説明

ピペリジン誘導体、それを含有する薬剤組成物、及び調製方法

本発明は、アセチルコリンエステラーゼを阻害し得る新規分子を含有し、従って、コリン作動性伝達に関連した病状、例えば、記憶関連障害、アルツハイマー病などの神経変性障害、重症筋無力症の治療に有用であるか、又は中枢作用の化学薬品誘発中毒の治療で有用である薬剤組成物を提供し、また、これら組成物の製造方法も本明細書に記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カッシア・スペクタビリス(Cassia spectabilis)(別名、カッシア・エクスセルサ(C.excelsa)、センナ・スペクタビリス(Senna spectabilis))から単離した新規物質並びにその半合成誘導体を含有する薬剤組成物に関する。特に、本発明から得られた組成物は、アセチルコリンエステラーゼ阻害プロファイルを示し、従って、記憶関連障害及び神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病及びパーキンソン病)の治療に有用である。また、本発明は、これらの化合物を取得する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(AD)は社会経済的に大きな影響力を与える神経変性疾患であって、年齢65才以上の年代における認知症の総数の約50〜60%の主因となっている(Francis,P.T.;Palmer,A.M.;Snape,M.;Wilcock,G.K.;J.Neurol Neurosurg Psychiatry 1999,66,137)。ADは、年齢65〜69才で人口の約1.5%、年齢85〜86才で人口の約21%、年齢90歳以上で39%が罹患しており、全世界では約1500万人が罹患している。AD罹病者の半分は保健医療機関の入院患者であり、残り半分が家庭(家族、親類及び友人を含む)での介護処置を受けていることから、この疾患は、患者、家族に、医療制度に、及び社会全体に対して多大なる影響があるため、主要な健康問題の1つと考えられている。AD患者の介護治療は、治療費が高く、患者が近親者を認識しないという段階まで徐々に患者の運動機能性及び認知機能性を喪失していくので、しばしば、関与している家族に重度の感情的ストレス、心理的ストレス、及び経済的ストレスをもたらす。科学者らは、約400万人の人々がADに罹患しており、65才以上の人口でのAD発病率は5年毎に2倍になると推定している。さらに、ほとんどの工業先進国では、65歳以上の人々が人口の最も増加している区分の1つであり、2050年までには、恐らく少なくとも1900万人に達する見込みである。推定によると、これらの人々の半分が何らかの形態のADを発症すると言われている。
【0003】
精神運動機能及び認知機能の進行性退行変性過程は、1907年にドイツの病理学者Alois Alzheimerによって最初に記載されたが、この過程は最初の症状の出現から死に至るまで約8.5年から10年継続する。高レベルの機能に関連している脳領域、特に新皮質及び海馬は、ADによって生じた生化学的変化によって最も障害を受ける(Francis,P.T.;Palmer,A.M.;Snape,M.;Wilcock,G.K.;J.Neurol Neurosurg Psychiatry 1999,66,137;Michaelis,M.L.;J.Pharm.Exper.Ther.2003,304,897;Gooch,M.D.;Stennett,D.J.;Am.J.Health Syst.Pharm.1996,53,1545)。高齢者の血小板におけるβ−アミロイドペプチド(アミロイドタンパク前駆体(APP)から誘導されるもの)の細胞外沈着の発生及び細胞内神経原線維の異常形成(微小管結合タンパク質(TAU)の異常リン酸化形態を含む)(Gooch,M.D.;Stennett,D.J.;Am.J.Health Syst.Pharm.1996,53,1545;Francis,P.T.;Palmer,A.M.;Snape,M.;Wilcock,G.K.;J.Neurol Neurosurg Psychiatry 1999,66,137)が特にAD発症の最も明らかな原因である。このプロセスによって、ニューロン機能の喪失及びシナプス損傷が生じ、それに続いて、認知能力障害及び認知症を助長する、記憶、運動神経及び推理力の障害が伴った。
【0004】
細胞レベルでは、ADは、他の神経伝達物質(例えば、ノルアドレナリン、ドーパミン、セロトニン、グルタミン酸、及び低濃度でのサブスタンスP)はさておき、シナプスプロセスにおけるアセチルコリン(ACh)の減少に関連しており、その結果、皮質のコリン作動性神経伝達が低下する(Rufani,M.;Filocamo,L;Lappa,S.;Maggi,A.;Drugs in the Future 1997,22,397;Tabarrini,O.;Cecchetti,V.;Temperini,A.;Filipponi,E.;Lamperti,M.G.;Fravolini,A.;Bioorg.and Med.Chem.2001,9,2921)。最近の研究では、ムスカリン性(M及びM)後シナプス受容体が保存されたままで、AChに対するニコチン性受容体及びムスカリン性(M)受容体(これらの大部分は前シナプスコリン作動性末端に存在する)の数が減少することが明らかにされている(Francis,P.T.;Palmer,A.M.;Snape,M.;Wilcock,G.K.;J.Neurol Neurosurg Psychiatry 1999,66,137)。
【0005】
アセチルコリンは、アセチル基をコリンに転移するアセチルコリン転移酵素の作用によってアセチル−コエンザイムA(アセチル−coA)及びコリンから生合成され、コエンザイムAが再生成される。この神経伝達物質は、脳で、及び副交感神経系の一部を構成している神経筋接合部で見つかっている。平滑筋の収縮、血管拡張及び心拍制御はAChの直接的な影響を受けている。また脳では、AChは、シナプスプロセスに関与するとともに、運動制御、記憶及び認知にも関与している。シナプス間隙におけるその活性及び不変性は、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)触媒による加水分解によって制御調整されており、前記加水分解では、その前駆体であるコリンが再生成される。加水分解のプロセスに関与するAChEの活性部位は、セリン(SER 200)、ヒスチジン(HIS 440)及びグルタミン酸(GLU 327)の触媒的な3ヶ所によって構成されている。AChE加水分解の機序は、セリンからAChのカルボニル炭素への求核攻撃により起こり、水素結合によって安定したテトラエドリックな中間体が生成され、遊離のコリン及びアセチル化セリンが生じる。最後に、水によりセリンアセチル基の加水分解が行われ、酵素部位が元に戻る。
【0006】
このコリン作動性仮説の基盤は、中枢コリン作動性機能を強化した場合に、認知と、恐らくはこの疾患により誘発される一部の行動的影響を改善することができる薬剤の能力に関連している。コリン作動性障害の改善には多数の代替手段があるが、その多くは、ACh前駆体(コリン又はレシチン)を置換することに着目している。しかし、これらの薬剤では、中枢コリン作動性活性が上昇することはなかった(Francis,P.T.;Palmer,A.M.;Snape,M.;Wilcock,G.K.;J.Neurol Neurosurg Psychiatry 1999,66,137)。別の研究では、ACh加水分解を低下させるためのコリンエステラーゼ阻害剤(ChE)(例えば、フィソスチグミン)の使用が検討された。最近では、ムスカリン性受容体(M)の特異的アゴニスト及びニコチン性アンタゴニスト又はムスカリン性アンタゴニスト(M)に関する治療法が研究されている(Francis,P.T.;Palmer,A.M.;Snape,M.;Wilcock,G.K.;J.Neurol Neurosurg Psychiatry 1999,66,137;Gooch,M.D.;Stennett,D.J.;Am.J.Health Syst.Pharm.1996,53,1545)。ADの展開及び分子病理学の理解が進歩し、AChE阻害剤の使用がADへの治療的アプローチの最も有効な形態であるに相違ないことが明らかになってきた(Francis,P.T.;Palmer,A.M.;Snape,M.;Wilcock,G.K.;J.Neurol Neurosurg Psychiatry 1999,66,137;Rufani,M.;Filocamo,L.;Lappa,S.;Maggi,A.;Drugs in the Future 1997,22,397;Tabarrini,O.;Cecchetti,V.;Temperini,A.;Filipponi,E.;Lamperti,M.G.;Fravolini,A.;Bioorg.and Med.Chem.2001,9,2921;Maelicke,A.;Schrattenholz,A.;Samochocki,M.;Radina,M.;Albuquerque,E.X.;Behavioural Brain Res.2000,113,199;Quik,M.;Jeyarasasingam,G.;Eur.J.Pharmacol.2000,393,223)。
【0007】
ADへの治療的アプローチの1つは、M後シナプスムスカリン性受容体の直接アゴニストの開発である。この研究系列の具体的な例として、米国特許第4,211,867号、米国特許第4,414,211号及び米国特許第6,093,733号を挙げることができるが、これらのすべての特許には新規のムスカリン性アゴニスト化合物が記載されている。これらの受容体を刺激すると動物における認知能力が高まった。しかし、Mアゴニストの開発に労力を注いだにもかかわらず、試験した化合物の多くは、腸、膀胱及び肺のM受容体の活性化による数々の副作用があるだけでなく、選択性が低かった。また、M非選択的アゴニストは、中枢神経系(CNS)でM受容体及びM受容体と相互作用することが可能であったが、結論は未だ完全に確定されてはいない。可能性がある他のコリン作動性のアプローチは、後シナプスM自己受容体へのアンタゴニストの開発であろう。動物モデルから得られた薬理学的データからは、これらの受容体を遮断するとAChレベルが上昇し、認知能力の測定試験で結果が良好になることが明らかとなった。しかし、有望な多数のMアンタゴニストが発表されたにもかかわらず、別のムスカリン性受容体サブタイプと比較した場合に注目に値する選択性はほとんど確認されなかった(Greenlee,W.;Clader,J.;Asberom,T.ら;II Farmaco 2001,56,247)。
【0008】
スコポラミンなどのムスカリン性アンタゴニストが短期記憶で障害を生じるという最初の知見は、コリン作動性障害が主としてムスカリンの性質であったという見解に至っている。しかし、大脳の組織解剖から得られたオートラジオグラフィー研究及びヒストケミカル研究、並びに患者の脳画像に関する研究をはじめとする一連の証拠では、ADにおいて、ムスカリン性受容体と比べて、ニコチン性受容体により広汎な特異的消失があることが明らかとなったことから、前記の見解は変わった(Maelicke,A.;Schrattenholz,A.;Samochocki,M.;Radina,M.;Albuquerque,E.X.;Behavioural Brain Res.2000,113,199;Maelicke,A.;Albuquerque,E.X.;Eur.J.Pharmacol.2000,393,165;Maelicke,A.;Samochocki,M.;Jostock,R.;Fehrenbacher,A.;Ludwig,J.;Albuquerque,E.X.;Zerlin,M.;Biol.Psych.2001,49,279)。
【0009】
最近では、ニコチン剤が学習及び記憶に作用することを示す多数の証拠がある。ニコチン及び他のニコチン性アゴニストは認知機能及び精神運動機能を改善し得るが、ニコチン性アンタゴニストは認知障害を起こす。さらに、喫煙者のAD発症は非喫煙者の場合よりも少ないが、これは、喫煙者の脳で確認されたAChに対するニコチン性受容体(nAChR)の過剰発現に関連している可能性がある。従って、ニコチン剤は、認知機能において慢性効果及び急性効果を示す可能性があり、さらに、神経保護がその慢性効果の1つであり得る(Maelicke,A.;Albuquerque,E.X.;Eur.J.Pharmacol.2000,393,165)。これらの知見に基づき、一部の科学者は、WO 02/44176、WO 94/04152及びWO 03/022856の場合のように、まずまず成果でもって新規ニコチンアゴニストの生成を探索している。
【0010】
ニコチン性受容体は哺乳動物において種々のサブタイプとして発現されており、α4β2及びα7のサブタイプが最も有名で、後部、前部、周辺部、及び外部のシナプス位置に存在している。nAChRα7サブタイプ受容体の作用は、サブタイプα4β2に非常に似ているが、Ca++に対する透過性が高く、脱感作が速く、薬理学が異なる(Chによる活性化及びα−ブンガロトキシン(ヘビ毒)による遮断を含む)(Maelicke,A.;Samochocki,M.;Jostock,R.;Fehrenbacher,A.;Ludwig,J.;Albuquerque,E.X.;Zerlin,M.;Biol.Psych.2001,49,279)。コリン感受性により、ニコチン性受容体α7は、天然神経伝達物質の開裂の後であっても化学的に励起され得る。従って、この受容体サブタイプは、(AChの放出から起こった)シナプス現象に対してだけでなく、ACh/Ch濃度の容量変化にも応答し得る。さらに、α7受容体の活性化は、そのCa++イオンに対する高い透過性により、励起細胞で代謝調節型応答(伝達物質のCa++放出制御、並びに遺伝的転写及びタンパク質生合成の刺激を含む)を起こし得る(Maelicke,A.;Samochocki,M.;Jostock,R.;Fehrenbacher,A.;Ludwig,J.;Albuquerque,E.X.;Zerlin,M.;Biol.Psych.2001,49,279;Maelicke,A.;Albuquerque,E.X.;Eur.J.Pharmacol.2000,393,165;Maelicke,A.;Schrattenholz,A.;Samochocki,M.;Radina,M.;Albuquerque,E.X.;Behavioural Brain Res.2000,113,199)。
【0011】
最近、ニコチン性コリン作動性障害の均衡に次の3つの主たる方法、すなわち、ACh合成の刺激、ACh分解の阻害、及びニコチン性受容体アゴニストの投与が適用されてきている。実際には、ACh前駆体の投与による治療上の進歩は未だなく、コリンエステラーゼ阻害剤の投与が、最良の結果をもたらしている最も一般的な治療代替法である。しかし、これら阻害剤では治療価値が限定されており、その大多数の症例において、ADの進行を完全に予防することはできない(Maelicke,A.;Samochocki,M.;Jostock,R.;Fehrenbacher,A.;Ludwig,J.;Albuquerque,E.X.;Zerlin,M.;Biol.Psych.2001,49,279;Maelicke,A.;Albuquerque,E.X.;Eur.J.Pharmacol.2000,393,165;Maelicke,A.;Schrattenholz,A.;Samochocki,M.;Radina,M.;Albuquerque,E.X.;Behavioural Brain Res.2000,113,199)。
【0012】
多くのニコチン性受容体アゴニストは、臨床試験及び前臨床試験段階にあるが、投与に困難性がある(高濃度になると、ニコチン性受容体の活性化よりも脱感作を起こす可能性が高くなる)。現在未解決のその他の課題としては、標的脳ニコチン性受容体(受容体の特定のサブタイプ)への薬剤の送達と、受容体サブタイプの選択性が挙げられる(Maelicke,A.;Albuquerque,E.X.;Eur.J.Pharmacol.2000,393,165)。
【0013】
ニコチン性受容体に関する最近の進歩(生理学、生化学及び遺伝子発現)とAD関連の現象におけるその有効的関与から、これらの受容体のアロステリックモジュレーターの使用がAD治療における新規手法であることが分かった。アロステリックモジュレーターは、AChによって、並びにニコチン性アンタゴニスト及びアゴニストによって用いられる結合部位以外の結合部位を介して、受容体と相互作用する物質である。ADはニコチン性神経伝達の減少に関連しているので、アロステリックモジュレーターは、AChに反応してニコチン性受容体チャンネルの活性を高める。これらの特性から、nACHRリガンドの新しい分類、すなわち、アロステリック賦活リガンド(APL)が誕生した(Maelicke,A.;Samochocki,M.;Jostock,R.;Fehrenbacher,A.;Ludwig,J.;Albuquerque,E.X.;Zerlin,M.;Biol.Psych.2001,49,279;Maelicke,A.;Albuquerque,E.X.;Eur.J.Pharmacol.2000,393,165;Maelicke,A.;Schrattenholz,A.;Samochocki,M.;Radina,M.;Albuquerque,E.X.;Behavioural Brain Res.2000,113,199)。
【0014】
コリン作動性仮説は最も認められている生化学理論であり、AD治療で最も効果的な治療方法の1つである。コリン作動性伝達を高めるための様々な機序のうち、アセチルコリンエステラーゼ酵素(AChE)(AChの代謝的開裂に関与するテトラメトリックのタンパク質)の阻害は、中枢神経系(CNS)のAChレベルを高め、症状改善をもたらすことによりコリン作動性障害を改善する最も有効な方法である。
【0015】
重症筋無力症(MG)は、アルツハイマー病とは異なった、神経筋接合部(この部分は、神経伝達物質障害が確認されている)のコリン作動性受容体数の減少に関係しているにもかかわらず、AChE阻害による神経伝達物質代謝フェーズがMG症状も緩和し得るという仮説がある。従って、関連の機序の完全な知見から独立して、本新規分子の有効性は、本発明の1つとして、MGの治療に有用であり得る。
【0016】
AD治療の市場で入手可能な薬剤のうち、タクリン(THA、Cognex(登録商標))は治療用途の目的で米国のFDA(食品医薬品局)によって承認された最初の(合成)薬剤であって、穏やかな作用を示すが、ADの中程度及び軽度の種類の症状を軽減するのには有意義である。しかし、その使用は、肝毒性などの重篤な副作用のために制限され、患者は治療を中断することが強いられる(Rufani,M.;Filocamo,L.;Lappa,S.;Maggi,A.;Drugs in the Future 1997,22,397)。タクリンの他に、現時点では、別の3種類の薬剤、ドネペジル(Aricept(登録商標))、リバスチグミン(Exelon(登録商標))及びガランタミン(Reminyl(登録商標))がAD治療用として米国及びヨーロッパで商品化されている。これらのうち、THA、ドネペジル及びガランタミンは可逆性AChE阻害剤であり、ガランタミンはFDAによって最近承認され、抗コリンエステラーゼ剤の開発でプロトタイプとして有用である天然産物である(Rufani,M.;Filocamo,L.;Lappa,S.;Maggi,A.;Drugs in the Future 1997,22,397;Michaelis,M.L.;J.Pharm.Exper.Ther.2003,304,897)。
【0017】
公知のIAChEの構造多様性と各種の作用機序の探索の可能性から、多様な植物種及び微生物にわたる植物化学的研究が促進されたが、これによって、抗コリンエステラーゼ物質に関する新規モデルが提供される可能性がある。この意味において、様々な植物種及び微生物種が、その一般的使用又は植物学上の属種データに基づいて研究された。植物性製剤で最も良く知られている例の1つは、イチョウ抽出物である。イチョウ(Ginkco biloba)(公孫樹科:Ginkgoaceae)は、敏捷の改善に伝統的漢方薬で何世紀にもわたり使用されてきた樹木である。今日、イチョウは、恐らく、認知機能の改善において最も使用されている植物エキスである。この使用はヨーロッパで特に普及しており、最近では、German Bundesgesundheit Associationによって認知症の治療において承認されている。多くの科学的証拠から、認知機能の増強は標準抽出物のEGb 761の使用に関連があることが示唆されている。認知作用の測定は、注意、学習、短期記憶、反応時間及び選択時間の各試験で行われたが、それらの結果は、異なる群間で再現性がないように思われる。さらに、多くの研究が、情報を利用するのが困難な、発行部数制限のある雑誌に公表されている。動物及びヒトでのインビボにおける実験の多くは、個体数が少なく制限されており、それらの結果の確実かつ広義の評価の信用性が低い(Gold,P.E.;Cahill,L.;Wenk,G.L.;Psych.ScL Publ.Int.2002,3,2)。
【0018】
イチョウの標準抽出物及び偽薬で処置した患者によるいくつかの研究では、ドネペジル(AD治療において選択した薬剤)で得られた効果と比較した効果が明らかにされた。イチョウ抽出物の常用に関連したCNSに対する保護効果の多くは、明らかに、抗酸化特性及び抗炎症特性を持つテルペン成分及びフラボノイド類の存在と関係がある。これらの物質は、次の異なる形態で作用し、ニューロン組織の保全に寄与し得る:(a)脳内及び体内でフリーラジカルを生成する、スーパーオキシドジスムターゼ及びモノアミノオキシダーゼの活性を阻害することによるもの;(b)ニューロンの損傷を起こし得るフリーラジカルを捕集し、結果として加齢に伴う脳変化を遅延させることによるもの;(c)虚血発作直後の脳に出現する脂質代謝由来の毒性共生成物であるアラキドン酸の放出を減少させることによるもの(Gold,P.E.;Cahill,L.;Wenk,G.L.;Psych.Sci.Publ.Int.2002,3,2)。
【0019】
