説明

ピロリジノヒドロチナゾリン

本発明は、ケモカイン活性の効果的なモジュレーターである下記式(I)の化合物:


(I)
またはその立体異性体または医薬的に許容される塩に関し、ここで、以下の基Arl、Ar2、A、E1、E2、R1、R2、R3、X および n は明細書および特許請求の範囲において定義された通りである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.技術分野
本発明は、概して、新規のピロリジノヒドロチナゾリン(pyrrolidinohydrochinazoline)およびケモカイン受容体活性のモジュレーターとしてのその使用、それを含む医薬組成物、並びに、喘息およびアレルギー疾患などの炎症疾患、並びに、慢性関節リウマチおよびアテローム性動脈硬化症などの自己免疫病状を治療および予防するための薬剤としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
2.背景情報
ケモカインは分子量6-15kDaの走化性サイトカインであり、広範な細胞によって放出され、他の細胞種と共に、マクロファージ、Tリンパ球、Bリンパ球、好酸球、好塩基球、および好中球を引き付け、かつ活性化させる(Luster, New Eng. J Med., 338, 436-445 (1998)およびRollins, Blood, 90,909-928 (1997)に概説)。
ケモカインには2つの主要なクラス、CXCとCCがあり、これはアミノ酸配列のはじめの2つのシステインが、1つのアミノ酸によって分離されているか(CXC)、または隣接しているか(CC)による。インターロイキン-8(IL-8)、好中球活性化タンパク質-2(NAP2)、および黒色腫成長刺激活性タンパク質(MGSA)などのCXCケモカインは、主に好中球およびTリンパ球に対して走化性を有し、一方、RANTES、MIP-la、MIP-1β、単球走化性タンパク質(MCP-1、MCP-2、MCP-3、MCP-4、およびMCP-5)、およびエオタキシン(-1、-2、および-3)などのCCケモカインは、他の細胞種と併せて、マクロファージ、Tリンパ球、好酸球、樹状細胞、および好塩基球に対して走化性を有する。さらに、この主要なケモカインのサブファミリーのいずれにも分類されないケモカインであるリンフォタクチン-1、リンフォタクチン-2(共にCケモカイン)、およびフラクタルカイン(CXXXCケモカイン)が存在する。
【0003】
ケモカインはGタンパク質共役型の7回膜貫通ドメインを持つタンパク質のファミリーに属する特異的な細胞表面受容体に結合し(Horuk, Trends Pharm. Sci., 15,159- 165 (1994)に概説)、それは"ケモカイン受容体"と呼ばれる。それらの対応リガンドが結合すると、ケモカイン受容体は結合している三量体Gタンパク質を通して細胞内シグナルを伝達し、他の応答と併せて、細胞内カルシウム濃度の急激な上昇、細胞の形の変化、細胞接着分子の発現の上昇、脱顆粒、および細胞移動の促進を引き起こす。CCケモカインに結合または応答するヒトケモカイン受容体は少なくとも10種類あり、それらは以下の特徴的なパターンを持つ: CCR1(または"CKR-1"または"CC-CKR-1")[MIP-la、MCP-3、MCP-4、RANTES](Ben-Barruch, et al., Cell, 72,415-425 (1993), Luster, New Eng. J. Med., 338,436-445 (1998)); CCR-2AおよびCCR-2B(または"CKR-2A"/"CKR-2B"または"CC-CKR-2A"/"CC-CKR-2B")[MCP-1、MCP2、MCP-3、MCP-4、MCP-5](Charo et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91,2752-2756 (1994), Luster, New Eng. J. Med., 338,436-445 (1998)); CCR-3(または"CKR-3"または"CC-CKR-3")[エオタキシン-1、エオタキシン-2、RANTES、MCP-3、MCP-4](Combadiere, et al., J. Biol. Chem., 270,16491-16494 (1995), Luster, New Eng. J. Med., 338,436-445 (1998)); CCR-4(または"CKR-4" または"CC-CKR-4")[TARC、MIP-la、RANTES、MCP-1](Power et al., J. Biol. Chem., 270,19495-19500 (1995), Luster, New Eng. J. Med., 338,436-445 (1998)); CCR-5(または"CKR-5"または"CCCKR-5")[MIP-la、RANTES、MIP-lp](Sanson, et al., Biochemistry, 35,3362-3367 (1996)); CCR-6(または"CKR-6"または"CC-CKR-6")[LARC](Baba et al., J. Biol. Chem., 272, 14893-14898 (1997)); CCR-7(または"CKR-7"または"CC-CKR-7")[ELC](Yoshie et al., J. Leukoc. Biol. 62,634-644 (1997)); CCR-8(または"CKR-8"または"CC-CKR-8")[1-309、TARC、MIP-1p](Napolitano et al., J. Immunol., 157,2759-2763 (1996), Bernardini et al., Eur. J. Immunol., 28,582-588 (1998)); および、CCR-10(または"CKR-10"または"CC-CKR-10")[MCP-1、MCP-3](Bonini et al, DNA and Cell Biol., 16,1249-1256 (1997))。
【0004】
哺乳動物のケモカイン受容体に加えて、哺乳動物のサイトメガロウィルス、ヘルペスウィルス、およびポックスウィルスが、感染した細胞内においてケモカイン受容体の結合特性を持つタンパク質を発現することが示されている(Wells and Schwartz, Curr. Opin. Biotech., 8,741-748 (1997)による概説)。RANTESおよびMCP-3などのヒトCCケモカインは、ウィルスにコードされたこれらの受容体を介してカルシウムの急速な流動化を引き起こすことができる。通常の免疫系監視機構および感染応答を崩壊させることによって、受容体の発現は感染に対して許容性を有し得る。加えて、CXCR4、CCR2、CCR3、CCR5、およびCCR8などのヒトケモカイン受容体は、例えばヒト免疫不全ウィルス(HIV)などの微生物が哺乳動物細胞へ感染するための共受容体として機能し得る。
【0005】
ケモカイン受容体は、炎症性疾患、感染症、および免疫調節異常、例えば、喘息およびアレルギー性疾患、並びに慢性関節リウマチおよびアテローム性動脈硬化症などの自己免疫症状の重要なメディエーターであるとされてきた。例えば、ケモカイン受容体CCR-3は、アレルギー性炎症の部位に好酸球を引き付け、その結果これらの細胞を活性化するのに極めて重要な役割を果たす。CCR-3のためのケモカインリガンドは、細胞内カルシウム濃度の急上昇、細胞接着分子の発現上昇、細胞の脱顆粒、および好酸球遊走促進を引き起こす。従って、ケモカイン受容体を調節する物質は、そのような疾患および病気において有用となる。加えて、ケモカイン受容体を調節する物質は、HIVによるCCR3発現細胞への感染の阻害またはサイトメガロウィルスなどのウィルスによる免疫細胞応答の操作の防止などによって、感染症においても有用となり得る。
先行技術は、新規のピロリジノヒドロチナゾリンの特有の構造、およびそれらがケモカイン受容体に対する活性を有する可能性について開示も示唆もしていない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の要約
従って、本発明の1つの目的は、CCR-3の作動薬または拮抗薬あるいは医薬的に許容されるその塩、特に、下記式(I):

(I)
のピロリジノヒドロチナゾリンまたはその立体異性体もしくは医薬的に許容される塩を提供することにあり、ここで、以下の基Arl、Ar2、A、E1、E2、R1、R2、R3、X および n は以下に定義される。
【0007】
本発明の別の目的は、医薬的に許容される担体および治療上効果的な量の少なくとも1つの本発明の化合物または医薬的に許容されるその塩を含む医薬組成物を提供することにある。
本発明の別の目的は炎症性疾患およびアレルギー性疾患を治療する方法を提供することにあり、該方法は、そのような治療が必要な対象に、治療上効果的な量の少なくとも1つの本発明の化合物または医薬的に許容されるその塩を投与することを含む。
これらおよび他の目的は、以下の詳細な説明を通して明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
発明の詳細な説明
本発明は下記式(I)の新規の化合物に関し:

