説明

ファン付ヒートシンク

【課題】限定された空間に配置可能で、少ない騒音で操作可能、且つ、放熱効率に優れたフィン付ヒートシンクを提供する。
【解決手段】四周を囲まれ、空気取り入れ口および空気排出口を備えた軸流ファンと、空気取り入れ口に設けられた第1の放熱フィンと、空気排出口に設けられた第2の放熱フィンとを備えたフィン付ヒートシンク。上述した空気取り入れ口および空気排出口が、軸流ファンの開放された対向する面からなっている。第1放熱フィンの流路抵抗が、第2放熱フィンの流路抵抗よりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ファン付ヒートシンク、特に、空気取り入れ口および空気排出口を備えた軸流ファンに放熱フィンを取り付けたファン付ヒートシンクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコンに搭載された発熱素子の発生する熱の冷却は、中央演算素子であるCPUのみならず、VGA(GPU)やNorth−bridgeと呼ばれるチップセットなどの発熱素子等の熱に対しても適切に行う必要が出てきている。
【0003】
このため、ヒートシンクと、強制冷却用のファンとを組み合わせて、発熱素子の熱が伝わった放熱フィンの間に冷たい空気を吹き付けて、発熱素子を冷却する方法が広く知られている。更に、発熱素子と放熱フィンとが離隔して配置されている場合に、発熱素子と放熱フィンとをヒートパイプによって熱的に接続し、発熱素子の熱をヒートパイプによって別の位置に配置された放熱フィンまで移動して、冷却用のファンによって冷却することも知られている。
【0004】
軸流ファンを放熱フィンの上方に取り付けて風を吹き付けて冷却するヒートシンク冷却装置が特開8−316389号公報に開示されている。即ち、ヒートシンクは、放熱フィンを有するヒートシンクと、送風して放熱フィンを冷却するための軸流ファンとを備えている。図4(a)、(b)に上述したヒートシンク冷却装置を示す。図4(b)は、図4(a)のA−A′断面図である。図4に示すように、発熱体である素子を封入したLSIパッケージ118は、ヒートシンク基板116の裏面中央部に、ネジ、クリップまたは接着剤等によって密着接合されている。ヒートシンク114には、チャンバ119が基板と同等あるいは小さな面積を有する開口部121をフィン上部と接して密着固定されている。もう一方のチャンバ開口部122には軸流ファン111が密着固定されている。即ち、軸流ファン111と放熱フィンを有するヒートシンク114の間にチャンバを備えて、ヒートシンク全体に冷却用空気を供給して冷却効率を高めようとしている。
【0005】
通常、発熱素子等の熱を受け入れる受熱部からヒートパイプによって熱を移動し、ヒートパイプの凝縮部に放熱フィンを設けて、放熱フィンに移動した熱をファンによって冷却用の空気を当てて放熱する。このようなファン付ヒートシンクの場合には、上述したような、複数の薄板を並列配置した放熱フィンの真上にファンを取り付けて上から下に向けて風を吹きつけて放熱する型式と、複数の薄板を並列配置した放熱フィンの側面にファンを取り付けて側方から風を吹き付けて放熱する型式とがある。
【0006】
後者、即ち、複数の薄板を並列配置した放熱フィンの側面にファンを取り付けて側方から風を吹き付けて放熱する型式の場合には、ヒートシンクは、外周部の一部を、2箇所、3箇所、または4箇所で、ネジ等の手段を用いて、筐体の基部等に機械的に固定される。このようなヒートシンクの固定方法は、使用されるCPU、ソケット、基板等の規格、設計思想によって概ね統一されている。一方で、ヒートシンクの配置に対して割り当てられる体積は制限され、また、静寂性を求めるために操作時の静音化が要求されている。
【特許文献1】特開2005−321287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したような要求・要望がなされる環境のもとで、ファンは大型で低速回転の方が、操作時の静音化が図れる。しかも使用できる放熱フィンのフィン面積は最大限活用することが望まれる。制限された所定の体積において、最大限の大きさのファンを用いる場合は、ヒートシンクの外周部に取り付ける固定用のハードウエア(上述したネジ、スクリュー等)が干渉して、ファンの大きさを制限してしまう。または、先ず、ヒートシンクを取り付けて、別途ファンを取り付ける等の現実的でない設置方法を考える必要がある。
