説明

ピロロ[2,3−d]ピリミジン誘導体、その中間体及び合成

【課題】ピロロ[2,3-d]ピリミジン化合物の合成に有用な方法及び中間体。
【解決手段】3-{(3R,4R)-4-メチル-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミノ}-ピペリジン-1-イル)-3-オキソ-プロピオニトリル、及びその対応するクエン酸塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ピロロ[2,3-d]ピリミジン化合物及びその合成に有用な中間体の合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
ピロロ[2,3-d]ピリミジン化合物は、プロテインキナーゼ、例えば酵素Janus Kinase(JAK3)の強力な阻害剤であり、幅広い免疫疾患の治療に有用である。かかる疾患は、狼瘡、多発性硬化症、リウマチ様関節炎、乾癬、I型糖尿病、及び糖尿病、癌、喘息、アトピー性皮膚炎、自己免疫甲状腺疾患、潰瘍性大腸炎、クーロン病、アルツハイマー病及び白血病由来の合併症を含むがこれらに限定されない。当該化合物は、慢性又は急性の臓器移植拒絶(同種移植及び異種移植)の治療及び予防に有用である。
【0003】
具体的なピロロ[2,3-d]ピリミジン化合物、その使用方法、及びその合成及び中間体は、本発明の譲受人に共通に譲渡された、米国特許第6,627,754号明細書、WO 02096909、WO 03048162及び米国出願公開2004/0102627A1に記載され、その全体が参考として援用される。米国特許第6,627,754号明細書は、プロテインキナーゼの阻害剤(例えば酵素JAK3)として、化合物、3-{4-メチル-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミノ})-ピペリジン-1-イル)-3-オキソ-プロピオニトリル及びその対応するクエン酸塩を記載し、それ自体、臓器移植、異種移植、狼瘡、多発性硬化症、リウマチ様関節炎、乾癬、I型糖尿病、及び糖尿病、癌、喘息、アトピー性皮膚炎、自己免疫甲状腺疾患、潰瘍性大腸炎、クーロン病、アルツハイマー病及び白血病由来の合併症、及び免疫抑制が望ましい他の兆候、の免疫抑制剤として治療に有用である。米国出願公開2004/0102627A1は、中間体、cis-(1-ベンジル-4-メチル-ピペリジン-3-イル)-メチル-アミン塩酸塩の合成を記載する。これは、3-{(3R,4R)-4-メチル-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミノ})-ピペリジン-1-イル)-3-オキソ-プロピオニトリル及びその対応するクエン酸塩の合成に有用である。
【発明の開示】
【0004】
発明の概要
上記のピロロピリミジン化合物、具体的には、3-{(3R,4R)-4-メチル-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミノ})-ピペリジン-1-イル)-3-オキソ-プロピオニトリルの従来の合成は、全て、収率が低く、4-クロロピロロピリミジンと求核試薬、具体的には、(3R,4R)-(1-ベンジル-4-メチル-ピペリジン-3-イル)-メチルアミン及びその塩、とのカップリングが遅いことが問題であった。
4位に脱離基を有するピロロピリミジン骨格への除去可能な活性基の導入は、求核試薬、特に(3R,4R)-(1-ベンジル-4-メチル-ピペリジン-3-イル)-メチルアミン及びその塩との反応についての収率及び反応時間を顕著に改善する、ことが驚くべきことに見出された。上記の合成法の1局面を実施する点で有用である鍵中間体、2,4-ジクロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジンの合成は、既に記載されている(Saxene, S. K.他, J. Med. Chem., 31, 1501, 1988; 収率26.5%;WO 04021979; 収率41%)。しかしながら、その文献に記載の合成は、所望の生成物の収率が低かった。出発物質、7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-2,4ジオールとの反応に使用される、オキシ塩化リン及びトリアルキルアミン塩基の量を注意深く調節することにより、所望の生成物を著しく改善された収率で得ることができる。
【0005】
キラル補助剤を使用しない、ピリジニウム塩の不斉水素化に関する従来の実施(Glorius, F.他, Angew. Chem. Int. Ed., 43, 2859, 2004及びそこに引用される文献;Legault, C. Y. 他, J. Am. Chem. Soc. 127, 8966, 2005; これらはその全体が参考文献として援用される)は、典型的には、ピペリジンの形成をもたらしたが、低エナンチオ過剰率(ee)であった。好適に置換されたN-ベンジルもしくは置換N-ベンジルピリジニウム塩又は好適に置換されたN-ベンジルもしくは置換N-ベンジルテトラヒドロピリジンの、ある不斉水素化触媒による不斉水素化は、上記のピロロピリミジン化合物、特に、3-{(3R,4R)-4-メチル-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミノ}-ピペリジン-1-イル)-3-オキソ-プロピニトリルの合成に有用であるエナンチオ過剰ピペリジン誘導体を生成する。
【0006】
本明細書に具体的にかつ広く記載されているように、本発明は、1つの局面では、下記式IIa:
【0007】
【化1】

【0008】
[式中、L1は脱離基であり、X1は活性基である。]
の活性化ピロロピリミジン化合物を、下記式IIIa:
【0009】
【化2】

【0010】
[式中、R1は(C1−C6)アルキルであり;aは0〜4の整数であり;R2は水素又は(C1−C6)アルキルであり、Pは窒素保護基である。]
のアミン又はその塩と、塩基存在下でカップリングして、下記式IVaのカップリング生成物を得るステップを含む、式IVa:
【0011】
【化3】

【0012】
で表される化合物の製造方法に関する。
【0013】
別の実施態様では、上記ステップは、製造された前記式IVa:
【0014】
【化4】

【0015】
の化合物から、前記活性基、好ましくはクロロ、及び窒素保護基、好ましくはベンジルを除去し、いずれかの順で続けて又は単一の反応容器中で、下記式V:
【0016】
【化5】

【0017】
で表される化合物を得るステップを更に含む。
【0018】
更なる実施態様では、活性基がクロロである場合の活性基、及び保護基が水素化分解に安定である場合の保護基、好ましくはベンジル又は置換ベンジルの除去は、水素又は水素源及び触媒、好ましくは水酸化パラジウム、パラジウムカーボン又は白金カーボン、最も好ましくは水酸化パラジウム、の存在下に、単一反応容器中で行われる。
【0019】
更なる実施態様では、式IIIaのアミン又はその塩は、IIIbラセミ体もしくはIIIcラセミ体又はそのエナンチオ的に過剰な混合物である。
【0020】
【化6】

【0021】
更なる実施態様では、式IIIaのアミン又はその塩は、IIIdもしくはIIIe又はそのラセミ体もしくはエナンチオ的に過剰な混合物である。
【0022】
【化7】

【0023】
更なる実施態様では、式IIIaのアミン又はその塩は、3R、4R配置を有する式IIIdを有する。
【0024】
【化8】

【0025】
更なる実施態様では、3R、4R配置を有する式IIIdのアミン塩は、式IIIfを有する。
【0026】
【化9】

【0027】
更なる実施態様では、式IIIb〜IIIfのPは、水素化分解に安定な保護基、好ましくはベンジル又は置換ベンジルである。
【0028】
更なる実施態様では、式IVaの化合物は、式IVbを有する。
【0029】
【化10】

【0030】
更なる実施態様では、式IVbの化合物からの、クロロ活性基及びN-ベンジル保護基の除去は、水素又は水素源及び水素化触媒、好ましくは水酸化パラジウム、パラジウムカーボン又は白金パラジウム、最も好ましくは水酸化パラジウムの存在下で、単一反応容器で行われ、式Vaの化合物を与える。
【0031】
【化11】