(I)
【0009】
式中、
R1 と R2 は、それぞれ独立に水素原子、または、C1-C6-アルキル、C2-C6-アルケニル、C2-C6-アルキニル、C3-C8-シクロアルキル、C3-C8-シクロアルキル-C1-C6-アルキル、-NH2、-NH(C1-C6-アルキル)、-N(C1-C6-アルキル)2、アリール、またはアリール-C1-C6-アルキル基を表し、これらの基のいずれも必要によりハロゲン、OR6、SR6、シアノ、COOR6、CONR6R7、NR6R7、NR6COR5、SOR6、SO2R6、およびC1-C6-ハロアルキルからなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、
R1 と R2 は、間にある炭素原子と共に3-から8-員シクロアルキル環を形成し、それはハロゲン、C1-C6-アルキル、OR6、SR6 およびシアノ、C1-C6-ハロアルキルからなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、または、
R1 と R2 は一緒になって=NR4基を形成し;
【0010】
R3 は、水素原子、または、C1-C18-アルキル、C2-C6-アルケニル、C2-C6-アルキニル、C3-C8-シクロアルキル、C3-C8-シクロアルキル-C1-C6-アルキル、アリール、またはアリール-C1-C6-アルキル、COOR5、CR6R7OH、またはCONR6R7 基を表し、これらの基のいずれも必要によりハロゲン、OR6、SR6、CN、COOR6、CONR6R7、NR6R7、NR6COR5、SOR6、SO2R6、およびC1-C6-ハロアルキルからなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
R4 は、水素原子、または、COOR5、COR5、OR6、シアノまたはニトロ基; またはC1-C6-アルキル基(必要によりハロゲン、OR6、SR6、CN、COOR6、CONR6R7、NR6R7、NR6COR5、SOR6、SO2R6 、およびC1-C6-ハロアルキルからなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよい)を表し; または、
R2 と R3 は、間にある-CR1-N-CH- 基と共に5-から8-員環を形成し; または、
R3 と R4 は、間にある-N=C-N-CH- 基と共に5-から8-員環を形成し;
【0011】
R5 は、水素原子、または、C1-C18-アルキル、C2-C6-アルケニル、C2-C6-アルキニル、C3-C8-シクロアルキル、C3-C8-シクロアルキル-C1-C6-アルキル、アリール、またはアリール-C1-C6-アルキル基を表し、これらの基のいずれも必要によりハロゲン、OR6、SR6、CN、COOR6、CONR6R7、NR6R7、NR6COR5、SOR6、SO2R6 、およびC1-C6-ハロアルキルからなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
R6 と R7 は、それぞれ独立に水素原子、または、C1-C18-アルキル、C3-C8-シクロアルキルアリール、またはアリール-C1-C6-アルキル基を表し; または、
R6 と R7 は、間にある窒素原子と共に3-8-員複素環を形成し;
【0012】
E1 と E2 は、それぞれ水素原子を表すか、または一緒になって二重結合を形成し;
X は、水素原子またはハロゲン原子、または、C1-C6-アルキル、C2-C6-アルケニル、C2-C6-アルキニル、C3-C8-シクロアルキル、C3-C8-シクロアルキル-C1-C6-アルキル、OR6、SR6、NR6R7、またはアリールを表し;
環A は1つ以上のR6基で置換されていてもよく;
アリール、Ar1 、およびAr2 は、それぞれ独立に6-から10-員のホモ芳香族基、または、窒素、酸素、および硫黄からなる群より選択されるヘテロ原子を最大で3個まで含む5-から10-員のヘテロ芳香族基を表し; これらの各基は、C1-C6-アルキル、フェニル、ハロゲン、OR6、SR6、シアノ、ニトロ、COOR6、COR6、CONR6R7、NR6R7、NR6COR5、NR6SO2R5、SOR6、SO2R6、SO2NR6R7、C1-C6-ハロアルキル、C1-C6-ハロアルコキシ、およびC3-C8-シクロアルキルからなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく; そして
n は1から4の整数を表す。
【0013】
本明細書に説明する化合物は不斉中心を持つ。非対称に置換された原子を含む本発明の化合物は、光学活性体またはラセミ体で単離し得る。光学活性体を調製する方法については当技術分野によく知られており、それは例えばラセミ体の分割または光学活性を有する出発物質からの合成による。オレフィン、C=N二重結合などの多くの幾何異性体もまた本明細書に説明する化合物に存在してもよく、そしてそのようなすべての安定異性体が本発明に企図される。本発明の化合物のシスおよびトランス幾何異性体について記載しており、異性体の混合物として、または分離した異性体として単離し得る。具体的な立体化学または異性体を具体的に示す場合を除いて、構造体のすべてのキラル体、ジアステレオ異性体、ラセミ体、およびすべての幾何異性体が意図される。
【0014】
本明細書に使用されるように、"置換された"という用語は、指定した原子上のいかなる1つ以上の水素が、表示した基からの選択物に交換されていることを意味し、それは、指定した原子の通常の原子価を超えないこと、およびその置換によって安定な化合物が得られることを条件とする。置換基がケト(即ち、=O)の場合、原子上の2つの水素が置換されている。
化合物についての構成または式において置換基が1つよりも多く存在する場合、各置換基のその定義は、他のすべての置換基の定義とは独立である。従って、例えば、ある基が0-2 つの置換基で置換されていると示されている場合、前記基は場合により最大2つのその置換基で置換されていてもよく、ここで各置換基は前記置換基の定義から独立に選択される。さらに、置換基および/または変数の組み合わせは、その組み合わせによって安定な化合物が得られる場合にのみ許容される。
【0015】
本明細書に使用されるように、"アルキル" は、指定数の炭素原子を持つ分岐鎖および直鎖の両方の飽和脂肪族炭化水素基を含むことを意図し、その例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ペンチル、およびヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。“C1-C6 アルキル”という用語はC1、C2、C3、C4、C5、およびC6のすべてのアルキル基を含むことを意図する。
【0016】
"アルケニル" は、直線または分岐構造のいずれかであり、かつ鎖上のいかなる安定な点に1つ以上の不飽和炭素-炭素結合が存在し得る炭化水素鎖を含むことを意図し、それは例えばエテニル、プロペニルなどである。"アルキニル" は、直線または分岐構造のいずれかであり、かつ鎖上のいかなる安定な点に1つ以上の不飽和炭素-炭素三重結合が存在し得る炭化水素鎖を含むことを意図し、それは例えばエチニル、プロピニルなどである。"C3-C8 シクロアルキル" は、環の中に指定数の炭素原子を持つ飽和環式基を含むことを意図し、単環系、二環系、または多環系、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロヘプチルなどが含まれる。C3-C8 シクロアルキルは、C3、C4、C5、およびC6 シクロアルキル基を含むことを意図する。
【0017】
本明細書に使用されるように、"ハロ" または "ハロゲン"は、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードを意味し; "ハロアルキル" は、分岐鎖および直鎖の両方の、ハロゲン化、特にフッ素化された飽和脂肪族炭化水素基を含むことを意図し、それは例えばCF3、C2F5、CH2CF3、および1,1,1-トリフルオロプロパ-2-イルであり、それは指定数の炭素原子を持ち、それは1つ以上のハロゲンで置換されており(例えば-CvFwH2v+1-wであって、v = 1から3であり、w = 1から(2v+1)である); そして "ハロアルコキシ" は、分岐鎖および直鎖の両方の、ハロゲン化、特にフッ素化された飽和脂肪族アルコキシ基を含むことを意図し、それは例えば OCHF2、OCF3、OC2F5、OCH2CF3、および1,1,1-トリフルオロプロパ-2-イルオキシであり、それは指定数の炭素原子を持ち、それは1つ以上のハロゲンで置換されている(例えば-O-CvFwH2v+1-wであって、v = 1から3であり、w = 1から(2v+1)である)。
【0018】
式(I)の化合物はまた、ハロゲン化アルキルによるアミノ基NR6R7のアルキル化などの標準的な技術によって四級化して、式Iの第四級ピペリジニウム塩生成物を得ることができる。そのような第四級アンモニウム塩は対イオンを含む。本明細書に使用されるように、"対イオン" は、クロリド、ブロミド、ヒドロキシド、アセタート、スルファートなどの、小さく、負の電化をもつ化学種を表すのに使用される。
【0019】
本明細書に使用されるように、“ホモ芳香族基” という用語は、環式基の中にヘテロ原子を含まない6- から10 員の単環式または二環式芳香族基を意味することを意図する。好ましいのはフェニルおよびナフチル、特にフェニルである。
【0020】
本明細書に使用されるように、"複素環基"という用語は、飽和または部分的に不飽和であり、かつ、炭素原子、および、N、O、およびSからなる群より独立に選択される1つ、2つ、または3つのヘテロ原子を含む、安定な 5-、6-、または 7-員の単環式または7、8、9、または10-員の二環式複素環を意味することを意図し、かつ、上に定義したいかなる複素環がベンゼン環に縮合しているいかなる二環式基をも含む。窒素および硫黄のヘテロ原子は必要により酸化されていてもよい。複素環は、窒素原子においてそのペンダント基に結合しており、その結果安定な構造となる。本明細書に説明する複素環は、結果として得られる化合物が安定であるならば、炭素原子または窒素原子上で置換されていてもよい。明確に記載した場合には、複素環の中の窒素は必要により四級化されていてもよい。この複素環の中のSおよびO原子の合計数が1を超える場合は、これらのヘテロ原子は互いに隣接していないことが好ましい。
複素環の例として、1H-インダゾール、2-ピロリドニル、2H,6H-1,5,2-ジチアジニル、2H-ピロリル、3H-インドリル、1-ピペリジニル、1-ピペラジニル、1-モルホリニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
本明細書に使用されるように、"ヘテロ芳香族基" という用語は、完全不飽和(fully unsaturated)であり、かつ、炭素原子、および、N、O、およびSからなる群より独立に選択される1つ、2つ、または3つのヘテロ原子を含む、安定な 5-、または6-員の単環式、または 7、8、9、または10-員の二環式へテロ芳香族環を意味することを意図し、かつ、上に定義したいかなるヘテロ芳香族環がベンゼン環に縮合しているいかなる二環式基をも含む。ヘテロ芳香族環は、炭素原子においてそのペンダント基に結合しており、その結果安定な構造となる。本明細書に説明するヘテロ芳香族環は、結果として得られる化合物が安定であるならば、炭素原子または窒素原子上で置換されていてもよい。明確に記載した場合には、ヘテロ芳香族基の中の窒素は必要により四級化されていてもよい。
複素環の例としては、チエニル、フラニル、ピロリル、ピリジル、ピリミジル、ピリダジル(pyridazyl)、トリアジニル、ベンゾチオフェニル、インドリル、チアゾリル、オキサゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、およびテトラゾリルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
"医薬的に許容される"という語句は、健全な医学判断の範囲内において、ヒトおよび動物の組織と接触させての使用に適していて過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題または合併症のな問題がなく、妥当な利点/リスク比に相当する化合物、物質、組成物、および/または製剤に言及するために本明細書に使用される。
【0023】
本明細書に使用されるように、"医薬的に許容される塩"は、開示された化合物の誘導体を意味し、ここで、親化合物はその酸性塩または塩基性塩を作製することによって変化される。医薬的に許容される塩の具体例としては、アミンなどの塩基性残基の無機または有機酸性塩; カルボン酸などの酸性残基のアルカリまたは有機塩; などが挙げられるが、これらに限定されない。医薬的に許容される塩としては、親化合物の従来からの無毒性塩または第四級アンモニウム塩が挙げられ、それは例えば無毒性の無機塩または有機塩から形成される。例えば、そのような従来からの無毒性の塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸由来のもの、および、酢酸、プロピオン酸、琥珀酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸(hydroxymaleic)、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸などの有機酸から調製された塩が挙げられる。
【0024】
本発明の医薬的に許容される塩は、従来からの化学手法によって、塩基性または酸性基を含む親化合物から合成することができる。一般に、そのような塩は、これらの化合物の遊離酸または塩基形体を、化学量論量の適切な塩基または酸と、水の中または有機溶媒の中、またはこの2つの混合物の中で反応させることによって調製することができ; 一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルなどの非水性溶媒が好ましい。適切な塩の一覧はレミングトン(Remingto)に見られ、それは、そのようなプロドラッグが哺乳動物の対象に投与された場合に、本発明の活性親薬剤をインビボで放出する。本発明のプロドラッグは、化合物に存在する官能基を決まりきった操作あるいはインビボのいずれかで修飾が削られて親化合物となるような方法で変化させることによって調製される。プロドラッグとしては、本発明の化合物であって、ヒドロキシ、アミノ、またはスルフヒドリル基が、哺乳動物の対象に本発明のプロドラッグが投与された場合に、削られてそれぞれ遊離ヒドロキシル、遊離アミノ基、または遊離スルフヒドリル基を形成するいかなる基に結合しているものが挙げられる。プロドラッグの例としては、本発明の化合物の中のアルコールおよびアミン官能基のアセタート、ホルマート、およびベンゾアートの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
"安定な化合物" および "安定な構造" は、反応混合物からの使い物になる程度の純度への単離、および効き目のある治療薬剤への調合に十分耐え得るほどに丈夫な化合物を表すことを意味する。
【0025】
好ましいのは、式Iの化合物であって、式中、
アリール、Ar1 、およびAr2 は、それぞれ独立に、フェニル、チエニル、フラニル、ピロリル、ピリジル、ピリミジル、ナフチル、ベンゾチオフェニル、インドリル、チアゾリル、オキサゾリル、およびイミダゾリルからなる群より選択され、これらの各基は、C1-C6-アルキル、フェニル、ハロゲン、OR6、SR6、シアノ、ニトロ、COOR6、COR6、CONR6R7、NR6R7、NR6COR5、NR6SO2R5、SOR6、SO2R6、SO2NR6R7、C1-C6-ハロアルキル、C1-C6-ハロアルコキシ、およびC3-C8-シクロアルキルからなる群より選択される1つ、2つ、または3つの置換基で置換されていてもよく、特に、
フェニル、チエニル、およびフラニルからなる群より選択され、これらの各基は、C1-C3-アルキル、フェニル、フッ素、塩素、臭素、OR6、シアノ、ニトロ、COOR6、COR6、CONR6R7、NR6R7、NR6COR5、C1-C3-フルオロアルキル、C1-C3-フルオロアルコキシ、およびC3-C8-シクロアルキルからなる群より選択される1つまたは2つの置換基で置換されていてもよく; および/または、式中、
E1 と E2 は、一緒になって二重結合を形成する。
【0026】
さらにより好ましいのは、式Iの化合物であって、式中、
R1 と R2 はそれぞれ独立に水素原子またはC1-C6-アルキル基を表し、
R1 と R2 は一緒になって=NR4基を形成し;
R3 は、水素原子またはC1-C18-アルキル基を表し、
R4 は、水素原子、またはC1-C6-アルキルまたはシアノ基を表し、
E1 と E2 は、一緒になって二重結合を形成し;
Ar1 は、フェニル、チオフェン、またはフラン基を表し、それはC1-C6-アルキル、フェニル,ハロゲン、OR6、SR6、シアノ、ニトロ、COOR6、COR6、CONR6R7、NR6R7、NR6COR5、NR6SO2R5、SOR6、SO2R6、C1-C6-ハロアルキル、C1-C6-ハロアルコキシ、およびC3-C8-シクロアルキルからなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、
Ar2 は、フェニル、チエニル、またはフラニル基を表し、それはC1-C6-アルキル、フェニル、ハロゲン、OR6、SR6、シアノ、ニトロ、COOR6、COR6、CONR6R7、NR6R7、NR6COR5、NR6SO2R5、SOR6、SO2R6、SO2NR6R7、C1-C6-ハロアルキル、C1-C6-ハロアルコキシ、およびC3-C8-シクロアルキルからなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく; そして
n は1または2を表す。
【0027】
特に好ましいのは、式Iの化合物であって、式中、
R1 と R2 は、水素原子を表し、または
R1 と R2 は、一緒になって=NR4基を形成し;
R3 と R4 は、それぞれ独立に水素原子またはC1-C6-アルキル基を表し、
E1 と E2 は、一緒になって二重結合を形成し;
Ar1 は、フェニル、チオフェン、またはフラン基を表し、それはC1-C6-アルキル、ハロゲン、C1-C6-ハロアルキル、およびC3-C6-シクロアルキルからなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、
Ar2 は、フェニル、チエニル、またはフラニル基を表し、それはハロゲン原子で置換されていてもよく、
n は1を表し; そして、
X は水素原子を表す。
【0028】
最も好ましいのは、式Iの化合物であって、式中、
Ar2 は、フェニル、チエニル、またはフラニル基を表し、それはオルト位においてハロゲン原子で置換されている。
【0029】
式Iの化合物は、下に説明する反応および技術を使用して調製することができる。この反応は、使用する試薬および材料に適し、かつ達成される変化に適した溶媒の中で行われる。有機合成の分野における当業者は、分子上に存在する官能基が、画策する変化と一致する必要があることを理解する。これは時に、所望の本発明の化合物を得るために、合成ステップの順序の変更または適切な工程案の選択するための判断を必要とする。また、この技術分野において、あらゆる合成経路の計画におけるもう1つの主要な検討事項は、本発明の化合物に存在する反応性官能基を保護するために使用される保護基の賢明な選択であることも理解される。当業者に多くの選択肢を説明する信頼できる書物はGreene and Wuts (Protective Groups In Organic Synthesis, Wiley and Sons, 1991)である。
【0030】
好ましくは、式Iの化合物は、下記式(II)の化合物

