説明

ピークホールド回路、オペアンプ

【課題】ピークホールド回路を提供する。
【解決手段】入力端子102は、CMOSインバータ103の入力端子に接続されている。CMOSインバータ103の出力端子は、NMOS107のゲートに接続されている。NMOS107のソースは接地され、ドレインは抵抗106の一端、コンデンサ108の一端、CMOSインバータ105の入力端子、および出力端子109に接続されている。抵抗106の他端は、図示されていない駆動電源に接続されている。コンデンサ108の他端は、接地されている。NMOS107は、電圧Vinと電圧Voutに依存してオン、オフが制御される。本発明はピークホールド回路に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はピークホールド回路、オペアンプに関し、特に、低電圧での駆動に有利なピークホールド回路、オペアンプに関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、ゲインコントロールアンプの一例の構成を示す図である。ゲインコントロールアンプは、信号を一定に保つために用いられる。ゲインコントロールアンプは、ゲインコントロール部11とレベル検出部12を含む構成とされる。ゲインコントロール部11は、入力された信号のレベルが、予め設定されている信号のレベルになるように制御する。その制御は、レベル検出部12からの指示による。
【0003】
ゲインコントロール部11からの出力は、図示していない他の部分に出力されるとともに、レベル検出部12に供給される。レベル検出部12は、予め設定されている信号のレベルと、供給された信号のレベルを比較し、供給された信号のレベルが、設定されている信号のレベルになるように、入力信号が弱い場合には感度を上げるように指示を出し、入力信号が強い場合には感度を下げるように指示を出す。
【0004】
このようなゲインコントロールアンプのレベル検出部12には、ピークホールド回路と称される回路が含まれている。ピークホールド回路は、入力された信号の最大値を保持する回路である。
【0005】
このピークホールド回路には、オペアンプが含まれている。オペアンプは、BJT(Bipolar Junction Transistor)やMOS(Metal Oxide Semiconductor)などの半導体素子により構成される。オペアンプの回路構成は、オペアンプを構成する半導体素子がBJTまたはMOSのいずれであっても、ほぼ同一である。
【0006】
図2は、MOSで構成される従来のオペアンプの一例の構成を示す回路図である(例えば、特許文献1参照)。図2において、オペアンプ21は、引き算回路22、出力増幅回路23、反転入力端子24、非反転入力端子25、および出力端子26から構成される。
【0007】
引き算回路22は、PMOS(Positive Metal Oxide Semiconductor)31,32、NMOS(Negative Metal Oxide Semiconductor)33,34、並びに定電流源35から構成される。引き算回路22では、PMOS31のゲートが反転入力端子24に接続され、PMOS32のゲートが非反転入力端子25に接続されている。また、PMOS31のソースおよびPMOS32のソースは、定電流源35の一端に接続されており、定電流源35の他端は、駆動電圧E1を供給する図示しない電源に接続されている。
【0008】
また、引き算回路22では、PMOS31のドレインとNMOS33のドレインとが接続され、PMOS32のドレインとNMOS34のドレインとが接続されており、NMOS33およびNMOS34のソースがそれぞれ接地されている。また、NMOS33のゲートとNMOS34のゲートとが接続されており、NMOS33のゲートとNMOS34のゲートとの接続点と、PMOS31のドレインとNMOS33のドレインとの接続点とが接続されている。また、PMOS32のドレインとNMOS34のドレインとの接続点が、出力増幅回路23に接続されている。
【0009】
出力増幅回路23は、NMOS41、コンデンサ42、および定電流源43から構成される。出力増幅回路23では、NMOS41のゲートとコンデンサ42の一端とが接続されており、NMOS41のゲートとコンデンサ42の一端との接続点が、引き算回路22のPMOS32のドレインとNMOS34のドレインとの接続点に接続されている。また、NMOS41のソースは接地されており、NMOS41のドレインは、コンデンサ42の他端と、定電流源43の一端と、出力端子26とに接続されている。定電流源43の他端は、駆動電圧E1を供給する図示しない電源に接続されている。
【0010】
オペアンプ21では、第1の入力電圧が反転入力端子24に入力されるとともに、第2の入力電圧が非反転入力端子25に入力され、第2の入力電圧から第1の入力電圧を減算した電圧が、引き算回路22から出力増幅回路23に供給される。そして、引き算回路22から供給された電圧を出力増幅回路23が増幅し、出力増幅回路23により増幅された電圧が、出力電圧として出力端子26から出力される。
【0011】
このように構成されているオペアンプ21は、一般にバートンアンプと呼ばれ、バイポーラプロセスやMOSプロセスにおいて一般的に使用されている。
【0012】
ここで、定電流源35も半導体素子により構成されており、オペアンプ21の引き算回路22は、3段の半導体素子が積み重ね(Stuck)られた構成となっている。即ち、引き算回路22は、図2に示すように、定電流源35に供給される駆動電圧E1からグランドレベルまでの間に、定電流源35、PMOS31または32、NMOS33または34が、直列的に接続された構成とされている。
【0013】
従って、定電流源35、PMOS31または32、NMOS33または34のそれぞれに供給される電圧は、駆動電圧E1よりも低くなる。これにより、定電流源35、PMOS31またはPMOS32、NMOS33またはNMOS34のそれぞれを駆動させるためには、定電流源35、PMOS31または32、NMOS33または34のそれぞれの駆動に必要な電圧を足し合わせた電圧以上の電圧を、駆動電圧E1とする必要がある。
【0014】
このように、定電流源35、PMOS31またはPMOS32、NMOS33またはNMOS34のそれぞれの駆動に必要な電圧を足し合わせた電圧以上の電圧を、駆動電圧E1とする必要があるため、引き算回路22、ひいてはオペアンプ21は、低電圧での駆動には不向きであった。
【特許文献1】特開平4−185005
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記したように、引き算回路22は、3段の半導体素子が積み重ねられた、差動入力構造とされているため、低電圧で駆動させることが困難である。近年、例えば、携帯電話機など、駆動電圧を低く抑えたい機器で、上記したオペアンプ21を組み込みたいという要望がある。
【0016】
しかしながら、駆動電圧を低く抑えたい機器に、低電圧で駆動させることが困難なオペアンプ21を組み込むことは困難である。さらに、オペアンプ21を含むレベル検出部12やレベル検出部12を含むゲインコントロールアンプを、低電圧を低く抑えたい機器に組み込むことも困難である。
【0017】