【0032】
更なる実施態様では、式Vaの化合物は、式VI:
【0033】
【化12】

【0034】
[式中、L1は、-OCOR3、OR3、ハロゲン、ヒドロキシルスクシンイミジル、スルホネート例えばトシル及びメシルからなる群より選ばれる脱離基であり;R3は、C1−C6アルキルであり;好ましくはLは、-OCOR3であり、R3はt-ブチルである。]
のアシル化剤で、場合により塩基の存在下で、アシル化され、式Iaの化合物を与える。
【0035】
【化13】

【0036】
上記アシル化ステップに好適な、追加のカップリング試薬、活性化、不活性化カルボン酸誘導体とアミンとのアミド形成条件は、Benz, G Comprehensive Organic Synthesis, B. Trost著, 第6巻, 第2.3章, 表1-7に見出され、これは本明細書に参考文献として援用される。
【0037】
更なる実施態様では、式Iaの化合物は、クエン酸と反応して対応するクエン酸塩を与える。
【0038】
本発明の更なる実施態様は、下記式IIb:
【0039】
【化14】

【0040】
[式中、
L1は、脱離基、好ましくはクロロ、ヨード、ブロモ及びフルオロ、最も好ましくはクロロであり;
X2は、活性基、好ましくはベンジル、SO2Ar、CO2R'及びCOArであり;Arは、場合によりO、NR'及びSからなる群より選ばれる1〜6のヘテロ原子を含むC3−C12の芳香族基であり、当該Ar基は、(C1−C6)アルキル、ハロゲン、ニトロ及びシアノからなる群より選ばれる1〜3個の基で場合により置換されていてもよく;R'は、(C1−C6)アルキル及びベンジルからなる群より選ばれ;好ましくはX2はトシル基(p-トルエンスルホニル基;-SO2C6H4CH3)である。]
の活性化ピロロピリミジン化合物を、下記式IIIa:
【0041】
【化15】

【0042】
[式中、R1は(C1−C6)アルキルであり;aは0〜4の整数であり;R2は水素又は(C1−C6)アルキルであり、Pは窒素保護基、好ましくはベンジルである。]
のアミン又はその塩と、塩基、好ましくはアルカリ又はトリアルキルアミン塩基、より好ましくは炭酸カリウム又は炭酸ナトリウム、最も好ましくは炭酸カリウム、の存在下でカップリングして、式IVb:
【0043】
【化16】

【0044】
で表されるカップリング生成物を得ることを含む、式IVbの化合物の製造方法である。
【0045】
更なる実施態様では、X2がトシル基である場合には、トシル基及び窒素保護基は、式IVbの化合物から、いずれかの順で続けて又は単一の反応容器中で除去され、式Vの化合物を与える。
【0046】
【化17】

【0047】
更なる実施態様では、トシル基は、アルカリ塩基水溶液、好ましくは水酸化ナトリウム水溶液によって除去される。
【0048】
更なる実施態様では、式IIIaのアミン又はその塩は、式IIIbもしくはIIIc又はそのラセミもしくはエナンチオ混合物である。
【0049】
【化18】

【0050】
更なる実施態様では、式IIIaのアミン又はその塩は、式IIIdもしくはIIIe又はその混合物である。
【0051】
【化19】

【0052】
更なる実施態様では、式IIIaのアミン又はその塩は、3R、4R配置を有する式IIIdを有する。
【0053】
【化20】

【0054】
更なる実施態様では、3R、4R配置を有する式IIIdのアミン塩は、式IIIfを有する。
【0055】
【化21】

【0056】
更なる実施態様では、式IIIb〜IIIfのPは、水素化分解に安定な保護基、好ましくはベンジルである。
【0057】
更なる実施態様では、式IVbは式IVcを有する。
【0058】
【化22】

【0059】
更なる実施態様では、式IVcのトシル基及びベンジル基の除去は、トシル基及びベンジル基を除去するためにアルカリ塩基水溶液により、そして水素又は水素源及び触媒、好ましくは水酸化パラジウム、パラジウムカーボン、白金カーボン、最も好ましくは水酸化パラジウムにより、ベンジル基を除去するために、場合により、酸、好ましくは酢酸の存在下で行われ、式Vaの化合物を与える。
【0060】
【化23】

【0061】
トシル基及びベンジル基の除去はいずれの順で行ってもよい。
【0062】
本発明の更に別の実施態様では、2,4-ジクロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジンの合成方法は以下のステップを含む:
a) 芳香族溶媒、好ましくはトルエン中で、2,4-ジクロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-2,4-ジオールをオキシ塩化リンと反応させ、第一温度、好ましくは約0℃〜約50℃、最も好ましくは約25℃で第一溶液を形成し;
b) 当該第一溶液の第一温度を第二温度、好ましくは約40℃〜約100℃、最も好ましくは約75℃に昇温し;
c) 当該第二の温度で当該第一溶液に三級アミン塩基、好ましくはジイソプロピルエチルアミンを添加して、当該第二温度で第二溶液を形成し;及び
d) 当該第二溶液の当該第二温度を、第一の時間、好ましくは約1時間〜約24時間、最も好ましくは約16時間に、第三温度、好ましくは約75℃〜約125℃、最も好ましくは約105℃に昇温する、
ことを含み;
出発物質の2,4-ジクロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-2,4-ジオールに対して、当該オキシ塩化リンは、約1.5〜約6等量で存在し、かつ当該第三級アミン塩基は、約1.0〜約8.0等量で存在する。
【0063】
好ましくは、オキシ塩化リンは、約2.0〜約3等量で存在し、かつ第三級アミン塩基は、約1.1〜約2等量で存在する。最も好ましくは、オキシ塩化リンは、約3.0等量で存在し、かつ第三級アミン塩基は、約2.0等量で存在する。
【0064】
更なる実施態様では、下記式Xc:
【0065】
【化24】

【0066】
[式中、R1は水素又は(C1−C6)アルキルであり;aは0〜4の整数であり;R2は水素又は(C1−C6)アルキルであり;及びR”は水素、(C1−C6)アルキル及びCF3基からなる群より選ばれ;bは0〜4の整数である。]
で表されるエナンチオ過剰ピペリジンの製造法は、以下のステップを含む:
下記式Xd:
【0067】
【化25】

【0068】
[式中、X-は、クロロ、ブロモ、フルオロ、ヨード、トリフラート、トシレート及び-BF4からなる群より選ばれ、好ましくはブロモであり;R'''は(C1−C6)アルキルである。]
で表されるベンジルピリジニウム塩を、水素又は水素源の存在下に、ロジウム、イリジウム又はルテニウム触媒、及びキラルホスフィンリガンドで不斉水素化する。触媒は、好ましくは、ビス(1,5-シクロオクタジエン)ロジウム(I)トリフルオロメタンスルホネートであり、キラルホスフィンリガンドは、好ましくは、(R)-(-)-1-[(S)-2-(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ-t-ブチルホスフィン、(R)-(-)-1-[(S)-2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ-t-ブチルホスフィン又は(R)-(-)-1-[(S)-2-ジ-(p-トリフルオロメチルフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ-t-ブチルホスフィンである。
【0069】
更に好ましくは、ベンジルピリジニウム塩は下記式Xeを有する。
【0070】
【化26】

【0071】
更に好ましくは、ベンジルピリジニウム塩は下記式Xfを有する。
【0072】
【化27】

【0073】
更に好ましい実施態様では、下記式Xg:
【0074】
【化28】

【0075】
[式中、R1は水素又は(C1−C6)アルキルであり;R2は水素又は(C1−C6)アルキルであり;及びR”は水素、(C1−C6)アルキル及びCF3基からなる群より選ばれ;bは0〜4の整数である。]
で表されるエナンチオ過剰ピペリジンの製造法は、以下のステップを含む:
下記式Xh:
【0076】
【化29】

