説明

ピラートリムの取付構造

【課題】リヤパッケージトリム及び後部ピラーにピラートリムを取り付ける際に、座部の基端近傍が破損したり、当該座部近傍のピラートリムが白化したりしないようにする。
【解決手段】リヤパッケージトリム7の両側端縁に、略矩形状の第4挿入口37を有する板状フランジ部29を一体に上方に向けて突設する。ピラートリム本体11の下端裏面に、座部47を車外側に向けて一体に突設する。座部47の先端下部に、基端側にスリット51が貫通形成された板状の係止突起49を、ピラートリム本体11裏面と間隙Sを有して車体後方に延びるように一体に突設する。係止突起49は、リヤパッケージトリム7の第4挿入口37に車内側から挿入係止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のリヤパッケージトリム及び後部ピラーにピラートリムを取り付けるピラートリムの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動車の車幅方向両サイドの後部ピラーにピラートリムを取り付けた状態で、該ピラートリムの下端縁にリヤパッケージトリムの車幅方向両側端縁をそれぞれ取り付けるようにしたピラートリムの取付構造が開示されている。
【0003】
一方、車幅方向両サイドの後部ピラーにリヤパッケージトリムの車幅方向両側端縁をそれぞれ取り付けた状態で、該リヤパッケージトリム及び後部ピラーにピラートリムを取り付ける場合もある。
【特許文献1】特許第3632787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記後者の場合において、リヤパッケージトリムの両側端縁に、略矩形状の挿入口を有する板状フランジ部を一体に上方に向けて突設するとともに、ピラートリム本体の下端裏面に、板状の係止突起を該ピラートリム本体裏面と間隙を有して車体後方に延びるように座部を介して一体に突設した構成として、次のようにしてリヤパッケージトリム及び後部ピラーにピラートリムを取り付ける。
【0005】
まず、上記係止突起を上記フランジ部の挿入口に車内側から挿入係止することによりピラートリムの下端縁をリヤパッケージトリムに取り付ける。次いで、ピラートリムの上方部位を車外側に押圧することにより後部ピラーに近付け、ピラートリムの係止部を後部ピラーの被係止部に係止させる。
【0006】
しかし、このような取付構造では、係止突起を挿入口に挿入係止した状態で、座部の先端上部がフランジ部の挿入口上縁の上面に当接しているため、ピラートリムの上方部位が車外側に押圧されると、フランジ部の挿入口下縁が係止突起の基端側下部に圧接して、係止突起の基端側に上下方向の圧縮力が作用する。このとき、該圧縮力が座部の基端近傍に伝わって、座部の基端近傍が破損したり、該座部の基端近傍のピラートリム表面が白化して見栄えを悪くするおそれがある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、リヤパッケージトリム及び後部ピラーにピラートリムを取り付ける際に、係止突起が形成されている座部近傍のピラートリムが白化したり、座部や係止突起の基端が破損しないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、ピラートリムの係止突起の基端側を圧縮変形させるようにしたことを特徴とする。
【0009】
具体的には、本発明は、車体に取り付けられた樹脂製リヤパッケージトリムに樹脂製ピラートリムの下端縁を取り付けた状態で、該下端縁よりも上方部位の係止部を後部ピラーの被係止部に係止させて当該上方部位を後部ピラーに取り付けるピラートリムの取付構造を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0010】
すなわち、本発明は、上記リヤパッケージトリムの車体前後方向に延びる車幅方向側端縁には、略矩形状の挿入口を有する板状フランジ部が一体に上方に向けて突設され、一方、上記ピラートリムは、下端裏面に座部が車外側に向けて一体に突設され、上記後部ピラーを車内側から覆うピラートリム本体を備え、上記座部の先端下部には、リヤパッケージトリムの上記フランジ部の挿入口に車内側から挿入係止され、基端側にスリットが貫通形成された板状の係止突起が上記ピラートリム本体裏面と間隙を有して車体後方に延びるように一体に突設され、上記フランジ部の挿入口に上記ピラートリムの係止突起を車内側から挿入係止させるとともに、上記座部の先端上部を上記挿入口上縁の上面に車内側から当接させることにより、上記ピラートリムの下端縁を上記リヤパッケージトリムに取り付け、この状態で、上記ピラートリムの上方を車外側に押圧することにより、上記係止突起の基端側を上記スリットの上下幅を狭めるように圧縮変形させるとともに、上記ピラートリムの上方部位を上記後部ピラーに近付け、ピラートリムの上記係止部を上記後部ピラーの被係止部に係止させるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ピラートリム本体の下端縁をリヤパッケージトリムに取り付けた状態でピラートリムの上方が車外側に押圧されてフランジ部の挿入口下縁が係止突起の基端側下部に圧接すると、係止突起の基端側が上下方向に圧縮されてスリットの上下幅が狭まり、係止突起にかかる圧縮力が当該圧縮変形によって吸収される。