説明

ビニル芳香族重合体のクロロメチル化からの流出液を処理する方法

ビニル芳香族重合体のクロロメチル化からの流出液を処理する方法であって、流出液は触媒および揮発性有機物を含み、その方法は、1)触媒の少なくとも一部を不活性化する工程、2)流出液を蒸留する工程、3)流出液にカセイアルカリを添加する工程、および4)流出液を蒸留する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸留を用いて揮発性有機物を除去および/または回収することを含む、ビニル芳香族重合体のクロロメチル化からの流出液を処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビニル芳香族重合体のクロロメチル化は、ビニル芳香族重合体の芳香環にクロロメチル(−CHCl)官能基の付加を伴うありふれた工業プロセスである。その反応は、一般に、ルイス酸触媒(たとえば塩化第二鉄)の存在下で、ビニル芳香族重合体(たとえばスチレンジビニルベンゼン共重合体)をクロロメチル化剤(たとえばクロロメチルメチルエーテル)と混合することによって行われる。反応生成物は、陰イオン交換樹脂の製造における中間体として使用を含む、種々の商業上の用途に有用なクロロメチル化されたビニル芳香族重合体である。
【0003】
そのようなクロロメチル化反応の反応生成物混合物(「流出液」)は、典型的には、触媒、塩酸および不揮発性有機物を含む。流出液は、また、クロロメチルメチルエーテル(CMME)、メチラール、ホルムアルデヒドおよびメタノールのような揮発性有機物などの価値あるおよび/または環境に敏感な成分をも含む。多くのプロセスにおいて、揮発性有機物の一部は流出液から回収される。たとえば、米国特許第4,568,700号明細書には、流出液からクロロメチル化された重合体生成物をろ過し、次いで触媒を不活性化するために塩酸を添加しそれに続いて水を添加することによって流出液を処理することを含む方法が記載されている。アルコールは、蒸留または透析によって、結果として生じた流出液から回収される。同様に、ルーマニア特許第79140号明細書の要約には、流出液に塩酸およびホルムアルデヒドを添加し、次いで蒸留して35〜105℃の沸点(bp)を有する留分を回収することが記載されている。別の例としては、(米国特許第5,600,022号明細書の比較例1に記載されているように、)特公昭62−61204号公報には、流出液に塩酸を添加し、次いで98℃、標準気圧で蒸留することが記載されている。
【0004】
米国特許第4,636,554号明細書には、触媒を不活性化すると共にCMMEの加水分解を抑えるために、クロロメチル化の流出液に20〜35%塩酸を添加することが記載されている。流出液は、その後、メタノール、メチラールおよびホルムアルデヒドのような他の揮発性有機物と共にCMMEを回収するために蒸留される。蒸留は、通常、分散媒すなわち水または高沸点有機溶媒が蒸留されないような条件下で行なわれる。この文献には、塩酸ではなく塩化水素気体を代わりに添加することも記載されている。塩化水素気体は触媒を不活性化しないので、塩基性物質が添加される。残りの流出液(蒸留残液)は、CMMEおよびメタノールの両方を含むかなりの量の揮発性有機物を含む。
【0005】
さらに別の例としては、米国特許第4,900,796号明細書には、流出液にメタノール、ホルムアルデヒドおよび塩酸を添加することによるCMMEの現場生成を含むクロロメチル化プロセスが記載されている。CMMEは、結果として生じた流出物混合物から、70℃以下、大気圧または温和な減圧下で、引き続いて減圧(すなわち300mm〜600mm)下で、蒸留される。再生されたCMMEは、次のクロロメチル化反応において使用するために再循環させられる。
【0006】
米国特許第6,756,462号明細書には、ビニル芳香族重合体の現場クロロメチル化反応における硫酸の使用、再循環および再生使用が記載されている。その文献には、硫酸、未反応CMME、メタノール、水、塩化第二鉄、メチラールおよび他の反応副生成物(硫酸鉄錯体、ホルムアルデヒドのオリゴマーおよびポリスチレン誘導体を含む。)の混合物を含む、反応からの流出液が記載されている。
【0007】
英国特許第1,162,078号明細書には、炭酸塩の沈殿を生成させるためにソーダで流出液を前処理し、次いで有機物質を回収するために蒸留することを含む初期のプロセスが記載されている。その蒸留は、どうやら、蒸留塔の棚板にホルムアルデヒド縮合生成物が生成(すなわち汚損)し、収率の低下をもたらすために、困難であったらしい。その文献には、また、メチラールおよびメタノールの回収を増加させる目的で分留前にメタノールを添加する工程を含む、流出液から揮発性有機物を回収するための「改善された」プロセスが記載されている。蒸留後に残存するかま残は有機不純物を炭化するために加熱され、その後、固体は流出液から分離され、そして残りの溶液は塩化物を回収するために蒸発させられる。その教示に反して、有機不純物を炭化する(すなわち、100〜150℃の温度にその物質を加熱する)ための開示された条件は、むしろ、クロロメチル化された抽出重合体残留物を架橋し沈殿させると思われる。すなわち、記載された温度は、炭化に不十分であり、むしろ、ろ過するのが困難でありかつ容易に蒸留装置を汚損する不溶性の有機タールの生成をもたらすと考えられる。実施例1には、メチラールおよびメタノールの回収率92〜95%が記載されているが、その回収率の値は、CMMEがすべてメチラールに変換され、残ったメチラールおよびメタノールが回収可能であるという仮定に基づいていたように見える。むしろ、CMMEの一部が反応式1に従ってメタノールと反応すると思われる。