また、上記した引き算回路22は、3段の半導体素子が積み重ねられた、差動入力構造とされているため、周波数特性が悪いため、RF(radio frequency)帯域で使用するのは困難であった。
【0018】
また、回路のNF(Noise Figure:雑音指数)を良くするために、初段の差動入力部のトランジスタのサイズを大きくしなくてはならないという制限があり、このために周波数特性が悪化してしまう。また、回路のNFを良くするために、初段の差動入力部のトランジスタのバイアス電流を大きくしなくてはならないという制限があり、このために消費電力が増加してしまう。
【0019】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、低電圧での駆動に有利であり、NFを良くすることができるようなオペアンプやピークホールド回路を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の一側面のピークホールド回路は、入力端子に入力された電圧を反転して出力端子から出力する第1乃至第3の半導体素子を含むピークホールド回路であって、前記第1の半導体素子の入力端子に、外部からの入力される信号を入力する端子が接続され、前記第1の半導体素子の出力端子に、前記第2の半導体素子の入力端子と、前記第3の半導体素子の出力端子が接続され、前記第2の半導体素子の出力端子に、前記第1の半導体素子乃至第3の半導体素子とは異なる構成とされている第4の半導体素子のゲートが接続され、第4の半導体素子のドレインに、抵抗の一端、コンデンサの一端、前記第3の半導体素子の入力端子、および外部に信号を出力する出力端子が接続されている。
【0021】
前記第1の半導体素子乃至第3の半導体素子は、一対のPMOS(Positive Metal Oxide Semiconductor)とNMOS(Negative Metal Oxide Semiconductor)とから構成されるCCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)であるようにすることができる。
【0022】
前記第4の半導体素子は、NMOSまたはPMOSであるようにすることができる。
【0023】
前記第1の半導体素子乃至第3の半導体素子と同じ半導体素子を、偶数単位分だけさらに加えた構成とされるようにすることができる。
【0024】
本発明の一側面のピークホールド回路においては、3個のCMOSインバータと、NMOSまたはPMOS、抵抗、コンデンサを少なくとも含む構成され、NMOSまたはPMOSは、スイッチの役割を果たすように構成される。
【0025】
本発明の一側面のオペアンプは、入力端子に入力された電圧を反転して出力端子から出力する半導体素子を複数備えるオペアンプであって、第1の半導体素子の入力端子に、外部からの入力される信号を入力する端子が接続され、前記第1の半導体素子の出力端子に、第2の半導体素子の入力端子が接続され、前記第2の半導体素子の出力端子に、第3の半導体素子の入力端子が接続され、前記第3の半導体素子の出力端子に、第4の半導体素子の入力端子と、外部に信号を出力する出力端子が接続され、前記第4の半導体素子の出力端子に、前記第1の半導体素子の出力端子と、前記第2の半導体素子の入力端子が接続されている。
【0026】
前記第1の半導体素子乃至第4の半導体素子は、一対のPMOS(Positive Metal Oxide Semiconductor)とNMOS(Negative Metal Oxide Semiconductor)とから構成されるCCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)であるようにすることができる。
【0027】
前記第1の半導体素子乃至第4の半導体素子と同じ半導体素子を、偶数単位分だけさらに加えた構成とされるようにすることができる。
【0028】
コンダクタンスがそれぞれ異なる前記第1の半導体素子乃至第4の半導体素子で構成され、前記第1の半導体素子のコンダクタンスと前記第4の半導体素子のコンダクタンスとの比で、ゲインが決定されるようにすることができる。
【0029】
本発明の一側面のオペアンプにおいては、4個のCMOSインバータを少なくとも含む構成とされ、第1のCMOSインバータ乃至第3のCMOSインバータは、直列に接続され、第1のCMOSインバータと第2のCMOSインバータとの間に、第4からのCMOSインバータからの信号が帰還される構成とされている。
【発明の効果】
【0030】
本発明の一側面によれば、低電圧での駆動に有利な回路を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0032】
図3は、本発明を適用したオペアンプ(operational amplifier)の一実施の形態の構成を示す図である。図3に示したオペアンプ61は、入力端子62、CMOS(complementary mental-oxide semiconductor)インバータ63、CMOSインバータ64、CMOSインバータ65、CMOSインバータ66、および、出力端子67を含む構成である。
【0033】
CMOSインバータ63、CMOSインバータ64、CMOSインバータ65、およびCMOSインバータ66は、それぞれ回路構成が同一であるとして説明を続ける。また、これらのCMOSインバータ63乃至66は、それぞれ入力された信号を反転して出力するインバータとしての機能を有する。
【0034】
入力端子62は、CMOSインバータ63の入力端子に接続されている。CMOSインバータ63の出力端子は、CMOSインバータ64の入力端子に接続されている。CMOSインバータ64の出力端子は、CMOSインバータ65の入力端子に接続されている。CMOSインバータ65の出力端子は、CMOSインバータ66の入力端子と出力端子67に接続されている。CMOSインバータ66の出力端子は、CMOSインバータ63の出力端子とCMOSインバータ64の入力端子を結ぶ線に接続されている。
【0035】
ここで、図4を参照し、CMOSインバータ63乃至66の回路構成について説明する。上記したように、CMOSインバータ63乃至66は、それぞれ同一の回路構成であるので、ここでは、CMOSインバータ63を例に挙げて説明する。
【0036】
CMOSインバータ63は、PMOS(Positive Metal Oxide Semiconductor)81とNMOS(Negative Metal Oxide Semiconductor)82から構成される。CMOSインバータ63の入力端子には、PMOS81のゲートとNMOS82のゲートとが接続されており、PMOS81のソースは、駆動電圧E2を供給する図示しない電源に接続され、NMOS82のソースは、接地される。また、PMOS81のドレインとNMOS82のドレインとが、CMOSインバータ63の出力端子に接続されている。
【0037】
また、CMOSインバータ63は、入力端子に入力される電圧に応じ、出力端子から出力される電流を制御するので、CMOSインバータ63の入力端子に供給される電圧をVとし、CMOSインバータ63の出力端子から出力される(図4に示されている矢印の方向に流れる)電流をIとすると、電圧Vと電流Iとは、次式に示す関係を有する。
【数1】

