ヒートパイプ、ヒートパイプの製造方法および電子基板
【課題】 ヒートパイプの表面に実装された電子部品と、外部の電子回路を電気的に接続できると共に、耐久性と信頼性に優れる電気配線を有するヒートパイプを提供する。
【解決手段】 ヒートパイプ1は、冷媒を封入する平板状の本体部2と、本体部2の側面の一部もしくは全部から突出する突出部3を備え、本体部2は、平板状の上部板と、上部板と対向する平板状の下部板と、上部板と下部板との間に積層されると共に蒸気拡散路と毛細管流路を形成する単数又は複数の中間板を有し、突出部3は、上部板、下部板および中間板の少なくとも一つが、他よりもその面積が大きいことで形成され、突出部3は、電気配線4を有する。
【解決手段】 ヒートパイプ1は、冷媒を封入する平板状の本体部2と、本体部2の側面の一部もしくは全部から突出する突出部3を備え、本体部2は、平板状の上部板と、上部板と対向する平板状の下部板と、上部板と下部板との間に積層されると共に蒸気拡散路と毛細管流路を形成する単数又は複数の中間板を有し、突出部3は、上部板、下部板および中間板の少なくとも一つが、他よりもその面積が大きいことで形成され、突出部3は、電気配線4を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路、LED素子、パワーデバイスなどの発熱体を冷却するヒートパイプ、ヒートパイプの製造方法および電子基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器、産業機器および自動車などには、半導体集積回路、LED素子、パワーデバイスなどの電子部品が使用されている。これらの電子部品は、内部を流れる電流によって発熱する発熱体になっている。発熱体の発熱が一定温度以上となると、動作保証ができなくなる問題もあり、他の部品や筐体へ悪影響を及ぼし、結果として電子機器や産業機器そのものの性能劣化を引き起こす可能性がある。
【0003】
このような発熱体を冷却するために、封入された冷媒の気化と凝縮による冷却効果を有するヒートパイプが提案されている。
【0004】
ヒートパイプは、内部に封入された冷媒が気化する際に、発熱体から熱を奪って移動する。気化した冷媒は、放熱によって冷却されて凝縮し、凝縮した冷媒は再び還流する。この気化と凝縮の繰り返しによって、ヒートパイプは発熱体を冷却する。
【0005】
このようなヒートパイプの特性を活かして、ヒートパイプの表面にLED素子やパワーデバイスなどの電子部品を直接実装する技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2000−269676号公報
【特許文献2】特開2004−214429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、ヒートパイプの表面に電子部品が直接実装されることで、電子部品の冷却と共に電子部品とヒートパイプの実装面積を削減できる。
【0007】
ここで、ヒートパイプ表面に実装された電子部品は、外部から電気信号を受ける、あるいは外部へ電気信号を出力する必要がある。このように、ヒートパイプ表面に実装された電子部品と外部の電子回路との電気信号のやり取りを実現するには、ワイヤボンディングにより金属線を接続する電気配線を行うか、フレキシブル基板による電気配線を行う必要がある。
【0008】
しかし、これらの電気配線では、ヒートパイプと外部の電子回路との間に、形状の不安定な電気配線が存在することになり、信頼性や耐久性の面で不具合が生じる。特に、ヒートパイプの外縁が途切れる部分から電子回路までの間に、固定されない電気配線が存在するため、衝撃や熱によって断線も生じうる。更には、電気配線の接続は、製造工程においての作業量と要求精度が大きく、コスト面においても問題があった。
【0009】
特に、ヒートパイプが狭小空間である電子機器に格納される場合には、電気配線が他の電子部品と接触し、動作不良を生じさせる問題もある。
【0010】
本発明は、ヒートパイプの表面に実装された電子部品と、外部の電子回路を電気的に接続できると共に、耐久性と信頼性に優れる電気配線を有するヒートパイプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題に鑑み、本発明のヒートパイプは、封入された冷媒の気化および凝縮によって発熱体を冷却するヒートパイプであって、ヒートパイプは、冷媒を封入する平板状の本体部と、本体部の側面の一部もしくは全部から突出する突出部を備え、本体部は、平板状の上部板と、上部板と対向する平板状の下部板と、上部板と下部板との間に積層されると共に蒸気拡散路と毛細管流路を形成する単数又は複数の中間板を有し、突出部は、上部板、下部板および中間板の少なくとも一つが、他よりもその面積が大きいことで形成され、突出部は、電気配線を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のヒートパイプによれば、ヒートパイプ本体と外部の電子回路とを、電気配線で容易に電気的に接続できる。特に、電気配線が、ヒートパイプ本体の側面から、ヒートパイプの部材と一体になって形成されるので、電気配線の領域は、衝撃、荷重や振動に対して耐久性が高い。この結果、信頼性も高まる。
【0013】
また、耐久性や信頼性が高いことで、ヒートパイプの表面に電子部品を実装できるだけでなく、電気配線が形成されたヒートパイプを実装する際に要求される空間余裕度も小さくて済む。結果として、狭小空間におけるヒートパイプの実装が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の第1の発明に係るヒートパイプは、封入された冷媒の気化および凝縮によって発熱体を冷却するヒートパイプであって、ヒートパイプは、冷媒を封入する平板状の本体部と、本体部の側面の一部もしくは全部から突出する突出部を備え、本体部は、平板状の上部板と、上部板と対向する平板状の下部板と、上部板と下部板との間に積層されると共に蒸気拡散路と毛細管流路を形成する単数又は複数の中間板を有し、突出部は、上部板、下部板および中間板の少なくとも一つが、他よりもその面積が大きいことで形成され、突出部は、電気配線を有する。
【0015】
この構成により、ヒートパイプの表面もしくは内面に実装された電子部品と外部の電子回路を電気的に接続できる。加えて、電気的に接続する部分である電気配線を有する突出部は、本体部と同じ素材により一体に構成されるので、十分な強度と耐久性を有する。
【0016】
本発明の第2の発明に係るヒートパイプでは、第1の発明に加えて、電気配線は、突出部の先端から本体部にかけて形成されている。
【0017】
この構成により、突出部の先端で外部の電子回路との電気的な接続が実現できる。
【0018】
本発明の第3の発明に係るヒートパイプでは、第1から第2のいずれかの発明に加えて、電気配線は、突出部に形成される配線パターンを含む。
【0019】
この構成により、電気配線が容易に形成できる。
【0020】
本発明の第4の発明に係るヒートパイプでは、第1から第3のいずれかの発明に加えて、本体部の側面および表面の少なくとも一方は、電気線路を有し、電気線路は、電気配線と電気的に接続されている。
【0021】
この構成により、本体部の表面に実装されている電子部品は、電気配線と電気的に接続される。電子部品が、本体部のどの位置で実装されていても、確実に電気接続できる。
【0022】
本発明の第5の発明に係るヒートパイプでは、第1から第4のいずれかの発明に加えて、突出部は、本体部の異なる位置から突出する第1突出部と第2突出部を有し、第1突出部および第2突出部の少なくとも一方は、ヒートパイプの外部から接続される配線基板を支持する。
【0023】
この構成により、突出部に直接的に電気配線が形成されない場合でも、十分な強度と耐久性を持って、突出部は、外部からの配線基板を支持できる。また、突出部が複数であることで、ある突出部には、電気配線が直接形成されており、別の突出部は外部からの配線基板を支えるなど、複数の突出部が異なる役割を有していても良い。
【0024】
本発明の第6の発明に係るヒートパイプでは、第5の発明に加えて、第1突出部および第2突出部の少なくとも一方は、本体部からの熱を放熱する。
【0025】
この構成により、突出部は、電気配線を支持するだけでなく、本体部の熱を放熱するマルチな役割を担う。
【0026】
本発明の第7の発明に係るヒートパイプでは、第5から第6のいずれかの発明に加えて、本体部は方形を有しており、第1突出部は、本体部の所定の辺から突出し、第2突出部は、所定の辺と略垂直の辺から突出する。
【0027】
この構成により、縦横に差込口を有する電気スロットやボードスロットなどに、ヒートパイプを直接嵌め込むことができる。結果として、ヒートパイプに実装された電子部品を、簡便に外部の電子回路と電気的に接続できる。
【0028】
本発明の第8の発明に係るヒートパイプでは、第1から第7のいずれかの発明に加えて、中間板は、切り欠き部と内部貫通孔を有し、切り欠き部は蒸気拡散路を形成し、内部貫通孔は毛細管流路を形成し、蒸気拡散路は、気化した冷媒を水平方向に拡散し、毛細管流路は、凝縮した冷媒を垂直方向もしくは垂直・水平方向に還流させる。
【0029】
この構成により、水平方向への拡散性能の高いヒートパイプが実現できる。このため薄型で平板状のヒートパイプが実現できるので、結果として狭小空間に実装が容易なヒートパイプが実現できる。
【0030】
本発明の第9の発明に係るヒートパイプでは、第8の発明に加えて、中間板は複数であって、複数の中間板のそれぞれに設けられた内部貫通孔同士は、それぞれの一部のみが重なって、内部貫通孔の水平方向の断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路が形成される。
【0031】
この構成により、毛細管流路における、凝縮した冷媒の還流が高速になる。また、より微細な毛細管流路が形成できる。
【0032】
本発明の第10の発明に係るヒートパイプでは、第1から第9のいずれかの発明に加えて、上部板および下部板のそれぞれは、毛細管流路および蒸気拡散路の少なくとも一方と連通する凹部を更に備える。
【0033】
この構成により、毛細管流路への還流を促すと共に、気化した冷媒の冷却効率も高める。
【0034】
本発明の第11の発明に係るヒートパイプでは、第1から第10のいずれかの発明に加えて、本体部には電子部品が実装され、電気配線は、電子部品と電気的に接続される。
【0035】
この構成により、本体部の表面もしくは内部に実装された電子部品が、外部の電子回路と電気的に接続される。加えて、接続部分の強度と耐久性が高い。
【0036】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0037】
なお、本明細書におけるヒートパイプとは、内部空間に封入された冷媒が、発熱体からの熱を受けて気化し、気化した冷媒が冷却されて凝縮することを繰り返すことで、発熱体を冷却する機能を実現する部材、部品、装置、デバイスを意味する。
【0038】
(実施の形態1)
まず、ヒートパイプの概念について説明する。
【0039】
ヒートパイプは、内部に冷媒を封入しており、受熱面となる面を、電子部品をはじめとする発熱体に接している。内部の冷媒は、発熱体からの熱を受けて気化し、気化する際に発熱体の熱を奪う。気化した冷媒は、ヒートパイプの中を移動する。この移動によって発熱体の熱が運搬されることになる。移動した気化した冷媒は、放熱面などにおいて(あるいはヒートシンクや冷却ファンなどの二次冷却部材によって)冷却されて凝縮する。凝縮して液体となった冷媒は、ヒートパイプの内部を還流して再び受熱面に移動する。受熱面に移動した冷媒は、再び気化して発熱体の熱を奪う。
【0040】
このような冷媒の気化と凝縮の繰り返しによって、ヒートパイプは発熱体を冷却する。このため、ヒートパイプは、その内部に気化した冷媒を拡散する蒸気拡散路と、凝縮した冷媒を還流させる毛細管流路を有する必要がある。
【0041】
ヒートパイプには、筒状の形状を有して垂直方向に気化した冷媒を拡散させると共に垂直方向に凝縮した冷媒を還流させる構造を有するものや、発熱体と接する受熱部と冷媒を冷却する冷却部とが別体であってパイプで接続される構造を有するものなどがある。
【0042】
これらの構造を有するヒートパイプは、その体積が大きく(特に垂直方向に体積が大きくなりやすい)、実装する空間が狭小である場合には不適である。このため、平板状で薄型のヒートパイプが望まれることも多い。
【0043】
このような平板状で薄型のヒートパイプであれば、その表面の領域を利用して、電子部品を実装することができる。ヒートパイプの冷却対象となる電子部品が実装されたり、ヒートパイプの制御や表示にかかわる電子部品が実装されたりする。
【0044】
一例としては、ヒートパイプの動作状態を検出するために、ヒートパイプの表面温度を測定する必要がある。この表面温度を測定するために、温度センサーや感熱センサーが、ヒートパイプの表面に実装される。別の例としては、ヒートパイプの動作状態を光によって表示するLEDなどの発光素子が実装される場合がある。更に別の例としては、発熱性の高いパワーデバイスが、ヒートパイプの表面に直接実装されることもある。
【0045】
このようにヒートパイプは、電子部品などの発熱体を冷却するための部材であるが、ヒートパイプが平板状で薄型である場合には、その表面に電子部品を実装する要求が生じる。また、ヒートパイプが平板状で薄型であることで、電子機器の高密度実装が可能となる。これに加えて、ヒートパイプの表面が電子部品の実装領域として活用されることで、更なる高密度実装が可能となる。
【0046】
ところで、このようにヒートパイプの表面に実装された電子部品は、単体では動作できず、ヒートパイプの外部の電子回路や電子基板と電気的に接続される必要がある。電子部品である以上、電気信号のやり取りが必要になるからである。このため、金属線(ワイヤ)やリード線をワイヤボンディングによって接続することや、フレキシブル基板で接続することがありえる。しかしいずれも、ヒートパイプと外部の電子回路との間に、不安定な形態を作ることになり好ましくない。これらの金属線やリード線は、ヒートパイプと外部の電子回路との間で宙吊り状態になってしまい、物理的な衝撃や熱による影響で断線したり、変形したりするおそれがあるからである。
【0047】
本発明のヒートパイプはこれらの問題を解決する。
【0048】
まず、ヒートパイプの全体構造について説明する。
【0049】
(全体構造)
図1は、本発明の実施の形態1におけるヒートパイプの斜視図である。
【0050】
ヒートパイプ1は、封入された冷媒の気化および凝縮によって発熱体を冷却するヒートパイプである。
【0051】
ヒートパイプ1は、冷媒を封入する平板状の本体部2と本体部2の側面から突出する突出部3を備える。突出部3は、電気配線4を有する。また、図1においてはヒートパイプ1(すなわち本体部2)の表面もしくは内面に電子部品5が実装されている。また電子部品5同士、および電子部品5と電気配線4とは、電気線路6により電気的に接続されている。
【0052】
また、ヒートパイプ1の外部に電子基板7が備えられており、電子基板7には電子回路8が形成されている。電気配線4は、電子基板7と電気的に接続されており、この結果、外部の電子基板7(結果的には電子基板7に実装されている電子回路8)とヒートパイプ1に実装されている電子部品5とが、電気配線4を介して電気的に接続される。
【0053】
この結果、ヒートパイプ1の表面に実装された電子部品は、外部の電子回路8と電気信号のやり取りが可能となり、実際の使用が可能となる。
【0054】
本体部2は、平板状の上部板と、上部板と対向する下部板と、上部板と下部板との間に積層される単数又は複数の中間板がそれぞれ積層され接合されて構成される。
【0055】
電気配線4を有する突出部3は、上部板、下部板および中間板の少なくとも一つが、他よりもその面積が大きいことで形成される。例えば、特定の中間板が(単数であっても複数であってもよい)上部板と下部板および特定の中間板以外の中間板よりも、その面積が大きい。この場合には、この特定の中間板は、上部板、中間板、下部板の全てが積層された際には、本体部2の側面からはみ出すことになる。このはみ出した部分が、突出部3を形成する。
【0056】
電気配線4は、この突出部3に形成される。突出部3は、上述の通り、上部板、下部板、中間板のいずれかの部材の一部であるので、突出部3は、これらの部材の素材と形状で決まる強度と耐久性を有する。通常、上部板、下部板、中間板は金属で形成されるので、突出部3も金属で形成される。このため、金属線やリード線、あるいはフレキシブル基板だけで、ヒートパイプ1と電子回路8との間が接続される場合と異なり、突出部3は、素材そのものの強度が高い。
【0057】
加えて、突出部3は、本体部2を形成する部材と一体であるので、本体部2の側面と突出部3とは物理的に一体結合している。このため、本体部2の側面と突出部3の根元とは分離・分断されているわけではないので、突出部3は、高い安定性を有する。
【0058】
このように、本発明のヒートパイプ1は、ヒートパイプ1(本体部2)に実装されている電子部品5と、外部の電子回路8とを電気的に接続させることが可能であると共に、接続部分は、高い強度、安定性および耐久性を有する。
【0059】
次に、各部の詳細について説明する。
【0060】
(本体部)
まず、本体部2について図2〜図5を用いて説明する。
【0061】
本体部2は、冷媒の気化と凝縮によって発熱体を冷却するヒートパイプの機能を有する部分である。本体部2は、気化した冷媒を水平方向に拡散する蒸気拡散路15と、凝縮した冷媒を垂直方向もしくは垂直・水平方向に還流させる毛細管流路16とを備える。
【0062】
図2は、本発明の実施の形態1における本体部を側面から見た分解図である。
【0063】
図2から明らかな通り、本体部2は、平板状の上部板10、上部板10と対向する平板状の下部板11、上部板10と下部板11の間に積層される単数又は複数の中間板12を有している。これら上部板10、下部板11、中間板12が積層されて接合されることで、本体部2が形成される。積層によって、本体部2の内部に内部空間が形成され、更には蒸気拡散路15と毛細管流路16も形成される。
【0064】
(上部板)
