説明

ビルドアップ型多層プリント配線板用接着シート及びビルドアップ型多層プリント配線板

【課題】半導体装置を一層薄くするとともにその製造時又は素子自体から発生する熱による不具合を生じさせない極薄多層板及びビルドアップ型多層プリント配線板用接着シートを提供する。
【解決手段】全芳香族ポリアミドフィルム3aの片面又は両面に接着剤層3bを積層してなる接着シート3であって、全芳香族ポリアミドフィルム3aの厚さが3〜15μm、接着シート3の総厚が5〜45μmであり、かつ接着シート3の硬化体の熱伝導率が1W/m・K以上であることを特徴とする接着シート3及びそれを用いてなるビルドアップ型多層プリント配線板1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子から発生する熱の放熱性に優れ、高密度実装・高密度配線である多層プリント配線板の製造に好適なビルドアップ型多層プリント配線板用接着シート及びその接着シートを用いたビルドアップ型多層プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、高速化に伴い、多層プリント配線板の高密度実装・高密度配線化が推進され、パターンの細線化やスルーホールの小径化が進んでいる。また、これらの技術課題を元に開発・実用化されたビルドアップ型多層プリント配線板はさらにファイン化が進んでいる。
【0003】
ビルドアップ型多層プリント配線板のコアとなる内層板は、ガラスクロスを基材として用いた両面板を用いており、その外層であるビルドアップ層は、樹脂をコーティングする方式、樹脂フィルムを重ねる方式、樹脂付き銅箔を重ねる方式等の方法により形成されていた。
【0004】
その場合、ビルドアップ層の絶縁樹脂には、フォトビア方式においては、光硬化型の絶縁樹脂、例えばエポキシアクリレートを用い、一方、レーザービア方式においては、熱硬化型の絶縁樹脂、例えば変性エポキシ樹脂を用いているが、いずれの場合においてもビルドアップした絶縁樹脂層にはファインパターン形成のために基材を用いていない(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0005】
他方、実装する半導体装置は、小型化、薄型化が進み、データ処理の高速化、高機能化、大容量化によりいっそう小型化が進んでおり、例えば、外径寸法を半導体チップ(素子)サイズと同等又はわずかに大きい半導体パッケージとする、いわゆるチップサイズパッケージ(CSP)が知られている。
【0006】
また、パワートランジスタやパワー集積回路装置等の高出力の素子を用いたものは、OA機器、携帯電子機器等の電子回路の安定化電源のスイッチングレギュレータ、ノートパソコン、携帯電話の充電回路、液晶パネルのバックライト制御等に広く用いられており、近年、その用途が急速に広がっている(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開2003−025494号公報
【特許文献2】特開2000−036666号公報
【特許文献3】特開平10−163372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これまでのビルドアップ型多層プリント配線板のビルドアップ用の接着シートは、取り扱いやすさ等を考慮して所定の厚さ以上のものを用いており、それがプリント配線板自体を厚くさせるものであった。
【0008】
また、高出力の素子を用いた場合に、これらの半導体素子は、高出力であるため発熱量が多く、熱対策が大きな技術課題となっていた。
【0009】
そこで、本発明は、半導体装置を一層薄くするとともにその製造時又は素子自体から発生する熱による不具合を生じさせない極薄多層板及びビルドアップ型多層プリント配線板用接着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討した結果、全芳香族ポリイミドフィルムを用い、接着シートを所定の厚さ、所定の熱伝導率を有するものとするように構成することで、極薄で放熱性の優れたビルドアップ型多層プリント配線板を得ることができることを見出し本発明完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明のビルドアップ型多層プリント配線板用接着シートは、全芳香族ポリアミドフィルムの片面又は両面に接着剤層を積層してなる接着シートであって、全芳香族ポリアミドフィルムの厚さが3〜15μm、接着シートの総厚が5〜45μmであり、かつ接着シートの硬化体の熱伝導率が1W/m・K以上であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のビルドアップ多層プリント配線板用接着シートによれば、ビルドアップ型プリント配線板の厚さを薄く製造することを可能とし、半導体チップから発生する熱の放熱性に優れているため、これにより製造されたプリント配線板は、高出力の半導体チップを使用した場合でも温度上昇を抑えることができ、従来よりも安定して動作可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