ClCHOCH+CHOH←→CHOCHOCH+HCl (1)
したがって、塩化水素の生成による減量が回収率の計算において無視されたように見える。塩化水素を考慮したときは、回収率の値は報告された値から著しく低下する。
【0008】
米国特許第5,600,022号明細書には、塩酸の添加とそれに続く蒸留を含む、初期の処理方法の望ましくない結果が記載されている。より具体的には、この文献は、蒸留のための加熱条件下における濃塩酸の存在する状態でのCMMEは、CMME(およびメタノールおよびホルムアルデヒド)のギ酸メチルおよび塩化メチルへの転化を含む、望ましくない副反応をもたらすことを規定している。その文献には、塩酸および抽出用溶剤を添加し、次いで塩化水素気体を添加することを含む、代替方法が、続けて記載されている。生じた有機層および水層は、その後、分離される。蒸留ではなく溶剤抽出を利用することによって、ギ酸メチルおよび塩化メチルの生成が低減される。CMMEは、最後に、蒸留、膜分離、溶剤抽出またはクロマトグラフ分離によって有機層から分離される。
【0009】
前述の文献の各々は、そっくりそのままここに組み入れられる。
【0010】
【特許文献1】米国特許第4568700号明細書
【特許文献2】ルーマニア特許第79140号明細書
【特許文献3】特公昭62−61204号公報
【特許文献4】米国特許第4636554号明細書
【特許文献5】米国特許第4900796号明細書
【特許文献6】米国特許第6756462号明細書
【特許文献7】英国特許第1162078号明細書
【特許文献8】米国特許第5600022号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
再循環ループおよび/または様々な分離技術の使用にもかかわらず、クロロメチル化から残存する流出液の少なくとも一部は、最終的に処分されなければならない。これは、最も典型的には、従来の排水処理によって遂行される。環境規制は、流出液中の揮発性有機物の回収範囲に対しますます過酷な要求を課している。たとえば、米国連邦法施行規則第40巻(40CFR63,サブパートFFFF)は、2008年に発効のメタノール放出のための新しい基準を確立している。従来の蒸留技術はクロロメチル化の流出液から揮発性有機物の大部分を除去しているけれども、より多くの量の揮発性有機物を除去するのに十分なより高い蒸留温度(たとえば標準気圧で約80℃近くのまたは80℃より高い蒸留温度)の使用は、多くの場合、不揮発性有機物質(すなわち有機タール)および触媒による蒸留装置の汚損に通じる。蒸留装置からそのような汚損物質(foulants)を除去するのは、困難であり、蒸留技術に実際的な限界を課す。したがって、蒸留装置の有害な汚損なしに、流出液から多量の揮発性有機物を除去することができる、新しい方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ビニル芳香族重合体のクロロメチル化からの流出液を処理する方法である。その方法は、流出液にカセイアルカリの添加を含む多工程蒸留プロセスを含む。本発明の目的は、蒸留装置の汚損を低減しながら、流出液から高割合の揮発性有機物を除去することである。多くの追加の実施態様、目的、利点および特徴も開示する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、ビニル芳香族重合体、クロロメチル化剤、触媒またはクロロメチル化技術に関して、特に限定されない。すなわち、本発明は、広範囲のビニル芳香族重合体のクロロメチル化反応から生じる流出液の処理に広く適用できる。さらに、本発明は、後に続くクロロメチル化反応において使用するために蒸留液からのCMMEの直接の回収および再循環を含む既知の流出液処理方法と組み合わせて用いることができる。
【0014】
ここで用いるときは、用語「重合体」は、単独重合体および共重合体(すなわち2種以上の異なる単量体から誘導された重合体)を含むように意図されるが、共重合体が好ましい。適用できるビニル芳香族重合体の代表的な種類は米国特許第6,756,462号明細書(引用によってそっくりそのまま組み入れられる。)に記載されている。そのような重合体は、典型的には、懸濁重合によってビニル芳香族単量体を重合することによって調製される。そのような単量体の例としては、スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレンおよびC−Cアルキル置換スチレン、およびビニルナフタレン(たとえばα−メチルスチレン、エチルスチレンすなわちエチルビニルベンゼン、イソプロピルスチレン、ジエチルスチレン、エチルメチルスチレンおよびジメチルスチレン)ならびにそれらの混合物のような単不飽和ビニル芳香族単量体が挙げられる。所望により、非芳香族共単量体も使用することができ、それらの例としては、塩化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよび(メタ)アクリル酸のC−Cアルキルエステル(たとえばアクリル酸メチル)のような脂肪族不飽和単量体が挙げられる。使用するときは、非芳香族単量体は、典型的には、重合体を生成するために使用される全単量体質量を基準として約0〜20質量%含まれる。当該重合体は好ましくは架橋される。