上部板について、図2および図4を用いて説明する。図4は、本発明の実施の形態1における本体部の側断面図である。
【0065】
上部板10は、平板状であり、所定の形状、面積を有している。
【0066】
上部板10は、金属、樹脂などで形成されるが、銅、アルミニウム、銀、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ステンレスなどの熱伝導率の高い金属で形成されることが好ましい。また、上部板10は、方形、菱形、円形、楕円形、多角形など種々の形を有していてよいが、製造上の容易性や実装上の容易性から方形が採用されやすい。
【0067】
なお、突出部3を形成するために、上部板10の形状、面積が、下部板11や中間板12と異なっていてもよい。例えば、上部板10は、下部板11や中間板12と同じ形状に対して、はみ出した部分を有していてもよい。このはみ出した部分が、突出部3を形成する。すなわち、上部板10が突出部3を形成する場合には、上部板10の面積は、他の板の面積よりも大きい。
【0068】
上部板10は、その一方の面であって中間板12と対向する面に、蒸気拡散路15および毛細管流路16の少なくとも一方と連通する凹部14を有していることも好ましい。凹部14が毛細管流路16と連通することで、凝縮した冷媒が、上部板10から毛細管流路16へと伝わりやすくなる。あるいは、凹部14が蒸気拡散路15と連通することで、気化した冷媒が、放熱面20に広い面積で接しやすくなり、気化した冷媒の放熱が促進される。
【0069】
なお、凹部14は、本発明において必須の構成要件ではない。
【0070】
上部板10は、中間板12と接合される突起部や接着部を備えていることも好適である。上部板10は、便宜上「上部」との呼称となっているが、物理的に上部の位置に存在しなければならないわけではなく、下部板11と特段に区別されるものでもない。また、上部板10が放熱面20側となっても、受熱面21側となっても特に問題はない。
【0071】
また、上部板10は、冷媒の注入口17を備えている。上部板10、中間板12、下部板11が積層されて接合されると内部空間が形成される。この内部空間は、冷媒を封入する必要があるので、上部板10などの接合後に注入口17から冷媒が封入される。注入口17は、冷媒が封入されると封止されて内部空間は密封される。
【0072】
なお、冷媒は、積層後に注入口17から封入されても良く、上部板10、下部板11、中間板12が積層される際に冷媒が封入されてもよい。
【0073】
(下部板)
下部板11は、上部板10と対向して単数又は複数の中間板12を挟む。
【0074】
下部板11は、金属、樹脂などで形成されるが、銅、アルミニウム、銀、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ステンレスなどの熱伝導率の高い金属で形成されることが好ましい。また、方形、菱形、円形、楕円形、多角形など種々の形を有していてよいが、上部板10と対向して本体部2を形成するので、上部板10と同一の形状、面積であることが好ましい。また、製造上の容易性や実装上の容易性から方形が採用されやすい。
【0075】
但し、突出部3を形成するために、下部板11の形状、面積が、上部板10や中間板12と異なっていてもよい。例えば、下部板11は、上部板10や中間板12と同じ形状に対して、はみ出した部分を有していてもよい。このはみ出した部分が、突出部3を形成する。すなわち、下部板11が突出部3を形成する場合には、下部板11の面積は、他の板の面積よりも大きい。
【0076】
下部板11は、その一方の面であって中間板12と対向する面に、蒸気拡散路15と毛細管流路16に連通する凹部14を有していることも好適である。凹部14は、毛細管流路16と連通することで凝縮した冷媒が、下部板11から毛細管流路16へ伝わりやすくなる。また、凹部14が蒸気拡散路15と連通することで、気化した冷媒が、放熱面20に広い面積で接しやすくなり、気化した冷媒の放熱が促進される。これは、上部板10に凹部14が設けられることと同様の意義を有する。
【0077】
なお、上部板10と同様に、凹部14は必須の構成要件ではない。
【0078】
下部板11は、便宜上「下部」との呼称となっているが、物理的に下部の位置に存在しなければならないわけではなく、上部板10と特段に区別されるものでもない。
【0079】
下部板11は、中間板12と接合される突起部や接着部を備えていることも好適である。
【0080】
また、下部板11が放熱面20側となっても、受熱面21側となっても特に問題はない。
【0081】
(中間板)
中間板12は、単数又は複数である。中間板12は、上部板10と下部板11の間に積層される。
【0082】
中間板12は、金属、樹脂などで形成されるが、銅、アルミニウム、銀、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ステンレスなどの熱伝導率の高い金属で形成されることが好ましい。また、方形、菱形、円形、楕円形、多角形など種々の形を有していてよいが、上部板10および下部板11に挟まれて本体部2を形成するので、上部板10および下部板11と同一の形状であることが好ましい。また、製造上の容易性や実装上の容易性から方形が採用されやすい。なお、上部板10および下部板11に挟まれるので、中間板12の面積は、上部板10および下部板11と同一でも良く、若干小さくてもよい。
【0083】
但し、突出部3を形成するために、中間板12の形状、面積が、上部板10や下部板11と異なっていてもよい。例えば、ある特定の中間板12(中間板12が複数ある場合には、そのいずれか1枚か複数枚)は、上部板10や下部板11および他の中間板12に対して、はみ出した部分を有していても良い。このはみ出した部分が、積層されて本体部2が形成された場合に、突出部3を形成する。例えば、上部板10、下部板11、他の中間板12が所定角の方形を有している場合に、特定の中間板12は、所定角の方形のある辺からはみ出した領域を有しているとする。上部板10、下部板11、中間板12の全てが積層された際には、このはみ出した領域は、本体部2の側面からはみ出すことになる。この側面からはみ出した領域が、突出部3を形成する。すなわち、ある特定の中間板12が突出部3を形成する場合には、この特定の中間板12の面積は、他の板の面積よりも大きい。
【0084】
なお、突出部3は、上部板10、下部板11、中間板12のいずれのはみ出しにより形成されてもかまわない。
【0085】
また、中間板12は、上部板10および下部板11と接続される際に用いられる突起や接着部を有していても良い。加えて、中間板12は、微小な断面積を有する内部貫通孔13を有している。この内部貫通孔13は、毛細管流路16を形成する。
【0086】
最終的には、上部板10と下部板11の間に中間板12が積層されて接合されることで、本体部2が形成される。中間板12は、単数でも複数でもよい。但し、後述するように、より微小な断面積を有する毛細管流路16を形成するためには、中間板12は、複数であることが好ましい。
【0087】
(中間板と蒸気拡散路および毛細管流路)
次に、中間板12、蒸気拡散路15および毛細管流路16について、図3も参照しながら説明する。図3は、本発明の実施の形態1における中間板の上面図である。
【0088】
まず、蒸気拡散路15について説明する。
【0089】
中間板12は、切り欠き部19と内部貫通孔13を有している。
【0090】
切り欠き部19は、本体部2における蒸気拡散路15を形成する。上部板10と下部板11の間に中間板12が積層された場合に、切り欠き部19は空隙を形成することになる。この空隙が蒸気拡散路15となる。
【0091】
ここで、切り欠き部19が、本体部2の水平方向に向けて形成されることで、蒸気拡散路15も、本体部2の水平方向に向けて形成される。このため、気化した冷媒は水平方向に拡散するようになる。
【0092】
特に、図3に示されるように、切り欠き部19が中間板12の中央部から放射状に形成されている場合には、蒸気拡散路15も本体部2の中央部から放射状に形成されることになる。発熱体は、本体部2の略中央部に設置されることが多いので、冷媒は本体部2の略中央部でもっとも熱を受熱する。このため、本体部2の中央部付近の冷媒が最初に気化する。このとき、蒸気拡散路15が本体部2の略中央部から放射状に形成されていることで、中央付近で生じた気化冷媒は、放射状に、すなわち水平方向に拡散する。
【0093】
このように、中間板12が切り欠き部19を有し、水平方向に広がる蒸気拡散路15が形成されることで、本体部2の内部においては、気化した冷媒が水平方向に拡散するようになる。結果として、発熱体からの熱は、中央から周辺に向けて本体部2内部を水平方向に拡散する。結果として、薄型で平板状のヒートパイプであっても、発熱体の熱を効率よく移動できる。
【0094】
なお、図3にしめされるように、切り欠き部19(すなわち蒸気拡散路15)は、放射状でなくとも別の形状であってもよい。なお、蒸気拡散路15が放射状であることで、気化した冷媒が水平方向に拡散するとしても、拡散した後冷却されて凝縮した冷媒が高速に還流しなければ、発熱体の冷却能力は十分でない。本発明のヒートパイプ1の本体部2は、拡散した後で凝縮した冷媒を、本体部2の全面を効率よく活用して還流させる毛細管流路16を有していることにより、高い水平方向の拡散(および還流)性能を実現している。
【0095】
次に毛細管流路16について説明する。
【0096】
中間板12は、内部貫通孔13を有している。内部貫通孔13は、微小な貫通孔であり、凝縮した冷媒が還流する毛細管流路16を形成する。中間板12が図3に示されるように切り欠き部19を有する場合には、切り欠き部19以外の部分に内部貫通孔13が形成される。
【0097】
ここで、中間板12が単数の場合には、中間板12に設けられている内部貫通孔13がそのまま毛細管流路になる。
【0098】
これに対して、中間板12が複数である場合には、複数の中間板12のそれぞれに設けられた内部貫通孔13の一部のみが重なって、内部貫通孔13の水平方向の断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路16が形成される。このように、中間板12が複数である場合には、内部貫通孔13そのものの断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路16が形成されるので、毛細管流路16における凝縮した冷媒の還流をより効果的にできる。
【0099】
なお、ここで、中間板12には、複数の内部貫通孔13が設けられる。毛細管流路16として機能するためには、内部貫通孔13が複数であることが好ましいからである。
【0100】
内部貫通孔13は、中間板12の表面から裏面にかけて貫通しており、その形状は円形でも楕円形でも方形でもよい。内部貫通孔13の一部同士が重なって毛細管流路16を形成することから、内部貫通孔13は方形であることが適当である。これは製造上の容易性からも適当である。
【0101】
内部貫通孔13は、掘削、プレス、ウェットエッチング、ドライエッチングなどで形成されれば良いが、微小加工および加工精度の面から、ウェットエッチング、ドライエッチングなどのエッチング加工で形成されるのが適当である。
【0102】
中間板12が複数の場合には、内部貫通孔13は、複数の中間板12のそれぞれに設けられる。ここで、複数の中間板12は、その内部貫通孔13の一部同士のみがそれぞれ重なるように積層されるので、内部貫通孔13の位置は、隣接する中間板12毎にずれていることが適当である。例えば、ある中間板12における内部貫通孔13の位置と、この中間板12と隣接する別の中間板12における内部貫通孔13の位置は、内部貫通孔13の面積の一部ずつが重なるようにずれている。このように、隣接する中間板12毎に内部貫通孔13の位置がずれていることで、複数の中間板12が積層された場合に、内部貫通孔13の水平方向の断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路16が形成される。
【0103】
毛細管流路16は、複数の中間板12が積層される際に、内部貫通孔13の一部同士が重なり合って、内部貫通孔13の水平方向の断面積よりも小さい断面積を有する。このような内部貫通孔13の断面積よりも小さな断面積を持つ孔が、本体部2の垂直方向に積層され、垂直方向の孔同士が接続することで、垂直方向の流路が形成される。また、垂直方向において階段状の孔となるので、垂直方向であると同時に水平方向にも流れうる流路が形成される。この垂直・水平方向に形成される流路は、その断面積が非常に小さく、凝縮した冷媒を、垂直方向もしくは垂直・水平方向に還流させる。
【0104】
なお、内部貫通孔13の一部のみが重なるようにして、内部貫通孔13よりも小さな断面積を有する毛細管流路16が形成される場合には、毛細管流路16を直接加工するよりも、容易に製造できるメリットもある。
【0105】
なお、毛細管流路16は、凝縮した冷媒が還流するが、気化した冷媒が通ることもありえる。
【0106】
また、毛細管流路16、凹部14の角部や切り欠き部19の角部は、面取りされていたり、Rが設けられていたりすることも好適である。毛細管流路16の断面は、六角形、円形、楕円形、方形、多角形など様々な断面形状を有していて良い。毛細管流路16の断面形状は、内部貫通孔13の形状と、内部貫通孔13同士の重ね合わせ方により定まる。また、断面積も同様に定まる。
【0107】
(製造工程)
上部板10、下部板11、中間板12が積層されて接合されることで本体部2が製造される。
【0108】
製造工程を図2、図4を用いて説明する。
【0109】
上部板10、下部板11および複数の中間板12(図2では中間板12は4枚である)のそれぞれが同一位置で重なるような位置関係に合わせられる。加えて、複数の中間板12は、複数の中間板12のそれぞれに設けられた内部貫通孔13のそれぞれの一部のみが重なるような位置関係にあわせられる。
【0110】
上部板10、下部板11および複数の中間板12の少なくとも一つは、接合突起を有している。
【0111】
上部板10、下部板11、複数の中間板12は、位置あわせされた上で積層され、ヒートプレスによって直接接合されて一体化される。このとき、各部材は、接合突起によって直接接合される。
【0112】
ここで、直接接合とは、接合しようとする2つの部材の面を密着させた状態で加圧しつつ熱処理を加えることであって、面部の間に働く原子間力によって原子同士を強固に接合させることであり、接着剤を用いることなく、2つの部材の面同士を一体化しうる。このとき、接合突起が強固な接合を実現する。
【0113】
ヒートプレスにおける直接接合の条件として、プレス圧力は、40kg/cm2〜150kg/cm2の範囲内であり、温度は250〜400℃の範囲内であることが好ましい。
【0114】
次に、上部板10や下部板11の一部に空けられた注入口17を通じて、冷媒が注入される。その後、注入口17が封止されて本体部2が完成する。なお、冷媒の封入は真空または減圧下で行われる。真空または減圧下で行われることで、本体部2の内部空間が真空または減圧された状態となって冷媒が封入される。減圧下であると、冷媒の気化・凝縮温度が低くなり、冷媒の気化・凝縮の繰り返しが活発になるメリットがある。
【0115】
以上の工程で本底部2が製造されるが、このとき上部板10、下部板11および中間板12の少なくとも一つが、他よりも面積が大きいことで突出部3も形成される。突出部3に予め電気配線4が形成されているか、もしくは本体部2の製造後に突出部3に電気配線4が形成されれば、突出部3は、電気配線4を有することになる。このようにして本体部2から電気配線4を有する突出部3が突出するヒートパイプ1が製造される。
【0116】
ヒートパイプ1の製造方法を簡便に説明すると、平板状の上部板10と、上部板10と対向する平板状の下部板11と、上部板10と下部板11の間に積層されると共に切り欠き部19と内部貫通孔13を有する単数又は複数の中間板12とが接合されて本体部2が形成され、切り欠き部19により気化した冷媒を水平方向に拡散する蒸気拡散路15が形成され、内部貫通孔13により凝縮した冷媒を垂直方向もしくは垂直・水平方向に還流させる毛細管流路16が形成され、上部板10、下部板11および中間板12の少なくとも一つが他よりもその面積が大きいことで、本体部2の側面から突出する突出部3が形成され、この突出部3に電気配線4が形成される。この工程により、ヒートパイプ1が製造される。
【0117】
(製造された本体部)
以上の製造工程で製造された本体部2について、図4を用いて説明する。
【0118】
図4から明らかな通り、上部板10、下部板11、複数の中間板12が積層され接合されることで、蒸気拡散路15と毛細管流路16が形成される。また、上部板10は、放熱面20となり、下部板11は受熱面21となる。なお、放熱面20と受熱面21は特段に区別されない。
【0119】
本体部2の内部空間には冷媒25が封入されている。
【0120】
蒸気拡散路15は、中間板12の切り欠き部19により形成され、毛細管流路16は、内部貫通孔13により形成される。発熱体の熱により気化した冷媒は、蒸気拡散路15を通じて水平方向に拡散する。凝縮した冷媒は、毛細管流路16を通じて垂直方向もしくは垂直・水平方向に還流する。
【0121】
図5は、本発明の実施の形態1における本体部を示す写真である。発明者が実際に製造したものの写真である。図5は、本体部2の上部板10を取り外して内部空間を可視状態としたものを示している。本体部2は、切り欠き部19により形成される蒸気拡散路15と、内部貫通孔13により形成される毛細管流路16と、を有している。
【0122】
ここで、図5より明らかな通り、蒸気拡散路15は、本体部2の略中央部から放射状に形成されている。このため、気化した冷媒は本体部2の内部を水平方向に拡散する。また、毛細管流路16が蒸気拡散路15以外の領域に形成されているので、凝縮した冷媒は、気化した冷媒の拡散を損なうことなく、毛細管流路16を通じて還流する。
【0123】
以上のように、実施の形態1における本体部2は、水平方向に熱移動を効率よく行う、冷却能力の高いヒートパイプを実現できる。このため、ヒートシンクや冷却ファンなどの二次冷却部材を実装しにくい電子機器内部において、最適に適用できる。
【0124】