本発明のビルドアップ型多層プリント配線板用接着シートは、全芳香族ポリアミドフィルムの片面又は両面に接着剤層を積層して構成される接着シートである。
【0015】
ここで使用されるフィルムは、ビルドアップによりプリント配線板の絶縁層を構成するものであるため、電気絶縁性のフィルムであることが求められ、本発明においては、全芳香族ポリアミドフィルムが用いられる。この全芳香族ポリアミドフィルムは、高耐熱性・高強度のエンジニアリングプラスチックである全芳香族ポリアミド系樹脂を素材として構成されるものであり、例えば、p−フェニレンジアミンとテレフタル酸クロリドから共縮重合して得られるパラ系アラミド樹脂等のアラミド樹脂が挙げられる。
【0016】
この全芳香族ポリアミドフィルムの厚さは、薄型化、小型化の要請から15μm以下の厚さのものを用い、3〜15μmであることが好ましい。該フィルムの厚さが3μm未満になるとフィルムの機械的特性が低下することにより、製造、加工時の作業性が著しく悪くなり製造歩留が低下してしまい、15μmより厚くなるとフィルムが硬くなり、脆化し、屈曲性が低下し易くなってしまう。
【0017】
本発明に使用される全芳香族ポリアミドフィルムは、本発明の効果を十分に得るためには、引っ張り弾性率が3000MPa以上、好ましくは6000〜25000MPa、熱膨張係数が20ppm/℃以下、好ましくは−10〜20ppm/℃の物性を有する全芳香族ポリアミドフィルムであることが好ましい。具体的な製品としては、アラミカ(帝人アドバンストフィルム社製、商品名)等が挙げられる。このアラミカは、ガラス転移温度が355℃、引っ張り弾性率が15000MPa、熱膨張率が±1ppm/℃の特性を有するものである。
【0018】
なお、上記した全芳香族ポリアミドフィルムの物性の測定方法として、ガラス転移温度は動的熱機械分析DMA法(昇温条件20℃/分)、引っ張り弾性率はASTM D882、熱膨張係数は熱機械分析TMA法(昇温条件20℃/分)で求めたものである。
【0019】
また、これらの全芳香族ポリアミドフィルムの片面又は両面に表面処理を施しておいてもよく、表面処理としては低温プラズマ処理、コロナ放電処理、サンドブラスト処理等が好適である。フィルムの表面処理を施すと、フィルムと接着剤の界面の密着性が良好となり、多層プリント配線板としての信頼性が向上する。
【0020】
本発明の接着シートにおける接着剤層を構成する接着剤組成物は、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂用硬化剤、硬化促進剤及び無機充填材を必須成分とするが、さらに必要に応じて、エラストマー、老化防止剤、微粉末の無機質充填材又は有機質充填剤、顔料等を添加配合することができる。
【0021】
本発明に用いるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂及び多官能エポキシ樹脂等を挙げることができ、具体的なものとしては、例えば、エピコート1001(ジャパンエポキシレジン社製、商品名)、エピコート1004(ジャパンエポキシレジン社製、商品名)等が挙げられ、これらは単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0022】
また、本発明に用いるエポキシ樹脂組成物の上記エポキシ樹脂の硬化剤としては、公知のエポキシ樹脂の硬化剤が使用可能である。例えば、脂肪族アミン系硬化剤、脂環族アミン系硬化剤、芳香族アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノールノボラック、ジシアンジアミド、三フッ化ホウ素アミン錯塩等が例示され、これらは単独または2種以上混合して使用することができる。
【0023】
これら硬化剤の配合量は上記エポキシ樹脂1当量に対して0.03〜0.4当量の範囲に設定することが好ましい。0.03当量未満ではエポキシ樹脂の十分な硬化が得られず、さらにはその他の諸特性、耐溶剤性、電気特性等も低下し、0.4当量を超えると接着性、半田耐熱性が低下する。
【0024】