(II)
(式中、Ar1、A、R1、R2、R3 、およびn は、前述した意味を持つ)
と、下記式(III)の化合物

(III)
(式中、Ar2 および X は前述した意味を持つ)
を反応させ、そして必要によりその後水素化(E1 = E2 = H)を行うことにより調製される。
【0031】
式(II)の化合物であって、R1 と R2 が =NR4ではないものは、例えば、下記式(IV)のジアミノ化合物

(IV)
と、下記式(V)のラクトン

(V)
を、POCl3などの脱水剤の存在下で反応させることによって得ることができる。
【0032】
式(II)の化合物であって、R1 と R2 が一緒になって=NR4を表すものは、例えば、下記式(VI)の1-アミノ-2-シアノ化合物

(VI)
と、下記式(VII)の化合物

(VII)
(式中、R3 および n は既に与えられた意味を持ち、そして R' は C1-6 アルキルを表す)
を、必要により不活性希釈剤の存在下で、好ましくは200℃未満、特に70℃から150℃の高温で反応させることによって得ることができる。
【0033】
ケモカイン受容体活性のモジュレーターとしての本発明の化合物の有用性は、Ponath et al., J. Exp. Med., 183,2437-2448 (1996) および Uguccioni et al., J. Clin. Invest., 100,11371143 (1997)に開示されるCCR-2およびCCR-3リガンドの結合のアッセイなどの、当分野に知られる手法によって示すことができる。目的とする受容体を発現するセルラインとしては、ケモカイン受容体を自然に発現するもの(EOL-3またはTHP-1など)、化学物質またはタンパク質物質の添加によってケモカイン受容体の発現を誘導したもの(例えばインターロイキン-5が存在する酪酸で処理したHL-60またはAML14.3D10細胞など)、または、組換えケモカイン受容体を発現するように設計された細胞(CHOまたはHEK-293など)、が挙げられる。最後に、Hansel et al., J. Immunol. Methods, 145,105-110 (1991)に説明される方法を使用して単離された血液細胞または組織細胞、例えばヒト末梢血好酸球を、そのようなアッセイに使用することができる。特に、本発明の化合物は、前述のアッセイにおいて、CCR-3受容体に結合する活性を持つ。本明細書に使用されるように、"活性" は、前述のアッセイで測定した場合に10MMまたはそれよりも低い濃度のIC50を示す化合物を意味することを意図する。そのような結果は、ケモカイン受容体活性のモジュレーターとしての、化合物固有の活性を示すものである。一般的な結合プロトコールを以下に説明する。
【0034】
CCR3-受容体結合プロトコール
CCR3受容体結合テストは、ヒトケモカイン受容体CCR3(hCCR3-C1)でトランスフェクトしたK562セルライン(白血病の骨髄芽細胞)に基づく。
細胞膜は、hCCR3でトランスフェクトしたK562細胞を窒素破砕(decomposition)で破壊し、そして40000g、4℃で1時間遠心して調製した。ウシ血清アルブミンを含まないSPAインキュベーションバッファー(下記参照)に膜を再懸濁し、分注して-80℃に保存した。
放射性ラベル 125ヨウ素-エオタキシン-1によるCCR3受容体結合アッセイを、シンチレーション近接アッセイ(SPA)法で実施した。hCCR3 C1細胞の細胞膜を96ウェルマイクロタイタープレート(1450-401, ワラック)の中に適切な濃度(タンパク質0.5-5μg/ウェル)に希釈した。
【0035】
60μlの膜懸濁物、80μlの0.4mgの濃度の小麦麦芽凝集素コートPVTビーズ(有機シンチレーター, Amersham Pharmacia biotech)、および40μlの放射性ラベル125I rhエオタキシン(Amersham, IM290)を含むテストインキュベーション混合物を、20μlのテスト化合物(DMSO希釈物に溶解したもの)と共に2時間インキュベートした。SPAインキュベーションバッファーは、25mM HEPES、25mM MgCl2 6xH2O、1mM CaCl2 2xH2O、および0.1%ウシ血清アルブミンを含んだ。非標識rhエオタキシン(R&D Systems)またはテスト化合物を添加することによる、特異的結合(ディスプレイサー添加なし)および非特異的結合の対照が含まれた。結合した放射性活性をシンチレーションカウンター(マイクロベータ“トライラックス”, ワラック)で測定した。テスト化合物の親和性(解離定数 Ki)の測定は、質量作用の法則に基づいたプログラムである”イージーシス(easy sys)” (Schittkowski, Num Math 68, 129-142 (1994))を使用し、実験データの反復当てはめによって計算した。
【0036】
本発明の化合物の、好酸球またはケモカイン受容体を発現するセルラインの遊走の阻害物質としての有用性は、Bacon et al., Brit. J. Pharmacol., 95,966-974 (1988)により開示される走化性アッセイなどの当分野に知られる方法によって示すことができる。特に、本発明の化合物は、前述のアッセイにおいて好酸球の遊走を阻害する活性を有する。本明細書に使用されるように、"活性" は、前述のアッセイで測定した場合に10μMまたはそれよりも低い濃度のKiを示す化合物を意味することを意図する。そのような結果は、ケモカイン受容体活性のモジュレーターとしての、化合物固有の活性を示すものである。
【0037】
哺乳動物のケモカイン受容体は、ヒトなどの哺乳動物における免疫細胞機能を阻害または促進するためのターゲットを提供する。ケモカイン受容体機能を阻害または促進する化合物は、治療目的のために免疫細胞機能を調節するのに特に有用である。
従って、本発明は、広範な炎症性疾患、感染症、および免疫調節異常、例えば喘息およびアレルギー性疾患、病原性微生物(microbes)(定義上、ウィルスを含む)による感染症、並びに、慢性関節リウマチおよびアテローム性動脈硬化症などの自己免疫病状の予防および/または治療に有用な化合物に関する。
【0038】
例えば、哺乳動物のケモカイン受容体(例えばヒトケモカイン受容体)の機能の1つ以上を阻害する本発明の化合物を投与することによって炎症または感染症を阻害(即ち、軽減または予防)することができる。その結果、1つ以上の炎症のプロセス、例えば、白血球遊走、接着、走化性、エキソサイトーシス(例えば酵素ヒスタミンの)または炎症性メディエーター放出が阻害される。例えば、炎症部位への好酸球浸潤(例えば、喘息またはアレルギー性鼻炎におけるもの)を本方法によって阻害することができる。特に、後述の実施例における化合物は、前述のアッセイの適切なケモカインを使用することによってCCR-3受容体を発現する細胞の遊走を阻害する活性を持つ。
【0039】
同様に、哺乳動物のケモカイン受容体(例えばヒトケモカイン)の1つ以上の機能を促進する本発明の化合物は、免疫または炎症応答、例えば白血球遊走、接着、走化性、エキソサイトーシス(例えば酵素ヒスタミンの)または炎症性メディエーター放出を刺激(誘導または増幅)するために投与され、炎症のプロセスを有益に刺激する。例えば、寄生虫感染症に対抗するために好酸球を補充し得る。加えて、哺乳動物のケモカイン受容体の1つ以上の機能を促進する本発明の化合物については、仮にケモカイン受容体内在化の誘導または誤った細胞遊走となるような化合物の配送を通して細胞上の受容体発現の喪失を引き起こすのに十分な量の化合物を配送することを予定した場合は、前述の炎症性、アレルギー性、および自己免疫疾患の治療を予定することもできる。
【0040】
本発明の方法に従って、ヒトなどの霊長類に加えて他の様々な哺乳動物を治療することが可能である。例えば、哺乳動物、例えば、限定をするものではないが、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、モルモット、ラット、または、他のウシ科、ヒツジ科、ウマ科、イヌ科、ネコ科、げっ歯類、またはネズミ科の種を治療することができる。しかしながら、該方法は、鳥類などの他の種においても実施することができる。上述の方法で治療される対象は、ケモカイン受容体活性の調節が所望される雄または雌の哺乳動物である。本明細書に使用されるように、"調節" は、拮抗、作動、部分的拮抗、および/または部分的作動を包含することを意図する。
【0041】
ケモカイン受容体機能の阻害剤で治療することが可能なヒトまたは他の種の疾患または症状としては: 例えば炎症性またはアレルギー性の疾患および症状、例えば、喘息、アレルギー性鼻炎、過敏症肺障害、過敏性肺炎、好酸球性蜂巣炎(例えばウェルズ病)、好酸球性肺炎(例えば、レフラー症候群、慢性好酸球性肺炎)、好酸球性筋膜炎(例えばシュルマン症候群)、遅延型過敏症、間質性肺疾患(ILD)(例えば、突発性肺線維症、または、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、硬直性脊椎炎、全身性硬化症、シェーグレン症候群、多発筋炎または皮膚筋炎と関連した間質性肺疾患)などの呼吸器アレルギー疾患; 全身性アナフィラキシーまたは過敏反応、(例えばペニシリン、セファロスポリンに対する)薬物アレルギー、混入トリプトファンの摂取による好酸球増加筋痛症候群、虫刺されアレルギー; 慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、若年型糖尿病などの自己免疫疾患; 糸球体腎炎、自己免疫性甲状腺炎、ベーチェット病; (例えば移植における)同種移植反応または移植片対宿主病などの拒絶反応; クローン病および潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患; 脊椎関節症、強皮症; 乾癬(T細胞が仲介する乾癬を含む)、および皮膚炎、湿疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、蕁麻疹などの炎症性皮膚疾患; 血管炎(例えば、壊死性血管炎、皮膚血管炎、および過敏性血管炎); 好酸球性肺炎、好酸球性筋膜炎; 皮膚または器官の白血球浸潤のある癌、などが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくない炎症反応を抑制することが必要な他の疾患または症状の治療が可能であり、これには例えば再潅流傷害、アテローム性動脈硬化症、一部の血液悪性腫瘍、サイトカインにより誘導される毒性(例えば、敗血性ショック、エンドトキシンショック)、多発筋炎、皮膚筋炎が挙げられるが、これらに限定されない。ケモカイン受容体機能の阻害剤で治療することが可能なヒトまたは他の種の感染症または感染症状としてはHIVが挙げられるが、これに限定されない。
【0042】
ケモカイン受容体機能の促進剤で治療することが可能なヒトまたは他の種の疾患または症状としては以下が挙げられるが、これらに限定されない: AIDSまたは他のウィルス感染症などの免疫不全症候群を患う個人、または、免疫抑制を引き起こす放射線治療、化学療法、自己免疫疾患の治療、または薬物治療(例えば副腎皮質ホルモン療法)を受ける個人などにおける免疫抑制; 受容体機能の先天性欠損または他の原因による免疫抑制; および、寄生虫症などの感染症、例えば、限定することなく蠕虫感染症を含み、それは例えば、線虫(回虫); (鞭虫症、蟯虫症、回虫症、鉤虫症、糞線虫症、旋毛虫症、糸状虫病); 吸虫類(吸虫)(住血吸虫症、肝吸虫症)、条虫類(条虫)(包虫症、無鉤条虫症、嚢尾虫症); 内臓寄生虫、内臓幼虫移行症(例えばトキソカラ)、好酸球性胃腸炎(例えば、アニサキス(Anisaki sp)、フォカネマ(Phocanema sp))、皮膚幼虫移行症(アンキロストーマブラジリエンス(Ancylostoma braziliense)、アンキロストーマカニナム(Ancylostoma caninum))などである。従って、本発明の化合物は、広範な炎症性疾患、感染病、および免疫調節異常の予防および治療に有用である。加えて、ケモカイン受容体機能の促進剤については、仮にケモカイン受容体内在化の誘導または誤った細胞遊走となるような化合物の配送を通して細胞上の受容体発現の喪失を引き起こすのに十分な量の化合物を配送することを予定した場合は、前述の炎症性、アレルギー性、および自己免疫疾患の治療を予定することもできる。