なお、放射状であることに特に限定されるものではなく、蒸気拡散路15は、水平方向に気化した冷媒を拡散できる形状や構造を有していればよい。
【0125】
なお、実施の形態1における本体部2は、そのサイズが特に限定されるものではないが、実用においては、あるサイズの範囲内であることが適当な場合がある。
【0126】
一例として、本体部2は、20mm角以上100mm角以下の方形を有し、更に1mm以上5mm以下の厚みを有している。このように規定されるサイズは、冷却対象となる発熱体である電子部品のサイズや電子機器への実装上の容易性などから、導入される。
【0127】
勿論、本体部2のサイズは、このサイズに限定されるものではなく、製造上の要求、使用上の要求、実装上の要求など、様々な要求に応じて定まればよい。
【0128】
(突出部)
次に、突出部3について説明する。
【0129】
突出部3は、図1に示されるとおり、本体部2の側面の全部もしくは一部から突出する。突出するとは、本体部2の側面からはみ出す領域を有しているということであり、このはみ出した領域が突出部3である。
【0130】
なお、突出部3は、本体部2の側面からはみ出した領域であって電気配線4を有しておればいいので、突出部3が折り曲げられていたり、面積の大小があったりしてもよい。言い換えると、飛び出る態様として突出している必要はない。
【0131】
突出部3は、上部板10、下部板11および中間板12の少なくとも一つ(但し全部ではない)が、他の板と異なる形状を有していて面積が大きいことにより形成される。すなわち、上部板10、下部板11および中間板12の少なくとも一つが本体部2からはみ出る領域を有することにより、突出部3は形成される。
【0132】
突出部3は、本体部2の側面から突出している基体となるので、この突出部3は、様々な用途に活用できる。特に、電気配線4を形成する領域として活用できる。このとき、電気配線4は、突出部3の表面でも内面でもいずれの場所にでも形成できる。
【0133】
突出部3は、上部板10、下部板11、中間板12のいずれにより形成されても良い。あるいは、中間板12と上部板10との組み合わせ、中間板12と下部板11との組み合わせのいずれかで形成されても良い。また、複数の中間板12のはみ出しで形成されても良い。上部板10、下部板11、中間板12のいずれで形成されても、突出部3は、これらの板の素材と形状に基づく強度や耐久性を有することができる。
【0134】
図6を用いて、突出部3の形成工程を説明する。なお、ここでは複数の中間板12の内の一枚の中間板が、突出部3を形成する態様を例として説明する。
【0135】
図6は、本発明の実施の形態1における本体部を側面から見た分解図である。
【0136】
本体部2は、製造工程にて説明したとおり、上部板10、下部板11、複数の中間板12を積層した上で接合して製造される。図6において中間板12は、4枚である。4枚の中間板12が積層される。4枚の中間板12は、いずれも切り欠き部19や内部貫通孔13を有しており、4枚のうち3枚の中間板12は、同一形状、同一面積を有している。ここで、4枚の中間板12の内、中間板12aのみは、他の中間板12と同一形状を含みつつも、それ以外の形状となる部分を有している。すなわち4枚の中間板12が積層された場合に、中間板12aのみが、はみ出し部分30を有することになる。はみ出し部分30は、そのまま突出部3となる。
【0137】
図6から明らかな通り、はみ出し部分30は、中間板12aと一体である。単純に、中間板12aの一部が本体部2の製造後に突出部3として取り扱われるだけである。このため、突出部3の素材は中間板12aと同じである。中間板12aが、銅、アルミニウム、銀、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ステンレスなどの熱伝導率の高い金属で形成されていれば、突出部3もこれらの金属で形成される。また、突出部3は、中間板12aと一体であるから、特定部分(例えば、本体部2の側面に沿って)において分断や分離されていない。このため、本体部2の側面において急激に強度が落ちるものでもない。
【0138】
このように、中間板12aの一部がそのまま突出部3を形成するので、突出部3が電気配線4を有していても、電気配線4は、十分な強度で支持されていることになる。
【0139】
図6のように、中間板12aの一部が突出部3になった場合には、図1に示されるように、方形である本体部2のある辺から、突出部3が突出する。図1に示されるように、本体部2の側面の一部から突出してもよいし、全部から突出しても良い。突出部3の本体部2からの突出の形態や態様は、突出部3を形成する対象となる中間板12aの形状によって定まる。
【0140】
以上のようにして、中間板12aが、上部板10、下部板11、他の中間板12と異なる形状、面積を有していることで、突出部3は形成される。図6では、複数の中間板12の内の一枚の中間板12aが、突出部3を形成することを説明したが、上部板10、下部板11、あるいは複数の中間板12が他の板と異なる形状や面積を有していることで、突出部3が形成されても良い。
【0141】
なお、図6では、内部貫通孔13と切り欠き部19を表すために、中間板12が途切れ途切れになっているように見えるが、これは側面から見ているためであり、図3に示されるとおり、全体としては一体である。
【0142】
また、突出部3となるはみ出し部分30は、中間板12aと一体であるが、電気配線4の形成の容易性などを考慮して、はみ出し部分30だけ圧延されて薄くされたり、逆に厚くされたりしてもよい。
【0143】
要は、本体部2を構成する部材を活用することで、製造が容易であると共に強度や耐久性も確保できる突出部3が形成されればよい。このような突出部3が形成されることで、電気配線4の強度も実現できる。
【0144】
なお、図6は、中間板12aの左方向にはみ出し部分30が存在し、突出部3が形成される態様を示しているが、図7に示されるように、中間板12aの左右のそれぞれにはみ出し部分30が存在し、突出部3が本体部2の左右それぞれの側面から突出しても良い。
【0145】
図7は、本発明の実施の形態1における本体部を側面から見た分解図である。このように、中間板12aの左右それぞれからはみ出し部分30が突出していることで、本体部2からの突出部3のバリエーションが広がる。なお、突出部3の角部は、他の部品への損傷を防止するために面取りされていることも好適である。
【0146】
(電気配線)
次に、電気配線4について説明する。
【0147】
図1に示されるように、突出部3が本体部2の側面から突出している。図1では、本体部2は、方形を有しており、突出部3は、本体部2の第1辺と第1辺と略垂直である第2辺とから突出している。すなわち突出部3は、2つである。
【0148】
電気配線4は、突出部3に設けられている。図1では、突出部3の表面に設けられている。電気配線4は、外部の電子回路8との電気的な接続を必要とするので、好適には、電気配線4は、突出部3の先端から本体部2の側面にかけて形成されている。突出部3の先端まで電気配線4が到達していることにより、電子回路8を備える電子基板7の電気線路との接続が可能となる。一方、本体部2の側面に電気配線4が到達していることにより、本体部2に実装された電子部品5との電気的な接続が可能となる。
【0149】
なお、図1では、電子部品5は、本体部2の表面に実装されているが、本体部2の内部に実装されていても良い。例えば、突出部3を形成する中間板12aの内部に電子部品(簡単なセンサーなど)が実装されてもよい。この場合には、電気配線4は、中間板12aをそのまま本体部2の内部まで延伸して、内部に実装された電子部品と電気的に接続される。
【0150】
電気配線4は、突出部3の表面あるいは内面に形成された配線パターンでもよく、リード線でもよい。配線パターンであれば、本体部2が製造された後で、突出部3に配線パターンが印刷されても、製造前に中間板12aのはみ出し部分30に予め配線パターンが印刷されていても良い。また、電気配線4は、突出部3と別体であるフレキシブル基板でもよく、この場合には、フレキシブル基板が突出部3に貼り付けられる。
【0151】
いずれにしても、電気配線4は、本体部2の表面もしくは内面に実装された電子回路5と電気的に接続できると共に、強度と耐久性に優れた突出部3に形成されることで高い安定性を有する。図1に示されるように、電気配線4は、突出部3に形成されており、そのまま外部の電子基板と接続されるので、ヒートパイプ1と電子基板7との間に、配線がぶら下がったりすることがない。このため、ヒートパイプ1と電子基板7との間の電気配線4が、不安定となることもない。
【0152】
次に、図8を用いて、電気配線4について説明する。
【0153】
図8は、本発明の実施の形態1におけるヒートパイプの側面図である。
【0154】
本体部2は、電子部品などの発熱体30を冷却する。このため、本体部2は、受熱面21において熱的接合材31を介して発熱体30と接する。熱的接合材31には、サーマルグリースやサーマルグリースにフィラーなどを添加した素材が用いられる。熱的接合材は、発熱体30と受熱面21の接触部分の凸凹などの影響を排除して、発熱体30の熱を効果的に受熱面21に伝導する。
【0155】
本体部2は、発熱体30の熱によって気化した冷媒を内部で拡散させる。蒸気拡散路15が、気化した冷媒を、水平方向に拡散する。拡散された冷媒は、放熱面20において冷却されて凝縮する。凝縮した冷媒は、毛細管流路16を伝って還流する。この繰り返しにより、発熱体30の熱は移動されると共に冷却される。
【0156】
本体部2の表面には、2つの電子部品5が実装されている。2つの電子部品5は、例えば本体部2の表面温度を測定する温度センサーや感熱センサーであったり、ヒートパイプ1の動作状態を示す発光素子であったりする。勿論、ヒートパイプ1が実装される電子機器に必要となる種々の電子素子であってもよい。
【0157】
2つの電子部品5同士は、電気線路6により電気的に接続されている。また、電気線路6は、本体部2の表面のみならず側面にまで延伸し、電気配線4と電気的に接続する。この電気線路6は、本体部2の表面に実装された電子部品5同士を接続するため、もしくは、電子部品5と電気配線4とを接続するために、本体部2の表面および側面の少なくとも一方に備わっている。
【0158】
本体部2の側面から突出部3が突出する。ここでは、中間板12が突出部3を形成している。突出部3は、ヒートパイプ1の外部に存在する電子基板7に到達する。なお、突出部3の先端と電子基板7とが離隔していてもよい。
【0159】
突出部3は、電気配線4を有しており、図8では、突出部3の表面に電気配線4が形成されている。電気配線4は、突出部3の表面や内層に形成された配線パターンや、突出部3の表面に接着されたフレキシブル基板を含む。
【0160】
電気配線4は、突出部3によってサポートされており、電気配線4が、本体部2と電子基板7とのあいだで宙吊りになったり、不安定な態様になったりしない。突出部3が、電子基板7に到達することで、電気配線4も電子基板7に到達する。電子基板7は、電子回路8を実装しており、電子基板7は、電子回路8に必要な電気線路を備えている。電気配線4は、この電気線路に電気的に接続される。接続は、半田などで直接行われても良く、コネクタが用いられてもよい。
【0161】
このようにして、電気配線4は、本体部2に実装された電子部品5と、ヒートパイプ1の外部の電子回路8との電気的な接続を実現する。同時に、電気配線4は、本体部2を形成する部材と同じ素材で一体的に構成される突出部3によりサポートされるので、高い強度と耐久性を有する。強度や耐久性が高いことにより、高密度実装が可能となる上、実装における手間も低減される。このため、発熱体を冷却するヒートパイプ1の実装が容易となり、ヒートパイプ1の活用度合いがますます高まる。
【0162】
(電子部品と電気配線の接続)
次に、電子部品5と電気配線4の接続の他の例について図9を用いて説明する。図9は、本発明の実施の形態1におけるヒートパイプを側面からみた断面図である。
【0163】
本体部2に実装された電子部品5と電気配線4とは、本体部2の表面および側面に設けられた電気線路6により接続される。ここで、突出部3が中間板12により形成される場合には、本体部2の表面と突出部3との間には段差が生じる。電気配線4は、突出部3の表面もしくは内面に形成されるのに対して、電子部品5につながる電気線路6は、本体部2の表面に形成される。このため、段差があると本体部2の側面において、電気接続のギャップが生じてしまう。
【0164】
このギャップは上述の通り、配線パターンを本体部2の表面から側面にかけて形成することで解消される。あるいは、図9に示されるとおり、電気線路6の端部42から電気配線4の端部43にかけてワイヤ接続41されることで解消される。いずれのやり方が用いられてもよく、製造の容易性、コスト、ヒートパイプ1の使用される態様などの条件に基づいて、やり方が定められれば良い。
【0165】
図9では、本体部2の表面に2つの電子部品5が実装されており、2つの電子部品5同士は、電気線路6で接続されている。また電気線路6は、本体部2の表面の端まで到達している。電気線路6の端部42から、金属線が延びており、電気配線4の端部43との間が接続される。このように、端部42と端部43がワイヤ接続41されることで、段差のギャップが解消される。
【0166】
なお、突出部3に形成される電気配線4は、絶縁層40により覆われていても良い。
【0167】
以上のように、実施の形態1におけるヒートパイプ1によれば、本体部2に実装された電子部品5と、ヒートパイプ1の外部の電子回路8との電気的な接続が実現できる。同時に、電気配線4は、本体部2を形成する部材と同じ素材で一体的に構成される突出部3によりサポートされるので、高い強度と耐久性を有する。強度や耐久性が高いことにより、高密度実装が可能となる上、実装における手間も低減される。このため、発熱体を冷却するヒートパイプ1の実装が容易となり、ヒートパイプ1の活用度合いがますます高まる。
【0168】
(実施の形態2)
次に実施の形態2について説明する。
【0169】
実施の形態2では、突出部や電気配線の他のバリエーションについて説明する。
【0170】
図10は、本発明の実施の形態2におけるヒートパイプの斜視図である。図11は、本発明の実施の形態2におけるヒートパイプの斜視図である。
【0171】
図10、図11は、突出部3が電気配線4を確保するのに最低限の構成を持っているヒートパイプを示している。
【0172】
実施の形態1においては、電気配線4は、突出部3の表面や内面に形成される。突出部3は、上部板10、下部板11、中間板12の少なくとも一つにより形成される。ここで、上部板10、下部板11、中間板12は、非常に薄い金属板や樹脂板で形成できる。あるいは、突出部3となるはみ出し部分30のみを薄くすることも可能である。このように突出部3が薄くできれば、突出部3は、いわゆるフレキシブル基板そのものを形成できる。あるいは、突出部3が中間板12により形成される場合には、フレキシブル基板そのもので中間板12を形成することも考えられる。
【0173】
このように、突出部3がそのまま電気配線4を含んだフレキシブル基板で実現できる。
【0174】
図10、図11に示される突出部3は、電気配線4を含んだフレキシブル基板で構成されている。すなわち、突出部3は、電気配線4そのものである。このように構成された場合でも、フレキシブル基板による電気配線4は、上部板10、下部板11、中間板12のいずれかの部材に相当する強度や耐久性を有する。また、電気配線4は、上部板10、下部板11、中間板12のいずれかと一体であるので、耐久性も有している。
【0175】
加えて、突出部3が電気配線4を有するフレキシブル基板そのものであることで、余分がなく、使用におけるフレキシビリティも高い。
【0176】
また、本体部2の内部に電子部品5が実装される場合には、複数の中間板12の1つにおいて内部となる部分に電子部品5が実装され、この中間板12がはみ出し部分30を有しており突出部3を形成する。この突出部3が電気配線4を有しており、この電気配線4が内部の電子部品5まで配線を有していることで、内部に実装された電子部品5と外部の電子回路8とが、突出部3が有する電気配線4で電気接続される。
【0177】
以上のように、実施の形態2におけるヒートパイプ1であれば、本体部2と一体であって使い勝手の良い電気配線4が構成できる。
【0178】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について説明する。
【0179】
実施の形態3では、突出部が複数であって、複数の突出部の少なくとも一つが、本体部2からの熱を放熱する放熱板の役割を有する場合について説明する。
【0180】
図12は、本発明の実施の形態3におけるヒートパイプの斜視図である。
【0181】
図12に示されるヒートパイプ1では、本体部2が方形を有しており、本体部2の側面において4つの辺から突出部3が突出している。4つの突出部3は、それぞれ上部板10、下部板11、中間板12の少なくとも一つが有するはみ出し部分30から形成される。このとき、同じ中間板12が、4箇所のはみ出し部分30を有することで、4つの突出部3が形成されても良く、異なる中間板12や下部板11に別々にはみ出し部分30があってこれらが組み合わされることで、4つの突出部3が形成されても良い。なお、図12のヒートパイプ1は、4つの突出部3を有しているが、突出部3は、3つでも2つでもよい。
【0182】
ここで、4つの突出部3は、電気配線4を有する突出部3と、電気配線を有していない突出部3aを有する。突出部3は、電気配線4を有する。電気配線4は、実施の形態1、2で説明したように、突出部3の表面もしくは内面に形成された配線パターンや、貼り付けられたフレキシブル基板などで形成される。
【0183】
電気配線4は、本体部2表面や内部に実装された電子部品5と外部の電子回路8とを電気的に接続する。電気配線4を有する突出部3は、電子部品5と外部の電子回路8との間の電気配線4の物理的強度を確保する。突出部3に電気配線4が形成されていることで、電気配線4は、電子部品3と電子回路8との間で不安定な状態にならず、物理的な衝撃や熱的衝撃に対して十分な強度を発揮できる。このように、電気配線4を有する突出部3は、電気配線4の強度、耐久性をサポートする役割を有する。
【0184】