【0008】
一方で、固定用のハードウエアとの干渉を避けようとすると、ファンの位置をヒートシンク全体の中で内側に寄せる必要が出てきて、その結果、放熱フィンの面積が減少してしまうという問題がある。ヒートシンクを取り付ける固定用のハードウエアとの干渉を避けるために、ファンを小型にすると、所望の冷却用の風の流れを確保するために、高回転で操作する必要があり、騒音の問題が生じる。
【0009】
従って、この発明の目的は、限定された空間に配置可能で、少ない騒音で操作可能、且つ、放熱効率に優れたフィン付ヒートシンクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者は上述した従来の問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、限られた空間の中で高性能のヒートシンクを得るためには、従来の発想を変換して、ファンを放熱フィンの上方または側方に配置するのではなく、放熱フィンの内側に配置することによって、少ない騒音で操作可能、且つ、放熱効率に優れたフィン付ヒートシンクが得られることが判明した。即ち、四周を囲まれ、空気取り入れ口および空気排出口を備えた軸流ファンの、空気取り入れ口に第1の放熱フィンを設け、空気排出口に第2の放熱フィンを設ける、所謂2つの放熱フィンによって、ファンをサンドイッチ状に挟むようなフィン付ヒートシンクである。
【0011】
更に、第1の放熱フィンの流路抵抗が、第2の放熱フィンの流路抵抗よりも小さくなるように設定し、第2の放熱フィンを形成する複数の薄板フィンの空気が通過する長さが、第1の放熱フィンを形成する複数の薄板フィンの空気が通過する長さよりも長く設定することによって、2つの放熱フィンによってファンをサンドイッチ状に挟んでも、熱効率に高いファン付ヒートシンクが得られることが判明した。この発明は、上述した研究成果に基づいてなされたものである。
【0012】
この発明のフィン付ヒートシンクの第1の態様は、空気取り入れ口および空気排出口を備えた軸流ファンと、前記空気取り入れ口に設けられた第1の放熱フィンと、前記空気排出口に設けられた第2の放熱フィンとを備え、前記第1放熱フィンの流路抵抗が、前記第2放熱フィンの流路抵抗よりも小さい、フィン付ヒートシンクである。
【0013】
この発明のフィン付ヒートシンクの第2の態様は、前記空気取り入れ口および前記空気排出口が、前記軸流ファンの開放された対向する面からなっている、フィン付ヒートシンクである。
【0014】
この発明のフィン付ヒートシンクの第3の態様は、前記第2放熱フィンを形成する複数の薄板フィンの空気が通過する長さが、前記第1放熱フィンを形成する複数の薄板フィンの空気が通過する長さよりも長い、フィン付ヒートシンクである。
【0015】
この発明のフィン付ヒートシンクの第4の態様は、前記第2放熱フィンを形成する複数の薄板フィンの間の間隔が、前記第1放熱フィンを形成する複数の薄板フィンの間の間隔よりも狭い、フィン付ヒートシンクである。
【0016】
この発明のフィン付ヒートシンクの第5の態様は、発熱部品に熱的に接続された受熱ブロックを備え、前記受熱ブロックに熱的に接続され、前記第1の放熱フィンおよび第2の放熱フィンに接続される少なくとも1つのヒートパイプを備えている、フィン付ヒートシンクである。
【0017】
この発明のフィン付ヒートシンクの第6の態様は、前記ヒートパイプがU字形ヒートパイプからなっており、前記U字形ヒートパイプの一方の垂直部分が前記第1放熱フィンを挿通し、前記U字形ヒートパイプの他方の垂直部分が前記第2放熱フィンを挿通している、フィン付ヒートシンクである。
【0018】
この発明のフィン付ヒートシンクの第7の態様は、L字形のヒートパイプを更に備えており、前記L字形のヒートパイプの垂直部分が前記第2放熱フィンを挿通している、フィン付ヒートシンクである。
【0019】
この発明のフィン付ヒートシンクの第8の態様は、前記受熱ブロックおよびそれを延長した部材に、熱的に接続された円柱形状の部材を備え、前記第1放熱フィンおよび前記第2放熱フィンの前記ヒートパイプの湾曲部に位置する薄板フィンを前記円柱形状の部材に圧入する、フィン付ヒートシンクである。