【0038】
ここで、gmはコンダクタンスを表し、コンダクタンスgmは、CMOSインバータ63が、電圧Vに応じて電流Iを制御する能力(即ち、電圧-電流変換能力)を示す値である。上述したように、CMOSインバータ63乃至66の回路構成は、いずれも同一であるので、CMOSインバータ63乃至66のそれぞれのコンダクタンスgmも同一の値である。
【0039】
次に、図3に示したオペアンプ61において、入力端子62に入力される電圧Vinと、出力端子67から出力される電圧Voutについて説明する。以下の説明において、図3に示したオペアンプ61内の接続点などを、以下のように定義する。
【0040】
入力端子62に入力される電圧を、電圧Vin
出力端子67から出力される電圧を、電圧Vout
CMOSインバータ63の出力端子、CMOSインバータ64の入力端子、およびCMOSインバータ66の出力端子との接続点を、接続点e
接続点eにおける電圧を、電圧Ve
CMOSインバータ64に出力端子とCMOSインバータ65の入力端子との接続点における電圧を、電圧V1
CMOSインバータ63を流れる電流(接続点eに入力される電流)を、電流iin
CMOSインバータ66を流れる電流(接続点eに入力される電流)を、電流i2
【0041】
このように定義したとき、まず電流iinは、以下のように表せる。すなわち、CMOSインバータ63の入力端子には、入力端子62から電圧Vinが入力され、上述した式(1)の関係を満たすことから、CMOSインバータ63の出力端子から出力される電流iinは、次式(2)で表される。
【数2】