【0077】
[式中、R'''は(C1−C6)アルキルである。]
で表されるテトラヒドロピリジンを、水素又は水素源の存在下に、ロジウム、イリジウム又はルテニウム触媒、及びキラルホスフィンリガンドで不斉水素化する。触媒は、好ましくは、ビス(1,5-シクロオクタジエン)ロジウム(I)トリフルオロメタンスルホネートであり、キラルホスフィンリガンドは、好ましくは、(R)-(-)-1-[(S)-2-(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ-t-ブチルホスフィン、(R)-(-)-1-[(S)-2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ-t-ブチルホスフィン又は(R)-(-)-1-[(S)-2-ジ-(p-トリフルオロメチルフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ-t-ブチルホスフィンである。
【0078】
更に好ましくは、当該テトラヒドロピリジンは式Xiを有する。
【0079】
【化30】

【0080】
本発明は、以下の本発明の具体的実施態様の詳細な説明及び本明細書に含まれる実施例を参考してより容易に理解することができる。
【0081】
以下の明細書及び先の請求の範囲では、下記の意味を有するように定義された多数の用語が参考にされる。
【0082】
用語「アルキル」は、直鎖、分枝鎖もしくは環状部分又はこれらの組み合わせを有する、飽和一価のC1〜C20炭化水素ラジカルを含む。かかる基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロへキシルを含むが、これらに限定されない。
【0083】
用語「アルコキシ」は、上記定義のアルキルの、O-アルキル基を含む。例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、t-ブトキシ、シクロプロポキシ、シクロブトキシ及びシクロペントキシを含むがこれらに限定されない。
【0084】
用語「ハロ」又は「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを含む。
【0085】
用語「アルケニル」は、1以上の二重結合を含む、飽和一価の直鎖、分枝鎖もしくは環状炭化水素ラジカルを含む。例は、エテニル、プロペニル、ブテニル、イソブテニル、シクロペンテニル及びシクロへキセニルを含むがこれらに限定されない。
【0086】
用語「アルキニル」は、1以上の三重結合を含む、飽和一価の直鎖、分枝鎖もしくは環状炭化水素ラジカルを含む。例は、エチニル、プロピニル及びブチニルを含むがこれらに限定されない。
【0087】
用語「アシル」は、-C(O)-部分を言う。
本明細書で用いる用語「窒素保護基」又は「アミノ保護基」は、本明細書に参考文献としてその全体が援用される、"Protective Groups in Organic Synthesis" 第2版, T.W. Greene and P.G.M. Wutz, Wiley Interscience (1991)、特に第218-222頁に記載の基を含む、と当業者には理解できるだろう。好適な保護基の例は、ベンジル、カルボベンジルオキシ、t-ブトキシカルボニル(BOC)9-フルオレニル-メチレンオキシカルボニル及びアルルオキシカルボニルを含むがこれらに限定されない。
【0088】
本明細書で使用される用語「脱離基」は、求核試薬によって置換される基を示す。脱離基の例は、ハロゲン、メシルオキシ、トシルオキシ及びカルボン酸無水物、例えばt-ブトキシカルボニルオキシを含むはこれらに限定されない。
【0089】
用語「活性基」は、求核試薬との付加脱離型反応に対する反応性を向上させる、本発明のピロロピリミジン部分上の任意の基を言う。活性基は、典型的には、電子吸引性基、例えばハロゲン、例えばクロロ;スルホネート、例えばトシレート、メシレート等;エステル;カーボネート;カルバメート;及びアシル誘導体である。ベンジル誘導体も含まれる。
【0090】
用語「酸」は、無機酸及び有機酸を意味する。無機酸は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸及び硫酸を含むがこれらに限定されない。有機酸は、酒石酸、酢酸、メタン-スルホン酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、マレイン酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、コハク酸、メタンスルホン酸、シュウ酸及びp-トルエンスルホン酸を含むがこれらに限定されない。
【0091】
用語「塩基」は、無機及び有機塩基を意味する。無機塩基は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、水素化リチウム、水素化カリウム、水素化ナトリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸水素カリウムを含むがこれらに限定されない。有機塩基は、金属アルコキシド、金属-アルキル複合体、ピリジン、アルキルアミン、ジアルキルアミン及びトリアルキルアミンを含むがこれらに限定されない。アルキル、ジアルキル及びトリアルキルアミンの例は、メチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン及びジイソプロピルエチルアミンを含むがこれらに限定されない。環状アミン、例えばDBUも含まれる。金属アルコキシドの例は、ナトリムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムt-ブトキシド、カリウムt-ブトキシド及びナトリウムエトキシドを含むがこれらに限定されない。金属アルキル複合体は、アルキルリチウム試薬、例えばn-ブチルリチウム、ブチルリチウム及びt-ブチルリチウムを含むがこれらに限定されない。この定義には、グリニャール試薬、例えばフェニルマグネシウムブロミド及びエチルマグネシウムブロミドも含まれる。
【0092】
式Iaの上記化合物の薬学的に許容される酸付加塩を調製するために用いられる酸は、非毒性酸付加塩、すなわち薬理学的に許容されるアニオン、例えば塩酸塩、臭化水素塩、ヨウ化水素塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸リン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酸クエン酸塩、酒石酸塩、重酒石酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、サッカラート、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩及びパモン酸塩(すなわち、1,1'-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート))を含む塩を形成する。
【0093】
用語「三級アミン」は、C1−C8トリアルキルアミンを言う。例は、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン及びトリメチルアミンを含むがこれらに限定されない。この定義にはピリジンも含む。
【0094】
本明細書で用いる用語「約」は、数値の各々についてプラス、マイナス10%を意味する。
【0095】
本明細書で用いる用語「エナンチオ過剰率(ee)」は、2つのエナチオマーの一方に対する過剰率を意味し、一般的には%で表す。よって、90%のエナンチオ過剰率は、問題の混合物中に1つのエナンチオマーが95%で他のエナンチオマーが5%で存在することを意味する。
【0096】
用語「エナンチオ的に過剰」とは、1つのエナンチオマーが他のエナンチオマーに対して過剰に存在することを意味する。すなわち、これは、1つのエナンチオマーが混合物中に50%より多く存在することである。この定義には、単一エナンチオマー(すなわち、100%ee)も含まれる。
【0097】
用語「置換ベンジル」は、C1−C6アルキル、-CF3、OMe、NO2及びCNから選ばれる1以上の基により、フェニル環上で置換されたベンジル基を言う。
【0098】
用語「psi」は、重量ポンド毎平方インチを言う。
【0099】
用語「1〜6のヘテロ原子によって場合により置換される(C3−C12)アリール」は、フェニル、ナフチル、ピリジル、キノリニル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェン、インドール等を含むがこれらに限定されない。
【0100】
用語「水素源」は、in situで生成される任意の水素源を意味する。相転移水素化の場合には、ギ酸及びその塩、例えばギ酸アンモニウム、ギ酸アルカリ金属等は、水素源として用いることができる。
【0101】
発明の詳細な説明
以下のスキームは、本発明の化合物の製造を示す。他に特定しない限り、反応スキーム及び以下の考察中の全てのR基、L、X1、X2及びP基は、前に定義したとおりである。
【0102】
【化31】

