説明

ビルドアップ基板絶縁層の表面粗化装置

【課題】一様な表面粗化を可能とするビルドアップ基板絶縁層の表面粗化装置を提供する。
【解決手段】略直方体形状の処理槽を有しエッチング液を循環させながら処理を行う表面粗化装置であって、処理槽内で処理される基板の面と直角をなす側面の一方と基板との間に供給パイプが側面に対し平行に設けられ、前記供給パイプには複数の供給口が側面側に設けられ、処理槽内のもう一方の側面の上部に一つの排出口が設けられ、前記基板と供給パイプの間、及び前記基板と排出口が設けられた側の処理槽の側面との間にはそれぞれ整流部材が設けられ、供給口から排出口に向かって側面と垂直方向にエッチング液を流動させており、処理槽底面または処理槽側面と、基板との間を所定距離とすることで、処理槽内の流速を均一化し、薬液の循環効率を高め、一様な表面疎化を行うことを特徴としたビルドアップ基板絶縁層の表面粗化装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大きいサイズの半導体パッケージ基板の製造工程で用いられる表面粗化装置に関するものであり、特に、絶縁層のエッチング量に偏りのない一様な粗化を行う場合に好適に利用できる、ビルドアップ基板絶縁層の表面粗化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
BGA基板を始めとする、高集積、高周波用途向け半導体パッケージ用基板には、一般に、コア材の表面に絶縁層となる樹脂を塗布し、これに直接メッキ形成しパターンエッチングすることによりプリント基板を形成するビルドアップ方式が採用されている。このビルドアップ方式では、絶縁層とメッキとの密着性を良好にするために、メッキ処理前に絶縁層の表面を荒らす粗化処理を施す必要がある。その方法としては、エッチング液を満たした処理槽内に基板を浸す、ディップ式エッチングによる粗化が主に採用されている。
【0003】
ディップ式による方法では、エッチング液の反応効果を持続させるために、処理済みのエッチング液を電解再生槽で再生しながら循環させている。したがって、基板は静止したエッチング液内ではなく、常に流動しているエッチング液内に浸される。この時、基板近傍のエッチング液の温度が一定で、流れが一様であれば、均一なエッチング速度が得られる。しかしながら、従来のディップ式の処理槽では、エッチング液面で蒸発し気化熱が生じるために温度分布が発生する上、処理槽内で発生する自然対流によってエッチング液の滞留が生じ、エッチング液の疲労分布に差が生じる。そのため、エッチング速度にばらつきが生じるといった問題がある。
【0004】
このエッチング速度のばらつきを低減するために様々な提案がなされている。例えば、特許文献1に示すように、基板(被処理物)を装着したフレームを処理槽内で振動させ、エッチング液を撹拌させることで、エッチング速度のばらつきを低減し、基板のエッチングを均一化する表面粗化装置が提案されている。また、特許文献2では、基板を装着したカセットを処理槽内で回転させ、エッチング液を撹拌させることで、エッチング速度のばらつきを低減し、基板のエッチングを均一化する表面粗化装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−41659号公報
【特許文献2】特開2006−32609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、大型基板においては、特許文献1の方法では基板端部に比較して基板中央部のエッチング液の攪拌が少ないため、相対的にエッチング速度が遅くなり、エッチング量が十分に均一化されないといった問題がある。また、特許文献2の方法では、基板中央部のエッチング液の攪拌が十分でないことに加え、基板の回転に必要な処理槽の大きさを確保しなければならない。また、処理槽を大きくしたことに伴って循環させるエッチング液量も増やす必要があり、エッチング液を供給する供給ポンプの高性能化と、駆動のための消費エネルギーの増加によってコストアップにつながる。
【0007】