より目的にかない、かつ高価ではない、植物化学成分、動物及び微生物の探索に転向する必要性によって、生物学的及び薬理学的に有用な抽出物、抽出画分及び純物質をモニターし、選択するための多数の化学的及び生化学的アッセイの技術開発がなされている。AChE阻害剤の探索に関して、最近、2種類の薄層クロマトグラフィーでのバイオオートグラフィーアッセイが開発された(Hostettmann,K.;Queiroz,E.F.;Vieira,P.C.;Principios Ativos de Plantas Superiores,第1版,EdUFSCar: Sao Carlos,2003)。Marstonら(Marston,A.;Kissiling,J.;Hostettmann,K.A.;Phytochem.Anal.2002,13,51)は、1−ナフチルアセテートに対するAChE活性の同定にアゾイック染料を用いた。別の事例では、Rheeら(Rhee,I.K.;van der Meent,M.;Ingkaninan,K.;Verpoorte,R.;J.Chromatography A 2001,915,217)は、酵素活性を目視するために5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(Ellmann試薬)を用いた。Ellmann試薬を使用する際の唯一の不都合な点は、両事例において、青色のプレート上に(Marstonらのアッセイ)(Marston,A.;Kissiling,J.;Hostettmann,K.A.;Phytochem.Anal.2002,13,51)、及び黄色のプレート上に(Rheeらのアッセイ)(Hostettmann,K.;Queiroz,E.F.;Vieira,P.C;Principios Ativos de Plantas Superiores,第1版,EdUFSCar: Sao Carlos,2003)に白色の阻止円が形成されることから、目視検出に限界があることであるのは明らかである。
【0020】
最近のブラジルの植物を用いた研究(Trevisan,M.T.S.;Macedo,F.V.V.;van de Meent,M.;Rhee,I.K.;Verpoorte,R.;Quimica Nova,2003,26,301)では、AChE阻害物質を含有し得る抽出物の同定にRheeらのバイオオートグラフィーアッセイと、マイクロプレートにおけるEllmannアッセイが用いられた(Rhee,I.K.;van der Meent,M.;Ingkaninan,K.;Verpoorte,R.;J.Chromatography A 2001,915,217;Ellmann,G.L.;Biochem.Pharmacol.1961,7,88)。研究は、様々な属の植物の30種から得た58種類の抽出物に対して行われ、この場合、著者らは、化学分画に対する選択基準として50%以上を阻止因子と見なした。準備作業から、パウリニア・クパナ(Paullinia cupana)(ガラナ)、アンブラナ・セアレンシス(Amburana cearensis)(クマル)及びリッピア・シドイデス(Lippia sidoides)が、両バイオアッセイで65〜100%の酵素活性を阻害する、最良の結果を示した種であった。ガラナの場合には、長期投与後及び短期投与後に、記憶増強の効能が認められた。これまでに、12種類のクマリンがアンブラナ・セアレンシス及びリッピア・シドイデスから得た抽出物のバイオ指向性分画から単離されており、このことは、新規抗コリンエステラーゼ薬剤のバイオ探索にこの種のアッセイが有用であることが示している。
【0021】
ガランタミンはヒガンバナ科(Amaryllidaceae)の様々な植物種から単離されたアルカロイドであり、それ自体、治療後も持続する治療効果を持つ、長期作用、選択的作用、可逆的作用及び競合作用のAChE阻害剤であることを示した(Lopez,S.;Bastida,J.;Viladomat,F.;Codina,C.;Life Sciences 2002,71,2521)。これは、AChE阻害剤として作用し、かつ脳ニコチン性受容体上で作用するという、二重の作用機序によるものである。これらの受容体のモジュレーションは、AChEシグナルの神経伝達を増幅し、薬剤の設計での、またニコチン性受容体アロステリックモジュレーター剤によるAD治療での飛躍的な進歩を特色とする(Rufani,M.;Filocamo,L.;Lappa,S.;Maggi,A.;Drugs in the Future 1997,22,397;Maelicke,A.;Schrattenholz,A.;Samochocki,M.;Radina,M.;Albuquerque,E.X.;Behavioural Brain Res.2000,113,199;Quik,M.;Jeyarasasingam,G.;Eur.J.Pharmacol.2000,393,223)。ガランタミンは大脳AChEの活性部位に結合することにより作用し、また前シナプス性及び後シナプス性ニコチン性受容体も刺激し、これがACh及びグルタミン酸などの神経伝達物質の放出を亢進して、直接的にニューロン機能を刺激することができる(Fennel,C.W.;van Staden,J.;J.Ethnopharm.2001,78,15)。アロステリック的に受容体に結合可能なガランタミン類似体に関する特許のうち、優れた実施例については、文献WO 01/43697で確認することができる。
【0022】
スイセン(Narcissus L.)(ヒガンバナ科)から単離された別のアルカロイドのサングイニン(sanguinine)(9−O−デスメチルガランタミン)は、インビトロ試験において、ガランタミン自体に比べて10倍以上の活性があることが証明された。この植物の属で他のAChE阻害物質(IAChE)を探索したところ、2種類の別の生物学的に活性のあるガランタミンの誘導体、11−ヒドロキシガランタミン及びエピノルガランタミン(epinorgalanthamine)が単離された。別の構造タイプのアルカロイド(リコリン様)がこの属から単離されており、その最も生物学的な有効成分は、オキソアッソアニン(oxoassoanine)、アッソアニン(assoanine)及びプソイドリコリンである(Lopez,S.;Bastida,J.;Viladomat,F.;Codina,C.;Life Sciences 2002,71,2521)。
【0023】
中国の一般薬で、及び中東で現在用いられている様々な植物種に関する研究によって、様々な活性アルカロイドが分離されている。この一例は、発熱及び炎症の治療において中国で何世紀にもわたり処方されてきた茶調製物で用いる、ヒューペルジア・セラタ(Huperzia serrata)(同義語:石松子(リコポジウム・セラツム(Lycopodium serratum))である。この植物に関する植物化学的研究により、CNS障害及びてんかんの治療で注目の候補であるヒューペルジンAが単離されているが、これは、高濃度のグルタミン酸により生じるニューロンの欠損を減少させることができる。これは非常に効力のある選択的IAChEであり、その全身投与はACh、ドーパミン及びノルエピネフリンの放出を亢進し、そのACh濃度の上昇は最高6時間継続し、ブチリルコリンエステラーゼ(BuChE)に対する作用は実質的にはない(Chang,J.;Biochem.Pharmacol.2000,59,211;Rajendran,V.;Saxena,A.;Doctor,B.P.;Kozikowski,A.P.;Bioorg.Med.Chem.2002,10,599)。新規アルカロイドで石松子様のヒューペルジンPがこの同じ植物から得られた。しかし、その活性はヒューペルジンAの活性よりも低い。
【0024】
ヒューペルジンAで得られた結果に励まされ、Orhanらは、別のAChE阻害代謝産物の探索において別の5種類の石松子種を研究した(Orhan,I.;Terzioglu,S.;Sener,B.;Planta Medica 2003,69,265)。Ellmannアッセイ(Ellmann,G.L.;Biochem.Pharmacol.1961,7,88)による抽出物の予備的評価を行った後、ヒカゲノカズラ(L.clavatum)の地上部の抽出物を選択し、そのバイオ誘導画分からα−オノセリン(onocerin)が単離された。抗コリンデステラーゼ活性の結果によると、α−オノセリン(5.2μMに相当するIC50を有する)は、1〜3mg/mLの濃度でドネペジルよりも優れており、5mg/mLの濃度で実質的に効力が等しかったが、試験したすべての用量でガランタミンの効力には達しなかった。この成果によってヒューペルジンに対してより一層注目が集まり、構造類似体の探索が促進され、多数の特許出願(例えば、WO 99/11625、WO 92/19238及びEP 806416など)が行われた。
【0025】
いくつかのトリテルペンアルカロイド類がブキスス・ヒルカナ(Buxus hyrcana)から単離され(例えば、ホモモエンジョダラミン(homomoenjodaramine)及びモエンジョダラミン(moenjodaramine)など)、有望なAChE阻害剤であることが証明された(Ur−Rahman,A.;Choudhary,M.I.;Pure Appl.Chem.1999,71,1079)。この科から、ブキスス・ヒルカナは、選択的AChE阻害剤である3種類の別のステロイド系アルカロイド類、シクロプロトブキシンC(cycloprotobuxine C)、シクロビロブキセインA(cyclovirobuxeine A)及びシクロミクロフィリンA(cyclomicrophylline A)を提供した(Ur−Rahman,A.;Parveen,S.;Khalid,A.;Farroq,A.;Choudhary,M.I.;Phytochemistry 2001,58,963)。
【0026】
最初に実生栽培の誘導剤として記載されたゼアチンは、フィアトウア・ビロサ(Fiatoua villosa)から単離され、これはAChE活性阻害剤のスクリーニング後に、メタノール系抽出物が選択された。純粋なゼアチンは、IC50が1.09×10−4Mに相当し、用量依存性的にAChE活性を阻害した(Heo,H−J.;Hong,S−C;Cho,H−Y.;Hong,B.;Kim,H−K.;Kim,E−K.;Shim,D−H.;Mol.Cells 2002,13,113)。
【0027】
トマトの皮(ジャガイモ(Solanum tuberosum L.))に高濃度で存在するグリコアルカロイドは、多くの食中毒事件の原因である。中毒症患者を観察したところ、精神錯乱、抑鬱症及び衰弱などの症状が認められた。これらの作用は、α−ソラニン及びα−カコニン(これらは、ジャガイモ(S.tuberosum)に存在するグリコアルカロイドの95%に相当する)によるAChEの阻害に関連していた(Smith,D.B.;Roddick,J.G.;Jones,J.L.;Trends in Food and Tech.1996,7,126)。
【0028】
微生物、特に様々な科及び属の菌類の培養物は、多くの他の疾患のうち、癌、マラリア及び細菌感染などの重篤な疾患の治療に有用な薬剤の探索において、重要な供給源として系統的に研究されてきた。菌類によって生産された天然産物の系統的スクリーニングにより神経伝達系を回復し得る新規薬剤の候補を探索している、Otoguro、Kunoら(Kuno,F.;Otoguro,K.;Shiomi,K.;Iwai,Y.;Omura,S.;J.Antibiot.1996,49,742;Kuno,F.;Shiomi,K.;Otoguro,K.;Sunazuka,T.;Omura,S.;J.Antibiot.1996,49,748;Otoguro,K.;Kuno,F.;Omura,S.;Pharmacol.Ther.1997,76,45)は、新規AChE阻害剤のアリスガシン(arisugacine)を発見した。土壌真菌類培養物WK−4164及びFO−4259からは、シクロホスチン(cyclophostin)並びにアリスガシン(arisugacine)A及びBが、既に周知のテリトレム(territrem)B及びC、並びにシクロペニン(cyclopenine)に加えて得られた。これらのうち、アリスガシンA(IC50が1.0nMである)及びアリスガシンB(IC50が25.8nMである)は、50%のAChE活性阻害を20,000倍上回る濃度であってもBuChEを阻害せず、このことは高選択性を示しており、特許獲得の研究及び技術革新(例えば、米国特許第6,384,045号など)をもたらした。
【0029】
一方、テリトレムB及びCは低い選択性を示したが、これらのIC50は低く、それぞれ7.6nM及び6.8nMに相当した。シクロペニンは活性が低く、IC50が2,040nMであった。しかし、シクロペニンはそのIC50に対して最高2,000倍の高濃度においてもBuChEは阻害せず、完全選択性であった。シクロホスチンはIC50が1.3nMで非常に効果はあったが、そのIC50の35倍の用量でBuChEを阻害する、選択性が低い物質であった(Shiomi,K.;Tomoda,H.;Otoguro,K.;Omura,S.;Pure Appl.Chem.1999,71,1059;Kuno,F.;Otoguro,K.;Shiomi,K.;Iwai,Y.;Omura,S.;J.Antibiot.1996,49,742;Kuno,F.;Shiomi,K.;Otoguro,K.;Sunazuka,T.;Omura,S.;J.Antibiot.1996,49,748;Otoguro,K.;Kuno,F.;Omura,S.;Pharmacol.Ther.,1997,76,45)。
【0030】
テリトレムA、B及びCは、既にアスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)培養物から単離されており、その低い選択性にもかかわらず、Otoguroら(Otoguro,K.;Kuno,F.;Omura,S.;Pharmacol.Ther.1997,76,45)の研究により、テリトレムBが、AChE阻害においてネオスチグミンに比べて約20倍効果が高かったことが明らかにされている。これらの結果にPeng(Peng,F−C;J.Nat.Prod.1995,58,857)は励まされ、構造活性研究用のテリトレム誘導体を調製した。Ellmannアッセイによる酵素活性の評価をしたところ、すべての半合成テリトレム誘導体でいかなる効果の増加も認められなかったが、この一連の化合物における抗コリンエステラーゼ活性の本質的な薬理作用基として、C−2の二重結合、C−1のカルボニル、及び完全ピロン単位が同定された。
【0031】
Ellmannアッセイによりモニターされた微生物代謝産物由来のAChE阻害剤への関心から、Kimら(Kim,W−G.;Song,N−K.;Yoo,I−D.;J.Antibiot.2001,54,831)は新規真菌類、ペニシリウム・シトリニム(Penicillium citrinum)90648の培養物について調査した。ジアステレオ異性体のキノラクタシン(quinolactacin)A1及びA2がこの微生物の固体発酵から単離された。これらの物質の抗コリンエステラーゼ活性の評価により、異性体A2は、ジアステレオ異性体A1よりも14倍高い阻害AChE活性を示すことが明らかとなった。この作用は用量依存的であり、IC50は19.8μMを示したが、異性体A1ではIC50はわずかに280μMであった。さらに、そのユートマーは基層に対する競合的阻害活性を示し、AChE対ブチリルコリンエステラーゼ(BuChE)に選択的であって、すべての試験で正の対照としてタクリンを用いることにより、IC50は650μMであった(IC50 BUChE=0.006μM、IC50 AChE=0.12μM、超低選択性)。
【0032】
ブラジル中西部由来の有名なマメ科植物のカッシア・スペクタビリス(Cassia spectabilis)は、生物学的活性及び薬理学的活性を示すピペリジンアルカロイド類を探索している本発明者らの研究グループによって広く研究されてきた。このマメ科植物から得た葉、果実及び花に関する植物化学的研究によって、約12種類の2,6−アルキル−ピペリジン−3−オールと誘導体が得られたが、これらは、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)の突然変異体系において選択的細胞障害性は弱かった。このアルカロイド類の細胞障害性活性の有意性がほとんどなかったことから、本発明者らは、カッシア・ゲヌス(Cassia genus)の一部の民間薬理学的データを確認することができる別の薬理学的アッセイを検討することにした。従って、中枢及び末梢の鎮痛活性、抗炎症活性、並びにAChE阻害活性に関するアッセイを行った(Bolzani,V.S.;Gunatilaka,A.A.L.;Kingston,D.G.I.,「カッシア・レプトフィラ(Cassia leptophylla)由来の生理活性等のあるピペリジンアルカロイド類(Bioactive and other piperidine alkaloids from Cassia leptophylla)」,Tetrahedron 1995,51(21),5929〜5934;Moreira,M.S.A.;Viegas Jr.,C;Miranda,A.L.P.Bolzani,V.S.;Barreiro,E.J.,「(−)−スペクタリンの鎮痛プロファイル:カッシア・レプトフィラ(Cassia leptophylla)Vog.(マメ科植物)由来のピペリジンアルカロイド(Analgesic profile of「<(−)−>」spectaline: a piperidine alkaloid from Cassia leptophylla Vog.(Leguminosae))」,Planta Medica 2003,提出;Viegas Jr.,C,PhD thesis,UNESP−Araraquara/SP,2003,未公開データ;Viegas Jr.,C.;Young,M.C.M.;Bolzani,V.S.;Rezende,A.;Barreiro,E.J.,「Estudo Fitoquimico de Cassia leptophylla biomonitorado por linhagens transgenicas de S.cerevisiae」,24 Reuniao Anual da Sociedade Brasileira de Quimica,Pocos de Caldas−MG,2001,PN−075;Barreiro,E.J.;Bolzani,V.S.;Viegas Jr.C.,”Novos Alcaloides Piperidinicos lsolados das Flores de Cassia leptophylla (Leguminosae),25 Reuniao Anual da Sociedade Brasileira de Quimica,Pocos de Caldas−MG,2002,PN−058)。この植物の花から多量の(−)−3−O−アセチルスペクタリン及び(−)−スペクタリンが得られ、これらは、新規誘導体を取得するため、何種類かの化学的修飾に供した。塩素化誘導体のLASSBio−767、LASSBio−768及びLASSBio−822が生体外でのAChE阻害能力に関して評価され、また、これらは顕著な抗コリンエステラーゼ活性を示した。これらの新規誘導体の分子構造に関して新規性はあるものの、抗コリンエステラーゼ活性を示す他の多数のピペラジン化合物(目的の化合物はピペラジンアルカロイド類である)は既に記載されており、本技術分野の状況の一部である。この知的生産の例は文献WO 00/33788で確認することができ、そこには、神経系障害において作用し得るがその作用機序は明らかにされていない窒素付加複素環が記載されているが、その化合物はAChEの弱い阻害剤であることが明示されており、また、WO 92/17475、EP 1300395及びEP 1116716には、本明細書で紹介した化合物とは異なった、抗コリンエステラーゼピペリジン誘導体及びピペラジン誘導体が記載されている。しかし、これらには、本発明によって対象とされた分子を、抗コリンエステラーゼ物質として、又は中枢作用物質による記憶障害、神経変性障害若しくは中毒の治療において使用することは報告されてはいない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
本発明の目的は、AChE阻害用の薬剤組成物を提供することである。本発明の一態様では、これらの薬剤組成物は、C.スペクタビリス(C.spectabilis)由来のピペリジンアルカロイド及びその半合成誘導体、特に化合物、2−(R)−メチル−3−(R)−O−アセチル−6−(S)−(テトラデシル−13’−オン)−ピペリジン、2−(R)−メチル−6−(S)−(テトラデシル−13’−オン)−ピペリジン−3−(R)−オール、及び2−(R)−メチル−3−(R)−O−ter−ブトキシカルボニル−6−(S)−(テトラデシル−13’−オン)−ピペリジン、並びにその各塩素化物から得られる。
【0034】
本発明の薬剤組成物は、AChEを阻害するその能力に基づき、神経変性疾患(例えばアルツハイマー病及びパーキンソン病)などのコリン作動性伝達に関連した病状、並びに記憶欠失症状に関連した他の病状の治療で用いることができる。
【0035】
別の態様では、本発明の薬剤組成物は、さらにAChEを阻害するその能力に基づき、コリン作動性伝達に関連した他の症状、例えば重症筋無力症などの筋疾患、並びに生物薬剤及び/又は化学薬剤の軍事利用に起因する筋麻痺症状の治療で用いることができる。
【0036】
本発明のさらなる目的は、本発明の薬剤組成物を取得する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0037】
本発明の目的においては、「薬剤組成物」は、予防特性、緩和特性及び/又は治療特性を持ち、ホメオスタシスの保持及び/又は回復に向けて作用し、局所投与、非経口投与、経腸投与、及び/又は髄腔内投与形態で投与される、有効成分を含有するすべての組成物として理解する。また本発明の目的においては、「有効成分」は、式(I)若しくは(II)又はその許容可能な医薬用塩類によって表される、すべての又は任意の物質であると理解する。
【0038】
本発明の目的の新規な物質は、一般構造(I):
【化1】