【0103】
好適な式VIIの置換3-アミノピリジンは、炭酸ジアルキル又はアルキルクロロホルメートと反応してVIIIを得ることができる。次いで、約50℃〜約150℃の高温、好ましくは70〜80℃で、酸、好ましくは酢酸の存在下で、水素、好ましくは加圧水素雰囲気下、好ましくは約70〜約80 psiで、及び5%ロジウムカーボン又はロジウムアルミナの存在下で、VIIIを還元し、シス-ピペリジニルカルバメートIXa及びIXbを得ることができる。ピペリジニル窒素を、IXa及びIXbを好適な保護試薬と反応させることにより、保護して、Xa及びXbを得ることができる。(例えば、"Protective Groups in Organic Synthesis" 第2版, T.W. Greene and P.G.M. Wutz, Wiley Interscience (1991)参照。)例えば、塩基、例えば炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムの存在下に、P-L(Pは保護基であり、Lは脱離基である)のような試薬を、IXa及びIXbのピペリジニル窒素と反応させて、N-保護シスピペリジニルカルバメートXa及びXbを得ることができる。あるいは、アルデヒドPCHO(Pは保護基である)を、ピペリジニル窒素と水素化条件下に反応させることができる。反応条件は、使用される保護基によって当業者によって決定することができる。次いで、約-78℃〜約70の低温、典型的には70℃で、エーテル系溶媒例えばTHF中で、好適な還元剤、例えば水素化アルミニウムリチウムを用いてXa及びXbのカルバメート基を還元し、IIIb及びIIIc(R2はメチル)を得ることができる。あるいは、Xa及びXbのカルバメート基は、加水分解によって切断することができ、得られた遊離アミンは、極性非プロトン性溶媒、例えばジメチルホルムアミド(DMF)中、場合により、塩基例えばトリアルキルアミン塩基の存在下で、様々なアルキル化剤、例えばR2-L(Lは脱離基)と反応して、中間体IIIb及びIIIcを得ることができる。
【0104】
あるいは、式VIIIa(X-は、クロロ、ブロモ、フルオロ、ヨード、トリフラート、トシレート又は-BF4、好ましくはブロモであり;ここでR”は、置換可能な各位置に関して、水素、C1−C6アルキル又はCF3基から独立に選ばれる)のベンジルもしくは置換ベンジルピリジニウム塩、又は好適に置換されたテトラヒドロピリジン誘導体(但し、R”は上記のとおりである)は、不斉水素化条件、例えばロジウム、イリジウム又はルテニウム触媒、及びモノホスフィン及びビスホスフィンリガンドを含むキラルホスフィンリガンド、に供せられる。好適なキラルホスフィンリガンドの例は、本明細書に参考文献として援用される、Chem Rev 2003, 103, 3029に見出される。好ましい触媒は、ビス(1,5-シクロオクタジエン)ロジウム(I)トリフルオロメタンスルホネート及びキラルJosiphos型リガンドから作られるものである。これらの好ましいリガンドは、Solvias(Basel Switzerland)から商業的に購入することができる。転移を行うための好ましい試薬及び条件は、圧水素雰囲気下、好ましくは約50〜約200 psiで、溶媒、好ましくはTHF−エタノール混合物で、約50℃〜約70℃の高い温度での、ビス(1,5-シクロオクタジエン)ロジウム(I)トリフルオロメタンスルホネート及びR-(-)-1-[(S)-2-(ジフェニル、ジシクロへキシル又はジ-(p-トリフルオロメチルフェニル)ホスフィノ)フェロセニル]エチルジ-t-ブチルホスフィンであり;エナンチオ過剰ピペリジンXa(例えばXbに対して、50〜70%ee Xa)が得られる。このようにして得られた過剰Xaを引き続いて光学分割ステップinflaに使用し、又はIIb及びIIcの形成(すなわち、エナンチオ過剰IIbの形成)後に、活性化ピロロピリミジンに直接、結合するために使用することができる。
【0105】
R1置換シス及びトランス3アミノピペリジン(IIIa)の混合物は、Iorio, M. A. and Damia, G.; Tetrahedron, Vol. 26: p.55-59 (1970) and Grieco他, Journal of the American Chemical Society, Vol.107: p.1768 (1985)の方法によって製造さる、置換されたN-保護ピペリジン-3-オンから好適に合成することができる。これらの参考文献はいずれもその全体が参考として援用される。但し、本明細書に全体が参考として援用される米国公開出願2004/0053947号の実施例1に記載の方法に従って、共溶媒として5%メタノールを用いる、R2-NH2酢酸及びトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムとの反応により、改変されている。式IIIaのピペリジンは、活性化ピロロピリミジンとのその後の任意の結合に用いて、全ての可能ジアステレオマーの混合物としてのカップリング生成物を得ることができる。
【0106】
【化32】

【0107】
次いで、約50℃〜約150℃の高温、好ましくは100℃で、極性溶媒又は極性溶媒の混合物、例えば水又は水及びアセトニトリル又はDMSO(ジメチルスルホキシド)中、塩基、例えば炭酸カリウム又は炭酸ナトリウムの存在下に、シスN-保護3-アミノピペリジンIIIb及びIIIcを、式IIaの活性ピロロピリミジンと結合して、カップリング生成物IVaを得ることができる。
【0108】
【化33】

【0109】
あるいは、IIIb及びIIIcを、ジ-p-トルオイル酒石酸の1つのエナンチオマー、好ましくはLエナンチオマー又は他のキラル酸でまず光学分割し;約50℃〜約150℃の高温、好ましくは100℃で、極性溶媒又は極性溶媒の混合物、例えば水又は水及びアセトニトリル又はDMSO中、塩基の存在下に、得られた単一ジアステレオマーアミン塩を、活性化ピロロピリンミジンIIaと直接反応させるか、又は、塩基水溶液例えば水酸化ナトリウム水溶液との反応により当該アミン塩から単一エナンチオマー遊離塩基をまず形成させてから、活性化ピロロピリンミジンIIaと直接反応させて、IVaを単一エナンチオマーとして得ることができる。(他の光学分割法に関しては、Jacques, J.他, "Enantiomers, Racemates and Resolutions", Wiley, New York, 1981;本明細書に参考文献として援用される。)
【0110】
【化34】

【0111】
次いで、単一エナンチオマー又はエナンチオマー混合物のいずれかとしての化合物IVaは、使用する具体的な窒素-保護基に好適な脱保護条件に供せられる。典型的には、これらの脱保護条件は、式Vの化合物を生成するための活性基を除去するための、式Vの化合物を生成することにもなる。例えば、Pが水素化分解に安定であり、X1がクロロである場合に、保護基及び活性基は、触媒の存在下、水素又は水素源により除去することができる。好ましくは、適用される条件は、極性溶媒、例えば水、場合により、酸、例えば酢酸又はHClにおいて、圧水素、典型的には50 psi、かつ水素化触媒、例えばPd(OH)2である。あるいは、保護基又は活性基のいずれかを、一群の条件を用いて先ず除去し、次いで第二の条件群によって残余基を除去することができる。
【0112】
【化35】

【0113】
式Vの化合物のピペリジニル窒素は、場合により塩基、例えばトリアルキルアミン塩基の存在下、極性プロトン性又は非プロトン性溶媒、例えばメチレンクロリド中で、式VII(Lは脱離基である)のアシル化剤を用いてアシル化し、式VIIの化合物を得ることができる。式VIIの化合物は、有機酸、例えばクエン酸、塩酸等の作用によって薬学的に許容される塩に変換することができる。場合により、式VIIの化合物の薬学的に許容される塩は、有機溶媒から又は有機溶媒の混合物から結晶化することができる。
【0114】
【化36】

【0115】
あるいは、式IIbの活性化ピロロピリミジンは、約50℃〜約150℃の高い温度、好ましくは100℃で、極性溶媒又は極性溶媒の混合物、例えば水又は水及びアセトニトリル中、塩基存在下に、スキームIに記載の方法に従って調製した、シスN-保護3アミノピペリジンIIIb及びIIIcと結合し、エナンチオマー混合物としてカップリング生成物IVbを得ることができる。
【0116】
【化37】