【0042】
また、CMOSインバータ66の入力端子には、出力端子67から出力される電圧Voutと等しい電圧が入力される。従って、この場合も、CMOSインバータ66は、上述した式(1)の関係を満たすことから、CMOSインバータ66の出力端子から出力される電流i2は、次式(3)で表される。
【数3】

【0043】
ところで、CMOSインバータ63乃至66のそれぞれは、入力端子に入力される電圧に応じた電流を出力端子から出力する定電流源と、一端が出力端子に接続され、他端が接地されている抵抗(以下、適宜、ドレイン抵抗という)からなる等価回路として考えることができる。
【0044】
よって、接続点eは、CMOSインバータ63の出力端子に接続されているとみなされるドレイン抵抗と、CMOSインバータ66の出力端子に接続されているとみなされるドレイン抵抗とが並列に接続された回路を介して、接地されているとみなすことができる。従って、CMOSインバータ63乃至66のそれぞれのドレイン抵抗の抵抗値をRdとすると、接続点eは抵抗値Re(Re=Rd/2)の抵抗を介して接地されているとみなすことができる。
【0045】
また、CMOSインバータ63乃至66の、それぞれの入力インピーダンスは非常に高いものであり、接続点eに接続されているCMOSインバータ64の入力端子には電流が流れ込むことはないものとすると、CMOSインバータ63の出力端子から出力される電流iin、およびCMOSインバータ66の出力端子から出力される電流i2は、接続点eに接続されているとみなされる抵抗値Reの抵抗を介して、グランドレベルに流れるとみなすことができる。このことより、接続点eの電圧Veは、次式(4)で表される。
【数4】

【0046】
式(4)に、式(2)で表される電流iinと、式(3)で表される電流i2を代入し、変形すると、次式(5)となる。
【数5】

【0047】
次に、電圧V1について考慮する。電圧V1は、CMOSインバータ64を流れる電流(ここでは、電流i1とする)と、CMOSインバータ64の抵抗により求めることができる。CMOSインバータ64の抵抗は、上記したように抵抗値Rdで表すことができるので、電圧V1は、次式(6)で表される。
【数6】

【0048】
また同様に、電圧Voutは、CMOSインバータ65を流れる電流と、CMOSインバータ65の抵抗により求めることができる。よって、電圧Voutは、次式(7)で表される。
【数7】