(式中、
nは、2〜16の整数に対応し、
は、水素、アシル、アルキル、アルコキシル、シクロアルキル;フリル、チオフェニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリル、チアゾリル、キナゾリル、イソキノリル又はフェニル−Wであり;
この場合、Wは、水素、オルト−アルキル、オルト−シクロアルキル、オルト−アルコキシル、オルト−シクロアルコキシル、オルト−チオキシ、オルト−アリールオキシ、オルト−スルホン、オルト−スルフィド、オルト−スルホキシド、オルト−スルホネート、オルト−スルホンアミド、オルト−アミノ、オルト−アミド、オルト−ハロ、オルト−カルボアルコキシ、オルト−カルボチオアルコキシ、オルト−トリハロアルカン、オルト−シアノ、オルト−ニトロ、メタ−アルキル、メタ−シクロアルキル、メタ−アルコキシル、メタ−シクロアルコキシル、メタ−チオキシ、メタ−アリールオキシ、メタ−スルホン、メタ−スルフィド、メタ−スルホキシド、メタ−スルホネート、メタ−スルホンアミド、メタ−アミノ、メタ−アミド、メタ−ハロ、メタ−カルボアルコキシ、メタ−カルボチオアルコキシ、メタ−トリハロアルカン、メタ−シアノ、メタ−ニトロ、パラ−アルキル、パラ−シクロアルキル、パラ−アルコキシル、パラ−シクロアルコキシル、パラ−チオキシ、パラ−アリールオキシ、パラ−スルホン、パラ−スルフィド、パラ−スルホキシド、パラ−スルホネート、パラ−スルホンアミド、パラ−アミノ、パラ−アミド、パラ−ハロ、パラ−カルボアルコキシ、パラ−カルボチオアルコキシ、パラ−トリハロアルカン、パラ−シアノ又はパラ−ニトロである)
のピペリジンアルカロイドのクラスに属する。
【0039】
また本発明の目的の新規物質は、一般構造(II):
【化2】


