説明

ヒドロゲルおよびヒドロゲル粒子

本発明は、加工されたヒドロゲル、ヒドロゲル粒子、ヒドロゲル含有組成物、およびそれらの製造方法を提供する。本発明は、ヒドロゲル、ヒドロゲル粒子、またはヒドロゲル含有組成物を移植、注入、または投与し、必要とする患者を処置する方法も提供する。予備固化された、または予備ゲル化されたヒドロゲル粒子を架橋させ、架橋したヒドロゲル、架橋したヒドロゲル粒子、および架橋したヒドロゲル含有組成物を製造する方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、2005年5月18日提出の米国仮出願第60/682,008号(この全文は引用することにより本願明細書の開示の一部とされる)に対して優先権を主張する。
【発明の分野】
【0002】
本発明は、ヒドロゲル、ヒドロゲル粒子、ヒドロゲル含有組成物の加工、ならびに、加工されたヒドロゲル、ヒドロゲル粒子、およびヒドロゲル含有組成物の投与方法に関する。本発明は、ヒドロゲル、ヒドロゲル粒子、ヒドロゲル含有組成物の製造方法、ならびに、必要とされる患者の処置におけるそれらの使用にも関する。
【発明の背景】
【0003】
ヒドロゲルは、例えばポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(PNIAAm)、ポリビニルピロリドン(PVP)等の主として親水性の単独重合体または共重合体から構成される水膨潤した三次元的構造である。PVA系のヒドロゲルは、種々の生物医学用途における使用に関して開示されている(Hassan & Peppas, Advances in Polymer Science, vol. 153, Springer−Verlag Berlin Heidelberg, 2000, pp. 37−65、Lowman et al. Ed., John Wiley and Sons, 1999. pp. 397−418参照)。
【0004】
ヒドロゲルは、椎間板置換または板増強、傷の手当て、軟骨置換、関節置換、外科手術バリヤー、胃腸装置、投薬、美容および再形成手術、および胸部拡大等の種々の生物医学用途に使用されている。
【0005】
ヒドロゲル処方物は、それらを体空隙中に液体形態で注入し、空隙内でゲル化させる用途にも知られている(RubertiおよびBraithwaite、米国特許出願公開第20040092653号および同第20040171740号を参照)。
【0006】
Lowmanらは、液体形態でも注入可能なゲル処方物を開示している(米国特許出願公開第2004/0220296号)。この液体処方物は、体内で相変換して生理学的体温において固体ヒドロゲル充填物を形成する。
【0007】
Stedronskyらは、別のゲル処方物を開示している(米国特許第6,423,333号)。Stedronskyらは、タンパク質系のゲルを使用し、流体として体空隙中に注入して、その流体が空隙中で固化してゲルを形成する。
【0008】
Sawhneyは、注入可能なヒドロゲル処方物を開示しており、このヒドロゲルは、体空隙中に注入すると、キレート化剤によって、または熱反転可能な転移によって、物理的に結合し、次いで架橋剤の添加により化学的に架橋する(米国特許第6,818,018号)。
【0009】
BaoおよびHighamは、水性流体に対して半浸透性のメンブラン中に含まれるヒドロゲルビーズから構成される補欠核(prosthtic nucleus)を開示している(米国特許第5,192,326号)。これらのビーズは、重合体と水のみを含むものであり、ビーズ含有量の少なくとも30%を水が占める。
【0010】
上記した系においては、空隙を液体ゲルで完全に充填し、そのゲルを、ゲル化工程を通して空隙中で固化させ、空隙中の空間を占有する非流動性のゲル系を達成すること目的としている。
【0011】
上記文献のいずれにおいても、前駆物質ヒドロゲル溶液中に予備固化したヒドロゲル粒子を含むヒドロゲル処方物は開示されていない。ヒドロゲル粒子処方物の内移植または注入により、体空隙中に投与される流体ゲルの量が最少に抑えられるので、少量の内移植物または前駆物質ヒドロゲル溶液のみを空隙中でゲル化させればよい。内移植可能な、または注入可能なヒドロゲル粒子系および処方物の他の利点は、以下に考察する。
【0012】
さらに、ヒドロゲル粒子を使用して所望の特性を有するヒドロゲル充填材を製造することができる。ある種のヒドロゲル粒子をヒドロゲルマトリックス中に配置して製品を形成でき、その製品は、充填材の形状のままでもよく、また充填材を機械加工してもよい。種々のヒドロゲル粒子処方物をブレンドしたり、種々の化学的組成を有するヒドロゲルマトリックス中にヒドロゲル粒子処方物を注入して、製品または充填材の特性を適切に調整することができる。次いで、充填材を必要とする患者に外科的に投与し、例えば軟骨欠損を充填する、椎間板の核空間を充填する、組織を増強する、あるいは組織を置き換えることができる。
【0013】
ヒドロゲル粒子系、処方物、注入可能なヒドロゲル粒子系、ヒドロゲル粒子を含む加工されたヒドロゲル充填材、投与方法、および必要とされる患者の処置におけるそれらの使用は、本発明により初めて開示される。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、一般的には加工されたヒドロゲル、ヒドロゲル粒子、ヒドロゲル粒子含有組成物、およびそれらを製造および使用する方法に関する。
【0015】
本発明は、加工されたヒドロゲル、ヒドロゲル粒子、機械的に変形したヒドロゲル粒子、圧縮されたヒドロゲル粒子、ヒドロゲル粒子を製造する方法、および粒子状ヒドロゲル系の加工方法を提供する。本発明は、注射針を通過できる十分に小さな、予備ゲル化された、または予備固化したヒドロゲル粒子も提供する。針のサイズは、例えば、針サイズ約33、約28、約25、約22、約20または約18ゲージ以下、もしくはその近傍、またはそれらの中間のサイズでよい。針の内径も、例えば約0.025mm以上、または約0.089mmもしくは約0.10mm以上、あるいは、その近傍またはその中間の直径でよい。
【0016】
本発明の一実施態様によれば、少なくとも一種のゲル化剤を含んでなる加工されたヒドロゲル粒子であって、ヒドロゲル粒子中に埋め込まれたゲル化剤が、前記ヒドロゲル粒子から外に拡散して、周囲のヒドロゲルマトリックスをゲル化させる、ヒドロゲル粒子が提供される。
【0017】
本発明の別の態様によれば、機械的に変形したヒドロゲル粒子を含んでなる加工されたヒドロゲル粒子であって、前記ヒドロゲル粒子が少なくとも一種のゲル化剤を含んでなり、前記ヒドロゲル粒子中に埋め込まれた前記ゲル化剤が、前記ヒドロゲル粒子から外に拡散して、周囲のヒドロゲルマトリックスをゲル化させる、ヒドロゲル粒子が提供される。
【0018】
本発明の別の態様によれば、少なくとも一種のゲル化剤を含んでなる加工されたヒドロゲル粒子であって、前記ゲル化剤が前記ヒドロゲル粒子中に埋め込まれており、前記ヒドロゲル粒子が注入可能なサイズを有し、前記粒子が体空隙中に注入された時に、前記ゲル化剤が前記ヒドロゲル粒子から外に拡散して、周囲のヒドロゲルマトリックスをゲル化させる、ヒドロゲル粒子が提供される。
【0019】
本発明の別の態様によれば、a)加工されたヒドロゲル粒子、b)前記ヒドロゲル粒子中に埋め込まれた少なくとも一種のゲル化剤、およびc)前駆物質ヒドロゲル溶液を含んでなる、加工されたヒドロゲル組成物であって、前記ヒドロゲル粒子が前記ヒドロゲル溶液の中に分散しており、前記ゲル化剤が前記ヒドロゲル粒子から外に拡散して、周囲のヒドロゲルマトリックスをゲル化させる、ヒドロゲル組成物が提供される。
【0020】
本発明の別の態様によれば、a)注入可能なサイズを有する加工されたヒドロゲル粒子、b)前記ヒドロゲル粒子中に埋め込まれた少なくとも一種のゲル化剤、およびc)ヒドロゲル溶液を含んでなる、加工されたヒドロゲル組成物であって、前記ヒドロゲル粒子が前記ヒドロゲル溶液の中に分散しており、前記組成物が体空隙中に注入された時に、前記ゲル化剤が前記ヒドロゲル粒子から外に拡散して、周囲のヒドロゲルマトリックスをゲル化させる、ヒドロゲル組成物が提供される。
【0021】
本発明の別の態様によれば、a)ポリビニルアルコール(PVA)粒子と、b)少なくとも一種のゲル化剤とを含んでなる、加工されたヒドロゲル粒子であって、前記ヒドロゲル粒子中に埋め込まれた前記ゲル化剤が、前記ヒドロゲル粒子から外に拡散して、周囲のヒドロゲルマトリックスをゲル化させる、ヒドロゲル粒子が提供される。
【0022】
本発明の別の態様によれば、a)注入可能なサイズを有するポリビニルアルコール(PVA)ヒドロゲル粒子と、b)前記ヒドロゲル粒子中に埋め込まれた少なくとも一種のゲル化剤とを含んでなる、加工されたヒドロゲル粒子であって、前記粒子が体空隙中に注入された時に、前記ゲル化剤が前記ヒドロゲル粒子から外に拡散して、周囲のヒドロゲルマトリックスをゲル化させる、ヒドロゲル粒子が提供される。
【0023】
本発明の別の態様によれば、a)PVAを含んでなる加工されたヒドロゲル粒子と、b)前記ヒドロゲル粒子中に埋め込まれた少なくとも一種のゲル化剤と、c)前駆物質ヒドロゲル溶液とを含んでなる、加工されたヒドロゲル組成物であって、前記ヒドロゲル粒子が前記ヒドロゲル溶液の中に分散しており、前記ゲル化剤が前記ヒドロゲル粒子から外に拡散して周囲のヒドロゲルマトリックスをゲル化させる、ヒドロゲル組成物が提供される。
【0024】
本発明の別の態様によれば、a)注入可能なサイズを有し、PVAを含んでなる、加工されたヒドロゲル粒子と、b)前記ヒドロゲル粒子中に埋め込まれた少なくとも一種のゲル化剤と、c)ヒドロゲル溶液とを含んでなる、加工されたヒドロゲル組成物であって、前記ヒドロゲル粒子が前記ヒドロゲル溶液の中に分散しており、前記組成物が体空隙中に注入された時に、前記ゲル化剤が前記ヒドロゲル粒子から外に拡散して、周囲のヒドロゲルマトリックスをゲル化させる、ヒドロゲル組成物が提供される。
【0025】
本発明の別の態様によれば、加工されたヒドロゲル組成物の製造方法であって、a)予備ゲル化されたヒドロゲル粒子を用意すること、b)前記ヒドロゲル粒子に少なくとも一種のゲル化剤を装填すること、およびc)前駆物質ヒドロゲル溶液を用意し、組成物の調製前に、前記ヒドロゲル溶液中にヒドロゲル粒子を分散させることを含んでなる、方法が提供される。
【0026】
本発明の別の態様によれば、加工されたヒドロゲル組成物の製造方法であって、a)PVAを含んでなり、注入可能なサイズを有する、予備ゲル化されたヒドロゲル粒子を用意し、b)前記ヒドロゲル粒子に少なくとも一種のゲル化剤を装填すること、およびc)前駆物質ヒドロゲル溶液を用意し、組成物の調製前に、前記ヒドロゲル溶液中に前記ヒドロゲル粒子を分散させることを含んでなる、方法が提供される。
【0027】
本発明の別の態様によれば、加工されたヒドロゲル組成物の製造方法であって、a)PVAを含んでなり、注入可能なサイズを有する、予備ゲル化されたヒドロゲル粒子を用意し、b)前駆物質ヒドロゲル溶液を用意し、組成物を調製する前に、前記ヒドロゲル溶液中に前記ヒドロゲル粒子を分散させること、およびc)ヒドロゲル溶液に少なくとも一種のゲル化剤を装填して、前記ヒドロゲル溶液をゲル化させ、ゲル化したヒドロゲル溶液の連続相中に前記ヒドロゲル粒子を捕獲することを含んでなる、方法が提供される。
【0028】
本発明の別の態様によれば、加工されたヒドロゲル粒子を哺乳動物の選択された箇所中に注入して固体充填材を形成する方法であって、a)加工されたヒドロゲル粒子、前記ヒドロゲル粒子中に埋め込まれた少なくとも一種のゲル化剤、および前記ヒドロゲル粒子が分散したヒドロゲル溶液を含んでなる、ヒドロゲルマトリックスが形成されたヒドロゲル組成物、を哺乳動物の選択された箇所中に注入すること、およびb)前記ゲル化剤を前記ヒドロゲル粒子から外に拡散させて、周囲のヒドロゲルマトリックスをゲル化させ、固体充填材を形成することを含んでなる、方法が提供される。
【0029】
本発明の別の態様によれば、加工されたヒドロゲル粒子を哺乳動物の選択された箇所中に注入して固体充填材を形成する方法であって、a)注入可能なサイズを有する、加工されたヒドロゲル粒子、前記ヒドロゲル粒子中に埋め込まれた少なくとも一種のゲル化剤、および前記ヒドロゲル粒子が分散したヒドロゲル溶液を含んでなる、ヒドロゲルマトリックスが形成されたヒドロゲル組成物、を哺乳動物中の選択された体空隙中に注入すること、およびb)前記ゲル化剤を前記ヒドロゲル粒子から体空隙中に拡散させて、周囲の、体空隙中のヒドロゲルマトリックスをゲル化させ、固体充填材を形成することを含んでなる、方法が提供される。
【0030】
本発明の別の態様においては、ヒドロゲル粒子または前記粒子を含んでなる組成物は、椎間板置換、傷の手当て、軟骨置換、関節置換、外科手術バリヤーまたは胃腸機器としての移植、美容および再形成手術、または胸部または筋肉拡大のための外科的手順において、哺乳動物中に注入される。