【0117】
あるいは、スキームIに記載の方法に従って調製したIIIb及びIIIcは、IVbを単一エナンチオマーとして得るために、ジ-p-トルオイル酒石酸の1つのエナンチオマー、好ましくはL-エナンチオマーを用いて、又は標準的光学分割法を用いる他のキラル酸によって先ず光学分割することができる。この光学分割法では、単一ジアステレオマー塩の結晶化、そして得られる単一ジアステレオマーアミン塩を直接反応させる。あるいは、IVbを単一エナンチオマーとして得るために、塩基、例えば炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムの存在下に、極性溶媒又は極性溶媒の混合物、例えば水又は水及びメタノール中、約50℃〜約150℃の高い温度、好ましくは約100℃で、塩基水溶液例えば水酸化ナトリウム水溶液と、活性化ピロロピリミジンIIbとの反応によって、アミン塩から単一エナンチオマー遊離アミンを先ず形成してもよい。(別の光学分割法としては、Jacques, J.他, "Enantiomers, Racemates and Resolutions, Wiley, New York, 1981を参照;本明細書に参考文献として全体を援用。)。
【0118】
【化38】

【0119】
次いで、カップリング生成物IVbは、具体的な窒素保護基に好適な脱保護条件及びトシル活性基を除去する条件に供せられる。保護基が水素化分解に安定な基である場合には、極性溶媒又は極性溶媒の混合物、例えばイソプロピルアルコール及び水の混合物中で、活性基がトシルであるときには、この活性基を除去するために、場合により酸例えば、酢酸又は塩酸の存在下で、水素化条件として、10〜100 psiの加圧水素及び水素化触媒、例えばPd(OH)2がおそらく使用され、式Vの化合物を与える。活性基及び保護基がいずれも水素化分解に安定である場合には、単一の反応容器中で水素化反応により、両基を除去することができる。あるいは、保護基又は活性基のいずれかを一群の条件を用いて先ず除去し、次いで第二の条件群によって残余基を除去することができる。
【0120】
式Vの化合物は、先に記載のようにして更に反応させることができる。
【実施例】
【0121】
実施例1
不斉水素化による、エナンチオ過剰(3R,4R)-(1-ベンジル-4-メチル-ピペリジン-3-イル)-メチルアミンの製造
ステップA:洗浄済みの乾燥した窒素でパージした500 mLフラスコに、(4-メチル-ピリジン-3-イル)-カルバミン酸メチルエステル(25.0 g、150 mmol)、トルエン(250 mL)及びベンジルブロミド(28.3 g、165 mmol)を加えて、1-ベンジル-3-メトキシカルボニルアミノ-4-メチル-ピリジニウムブロミドを調製した。反応は少なくとも20時間、110℃で加熱した。20〜25℃に冷却した後、反応を濾過し、得られた固体をトルエン(100 mL)で洗浄した。僅かに窒素を充填しながら、40〜50℃で少なくとも12時間減圧乾燥した後、(1-ベンジル-4-メチル-ピリジン-3-イル)-カルバミン酸メチルエステルブロミド(48.6 g、144 mmol)を96.1%(NMRによると95%より高い純度)の収率で単離した。
【0122】
1-ベンジル-3-メトキシカルボニルアミノ-4-メチル-ピリジニウムブロミド(150 mg、0.446 mmol)、ビス(1,5-シクロオクタジエン)ロジウム(I)トリフルオロメタンスルホネート(11 mg、0.0223 mmol、Strem Chemical Co. Newburyport, Massachusettsから入手)及び(R)-(-)-1-[(S)-2-(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ-t-ブチルホスフィン(32 mg、0.033 mmol、Solvias, Basel, Switzerlandから入手)を好適なサイズの反応容器に加えた。固体を窒素でパージし(5回、90 psi)、水素でパージした(1回、210 psi)。反応混合物を70℃で加熱し、その後水素で200 psiまで加圧した。48時間後、混合物を30℃まで冷却し、窒素でパージした(5回、90 psi)。GC-MS分析のためにアリコートを採った。
【0123】
試料調製:反応混合物の100 μlアリコートを1 mL MeOHで希釈した。10 μLトリエチルアミンを加えた。混合し、沈殿物を濾過した。GC-MSで分析した(カラム Cyclosil B、傾斜温度 140〜240℃、2℃/分)。GC-MS分析:84%シス生成物 68%ee、2%トランス生成物、4%脱ベンジル化副生成物、3%アルケン中間体。
【0124】
あるいは、分析にキラルHPを使用してもよい。Agilent 1100システムでの分析 HPLC条件:分析カラム Daicel Chiralcel OJ 4.6 mm×250 mm、5%エタノール/へキサン、流量 1 ml/分、210 nm、20分間操作。
【0125】
実施例2
(1-ベンジル-4-メチル-1,2,5,6-テトラヒドロ-ピリジン-3-イル)-カルバミン酸メチルエステルベンジルクロリド(2.1 mL、18.3 mmol)を、(4-メチル-ピリジン-3-イル)-カルバミン酸メチルエステル(3.16 g、19.0 mmol)のトルエン(15 mL)のスラリーに、80℃で加えた。10分後に均一な反応混合物が得られ、30分後には固体が沈殿した。このスラリーを80℃で16時間攪拌し、室温まで冷却した。固体を濾過し、トルエンで洗浄した。乾燥後、生成物を灰色固体(4.17 g、78%)として単離した。
【0126】
1-ベンジル-3-メトキシカルボニルアミノ-4-メチル-ピリジニウムクロリド(4.0 g、13.0 mmol)のエタノール(20 mL)の反応混合物に、ホウ化水素ナトリウム(0.645 g、17.0 mmol)を加えた。ガスが発生し、発熱反応した。反応混合物を室温で16時間攪拌した。反応をH2O(10 mL)でクエンチし、セライトで濾過し、セライトパッドをエタノールで洗浄した(2×10 mL)。溶媒を減圧濃縮した。得られた混合物を1 N水酸化ナトリウムでpH 9の塩基性にし、MTBE(メチルブチルエーテル)で抽出した(2×15 mL)。併せた有機層をH2Oで洗浄し、乾燥し(硫酸ナトリウム)、濃縮して黄色油(2.44 g、72%)を得た。
【0127】
実施例3
1-ベンジル-4-メチル-1,2,5,6-テトラヒドロ-ピリジン-3-イル)-カルバミン酸メチルエステルの不斉水素化による、エナンチオ過剰(3R,4R)-(1-ベンジル-4-メチル-ピペリジン-3-イル)-メチルアミンの製造
1-ベンジル-4-メチル-1,2,5,6-テトラヒドロ-ピリジン-3-イル)-カルバミン酸メチルエステル(150 mg、0.557 mmol)、ビス(1,5-シクロオクタジエン)ロジウム(I)トリフルオロメタンスルホネート(13 mg、0.0288 mmol、Strem Chemical Co. Newburyport, Massachusettsから入手)及び(R)-(-)-1-[(S)-2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ-t-ブチルホスフィン(32 mg、0.033 mmol、Solvias, Basel, Switzerlandから入手)を反応容器に加えた。固体を窒素でパージし(5回、90 psi)、脱ガスしたTHF(2 ml)及び脱ガスしたエタノール(1 ml)を加えた。混合物を窒素でパージし(5回、90 psi)、次いで水素でパージした(1回、210 psi)。反応混合物を70℃まで加熱し、水素で200 psiまで加圧した。48時間後、混合物を30℃まで冷却し、窒素でパージした(5回、90 psi)。GC-MS分析のためにアリコートを採った。上記GC-MS又はキラルHPLCにより、同様の分析を行った。
【0128】
実施例4
3-{(3R,4R)-4-メチル-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミノ}-ピペリジン-1-イル)-3-オキソ-プロピオニトリルメチルアミン]の合成
洗浄済みの乾燥した、窒素でパージした250 mLフラスコに、ラセミのシス-(1-ベンジル-4-メチル-ピペリジン-3-イル)-メチルアミンビス塩酸塩(20.0 g、38.7 mmol)、ジ-p-トルオイル-L-酒石酸(L-DPTT)(15.9 g、41.2 mmol)及びメタノール(100 ml)を加えた。30℃以下の温度を維持する速度で、水酸化ナトリウム水溶液(水100 mlに5.5 g、137.3 mmol)を反応に加えた。反応を70〜80℃で加熱し、少なくとも60分間、この温度を維持した。少なくとも4時間で、反応を5〜15℃まで冷却し、少なくとも12時間、この温度を維持した。固体を濾過し、MeOH:水(60 ml)の1:1混合物で洗浄した。湿ったケーキを250 mlフラスコに戻し、メタノール(100 ml)及び水(100 ml)を入れた。反応を70〜80℃で加熱し、この温度を少なくとも120分間維持した。少なくとも4時間で、反応を5〜15℃まで冷却し、この温度を少なくとも12時間維持した。固体を濾過し、MeOH:水(60 ml)の1:1混合物で洗浄した。湿ったケーキの純度(99.4%ee)を確認し、更にrepulpの必要がないことを確実にした。僅かに窒素を充填しながら、少なくとも24時間、40〜50℃で減圧乾燥した後、標題化合物(11.9 g、28.9 mmol)を42.1%の収率で単離した。GC(Cyslosil Bカラム 30 m×径0.25 mm;入口温度 250℃;流速 2.0 ml/分;15分操作;160℃等温法)によれば、98.6%エナンチオ過剰率、0.63%トランス異性体であった。
【0129】
実施例5
N-[(3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル]-2-クロロ-N-メチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-アミン(式IVb)の製造
洗浄済みの乾燥した、窒素でパージした500 mLフラスコに、上で合成した2,4-ジクロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン(20.0 g、0.106 mmol)、ビス-(3R,4R)-(1-ベンジル-4-メチル-ピペリジン-3-イル)-メチルアミンジ-p-トルイル-L-酒石酸(20g、0.106 mmol)、炭酸カリウム(44.6 g、0.319 mmol)及び水(200 ml)を加えた。反応容器を最低10時間、95〜105℃まで加熱し、その後、20〜30℃まで冷却し、少なくとも3時間維持した。得られた固体を濾過により単離し、水(60 ml)で洗浄し、50℃で乾燥し、39.5 g(100%)の標題化合物を得た。
【0130】
【化39】