ディップ式以外の方法としては、スプレーノズルでエッチング液を基板に吹き付けてエッチングするスプレー式がある。しかし、このスプレー式では、エッチング液を基板に均一に当てることが困難であるためにエッチング速度にばらつきが生じるといった問題や、スプレー圧力でエッチング部の底部が不均一な形状となるなどの問題がある。また、この他の方法としては、プラズマ方式によりエッチングを行う方法も知られているが、A3サイズ以上の面積の基板の両面を同時に均一にエッチングすることは困難である。
【0008】
また、基板を複数枚同時にエッチングする時、処理槽と基板の間隔に比べて基板と基板の間隔が狭い場合、基板と基板の間の流量が少なくなり、薬液の循環効率が落ちるという問題がある。循環効率が落ちると、循環用のポンプの駆動力が増えるのでコストが増大するとともに、基板間に滞留が発生しエッチング速度のバラツキが起きる。
【0009】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、ディップ式による絶縁層の表面粗化において、A3サイズ以上の大きな面積の基板の両面に形成された絶縁層を、同時に均一に低コストで粗化処理を行うことが可能なビルドアップ基板絶縁層の表面粗化装置を提供することを課題とする。

【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明の請求項1においては、処理槽内で基板の絶縁層の表面を粗化した処理済みエッチング液を、排出口から管路を通して電解再生槽内に導いて再生し、再生後のエッチング液を、管路を通して供給口から前記処理槽内に戻し、エッチング液を循環させながら粗化処理を行う表面粗化装置であって、
前記処理槽は略直方体の形状であり、処理槽内で処理される基板の面と直角をなす側面の一方と基板との間に供給パイプが側面に対し平行に設けられ、前記供給パイプには複数の供給口が側面側に設けられ、処理槽内のもう一方の側面の上部に一つの排出口が設けられ、前記基板と供給パイプの間、および前記基板と排出口が設けられた側の処理槽の側面との間にはそれぞれ整流部材が設けられ、供給口から排出口に向かって側面と垂直方向にエッチング液を流動させており、
エッチング液の密度ρ、粘性係数μ、平均流速u、流路の長さX、流路の相当直径Dとして、流路のレイノルズ数Re=ρuD/μが3000以下の層流の場合、
ΔP=32μXu/D
流路のレイノルズ数Reが3000以上、100000以下の乱流の場合、
ΔP=2fρuX/D
f=0.0791Re−0.25
で与えられる流路内圧力損失ΔPを、
前記基板と前記処理槽側面で形成される流路については、
D=2K (Kは基板と基板に対面する処理槽側面との間隔)
X=a (aは基板の水平方向長さ)として求め、
前記基板間で形成される流路については、
D=2c (cは基板間の間隔)
X=a (aは基板の水平方向長さ)として求めた場合、
前記基板と前記処理槽側面で形成される流路の圧力損失が前記基板間で形成される流路の圧力損失の1/10以上であることを特徴とする、ビルドアップ基板絶縁層の表面粗化装置である。
【0011】
また請求項2においては、処理槽内で基板の絶縁層の表面を粗化した処理済みエッチング液を、排出口から管路を通して電解再生槽内に導いて再生し、再生後のエッチング液を、管路を通して供給口から前記処理槽内に戻し、エッチング液を循環させながら粗化処理を行う表面粗化装置であって、
前記処理槽は略直方体の形状であり、処理槽内で処理される基板の面と直角をなす側面の一方と基板との間に供給パイプが側面に対し平行に設けられ、前記供給パイプには複数の供給口が側面側に設けられ、処理槽内のもう一方の側面の上部に一つの排出口が設けられ、前記基板と供給パイプの間、および前記基板と排出口が設けられた側の処理槽の側面との間にはそれぞれ整流部材が設けられ、供給口から排出口に向かって側面と垂直方向にエッチング液を流動させており、
エッチング液の密度ρ、粘性係数μ、平均流速u、流路の長さX、流路の相当直径Dとして、流路のレイノルズ数Re=ρuD/μが3000以下の層流の場合、
ΔP=32μXu/D
流路のレイノルズ数Reが3000以上、100000以下の乱流の場合、
ΔP=2fρuX/D
f=0.0791Re−0.25
で与えられる流路内圧力損失ΔPを、
前記基板と前記処理槽側面で形成される流路については、
D=4M (Mは基板と処理槽底面との間隔)
X=a (aは基板の水平方向長さ)として求め、
