説明

ヒータとそれを備えた便座装置

【課題】絶縁性のある高容量なヒータを提供することを目的とする。
【解決手段】発熱材6と、発熱材6を覆う耐熱絶縁材7と、耐熱絶縁材7の外側に熱溶着可能な絶縁材にてなる熱溶着材8を形成したことにより、ヒータを高容量にしても耐熱絶縁材が溶けなくなり、非加熱物に溶着可能で絶縁性の高いヒータができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱ヒータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のヒータは、暖房を目的とした金属製の便座の裏側に接着された例が示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図5は、前記公報に記載された従来のヒータの使用例を示すものである。図5に示すように、ヒータ30は絶縁材で被膜されており、この絶縁材が金属便座16の裏面に接着されている。
【特許文献1】特開2003−79539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成は、一般的に発熱電線を心線としてその周囲に塩化ビニルなどによる絶縁被覆をした線状ヒータを用い、加熱面に接着して固定する方式をとるものが多い。このような構成で便座とヒータ線を固定していると、急速暖房立ち上げを実現するため、秒単位の短時間にヒータおよび便座を昇温する大容量(たとえば1000W)の電力加熱をすると、金属便座16の裏面のヒータ30の接着がはがれて便座に密着せず、剥離した部分が生じてしまうことがある。すると、ヒータ30のその剥離したヒータ部分の加熱対象物への熱伝導が損なわれ、局部的に400℃前後の異常高温となり、絶縁被膜が高温の熱で損傷し絶縁破壊され、金属便座16に漏電する可能性があるという課題を有していた。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、加熱対象物に溶着させた状態で大容量の電力で急速加熱を行っても、安全を確保できて、施工性のよいヒータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明のヒータは、発熱材と、前記発熱材を覆う耐熱絶縁材と、前記耐熱絶縁材の外側に溶着可能な絶縁材にてなる溶着材を形成したものである。
【0007】
上記構成によって、加熱対象物に溶着させた状態で大容量の電力でヒータを急速加熱しても、溶着により確実に被加熱物と密着保持された状態なので、被加熱物への伝熱を妨げられることなく効率よく加熱できる。また、最外周に被覆した溶着材が被加熱物との溶着時に溶解部分が薄膜化したとしても、少なくとも耐熱絶縁材と溶着絶縁材と2重の絶縁膜を備えた構成となり絶縁性が保たれ、施工性にも優れた安全性の高い高容量なヒータが実現可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のヒータは、絶縁性に優れて安全で、加熱対象物への付設施工性の優れた高容量ヒータを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の発明は、発熱材と、前記発熱材を覆う耐熱絶縁材と、前記耐熱絶縁材の外側に溶着可能な絶縁材にてなる溶着材を形成したヒータとしたものである。この構成によってヒ
ータを大容量電力で加熱しても、確実に絶縁した状態で溶着材を介して加熱対象物と密着しているので、安全で付設施工性の高い高容量ヒータが実現できる。
【0010】
第2の発明は、溶着材は、耐熱絶縁材の絶縁破壊を起さない温度で熱溶着が可能となる樹脂材料で形成した請求項1に記載のヒータとしたものである。これによって、ヒータを加熱対象物に熱溶着した際に耐熱絶縁材が溶けず、溶着材とともに実質少なくとも2重の絶縁膜を構成できるため、絶縁性の高いヒータを構成することができる。
【0011】
第3の発明は、発熱材は、線状発熱体とした請求項1または2に記載のヒータとしたものである。線状発熱体としたことで、自由に配線可能となり、配線の粗密によって熱分布を調整したり、曲面への配線や、細密な構成へ配線したりする自由度が高まる。