架橋は、一般に、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルピリジン、ジビニルナフタレンおよびジビニルキシレンのような多官能芳香族単量体を含めることによって遂行される。使用するときは、そのような架橋単量体は、重合体を生成するために使用される全単量体の質量を基準として、約0.1〜20質量%、好ましくは約0.5〜10質量%含まれる。ジビニルベンゼンは好ましい架橋単量体である。非芳香族架橋単量体も使用することができ、その例としては、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパン、トリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリビニルシクロヘキサン、1,5−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンおよびトリアリルイソシアヌレートが挙げられるが、それらに限定されない。好ましいビニル芳香族重合体は、スチレン、エチルスチレンまたはエチルビニルベンゼンとジビニルベンゼンとの共重合体であり、重合体を生成するために使用される全単量体の質量を基準として、約0.1〜20質量%のジビニルベンゼン単量体および、過半数(たとえば典型的には約50質量%超)のスチレン単量体を含む。
【0015】
ビニル芳香族重合体は遊離基開始剤を使用して調製することができ、その遊離基開始剤としては、アゾ化合物(たとえばアゾビスイソブチロニトリル)、有機過酸化物(過酸化ベンゾイル)、ヒドロペルオキシドおよび米国特許第4,192,921号明細書、米国特許第4,246,386号明細書、米国特許第4,283,499号明細書および米国特許第6,756,462号明細書(それぞれ引用によってここに組み入れられる。)に記載されている関連する開始剤のような単量体に可溶の開始剤が挙げられる。適切な分散剤および懸濁安定剤もまた使用することができ、その例としては、ゼラチン、ポリビニルアルコール、水酸化マグネシウム、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルメチルセルロースおよび米国特許第4,419,245号明細書(引用によってここに組み入れられる。)に記載されている他のものが挙げられる。
【0016】
当該ビニル芳香族重合体の架橋された共重合体種は、好ましくは、前述の単量体の2種以上(好ましくは架橋剤として機能する多官能単量体を含む。)、遊離基開始剤および所望により相分離希釈剤からなる細かく分けられた有機相の懸濁重合によって調製される。相分離希釈剤は、反応の単量体のための溶媒であるが、生じる共重合体のための溶媒ではない。そのため、共重合体は、それが生成されたとき、単量体相から沈殿する。適切な相分離希釈剤は、懸濁媒質、単量体および生じる共重合体に関して実質的に不活性な有機溶媒である。一般に、少なくとも約60℃の沸点を有する有機溶媒が適切であり、その例としては、脂肪族炭化水素、ハロゲン化炭化水素および脂肪族アルコールが挙げられる。具体的な例としては、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、tert−アミルアルコールおよびn−ブタノールが挙げられる。さらなる例は、米国特許第6,290,854号明細書米国特許第4,224,415号明細書および米国特許第3,176,482号明細書(それぞれ引用によってここに組み入れられる。)に提供されている。生じる架橋共重合体は、相分離希釈剤が利用されるかどうかに依存して、ミクロポーラスすなわちゲル状であるかもしれないし、マクロポーラスであるかもしれない。用語「マクロポーラス」、「ミクロポーラス」および/または「ゲル状」は、当技術分野においてよく知られており、共重合体の多孔性の性質についていうものである。マクロポーラスまたはゲル状共重合体は約20オングストローム(2nm)未満程度の細孔寸法を有し、一方、マクロポーラス共重合体は、典型的には、約20〜約500オングストローム(約2〜約50nm)のメソポアと約500オングストローム(約50nm)よりも大きなマクロポアの両方を有する。ゲル状およびマクロポーラス共重合体ならびにそれらの製法は、米国特許第5,231,115号明細書および米国特許第4,256,840号明細書(両方とも引用によってそっくりそのままここに組み入れられる。)に記載されている。
【0017】
ビニル芳香族重合体のクロロメチル化は当技術分野においてよく知られている。例として、単純化された反応は、反応式2で表わされる。
[vinyl(Ar)] + CH3OCH2Cl → [vinyl(Ar-CH2Cl)] + CH3OH (2)
式中、用語「vinyl」は重合体主鎖の部分を表わし、「Ar」はペンダント芳香環を表わし、そして、その組合わせは角括弧の中に示される重合体反復単位を表わす。本発明の目的のために、ビニル芳香族重合体をクロロメチル化するための具体的な手段および条件は特に限定されず、多くの適用可能な技術が文献に文書化されている。クロロメチル化は、典型的には、触媒の存在下に、約15〜100℃、好ましくは35〜70℃の温度で、約1〜8時間、ビニル芳香族重合体をクロロメチル化剤と混合することによって行われる。最も一般的な好ましいクロロメチル化剤は、クロロメチルメチルエーテル(CMME)、および/またはCMMEを生成する反応物(たとえば、ホルムアルデヒドとメタノールと塩化水素またはクロロスルホン酸との組合わせ、または塩化水素とメチル化ホルマリンとの組合わせ)であり、それは、典型的には、ビニル芳香族重合体1モル当たり、CMMEが約0.5〜20、好ましくは約1.5〜8モルの量で重合体と混合される。CMMEほど好ましくはないけれど、使用することができる他のクロロメチル化剤としては、ビスクロロメチルエーテル(BCME)、BCMEを生成する反応物(たとえば、ホルムアルデヒドおよび塩化水素、および米国特許第4,568,700号明細書に記載されているような長鎖アルキルクロロメチルエーテル)が挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0018】