電気配線4を有していない突出部3aは、電子部品3と電子回路8を電気的に接続する役割を有していない。突出部3aは、上部板10、下部板11、中間板12の少なくとも一つの部材と一体で構成される。このため、突出部3aの素材は、これら上部板10、下部板11、中間板12の少なくとも一つの部材と同じである。一般的には、上部板10、下部板11、中間板12のそれぞれは同じ素材であって本体部2を形成することが多いので、突出部3aの素材は、本体部2の素材と同じであることが多い。
【0185】
このため、突出部3aは、本体部2からの熱を放熱する役割を有する。本体部2では、発熱体からの熱を受熱して気化した冷媒が拡散している。この気化した冷媒は、発熱体から奪った熱を有している。本体部2は、表面や側面を有しているので、これらの面から熱が放熱され、気化した冷媒が冷却される。このとき、突出部3aは、本体部2とほぼ同一の素材であって、上部板10、下部板11および中間板12の少なくとも一つと一体で形成されている。このため、本体部2と突出部3aとの間には熱抵抗が少なく、本体部2からの熱は効率的に突出部3aに伝導する。突出部3aに伝導した熱は、突出部3aの表面から放熱される。すなわち、突出部3aは、本体部2の熱を(言い換えると気化した冷媒の熱を)外界に放熱する。
【0186】
このとき突出部3aは、一定の表面積を有しているので、突出部3aは、その表面から熱を放熱できる。
【0187】
このように、突出部3が複数ある場合には、そのうちの一部もしくは全部が、放熱を主な役割として担うことも好適である。
【0188】
ここで、電気配線4を有する突出部3も放熱できる。要は、所定面積の表面から熱を放熱できればよいからである。電気配線4を有する突出部3も電気配線4を有しない突出部3aも、本体部2を形成する部材と一体であるので、本体部2の熱を放熱可能である。但し、電気配線4を有する突出部3の主な役割が、電子部品5と外部の電子回路8との電気接続であるだけである。
【0189】
放熱を主な役割とする突出部3aは、図12に示されるように突出して延伸した状態でも良いが、図13に示されるように折り曲げられた状態でもよい。図13は、本発明の実施の形態3におけるヒートパイプの斜視図である。
【0190】
図13のヒートパイプでは、方形を有する本体部2の側面における4つの辺のそれぞれから突出部3が突出している。4つの突出部3の内、一つの突出部3のみが電気配線4を有し、残りの3つの突出部3aは、電気配線4を有していない。電気配線4を有していない3つの突出部3aは、放熱を主な役割とする。ここで、3つの突出部3aは、それぞれ折り曲げられている。突出部3aは放熱を主な役割とするが、ヒートパイプ1を実装する空間が狭小であることもありえる。このような場合には、図12に示されるように、突出部3aが突出したままの状態では不都合である。一方で、電気配線4を有する突出部3は、外部の電子回路8との接続の必要上、折り曲げないほうが適当である。
【0191】
放熱を主な役割とする突出部3aが折り曲げられることにより、狭小空間であってもヒートパイプ1の実装が容易となる。加えて、折り曲げられていても、突出部3aの放熱効果は損なわれない。逆に、折り曲げられることにより放熱空間が3次元的になり放熱効率が高まる効果もある。
【0192】
このように、突出部3の一部が、主として放熱の役割を担うヒートパイプ1であってもよい。加えて、突出部3の一部が折り曲げられており、この折り曲げられた突出部3が、高い効率で放熱してもよい。なお、電気配線4を有する突出部3が折り曲げられても良い。実装空間との兼ね合いにより、突出部3が折り曲げられる方の都合が良い場合があるからである。
【0193】
なお、以上は突出部3が複数である場合に、そのうちのいずれかの突出部3が主として放熱の役割を担う態様を説明したが、突出部3が物理的には一体の形状を有しているが、その一部が主として放熱の役割を担いつつ、残部が電気配線4を有する態様でもよい。
【0194】
なお、本体部2から複数の突出部3が突出する構造の場合には、ある突出部3は、電気配線4を有しており、ある突出部3は、放熱の役割を果たし、別の突出部3は、後述するような外部からの配線基板を支持するように、個々に異なる役割を有していても良い。
【0195】
(実施の形態4)
次に、実施の形態4について、図14を用いて説明する。図14は、本発明の実施の形態4におけるヒートパイプの斜視図である。
【0196】
実施の形態4では、方形を有する本体部2のある辺から第1突出部3bが突出すると共にこの辺と略垂直の辺から第2突出部3cが突出する態様について説明する。
【0197】
ヒートパイプ1は、本体部2と第1突出部3bと第2突出部3cを有する。本体部2の構造や機能は、実施の形態1〜3で説明されたものと同様である。また、第1突出部3b、第2突出部3cの構造や機能も、実施の形態1〜3で説明されたものと同様である。
【0198】
図14における本体部2は、方形を有している。第1突出部3bは、本体部2の側面であって方形のある辺から突出する。第1突出部3bの形状は方形であっても円形であってもよい。また、他の部品への損傷を防止するために、第1突出部3bの角部が面取りされていることも好適である。
【0199】
第2突出部3cは、第1突出部3bが突出する辺と略垂直である辺から突出する。すなわち、第1突出部3bと第2突出部3cとは、相互に略垂直となっている。第1突出部3bと第2突出部3cのそれぞれは、電気配線4を有する。電気配線4は、本体部2の表面に実装された電子部品5を外部の電子回路と電気的に接続する。
【0200】
ここで、第1突出部3bと第2突出部3cのそれぞれは、ヒートパイプ1の外部にある電気スロット50b、50cのそれぞれに差し込み可能である。電気スロット50b、50cは、例えばパーソナルコンピュータにあるボードスロットであり、縦と横方向それぞれの一辺ずつに電気接続可能な差込口を有している。このように、縦と横方向それぞれの一辺ずつに電気接続可能な差込口を有する電気スロットは、様々な場面で使用される。電気スロット50b、50cのそれぞれは、差込を介して電子機器本体や別の電子基板との電気的な接続を可能とする。
【0201】
図14に示されるヒートパイプ1のように、相互に略垂直である縦と横方向それぞれの辺から第1突出部3bと第2突出部3cが突出していると、このような縦横に位置する電気スロット50b、50cへの差込が容易となる。第1突出部3bは、電気スロット50bに差し込まれ、第2突出部3cは、電気スロット50cに差し込まれる。
【0202】
このように、本体部2が相互に略垂直に突出する第1突出部3bと第2突出部3cを有していることで、縦横に位置する電気スロット50b、50cに簡単に差し込むことができる。差し込まれれば、電気スロット50b、50cを介して、電子部品5が、電気スロット50b、50cとつながる電子回路や電子機器と確実に電気接続される。このようなヒートパイプ1によれば、高密度実装でありながら発熱体を冷却する役割と、電子機器内部での電気接続を担う役割との両立が可能である。
【0203】
(実施の形態5)
次に実施の形態5について説明する。図15は、本発明の実施の形態5におけるヒートパイプの斜視図である。図15に示されるヒートパイプ1は、複数の突出部3を有しているが、そのうちの一部の突出部3dに電気配線4が直接形成されているのではなく、突出部3dは、別体である配線基板60を支持している。
【0204】
実施の形態1〜4における電気配線4は、突出部3の表面や内面に形成されている。これに対して、種々の事情から既に用意されている配線基板60を、本体部2に実装されている電子部品5と電気接続させる必要がある。例えば、外部の電子回路8からそのまま展開している配線基板60を、本体部2の電子部品5(あるいは電気線路6)に接続させる必要などである。
【0205】
このような必要性に対応する場合には、突出部3に電気配線4が形成されているよりも、別体の配線基板60が本体部2に接続される方が適当である。この場合であっても、突出部3dがこの配線基板60を支持することで、配線基板60の強度や耐久性を確保できる。なお、図15では、突出部5dは他の突出部3に比べて小さく表されているが、小さい必要があるものではない。但し、電気配線4を直接形成する場合に比べて、突出部3dを小さくすることが容易であるメリットがある。
【0206】
配線基板60は、例えばフレキシブル基板などがあるが、これを本体部2の電気線路6と直接接続しただけでは、外部からの衝撃や熱衝撃に対して当然に弱い。しかし、突出部3dが、この配線基板60を支持することで、配線基板60は、外部からの衝撃や熱衝撃に対して強くなる。特に、突出部3dは、本体部2の側面から突出しているので、電気線路6と配線基板60との接続部分となりうる本体部2の側面部分でのサポート効果が高い。このため、もっとも強度の弱くなりがちな本体部2の側面部分における強度や耐久性の問題を解決できる。
【0207】
図15においては、突出部3d以外に、3つの突出部3が示されているが、これらの突出部3は必須要素ではない。ただし、放熱を主な役割として、これら3つの突出部3が形成されていても良い。
【0208】
以上のように実施の形態5におけるヒートパイプによって、別体の配線基板が本体部に接続される場合の、強度や耐久性を確保できる。
【0209】
(実施の形態6)
実施の形態1〜5においては、ヒートパイプそのものについて説明した。実施の形態6においては、実施の形態1〜5で説明されたヒートパイプを使用した電子基板や電子機器について説明する。
【0210】
図16は、本発明の実施の形態6における電子基板の側面図である。電子基板70は、回路基板71の上に、発熱体30と電子基板7を実装している。発熱体30は、CPUやLSIなどの発熱性の高い電子部品であり、電子基板7は、ヒートパイプ1と別体の電子回路8を実装している。
【0211】
発熱体30は、熱的接合材31を介してヒートパイプ1と接している。このとき、発熱体30は、本体部2と接している。ヒートパイプ1は、本体部2に加えて、本体部2の側面から突出する突出部3を備えており、突出部3は、電気配線4を有している。本体部2は、その表面に電子部品5を実装しており、電子部品5と電気配線4を電気的に接続する電気線路6が形成されている。なお、図16では、本体部2の表面に電子部品5が実装されているが、本体部2の内部に電子部品5が実装されていても良い。
【0212】
電気配線4は、電気線路6と接続されると共に電子回路8とも接続されている。この結果、電気配線4を介して、電子部品5は、ヒートパイプ1の外部の電子回路8と電気的に接続される。
【0213】
以上のような構成を有する電子基板70は、発熱体30を冷却するヒートパイプ1を実装すると共に、ヒートパイプ1に実装された電子部品5と外部の電子回路8との電気的なやり取りも実現できる。
【0214】
図17は、このような電子基板70を格納した筐体である。図17は、本発明の実施の形態6における電子機器の筐体の側断面図である。
【0215】
筐体80は、内部空間81を有し、この内部空間81は、電子基板70やヒートパイプ1を格納する。電子機器は小型化が求められているので、筐体80の内部空間81も非常に狭小であり、実装余裕度が小さいことがほとんどである。このため、ヒートパイプ1の本体部2の表面や内部に様々な電子部品5を実装する必要が生じる。例えば、ヒートパイプ1の動作状態を検出するための温度センサーや感熱センサーなどの実装が必要な場合である。これらの電子部品5は、外部の電子回路8との電気接続が必要であるが、内部空間81が狭小であると、金属線やフレキシブル基板などのように宙づりになる配線の実装余地が小さい。実装余地が小さいので、工程上の手間も要する。加えて、内部空間81が狭小であるので、宙づりになっている配線などへの他の部品からの物理衝撃や、熱による影響が強く出やすい。
【0216】
このため、実施の形態1〜5で説明されたような、突出部3に電気配線4が形成されているヒートパイプ1であれば、このような狭小な内部空間81においても問題なく格納できる。電気配線4が固定されているので、他の部品との衝突も無く、熱の影響も少ないからである。
【0217】
このように、ヒートパイプ1やこれを実装した電子基板70は、小型化が必須命題である電子機器においても容易に格納でき、動作上の問題も生じさせにくい。
【0218】
図18は、このような電子機器の一例を示す。図18は、本発明の実施の形態6における電子機器の模式図である。
【0219】
電子機器82は、カーテレビやパーソナルモニターなどの薄型、小型が要求される電子機器である。
【0220】
電子機器82は、ディスプレイ83、発光素子84、スピーカ85を備えている。この電子機器82の内部にヒートパイプ1が格納されており、発熱体の冷却を実現する。加えて、ヒートパイプ1に実装された電子部品5と外部の電子回路8の電気的接続を確実に実現できる。
【0221】
このようなヒートパイプ1が使用されることにより、電子機器の小型化や薄型化を阻害せずに、発熱体の冷却が実現できる。
【0222】
以上、実施の形態1〜6で説明されたヒートパイプは、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【図面の簡単な説明】
【0223】
【図1】本発明の実施の形態1におけるヒートパイプの斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における本体部を側面から見た分解図
【図3】本発明の実施の形態1における中間板の上面図
【図4】本発明の実施の形態1における本体部の側断面図
【図5】本発明の実施の形態1における本体部を示す写真
【図6】本発明の実施の形態1における本体部を側面から見た分解図
【図7】本発明の実施の形態1における本体部を側面から見た分解図
【図8】本発明の実施の形態1におけるヒートパイプの側面図
【図9】本発明の実施の形態1におけるヒートパイプを側面からみた断面図
【図10】本発明の実施の形態2におけるヒートパイプの斜視図
【図11】本発明の実施の形態2におけるヒートパイプの斜視図
【図12】本発明の実施の形態3におけるヒートパイプの斜視図
【図13】本発明の実施の形態3におけるヒートパイプの斜視図
【図14】本発明の実施の形態4におけるヒートパイプの斜視図
【図15】本発明の実施の形態5におけるヒートパイプの斜視図
【図16】本発明の実施の形態6における電子基板の側面図
【図17】本発明の実施の形態6における電子機器の筐体の側断面図
【図18】本発明の実施の形態6における電子機器の模式図
【符号の説明】
【0224】
1 ヒートパイプ
2 本体部
3 突出部
4 電気配線
5 電子部品
6 電気線路
7 電子基板
8 電子回路
10 上部板
11 下部板
12 中間板
13 内部貫通孔
14 凹部
15 蒸気拡散路
16 毛細管流路
20 放熱面
21 受熱面
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路、LED素子、パワーデバイスなどの発熱体を冷却するヒートパイプ、ヒートパイプの製造方法および電子基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器、産業機器および自動車などには、半導体集積回路、LED素子、パワーデバイスなどの電子部品が使用されている。これらの電子部品は、内部を流れる電流によって発熱する発熱体になっている。発熱体の発熱が一定温度以上となると、動作保証ができなくなる問題もあり、他の部品や筐体へ悪影響を及ぼし、結果として電子機器や産業機器そのものの性能劣化を引き起こす可能性がある。
【0003】
このような発熱体を冷却するために、封入された冷媒の気化と凝縮による冷却効果を有するヒートパイプが提案されている。
【0004】
ヒートパイプは、内部に封入された冷媒が気化する際に、発熱体から熱を奪って移動する。気化した冷媒は、放熱によって冷却されて凝縮し、凝縮した冷媒は再び還流する。この気化と凝縮の繰り返しによって、ヒートパイプは発熱体を冷却する。
【0005】
このようなヒートパイプの特性を活かして、ヒートパイプの表面にLED素子やパワーデバイスなどの電子部品を直接実装する技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2000−269676号公報
【特許文献2】特開2004−214429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、ヒートパイプの表面に電子部品が直接実装されることで、電子部品の冷却と共に電子部品とヒートパイプの実装面積を削減できる。
【0007】
ここで、ヒートパイプ表面に実装された電子部品は、外部から電気信号を受ける、あるいは外部へ電気信号を出力する必要がある。このように、ヒートパイプ表面に実装された電子部品と外部の電子回路との電気信号のやり取りを実現するには、ワイヤボンディングにより金属線を接続する電気配線を行うか、フレキシブル基板による電気配線を行う必要がある。
【0008】
しかし、これらの電気配線では、ヒートパイプと外部の電子回路との間に、形状の不安定な電気配線が存在することになり、信頼性や耐久性の面で不具合が生じる。特に、ヒートパイプの外縁が途切れる部分から電子回路までの間に、固定されない電気配線が存在するため、衝撃や熱によって断線も生じうる。更には、電気配線の接続は、製造工程においての作業量と要求精度が大きく、コスト面においても問題があった。
【0009】
特に、ヒートパイプが狭小空間である電子機器に格納される場合には、電気配線が他の電子部品と接触し、動作不良を生じさせる問題もある。
【0010】
本発明は、ヒートパイプの表面に実装された電子部品と、外部の電子回路を電気的に接続できると共に、耐久性と信頼性に優れる電気配線を有するヒートパイプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題に鑑み、本発明のヒートパイプは、封入された冷媒の気化および凝縮によって発熱体を冷却するヒートパイプであって、ヒートパイプは、冷媒を封入する平板状の本体部と、本体部の側面の一部もしくは全部から突出する突出部を備え、本体部は、平板状の上部板と、上部板と対向する平板状の下部板と、上部板と下部板との間に積層されると共に蒸気拡散路と毛細管流路を形成する単数又は複数の中間板を有し、突出部は、上部板、下部板および中間板の少なくとも一つが、他よりもその面積が大きいことで形成され、突出部は、電気配線を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のヒートパイプによれば、ヒートパイプ本体と外部の電子回路とを、電気配線で容易に電気的に接続できる。特に、電気配線が、ヒートパイプ本体の側面から、ヒートパイプの部材と一体になって形成されるので、電気配線の領域は、衝撃、荷重や振動に対して耐久性が高い。この結果、信頼性も高まる。