【0012】
第4の発明は、発熱材を心線とし、前記発熱線に耐熱絶縁材を周設し、前記耐熱絶縁材に溶着材を周設して同軸形状としたものである。これにより、複雑な形状に配線して、線材自体が配設時に回転、ねじれなどを生じても、周設した溶着材と耐熱絶縁材による2重絶縁が確実に可能となり、かつ、溶着面との密着保持が確実に可能となる。
【0013】
第5の発明は、発熱材は、面状発熱体とした請求項1または2に記載のヒータとしたものである。面状発熱体としたことで、自由に配線可能となり、広面積加熱の均熱構成が容易にできる。
【0014】
第6の発明は、溶着材を耐熱絶縁材の溶着面にコーティングしたものである。ヒータの溶着方向が特定されるものについては、溶着面を特定して溶着材を必要な面にのみコーティングすることで工程数減数や材料のコスト性があがる。
【0015】
第7の発明は、請求項1から6に記載のヒータと、着座面を有する便座ケーシングと、前記ヒータを前記便座ケーシングに内蔵して前記着座面を加熱する便座装置としたものである。前記ヒータの発熱により着座面を短時間で大容量電力で加熱しても、ヒータの絶縁が確実なので、安全な着座面暖房が実現できる。
【0016】
第8の発明は、第7の発明において便座ケーシングの着座面を熱伝導性のよい金属により形成するようにしたものである。便座ケーシングの着座面を熱伝導性のよい金属により形成することにより、ヒータの加熱電力が従来と同じでも熱伝達が早くなり、着座面温度の立ち上り時間を早くすることができると共に温度分布も均一化しやすい。また、金属の便座であっても、大容量電力により加熱しても、ヒータの絶縁が確実なので人体が着座する便座装置としての安全性を向上させることができる。
【0017】
第9の発明は、第7または第8の発明において、ヒータは、均熱シートを介して便座ケーシングの着座面の裏面側に貼着したものである。これによって、着座面の暖房の必要な部位を均一加熱することができて、温度ムラの少ない快適な暖房ができる。
【0018】
第10の発明は、第7から9の発明において、ヒータは、便座ケーシングの着座面の裏面側に熱溶着したものである。熱溶着による接着であるので、耐熱絶縁材と溶着材のそれぞれの温度特性を考慮し温度管理をした状態で、ヒータ使用時に損傷のない溶着をすることができる。
【0019】
第11の発明は、便座ケーシングのすくなくともヒータ貼着部位に溶着材をコーティングしたものである。これにより、ヒータの便座ケーシングへの溶着時に、貼り付ける両面の溶着材により効率よく、確実に貼り付けることが可能となる。
【0020】
本発明の目的は、第1の発明から第3の発明を実施の形態の要部とすることにより達成できるので、各請求項に対応する実施の形態の詳細を、以下に図面を参照しながら説明し、本発明を実施するための最良の形態の説明とする。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、本実施の形態の説明において、同一構成並びに作用効果を奏するところには同一符号を付して重複した説明を行わないものとする。
【0021】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1におけるヒータ1を説明する図であり、(a)は要部断面図で、(b)は同ヒータの斜視図、(c)は同ヒータの加熱対象物との接着状態の説明図、(d)は同ヒータのほかの構成例を説明する図である。
【0022】
図1(a)および(b)に示すように、ヒータ1は発熱材2と、発熱材2を覆う耐熱絶縁材3と、耐熱絶縁材3の外側に熱溶着可能な絶縁材にてなる溶着材4を形成されている。さらに詳しくは図1(a)および(b)において、発熱材2として線径が約0.2〜0.3mm程度のニッケルめっき銅線の単線を用い、その発熱材2に周設して直接密着する耐熱絶縁材3は連続使用可能温度が約260℃と耐熱性が高いPFA(パーフロロアルコキシ樹脂)を約0.1mm程度の膜厚で形成し、さらにその耐熱絶縁材3の外側の溶着材4(絶縁材)として熱溶着が簡単なPVC(塩化ビニル樹脂)を厚さ約0.3mm程度で被覆した構成である。そして、発熱材2は、心材のその周囲に、耐熱絶縁材3、溶着材4を周設した同軸形状としたものである。
