説明

フィルタモジュールおよび通信装置

【課題】通信装置等に用いられる複数のフィルタに係る部分を、全体として小型化可能な構成を提供する。
【解決手段】フィルタモジュールであって、周波数帯域の異なる複数の通信帯域毎に複数のフィルタを備え、前記フィルタは誘電体層を積層した積層基板に構成され、同じ通信帯域の前記複数のフィルタはグランド電極を挟んで積層方向に積み重なるように配置され、異なる通信帯域のフィルタ同士は積層方向に垂直な方向の別々の領域に配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子電気機器間における無線伝送を行なう通信装置、及びその通信装置に用いられる高周波部品であって、特に高周波信号のフィルタを積層基板に集積したフィルタモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば携帯電話、無線LAN通信、近距離無線規格ブルートゥース(Bluetooth:登録商標)など、電子電気機器間における無線伝送を行なう通信装置の発展は止まることがない。これらの通信装置は、複合化、多機能化が進み、複数の通信システムを1つにまとめたマルチバンド対応の製品や、伝送量の大きい通信システム製品など、種々の開発、製品化が進んでいる。
【0003】
そのなかで、夫々の通信システム用の送信回路には高周波信号を所定の出力まで増幅する増幅器、ならびに他の通信システムへの干渉を低減するためのフィルタが用いられる。また、夫々の通信システム用の受信回路には微弱な受信信号を増幅する増幅器、ならびに他の通信システムからの干渉を抑制するためのフィルタが用いられる。増幅器としてはGaAs、SiGe、C−MOSなどの半導体部品が用いられる。フィルタとしてはLTCC(Low Temperature Co−fired Ceramics)を用いた誘電体フィルタが低コストかつ良好なフィルタ特性を有するため一般的に使用される。例えば特許文献1には1/4波長ストリップライン共振器を誘電体層内に配置した誘電体フィルタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−187222号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、通信装置が扱う通信システムの種類が増えるほど通信装置内には多くのフィルタが必要となる。必要とされるフィルタを、特許文献1に開示されたような単体の誘電体フィルタで充足しようとすると通信装置が大型化してしまう。
【0006】
そこで、本発明はかかる問題に鑑み、通信装置等に用いられる複数のフィルタに係る部分を、全体として小型化可能な構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のフィルタモジュールは、周波数帯域の異なる複数の通信帯域毎に複数のフィルタを備え、前記フィルタは誘電体層を積層した積層基板に構成され、同じ通信帯域の前記複数のフィルタはグランド電極を挟んで積層方向に積み重なるように配置され、異なる通信帯域のフィルタ同士は積層方向に垂直な方向の別々の領域に配置されていることを特徴とする。かかる構成によって、バンドパスフィルタ同士の干渉を防ぎつつ、複数のフィルタを一体化したフィルタモジュールの小型化が可能となる。
【0008】
また、前記フィルタモジュールにおいて、前記フィルタの少なくとも一部として帯状の共振線路を備えた複数のバンドパスフィルタを備え、前記バンドパスフィルタ全ての共振線路の延設方向が同じであることが好ましい。かかる構成は複数のバンドパスフィルタを一体化する際の空間ロスを低減して、フィルタモジュールを小型化しやすい。また、共振線路をスクリーン印刷にて形成する際にスキージの移動方向と共振線路の方向を揃えることが可能となり、印刷品質の安定化を図ることができる。
【0009】
さらに、前記バンドパスフィルタの配置において、周波数帯域の異なるバンドパスフィルタ同士は共振線路の延設方向に並べて配置されていることが好ましい。かかる構成によれば、周波数帯域の異なる共振線路間の不要な結合を抑制することができる。
【0010】
