは、β−アラニン (式III)、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルピロール (式I)、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルイミダゾール (式II)、式X7、C1−6脂肪族アミノ酸、および天然α−アミノ酸からなる群から独立して選択され;
Aは、式A1、式A2、式A3、式A4、式A5、式A6、式A7、式A8、式A9、式A10、式A11、
【化12】

{式中、Rはそれぞれ独立してC1−5脂肪族である。}
からなる群から選択される。]
の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項27】
Z−(P)−(X)−γ−(P)−(β)−(X)−Y−A中の4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルイミダゾール (式II)ユニットの総数が、0.10(m+n+2)未満である、請求項26に記載の化合物。
【請求項28】
Z−(P)−(X)−γ−(P)−(β)−(X)−Y−A中の全てのβ−アラニン (式III)ユニットが、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルピロール (式I)の少なくとも3個の連続ユニット、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルイミダゾール (式II)の少なくとも3個の連続ユニット、または、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルピロール (式I)と4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルイミダゾール (式II)の何れかの組み合わせの少なくとも3個の連続ユニットに隣接している、請求項26または27に記載の化合物。
【請求項29】
QがH、所望により1から3個のハロで置換されている(C1−4)脂肪族、または、所望により置換されている単環式ヘテロアリールから選択される、請求項26〜28の何れか1項に記載の化合物。
【請求項30】
Qが所望により置換されているイミダゾールである、請求項26〜29の何れか1項に記載の化合物。
【請求項31】
QがN−メチルイミダゾールである、請求項26〜30の何れか1項に記載の化合物。
【請求項32】
QがCF−である、請求項26〜30の何れか1項に記載の化合物。
【請求項33】
QがHである、請求項26〜30の何れか1項に記載の化合物。
【請求項34】
Aが、
【化13】

である、請求項26〜33の何れか1項に記載の化合物。
【請求項35】
Aが、
【化14】

である、請求項26〜33の何れか1項に記載の化合物。
【請求項36】
がC1−3脂肪族である、請求項34または35に記載の化合物。
【請求項37】
γが(R)−2,4−ジアミノ酪酸 (式VI)である、請求項26〜36の何れか1項に記載の化合物。
【請求項38】
γがγ−アミノ酪酸 (式IV)である、請求項26〜37の何れか1項に記載の化合物。
【請求項39】
Yがβ−アラニンである、請求項26〜38の何れか1項に記載の化合物。
【請求項40】
mが25以下である、請求項1〜39の何れか1項に記載の化合物。
【請求項41】
【化15】

【化16】

からなる群から選択される化合物。
【請求項42】
治療有効量の請求項1〜41の何れか1項に記載の化合物および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項43】
抗ウイルス剤をさらに含む、請求項42に記載の医薬組成物。
【請求項44】
該抗ウイルス剤が、インターフェロン類、イミキモド、シドホビル、ホルムアルデヒド、グルタラール、シメチジン、5−フルオロウラシル、トリクロロ酢酸、ブレオマイシン、ポドフィロックスおよびポドフィルムからなる群から選択される、請求項43に記載の医薬組成物。
【請求項45】
HPV感染細胞を処置する方法であって、該細胞を、請求項1〜41の何れか1項に記載の化合物と接触させることを含む方法。
【請求項46】
該細胞を、抗ウイルス剤と接触させることをさらに含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
該抗ウイルス剤が、インターフェロン類、イミキモド、シドホビル、ホルムアルデヒド、グルタラール、シメチジン、5−フルオロウラシル、トリクロロ酢酸、ブレオマイシン、ポドフィロックスおよびポドフィルムからなる群から選択される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
患者または対象におけるHPV感染細胞を処置する方法であって、患者または対象に、請求項1〜41の何れか1項に記載の化合物を投与することを含む方法。
【請求項49】
抗ウイルス剤を患者に投与することをさらに含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
該抗ウイルス剤が、インターフェロン類、イミキモド、シドホビル、ホルムアルデヒド、グルタラール、シメチジン、5−フルオロウラシル、トリクロロ酢酸、ブレオマイシン、ポドフィロックスおよびポドフィルムからなる群から選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
患者におけるHPV感染細胞を処置する方法であって、患者に、請求項42〜44に記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
【請求項52】
該HPVが、HPV11、HPV16、HPV18、HPV1またはHPV6を含む、請求項45〜51の何れかに記載の方法。
【請求項53】
HPV16感染細胞を処置する方法であって、患者に、式:
Z−(X)−γ−(X)−Y−A
[式中、
m+3は、少なくとも10であり;
n=m−o;
oは、0、1または2であり;
Zは、Q−C(O)−であり;
Qは、H、非置換脂肪族、ハロ−脂肪族、所望により1または2個のアミン基で置換されているC1−4脂肪族、および所望により脂肪族またはハロ−脂肪族で置換されているヘテロアリールから選択され;
Xは、それぞれ、β−アラニン (式III)、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルピロール (式I)、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルイミダゾール (式II)、C1−6脂肪族アミノ酸、天然α−アミノ酸、式X1、式X2、式X3、式X4、式X5、式X6、式X7、および式X8からなる群から独立して選択され;
γは、γ−アミノ酪酸 (式IV)、(R)−2,4−ジアミノ酪酸 (式VI)、(S)−2,4−ジアミノ酪酸、式γ1、式γ2、式γ3、式γ4、および式IX:
【化17】