【0043】
別の態様において、本発明は、Gタンパク質共役型受容体の推定上特異的な作動薬または拮抗薬を評価するのに使用し得る。本発明は、ケモカイン受容体の活性を調節する化合物のためのスクリーニングアッセイの準備および実行におけるこれらの化合物の使用を対象とする。さらには、本発明の化合物は、他の化合物のケモカイン受容体への結合サイトの立証または決定において有用であり、それは例えば、競合阻害によって、またはその既知の活性を未知の活性を持つ化合物と比較するためのアッセイにおける参照としてである。新しいアッセイまたはプロトコールを開発する場合、それらの有効性をテストするのに本発明の化合物を使用し得る。
【0044】
具体的には、そのような化合物は、例えば前述の疾患に関する薬学研究に使用するための市販用のキットに入れて提供し得る。本発明の化合物は、ケモカイン受容体の推定上特異的なモジュレーターの評価にも有用である。加えて、ケモカイン受容体ではないと考えられているGタンパク質共役型受容体の特異性を調べるために本発明の化合物を使用することが可能であり、それは、結合しない化合物の例、または、相互作用の特有のサイトを決定するのに役立つ可能性を持つ、これらの受容体に対して活性を持つ化合物の構造的変異形のいずれかとして機能することによる。
【0045】
炎症性疾患、感染症、および免疫調節異常、例えば喘息およびアレルギー性疾患、並びに、慢性関節リウマチおよびアテローム性動脈硬化症などの自己免疫病状、および上述の病状を予防および治療するための併用療法が、本発明の化合物とそのような用途について既知の他の化合物との組み合わせによって説明される。例えば、炎症の治療または予防において本発明の化合物は抗炎症剤または鎮痛剤、例えば、オピエート作動薬、リポキシゲナーゼ阻害剤、シクロオキシゲナーゼ-2阻害薬、インターロイキン阻害剤、例えばインターロイキン-1阻害剤、腫瘍壊死因子阻害剤、NMDA拮抗薬、一酸化窒素阻害剤または一酸化窒素合成阻害剤、非ステロイド性抗炎症剤、ホスホジエステラーゼ阻害薬、またはサイトカイン抑制抗炎症剤など、例えば、アセトアミノフェン、アスピリン、コデイン、フェンタニール、イブプロフェン、インドメタシン、ケトロラク、モルヒネ、ナプロキセン、フェナセチン、ピロキシカム、ステロイド性鎮痛薬、スフェンタニル、スンリンダク(sunlindac)、インターフェロンアルファなどの化合物と組み合わせて使用することができる。
【0046】
同様に、本発明の化合物は、鎮痛剤; 薬効増強剤(potentiator)、例えば、カフェイン、H2-拮抗薬、シメチコン、水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウム等; 充血除去剤、例えば、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、プソイドエフェドリン(pseudophedrine)、オキシメタゾリン、エピネフリン(ephinephrine)、ナファゾリン、キシロメタゾリン、プロピルヘキセドリン、またはレボデソキシ(levodesoxy)-エフェドリン等; 鎮咳薬、例えば、コデイン、ヒドロコドン、カラミフェン、カルベタペンタン、またはデキストロメトルファン(dextramethorphan)等; 利尿薬; および、鎮静または非鎮静抗ヒスタミン剤、と一緒に投与することができる。
【0047】
同様に、本発明の化合物は、本発明の化合物が有用である疾患または症状の治療/予防/抑制または改善に使用される他の薬剤と組み合わせて使用してもよい。そのような他の薬剤は、そのために一般的に使用される経路および量で、本発明の化合物と同時にまたは連続的に投与し得る。1つ以上の他の薬剤と同時に本発明の化合物を使用する場合には、本発明の化合物に加えて、そのような他の薬剤を含む医薬組成物が好ましい。従って、本発明の医薬組成物には、本発明の化合物に加えて1つ以上の他の活性成分を含むものも含まれる。
【0048】
本発明の化合物と組み合わせて、別々にまたは同じ医薬組成物の中に入れて投与し得る、他の活性成分の例としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:
(a) インテグリン拮抗薬、例えば、セレクチン、ICAM、およびVLA-4に対するもの等;
(b) ステロイド剤、例えば、ベクロメタゾン、メチルプレドニソロン、ベタメタゾン、プレドニゾン、デキサメサゾン、およびヒドロコルチゾン等;
(c) 免疫抑制剤、例えば、シクロスポリン、タクロリムス、ラパマイシン、および他のFK-506タイプの免疫抑制剤等;
【0049】
(d) 抗ヒスタミン剤(Hl-ヒスタミン拮抗薬)、例えば、ブロムフェニラミン(bromopheniramine)、クロルフェニラミン、デキスクロルフェニラミン、トリプロリジン、クレマスチン、ジフェンヒドラミン、ジフェニルピラリン、トリプレナミン、ヒドロキシジン、メトジラジン、プロメタジン、トリメプラジン、アザタジン、シプロヘプタジン、アンタゾリン、フェニラミン、ピリラミン、アステミゾール、テルフェナジン、ロラタジン、セチリジン、フェキソフェナジン、デスカルボエトキシロラタジン(descarboethoxyloratadine)等;
(e) 非ステロイド性抗喘息薬、例えば、b2-作動薬(テルブタリン、メタプロテレノール、フェノテロール、イソエタリン、アルブテロール(albuteral)、ビトルテロール、およびピルブテロール)、テオフィリン、クロモリンナトリウム、アトロピン、臭化イプラトロピウム、ロイコトリエン拮抗薬(ザフィルルカスト、モンテルカスト、プランルカスト、イラルカスト、ポビルカスト、SKB-102,203)、ロイコトリエン生合成阻害剤(ジレウトン、BAY-1005)等;
【0050】
(f) 非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、例えば、プロピオン酸誘導体(アルミノプロフェン、ベノキサプロフェン(benxaprofen)、ブクロクス酸、カルプロフェン、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルプロフェン、フルビプロフェン、イブプロフェン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ミロプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピルプロフェン、プラノプロフェン、スプロフェン、チアプロフェン酸、およびチオキサプロフェン)、酢酸誘導体(インドメタシン、アセメタシン、アルクロフェナク、クリダナク、ジクロフェナク、フェンクロフェナク、フェンクロズ酸、フェンチアザク、フロフェナク、イブフェナク、イソキセパク、オキセピナク(oxpinac)、スリンダク、チオピナク、トルメチン、ジドメタシン、およびゾメピラク)、フェナム酸誘導体(フルフェナム酸、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ニフルム酸、およびトルフェナム酸)、ビフェニルカルボン酸誘導体(ジフルニサルおよびフルフェニサール)、オキシカム系(イソキシカム、メロキシカム、ピロキシカム、スドキシカム、およびテノキシカム)、サリチル酸塩(アセチルサリチル酸、スルファサラジン)、およびピラゾロン系(アパゾン、ベンズピペリロン(bezpiperylon)、フェプラゾン、モフェブタゾン、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン)等;
【0051】
(g) シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)阻害薬;
(h) IV型ホスホジエステラーゼ(PDE-IV)の阻害薬;
(i) ケモカイン受容体の他の拮抗薬;
(j) コレステロール降下剤、例えば、HMG-COAレダクターゼ阻害薬(ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、および他のスタチン剤)、金属イオン封鎖剤(コレスチラミンおよびコレスチポル)、ニコチン酸(nicotonic acid)、フェノフィブリン酸誘導体(ゲムフィブロジル、クロフィブラート、フェノフィブラート、およびベザフィブラート(benzafibrate))、およびプロブコール等;
【0052】
(k) 抗糖尿病薬、例えば、インスリン、スルホニル尿素、ビグアニド剤(メトホルミン)、a-グルコシダーゼ阻害剤(アカルボース)、およびグリタゾン剤(トログリタゾンおよびピオグリタゾン)等;
(1) インターフェロン(インターフェロンアルファ-2a、インターフェロン-2B、インターフェロンアルファ-N3、インターフェロンベータ-la、インターフェロンベータ-Ib、インターフェロンガンマ-lb)の調製物;
(m) 抗ウィルス化合物、例えば、エファビレンツ、ネビラピン、インジナビル、ガンシクロビル、ラミブジン、ファムシクロビル、およびザルシタビン等;
(o) 他の化合物、例えば、5-アミノサリチル酸およびそのプロドラッグ、アザチオプリンおよび6-メルカプトプリンなどの代謝拮抗剤、並びに細胞傷害性癌化学療法薬等。
【0053】
本発明の化合物と第二の活性成分の重量比は変化してもよく、それは各成分の効果的な投与量に依存する。一般に、それぞれの効果的な投与量が使用される。従って、例えば本発明の化合物をNSAIDと組み合わせる場合、本発明の化合物とNSAIDの重量比は一般に約1000:1から約1:1000、好ましくは約200:1から約1:200の範囲にわたる。本発明の化合物と他の活性成分との組み合わせもまた一般に前述の範囲内にあるが、しかし各ケースにおいて各活性成分の効果的な量が使用されるべきである。
【0054】
これらの化合物は、治療上効果的な量で哺乳動物に投与される。"治療上効果的な量"とは、単独で、またはさらなる治療剤と共に哺乳動物に投与された場合に、血栓塞栓症の症状またはその疾患の進行を予防または改善するのに効果的な式Iの化合物の量を意味する。
本発明の化合物は、錠剤、カプセル剤(それぞれ徐放型またはタイムリリース型製剤を含む)、丸薬、粉末剤、顆粒剤、エリキシル剤、チンキ剤、懸濁剤、シロップ剤、および乳剤などの経口用製剤で投与し得る。また、それらは、静脈内(ボーラスまたは注入)、腹腔内、皮下、または筋肉内の方法で投与してもよく、それらはすべて医薬の当業者によく知られた製剤を使用して行われる。それらは単独で投与してもよいが、一般には選択した投与経路および標準的な医薬手法を基準として選択された医薬担体と一緒に投与される。
【0055】
本発明の化合物のための投与計画は当然のことながら既知の要素に依存して異なり、それは例えば、特定の薬剤の薬理学的特性およびその投与法および投与経路; 投与を受ける対象の種、年齢、性別、健康状態、病状、および体重; 症状の種類および程度; 併用療法の種類; 治療の頻度; 投与経路、患者の肺機能および肝臓機能、および所望の効果などである。医者または獣医は、血栓塞栓症の進行を予防し、押しとどめ、または停止させるのに効果的な量の薬剤を判断および処方することができる。
一般論として、示した効果のために使用する場合における各活性成分の経口による日用量は、体重1kgあたり約0.001〜1000mg、好ましくは1日体重1kgあたり約0.01〜100mg、そして最も好ましくは1日体重1kgあたり約1.0〜20mgの範囲内である。静脈内投与の場合、最も好ましい投与量は、定速注入の間、体重1kgあたり毎分約1から約10mgの範囲内である。本発明の化合物は1回の日用量で投与してもよいし、または合計日用量を1日に2回、3回、または4回の量に分割して投与してもよい。