【0013】
また、耐久性や信頼性が高いことで、ヒートパイプの表面に電子部品を実装できるだけでなく、電気配線が形成されたヒートパイプを実装する際に要求される空間余裕度も小さくて済む。結果として、狭小空間におけるヒートパイプの実装が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の第1の発明に係るヒートパイプは、封入された冷媒の気化および凝縮によって発熱体を冷却するヒートパイプであって、ヒートパイプは、冷媒を封入する平板状の本体部と、本体部の側面の一部もしくは全部から突出する突出部を備え、本体部は、平板状の上部板と、上部板と対向する平板状の下部板と、上部板と下部板との間に積層されると共に蒸気拡散路と毛細管流路を形成する単数又は複数の中間板を有し、突出部は、上部板、下部板および中間板の少なくとも一つが、他よりもその面積が大きいことで形成され、突出部は、電気配線を有する。
【0015】
この構成により、ヒートパイプの表面もしくは内面に実装された電子部品と外部の電子回路を電気的に接続できる。加えて、電気的に接続する部分である電気配線を有する突出部は、本体部と同じ素材により一体に構成されるので、十分な強度と耐久性を有する。
【0016】
本発明の第2の発明に係るヒートパイプでは、第1の発明に加えて、電気配線は、突出部の先端から本体部にかけて形成されている。
【0017】
この構成により、突出部の先端で外部の電子回路との電気的な接続が実現できる。
【0018】
本発明の第3の発明に係るヒートパイプでは、第1から第2のいずれかの発明に加えて、電気配線は、突出部に形成される配線パターンを含む。
【0019】
この構成により、電気配線が容易に形成できる。
【0020】
本発明の第4の発明に係るヒートパイプでは、第1から第3のいずれかの発明に加えて、本体部の側面および表面の少なくとも一方は、電気線路を有し、電気線路は、電気配線と電気的に接続されている。
【0021】
この構成により、本体部の表面に実装されている電子部品は、電気配線と電気的に接続される。電子部品が、本体部のどの位置で実装されていても、確実に電気接続できる。
【0022】
本発明の第5の発明に係るヒートパイプでは、第1から第4のいずれかの発明に加えて、突出部は、本体部の異なる位置から突出する第1突出部と第2突出部を有し、第1突出部および第2突出部の少なくとも一方は、ヒートパイプの外部から接続される配線基板を支持する。
【0023】
この構成により、突出部に直接的に電気配線が形成されない場合でも、十分な強度と耐久性を持って、突出部は、外部からの配線基板を支持できる。また、突出部が複数であることで、ある突出部には、電気配線が直接形成されており、別の突出部は外部からの配線基板を支えるなど、複数の突出部が異なる役割を有していても良い。
【0024】
本発明の第6の発明に係るヒートパイプでは、第5の発明に加えて、第1突出部および第2突出部の少なくとも一方は、本体部からの熱を放熱する。
【0025】
この構成により、突出部は、電気配線を支持するだけでなく、本体部の熱を放熱するマルチな役割を担う。
【0026】
本発明の第7の発明に係るヒートパイプでは、第5から第6のいずれかの発明に加えて、本体部は方形を有しており、第1突出部は、本体部の所定の辺から突出し、第2突出部は、所定の辺と略垂直の辺から突出する。
【0027】
この構成により、縦横に差込口を有する電気スロットやボードスロットなどに、ヒートパイプを直接嵌め込むことができる。結果として、ヒートパイプに実装された電子部品を、簡便に外部の電子回路と電気的に接続できる。
【0028】
本発明の第8の発明に係るヒートパイプでは、第1から第7のいずれかの発明に加えて、中間板は、切り欠き部と内部貫通孔を有し、切り欠き部は蒸気拡散路を形成し、内部貫通孔は毛細管流路を形成し、蒸気拡散路は、気化した冷媒を水平方向に拡散し、毛細管流路は、凝縮した冷媒を垂直方向もしくは垂直・水平方向に還流させる。
【0029】
この構成により、水平方向への拡散性能の高いヒートパイプが実現できる。このため薄型で平板状のヒートパイプが実現できるので、結果として狭小空間に実装が容易なヒートパイプが実現できる。
【0030】
本発明の第9の発明に係るヒートパイプでは、第8の発明に加えて、中間板は複数であって、複数の中間板のそれぞれに設けられた内部貫通孔同士は、それぞれの一部のみが重なって、内部貫通孔の水平方向の断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路が形成される。
【0031】
この構成により、毛細管流路における、凝縮した冷媒の還流が高速になる。また、より微細な毛細管流路が形成できる。
【0032】
本発明の第10の発明に係るヒートパイプでは、第1から第9のいずれかの発明に加えて、上部板および下部板のそれぞれは、毛細管流路および蒸気拡散路の少なくとも一方と連通する凹部を更に備える。
【0033】
この構成により、毛細管流路への還流を促すと共に、気化した冷媒の冷却効率も高める。
【0034】
本発明の第11の発明に係るヒートパイプでは、第1から第10のいずれかの発明に加えて、本体部には電子部品が実装され、電気配線は、電子部品と電気的に接続される。
【0035】
この構成により、本体部の表面もしくは内部に実装された電子部品が、外部の電子回路と電気的に接続される。加えて、接続部分の強度と耐久性が高い。
【0036】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0037】
なお、本明細書におけるヒートパイプとは、内部空間に封入された冷媒が、発熱体からの熱を受けて気化し、気化した冷媒が冷却されて凝縮することを繰り返すことで、発熱体を冷却する機能を実現する部材、部品、装置、デバイスを意味する。
【0038】
(実施の形態1)
まず、ヒートパイプの概念について説明する。
【0039】
ヒートパイプは、内部に冷媒を封入しており、受熱面となる面を、電子部品をはじめとする発熱体に接している。内部の冷媒は、発熱体からの熱を受けて気化し、気化する際に発熱体の熱を奪う。気化した冷媒は、ヒートパイプの中を移動する。この移動によって発熱体の熱が運搬されることになる。移動した気化した冷媒は、放熱面などにおいて(あるいはヒートシンクや冷却ファンなどの二次冷却部材によって)冷却されて凝縮する。凝縮して液体となった冷媒は、ヒートパイプの内部を還流して再び受熱面に移動する。受熱面に移動した冷媒は、再び気化して発熱体の熱を奪う。
【0040】
このような冷媒の気化と凝縮の繰り返しによって、ヒートパイプは発熱体を冷却する。このため、ヒートパイプは、その内部に気化した冷媒を拡散する蒸気拡散路と、凝縮した冷媒を還流させる毛細管流路を有する必要がある。
【0041】
ヒートパイプには、筒状の形状を有して垂直方向に気化した冷媒を拡散させると共に垂直方向に凝縮した冷媒を還流させる構造を有するものや、発熱体と接する受熱部と冷媒を冷却する冷却部とが別体であってパイプで接続される構造を有するものなどがある。
【0042】
これらの構造を有するヒートパイプは、その体積が大きく(特に垂直方向に体積が大きくなりやすい)、実装する空間が狭小である場合には不適である。このため、平板状で薄型のヒートパイプが望まれることも多い。
【0043】
このような平板状で薄型のヒートパイプであれば、その表面の領域を利用して、電子部品を実装することができる。ヒートパイプの冷却対象となる電子部品が実装されたり、ヒートパイプの制御や表示にかかわる電子部品が実装されたりする。
【0044】
一例としては、ヒートパイプの動作状態を検出するために、ヒートパイプの表面温度を測定する必要がある。この表面温度を測定するために、温度センサーや感熱センサーが、ヒートパイプの表面に実装される。別の例としては、ヒートパイプの動作状態を光によって表示するLEDなどの発光素子が実装される場合がある。更に別の例としては、発熱性の高いパワーデバイスが、ヒートパイプの表面に直接実装されることもある。
【0045】
このようにヒートパイプは、電子部品などの発熱体を冷却するための部材であるが、ヒートパイプが平板状で薄型である場合には、その表面に電子部品を実装する要求が生じる。また、ヒートパイプが平板状で薄型であることで、電子機器の高密度実装が可能となる。これに加えて、ヒートパイプの表面が電子部品の実装領域として活用されることで、更なる高密度実装が可能となる。
【0046】
ところで、このようにヒートパイプの表面に実装された電子部品は、単体では動作できず、ヒートパイプの外部の電子回路や電子基板と電気的に接続される必要がある。電子部品である以上、電気信号のやり取りが必要になるからである。このため、金属線(ワイヤ)やリード線をワイヤボンディングによって接続することや、フレキシブル基板で接続することがありえる。しかしいずれも、ヒートパイプと外部の電子回路との間に、不安定な形態を作ることになり好ましくない。これらの金属線やリード線は、ヒートパイプと外部の電子回路との間で宙吊り状態になってしまい、物理的な衝撃や熱による影響で断線したり、変形したりするおそれがあるからである。
【0047】
本発明のヒートパイプはこれらの問題を解決する。
【0048】
まず、ヒートパイプの全体構造について説明する。
【0049】
(全体構造)
図1は、本発明の実施の形態1におけるヒートパイプの斜視図である。
【0050】
ヒートパイプ1は、封入された冷媒の気化および凝縮によって発熱体を冷却するヒートパイプである。
【0051】
ヒートパイプ1は、冷媒を封入する平板状の本体部2と本体部2の側面から突出する突出部3を備える。突出部3は、電気配線4を有する。また、図1においてはヒートパイプ1(すなわち本体部2)の表面もしくは内面に電子部品5が実装されている。また電子部品5同士、および電子部品5と電気配線4とは、電気線路6により電気的に接続されている。
【0052】
また、ヒートパイプ1の外部に電子基板7が備えられており、電子基板7には電子回路8が形成されている。電気配線4は、電子基板7と電気的に接続されており、この結果、外部の電子基板7(結果的には電子基板7に実装されている電子回路8)とヒートパイプ1に実装されている電子部品5とが、電気配線4を介して電気的に接続される。
【0053】
この結果、ヒートパイプ1の表面に実装された電子部品は、外部の電子回路8と電気信号のやり取りが可能となり、実際の使用が可能となる。
【0054】
本体部2は、平板状の上部板と、上部板と対向する下部板と、上部板と下部板との間に積層される単数又は複数の中間板がそれぞれ積層され接合されて構成される。
【0055】
電気配線4を有する突出部3は、上部板、下部板および中間板の少なくとも一つが、他よりもその面積が大きいことで形成される。例えば、特定の中間板が(単数であっても複数であってもよい)上部板と下部板および特定の中間板以外の中間板よりも、その面積が大きい。この場合には、この特定の中間板は、上部板、中間板、下部板の全てが積層された際には、本体部2の側面からはみ出すことになる。このはみ出した部分が、突出部3を形成する。
【0056】
電気配線4は、この突出部3に形成される。突出部3は、上述の通り、上部板、下部板、中間板のいずれかの部材の一部であるので、突出部3は、これらの部材の素材と形状で決まる強度と耐久性を有する。通常、上部板、下部板、中間板は金属で形成されるので、突出部3も金属で形成される。このため、金属線やリード線、あるいはフレキシブル基板だけで、ヒートパイプ1と電子回路8との間が接続される場合と異なり、突出部3は、素材そのものの強度が高い。
【0057】
加えて、突出部3は、本体部2を形成する部材と一体であるので、本体部2の側面と突出部3とは物理的に一体結合している。このため、本体部2の側面と突出部3の根元とは分離・分断されているわけではないので、突出部3は、高い安定性を有する。
【0058】
このように、本発明のヒートパイプ1は、ヒートパイプ1(本体部2)に実装されている電子部品5と、外部の電子回路8とを電気的に接続させることが可能であると共に、接続部分は、高い強度、安定性および耐久性を有する。
【0059】
次に、各部の詳細について説明する。
【0060】
(本体部)
まず、本体部2について図2〜図5を用いて説明する。
【0061】
本体部2は、冷媒の気化と凝縮によって発熱体を冷却するヒートパイプの機能を有する部分である。本体部2は、気化した冷媒を水平方向に拡散する蒸気拡散路15と、凝縮した冷媒を垂直方向もしくは垂直・水平方向に還流させる毛細管流路16とを備える。
【0062】
図2は、本発明の実施の形態1における本体部を側面から見た分解図である。
【0063】
図2から明らかな通り、本体部2は、平板状の上部板10、上部板10と対向する平板状の下部板11、上部板10と下部板11の間に積層される単数又は複数の中間板12を有している。これら上部板10、下部板11、中間板12が積層されて接合されることで、本体部2が形成される。積層によって、本体部2の内部に内部空間が形成され、更には蒸気拡散路15と毛細管流路16も形成される。
【0064】
(上部板)
上部板について、図2および図4を用いて説明する。図4は、本発明の実施の形態1における本体部の側断面図である。
【0065】
上部板10は、平板状であり、所定の形状、面積を有している。
【0066】
上部板10は、金属、樹脂などで形成されるが、銅、アルミニウム、銀、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ステンレスなどの熱伝導率の高い金属で形成されることが好ましい。また、上部板10は、方形、菱形、円形、楕円形、多角形など種々の形を有していてよいが、製造上の容易性や実装上の容易性から方形が採用されやすい。
【0067】
なお、突出部3を形成するために、上部板10の形状、面積が、下部板11や中間板12と異なっていてもよい。例えば、上部板10は、下部板11や中間板12と同じ形状に対して、はみ出した部分を有していてもよい。このはみ出した部分が、突出部3を形成する。すなわち、上部板10が突出部3を形成する場合には、上部板10の面積は、他の板の面積よりも大きい。
【0068】
上部板10は、その一方の面であって中間板12と対向する面に、蒸気拡散路15および毛細管流路16の少なくとも一方と連通する凹部14を有していることも好ましい。凹部14が毛細管流路16と連通することで、凝縮した冷媒が、上部板10から毛細管流路16へと伝わりやすくなる。あるいは、凹部14が蒸気拡散路15と連通することで、気化した冷媒が、放熱面20に広い面積で接しやすくなり、気化した冷媒の放熱が促進される。
【0069】
なお、凹部14は、本発明において必須の構成要件ではない。
【0070】
上部板10は、中間板12と接合される突起部や接着部を備えていることも好適である。上部板10は、便宜上「上部」との呼称となっているが、物理的に上部の位置に存在しなければならないわけではなく、下部板11と特段に区別されるものでもない。また、上部板10が放熱面20側となっても、受熱面21側となっても特に問題はない。
【0071】
また、上部板10は、冷媒の注入口17を備えている。上部板10、中間板12、下部板11が積層されて接合されると内部空間が形成される。この内部空間は、冷媒を封入する必要があるので、上部板10などの接合後に注入口17から冷媒が封入される。注入口17は、冷媒が封入されると封止されて内部空間は密封される。
【0072】
なお、冷媒は、積層後に注入口17から封入されても良く、上部板10、下部板11、中間板12が積層される際に冷媒が封入されてもよい。
【0073】
(下部板)
下部板11は、上部板10と対向して単数又は複数の中間板12を挟む。
【0074】
下部板11は、金属、樹脂などで形成されるが、銅、アルミニウム、銀、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ステンレスなどの熱伝導率の高い金属で形成されることが好ましい。また、方形、菱形、円形、楕円形、多角形など種々の形を有していてよいが、上部板10と対向して本体部2を形成するので、上部板10と同一の形状、面積であることが好ましい。また、製造上の容易性や実装上の容易性から方形が採用されやすい。
【0075】
但し、突出部3を形成するために、下部板11の形状、面積が、上部板10や中間板12と異なっていてもよい。例えば、下部板11は、上部板10や中間板12と同じ形状に対して、はみ出した部分を有していてもよい。このはみ出した部分が、突出部3を形成する。すなわち、下部板11が突出部3を形成する場合には、下部板11の面積は、他の板の面積よりも大きい。
【0076】
下部板11は、その一方の面であって中間板12と対向する面に、蒸気拡散路15と毛細管流路16に連通する凹部14を有していることも好適である。凹部14は、毛細管流路16と連通することで凝縮した冷媒が、下部板11から毛細管流路16へ伝わりやすくなる。また、凹部14が蒸気拡散路15と連通することで、気化した冷媒が、放熱面20に広い面積で接しやすくなり、気化した冷媒の放熱が促進される。これは、上部板10に凹部14が設けられることと同様の意義を有する。
【0077】
なお、上部板10と同様に、凹部14は必須の構成要件ではない。
【0078】
下部板11は、便宜上「下部」との呼称となっているが、物理的に下部の位置に存在しなければならないわけではなく、上部板10と特段に区別されるものでもない。
【0079】
下部板11は、中間板12と接合される突起部や接着部を備えていることも好適である。
【0080】
また、下部板11が放熱面20側となっても、受熱面21側となっても特に問題はない。
【0081】
(中間板)
中間板12は、単数又は複数である。中間板12は、上部板10と下部板11の間に積層される。
【0082】