さらに、前記バンドパスフィルタの配置において、周波数帯域が隣接するバンドパスフィルタの間に他の周波数帯域のバンドパスフィルタが配置されていることが好ましい。かかる構成によれば、周波数帯域が隣接する経路間のアイソレーションを高めることができる。
【0011】
さらに、前記フィルタモジュールにおいて、前記各フィルタの外部接続用の入力端子および出力端子は前記積層基板の矩形の裏面の各辺に沿って形成され、前記入力端子および出力端子はそれぞれビア電極を介して、前記積層基板に構成された前記各フィルタに接続され、前記各フィルタの入力端子と出力端子はそれぞれ裏面の異なる辺側に配置されていることが好ましい。かかる構成は、バンドパスフィルタの入出力端子間のアイソレーション向上に寄与する。
【0012】
本発明の通信装置は、前記いずれかのフィルタモジュールを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のフィルタモジュールによれば、通信装置等に用いられる複数のフィルタに係る部分を、全体として小型化することが可能である。また、かかるフィルタモジュールを用いることで通信装置の小型化を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るフィルタモジュールの実施形態の回路ブロック図である。
【図2】本発明に係るフィルタモジュールの実施形態におけるフィルタの配置を示す図である。
【図3】本発明に係るフィルタモジュールの実施形態に用いるバンドパスフィルタの一例を示す等価回路図である。
【図4】本発明に係るフィルタモジュールの実施形態に用いるバンドパスフィルタ等の一例を示す等価回路図である。
【図5】本発明に係るフィルタモジュールの実施形態に用いるバンドパスフィルタの一例を示す等価回路図である。
【図6】本発明に係るフィルタモジュールの実施形態に用いるバンドパスフィルタ等の一例を示す等価回路図である。
【図7】本発明に係るフィルタモジュールの実施形態に用いるバンドパスフィルタの一例を示す等価回路図である。
【図8】本発明に係るフィルタモジュールを構成する積層基板のシート展開図の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のフィルタモジュールの実施形態について図面を参照しつつ、以下具体的に説明するが本発明がこれに限定されるものではない。図1には本発明に係るフィルタモジュールの一実施形態の回路ブロックを示す。本発明に係るフィルタモジュールは、周波数帯域の異なる複数の通信帯域毎に複数のフィルタを備える。図1に示す実施形態では、2GHzおよび3GHzの周波数帯域の信号経路に用いるフィルタが、誘電体層を積層した一つの積層基板に構成されている。2GHz帯に対しては、送信経路に配置されて用いられるバンドパスフィルタBPF1と、受信経路に配置されて用いられるバンドパスフィルタBPF2を備える。また、3GHz帯に対しては、送信経路に配置されて用いられるバンドパスフィルタBPF5と、受信経路に配置されて用いられるバンドパスフィルタBPF4を備える。なお、図1に示す実施形態では、5GHz帯の送信経路に配置されて用いられるバンドパスフィルタBPF3も備えている。なお、フィルタ全てがバンドパスフィルタである必要はない。また、他のフィルタ等を含んでもよい。このように、本発明に係るフィルタモジュールのフィルタ配置の構成は、周波数帯域の異なる複数の通信帯域毎に有する複数のフィルタに係るものであり、従来の分波回路を構成する各フィルタの配置に係るものとは異なる。
【0016】
上述の各バンドパスフィルタに接続される入力端子および出力端子は、フィルタモジュールにおいて、それぞれ独立形成されている。すなわち、外部回路から入力端子2G_Tx_inに入力された2GHz帯の送信信号はバンドパスフィルタBPF1を通過して、出力端子2G_Tx_outから外部回路に出力される。同様に、外部回路から入力端子5G_Tx_inに入力された5GHz帯の送信信号はバンドパスフィルタBPF3を通過して、出力端子5G_Tx_outから外部回路に出力され、外部回路から入力端子3G_Tx_inに入力された3GHz帯の送信信号はバンドパスフィルタBPF5を通過して、出力端子3G_Tx_outから外部回路に出力される。一方、外部回路から入力端子2G_Rx_inに入力された2GHz帯の受信信号はバンドパスフィルタBPF2を通過して、出力端子2G_Rx_out(N,P)から外部回路に出力される。ここでは、出力を平衡出力とするため、バンドパスフィルタ2と出力端子2G_Rx_out(N,P)との間にはバランBAL1が接続されている。同様に、外部回路から入力端子3G_Rx_inに入力された3GHz帯の受信信号はバンドパスフィルタBPF4を通過して、出力端子3G_Rx_out(N,P)から外部回路に出力される。ここでも、出力を平衡出力とするため、バンドパスフィルタ4と出力端子3G_Rx_out(N,P)との間にはバランBAL2が接続されている。これらのバランは省略してもよい。