【0031】
本発明の別の態様においては、ヒドロゲル粒子または前記粒子を含んでなる組成物は、哺乳動物中に注入され、股、膝等の軟骨欠損や関節中の空隙、または核腔、椎間板内の核空間を充填し、関節または負荷支持表面として作用する。
【0032】
本発明の別の態様によれば、加工されたヒドロゲル粒子を哺乳動物の選択された箇所に注入して固体充填材を形成することを含んでなる、哺乳動物の処置方法であって、a)少なくとも一種のゲル化剤がヒドロゲル粒子中に埋め込まれており、前記ヒドロゲル粒子が前駆物質溶液中に分散した、ヒドロゲルマトリックスが形成された加工されたヒドロゲル粒子、を哺乳動物の選択された箇所に注入すること、およびb)前記ゲル化剤を前記ヒドロゲル粒子から外に拡散させて、周囲のヒドロゲルマトリックスをゲル化させ、固体充填材を形成することを含んでなる、方法が提供される。
【0033】
本発明の別の態様によれば、加工されたヒドロゲル粒子を哺乳動物に注入して、固体充填材を形成することを含んでなる、哺乳動物の処置方法であって、a)注入可能なサイズを有し、少なくとも一種のゲル化剤がヒドロゲル粒子中に埋め込まれており、前駆物質ヒドロゲル溶液中に分散してヒドロゲルマトリックスを形成する、加工されたヒドロゲル粒子、を哺乳動物の選択された体空隙中に注入すること、およびb)前記ゲル化剤を前記ヒドロゲル粒子から体空隙中に拡散させて、周囲の、体空隙中のヒドロゲルマトリックスをゲル化させ、固体充填材を形成することを含んでなる、方法が提供される。
【0034】
本発明の別の態様においては、哺乳動物は、椎間板置換、傷の手当て、軟骨置換、関節置換、外科手術バリヤーまたは胃腸機器としての移植、美容および再形成手術、または胸部もしくは筋肉拡大のために処置されものである。
【0035】
本発明の別の態様においては、哺乳動物が、股、膝等の軟骨欠損、関節、または核腔、椎間板内の核空間において、関節または負荷支持表面として作用するように処置される。
【0036】
本発明の別の態様によれば、問題とする区域にヒドロゲル組成物を供給するためのキットであって、少なくとも一種のゲル化剤が装填されているか、または埋め込まれている、予備ゲル化した、または予備固化したヒドロゲル粒子の容器、ヒドロゲル溶液を含む容器、および供給装置を含んでなる、キットが提供される。
【0037】
本発明の別の態様によれば、架橋したヒドロゲル粒子の製造方法であって、a)油中で、ヒドロゲル溶液のエマルションを形成して、予備固化した、または予備ゲル化したヒドロゲル粒子を形成すること、b)前記ヒドロゲル粒子を架橋させて、架橋ヒドロゲル粒子を形成すること、およびc)形成された前記油エマルションから前記架橋したヒドロゲル粒子を単離すること、を含んでなる、方法が提供される。
【0038】
本発明の別の態様によれば、架橋したヒドロゲル組成物の製造方法であって、a)油中で、ヒドロゲル溶液のエマルションを形成して、予備固化した、または予備ゲル化したヒドロゲル粒子を形成すること、b)前記ヒドロゲル粒子を架橋させて、架橋ヒドロゲル粒子を形成すること、c)前記油エマルションから前記架橋ヒドロゲル粒子を単離すること、d)前記架橋ヒドロゲル粒子に少なくとも一種のゲル化剤を装填すること、およびe)前駆物質ヒドロゲル溶液を用意し、組成物の調製前に、前記ヒドロゲル溶液中に前記架橋ヒドロゲル粒子を分散させることを含んでなる、方法が提供される。
【0039】
本発明の別の態様によれば、架橋したヒドロゲル組成物の製造方法であって、a)油中でヒドロゲル溶液のエマルションを形成して、予備固化した、または予備ゲル化したヒドロゲル粒子を形成すること、b)前記ヒドロゲル粒子を架橋させて、架橋ヒドロゲル粒子を形成すること、c)前記油エマルションから、注入可能なサイズを有する前記架橋ヒドロゲル粒子を単離すること、d)前記架橋ヒドロゲル粒子に少なくとも一種のゲル化剤を装填すること、およびe)前駆物質ヒドロゲル溶液を用意し、組成物を調製する前に、前記ヒドロゲル溶液中に前記架橋ヒドロゲル粒子を分散させることを含んでなる、方法が提供される。
【0040】
本発明の別の態様によれば、架橋したヒドロゲル組成物の製造方法であって、a)油中で、ヒドロゲル溶液のエマルションを形成して、予備固化した、または予備ゲル化したヒドロゲル粒子を形成すること、b)前記ヒドロゲル粒子を架橋させて、架橋ヒドロゲル粒子を形成すること、c)前記油エマルションから、PVAを含んでなり、注入可能なサイズを有する前記架橋ヒドロゲル粒子を単離すること、d)前記架橋ヒドロゲル粒子に少なくとも一種のゲル化剤を装填すること、およびe)前駆物質ヒドロゲル溶液を用意し、組成物調製する前に、前記弘度ゲル溶液中に、前記架橋ヒドロゲル粒子を分散させることを含んでなる、方法が提供される。
【0041】
本発明の別の態様においては、前記ヒドロゲル粒子を、電子放射線、ガンマ−放射線、ベータ−エミッタ、グルタルアルデヒド架橋、エピクロロヒドリン(EP)架橋、または光開始架橋により架橋させる。
【0042】
本発明の別の態様においては、加工されたヒドロゲルが、異なったヒドロゲル粒子の領域を含んでなる。
【0043】
本発明の別の態様においては、PVAヒドロゲルが、ポリアクリルアミド粒子または機械的に変形したヒドロゲル粒子を含むPVAゲルの領域を含んでなる。
【0044】
本発明の別の態様においては、PVAヒドロゲルが、ヒドロゲル粒子の配向した領域または機械的に変形したヒドロゲル粒子の領域を含んでなる。
【0045】
本発明の別の態様においては、ヒドロゲルが、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、アルジネート、多糖、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(PNIAAm)、またはそれらの2種類以上の組合せからなる群から選択された重合体、重合体ブレンド、または共重合体を含んでなる。
【0046】
本発明の別の態様においては、ヒドロゲルがポリビニルアルコール(PVA)を含んでなる。
【0047】
本発明の別の態様においては、ヒドロゲルが、少なくとも一種の他の重合体と共重合した、および/またはブレンドされた、ポリビニルアルコール(PVA)を含んでなる。
【0048】
本発明の別の態様においては、ゲル化剤が、塩、アルコール、ポリオール、アミノ酸、糖、タンパク質、多糖、それらの水溶液、またはそれらの2種類以上の混合物からなる群から選択される。
【0049】
本発明の別の態様においては、ゲル化剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(PNIAAm)、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、デルマタン硫酸等、またはそれらの2種類以上の組合せからなる群から選択される。
【0050】
本発明の別の態様においては、ゲル化剤がポリエチレングリコール(PEG)を含んでなる。
【0051】
本発明の別の態様においては、ヒドロゲル溶液が、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(PNIAAm)、またはそれらの2種類以上の組合せを含んでなる。
【0052】
本発明の別の態様においては、ヒドロゲル溶液がポリビニルアルコール(PVA)溶液である。
【0053】
本発明の別の態様においては、ヒドロゲル粒子が、球形、長円形、または不規則な形状を有するか、またはそれらの2種類以上の混合物である。
【0054】
本発明の別の態様においては、ヒドロゲル粒子が、類似の、または異なる形状の多数の粒子の凝集物である。
【0055】
本発明の別の態様においては、医学用充填材または機器に使用するヒドロゲル粒子が、体外でゲル化剤をヒドロゲル溶液と混合し、マトリックスと共にヒドロゲル粒子を成形することにより加工される。ゲル化剤とヒドロゲル溶液およびヒドロゲル粒子との混合は、機器を体内に移植する前に行う。マトリックスのゲル化は、ヒドロゲル粒子からゲル化剤が外に拡散することによっても行うことができる。
【0056】
本発明の別の態様においては、医学用充填材または機器が、体外でヒドロゲル粒子をヒドロゲルマトリックスと組み合わせて成形し、包装して、人に使用するために輸送する前に滅菌されることにより加工される。別の態様においては、加工された充填材または機器が、同じヒドロゲルの領域を含んでなる。別の態様においては、加工された充填材または機器が、異なったヒドロゲルの領域を含んでなる。
【0057】
特に規定のないかぎり、本明細書中の種々の文法的形式で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者に一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書で記載するものと類似の方法および材料は、本発明の実施および試験において使用できるが、好ましい方法および材料を以下に記載する。矛盾が生じた場合、本明細書の定義に従う。さらに、材料、方法および例は、説明のために記載されたものであり、本発明を限定するものではない。
【0058】
本発明の他の特徴、目的、および利点は、特許請求の範囲および下記の詳細な説明から明らかである。しかし、詳細な説明および具体例は、本発明の好ましい態様を示しているが、当業者にはこの詳細な説明から、本発明の精神および範囲内で様々な変形および修正が明らかであり、例示のためにのみ記載することを理解すべきである。
【発明の詳細な説明】
【0059】
本発明は、ヒドロゲルおよびヒドロゲル粒子の加工物を提供する。幾つかの実施態様においては、ヒドロゲル粒子がゲル化剤を含み、粒子をヒドロゲル溶液と混合すると、ゲル化剤が粒子から外に拡散し、周囲のヒドロゲルマトリックスをゲル化させる。あるいは、すでにゲル化剤を含む液体ゲルと共に、粒子を注入することができる。
【0060】
本発明の一実施態様においては、予備ゲル化された、または予備固化されたヒドロゲル粒子を前駆物質ヒドロゲル溶液と共に注入する。予備ゲル化された、または予備固化されたヒドロゲル粒子を液体ゲル溶液中に分散させ、体空隙中に注入する。前駆物質ヒドロゲル溶液は、空隙中において、マトリックスがその場でゲル化するにしたがい、個々の固体ゲル粒子を含む連続マトリックスを形成する。この手法により、大部分を予備ゲル化された粒子とできるため、空隙中に投与する前駆物質ヒドロゲル溶液の量を最少に抑えられる。したがって、空隙の内側では、注入された材料の小さな部分のみがゲル化される。
【0061】
本発明の技術における利点の一つは、種々のヒドロゲル粒子を一つにブレンドし、様々な種類のマトリックスで注入できることである。もう一つの利点は、周囲のマトリックス流体をゲル化させるためにゲル化剤が必要な場合、予備ゲル化された、または予備固化されたヒドロゲル粒子がゲル化剤を含むことができることである。体空隙中に入ることにより、ゲル化剤がヒドロゲル粒子から外に拡散し、マトリックスのゲル化を開始する。この種の粒子−マトリックスにより、機械的特性が改良された不均質なヒドロゲル系が得られる。ヒドロゲル粒子を使用することのさらに別の利点は、粒子状のゲルを、硫酸バリウムまたはジルコニア酸化物等の放射線吸収剤(radiopacifer)、またはナノクレー、ラポナイトおよびモンモリロン石等のナノ粒子により変性できることである。ナノ粒子による変性は、ヒドロゲル粒子の機械的特性を改良する目的に役立つ。
【0062】
予備ゲル化された、または予備固化されたヒドロゲル粒子には、生物学的に活性な分子および/または薬学的に有効な物質を装填することができる。さらに、ヒドロゲル粒子の粒子径分布および形状を制御することができる。
【0063】
ヒドロゲル粒子は、液体ゲル系のエマルションを形成し、続いてその液体ゲル系をエマルション中でゲル化することにより製造することができる。このようにして形成された粒子をエマルションから収集することができる。あるいは、噴霧器を使用して、液体ゲルの液滴を容器中にスプレーし、その中でゲル化させることができる。容器は、減圧下に、および/または室温よりも高いかまたは低い温度に保持することができる。噴霧は、室温溶液を使用し、体温の容器中に行うこともでき、こうして噴霧により形成された滴を、容器の内側で体温に加熱し、ゲル粒子を得ることができる(例えばLowmanらの米国公開第20040220296号を参照)。あるいは、噴霧器を使用して液体ゲル系を噴霧乾燥させ、脱水により強制的にゲル化させることができる。小さなヒドロゲル粒子を形成するための従来の粉砕または摩砕技術により、ヒドロゲル粒子を得ることもできる。粒子を形成するのに使用する液体ゲルは、水性でなくてもよい。
【0064】