中間板12は、金属、樹脂などで形成されるが、銅、アルミニウム、銀、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ステンレスなどの熱伝導率の高い金属で形成されることが好ましい。また、方形、菱形、円形、楕円形、多角形など種々の形を有していてよいが、上部板10および下部板11に挟まれて本体部2を形成するので、上部板10および下部板11と同一の形状であることが好ましい。また、製造上の容易性や実装上の容易性から方形が採用されやすい。なお、上部板10および下部板11に挟まれるので、中間板12の面積は、上部板10および下部板11と同一でも良く、若干小さくてもよい。
【0083】
但し、突出部3を形成するために、中間板12の形状、面積が、上部板10や下部板11と異なっていてもよい。例えば、ある特定の中間板12(中間板12が複数ある場合には、そのいずれか1枚か複数枚)は、上部板10や下部板11および他の中間板12に対して、はみ出した部分を有していても良い。このはみ出した部分が、積層されて本体部2が形成された場合に、突出部3を形成する。例えば、上部板10、下部板11、他の中間板12が所定角の方形を有している場合に、特定の中間板12は、所定角の方形のある辺からはみ出した領域を有しているとする。上部板10、下部板11、中間板12の全てが積層された際には、このはみ出した領域は、本体部2の側面からはみ出すことになる。この側面からはみ出した領域が、突出部3を形成する。すなわち、ある特定の中間板12が突出部3を形成する場合には、この特定の中間板12の面積は、他の板の面積よりも大きい。
【0084】
なお、突出部3は、上部板10、下部板11、中間板12のいずれのはみ出しにより形成されてもかまわない。
【0085】
また、中間板12は、上部板10および下部板11と接続される際に用いられる突起や接着部を有していても良い。加えて、中間板12は、微小な断面積を有する内部貫通孔13を有している。この内部貫通孔13は、毛細管流路16を形成する。
【0086】
最終的には、上部板10と下部板11の間に中間板12が積層されて接合されることで、本体部2が形成される。中間板12は、単数でも複数でもよい。但し、後述するように、より微小な断面積を有する毛細管流路16を形成するためには、中間板12は、複数であることが好ましい。
【0087】
(中間板と蒸気拡散路および毛細管流路)
次に、中間板12、蒸気拡散路15および毛細管流路16について、図3も参照しながら説明する。図3は、本発明の実施の形態1における中間板の上面図である。
【0088】
まず、蒸気拡散路15について説明する。
【0089】
中間板12は、切り欠き部19と内部貫通孔13を有している。
【0090】
切り欠き部19は、本体部2における蒸気拡散路15を形成する。上部板10と下部板11の間に中間板12が積層された場合に、切り欠き部19は空隙を形成することになる。この空隙が蒸気拡散路15となる。
【0091】
ここで、切り欠き部19が、本体部2の水平方向に向けて形成されることで、蒸気拡散路15も、本体部2の水平方向に向けて形成される。このため、気化した冷媒は水平方向に拡散するようになる。
【0092】
特に、図3に示されるように、切り欠き部19が中間板12の中央部から放射状に形成されている場合には、蒸気拡散路15も本体部2の中央部から放射状に形成されることになる。発熱体は、本体部2の略中央部に設置されることが多いので、冷媒は本体部2の略中央部でもっとも熱を受熱する。このため、本体部2の中央部付近の冷媒が最初に気化する。このとき、蒸気拡散路15が本体部2の略中央部から放射状に形成されていることで、中央付近で生じた気化冷媒は、放射状に、すなわち水平方向に拡散する。
【0093】
このように、中間板12が切り欠き部19を有し、水平方向に広がる蒸気拡散路15が形成されることで、本体部2の内部においては、気化した冷媒が水平方向に拡散するようになる。結果として、発熱体からの熱は、中央から周辺に向けて本体部2内部を水平方向に拡散する。結果として、薄型で平板状のヒートパイプであっても、発熱体の熱を効率よく移動できる。
【0094】
なお、図3にしめされるように、切り欠き部19(すなわち蒸気拡散路15)は、放射状でなくとも別の形状であってもよい。なお、蒸気拡散路15が放射状であることで、気化した冷媒が水平方向に拡散するとしても、拡散した後冷却されて凝縮した冷媒が高速に還流しなければ、発熱体の冷却能力は十分でない。本発明のヒートパイプ1の本体部2は、拡散した後で凝縮した冷媒を、本体部2の全面を効率よく活用して還流させる毛細管流路16を有していることにより、高い水平方向の拡散(および還流)性能を実現している。
【0095】
次に毛細管流路16について説明する。
【0096】
中間板12は、内部貫通孔13を有している。内部貫通孔13は、微小な貫通孔であり、凝縮した冷媒が還流する毛細管流路16を形成する。中間板12が図3に示されるように切り欠き部19を有する場合には、切り欠き部19以外の部分に内部貫通孔13が形成される。
【0097】
ここで、中間板12が単数の場合には、中間板12に設けられている内部貫通孔13がそのまま毛細管流路になる。
【0098】
これに対して、中間板12が複数である場合には、複数の中間板12のそれぞれに設けられた内部貫通孔13の一部のみが重なって、内部貫通孔13の水平方向の断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路16が形成される。このように、中間板12が複数である場合には、内部貫通孔13そのものの断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路16が形成されるので、毛細管流路16における凝縮した冷媒の還流をより効果的にできる。
【0099】
なお、ここで、中間板12には、複数の内部貫通孔13が設けられる。毛細管流路16として機能するためには、内部貫通孔13が複数であることが好ましいからである。
【0100】
内部貫通孔13は、中間板12の表面から裏面にかけて貫通しており、その形状は円形でも楕円形でも方形でもよい。内部貫通孔13の一部同士が重なって毛細管流路16を形成することから、内部貫通孔13は方形であることが適当である。これは製造上の容易性からも適当である。
【0101】
内部貫通孔13は、掘削、プレス、ウェットエッチング、ドライエッチングなどで形成されれば良いが、微小加工および加工精度の面から、ウェットエッチング、ドライエッチングなどのエッチング加工で形成されるのが適当である。
【0102】
中間板12が複数の場合には、内部貫通孔13は、複数の中間板12のそれぞれに設けられる。ここで、複数の中間板12は、その内部貫通孔13の一部同士のみがそれぞれ重なるように積層されるので、内部貫通孔13の位置は、隣接する中間板12毎にずれていることが適当である。例えば、ある中間板12における内部貫通孔13の位置と、この中間板12と隣接する別の中間板12における内部貫通孔13の位置は、内部貫通孔13の面積の一部ずつが重なるようにずれている。このように、隣接する中間板12毎に内部貫通孔13の位置がずれていることで、複数の中間板12が積層された場合に、内部貫通孔13の水平方向の断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路16が形成される。
【0103】
毛細管流路16は、複数の中間板12が積層される際に、内部貫通孔13の一部同士が重なり合って、内部貫通孔13の水平方向の断面積よりも小さい断面積を有する。このような内部貫通孔13の断面積よりも小さな断面積を持つ孔が、本体部2の垂直方向に積層され、垂直方向の孔同士が接続することで、垂直方向の流路が形成される。また、垂直方向において階段状の孔となるので、垂直方向であると同時に水平方向にも流れうる流路が形成される。この垂直・水平方向に形成される流路は、その断面積が非常に小さく、凝縮した冷媒を、垂直方向もしくは垂直・水平方向に還流させる。
【0104】
なお、内部貫通孔13の一部のみが重なるようにして、内部貫通孔13よりも小さな断面積を有する毛細管流路16が形成される場合には、毛細管流路16を直接加工するよりも、容易に製造できるメリットもある。
【0105】
なお、毛細管流路16は、凝縮した冷媒が還流するが、気化した冷媒が通ることもありえる。
【0106】
また、毛細管流路16、凹部14の角部や切り欠き部19の角部は、面取りされていたり、Rが設けられていたりすることも好適である。毛細管流路16の断面は、六角形、円形、楕円形、方形、多角形など様々な断面形状を有していて良い。毛細管流路16の断面形状は、内部貫通孔13の形状と、内部貫通孔13同士の重ね合わせ方により定まる。また、断面積も同様に定まる。
【0107】
(製造工程)
上部板10、下部板11、中間板12が積層されて接合されることで本体部2が製造される。
【0108】
製造工程を図2、図4を用いて説明する。
【0109】
上部板10、下部板11および複数の中間板12(図2では中間板12は4枚である)のそれぞれが同一位置で重なるような位置関係に合わせられる。加えて、複数の中間板12は、複数の中間板12のそれぞれに設けられた内部貫通孔13のそれぞれの一部のみが重なるような位置関係にあわせられる。
【0110】
上部板10、下部板11および複数の中間板12の少なくとも一つは、接合突起を有している。
【0111】
上部板10、下部板11、複数の中間板12は、位置あわせされた上で積層され、ヒートプレスによって直接接合されて一体化される。このとき、各部材は、接合突起によって直接接合される。
【0112】
ここで、直接接合とは、接合しようとする2つの部材の面を密着させた状態で加圧しつつ熱処理を加えることであって、面部の間に働く原子間力によって原子同士を強固に接合させることであり、接着剤を用いることなく、2つの部材の面同士を一体化しうる。このとき、接合突起が強固な接合を実現する。
【0113】
ヒートプレスにおける直接接合の条件として、プレス圧力は、40kg/cm2〜150kg/cm2の範囲内であり、温度は250〜400℃の範囲内であることが好ましい。
【0114】
次に、上部板10や下部板11の一部に空けられた注入口17を通じて、冷媒が注入される。その後、注入口17が封止されて本体部2が完成する。なお、冷媒の封入は真空または減圧下で行われる。真空または減圧下で行われることで、本体部2の内部空間が真空または減圧された状態となって冷媒が封入される。減圧下であると、冷媒の気化・凝縮温度が低くなり、冷媒の気化・凝縮の繰り返しが活発になるメリットがある。
【0115】
以上の工程で本底部2が製造されるが、このとき上部板10、下部板11および中間板12の少なくとも一つが、他よりも面積が大きいことで突出部3も形成される。突出部3に予め電気配線4が形成されているか、もしくは本体部2の製造後に突出部3に電気配線4が形成されれば、突出部3は、電気配線4を有することになる。このようにして本体部2から電気配線4を有する突出部3が突出するヒートパイプ1が製造される。
【0116】
ヒートパイプ1の製造方法を簡便に説明すると、平板状の上部板10と、上部板10と対向する平板状の下部板11と、上部板10と下部板11の間に積層されると共に切り欠き部19と内部貫通孔13を有する単数又は複数の中間板12とが接合されて本体部2が形成され、切り欠き部19により気化した冷媒を水平方向に拡散する蒸気拡散路15が形成され、内部貫通孔13により凝縮した冷媒を垂直方向もしくは垂直・水平方向に還流させる毛細管流路16が形成され、上部板10、下部板11および中間板12の少なくとも一つが他よりもその面積が大きいことで、本体部2の側面から突出する突出部3が形成され、この突出部3に電気配線4が形成される。この工程により、ヒートパイプ1が製造される。
【0117】
(製造された本体部)
以上の製造工程で製造された本体部2について、図4を用いて説明する。
【0118】
図4から明らかな通り、上部板10、下部板11、複数の中間板12が積層され接合されることで、蒸気拡散路15と毛細管流路16が形成される。また、上部板10は、放熱面20となり、下部板11は受熱面21となる。なお、放熱面20と受熱面21は特段に区別されない。
【0119】
本体部2の内部空間には冷媒25が封入されている。
【0120】
蒸気拡散路15は、中間板12の切り欠き部19により形成され、毛細管流路16は、内部貫通孔13により形成される。発熱体の熱により気化した冷媒は、蒸気拡散路15を通じて水平方向に拡散する。凝縮した冷媒は、毛細管流路16を通じて垂直方向もしくは垂直・水平方向に還流する。
【0121】
図5は、本発明の実施の形態1における本体部を示す写真である。発明者が実際に製造したものの写真である。図5は、本体部2の上部板10を取り外して内部空間を可視状態としたものを示している。本体部2は、切り欠き部19により形成される蒸気拡散路15と、内部貫通孔13により形成される毛細管流路16と、を有している。
【0122】
ここで、図5より明らかな通り、蒸気拡散路15は、本体部2の略中央部から放射状に形成されている。このため、気化した冷媒は本体部2の内部を水平方向に拡散する。また、毛細管流路16が蒸気拡散路15以外の領域に形成されているので、凝縮した冷媒は、気化した冷媒の拡散を損なうことなく、毛細管流路16を通じて還流する。
【0123】
以上のように、実施の形態1における本体部2は、水平方向に熱移動を効率よく行う、冷却能力の高いヒートパイプを実現できる。このため、ヒートシンクや冷却ファンなどの二次冷却部材を実装しにくい電子機器内部において、最適に適用できる。
【0124】
なお、放射状であることに特に限定されるものではなく、蒸気拡散路15は、水平方向に気化した冷媒を拡散できる形状や構造を有していればよい。
【0125】
なお、実施の形態1における本体部2は、そのサイズが特に限定されるものではないが、実用においては、あるサイズの範囲内であることが適当な場合がある。
【0126】
一例として、本体部2は、20mm角以上100mm角以下の方形を有し、更に1mm以上5mm以下の厚みを有している。このように規定されるサイズは、冷却対象となる発熱体である電子部品のサイズや電子機器への実装上の容易性などから、導入される。
【0127】
勿論、本体部2のサイズは、このサイズに限定されるものではなく、製造上の要求、使用上の要求、実装上の要求など、様々な要求に応じて定まればよい。
【0128】
(突出部)
次に、突出部3について説明する。
【0129】
突出部3は、図1に示されるとおり、本体部2の側面の全部もしくは一部から突出する。突出するとは、本体部2の側面からはみ出す領域を有しているということであり、このはみ出した領域が突出部3である。
【0130】
なお、突出部3は、本体部2の側面からはみ出した領域であって電気配線4を有しておればいいので、突出部3が折り曲げられていたり、面積の大小があったりしてもよい。言い換えると、飛び出る態様として突出している必要はない。
【0131】
突出部3は、上部板10、下部板11および中間板12の少なくとも一つ(但し全部ではない)が、他の板と異なる形状を有していて面積が大きいことにより形成される。すなわち、上部板10、下部板11および中間板12の少なくとも一つが本体部2からはみ出る領域を有することにより、突出部3は形成される。
【0132】
突出部3は、本体部2の側面から突出している基体となるので、この突出部3は、様々な用途に活用できる。特に、電気配線4を形成する領域として活用できる。このとき、電気配線4は、突出部3の表面でも内面でもいずれの場所にでも形成できる。
【0133】
突出部3は、上部板10、下部板11、中間板12のいずれにより形成されても良い。あるいは、中間板12と上部板10との組み合わせ、中間板12と下部板11との組み合わせのいずれかで形成されても良い。また、複数の中間板12のはみ出しで形成されても良い。上部板10、下部板11、中間板12のいずれで形成されても、突出部3は、これらの板の素材と形状に基づく強度や耐久性を有することができる。
【0134】
図6を用いて、突出部3の形成工程を説明する。なお、ここでは複数の中間板12の内の一枚の中間板が、突出部3を形成する態様を例として説明する。
【0135】
図6は、本発明の実施の形態1における本体部を側面から見た分解図である。
【0136】
本体部2は、製造工程にて説明したとおり、上部板10、下部板11、複数の中間板12を積層した上で接合して製造される。図6において中間板12は、4枚である。4枚の中間板12が積層される。4枚の中間板12は、いずれも切り欠き部19や内部貫通孔13を有しており、4枚のうち3枚の中間板12は、同一形状、同一面積を有している。ここで、4枚の中間板12の内、中間板12aのみは、他の中間板12と同一形状を含みつつも、それ以外の形状となる部分を有している。すなわち4枚の中間板12が積層された場合に、中間板12aのみが、はみ出し部分30を有することになる。はみ出し部分30は、そのまま突出部3となる。
【0137】
図6から明らかな通り、はみ出し部分30は、中間板12aと一体である。単純に、中間板12aの一部が本体部2の製造後に突出部3として取り扱われるだけである。このため、突出部3の素材は中間板12aと同じである。中間板12aが、銅、アルミニウム、銀、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ステンレスなどの熱伝導率の高い金属で形成されていれば、突出部3もこれらの金属で形成される。また、突出部3は、中間板12aと一体であるから、特定部分(例えば、本体部2の側面に沿って)において分断や分離されていない。このため、本体部2の側面において急激に強度が落ちるものでもない。
【0138】
このように、中間板12aの一部がそのまま突出部3を形成するので、突出部3が電気配線4を有していても、電気配線4は、十分な強度で支持されていることになる。
【0139】
図6のように、中間板12aの一部が突出部3になった場合には、図1に示されるように、方形である本体部2のある辺から、突出部3が突出する。図1に示されるように、本体部2の側面の一部から突出してもよいし、全部から突出しても良い。突出部3の本体部2からの突出の形態や態様は、突出部3を形成する対象となる中間板12aの形状によって定まる。
【0140】