前記基板間で形成される流路については、
D=2c (cは基板間の間隔)
X=a (aは基板の水平方向長さ)として求めた場合、
前記基板と前記処理槽底面で形成される流路の圧力損失が前記基板間で形成される流路の圧力損失の1/10以上であることを特徴とする、ビルドアップ基板絶縁層の表面粗化装置である。

【発明の効果】
【0012】
本発明は、処理槽の側面に挿入した供給パイプからエッチング液を供給し整流部材を通して、淀みの少ないエッチング液の流れを基板に与え、対向する側面の排出口から排出させることにより、流れを横方向に均一化し、基板のエッチング速度のばらつきを減少させることができる。
【0013】
また、処理槽底面または処理槽側面と基板間との距離を理論式より求めた値以下とすることで、基板と基板の間の薬液流量を増やし、処理槽内の流速をより均一化することで基板全体のエッチング処理をより均一化すると同時に、薬液の循環効率を高める効果が得られる。処理槽と基板との距離が基板と基板の間の距離より広すぎると、基板と基板の間の粘性抵抗が相対的に大きくなり、基板と基板の間を薬液が流れにくくなる。基板と処理槽の間隔を狭めることで基板と処理槽間の圧力損失が高まるため、基板と基板の間の薬液流量が増大する効果が得られる。また、処理槽と基板間の距離を狭めることで処理槽の容量も小さくなるので、循環ポンプの駆動力を減らす効果が期待され、コストが低減できる。

【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の表面粗化装置の実施形態を示す概略構成図
【図2】図1中のFにおける断面図
【図3】本発明の表面粗化装置の、供給パイプの模式図
【図4】本発明の表面粗化装置の、整流部材の平面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面に従って説明する。
【0016】
(実施形態)
図1は、本発明によるビルドアップ基板絶縁層の表面粗化装置の実施形態を示す概略の構成図である。図1に示すように、表面粗化装置は、エッチング液1を満たす高さ(H)、幅(W)、長さ(L)の略直方体の処理槽2、基板3の絶縁層表面を粗化した処理済みエッチング液を排出する排出口8、排出管路81、オーバーフロー槽82、電解再生槽6、再生後のエッチング液を供給する供給パイプ5、供給管路51、循環供給ポンプ91を備えている。
【0017】
複数枚の基板3は、基板保持ホルダ11によって保持された状態で、処理槽2内のエッチング液1に浸けられる。この時、処理槽2に満たされたエッチング液1の液面と基板3上部までの間隔(N)、処理槽2側面から基板までの間隔(K)、処理槽2底面から基板3下部までの間隔(M)が所定の値になるように設置する。
【0018】
また、整流部材Aは基板3が浸けられている領域と供給パイプ5の配置されている領域を仕切るように配置され、整流部材Bは基板3が浸けられている領域と排出口8の配置されている領域を仕切るように配置されている。
【0019】
処理槽2は略直方体であり、整流部材AおよびBは、それぞれ供給パイプ5および排出口8のある側の処理槽2の側面に平行に配置される。
【0020】
整流部材AおよびBは、平板状の板材に複数の孔を形成したものであり、その材質は、処理槽2内を循環するエッチング液により変質しないものであればよく、各種の金属、プラスチック、セラミック、ガラス、あるいはこれらを複合した材質のものなど、適宜のものを用いることができる。孔の形状および配置および単位面積あたりの密度については後述する。
【0021】
図3は、供給パイプ5の一部分を模式的に示した図である。供給パイプ5には、エッチング液を噴出するエッチング液供給孔が筒状の側面に所定ピッチで形成されている。図3には、供給パイプ5の同じ高さの位置にエッチング液供給孔が2個形成されている場合を示しているが、同じ高さに1個ずつでもかまわない。また供給パイプ5が処理槽2内に配設される時には、エッチング液供給孔から供給されるエッチング液が整流部材Aに直接当たらないような向きに設置する。
【0022】
処理槽2の側面には、高さH’から上部を処理槽2と同じ幅Wで開口した排出口8が設けられ、前記排出口8にオーバーフロー槽82が設置され、その底部に排出管路81の開口部が配置されている。排出口8からあふれ出したエッチング液1が、オーバーフロー槽82で回収され、排出管路81を介して電解再生槽6に送られる。