したがって、過剰な圧縮力が座部の基端近傍に伝わらず、座部や係止突起の基端近傍が破損するのを防止できるとともに、座部の基端近傍のピラートリム表面が白化するのを防止できるので、当該表面の見栄えの悪化を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、自動車の車室1内部右側後方を示す。同図に示すように、後部座席3のヘッドレスト5後方には、樹脂製リヤパッケージトリム7が配設されている。該リヤパッケージトリム7は、下端部が車体(図示せず)に取り付けられている。図2において、リヤパッケージトリム7の車幅方向両サイドには、一対の金属製後部ピラー9が車体前方に向かって上方に傾斜するように配設されている。また、リヤパッケージトリム7の略車体前後方向に延びる車幅方向両側端縁には、図1に示すように、樹脂製ピラートリム13の下端縁が取り付けられている。該ピラートリム13は、上記後部ピラー9を車内側から被う略への字形板状ピラートリム本体11を備え、該ピラートリム本体11の車体前側下端縁には、樹脂製サイドトリム17の上端縁が取り付けられている。また、上記リヤパッケージトリム7及びピラートリム13の後端縁に対応する車体には、車体前方に向かって上方に傾斜するリヤウインド19が配設されている。
【0014】
上記リヤパッケージトリム7は、図2に示すように、車幅方向に略水平に延びる略矩形板状のリヤパッケージトリム本体21を備え、該リヤパッケージトリム本体21の車幅方向両側端縁には、板面を車体左右方向に向けた板状フランジ部29が上方に向けて一体に突設されている。上記リヤパッケージトリム本体21には、シートベルト25が挿通されるスリット状のシートベルト挿通孔27が、上記フランジ部29前端近傍から車幅方向内側に延びるように形成されている。
【0015】
上記フランジ部29には、車体前方側から順に、上方に開放した第1挿入口31、略矩形状の第2挿入口33、上記第2挿入口33よりも上下方向に幅が大きい略矩形状の第3挿入口35、及び上記第3挿入口35よりも上下方向に幅が大きい略矩形状の第4挿入口37が形成されている。上記各挿入口31、33、35、37は、車幅方向に貫通形成されている。上記第4挿入口37の車体前後方向中程上縁は、車体後方に向かって下方に傾斜する傾斜縁部37aを構成し、該傾斜縁部37aより車体前側の部分(以下、前側部分37bと呼ぶ)は、傾斜縁部37aより車体後側の部分(以下、後側部分37cと呼ぶ)よりも上下方向の幅が大きくなっている。なお、上記第1挿入口31は上記シートベルト挿通孔27に連通している。また、上記フランジ部29の上記第3挿入口35近傍を除く突出端縁には、図5に示すように、周リブ29aが車外側に突設され、上記第3挿入口35の車体前後及び上方の側縁には、周リブ29bが車外側に突設されている。
【0016】
また、上記リヤパッケージトリム本体21の車幅方向両側端縁には、上記第2挿入口33に連続する矩形状の第1切欠部21a及び上記第3挿入口35に連続する矩形状の第2切欠部21bが形成されている。
【0017】
上記ピラートリム13のピラートリム本体11の車体後側下端縁には、板状下縁突条部39が車外側に向かって略一定の突出寸法で連続して一体に突設されている。
【0018】
上記ピラートリム13の下縁突条部39には、図3〜5に示すように、板状第1挿入突起41が、上記リヤパッケージトリム7の第1挿入口31に対応するように車外側に向かって一体に突設されている。
【0019】
また、下縁突条部39には、図3〜5及び図8に示すように、略三角形状の板状第2挿入突起43が、上記リヤパッケージトリム7の第2挿入口33に対応するように車外側に向かって一体に突設されている。
【0020】
また、ピラートリム本体11の下端裏面には、図3〜5及び図7に示すように、第3挿入突起45が、上記リヤパッケージトリム7の第3挿入口35に対応するように突設されている。第3挿入突起45は、下縁突条部39に突設された矩形状の第1板部45a、及び該第1板部45aの上側に該第1板部45aと略平行に突設された矩形状の第2板部45bを備え、第1板部45aと第2板部45bとは、ピラートリム本体11裏面に突設された1対の板状壁部45cによって両サイドで連結されてボックス状に形成されている。