(式中、
nは、2〜16の整数に対応し、
は、水素、アシル、アルキル、アルコキシル、シクロアルキル;フリル、チオフェニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリル、チアゾリル、キナゾリル、イソキノリル又はフェニル−Wであり;
この場合、Wは、水素、オルト−アルキル、オルト−シクロアルキル、オルト−アルコキシル、オルト−シクロアルコキシル、オルト−チオキシ、オルト−アリールオキシ、オルト−スルホン、オルト−スルフィド、オルト−スルホキシド、オルト−スルホネート、オルト−スルホンアミド、オルト−アミノ、オルト−アミド、オルト−ハロ、オルト−カルボアルコキシ、オルト−カルボチオアルコキシ、オルト−トリハロアルカン、オルト−シアノ、オルト−ニトロ、メタ−アルキル、メタ−シクロアルキル、メタ−アルコキシル、メタ−シクロアルコキシル、メタ−チオキシ、メタ−アリールオキシ、メタ−スルホン、メタ−スルフィド、メタ−スルホキシド、メタ−スルホネート、メタ−スルホンアミド、メタ−アミノ、メタ−アミド、メタ−ハロ、メタ−カルボアルコキシ、メタ−カルボチオアルコキシ、メタ−トリハロアルカン、メタ−シアノ、メタ−ニトロ、パラ−アルキル、パラ−シクロアルキル、パラ−アルコキシル、パラ−シクロアルコキシル、パラ−チオキシ、パラ−アリールオキシ、パラ−スルホン、パラ−スルフィド、パラ−スルホキシド、パラ−スルホネート、パラ−スルホンアミド、パラ−アミノ、パラ−アミド、パラ−ハロ、パラ−カルボアルコキシ、パラ−カルボチオアルコキシ、パラ−トリハロアルカン、パラ−シアノ又はパラ−ニトロであり、
は、水素又は1〜9個の炭素原子を有するアルキルのいずれかであり、
Xはハロゲンである)
で表される、一般構造(I)の誘導体のクラスに属する。
【0040】
また本発明の目的の新規物質は、一般構造(III):
【化3】