本発明の一実施態様においては、ゲル化剤の粒子径は約0.1μm〜約5.0mmである。ゲル化剤粒子の相転移温度は、室温よりも高くてもよく、また体温以下であってもよい。これらの粒子は、前駆物質ヒドロゲル溶液中に分散させることができる。この混合物を体中に注入することができる。ゲル化剤粒子は、体中に注入されることにより、固体から液体への相転移を受け、ゲル化剤を周囲のマトリックス中に放出し、これによって前駆物質ヒドロゲル溶液のゲル化過程を開始することができる(RubertiおよびBraithwaite、米国公開第20040171740号を参照)。
【0065】
あるいは、ゲル化剤粒子は、ゲル化剤材料の液体コア、および室温よりも高い温度かつ体温以下の温度で相転移する材料のシェルで製造することができる。体に注入すると、固体のシェルが融解し、液体ゲル化剤を周囲の前駆物質ヒドロゲル溶液中に放出し、その場でゲル化を誘発する。
【0066】
用語「ゲル化剤」とは、ゲル化させるか、または固化させる試剤を意味する。ゲル化剤は、塩、アルコール、ポリオール、アミノ酸、糖、タンパク質、多糖、それらの水溶液、およびそれらの2種類以上の混合物でよい。例えば、ヒドロゲル粒子の装填に使用するゲル化剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、デルマタン硫酸等でよい。
【0067】
用語「ゲル化」または「ゲル化させる」とは、少なくとも一種のゲル化剤の存在下で、ヒドロゲル粒子を含むマトリックスのゲル形成またはゲル化を引き起こす過程を意味する。これらの用語は、重合体溶液、例えばPVA溶液、の結晶化、および/またはヒドロゲル粒子から外に拡散するゲル化剤、例えばPEG、による永久的な物理的架橋の形成も意味する。「ゲル化」または「ゲル化させる」の用語は、重合体溶液中における化学的架橋の形成も意味し、その際、化学的架橋は、放射線により、またはグルタルアルデヒドまたはエピクロロヒドリン等の化学的架橋剤により誘発することができる。多くの重合体溶液は、イオン化放射線により架橋させてゲル化することができる。PVA重合体溶液は、グルタルアルデヒドまたはエピクロロヒドリンにより架橋させてゲル化することができる。「ゲル化」または「ゲル化させる」の用語は、PNIAAm溶液等の重合体溶液の相転移も意味する。これらの用語は、物理的架橋として作用し、ゲル化を引き起こすイオン性相互作用の発生(formation)も意味する。
【0068】
用語「前駆物質ヒドロゲル溶液」とは、ゲル化を起こすことができる全ての溶液または溶液混合物を意味する。ゲル化過程は、様々な結合または相互作用により、例えば物理的結合(例えば結晶性接合、イオン性相互作用、または架橋、水素結合または親水性結合)により、誘起させることができる。
【0069】
粒子の表面を処理し、粒子からマトリックス中へゲル化剤が拡散する速度を低下させ、周囲にあるマトリックスのゲル化速度を制御することができる。
【0070】
ヒドロゲル粒子は、様々な形状、好ましくは球形を有することができ、一種以上のゲル化剤を埋め込むか、または装填する。
【0071】
ヒドロゲル粒子は様々なサイズを有することができる。ヒドロゲル粒子は、注射針を通過する十分に小さなサイズを有することができる。針のサイズは、例えば針サイズ約33、約28、約25、約22、約20または約18ゲージ以下、もしくはその近傍、またはそれらの中間のサイズが好ましい。針の内径も、例えば約0.025mm以上、または約0.089mmもしくは約0.10mm以上、あるいはその近傍、またはそれらの中間の直径でよい。
【0072】
用語「注入可能なサイズ」とは、上記のように注射針を通過できるヒドロゲル粒子のサイズを意味する。
【0073】
ヒドロゲルは、一般的に重合体、重合体ブレンド、またはポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリアクリル酸(PAA)、アルジネート、多糖、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、ポリ−N−アルキルアクリルアミド、またはポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(PNIAAm)の共重合体が挙げられる。
【0074】
ヒドロゲル粒子は、ポリビニルアルコール(PVA)と、他の重合体またはゲル化剤、例えばポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(PNIAAm)、の少なくとも一種との共重合体および/またはブレンド、もしくはそれらの2種類以上の組合せを含むことができる。
【0075】
ヒドロゲル粒子は、機械的変形により誘起された、例えば一軸変形により誘起された配向を有していてもよい。ヒドロゲル粒子は、加工後に放射線架橋させることができる。ヒドロゲル粒子は、水和させるか、または脱水することができる。
【0076】
本発明の一態様においては、ヒドロゲル粒子は、ポリエチレングリコール(PEG)等のゲル化剤を装填した、加工したポリビニルアルコール(PVA)を含んでなる。これらの粒子は、加工され、PEG分子が埋め込まれている。PEGの分子量を変化させ、粒子をヒドロゲル溶液と混合した時の、PEGが粒子から外へ拡散する速度、およびPEGのゲル化活性を制御する。
【0077】
本発明の一態様において、ヒドロゲル粒子を加工し、続いて機械的に変形させる。機械的変形により、粒子内部に分子配向を引き起こす永久的変形が生じ、例えば粒子を一軸圧縮下で変形させると、粒子中に分子の二軸延伸が起こり、粒子内に異方性、すなわち異なった方向における異なった機械的特性が生じる。これらの機械的に変形した粒子に、ポリエチレングリコール(PEG)等のゲル化剤を装填する。PEGの分子量を変化させ、粒子をヒドロゲル溶液と混合した時の、PEGが粒子から外へ拡散する速度、およびPEGのゲル化活性を制御する。
【0078】
本発明の別の態様においては、ヒドロゲル粒子を加工し、続いて機械的に変形させる。機械的に変形した粒子をヒドロゲル溶液中に入れ、周囲にある溶液をゲル化させ、機械的に変形した粒子を含むヒドロゲルを形成する。一実施態様では、変形した粒子をマトリックス中に不規則に配向させる。別の実施態様においては、変形した粒子が優先的に配向し、例えばヒドロゲル溶液中でフローフィールドを使用することにより、変形した粒子を配向させるか、あるいは、変形したヒドロゲル粒子を含むゲル化したヒドロゲルを機械的に変形させる。
【0079】
用語「機械的変形」としては、一軸チャネルフロー、一軸圧縮、二軸圧縮、振動圧縮、引張、一軸引張、二軸引張、超音波振動、曲げ、平面応力圧縮(チャネルダイ)、またはそれらの2種類以上の組合せが挙げられる。変形は、静的または動的でよい。動的変形は、小または大振幅振動様式における変形モードの組合せでよい。超音波振動を使用できる。
【0080】
別の実施態様においては、ヒドロゲル粒子を脱水してからヒドロゲル溶液と混合する。脱水は、ヒドロゲル粒子を加熱する、真空中に置く、室温で真空中に置く、高温(例えば40℃または100℃)で真空中に置く、ヒドロゲルよりも親水性の高い溶液中に置く(例えばPVA粒子を100%PEGまたはPEG水溶液中に置く)ことにより行うことができる。
【0081】
別の実施態様においては、脱水されたヒドロゲル粒子を放射線架橋させる。
【0082】
別の実施態様においては、脱水されたヒドロゲル粒子を、水または食塩水溶液中に浸漬することにより、再水和させる。再水和は、室温未満の温度から、160℃を超える温度までの種々の温度で行うことができる。例えば、再水和は、約5℃、約10℃、約20℃、約30℃、約40℃、約50℃、約60℃、約70℃、約80℃、約100℃、またはそれらの近傍もしくはそれらの中間の温度で行うことができる。再水和は、大気圧下で、約120℃、約140℃、約160℃、あるいは約200℃、またはそれらの近傍もしくはそれらの中間の温度で行うことができる。再水和は、約100℃を超える場合には、約1atm(大気圧)〜約200atmで行う。例えば、気圧は、約4atm、10atm、15atm、50atm、100atm、150atm、または180atm、またはそれらの近傍もしくはそれらの中間の圧力である。
【0083】
別の実施態様においては、PEG装填したPVAヒドロゲル粒子をPVAの水溶液と混合する。PEG分子が粒子の外に徐々に拡散するにしたがい、PEG分子により周囲のPVA溶液のゲル化が開始される。この過程により、予めゲル化したPVAヒドロゲル粒子が埋め込まれたPVAヒドロゲルマトリックスが形成される。
【0084】
本発明の一態様において、ヒドロゲル粒子を加工し、ゲル粒子を水/PEG混合物中に浸漬し、PEG中に浸漬した時のPVAヒドロゲル粒子収縮の程度を制御することにより、ポリエチレングリコール(PEG)等のゲル化剤を装填する。ゲル化され、最初に水和したPVAヒドロゲル粒子は、100%PEG中に浸漬されると、水を失い脱水される。脱水が収縮を引き起こし、PVAヒドロゲル粒子が小さくなる。ヒドロゲル粒子の収縮程度を制限するには、100%PEGの代わりに、水/PEG混合物中への浸漬を行い、PEGをヒドロゲル粒子中に装填する。水/PEG混合物の比率を変え、最終的な粒子径および粒子状中に装填されるPEGの量を制御する。
【0085】
本発明の別の態様においては、水和してゲル化する。PEGまたはPEG/水混合物中に浸漬して懸濁液を形成することにより、PVAヒドロゲル粒子にPEGを装填する。この懸濁液は、ガンマ放射線滅菌してから、患者に使用するために出荷する。
【0086】
本発明の別の態様においては、PEG装填したPVAヒドロゲル粒子を、PVAの水溶液と混合する。PEG分子が粒子の外に徐々に拡散するにしたがい、PEG分子により周囲のPVA溶液のゲル化が開始される。この過程により、予めゲル化したPVAヒドロゲル球が埋め込まれたPVAヒドロゲルマトリックスが形成される。
【0087】
本発明の一態様において、PVAヒドロゲル粒子を形成する一方法では、10%PVA水溶液を40%PEGと高温(例えば95℃)で混合する。次いで、PVA/PEGブレンドを油性物質(例えば鉱油またはパラフィン油)と混合し、油−PVA/PEG混合物を強く攪拌し、高温でエマルションを形成する。次いで、このエマルションを室温に冷却し、PVA/PEG混合物の球状相をゲル化させる。こうして、予備ゲル化された、または予備固化されたPVAヒドロゲル粒子が形成される。
【0088】
本発明の別の態様においては、PVAヒドロゲル粒子を形成する一方法では、10%PVA水溶液を高温(例えば約95℃まで)または室温で調製する。次いで、PVA溶液を油性物質(例えば鉱油またはパラフィン油)と混合し、油−PVA混合物を攪拌し、高温または室温でエマルションを形成する。次いで、このエマルションを照射してPVA粒子を高温(例えば約95℃まで)で架橋させ、次いで室温に冷却する。あるいは、照射を室温で行う。
【0089】
粒子のサイズおよび形状は、パラフィン油の分子量、エマルションを形成するピーク温度、攪拌の回転速度、エマルション濃度、および/またはPVA水溶液濃度を変えることにより、制御する。
【0090】
ゲル化剤の担体として、ヒドロゲルの、例えば球状の小粒子が使用される。ゲル化剤を支持する粒子は、ヒドロゲル溶液と混合され、周囲のヒドロゲルマトリックスのゲル化を引き起こす。このようにして、少量のヒドロゲル溶液だけが、その場で、または処理現場でゲル化させ、所望の形状をキャスティングするのに必要になる。
【0091】
本発明のヒドロゲル粒子は、どのような形状でも、またはそれらの2種類以上、例えば球形、長円形、および/または不規則形状、の混合物でもよい。本発明のヒドロゲル粒子は、類似の、または異なった形状の、多数の粒子の凝集物でもよい。
【0092】
本発明の別の態様によれば、関節の負荷を支える表面間に、その場で形成されたヒドロゲルクッションを与えることにより、関節病の初期処置方法が提供される。例えば、ヒドロゲルクッションを股関節中にその場で形成するが、これは、大腿骨頭をずらし、関節中の露出した空隙を、ゲル化剤が埋め込まれた、または装填されたヒドロゲル粒子を含むヒドロゲル溶液で充填し、大腿骨頭を元に戻し、ゲル化剤をヒドロゲル粒子から外に拡散させ、ゲル化過程をその場で開始させることにより行う。同様のことを、膝、肩、肘等の他の関節で行う。
【0093】
本発明の別の態様においては、ゲル化剤を装填したヒドロゲル粒子のペーストを、同一または異なる種類のヒドロゲル溶液と混合する。ペーストは粘性の物質であり、人体等の哺乳動物の体の中の空隙を充填するのに使用する。空隙は、椎間板中の核腔、股または膝等の関節中の軟骨欠損等でよい。
【0094】
ヒドロゲル粒子またはヒドロゲル粒子を含んでなる組成物は、様々な生物医学用途、例えば椎間板置換または板増強、傷の手当て、軟骨置換、関節置換、外科手術バリヤー、胃腸機器、投薬、美容および再形成手術(例えば鼻、耳、または顎等)、および胸部拡大に考慮される、または使用することができる。
【0095】