【0056】
本発明の化合物は、適切な鼻腔内担体の局所的使用による鼻腔内法で投与してもよいし、または経皮用皮膚パッチ剤を使用して経皮経路で投与してもよい。経皮送達システムの方法で投与した場合、薬剤投与は当然のことながら投与計画を通して断続的よりもむしろ連続的となる。
化合物は典型的には適切な医薬用希釈剤、賦形剤、または担体(本明細書において、まとめて医薬担体と表す)との混合物として投与され、それらは意図する投与方法、即ち経口の錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、シロップ剤などと関連して、そして慣習の医薬実務に適合するように適切に選択される。
【0057】
例えば錠剤またはカプセル剤の形態による経口投与については、活性薬剤成分は、経口用であり、無毒性であり、医薬的に許容される不活性担体、例えば、ラクトース、デンプン、シュークロース、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、第二リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、ソルビトールなどと組み合わされてもよく; 液体形態による経口投与については、経口用薬剤成分は、経口用であり、無毒性であり、医薬的に許容されるあらゆる不活性担体、例えば、エタノール、グリセロール、水などと組み合わされてもよい。さらに、所望または必要の場合には、適切な結合剤、滑沢剤、崩壊剤、および着色剤をこの混合物に含ませてもよい。適切な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、グルコースまたはベータ-ラクトースなどの自然糖、トウモロコシ甘味料、アカシアゴム、トラガカントゴムなどの天然および合成ゴム、またはアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどが挙げられる。これらの製剤に使用される滑沢剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、などが挙げられる。崩壊剤としては、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
本発明の化合物はまた、リポソーム送達システムの形態、例えば小単層ベシクル、大単層ベシクル、および複層ベシクルとして投与することができる。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミン、またはホスファチジルコリンなどの様々なリン脂質から形成することができる。
本発明の化合物はまた、標的薬剤担体として水溶性ポリマーと組み合わせてもよい。そのようなポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド-フェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミドフェノール、またはポリエチレンオキシドポリリジンが挙げられ、それはパルミトイル残基で置換されている。
さらには、本発明の化合物は、薬剤の制御放出を成し遂げるのに有用な生物分解性ポリマーのクラス、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸のコポリマー、ポリεカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアシラート、および架橋されたまたは両親媒性のヒドロゲルのブロックコポリマーに組み合わせてもよい。
【0059】
投与に適した製剤(医薬組成物)は、投与単位あたり約1mgから約100mgまでの活性成分を含み得る。
通常、これらの医薬組成物において、活性成分は組成物全体の重量を基準として約0.5-95%の量で存在する。
ゼラチンカプセル剤は、活性成分、および、ラクトース、デンプン、セルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸などの粉末化担体を含み得る。同様の希釈剤を使用して圧縮錠剤を作製してもよい。錠剤とカプセル剤の両方ともに、徐放性の製品として製造して何時間かの期間を通して薬剤を連続的に放出するようにしてもよい。圧縮した錠剤は糖衣またはフィルムコーティングを施して、いかなる不快な味を覆い隠しかつ錠剤を空気から保護し、または胃腸管における選択的崩壊のために腸溶性コーティングしてもよい。
経口投与のための液体投与形態は、患者許容性を増すために着色料および香味料を含んでもよい。
【0060】
一般に、水、適切な油、生理食塩水、デキストロース(グルコース)水溶液、および関連する糖溶液、並びに、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのグリコール類が、非経口用溶液に適した担体である。非経口投与用の溶液は、好ましくは活性成分の水溶性塩、適切な安定化剤、そして必要により緩衝剤を含んでもよい。亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、またはアスコルビン酸などの抗酸化剤は、単独または組み合わせを問わず適切な安定化剤である。クエン酸およびその塩およびEDTAナトリウムも使用される。加えて、非経口用溶液は、塩化ベンザルコニウム、メチル-またはプロピル-パラベン、およびクロロブタノールなどの保存料を含んでもよい。
適切な医薬担体については、この分野の標準的な参考書であるReminqton's Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Company)に説明されている。
【0061】
本発明の化合物の投与のための代表的な有用な医薬製剤は、以下のように説明できる:
カプセル剤
標準的なツーピース式硬ゼラチンカプセルに、それぞれ100mgの粉末化活性成分、150mgのラクトース、50mgのセルロース、および6mgのステアリン酸マグネシウムを充填することによって、数多くのカプセル剤を調製することができる。
軟ゼラチンカプセル
活性成分を大豆油、綿実油、またはオリーブ油などの消化可能な油に入れた混合物を調製し、容量型ポンプによってゼラチンの中に注入することによって、100mgの活性成分を含む軟ゼラチンカプセルを形成することができる。カプセル剤は洗浄および乾燥すべきである。
【0062】
錠剤
投与単位が、100mgの活性成分、0.2mgのコロイド状二酸化ケイ素、5mgのステアリン酸マグネシウム、275mgの微結晶性セルロース、11mgのデンプン、および98.8mgのラクトースとなるように、従来法によって錠剤を調製することができる。適切なコーティングを施して嗜好性を増したり、または吸収を遅らせたりすることができる。
注射製剤
1.5重量%の活性成分を含む10容量%プロピレングリコールおよび水を撹拌することによって、注射による投与に適した非経口用組成物を調製することができる。この溶液は、塩化ナトリウムで等張化し、そして滅菌するべきである。
懸濁剤
各5mLの中に、100mgの細かく分離させた活性成分、200mgのカルボキシメチルセルロースナトリウム、5mgの安息香酸ナトリウム、1.0gのソルビトール溶液、U. S. P.、および0.025mLのバニリンが含まれるように、経口投与のための水性懸濁剤を調製することができる。
【0063】
本発明の化合物を他の抗凝血剤と組み合わせる場合、日用量は例えば患者の体重1kgあたり約0.1から100mgの式Iの化合物そして約1から7.5mgの第二の抗凝血剤であり得る。錠剤の剤形については、一般に、本発明の化合物は投与単位あたり約5から10mgの量で、そして第二の抗凝血剤は投与単位あたり約1から5mgの量で存在し得る。
一般に、式Iの化合物と一緒に前述の治療薬剤を2つ以上投与する場合は、組み合わせて投与した場合における治療薬剤の相加効果または相乗効果を考慮して、典型的な日用量および典型的な製剤の中の各成分の量を、単独で投与された場合のその薬剤の通常の投与量と比較して削減してもよい。
【0064】
特に、単一の製剤として提供した場合、組み合わせた活性成分の間に化学的相互作用が存在する可能性がある。この理由のため、式Iの化合物と第二の治療薬剤を単一の投与単位に組み合わせた場合には、活性成分が単一の投与単位中に組み合わされているものの、活性成分の間の物理的接触が最小限化(即ち低減)されるように調剤されている。例えば、1つの活性成分を腸溶性コーティングしてもよい。活性成分の1つを腸溶性コーティングすることにより、組み合わせた活性成分の間の接触を最小限化することが可能となるだけでなく、これらの成分の1つが胃の中で放出されずにむしろ腸の中で放出されるようにこれらの化合物の1つの胃腸管における放出を制御することが可能となる。また、胃腸管を通しての徐放性をもたらし、かつ、同時に組み合わされた活性成分の間の物理的接触を最小限化するのに役立つ物質で、活性成分の1つをコーティングすることもできる。
【0065】
さらには、徐放性の成分をさらに腸溶性コーティングして、この成分が腸においてのみ放出されるようにすることができる。さらなる別のアプローチは、1つの成分を徐放性および/または腸溶性のポリマーでコーティングし、そして、他方の成分もまた低粘度グレードのヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)または当分野に既知の他の適当な物質などのポリマーでコーティングすることによって、活性成分同士をさらに分離した組み合わせ製剤を調剤することを含む。このポリマーコーティングは、他の成分との相互作用のさらなる仕切りとして機能する。
【0066】
本明細書の開示内容を一度把握すれば、当業者は、本発明の組み合わせ製剤の成分間の接触を最小限化するためのこれらおよび他の方法を、単一製剤で投与する場合、または別々の製剤ではあるが同時に同態様で投与する場合を問わず、容易に理解することができる。
当業者が理解するように、上記の記述を踏まえて本発明の多くの修正、変更が可能である。従って、特許請求の範囲において、本発明は本明細書に説明するのとは別の方法で実施することが可能であることが理解されるべきである。
【実施例】
【0067】
実施例 101
3-(2-ブロモベンジリデン)-1,2,3,9-テトラヒドロ-ピロロ[2, 1-b]キナゾリン
a) 61.1gの2-アミノ-ベンジルアミンと47.35gのγブチロラクトンの混合物を200℃で2時間撹拌し、冷まし、100mlのトルエンで希釈した。この混合物を還流下で加熱して濃縮した。残渣に200mlのPOCl3を加え、そして還流下で2時間加熱した。残ったPOCl3を蒸留して除き、32%のNaOH溶液で残渣を加水分解およびアルカリ化した。得られた溶液を700mlのジクロロメタンで3回洗浄し、そして一緒にした有機相を水で2回洗浄した。該有機相をMgSO4 上で乾燥させ、そして濃縮した。残ったオイルは、短時間で固まり、55gのクルードな1,2,3,9-テトラヒドロ-ピロロ[2,1-b]キナゾリン(純度: 85%)を得た。このクルードな生成物を、さらに精製することなく次の工程の中で使用した。
b) 3.85gのクルードな 1,2,3,9-テトラヒドロ-ピロロ[2,1-b]キナゾリンと5gの2-ブロモベンズアルデヒドの混合物を、撹拌しながら160℃で2時間加熱した。この混合物は周囲温度で固まり、それをジクロロメタンで希釈した。得られた混合物に20mlのメタノールを加え、ジクロロメタンを蒸留して除くと、すぐに生成物が再び固まる。得られた固体化合物を単離し、そして冷メタノールで洗浄した。収量: 2.25gの黄色結晶、融点 203-204℃。
同様に、以下の表Iの式I-100の化合物および化合物A-126を得た:









