(式中、
nは、2〜16の整数に対応し、
は、水素、アシル、アルキル、アルコキシル、シクロアルキル;フリル、チオフェニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリル、チアゾリル、キナゾリル、イソキノリル又はフェニル−Wであり;
この場合、Wは、水素、オルト−アルキル、オルト−シクロアルキル、オルト−アルコキシル、オルト−シクロアルコキシル、オルト−チオキシ、オルト−アリールオキシ、オルト−スルホン、オルト−スルフィド、オルト−スルホキシド、オルト−スルホネート、オルト−スルホンアミド、オルト−アミノ、オルト−アミド、オルト−ハロ、オルト−カルボアルコキシ、オルト−カルボチオアルコキシ、オルト−トリハロアルカン、オルト−シアノ、オルト−ニトロ、メタ−アルキル、メタ−シクロアルキル、メタ−アルコキシル、メタ−シクロアルコキシル、メタ−チオキシ、メタ−アリールオキシ、メタ−スルホン、メタ−スルフィド、メタ−スルホキシド、メタ−スルホネート、メタ−スルホンアミド、メタ−アミノ、メタ−アミド、メタ−ハロ、メタ−カルボアルコキシ、メタ−カルボチオアルコキシ、メタ−トリハロアルカン、メタ−シアノ、メタ−ニトロ、パラ−アルキル、パラ−シクロアルキル、パラ−アルコキシル、パラ−シクロアルコキシル、パラ−チオキシ、パラ−アリールオキシ、パラ−スルホン、パラ−スルフィド、パラ−スルホキシド、パラ−スルホネート、パラ−スルホンアミド、パラ−アミノ、パラ−アミド、パラ−ハロ、パラ−カルボアルコキシ、パラ−カルボチオアルコキシ、パラ−トリハロアルカン、パラ−シアノ又はパラ−ニトロであり、
は、水素又は1〜9個の炭素原子を有するアルキルのいずれかであり、
Xはハロゲンである)
で表される、一般構造(I)の誘導体のクラスに属する。
【0041】
明確化するため、塩素化誘導体に関して以下の用語を採用する:LASSBio−767は、Rがアセチルに対応し、Rが水素であり、Xが塩素であり、nが9に等しい、一般式(II)の誘導体に対応し;LASSBio−768は、RがHに対応し、Rが水素であり、Xが塩素であり、nが9に等しい、一般式(II)の誘導体に対応し;LASSBio−822は、Rがt−ブトキシカルボニルに対応し、Rが水素であり、Xが塩素であり、nが9に等しい、一般式(II)の誘導体に対応し;LASSBio−795は、Rがアセチルに対応し、Rがメチルであり、Xがヨウ素であり、nが9に等しい、一般式(II)の誘導体に対応し;LASSBio−783は、Rがアセチルに対応し、Rが水素であり、Xが塩素であり、nが9に等しい、一般式(III)の誘導体に対応する。
【0042】
以下の実施例は目的を例示するのみにすぎず、本発明を実施する別の方法を限定するものではない。
【実施例1】
【0043】
一般式(I)に対応する天然物質の製造及び構造の同定
C.スペクタビリスから得た花及び芽のエタノール抽出物を濃縮したところ、粗製物質として39.7gが得られ、これを8:2のメタノール及び水の混合物に溶解した。この混合物を超音波にかけ、不溶残渣(重量10.4g)を紙濾過により除去した。この水性アルコール溶液を液−液抽出にかけ、これから以下のサブ画分、ヘキサン(2.0g)、ジクロロメタン(7.96g)、酢酸エチル(0.34g)、n−ブタノール(2.5g)及び水性画分(11.9g)を得た。
【0044】
ジクロロメタンサブ画分の一部(重量3.25g)をクロロホルム100mL中に溶解し、続いて、40%のHCl水溶液の50mL分量で逐次抽出するが、これらはそれぞれ15分間磁気的撹拌下で行い、合計4分量を実施した。この水性抽出物を合わせ、pH9〜11までNHOHの濃縮水溶液でアルカリ化した後、クロロホルム(3×50mL)及び酢酸エチル(3×50mL)で逐次抽出した。クロロホルム抽出物と酢酸エチル抽出物を合わせ、1.45gのアルカロイド混合物を得た。固定相として中性アルミナ44gを含むクロマトグラフィーカラムでこの混合物を分画した。アルカロイド混合物(1.45g)を加え、クロロホルム/ヘキサン(9:1から9.5:0.5)混合物、及びクロロホルム/メタノール/ヘキサン(8:0.5:1.5から9:1:0)混合物による溶出を行ったところ、RがHである一般式(I)に対応する化合物(エスペクタリン)910mgと、Rがアセチルである一般式(I)に対応する化合物(3−O−アセチル−エチルエスペクタリン)151mgが得られた。
【0045】
エスペクタリンのこのクロマトグラフィー法による収率はジクロロメタンサブ画分からは28%であり、C.スペクタビリスの花及び芽の粗抽出液からは5%であったが、3−O−アセチル−エスペクタリンはジクロロメタンサブ画分から4.6%の収率で得られた。
【0046】
化合物スペクタリン及び3−O−アセチル−エスペクタリンは、旋光データ、融点、並びに一次元及び二次元H及び13CのNMR分光測定データ、赤外線(IR)及び質量分析(MS)によって確認した化学構造を有している。エスペクタリンは、(−)−エスペクタリンとして、研究室で入手可能なデータと比較することにより同定し、3−O−アセチル−エスペクタリンは、エスペクタリンからの天然の誘導体、(−)−3−O−アセチル−エスペクタリンとして特定化した。
【実施例2】
【0047】
一般式(II)に対応する半合成誘導体のクロルハイドレートの製造
a)2−(R)−メチル−3−(R)−O−t−ブトキシカルボニル−6−(S)−(テトラデシル−13’−オン)−ピペリジンを調製するための合成法
雰囲気下で、15mLの無水CHCl中のエスペクタリン(0.5g;1.54mmol)の溶液に、無水EtNを0.3mL(2.156mmol)加え、撹拌しながら室温で5分間静置した。その後、15mLのCHClに溶解した(BoC)O(369mg;1.694mmol)の溶液を加え、撹拌しながら24時間室温に静置し、これをTLCによりモニターした。次いで、触媒量の4−DMAP及びさらなる100mgの(Boc)Oを加え、さらに4日間、N雰囲気下で撹拌を継続した。
【0048】
出発原料が完全に変換された後、水10mLを加え、続いてCHCl(4×10mL)で抽出した。次いで、有機相を合わせ、2NのHCl水溶液(3×10mL)で、続いて塩水(2×10mL)で洗浄した。次いで、有機相をMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。
【0049】
この未加工生成物を溶離液としてのCHCl/Hex/MeOHを用いる中性Alカラムで精製し、60%収率で、対応するカーバメート副産物と一緒に、所望のカーボネートである3−O−Boc−エスペクタリン280.5mgを得た。
【0050】
この反応生成物は、H及び13CのNMRにより特定化した。3−O−Boc−エスペクタリン誘導体の融点は、57.5〜60℃であった。
【0051】
b)2−(R)−メチル−3−(R)−O−アセチル−6−(S)−(テトラデシル−13’−オン)−ピペリジンクロルハイドレート(LASSBio−767)の調製
一口フラスコ中で、15mgの2−(R)−メチル−3−(R)−0−アセチル−6−(R)−(テトラデシル−13’−オン)−ピペリジン(0.041mmol)を無水ジクロロメタン3mL中に溶解した。キーパー系で、濃HClを加え、次いで、濃HSOをゆっくりと加え、この反応系にHCl(g)を通過させた。出発溶媒濃度を維持するように常にジクロロメタンを加えて、この反応を45分間維持した。終了後、溶媒を蒸発させ、固形物質をフラスコ壁に形成させた。この物質をジクロロメタンに再溶解させ、ロータリーエバボレーターで濃縮した。LASSBio−767が定量的な量で得られ、H及び13CのNMRにより、また物理的化学的データにより特定化した。この水溶性誘導体は、142.8〜147.5℃の融点を示した。
【0052】
同様の実験法をエスペクタリンクロルハイドレート(これは、天然物質(−)−エスペクタリンから定量的量で得られた)の調製に用いた。これをH及び13CのNMRにより、また物理的化学的データにより特定化した。この水溶性誘導体は、149.1〜151.1℃の融点を示した。
【0053】
c)2−(R)−メチル−6−(S)−(テトラデシル−13’−オン)−ピペリジン−3−(R)−オールからのエスペクタリンクロルハイドレート(LASSBio−768)を生産するための合成法
還流冷却器を備えた一口フラスコ中で、375mg(1.15mmol)の2−(R)−メチル−6−(S)−(テトラデシル−13’−オン)−ピペリジン−3−(R)−オールを酢酸エチル10mLに溶解し、続いて4mLの発煙HClを添加した。この反応系を室温で10時間、還流下で4時間保持した。終了後、溶媒を蒸発させ、生成物をメタノール中に再溶解し、無水MgSOで乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させた。真空下で乾燥させた後、化合物LASSBio−768が定量的に得られた。
【0054】
還流冷却器を備えた二口フラスコ中、N雰囲気下で、化合物LASSBio−767(114mg、0.31mmol)を無水クロロホルム5mL中に溶解させた。シリンジを用いて、新しく蒸留して得た塩化アセチル(0.1mL、1.42mmol)を加え、50℃で12時間反応させた。終了後、溶媒を蒸発させ、残渣を真空下で乾燥させたところ、93%収率で化合物LASSBio−767が得られた。
【0055】
d)2−(R)−メチル−3−(R)−O−ter−ブトキシカルボニル−6−(S)−(テトラデシル−13’−オン)−ピペリジンクロルハイドレート(LASSBio−822)を製造するための合成法
LASSBio−767クロルハイドレート製造について記載したのと同じ実験方法を、3−O−Boc−エスペクタリンからのLASSBio−822クロルハイドレートの調製に用いた。誘導体LASSBio−822が定量的な量で得られ、H及び13CのNMRにより特定化した。水溶性誘導体LASSBio−822は、126〜129.5℃の融点を示した。
【0056】
e)(2R,3R,6S)−3−アセトキシ−6−(13−ヒドロキシ−テトラデシル−2−メチル)−ピペリジンクロルハイドレート(LASSBio−783)を製造するための合成法
この誘導体を調製するための実験法は、例えば、室温でのHO中のNaBH反応などのような、この分野のすべての技術者に周知の多数の反応による、単一のカルボニル還元に基づいている。
【実施例3】
【0057】
薬理学的評価
a)抗コリンエステラーゼ活性アッセイ
本発明の化合物の抗コリンエステラーゼ作用は、本明細書中に、いくつかある他の作用の中で特に化合物LASSBio−767、LASSBio−768及びLASSBio−822の結果によって示している。本発明の化合物をラットの脳組織で試験したところ、発現される酵素の主たる形態は(ヒトと同様)、疎水性鎖を介して膜に結合されているT型サブ−ユニットの四量体である(Boschetti,N.;Liao,J.;Brodbeck,U.,「ラット脳由来のアセチルコリンエステラーゼの膜形態は20KDaの疎水性アンカーを含む(The Membrane Form of Acetylcholinesterase From Rat Brain Contains a 20 KDa Hydrophobic Anchor.)」,Neurochem.Res.1994,19,359〜365;Fernandez,H.L.;Moreno,R.D.;Inestrosa,N.C.,「四量体(G4)アセチルコリンエステラーゼ:構造、局在化及び生理学的調節(Tetrameric (G4)Acetylcholinesterase: Structure,Localization,and Physiological Regulation.)」,J.Neurochem.1996,66,1335〜1346)。Ellman比色定量アッセイ(Ellman,G.L.;Courtney,K.D.;Andres,V.;Featherstone,J.;Featherstone,R.M.,「アセチルコリンエステラーゼ活性の新しい迅速比色定量(A New and Rapid Colorimetric Determination of Acetylcholinesterase Activity.)」,Biochem.Pharmacol.1961,7,88〜95)を、ホモゲナイズしたラット脳中のコリンエステラーゼの総活性の測定に適用した。ウィスター系ラットの脳組織を、58.5g/lのNaCl及び0.05%v/vのトリトンX−100を添加した、2%v/vのリン酸ナトリウム緩衝液0.1M(pH7.4)中でホモゲナイズした。ホモゲナイズした混合物の画分(20μL)をpH8のリン酸緩衝液中で10分間抗コリンエステラーゼ化合物とインキュベートした後、5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)を、さらに1mMのアセチルチオコリンヨウ化物(SIGMA、米国)を加えた。この反応は、96ウェルのマイクロプレートで235μL中、室温(22〜25℃)で行い、続いて、5分間、412nmのマイクロプレートリーダー(SpectraMAX 250、Molecular Devices、米国)にかけた。すべての実験で、コリンエステラーゼ非依存性物質の加水分解(非特異的)は、THA20μMで処理した実験群を含むことにより測定した。また、適切な組織及び試薬(em branco)も含んでいた。反応速度は、条件によって3回又は4回繰り返すことで決定した。非特異的加水分解速度を差し引いた後、平均値を算出し、対照(溶媒)に対する相対活性の割合として示した。物質は、少なくとも異なる5種類の濃度で試験した。得られた阻害曲線から、500μMに限定した濃度で、20%〜80%の外側の範囲の値を考慮した。単一部位のモデルに基づいたIC50は、線形回帰によって決定した。結果は、2〜4匹の動物から個別に得られたIC50の平均±SEMとして表し、下記の表1に示した。
【表1】