【0131】
実施例6
メチル-[(3R,4R)-4-メチル-ピペリジン-3-イル]-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミンの製造
洗浄済みの乾燥した、窒素でパージした500 mLフラスコに、20 wt% Pd(OH)2/C(水酸化パラジウム炭素)(5.0 g、50%水分)、水(200 ml)及びN-[(3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル]-2-クロロ-N-メチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-アミン(50.0 g、0.135 mmol)を加えた。反応容器を50 psiの窒素で3回パージし、50 psiの窒素で3回パージした。パージ後直ちに、反応容器を70〜75℃に加熱し、連続供給により、50 psiの水素で加圧した。水素が少なくとも1時間消費されなくなるまで、水素の取り込みを監視した。反応容器を20〜30℃に冷却し、50 psiの窒素で3回パージした。反応混合物を水でぬらしたセライトで濾過し、次の操作のため、洗浄済みの乾燥した窒素でパージした500 mlのフラスコに移した。
【0132】
実施例7
4-クロロ-7-(トルエン-4-スルホニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジンの製造
洗浄済みの乾燥した、窒素でパージした反応容器に、アセトン(87.5 ml)、p-トルエンスルホニルクロリド(17.1 g、0.09 mmol)及び4-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン(25.0 g、0.16 mmol)を加えた。反応容器を-5.0〜5.0℃まで冷却し、2.5 Mの水酸化ナトリウム(78.1 ml)を5.0℃以下の温度を維持できる速度で加えた。反応容器を20〜30℃に昇温し、少なくとも5時間攪拌した。得られた固体を濾過により分離し、アセトン/水(1:1、各25 ml)で洗浄した。僅かに窒素を充填しながら、40〜50℃で、減圧で少なくとも12時間乾燥後、44.9 g(90.1%)の標題化合物を単離した。
【0133】
【化40】

【0134】
実施例8
[(3R,4R)-1-ベンジル-4-メチル-ピペリジン-3-イル]-メチル-[7-(4-メチル-ベンゼンスルホニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]アミンの製造
洗浄済みの乾燥した、窒素でパージした反応容器に、4-クロロ-7-(トルエン-4-スルホニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン(25.12 g、0.082 mmol)、ビス-(3R,4R)-(1-ベンジル-4-メチル-ピペリジン-3-イル)-メチルアミンジ-p-トルオイル-L-酒石酸(40.31 g、0.041 mmol)、炭酸カリウム(34.2 g、0.245 mol)及び水(125.6 ml)を加えた。混合物を少なくとも10時間、95〜105℃に加熱した後、45〜55℃まで冷却した。アセトニトリル(25 ml)を加え、スラリーを少なくとも1時間、45〜55℃に維持した。混合物を20〜30℃に更に冷却し、少なくとも5時間攪拌した。得られた固体を濾過により単離し、水(50 ml)で洗浄した。乾燥後、32.8 g(82.1%)の標題化合物を単離した。
【0135】
【化41】

【0136】
実施例9
[(3R,4R)-1-ベンジル-4-メチル-ピペリジン-3-イル]-メチル-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミンの製造
洗浄済みの窒素でパージした反応容器に、50%水酸化ナトリウム水溶液(210 ml)及び(1-ベンジル-4-メチル-ピペリジン-3-イル)-メチル-[7-(トルエン-4-スルホニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]-アミン(30.0 g、0.061 mmol)を加えた。混合物を少なくとも5時間、95〜105℃に加熱した後、70〜90℃まで冷却し、水(300 ml)を加えた。スラリーを少なくとも1.5時間、室温まで冷却し、1時間室温で維持した。固体を濾過により単離し、水(120.0 ml)で洗浄し、25.2 gの標題化合物をwater wetとして得た。
【0137】
【化42】

【0138】
実施例10
メチル-[(3R,4R)-4-メチル-ピペリジン-3-イル]-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミンの製造
洗浄済みの乾燥した、窒素でパージした2 L水素化反応容器に、20 wt% Pd(OH)2/C(24.0 g、50%水分)、水(160 ml)、イソプロパノール(640 ml)、(1-ベンジル-4-メチル-ピペリジン-3-イル)-メチル-[7-(トルエン-4-スルホニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]-アミン(160.0 g、0.48 mmol)及び酢酸(28.65 g、0.48 mmol)を加えた。反応容器を50 psiの窒素で3回パージし、50 psiの窒素で3回パージした。パージ後直ちに、反応容器を45〜55℃に加熱し、連続供給により、50 psiの水素で加圧した。水素が少なくとも1時間消費されなくなるまで、水素の取り込みを監視した。反応容器を20〜30℃に冷却し、50 psiの窒素で3回パージした。反応混合物を水でぬらしたセライトで濾過し、濾液を洗浄済みの乾燥した、窒素でパージした容器に移した。水酸化ナトリウム(39.33 g)の水(290 ml)の溶液を加え、混合物を少なくとも1時間攪拌し、75〜90℃に加熱した。イソプロパノールを蒸留により除いた。反応混合物を20〜30℃に冷却し、2-メチルテトラヒドロフラン(1.6 L)を加えた。水層を除き、2-メチルテトラヒドロフランをトルエン(1.6 L)で置換した。最終体積が800 mlになるまで、蒸留を継続した。スラリーを20〜30℃に冷却し、少なくとも7時間維持した。得られた固体を濾過により単離し、トルエン(480 ml)で洗浄した。僅かに窒素を充填しながら、少なくとも24時間、40〜50℃で減圧乾燥した後、102.3 g(87.3%)の標題化合物を単離した。
【0139】
【化43】