【0068】
【表1−1】



【0069】
【表1−2】

【0070】
実施例 126:
6-(2-クロロベンジリデン)-6,8,9,11-テトラヒドロ-7H-ピリド[2,1-b]キナゾリン
融点: 242-248℃
実施例 127:
3-(2-エチルベンジリデン)-1,2,3,9-テトラヒドロ-ピロロ[2,1-b]キナゾリンが、実施例 110の化合物の水素添加によって得られた。
融点: 224-225℃(塩酸塩として)
【0071】
実施例 201:
3-(2-ブロモベンジリデン)-9-イミノ-2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-b]キナゾリン
a) 11.8gの2-アミノ-ベンゾニトリルと13.6gの5-メトキシ-3,4-ジヒドロ-2H-ピロールの混合物を120℃で1.5 Std.加熱し、続いて撹拌しながら155℃で12時間加熱した。周囲温度に冷ましたところで、この混合物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン/メタノール、および6M NH3 97:3)により精製して、6.65gの2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-b]キナゾリン-9-イリデンアミン、融点: 129-130℃を得た。
b) 1gの2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-b]キナゾリン-9-イリデンアミンと1.12gの2-ブロモベンズアルデヒドの混合物を、撹拌しながら160℃で3時間撹拌したところ、すぐに生成物が固まった。冷ましたところで100mlのジクロロメタンを加え、そして得られた混合物に20gのシリカゲルを加えた。ジクロロメタンを蒸留で除き、そして残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン/メタノール 95:5)で精製し、融点が205℃の0.18gの黄色結晶を得た。
同様に、以下の表IIの式I-200および実施例 215の化合物を得た:





