クロロメチル化反応を行うのに有用な触媒は、よく知られており、当技術分野においてしばしば「ルイス酸」または「フリーデル・クラフツ」触媒と呼ばれる。限定するものではないが、それらの例としては、塩化亜鉛、酸化亜鉛、塩化第二鉄、酸化第二鉄、塩化スズ、酸化スズ、塩化チタン、塩化ジルコニウム、塩化アルミニウムおよび硫酸ならびにそれらの組合わせが挙げられる。塩化物以外のハロゲンもまた先の例において使用することができる。好ましい触媒は塩化第二鉄である。触媒は、典型的には、ビニル芳香族重合体反復単位1モル当たり、触媒が約0.01〜0.2モル、好ましくは約0.02〜0.1モルに相当する量で使用される。触媒は、所望により、塩化カルシウムのような助触媒(catalyst adjuncts)や四塩化ケイ素のような活性化剤と組み合わせて使用してもよい。所望のクロロメチル化反応プロフィールを達成するために、2種以上の触媒を使用してもよい。
【0019】
溶媒および/または膨潤剤もまた、クロロメチル化反応において使用してもよい。適切な溶媒の例としては、二塩化エチレン、ジクロロプロパン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテルおよびジイソアミルエーテルのような脂肪族炭化水素ハロゲン化物の1種またはそれ以上が挙げられるが、それらに限定されるものではない。CMMEがクロロメチル化剤として使用されるときは、そのような溶媒および/または膨潤剤は、多くの場合、望まれないし、必要でもない。
【0020】
前に言及したように、クロロメチル化されたビニル芳香族重合体は、一般に、陰イオン交換樹脂の製造において中間体として使用される。そのような用途においては、クロロメチル化されたビニル芳香族重合体は、典型的には、流出液からろ過され、(たとえばメタノール、メチラール、水で)洗浄され、そしてアミン(たとえばトリメチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジメチルアミンなど)と反応させられ、陰イオン交換樹脂を生成する。単純化された反応は、反応式3で表わされる。
[vinyl(Ar-CH2Cl)] + N(CH3)3 → [vinyl(Ar-CH2N+(CH3)3)]Cl- (3)
生じるイオン交換樹脂は、ゲル状であってもよいしマクロポーラスであってもよく、弱塩基および強塩基イオン交換樹脂として一般に使用される。
【0021】
クロロメチル化反応が完結したときに、反応生成物混合物(「流出液」)は、典型的には、揮発性有機物を含み、その揮発性有機物は、クロロメチル化剤(たとえばCMME)、メタノール、メチラール(ジメトキシメタン)、ホルムアルデヒド、ギ酸およびギ酸メチルの1つの以上を含むが、通常はそれらの組合わせを含む。ここで使用するときは、用語「揮発性有機物」は、標準大気状態での沸点(bp)が約100℃未満、好ましくは約80℃未満、より好ましくは約70℃未満の炭素含有化合物を意味する。そのような揮発性有機物に加えて、流出液は、典型的には、不揮発性有機物も含む。用語「不揮発性有機物」は、標準大気状態での沸点が約100℃超、好ましくは約120℃超、より好ましくは約160℃超の炭素含有化合物を意味するように意図される。そのような不揮発性有機物の例としては、パラホルムアルデヒドおよび有機タール、たとえば芳香族および脂肪族の重合体および/または典型的には100〜20,000ドルトン超の分子量を有するオリゴマーが挙げられる。そのような有機タールは、一般に、不揮発性であると考えられ、典型的には沸点によっては特徴づけられない。揮発性および不揮発性有機物に加えて、流出液は、一般に、水、触媒および使用済み触媒のような他の成分も含む。用語「使用済み触媒」とは、化学的改質を受け、その結果、(もともと意図した反応物および反応条件に関する)触媒機能が実質的に低下した触媒をいう。たとえば、塩化第二鉄は、多くの場合、水と反応し、比較的非反応性の水和塩化第二鉄および他の鉄の錯体を生成することによって失活する。
【0022】
本発明は、ビニル芳香族重合体のクロロメチル化からの流出液を処理する方法を含み、その方法は、次の工程からなる。
1)触媒の少なくとも一部を不活性化する工程、
2)流出液を蒸留する工程、
3)流出液にカセイアルカリを添加する工程、および
4)流出液を蒸留する工程。
【0023】
本方法の工程は、一般に、逐次的方式で行われる。しかし、任意の2つの隣接した(逐次)工程のタイミング(たとえば開始、完了)は、お互いに重なってもよいし、ある実施態様では同時に行ってもよい。たとえば、触媒不活性化工程1)は第一の蒸留工程2)と同時に行ってもよい。同様に、カセイアルカリ添加工程3)は、第一の蒸留工程2)および/または第二の蒸留工程4)と同時に行ってもよい。
【0024】