ヒドロゲル粒子またはヒドロゲル粒子を含んでなる組成物は、外科的手順により、椎間板置換、傷の手当て、軟骨置換、関節置換、外科手術バリヤーまたは胃腸装置としての充填材、美容および再形成手術、または胸部もしくは筋肉拡大用として哺乳動物中に移植できる。
【0096】
予備ゲル化されたヒドロゲル粒子には、薬物等の生物学的に活性な分子または薬学的に有効な物質を装填して局所的に送達することもできる。例えば、外科手術箇所およびその周囲で感染を防止するための抗生物質がある。マトリックスではなく、ヒドロゲル粒子に活性分子または物質を装填することにより、事実上一定の溶離プロファイルを得ることができる。
【0097】
本発明の別の態様においては、ゲル化剤および/または他の分子を装填した、予備ゲル化されたヒドロゲル粒子のペーストをヒドロゲル粒子の水溶液と混合し、外科手術中に軟骨欠損に塗布する。周囲にあるヒドロゲル水溶液に対するゲル化速度を適切に調整し、妥当な時間内にゲル化した構造を達成し、軟骨欠損を充填し、関節状の、負荷を支える表面として作用させる。これは、初期関節炎性軟骨病巣がある患者および/または怪我により誘発された軟骨病巣がある患者に適用できる。
【0098】
本発明の別の態様においては、体空隙、例えば股または膝における軟骨欠損もしくは椎間板中の核空間を冷却してから、欠損部に予備ゲル化されたヒドロゲル粒子、ゲル化剤、および/またはヒドロゲル溶液を充填する。軟骨欠損の冷却は、空隙を食塩水溶液で流すことにより達成する。局所的な温度が低い程、ヒドロゲル粒子に対してマトリックスとして作用するヒドロゲル溶液のゲル化速度が速くなる。
【0099】
本発明の別の態様においては、予備ゲル化されたヒドロゲル粒子にゲル化剤を装填し、続いてこれらの粒子を処理し、これらの粒子をヒドロゲル溶液中に浸漬した時の、粒子外へのゲル化剤の拡散を遅延させる外皮層を形成する。この処理は、熱処理か、またはヒドロゲル粒子の外側層を僅かに脱水するための、濃縮されたゲル化剤(例えば100%PEG)中への浸漬でよい。この処理により、含水量が局所的に低下した、より堅いマトリックスが形成され、予備ゲル化されたヒドロゲル粒子の外側層の拡散特性が遅くなる。
【0100】
本発明の別の態様においては、ヒドロゲル水溶液の油中エマルションを形成し、このエマルションを電子放射線またはガンマ−放射線で照射することにより、予備ゲル化されたヒドロゲル粒子を形成する。放射線量は、少なくとも約1kGy、例えば約25kGy、25〜1000kGy、約50kGy、約100kGy、および約150kGyである。照射により、ヒドロゲル粒子がエマルションの小さな領域で架橋し、架橋したゲルを形成する。照射に続いて、ヒドロゲル粒子を油エマルションから取り出して使用する。
【0101】
さらに別の態様においては、ヒドロゲル水溶液の油中エマルションを形成し、ヒドロゲル分子を光反応性化学的架橋剤で架橋させ、それによって、架橋したゲルを形成することにより、予備ゲル化されたヒドロゲル粒子を形成する。架橋に続いて、粒子を油エマルションから除去または単離し、次いで使用するか、またはさらにゲル化剤中に浸漬して装填する。例えば、N,N’−メチレンビスアクリルアミド架橋剤およびオキソ−グルタル酸を含む水中に、アクリルアミドモノマーまたはジメチルアクリルアミドモノマーを溶解させる。次いで、この混合物を油中に入れてエマルションを形成し、次いで、このエマルションをUV光等で照射して架橋させる。あるいは、この混合物は、UV架橋の前にPVAを含んでいてもよい。
【0102】
本発明の一態様においては、予備ゲル化されたヒドロゲル粒子を、ゲル化剤の溶液または純粋なゲル化剤(例えば低分子量ポリエチレングリコール)中に保存する。
【0103】
別の態様においては、放射線を使用して製造した予備ゲル化されたヒドロゲル粒子に、ゲル化剤および/または薬物および/または他の分子を装填する。次いで、これらのゲル化剤装填したヒドロゲル粒子を使用し、周囲の前駆物質ヒドロゲル溶液マトリックスをゲル化させる。
【0104】
本発明の一態様において、ヒドロゲル粒子およびゲル化剤を、二酸化炭素等の超臨界流体中に、約40℃および少なくとも1100psiの二酸化炭素ガスで注入することにより、ヒドロゲル粒子にゲル化剤を装填する。超臨界流体は、ゲル化剤のヒドロゲル粒子中への拡散を促進する。
【0105】
「超臨界流体」とは、この分野で公知の、例えば超臨界プロパン、アセチレン、二酸化炭素(CO)を意味する(例えば米国特許第6448315号および国際特許第WO02/26464号参照)。
【0106】
ヒドロゲル粒子を形成する利点は、ナノメートルサイズの粒子を加えることにより、それらの構造を変える能力にある。本発明の一態様においては、例えば、ヒドロゲル溶液にクレー(例えばモンモリロン石またはラポナイト)を装填する。クレー装填したヒドロゲル溶液を高温でゲル化剤とブレンドし、エマルション中に入れる。室温に冷却した時に、ヒドロゲルエマルションの滴が、クレーを含むゲル粒子を形成する。同様に、クレー装填したヒドロゲル溶液を、ゲル化剤を含まないエマルション中に入れ、そのエマルションを、電子線、ガンマ線、またはベータ−エミッタを使用して照射し、クレーを含む架橋したヒドロゲル粒子を形成する。放射線量は、少なくとも約1kGy、例えば約25kGy、25〜1000kGy、約50kGy、約100kGy、または約150kGyである。次いで、このようにして調製されたヒドロゲル粒子にゲル化剤を装填し、周囲にあるヒドロゲル溶液マトリックスのゲル化に使用する。
【0107】
本発明の別の態様においては、予備ゲル化されたヒドロゲル粒子を、凍結融解技術を使用して形成する。ヒドロゲル溶液の油中エマルションを調製し、0℃未満に冷却し、次いで室温に加熱する。凍結融解サイクルの数により、形成されたヒドロゲル粒子の剛性を増加することができる。凍結融解方法はPVA溶液を用いて行うことができ、特にPVA水溶液(例えば10%)を調製し、油と混合させる。この混合物を攪拌および/または振とうすることにより、エマルションを形成する。次いで、攪拌および/または振とうされたエマルションを、冷凍装置中に入れる。攪拌または振とうを続け、エマルションを維持し、ヒドロゲル粒子の融着を防止する。次いで、エマルションを冷凍装置から取り出し、融解させる。このようにして形成されたゲル化したヒドロゲル粒子も、本明細書に記載する実施態様に使用できる。
【0108】
ヒドロゲル粒子のサイズ分布を変え、特殊な目的に合わせることができる。例えば、ヒドロゲル処方物を注入により移植する場合、ヒドロゲル粒子は注入可能なサイズを有する。しかし、ヒドロゲル粒子の直接移植には、所望により、粒子径はより大きくてもよい。
【0109】
種々の方法、例えばエマルション/ゲル化剤、エマルション/凍結融解、またはエマルション照射により調製したヒドロゲル粒子を一緒にブレンドし、混合物を形成することができる。
【0110】
上記の全てのエマルションで、界面活性剤を使用してエマルションを安定化させ、ヒドロゲル粒子の融着を阻止することができる。界面活性剤は、洗剤、例えばPluronic(登録商標)(プロピレンオキシド−エチレンオキシド)ブロック共重合体、Tween 80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、およびSpan 80(ソルビタンモノオレエート)、または脂肪酸、例えばラウリル硫酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム等でよい。
【0111】
本発明の別の態様においては、エピクロロヒドリン(EP)を加えることにより、エマルション中に形成されたPVAヒドロゲル粒子を架橋させる。EPは、エマルションを調製する前にPVA溶液に加える。あるいは、EPを水性PVAのエマルションに加える。本発明の一態様においては、水酸化ナトリウムの存在下で、PVA水溶液をEPと混合し、50℃で攪拌することにより、PVAをEPで架橋させる。次いで、予備架橋されたPVA溶液をエマルション中に50℃で入れる。PVA粒子が完全に架橋するまで強い攪拌を維持する。
【0112】
本発明の別の態様においては、少量の酸化防止剤またはフリーラジカル補集剤、例えばトコフェロールの一種、例えばビタミンE(α−トコフェロール)または他の種類のトコフェロール、例えばβ−、δ−、およびγ−トコフェロールを加えてゲルを調製する。ビタミンEを含むゲルはガンマ線滅菌する。ガンマ線滅菌の際、ビタミンEはゲルの架橋を防止するか、またはその程度を下げる。その結果、滅菌されたゲルを、後で融解させてゲル溶液を形成することができる。ガンマ線滅菌したゲルの融解を処理現場で行い、ゲル溶液を形成することができる。ビタミンEは、ヒドロゲルを酸化から保護する酸化防止剤としても作用する。
【0113】
ポリビニルアルコール水溶液をPEGを用いて高温で調製する。混合物をガンマ線滅菌した容器の中に入れて室温に冷却する。冷却により、PEGを含むPVAゲル、および場合により、少量の水およびPEGから構成される過剰の液体が形成される。この混合物は、ビタミンEが最終的なゲル形態で存在するように、PVA溶液またはPEG中のビタミンEでも調製することができる。PVAゲルをPEGと共に、および過剰液体をビタミンEと共に含む容器を密封し、ガンマ線滅菌する。処理室で、容器をゲル溶液温度より上(例えば70℃より上、好ましくは約90〜約95℃)に加熱する。この高温で、ゲルが溶解し、その後、人または動物の体にある空隙中に注入される。この溶液は、ゲル化剤PEGを含み、したがって、空隙の内側で再ゲル化が起こり得る。この例は、ゲルをビタミンE等の酸化防止剤で調製した後、手術の際に融解させて体空隙中に注入できるように、どのようにしたら架橋させずにガンマ線滅菌することができるかを示すものである。
【0114】
本発明の別の態様においては、ゲル化剤を含むチャンバー中にヒドロゲル溶液を噴霧することにより、ヒドロゲル粒子を発生させる。ヒドロゲルの溶液を調製し、噴霧器に入れる。噴霧器は、室温または高温で使用することができ、高温により、溶液の粘度が下がり、噴霧が改良される。次いで、噴霧が、ゲル化剤が存在する容器中に運ばれる。ヒドロゲル溶液の噴霧された粒子は、容器内側のゲル化剤と接触し、固化またはゲル化する。こうして、ヒドロゲルの微小球が形成され、容器から収集される。
【0115】
本発明の別の態様においては、ヒドロゲル溶液およびゲル化剤を高温で調製し、噴霧器に入れる。噴霧器に入れる前に、混合物をゲル化が通常開始する温度よりも高温に維持する。例えば、PVA/PEG混合物の場合、溶液を90℃に維持する。ヒドロゲル溶液とゲル化剤の混合物を高温で容器中に噴霧する。噴霧の際に形成された微小球は、容器の底に到達する前に急速に冷却されてゲル化する。この例の別の態様においては、ヒドロゲル溶液とゲル化剤との混合物を噴霧する容器が、微小球のゲル化を促進するための別のゲル化剤を含むことができる。他の態様においては、低濃度のヒドロゲル溶液(例えば2%PVA)を使用し、ヒドロゲル溶液の粘度をさらに下げ、噴霧工程の効率を改良する(すなわち形成される粒子径を下げる)ことができる。噴霧の際に低濃度の溶液を使用すると、形成されるゲルは、あまり強くない場合がある。ゲルの強度は、乾燥(脱水)工程で球の中に存在する水の量を減少させることにより、および/またはゲル化剤の浴中に入れ、さらにゲル化させることにより、増加させることができる。別の態様においては、収集容器を減圧下に維持し、ゲル化工程を支援することができる。
【0116】
本発明の別の態様においては、形成されたヒドロゲルの微粒子を使用してゲル化剤を支持し、粒子をヒドロゲル溶液の中に入れた時にヒドロゲル溶液中でゲル化を引き起こす。ヒドロゲル溶液がゲル化すると、ヒドロゲルの微粒子を含むマトリックスになり、これは、ヒドロゲルマトリックス中のヒドロゲル粒子の領域とも呼ばれる。別の態様においては、ヒドロゲルの微粒子がナノスケールのクレー粒子(例えばラポナイトまたはモンモリロン石)を支持するが、マトリックスはこれを支持しない。その結果、クレーを含むナノスケール粒子を含むヒドロゲルの領域が埋め込まれた、ゲル化したヒドロゲルマトリックスを含む複合材料が形成される。粒子径、粒子間距離、および/または粒子状の濃度を変え、ヒドロゲルの特定の特性を操作することができる。さらに、マトリックス中と粒子中のPVAの相対的濃度を操作し、複合材料特性を変えることもできる。粒子が他の成分(例えばクレー)を含まなくても、周囲にヒドロゲルマトリックスがある予備ゲル化されたヒドロゲル粒子により、不均質ヒドロゲル系が得られる。
【0117】
別の態様においては、すでに形成されたヒドロゲル片を機械的摩滅により粉砕する。この摩滅は、フリーザーミルまたはヒドロゲル粒子を形成するための他の好適な技術により行うことができる。
【0118】
本発明の別の態様においては、形成されたヒドロゲルの微粒子を、脱水してさらにゲル化させることにより小さくする。脱水されて小さくなった微小球を体空隙中に注入し、そこで微小球は再膨潤して入口穴より大きくなり、その空隙を充填して支持する。