【0072】
【表2】

【0073】
実施例 215:
5-(2-ブロモベンジリデン)-3,5,6,7-テトラヒドロ-1,3,4,7a-テトラアザ-s-インダゼン-8-イリデンアミン
融点: 260℃(ギ酸塩として)
【0074】
実施例 301:
7-(2-ブロモベンジリデン)-6,7-ジヒドロ-5H-1-チア-4a,8-ジアゾ-s-インダセン-4-イリデンアミン
a) 6.2gの2-アミノ-3-シアノ-チオフェンと5.95gの5-メトキシ-3,4-ジヒドロ-2H-ピロールの混合物を120℃で2時間、そして撹拌しながら155℃で1時間加熱した。周囲温度に冷ましたところで、この混合物をアセトンで希釈し、そして固体粒子をろ過して除いた。この混合物を濃縮し、そしてメタノールを加えた。この混合物をアルコール性HClで酸性にした。続いて、ジエチルエーテルを加えてこの生成物を沈殿させ、そして乾燥させて、淡黄色結晶として4.5gの6,7-ジヒドロ-5H-1-チア-4a,8-ジアザ-s-インダセン-4-イリデンアミン塩酸塩を得た。
【0075】
b) 6,7-ジヒドロ-5H-1-チア-4a,8-ジアザ-s-インダセン-4-イリデンアミン、ジクロロメタン、およびメタノールの混合物を濃NaOHで処理して遊離塩基を解放させた。0.96gのこの遊離塩基と1.1gの2-ブロモベンズアルデヒドの混合物を、撹拌しながら130℃で1時間加熱した。周囲温度に冷ましたところで、この混合物をメタノールで希釈した。形成した結晶を分離し、メタノール、ジクロロメタン、およびジエチルエーテルで洗浄し、そして乾燥させて、薄茶色結晶(融点228℃)として1.3gの(2-ブロモフェニル)-(4-イミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-1-チア-4a,8-ジアザ-s-インダセン-7-イル)-メタノールを得た。
【0076】
c) 0.8gの(2-ブロモフェニル)-(4-イミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-1-チア-4a,8-ジアザ-s-インダセン-7-イル)-メタノールと5mlのPOCl3の混合物を150℃で2時間加熱した。周囲温度に冷ましたところで、この混合物に氷水を加え、そして形成した沈殿を分離した。この固体生成物を水に懸濁し、濃NaOHで処理し、そしてジクロロメタンで抽出した。有機相をNa2SO4上で乾燥させ、ろ過し、そして濃縮した。残渣をアセトンと一緒に撹拌し、そして結晶を分離して黄色結晶(融点183-184℃)として0.3gの7-(2-ブロモベンジリデン)-6,7-ジヒドロ-5H-1-チア-4a,8-ジアゾ-s-インダセン-4-イリデンアミンを得た。
同様に、以下の表IIIの式I-300の化合物を得た:





















【0077】
【表3】

【0078】
本明細書に先に説明したCCR3-受容体結合プロトコールを使用して得られた、テストした本発明の化合物の親和性を表IVに示しており、ここで親和性は以下のように評価される:













































【0079】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)の化合物。

(I)
(式中、
R1 と R2 は、それぞれ独立に水素原子、または、C1-C6-アルキル、C2-C6-アルケニル、C2-C6-アルキニル、C3-C8-シクロアルキル、C3-C8-シクロアルキル-C1-C6-アルキル、NH2、-NH(C1-C6-アルキル)、-N(C1-C6-アルキル)2、アリール、またはアリール-C1-C6-アルキル基を表し、これらの基はいずれも必要によりハロゲン、OR6、SR6、シアノ、COOR6、CONR6R7、NR6R7、NR6COR5、SOR6、SO2R6、およびC1-C6-ハロアルキルからなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、
R1 と R2 は、間にある炭素原子と共に3- から8-員のシクロアルキル環を形成し、それはハロゲン、C1-C6-アルキル、OR6、SR6、シアノ、およびC1-C6-ハロアルキルからなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、または、
R1 と R2 は、一緒になって=NR4基を形成し;
R3 は、水素原子、または、C1-C18-アルキル、C2-C6-アルケニル、C2-C6-アルキニル、C3-C8-シクロアルキル、C3-C8-シクロアルキル-C1-C6-アルキル、アリール、またはアリール-C1-C6-アルキル、COOR5、CR6R7OH、またはCONR6R7基を表し、これらの基はいずれも必要によりハロゲン、OR6、SR6、CN、COOR6、CONR6R7、NR6R7、NR6COR5、SOR6、SO2R6、およびC1-C6-ハロアルキルからなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
R4 は、水素原子、または、COOR5、COR5、OR6、シアノ、またはニトロ基; またはC1-C6-アルキル基(必要によりハロゲン、OR6、SR6、CN、COOR6、CONR6R7、NR6R7、NR6COR5、SOR6、SO2R6、およびC1-C6-ハロアルキルからなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよい)を表し; または、
R2 と R3 は、間にある CR1-N-CH- 基と共に5- から 8-員環を形成し; または、
R3 と R4 は、間にある -N=30N-CH- 基と共に5- から 8-員環を形成し;
R5 は、水素原子、または、C1-C18-アルキル、C2-C6-アルケニル、C2-C6-アルキニル、C3-C8-シクロアルキル、C3-C8-シクロアルキル-C1-C6-アルキル、アリール、またはアリール-C1-C6-アルキル基を表し、これらの基はいずれも必要によりハロゲン、OR6、SR6、CN、COOR6、CONR6R7、NR6R7、NR6COR5、SOR6、SO2R6、およびC1-C6-ハロアルキルからなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
R6 と R7 は、それぞれ独立に水素原子、または、C1-C18-アルキル、C3-C8-シクロアルキルアリール、またはアリール-C1-C6-アルキル基を表し; または、
R6 と R7 は、間にある窒素原子と共に3-8-員複素環を形成し;
E1 と E2 はそれぞれ水素原子を表すか、または一緒になって二重結合を形成し;
X は、水素またはハロゲン原子、または、C1-C6-アルキル、C2-C6-アルケニル、C2-C6-アルキニル、C3-C8-シクロアルキル、C3-C8-シクロアルキル-C1-C6-アルキル、OR6、SR6、NR6R7、またはアリールを表し;
環A は1つ以上のR6基で置換されていてもよく;
アリール、Ar1 、およびAr2 は、それぞれ独立に6-から10-員のホモ芳香族基、または、窒素、酸素、および硫黄からなる群より選択されるヘテロ原子を最大で3個まで含む5-から10-員のヘテロ芳香族基を表し; これらの各基は、C1-C6-アルキル、フェニル、ハロゲン、OR6、SR6、シアノ、ニトロ、COOR6、COR6、CONR6R7、NR6R7、NR6COR5、NR6SO2R5、SOR6、SO2R6、SO2NR6R7、C1-C6-ハロアルキル、C1-C6-ハロアルコキシ、およびC3-C8-シクロアルキルからなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく; そして、
n は、1から4の整数を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載の式Iの化合物であって、式中、
アリール、Ar1 、およびAr2 は、それぞれ独立に、フェニル、チエニル、フラニル、ピロリル、ピリジル、ピリミジル、ナフチル、ベンゾチオフェニル、インドリル、チアゾリル、オキサゾリル、およびイミダゾリルからなる群より選択され、これらの各基は、C1-C6-アルキル、ハロゲン、OR6、SR6、シアノ、ニトロ、COOR6、COR6、CONR6R7、NR6R7、NR6COR5、NR6SO2R5、SOR6、SO2R6、SO2NR6R7、C1-C6-ハロアルキル、C1-C6-ハロアルコキシ、およびC3-C8-シクロアルキルからなる群より選択される1つ、2つ、または3つの置換基で置換されていてもよい、上記化合物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の式Iの化合物であって、式中、
R1 と R2 は、それぞれ独立に水素原子、またはC1-C6-アルキル基を表し、
R1 と R2 は、一緒になって=NR4基を形成し;
R3 は、水素原子またはC1-C18-アルキル基を表し、
R4 は、水素原子、またはC1-C6-アルキルまたはシアノ基を表し、
E1 と E2 は、一緒になって二重結合を形成し;
Ar1 は、フェニル、チオフェン、またはフラン基を表し、それはC1-C6-アルキル、ハロゲン、OR6、SR6、シアノ、ニトロ、COOR6、COR6、CONR6R7、NR6R7、NR6COR5、NR6SO2R5、SOR6、SO2R6、SO2NR6R7、C1-C6-ハロアルキル、およびC3-C8-シクロアルキルからなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、
Ar2 は、フェニル、チエニル、またはフラニル基を表し、それはC1-C6-アルキル、ハロゲン、OR6、SR6、シアノ、ニトロ、COOR6、COR6、CONR6R7、NR6R7、NR6COR5、NR6SO2R5、SOR6、SO2R6、SO2NR6R7、C1-C6-ハロアルキル、C1-C6-ハロアルコキシ、およびC3-C8-シクロアルキルからなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、
n は1または2を表す、上記化合物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の式Iの化合物であって、式中、
R1 と R2 は、水素原子を表し、または、
R1 と R2 は、一緒になって=NR4基を形成し;
R3 と R4 は、それぞれ独立に水素原子またはC1-C6-アルキル基を表し、
E1 と E2 は、一緒になって二重結合を形成し;
Ar1 は、フェニル、チオフェン、またはフラン基を表し、それはC1-C6-アルキル、ハロゲン、C1-C6-ハロアルキル、およびC3-C6-シクロアルキルからなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、
Ar2 は、フェニル、チエニル、またはフラニル基を表し、それはハロゲン原子で置換されていてもよく、
n は1を表し; そして、
X は水素原子を表す、上記化合物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の式Iの化合物であって、式中、
Ar2 は、フェニル、チエニル、またはフラニル基を表し、それはオルト位においてハロゲン原子で置換されている、上記化合物。
【請求項6】
医薬品としての請求項1から5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項7】
CCR3 活性のモジュレーターが治療上の利益を持つ疾患を予防および/または治療するための医薬品を調製するための、請求項1から5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項8】
CCR3 活性のモジュレーターが治療上の利益を持つ疾患を治療または予防する方法であって、治療上または予防上に効果的な量の請求項1から5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物を、それが必要な患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項9】
請求項1から5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物を1つ以上含む医薬組成物。
【請求項10】
式(I)の化合物を調製するための方法であって、下記式(II)の化合物