【0020】
この発明のフィン付ヒートシンクの第9の態様は、前記受熱ブロックに接合された、筐体等への固定のための固定用プレートを備えており、前記固定用プレートが、前記第1放熱フィンおよび前記第2放熱フィンの外周面よりも内側に配置されている、フィン付ヒートシンクである。
【0021】
この発明のフィン付ヒートシンクの第10の態様は、前記第1放熱フィン、前記第2放熱フィン、前記ヒートパイプ、および、前記受熱ブロックが、相互に接合されて、前記軸流ファンが取り外し可能である、フィン付ヒートシンクである。
【発明の効果】
【0022】
この発明によると、軸流ファンを、吸気口側および排気口側にそれぞれ配置される2つの放熱フィンの間に配置し、更に放熱フィンは形状を柔軟に設定することができるので、使用可能な設置許容空間を最大限利用して、高性能のフィン付ヒートシンクを提供することができる。
【0023】
更に、この発明によると、使用可能な設置許容空間に対応して、大きなサイズの軸流ファンを使用できるので、小さな回転数でファンを回転させ、低騒音のファン付ヒートシンクを提供することができる。
更に、この発明によると、軸流ファンの吸気口側および排気口側に配置される放熱フィンの形状に対応してヒートパイプが配置されるので、フィン効率を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
この発明のフィン付ヒートシンクを、図面を参照しながら説明する。
この発明のフィン付ヒートシンクの1つの態様は、四周を囲まれ、空気取り入れ口および空気排出口を備えた軸流ファンと、前記空気取り入れ口に設けられた第1の放熱フィンと、前記空気排出口に設けられた第2の放熱フィンとを備えたフィン付ヒートシンクである。
【0025】
図1は、この発明のフィン付ヒートシンクの1つの態様を説明する側面図である。図1に示すように、この発明のフィン付ヒートシンク1においては、軸流ファン2の吸気口側には、第1の放熱フィン3が配置され、排気口側には第2の放熱フィン4が配置されている。即ち、空気取り入れ口および空気排出口が、軸流ファンの開放された対向する面からなっている。第1の放熱フィン3、第2の放熱フィン4は、それぞれ概ね同一形状の金属薄板が複数枚、所定の間隔で垂直方向に沿って積層されている。第1の放熱フィンの流路抵抗が、第2放熱フィンの流路抵抗よりも小さい。即ち、第2放熱フィンを形成する複数の薄板フィンの空気が通過する長さが、第1放熱フィンを形成する複数の薄板フィンの空気が通過する長さよりも長い。更に、第2放熱フィンを形成する複数の薄板フィンの間の間隔が、第1放熱フィンを形成する複数の薄板フィンの間の間隔よりも狭い。
【0026】
一方の面(図では下側)が発熱素子と熱的に接続される受熱ブロック7の他方の面には概ねU字形、および、概ねL字形のヒートパイプ5、8の一部が熱的に接続されて接合されている。即ち、U字形のヒートパイプ5の中央部、L字形のヒートパイプ8の端部が受熱ブロックに固定されて支持されている。受熱ブロックの一部に、ファン付ヒートシンクを固定するための固定部材6が接合されている。固定部材6の端部にネジ等で筐体に固定するためのネジ穴が形成されている。
【0027】
図2は、ファン付ヒートシンクのヒートシンク部分を示す斜視図である。図2に示すように、第1の放熱フィン3と第2の放熱フィン4の間に軸流ファンが配置される空間部が形成されている。図3に固定部材および受熱ブロックを示す。図3に示すように、受熱ブロック7の回りに接続されて固定部材6が位置している。固定部材の4つの角部にはネジ穴9が形成されている。
【0028】
U字形ヒートパイプの一方の垂直部分が第1放熱フィンを挿通し、U字形ヒートパイプの他方の垂直部分が第2放熱フィンを挿通している。L字形のヒートパイプの垂直部分が第2放熱フィンを挿通している。
受熱ブロックおよびそれを延長した部材に、熱的に接続された円柱形状の部材を備え、第1の放熱フィンおよび第2の放熱フィンのヒートパイプの湾曲部に位置する薄板フィンを前記円柱形状の部材に圧入する。
以下、この発明のフィン付ヒートシンクを詳細に説明する。
【0029】
この発明のフィン付ヒートシンクは、限定された所定の空間(体積)の中に配置されて、高い冷却効率で発熱素子の熱を放散する高性能のヒートシンクである。そのため、効率よく放熱するために寄与する部品、即ち、ファン、フィン、ヒートパイプ、受熱ブロック等を配置する際に、できるだけデッドスペースを減らしている。