【0017】
上述の各バンドパスフィルタは誘電体層を積層した積層基板に構成される。なお、以下の構成は全てのフィルタをバンドパスフィルタで構成したフィルタモジュールだけに適用されるものではない。フィルタの少なくとも一部として帯状の共振線路を備えた複数のバンドパスフィルタを備え、かかるバンドパスフィルタに関して以下の構成が備えられていればよい。図2には、基板面に垂直な方向(積層方向)から見た、積層基板における、各フィルタの平面配置を示す。積層基板の内部には、誘電体層のほぼ全体に渡って形成されたグランド電極(図示せず)が配置されており、図2(a)は該グランド電極よりも上層側、図2(b)は該グランド電極よりも下層側(実装面側)におけるフィルタ配置を示してある。図2に示すように、同じ2GHzの通信帯域の複数のバンドパスフィルタBPF1、BPF2はグランド電極を挟んで積層方向に積み重なるように配置される。同様に、同じ3GHzの通信帯域の複数のバンドパスフィルタBPF4、BPF5はグランド電極を挟んで積層方向に積み重なるように配置される。一方、異なる通信帯域のバンドパスフィルタBPF2、BPF4同士は積層方向に垂直な方向の別々の領域に配置されている(図2(a))。同様に、異なる通信帯域のバンドパスフィルタBPF1、BPF5同士は積層方向に垂直な方向の別々の領域に配置されている(図2(b))。また、グランド電極よりも下層側(実装面側)においては、バンドパスフィルタBPF1、BPF3およびBPF5以外に、バランBAL1およびBAL2も積層方向に垂直な方向の別々の領域に配置されている。なお、後述するように、積層方向に垂直な方向の別々の領域に配置されているバンドパスフィルタ、バランの間には帯状に並んだグランドビア列が配置されていて、バンドパスフィルタ間、バラン間、バンドパスフィルタ/バラン間のシールドが図られている。
【0018】
図3〜図7には上記バンドパスフィルタBPF1〜BPF5の等価回路を示した。図3に示すバンドパスフィルタBPF1は三本の共振線路lplt1〜3が電磁気的に結合する三段のバンドパスフィルタである。共振線路に接続された接地容量cplt1〜cplt3のうち、中央の共振線路lplt2に接続されたcplt2の接続位置が、その両側の共振線路の場合と異なる。すなわち、共振線路と接地容量で構成される共振器の向きが、中央と両側とで異なる。
【0019】
図4に示すバンドパスフィルタBPF2は三本の共振線路lplr1〜3が電磁気的に結合する三段のバンドパスフィルタであり、その構成は図3に示すバンドパスフィルタBPF1と同様であるので説明を省略する。図4にはバンドパスフィルタBPF2に接続したバランBAL1の等価回路も併せて示した。バランBAL1はバンドパスフィルタBPF2に接続された第1の線路lbl7〜11、該第1の線路に接続された第2の線路lbl11〜15と、第1の線路と結合する第3の線路lbl4〜6、第2の線路lbl11〜15と結合する第4の線路lbl1〜3を備える。第1〜第4の線路は複数の誘電体層に渡って形成されている。第3の線路lbl4〜6の一端は容量cbl2を介して平衡出力端子2G_Rx_out(P)に接続され、第4の線路lbl1〜3の一端は容量cbl1を介して平衡出力端子2G_Rx_out(N)に接続されている。第3の線路lbl4〜6の他端と第4の線路lbl1〜3の他端同士は接続されて接地されている。
【0020】
図5に示すバンドパスフィルタBPF3は三本の共振線路lpat1〜3が電磁気的に結合する三段のバンドパスフィルタであるが、端の共振線路lpat1に接続された接地容量cpat2の接続位置が、他の共振線路lpat2、lpat3の接地容量cpat3、cpat4と異なる点で図3に示すバンドパスフィルタBPF1と異なる。