【0023】
そして、このヒータ1は、加熱対象物6の、ヒータ1と加熱対象物6との接触面に樹脂コートを施しており、この樹脂コート面5に対応するようにヒータ1を溶着させたものである。
【0024】
以上のように構成されたヒータについて、以下その動作、作用を説明する。
【0025】
このヒータを用いて、加熱対象物6の加熱を短時間に昇温加熱するため、高電力を投入すると発熱材2が発熱して、耐熱絶縁材3から溶着材4に熱が伝わり、さらにその溶着材4によって耐熱絶縁材3と加熱対象物6は密着状態にできるため、発熱材2から耐熱絶縁材3および溶着材4の密着状態にある固体を介して加熱対象物6へよどみなく素早く熱を伝達できる。このとき、発熱材2がたとえば100℃を超える高温になっても、その発熱材2に周設して直接密着する耐熱絶縁材3は連続使用可能温度が約260℃と耐熱性が高いPFA(パーフロロアルコキシ樹脂)で構成しているので、熱で損傷したり絶縁破壊されたりする恐れは全くない。さらにその耐熱絶縁材3の外側の溶着材4(絶縁材)であるPVC(塩化ビニル樹脂)は連続使用可能温度が約105℃のものであっても、加熱対象物6の温度をたとえば40℃に温度制御するような場合、溶着材4の層の温度は50〜70℃となり、耐熱温度105℃の低温で熱溶着施工しやすいPVC(塩化ビニル樹脂)でも熱で損傷したり絶縁破壊されたりする恐れはなく、熱による加熱対象物6との剥離の心配もない。
【0026】
このように、最も高温になる発熱材2と直接接触する部分は耐熱温度の高い耐熱絶縁材3で覆い、その耐熱絶縁材3が加熱対象物6に確実に密着状態を保つように耐熱絶縁材3の外側に溶着可能な絶縁材にてなる溶着材4を形成したヒータ1の構成にしたことにより、大容量の電力でヒータを急速加熱しても、そのヒータ1が加熱対象物6と密着保持を損なうことがないので、加熱対象物6への伝熱を妨げられることなく効率よく急速昇温できるとともに、安全に絶縁を確保できる。
【0027】
また、最外周に被覆した溶着材4が加熱対象物6との溶着時に溶解部分が薄膜化したとしても、少なくとも耐熱絶縁材3と溶着絶縁材である溶着材4との2重絶縁膜を備えた構
成となるので十分な絶縁性が保たれ、施工性にも優れた安全性の高い高容量なヒータとなる。
【0028】
以上のように、本実施の形態においては、発熱材2と、発熱材を覆う耐熱絶縁材3と、耐熱絶縁材3の外側に溶着可能な絶縁材にてなる溶着材4を形成したことにより、ヒータを高容量にしても発熱材周囲の絶縁が確実となり、高容量でも安全なヒータとすることができる。
【0029】
なお、発熱材2に隣接する耐熱絶縁材3に耐熱性が高いPFA(パーフロロアルコキシ樹脂)を用い、その外周に耐熱絶縁材3よりも軟化温度の低い溶着材であるPVC(塩化ビニル樹脂)を用いた理由は、ヒータとして加熱使用時において発熱材2が最も高温であり、耐熱絶縁材3から溶着材4に伝熱されていくにしたがって温度は低くなるように温度勾配があるため、溶着材4の耐熱温度は耐熱絶縁材3より低くても絶縁性確保ができることにある。しかも溶着材4の軟化温度が比較的低いことにより、熱溶着施工も容易である。
【0030】
また、溶着材4を熱溶着可能な樹脂材料で構成したことにより、加熱対象物6の溶着面を樹脂コート5とした場合、また、樹脂材料からなる部分を加熱する場合などは、溶着が確実になり、熱溶着する場合の温度管理や熱付加時間の管理がしやすくなり、加熱対象物6との一体化が容易になる。
【0031】
また、本実施の形態1の同軸形状の線状発熱体であるヒータ1を加熱対象物6、例えば広い面積の暖房面に溶着すると、配設時にパターンを容易に変更可能であるし、その配設粗密を調節することで暖房面での加熱強度を任意に変えることが可能である。さらに、曲面や立体などの3次元形状にも容易に配設して対応することが可能となる。
【0032】
また、複雑な形状をした加熱対象物6に配設する場合には、ヒータ1の線自体のねじれが生じてしまうが、同軸状に構成したため、回転、ねじれが生じたとしても溶着面とヒータ1との接触があれば必ず溶着することが可能で、貼り付けムラが生じない。
【0033】