【0030】
従来は、軸流ファンを放熱フィンの一方の側方に配置して、通常は所謂押し込みと称する方法で、側方から放熱フィンの間にファンで空気を流し込んで、放熱フィンに伝わった熱を放散していた。これまでは、放熱フィンの直上に軸流ファンを設けて、上から下方に向かって、空気を吹き付ける型式が主流であったが、サーバやワークステーションは、従来から、冷却用空気が筐体内を一方向に流れるようなレイアウトが放熱上では有効なので、側方から放熱フィンの間にファンで冷却用空気を流し込む方法が一般的になっている。
【0031】
上述したように、ファンを放熱フィンの側方に取り付ける場合に、ヒートシンクを固定するスクリュー等とファンとが干渉し、または、先ずネジ等でヒートシンクを固定して、その後、別途にファンを取り付ける等の現実的でない工程を伴ってしまう。
【0032】
図1に示すように、この発明のフィン付ヒートシンクでは、冷却用の空気を送風するファンを、ヒートシンクを固定するスクリュー等と干渉しない部分、即ち、ヒートシンクの側方では無く、ヒートシンクの内側にシフトして配置する。そして、軸流ファンをシフトして空いた部分(即ち、ファンの吸気側)に、放熱フィンを配置する。放熱フィンは、金属薄板からなっており、形状を容易に変更することができるので、固定用のスクリューと、干渉しないように変形することができる。このようにして、軸流ファンが2つのグループの放熱フィンの間に挟まれるように配置される。
【0033】
この時、放熱フィンは、受熱部が接続される受熱ブロックに垂直方向に立てる櫛形フィンでも良いが、軸流ファンの高さと概ね同じ高さの放熱フィンの場合は、放熱フィンに温度差が生じてフィン効率が悪化して、ヒートシンクとしての性能が低下する。従って、ヒートパイプを使用して、放熱フィンに温度差が生じないようにして、フィン効率を向上させることが望ましい。この場合、通常、ヒートシンクの中央下部に配置される受熱ブロックからU字、またはL字形状のヒートパイプを配設して、積層された複数の放熱フィンをヒートパイプが、挿通する(所謂串刺し)形状が有効である。
【0034】
軸流ファンは、ヒートシンクを固定するスクリュー等のハードウエアとの干渉や、放熱フィンのレイアウトに影響しなければ、ヒートシンク内のどの位置に配置されてもよいが、吸気側に配置される放熱フィンは、排気側に配置される放熱フィンよりも、流路抵抗が小さいことが望ましい。なお、流路抵抗が小さいということは、一般には、放熱フィンの長さ(風の流れに対して)が短いか、フィンピッチが大きい場合をいう。これは、通常の軸流ファンは、放熱フィンの間に冷却用の空気を押し込む圧力(押し込み圧)を重視しているので、吸気側の放熱フィンの抵抗(インピーダンス)が過度に大きい場合には、放熱フィン間を流れる、軸流ファンの風量が、結果として減少してしまう場合があるからである。
【0035】
軸流ファンから生じるノイズ(騒音)は、主にファンの回転数に比例する。すなわち、ファンから吹き出す風量は同一であっても、小型のファンを高い回転数で操作するより、大型のファンを低い回転数で操作する方が、ノイズの観点からは有利である。また、小型ファンから吹き出される風を、大きなサイズの放熱フィンに均等に流すためには、所謂、助走区間などの風が拡散するためのスペースやガイドなどが必要である。しかし、大型ファンの場合は、軸流ファンの中央部に位置する回転軸が比較的太くなるという不利はあるが、ファンの面積自体が大きいので、低い回転数でも、広範囲に渡って風を送ることができる。
【0036】
上述したように、軸流ファンを第1の放熱フィンと第2の放熱フィンの間にサンドイッチ状に配置し、吸気側に配置される第1放熱フィンの流路抵抗を、排気側に配置される第2の放熱フィンの流路抵抗よりも小さくし、軸流ファンとして比較的大きなサイズのファンを低い回転数で操作すると、限られた空間(体積)の中で最大限のサイズの放熱フィンを設けることができ、高性能でありながら、低ノイズのファン付ヒートシンクを提供することができる。
【0037】