触媒を不活性化する工程は、特に限定されるものではなく、当技術分野において既知の種々の技術によって遂行することができる。しかし、この工程は、好ましくは、次の成分(「不活性化剤」)、すなわち塩酸、メタノールおよび水、の少なくとも1つを流出液に添加することによって遂行される。好ましい実施態様においては、触媒不活性化は、約1〜40質量%の塩酸を含む水溶液の添加によって遂行される。塩酸源はCMMEの製造から得られるものであってもよく、その場合は、その濃度は、変化するかもしれないが、それにもかかわらず典型的には「濃塩酸」すなわち約30質量%超であると考えられる。それよりは好ましくないけれども、より低い濃度、たとえば約5〜30質量%塩酸も使用することができる。溶液の水は、触媒の少なくとも一部を不活性化するのに役立ち、そして、少なくとも1つの実施態様においては、塩酸の添加は、流出液中の揮発性有機物(たとえばCMME)の加水分解を減少させ、それにより、それに続く蒸留でより高い全揮発性有機物回収率に通じる。これは反応式4で表される。
CHO+CHOH+HCl←→ClCHOCH+HO (4)
流出液に添加される不活性化剤の量は、触媒の少なくとも一部を不活性化するのに十分な量であるべきであるが、好ましくは触媒の過半数を不活性化するのに十分な量であるべきである。好ましい実施態様においては、流出液に添加される不活性化剤の量は、およそ触媒と反応するのに必要な化学量論量以上であると計算することができる。典型的には、触媒に対する不活性化剤のモル比は約2以上で十分である。たとえば、塩化第二鉄を触媒として使用するときは、塩化第二鉄1モル当たり水が約2〜約3モルのモル比の水(好ましくは反応式4で示される反応を回避するために濃塩酸として加えられる。)の添加で十分であるかもしれない。しかし、さらに高いモル比(たとえば10超、そして約100超さえ)をも使用することができる。
【0025】
第一の蒸留に先立って触媒の少なくとも一部(好ましくは少なくとも過半数)を不活性化しないと、望ましくない有機生成物の生成を含む種々の望ましくない影響をもたらす場合がある。たとえば、蒸留に関連する温度は、反応式5および6に示されるような反応生成物をもたらす場合がある。
CHOH+HCl→CHCl+HO (5)
2CHOH→CHOCH+HO (6)
さらに、触媒を不活性化しないと、特に蒸留の温度で、不揮発性有機物の架橋を増加するとも考えられる。そのような架橋は、巨大分子内の架橋反応および巨大分子間の架橋反応の両方を含むと考えられる。架橋された不揮発性有機物は、蒸留装置の汚損に寄与すると考えられる。用語「汚損」は、分離を非効率にまたは操作不能にする場合がある、蒸留装置上の沈積物の蓄積を記述するように意図される。「汚損物質」は、典型的には、約100ドルトン〜20,000ドルトン超の分子量を有する芳香族および脂肪族の化学種の混合物を含む有機タールを含む。さらに、触媒を不活性化しないと、反応式7および8に表されるように、原料の損失を増加させるとも考えられる。
CHO+HO+2FeCl→HCOOH+2HCl+2FeCl (7)
HCOOH+CHOH→HCOOCH+HO (8)
【0026】
最も典型的には、触媒の少なくとも一部(好ましくは少なくとも過半数)が不活性化された後、流出液は、揮発性有機物の少なくとも一部を除去する条件の下で蒸留される。用語「蒸留」は、ここでは、その最も広い意味で、すなわちそれらの揮発性に基づく化学物質の分離という意味で使用される。分離を遂行するための技術および装置は、特に限定されず、従来の回分蒸留、連続蒸留、分別蒸留および水蒸気蒸留;蒸発、ならびにストリッピングおよび精留操作が挙げられ、それらは単独で用いられてもよいし、または多段に組合わせて用いられてもよい。ここで使用するときは、句「蒸留温度」は、蒸留回路内の最も高い維持された温度をいうが、一時的な温度上昇フレアまたは過渡的な「過熱部」は含まれない。蒸留の構成に依存するが、熱は、たとえば水蒸気または外部塔加熱装置によって、塔に沿って供給することができ、および/または還流加熱によって蒸留器または釜を介して供給することができる。
【0027】
本発明の1つの実施態様においては、第一の蒸留は、CMME(bp≒56℃)およびメチラール(bp≒42℃)が分解して、ギ酸メチル、塩化メチルおよびジメチルエーテルのような望ましくない生成物になるのを制限するために、(不活性化された触媒と共に)比較的温和な条件の下で行なわれる。蒸留温度は、典型的には、約40〜80℃、通常約80℃未満、好ましくは約70℃未満、そしてより好ましくは約65℃未満である。好ましい実施態様においては、第一の蒸留工程は、標準気圧および約60℃までの温度で行われる第一の蒸発、そしてそれに続く約10〜90kPa、好ましくは約40〜80kPaの減圧で、約60℃未満、より好ましくは約45〜55℃の範囲の蒸留温度で行われるそのすぐ後の1つ以上の蒸発を含む多段プロセスからなる。1つの実施態様においては、第一の蒸留工程は、回転減圧蒸発器または強制循環減圧回分蒸発装置のような1つ以上の蒸発装置で行われる。多くの実施態様において、第一の蒸留工程は、優先的にCMMEおよび/またはメチラールを除去する条件の下で行われ、CMMEおよび/またはメチラールはそのような出発原料を必要とする他の反応において使用するために再循環させることができる。流出液の特定の組成に依存して、第一の蒸留工程の完了前に(たとえば蒸留を開始した後であるが最終完了前に)流出液にメタノールを加えてもよい。メタノールはホルムアルデヒドと反応し、蒸留によって水性混合物から除去するのがずっと容易なメチラールを生成する。すなわち、ホルムアルデヒドは水と共沸混合物を生成し、蒸留による分離をより困難にする。