さらに、本発明に用いる硬化促進剤としては、例えばイミダゾール類、BF錯体、3級アミン類、トリフェニルホスフィン等が挙げられ、これらは単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0025】
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物はエラストマーを配合することが好ましく、このエラストマーとしては、アクリロニトリルブタジエンゴム、カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴム、ビニル基含有アクリロニトリルブタジエンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴム等が挙げられ、これらは単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0026】
これらの接着剤組成物を構成する成分は、ポットミル、ボールミル、ロールミル、ホモジナイザー、スーパーミル等を用いて混合される。
【0027】
さらに、これらの接着剤組成物には、熱伝導度を向上させるために、平均粒径が0.1〜10μm、好ましくは0.1〜4.0μmのシリカ、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、アルミナ、水酸化アルミニウム等の無機充填材を単独又は2種類以上を混合したものを、接着剤組成物に対して1体積%〜33体積%含んでいることが好ましい。
【0028】
この中でも、窒化アルミニウム、炭化ケイ素及び窒化ケイ素は、他の無機充填材よりも、熱伝導率に優れたビルドアップ材を形成することができる点で、特に好ましい。
【0029】
また、このとき無機充填材の平均粒径が0.1μm未満であると、接着剤組成物の粘度が上昇しすぎてしまい、また、この粘度上昇を避けるために溶媒を追加すると塗工時の乾燥に時間を要し、結果として塗工速度低下など作業能率が悪くなってしまう。また平均粒径が10μmを超えると、異物除去を目的とするフィルターに目詰まりが生じ易くなり生産性が低下してしまう。
【0030】
無機充填材の配合量は上記の接着剤組成物に対して1〜33体積%にするのが好ましい。これらの各成分をメチルエチルケトン(MEK)/セロソルブ等の溶剤を用いて均一に溶解し、容易にビルドアップ基板用接着剤組成物を製造することができる。
【0031】
まず、上記の接着剤組成物を上記の溶媒に所望の粘度等を考慮して適宜溶解することができる。
【0032】
この樹脂組成物を溶媒に溶解したときの固形分濃度は10〜45重量%であればよく、好ましくは20〜35重量%である。固形分濃度が45重量%を超えると粘度の上昇や相溶性の低下により塗工性が悪くなり、作業性が低下し、10重量%より小さいと塗工ムラが生じやすくなり、さらに、脱溶剤量が多くなることから環境面や不経済性等の問題が生じてしまう。
【0033】
そして、本発明のビルドアップ型プリント配線板用接着シートは、上記の全芳香族ポリアミドフィルムを絶縁フィルム基材とし、上記の接着剤組成物を基材の片面又は両面に後に述べる条件により塗工乾燥し、接着剤組成物をBステージ状態にまで半硬化させて得られるものである。
【0034】
なお、接着剤組成物は、溶剤を乾燥除去して半硬化状態とした後、加熱ロールで接着剤塗布面に離型紙、離型フィルム等の離型材を線圧2〜200N/cm、60〜150℃で圧着させてもよい。
【0035】
また、得られた離型材付き接着シートの接着層をさらに硬化させるために、30〜200℃の温度で、1分〜150時間加熱処理することで、加熱・熟成させることにより、ビルドアップ成形の熱プレス時における樹脂流れ(レジンフロー)量を適宜調整してもよい。
【0036】
このとき、接着シートの厚さ、すなわち全芳香族ポリアミドフィルムと接着層のトータルの厚さは、5〜45μmであり、好ましくは5〜20μmである。5μmより薄いと強度が著しく低下し、フレキシブル印刷配線用基板の作製が極めて困難になり、45μmより厚いとコストが高くなり、脆化し、屈曲性が低下するとともに、省スペース、ファインパターン化が要求される現状にはそぐわなくなってしまう。
【0037】
上記の接着剤組成物を絶縁フィルム基材に塗布乾燥するに当たっては、80〜180℃の温度が好ましく、その理由は、この加熱乾燥が不十分であると、接着剤組成物の有機溶剤成分が残留する為にビルドアップ成形後にボイドが発生したり、密着性、はんだ耐熱性等の信頼性が低下してしまう。また、過度に加熱乾燥をすると、接着剤組成物の表面のBステージ状態が進行し、ポットライフの低下や、ビルドアップ成形後の金属箔や、絶縁フィルムとの密着性にムラが生じ、その結果、金属箔の引きはがし強さ、半田耐熱性、誘電特性に大小、強弱のムラが発生してしまう。