【0119】
本発明のさらに別の態様においては、ヒドロゲル溶液を、大ゲージ注射針または小直径オリフィスを通して純粋なゲル化剤(またはゲル化剤の溶液)の中に直接注入し、ゲル化したヒドロゲルのストランドを形成する。これらのストランドまたはフィラメントは、上記のようにゲル化剤の担体として使用でき、ヒドロゲル溶液の中に入れた時、周囲にあるヒドロゲル溶液のゲル化を引き起こすことができる。ストランドまたはフィラメントは、このヒドロゲルマトリックス中に埋め込むことができる。ストランドまたはフィラメントは、ヒドロゲルマトリックスの変性剤として作用することができる。
【0120】
本発明の一態様においては、ヒドロゲルの微粒子をPVA溶液で形成し、媒体中で乳化させ、室温未満、好ましくは20℃未満、より好ましくは10℃未満、より好ましくは約7℃に冷却する。ゲル化剤は、冷却の前または後に、エマルションPVA溶液混合物に加える。
【0121】
本発明の別の態様においては、室温よりも高く体温以下の相転移温度を有する、純粋なゲル化剤またはゲル化剤の組合せの粒子を調製する。そのようなゲル化剤粒子の室温における活性は非常に低いが、体空隙中に注入することにより増大する。粒子を前駆物質ヒドロゲル溶液に入れた場合、これらの粒子は室温保存ではゲル化を引き起こさず、ゲル化過程は、ゲルが体内の高温にさらされた時に開始する。ゲル化剤粒子径は、約0.1マイクロメートル〜約5.0ミリメートルである。これらの粒子は、本明細書の実施態様中に記載する方法またはこの分野で公知の、類似の技術を使用して製造することができる。
【0122】
本発明の別の態様においては、ゲル化剤の液体コア、および室温よりも高いが体温以下の相転移温度を有する材料の固体シェルを含む複合材料ゲル化剤粒子を製造することができる。これらの複合材料粒子は、前駆物質ヒドロゲル溶液中にブレンドする。室温における保存では、固体シェルが、液体コアゲル化剤による前駆物質ヒドロゲルのゲル化誘発を阻止する。約37℃の体に注入した後、固体のシェルが融解し、液体ゲル化剤を放出し、前駆物質ヒドロゲル溶液のゲル化を誘発する。複合材料の粒子径は、約0.1mm〜約5.0μmである。これらの粒子は、本明細書の実施態様中に記載する方法またはこの分野で公知の、類似の技術を使用して製造することができる。
【0123】
本発明の一実施態様においては、ヒドロゲル粒子およびヒドロゲル溶液を使用して加工製品を製造し、例えばPVAのヒドロゲル粒子をPVA溶液と混合し、その溶液を、ゲル化剤、放射線、または凍結融解を利用してゲル化させる。
【0124】
加工製品は、完成した充填材、機械加工して完成した医療用充填材(例えば軟骨欠損を充填するためのプラグ、関節中のクッションとして作用する挿入装置)を形成するためのプリフォーム、および組織増強装置(例えば胸部充填材等)でよい。加工は、ヒドロゲル溶液およびヒドロゲル粒子を型の中で一緒に成形することにより行うことができる。型の寸法は、ゲル化時の収縮およびその後に続く再水和時の膨潤を考慮して、適切に調整することができる。平衡装置寸法が所望の充填材寸法になるように、他の工程(例えば滅菌、脱水、再水和、機械的変形等)により引き起こされる他の寸法変化も考慮するとよい。さらに、機械加工を行うこともできる。
【0125】
注入可能なヒドロゲル処方物、ヒドロゲル溶液、ヒドロゲル粒子、ヒドロゲル溶液とヒドロゲル粒子の混合物、加工製品、充填材等を包装し、滅菌してから、哺乳動物体(例えば人体)に使用するために出荷する。
【0126】
用語「領域」とは、ヒドロゲル中に埋め込まれるか、または一体化され、それによって、ヒドロゲル粒子の領域を含むヒドロゲルマトリックスを形成するヒドロゲル粒子、クラスター、またはヒドロゲル粒子の混合物を意味する。ヒドロゲル粒子の領域は、ヒドロゲルマトリックスを形成するヒドロゲルにより取り囲まれるか、またはそれと一体化される。ヒドロゲルマトリックス中のヒドロゲル粒子の領域は、粒子とマトリックスとの間に物理的な境界があってもなくても、粒子がマトリックス中に埋め込まれる場所である。ヒドロゲル粒子およびヒドロゲルマトリックスの領域は、同一または異なる化学的構造または性質を有することができる(ヒドロゲル粒子の領域を含むヒドロゲルマトリックスを図式的に示す図9〜14参照)。ヒドロゲルマトリックスは、種々のヒドロゲル粒子の複数の領域を含むことができる(図9、10、13および14参照)。複数の領域は、接触していてよく、ほとんどの実施態様において、領域の隙間はヒドロゲルマトリックスである。実施態様によっては、隙間が、ヒドロゲル粒子のより小さな領域で充填されていることができる(図9および14)。
【0127】
「配向した領域」とは、機械的変形もしくは他の力、または製造方法、例えば振動、超音波、マイクロ波、磁界等により誘発された分子配向を有するヒドロゲル粒子を有する領域を意味する。機械的に変形したヒドロゲル粒子の領域は、配向した領域と呼ぶこともできる。機械的に変形した、および/または配向したヒドロゲル粒子の領域を含むヒドロゲルマトリックスを図式的に示す図11、10、13および14参照。
【0128】
本発明の一実施態様においては、加工されたヒドロゲルが、異なる種類のヒドロゲル粒子の領域、例えばポリアクリルアミド粒子を含むPVAヒドロゲルマトリックスまたは機械的に変形したヒドロゲル粒子を含むPVAゲルを含んでなる。ヒドロゲル粒子は、少なくとも一種のゲル化剤を含んでなり、ゲル化剤はヒドロゲル粒子の中に埋め込まれており、ゲル化剤がヒドロゲル粒子から外に拡散して、周囲のヒドロゲルマトリックスをゲル化させることができる。別の実施態様においては、ヒドロゲルマトリックスがヒドロゲル粒子の配向した領域を含む。
【0129】
別の実施態様においては、ヒドロゲル粒子をマトリックスと共に成形し、ゲル化剤をヒドロゲル溶液およびヒドロゲル粒子と高温で混合することにより、ゲル化を引き起こし、混合物を室温に冷却することにより、医療用充填材または装置を加工する。本発明の一態様においては、ヒドロゲル粒子を体空隙中に直接注入せず、体の外でマトリックスと共に成形し、ヒドロゲル粒子から外に拡散するゲル化剤により、および/またはゲル化剤をヒドロゲル溶液およびヒドロゲル粒子と高温で(例えば約90℃で)混合することにより、マトリックスをゲル化または固化させる。混合物を室温に冷却し、マトリックスのゲル化を促進する。
【0130】
別の実施態様においては、ヒドロゲル粒子を含んでなる医療用充填材または装置を、体の外で加工および/または成形し、包装し、滅菌し、人に使用するために出荷する。
【0131】
別の実施態様においては、加工製品がヒドロゲル粒子を含んでなり、加工製品が同じ種類のヒドロゲル材料の領域を含んでなる(例えば図8および11参照)。
【0132】
別の実施態様においては、加工製品がヒドロゲル粒子を含んでなり、加工製品は異なったヒドロゲルの領域を含んでなる(例えば図10および13参照)。ヒドロゲルマトリックス中に領域を形成するヒドロゲル粒子の違いは、サイズ、形状、含有量、化学的構造または構成に関してでよい(例えば図14参照)。
【0133】
別の実施態様においては、加工製品がヒドロゲル粒子を含んでなり、加工製品のマトリックスが2種類以上のヒドロゲル粒子、および/または2種類以上の化学的構造を有するヒドロゲル粒子の領域を含んでなる。
【0134】
本発明を下記の例によりさらに説明するが、これらの例は本発明をどのような様式においても制限するものではない。
【実施例】
【0135】
例1 室温パラフィン油中のエマルション
ポリビニルアルコール(PVA、MW=118,000)20グラムを脱イオン水180gに加え、加熱しながら約2時間攪拌し、完全に溶解した10重量%PVA溶液を調製した。この溶解したPVA溶液を空気対流式加熱炉(DKN600、Yamato)中に90℃で約16時間保持した。ポリエチレングリコール(PEG、MW=400)を空気対流式加熱炉中で90℃に加熱した。
【0136】
軽質パラフィン油100ミリリットルを500ml三口丸底フラスコに室温で入れた。次いで、このパラフィン油を含むフラスコにTween 80(ポリオキシエチレン−20−ソルビタンモノオレエート)2グラム(2%w/v)を加え、混合物を350rpmで攪拌した。攪拌速度は、手順全体を通して、350rpmに維持した。予め調製した10重量%PVA溶液(90℃)50グラムを、上記の混合物を含むフラスコ中に徐々に注ぎ込み、攪拌を室温で少なくとも1分間続け、エマルションを形成した。続いて、PEG(90℃)30グラムをエマルションに攪拌しながら加えた。次いで、混合物を室温で少なくとも30分間攪拌し、PVA領域を確実にゲル化させた。
【0137】
ゲル粒子をエマルション混合物から集め、次いで短時間、キシレンで1回洗浄し、多量の水で繰り返し洗浄した。
【0138】
洗浄したゲル粒子を様々な様式で、例えば空気対流加熱炉中40℃で乾燥、PEG、空気、水、または食塩水中に室温で保存した。ゲル粒子は、水および食塩水の両方で、凝集せずに良く分散した。PEG中に入れた粒子は、ある程度の脱膨潤を示した。
【0139】
粒子径は、約0.8〜約3.5mmであり、形状は球から棒状に変化している(図1参照)。
【0140】
例2 ビタミンE中のエマルション
ポリビニルアルコール(PVA、MW=118,000)20グラムを脱イオン水180gに加え、加熱しながら約2時間攪拌し、完全に溶解した10重量%PVA溶液を調製した。この溶解したPVA溶液を空気対流式加熱炉(DKN600、Yamato)中に90℃で約16時間保持した。ポリエチレングリコール(PEG、MW=400)を空気対流式加熱炉中で90℃に加熱した。
【0141】
ビタミンE100ミリリットルを500ml三口丸底フラスコに入れ、加熱した。次いで、このビタミンEを含むフラスコにTween 80(ポリオキシエチレン−20−ソルビタンモノオレエート)4グラムを加え、混合物を500rpmで攪拌した。攪拌速度は、手順全体を通して、500rpmに維持した。予め調製した10重量%PVA溶液(90℃)50グラムを、上記のフラスコ中に徐々に注ぎ込み、攪拌しながら、少なくとも1分間加熱した。続いて、PEG(90℃)30グラムをエマルションに攪拌しながら加えた。次いで、混合物を徐々に、少なくとも1時間かけて、攪拌しながら室温に冷却し、PVA領域を確実にゲル化させた。
【0142】
ゲル粒子をエマルション混合物から集め、次いで、多量のエタノールで洗浄した。
【0143】
洗浄したゲル粒子を様々な様式で、例えば空気対流加熱炉中40℃で乾燥、PEG、空気、水、または食塩水中に室温で保存した。ゲル粒子は、水および食塩水の両方で、凝集せずに良く分散した。得られた粒子は、残留ビタミンEのために僅かに黄色を呈しており、ビタミンEは、エタノール中に1〜2日間浸漬することにより、除去した。
【0144】
粒子径は、3〜5mmであり、形状はほとんどが図2に示すように長円形であった。粒子径の形状は、エマルションの攪拌rpm速度を増加し、エマルションに対するせん断を増加することにより、球状に変化する。
【0145】
例3 室温パラフィン油中エマルション、PVA注入
ポリビニルアルコール(PVA、MW=118,000)20グラムを脱イオン水180gに加え、加熱しながら約2時間攪拌し、完全に溶解した10重量%PVA溶液を調製した。この溶解したPVA溶液を空気対流式加熱炉(DKN600、Yamato)中に90℃で約16時間保持した。ポリエチレングリコール(PEG、MW=400)を空気対流式加熱炉中で90℃に加熱した。
【0146】
使い捨てプラスチック注射器(10ml)および皮下注射針(19ゲージ、ステンレス鋼)を、空気対流式加熱炉中で90℃に加熱した。
【0147】
軽質パラフィン油100ミリリットルを500ml三口丸底フラスコに室温で入れた。次いで、このパラフィン油を含むフラスコにTween 80(ポリオキシエチレン−20−ソルビタンモノオレエート)2グラム(2%w/v)を加え、混合物を350rpmで攪拌した。攪拌速度は、手順全体を通して、350rpmに維持した。
【0148】
予め調製した10重量%PVA溶液(90℃)30グラムをプラスチック注射器の中に注ぎ込み、針を通して上記のフラスコ中に室温で攪拌しながら注入し、エマルションを形成した。続いて、PEG(90℃)18グラムをエマルションに攪拌しながら加えた。次いで、混合物を室温で少なくとも30分間攪拌し、PVA領域を確実にゲル化させた。
【0149】
ゲル粒子をエマルション混合物から集め、短時間ヘキサンで洗浄し、次いで多量の水で繰り返し洗浄した。
【0150】
洗浄したゲル粒子を様々な様式で、例えば空気対流加熱炉中40℃で乾燥、PEG、空気、水、または食塩水中に室温で保存した。
【0151】
例4 2種類の個別エマルションから室温エマルション