【0021】
図6に示すバンドパスフィルタBPF4は三本の共振線路lphr1〜3が電磁気的に結合する三段のバンドパスフィルタである。その構成は図3に示すバンドパスフィルタBPF1と同様であるので説明を省略する。図6にはバンドパスフィルタBPF4に接続したバランBAL2の等価回路も併せて示した。バランBAL2はバンドパスフィルタBPF4に接続された第1の線路lbh7〜9、該第1の線路に接続された第2の線路lbh9〜13と、第1の線路と結合する第3の線路lbh0、4〜6、第2の線路lbh9〜13と結合する第4の線路lbh1〜3を備える。第3の線路lbh0、4〜6の一端は平衡出力端子3G_Rx_out(N)に接続され、第4の線路lbh1〜3の一端は平衡出力端子3G_Rx_out(P)に接続されている。第3の線路lbh0、4〜6の他端と第4の線路lbh1〜3の他端同士は接続され、容量cbh1〜3を介して接地されている。また、第4の線路lbh1〜3の他端と平衡出力端子3G_Rx_out(P)との間には接地容量cbh4が接続されている。
【0022】
図7に示すバンドパスフィルタBPF5は三本の共振線路lpht1〜3が電磁気的に結合する三段のバンドパスフィルタであり、その構成は図3に示すバンドパスフィルタBPF1と同様であるので説明を省略する。
【0023】
図1に示された回路ブロックが積層基板に形成されてフィルタモジュールが構成される。図8には上記フィルタモジュールを構成する積層基板のシート展開図を示す。フィルタモジュールは28層の誘電体層で構成されるが、便宜上図8にはその一部を示す。なお、導体パターンの符号は等価回路における符号と同じものを用いている。また、図中の微小な正方形はビア電極を示している。第3層には、2GHz帯の受信信号が通過するバンドパスフィルタBPF2の帯状の共振線路の導体パターンlplr1〜3と3GHz帯の受信信号が通過するバンドパスフィルタBPF4の帯状の共振線路の導体パターンlphr1〜3が形成されている。バンドパスフィルタBPF2、BPF4のこれらの帯状(直線状)の共振線路の導体パターンは、その延設方向が同じである。すなわち、その向きは矩形の誘電体層の長手方向である。また、周波数帯域の異なるバンドパスフィルタBPF2、BPF4は、グランドに接続されるグランドビア列を介して、矩形の誘電体層の長手方向に離間して(積層方向に垂直な方向の別々の領域に)、共振線路の延設方向に並べて配置されている。なお、図8に示す実施形態では図1に示すバンドパスフィルタ以外にもバンドパスフィルタを備えているが、該バンドパスフィルタも含めて帯状(直線状)の共振線路の導体パターンは、その延設方向が同じになっている。
【0024】
バンドパスフィルタBPF2、BPF4の共振線路の導体パターンは第4層、第5層にも同形状で形成されており、その端部同士がビア電極で接続されて、並列線路を構成している。バンドパスフィルタBPF2、BPF4の接地容量は共振線路よりも下層(例えば第12層)に形成されている。第13層には誘電体層のほぼ全体に渡って形成された平面状のグランド電極GNDが配置され、上層と下層のアイソレーションが図られている。
【0025】
第16層には、2GHz帯の送信信号が通過するバンドパスフィルタBPF1の帯状の共振線路の導体パターンlplt1〜3と、3GHz帯の送信信号が通過するバンドパスフィルタBPF5の帯状の共振線路の導体パターンlpht1〜3と、5GHz帯の送信信号が通過するバンドパスフィルタBPF3の帯状の共振線路の導体パターンlpat1〜3とが形成されている。バンドパスフィルタBPF1、BPF5、BPF3のこれらの帯状(直線状)の共振線路の導体パターンは、その延設方向が同じである。すなわち、その向きは矩形の誘電体層の長手方向である。したがって、図8に示すフィルタモジュールでは、全てのバンドパスフィルタの共振線路の延設方向が同じになっている。このように、バンドパスフィルタ全ての共振線路の延設方向が同じであることによって、共振線路をスクリーン印刷にて形成する際にスキージの移動方向と共振線路の方向を揃えることが可能となり、印刷品質の安定化を図ることができる。また、複数のバンドパスフィルタを一体化する際の、配置に係る空間ロスを低減して、フィルタモジュールを小型化しやすい。