また、ヒータ1の最外周の全周囲に溶着材4を周設しているため、溶着部位との接着部位と全周の被覆とが一体となりヒータ1全体を溶着保持した状態で加熱対象物6に接触することになり、密着保持が確実にできる。たとえば、溶着面が鉛直方向の上となりヒータ1の自重が下方へかかるような場合でも、また、耐熱絶縁材3と溶着材4の密着性が悪い場合でも、確実に密着保持ができる。
【0034】
よって、このヒータ1を大容量電力による急速昇温をさせても、加熱対象物6との接着が剥離した部位が生じにくく加熱対象物への伝熱が確実に行われる。その結果、接着剥離部位での局所過熱が生じず、ヒータの絶縁損傷もなく漏電などの可能性のない安全なヒータが実現できる。
【0035】
なお、図1(d)に示すように同実施の形態におけるヒータの他の構成についても上記と同様の効果を奏する。この構成は、発熱材2の心線の構成が上記形態と異なり、中心にガラスや樹脂、また繊維材料を心線2aとして設けその周囲にヒータ線2bを巻回するものである。このような構成とすることでこのヒータ線2bの巻回密度の粗密により、ヒータ1の発熱分布を操作することも可能となる。
【0036】
なお、上記実施の形態において、耐熱絶縁材3としてPFA(パーフロロアルコキシ樹脂)、溶着材4(絶縁材)としてPVC(塩化ビニル樹脂)用いた例について説明したが、耐熱絶縁材3や溶着材4の材料は上記した例に限定されるものではなく、それ以外の材料たとえばPTFE(フッ素樹脂)やポリイミド樹脂、アクリル樹脂など他の材料でも同様の効果を得ることができる。また、耐熱絶縁材3と溶着材4が同じ種類の樹脂で2層以上の多層に皮膜を重ねる構成であってもピンホールによる絶縁耐圧性能を損なう危険を防止でき、かつヒータ1と加熱対象物6との部分剥離等を防止できることで局部異常昇温および絶縁損傷等を防止することができる。
(実施の形態2)
図2は、本発明の第2の実施の形態におけるヒータの要部断面図である。
【0037】
実施の形態1の構成と異なるのは、ヒータ7の発熱材を、面状発熱体8としたところである。
【0038】
なお、実施の形態1と同一符号のものは同一構造を有し、説明は省略する。面状発熱体を挟み込んでその周囲に耐熱絶縁材3をラミネートし、その外周面の溶着面に溶着材4をコーティングしたものである。この溶着材4は図2のA方向の片面にコートされており、図面A方向で加熱対象物に溶着する。
【0039】
以上のように構成されたヒータ7について、以下その動作、作用を説明する。面状発熱体8は図1の線状の発熱材2の場合に比べてによって、加熱対象物と対向する伝熱面積を広くすることができるため、発熱体8の単位面積当りのワット数(すなわちワット密度)が小さくなる。つまり発熱体8の単位面積当りの熱負荷を小さくでき、発熱体8と直接接触する耐熱絶縁材3は耐熱温度の比較的低い材質でも使用可能にできる。ようするに、同じ熱量を広い面積に薄めて広げる理屈であり、ヒータ7全体がより均熱化した状態で放熱される。このように、本実施の形態においては、発熱材を面状発熱体8としたことにより、ヒータ7の溶着面全体を容易に均一加熱できるのみならず、発熱体8および耐熱絶縁材3の単位面積当りの熱負荷を小さくできることから、局部異常昇温および絶縁損傷等を防止することができる構成となる。
【0040】
また、面状発熱体としたことで、発熱体8はエッチング等で自由な配線形態(配線パターン)が容易となり、広い面積を加熱する場合にも均熱構成が容易にできる。
【0041】
なお、溶着材4は溶着面にのみコーティングする構成としたが、溶着材4は全周囲面に設けてもよく、溶着側を特定しない場合、また両面に加熱対象物を溶着する場合などは両面に設けるとよい。両面に設けた場合は、溶着面を特定しなくてもよく、汎用性の高いヒータとすることができる。
【0042】
(実施の形態3)
図3は本発明の第3の実施の形態における便座装置を便器に設置した状態の斜視図を示し、図4(a)は便座の側方部の要部断面図を示し、(b)は(a)のB−B切断面における便座に接着されたヒータの要部断面図を示すものである。
【0043】