【0140】
実施例11
3-{(3R,4R)-4-メチル-3-[メチル-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ]-ピペリジン-1-イル}-3-オキソ-プロピオニトリルの製造
洗浄済みの乾燥した、窒素でパージした1.0 L反応容器に、メチル-(4-メチル-ピペリジン-3-イル)-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミン(32.0 g、0.130 mol)、トルエン(160 ml)、エチルシアノ酢酸(88.53 g、0.783 mol)及びトリエチルアミン(26.4 g、0.261 mmol)を加えた。反応を100℃に加熱し、24時間維持した。反応を水(160 ml)で洗浄した。有機層を10 mlの体積まで濃縮し、水(20 ml)を加えた。残渣のトルエンを蒸留によって除き、混合物を室温まで冷却した。アセトン(224 ml)を加え、クエン酸(27.57 g、0.144 mmol)の水溶液(76 ml)を加えた。得られたスラリーを7時間攪拌した。固体を濾過により単離し、アセトン(96 ml)で洗浄し、減圧乾燥し、42.85 g(65.3%)の標題化合物を得た。
【0141】
実施例12
酸クロリドによる、3-{(3R,4R)-4-メチル-3-[メチル-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ]-ピペリジン-1-イル}-3-オキソ-プロピオニトリルの別途製造
洗浄済みの乾燥した、窒素でパージした反応容器に、シアノ酢酸(2.30 g、27.0 mmol)、メチレンクロリド(20 ml)、オキサリルクロリド(3.36 g、26.5 mmol)及びDMF(1滴)を加えた。少なくとも40分間、反応を室温で攪拌した。次いで、反応を-15〜−10℃に冷却し、維持した。別の乾燥済の窒素でパージした反応容器に、メチル-(4-メチル-ピペリジン-3-イル)-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミン(1.3 g、5.3 mmol)、DMF(7 ml)及びトリエチルアミン(5.5 g、54.0 mmol)を加えた。均一な混合物が得られるまで反応を攪拌した。次いで、5℃以下の温度を維持しながら、混合物をゆっくりと酸クロリドに加えた。反応を-10〜5℃で30分間攪拌し、次いで室温まで上げ、少なくとも1時間維持した。酢酸エチル(30 ml)を加え、溶液を飽和炭酸ナトリウム(2×30 ml)で洗浄した。揮発物質を蒸留によって除き、残渣をアセトン(27 ml)及び水(5 ml)に溶解した。クエン酸(1.02g、5.3 mmol)を加え、得られた固体を少なくとも12時間攪拌した。固体を濾過し、アセトン(3 ml)及び水(5 ml)で洗浄後、減圧乾燥し、2.0 g(74%)の標題化合物を得た。
【0142】
実施例13
3-{(3R,4R)-4-メチル-3-[メチル-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ]-ピペリジン-1-イル}-3-オキソ-プロピオニトリルクエン酸塩の製造
洗浄済みの乾燥した、窒素でパージした500 ml反応容器に、メチル-(4-メチル-ピペリジン-3-イル)-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミン(1.3 g、5.3 mmol)、DMF(7 ml)及びトリエチルアミン(25.0 g、0.102 mmol)及びメチレンクロリド(250 ml)を加えた。少なくとも2.5時間、混合物を室温で攪拌した。洗浄済みの乾燥した、窒素でパージした1L反応容器に、シアノ酢酸(18.2 g、0.214 mol)、メチレンクロリド(375 ml)及びトリエチルアミン(30.1 ml、0.214 mol)を加えた。混合物を1時間で、-15.0〜-5.0℃に冷却し、トリメチルアセチルクロリド(25.6 ml、0.204 mmol)を0℃の温度を維持する速度で加えた。反応を少なくとも2.5時間維持し、その後、アミン溶液を0℃の温度が維持する速度で加えた。1時間攪拌後、混合物を室温まで上げ、1 M水酸化ナトリウム(125 ml)を加えた。有機層を水(125 ml)で洗浄した。500 mlの体積及び55〜65℃の温度が得られるまで、メチレンクロリド溶液をアセトンで置換した。水を混合物に加え、その間、55〜65℃の温度に維持した。クエン酸(20.76 g、0.107 mmol)の水溶液(25.0 ml)を加え混合物を室温に冷却した。反応容器を少なくとも5時間攪拌し、次いで得られた固体を濾過により単離し、アセトン(2×75 ml)で洗浄し、フィルターに移した。洗浄済みの乾燥した、窒素でパージした1 L反応容器に、2Bエタノール(190 ml)及び水(190 ml)と共に、当該塩を入れた。スラリーを75〜85℃で少なくとも4時間加熱した。混合物を20〜30℃に冷却し、更に4時間攪拌した。固体を濾過により単離し、2Bエタノール(190 ml)で洗浄した。僅かに窒素を充填しながら、50℃で減圧乾燥機で乾燥させた後、34.6 g(67.3%)の標題化合物を単離した。
【0143】
【化44】

【0144】
実施例14
2,4-ジクロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジンの製造
7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-2,4-ジオール(10.0 g、66.2 mmol)及びトルエン(30 ml)を入れた反応容器を攪拌した。オキシ塩化リン(18.5 ml、198.5 mmol)を加え、反応容器を70℃まで上げた。ジイソプロピルエチルアミン(23.0 ml、132.3 mmol)を2.5時間で加え、発熱をコントロールした。塩基の添加完了後、反応容器を106℃に加熱し、その温度で16時間攪拌した。混合物を25℃に冷却し、ゆっくりと、水(230 ml)及び酢酸エチル(12 ml)を含むフラスコに添加し、室温で終夜攪拌した。セライトで濾過後、層を分離し、水層を酢酸エチル(3×75 ml)で抽出した。有機層を併せ、飽和食塩水(100 ml)で洗浄した。Darco KBB(1.24 g)を有機層に加え、セライトで濾過し、硫酸ナトリウム(10.0 g)で乾燥させた。溶液を減圧濃縮し、標題化合物を得た(収率52%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式IIa:
【化1】

[式中、L1は脱離基であり、X1は活性基である。]
の活性化ピロロピリミジン化合物を、下記式IIIa:
【化2】

[式中、R1は(C1−C6)アルキルであり;aは0〜4の整数であり;R2は水素又は(C1−C6)アルキルであり、Pは窒素保護基である。]
のアミン又はその塩と、塩基存在下でカップリングして、下記式IVaのカップリング生成物を得るステップを含む、式IVa:
【化3】

で表される化合物の製造方法。
【請求項2】
製造された前記式IVaの化合物から、前記活性基及び窒素保護基をいずれかの順で続けて除去し、次いで、下記式V:
【化4】

[式中、R1、a及びR2は前記定義のとおりである。]
で表される化合物を得るステップを更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記X1活性基が、クロロ、ブロモ、ヨード、フルオロ、CO2R’、COCO2R’、SO2Ar及びCOArからなる群より選ばれ;ここで、Arは、場合によりO、NR'及びSからなる群より選ばれる1〜6のヘテロ原子を含むC3−C12の芳香族基であり、当該Ar基は、(C1−C6)アルキル、ハロゲン、ニトロ及びシアノからなる群より選ばれる1〜3個の基で場合により置換されていてもよく;R'は、(C1−C6)アルキル及びベンジルからなる群より選ばれる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記L1脱離基が、クロロ、ブロモ、ヨード及びフルオロからなる群より選ばれる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記L1がクロロである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記X1がクロロである、請求項3記載の方法。
【請求項7】
前記塩基が、アルカリ塩基及びトリアルキルアミン塩基からなる群より選ばれる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記塩基が、炭酸カリウムである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
Pが、水素化分解に対して安定な保護基である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
Pがベンジルである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
X1がクロロであり、かつPがベンジルである、請求項2記載の方法。
【請求項12】
前記クロロ活性化基及びベンジル保護基の除去が、水素又は水素源及び触媒の存在下で行われる、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記触媒が、水酸化パラジウム、パラジウムカーボン及び白金カーボンからなる群より選ばれる、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記式IIIaのアミン又はその塩が、式IIIe:
【化5】