【0028】
先に述べたように、触媒の少なくとも一部、好ましくは過半数が、第一の蒸留の前に不活性化される。しかし、当然のことながら、触媒の一部は第一の蒸留工程中に不活性化してもよい。より好ましくはないけれど、本発明の1つの実施態様においては、触媒を不活性化する工程の少なくとも一部と第一の蒸留工程が同時に行われる。すなわち、それらの工程のタイミングが重なる。たとえば、第一の蒸留工程中に、特に蒸留の初めに、流出液に不活性化剤を添加してもよい。すなわち、潜在的な望ましくない反応生成物(反応式5および6参照)、架橋反応、および/または原料の損失(反応式7および8参照)を減少させるために、そのような実施態様においては、触媒の少なくとも一部、好ましくは大多数が、第一の蒸留工程の開始の段階に不活性化されることが好ましい。
【0029】
好ましくは、第一の蒸留工程の後、カセイアルカリは、残存する流出液(すなわち第一の蒸留から蒸留されなかった部分)に添加される。ここで使用するときは、用語「カセイアルカリ」は、水酸化ナトリウム(カセイソーダ)、水酸化カリウム(カセイカリ)および/または水酸化カルシウム(生石灰)を含むが、好ましくは水酸化ナトリウムである。カセイアルカリは、好ましくは、約5〜50質量%、より好ましくは約10〜30質量%のカセイアルカリを含む水溶液の形で、流出液の最初のpHを少なくとも約5、より好ましくは少なくとも約8、さらに好ましくは少なくとも約10(たとえば約10〜約12)に上げるのに十分な量で、流出液に添加される。用語「最初のpH」とは、カセイアルカリを添加してから約5〜15分後の流出液のpHを意味する。流出液の化学組成に依存して、流出液のpHは、時間とともに、より低い方へずれていくかもしれない。たとえば、酸化第二鉄が加水分解を受けて酸を発生し、時間とともに流出液のpHを低下させるかもしれない。好ましくは、カセイアルカリの添加は、前に不活性化されなかった触媒の少なくとも一部を不活性化すると共に、流出液中に最初に存在する酸(必ずしも後に生成する酸ではない。)の大部分を中和するのに十分な量である。流出液を塩基性条件、たとえばpHを10以上に保つために、過剰のカセイアルカリを添加してもよい。
【0030】
第一の蒸留の前のカセイアルカリの添加は、反応式9で示されるように、ホルムアルデヒドを生成する、クロロメチル化剤とカセイアルカリの間の望ましくない反応をもたらすかもしれない。
NaOH+ClCHOCH→CHO+CHOH+NaCl (9)
したがって、好ましい実施態様においては、カセイアルカリは、第一の蒸留中に、または第一の蒸留の後に、流出液に添加されるが、典型的には第一の蒸留の前には添加されない。後述するさらに別の代替実施態様においては、カセイアルカリは第二の蒸留工程中に流出液に添加される。
【0031】
第一の蒸留工程の後、流出液は第二の蒸留工程に供される。第二の蒸留は、好都合には、追加の揮発性有機物を除去するために、第一の蒸留よりも積極的な条件の下で行なわれる。好ましい実施態様においては、CMMEとメチラールの大部分は、以前に第一の蒸留工程中に流出液から除去されている。したがって、CMMEとメチラール(それらの両方は比較的低い沸点を有する。)の分解の心配はより少ない。1つの実施態様においては、第二の蒸留工程は80℃より高い蒸留温度で行われる。すなわち第一の蒸留工程の好ましい実施態様と対照的に、第二の蒸留工程は、約80℃より高い蒸留温度の時間を少なくとも一部含む。特定の実施態様においては、第二の蒸留工程は、約100℃までの蒸留温度で、ある実施態様においては約105℃までの、110℃までの、そして120℃以上の蒸留温度で、塔頂供給(重力供給)連続水蒸気ストリッピングプロセスによって行われる。1つの好ましい実施態様において、操作条件は、不必要なエネルギー消費を回避するために留出液中の水を最小限にしながら、メタノール(bp≒65℃)回収率を最大にするために最適化される。そのような条件の下で、蒸留は、約120℃未満、好ましくは約110℃未満、より好ましくは約105℃未満の蒸留温度で標準大気状態の下で行なうことができる。しかし、さらに水の蒸留を最小限にするために、蒸留温度を約100℃の下に維持してもよい。もちろん、水の蒸留を心配する必要がなければ、より高い蒸留温度を使用してもよい。そのような蒸留を行なうための装置と操作条件は当技術分野においてよく知られている。
【0032】
好ましい実施態様においては、第二の蒸留工程は、流出液の全揮発性有機物含有量を、約10質量%未満、好ましくは約8質量%未満、より好ましくは約5質量%未満、さらに好ましくは3%質量未満に低下させる条件の下に行われる。別の好ましい実施態様においては、第二の蒸留工程は、流出液のメタノール含有量を約3質量%未満、好ましくは約1質量%未満、より好ましくは約0.5質量%未満に低下させる条件の下に行われる。さらに別の好ましい実施態様においては、第二の蒸留工程は、流出液のホルムアルデヒド含有量を約3質量%未満、好ましくは約1質量%未満、より好ましくは約0.5質量%未満、さらに好ましくは0.1質量%に低下させる条件の下に行われる。
【0033】