【0049】
式(7)に式(6)を代入することで、次式(8)を得ることができる。
【数8】

【0050】
式(8)に、式(4)で求められる電圧Veを代入し、まとめることで、次式(9)を得ることができる。
【数9】

【0051】
式(9)を変形するとで、次式(10)を得ることができる。
【数10】

【0052】
さらに、式(10)を変形することで、次式(11)を得ることができる。
【数11】

【0053】
ここで、ドレイン抵抗の抵抗値Rdは、一般に、数百kΩから数十MΩであり、抵抗値Rdの3乗の値は、1に比べて非常に大きな値となる。よって、式(11)において、抵抗値Rdの3乗を含む項の値は1よりも非常に大きな値になるため、分母の“1”という数値は無視できることになる。その結果、分母と分子は、同じ値と考えられる数値となる。このようなことを考慮すると、式(11)に示したように、電圧Vinと電圧Voutの比、すなわちゲインは、−1と近似することができる。マイナスは、入力された電圧Vinと出力される電圧Voutは、位相が反転していることを意味する。
【0054】
このようにして伝達関数が求められることにより、図3に示したオペアンプ61は、2端子の反転アンプとして用いることが可能であることがわかる。
【0055】
また、図3を再度参照するに、接続点eでは、CMOSインバータ63からの信号とCMOSインバータ66からの信号が入力され、それらの信号が加算されることになる。このCMOSインバータ66からの帰還される信号は、逆位相の信号である。よって、オペアンプ61は、この接続点eで発生する電流がつりあうように動作することになる。このことを換言するならば、バイアス点がつりあうに動作することで自動的に決定される構成とされていることになる。なお“自動的に”とは、制御を行うための特別な処理を、制御部を設けて行ったりすることなく、またユーザの手を煩わせることなく行われることを意味する。従って、図3に示したオペアンプ61は、バイアス点が自動的に決まる2端子の反転アンプである。
【0056】
上記した実施の形態においては、CMOSインバータ63乃至66は、それぞれ同一のコンダクタンスgmを有するとして説明した。ここで、CMOSインバータ63のコンダクタンスgmをコンダクタンスgm3、CMOSインバータ64のコンダクタンスgmをコンダクタンスgm4、CMOSインバータ65のコンダクタンスgmをコンダクタンスgm5、および、CMOSインバータ66のコンダクタンスgmをコンダクタンスgm6とした場合、式(11)は、次式(12)のようになる。
【0057】
【数12】

【0058】
式(12)は、上記した式(2)乃至式(11)と同じように変形や代入を行うことで導き出すことができるので、ここでは、その説明は省略する。式(12)において、次式(13)の項は、次式(13)の関係を満たすと考えることができる。
【数13】

【0059】
すなわち、上記したように、ドレイン抵抗の抵抗値Rdは、一般に、数百kΩから数十MΩであるので、コンダクタンスgm3、コンダクタンスgm4、コンダクタンスgm5、および、コンダクタンスgm6は、それぞれ1よりも大きな値になると考えられる。よって、式(13)に示したように、コンダクタンスgm3×コンダクタンスgm4×コンダクタンスgm5の値は、1よりも非常に大きな値になると考えられる。
【0060】
同様に、次式(14)の関係も満たされる。
【数14】

【0061】
このような式(14)の関係が満たされることにより、分母における“1”という値は無視することができる。よって、式(12)は、コンダクタンスgm3乃至6と抵抗値Rdのみから構成される式と考えることができる。このようなことを考慮すると、式(12)は、次式(15)のように簡便化できる。
【数15】