また、共振線路の幅は周波数帯域の異なる各バンドパスフィルタで異なっている。この幅を設定することで、必要とされる特性への調整が可能である。周波数帯域の異なる各バンドパスフィルタは、グランドに接続されるグランドビア列を介して、矩形の誘電体層の長手方向に離間して(積層方向に垂直な方向の別々の領域に)、共振線路の延設方向に並べて配置されている。かかる配置によって、周波数帯域の異なる共振線路間の不要な結合を抑制することができる。また、各バンドパスフィルタを他の回路素子を介さずに並置することがフィルタモジュールの小型化に寄与している。5GHz帯の送信信号が通過するバンドパスフィルタBPF3は、2GHz帯の送信信号が通過するバンドパスフィルタBPF1と3GHz帯の送信信号が通過するバンドパスフィルタBPF5の間に配置されている。このように、バンドパスフィルタの配置において、周波数帯域が隣接するバンドパスフィルタの間に他の周波数帯域のバンドパスフィルタが配置されていることで、周波数帯域が隣接する経路間のアイソレーションを高めることができる。
【0026】
図2および図8に示すように、異なる通信帯域のフィルタ同士は積層方向に垂直な方向の別々の領域に配置されているが、同じ通信帯域の複数のフィルタはグランド電極を挟んで積層方向に積み重なるように配置されている。例えば、矩形の角の部分に配置された2GHz帯のバンドパスフィルタBPF2とバンドパスフィルタBPF1はグランド電極GNDを介して積層方向に重なるよう配置されている。同様に、矩形の角の部分に配置された3GHz帯のバンドパスフィルタBPF4とバンドパスフィルタBPF5はグランド電極GNDを介して積層方向に重なるよう配置されている。これによって、同じ周波数帯域のバンドパスフィルタ同士の干渉を防ぎつつ、フィルタモジュールの小型化が図られている。また、各通信帯域のバンドパスフィルタのうち、受信信号が通過するバンドパスフィルタ(BPF2、BPF4)はグランド電極GNDを境にして積層基板の上方(実装面とは反対側)に、送信信号が通過するバンドパスフィルタ(BPF1、BPF3、BPF5)は積層基板の下方(実装面側)に配置されている。グランドに近い下層に配置したフィルタの方が良好なフィルタ特性を得やすい。送信回路では高周波増幅器から多くの高調波が発生するため通信機器の外部に高調波が漏洩するのを低減するためには送信側に良好な特性のフィルタを配置する必要がある。そのため送信信号が通過するバンドパスフィルタを下層に配置することが好ましい。
【0027】
受信信号が通過するバンドパスフィルタBPF2、BPF4に接続されたバランBAL1、BAL2は送信信号が通過するバンドパスフィルタBPF1等が形成された誘電体層も用いて形成されているが、バンドパスフィルタBPF1、BPF3、BPF5とバランBAL1、BAL2との間にはグランドに接続されるシールドビア列が配置されており、これらの間の干渉が抑制されている。
【0028】
図8に示すように各フィルタの外部接続用の入力端子および出力端子並びにグランド端子は、矩形の実装面(裏面)の各辺に沿って形成されている。これらの端子の内側の、矩形の中央部分には端子に比べて大きな平面状のグランド電極GNDが形成されている。入力端子および出力端子はそれぞれビア電極を介して、積層基板に構成された各フィルタに接続されている。各フィルタの入力端子と出力端子はそれぞれ裏面の異なる辺側に配置されている。このように、各フィルタの入力端子と出力端子を、対辺または隣接する二辺に、離して配置することによって、入出力端子間のアイソレーションが向上する。
【0029】
図8に示すような導体パターンをセラミック積層基板に構成したフィルタモジュールは、例えば1000℃以下で低温焼結が可能なセラミック誘電体材料LTCC(Low Temperature Co−fired Ceramics)からなり、厚さが10μm〜200μmのグリーンシートに、低抵抗率のAgやCu等の導電ペーストを印刷して所定の電極パターンを形成し、複数のグリーンシートを適宜一体的に積層し、焼結することにより製造することが出来る。