以上のようにして、中間板12aが、上部板10、下部板11、他の中間板12と異なる形状、面積を有していることで、突出部3は形成される。図6では、複数の中間板12の内の一枚の中間板12aが、突出部3を形成することを説明したが、上部板10、下部板11、あるいは複数の中間板12が他の板と異なる形状や面積を有していることで、突出部3が形成されても良い。
【0141】
なお、図6では、内部貫通孔13と切り欠き部19を表すために、中間板12が途切れ途切れになっているように見えるが、これは側面から見ているためであり、図3に示されるとおり、全体としては一体である。
【0142】
また、突出部3となるはみ出し部分30は、中間板12aと一体であるが、電気配線4の形成の容易性などを考慮して、はみ出し部分30だけ圧延されて薄くされたり、逆に厚くされたりしてもよい。
【0143】
要は、本体部2を構成する部材を活用することで、製造が容易であると共に強度や耐久性も確保できる突出部3が形成されればよい。このような突出部3が形成されることで、電気配線4の強度も実現できる。
【0144】
なお、図6は、中間板12aの左方向にはみ出し部分30が存在し、突出部3が形成される態様を示しているが、図7に示されるように、中間板12aの左右のそれぞれにはみ出し部分30が存在し、突出部3が本体部2の左右それぞれの側面から突出しても良い。
【0145】
図7は、本発明の実施の形態1における本体部を側面から見た分解図である。このように、中間板12aの左右それぞれからはみ出し部分30が突出していることで、本体部2からの突出部3のバリエーションが広がる。なお、突出部3の角部は、他の部品への損傷を防止するために面取りされていることも好適である。
【0146】
(電気配線)
次に、電気配線4について説明する。
【0147】
図1に示されるように、突出部3が本体部2の側面から突出している。図1では、本体部2は、方形を有しており、突出部3は、本体部2の第1辺と第1辺と略垂直である第2辺とから突出している。すなわち突出部3は、2つである。
【0148】
電気配線4は、突出部3に設けられている。図1では、突出部3の表面に設けられている。電気配線4は、外部の電子回路8との電気的な接続を必要とするので、好適には、電気配線4は、突出部3の先端から本体部2の側面にかけて形成されている。突出部3の先端まで電気配線4が到達していることにより、電子回路8を備える電子基板7の電気線路との接続が可能となる。一方、本体部2の側面に電気配線4が到達していることにより、本体部2に実装された電子部品5との電気的な接続が可能となる。
【0149】
なお、図1では、電子部品5は、本体部2の表面に実装されているが、本体部2の内部に実装されていても良い。例えば、突出部3を形成する中間板12aの内部に電子部品(簡単なセンサーなど)が実装されてもよい。この場合には、電気配線4は、中間板12aをそのまま本体部2の内部まで延伸して、内部に実装された電子部品と電気的に接続される。
【0150】
電気配線4は、突出部3の表面あるいは内面に形成された配線パターンでもよく、リード線でもよい。配線パターンであれば、本体部2が製造された後で、突出部3に配線パターンが印刷されても、製造前に中間板12aのはみ出し部分30に予め配線パターンが印刷されていても良い。また、電気配線4は、突出部3と別体であるフレキシブル基板でもよく、この場合には、フレキシブル基板が突出部3に貼り付けられる。
【0151】
いずれにしても、電気配線4は、本体部2の表面もしくは内面に実装された電子回路5と電気的に接続できると共に、強度と耐久性に優れた突出部3に形成されることで高い安定性を有する。図1に示されるように、電気配線4は、突出部3に形成されており、そのまま外部の電子基板と接続されるので、ヒートパイプ1と電子基板7との間に、配線がぶら下がったりすることがない。このため、ヒートパイプ1と電子基板7との間の電気配線4が、不安定となることもない。
【0152】
次に、図8を用いて、電気配線4について説明する。
【0153】
図8は、本発明の実施の形態1におけるヒートパイプの側面図である。
【0154】
本体部2は、電子部品などの発熱体30を冷却する。このため、本体部2は、受熱面21において熱的接合材31を介して発熱体30と接する。熱的接合材31には、サーマルグリースやサーマルグリースにフィラーなどを添加した素材が用いられる。熱的接合材は、発熱体30と受熱面21の接触部分の凸凹などの影響を排除して、発熱体30の熱を効果的に受熱面21に伝導する。
【0155】
本体部2は、発熱体30の熱によって気化した冷媒を内部で拡散させる。蒸気拡散路15が、気化した冷媒を、水平方向に拡散する。拡散された冷媒は、放熱面20において冷却されて凝縮する。凝縮した冷媒は、毛細管流路16を伝って還流する。この繰り返しにより、発熱体30の熱は移動されると共に冷却される。
【0156】
本体部2の表面には、2つの電子部品5が実装されている。2つの電子部品5は、例えば本体部2の表面温度を測定する温度センサーや感熱センサーであったり、ヒートパイプ1の動作状態を示す発光素子であったりする。勿論、ヒートパイプ1が実装される電子機器に必要となる種々の電子素子であってもよい。
【0157】
2つの電子部品5同士は、電気線路6により電気的に接続されている。また、電気線路6は、本体部2の表面のみならず側面にまで延伸し、電気配線4と電気的に接続する。この電気線路6は、本体部2の表面に実装された電子部品5同士を接続するため、もしくは、電子部品5と電気配線4とを接続するために、本体部2の表面および側面の少なくとも一方に備わっている。
【0158】
本体部2の側面から突出部3が突出する。ここでは、中間板12が突出部3を形成している。突出部3は、ヒートパイプ1の外部に存在する電子基板7に到達する。なお、突出部3の先端と電子基板7とが離隔していてもよい。
【0159】
突出部3は、電気配線4を有しており、図8では、突出部3の表面に電気配線4が形成されている。電気配線4は、突出部3の表面や内層に形成された配線パターンや、突出部3の表面に接着されたフレキシブル基板を含む。
【0160】
電気配線4は、突出部3によってサポートされており、電気配線4が、本体部2と電子基板7とのあいだで宙吊りになったり、不安定な態様になったりしない。突出部3が、電子基板7に到達することで、電気配線4も電子基板7に到達する。電子基板7は、電子回路8を実装しており、電子基板7は、電子回路8に必要な電気線路を備えている。電気配線4は、この電気線路に電気的に接続される。接続は、半田などで直接行われても良く、コネクタが用いられてもよい。
【0161】
このようにして、電気配線4は、本体部2に実装された電子部品5と、ヒートパイプ1の外部の電子回路8との電気的な接続を実現する。同時に、電気配線4は、本体部2を形成する部材と同じ素材で一体的に構成される突出部3によりサポートされるので、高い強度と耐久性を有する。強度や耐久性が高いことにより、高密度実装が可能となる上、実装における手間も低減される。このため、発熱体を冷却するヒートパイプ1の実装が容易となり、ヒートパイプ1の活用度合いがますます高まる。
【0162】
(電子部品と電気配線の接続)
次に、電子部品5と電気配線4の接続の他の例について図9を用いて説明する。図9は、本発明の実施の形態1におけるヒートパイプを側面からみた断面図である。
【0163】
本体部2に実装された電子部品5と電気配線4とは、本体部2の表面および側面に設けられた電気線路6により接続される。ここで、突出部3が中間板12により形成される場合には、本体部2の表面と突出部3との間には段差が生じる。電気配線4は、突出部3の表面もしくは内面に形成されるのに対して、電子部品5につながる電気線路6は、本体部2の表面に形成される。このため、段差があると本体部2の側面において、電気接続のギャップが生じてしまう。
【0164】
このギャップは上述の通り、配線パターンを本体部2の表面から側面にかけて形成することで解消される。あるいは、図9に示されるとおり、電気線路6の端部42から電気配線4の端部43にかけてワイヤ接続41されることで解消される。いずれのやり方が用いられてもよく、製造の容易性、コスト、ヒートパイプ1の使用される態様などの条件に基づいて、やり方が定められれば良い。
【0165】
図9では、本体部2の表面に2つの電子部品5が実装されており、2つの電子部品5同士は、電気線路6で接続されている。また電気線路6は、本体部2の表面の端まで到達している。電気線路6の端部42から、金属線が延びており、電気配線4の端部43との間が接続される。このように、端部42と端部43がワイヤ接続41されることで、段差のギャップが解消される。
【0166】
なお、突出部3に形成される電気配線4は、絶縁層40により覆われていても良い。
【0167】
以上のように、実施の形態1におけるヒートパイプ1によれば、本体部2に実装された電子部品5と、ヒートパイプ1の外部の電子回路8との電気的な接続が実現できる。同時に、電気配線4は、本体部2を形成する部材と同じ素材で一体的に構成される突出部3によりサポートされるので、高い強度と耐久性を有する。強度や耐久性が高いことにより、高密度実装が可能となる上、実装における手間も低減される。このため、発熱体を冷却するヒートパイプ1の実装が容易となり、ヒートパイプ1の活用度合いがますます高まる。
【0168】
(実施の形態2)
次に実施の形態2について説明する。
【0169】
実施の形態2では、突出部や電気配線の他のバリエーションについて説明する。
【0170】
図10は、本発明の実施の形態2におけるヒートパイプの斜視図である。図11は、本発明の実施の形態2におけるヒートパイプの斜視図である。
【0171】
図10、図11は、突出部3が電気配線4を確保するのに最低限の構成を持っているヒートパイプを示している。
【0172】
実施の形態1においては、電気配線4は、突出部3の表面や内面に形成される。突出部3は、上部板10、下部板11、中間板12の少なくとも一つにより形成される。ここで、上部板10、下部板11、中間板12は、非常に薄い金属板や樹脂板で形成できる。あるいは、突出部3となるはみ出し部分30のみを薄くすることも可能である。このように突出部3が薄くできれば、突出部3は、いわゆるフレキシブル基板そのものを形成できる。あるいは、突出部3が中間板12により形成される場合には、フレキシブル基板そのもので中間板12を形成することも考えられる。
【0173】
このように、突出部3がそのまま電気配線4を含んだフレキシブル基板で実現できる。
【0174】
図10、図11に示される突出部3は、電気配線4を含んだフレキシブル基板で構成されている。すなわち、突出部3は、電気配線4そのものである。このように構成された場合でも、フレキシブル基板による電気配線4は、上部板10、下部板11、中間板12のいずれかの部材に相当する強度や耐久性を有する。また、電気配線4は、上部板10、下部板11、中間板12のいずれかと一体であるので、耐久性も有している。
【0175】
加えて、突出部3が電気配線4を有するフレキシブル基板そのものであることで、余分がなく、使用におけるフレキシビリティも高い。
【0176】
また、本体部2の内部に電子部品5が実装される場合には、複数の中間板12の1つにおいて内部となる部分に電子部品5が実装され、この中間板12がはみ出し部分30を有しており突出部3を形成する。この突出部3が電気配線4を有しており、この電気配線4が内部の電子部品5まで配線を有していることで、内部に実装された電子部品5と外部の電子回路8とが、突出部3が有する電気配線4で電気接続される。
【0177】
以上のように、実施の形態2におけるヒートパイプ1であれば、本体部2と一体であって使い勝手の良い電気配線4が構成できる。
【0178】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について説明する。
【0179】
実施の形態3では、突出部が複数であって、複数の突出部の少なくとも一つが、本体部2からの熱を放熱する放熱板の役割を有する場合について説明する。
【0180】
図12は、本発明の実施の形態3におけるヒートパイプの斜視図である。
【0181】
図12に示されるヒートパイプ1では、本体部2が方形を有しており、本体部2の側面において4つの辺から突出部3が突出している。4つの突出部3は、それぞれ上部板10、下部板11、中間板12の少なくとも一つが有するはみ出し部分30から形成される。このとき、同じ中間板12が、4箇所のはみ出し部分30を有することで、4つの突出部3が形成されても良く、異なる中間板12や下部板11に別々にはみ出し部分30があってこれらが組み合わされることで、4つの突出部3が形成されても良い。なお、図12のヒートパイプ1は、4つの突出部3を有しているが、突出部3は、3つでも2つでもよい。
【0182】
ここで、4つの突出部3は、電気配線4を有する突出部3と、電気配線を有していない突出部3aを有する。突出部3は、電気配線4を有する。電気配線4は、実施の形態1、2で説明したように、突出部3の表面もしくは内面に形成された配線パターンや、貼り付けられたフレキシブル基板などで形成される。
【0183】
電気配線4は、本体部2表面や内部に実装された電子部品5と外部の電子回路8とを電気的に接続する。電気配線4を有する突出部3は、電子部品5と外部の電子回路8との間の電気配線4の物理的強度を確保する。突出部3に電気配線4が形成されていることで、電気配線4は、電子部品3と電子回路8との間で不安定な状態にならず、物理的な衝撃や熱的衝撃に対して十分な強度を発揮できる。このように、電気配線4を有する突出部3は、電気配線4の強度、耐久性をサポートする役割を有する。
【0184】
電気配線4を有していない突出部3aは、電子部品3と電子回路8を電気的に接続する役割を有していない。突出部3aは、上部板10、下部板11、中間板12の少なくとも一つの部材と一体で構成される。このため、突出部3aの素材は、これら上部板10、下部板11、中間板12の少なくとも一つの部材と同じである。一般的には、上部板10、下部板11、中間板12のそれぞれは同じ素材であって本体部2を形成することが多いので、突出部3aの素材は、本体部2の素材と同じであることが多い。
【0185】
このため、突出部3aは、本体部2からの熱を放熱する役割を有する。本体部2では、発熱体からの熱を受熱して気化した冷媒が拡散している。この気化した冷媒は、発熱体から奪った熱を有している。本体部2は、表面や側面を有しているので、これらの面から熱が放熱され、気化した冷媒が冷却される。このとき、突出部3aは、本体部2とほぼ同一の素材であって、上部板10、下部板11および中間板12の少なくとも一つと一体で形成されている。このため、本体部2と突出部3aとの間には熱抵抗が少なく、本体部2からの熱は効率的に突出部3aに伝導する。突出部3aに伝導した熱は、突出部3aの表面から放熱される。すなわち、突出部3aは、本体部2の熱を(言い換えると気化した冷媒の熱を)外界に放熱する。
【0186】
このとき突出部3aは、一定の表面積を有しているので、突出部3aは、その表面から熱を放熱できる。
【0187】
このように、突出部3が複数ある場合には、そのうちの一部もしくは全部が、放熱を主な役割として担うことも好適である。
【0188】
ここで、電気配線4を有する突出部3も放熱できる。要は、所定面積の表面から熱を放熱できればよいからである。電気配線4を有する突出部3も電気配線4を有しない突出部3aも、本体部2を形成する部材と一体であるので、本体部2の熱を放熱可能である。但し、電気配線4を有する突出部3の主な役割が、電子部品5と外部の電子回路8との電気接続であるだけである。
【0189】
放熱を主な役割とする突出部3aは、図12に示されるように突出して延伸した状態でも良いが、図13に示されるように折り曲げられた状態でもよい。図13は、本発明の実施の形態3におけるヒートパイプの斜視図である。
【0190】
図13のヒートパイプでは、方形を有する本体部2の側面における4つの辺のそれぞれから突出部3が突出している。4つの突出部3の内、一つの突出部3のみが電気配線4を有し、残りの3つの突出部3aは、電気配線4を有していない。電気配線4を有していない3つの突出部3aは、放熱を主な役割とする。ここで、3つの突出部3aは、それぞれ折り曲げられている。突出部3aは放熱を主な役割とするが、ヒートパイプ1を実装する空間が狭小であることもありえる。このような場合には、図12に示されるように、突出部3aが突出したままの状態では不都合である。一方で、電気配線4を有する突出部3は、外部の電子回路8との接続の必要上、折り曲げないほうが適当である。
【0191】
放熱を主な役割とする突出部3aが折り曲げられることにより、狭小空間であってもヒートパイプ1の実装が容易となる。加えて、折り曲げられていても、突出部3aの放熱効果は損なわれない。逆に、折り曲げられることにより放熱空間が3次元的になり放熱効率が高まる効果もある。
【0192】
このように、突出部3の一部が、主として放熱の役割を担うヒートパイプ1であってもよい。加えて、突出部3の一部が折り曲げられており、この折り曲げられた突出部3が、高い効率で放熱してもよい。なお、電気配線4を有する突出部3が折り曲げられても良い。実装空間との兼ね合いにより、突出部3が折り曲げられる方の都合が良い場合があるからである。
【0193】
なお、以上は突出部3が複数である場合に、そのうちのいずれかの突出部3が主として放熱の役割を担う態様を説明したが、突出部3が物理的には一体の形状を有しているが、その一部が主として放熱の役割を担いつつ、残部が電気配線4を有する態様でもよい。
【0194】
なお、本体部2から複数の突出部3が突出する構造の場合には、ある突出部3は、電気配線4を有しており、ある突出部3は、放熱の役割を果たし、別の突出部3は、後述するような外部からの配線基板を支持するように、個々に異なる役割を有していても良い。
【0195】
(実施の形態4)
次に、実施の形態4について、図14を用いて説明する。図14は、本発明の実施の形態4におけるヒートパイプの斜視図である。
【0196】
実施の形態4では、方形を有する本体部2のある辺から第1突出部3bが突出すると共にこの辺と略垂直の辺から第2突出部3cが突出する態様について説明する。
【0197】