標準偏差。
**平均値の標準誤差。
【0058】
b)モリス水迷路におけるスコポラミン誘発健忘症の評価
合計39匹のウィスター系ラット(メス−±200g)を用いた。動物を、以下の5つの実験群及び各対照群に分けた:
対照=生理食塩水+生理食塩水−動物11匹
生理食塩水+スコポラミン(1mg/kg)−動物8匹
タクリン(1mg/kg)+スコポラミン(1mg/kg)−動物4匹
LASSBio−767(1mg/kg)+スコポラミン(1mg/kg)−動物4匹
LASSBio−767(3mg/kg)+スコポラミン(1mg/kg)−動物4匹
LASSBio−767(10mg/kg)+スコポラミン(1mg/kg)−動物4匹
LASSBio−822(1mg/kg)+スコポラミン(1mg/kg)−動物4匹。
【0059】
腹腔内第2投与(生理食塩水又はスコポラミン)の30分間後に、不透明な水を入れた円形容器中の水面下プラットフォームを突き止めるように動物を促し(水迷路)、逃避潜時(秒表示)を計算した。動物が150秒でプラットフォームを突き止められなかった場合、20秒間動物をプラットフォームに置き、次いで、水から取り出した。試験は、連続4日間、1日に2回実施した。
【0060】
図1〜4から明らかなように、対照群の動物は、試験の3日目及び4日目に逃避潜時が有意に短縮した。チャレンジの30分前にスコポラミンで処理した場合、動物は課題を学習することができず、逃避潜時は試験4日目に最大値(150秒)に近づく。組成物を注射した結果は、図1〜4に示した。
【0061】
抗コリンエステラーゼ剤のタクリンは、スコポラミン誘発健忘症に拮抗し、この試験の4日目に有意な作用があった。半合成アルカロイドLASSBio−767は、スコポラミン誘発健忘症の回復において、タクリンに対して優れた作用があった。というのは、動物が、スコポラミン(1mg/kg)を投与されたにもかかわらず、対照群として行動する場合、この作用は処理の2日目に気づくことができたからであり、3日目及び4日目には有意性が高くなったからである。また、LASSBio−767組成物の作用も10mg/kgの濃度で認められた。しかし、LASSBio−822アルカロイドは、水迷路試験におけるラットで、スコポラミン誘発健忘症に拮抗することはできなかった。
【0062】
c)阻害回避アッセイにおけるスコポラミン誘発健忘症の評価
合計120匹の成熟オス(25〜30g)スイス系マウスを用いた。電気刺激器(0.6mA/3s)に接続された格子製の底部を備え、木製プラットフォーム(3cm)が入れられてあるボックスから構成されている阻害回避アッセイに、これらの動物を供した。このプラットフォーム上にマウスを置き、動物が格子上に4本の足を置くまでの潜時(秒表示)を計算した。試験の1日目に(「トレーニング」)、動物が格子へステップダウンした場合は常に動物に有害な電気的刺激(0.6mA/3秒)を与えた(ステップダウン潜時−SDL)。この段階では、プラットフォーム上に15秒以上留まる動物は除いた。24時間後、動物をプラットフォーム上に再び誘導し、SDLを計算した(「記憶力」)。
【0063】
マウスは次の6つの実験群に分けた:
対照=生理食塩水+生理食塩水
生理食塩水+スコポラミン(1mg/kg)
LASSBio−767(1mg/kg)+スコポラミン(1mg/kg)
LASSBio−767(10mg/kg)+スコポラミン(1mg/kg)−動物4匹
LASSBio−822(1mg/kg)+スコポラミン(1mg/kg)−動物4匹
LASSBio−822(3mg/kg)+スコポラミン(1mg/kg)−動物4匹。
【0064】
アルカロイドLASSBio−767は、両濃度で、スコポラミン誘発健忘症に対するいかなる作用も示さないことが明らかとなった。しかし、このアッセイでは、半合成アルカロイドLASSBio−822は、スコポラミン誘発健忘症を有意に回復させることができた。またこのアッセイでは、タクリンは、スコポラミンの作用と全く逆であった。このアッセイの結果は図5〜7で確認することができる。
【0065】
d)タクリン及びLASSBio−767により誘発されるコリン作動性副作用の評価
薬剤を腹腔内投与した後の10分及び30分後に、動物(n=10マウス/群)について、オープンフィールド試験における精神運動活性、後脚の側方向、震え、唾液分泌、流涙、下痢、排尿、及び低温症を確認した。また、50%の動物が死亡に至る可能性のあるタクリン濃度(LD50)も確認した。
【0066】
タクリン(10mg/kg)投与後、70%のマウスに下痢及び排尿が認められた。さらに、この濃度のタクリンで低温症が生じ、運動活性が低下した。30mg/kgを超える濃度でタクリンを投与した後は、チェックしたすべてのパラメーターが変化した。
【0067】
マウスとは別に、ラットについて、1mg/kg(n=4)のタクリン、LASSBio−767(n=12)及び生理食塩水(n=12)、並びに生理食塩水(n=12)を投与してから30分後に確認した。タクリンで処理された動物だけが、投与30分後に下痢を示し、この症状は100%の動物で認められた。このアッセイの結果は、図8〜9で確認することができる。
【0068】
LASSBio−767及びLASSBio−822は、タクリンと比較した場合、低濃度で、学習及び記憶の異なるモデルにおいてスコポラミン誘発健忘症を回復させることができた。一方、LASSBio−767(10mg/kg)では、コリン作動性副作用及び運動活性における障害は認められなかったが、タクリンではそれらが認められた。本発明者らの研究では、タクリンの治療濃度域は、狭すぎることが分かった。これらの結果は、アルツハイマー病治療及び記憶欠失症状に随伴する他の病状において、研究したこれらの化合物に有望な機能があることを示唆している。これらの化合物は、今日用いられている臨床上の薬剤に比べて、優れた効果及び安全性を有しているものと考えられる。
【0069】
図1は、水迷路試験におけるスコポラミン誘発健忘症の回復でのタクリン(1mg/kg)の作用を示す。ヒストグラムは、対照群(−μ−)、スコポラミン(−λ−)及びタクリン+スコポラミン(−◇−)の試験期間4日間における逃避潜時(秒表示)を示す。各種値は、平均及び標準偏差として表した;p<0.05;**p<0.01 Mann−Whitney試験。
図2は、水迷路試験におけるスコポラミン誘発健忘症の回復での1mg/kg濃度の半合成アルカロイドLASSBio−767の作用を示す。ヒストグラムは、対照群(−μ−)、スコポラミン(−λ−)及びLASSBio−767+スコポラミン(−◇−)の試験期間4日間における逃避潜時(秒表示)を示す。各種値は、平均及び標準偏差として表した;p<0.05;**p<0.01 Mann−Whitney試験。
図3は、水迷路試験におけるスコポラミン誘発健忘症の回復での10mg/kg濃度の半合成アルカロイドLASSBio−767の作用を示す。ヒストグラムは、対照群(−μ−)、スコポラミン(−λ−)及びLASSBio−767+スコポラミン(−◇−)の試験期間4日間における逃避潜時(秒表示)を示す。各種値は、平均及び標準偏差として表した;p<0.05;**p<0.01 Mann−Whitney試験。
図4は、水迷路試験におけるスコポラミン誘発健忘症の回復での1mg/kg濃度の半合成アルカロイドLASSBio−822の作用を示す。ヒストグラムは、対照群(−μ−)、スコポラミン(−λ−)及びLASSBio−822+スコポラミン(−◇−)の試験期間4日間における逃避潜時(秒表示)を示す。p<0.05;**p<0.01 Mann−Whitney試験。
図5は、阻害回避アッセイにおけるマウスのスコポラミン誘発健忘症の回復での1mg/kg及び10mg/kg濃度の半合成アルカロイドLASSBio−767の効果不十分を示す。示した潜時は、第1の試験日(トレーニング)から第2の試験の日(記憶力)である。LASSBio−767で処理した動物は、スコポラミンでのみ処理した動物とは違わないことに注目されたい。各種値は、平均及び標準偏差として表した。
図6は、阻害回避アッセイにおけるマウスでのスコポラミン誘発健忘症の回復での1mg/kg及び3mg/kg濃度のアルカロイドLASSBio−822の作用を示す。示した潜時は、第1の試験日(トレーニング)から第2の試験の日(記憶力)である。LASSBio−822で事前処理した動物はスコポラミン誘発健忘症の有意な部分回復を示すことに注目されたい。各種値は、平均及び標準偏差として表した;p<0.05;**p<0.01 Mann−Whitney試験。
図7は、阻害回避アッセイにおける誘発健忘症の回復での5.6mg/kg濃度のタクリンの作用を示す。示した潜時は、第1の試験日(トレーニング)から第2の試験の日(記憶力)である。タクリンで事前処理した動物がスコポラミン誘発健忘症の完全回復を示すことに注目されたい。各種値は、平均及び標準偏差として表した;***p<0.001 Mann−Whitney試験。
図8は、タクリンに関するLD50試験を示す。ヒストグラムは、異なる濃度のタクリンを投与した後、10〜30分後に死亡したマウスの割合を示す。
図9は、投与の10〜30分間後に、生理食塩水(白色)、LASSBio−767(斜線)、タクリン10mg/kg(灰白色)、タクリン30mg/kg(灰黒色)及びタクリン50mg/kg(黒色)の投与により誘発したコリン作動性の副作用を示す。各種値は、平均及び標準偏差として表した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】