図3に示すように、便器9上に便座装置本体10が載置固定してある。前記本体10には回動自在に便蓋11及び便座12が設けてあり、前記本体10の袖部10aには赤外線透過部が設けてあり、その内側にはトイレ空間の人体の有無(例えば、トイレ室への使用者の入室または便座装置10への使用者の近接)を検知する赤外線センサ13が内蔵されている。
【0044】
次に図4(a)に示すように、便座12の便座ケーシング14は、金属製の着座面を有する便座ケーシング14a(上枠体)と便器面に対峙する便座ケーシング14b(下枠体)のそれぞれの内周縁および外周縁を接合固定することにより、内部に空洞部15を有する構造となっている。その空洞部15の内部には便座ケーシング14aの着座部に対応す
る便座内壁面16に着座面を加熱するヒータ1が取り付けられている。着座面側には表面硬度、耐薬品性能、光沢等を考慮した表面化粧層が塗装してある。
【0045】
次に図4(b)に示すように、ヒータ1は、発熱材2と発熱材2を覆う耐熱絶縁材3と耐熱絶縁材3の外側に溶着可能な絶縁材にてなる溶着材4を形成している。この構成は実施の形態1のヒータ構成と対応するので、詳細説明は省くこととする。そして、便座ケーシング14の内壁面16にヒータ1を溶着して固定したものである。便座ケーシング14のアルミ合金製の上枠体14aの内壁面16の溶着面には、アクリル樹脂など溶着しやすい樹脂コート17が表面にコーティングされており、この層を介してヒータ1が便座ケーシング14の内壁面16に溶着固定されている。
【0046】
以上のように構成された便座装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0047】
使用者がトイレに入室した場合、人体検知センサ13がそれを検知し、その信号によりヒータ1へ大容量電力を投入して瞬時に温度上昇させ便座ケーシング14の着座面の温度を目標温度に到達させる。よって、使用者が便座12に着座するまでに、十分に暖房された着座面に人体が接触するので、快適に便座を使用できる。また、着座検知の機能を備えて離座にともなって暖房を停止する構成とすることで、暖房を使用時のみ機能させることで、省エネが実現できる。
【0048】
また、本実施の形態で溶着させたヒータ1であれば、大容量電力による急速昇温を行ったとしても、溶着部位に剥離が生じず、局所過熱の発生もないので、絶縁が確実で、金属からなる便座ケーシングの上枠体14aであっても漏電等の可能性のない非常に安全性の高い急速暖房の可能な便座装置とすることができる。
【0049】
以上のように、本実施の形態においては、便座ケーシング14の着座面となる上枠体14aをアルミ合金のような熱伝導性のよい金属により形成することにより、ヒータの加熱電力が従来と同じでも熱伝達が早くなり、着座面温度の立ち上り時間を早くすることができると共に温度分布も均一化しやすい。また、金属の便座であっても、大容量電力により加熱しても、ヒータの絶縁が確実なので人体が着座する便座装置としての安全性を向上させることができる。
【0050】
なお、本実施例の形態において、便座ケーシング14の上枠体14aをアルミ合金で形成した例で説明したが、アルミ合金に限らず熱伝導性のよい金属であればたとえば銅合金やステンレスなど他の金属であっても同様の効果を得ることができる。
【0051】
また、ヒータ1が便座ケーシング14の内壁面16の最外皮膜の樹脂コート17に熱溶着されているのでヒータ1が便座ケーシング14と、確実にかつ効率よく必要最小限の部品構成により一体化されたものとなり、絶縁性確保と軽量化が実現できる。
【0052】
また、本実施の形態のように、3次元の複雑な曲面や細部を有する着座部においても、本願発明のヒータであれば付設施工がしやすい。
【0053】
また、本実施例の形態において図4のヒータ1は金属便座の内壁面16に直接溶着する構成で説明したが、図4(c)のように、ヒータ1と便座ケーシング14との間にアルミ箔などの均熱シート18を介して便座ケーシングの着座面の裏面側に貼着してもよい。この場合、線状発熱体は、均熱シート18を介して便座ケーシング14の着座面の裏面側に貼着したことにより、温度ムラがなくなり、着座面温度の均熱化ができる。
【0054】
なお、各実施の形態では、熱溶着する溶着材を用いて説明したが、必ずしもこの構成に