【0023】
電解再生槽6で再生されたエッチング液1は、循環供給ポンプ91や供給管路51を介して、供給パイプ5のエッチング液供給孔から処理槽2内に供給される。
【0024】
次に、整流部材A、Bについて説明する。
整流部材A、Bの孔の形状や配置の例を、図4に示す。図4においては等ピッチ(図4では30mm)の60°千鳥で孔を配置した場合を示しているが、60°千鳥以外の配列に孔を配置してもよい。また、孔のサイズと形状については、図4においては所定の直径(図4では6mm)を有する円形である場合を示す。孔の形状は円形状に限らなくともよく、長円形状、楕円形状、矩形状などであっても良いし、不定形な孔形状であってもかまわない。
【0025】
以上のように構成された表面粗化装置を用いた、基板3の粗化処理の実施例について説明する。
【0026】
処理槽2は図1のような構成のステンレス製で、基板3はサイズが横a=61.4cm、縦b=51.8cmのビルドアップ基板とし、エポキシ樹脂が塗布されている。エッチング液1として過マンガン酸カリウム溶液を満たした処理槽2に、前記基板3の14枚を基板間の間隔c=1cmで平行に並べ液面からの深さN=12cmに20分浸けて粗化処理を行った。なお、前記基板3の14枚のうち、最も外側に配置する2枚は同じサイズのステンレス等でできたダミー板でも良い。
【0027】
その粗化処理の際のエッチング液1は、供給パイプ5から処理槽内を平均2cm/secで循環させた。供給パイプ5は40Aのステンレス製とし、図3に示したような構成のもので、供給パイプ5の側面に高さ方向の間隔5cmで16ヶ所に2個ずつ合計32個のエッチング液供給孔が形成されている。同じ高さにある2個のエッチング液供給孔は互いに90°の位置にあり、また高さ方向には1列に並んで形成されている。各エッチング液供給孔は孔径6.5mmの円形状である。
【0028】
整流部材Aは、図4に示すような孔径6mmの円形状の孔をピッチ30mmの60°千鳥で配置したものを用い、処理槽2の供給パイプ5側の側壁面から10cm離れた位置に配置した。整流部材Bは、処理槽2の仕切り板82から14cm離れた位置に配置した。
【0029】
前記共通の構成に対し、表1に示すような、処理槽の大きさ、処理槽と基板間のスペースが異なる装置において、同じく表1に記載したエッチング液の平均流速u0と供給量V0で、粗化を実施した。
【表1】

【0030】
図2は、図1中のFで示した平面における断面図を模式的に表したものである。処理槽と基板で形成される空間Area2、Area4と、隣り合う基板の隙間は、基板3の横幅aを長さとする流路とみなすことができる。
【0031】
ここで、一般に、流路のレイノルズ数Reは、
Re=ρuD/μ ・・・ 式1
(ただし、流体密度ρ、粘性係数μ、流路内平均流速u、相当直径D)
で表すことができる。
【0032】
また、一般に、長さX、相当直径Dの流路に、流体密度ρ、粘性係数μの流体が平均流速uで流れた場合に、流路で生じる圧力損失ΔPは、下記(ア)(イ)のようにして求めることができる。
(ア)流路のレイノルズ数Reが3000以下の層流の場合、ハーゲン・ポアズイユ式
ΔP=32μXu/D ・・・ 式2
を適用して求めることができる。
(イ)流路のレイノルズ数Reが3000よりも大きい乱流の場合、ファニングの式
ΔP=2fρuX/D ・・・ 式3
及び、レイノルズ数Re<100000の乱流で成立するブラジウスの式により、摩擦係数fは、
f=0.0791Re−0.25 ・・・ 式4
を適用して求めることができる。
【0033】
ここで、
エッチング液の流体密度ρ=1215[kg/m3]
エッチング液の粘性係数μ=0.000602[Pa・s]
として、表1の実施例1〜4のような条件でエッチング実施した場合の、Area2およびArea4および基板間におけるそれぞれの圧力損失ΔPを、式1〜式4を用いて計算した。
【0034】
すなわち、Area2における圧力損失ΔP2を求める際には、式1〜式4において、
相当直径D=2K (Kは、処理槽2側面から基板3までの間隔)
流路の長さX=a (aは基板3の横幅で、実施例1〜4においてはa=61.4cm)