(II)
(式中、Ar1、A、R1、R2、R3、およびn は、請求項1から5において与えられた意味を持つ)
を、下記式(III)の化合物

(II)
(式中、Ar2 および X は、請求項1から5において与えられた意味を持つ)
と反応させ、そしてE1および E2 が水素原子である場合には必要によりその後水素化を行う、上記方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)の化合物。

(I)
(式中、
R1 と R2 は、それぞれ独立に水素原子、または、C1-C6-アルキル、C2-C6-アルケニル、C2-C6-アルキニル、C3-C8-シクロアルキル、C3-C8-シクロアルキル-C1-C6-アルキル、NH2、-NH(C1-C6-アルキル)、-N(C1-C6-アルキル)2、アリール、またはアリール-C1-C6-アルキル基を表し、これらの基はいずれも必要によりハロゲン、OR6、SR6、シアノ、COOR6、CONR6R7、NR6R7、NR6COR5、SOR6、SO2R6、およびC1-C6-ハロアルキルからなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、
R1 と R2 は、間にある炭素原子と共に3- から8-員のシクロアルキル環を形成し、それはハロゲン、C1-C6-アルキル、OR6、SR6、シアノ、およびC1-C6-ハロアルキルからなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、または、
R1 と R2 は、一緒になって=NR4基を形成し;
R3 は、水素原子、または、C1-C18-アルキル、C2-C6-アルケニル、C2-C6-アルキニル、C3-C8-シクロアルキル、C3-C8-シクロアルキル-C1-C6-アルキル、アリール、またはアリール-C1-C6-アルキル、COOR5、CR6R7OH、またはCONR6R7基を表し、これらの基はいずれも必要によりハロゲン、OR6、SR6、CN、COOR6、CONR6R7、NR6R7、NR6COR5、SOR6、SO2R6、およびC1-C6-ハロアルキルからなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
R4 は、水素原子、または、COOR5、COR5、OR6、シアノ、またはニトロ基; またはC1-C6-アルキル基(必要によりハロゲン、OR6、SR6、CN、COOR6、CONR6R7、NR6R7、NR6COR5、SOR6、SO2R6、およびC1-C6-ハロアルキルからなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよい)を表し; または、
R2 と R3 は、間にある CR1-N-CH- 基と共に5- から 8-員環を形成し; または、
R3 と R4 は、間にある -N=30N-CH- 基と共に5- から 8-員環を形成し;
R5 は、水素原子、または、C1-C18-アルキル、C2-C6-アルケニル、C2-C6-アルキニル、C3-C8-シクロアルキル、C3-C8-シクロアルキル-C1-C6-アルキル、アリール、またはアリール-C1-C6-アルキル基を表し、これらの基はいずれも必要によりハロゲン、OR6、SR6、CN、COOR6、CONR6R7、NR6R7、NR6COR5、SOR6、SO2R6、およびC1-C6-ハロアルキルからなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
R6 と R7 は、それぞれ独立に水素原子、または、C1-C18-アルキル、C3-C8-シクロアルキルアリール、またはアリール-C1-C6-アルキル基を表し; または、
R6 と R7 は、間にある窒素原子と共に3-8-員複素環を形成し;
E1 と E2 はそれぞれ水素原子を表すか、または一緒になって二重結合を形成し;
X は、水素またはハロゲン原子、または、C1-C6-アルキル、C2-C6-アルケニル、C2-C6-アルキニル、C3-C8-シクロアルキル、C3-C8-シクロアルキル-C1-C6-アルキル、OR6、SR6、NR6R7、またはアリールを表し;
環A は1つ以上のR6基で置換されていてもよく;
アリール、Ar1 、およびAr2 は、それぞれ独立に6-から10-員のホモ芳香族基、または、窒素、酸素、および硫黄からなる群より選択されるヘテロ原子を最大で3個まで含む5-から10-員のヘテロ芳香族基を表し; これらの各基は、C1-C6-アルキル、フェニル、ハロゲン、OR6、SR6、シアノ、ニトロ、COOR6、COR6、CONR6R7、NR6R7、NR6COR5、NR6SO2R5、SOR6、SO2R6、SO2NR6R7、C1-C6-ハロアルキル、C1-C6-ハロアルコキシ、およびC3-C8-シクロアルキルからなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく; そして、
n は、1から4の整数を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載の式Iの化合物であって、式中、
アリール、Ar1 、およびAr2 は、それぞれ独立に、フェニル、チエニル、フラニル、ピロリル、ピリジル、ピリミジル、ナフチル、ベンゾチオフェニル、インドリル、チアゾリル、オキサゾリル、およびイミダゾリルからなる群より選択され、これらの各基は、C1-C6-アルキル、ハロゲン、OR6、SR6、シアノ、ニトロ、COOR6、COR6、CONR6R7、NR6R7、NR6COR5、NR6SO2R5、SOR6、SO2R6、SO2NR6R7、C1-C6-ハロアルキル、C1-C6-ハロアルコキシ、およびC3-C8-シクロアルキルからなる群より選択される1つ、2つ、または3つの置換基で置換されていてもよい、上記化合物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の式Iの化合物であって、式中、
R1 と R2 は、それぞれ独立に水素原子、またはC1-C6-アルキル基を表し、
R1 と R2 は、一緒になって=NR4基を形成し;
R3 は、水素原子またはC1-C18-アルキル基を表し、
R4 は、水素原子、またはC1-C6-アルキルまたはシアノ基を表し、
E1 と E2 は、一緒になって二重結合を形成し;
Ar1 は、フェニル、チオフェン、またはフラン基を表し、それはC1-C6-アルキル、ハロゲン、OR6、SR6、シアノ、ニトロ、COOR6、COR6、CONR6R7、NR6R7、NR6COR5、NR6SO2R5、SOR6、SO2R6、SO2NR6R7、C1-C6-ハロアルキル、およびC3-C8-シクロアルキルからなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、
Ar2 は、フェニル、チエニル、またはフラニル基を表し、それはC1-C6-アルキル、ハロゲン、OR6、SR6、シアノ、ニトロ、COOR6、COR6、CONR6R7、NR6R7、NR6COR5、NR6SO2R5、SOR6、SO2R6、SO2NR6R7、C1-C6-ハロアルキル、C1-C6-ハロアルコキシ、およびC3-C8-シクロアルキルからなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、
n は1または2を表す、上記化合物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の式Iの化合物であって、式中、
R1 と R2 は、水素原子を表し、または、
R1 と R2 は、一緒になって=NR4基を形成し;
R3 と R4 は、それぞれ独立に水素原子またはC1-C6-アルキル基を表し、
E1 と E2 は、一緒になって二重結合を形成し;
Ar1 は、フェニル、チオフェン、またはフラン基を表し、それはC1-C6-アルキル、ハロゲン、C1-C6-ハロアルキル、およびC3-C6-シクロアルキルからなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、
Ar2 は、フェニル、チエニル、またはフラニル基を表し、それはハロゲン原子で置換されていてもよく、
n は1を表し; そして、
X は水素原子を表す、上記化合物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の式Iの化合物であって、式中、
Ar2 は、フェニル、チエニル、またはフラニル基を表し、それはオルト位においてハロゲン原子で置換されている、上記化合物。
【請求項6】
医薬品としての請求項1から5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項7】
CCR3 活性のモジュレーターが治療上の利益を持つ疾患を予防および/または治療するための医薬品を調製するための、請求項1から5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項8】
請求項1から5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物を1つ以上含む医薬組成物。
【請求項9】
式(I)の化合物を調製するための方法であって、下記式(II)の化合物

(II)
(式中、Ar1、A、R1、R2、R3、およびn は、請求項1から5において与えられた意味を持つ)
を、下記式(III)の化合物

(II)
(式中、Ar2 および X は、請求項1から5において与えられた意味を持つ)
と反応させ、そしてE1および E2 が水素原子である場合には必要によりその後水素化を行う、上記方法。

【公表番号】特表2006−515002(P2006−515002A)
【公表日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−518417(P2005−518417)
【出願日】平成16年2月5日(2004.2.5)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001043
【国際公開番号】WO2004/072074
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】