1つの実施態様においては、カセイアルカリの少なくとも一部または実質的にすべてが、第二の蒸留工程中に流出液に添加される。そのような実施態様においては、流出液は、第一の蒸留装置(たとえば回転減圧蒸発器)から、直接、第二の蒸留(たとえば従来の回分蒸留)に関連した装置に移され、引き続いてカセイアルカリを添加してもよい。その代わりに、カセイアルカリの一部を、流出液を第一の蒸留から第二の蒸留に移送する間に添加し、残りのカセイアルカリを第二の蒸留工程中に添加してもよい。カセイアルカリの添加と第二の蒸留の工程を組み合わせることは、第二の蒸留工程に回分蒸留を使用する実施態様には特に有用である場合がある。さらに別の実施態様においては、カセイアルカリは第二の蒸留工程の前に流出液に添加される。第二の蒸留工程に連続蒸留を利用するときは、そのようなタイミングはより適切な場合がある。
【0034】
別の実施態様においては、第一および第二の蒸留工程の両方が連続水蒸気蒸留塔において行われ、流出液は塔頂から導入され、上昇する水蒸気と向流で下方へ流れ、塔の上部で第一の蒸留工程が行われ、引き続いて塔の下部で第二の蒸留工程が行われる。このように、第二の蒸留工程は第一の蒸留よりも高温で行われる。そのような実施態様においては、カセイアルカリは、第一および/または第二の蒸留工程の間に、および/または中間工程として、添加することができる。
【0035】
1つの実施態様においては、触媒および/または使用済み触媒は、カセイアルカリの添加の後であるが、第二の蒸留工程の前に、流出液からろ過することができる。別の実施態様においては、クロロメチル化されたビニル芳香族重合体生成物は、触媒の少なくとも一部を不活性化する工程の前に、流出液から分離される。より好ましくはないけれど、いくつかの実施態様においては、触媒を不活性化する工程および/または第一の蒸留工程は実施されない。そのような実施態様においては、主題の方法は、単に、流出液にカセイアルカリを添加する工程、それに続いて、(蒸留前に)流出液中にもともと存在する揮発性有機物の大部分を除去する条件下での蒸留の工程を含むかもしれない。
【0036】
理論によって束縛されることは望まないけれど、カセイアルカリの添加は、蒸留残液の中に残存する不揮発性有機物を、より親水性にし、かつ汚損の傾向を減らすと考えられている。さらに具体的に言うと、カセイアルカリのヒドロキシル基は有機タール中に存在する塩素官能基の少なくとも一部を置換し、それにより、より架橋しにくいかつ従来の水洗およびろ過技術によって蒸留装置から除去することができる、より親水性の重合体物質を生じさせることができると考えられている。結果として、流出液の第二の蒸留は、相対的により高温で操作することができ、流出液から揮発性有機物を相対的により多く除去することができる。カセイアルカリの添加はまた、残留塩化第二鉄(触媒として使用されたが完全には不活性化されなかった場合)およびメタノール(反応式10参照)の間の錯体形成を減少させるとも考えられている。錯体形成がなければ、蒸留残液の中に残存するメタノール含有量を増加させるであろう。
3NaOH + FeCl3・xCH3OH → 3NaCl + Fe(OH)3 + xCH3OH (10)
カセイアルカリの添加はまた、カニッツァーロ反応によって流出液中のホルムアルデヒドの含有量を減少させるとも考えられている。ホルムアルデヒドは水と共沸混合物を生成するので、ホルムアルデヒドは蒸留によって水溶液から分離するのが困難な場合がある。流出液へのカセイアルカリの添加は、反応式11に示されるように、ホルムアルデヒドと反応してメタノールとギ酸ナトリウムを形成すると考えられている。
2CHO+NaOH→CHOH+HCONa (11)
生じるメタノールは、第二の蒸留工程中に流出液から効率的に分離することができる。したがって、より多くの量の揮発性有機物を流出液から除去することができる。さらに、カセイアルカリの添加は、塩酸を中和し、それにより、そうでなければ反応式12によって生成し得る塩化メチルの生成を減少させると考えられている。
【0037】
【化1】

【0038】
実際の機構および反応にかかわらず、実験室規模の実験は、流出液がカセイアルカリで前処理されたときは、蒸留中に汚損を低減し、そして多くの場合汚損を取り除くことができることを示した。すなわち、実質的に同様の流出液組成および蒸留条件を使用した比較実験は、蒸留前にカセイアルカリで流出液を前処理した結果として汚損の著しい低下を実証した。
【0039】
発明の原理は様々な修正および代替形に従順であるが、特定の種を記述してきた。この記述の意図は発明を記述された特定の実施態様に制限するのではなく、むしろ開示の精神および範囲内に入るすべての変形、均等物、および、代替案を包含することであることが理解されるべきである。主題の方法の各々の個々の工程の様々な実施態様は、他の個々の工程の様々な実施態様と組み合わせてもよい。たとえば、触媒不活性化工程の好ましい実施態様は、カセイアルカリ添加の様々な好ましい実施態様と共に、第一および/または第二の蒸留の好ましい実施態様と組み合わせてもよい。明細書の大半は逐次工程によって主題の方法を記述しているが、当然のことながら、ある実施態様においては、その方法の個々の工程が実質的に重なりあってもよいし、同時に行われてもよい。たとえば、触媒不活性化工程と第一の蒸留工程は、部分的に重なりあってもよいし、実質的に同時に行われてもよい。同様に、カセイアルカリの添加は第一または第二の蒸留工程のいずれかと重なりあってもよい。用語「含んでいる」、「含む」および、それらの変形の使用は、オープンエンドであると意図される。したがって、明示的に列挙されまたは記述されていない要素、工程または特徴は、排除されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル芳香族重合体のクロロメチル化からの流出液を処理する方法であって、
流出液が触媒および揮発性有機物を含み、
該方法が、