{式中、Rは−C(O)−R1Aであり;
1Aは、H、非置換脂肪族、またはハロ−脂肪族である。}
からなる群から選択され;
Yは、β−アラニン (式III)、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルピロール (式I)、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルイミダゾール (式II)、式X7、C1−6脂肪族アミノ酸、および天然α−アミノ酸からなる群から独立して選択され;
Aは、式A1、式A2、式A3、式A4、式A5、式A6、式A7、式A8、式A9、式A10、式A11、
【化18】

{式中、Rはそれぞれ独立してC1−5脂肪族である。}
からなる群から選択される。]
の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法。
【請求項54】
Z−(X)−γ−(X)−Y−A中の4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルイミダゾール (式II)ユニットの総数が、0.10(m+n+2)未満である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
Z−(X)−γ−(X)−Y−A中の全てのβ−アラニン (式III)ユニットが、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルピロール (式I)の少なくとも3個の連続ユニット、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルイミダゾール (式II)の少なくとも3個の連続ユニット、あるいは、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルピロール (式I)と4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルイミダゾール (式II)の何れかの組み合わせの少なくとも3個の連続ユニットに隣接している、請求項53〜54の何れか1項に記載の方法。
【請求項56】
該化合物が、式:
Z−(P)−(X)−γ−(P)−(β)−(X)−Y−A
[式中、
m+3は、少なくとも8であり;
n=m−o−3;
oは、0、1または2であり;
Zは、Q−C(O)−であり;
Qは、H、非置換脂肪族、ハロ−脂肪族、または所望により置換されているヘテロアリールから選択され;
Xは、それぞれ、β−アラニン (式III)、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルピロール (式I)、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルイミダゾール (式II)、C1−6脂肪族アミノ酸、および天然α−アミノ酸からなる群から独立して選択され;
γは、γ−アミノ酪酸 (式IV)、(R)−2,4−ジアミノ酪酸 (式VI)、(S)−2,4−ジアミノ酪酸、および式IX:
【化19】

{式中、Rは、−C(O)−R1Aであり;
1Aは、H、非置換脂肪族、またはハロ−脂肪族である。}
からなる群から選択され;
Yは、β−アラニン (式III)、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルピロール (式I)、4−アミノ−2−カルボニル−N−メチルイミダゾール (式II)、C1−6脂肪族アミノ酸、および天然α−アミノ酸からなる群から独立して選択され;
Aは、
【化20】

{式中、Rはそれぞれ独立してC1−5脂肪族である。}
である。]
を有する化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項53〜55の何れか1項に記載の方法。
【請求項57】
Qが、H、所望により1から3個のハロで置換されているC1−4脂肪族、または所望により置換されている単環式ヘテロアリールから選択される、請求項42〜56の何れか1項に記載の方法。
【請求項58】
Qが、所望により置換されているイミダゾールである、請求項53〜57の何れか1項に記載の方法。
【請求項59】
QがN−メチルイミダゾールである、請求項53〜58の何れか1項に記載の方法。
【請求項60】
QがCF−である、請求項53〜58の何れか1項に記載の方法。
【請求項61】
QがHである、請求項53〜58の何れか1項に記載の方法。
【請求項62】
Aが、
【化21】

である、請求項53〜61の何れか1項に記載の方法。
【請求項63】
Aが、
【化22】

である、請求項53〜61の何れか1項に記載の方法。
【請求項64】
がC1−3脂肪族である、請求項62〜63の何れか1項に記載の方法。
【請求項65】
γが、(R)−2,4−ジアミノ酪酸 (式VI)である、請求項53〜64の何れか1項に記載の方法。
【請求項66】
γがγ−アミノ酪酸 (式IV)である、請求項53〜65の何れか1項に記載の方法。
【請求項67】
mが7と11の間の整数である、請求項53〜65の何れか1項に記載の方法。
【請求項68】
nが5と10の間の整数である、請求項53〜65の何れか1項に記載の方法。
【請求項69】
Yがβ−アラニンである、請求項53〜68の何れか1項に記載の方法。
【請求項70】
該化合物が、
【化23】

【化24】

から選択される、請求項45〜69の何れか1項に記載の方法。
【請求項71】
抗ウイルス剤を投与することをさらに含む、請求項45〜70の何れか1項に記載の方法。
【請求項72】
該抗ウイルス剤が、インターフェロン類、イミキモド、シドホビル、ホルムアルデヒド、グルタラール、シメチジン、5−フルオロウラシル、トリクロロ酢酸、ブレオマイシン、ポドフィロックス、およびポドフィルムからなる群から選択される、請求項71に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−536680(P2009−536680A)
【公表日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−509753(P2009−509753)
【出願日】平成19年5月4日(2007.5.4)
【国際出願番号】PCT/US2007/010907
【国際公開番号】WO2007/130616
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(508272879)ナノビール・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (1)
【氏名又は名称原語表記】Nanovir, LLC
【Fターム(参考)】