ポリビニルアルコール(PVA、MW=118,000)20グラムを脱イオン水180gに加え、加熱しながら約2時間攪拌し、完全に溶解した10重量%PVA溶液を調製した。この溶解したPVA溶液を空気対流式加熱炉(DKN600、Yamato)中に90℃で約16時間保持した。ポリエチレングリコール(PEG、MW=400)を空気対流式加熱炉中で90℃に加熱した。
【0152】
軽質パラフィン油100ミリリットルを600mlビーカーに室温で入れた。次いで、このビーカーにTween 80(ポリオキシエチレン−20−ソルビタンモノオレエート)2グラム(2%w/v)を加え、混合物を500rpmで攪拌した。予め調製した10重量%PVA溶液(90℃)30グラムを、室温で該混合物中に攪拌しながら徐々に注ぎ込んだ(エマルションA)。
【0153】
別の600mlビーカーに、軽質パラフィン油100ミリリットルおよびTween 80(ポリオキシエチレン−20−ソルビタンモノオレエート)2グラムを室温で混合し、500rpmで攪拌した。この混合物にPEG(90℃)18グラムを、室温で、500rpmで攪拌しながら加えた(エマルションB)。
【0154】
続いて、エマルションAを含むビーカー中にエマルションBを攪拌しながら加えた。最終的な混合物を、室温で、500rpmで1時間攪拌した。
【0155】
ゲル粒子をエマルション混合物から集め、短時間、ヘキサンで、次いで多量の水で繰り返し洗浄した。洗浄したゲル粒子は、水および食塩水に、凝集せずに良く分散した。個々の粒子径は、約0.5mmであり、形状は、図3に示すように球から長円形に変化している。
【0156】
例5 噴霧器によるPEG中室温ゲル粒子形成
ポリビニルアルコール(PVA、MW=118,000)10グラムを脱イオン水190gに加え、加熱しながら約2時間攪拌し、完全に溶解した5重量%PVA溶液を調製する。この溶解したPVA溶液を空気対流式加熱炉(DKN600、Yamato)中に90℃で約16時間保持する。ポリエチレングリコール(PEG、MW=400)を空気対流式加熱炉中で90℃に加熱する。再装填可能な噴霧器(タイプ304、ステンレス鋼)を空気対流式加熱炉中に保持して90℃に加熱する。
【0157】
噴霧器に上記のPVA溶液(90℃)を満たし、圧縮空気で約145psiに加圧する。噴霧器中のPVA溶液を、ポリエチレングリコール(PEG、MW=400)100グラムを含む容器中に室温または7℃でスプレーする。あるいは、PVA溶液(90℃)の噴霧をPEG浴中に、PEGを10〜10000rpmで攪拌しながら行う。
【0158】
例6 7℃におけるパラフィン油中エマルション、PVA注入
ポリビニルアルコール(PVA、MW=118,000)20グラムを脱イオン水180gに加え、加熱しながら約2時間攪拌し、完全に溶解した10重量%PVA溶液を調製した。この溶解したPVA溶液を空気対流式加熱炉(DKN600、Yamato)中に90℃で約16時間保持した。ポリエチレングリコール(PEG、MW=400)を空気対流式加熱炉中で90℃に加熱した。
【0159】
使い捨てプラスチック注射器(10ml)および皮下注射針(19ゲージ、ステンレス鋼)を、空気対流式加熱炉中で90℃に加熱した。
【0160】
500ml三口丸底フラスコを冷却剤(Neslab RTE17)中に浸漬し、手順全体を通して7℃に維持した。軽質パラフィン油100ミリリットルをこのフラスコに入れた。次いで、このパラフィン油を含むフラスコにTween 80(ポリオキシエチレン−20−ソルビタンモノオレエート)2グラム(2%w/v)を加え、混合物を350rpmで攪拌した。攪拌速度は、手順全体を通して、350rpmに維持した。油混合物の温度は7℃に維持した。
【0161】
予め調製した10重量%PVA溶液(90℃)30グラムをプラスチック注射器の中に注ぎ込み、針を通して、該混合物を含むフラスコ中に攪拌しながら注入し、エマルションを形成した。続いて、PEG(90℃)18グラムをエマルションに攪拌しながら加えた。次いで、混合物を室温で30分間攪拌し、PVA領域を確実にゲル化させた。
【0162】
ゲル粒子をエマルション混合物から集め、短時間ヘキサンで洗浄し、次いで多量の水で繰り返し洗浄した。
【0163】
洗浄したゲル粒子を様々な様式で、例えば空気対流加熱炉中40℃で乾燥、PEG、空気、水、または食塩水中に室温で保存した。
【0164】
例7 凍結融解したパラフィン油中エマルション
ポリビニルアルコール(PVA、MW=118,000)20グラムを脱イオン水180gに加え、加熱しながら約2時間攪拌し、完全に溶解した10重量%PVA溶液を調製する。この溶解したPVA溶液を空気対流式加熱炉(DKN600、Yamato)中に90℃で約16時間保持する。ポリエチレングリコール(PEG、MW=400)を空気対流式加熱炉中で90℃に加熱する。
【0165】
使い捨てプラスチック注射器(10ml)および皮下注射針(19ゲージ、ステンレス鋼)を、空気対流式加熱炉中で90℃に加熱する。
【0166】
軽質パラフィン油100ミリリットルを500ml三口丸底フラスコに室温で入れた。次いで、このフラスコにTween 80(ポリオキシエチレン−20−ソルビタンモノオレエート)2グラム(2%w/v)を加え、混合物を350rpmで攪拌する。
【0167】
予め調製した10重量%PVA溶液(90℃)30グラムをプラスチック注射器の中に注ぎ込み、針を通して、該混合物を含むフラスコ中に室温で攪拌しながら注入し、エマルションを形成する。続いて、PEG(90℃)18グラムをエマルションに攪拌しながら加える。
【0168】
エマルションを含むフラスコを直ちに−20℃のフリーザー中に時間浸漬し、室温で1時間、攪拌しながら融解させる。凍結融解サイクルは、所望により何度も繰り返す。攪拌速度は350rpmに維持する。
【0169】
ゲル粒子をエマルション混合物から集め、短時間ヘキサンで洗浄し、多量の水で繰り返し洗浄する。
【0170】
洗浄したゲル粒子を様々な様式で、例えば空気対流加熱炉中40℃で乾燥、PEG、空気、水、または食塩水中に室温で保存する。
【0171】
例8 室温パラフィン油中エマルション、PVA注入およびPluronic使用
ポリビニルアルコール(PVA、MW=118,000)20グラムを脱イオン水180gに加え、加熱しながら約2時間攪拌し、完全に溶解した10重量%PVA溶液を調製する。この溶解したPVA溶液を空気対流式加熱炉(DKN600、Yamato)中に90℃で約16時間保持した。ポリエチレングリコール(PEG、MW=400)を空気対流式加熱炉中で90℃に加熱する。
【0172】
使い捨てプラスチック注射器(10ml)および皮下注射針(19ゲージ、ステンレス鋼)を、空気対流式加熱炉中で90℃に加熱する。
【0173】
軽質パラフィン油100ミリリットルを500ml三口丸底フラスコに室温で入れる。次いで、このフラスコにPluronic L92(またはL81)(BASF)5グラム(2%w/v)を加え、混合物を350rpmで攪拌する。攪拌速度は、手順全体を通して、350rpmに維持する。
【0174】
予め調製した10重量%PVA溶液(90℃)30グラムをプラスチック注射器の中に注ぎ込み、針を通して、該混合物を含むフラスコ中に室温で攪拌しながら注入し、エマルションを形成する。続いて、PEG(90℃)18グラムをエマルションに攪拌しながら加える。次いで、混合物を室温で少なくとも30分間攪拌し、PVA領域を確実にゲル化させる。
【0175】
ゲル粒子をエマルション混合物から集め、短時間ヘキサンで洗浄し、次いで多量の水で繰り返し洗浄する。
【0176】
洗浄したゲル粒子を様々な様式で、例えば空気対流加熱炉中40℃で乾燥、PEG、空気、水、または食塩水中に室温で保存する。
【0177】
例9 室温パラフィン油中エマルション、PVA/ナノ−クレー注入
ポリビニルアルコール(PVA、MW=118,000)20グラムを10−5M−NaOH80gに加え、加熱しながら約2時間攪拌し、完全に溶解した20重量%PVA溶液を調製する。この溶解したPVA溶液を空気対流式加熱炉(DKN600)中に90℃で約16時間保持する。
【0178】
ナノ−クレー、Laponite(Laponite(登録商標)RD2グラムを10−5M−NaOH(pH9)98g中に溶解させ、加熱しながら2時間攪拌した。PVA溶液をLaponite溶液中に攪拌しながら注ぎ込み、10重量%PVA対1重量%Laponiteの溶液を調製する。
【0179】
ポリエチレングリコール(PEG、MW=400)を空気対流式加熱炉中で90℃に加熱する。
【0180】
使い捨てプラスチック注射器(10ml)および皮下注射針(19ゲージ、ステンレス鋼)を、空気対流式加熱炉中で90℃に加熱する。
【0181】
軽質パラフィン油100ミリリットルを500ml三口丸底フラスコに室温で入れる。次いで、このフラスコにTween 80(ポリオキシエチレン−20−ソルビタンモノオレエート)2グラム(2%w/v)を加え、混合物を350rpmで攪拌する。攪拌速度は、手順全体を通して、350rpmに維持する。
【0182】
予め調製したPVA−Laponite溶液(90℃)30グラムをプラスチック注射器の中に注ぎ込み、針を通して、混合物を含むフラスコ中に室温で攪拌しながら注入し、エマルションを形成する。続いて、PEG(90℃)18グラムをエマルションに攪拌しながら加える。次いで、混合物を室温で少なくとも30分間攪拌し、PVA領域を確実にゲル化させる。
【0183】
ゲル粒子をエマルション混合物から集め、短時間ヘキサンで洗浄し、次いで多量の水で繰り返し洗浄する。
【0184】
洗浄したゲル粒子を様々な様式で、例えば空気対流加熱炉中40℃で乾燥、PEG、空気、水、または食塩水中に室温で保存する。
【0185】
例10 噴霧器によるガス中ゲル粒子形成
ポリビニルアルコール(PVA、MW=118,000)10グラムを脱イオン水190gに加え、加熱しながら約2時間攪拌し、完全に溶解した5重量%PVA溶液を調製する。この溶解したPVA溶液を空気対流式加熱炉(DKN600)中に90℃で約16時間保持する。再装填可能な噴霧器(タイプ304、ステンレス鋼)を空気対流式加熱炉中に保持する90℃に加熱した。
【0186】
予め調製した10重量%PVA溶液(90℃)30グラムをビーカーに加熱しながら入れ、PEG18グラム(90℃)を攪拌しながら加える。この混合物を攪拌しながら少なくとも1分間加熱し、確実に、完全に混合する。
【0187】
噴霧器に上記のPVA−PEG混合物を満たし、圧縮空気で約145psiに加圧する。噴霧器中の溶液を、空気またはヘリウムを含む容器中に7℃でスプレーする。
【0188】
例11 エピクロロヒドリン架橋
ポリビニルアルコール(PVA、MW=118,000)30グラムを脱イオン水170gに加え、加熱しながら約2時間攪拌し、完全に溶解した15重量%PVA溶液を調製する。15%PVA溶液40グラムを500ml三口丸底フラスコに入れる。続いて、水酸化ナトリウム4グラムをこのフラスコに加え、溶液を400rpmで1時間攪拌する。エピクロロヒドリン(EP)6ミリリットルを混合物に加え、50℃、100rpmで10分間攪拌し、予備架橋させる。軽質パラフィン油250ミリリットルを混合物中に入れ、少なくとも2分間強く攪拌し、続いてSpan 80(ソルビタンモノオレエート)5gを加える。この混合物を50℃、350rpmで24時間攪拌し、ゲル粒子を確実に、完全に架橋させる。
【0189】
ゲル粒子をエマルション混合物から集め、短時間ヘキサンまたはトルエンと石油エーテルの混合物で1回洗浄し、次いで多量の水で繰り返し洗浄した。
【0190】
洗浄したゲル粒子を様々な様式で、例えば空気対流加熱炉(DKN600)中40℃で乾燥、PEG、空気、水、または食塩水中に室温で保存した。
【0191】
例12 放射線架橋
ポリビニルアルコール(PVA、MW=118,000)20グラムを脱イオン水180gに加え、加熱しながら約2時間攪拌し、完全に溶解した10重量%PVA溶液を調製する。この溶解したPVA溶液を空気対流式加熱炉(DKN600)中に90℃で約16時間保持する。
【0192】
使い捨てプラスチック注射器(10ml)および皮下注射針(19ゲージ)を、空気対流式加熱炉中で90℃に加熱する。
【0193】
軽質パラフィン油100ミリリットルを500ml三口丸底フラスコ中に室温で入れる。次いで、このフラスコにTween 80(ポリオキシエチレン−20−ソルビタンモノオレエート)2グラム(2%w/v)を加え、混合物を350rpmで攪拌する。
【0194】
予め調製した10重量%PVA溶液(90℃)30グラムをプラスチック注射器の中に注ぎ込み、針を通して、該混合物を含む油フラスコ中に注入し、10分間攪拌しながらエマルションを形成する。次いで、このエマルション混合物を、電子線またはガンマ線を使用し、350rpmで攪拌しながら照射し、油中に分散させたゲル溶液を架橋させる。放射線量は、少なくとも約1kGy、例えば約25kGy、25〜1000kGy、約50kGy、約100kGy、および約150kGyである。
【0195】