【0062】
式(15)から、オペアンプ61のゲインは、CMOSインバータ63のコンダクタンスgm3と、CMOSインバータ66のコンダクタンスgm6の比で設定できることがわかる。よって、CMOSインバータ63のコンダクタンスgm3と、CMOSインバータ66のコンダクタンスgm6を可変にすることで、図3に示したオペアンプ61の構成で、可変反転アンプを構成できることになる。また、CMOSインバータ63のコンダクタンスgm3と、CMOSインバータ66のコンダクタンスgm6を固定値とした場合、その固定値を所望のゲインになるように設定すれば、所望のゲインを有するオペアンプ61を構成することができる。
【0063】
図3に示したオペアンプ61は、CMOSインバータ63乃至66の4個のCMOSインバータから構成される例を示したが、CMOSインバータは、4個の場合に、本発明のオペアンプ61が限定されるわけではない。本発明を適用したオペアンプ61は、偶数個(ただし、2を除く)のCMOSインバータから構成されていれば良い。すなわち、図3に示したオペアンプ61の構成に、偶数単位分だけ、さらにCMOSインバータを追加した構成とすることができる。例えば、6個のCMOSインバータや8個のCMOSインバータから、本発明を適用したオペアンプ61を構成することも可能である。
【0064】
本発明を適用したオペアンプ61には、以下のような効果がある。まず、図3に示したようにオペアンプ61は、CMOSインバータからのみ構成されている。そのため、周波数特性が良く、RF(Radio Frequency)回路にも対応可能である。また、入力ダイナミック・レンジが広く、出力ダイナミック・レンジも広い。このような効果があることから、低電圧動作に有利なオペアンプを構成できるという効果もある。さらに、図3に示したオペアンプ61は、CMOSインバータから構成されているため、低消費電力に有利なオペアンプとすることができる。
【0065】
また、入力部のコンダクタンスgm、すなわち、CMOSインバータ63のコンダクタンスgm3を大きくすれば、雑音指数を低く抑えることができる。そして、そのコンダクタンスgm3の値を大きくすることは可能であるので、そのような雑音指数を低く抑えるといったことは実現可能である。
【0066】
さらに、このような効果があるため、同じ雑音指数を確保するためにかかるバイアス電流を少なくすることが可能となり、低消費化に有利なオペアンプを構成できるようになる。さらには、低電圧での動作に有利であることと、FULL―CMOSプロセスでの製作が可能であるため、デジタル‐アナログ混在チップへの有効な手段となると考えられる。そして、入力部がCMOS構成によるため、非常に高い入力インピーダンスを実現しており回路構成に非常に有利となる。
【0067】
本発明のオペアンプ61には、このような効果を期待することができる。
【0068】
次に、オペアンプ61の構成の一部を変更することで実現されるピークホールド回路について説明を加える。図5に示したピークホールド回路101は、入力端子102、CMOSインバータ103、CMOSインバータ104、CMOSインバータ105、抵抗106、NMOS(n-channel metal-oxide semiconductor)107、コンデンサ108、および出力端子109を含む構成とされている。
【0069】
入力端子102は、CMOSインバータ103の入力端子に接続されている。CMOSインバータ103の出力端子は、NMOS107のゲートに接続されている。NMOS107のソースは接地され、ドレインは抵抗106の一端、コンデンサ108の一端、CMOSインバータ105の入力端子、および出力端子109に接続されている。抵抗106の他端は、図示されていない駆動電源に接続されている。コンデンサ108の他端は、接地されている。CMOSインバータ105の出力端子は、CMOSインバータ103の出力端子とCMOSインバータ104の入力端子に接続されている。
【0070】
図3に示したオペアンプ61と図5に示したピークホールド回路101を比較するに、ピークホールド回路101は、オペアンプ61のCMOSインバータ65を、抵抗106、NMOS107、およびコンデンサ108に置き換えた構成とされている。このような構成とすることで、帰還をかけて自己バイアスが決まる動作を利用して、ピークホールド回路を実現することができる。
【0071】
図5に示したピークホールド回路101の動作について説明する。以下の説明において、図5に示したピークホールド回路101の接続点などを、以下のように定義する。
入力端子102に入力される電圧を、電圧Vin
出力端子109から出力される電圧を、電圧Vout
CMOSインバータ103の出力端子、CMOSインバータ104の入力端子、およびCMOSインバータ105の出力端子との接続点を、接続点g
接続点gにおける電圧を、電圧Vg
CMOSインバータ103を流れる電流(接続点gに入力される電流)を、電流iin
CMOSインバータ105を流れる電流(接続点gに入力される電流)を、電流io
【0072】