ヒートパイプ1は、本体部2と第1突出部3bと第2突出部3cを有する。本体部2の構造や機能は、実施の形態1〜3で説明されたものと同様である。また、第1突出部3b、第2突出部3cの構造や機能も、実施の形態1〜3で説明されたものと同様である。
【0198】
図14における本体部2は、方形を有している。第1突出部3bは、本体部2の側面であって方形のある辺から突出する。第1突出部3bの形状は方形であっても円形であってもよい。また、他の部品への損傷を防止するために、第1突出部3bの角部が面取りされていることも好適である。
【0199】
第2突出部3cは、第1突出部3bが突出する辺と略垂直である辺から突出する。すなわち、第1突出部3bと第2突出部3cとは、相互に略垂直となっている。第1突出部3bと第2突出部3cのそれぞれは、電気配線4を有する。電気配線4は、本体部2の表面に実装された電子部品5を外部の電子回路と電気的に接続する。
【0200】
ここで、第1突出部3bと第2突出部3cのそれぞれは、ヒートパイプ1の外部にある電気スロット50b、50cのそれぞれに差し込み可能である。電気スロット50b、50cは、例えばパーソナルコンピュータにあるボードスロットであり、縦と横方向それぞれの一辺ずつに電気接続可能な差込口を有している。このように、縦と横方向それぞれの一辺ずつに電気接続可能な差込口を有する電気スロットは、様々な場面で使用される。電気スロット50b、50cのそれぞれは、差込を介して電子機器本体や別の電子基板との電気的な接続を可能とする。
【0201】
図14に示されるヒートパイプ1のように、相互に略垂直である縦と横方向それぞれの辺から第1突出部3bと第2突出部3cが突出していると、このような縦横に位置する電気スロット50b、50cへの差込が容易となる。第1突出部3bは、電気スロット50bに差し込まれ、第2突出部3cは、電気スロット50cに差し込まれる。
【0202】
このように、本体部2が相互に略垂直に突出する第1突出部3bと第2突出部3cを有していることで、縦横に位置する電気スロット50b、50cに簡単に差し込むことができる。差し込まれれば、電気スロット50b、50cを介して、電子部品5が、電気スロット50b、50cとつながる電子回路や電子機器と確実に電気接続される。このようなヒートパイプ1によれば、高密度実装でありながら発熱体を冷却する役割と、電子機器内部での電気接続を担う役割との両立が可能である。
【0203】
(実施の形態5)
次に実施の形態5について説明する。図15は、本発明の実施の形態5におけるヒートパイプの斜視図である。図15に示されるヒートパイプ1は、複数の突出部3を有しているが、そのうちの一部の突出部3dに電気配線4が直接形成されているのではなく、突出部3dは、別体である配線基板60を支持している。
【0204】
実施の形態1〜4における電気配線4は、突出部3の表面や内面に形成されている。これに対して、種々の事情から既に用意されている配線基板60を、本体部2に実装されている電子部品5と電気接続させる必要がある。例えば、外部の電子回路8からそのまま展開している配線基板60を、本体部2の電子部品5(あるいは電気線路6)に接続させる必要などである。
【0205】
このような必要性に対応する場合には、突出部3に電気配線4が形成されているよりも、別体の配線基板60が本体部2に接続される方が適当である。この場合であっても、突出部3dがこの配線基板60を支持することで、配線基板60の強度や耐久性を確保できる。なお、図15では、突出部5dは他の突出部3に比べて小さく表されているが、小さい必要があるものではない。但し、電気配線4を直接形成する場合に比べて、突出部3dを小さくすることが容易であるメリットがある。
【0206】
配線基板60は、例えばフレキシブル基板などがあるが、これを本体部2の電気線路6と直接接続しただけでは、外部からの衝撃や熱衝撃に対して当然に弱い。しかし、突出部3dが、この配線基板60を支持することで、配線基板60は、外部からの衝撃や熱衝撃に対して強くなる。特に、突出部3dは、本体部2の側面から突出しているので、電気線路6と配線基板60との接続部分となりうる本体部2の側面部分でのサポート効果が高い。このため、もっとも強度の弱くなりがちな本体部2の側面部分における強度や耐久性の問題を解決できる。
【0207】
図15においては、突出部3d以外に、3つの突出部3が示されているが、これらの突出部3は必須要素ではない。ただし、放熱を主な役割として、これら3つの突出部3が形成されていても良い。
【0208】
以上のように実施の形態5におけるヒートパイプによって、別体の配線基板が本体部に接続される場合の、強度や耐久性を確保できる。
【0209】
(実施の形態6)
実施の形態1〜5においては、ヒートパイプそのものについて説明した。実施の形態6においては、実施の形態1〜5で説明されたヒートパイプを使用した電子基板や電子機器について説明する。
【0210】
図16は、本発明の実施の形態6における電子基板の側面図である。電子基板70は、回路基板71の上に、発熱体30と電子基板7を実装している。発熱体30は、CPUやLSIなどの発熱性の高い電子部品であり、電子基板7は、ヒートパイプ1と別体の電子回路8を実装している。
【0211】
発熱体30は、熱的接合材31を介してヒートパイプ1と接している。このとき、発熱体30は、本体部2と接している。ヒートパイプ1は、本体部2に加えて、本体部2の側面から突出する突出部3を備えており、突出部3は、電気配線4を有している。本体部2は、その表面に電子部品5を実装しており、電子部品5と電気配線4を電気的に接続する電気線路6が形成されている。なお、図16では、本体部2の表面に電子部品5が実装されているが、本体部2の内部に電子部品5が実装されていても良い。
【0212】
電気配線4は、電気線路6と接続されると共に電子回路8とも接続されている。この結果、電気配線4を介して、電子部品5は、ヒートパイプ1の外部の電子回路8と電気的に接続される。
【0213】
以上のような構成を有する電子基板70は、発熱体30を冷却するヒートパイプ1を実装すると共に、ヒートパイプ1に実装された電子部品5と外部の電子回路8との電気的なやり取りも実現できる。
【0214】
図17は、このような電子基板70を格納した筐体である。図17は、本発明の実施の形態6における電子機器の筐体の側断面図である。
【0215】
筐体80は、内部空間81を有し、この内部空間81は、電子基板70やヒートパイプ1を格納する。電子機器は小型化が求められているので、筐体80の内部空間81も非常に狭小であり、実装余裕度が小さいことがほとんどである。このため、ヒートパイプ1の本体部2の表面や内部に様々な電子部品5を実装する必要が生じる。例えば、ヒートパイプ1の動作状態を検出するための温度センサーや感熱センサーなどの実装が必要な場合である。これらの電子部品5は、外部の電子回路8との電気接続が必要であるが、内部空間81が狭小であると、金属線やフレキシブル基板などのように宙づりになる配線の実装余地が小さい。実装余地が小さいので、工程上の手間も要する。加えて、内部空間81が狭小であるので、宙づりになっている配線などへの他の部品からの物理衝撃や、熱による影響が強く出やすい。
【0216】
このため、実施の形態1〜5で説明されたような、突出部3に電気配線4が形成されているヒートパイプ1であれば、このような狭小な内部空間81においても問題なく格納できる。電気配線4が固定されているので、他の部品との衝突も無く、熱の影響も少ないからである。
【0217】
このように、ヒートパイプ1やこれを実装した電子基板70は、小型化が必須命題である電子機器においても容易に格納でき、動作上の問題も生じさせにくい。
【0218】
図18は、このような電子機器の一例を示す。図18は、本発明の実施の形態6における電子機器の模式図である。
【0219】
電子機器82は、カーテレビやパーソナルモニターなどの薄型、小型が要求される電子機器である。
【0220】
電子機器82は、ディスプレイ83、発光素子84、スピーカ85を備えている。この電子機器82の内部にヒートパイプ1が格納されており、発熱体の冷却を実現する。加えて、ヒートパイプ1に実装された電子部品5と外部の電子回路8の電気的接続を確実に実現できる。
【0221】
このようなヒートパイプ1が使用されることにより、電子機器の小型化や薄型化を阻害せずに、発熱体の冷却が実現できる。
【0222】
以上、実施の形態1〜6で説明されたヒートパイプは、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【図面の簡単な説明】
【0223】
【図1】本発明の実施の形態1におけるヒートパイプの斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における本体部を側面から見た分解図
【図3】本発明の実施の形態1における中間板の上面図
【図4】本発明の実施の形態1における本体部の側断面図
【図5】本発明の実施の形態1における本体部を示す写真
【図6】本発明の実施の形態1における本体部を側面から見た分解図
【図7】本発明の実施の形態1における本体部を側面から見た分解図
【図8】本発明の実施の形態1におけるヒートパイプの側面図
【図9】本発明の実施の形態1におけるヒートパイプを側面からみた断面図
【図10】本発明の実施の形態2におけるヒートパイプの斜視図
【図11】本発明の実施の形態2におけるヒートパイプの斜視図
【図12】本発明の実施の形態3におけるヒートパイプの斜視図
【図13】本発明の実施の形態3におけるヒートパイプの斜視図
【図14】本発明の実施の形態4におけるヒートパイプの斜視図
【図15】本発明の実施の形態5におけるヒートパイプの斜視図
【図16】本発明の実施の形態6における電子基板の側面図
【図17】本発明の実施の形態6における電子機器の筐体の側断面図
【図18】本発明の実施の形態6における電子機器の模式図
【符号の説明】
【0224】
1 ヒートパイプ
2 本体部
3 突出部
4 電気配線
5 電子部品
6 電気線路
7 電子基板
8 電子回路
10 上部板
11 下部板
12 中間板
13 内部貫通孔
14 凹部
15 蒸気拡散路
16 毛細管流路
20 放熱面
21 受熱面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
封入された冷媒の気化および凝縮によって発熱体を冷却するヒートパイプであって、
前記ヒートパイプは、
冷媒を封入する平板状の本体部と、
前記本体部の側面の一部もしくは全部から突出する突出部を備え、
前記本体部は、
平板状の上部板と、
前記上部板と対向する平板状の下部板と、
前記上部板と前記下部板との間に積層されると共に蒸気拡散路と毛細管流路を形成する単数又は複数の中間板を有し、
前記突出部は、前記上部板、前記下部板および前記中間板の少なくとも一つが、他よりもその面積が大きいことで形成され、
前記突出部は、電気配線を有するヒートパイプ。
【請求項2】
前記電気配線は、前記突出部の先端から前記本体部にかけて形成されている請求項1記載のヒートパイプ。
【請求項3】
前記電気配線は、前記突出部に形成される配線パターンを含む請求項1から2のいずれか記載のヒートパイプ。
【請求項4】
前記本体部の側面および表面の少なくとも一方は、電気線路を有し、前記電気線路は、前記電気配線と電気的に接続されている請求項1から3のいずれか記載のヒートパイプ。
【請求項5】
前記突出部は、前記本体部の異なる位置から突出する第1突出部と第2突出部を有し、
前記第1突出部および前記第2突出部の少なくとも一方は、前記ヒートパイプの外部から接続される配線基板を支持する請求項1から4のいずれか記載のヒートパイプ。
【請求項6】
前記第1突出部および前記第2突出部の少なくとも一方は、前記本体部からの熱を放熱する請求項5記載のヒートパイプ。
【請求項7】
前記本体部は方形を有しており、前記第1突出部は、前記本体部の所定の辺から突出し、前記第2突出部は、前記所定の辺と略垂直の辺から突出する請求項5から6のいずれか記載のヒートパイプ。
【請求項8】
前記中間板は、切り欠き部と内部貫通孔を有し、前記切り欠き部は前記蒸気拡散路を形成し、前記内部貫通孔は前記毛細管流路を形成し、
前記蒸気拡散路は、気化した冷媒を水平方向に拡散し、
前記毛細管流路は、凝縮した冷媒を垂直方向もしくは垂直・水平方向に還流させる請求項1から7のいずれか記載のヒートパイプ。
【請求項9】
前記中間板は複数であって、前記複数の中間板のそれぞれに設けられた前記内部貫通孔同士は、それぞれの一部のみが重なって、前記内部貫通孔の水平方向の断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路が形成される請求項8記載のヒートパイプ。
【請求項10】
前記上部板および前記下部板のそれぞれは、前記毛細管流路および前記蒸気拡散路の少なくとも一方と連通する凹部を更に備える請求項1から9のいずれか記載のヒートパイプ。
【請求項11】
前記本体部には電子部品が実装され、前記電気配線は、前記電子部品と電気的に接続される請求項1から10のいずれか記載のヒートパイプ。
【請求項12】
平板状の上部板と、
前記上部板と対向する平板状の下部板と、
前記上部板と前記下部板の間に積層されると共に切り欠き部と内部貫通孔を有する単数又は複数の中間板と、が接合されて本体部が形成され、
前記切り欠き部により、気化した冷媒を水平方向に拡散する蒸気拡散路が形成され、
前記内部貫通孔により、凝縮した冷媒を垂直もしくは垂直・水平方向に還流させる毛細管流路が形成され、
前記上部板、前記下部板および前記中間板の少なくとも一つが他よりもその面積が大きく、前記本体部の側面から突出する突出部が形成され、
前記突出部に電気配線が形成される、ヒートパイプの製造方法。
【請求項13】
請求項1から10のいずれか記載のヒートパイプと、
前記本体部に実装される電子部品と、
前記電気配線を介して前記電子部品と電気的に接続される電子回路と、を備える電子基板。
【請求項1】
封入された冷媒の気化および凝縮によって発熱体を冷却するヒートパイプであって、
前記ヒートパイプは、
冷媒を封入する平板状の本体部と、
前記本体部の側面の一部もしくは全部から突出する突出部を備え、
前記本体部は、
平板状の上部板と、
前記上部板と対向する平板状の下部板と、
前記上部板と前記下部板との間に積層されると共に蒸気拡散路と毛細管流路を形成する単数又は複数の中間板を有し、
前記突出部は、前記上部板、前記下部板および前記中間板の少なくとも一つが、他よりもその面積が大きいことで形成され、
前記突出部は、電気配線を有するヒートパイプ。
【請求項2】
前記電気配線は、前記突出部の先端から前記本体部にかけて形成されている請求項1記載のヒートパイプ。
【請求項3】
前記電気配線は、前記突出部に形成される配線パターンを含む請求項1から2のいずれか記載のヒートパイプ。
【請求項4】
前記本体部の側面および表面の少なくとも一方は、電気線路を有し、前記電気線路は、前記電気配線と電気的に接続されている請求項1から3のいずれか記載のヒートパイプ。
【請求項5】
前記突出部は、前記本体部の異なる位置から突出する第1突出部と第2突出部を有し、
前記第1突出部および前記第2突出部の少なくとも一方は、前記ヒートパイプの外部から接続される配線基板を支持する請求項1から4のいずれか記載のヒートパイプ。
【請求項6】
前記第1突出部および前記第2突出部の少なくとも一方は、前記本体部からの熱を放熱する請求項5記載のヒートパイプ。
【請求項7】
前記本体部は方形を有しており、前記第1突出部は、前記本体部の所定の辺から突出し、前記第2突出部は、前記所定の辺と略垂直の辺から突出する請求項5から6のいずれか記載のヒートパイプ。
【請求項8】
前記中間板は、切り欠き部と内部貫通孔を有し、前記切り欠き部は前記蒸気拡散路を形成し、前記内部貫通孔は前記毛細管流路を形成し、
前記蒸気拡散路は、気化した冷媒を水平方向に拡散し、
前記毛細管流路は、凝縮した冷媒を垂直方向もしくは垂直・水平方向に還流させる請求項1から7のいずれか記載のヒートパイプ。
【請求項9】
前記中間板は複数であって、前記複数の中間板のそれぞれに設けられた前記内部貫通孔同士は、それぞれの一部のみが重なって、前記内部貫通孔の水平方向の断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路が形成される請求項8記載のヒートパイプ。
【請求項10】
前記上部板および前記下部板のそれぞれは、前記毛細管流路および前記蒸気拡散路の少なくとも一方と連通する凹部を更に備える請求項1から9のいずれか記載のヒートパイプ。
【請求項11】
前記本体部には電子部品が実装され、前記電気配線は、前記電子部品と電気的に接続される請求項1から10のいずれか記載のヒートパイプ。
【請求項12】
平板状の上部板と、
前記上部板と対向する平板状の下部板と、
前記上部板と前記下部板の間に積層されると共に切り欠き部と内部貫通孔を有する単数又は複数の中間板と、が接合されて本体部が形成され、
前記切り欠き部により、気化した冷媒を水平方向に拡散する蒸気拡散路が形成され、
前記内部貫通孔により、凝縮した冷媒を垂直もしくは垂直・水平方向に還流させる毛細管流路が形成され、
前記上部板、前記下部板および前記中間板の少なくとも一つが他よりもその面積が大きく、前記本体部の側面から突出する突出部が形成され、
前記突出部に電気配線が形成される、ヒートパイプの製造方法。
【請求項13】
請求項1から10のいずれか記載のヒートパイプと、
前記本体部に実装される電子部品と、
前記電気配線を介して前記電子部品と電気的に接続される電子回路と、を備える電子基板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−266941(P2009−266941A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112564(P2008−112564)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(591245141)株式会社渕上ミクロ (26)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(591245141)株式会社渕上ミクロ (26)
【Fターム(参考)】
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