平均流速u=u0=0.02[m/sec] (u0は、エッチング液の平均流速)
とした。
【0035】
また、Area4における圧力損失ΔP4を求める際には、式1〜式4において、
相当直径D=4M (Mは、処理槽2底面から基板3下部までの間隔)
流路の長さX=a (aは基板3の横幅で、実施例1〜4においてはa=61.4cm)
平均流速u=u0=0.02[m/sec] (u0は、エッチング液の平均流速)
とした。
【0036】
また、基板間における圧力損失ΔP1を求める際には、式1〜式4において、
相当直径D=2c (cは基板間の間隔で、実施例1〜4においてはc=1cm)
流路の長さX=a (aは基板3の横幅で、実施例1〜4においてはa=61.4cm)
平均流速u=u0=0.02[m/sec] (u0は、エッチング液の平均流速)
とした。
【0037】
表1の条件下で、前述に基づいて計算した圧力損失ΔP1〜ΔP4の値、および実際にエッチングを行った際に基板間を流れるエッチング液の流速u1および流量V1の測定値を表2に示す。
【表2】

【0038】
<実施例1>
実施例1は、基板間で形成される流路の圧力損失ΔP1に比較して、Area2の圧力損失ΔP2およびArea4の圧力損失ΔP4が小さくて基板間にエッチング液が流れにくい、従来の処理槽装置である。実施例1においては、
ΔP2/ΔP1=0.0472/0.5914=0.080
ΔP4/ΔP1=0.0045/0.5914=0.008
となり、Area2の圧力損失ΔP2およびArea4の圧力損失ΔP4はいずれも、基板間で形成される流路の圧力損失ΔP1の1/10より小さい。
【0039】
このときの、基板間のエッチング液循環効率は(表2参照)、
(流速比)u1/u0=83.0%
(流量比)V1/V2=25.8%
となっていて、Area2やArea4に比べて、基板間の流速が遅く、また、基板間を通過する流量が少なくて、基板間において滞留が発生しやすくエッチングが進みにくい状態であることがわかる。
【0040】
<実施例2>
実施例2は、基板面と処理槽2の側面の間隔Kを0.030mと狭くしてArea2で形成される流路の圧力損失ΔP2を高めたものである。これによって、
ΔP2/ΔP1=0.0657/0.5914=0.111
となり、Area2の圧力損失ΔP2が基板間で形成される流路の圧力損失ΔP1の1/10以上になるようにした。
【0041】
このとき、基板間を流れるエッチング液の流速u1は、処理槽内平均流速u0の89.5%にまで向上した。また、基板間を流れるエッチング液の流量V1も、エッチング液の全供給流量V0の37.0%まで増やすことができた。
【0042】
<実施例3>
実施例3は、基板と処理槽2の側面の間隔Kをさらに狭い0.010mとして、Area2で形成される流路の圧力損失ΔP2を、基板間の流路における圧力損失ΔP1と同等に高めたものである。すなわち、
ΔP2/ΔP1=0.5914/0.5914=1.000
とした。
【0043】
このとき、基板間を流れるエッチング液の流速u1は、処理槽内平均流速u0の96.8%にまで向上した。また、基板間を流れるエッチング液の流量V1も、エッチング液の全供給流量V0の51.5%まで増やすことができた。
【0044】
<実施例4>
実施例4は、基板と処理槽2の側面の間隔Kは実施例3と同様で、処理槽2底面と基板の間隔Mを0.020mに狭くしてArea4で形成される流路の圧力損失ΔP4を高めたものである。これによって、
ΔP4/ΔP1=0.0783/0.5914=0.138
となり、Area4の圧力損失ΔP4が基板間で形成される流路の圧力損失ΔP1の1/10以上になるようにした。
【0045】
このとき、基板間を流れるエッチング液の流速u1は、処理槽内平均流速u0の99.5%にまで向上した。また、基板間を流れるエッチング液の流量V1の相対的な割合が増加したため、全供給流量V0に対する基板間の流量V1を65.4%に向上することができた。
【0046】
以上説明したように本発明のエッチング装置によれば、処理槽と基板の間の距離を狭めることで、エッチング液を基板全体により均一に供給するため、エッチング処理をより均一化し、エッチング液の循環効率を高めることができる。

【符号の説明】
【0047】
1・・・エッチング液
2・・・処理槽