【0021】
さらに、ピラートリム本体11の下端裏面の車体後方端部近傍における上記リヤパッケージトリム7の第4挿入口37に対応する箇所には、図4〜図6に示すように、板面を略車体前後方向に向けた板状の座部47が車外側に向けて一体に突設されている。該座部47の先端下部47aには、図3〜図6に示すように、上記リヤパッケージトリム7のフランジ部29の上記第4挿入口37に車内側から挿入係止される板状の係止突起49が、平面視略L字状に一体に突設されている。該係止突起49は、基端寄りに屈曲部50を有し、該屈曲部50より先端側が上記ピラートリム本体11裏面と間隙Sを有して車体後方に延びている。詳しくは、係止突起49の屈曲部50より基端側は、板面を上記座部47と同じ方向に向けた基端部49aで構成され、屈曲部50より先端側は、板面が屈曲部50から車体後方に向かって上記ピラートリム本体11裏面から徐々に離れるように延びる中間部49bと、該中間部49bの反屈曲部50側端縁から車体後方に向かって上記中間部49bよりも急勾配で板面が上記ピラートリム本体11裏面から離れるように延びる先端部49cとで構成されている。また、上記係止突起49の基端側(基端側板面)には、上記屈曲部50をまたがるように(基端部49aから中間部49bに亘って)スリット51が略L字状に貫通形成されている。また、上記係止突起49の車外側(反ピラートリム本体11側)の面の上縁近傍には、板状の上側補強用リブ55が、上記屈曲部50から先端近傍にかけて一体に突設されている。一方、上記係止突起49の車外側の面及び該面に連続する座部47の面の下縁には、板状の下側補強用リブ53が、座部47の基端から係止突起49の先端近傍にかけて連続して一体に突設されている。そして、上記下側補強用リブ53の車体前方側は、上記下縁突条部39に連続して一体となっている。
【0022】
上記ピラートリム本体11裏面には、図4及び図5に示すように、係止部としてのクリップ57が取り付けられた3つのクリップ取付座59が上方に2つ、下方に1つ突設されている。該クリップ取付座59は、上記後部ピラー9に被係止部として形成された3つのクリップ挿入孔63(図2参照)に対応するように突設されている。また、ピラートリム本体11裏面には、上下方向及び車体前後方向に延びる板状補強用リブ60が複数本突設されている。
【0023】
さらに、上記ピラートリム本体11の下端縁近傍には、該下端縁に上記サイドトリム17を取り付けるためのサイドトリム取付用孔61が2つ貫通形成されている。
【0024】
上記のように構成されたピラートリム13をリヤパッケージトリム7及び後部ピラー9に取り付けるには、まず、上記リヤパッケージトリム7のフランジ部29に上記ピラートリム13の下縁突条部39を対応させ、上記リヤパッケージトリム7のフランジ部29の第4挿入口37の前側部分37bに上記ピラートリム13の係止突起49を車内側から挿入し、この状態でピラートリム13全体を車体後方に移動させる。すると、上記係止突起49が上記第4挿入口37の傾斜縁部37aに案内されて後側部分37cに車内側から挿入係止する。このとき、第4挿入口37の前側部分37bは、後側部分37cよりも上下幅が長くなっているので、係止突起49を挿入しやすい。次に、上記ピラートリム13の車体前側を車幅方向外側に移動させることにより、上記ピラートリム13の下縁突条部39の車体前側部分を上記リヤパッケージトリム7のフランジ部29に近付け、ピラートリム13の第3挿入突起45、第2挿入突起43、及び第1挿入突起41を順にリヤパッケージトリム7の第3挿入口35、第2挿入口33、第1挿入口31に挿入する。これにより、図6の実線で示すように、上記座部47の先端上部47bが上記フランジ部29の第4挿入口37上縁の上面29cに車内側から当接した状態になる。
【0025】
このようにしてピラートリム13の下端縁をリヤパッケージトリム7に取り付けた状態で、さらにピラートリム13の上方を車外側に押圧することにより、図6の仮想線で示すようにピラートリム13の上方部位を後部ピラー9に近付け、ピラートリム13のクリップ取付座59に取り付けられたクリップ57先端を上記後部ピラー9のクリップ挿入孔63に挿入係止させてピラートリム13の上方部位を後部ピラー9に取り付ける。このとき、上記ピラートリム13が車外側に押圧されることにより、フランジ部29の第4挿入口37下縁が上記係止突起49の基端側に圧接し、該係止突起49の基端側が上下方向に圧縮されてスリット51の上下幅が狭まり、係止突起49にかかる圧縮力が当該圧縮変形によって吸収される。したがって、過剰な圧縮力が座部47の基端近傍に伝わらず、座部47や係止突起49の基端近傍が破損するのを防止できるとともに、座部47の基端近傍のピラートリム13表面が白化するのを防止できるので、当該表面の見栄えの悪化を防止できる。