【0038】
次に、このようにして製造した接着シートをビルドアップ材としてコア材にビルドアップする。また、両面接着剤層のビルドアップ材の場合は金属箔などを積層し、導電性層を形成することもできる。金属箔を積層して被圧体とし、この被圧体を加熱加圧することによって、ビルドアップ材の接着剤組成物を硬化させて多層の積層板を得ることができる。
【0039】
金属箔としては、銅箔、アルミニウム箔等を用いることができるが、回路形成など後工程を考慮すると、銅箔が好ましい。本発明に使用される接着剤層を介して電気絶縁性フィルムと積層する該銅箔の厚さは5〜15μmであり、好ましくは、6〜14μmである。銅箔の厚さが5μmより薄いと銅箔の機械的特性が低下し、作業性が著しく低下し、15μmより厚いとエッチング時に銅エッジをシャープにすることが困難になり、100μm以下のファインパターンの回路作製に際しては、目的の回路ピッチに調整するのが極めて難しくなる。銅箔の種類としては圧延銅箔、電解銅箔等が挙げられ、これらを用途に応じ適宜選択して使用することができる。
【0040】
なお、導電性層を形成する方法としては、公知の薄膜形成法、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、無電解メッキ、電解メッキ等が挙げられ、これらの方法を用いて金属箔の層を有するビルドアップ材を得ることもできる。
【0041】
また、上記の加圧は金属箔及びビルドアップ材の接合と、厚みの調整のために行うので、加圧条件は必要に応じて選択することができるが、エポキシ樹脂とこのエポキシ樹脂の硬化剤の架橋反応は、主として硬化剤の反応特性に依存するので、硬化剤の種類に応じて加熱温度、加熱時間を選ぶ必要が生じる。例えば、一般には、温度150〜300℃、圧力4.9MPa(50kg/cm)、時間10〜60分程度で加熱操作を行うのが目安となる。
【0042】
そして、本発明のビルドアップ型多層プリント配線板は、コア材として両面金属箔張積層板を用いたものであって、まず、両面金属箔張積層板にサブトラクティブ法等の回路形成工程を施すことによって両面の回路パターンを形成する。次に、回路パターンを形成した積層板の片面に本発明のビルドアップ型多層プリント配線板用接着シートを用いてビルドアップ層を形成する。
【0043】
このビルドアップ層は回路パターンを形成した積層板の表面に上記のビルドアップ型多層プリント配線板用接着シートを介して銅箔等の金属箔を重ねた後加熱加圧により一体化して積層することにより形成することができる。
【0044】
このようにして多層の積層板を形成した後、上記と同様の回路形成工程を施すことによってビルドアップ層の金属箔に回路パターンを形成すると共に複数の層の回路パターンを接続するための信号伝達用のビアホール(めっきスルーホール)を形成して回路を導通可能とする。なお、上記のビルドアップ層は必要に応じて回路パターンを形成した積層板の片面にのみ形成しても良い。
【0045】
また、上記のビルドアップ材の両面に離型フィルムを張り付けたまま、所定の位置に公知の方法(例えば、炭酸ガスレーザー、エキシマレーザー等のレーザー孔明け法、ドリルによる孔明け法)によりバイアホールとして貫通孔を形成し、そこに公知の導電性組成物を印刷、ダイ塗工等の方法等により充填した回路基板接続材用部材を準備することもできる。
【0046】
ここで、本発明と従来のビルドアップ型多層プリント配線板の概念図を用い、それぞれ説明する。図1は、本発明のビルドアップ型多層プリント配線板1であり、この多層プリント配線板はコア材2と、コア材の両面にそれぞれ複数枚積層された接着シート3とからなり、コア材及び接着シート間、接着シート同士の間には銅の配線パターン4が設けられている。これら配線パターンは、スルーホール、ビアホール等により層間接続されている。また、本発明の接着シート3は、全芳香族ポリアミドフィルム3aに接着剤層3bを積層した構成であり、これがプリント配線板における絶縁層を形成している。
【0047】
また、図2は、従来のビルドアップ型多層プリント配線板11であり、この多層プリント配線板は、本発明と同様にコア材12と、コア材の両面にそれぞれ複数枚積層された接着シート13とからなり、コア材及び接着シート間、接着シート間同士の間には銅の配線パターン14が設けられている。これらの配線パターンは、スルーホール、ビアホール等により層間接続されている。ここで、接着シート13は接着剤層のフィルムのみで構成されたものである。
【0048】