このように定義して、ピークホールド回路101の動作について説明を加える。図5に示したピークホールド回路101は、CMOSインバータ103を介した入力信号(入力電圧Vin)と、CMOSインバータ105を介して電圧Voutで帰還された信号が、接続点gで加算される。接続点gで加算されたレベルが、NMOS107のオン/オフ(ON/OFF)を制御することになる。
【0073】
すなわち、電圧Vinと電圧Voutとの関係で、NMOS107のオンとオフが制御される。NMOS107は、閾値Vthのスイッチとして働くことになる。また、その閾値Vthは、電圧Vinと電圧Voutとの関係で可変的に設定される値となる。
【0074】
まず、入力電圧Vinが大きいピーク電圧のときについて説明する。このとき、入力電圧Vinに対して接続点gにおける電圧Vgがつりあうようにピークホールド回路101は動作するため、電圧Voutは電圧を下げる方向に動く。よって、NMOS107のゲート電圧は上昇することになるので、NMOS107は、オンの状態となる。NMOS107がオンの状態のときには、図6に示すように、コンデンサ108からNMOS107を介して放電が行われる。図6では、太線の矢印により、この放電による電流の流れを示している。NMOS107がオンの状態のときには、出力端子109の電圧Voutは、降下することになる。
【0075】
一方、入力電圧Vinが下がってくると、電圧Vinに対して電圧Vgがつりあうようにピークホールド回路101は動作するため、出力Voutは電圧をあげる方向に動く。よって、NMOS107のゲート電圧は下降することになるので、閾値Vth以下になるとNMOS107は、オフの状態となる。NMOS107がオフの状態のときには、図7に示すように、コンデンサ108に、図示していない電源から抵抗106を介して電力が供給され、コンデンサ108の充電が行われる。図7では、太線の矢印により、この充電による電流の流れを示している。NMOS107がオフの状態のときには、出力端子109の電圧Voutは、上昇することになる。上昇するレベル、時間は、抵抗106、コンデンサ108の時定数によって決まる。
【0076】
このようなことをさらに、図8も参照して説明する。図8において、波線Aは、入力電圧Vin の変化を表し、波線Bは、図3に示したオペアンプ61での出力電圧Voutaの変化を表し、点線Cは、図5に示したピークホールド回路101の電圧Voutの変化を表す。なお図8においては、ピークホールド回路101におけるピークホールド動作をわかりやすくするために、オペアンプ61とピークホールド回路101の波形を重ねて示している。
【0077】
時刻t1にいたるまで、NMOS107はオフの状態であり、図7に示した太線の方向に電流が流れる状態であり、コンデンサ108に図示していない電源から電力が供給され、充電される状態である。よって、出力電圧Voutは、抵抗106とコンデンサ108の時定数で上昇する状態となっている。入力電圧Vinのレベルがさらに大きくなると、それに伴って電圧Vgとつりあうように出力電圧Voutが下がる方向に制御され、NMOS107のゲート電圧が上がる。そのため、時刻t1のときNMOS107は、オフの状態からオンの状態に切り替わり、図6に示した太線の方向に電流が流れる状態になり、コンデンサ108からの放電が開始される状態に移行する。
【0078】
入力電圧Vinが下がり始める時刻t2のとき、入力電圧Vinに対して出力電圧Voutは上がる方向に動く。、その結果、NMOS107のゲート電圧が下がり、NMOS107は、オンの状態からオフの状態に切り替わり、コンデンサ108に充電が開始される状態となる。
【0079】
時刻t2から時刻t3までの間、入力電圧Vinは変動するが、時刻t1のピーク以上の電圧を越えないため、NMOS107はオフの状態が維持され、コンデンサ108への充電が維持される。
【0080】
時刻t3のとき、入力電圧Vinが次のピーク電圧であり、Vgにつりあうように出力電圧Voutは下がる方向に制御され、NMOS107は、オフの状態からオンの状態に切り換えられる。NMOS107がオンの状態となることで、図6に示した太線の方向に電流が流れる状態になり、コンデンサ108からの放電が開始される。
【0081】
以下、同様に、時刻t4で、NMOS107がオフの状態に切り換えられ、時刻t5で、オンの状態に切り換えられ、時刻t6でオフの状態に切り換えられる。
【0082】
このように、ピークホールド回路101からの出力電圧Voutは、現時点までの入力信号のピークを検出し、保持し、さらに次のピーク電圧がきたときにNMOS107がオンとなることで、ピークホールド回路101は、入力信号のピークのレベルを検出する。このように、ピークホールド回路101では、NMOS107のオン、オフによって、ピークホールドが実現される。
【0083】
図5に示したピークホールド回路101は、図3に示したオペアンプ61を変形することで、構成することができることは、既に説明した。よって、オペアンプ61に期待できる効果を、ピークホールド回路101にも期待でき、ピークホールド回路101においても、上記したオペアンプ61における効果を得ることができる。
【0084】
なお、NMOS107で構成されるスイッチを、PMOSで構成されるスイッチとしても良い。すなわち、NMOS107の代わりにPMOSを用いても良い。PMOSを用いた場合、上述したNMOS107を用いたときと逆極性のピークが検出できるようになる。