3・・・基板
5・・・供給パイプ
6・・・電解再生槽
8・・・排出口
A・・・供給パイプ側の整流部材
B・・・排出口側の整流部材
Area2・・・基板と基板に対面する処理槽側面で形成される流路の断面
Area4・・・基板と処理槽底面で形成される流路の断面
51・・・供給管路
81・・・排出管路
82・・・オーバーフロー槽
91・・・循環供給ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理槽内で基板の絶縁層の表面を粗化した処理済みエッチング液を、排出口から管路を通して電解再生槽内に導いて再生し、再生後のエッチング液を、管路を通して供給口から前記処理槽内に戻し、エッチング液を循環させながら粗化処理を行う表面粗化装置であって、
前記処理槽は略直方体の形状であり、処理槽内で処理される基板の面と直角をなす側面の一方と基板との間に供給パイプが側面に対し平行に設けられ、前記供給パイプには複数の供給口が側面側に設けられ、処理槽内のもう一方の側面の上部に一つの排出口が設けられ、前記基板と供給パイプの間、および前記基板と排出口が設けられた側の処理槽の側面との間にはそれぞれ整流部材が設けられ、供給口から排出口に向かって側面と垂直方向にエッチング液を流動させており、
エッチング液の密度ρ、粘性係数μ、平均流速u、流路の長さX、流路の相当直径Dとして、流路のレイノルズ数Re=ρuD/μが3000以下の層流の場合、
ΔP=32μXu/D
流路のレイノルズ数Reが3000以上、100000以下の乱流の場合、
ΔP=2fρuX/D
f=0.0791Re−0.25
で与えられる流路内圧力損失ΔPを、
前記基板と前記処理槽側面で形成される流路については、
D=2K (Kは基板と基板に対面する処理槽側面との間隔)
X=a (aは基板の水平方向長さ)として求め、
前記基板間で形成される流路については、
D=2c (cは基板間の間隔)
X=a (aは基板の水平方向長さ)として求めた場合、
前記基板と前記処理槽側面で形成される流路の圧力損失が前記基板間で形成される流路の圧力損失の1/10以上であることを特徴とする、ビルドアップ基板絶縁層の表面粗化装置。

【請求項2】
処理槽内で基板の絶縁層の表面を粗化した処理済みエッチング液を、排出口から管路を通して電解再生槽内に導いて再生し、再生後のエッチング液を、管路を通して供給口から前記処理槽内に戻し、エッチング液を循環させながら粗化処理を行う表面粗化装置であって、
前記処理槽は略直方体の形状であり、処理槽内で処理される基板の面と直角をなす側面の一方と基板との間に供給パイプが側面に対し平行に設けられ、前記供給パイプには複数の供給口が側面側に設けられ、処理槽内のもう一方の側面の上部に一つの排出口が設けられ、前記基板と供給パイプの間、および前記基板と排出口が設けられた側の処理槽の側面との間にはそれぞれ整流部材が設けられ、供給口から排出口に向かって側面と垂直方向にエッチング液を流動させており、
エッチング液の密度ρ、粘性係数μ、平均流速u、流路の長さX、流路の相当直径Dとして、流路のレイノルズ数Re=ρuD/μが3000以下の層流の場合、
ΔP=32μXu/D
流路のレイノルズ数Reが3000以上、100000以下の乱流の場合、
ΔP=2fρuX/D
f=0.0791Re−0.25
で与えられる流路内圧力損失ΔPを、
前記基板と前記処理槽側面で形成される流路については、
D=4M (Mは基板と処理槽底面との間隔)
X=a (aは基板の水平方向長さ)として求め、
前記基板間で形成される流路については、
D=2c (cは基板間の間隔)
X=a (aは基板の水平方向長さ)として求めた場合、
前記基板と前記処理槽底面で形成される流路の圧力損失が前記基板間で形成される流路の圧力損失の1/10以上であることを特徴とする、ビルドアップ基板絶縁層の表面粗化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−18780(P2011−18780A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162592(P2009−162592)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】