(式中、
nは、2〜16の整数に対応し、
は、水素、アシル、アルキル、アルコキシル、シクロアルキル;フリル、チオフェニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリル、チアゾリル、キナゾリル、イソキノリル又はフェニル−Wであり;
この場合、Wは、水素、オルト−アルキル、オルト−シクロアルキル、オルト−アルコキシル、オルト−シクロアルコキシル、オルト−チオキシ、オルト−アリールオキシ、オルト−スルホン、オルト−スルフィド、オルト−スルホキシド、オルト−スルホネート、オルト−スルホンアミド、オルト−アミノ、オルト−アミド、オルト−ハロ、オルト−カルボアルコキシ、オルト−カルボチオアルコキシ、オルト−トリハロアルカン、オルト−シアノ、オルト−ニトロ、メタ−アルキル、メタ−シクロアルキル、メタ−アルコキシル、メタ−シクロアルコキシル、メタ−チオキシ、メタ−アリールオキシ、メタ−スルホン、メタ−スルフィド、メタ−スルホキシド、メタ−スルホネート、メタ−スルホンアミド、メタ−アミノ、メタ−アミド、メタ−ハロ、メタ−カルボアルコキシ、メタ−カルボチオアルコキシ、メタ−トリハロアルカン、メタ−シアノ、メタ−ニトロ、パラ−アルキル、パラ−シクロアルキル、パラ−アルコキシル、パラ−シクロアルコキシル、パラ−チオキシ、パラ−アリールオキシ、パラ−スルホン、パラ−スルフィド、パラ−スルホキシド、パラ−スルホネート、パラ−スルホンアミド、パラ−アミノ、パラ−アミド、パラ−ハロ、パラ−カルボアルコキシ、パラ−カルボチオアルコキシ、パラ−トリハロアルカン、パラ−シアノ又はパラ−ニトロである)
又はその薬剤として許容可能な塩を表すことを特徴とする、ピペリジン誘導体、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤及び/又はそのアイソフォーム。
【請求項2】
一般式(II):
【化2】


(式中、
nは、2〜16の整数に対応し、
は、水素、アシル、アルキル、アルコキシル、シクロアルキル;フリル、チオフェニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリル、チアゾリル、キナゾリル、イソキノリル又はフェニル−Wであり;
この場合、Wは、水素、オルト−アルキル、オルト−シクロアルキル、オルト−アルコキシル、オルト−シクロアルコキシル、オルト−チオキシ、オルト−アリールオキシ、オルト−スルホン、オルト−スルフィド、オルト−スルホキシド、オルト−スルホネート、オルト−スルホンアミド、オルト−アミノ、オルト−アミド、オルト−ハロ、オルト−カルボアルコキシ、オルト−カルボチオアルコキシ、オルト−トリハロアルカン、オルト−シアノ、オルト−ニトロ、メタ−アルキル、メタ−シクロアルキル、メタ−アルコキシル、メタ−シクロアルコキシル、メタ−チオキシ、メタ−アリールオキシ、メタ−スルホン、メタ−スルフィド、メタ−スルホキシド、メタ−スルホネート、メタ−スルホンアミド、メタ−アミノ、メタ−アミド、メタ−ハロ、メタ−カルボアルコキシ、メタ−カルボチオアルコキシ、メタ−トリハロアルカン、メタ−シアノ、メタ−ニトロ、パラ−アルキル、パラ−シクロアルキル、パラ−アルコキシル、パラ−シクロアルコキシル、パラ−チオキシ、パラ−アリールオキシ、パラ−スルホン、パラ−スルフィド、パラ−スルホキシド、パラ−スルホネート、パラ−スルホンアミド、パラ−アミノ、パラ−アミド、パラ−ハロ、パラ−カルボアルコキシ、パラ−カルボチオアルコキシ、パラ−トリハロアルカン、パラ−シアノ又はパラ−ニトロであり、
は、水素又は1〜9個の炭素原子を有するアルキルのいずれかであり、
Xはハロゲンである)
又はその薬剤として許容可能な塩を表すことを特徴とする、ピペリジン誘導体、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤及び/又はそのアイソフォーム。
【請求項3】
一般式(III):
【化3】


(式中、
nは、2〜16の整数に対応し、
は、水素、アシル、アルキル、アルコキシル、シクロアルキル;フリル、チオフェニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリル、チアゾリル、キナゾリル、イソキノリル又はフェニル−Wであり;
この場合、Wは、水素、オルト−アルキル、オルト−シクロアルキル、オルト−アルコキシル、オルト−シクロアルコキシル、オルト−チオキシ、オルト−アリールオキシ、オルト−スルホン、オルト−スルフィド、オルト−スルホキシド、オルト−スルホネート、オルト−スルホンアミド、オルト−アミノ、オルト−アミド、オルト−ハロ、オルト−カルボアルコキシ、オルト−カルボチオアルコキシ、オルト−トリハロアルカン、オルト−シアノ、オルト−ニトロ、メタ−アルキル、メタ−シクロアルキル、メタ−アルコキシル、メタ−シクロアルコキシル、メタ−チオキシ、メタ−アリールオキシ、メタ−スルホン、メタ−スルフィド、メタ−スルホキシド、メタ−スルホネート、メタ−スルホンアミド、メタ−アミノ、メタ−アミド、メタ−ハロ、メタ−カルボアルコキシ、メタ−カルボチオアルコキシ、メタ−トリハロアルカン、メタ−シアノ、メタ−ニトロ、パラ−アルキル、パラ−シクロアルキル、パラ−アルコキシル、パラ−シクロアルコキシル、パラ−チオキシ、パラ−アリールオキシ、パラ−スルホン、パラ−スルフィド、パラ−スルホキシド、パラ−スルホネート、パラ−スルホンアミド、パラ−アミノ、パラ−アミド、パラ−ハロ、パラ−カルボアルコキシ、パラ−カルボチオアルコキシ、パラ−トリハロアルカン、パラ−シアノ又はパラ−ニトロであり、
は、水素又は1〜9個の炭素原子を有するアルキルのいずれかであり、
Xはハロゲンである)
又はその薬剤として許容可能な塩を表すことを特徴とする、ピペリジン誘導体、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤及び/又はそのアイソフォーム。
【請求項4】
がアセチルであり、Rが水素であり、Xが塩素であり、nが9に等しいことを特徴とする、請求項2記載のピペリジン誘導体。
【請求項5】
が水素であり、Rが水素であり、Xが塩素であり、nが9に等しいことを特徴とする、請求項2記載のピペリジン誘導体。
【請求項6】
がt−ブトキシカルボニルであり、Rが水素であり、Xが塩素であり、nが9に等しいことを特徴とする、請求項2記載のピペリジン誘導体。
【請求項7】
がアセチルであり、Rがメチルであり、Xがヨウ素であり、nが9に等しいことを特徴とする、請求項2記載のピペリジン誘導体。
【請求項8】
がアセチルであり、Rが水素であり、Xが塩素であり、nが9に等しいことを特徴とする、請求項3記載のピペリジン誘導体。
【請求項9】
薬剤として許容可能なビヒクル及び少なくとも1種の一般式(I):
【化4】


(式中、
nは、2〜16の整数に対応し、
は、水素、アシル、アルキル、アルコキシル、シクロアルキル;フリル、チオフェニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリル、チアゾリル、キナゾリル、イソキノリル又はフェニル−Wであり;
この場合、Wは、水素、オルト−アルキル、オルト−シクロアルキル、オルト−アルコキシル、オルト−シクロアルコキシル、オルト−チオキシ、オルト−アリールオキシ、オルト−スルホン、オルト−スルフィド、オルト−スルホキシド、オルト−スルホネート、オルト−スルホンアミド、オルト−アミノ、オルト−アミド、オルト−ハロ、オルト−カルボアルコキシ、オルト−カルボチオアルコキシ、オルト−トリハロアルカン、オルト−シアノ、オルト−ニトロ、メタ−アルキル、メタ−シクロアルキル、メタ−アルコキシル、メタ−シクロアルコキシル、メタ−チオキシ、メタ−アリールオキシ、メタ−スルホン、メタ−スルフィド、メタ−スルホキシド、メタ−スルホネート、メタ−スルホンアミド、メタ−アミノ、メタ−アミド、メタ−ハロ、メタ−カルボアルコキシ、メタ−カルボチオアルコキシ、メタ−トリハロアルカン、メタ−シアノ、メタ−ニトロ、パラ−アルキル、パラ−シクロアルキル、パラ−アルコキシル、パラ−シクロアルコキシル、パラ−チオキシ、パラ−アリールオキシ、パラ−スルホン、パラ−スルフィド、パラ−スルホキシド、パラ−スルホネート、パラ−スルホンアミド、パラ−アミノ、パラ−アミド、パラ−ハロ、パラ−カルボアルコキシ、パラ−カルボチオアルコキシ、パラ−トリハロアルカン、パラ−シアノ又はパラ−ニトロである)
の化合物又はその製剤として許容可能な塩を含むことを特徴とする、コリン作動性伝達に関連した病状を治療するための薬剤組成物。
【請求項10】
製剤として許容可能なビヒクル及び少なくとも1種の一般式(II):
【化5】


(式中、
nは、2〜16の整数に対応し、
は、水素、アシル、アルキル、アルコキシル、シクロアルキル;フリル、チオフェニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリル、チアゾリル、キナゾリル、イソキノリル又はフェニル−Wであり;
この場合、Wは、水素、オルト−アルキル、オルト−シクロアルキル、オルト−アルコキシル、オルト−シクロアルコキシル、オルト−チオキシ、オルト−アリールオキシ、オルト−スルホン、オルト−スルフィド、オルト−スルホキシド、オルト−スルホネート、オルト−スルホンアミド、オルト−アミノ、オルト−アミド、オルト−ハロ、オルト−カルボアルコキシ、オルト−カルボチオアルコキシ、オルト−トリハロアルカン、オルト−シアノ、オルト−ニトロ、メタ−アルキル、メタ−シクロアルキル、メタ−アルコキシル、メタ−シクロアルコキシル、メタ−チオキシ、メタ−アリールオキシ、メタ−スルホン、メタ−スルフィド、メタ−スルホキシド、メタ−スルホネート、メタ−スルホンアミド、メタ−アミノ、メタ−アミド、メタ−ハロ、メタ−カルボアルコキシ、メタ−カルボチオアルコキシ、メタ−トリハロアルカン、メタ−シアノ、メタ−ニトロ、パラ−アルキル、パラ−シクロアルキル、パラ−アルコキシル、パラ−シクロアルコキシル、パラ−チオキシ、パラ−アリールオキシ、パラ−スルホン、パラ−スルフィド、パラ−スルホキシド、パラ−スルホネート、パラ−スルホンアミド、パラ−アミノ、パラ−アミド、パラ−ハロ、パラ−カルボアルコキシ、パラ−カルボチオアルコキシ、パラ−トリハロアルカン、パラ−シアノ又はパラ−ニトロであり、
は、水素又は1〜9個の炭素原子を有するアルキルのいずれかであり、
Xはハロゲンである)
の化合物又はその製剤として許容可能な塩を含むことを特徴とする、コリン作動性伝達に関連した病状を治療するための薬剤組成物。
【請求項11】
製剤として許容可能なビヒクル及び少なくとも1種の一般式(III):
【化6】