また、回転する軸流ファンによる事故を防ぐために、軸流ファンの吸気口または排気口に安全カバーなどを設けることを規定されている場合には、この発明のフィン付ヒートシンクでは、軸流ファンの回転する羽根部分が外部に露出していないので、安全カバー等が不要で、軸流ファンの安全カバーによるコストアップ、軸流ファンの安全カバーによって、限定された空間が占有されてしまい、ヒートシンクとして利用できる空間が更に制限されてしまうという問題を避けることができる。
【0038】
次に、この発明のファン付ヒートシンクを実施例によって更に詳細に説明する。
【実施例1】
【0039】
図1を参照して、この発明のフィン付ヒートシンクの実施例を説明する。複数の金属薄板が所定間隙で積層された放熱フィンの下部に、銅製の受熱ブロックが設けられており、受熱ブロックの一方の面(図では下面)にCPU(発熱体)が熱的に接続されて接合されて、受熱ブロックにてCPUの熱を受ける。受熱ブロックには、3本のヒートパイプの一部が熱的に接続されて取り付けられている。3本のヒートパイプのうち2本が大概U字形状の丸型ヒートパイプで、軸流ファンの左側(吸気側)に配置された第1の放熱フィンと、軸流ファンの右側(排気側)の第2の放熱フィンとの間にサンドイッチ状に圧入されて固定されている。
【0040】
放熱フィンは、受熱ブロックの受熱面に面して所定間隔で複数枚を積層して形成され、軸流ファンが吸気口から空気を吸引する際の吸気抵抗が過度に大きくならないように放熱フィンの長さを設定した。即ち、吸気口側に位置する第1の放熱フィンの長さは20mm、排気口側に位置する第2の放熱フィンの長さは47mmとなっている。上述した大概U字形のヒートパイプとは別に、大概L字形状の第3のヒートパイプが受熱ブロックと第2の放熱フィンとを熱的に接続して接合されている。これは、第2の放熱フィンの方が、第1の放熱フィンよりも、フィン面積が大きいので、更にヒートパイプを追加して、熱を移動して、フィン効率を十分に向上させるためである。
【0041】
ここで想定するファン付ヒートシンクを配置するための許容サイズが95x95x100mmであるので、軸流ファンは、92mm角、20mm厚のサイズのものを使用している。一般に、U字形のヒートパイプの曲げ部に、放熱フィンを設けることは困難であるので、受熱ブロックおよびそれを延長した部材に円柱形状の別部品を取り付けて、この部材に放熱フィンを圧入することによって、同一形状の放熱フィンを、上下に渡って設けている。
【0042】
これによって、放熱フィンの形状が著しく異なったり、バイパス部があると風の流れが偏ったり、肝心の放熱フィン部に風が流れず、バイパス部に短絡してしまう状態が生じてしまうが、この発明のフィン付ヒートシンクでは、同一形状の放熱フィンを使用するので、上述した風の流れの偏り、バイパス部への短絡を避けることができる。放熱フィンの高さは、大概軸流ファンの高さと同じに設定され、軸流ファンと放熱フィンの間から、風がリークしないように、軸流ファンと放熱フィンの間の部分が、ファンカバーによって覆われている。なお、ファンカバーは受熱ブロックに固定されている。
【0043】
第1の放熱フィン、第2の放熱フィンは、ファン付ヒートシンクを設置するための許容されるサイズ内で、最大限の形状を採用しているが、スクリュー(ハードウエア)を締めるためにドライバー等が入るスペースが必要であるので、ハードウエアが取り付く上部は、放熱フィンとの間の干渉を避けるために、放熱フィンの必要最低限の部分が切り取られている。また、軸流ファンと、第1の放熱フィンおよび第2の放熱フィンの間は、それぞれ4mmの距離を取って配置している。
【0044】
なお、本発明は、上述した内容に限定されるものでなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適用できる。各部材は、銅、アルミニウム以外であっても放熱的に機能するものであれば使用することができる。放熱フィンとヒートパイプとの接合は、圧入に限らず、ハンダ付等でもよい。ヒートパイプは、いわゆる丸型ヒートパイプやそれを扁平したヒートパイプに限らず、蒸発潜熱を利用した熱伝導素子であってもよい。
【0045】
ヒートパイプの長さ、径、扁平度合、本数は、状況に対応して自由に選定できる。U字形状のヒートパイプが、第1の放熱フィンと第2の放熱フィンとを、熱的に連通していることが好ましいが、レイアウト等の関係で、第1の放熱フィンのみ、または、第2の放熱フィンのみにU字形状のヒートパイプが配置されても良い。受熱ブロックの形状、放熱フィンの厚さ等は、状況に対応して自由に選定できる。