本願発明は従来と比べて接着シートが薄いながらも、その取り扱いや強度、絶縁性、導電性等が優れており、同一の構成を有するプリント配線板を製造する際に、より薄くコンパクトなプリント配線板が得られ、かつ、放熱性に優れたものとすることができるため、半導体チップを搭載して半導体装置とした場合にも、装置を安定して動作させることができる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。また、以下の実施例および比較例において「部」とは「質量部」を意味する。
【0050】
(実施例1)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂エピコート1001(ジャパンエポキシレジン社製、商品名;エポキシ当量 475) 43.5部、4,4´−ジアミノジフェニルスルホン(アミン当量 62) 5.7部、2−エチル−4−メチルイミダゾール 0.2部、シクロフェノキシホスファゼンオリゴマー(融点100℃) 10部及び無機充填剤として平均粒径1.5μmの窒化アルミニウム 20部を、MEK(メチルエチルケトン)/MCA(メチルセロソルブアセテート)=6/4の混合溶剤に溶解希釈して樹脂組成物とし、この樹脂組成物をPPTA(ポリパラフェニレンテレフタルアミド)アラミドフィルム4μm厚(帝人アドバンストフィルム製、商品名:アラミカ042RC)の両面に乾燥後の接着剤層の厚さがそれぞれ8μm、10μmになるようにロールコーターで塗布乾燥し、総厚22μmのビルドアップ型多層プリント配線板用接着シートを製造した。
【0051】
さらに、厚さ80μmのコア材の両面にそれぞれ12μmの厚さの銅箔を張り合わせた銅張積層板の両面に、得られた接着シート及び厚さ12μmの銅箔を積層し、160℃、4.0MPaで加熱加圧することでビルドアップし、これを銅張積層板の両面にそれぞれビルドアップ層が2層となるように積層し、さらに、厚さ4μmのアラミドフィルム(帝人アドバンストフィルム製、商品名:アラミカ042RC)に厚さ10μmの接着剤層を設けたカバーレイを両面に積層して6層のビルドアップ型多層プリント配線板を製造した。
なお、カバーレイの接着剤層には接着シートと同じ接着剤を用いた。この点は、以下の実施例及び比較例においても、その実施例及び比較例で用いた接着シートと同じ接着剤を用いて行った。
【0052】
(実施例2)
無機充填剤として平均粒径1.0μmのアルミナを用いた以外は、実施例1と同様にして接着シート、多層プリント配線板を製造した。
【0053】
(実施例3)
無機充填剤として平均粒径3.0μmの窒化ケイ素を用いた以外は、実施例1と同様にして接着シート、多層プリント配線板を製造した。
【0054】
(実施例4)
無機充填剤として平均粒径0.7μmのシリカを用いた以外は、実施例1と同様にして接着シート、多層プリント配線板を製造した。
【0055】
(実施例5)
無機充填剤として平均粒径1.1μmの水酸化アルミニウムを用いた以外は、実施例1と同様にして接着シート、多層プリント配線板を製造した。
【0056】
(比較例1)
基材に厚さ25μmのポリイミドフィルム(製造元:東レデュポン、商品名:カプトン100EN)を用い、その両面に設ける接着剤層の厚さをそれぞれ10μmにして、接着シートの総厚を45μmとし、カバーレイとして厚さ25μmのポリイミドフィルム(東レデュポン社製、商品名:カプトン100EN)に厚さ10μmの接着剤層を設けたものを用いた以外は、実施例1と同様にして接着シート、多層プリント配線板を製造した。
【0057】
(比較例2)
無機充填剤として平均粒径1.1μmの水酸化アルミニウムを用い、基材に厚さ30μmのガラスクロス(製造元:旭シユエーベル、商品名:A106/AS440)を用いて、これに接着剤を含浸させて厚さ40μmのプリプレグ(接着シート)とし、カバーレイの代わりに厚さ45μmのレジスト層を設けた以外は、実施例1と同様にして接着シート、多層プリント配線板を製造した。
【0058】
(比較例3)
基材を用いることなく、接着剤層の厚さを40μmとして接着シートを構成し、カバーレイの代わりに厚さ45μmのレジスト層を設けた以外は実施例1と同様にして、接着シート、多層プリント配線板を製造した。
【0059】
(比較例4)
基材に厚さ12.5μmのポリイミドフィルム(製造元:東レデュポン、商品名:カプトン 50EN)を用い、接着シートの総厚を30.5μmとし、カバーレイとして厚さ12.5μmのポリイミドフィルム(東レデュポン社製、商品名:カプトン50EN)に厚さ10μmの接着剤層を設けたものを用いた以外は実施例1と同様にして接着シート、多層プリント配線板を製造した。
【0060】
(比較例5)