1)触媒の少なくとも一部を不活性化する工程、
2)流出液を蒸留する工程、
3)流出液にカセイアルカリを添加する工程、および
4)流出液を蒸留する工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
1)触媒の少なくとも一部を不活性化する工程が、流出液に、塩酸、メタノールおよび水の少なくとも1種を添加することを含むこと、
2)第一の蒸留工程が、約80℃より低い蒸留温度で行われること、および
3)カセイアルカリを添加する工程が、流出液の最初のpHを少なくとも約5に上げるために十分な量を添加することを含むこと
を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1)触媒の少なくとも一部を不活性化する工程が、約1〜40質量%の塩酸を含む水溶液を流出液に添加することを含むこと、
2)第一の蒸留工程が、約70℃より低い蒸留温度で行われること、および
3)カセイアルカリを添加する工程が、流出液の最初のpHを少なくとも約8に上げるために十分な量の水酸化ナトリウムを含む水溶液を流出液に添加することを含むこと
を特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
第二の蒸留工程が約110℃より低い蒸留温度で行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
第二の蒸留工程が約80℃より高い蒸留温度で行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
第二の蒸留工程が、流出液の全揮発性有機物含有量を約10質量%未満に低下させる条件で行われることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
揮発性有機物がメタノールを含み、そして第二の蒸留工程が流出液の全メタノール含有量を約3質量%未満に低下させる条件で行われることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
揮発性有機物がホルムアルデヒドを含み、そして第二の蒸留工程が流出液の全ホルムアルデヒド含有量を約3質量%未満に低下させる条件で行われることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
触媒が、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、塩化第二鉄および酸化第二鉄の少なくとも1種を含み、そして揮発性有機物が、クロロメチルメチルエーテル(CMME)、メチラール、メタノールおよびホルムアルデヒドの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
カセイアルカリが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化カルシウムの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
第一の蒸留工程が、ほぼ標準大気圧および約60℃以下の温度で行われる第一の蒸発、ならびにそれに続く約10〜90kPaの減圧および約60℃未満の温度で行われる1つ以上の蒸発を含む多段プロセスを含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
触媒の少なくとも一部を不活性化する工程と第一の蒸留工程の少なくとも一部が同時に行われることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
カセイアルカリを添加する工程と第二の蒸留工程の少なくとも一部が同時に行われることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
カセイアルカリの添加の後であるが第二の蒸留工程の前に、流出液から触媒と使用済み触媒をろ過する工程をさらに含む請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
ビニル芳香族重合体のクロロメチル化からの流出液を処理する方法であって、
流出液が、触媒、メタノールおよびクロロメチルメチルエーテルを含み、
該方法が、
1)触媒の少なくとも過半数を不活性化するために十分な量の塩酸の水溶液を添加する工程、
2)約80℃より低い蒸留温度で流出液を蒸留する工程、
3)流出液に流出液の最初のpHを少なくとも約8に上げるために十分な量の水酸化ナトリウムの水溶液を添加する工程、および
4)約80℃より高い蒸留温度で流出液を蒸留する工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
触媒を不活性化するために使用される塩酸の水溶液が、クロロメチルメチルエーテルの製造から生成されることを特徴とする請求項15に記載の方法。

【公表番号】特表2009−541495(P2009−541495A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530717(P2009−530717)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際出願番号】PCT/US2008/059194
【国際公開番号】WO2008/144115
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】