放射線架橋させたゲル粒子をエマルション混合物から集め、短時間ヘキサンで1回洗浄し、次いで多量の水で繰り返し洗浄する。
【0196】
洗浄したゲル粒子を様々な様式で、例えば空気対流加熱炉中40℃で乾燥、PEG、空気、水、または食塩水中に室温で保存する。
【0197】
例13 グルタルアルデヒド架橋
ポリビニルアルコール(PVA、MW=118,000)20グラムを脱イオン水180gに加え、加熱しながら約2時間攪拌し、完全に溶解した10重量%PVA溶液を調製する。この溶解したPVA溶液を空気対流式加熱炉(DKN600)中に90℃で約16時間保持する。
【0198】
軽質パラフィン油100ミリリットルを500ml三口丸底フラスコ中に室温で入れる。次いで、このフラスコにTween 80(ポリオキシエチレン−20−ソルビタンモノオレエート)2グラム(2%w/v)、0.1M−HCl1mlおよびグルタルアルデヒド(25%水溶液)7.5mlを加え、混合物を400rpmで攪拌する。攪拌速度は、手順全体を通して、400rpmに維持する。
【0199】
予め調製した10重量%PVA溶液(90℃)50グラムを、上記のフラスコ中に徐々に注ぎ込み、攪拌しながら、室温で30分間架橋反応させる。
【0200】
ゲル粒子をエマルション混合物から集め、短時間ヘキサンで1回洗浄し、次いで多量の水で繰り返し洗浄する。
【0201】
洗浄したゲル粒子を様々な様式で、例えば空気対流加熱炉中40℃で乾燥、PEG、空気、水、または食塩水中に室温で保存する。
【0202】
例14 PEG装填したPVA微粒子からPVAマトリックスのゲル化(二重胴射出)
ポリビニルアルコール(PVA、MW=118,000)20グラムを脱イオン水180gに加え、加熱しながら約2時間攪拌し、完全に溶解した10重量%PVA溶液を調製する。この溶解したPVA溶液を空気対流式加熱炉(DKN600)中に90℃で約16時間保持する。
【0203】
PVAゲル粒子を、例1〜10に記載する手順にしたがって調製する。ポリエチレングリコール(PEG、MW=400)中に室温で1日間浸漬した後、粒子を分離し、遠心分離して過剰のPEGを粒子表面から除去する。
【0204】
予め調製した10%PVA溶液を、使い捨てプラスチック二重胴供給装置の一方の胴に入れ、密封し、徐々に室温に冷却する。ゲル粒子を供給装置の他方の胴に室温で入れる。PVA溶液およびゲル粒子の両方をミキサーノズルおよび皮下注射針(15ゲージ)を通して室温で一緒に射出する。射出した混合物を室温または37℃に維持し、ゲル化させる。ゲル化剤のPEG分子がPEG装填されたPVAゲル粒子から外に拡散するにつれて、粒子を取り囲むマトリックスを形成するPVA溶液のゲル化が起こる。
【0205】
例15 PEG装填したPVA微粒子からPVAマトリックスのゲル化(手動攪拌)
ポリビニルアルコール(PVA、MW=118,000)30グラムを脱イオン水170gに加え、加熱しながら約2時間攪拌し、完全に溶解した15重量%PVA溶液を調製した。この溶解したPVA溶液を空気対流式加熱炉(DKN600)中に90℃で約16時間保持する。
【0206】
PVAゲル粒子を、例4に記載する手順にしたがって調製した。水中に分散したゲル粒子を40℃で1時間乾燥させ、過剰の水を粒子表面から除去した。粒子をポリエチレングリコール(PEG、MW=400)中に、磁気攪拌棒で連続的に攪拌しながら室温で1日間浸漬した。次いで、粒子を分離し、この粒子3.5グラムを新しいビーカーの中に入れた(図4参照)。
【0207】
予め調製した15%PVA溶液5.2gを粒子の上に注ぎ、ガラス攪拌棒で僅かに攪拌した(図5参照)。
【0208】
この混合物を覆い、室温に1日間保持し、ゲル化させた(図6)。
【0209】
例16 ゲル化剤を含むPVA繊維の形成
PVA粉末を水中、90℃で2時間混合することにより、10重量%PVA溶液(MW120,000)を調製した。この溶液を室温に冷却し、次いで注射器に入れた。注射器に取り付けた針を、室温でポリエチレングリコール(MW400g/モル)の浴中で垂直に吊り下げた。注射器ポンプにより、PVA溶液を、針を通して浴の中に徐々に押し込んだ。押し出された溶液をPEG中でゲル化しながら、これを回転スピンドル上に巻き取り、押し出されたフィラメントを延伸し、PVAフィラメント中にPEGを捕獲した。
【0210】
次いで、フィラメントを10重量%PVA水溶液中に入れ、そこで捕獲されたPEGがPVA前駆物質溶液をゲル化させ、得られたマトリックスを繊維が補強する。
【0211】
例17 ポリアクリルアミド(PAAM)ヒドロゲル粒子を含む加工されたPVAヒドロゲル製品
N,N’−メチレンビスアクリルアミド1重量%、およびオキソ−グルタル酸1重量%も含む12重量%アクリルアミドモノマー溶液の水中マルションを形成することにより、PAAMヒドロゲル粒子を加工する。次いで、この混合物を油中に入れ、強く攪拌して油中10%混合物の濃度でエマルションを形成する。次いで、このエマルションをUV光に露出して架橋させる。架橋が完了した後、PAAM粒子をエマルションから集め、洗浄して油を除去する。次いで、PAAM粒子を15重量%PVA水溶液に加える。PVA溶液中のPAAM粒子濃度は、約10体積%である。粒子の濃度は、約1体積%以上、例えば5体積%以上、10体積%以上、約20体積%以上、約50体積%以上、あるいは約75体積%以上、でもよい。次いで、ゲル化剤、照射、または凍結融解を使用し、PAAM粒子を含むPVA溶液をゲル化させる。例えば、PAAM粒子を含むPVA溶液を90℃に加熱し、やはり90℃に加熱したPEGと混合する。最終的な混合物中のPEG濃度は28重量%である。次いで、混合物を室温に冷却し、PAAM粒子の周囲にあるPVAマトリックスのゲル化を引き起こす。ゲル化は、所望の形状を有する型の中で行い、所望の形状を有する完成した製品を得ることができる。
【0212】
説明、具体例およびデータは、代表的な実施態様を示しているが、例示のために記載したものであり、本発明を制限するものではない。本明細書に含まれる考察、開示およびデータから、当業者には明らかな、本発明の種々の変形および修正は、本発明の一部であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0213】
【図1】パラフィン油中エマルションとして室温で調製したPVAヒドロゲル粒子を示す。
【図2】エマルション中ビタミンEで調製したPVAヒドロゲル粒子を示す。粒子は、水中に1箇月保存し、写真撮影の前に拭き取って乾燥させた。
【図3】別の分散液から室温エマルションで調製したPVAヒドロゲル粒子を示す。粒子は、水中に2週間保存し、写真撮影の前に拭き取って乾燥させた。
【図4】PEG浸漬処理1日後にビーカー中に集めたPVAヒドロゲル粒子を示す。過剰の液体を流した後に、PEGを埋め込んだ、またはPEGを装填したPVAヒドロゲル粒子を集めた。
【図5】15%PVA溶液中に分散させた、PEGを埋め込んだ、またはPEGを装填したヒドロゲル粒子を示す。
【図6】室温で1日ゲル化させた後、15%PVA溶液中に分散させた、PEGを埋め込んだ、またはPEGを装填したヒドロゲル粒子を示す。
【図7】新しいヒドロゲルを形成するためにPVAマトリックス中で焼結させたゲル粒子を示す。新しいヒドロゲルは、PEGを埋め込んだ、またはPEGを装填したヒドロゲル粒子から形成され、粒子からのPEG拡散により周囲のマトリックスをゲル化させる。
【図8】ヒドロゲル粒子の領域を含むヒドロゲルマトリックスを図式的に示す図である。
【図9】様々な種類の、または様々なサイズを有するヒドロゲル粒子の領域の混合物を含むヒドロゲルマトリックスを図式的に示す図である。
【図10】2種類の異なった化学的構造を有するヒドロゲル粒子の領域の混合物を含むヒドロゲルマトリックスを図式的に示す図である。
【図11】配向した、または機械的に変形したヒドロゲル粒子の領域を含むヒドロゲルマトリックスを図式的に示す図である。
【図12】様々に配向したヒドロゲル粒子の領域を含むヒドロゲルマトリックスを図式的に示す図である。
【図13】2種類の異なった化学的構造を有する、様々に配向したヒドロゲル粒子の領域の混合物を含むヒドロゲルマトリックスを図式的に示す図である。
【図14】2種類の異なった化学的構造を有し、様々な種類、サイズの、様々に配向したヒドロゲル粒子の領域の混合物を含むヒドロゲルマトリックスを図式的に示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一種のゲル化剤を含んでなる加工されたヒドロゲル粒子であって、ゲル化剤がヒドロゲル粒子の中に埋め込まれており、前記ゲル化剤が前記ヒドロゲル粒子の外に拡散して、周囲のヒドロゲルマトリックスをゲル化させる、加工されたヒドロゲル粒子。
【請求項2】
機械的に変形されたヒドロゲル粒子を含んでなる加工されたヒドロゲル粒子であって、ヒドロゲル粒子が少なくとも一種のゲル化剤を含んでなり、前記ゲル化剤が前記ヒドロゲル粒子の中に埋め込まれており、前記ゲル化剤が前記ヒドロゲル粒子の外に拡散して、周囲のヒドロゲルマトリックスをゲル化させる、加工されたヒドロゲル粒子。
【請求項3】
少なくとも一種のゲル化剤を含んでなる加工されたヒドロゲル粒子であって、ゲル化剤がヒドロゲル粒子の中に埋め込まれており、前記ヒドロゲル粒子が注入可能なサイズを有し、前記粒子が体空隙中に注入された時に、前記ゲル化剤が前記ヒドロゲル粒子の外に拡散して、周囲のヒドロゲルマトリックスをゲル化させる、加工されたヒドロゲル粒子。
【請求項4】
a)加工されたヒドロゲル粒子、
b)前記ヒドロゲル粒子の中に埋め込まれた少なくとも一種のゲル化剤、および
c)前駆物質ヒドロゲル溶液、
を含んでなる、加工されたヒドロゲル組成物であって、
前記ヒドロゲル粒子が前記ヒドロゲル溶液中に分散しており、前記ゲル化剤が前記ヒドロゲル粒子の外に拡散して、周囲のヒドロゲルマトリックスをゲル化させる、加工されたヒドロゲル組成物。
【請求項5】
a)注入可能なサイズを有する加工されたヒドロゲル粒子、
b)前記ヒドロゲル粒子の中に埋め込まれた少なくとも一種のゲル化剤、および
c)ヒドロゲル溶液、
を含んでなる、加工されたヒドロゲル組成物であって、
前記ヒドロゲル粒子が前記前駆物質ヒドロゲル溶液中に分散しており、前記組成物が体空隙中に注入された時に、前記ゲル化剤が前記ヒドロゲル粒子の外に拡散して、周囲のヒドロゲルマトリックスをゲル化させる、加工されたヒドロゲル組成物。
【請求項6】
a)ポリビニルアルコール(PVA)粒子、
b)少なくとも一種のゲル化剤、
を含んでなる、加工されたヒドロゲル粒子であって、
前記ゲル化剤が前記ヒドロゲル粒子の中に埋め込まれており、前記ゲル化剤が前記ヒドロゲル粒子の外に拡散して、周囲のヒドロゲルマトリックスをゲル化させる、加工されたヒドロゲル粒子。
【請求項7】
a)注入可能なサイズを有するポリビニルアルコール(PVA)ヒドロゲル粒子、
b)前記ヒドロゲル粒子の中に埋め込まれた少なくとも一種のゲル化剤、
を含んでなる、加工されたヒドロゲル粒子であって、
前記粒子が体空隙中に注入された時に、前記ゲル化剤が前記ヒドロゲル粒子の外に拡散して、周囲のヒドロゲルマトリックスをゲル化させる、加工されたヒドロゲル粒子。
【請求項8】
a)PVAを含んでなる加工されたヒドロゲル粒子、
b)前記ヒドロゲル粒子の中に埋め込まれた少なくとも一種のゲル化剤、および
c)前駆物質ヒドロゲル溶液、
を含んでなる、加工されたヒドロゲル組成物であって、
前記ヒドロゲル粒子が前記ヒドロゲル溶液中に分散しており、前記ゲル化剤が前記ヒドロゲル粒子の外に拡散して、周囲のヒドロゲルマトリックスをゲル化させる、加工されたヒドロゲル組成物。
【請求項9】
a)注入可能なサイズを有し、PVAを含んでなる、加工されたヒドロゲル粒子、
b)前記ヒドロゲル粒子の中に埋め込まれた少なくとも一種のゲル化剤、および
c)ヒドロゲル溶液、
を含んでなる、加工されたヒドロゲル組成物であって、
前記ヒドロゲル粒子が前記前駆物質ヒドロゲル溶液中に分散しており、前記組成物が体空隙中に注入された時に、前記ゲル化剤が前記ヒドロゲル粒子の外に拡散して、周囲のヒドロゲルマトリックスをゲル化させる、加工されたヒドロゲル組成物。
【請求項10】
加工されたヒドロゲル組成物の製造方法であって、
a)予備ゲル化されたヒドロゲル粒子を用意すること、
b)前記ヒドロゲル粒子に少なくとも一種のゲル化剤を装填すること、および
c)前駆物質ヒドロゲル溶液を用意し、組成物を調製する前に、前記ヒドロゲル溶液中に前記ヒドロゲル粒子を分散させること、を含んでなる、方法。
【請求項11】
加工されたヒドロゲル組成物の製造方法であって、
a)注入可能なサイズを有し、PVAを含んでなる、予備ゲル化されたヒドロゲル粒子を用意すること、
b)前記ヒドロゲル粒子に少なくとも一種のゲル化剤を装填すること、および
c)前駆物質ヒドロゲル溶液を用意し、組成物を調製する前に、前記ヒドロゲル溶液中に前記ヒドロゲル粒子を分散させること、を含んでなる、方法。