(式中、
nは、2〜16の整数に対応し、
は、水素、アシル、アルキル、アルコキシル、シクロアルキル;フリル、チオフェニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリル、チアゾリル、キナゾリル、イソキノリル又はフェニル−Wであり;
この場合、Wは、水素、オルト−アルキル、オルト−シクロアルキル、オルト−アルコキシル、オルト−シクロアルコキシル、オルト−チオキシ、オルト−アリールオキシ、オルト−スルホン、オルト−スルフィド、オルト−スルホキシド、オルト−スルホネート、オルト−スルホンアミド、オルト−アミノ、オルト−アミド、オルト−ハロ、オルト−カルボアルコキシ、オルト−カルボチオアルコキシ、オルト−トリハロアルカン、オルト−シアノ、オルト−ニトロ、メタ−アルキル、メタ−シクロアルキル、メタ−アルコキシル、メタ−シクロアルコキシル、メタ−チオキシ、メタ−アリールオキシ、メタ−スルホン、メタ−スルフィド、メタ−スルホキシド、メタ−スルホネート、メタ−スルホンアミド、メタ−アミノ、メタ−アミド、メタ−ハロ、メタ−カルボアルコキシ、メタ−カルボチオアルコキシ、メタ−トリハロアルカン、メタ−シアノ、メタ−ニトロ、パラ−アルキル、パラ−シクロアルキル、パラ−アルコキシル、パラ−シクロアルコキシル、パラ−チオキシ、パラ−アリールオキシ、パラ−スルホン、パラ−スルフィド、パラ−スルホキシド、パラ−スルホネート、パラ−スルホンアミド、パラ−アミノ、パラ−アミド、パラ−ハロ、パラ−カルボアルコキシ、パラ−カルボチオアルコキシ、パラ−トリハロアルカン、パラ−シアノ又はパラ−ニトロであり、
は、水素又は1〜9個の炭素原子を有するアルキルのいずれかであり、
Xはハロゲンである)
の化合物又はその製剤として許容可能な塩を含むことを特徴とする、コリン作動性伝達に関連した病状を治療するための薬剤組成物。
【請求項12】
がアセチルであり、Rが水素であり、Xが塩素であり、nが9に等しいことを特徴とする、請求項10記載の薬剤組成物。
【請求項13】
が水素であり、Rが水素であり、Xが塩素であり、nが9に等しいことを特徴とする、請求項10記載の薬剤組成物。
【請求項14】
がt−ブトキシカルボニルであり、Rが水素であり、Xが塩素であり、nが9に等しいことを特徴とする、請求項10記載の薬剤組成物。
【請求項15】
がアセチルであり、Rがメチルであり、Xがヨウ素であり、nが9に等しいことを特徴とする、請求項10記載の薬剤組成物。
【請求項16】
がアセチルであり、Rが水素であり、Xが塩素であり、nが9に等しいことを特徴とする、請求項11記載の薬剤組成物。
【請求項17】
コリン作動性伝達に関連した病状が記憶機能不全であることを特徴とする、請求項9〜16のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項18】
記憶機能不全がアルツハイマー病であることを特徴とする、請求項17記載の薬剤組成物。
【請求項19】
コリン作動性伝達に関連した病状がパーキンソン病であることを特徴とする、請求項9〜16のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項20】
コリン作動性伝達に関連した病状が重症筋無力症であることを特徴とする、請求項9〜16のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項21】
コリン作動性伝達に関連した病状が、CNS作用物質による中毒によるものであることを特徴とする、請求項9〜16のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項22】
カッシア(Cassia)属の植物の花及び/又は芽のアルコール抽出及び/又は水性アルコール抽出の少なくとも1つのステップを含むことを特徴とする、一般式(I):
【化7】


(式中、
nは、2〜16の整数に対応し、
は、水素、アシル、アルキル、アルコキシル、シクロアルキル;フリル、チオフェニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリル、チアゾリル、キナゾリル、イソキノリル又はフェニル−Wであり;
この場合、Wは、水素、オルト−アルキル、オルト−シクロアルキル、オルト−アルコキシル、オルト−シクロアルコキシル、オルト−チオキシ、オルト−アリールオキシ、オルト−スルホン、オルト−スルフィド、オルト−スルホキシド、オルト−スルホネート、オルト−スルホンアミド、オルト−アミノ、オルト−アミド、オルト−ハロ、オルト−カルボアルコキシ、オルト−カルボチオアルコキシ、オルト−トリハロアルカン、オルト−シアノ、オルト−ニトロ、メタ−アルキル、メタ−シクロアルキル、メタ−アルコキシル、メタ−シクロアルコキシル、メタ−チオキシ、メタ−アリールオキシ、メタ−スルホン、メタ−スルフィド、メタ−スルホキシド、メタ−スルホネート、メタ−スルホンアミド、メタ−アミノ、メタ−アミド、メタ−ハロ、メタ−カルボアルコキシ、メタ−カルボチオアルコキシ、メタ−トリハロアルカン、メタ−シアノ、メタ−ニトロ、パラ−アルキル、パラ−シクロアルキル、パラ−アルコキシル、パラ−シクロアルコキシル、パラ−チオキシ、パラ−アリールオキシ、パラ−スルホン、パラ−スルフィド、パラ−スルホキシド、パラ−スルホネート、パラ−スルホンアミド、パラ−アミノ、パラ−アミド、パラ−ハロ、パラ−カルボアルコキシ、パラ−カルボチオアルコキシ、パラ−トリハロアルカン、パラ−シアノ又はパラ−ニトロである)
のピペラジン誘導体又はその製剤として許容可能な塩の調製方法。
【請求項23】
言及したピペリジン誘導体がC.スペクタビリス(C.spectabilis)種の植物から得られることを特徴とする、請求項22記載の方法。
【請求項24】
以下のステップ:
濃縮;
濾過;
液−液抽出;
アルカリ化;
カラムクロマトグラフィー分別化;及び
上記ステップの任意の組合せ
の少なくとも1つをさらに含むことを特徴とする、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
各出発化合物を強酸による酸性化反応に供することを特徴とする、一般式(II):
【化8】


(式中、
nは、2〜16の整数に対応し、
は、水素、アシル、アルキル、アルコキシル、シクロアルキル;フリル、チオフェニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリル、チアゾリル、キナゾリル、イソキノリル又はフェニル−Wであり;
この場合、Wは、水素、オルト−アルキル、オルト−シクロアルキル、オルト−アルコキシル、オルト−シクロアルコキシル、オルト−チオキシ、オルト−アリールオキシ、オルト−スルホン、オルト−スルフィド、オルト−スルホキシド、オルト−スルホネート、オルト−スルホンアミド、オルト−アミノ、オルト−アミド、オルト−ハロ、オルト−カルボアルコキシ、オルト−カルボチオアルコキシ、オルト−トリハロアルカン、オルト−シアノ、オルト−ニトロ、メタ−アルキル、メタ−シクロアルキル、メタ−アルコキシル、メタ−シクロアルコキシル、メタ−チオキシ、メタ−アリールオキシ、メタ−スルホン、メタ−スルフィド、メタ−スルホキシド、メタ−スルホネート、メタ−スルホンアミド、メタ−アミノ、メタ−アミド、メタ−ハロ、メタ−カルボアルコキシ、メタ−カルボチオアルコキシ、メタ−トリハロアルカン、メタ−シアノ、メタ−ニトロ、パラ−アルキル、パラ−シクロアルキル、パラ−アルコキシル、パラ−シクロアルコキシル、パラ−チオキシ、パラ−アリールオキシ、パラ−スルホン、パラ−スルフィド、パラ−スルホキシド、パラ−スルホネート、パラ−スルホンアミド、パラ−アミノ、パラ−アミド、パラ−ハロ、パラ−カルボアルコキシ、パラ−カルボチオアルコキシ、パラ−トリハロアルカン、パラ−シアノ又はパラ−ニトロであり、
は、水素又は1〜9個の炭素原子を有するアルキルのいずれかであり、
Xはハロゲンである)
のピペリジン誘導体又はその薬剤として許容可能な塩の調製方法。
【請求項26】
言及した強酸が塩酸であることを特徴とする、請求項25記載の方法。
【請求項27】
がアセチルであり、Rが水素であり、Xが塩素であり、nが9に等しいことを特徴とする、請求項26記載の方法。
【請求項28】
が水素であり、Rが水素であり、Xが塩素であり、nが9に等しいことを特徴とする、請求項26記載の方法。
【請求項29】
がt−ブトキシカルボニルであり、Rが水素であり、Xが塩素であり、nが9に等しいことを特徴とする、請求項26記載の方法。
【請求項30】
がアセチルであり、Rがメチルであり、Xがヨウ素であり、nが9に等しいことを特徴とする、請求項26記載の方法。
【請求項31】
各出発化合物を還元反応に供することを特徴とする、一般式(III):
【化9】


(式中、
nは、2〜16の整数に対応し、
は、水素、アシル、アルキル、アルコキシル、シクロアルキル;フリル、チオフェニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリル、チアゾリル、キナゾリル、イソキノリル又はフェニル−Wであり;
この場合、Wは、水素、オルト−アルキル、オルト−シクロアルキル、オルト−アルコキシル、オルト−シクロアルコキシル、オルト−チオキシ、オルト−アリールオキシ、オルト−スルホン、オルト−スルフィド、オルト−スルホキシド、オルト−スルホネート、オルト−スルホンアミド、オルト−アミノ、オルト−アミド、オルト−ハロ、オルト−カルボアルコキシ、オルト−カルボチオアルコキシ、オルト−トリハロアルカン、オルト−シアノ、オルト−ニトロ、メタ−アルキル、メタ−シクロアルキル、メタ−アルコキシル、メタ−シクロアルコキシル、メタ−チオキシ、メタ−アリールオキシ、メタ−スルホン、メタ−スルフィド、メタ−スルホキシド、メタ−スルホネート、メタ−スルホンアミド、メタ−アミノ、メタ−アミド、メタ−ハロ、メタ−カルボアルコキシ、メタ−カルボチオアルコキシ、メタ−トリハロアルカン、メタ−シアノ、メタ−ニトロ、パラ−アルキル、パラ−シクロアルキル、パラ−アルコキシル、パラ−シクロアルコキシル、パラ−チオキシ、パラ−アリールオキシ、パラ−スルホン、パラ−スルフィド、パラ−スルホキシド、パラ−スルホネート、パラ−スルホンアミド、パラ−アミノ、パラ−アミド、パラ−ハロ、パラ−カルボアルコキシ、パラ−カルボチオアルコキシ、パラ−トリハロアルカン、パラ−シアノ又はパラ−ニトロであり、
は、水素又は1〜9個の炭素原子を有するアルキルのいずれかであり、
Xはハロゲンである)
のピペリジン誘導体又はその薬剤として許容可能な塩の調製方法。
【請求項32】
還元剤をNaBH/HO、エタノールに溶解したナトリウム、LiAlH、H及びその混合物から選択することを特徴とする、請求項31記載の方法。
【請求項33】
がアセチルであり、Rが水素であり、Xが塩素であり、nが9に等しいことを特徴とする、請求項32記載の方法。

【公表番号】特表2008−515932(P2008−515932A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535956(P2007−535956)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【国際出願番号】PCT/BR2004/000202
【国際公開番号】WO2006/039767
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(505123789)ユニベルシダデ フェデラル ド リオ デ ジャネイロ (2)
【出願人】(507123800)ユニベルシダデ エスタドゥアル パウリスタ − ウネスプ (1)
【Fターム(参考)】