【0026】
また、ピラートリム13の下端縁をリヤパッケージトリム7に取り付けた状態で、上記第1挿入突起41、第2挿入突起43、及び第3挿入突起45は、上記座部47とは異なり、フランジ部29に車内側から当接しない。また、第1挿入口31の下方には、シートベルト挿通孔27が連続して形成され、第2挿入口33及び第3挿入口35の下方には、第1切欠部21a及び第2切欠部21bが連続して形成されている。したがって、ピラートリム13が車外側に押圧されても、上記第1挿入突起41、第2挿入突起43、及び第3挿入突起45の基端側がフランジ部29によって下方から圧接されないので、第1挿入突起41、第2挿入突起43、及び第3挿入突起45の基端近傍が破損したり、該基端近傍のピラートリム13表面が白化することがない。
【0027】
なお、上記実施形態では、クリップ取付座59に取り付けられたクリップ57を係止部として用いたが、係止部はクリップに限られず、例えばファスナー等、被係止部に係止されるものであればよい。
【0028】
また、上記実施形態では、車幅方向両サイドのピラートリム13に本発明の取付構造を適用したが、左右いずれか一方のピラートリム13だけに適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、例えば、自動車のリヤパッケージトリム及び後部ピラーにピラートリムを取り付けるピラートリムの取付構造として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態に係るピラートリムの取付構造を備えた自動車の車室内部右側後方を示す斜視図である。
【図2】後部ピラーにリヤパッケージトリムを取り付けた状態の斜視図である。
【図3】ピラートリムを表側(車室側)から見た斜視図である。
【図4】ピラートリムを裏側(車外側)から見た裏面斜視図である。
【図5】リアパッケージトリムにピラートリムが取り付けられた状態を車外側から見た斜視図である。
【図6】図5のA−A線断面図である。
【図7】図5のB−B線断面図である。
【図8】図5のC−C線断面図である。
【符号の説明】
【0031】
7 リヤパッケージトリム
9 後部ピラー
11 ピラートリム本体
13 ピラートリム
29 フランジ部
37 第4挿入口(挿入口)
47 座部
49 係止突起
51 スリット
57 クリップ(係止部)
63 クリップ挿入孔(被係止部)
S 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取り付けられた樹脂製リヤパッケージトリムに樹脂製ピラートリムの下端縁を取り付けた状態で、該下端縁よりも上方部位の係止部を後部ピラーの被係止部に係止させて当該上方部位を後部ピラーに取り付けるピラートリムの取付構造であって、
上記リヤパッケージトリムの車体前後方向に延びる車幅方向側端縁には、略矩形状の挿入口を有する板状フランジ部が一体に上方に向けて突設され、
一方、上記ピラートリムは、下端裏面に座部が車外側に向けて一体に突設され、上記後部ピラーを車内側から覆うピラートリム本体を備え、
上記座部の先端下部には、リヤパッケージトリムの上記フランジ部の挿入口に車内側から挿入係止され、基端側にスリットが貫通形成された板状の係止突起が上記ピラートリム本体裏面と間隙を有して車体後方に延びるように一体に突設され、
上記フランジ部の挿入口に上記ピラートリムの係止突起を車内側から挿入係止させるとともに、上記座部の先端上部を上記挿入口上縁の上面に車内側から当接させることにより、上記ピラートリムの下端縁を上記リヤパッケージトリムに取り付け、この状態で、上記ピラートリムの上方を車外側に押圧することにより、上記係止突起の基端側を上記スリットの上下幅を狭めるように圧縮変形させるとともに、上記ピラートリムの上方部位を上記後部ピラーに近付け、ピラートリムの上記係止部を上記後部ピラーの被係止部に係止させるようにしたことを特徴とするピラートリムの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−23804(P2010−23804A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191139(P2008−191139)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【Fターム(参考)】