限定するものではなく、薬剤溶着する材料を用いてもよく、他に、熱溶着させる方法も本実施の形態に限るものではなく、レーザーによる溶着や、発熱体自身を通電発熱させて溶着させたりしてもよい。つまりは、ヒータによって加熱する対象物への溶着条件にもとづいて、適切な材料をもちいればよく、ヒータを発熱させても、加熱対象物への接着状態が安定し、2重絶縁の構成を確保できる構成とすればよい。
【0055】
なお、本実施の形態ではトイレ空間の人体の有無を検知する赤外線センサを本体袖部に設けたが、トイレ室内への使用者の入室が検知できる構成であれば、これに限らず、本体と別設した人体検出センサや入室検知センサからの信号の送受信により、着座面の暖房を開始するようにしてもよい。これにより、着座直前の暖房開始が確実にできる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上のように、本発明にかかるヒータは、絶縁性を確実にして高容量化ができるので、加熱の立ちあがりの速度を速め、加熱器具や暖房器具等の様々な用途にも適用できる。さらに、付設施工しやすいため、特殊な形状にでも付設可能であり、人体形状に沿わせた複雑な暖房表面形状などであっても、施工可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】(a)本発明の実施の形態1におけるヒータの要部断面図(b)同ヒータの構成説明図(c)同ヒータの加熱対象物との溶着断面図(d)同ヒータの他の内部構成例説明図
【図2】本発明の実施の形態2におけるヒータの要部断面図
【図3】本発明の実施の形態3におけるヒータを備えた便座装置の全体説明図
【図4】(a)本発明の実施の形態3における同便座装置の便座部の要部断面図(b)同便座装置の便座ケーシング部の要部断面図(c)同便座装置の均熱シートを備えた構成説明図
【図5】従来の暖房便座装置の要部断面図
【符号の説明】
【0058】
1 ヒータ
2 発熱材
3 耐熱絶縁材
4 溶着材
5 樹脂コート
6 加熱対象物
7 面状発熱体
10 便座装置
14 便座ケーシング
17 樹脂コート
18 均熱シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱材と、前記発熱材を覆う耐熱絶縁材と、前記耐熱絶縁材の外側に溶着可能な絶縁材にてなる溶着材を形成したヒータ。
【請求項2】
溶着材は、耐熱絶縁材の絶縁破壊を起さない温度で熱溶着が可能となる樹脂材料で形成した請求項1に記載のヒータ。
【請求項3】
発熱材は、線状発熱体とした請求項1または2に記載のヒータ。
【請求項4】
発熱材を心線とし、前記発熱線に耐熱絶縁材を周設し、前記耐熱絶縁材に溶着材を周設して同軸形状とした請求項3記載のヒータ。
【請求項5】
発熱材は、面状発熱体とした請求項1または2に記載のヒータ。
【請求項6】
溶着材を耐熱絶縁材の溶着面にコーティングした請求項5記載のヒータ。
【請求項7】
請求項1から6に記載のヒータと、着座面を有する便座ケーシングと、前記ヒータを前記便座ケーシングに内蔵して前記着座面を加熱する便座装置。
【請求項8】
便座ケーシングの着座面を熱伝導性のよい金属により形成する請求項7に記載の便座装置。
【請求項9】
ヒータは、均熱シートを介して便座ケーシングの着座面の裏面側に貼着した請求項7または8のいずれか1項に記載の便座装置。
【請求項10】
ヒータは、便座ケーシングの着座面の裏面側に熱溶着した請求項7から9のいずれか1項に記載の便座装置。
【請求項11】
便座ケーシングのすくなくともヒータ貼着部位に溶着材をコーティングした請求項7から10のいずれか1項記載の便座装置。


【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【公開番号】特開2007−323818(P2007−323818A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−149192(P2006−149192)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】