【請求項12】
加工されたヒドロゲル組成物の製造方法であって、
a)注入可能なサイズを有し、PVAを含んでなる、予備ゲル化されたヒドロゲル粒子を用意すること、
b)前駆物質ヒドロゲル溶液を用意し、組成物を調製する前に、前記ヒドロゲル溶液中に前記ヒドロゲル粒子を分散させること、および
c)前記ヒドロゲル溶液に少なくとも一種のゲル化剤を装填して、前記ヒドロゲル溶液をゲル化させ、ゲル化したヒドロゲル溶液の連続相中に前記ヒドロゲル粒子を捕獲すること、を含んでなる、方法。
【請求項13】
加工されたヒドロゲル粒子を、哺乳動物の選択された箇所中に移植し、固体充填材を形成する方法であって、
a)加工されたヒドロゲル粒子、前記ヒドロゲル粒子中に埋め込まれた少なくとも一種のゲル化剤、および前記ヒドロゲル粒子が中に分散しているヒドロゲル溶液を含んでなる、ヒドロゲルマトリックスが形成されたヒドロゲル組成物、を哺乳動物の選択された箇所中に移植すること、および
b)前記ゲル化剤を前記ヒドロゲル粒子の外に拡散させて、周囲のヒドロゲルマトリックスをゲル化させ、固体充填材を形成することを含んでなる、方法。
【請求項14】
加工されたヒドロゲル粒子を哺乳動物の選択された箇所中に内移植し、固体充填材を形成する方法であって、
a)注入可能なサイズを有する、加工されたヒドロゲル粒子、前記ヒドロゲル粒子中に埋め込まれた少なくとも一種のゲル化剤、および前記ヒドロゲル粒子が中に分散しているヒドロゲル溶液を含んでなる、ヒドロゲルマトリックスが形成されたヒドロゲル組成物、を哺乳動物中の選択された体空隙中に注入すること、および
b)前記ゲル化剤を前記ヒドロゲル粒子の外に、体空隙中に拡散させて、周囲の、前記体空隙中のヒドロゲルマトリックスをゲル化させ、固体充填材を形成することを含んでなる、方法。
【請求項15】
前記ヒドロゲル粒子または前記粒子を含んでなる組成物が、椎間板置換、傷の手当て、軟骨置換、関節置換、外科手術バリヤーまたは胃腸機器としての内移植、美容および再形成手術、または胸部もしくは筋肉拡大のための外科的手順で、哺乳動物中に移植される、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記ヒドロゲル粒子または前記粒子を含んでなる組成物が、哺乳動物中に移植され、軟骨欠損、股、膝等の関節中の空隙、または核腔、椎間板内の核空間を充填し、関節または負荷支持表面として作用する、請求項13または14に記載の方法。
【請求項17】
加工されたヒドロゲル粒子を哺乳動物の選択された箇所中に移植し、固体充填材を形成することを含んでなる、哺乳動物の処置方法であって、
a)少なくとも一種のゲル化剤がヒドロゲル粒子中に埋め込まれており、前駆物質ヒドロゲル溶液中に分散してヒドロゲルマトリックスを形成する、加工されたヒドロゲル粒子、を前記哺乳動物の選択された箇所中に移植すること、および
b)前記ゲル化剤を前記ヒドロゲル粒子の外に拡散させて、周囲の前記ヒドロゲルマトリックスをゲル化させ、固体充填材を形成することを含んでなる、方法。
【請求項18】
加工されたヒドロゲル粒子を哺乳動物に内移植し、固体充填材を形成することを含んでなる、哺乳動物の処置方法であって、
a)注入可能なサイズを有し、少なくとも一種のゲル化剤がヒドロゲル粒子中に埋め込まれており、前駆物質ヒドロゲル溶液中に分散してヒドロゲルマトリックスを形成する、加工されたヒドロゲル粒子、を前記哺乳動物の選択された体空隙中に注入すること、および
b)前記ゲル化剤を前記ヒドロゲル粒子の外である前記体空隙中に拡散させて、周囲の、前記体空隙中のヒドロゲルマトリックスをゲル化させ、固体充填材を形成することを含んでなる、方法。
【請求項19】
前記哺乳動物が、椎間板置換、傷の手当て、軟骨置換、関節置換、外科手術バリヤーまたは胃腸機器としての移植、美容および再形成手術、または胸部もしくは筋肉拡大のために処置される、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記哺乳動物が、軟骨欠損、股、膝等の関節、または核腔、椎間板内の核空間において、関節または負荷支持表面として作用するように処置される、請求項17または18に記載の方法。
【請求項21】
問題とする区域にヒドロゲル組成物を供給するためのキットであって、少なくとも一種のゲル化剤が装填されているか、または埋め込まれている、予備ゲル化した、または予備固化したヒドロゲル粒子の容器、ヒドロゲル溶液を含む容器、および供給装置を含んでなる、キット。
【請求項22】
架橋したヒドロゲル粒子の製造方法であって、
a)油中でヒドロゲル溶液のエマルションを形成して、予備固化した、または予備ゲル化したヒドロゲル粒子を形成すること、
b)前記ヒドロゲル粒子を架橋させて、架橋ヒドロゲル粒子を形成すること、および
c)前記形成された油エマルションから前記架橋ヒドロゲル粒子を単離することを含んでなる、方法。
【請求項23】
架橋したヒドロゲル組成物の製造方法であって、
a)油中でヒドロゲル溶液のエマルションを形成して、予備固化した、または予備ゲル化したヒドロゲル粒子を形成すること、
b)前記ヒドロゲル粒子を架橋させて、架橋ヒドロゲル粒子を形成すること、
c)前記油エマルションから前記架橋したヒドロゲル粒子を単離すること、
d)前記架橋ヒドロゲル粒子に少なくとも一種のゲル化剤を装填すること、および
e)前駆物質ヒドロゲル溶液を用意し、組成物を調製する前に、前記ヒドロゲル溶液中に前記架橋ヒドロゲル粒子を分散させることを含んでなる、方法。
【請求項24】
架橋したヒドロゲル組成物の製造方法であって、
a)油中でヒドロゲル溶液のエマルションを形成して、予備固化した、または予備ゲル化したヒドロゲル粒子を形成すること、
b)前記ヒドロゲル粒子を架橋させて、架橋ヒドロゲル粒子を形成すること、
c)前記油エマルションから、注入可能なサイズを有する前記架橋ヒドロゲル粒子を単離すること、
d)前記架橋ヒドロゲル粒子に少なくとも一種のゲル化剤を装填すること、および
e)前駆物質ヒドロゲル溶液を用意し、組成物を調製する前に、前記ヒドロゲル溶液中に前記架橋したヒドロゲル粒子を分散させることを含んでなる、方法。
【請求項25】
架橋したヒドロゲル組成物の製造方法であって、
a)油中でヒドロゲル溶液のエマルションを形成して、予備固化した、または予備ゲル化したヒドロゲル粒子を形成すること、
b)前記ヒドロゲル粒子を架橋させて架橋ヒドロゲル粒子を形成すること、
c)前記油エマルションから、PVAを含んでなり、注入可能なサイズを有する前記架橋したヒドロゲル粒子を単離すること、
d)前記架橋ヒドロゲル粒子に少なくとも一種のゲル化剤を装填すること、および
e)前駆物質ヒドロゲル溶液を用意し、組成物を調製する前に、前記ヒドロゲル溶液中に前記架橋したヒドロゲル粒子を分散させることを含んでなる、方法。
【請求項26】
前記ヒドロゲル粒子を、電子放射線、ガンマ−放射線、ベータ−エミッタ、グルタルアルデヒド架橋、エピクロロヒドリン(EP)架橋、または光開始架橋により架橋させる、請求項22〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記ヒドロゲルが、異なるヒドロゲル粒子の領域を含んでなる、請求項1〜26のいずれか一項に記載の、加工されたヒドロゲル、方法、またはキット。
【請求項28】
PVAヒドロゲルが、ポリアクリルアミド粒子または機械的に変形したヒドロゲル粒子を含むPVAゲルの領域を含んでなる、請求項1〜27のいずれか一項に記載の、加工されたヒドロゲル、方法、またはキット。
【請求項29】
PVAヒドロゲルが、機械的に変形したヒドロゲル粒子の領域を含んでなる、請求項1〜28のいずれか一項に記載の、加工されたヒドロゲル、方法、またはキット。
【請求項30】
前記ヒドロゲルが、ヒドロゲル粒子の配向した領域を含んでなる、請求項1〜29のいずれか一項に記載の、加工されたヒドロゲル、方法、またはキット。
【請求項31】
前記ヒドロゲルが、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、アルジネート、多糖、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(PNIAAm)、またはそれらの2種類以上の組合せからなる群から選択された重合体、重合体ブレンド、または共重合体を含んでなる、請求項1〜30のいずれか一項に記載の、加工されたヒドロゲル粒子、方法、またはキット。
【請求項32】
前記ヒドロゲルがポリビニルアルコール(PVA)を含んでなる、請求項1〜31のいずれか一項に記載の、加工されたヒドロゲル粒子、方法、またはキット。
【請求項33】
前記ヒドロゲルが、少なくとも一種の他の重合体と共重合された、および/またはブレンドされた、ポリビニルアルコール(PVA)を含んでなる、請求項1〜32のいずれか一項に記載の、加工されたヒドロゲル粒子、方法、またはキット。
【請求項34】
前記ゲル化剤が、塩、アルコール、ポリオール、アミノ酸、糖、タンパク質、多糖、それらの水溶液、またはそれらの2種類以上の混合物からなる群から選択される、請求項1〜33のいずれか一項に記載の、加工されたヒドロゲル粒子、方法、またはキット。
【請求項35】
前記ゲル化剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(PNIAAm)、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、デルマタン硫酸等、またはそれらの2種類以上の組合せからなる群から選択される、請求項1〜34のいずれか一項に記載の、加工されたヒドロゲル粒子、方法、またはキット。
【請求項36】
前記ゲル化剤がポリエチレングリコール(PEG)を含んでなる、請求項1〜35のいずれか一項に記載の、加工されたヒドロゲル粒子、方法、またはキット。
【請求項37】
前記ヒドロゲル溶液が、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(PNIAAm)、またはそれらの2種類以上の組合せを含んでなる、請求項4、5、8〜12のいずれか一項に記載の、加工されたヒドロゲル粒子、方法、またはキット。
【請求項38】
前記ヒドロゲル溶液がポリビニルアルコール(PVA)溶液である、請求項4、5、8〜12のいずれか一項に記載の、加工されたヒドロゲル粒子、方法、またはキット。
【請求項39】
前記ヒドロゲル粒子が、球形、長円形、または不規則形状を有するか、またはそれらの2種類以上の混合物である、請求項1〜38のいずれか一項に記載の、加工されたヒドロゲル粒子、方法、またはキット。
【請求項40】
前記ヒドロゲル粒子が、類似または異なる形状の多数の粒子の凝集物である、請求項1〜39のいずれか一項に記載の、加工されたヒドロゲル粒子、方法、またはキット。
【請求項41】
前記ヒドロゲル粒子が、医学用機器に使用されるものであり、かつ、前記機器を体に移植する前に、体外でゲル化剤をヒドロゲル溶液と混合し、前記ヒドロゲル粒子をマトリックスと共に成形することにより、加工されるものである、請求項1〜40のいずれか一項に記載の、加工されたヒドロゲル粒子、方法、またはキット。
【請求項42】
前記ヒドロゲル粒子が、医学用機器に使用されるものであり、かつ、体外で加工および/または成形され、包装され、滅菌され、人に使用するために輸送される、請求項1〜41のいずれか一項に記載の、加工されたヒドロゲル、方法、またはキット。
【請求項43】
前記医学用機器が、同じヒドロゲルの領域を含んでなる、請求項41または42に記載の、加工されたヒドロゲル、方法、またはキット。
【請求項44】
前記医学用機器が、異なるヒドロゲルの領域を含んでなる、請求項41または42に記載の、加工されたヒドロゲル粒子、方法、またはキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2008−540809(P2008−540809A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512504(P2008−512504)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際出願番号】PCT/US2006/019239
【国際公開番号】WO2006/125082
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(593030244)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション ディー ビー エイ マサチューセッツ ジェネラル ホスピタル (8)
【出願人】(505271116)ケンブリッジ、ポリマー、グループ、インコーポレイテッド (10)
【氏名又は名称原語表記】CAMBRIDGE POLYMER GROUP, INC.
【Fターム(参考)】