【0085】
図5に示したピークホールド回路101は、CMOSインバータ103乃至105の3個のCMOSインバータを含む構成される例を示したが、CMOSインバータは、3個の場合に、本発明のピークホールド回路101が限定されるわけではない。本発明を適用したピークホールド回路103は、奇数個(ただし、1を除く)のCMOSインバータから構成されていれば良い。換言すれば、図5に示したピークホールド回路101の構成に、偶数単位分だけ、さらにCMOSインバータを追加した構成とすることができる。例えば、5個のCMOSインバータや7個のCMOSインバータを含む、本発明を適用したピークホールド回路101を構成することも可能である。
【0086】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】従来のゲインコントロール回路の一例の構成を示す図である。
【図2】従来のオペアンプの一例の構成を示す図である。
【図3】本発明を適用したオペアンプの一実施の形態の構成を示す図である。
【図4】CMOSインバータの構成例を示す図である。
【図5】本発明を適用したピークホールド回路の一実施の形態の構成を示す図である。
【図6】NMOSがオンのときの電流の流れについて説明する図である。
【図7】NMOSがオフのときの電流の流れについて説明する図である。
【図8】ピークホールド回路におけるNMOSのオン、オフについて説明する図である。
【符号の説明】
【0088】
63乃至66 CMOSインバータ, 103乃至105 CMOSインバータ, 106 抵抗, 107 NMOS, 108 コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子に入力された電圧を反転して出力端子から出力する第1乃至第3の半導体素子を含むピークホールド回路であって、
前記第1の半導体素子の入力端子に、外部からの入力される信号を入力する端子が接続され、
前記第1の半導体素子の出力端子に、前記第2の半導体素子の入力端子と、前記第3の半導体素子の出力端子が接続され、
前記第2の半導体素子の出力端子に、前記第1の半導体素子乃至第3の半導体素子とは異なる構成とされている第4の半導体素子のゲートが接続され、
第4の半導体素子のドレインに、抵抗の一端、コンデンサの一端、前記第3の半導体素子の入力端子、および外部に信号を出力する出力端子が接続されている
ピークホールド回路。
【請求項2】
前記第1の半導体素子乃至第3の半導体素子は、一対のPMOS(Positive Metal Oxide Semiconductor)とNMOS(Negative Metal Oxide Semiconductor)とから構成されるCCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)である
請求項1に記載のピークホールド回路。
【請求項3】
前記第4の半導体素子は、NMOSまたはPMOSである
請求項1に記載のピークホールド回路。
【請求項4】
前記第1の半導体素子乃至第3の半導体素子と同じ半導体素子を、偶数単位分だけさらに加えた構成とされる
請求項1に記載のピークホールド回路。
【請求項5】
入力端子に入力された電圧を反転して出力端子から出力する半導体素子を複数備えるオペアンプであって、
第1の半導体素子の入力端子に、外部からの入力される信号を入力する端子が接続され、
前記第1の半導体素子の出力端子に、第2の半導体素子の入力端子が接続され、
前記第2の半導体素子の出力端子に、第3の半導体素子の入力端子が接続され、
前記第3の半導体素子の出力端子に、第4の半導体素子の入力端子と、外部に信号を出力する出力端子が接続され、
前記第4の半導体素子の出力端子に、前記第1の半導体素子の出力端子と、前記第2の半導体素子の入力端子が接続されている
オペアンプ。
【請求項6】
前記第1の半導体素子乃至第4の半導体素子は、一対のPMOS(Positive Metal Oxide Semiconductor)とNMOS(Negative Metal Oxide Semiconductor)とから構成されるCCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)である
請求項5に記載のピークホールド回路。
【請求項7】
前記第1の半導体素子乃至第4の半導体素子と同じ半導体素子を、偶数単位分だけさらに加えた構成とされる
請求項5に記載のピークホールド回路。
【請求項8】
コンダクタンスがそれぞれ異なる前記第1の半導体素子乃至第4の半導体素子で構成され、
前記第1の半導体素子のコンダクタンスと前記第4の半導体素子のコンダクタンスとの比で、ゲインが決定される
請求項5に記載のオペアンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−100278(P2009−100278A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270147(P2007−270147)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】