前記誘電体材料としては、例えばAl、Si、Srを主成分として、Ti、Bi、Cu、Mn、Na、Kを副成分とする材料や、Al、Si、Srを主成分としてCa、Pb、Na、Kを副成分とする材料や、Al、Mg、Si、Gdを含む材料や、Al、Si、Zr、Mgを含む材料が用いられ、誘電率は5〜15程度の材料を用いればよい。なお、積層基板を構成する誘電体層には、セラミック誘電体材料の他に、樹脂材料や樹脂とセラミック誘電体粉末を混合してなる複合材料を用いることも可能である。また、前記セラミック積層基板をHTCC(高温同時焼成セラミック)技術を用いて作製してもよい。すなわち、Alを主体とする誘電体材料と、タングステンやモリブデン等の高温で焼結可能な金属導体を用いてセラミック積層基板を構成しても良い。セラミック積層基板でフィルタモジュールを構成する場合は、各層には、インダクタンス素子用、容量素子用及びグランド電極用のパターン電極が適宜構成されて、層間にはビア導体が形成されて、所望の回路が構成される。
【0030】
本発明に係るフィルタモジュールを用いて各種の通信装置を構成することができる。通信装置において必要とされるフィルタ機能を集積した本発明に係るフィルタモジュールを、他の回路素子とともに回路基板に実装し、通信装置に必要とされる所定の高周波回路を構成する。例えば、携帯電話機、Bluetooth(登録商標)通信機器、無線LAN通信機器(802.11a/b/g/n)、WIMAX(802.16e)(登録商標)、IEEE802.20(I−burst)などに応用することが可能である。すなわち、通信システムとしては、例えば、2.4GHz帯無線LAN(IEEE802.11bおよび/あるいはIEEE802.11g)、5GHz帯無線LAN(IEEE802.11a)、2.5GHz帯のWiMAX、3GHz帯のWiMAXなどに適用可能である。
【符号の説明】
【0031】
BPF1〜5:バンドパスフィルタ
BAL1、BAL2:バラン
2G_Tx_in、2G_Rx_in:入力端子
5G_Tx_in:入力端子
3G_Rx_in、3G_Tx_in:入力端子
2G_Tx_out、2G_Rx_out(N、P):出力端子
5G_Tx_out:出力端子
3G_Rx_out(N、P)、3G_Tx_out:出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数帯域の異なる複数の通信帯域毎に複数のフィルタを備え、
前記フィルタは誘電体層を積層した積層基板に構成され、
同じ通信帯域の前記複数のフィルタはグランド電極を挟んで積層方向に積み重なるように配置され、
異なる通信帯域のフィルタ同士は積層方向に垂直な方向の別々の領域に配置されていることを特徴とするフィルタモジュール。
【請求項2】
前記フィルタの少なくとも一部として帯状の共振線路を備えた複数のバンドパスフィルタを備え、
前記バンドパスフィルタ全ての共振線路の延設方向が同じであることを特徴とする請求項1に記載のフィルタモジュール。
【請求項3】
前記バンドパスフィルタの配置において、周波数帯域の異なるバンドパスフィルタ同士は共振線路の延設方向に並べて配置されていることを特徴とする請求項2に記載のフィルタモジュール。
【請求項4】
前記バンドパスフィルタの配置において、周波数帯域が隣接するバンドパスフィルタの間に他の周波数帯域のバンドパスフィルタが配置されていることを特徴とする請求項2または3に記載のフィルタモジュール。
【請求項5】
前記各フィルタの外部接続用の入力端子および出力端子は前記積層基板の矩形の裏面の各辺に沿ってに形成され、
前記入力端子および出力端子はそれぞれビア電極を介して、前記積層基板に構成された前記各フィルタに接続され、
前記各フィルタの入力端子と出力端子はそれぞれ裏面の異なる辺側に配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のフィルタモジュール。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のフィルタモジュールを用いた通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−245804(P2010−245804A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91791(P2009−91791)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】