基材に厚さ15μmのアラミドフィルム(製造元:帝人アドバンストフィルム、商品名:アラミカ 160RC)を用い、接着シートの総厚を34μmとし、カバーレイとして厚さ16μmのアラミドフィルム(帝人アドバンストフィルム社製、商品名:アラミカ160RC)に厚さ16μmの接着剤層を設けたものを用いた以外は実施例1と同様にして接着シート、多層プリント配線板を製造した。
【0061】
(試験例)
実施例及び比較例で製造した接着シートの接着剤層を硬化させて、接着シートの弾性率、熱伝導率、熱抵抗、絶縁耐圧からなる特性を測定した。また、得られた6層の多層プリント配線板について、層間絶縁信頼性及び熱抵抗を測定した。これらの結果を併せて表1及び表2に示した。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
*1:[接着剤の弾性率]、30〜250℃(10℃/min 昇温)の条件で、セイコーインスツルメンツ株式会社製、商品名:TMA/SS6600を使用してTMA法により求めた。
*2:[基材の引っ張り強度]、JIS C 2328に準じて求めた。
*3:[基材の引っ張り弾性率]、ASTM D 882に準じて求めた。
*4:[接着シートの熱伝導率]、室温で、京都電子工業株式会社製、商品名:LFA−502を用いてレーザーフラッシュ法により測定した。
*5:[接着シートの熱抵抗]、*3で求めた熱伝導率及び接着シートの厚さより算出した。
*6:[接着シートの絶縁耐圧]、JIS C 3005に準じて求めた。
*7:[6層基板の層間絶縁信頼性] 試験片を85℃/85%RH/12V印加の条件で1000hr処理後の層間絶縁抵抗を測定した。測定値が10−12Ω以上のとき○、10−10Ω以上10−12Ω未満のとき△、10−10Ω未満のとき×と評価した。
*8:[6層基板の熱抵抗]、*4の熱抵抗と同様に6層基板の熱伝導率及び6層基板の厚さにより算出した。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明のビルドアップ型多層プリント配線板の断面図である。
【図2】従来のビルドアップ型多層プリント配線板の断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1,11…ビルドアップ型多層プリント配線板、2,12…コア材(両面銅張積層板)、3,13…接着シート、3a…全芳香族ポリアミドフィルム、3b…接着剤層、4,14…配線パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全芳香族ポリアミドフィルムの片面又は両面に接着剤層を積層してなる接着シートであって、前記全芳香族ポリアミドフィルムの厚さが3〜15μm、前記接着シートの総厚が5〜45μmであり、かつ前記接着シートの硬化体の熱伝導率が1W/m・K以上であることを特徴とするビルドアップ型多層プリント配線板用接着シート。
【請求項2】
前記接着剤層の厚さが3〜15μmであることを特徴とする請求項1記載のビルドアップ型多層プリント配線板用接着シート。
【請求項3】
前記接着剤層が、
(A)少なくとも1種のポリエポキシド化合物と、
(B)エポキシ用硬化剤と、
(C)エポキシ用硬化促進剤と、
(D)無機充填材と、
を必須成分とする樹脂組成物により形成されることを特徴とする請求項1又は2記載のビルドアップ型多層プリント配線板用接着シート。
【請求項4】
前記(D)無機充填材は、シリカ、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナ及び水酸化アルミニウムから選ばれる少なくとも1種からなり、その平均粒径が0.1〜10μmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のビルドアップ型多層プリント配線板用接着シート。
【請求項5】
前記全芳香族ポリアミドフィルムの引張り弾性率が3000MPa以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のビルドアップ型多層プリント配線板用接着シート。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項記載のビルドアップ多層プリント配線板用接着シートを使用してなるビルドアップ型多層プリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−130824(P2008−130824A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−314427(P2006−314427)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】