の化合物又はその塩である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記式IIIeのアミンが、式IIIf:
【化6】

のアミン塩である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
Pがベンジルである、請求項14又は15記載の方法。
【請求項17】
X1がクロロである、請求項1記載の方法。
【請求項18】
下記式IVb:
【化7】

の化合物。
【請求項19】
下記式IIb:
【化8】

[式中、L1は脱離基であり、X1は活性基である。]
の活性化ピロロピリミジン化合物を、下記式IIIa:
【化9】

[式中、R1は(C1−C6)アルキルであり;aは0〜4の整数であり;R2は水素又は(C1−C6)アルキルであり、Pは窒素保護基である。]
のアミン又はその塩と、塩基存在下でカップリングするステップを含む、式IVb:
【化10】

で表される化合物の製造方法。
【請求項20】
前記式IVbの化合物から、前記活性基及び窒素保護基をいずれかの順で続けて除去し、次いで、下記式V:
【化11】

[式中、R1、a及びR2は前記定義のとおりである。]
で表される化合物を得るステップを更に含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記塩基が、アルカリ塩基及びトリアルキルアミン塩基からなる群より選ばれる、請求項19記載の方法。
【請求項22】
前記塩基が、炭酸カリウムである、請求項21記載の方法。
【請求項23】
L1がクロロである、請求項19記載の方法。
【請求項24】
前記X2が、クロロ、ブロモ、ヨード、フルオロ、ベンジル、SO2Ar、CO2R’及びCOArからなる群より選ばれ;ここで、Arは、場合によりO、NR'及びSからなる群より選ばれる1〜6のヘテロ原子を含むC3−C12の芳香族基であり、当該Ar基は、(C1−C6)アルキル、ハロゲン、ニトロ及びシアノからなる群より選ばれる1〜3個の基で場合により置換されていてもよく;R'は、(C1−C6)アルキル及びベンジルからなる群より選ばれる、請求項19記載の方法。
【請求項25】
前記X2活性化基がトシル基であり、かつアルカリ塩基によって除去される、請求項20記載の方法。
【請求項26】
前記アルカリ塩基が水酸化ナトリウムである、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記式IIIaのアミン又はその塩が、下記式IIId:
【化12】

又はその塩を有する、請求項19記載の方法。
【請求項28】
前記式IIIdのアミンが、下記式IIIf:
【化13】

のアミン塩である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
Pがベンジルである、請求項27又は28記載の方法。
【請求項30】
前記X2活性基がトシル基であり、かつアルカリ塩基によって除去され、そしてP窒素保護基がベンジル基であり、かつ水素又は水素源、触媒の存在下で及び場合により酸の存在下で除去されて、下記式Va:
【化14】

の化合物を与える、請求項20記載の方法。
【請求項31】
前記触媒が、水酸化パラジウム、パラジウムカーボン及び白金カーボンからなる群より選ばれる、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記触媒が、水酸化パラジウムである、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記酸が酢酸である、請求項30記載の方法。
【請求項34】
下記式:
【化15】

の化合物。
【請求項35】
2,4-ジクロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジンの合成方法であって、以下のステップ:
a) 芳香族溶媒中で、2,4-ジクロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-2,4-ジオールをオキシ塩化リンと反応させ、第一温度で第一溶液を形成し;
b) 当該第一溶液の第一温度を第二温度に昇温し;
c) 当該第二の温度で当該第一溶液に三級アミン塩基を添加して、当該第二温度で第二溶液を形成し;及び
d) 当該第二溶液の当該第二温度を、第一の時間に第三温度に昇温する、
ことを含み、
出発物質の2,4-ジクロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-2,4-ジオールに対して、当該オキシ塩化リンは、約1.5〜約6等量で存在し、かつ当該第三級アミン塩基は、約1.0〜約8.0等量で存在する、前記方法。
【請求項36】
前記オキシ塩化リンは、約2.0〜約3.0等量で存在し、かつ前記三級アミン塩基は、約1.1〜約2.0等量で存在する、請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記オキシ塩化リンは、約3.0等量で存在し、かつ前記三級アミン塩基は、約2.0等量で存在する、請求項36記載の方法。
【請求項38】
下記式Xc:
【化16】

[式中、R1は(C1−C6)アルキルであり;aは0〜4の整数であり;R2は水素又は(C1−C6)アルキルであり;及びR”は水素、(C1−C6)アルキル及びCF3基からなる群より独立に選ばれ;bは0〜4の整数である。]
で表されるエナンチオ過剰ピペリジンの製造法であって、以下のステップ:
下記式Xd:
【化17】

[式中、X-は、クロロ、ブロモ、フルオロ、ヨード、トリフラート、トシレート及び-BF4からなる群より選ばれ、R'''は(C1−C6)アルキルである。]
で表されるベンジルピリジニウム塩を、水素又は水素源の存在下に、ロジウム、イリジウム又はルテニウム触媒、及びキラルホスフィンリガンドで不斉水素化する、
ことを含む、前記方法。
【請求項39】
前記ロジウム触媒が、ビス(1,5-シクロオクタジエン)ロジウム(I)トリフルオロメタンスルホネートである、請求項38記載の方法。
【請求項40】
前記キラルホスフィンが、(R)-(-)-1-[(S)-2-(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ-t-ブチルホスフィン、(R)-(-)-1-[(S)-2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ-t-ブチルホスフィン及び(R)-(-)-1-[(S)-2-ジ-(p-トリフルオロメチルフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ-t-ブチルホスフィンからなる群より選ばれる、請求項38記載の方法。
【請求項41】
前記ベンジルピリジニウム塩が、下記式Xe:
【化18】

[式中、R1、R”、X-及びbは前記定義の通りである。]
で表される、請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記ベンジルピリジニウム塩が、下記式Xf:
【化19】

[式中、R1、R”、X-及びbは前記定義の通りである。]
で表される、請求項41記載の方法。
【請求項43】
X-がブロモである、請求項42記載の方法。
【請求項44】
下記式Xc:
【化20】

[式中、R1は(C1−C6)アルキルであり;R2は水素又は(C1−C6)アルキルであり;及びR”は水素、(C1−C6)アルキル及びCF3基からなる群より独立に選ばれ;bは0〜4の整数である。]
で表されるエナンチオ過剰ピペリジンの製造法であって、以下のステップ:
下記式Xh:
【化21】

[式中、X-は、クロロ、ブロモ、フルオロ、ヨード、トリフラート、トシレート及び-BF4からなる群より選ばれ、R'''は(C1−C6)アルキルである。]
で表されるテトラヒドロピリジンを、水素又は水素源の存在下に、ロジウム、イリジウム又はルテニウム触媒、及びキラルホスフィンリガンドで不斉水素化する、
ことを含む、前記方法。
【請求項45】
前記ロジウム触媒が、ビス(1,5-シクロオクタジエン)ロジウム(I)トリフルオロメタンスルホネートである、請求項44記載の方法。
【請求項46】
前記キラルホスフィンが、(R)-(-)-1-[(S)-2-(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ-t-ブチルホスフィン、(R)-(-)-1-[(S)-2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ-t-ブチルホスフィン及び(R)-(-)-1-[(S)-2-ジ-(p-トリフルオロメチルフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ-t-ブチルホスフィンからなる群より選ばれる、請求項44記載の方法。
【請求項47】
前記テトラヒドロピリジンが、下記式Xi:
【化22】

[式中、R”及びbは前記定義の通りである。]
で表される、請求項44記載の方法。

【公開番号】特開2007−39455(P2007−39455A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−206218(P2006−206218)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】