【0046】
また、U字形またはL字形のヒートパイプの曲げ部における放熱フィンの設置については、実施例に示したような、円柱形状の部材に挿入する他に、ヒートパイプに直にハンダ付けしてもよく、切り起こしなどの熱伝導体にフィンをハンダ付しても良い。軸流ファンは、構成としてはヒートシンクに対して垂直に設置することを前提としているが、必要に応じて、軸流ファンを傾斜させて取り付ける態様であってもよい。
【0047】
この発明によると、限定された空間に配置可能で、少ない騒音で操作可能、且つ、放熱効率に優れたフィン付ヒートシンクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、この発明のフィン付ヒートシンクの1つの態様を説明する側面図である。
【図2】図2は、ファン付ヒートシンクのヒートシンク部分を示す斜視図である。
【図3】図3は、固定部材および受熱ブロックを説明する図である。
【図4】図4は、従来のヒートシンクを説明する図である。
【符号の説明】
【0049】
1 この発明のファン付ヒートシンク
2 軸流ファン
3 第1の放熱フィン
4 第2の放熱フィン
5 ヒートパイプ
6 固定部材
7 受熱ブロック
8 ヒートパイプ
9 ネジ穴
10 フィンの切り取り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気取り入れ口および空気排出口を備えた軸流ファンと、前記空気取り入れ口に設けられた第1の放熱フィンと、前記空気排出口に設けられた第2の放熱フィンとを備え、前記第1放熱フィンの流路抵抗が、前記第2放熱フィンの流路抵抗よりも小さい、フィン付ヒートシンク。
【請求項2】
前記第2放熱フィンを形成する複数の薄板フィンの空気が通過する長さが、前記第1放熱フィンを形成する複数の薄板フィンの空気が通過する長さよりも長い、請求項1に記載のフィン付ヒートシンク。
【請求項3】
前記第2放熱フィンを形成する複数の薄板フィンの間の間隔が、前記第1放熱フィンを形成する複数の薄板フィンの間の間隔よりも狭い、請求項1または2に記載のフィン付ヒートシンク。
【請求項4】
発熱部品に熱的に接続された受熱ブロックを備え、前記受熱ブロックに熱的に接続され、前記第1の放熱フィンおよび第2の放熱フィンに接続される少なくとも1つのヒートパイプを備えている、請求項1から3の何れか1項に記載のフィン付ヒートシンク。
【請求項5】
前記ヒートパイプがU字形ヒートパイプからなっており、前記U字形ヒートパイプの一方の垂直部分が前記第1放熱フィンを挿通し、前記U字形ヒートパイプの他方の垂直部分が前記第2放熱フィンを挿通している、請求項4に記載のフィン付ヒートシンク。
【請求項6】
L字形のヒートパイプを更に備えており、前記L字形のヒートパイプの垂直部分が前記第2放熱フィンを挿通している、請求項5に記載のフィン付ヒートシンク。
【請求項7】
前記受熱ブロックおよびそれを延長した部材に、熱的に接続された円柱形状の部材を備え、前記第1放熱フィンおよび前記第2放熱フィンの前記ヒートパイプの湾曲部に位置する薄板フィンを前記円柱形状の部材に圧入する、請求項1から6の何れか1項に記載のフィン付ヒートシンク。
【請求項8】
前記受熱ブロックに接合された、筐体等への固定のための固定用プレートを備えており、前記固定用プレートが、前記第1放熱フィンおよび前記第2放熱フィンの外周面よりも内側に配置されている、請求項1から7の何れか1項に記載のフィン付ヒートシンク。
【請求項9】
前記第1放熱フィン、前記第2放熱フィン、前記ヒートパイプ、および、前記受熱ブロックが、相互に接合されて、前記軸流ファンが取り外し可能である、請求項1から8の何れか1項に記載のフィン付ヒートシンク。









【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−238948(P2009−238948A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81976(P2008−81976)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】